説明

磁気ヘッドサスペンション及びその製造方法

【課題】一対の圧電素子による磁気ヘッドスライダの微動特性の悪化を有効に防止しつつ、振動モードの共振周波数の上昇及び耐衝撃性の向上を図る。
【解決手段】一対の圧電素子の各々は、サスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、支持部と対向する側の電極層の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第1基端側接着剤,電極層用第1先端側接着剤及び電極層用第1内方側接着剤によって支持部に形成された薄肉部位の第1基端側水平壁面,第1先端側水平壁面及び第1内方側水平壁面にそれぞれ固着され、且つ、基端側の端面及び先端側の端面が第1基端側絶縁性接着剤及び第1先端側絶縁性接着剤によって前記薄肉部位の第1基端側垂直壁面及び第1先端側垂直壁面にそれぞれ固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク等の記憶媒体に対してデータをリード及び/又はライトする磁気ヘッドスライダを支持する為の磁気ヘッドサスペンション及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の大容量化に伴って磁気ヘッドスライダを目的トラックに対して迅速且つ正確に位置させることが求められており、その為、ボイスコイルモータ等のメインアクチュエータによる磁気ヘッドスライダのシーク方向への粗動に加えて、サブアクチュエータとして作用する一対の圧電素子による前記磁気ヘッドスライダのシーク方向の微動を可能とした磁気ヘッドサスペンションが提案されている(例えば下記特許文献1及び2参照)。
【0003】
詳しくは、前記磁気ヘッドサスペンションは、前記磁気ヘッドスライダをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を磁気ヘッドスライダに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りに揺動される支持部と、前記磁気ヘッドスライダを支持した状態で前記ロードビーム部及び前記支持部に支持されるフレクシャ部と、前記支持部に装着された前記一対の圧電素子とを備えている。
【0004】
前記支持部は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域と、前記荷重曲げ部が連結される先端領域と、サスペンション長手方向に関し前記基端領域及び前記先端領域の間に位置する開口領域と、前記開口領域よりサスペンション幅方向外方向側において前記基端領域及び前記先端領域の間を連結する左右一対の連結梁とを有している。
【0005】
前記一対の圧電素子の各々は、圧電体と前記圧電体の厚み方向両側に配設された一対の上面側電極層及び下面側電極層とを有しており、前記一対の電極層間への電圧印可に応じて前記厚み方向とは直交する長手方向に伸長又は短縮する。
【0006】
前記磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子は、サスペンション長手方向中心線を基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なった状態で、先端部が前記先端領域に固着され且つ基端部が前記基端領域に固着されている。
【0007】
斯かる構成を備えた前記磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子の一方を伸長させ且つ他方を短縮させることにより、前記一対の連結梁を弾性変形させつつ前記先端領域が前記基端領域に対してシーク方向へ揺動し、これにより、前記先端領域に前記荷重曲げ部,前記ロードビーム部及び前記フレクシャ部を介して支持される前記磁気ヘッドスライダがシーク方向へ微動する。
【0008】
ところで、前記一対の圧電素子の伸縮動作を効率的に前記先端領域の揺動動作に変換させる為、及び、前記一対の圧電素子を含む前記磁気ヘッドサスペンションの厚みを可及的に低減する為に、前記特許文献1及び2に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記先端領域の基端側エッジを含む部分が上方から薄肉化されて上方側及び基端側へ開く先端側切り欠き部が形成され且つ前記基端領域の先端側エッジを含む部分が上方から薄肉化されて上方側及び先端側へ開く基端側切り欠き部が形成されている。
【0009】
前記先端側切り欠き部は、サスペンション長手方向基端側を向く先端側垂直面と前記先端側垂直面の下端部からサスペンション長手方向基端側へ延びて前記開口領域に到達する先端側水平面とを有している。
前記基端側切り欠き部は、サスペンション長手方向先端側を向く基端側垂直面と前記基端側垂直面の下端部からサスペンション長手方向先端側へ延びて前記開口領域に到達する基端側水平面とを有している。
【0010】
そして、前記一対の圧電素子の各々の前記下面側電極層の先端側が前記先端側水平面に絶縁性接着剤によって接着され且つ前記下面側電極層の基端側が前記基端側水平面に絶縁性接着剤によって接着された状態で、前記一対の圧電素子の各々の先端側端面が前記先端側垂直面と対向した状態で絶縁性接着剤によって固着され且つ基端側端面が前記基端側垂直面と対向した状態で絶縁性接着剤によって固着されている。
【0011】
前記特許文献1及び2に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子の各々の前記先端側端面及び前記基端側端面が前記先端領域の先端側垂直面及び前記基端領域の基端側垂直面にそれぞれ対向状態で接着されている為、前記一対の圧電素子による前記磁気ヘッドスライダの微動特性(即ち、前記一対の圧電素子の伸縮動作による前記先端領域の前記基端領域に対するシーク方向への変位し易さ)を向上させることができる。
【0012】
しかしながら、前記特許文献1及び2に記載の磁気ヘッドサスペンションにおいては、前記一対の圧電素子の各々は、先端側及び基端側が前記先端領域及び基端領域に支持されているのみである為、磁気ヘッドサスペンションの振動モードの共振周波数の上昇及び前記一対の圧電素子の耐衝撃性の向上という観点においては、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−251854号公報
【特許文献2】特開2009−080915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、メインアクチュエータによる磁気ヘッドスライダの粗動に加えて一対の圧電素子の伸縮動作による前記磁気ヘッドスライダの微動を行える磁気ヘッドサスペンションであって、前記一対の圧電素子による前記磁気ヘッドスライダの微動特性の悪化を有効に防止しつつ、前記磁気ヘッドサスペンションの振動モードの共振周波数の上昇及び耐衝撃性の向上を図り得る磁気ヘッドサスペンション及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成する為に、磁気ヘッドスライダをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を磁気ヘッドスライダに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りに揺動される支持部と、前記磁気ヘッドスライダを支持した状態で前記ロードビーム部及び前記支持部に支持されるフレクシャ部と、前記磁気ヘッドスライダをシーク方向に微動させる為にサスペンション長手方向中心線を基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なるように前記支持部に装着される左右一対の第1及び第2圧電素子とを備えた磁気ヘッドサスペンションであって、前記支持部は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域と前記基端領域からサスペンション長手方向先端側に間隙を介して離間され且つ前記荷重曲げ部が連結される先端領域と前記間隙を前記第1及び第2圧電素子にそれぞれ対応したサスペンション幅方向一方側及び他方側の第1及び第2間隙に分割するようにサスペンション幅方向中央において前記基端領域及び前記先端領域の間を連結する中央梁とを有し、前記基端領域には、前記中央梁よりサスペンション幅方向一方側に設けられた第1基端側薄肉部位であって、前記ディスク面と対向する下面又は前記ディスク面とは反対側の上面の何れか一方側の第1面から他方側の第2面へ向けて延びる第1基端側垂直壁面及び前記第1基端側垂直壁面の先端から前記第1間隙へ延びる第1基端側水平壁面によって画される第1基端側薄肉部位と、前記中央梁よりサスペンション幅方向他方側に設けられた第2基端側薄肉部位であって、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2基端側垂直壁面及び前記第2基端側垂直壁面の先端から前記第2間隙へ延びる第2基端側水平壁面によって画される第2基端側薄肉部位とが形成され、前記先端領域には、前記中央梁よりサスペンション幅方向一方側に設けられた第1先端側薄肉部位であって、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第1先端側垂直壁面及び前記第1先端側垂直壁面の先端から前記第1間隙へ延びる第1先端側水平壁面によって画される第1先端側薄肉部位と、前記中央梁よりサスペンション幅方向他方側に設けられた第2先端側薄肉部位であって、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2先端側垂直壁面及び前記第2先端側垂直壁面の先端から前記第2間隙へ延びる第2先端側水平壁面によって画される第2先端側薄肉部位とが形成され、前記中央梁には、前記第1基端側水平壁面及び前記第1先端側水平壁面の間をつなげる第1内方側水平壁面を有する第1内方側薄肉部位と、前記第2基端側水平壁面及び前記第2先端側水平壁面の間をつなげる第2内方側水平壁面を有する第2内方側薄肉部位とが形成され、前記第1圧電素子は、サスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、前記支持部と対向する側の電極層の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第1基端側接着剤,電極層用第1先端側接着剤及び電極層用第1内方側接着剤によって前記第1基端側水平壁面,前記第1先端側水平壁面及び前記第1内方側水平壁面にそれぞれ固着され、且つ、基端側端面及び先端側端面が第1基端側絶縁性接着剤及び第1先端側絶縁性接着剤によって前記第1基端側垂直壁面及び前記第1先端側垂直壁面にそれぞれ固着されており、前記第2圧電素子は、サスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、前記支持部と対向する側の電極層の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第2基端側接着剤,電極層用第2先端側接着剤及び電極層用第2内方側接着剤によって前記第2基端側水平壁面,前記第2先端側水平壁面及び前記第2内方側水平壁面にそれぞれ固着され、且つ、基端側端面及び先端側端面が第2基端側絶縁性接着剤及び第2先端側絶縁性接着剤によって前記第2基端側垂直壁面及び前記第2先端側垂直壁面にそれぞれ固着されている磁気ヘッドサスペンションを提供する。
【0016】
好ましくは、前記第1内方側薄肉部位は、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第1内方側垂直壁面及び前記第1内方側垂直壁面の先端から前記第1間隙へ延びる前記第1内方側水平壁面によって画され、前記第2内方側薄肉部位は、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2内方側垂直壁面及び前記第2内方側垂直壁面の先端から前記第2間隙へ延びる前記第2内方側水平壁面によって画される。
斯かる構成において、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向内方側の端面と前記第1内方側垂直壁面との間には第1内方側絶縁性接着剤が充填され、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向内方側の端面と前記第2内方側垂直壁面との間には第2内方側絶縁性接着剤が充填される。
【0017】
前記一対の圧電素子の各々のサスペンション幅方向長さをWとした場合に、好ましくは、前記第1及び第2内方側水平壁面の各々と対応する前記圧電素子とは0.18×W以下の範囲で重合するものとされる。
【0018】
一形態においては、前記電極層用第1基端側接着剤,前記電極層用第1先端側接着剤及び前記電極層用第1内方側接着剤の少なくとも一つが導線性接着剤を含み、前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層が前記導電性接着剤を介して前記支持部に電気的に接続されることで接地電位とされ、前記電極層用第2基端側接着剤,前記電極層用第2先端側接着剤及び前記電極層用第2内方側接着剤の少なくとも一つが導線性接着剤を含み、前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層が前記導電性接着剤を介して前記支持部に電気的に接続されることで接地電位とされる。
【0019】
前記一形態において、好ましくは、前記ディスク面と対向する下面が前記第1面とされ、前記ディスク面とは反対側の上面側電極層が前記支持部と対向する側の電極層とされる。
【0020】
より好ましくは、前記フレクシャ部は、前記磁気ヘッドスライダが装着されるヘッド搭載領域を有し且つ前記ロードビーム部及び前記支持部に固着されるフレクシャ金属基板と、前記フレクシャ金属基板の下面に積層される配線体とを備える。
前記配線体は、前記フレクシャ金属基板の下面に積層される絶縁層と、前記絶縁層の下面に積層される導体層と、前記導体層を囲繞するカバー層とを有する。
前記導体層は、基端部が外部に電気的に接続可能とされ且つ先端部が前記磁気ヘッドスライダに電気的に接続される信号配線と、基端部が外部に電気的に接続可能とされた電圧供給配線とを含む。
斯かる構成において、前記第1及び第2圧電素子の下面側電極層は前記カバー層に形成された開口を介して露出された前記電圧供給配線と電圧供給用導電性接着剤を介して電気的に接続される。
【0021】
前記種々の構成において、例えば、前記第1及び第2圧電素子の各々は、サスペンション幅方向外方側のエッジのうち前記先端領域及び前記基端領域に載置される部分を除く部分がフリーとされ得る。
【0022】
これに代えて、前記支持部が、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1基端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記先端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第1外方側/基端側薄肉部位と、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2基端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記先端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第2外方側/基端側薄肉部位とをさらに含むように構成し、前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側を、前記第1外方側/基端側薄肉部位の前記水平壁面に対向させた状態で電極層用第1外方側接着剤によって固着し、且つ、前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側を、前記第2外方側/基端側薄肉部位の前記水平壁面に対向させた状態で電極層用第2外方側接着剤によって固着することができる。
【0023】
これに代えて、前記支持部が、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1先端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記基端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第1外方側/先端側薄肉部位と、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2先端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記基端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第2外方側/先端側薄肉部位とをさらに含むように構成し、前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側を、前記第1外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面に対向させた状態で電極層用第1外方側接着剤によって固着し、且つ、前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側を、前記第2外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面に対向させた状態で電極層用第2外方側接着剤によって固着することも可能である。
【0024】
若しくは、前記支持部が、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1基端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画される第1外方側/基端側薄肉部位と、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1先端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記第1外方側/基端側薄肉部位との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置された第1外方側/先端側薄肉部位と、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2基端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画される第2外方側/基端側薄肉部位と、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2先端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記第2外方側/基端側薄肉部位との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置された第2外方側/先端側薄肉部位とをさらに含むように構成することができる。
この場合、前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第1外方側/基端側薄肉部位及び前記第1外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第1外方側接着剤によって固着され、且つ、前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第2外方側/基端側薄肉部位及び前記第2外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第2外方側接着剤によって固着される。
【0025】
前記種々の構成において、好ましくは、前記支持部は、前記基端領域及び前記先端領域のサスペンション幅方向一端側同士及び他端側同士を連結する左右一対の連結梁をさらに有し得る。
【0026】
又、本発明は、一対の第1及び第2圧電素子の下面側電極層がフレクシャ部に一体的に設けられた電圧供給配線に電圧供給用導電性接着剤を介して電気的に接続されている前記磁気ヘッドサスペンションを製造する方法を提供する。
本発明に係る製造方法は、前記一対の圧電素子を除く前記支持部,前記荷重曲げ部,前記ロードビーム部及び前記フレクシャ部が一体化されたプリアッセンブリを形成する工程と、前記プリアッセンブリを前記支持部に設けられた前記薄肉部位の水平壁面が上方を向くように配置させた状態で、前記第1基端側水平壁面,前記第1先端側水平壁面,前記第1内方側水平壁面にそれぞれ前記電極層用第1基端側接着剤,前記電極層用第1先端側接着剤及び前記電極層用第1内方側接着剤を塗布してから前記第1圧電素子を載置させ、且つ、前記第2基端側水平壁面,前記第2先端側水平壁面及び前記第2内方側水平壁面に前記電極層用第2基端側接着剤,前記電極層用第2先端側接着剤及び前記電極層用第2内方側接着剤を塗布してから前記第2圧電素子を載置させて、前記各接着剤の硬化を行う工程と、前記第1圧電素子の基端側端面及び先端側端面と前記第1基端側垂直壁面及び前記第1先端側垂直壁面との間にそれぞれ前記第1基端側絶縁性接着剤及び前記第1先端側絶縁性接着剤を充填し、且つ、前記第2圧電素子の基端側端面及び先端側端面と前記第2基端側垂直壁面及び前記第2先端側垂直壁面との間にそれぞれ前記第2基端側絶縁性接着剤及び前記第2先端側絶縁性接着剤を充填して、前記各接着剤の硬化を行う工程と、前記第1及び第2圧電素子の前記下面側電極層と前記カバー層に形成された開口を介して露出された前記電圧供給配線とを接続するように前記電圧供給用導電性接着剤を塗布し且つ硬化させる工程とを含む。
【0027】
好ましくは、本発明に係る前記製造方法は、前記電圧供給用導電性接着剤の硬化を行った後に、前記電圧供給用導電性接着剤を囲繞するように絶縁性接着剤を塗布し且つ硬化させる工程をさらに含み得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る磁気ヘッドサスペンションによれば、一対の圧電素子の各々は、伸縮動作量の最も大きいサスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、支持部と対向する側の電極層の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第1基端側接着剤,電極層用第1先端側接着剤及び電極層用第1内方側接着剤によって対応する薄肉部位の水平壁面にそれぞれ固着され、且つ、基端側の端面及び先端側の端面が第1基端側絶縁性接着剤及び第1先端側絶縁性接着剤によって対応する薄肉部位の垂直壁面にそれぞれ固着されているので、前記一対の圧電素子による磁気ヘッドスライダの微動特性の悪化を有効に防止しつつ、前記一対の圧電素子の支持安定化を図ることができ、これにより、磁気ヘッドサスペンションの振動モードの共振周波数の上昇及び耐衝撃性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図である。
【図2】図2は、前記実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンションの下面図である。
【図3】図3は、図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、前記実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の下面図である。
【図6】図6(a)は、第1解析に用いた実施例に係る磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の下面図であり、図6(b)は、図6(a)におけるVI-VI線に沿った断面図である。図6(c)は、前記第1解析に用いた比較例に係る磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の図6(b)に対応した断面図である。
【図7】図7は、図6(a)〜図6(c)に示す前記支持部を備えた前記実施例及び前記比較例に対して行ったスライダ変位特性に関する解析結果を示すグラフである。
【図8】図8は、図6(a)〜図6(c)に示す前記支持部を備えた前記実施例及び前記比較例に対して行った耐衝撃性に関する解析結果を示すグラフである。
【図9】図9は、図6(a)〜図6(c)に示す前記支持部を備えた前記実施例及び前記比較例に対して行った曲げ一次モードの共振周波数に関する解析結果を示すグラフである。
【図10】図10(a)及び(b)は、それぞれ、図6(a)〜図6(c)に示す前記支持部を備えた前記実施例及び前記比較例に対して行った捩れ一次モード及び捩れ二次モードの共振周波数に関する解析結果を示すグラフである。
【図11】図11は、図6(a)〜図6(c)に示す前記支持部を備えた前記実施例及び前記比較例に対して行ったSWAYモードの共振周波数に関する解析結果を示すグラフである。
【図12】図12(a)は、第2解析に用いた実施例に係る磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の下面図であり、図12(b)は、図12(a)におけるXII-XII線に沿った断面図である。
【図13】図13は、図12(a)及び(b)に示す前記支持部を備えた前記実施例に対して行ったスライダ変位特性に関する解析結果を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションの上面図である。
【図15】図15は、前記実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションの下面図である。
【図16】図16は、図14におけるXVI-XVI線に沿った断面図である。
【図17】図17は、図14におけるXVII-XVII線に沿った断面図である。
【図18】図18は、前記実施の形態2に係る磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の下面図である。
【図19】図19は、図18に示す前記支持部の変形例の下面図である。
【図20】図20は、前記実施の形態2の変形例に係る磁気ヘッドサスペンションの断面図であって、図14におけるXVI-XVI線に沿った断面に対応する断面図である。
【図21】図21は、図20に示す前記磁気ヘッドサスペンションの断面図であって、図14におけるXVII-XVII線に沿った断面に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施の形態1
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2に、それぞれ、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Aの上面図(ディスク面とは反対側から見た平面図)及び下面図(ディスク面側から見た底面図)を示す。なお、図2における○印は溶接点を示している。
又、図3及び図4に、それぞれ、図1におけるIII-III線及びIV-IV線に沿った断面図を示す。
【0031】
図1及び図2に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1Aは、磁気ヘッドスライダ50をディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部20と、前記荷重を磁気ヘッドスライダ50に伝達するためのロードビーム部30と、前記荷重曲げ部20を介して前記ロードビーム部30を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りに前記ディスク面と平行なシーク方向へ揺動される支持部10Aと、前記磁気ヘッドスライダ50を支持した状態で前記ロードビーム部30及び前記支持部10Aに支持されるフレクシャ部40と、前記磁気ヘッドスライダ50をシーク方向に微動させる為にサスペンション長手方向中心線CLを基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なるように前記支持部10Aに装着された左右一対の第1及び第2圧電素子60(1),60(2)とを備えている。
【0032】
前記支持部10は、ボイスコイルモータ等の前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結された状態で、前記荷重曲げ部20を介して前記ロードビーム部30を支持する部材であり、比較的高剛性を有するものとされる。
【0033】
本実施の形態においては、前記支持部10Aは、前記メインアクチュエータに連結されるキャリッジアーム(図示せず)の先端にかしめ加工によって接合されるボス部15を備えたベースプレートとされている。
前記支持部10Aは、例えば、厚さ0.1mm〜0.8mmのステンレス板によって好適に形成される。
【0034】
図5に、前記支持部10Aの下面図を示す。なお、図5においては、前記一対の圧電素子60を二点鎖線で示し、薄肉部分にハッチングを付している。
【0035】
図1〜図5に示すように、前記支持部10Aは、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域11と、前記基端領域からサスペンション長手方向先端側に間隙19を介して離間され且つ前記荷重曲げ部が連結される先端領域と12と、前記間隙19を前記第1及び第2圧電素子60(1),60(2)にそれぞれ対応したサスペンション幅方向一方側及び他方側の第1及び第2間隙19(1),19(2)に分割するようにサスペンション幅方向中央において前記基端領域11及び前記先端領域12の間を連結する中央梁16とを有している。
【0036】
本実施の形態においては、前記支持部10Aは、図1,図2及び図5に示すように、さらに、前記基端領域11及び前記先端領域12のサスペンション幅方向一端側同士及び他端側同士を連結する左右一対の連結梁14を有している。
【0037】
前記ロードビーム部30は、前述の通り、前記荷重曲げ部20によって発生される荷重を前記磁気ヘッドスライダ50に伝達する為の部材であり、従って、所定の剛性が要求される。
本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記ロードビーム部30は、平板状の本体部31と、前記本体部31の幅方向両端部からディスク面とは反対側に曲げ形成されたフランジ部32とを有しており、前記フランジ部32によって剛性を確保している。
前記ロードビーム部30は、例えば、厚さ0.02mm〜0.1mmのステンレス板によって好適に形成される。
【0038】
詳しくは、前記ロードビーム部30は、先端部に、所謂ディンプルと呼ばれる突起33を有している。
前記突起33は、ディスク面に近接する方向に、例えば、0.05mm〜0.1mm程度突出されている。この突起33は、前記フレクシャ部40におけるヘッド搭載領域43の裏面(ディスク面とは反対側の面)に接触しており、前記荷重はこの突起33を介して前記フレクシャ部40のヘッド搭載領域43に伝達される。
【0039】
本実施の形態においては、前記ロードビーム部30は、さらに、前記本体部31の先端からサスペンション長手方向先端側へ延びるリフトタブ34を一体的に有している。前記リフトタブ34は、前記磁気ヘッドスライダ50がディスク面の径方向外方へ位置するように前記磁気ヘッドサスペンション1Aが前記メインアクチュエータによって揺動された際に、磁気ディスク装置に備えられたランプと係合して前記磁気ヘッドスライダ50をz方向(前記ディスク面と直交する方向)に沿って前記ディスク面から離間させる為の部材である。
【0040】
前記荷重曲げ部20は、基端部が前記支持部10Aに連結され且つ先端部が前記ロードビーム部30に連結されており、自己の弾性変形に基づいて前記磁気ヘッドスライダ50を前記ディスク面へ向けて押し付ける押し付け荷重を発生する。
【0041】
図1及び図2に示すように、本実施の形態においては、前記荷重曲げ部20は、板面が前記ディスク面と対向するように配置された左右一対の板バネ21を有している。
好ましくは、前記一対の板バネ21は、前記磁気ヘッドサスペンション1Aが前記磁気ディスク装置へ実装される前の段階において前記磁気ヘッドスライダ50が前記ディスク面に近づく方向に予め折り曲げられ、且つ、前記磁気ヘッドサスペンション1Aの前記磁気ディスク装置への実装時には曲げ戻されることで前記押し付け荷重を発生するように、構成される。
【0042】
前記荷重曲げ部20は、例えば、厚さ0.02mm〜0.1mmのステンレス板によって形成される。
なお、本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、前記荷重曲げ部20は前記ロードビーム部30と一体形成されている。
【0043】
即ち、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Aは、前記ロードビーム部30及び前記荷重曲げ部20を一体形成するロードビーム部/荷重曲げ部形成部材を有しており、前記ロードビーム部/荷重曲げ部形成部材における前記ディスク面とは反対側の上面が前記支持部10Aの前記先端領域12における前記ディスク面と対向する下面に当接された状態で、前記ロードビーム部形成部材が前記支持部10Aに溶接されている。
【0044】
前記フレクシャ部40は、前記磁気ヘッド50を支持した状態で前記ロードビーム部30及び前記支持部10Aに接合される。
詳しくは、前記フレクシャ部40は、図2に示すように、前記ロードビーム部30及び前記支持部10Aにおける前記ディスク面との対向面に溶接等によって接合される本体領域41と、前記本体領域41から先端側へ延びる一対の支持片42と、前記支持片42によって支持された前記ヘッド搭載領域43とを有している。
【0045】
前記ヘッド搭載領域43は、ディスク面と対向する対向面において前記磁気ヘッド50を支持している。
前述の通り、前記ヘッド搭載領域43の裏面には前記突起33が接触しており、従って、前記ヘッド搭載領域43は前記突起33を支点としてロール方向及びピッチ方向に柔軟に揺動し得るようになっている。
【0046】
前記フレクシャ部40は、前記ヘッド搭載領域43がロール方向及びピッチ方向に揺動し得るように、前記ロードビーム部30よりも低剛性とされる。
前記フレクシャ部40は、例えば、厚さ0.01mm〜0.025mm程度のステンレス板によって好適に形成される。
【0047】
なお、本実施の形態においては、前記フレクシャ部40には、前記磁気ヘッド50に書き込み信号及び/又は読み取り信号を伝達する為の信号配線がプリント回路として一体的に備えられている。
即ち、前記フレクシャ部40は、図2に示すように、前記本体領域41,前記一対の支持片42及び前記ヘッド搭載領域43を一体的に有するフレクシャ金属基板400と、前記フレクシャ金属基板400に積層されたフレクシャ配線体410とを有している。
【0048】
前記フレクシャ配線体410は、図2及び図4に示すように、前記フレクシャ金属基板400におけるディスク面との対向面に積層された絶縁層411と、前記絶縁層411におけるディスク面との対向面に積層された導体層412と、前記導体層412を囲繞するカバー層413とを有し得る。
前記導体層412は、基端部が外部に電気的に接続可能とされ且つ先端部が前記磁気ヘッドスライダ50に電気的に接続される信号配線412aを含んでいる。
【0049】
本実施の形態においては、前記フレクシャ金属基板400の前記本体領域41は、図2に示すように、前記ロードビーム部30の前記本体領域31,前記支持部10Aの前記先端領域12及び前記基端領域11にそれぞれ溶接によって接合されている。
【0050】
前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々は、図3及び図4に示すように、PZT(チタン酸ジリコン酸鉛)からなる圧電体61と、前記圧電体61の前記ディスク面と対向する側の下面に配設された下面側電極層62と、前記圧電体61の前記ディスク面とは反対側の上面に配設された上面側電極層63とを有している。
前記圧電体61は、例えば厚さ0.05mm〜0.3mmとされ、前記電極層62,63は、例えば厚さ0.05μm〜数μmのNiやAuによって形成される。
【0051】
前記一対の圧電素子60(1),60(2)は前記支持部に設けられた下記薄肉部位に装着されている。
詳しくは、図5に示すように、前記基端領域11には、前記中央梁16よりサスペンション幅方向一方側及び他方側にそれぞれ第1基端側薄肉部位110(1)及び第2基端側薄肉部位110(2)が形成されている。
【0052】
前記第1基端側薄肉部位110(1)は、図3及び図5に示すように、前記ディスク面と対向する下面又は前記ディスク面とは反対側の上面の何れか一方側の第1面から他方側の第2面へ向けて延びる第1基端側垂直壁面110a(1)及び前記第1基端側垂直壁面110a(1)の先端から前記第1間隙19(1)へ延びる第1基端側水平壁面110b(1)によって画されている。
【0053】
前記第2基端側薄肉部位110(2)は、図5に示すように、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2基端側垂直壁面110a(2)及び前記第2基端側垂直壁面110a(2)の先端から前記第2間隙19(2)へ延びる第2基端側水平壁面110b(2)によって画されている。
【0054】
又、前記先端領域12には、図5に示すように、前記中央梁16よりサスペンション幅方向一方側及び他方側にそれぞれ第1先端側薄肉部位120(1)及び第2先端側薄肉部位120(2)が形成されている。
【0055】
前記第1先端側薄肉部位120(1)は、図3及び図5に示すように、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第1先端側垂直壁面120a(1)及び前記第1先端側垂直壁面120a(1)の先端から前記第1間隙19(1)へ延びる第1先端側水平壁面120b(1)によって画されている。
【0056】
同様に、前記第2先端側薄肉部位120(2)は、図5に示すように、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2先端側垂直壁面120a(2)及び前記第2先端側垂直壁面120a(2)の先端から前記第2間隙19(2)へ延びる第2先端側水平壁面120b(2)によって画されている。
【0057】
さらに、前記中央梁16には、図5に示すように、前記第1基端側薄肉部位110(1)及び前記第1先端側薄肉部位120(1)の間をつなげるように前記第1間隙19(1)に接するエッジに設けられた第1内方側薄肉部位160(1)と、前記第2基端側薄肉部位110(2)及び前記第2先端側薄肉部位120(2)の間をつなげるように前記第2間隙19(2)に接するエッジに設けられた第2内方側薄肉部位160(2)とが形成されている。
【0058】
前記第1内方側薄肉部位160(1)は、前記第1基端側水平壁面110b(1)及び前記第1先端側水壁壁面120b(1)の双方の間に延びる第1内方側水平壁面160b(1)を有している。
本実施の形態においては、前記第1内方側薄肉部位160(1)は、図4及び図5に示すように、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第1内方側垂直壁面160a(1)及び前記第1内方側垂直壁面160a(1)の先端から前記第1間隙19(1)へ延びる前記第1内方側水平壁面160b(1)によって画されている。
【0059】
前記第2内方側薄肉部位160(2)は、前記第2基端側水平壁面110b(2)及び前記第2先端側水壁壁面120b(2)の双方の間に延びる第1内方側水平壁面160b(2)を有している。
本実施の形態においては、前記第2内方側薄肉部位160(2)は、図5に示すように、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2内方側垂直壁面160a(2)及び前記第2内方側垂直壁面160a(2)の先端から前記第2間隙19(2)へ延びる前記第2内方側水平壁面160b(2)によって画されている。
【0060】
前記第1基端側水平壁面110b(1),前記第1内方側水平壁面160b(1)及び前記第1先端側水平壁面120b(1)は前記第1圧電素子60(1)が載置される第1圧電素子用載置面を形成するように連続的に延びている。
同様に、前記第2基端側水平壁面110b(2),前記第2内方側水平壁面160b(2)及び前記第2先端側水平壁面120b(2)は前記第2圧電素子60(2)が載置される第2圧電素子用載置面を形成するように連続的に延びている。
【0061】
なお、本実施の形態においては、前記支持部10Aにおける前記ディスク面に対向する前記下面が前記第1面として作用しており、前記各水平壁面が前記ディスク面と対向している。
斯かる構成によれば、前記薄肉部位及び前記ボス部15をプレス加工によって形成する際の製造作業効率を向上させることができる。
【0062】
即ち、前記ボス部15は、前記支持部10Aの前記基端領域11における所定部位を前記下面から前記上面へ向けてプレス加工することによって形成される。
従って、前記各水平壁面が前記ディスク面に対向するように前記各薄肉部位をプレス加工によって形成することにより、前記各薄肉部位及び前記ボス部を同一方向へのプレス加工によって形成することができ、これにより、前記支持部10Aを形成する為の金型の構造簡略化及び前記支持部10Aの製造作業効率の向上を図ることができる。
【0063】
前記薄肉部位が形成された前記支持部10Aに対して、前記一対の第1及び第2圧電素子60(1),60(2)は以下ように装着されている。
【0064】
即ち、前記第1圧電素子60(1)は、図2〜図5に示すように、サスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、前記支持部10Aと対向する側の電極層(本実施の形態においては前記上面側電極層63)の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第1基端側接着剤81(1),電極層用第1先端側接着剤82(1)及び電極層用第1内方側接着剤83(1)によって前記第1基端側水平壁面110b(1)、前記第1先端側水平壁面120b(1)及び前記第1内方側水平壁面160b(1)にそれぞれ固着され、且つ、基端側端面、先端側端面及びサスペンション幅方向内方側端面が第1基端側絶縁性接着剤85(1),第1先端側絶縁性接着剤86(1)及び第1内方側絶縁性接着剤87(1)によって前記第1基端側垂直壁面,110a(1),前記第1先端側垂直壁面120a(1)及び前記第1内方側垂直壁面160a(1)にそれぞれ固着されている。
【0065】
同様に、前記第2圧電素子60(2)は、サスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、前記支持部10Aと対向する側の電極層の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第2基端側接着剤,電極層用第2先端側接着剤及び電極層用第2内方側接着剤によって前記第2基端側水平壁面110b(2),前記第2先端側水平壁面120b(2)及び前記第2内方側水平壁面160b(2)にそれぞれ固着され、且つ、基端側端面,先端側端面及びサスペンション幅方向内方側端面が第2基端側絶縁性接着剤,第2先端側絶縁性接着剤及び第2内方側絶縁性接着剤によって前記第2基端側垂直壁面110a(2),前記第2先端側垂直壁面120a(2)及び前記第2内方側垂直壁面160a(2)にそれぞれ固着されている。
【0066】
斯かる構成の磁気ヘッドサスペンション1Aにおいては以下の効果を得ることができる。
即ち、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々は、基端側端面の少なくとも一部が対応する前記基端側垂直壁面110a(1),110a(2)に対向した状態で対応する前記基端側絶縁性接着剤85(1)によって固着され、且つ、先端側端面の少なくとも一部が対応する前記先端側垂直壁面120a(1),120a(2)に対向した状態で対応する前記先端側絶縁性接着剤86(1)によって固着されている。
【0067】
従って、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の伸縮動作を効率的に前記先端領域12に伝達させることができ、前記一対の圧電素子60(1),60(2)による前記磁気ヘッドスライダ50の微動特性(即ち、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の伸縮動作による前記先端領域12の前記基端領域11に対するシーク方向への変位し易さ)を向上させることができる。
【0068】
さらに、前記磁気ヘッドサスペンション1Aは、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の伸縮動作性の悪化を有効に防止しつつ、前記一対の圧電素子60(1)t60(2)の支持安定化を図ることができる。
【0069】
即ち、前記磁気ヘッドスライダ50を前記一対の圧電素子60(1),60(2)によってシーク方向に微動させる際には、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の一方(例えばサスペンション幅方向一方側に位置する第1圧電素子60(1))が伸長され且つ他方(例えばサスペンション幅方向他方側に位置する第2圧電素子60(2))が圧縮される。
【0070】
この際に、前記先端領域12は、サスペンション幅方向中央部分がサスペンション長手方向に関し実質的に固定された状態でサスペンション幅方向一方側の端部がサスペンション長手方向先端側へ最も移動し且つサスペンション幅方向他方側の端部がサスペンション長手方向基端側へ最も移動するように、揺動する。
【0071】
従って、このような前記先端領域12の揺動動作に際して、前記第1圧電素子60(1)は、サスペンション幅方向外方側エッジが最も大きく伸長し且つサスペンション幅方向内方側エッジが最も小さく伸長する。
一方、前記第2圧電素子60(2)は、サスペンション幅方向外方側エッジが最も大きく圧縮し且つサスペンション幅方向内方側エッジが最も小さく圧縮する。
【0072】
この点に関し、本実施の形態においては、前述の通り、前記一対の第1及び第2圧電素子60(1),60(2)は何れも、サスペンション幅方向外方側エッジの少なくとも一部がフリーな状態で、先端側及び基端側が前記先端領域12及び前記基端領域11にそれぞれ固着されることに加えて伸縮動作量の最も小さいサスペンション幅方向内方側が前記中央梁16に固着されている。
【0073】
従って、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の伸縮動作性、特に、最も大きく伸縮動作するサスペンション幅方向外方側での伸縮動作性が悪化することを有効に防止しつつ、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の支持安定化を図ることができる。
【0074】
前記一対の圧電素子60(1),60(2)の支持安定化は該圧電素子60(1),60(2)及び前記支持部10Aを含む磁気ヘッドサスペンション1Aの支持領域の曲げ剛性や捩れ剛性の向上につながり、これにより、前記磁気ヘッドサスペンション1Aの振動モードの共振周波数の上昇及び耐衝撃性の向上が可能となる。
【0075】
好ましくは、前記電極層用第1基端側接着剤81(1),前記電極層用第1先端側接着剤82(1)及び前記電極層用第1内方側接着剤83(1)の少なくとも一つが導線性接着剤を含み、前記第1圧電素子60(1)における前記支持部10Aと対向する側の電極層(本実施の形態においては前記上面側電極層63)が前記導電性接着剤を介して前記支持部10Aに電気的に接続されることで接地電位とされる。
【0076】
同様に、前記電極層用第2基端側接着剤,前記電極層用第2先端側接着剤及び前記電極層用第2内方側接着剤の少なくとも一つが導線性接着剤を含み、前記第2圧電素子60(2)における前記支持部10Aと対向する側の電極層(本実施の形態においては前記上面側電極層63)が前記導電性接着剤を介して前記支持部10Aに電気的に接続される。
【0077】
このように、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々における前記支持部10Aと対向する側の電極層(本実施の形態においては前記上面側電極層63)を前記支持部10Aに固着する為の前記接着剤に導電性接着剤を含めることにより、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々における一方側の電極層を接地電位とする為の構造簡略化を図ることができ、製造工程の簡略化及び材料コストの低廉化によるコストダウンを図ることができる。
【0078】
さらに、本実施の形態に係る前記磁気ヘッドサスペンション1Aは、前記フレクシャ配線体410を利用して前記下面側電極層62に所定電圧を供給するように構成されている。
【0079】
詳しくは、図2及び図4に示すように、前記フレクシャ配線体410の前記導体層412は、前記信号配線412aに加えて、基端部が外部に電気的に接続可能とされた電圧供給配線412bを有している。
【0080】
一方、前記フレクシャ配線体410の前記カバー層413には、図4に示すように、サスペンション長手方向に関し前記先端領域12及び前記基端領域11の間において前記電圧供給配線412bを露出させる開口413aが形成されている。
【0081】
そして、図4に示すように、前記開口413aを介して露出された前記電圧供給配線412bと前記下面側電極層62とが電圧供給用導電性接着剤80aを介して電気的に接続されている。
斯かる構成によれば、前記一対の圧電素子60(1),60(2)への電圧供給構造の簡略化を図ることができる。
【0082】
好ましくは、前記電圧供給用導電性接着剤80aは絶縁性接着剤80bによって囲繞される。
斯かる構成によれば、前記電圧供給用導電性接着剤80aに含まれるAgフィラー粒子の脱落を有効に防止できる。Agフィラー粒子が前記ディスク面上に脱落すると、前記磁気ヘッドスライダ50のクラッシュの原因となる。
【0083】
前記一対の圧電素子60(1),60(2)の前記支持部10Aへの実装は、例えば、下記のようにして行われる。
【0084】
まず、前記一対の圧電素子60(1),60(2)を除く他の構成部材、即ち、前記支持部10A,前記荷重曲げ部20,前記ロードビーム部30及び前記フレクシャ部40を固着してプリアッセンブリを形成する。
【0085】
前記プリアッセンブリを前記薄肉部位の水平壁面が上方を向くように配置させた状態で、前記電極層用第1基端側接着剤81(1),前記電極層用第1先端側接着剤82(1)及び前記電極層用第1内方側接着剤83(1)を、それぞれ、前記第1基端側水平壁面110b(1),前記第1先端側水平壁面120b(1)及び前記第1内方側水平壁面160b(1)に塗布して、その上に前記第1圧電素子60(1)を載置させ、且つ、前記電極層用第2基端側接着剤,前記電極層用第2先端側接着剤及び前記電極層用第2内方側接着剤を、それぞれ、前記第2基端側水平壁面,前記第2先端側水平壁面及び前記第2内方側水平壁面に塗布して、その上に前記第2圧電素子60(2)を載置させ、前記各接着剤の硬化(キュアー)を行う。なお、硬化は、テンパー炉等による熱硬化やUV(紫外線)照射によって行われる。
【0086】
次いで、前記第1圧電素子60(1)の基端側端面,先端側端面及びサスペンション幅方向内方側端面と前記第1基端側垂直壁面110a(1),前記第1先端側垂直壁面120a(1)及び前記第1内方側垂直壁面160a(1)との間に、それぞれ、前記第1基端側絶縁性接着剤85(1),前記第1先端側絶縁性接着剤86(1)及び前記第1内方側絶縁性接着剤87(1)を充填し、且つ、前記第2圧電素子60(2)の基端側端面,先端側端面及びサスペンション幅方向内方側端面と前記第2基端側垂直壁面110a(2),前記第2先端側垂直壁面120a(2)及び前記第2内方側垂直壁面160a(2)との間に、それぞれ、前記第2基端側絶縁性接着剤,前記第2先端側絶縁性接着剤及び前記第2内方側絶縁性接着剤を充填し、その状態で前記各接着剤の硬化(キュアー)を行う。
【0087】
その後に、前記第1及び第2圧電素子60(1),60(2)の前記下面側電極層62と前記カバー層413に形成された前記開口413aを介して露出された前記電圧供給配線412bとを接続するように前記電圧供給用導電性接着剤80aを塗布して硬化(キュアー)を行う。
そして、前記電圧供給用導電性接着剤80aを囲繞するように前記絶縁性接着剤80bを塗布して硬化(キュアー)を行う。
【0088】
ここで、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Aに対して有限要素法を用いて行った第1解析及び第2解析について説明する。
【0089】
前記第1解析においては、図1及び図2に示す形状を有し且つ下記寸法を有する磁気ヘッドサスペンションを用いた。
・全体構成
ボス部の中心からディンプルの中心までの距離:11.0mm
・支持部
材質:ステンレス
薄肉部位以外の領域の板厚:0.15mm
薄肉部位の板厚:0.07mm
・圧電素子
圧電体の材質:PZT(チタン酸ジリコン酸鉛)
長さ:1.7mm
板厚:0.06mm
・ロードビーム部
材質:ステンレス
板厚:0.03mm
フランジ部のサスペンション長手方向中心線に対する傾斜角:11deg
フランジ部の高さ:0.25mm
フランジ部の本体部に対する傾斜角:70deg
・荷重曲げ部
材質:ステンレス
板厚:0.03mm
幅:0.65mm
・フレクシャ部
フレクシャ金属基板の材質:ステンレス
フレクシャ金属基板の板厚:0.02mm
【0090】
図6(a)に、前記第1解析において用いた磁気ヘッドサスペンションにおける支持部10A(1)の下面図を示す。又、図6(b)に、図6(a)におけるVI-VI線に沿った断面図を示す。なお、図6(a)においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)を二点鎖線で示し、薄肉部分にハッチングを付している。
【0091】
図6(a)に示すように、前記支持部10A(1)においては、前記中央梁16の全体が薄肉部位とされている。
【0092】
前記第1解析においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々と前記中央梁16との重合部分のサスペンション幅方向長さが変化するように、一対の圧電素子60(1),60(2)の各々の幅が異ならされた複数の磁気ヘッドサスペンション(以下、実施例1-(1)〜1-(5)という)を用いた。
【0093】
具体的には、実施例1-(1)〜1-(5)において、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々は、それぞれ、幅が1.3mm、1.4mm、1.5mm,1.6mm及び1.7mmとされており、サスペンション幅方向外方側エッジが所定位置(前記ボス部15の中心からのサスペンション幅方向長さが1.8mmの位置)に固定された状態で前記支持部10A(1)に装着されている。
【0094】
従って、実施例1-(1)〜1-(5)においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々と前記中央梁16との重合部分のサスペンション幅方向長さ(図6(a)における長さa)は、それぞれ、0.1mm,0.2mm,0.3mm,0.4mm及び0.5mmとなる。
【0095】
又、前記一対の圧電素子60(1),60(2)と前記中央梁16とが固着されていない点を除き前記実施例と同一構成の磁気ヘッドサスペンションを比較例9-(1)〜9-(5)として用意した。
図6(c)に、前記比較例に係る磁気ヘッドサスペンションにおける支持部の断面図であって、図6(b)に対応した断面図を示す。
【0096】
さらに、前記長さaを−0.1mmとした磁気ヘッドサスペンションを比較例9-(0)として用意した。なお、前記長さa=−0.1mmとは、前記圧電素子60(1),60(2)の幅が1.1mmとされており、従って、前記中央梁16と圧電素子60(1),60(2)のサスペンション幅方向内方側エッジとの間に0.1mmの間隙が存することを意味する。
【0097】
前記実施例1-(1)〜1-(5)及び前記比較例9-(0)〜9-(5)のスライダ変位特性に関する解析結果を図7に示す。
なお、スライダ変位特性とは、前記一対の圧電素子60(1),60(2)に電圧1Vを印可した際における前記磁気ヘッドスライダ50の先端のシーク方向変位量を意味する。
【0098】
前記実施例1-(1)〜1-(5)及び前記比較例9-(0)〜9-(5)に対して前記ボス部15を拘束し且つ前記磁気ヘッドスライダ50をディスク面に直交するz方向には移動しないように拘束した状態でそれらの拘束領域に前記ディスク面に向かう方向の衝撃波(正弦半波)であって、パルス幅1.0msecでピーク値1000Gの衝撃波(正弦半波)を加えた際に、前記一対の圧電素子60(1),60(2)に発生する応力のうち最大の応力を求めた。その結果を図8に示す。
【0099】
さらに、前記実施例1-(1)〜1-(5)及び前記比較例9-(0)〜9-(5)の曲げ一次モード、捩れ一次モード、捩れ二次モード及びSWAYモードの共振周波数を求めた。
【0100】
曲げ一次モードとは、磁気ヘッドサスペンションのz方向(ディスク面と直交する方向)の曲げ動作に関する振動モードであり、支持体の曲げ動作とロードビーム部の曲げ動作とが同位相で振動する振動モードである。
曲げ一次モードの共振周波数に関する解析結果を図9に示す。
【0101】
捩れ一次モードとは、荷重曲げ部の位置及びディンプルの位置がディスク面に直交するz方向の変位ゼロ(即ち、節)とされた状態で、サスペンション長手方向に関し2つの節の略中央部分がz方向変位最大(即ち、腹)となるように主としてロードビーム部のみがサスペンション長手方向中心線CL回りに捩れる振動モードである。
【0102】
捩れ二次モードとは、支持部のうちディスク面に直交するz方向に関し固定される位置(本実施の形態におけるように前記支持部10がベースプレートの場合には、前記アクチュエータに連結された前記キャリッジアームにかしめを介して固定される前記ボス部15の位置であり、以下、支持部固定位置という)、ディンプルの位置及び前記支持部固定位置と前記ディンプルの位置との間のサスペンション長手方向略中央に位置するロードビーム部の中途位置の3箇所が節とされた状態で、サスペンション長手方向に関し前記支持部固定位置及び前記ロードビーム部の中途位置の間の略中央部分、並びに、サスペンション長手方向に関し前記ロードビーム部の中途位置及び前記ディンプルの位置の間の略中央部分の2箇所が腹となるように前記支持部の前記支持部固定位置より先端側に位置する部分,前記荷重曲げ部及び前記ロードビーム部がサスペンション長手方向中心線CL回りに捩れる振動モードである。
捩れ一次モード及び捩れ二次モードの共振周波数に関する解析結果を図10(a)び(b)にそれぞれ示す。
【0103】
SWAYモードとは、シーク方向の振動を主とした磁気ヘッドサスペンションの主共振モードである。
SWAYモードの共振周波数に関する解析結果を図11に示す。
【0104】
図7から、実施例1-(1)〜1-(5)は、前記一対の圧電素子60(1),60(2)のサスペンション幅方向内方側エッジが前記中央梁16に固着されているにも拘わらず、前記一対の圧電素子60(1),60(2)のサスペンション幅方向内方側エッジが前記中央梁16に固着されていない比較例9-(0)〜9-(5)と略同一のスライダ変位特性を有していることが理解される。
【0105】
これは下記理由によるものと考えられる。
即ち、前記一対の圧電素子60(1),60(2)に電圧を印可して前記先端領域12を前記基端領域11に対してシーク方向へ変位させる際において前記一対の圧電素子60(1),60(2)はサスペンション幅方向内方側エッジの伸縮動作量が最も小さくなる。
従って、前記一対の圧電素子60(1),60(2)のサスペンション幅方向内方側エッジを前記中央梁16に固着させたとしても、スライダ変位特性は実質的に悪化することは無い。
【0106】
又、図8から、実施例は比較例に比して衝撃力印可時に前記一対の圧電素子60(1),60(2)に付加される応力を低減させ得ることが理解される。
【0107】
これは下記理由によるものと考えられる。
即ち、比較例においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)は先端側及び基端側だけが前記先端領域12及び前記基端領域11に支持されているのに対し、実施例においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)は先端側及び基端側が前記先端領域12及び前記基端領域11に支持されていることに加えてサスペンション幅方向内方側が前記中央梁16に支持されている。
【0108】
つまり、実施例は、比較例に比して、前記一対の圧電素子60(1),60(2)をより安定的に支持することができ、これにより、衝撃力印可時に前記一対の圧電素子60(1),60(2)に付加される力を有効に低減させることができる。
【0109】
さらに、図9,図10(a),図10(b)及び図11から、実施例は、比較例に比して、曲げ一次モード,捩れ二次モード及びSWAYモードの共振周波数を上昇させ得ることが理解される。
【0110】
これは下記理由によるものと考えられる。
即ち、前記一対の圧電素子60(1),60(2)による前記磁気ヘッドスライダ50の微動を可能とする為には、前記支持部10Aのうち前記先端領域12と前記基端領域11との間に位置する領域の剛性を弱める必要がある。
【0111】
本実施の形態においては、前記先端領域12を前記基端領域11から前記間隙19を存しつつサスペンション長手方向先端側に離間させ、両者を前記中央梁16及び任意的に付加される前記一対の連結梁14によって連結させ、これにより、前記先端領域12と前記基端領域11との間に位置する領域の剛性を弱めている。
【0112】
ここで、前記比較例においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)と前記中央梁16とは非連結とされているのに対し、前記実施例においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)のサスペンション幅方向内方側エッジが前記中央梁16に固着されている。
【0113】
つまり、前記実施例においては、前記中央梁16と前記一対の圧電素子60(1),60(2)とが相互に補完しあって補強しており、これにより、前記比較例に比して、前記先端領域12と前記基端領域11との間に位置する領域の剛性が強められている。
斯かる理由により、前記実施例は、前記比較例に比して、曲げ一次モード,捩れ二次モード及びSWAYモードの共振周波数を上昇させ得ると解される。
【0114】
次に、前記第2解析について説明する。
前記第2解析においては、図1及び図2に示す形状を有し且つ下記寸法を有する磁気ヘッドサスペンションを用いた。
・全体構成
ボス部の中心からディンプルの中心までの距離:11.0mm
・支持部
材質:ステンレス
薄肉部位以外の領域の板厚:0.15mm
薄肉部位の板厚:0.07mm
・圧電素子
圧電体の材質:PZT(チタン酸ジリコン酸鉛)
長さ:1.7mm
幅:1.7mm
板厚:0.06mm
・ロードビーム部
材質:ステンレス
板厚:0.03mm
フランジ部のサスペンション長手方向中心線に対する傾斜角:11deg
フランジ部の高さ:0.25mm
フランジ部の本体部に対する傾斜角:70deg
・荷重曲げ部
材質:ステンレス
板厚:0.03mm
幅:0.65mm
・フレクシャ部
フレクシャ金属基板の材質:ステンレス
フレクシャ金属基板の板厚:0.02mm
【0115】
図12(a)に、前記第2解析において用いた磁気ヘッドサスペンションにおける支持部10A(2)の下面図を示す。又、図12(b)に、図12(a)におけるXII-XII線に沿った断面図を示す。
【0116】
前記第2解析においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々と前記中央梁16との重合部分のサスペンション幅方向長さbが変化するように、前記中央梁16の幅が異ならされた複数の磁気ヘッドサスペンション(以下、実施例2-(1)〜2-(9)という)を用いた。
【0117】
具体的には、前記一対の圧電素子60(1),60(2)は互いの間の間隔(サスペンション幅方向内方側エッジ同士の離間幅)が0.2mmとなるように装着されており、前記実施例2-(1)〜2-(9)は、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々と前記中央梁16との重合部分のサスペンション幅方向長さbが0mm,0.1mm,0.2mm,0.3mm,0.5mm,0.7mm,1.0mm,1.3mm及び1.7mmとなるように前記中央梁16の幅がそれぞれ0.2mm,0.4mm,0.6mm,0.8mm,1.2mm,1.6mm,2.2mm,2.8mm及び3.6mmとされている。
【0118】
図13に、前記実施例2-(1)〜2-(9)に対して行ったスライダ変位特性に関する解析結果を示す。
なお、図13の横軸は、前記圧電素子60(1),60(2)の幅Wに対する前記重合部分のサスペンション幅方向長さbの割合、即ち、b/W×100(%)としている。
【0119】
図13から、b/Wが0.18以下の範囲となるように前記重合部分のサスペンション幅方向長さが設定されている構成は、前記圧電素子60(1),60(2)のサスペンション幅方向内方側エッジと前記中央梁16とが固着されていない構成と実質的に同一のスライダ変位特性を有していることが理解される。
【0120】
実施の形態2
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0121】
図14及び図15に、それぞれ、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Bの上面図及び下面図を示す。
又、図16及び図17に、それぞれ、図14におけるXVI-XVI線及びXVII-XVII線に沿った断面図を示す。
さらに、図18に、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Bにおける支持部10Bの下面図を示す。なお、図18においては、前記一対の圧電素子60を二点鎖線で示し、薄肉部分にハッチングを付している。
又、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0122】
本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1Bは、前記支持部10Aが支持部10Bに変更されている点において前記実施の形態1に係る磁気ヘッドサスペンション1Aと相違している。
【0123】
詳しくは、前記実施の形態1においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々は、実質的にサスペンション幅方向外方側エッジの全体がフリーな状態で、先端側,基端側及びサスペンション幅方向内方側が、それぞれ、前記先端領域12,前記基端領域11及び前記中央梁16に固着されている。
【0124】
これに対し、本実施の形態においては、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の各々は、先端側,基端側及びサスペンション幅方向内方側が、それぞれ、前記先端領域12,前記基端領域11及び前記中央梁16に固着されていることに加えて、サスペンション幅方向外方側エッジの一部が前記支持部10Bの固着されている。
【0125】
具体的には、前記支持部10Bは、図18に示すように、前記基端領域11に形成された前記第1及び第2基端側薄肉部位110(1),110(2)、前記先端領域12に形成された前記第1及び第2先端側薄肉部位120(1),120(2)、並びに、前記中央梁16に形成された前記第1及び第2内方側薄肉部位160(1),160(2)に加えて、第1外方側/基端側薄肉部位170(1)、第1外方側/先端側薄肉部位175(1)、第2外方側/基端側薄肉部位170(2)及び第2外方側/先端側薄肉部位175(2)を有している。
【0126】
前記第1外方側/基端側薄肉部位170(1)は、前記第1圧電素子60(1)のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1基端側水平壁面110b(1)のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面を有している。
【0127】
前記第1外方側/先端側薄肉部位175(1)は、前記第1圧電素子60(1)のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1先端側水平壁面120b(1)のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面を有しており、且つ、前記第1外方側/基端側薄肉部位170(1)との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置されている。
【0128】
前記第2外方側/基端側薄肉部位170(2)は、前記第2圧電素子60(2)のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2基端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面を有している。
【0129】
前記第2外方側/先端側薄肉部位175(2)は、前記第2圧電素子60(2)のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2先端側水平壁面120b(2)のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面を有し、且つ、前記第2外方側/基端側薄肉部位170(2)との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置されている。
【0130】
そして、前記第1圧電素子60(1)は、基端側、先端側及びサスペンション幅方向内方側が前記基端領域11,前記先端領域12及び前記中央梁16に固着されることに加えて、前記支持部10Bと対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側が前記第1外方側/基端側薄肉部位170(1)及び前記第1外方側/先端側薄肉部位175(1)の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第1外方側接着剤によって固着されている。
【0131】
同様に、前記第2圧電素子60(2)は、基端側、先端側及びサスペンション幅方向内方側が前記基端領域11,前記先端領域12及び前記中央梁16に固着されることに加えて、前記支持部10Bと対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側が前記第2外方側/基端側薄肉部位170(2)及び前記第2外方側/先端側薄肉部位175(2)の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第2外方側接着剤によって固着されている。
【0132】
斯かる構成を備えた前記磁気ヘッドサスペンション1Bによれば、前記一対の圧電素子60(1),60(2)のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が前記支持部10Bに固着されている為、前記実施の形態1に比して、スライダ変位特性が若干悪化するものの、曲げ剛性及び捩り剛性を向上させることができ、これにより、各振動モードの共振周波数をさらに上昇させると共に耐衝撃性を向上させることができる。
【0133】
なお、本実施の形態においては、前記支持部10Bは、前記実施の形態1における前記支持部10Aと同様に、前記一対の連結梁14を有している。
斯かる構成においては、好ましくは、図18に示すように、前記一対の連結梁14の一方を全体的に薄肉化して、前記第1基端側薄肉部位110(1),前記第1内方側薄肉部位160(1),前記第1先端側薄肉部位120(1),第1外方側/基端側薄肉部位170(1)及び第1外方側/先端側薄肉部位175(1)と共に単一の薄肉領域を形成することができる。
【0134】
同様に、好ましくは、図18に示すように、前記一対の連結梁14の他方を全体的に薄肉化して、前記第2基端側薄肉部位110(2),前記第2内方側薄肉部位160(2),前記第2先端側薄肉部位120(2),第2外方側/基端側薄肉部位170(2)及び第2外方側/先端側薄肉部位175(2)と共に単一の薄肉領域を形成することができる。
この好ましい構成によれば、前記薄肉部位の形成容易化を図ることができる。
【0135】
又、前記第1外方側/基端側薄肉部位170(1)及び前記第1外方側/先端側薄肉部位175(1)の何れか一方と前記第2外方側/基端側薄肉部位170(2)及び前記第2外方側/先端側薄肉部位175(2)の対応する一方とのみを備えるように前記支持部10Bを変形することも可能である。
【0136】
図19に、前記第1外方側/先端側薄肉部位175(1)及び前記第2外方側/先端側薄肉部位175(2)のみを備えた変形例に係る支持部10B’の下面図を示す。
【0137】
斯かる変形例においては、前記第1外方側/先端側薄肉部位175(1)は、前記第1圧電素子60(1)のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1先端側水平壁面120b(1)のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記基端領域11との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置される。
【0138】
同様に、前記第2外方側/先端側薄肉部位175(2)は、前記第2圧電素子60(2)のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2先端側水平壁面120b(2)のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記基端領域11との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置される。
【0139】
前記実施の形態1及び2並びに前記種々の変形を含む構成において、好ましくは、前記一対の圧電素子60(1),60(2)の壁面うち外方に露出する部分を囲繞用絶縁性接着剤90によって囲繞することができる。
【0140】
斯かる構成によれば、ウエハから前記圧電素子60(1),60(2)をダイシングによって切り出す際に前記圧電素子60(1),60(2)の電極層の外側面に生じ得るバリが前記磁気ヘッドサスペンションの使用中に落下すること、及び/又は、前記圧電素子60(1),60(2)の伸縮動作時に圧電体の粒子が落下することを有効に防止することができる。
【0141】
図20及び図21に、それぞれ、前記囲繞用絶縁性接着剤90が適用された前記実施の形態2の変形例に係る磁気ヘッドサスペンション1B''の断面図であって、図14におけるXVI-XVI線及びXVII-XVII線に沿った断面に対応する断面図を示す。
【0142】
前記囲繞用絶縁性接着剤90によって前記圧電素子60(1),60(2)の露出部分を囲繞することは、例えば、前記圧電素子60(1),60(2)が前記支持体10Bに実装された状態の磁気ヘッドサスペンションを、前記圧電素子60(1),60(2)の前記上面側電極層63又は前記下面側電極層62の一方が上方に位置するように位置させた状態で、上方に位置する電極層に上方から前記囲繞用絶縁性接着剤90を塗布して、前記囲繞用絶縁性接着剤90を重力によって前記圧電素子60(1),60(2)におけるサスペンション幅方向外方側エッジのフリーな部分(前記支持部10Bに連結されていない部分)を介して下方に位置する電極層上へ移動させてから硬化させること、若しくは、前記磁気ヘッドサスペンションを前記圧電素子60(1),60(2)の前記上面側電極層63又は前記下面側電極層62の一方が上方に位置するように位置させた状態で上方に位置する電極層に上方から前記囲繞用絶縁性接着剤90を塗布し、その後に、前記磁気ヘッドサスペンションの上下を反転させて上方に移動された他方側の電極層に上方から前記囲繞用絶縁性接着剤90を塗布し、一方側の電極層に塗布された絶縁性接着剤90又は他方側の電極層に塗布された絶縁性接着90の一部を前記圧電素子60(1),60(2)におけるサスペンション幅方向外方側エッジの端面へ移動させてから硬化させることによって、実現し得る。
【符号の説明】
【0143】
1A,1B,1B'' 磁気ヘッドサスペンション
10A,10B,10B’ 支持部
11 基端領域
12 先端領域
14 連結梁
16 中央梁
19 間隙
19(1),19(2) 第1及び第2間隙
20 荷重曲げ部
30 ロードビーム部
40 フレクシャ部
50 磁気ヘッドスライダ
60(1),60(2) 第1及び第2圧電素子
62 下面側電極層
63 上面側電極層
80a 電圧供給用導電性接着剤
80b 絶縁性接着剤
81(1) 電極層用第1基端側接着剤
82(1) 電極層用第1先端側接着剤
83(1) 電極層用第1内方側接着剤
85(1) 第1基端側絶縁性接着剤
86(1) 第1先端側絶縁性接着剤
87(1) 第1内方側絶縁性接着剤
110(1) 第1基端側薄肉部位
110a(1) 第1基端側垂直壁面
110b(1) 第1基端側水平壁面
110(2) 第2基端側薄肉部位
110a(2) 第2基端側垂直壁面
110b(2) 第2基端側水平壁面
120(1) 第1先端側薄肉部位
120a(1) 第1先端側垂直壁面
120b(1) 第1先端側水平壁面
120(2) 第2先端側薄肉部位
120a(2) 第2先端側垂直壁面
120b(2) 第2先端側水平壁面
160(1) 第1内方側薄肉部位
160a(1) 第1内方側垂直壁面
160b(1) 第1内方側水平壁面
160(2) 第2内方側薄肉部位
160a(2) 第2内方側垂直壁面
160b(2) 第2内方側水平壁面
170(1) 第1外方側/基端側薄肉部位
170(2) 第2外方側/基端側薄肉部位
175(1) 第1外方側/先端側薄肉部位
175(2) 第2外方側/先端側薄肉部位
400 フレクシャ金属基板
410 フレクシャ配線体
411 絶縁層
412 導体層
412a 信号配線
412b 電圧供給配線
413 カバー層
413a 開口
CL サスペンション長手方向中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドスライダをディスク面へ向けて押し付ける為の荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重を磁気ヘッドスライダに伝達するためのロードビーム部と、前記荷重曲げ部を介して前記ロードビーム部を支持し且つメインアクチュエータによって直接又は間接的に揺動中心回りに揺動される支持部と、前記磁気ヘッドスライダを支持した状態で前記ロードビーム部及び前記支持部に支持されるフレクシャ部と、前記磁気ヘッドスライダをシーク方向に微動させる為にサスペンション長手方向中心線を基準にして互いに対して対称で且つ互いに対して伸縮方向が異なるように前記支持部に装着される左右一対の第1及び第2圧電素子とを備えた磁気ヘッドサスペンションであって、
前記支持部は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結される基端領域と、前記基端領域からサスペンション長手方向先端側に間隙を介して離間され且つ前記荷重曲げ部が連結される先端領域と、前記間隙を前記第1及び第2圧電素子にそれぞれ対応したサスペンション幅方向一方側及び他方側の第1及び第2間隙に分割するようにサスペンション幅方向中央において前記基端領域及び前記先端領域の間を連結する中央梁とを有し、
前記基端領域には、前記中央梁よりサスペンション幅方向一方側に設けられた第1基端側薄肉部位であって、前記ディスク面と対向する下面又は前記ディスク面とは反対側の上面の何れか一方側の第1面から他方側の第2面へ向けて延びる第1基端側垂直壁面及び前記第1基端側垂直壁面の先端から前記第1間隙へ延びる第1基端側水平壁面によって画される第1基端側薄肉部位と、前記中央梁よりサスペンション幅方向他方側に設けられた第2基端側薄肉部位であって、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2基端側垂直壁面及び前記第2基端側垂直壁面の先端から前記第2間隙へ延びる第2基端側水平壁面によって画される第2基端側薄肉部位とが形成され、
前記先端領域には、前記中央梁よりサスペンション幅方向一方側に設けられた第1先端側薄肉部位であって、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第1先端側垂直壁面及び前記第1先端側垂直壁面の先端から前記第1間隙へ延びる第1先端側水平壁面によって画される第1先端側薄肉部位と、前記中央梁よりサスペンション幅方向他方側に設けられた第2先端側薄肉部位であって、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2先端側垂直壁面及び前記第2先端側垂直壁面の先端から前記第2間隙へ延びる第2先端側水平壁面によって画される第2先端側薄肉部位とが形成され、
前記中央梁には、前記第1基端側水平壁面及び前記第1先端側水平壁面の間をつなげる第1内方側水平壁面を有する第1内方側薄肉部位と、前記第2基端側水平壁面及び前記第2先端側水平壁面の間をつなげる第2内方側水平壁面を有する第2内方側薄肉部位とが形成され、
前記第1圧電素子は、サスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、前記支持部と対向する側の電極層の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第1基端側接着剤,電極層用第1先端側接着剤及び電極層用第1内方側接着剤によって前記第1基端側水平壁面,前記第1先端側水平壁面及び前記第1内方側水平壁面にそれぞれ固着され、且つ、基端側の端面及び先端側の端面が第1基端側絶縁性接着剤及び第1先端側絶縁性接着剤によって前記第1基端側垂直壁面及び前記第1先端側垂直壁面にそれぞれ固着されており、
前記第2圧電素子は、サスペンション幅方向外方側のエッジの少なくとも一部がフリーな状態で、前記支持部と対向する側の電極層の基端側,先端側及びサスペンション幅方向内方側が電極層用第2基端側接着剤,電極層用第2先端側接着剤及び電極層用第2内方側接着剤によって前記第2基端側水平壁面,前記第2先端側水平壁面及び前記第2内方側水平壁面にそれぞれ固着され、且つ、基端側の端面及び先端側の端面が第2基端側絶縁性接着剤及び第2先端側絶縁性接着剤によって前記第2基端側垂直壁面及び前記第2先端側垂直壁面にそれぞれ固着されていることを特徴とする磁気ヘッドサスペンション。
【請求項2】
前記第1内方側薄肉部位は、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第1内方側垂直壁面及び前記第1内方側垂直壁面の先端から前記第1間隙へ延びる前記第1内方側水平壁面によって画され、
前記第2内方側薄肉部位は、前記第1面から前記第2面へ向けて延びる第2内方側垂直壁面及び前記第2内方側垂直壁面の先端から前記第2間隙へ延びる前記第2内方側水平壁面によって画され、
前記第1圧電素子のサスペンション幅方向内方側の端面と前記第1内方側垂直壁面との間には第1内方側絶縁性接着剤が充填され、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向内方側の端面と前記第2内方側垂直壁面との間には第2内方側絶縁性接着剤が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項3】
前記一対の圧電素子の各々のサスペンション幅方向長さをWとした場合に、前記第1及び第2内方側水平壁面の各々と対応する前記圧電素子とは0.18×W以下の範囲で重合していることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項4】
前記電極層用第1基端側接着剤,前記電極層用第1先端側接着剤及び前記電極層用第1内方側接着剤の少なくとも一つが導線性接着剤を含み、前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層が前記導電性接着剤を介して前記支持部に電気的に接続されることで接地電位とされ、
前記電極層用第2基端側接着剤,前記電極層用第2先端側接着剤及び前記電極層用第2内方側接着剤の少なくとも一つが導線性接着剤を含み、前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層が前記導電性接着剤を介して前記支持部に電気的に接続されることで接地電位とされていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項5】
前記ディスク面と対向する下面が前記第1面とされ、前記ディスク面とは反対側の上面側電極層が前記支持部と対向する側の電極層とされていることを特徴とする請求項4に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項6】
前記フレクシャ部は、前記磁気ヘッドスライダが装着されるヘッド搭載領域を有し且つ前記ロードビーム部及び前記支持部に固着されるフレクシャ金属基板と、前記フレクシャ金属基板の下面に積層される配線体とを備え、
前記配線体は、前記フレクシャ金属基板の下面に積層される絶縁層と、前記絶縁層の下面に積層される導体層と、前記導体層を囲繞するカバー層とを有し、
前記導体層は、基端部が外部に電気的に接続可能とされ且つ先端部が前記磁気ヘッドスライダに電気的に接続される信号配線と、基端部が外部に電気的に接続可能とされた電圧供給配線とを含み、
前記第1及び第2圧電素子の下面側電極層が前記カバー層に形成された開口を介して露出された前記電圧供給配線と電圧供給用導電性接着剤を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項7】
前記第1及び第2圧電素子の各々は、サスペンション幅方向外方側のエッジのうち前記先端領域及び前記基端領域に載置される部分を除く部分がフリーとされていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項8】
前記支持部は、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1基端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記先端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第1外方側/基端側薄肉部位と、記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2基端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記先端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第2外方側/基端側薄肉部位とをさらに含み、
前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第1外方側/基端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第1外方側接着剤によって固着され、
前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第2外方側/基端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第2外方側接着剤によって固着されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項9】
前記支持部は、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1先端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記基端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第1外方側/先端側薄肉部位と、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2先端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記基端領域との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存する第2外方側/先端側薄肉部位とをさらに含み、
前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第1外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第1外方側接着剤によって固着され、
前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第2外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第2外方側接着剤によって固着されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項10】
前記支持部は、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1基端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画される第1外方側/基端側薄肉部位と、前記第1圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第1先端側水平壁面のサスペンション幅方向一端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記第1外方側/基端側薄肉部位との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置された第1外方側/先端側薄肉部位と、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2基端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向先端側へ延びる水平壁面によって画される第2外方側/基端側薄肉部位と、前記第2圧電素子のサスペンション幅方向外方側エッジの一部が載置され得るように前記第2先端側水平壁面のサスペンション幅方向他端側からサスペンション長手方向基端側へ延びる水平壁面によって画され且つ前記第2外方側/基端側薄肉部位との間にサスペンション長手方向に関し間隙を存するように配置された第2外方側/先端側薄肉部位とをさらに含み、
前記第1圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第1外方側/基端側薄肉部位及び前記第1外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第1外方側接着剤によって固着され、
前記第2圧電素子における前記支持部と対向する側の電極層のサスペンション幅方向外方側は、前記第2外方側/基端側薄肉部位及び前記第2外方側/先端側薄肉部位の前記水平壁面と対向した状態で電極層用第2外方側接着剤によって固着されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項11】
前記支持部は、前記基端領域及び前記先端領域のサスペンション幅方向一端側同士及び他端側同士を連結する左右一対の連結梁を有していることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項12】
請求項6に記載の磁気ヘッドサスペンションを製造する方法であって、
前記一対の圧電素子を除く前記支持部,前記荷重曲げ部,前記ロードビーム部及び前記フレクシャ部が一体化されたプリアッセンブリを形成する工程と、
前記プリアッセンブリを前記各薄肉部位の水平壁面が上方を向くように配置させた状態で、前記第1基端側水平壁面,前記第1先端側水平壁面,前記第1内方側水平壁面にそれぞれ前記電極層用第1基端側接着剤,前記電極層用第1先端側接着剤及び前記電極層用第1内方側接着剤を塗布してから前記第1圧電素子を載置させ、且つ、前記第2基端側水平壁面,前記第2先端側水平壁面及び前記第2内方側水平壁面に前記電極層用第2基端側接着剤,前記電極層用第2先端側接着剤及び前記電極層用第2内方側接着剤を塗布してから前記第2圧電素子を載置させて、前記各接着剤の硬化を行う工程と、
前記第1圧電素子の基端側端面及び先端側端面と前記第1基端側垂直壁面及び前記第1先端側垂直壁面との間に、それぞれ、前記第1基端側絶縁性接着剤及び前記第1先端側絶縁性接着剤を充填し、且つ、前記第2圧電素子の基端側端面及び先端側端面と前記第2基端側垂直壁面及び前記第2先端側垂直壁面との間に、それぞれ、前記第2基端側絶縁性接着剤及び前記第2先端側絶縁性接着剤を充填して、前記各接着剤の硬化を行う工程と、
前記第1及び第2圧電素子の前記下面側電極層と前記カバー層に形成された開口を介して露出された前記電圧供給配線とを接続するように前記電圧供給用導電性接着剤を塗布し且つ硬化させる工程とを含むことを特徴とする磁気ヘッドサスペンションの製造方法。
【請求項13】
前記電圧供給用導電性接着剤の硬化を行った後に、前記電圧供給用導電性接着剤を囲繞するように絶縁性接着剤を塗布し且つ硬化させる工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の磁気ヘッドサスペンションの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−48793(P2012−48793A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191746(P2010−191746)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000175722)サンコール株式会社 (96)
【Fターム(参考)】