磁気信号計測装置
【課題】磁気信号による磁性材料の異物検査では、検査材から大きな磁気信号が発生するため、微弱な異物からの信号を検出するのが困難であった。検査材を着磁後、逆方向のキャンセル磁場を印加することで検査材の磁化を消失させ、異物の磁気信号を検出しやすくする。
【解決手段】試料を着磁後、検査材の磁化が丁度消失する逆方向のキャンセル磁場を印加する。通常、異物と検査材の磁気特性が異なるので異物の磁気信号は消失せず検出可能である。検査材から発生する大きな磁気信号を低減できるため、微弱な異物からの磁気信号を高感度に計測できる。
【解決手段】試料を着磁後、検査材の磁化が丁度消失する逆方向のキャンセル磁場を印加する。通常、異物と検査材の磁気特性が異なるので異物の磁気信号は消失せず検出可能である。検査材から発生する大きな磁気信号を低減できるため、微弱な異物からの磁気信号を高感度に計測できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気センサーを使用した被破壊検査に関するもので、特に磁性を有する検査対象物に付着あるいは混入した磁性不純物の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料や導電性複合材料などの被破壊検査には、透過X線診断法、超音波診断法、渦流探傷法などが実用化されているが、いずれも数百μm以下の異物に関しては検出が容易ではない。一方、新しい非破壊検査技術として、高感度な磁気センサー、例えば超伝導量子干渉素子(SQUID(Superconducting QUantum Interference Device)),を使用し、欠陥や異物により生じる微弱な磁気信号や磁気信号の変動を検出する磁気的非破壊検査が注目されている。特に、異物が磁性を有する場合、異物のサイズが百μm以下でも磁気信号が大きければ十分検出可能である。
【0003】
例えば、特許文献1では、一様な磁界中で検査材の磁化率に応じて変化する磁界を検出することで、検査材中の欠陥や異物の検査可能なことが示されている。しかしながら、検査材が磁性体であり、検査材から発生する磁界(以下バックグラウンド信号と呼ぶ)が大きいと、異物や欠陥による微弱な磁界の変化がバックグラウンド信号に隠れてしまうため、異物や欠陥の検出が困難になる。
【0004】
大きなバックグラウンド信号を除去する方法として、特許文献2では、検査材と逆方向に帯磁した参照サンプルを使用して、磁気センサーに検出される検査材からのバックグラウンド信号を基準サンプルからの信号で打ち消すことが提案されている。また、特許文献3では、予め良品であることがわかっている基準サンプルの測定結果と検査対象の測定結果との比較を行うことが報告されている。また、特許文献4では、被検査対象物検出用の磁気センサーと参照信号用磁気センサーを使用し、検出用磁気センサーの信号から参照信号用磁気センサーを差し引くことでバックグラウンド信号を除去する方式が開示されている。この方法は環境磁気雑音の除去に広く用いられているグラジオメータ方式の一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-77516
【特許文献2】特開平10-26608
【特許文献3】特開平7-27743
【特許文献4】特開2002-257789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、検査材から発生する磁界(バックグラウンド信号)が大きいと、検査材からなる試料に含まれる欠陥や異物により生じる微弱な磁界の変化を検出することは困難であることは従来から大きな課題として認識されており、特許文献2-4の方法が提案されてきた。
【0007】
しかしながら、これらの解決方法は、磁気センサーで検出される試料自身から発生する磁気信号(磁界)が欠陥や異物以外の原因でばらつく場合には、効果を期待できない。すなわち、欠陥や異物からの磁気信号の変化が、試料自身の磁気信号のばらつき以上でないと判定が困難である。特に、検査材からのバックグラウンド信号が大きい場合には、絶対値としての磁気信号のばらつきも大きくなるため、微細な欠陥や異物の検出は益々困難になる。磁気センサーで検出される試料自身から発生する磁気信号の変動要因としては、試料寸法のばらつき、不均一な帯磁など試料構造に起因する原因だけでなく、試料と磁気センサの相対位置の変動(距離など)も原因となる。
【0008】
本発明の目的は、磁性を有する検査材からなる試料の異物検査において、バックグラウンド信号自身を低減させること、および、バックグラウンド信号の変動を抑制することにより、バックグラウンド信号の影響を受けにくい検査技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明においては、試料を移動可能な搬送機構と、磁気センサーと、前記試料に着磁用磁場を印加する着磁用磁場印加機構と、前記着磁用磁場とは異なる向きの磁場であり、磁場の大きさが前記資料に含まれる前記検査材の保磁力に相当する大きさであるキャンセル磁場を、前記着磁用磁場を印加した後で前記試料に印加するキャンセル磁場印加機構と、前記キャンセル磁場が印加された状態で前記試料から発生する磁気信号の測定を行う磁気センサーと、前記磁気センサーにより測定された結果を計測データとして収録し、当該計測データに基づき解析を実行し、前記試料の中に異物が含まれているか否かを判定する演算手段を備えることを特徴とする磁気信号計測装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、磁性体からなる検査材自体から発生するバックグラウンド磁気信号を低減することが可能になる。その結果、バックグラウンド磁気信号に隠れて検出しづらかった異物からの磁気信号の検出が容易になる。また、バックグラウンド磁気信号自体が小さくなることで、試料毎のバックグラウンド磁気信号の変動量も少なくなり、磁気信号の変動と異物の存在との対応を容易に関連づけることができる。
【0011】
その結果、従来困難であった磁性体試料に含まれる磁性異物の非破壊検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】磁気信号による異物検査の原理説明図。
【図2】磁気ヒステリシス特性(M-H特性)の説明図
【図3】磁気ヒステリシスカーブとキャンセル磁場との関係を説明するための図(a)異物の保磁力>検査材の保磁力の場合、(b)検査材の保磁力>異物の保磁力の場合
【図4】2つのキャンセル磁場を使用した場合における、磁気ヒステリシスカーブとキャンセル磁場との関係
【図5】残留磁気―印加磁場特性の一例
【図6】残留磁気―印加磁場特性とキャンセル磁場との関係を説明するための図
【図7】実施例1で使用した磁気信号計測装置の模式図(a)装置全体の断面図、(b) 装置に固定された試料台を上から見た模式図
【図8】(a)試料台と(b)試料配置図
【図9】実施例1で使用したSQUID磁気センサーの構造図
【図10】残留磁気―印加磁場特性。(a) フェライトコア、(b)SUS304粒子
【図11】SUS粒子を含まないフェライトコアの磁気信号波形。
【図12】表面にSUS304粒子を張り付けたフェライトコアの磁気信号波形。
【図13】SUS304粒子を含まないフェライトコアの磁気信号波形。(a) キャンセル磁場=-17mT、(b) キャンセル磁場=-22mT、(c)加算波形((a)+(b))
【図14】表面にSUS304粒子を張り付けたフェライトコアの磁気信号波形。(a) キャンセル磁場=-17mT、(b) キャンセル磁場=-22mT、(c)加算波形((a)+(b))
【図15】SUS304粒子の残留磁気信号のSQUID-試料間距離依存性
【図16】磁気センサーと試料の位置関係(a)検査材と磁気センサーの間に試料台が存在する場合、(b)試料と磁気センサーの間に試料台がない場合、 (c)は上下両方に磁気センサーを配置した構成例、 (d)試料の移動方向に沿って複数の磁気センサーを配置した構成例
【図17】本発明を適用した別の装置構成の一例
【図18】本発明を適用した別の装置構成の一例
【図19】本発明を適用した別の装置構成の一例
【図20】マグネトメータおよび1次微分平面型グラジオメータを使用した場合の検査材の磁化方向と検出される磁気信号波形の関係を説明する図
【図21】スペーサーを使用したバックグラウンド信号の低減方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の開示は、本発明の一実施例にすぎず、本発明の技術範囲を何ら限定するものではない。
(実施例1)
本発明者らは、試料を構成する検査材と検出すべき異物の磁化特性が異なることに着目し、試料の着磁方法を工夫することで、バックグラウンド信号の変動の影響を抑制し異物からの磁気信号を高精度に測定できることを見いだした。以下に、本発明の原理を説明する。
【0014】
まず、磁気信号による異物検査の原理を簡単に説明する。図1に測定原理を図示する。異物2と検査材3からなる試料1に外部磁場9を印加すると、検査材と異物の両方が磁化され、それぞれの磁化率(帯磁率)に応じて磁気信号が発生する。外部磁場を印加した状態で試料からの磁化を測定するのが磁化率測定法(帯磁率測定法)である。この場合、磁気センサー6には検査材の磁化4、異物の磁化5、および外部磁場9の成分が含まれる。
高感度に異物の混入を検出するためには、異物の磁化(信号成分)と“検査材の磁化および外部磁場成分”(バックグラウンド信号)の比率(SN比)を向上させることが必要である。通常、磁化率測定法では、外部磁場の方向が磁気センサーの検出方向と直行するように配置する、外部磁場のキャンセルコイルを磁気センサー近傍に設けるなど、磁気センサに外部磁場による磁気信号が可能な限り検出されないように工夫されている。そのため、通常、バックグラウンド信号の主成分は検査材の磁化となる。
【0015】
また別の方法として、印加磁場を遮断した後で、試料の残留磁気を測定する残留磁気法がある。この場合、高感度に異物を検出するためには、異物の残留磁気8(信号成分)と検査材の残留磁気7(バックグラウンド信号)の比率(SN比)を向上させることが必要である。したがって、磁化率測定法、残留磁気法のいずれの場合でも、検査材からの磁気信号を低減することがSN比の向上に有効となる。
【0016】
図2に磁性体の磁気ヒステリシスカーブを模式的に示す。磁気ヒステリシスカーブは印加磁場に対して磁性体の磁化を縦軸にプロットしたもので、磁性体の磁化過程を表している。(1)着磁前の状態(A)から磁場を印加すると、試料の磁化は曲線A-B((2)初期磁化曲線)に沿って増加していくが、徐々に磁化が飽和しB点で(3)飽和磁束密度に達する。ここから印加磁場を下げていくと、曲線B-C-D-Eの経路で試料の磁化は減少していく。磁性体試料の場合、印加磁場をゼロまで下げても試料の磁化はゼロにならず残留磁気((4)残留磁束密度)を示す(C点)。さらに逆方向に磁界を印加すると磁化は減少し、今度は逆方向に磁化される。丁度、試料の磁化がゼロになるときの印加磁場の大きさは(5)保磁力と呼ばれている(D点)。逆方向の磁界が十分大きいと再び試料の磁化は飽和する(E点)。
そこから、順方向に磁場を増加させていくと、曲線E-F-G-Bの経路で試料の磁化は変化する。
【0017】
検査材と検出すべき異物の磁化特性が異なる場合、検査材と検出すべき異物のそれぞれに対応した2つの磁気ヒステリシスカーブが存在する。図3に2つの磁気ヒステリシスカーブの関係を模式的に表す。点線は検査材のヒステリシスカーブ、実線は異物のヒステリシスカーブを示しており、 (a)は異物の保磁力が検査材の保磁力より大きい場合、(b)は検査材の保磁力が異物の保磁力より大きい場合を表している。前述した従来の方法では、一様な磁場を印加しながら試料の磁化を測定する、あるいは磁場を印加して着磁した後に残留磁気を測定するため、検査材の磁化による磁気信号が大きなバックグラウンド信号となっていた。
【0018】
本発明では試料を着磁した後で、着磁用の磁場と逆方向の磁場(キャンセル磁場)を印加しながら試料の磁化を測定する。例えば、図3(a)に示すように、検査材の保磁力に相当するキャンセル磁場を印加した状態で磁気信号を測定すると、検査材からの磁気信号はゼロになる。一方、異物の磁化もキャンセル磁場の印加により減少するが、保磁力が大きいため磁化が残っている。原理的にはバックグラウンド信号をゼロにできるため、検出すべき異物からの磁気信号とバックグラウンド信号の比(SN比)は大きくに改善され、バックグラウンド信号の影響を受けずに異物の検査が可能になる。実際には多少のバックグラウンド信号が残る可能性があるが、その場合にも、SN比は改善されており、従来は検査材からの磁気信号(バックグラウンド信号)に隠れていた異物の磁気信号を検出しやすくなる。また、本発明では、バックグラウンド信号自身の低減に伴い、バックグラウンド信号の変動も小さくなる効果も期待できる。
【0019】
また、本発明の方法は検査材の保磁力が異物の保磁力より大きい場合にも有効である。図3(b)に示すように、検査材の保磁力が異物の保磁力より大きい場合にも、検査材の保磁力に相当するキャンセル磁場を印加すると検査材の磁化はゼロになる。キャンセル磁場が異物の保磁力を越えているため、キャンセル磁場印加により、異物は逆方向に着磁され、異物からは磁気信号が発生する。その結果、バックグラウンド信号の低減、SN比の改善が可能となる。
【0020】
また、キャンセル磁場の均一性が不十分であったり、検査材の形状が複雑な場合、検査材により印加磁場が影響を受け不均一になる場合など、キャンセル磁場印加により完全に検査材の磁化をゼロにできない可能性がある。しかしながら、このような場合でも、本発明の方法を適用することで、本発明を適用しない場合よりもバックグラウンド信号を低減できるため、本発明の効果を活用できる。キャンセル磁場印加により完全に検査材の磁化をゼロにできない場合は、例えば、あらかじめ計測しておいた標準試料の磁気信号を差し引くことで検査材からの磁気信号をさらに低減させ、SN比を改善することもできる。標準試料の磁気信号としては、良品であることがわかっている試料の磁気信号や複数の良品試料の平均値などを用いることができる。しかし、良品試料の磁気信号のばらつきが元々大きい場合、標準試料の磁気信号の選定が困難なだけでなく、測定データの判定が難しくなる。
【0021】
また、検査材と異物との磁気特性の違いを利用すれば、図4に示すように、検査材の磁化がmになるキャンセル磁場(キャンセル磁場(A))と検査材の磁化が−m(絶対値が等しく、向きが逆)になるキャンセル磁場(キャンセル磁場(B))で磁気信号を測定し、測定結果を加算することで最終的に検査材の磁化を消去することも可能である。検査材と異物との磁気特性が異なるため、加算処理後も異物の信号は残っており検出可能である。この2つのキャンセル磁場を使用する方法は検査材自身のバックグラウンド信号を差し引くため、標準試料と検査試料とのばらつきの影響も抑制できるメリットがある。例えば、試料のサイズが標準よりも若干大きな場合、発生するバックグラウンド信号も大きくなる。
この場合、前述のあらかじめ計測しておいた標準試料の磁気信号を差し引く方法では、バックグラウンド信号を十分に削除できない。その結果、たとえ試料に異物が含まれていなくても、差し引き後のデータに大きな磁気信号が残り、不良との判定になる可能性がある。しかしながら、2つのキャンセル磁場を使用する方法では、試料のサイズの違いに応じて、2つのキャンセル磁場で検出される検査材の磁気信号の大きさも変化する。その結果、加算処理により試料のサイズの違いに応じた検査材からの磁気信号の除去が可能になる。
【0022】
ここまで、本発明を磁化率測定に適用した場合に、ついて説明してきたが、本発明は残留磁気測定にも有効である。
【0023】
図5に残留磁気―印加磁場特性の一例を示す。残留磁気―印加磁場特性は、試料に磁場を印加した後、磁場を遮断してから測定された試料の残留磁気を印加磁場に対してプロットすることで得られる。このように、残留磁気-印加磁場特性においても、図2に示した磁気ヒステリシスカーブと類似したヒステリシス特性が存在する。正方向の磁界を印加して着磁した後、逆方向の磁界を印加していくと、残留磁気信号はある逆方向の磁界を印加した後でゼロになる。また、検査材と検出すべき異物の磁化特性が異なる場合、検査材と検出すべき異物のそれぞれに対応した2つの磁気ヒステリシスカーブが存在する。したがって、図3、4で説明した磁化率特性の違いを使用した磁化率測定における本発明のアイデアを、残留磁気計測にも類似の考え方で適用できる。
【0024】
図6に磁気特性が異なる2つの残留磁気―印加磁場特性の関係を模式的に表す。点線を検査材の残留磁気―印加磁場特性、実線は異物の残留磁気―印加磁場特性とする。 正方向の磁界を印加して着磁した後、丁度、検査材の残留磁気がゼロになるような逆方向の磁場をキャンセル磁場として印加し、磁場を遮断した後で残留磁気信号を測定すると、検査材からの残留磁気信号はゼロになる。一方、異物の残留磁化もキャンセル磁場の印加により減少するが、図6に示した例ではキャンセル磁場を印加しても正方向の磁化がまだ残っている。そのため、原理的にはバックグラウンド信号がゼロの状態で、検出すべき異物からの残留磁気信号を計測可能になる。実際には多少のバックグラウンド信号が残る可能性があるが、その場合にも、SN比は改善されており、従来は検査材自体の磁気信号(バックグラウンド信号)に隠れていた異物の磁気信号を検出しやすくなる。このように、残留磁気―印加磁場特性にヒステリシスがあることを利用して、適切なキャンセル磁場を印加した後で測定することで、バックグラウンド信号を低減させ、微弱な磁気信号の検出が可能になる。
【0025】
同様に、図4で説明した2つのキャンセル磁場を使用した方法も残留磁気計測に適用することができることも自明である。
【0026】
実施例で述べてきたように、本発明では検査材と異物の磁気特性が異なっていることが必要である。通常の異物検査では、検査材と異物は材質が異なるため、磁気特性も異なっており、本発明を適用して効果を得ることができる。たとえ同じ材質であっても、異物はサイズか小さい、形状異方性がある、塑性変形により結晶構造が異なるなどの要因により検査材と異なる磁気特性を有する場合も適用可能である。
(実施例2)
工場の製造ラインでは、ベアリング、ボルト、ナット、撹拌羽、カッター、溶接の腐食部分など様々なところから種々の金属摩耗粉の混入が起きる。製造ラインは鉄製やSUS製(SUS304などステンレス)の部品が多く使用されているため、特に鉄やSUSの異物が混入しやすい。本実施例では、強磁性体であるフェライト製の部品に混入したSUS304の微粒子の検出に適用した場合について述べる。オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304は本来非磁性であるが、摩擦や溶接などでマルテンサイト系に塑性変形を起こし、強磁性体に変化する。異物として混入するSUS304は、混入する過程で応力を受け塑性変形を起こしており、磁気信号を発生する。本実施例では、高感度なSQUID磁気センサーを使用して、フェライトコアに付着したSUS304の検出をすることで、本発明の効果の検証を行った。本実施例では、試料として市販のフェライトコア(Schaffner製トロイダルコア、品番5975000801、外径3.95mm、内径2.15mm、厚さ1.35mm)を使用した。
【0027】
はじめに実施例で用いた磁気信号計測装置について説明する。図7に磁気信号計測装置の模式図を示す。環境磁気雑音のSQUID28への入力を低減するために、SQUID28およびSQUIDを冷却するための冷却容器21は電磁シールド29および磁気シールド30、31によって囲まれている。電磁シールド29はアルミニウムなどの電気抵抗が低い金属材料で構成されており、電磁波に対するシールド効率が高い。一方、磁気シールド30、31は、パーマロイ等の高透磁率材料から構成されており、主に磁気信号のシールドに有効である。磁気シールド31は装置全体を囲むことで、装置外部からの磁気雑音に有効である一方、磁気シールド30は装置外部からの磁気雑音だけでなく、装置内部の移動機構やモータなどから発生する磁気雑音に対しても有効である。しかしながら、磁気シールド30の一部には試料台71を挿入するための切欠き穴38が形成されている。
【0028】
このため、磁気シールド30だけでは装置外部からの磁気雑音のシールドが不足すると考え、装置全体を囲む磁気シールド31と組み合わせている。
【0029】
試料台71は固定ネジ33により回転軸35に固定されている。図8(a)に実験で使用した試料台71の模式図を示す。試料台は樹脂などの非磁性材料で作製されている。試料台71は円形で、外周部が立ち上がった構造になっており、中央には装置に固定するための貫通穴72が開いている。
【0030】
また、図7(b)は装置に固定された試料台を上から見た模式図であるが、図に示すようにSQUID28と対向する位置には試料1を磁化するための着磁用磁場印加機構42およびキャンセル磁場印加機構43を設置した。着磁用磁場印加機構42およびキャンセル磁場印加機構43はいずれも2つの磁石40,40‘とヨーク41で構成されており、2つの磁石の間に垂直方向の平行磁界が発生するように2つの磁石の磁化方向は揃っている。磁石を交換することで印加磁場の強度を独立して調整可能である。試料台71が図7(b)に示した矢印の方向に回転することで、着磁用磁場印加機構42により試料に着磁用の磁場を印加された後、引き続きキャンセル磁場印加機構43により試料に着磁用の磁場を印加される。その後、試料はSQUID磁気センサ上を通過し、試料から発生する磁気信号が検出される。
【0031】
本実施例では図8(b)に示すように、12個の円形の試料1が等間隔になるように試料台71に配置し、移動しないようにテープで固定した。各試料には1から12までの固有の番号(試料番号)が割り振られており、識別可能である。試料台71は穴72により、試料台71に固定され、試料台71は回転機構34に接続された回転軸35によって回転する。回転機構34は、移動ステージ36、37上でx、zの2軸方向に移動可能となっており、回転機構35の移動により、試料台71の一部が切り欠き穴38を通って、磁気シールド30の内部へ挿入される。試料台の回転に伴い、12個の試料は順次、着磁用磁場印加機構42およびキャンセル磁場印加機構43を通過し、その後、SQUID28の上を通過し、そのときの磁気信号が計測される。したがって、測定中には試料に外部磁界は印加されておらず、本装置は残留磁気法(図1参照)による測定に該当する。
【0032】
試料台は通常25rpmで回転しており、連続して5〜30回転分の信号を測定した。測定後、SN比を改善するために加算平均処理を行った。理論上SN比は加算回数の平方根に比例して向上する。加算平均処理により低減される雑音成分は試料とは関係ないランダムな雑音成分のみであり、試料に起因する残留磁気信号(異物からの信号と検査材からのバックグラウンド信号)は保存される。
【0033】
SQUIDに検出される試料からの磁気信号は、SQUIDと試料の距離に依存し、距離が離れるほど磁気信号が急激に減衰する。高感度に試料からの磁気信号を検出するためには、室温の試料1と低温のSQUID28との距離を小さくすることが重要である。本装置では、断熱に真空断熱層を使用し、薄いサファイヤウインドウ29により真空を維持された冷却容器の真空層部分にSQUID28が配置されている。サファイヤウインドウ29は非磁性の円筒部品39に固定されており、上下方向に位置合わせが可能である。試料下面とSQUIDとの距離は約1.5mmである。
SQUID28は熱伝導率の高い銅ロッド26及びサファイヤロッド25を介して液体窒素24により間接的に冷却されている。冷却容器の外槽22、内槽23は、SUSやFRP等の非磁性材料で構成される。SQUID28と銅ロッド26との間にサファイヤロッド25を介することにより、銅ロッド26から発生する磁気雑音の影響を低減する効果がある。
【0034】
本実施例の磁気信号計測装置ではSQUID28として、高温超電導SQUIDグラジオメータを使用した。図9は高温超電導SQUIDグラジオメータの構成を模式的に示す平面図である。図9(a)は全体を示す図、図9(b)は中央部分の拡大図である。検出コイル62及びSQUIDリング64は、SrTiO3やMgO等の単結晶を結晶軸が異なる方向で張り合わされた構造のバイクリスタル基板60上に形成された、YBa2Cu3Ox等の高温超電導材料を加工することで作製した。張り合わせ面はバイクリスタル接合面61と呼ばれる。SQUIDリング64は、バイクリスタル基板60に形成されたバイクリスタル接合面61を横切っており、バイクリスタル接合面61上に形成された超電導薄膜に粒界ジョセフソン結合65が形成されている。その結果、SQUIDリング64には2カ所の粒界ジョセフソン結合65が形成される。今回使用したSQUIDでは、1枚の基板上に同じ検出コイルと結合した2つのSQUIDリング64,64’が形成されており、そのうち特性が良い方のSQUIDを実験で使用した。
【0035】
検出コイル62は、一辺が5mmの2つのループからなる5x10mmの8の字型の微分コイルを構成しており、検出コイル62に磁束が入力すると、2つのループの各ループに生じる誘導電流の差分量が検出コイルの中央部分66を経由してSQUIDリング64、64‘に流れる。この電流が磁束として検出される。2つのループの中心間距離をベースライン、2つのループの中心を通る方向をベースライン方向と呼ぶ。2つの検出コイルの差を検出するグラジオメータでは、地磁気や環境雑音のように空間的に均一な磁気信号は2つの検出コイルに同時に鎖交する信号はキャンセルすることができる。検査材からのバックグラウンド信号が2つの検出コイルに同時に鎖交する場合には、バックグラウンド信号も低減することができる。
【0036】
フィードバックコイル67は、検出コイル62のうち片方のループを囲むように基板60上にパターニングされ形成されている。2つのフィードバックコイル67,67’の内、片方を使用した。配線の接続が必要なところには超電導薄膜の上に、金の配線パッド63,および68がパターニングされている。配線パッド63はSQUIDリング64と電気接続されており、配線パッド68はフィードバックコイル67と電気接続されている。
【0037】
図10(a)および(b)にフェライトコアおよび約400μm x 200μmのSUS304粒子の残留磁気-印加磁場特性を示す。横軸は印加磁場、縦軸はSQUID磁気センサーで検出された磁気信号を示しており、単位は磁束量子Φ0(=2.07x10-15Wb)である。+51.5mTの印加した後、逆方向の磁場を印加すると、残留磁気は下がりはじめ、フェライトコアの残留磁気は-19.4mTの磁場を印加すると残留磁気がほぼゼロとなった。一方、SUS304粒子では、約-17mT付近の逆磁場を印加すると残留磁気がほぼゼロになり、フェライトコアの残留磁気がゼロになる-19.4mTの磁場を印加するとSUS304粒子は逆方向着磁されることがわかる。
【0038】
図11に+51.5mTで着磁し、キャンセル磁場(Bcancel)は印加せずに測定したフェライト
コアの磁気信号波形(Bcancel=0mT)、および、+51.5mTで着磁した後に-19.4mTのキャンセル磁場を印加してから測定したフェライトコアの磁気信号波形(Bcancel=-19.4mT)の一例を示す。キャンセル磁場を印加することで、Bcancel=0mTでは48Φ0の磁気信号の変化が、約1/30の1.8Φ0にまで小さくなっていることがわかる。すなわち、適切なキャンセル磁場を印加することにより検査材であるフェライトコアからの磁気信号を著しく低減できることが確認できる。
【0039】
図12にフェライトコアの表面にSUS304粒子を張り付けた試料に対して、+51.5mTで着磁し、キャンセル磁場(Bcancel)は印加せずに測定した磁気信号波形(Bcancel=0mT)、および、+51.5mTで着磁した後に-19.4mTのキャンセル磁場を印加してから測定した磁気信号波形(Bcancel=-19.4mT)の一例を示す。Bcancel=0mTでは約42Φ0の磁気信号の変化が検出されたが、この値はフェライトコアだけの場合の値48Φ0に近く、またSUS粒子があるにも関わらず磁気信号の変化量は減少していた。したがって、単純に着磁して磁気信号を計測しただけでは、異物の存在を判定することは極めて困難である。
【0040】
一方、Bcancel=-19.4mTを印加して測定した場合、10.6Φ0の磁気信号の変化を検出できた。この値はフェライトコアだけの場合の値(1.8Φ0)よりも5倍以上大きく、異物の存在を判定するのに十分な値である。
【0041】
なお、本装置では、異物検出判定のしきい値を登録することで異物混入の判定が可能な構成となっている。あらかじめ磁気信号の最大変化量を例えば5Φ0と設定しておけば、例えば図12に示した試料のように10.6Φ0の磁気信号の変化が検出されれば、異常な磁気信号が検出されたこと、検出された試料番号が表示される。
【0042】
また、-19.4mTのキャンセル磁場を印加しても、フェライトコアだけの場合に完全に磁気信号がゼロになっていない。この結果は、キャンセル磁場の方向(着磁用磁場の方向も平行)以外の成分の影響と考えられる。
【0043】
飽和磁束密度に達するほど十分強い磁場を印加すれば、着磁用磁場の方向に垂直な成分はほとんど残っていない、あるいは、残っていても着磁用磁場の方向に垂直な面内に配向していない状態である。そのような状態であれば、キャンセル磁場に垂直な成分の影響はほとんど残らないと考えられる。しかしながら、本実施例では、実験装置の制約のため着磁用磁場として+52.5mTまでしか印可できなかった。そのため、本発明の効果は十分に確認できたものの、最適なキャンセル磁場でも若干の磁気信号が残ったと考えられる。
【0044】
また、キャンセル磁場に垂直な成分の影響を低減する別の方法として、着磁の時に磁化の方向を完全に揃えるほかに、少なくともキャンセル磁場に垂直な成分に対して、測定前にあらかじめ試料を消磁する方法も可能である。
【0045】
さらに、最適なキャンセル磁場でも若干の磁気信号が残った場合でも、磁気信号をさらに低減させる方法として、あらかじめ標準試料の磁気信号を計測しておき、差し引く方法が考えられる。特にキャンセル磁場を適用しても残っている磁気信号のばらつきが小さい場合は、標準信号との差分を求める方法は有効であり、場合によっては、異物からの磁気信号が検査材からの磁気信号の変動成分よりも小さい場合でも検出が可能になる。
(実施例3)
次に本発明の別の実施例を示す。実施例1と同じ装置を使用して、市販のフェライトコア(Schaffner製トロイダルコア、品番5975000801、外径3.95、内径2.15、厚さ1.35)に、粒径数百ミクロンのSUS304粒子を異物として混入させた試料の残留磁気信号の測定を行った。ただし、+52.5mTで着磁した後、キャンセル磁場として-17mTおよび-22mTのそれぞれの条件で測定を行った。
【0046】
図13にSUS304粒子を含まないフェライトコアだけの測定結果を示す。データの重なりを避け、見やすくするために縦軸方向にシフトして表示している。波形(a)、(b)はそれぞれキャンセル磁場-17mTおよび-22mTで測定した場合の磁気信号波形を示している。フェライトコアの磁化は残っており、大きな磁気信号の変化が検出されている。しかしながら、キャンセル磁場-17mTおよび-22mTでは磁気信号の変化量はほぼ等しく、極性が異なっている。すなわち、このキャンセル磁場-17mTおよび-22mTは図3(c)で示したキャンセル磁場(A)とキャンセル磁場(B)に対応している。図13の波形(c)は、波形(a)と(b)を加算した結果である。フェライトコアからの信号がほぼキャンセルされていることがわかる。信号がまだ若干のこっているが、これはキャンセル磁場(A)とキャンセル磁場(B)の最適化が不十分なためと考えられる。
【0047】
図14にSUS304粒子を表面に付けたフェライトコアの測定結果を示す。波形(a)、(b)はそれぞれキャンセル磁場-17mTおよび-22mTで測定した場合の磁気信号波形を、波形(c)は、波形(a)と(b)を加算した結果である。図10(b)に示した、SUS粒子の残留磁気-印加磁場特性からわかるように、-17mTのキャンセル磁場は丁度SUS粒子の残留磁気がゼロになる条件である。このため、図14の波形(a)は、SUS粒子があるにも関わらず、図13(a)のフェライトコアだけの信号波形とほぼ同じ形状になっている。一方、キャンセル磁場-22mTでの波形は、SUS粒子を含まない図13の結果と大きく異なっており、その結果、加算した波形に大きな磁気信号の変化が残っていることがわかる。加算した状態ではフェライトコアからの信号はキャンセルされることから、検出されている磁気信号は異物であるSUS304粒子からの磁気信号と判断できる。このように、検査材の磁化がmおよび−mとなるようなキャンセル磁場を使用して磁気信号を計測し、測定結果を加算することにより、検査材からの磁気信号をキャンセルする本発明の方法が有効であることが確認できた。
(実施例4)
本発明の別の実施例を示す。図15にSUS304粒子の残留磁気信号のSQUID-試料間距離依存性を示す。試料からの磁気信号はSQUID-試料間距離の増加と共に急激に減衰する。高感度に異物を検出するためには、異物と磁気センサーの距離を近づけることが重要である。
【0048】
しかしながら、検査材は厚みを持っているため、異物が磁気センサーから離れた側に混入した場合に検出が困難になる。
【0049】
図16に磁気センサーと試料の位置関係を表した模式図を示す。(a)は実施例1で使用した装置の場合に対応しており、試料1と磁気センサー6の間に試料台71が存在する。(b)は磁気センサ6を試料上面に配置した構成である。この場合、試料と磁気センサーの間に試料台がないため、試料と磁気センサー間距離を短縮でき、検出感度の改善が可能である。また、(c)は試料台7の上下に2つの磁気センサーを配置した構成である。異物2が片側のセンサーからは離れた位置に混入しても、もう一つの磁気センサが効率よく検出できるため、検出感度の改善が可能になる。
【0050】
また、(d)は試料の移動方向に沿って複数の磁気センサーを配置した構成である。実施例1では円盤状の試料台を使用し、容器を連続回転させることで繰り返し測定を行い、複数回の磁気信号波形を平均化していた。平均化により環境雑音などランダムに混入した磁気雑音信号を低減できる。図16(d)の構成では、一度の試料搬送で複数個の磁気センサーで複数回の磁気信号を計測できるようになっており、1つの磁気センサーで繰り替えし測定を行う場合と同じように複数回の磁気信号波形を平均化が可能である。複数の磁気センサーを使用するため計測時間の短縮も可能である。また、生産現場で製造装置と連結して測定する場合、試料を一直線に移動させて測定する方が製造ラインに組み込みやすい。
そのような場合に、磁気信号波形の平均化を行うには、複数の磁気センサーを並列して使用する構成が有効である。
(実施例5)
本発明の適用が可能な例として、いくつかの装置構成を示す。図17は本発明を適用した別の装置構成の一例である。環境雑音の影響を避けるため、磁気シールド82内に設置された磁気センサー6は、磁気センサー制御回路で駆動され、検出した信号データは、ADコンバータやパソコンからなるデータ収録解析回路に送られる。検査対象の試料は、例えばベルトコンベアーのような試料搬送機構83により搬送される。試料を搬送機構に乗せるための試料配置機構が必要な場合もある。
【0051】
試料は着磁用磁場印加機構80により所定の強度の磁場を印加され、ある方向に磁化される。続いてキャンセル磁場印加機構81により所定のキャンセル磁場が印加される。着磁やキャンセル磁場の印加には、電磁石を使用することができる。電磁石の場合、電流の大きさ、方向を調整することで任意の強度、方向の磁場を印加できるため、着磁用の電磁石とキャンセル用の電磁石を兼用することも可能である。また、着磁には比較的大きな磁場を印加する必要があるが、大きな磁場は高感度な磁気センサーの動作に悪影響を与える場合があるので、着磁は磁気シールドの外部で行う方が良い。その後、試料は磁気シールドに挿入され磁気センサーで磁気信号(残留磁気)が検出される。試料と共に移動する搬送機構部分は非磁性材料で構成することが望ましい。検出された磁気信号から異物の混入が判明した場合、該当する試料を除外するための選別機構も必要である。
【0052】
さらに、着磁機構やキャンセル磁場印加機構からの漏洩磁場が磁気信号の測定に影響を及ぼす場合には、図には示していないが、磁気シールド材で着磁機構やキャンセル磁場印加機構を囲むことで漏洩磁場の影響を抑えることができる。
【0053】
また、図18に別の装置構成の一例を示す。基本構成は図17の残留磁気を測定し、異物を検出する装置と同じであるが、図18の装置では磁気シールド82内にキャンセル磁場印加機構81が設置されている。すなわち、磁場を印加した状態で試料の磁化を測定する磁化率測定を行う場合の構成である。一般的には、残留磁気よりも磁場を印加した状態で測定した方が磁気信号が大きい。ただし、磁気センサー6が印加磁場の影響も受けるため、図には明示していないが印加磁場をキャンセルあるいは補正するための構成も必要な場合が多い。
【0054】
図19に別の装置構成の一例を示す。基本構成は図17の残留磁気を測定し、異物を検出する装置と同じであるが、図19の装置では、着磁用磁場印加機構80とキャンセル磁場印加機構81が兼用となっている。着磁用磁場とキャンセル磁場は磁場の方向が同じため、コイルに流す電流の向きと大きさを制御することで兼用可能である。また、図19の装置の一番大きな特徴は最初に試料1を消磁するための消磁機構84が付いている点である。事前に消磁を行うことで検査材の磁化状態の初期化が可能となり、着磁方向成分以外の残留磁気の影響を抑制できる。消磁については3軸すべての方向に対して消磁する事が望ましいが、困難な場合、試料の着磁方向と直交する方向の消磁を優先すべきである。着磁方向については、着磁とキャンセル磁場の印可を行うため、初期状態の影響を受けにくいからである。また、着磁方向が検出コイル面に垂直な方向で、かつ、平面型の一次微分グラジオメータで測定する場合、グラジオメータのベースライン方向の消磁が最も重要である。平面型の一次微分グラジオメータでは、検出コイル面に平行でベースライン方向に直交した方向に磁化した試料に対して検出感度が低いため、ベースライン方向に対して特に消磁が有効になる。
【0055】
なお、ここまで述べてきた実施例では、着磁用磁場(キャンセル磁場)の方向はSQUID検出面に垂直な方向で、また、試料の移動方向に対して垂直な方向であったが、本発明の方法は検査材の磁化自体を低減する方法であるため、磁気センサーの検出方向や試料の移動方向に対して特定の方向でのみ効果が現れるわけではない。つまり、どの方向に対して着磁用磁場とキャンセル磁場を適用しても検査材の磁化自体を低減する効果を得ることができる。だたし、着磁用磁場(キャンセル磁場)の方向と試料の移動方向、磁気センサーの検出方向の組み合わせにより、検出される磁気信号の形状や強度が変化する。検出感度に関して最適な方式は試料の形状も含めて考慮する必要がある。しかし、検査に必要な感度に対してマージンがある場合には、試料搬送の操作性、装置のメンテナンス性、コイルの配置や構造、製造コストなどを考慮し最適な形態を決めるべきである。ここで開示した実施例の形態は本発明の適用範囲をなんら制限するのもではない。
(実施例6)
次に、バックグラウンド信号を低減させる本発明の別の例を説明する。磁気信号による非破壊検査で検査材からの磁気信号が最も大きく変動するのは磁気センサーの信号検出領域に検査材が進入あるいは脱出したときである。つまり、磁気センサーの検出領域に存在する磁性体の量が変動するため、検出される磁気信号が変動する。そこで、本発明者らは、試料が移動しても磁気センサーの検出領域に存在する磁性体の量の変動を抑えることで、磁気信号の変動を抑制できることを見いだした。以下に、本発明の原理を説明する。
【0056】
まず、磁気信号の変動がある場合について説明する。図20(a)および(b)に磁気センサーとしてマグネトメータ10および平面型グラジオメータ12を使用して磁気信号を測定した場合の磁気信号波形を模式的に示す。試料1がy方向に移動して磁気センサーの信号検出領域を横切った場合、図20(a)に示すように、試料からは矢印で示したような磁力線11が発生し、マグネトメータでは上に凸の磁気信号波形が得られる。すなわち、試料1がマグネトメータ10の信号検出領域に進入するときに磁気信号が増加し、磁気センサーの信号検出領域から脱出するときに磁気信号がゼロに戻る。
【0057】
一方、2つの検出コイルを逆相で結合した平面型グラジオメータ10の場合、試料1が検出コイルのベースライン方向(y方向)に移動した場合に検出される磁気信号は図20(b)のような波形になる。この波形はマグネトメータで検出された上に凸の磁気信号波形を微分した形状である。
【0058】
いずれの場合も、試料の移動に伴い、検査材の磁気信号が大きく変動するため、微弱な磁気信号の検出が困難である。発明者らは、試料が移動した時に磁気センサーの検出領域に進入した磁性体の量の変動を低減することで、磁気信号の変動を抑制できることを見いだした。
【0059】
本発明の適用例を図21(a)に示す。試料とほぼ同じ磁気特性の材料からなる保持部材14に試料13をはめ込み、磁気センサーの信号検出領域を通過させることで、試料が移動しても磁気センサの検出領域を通過する、試料と保持部材との総和が一定となる。その結果、試料の移動に伴う磁気信号の変動を抑制できる。もし、保持部材と検査材の磁気特性が異なる場合、磁気センサの検出領域を通過する磁性体の体積が一定でも、磁気センサの検出領域に含まれる保持部材と検査材の割合が異なれば磁気センサが検出する磁気信号の変動が起きる。従って、持部材と検査材の磁気特性がたとえ異なる場合でも、保持部材と検査材の磁気特性の違いに起因する磁気信号の変動量が、検出すべき異物の磁気信号の変化量よりも少ないような材質の保持部材が望まれる。
【0060】
また、別の適用例を図21(b)に示す。試料の両端におよび試料間に試料とほぼ同じ磁気特性を有するスペーサー15,16を挿入することで、磁気センサの検出領域を通過する、試料とスペーサーとの総和が一定となる。その結果、磁気信号の変動が抑えられる。
【0061】
図21(c)に試料がはめ込まれた保持部材から発生する磁力線の分布を模式的に示す。保持部材の試料移動方向の長さは、磁気センサーの大きさよりも十分長いとする。そのような場合に、マグネトメータで検出される磁気信号波形17を図21(d)に示す。保持部材が磁気センサに進入あるいは脱出するときに、大きな磁気信号の変化が検出されるが、保持部材の中央付近では磁気信号の変動が少ない領域が生じる。したがって、検査材に微弱な磁気信号を有する異物が混入した場合、図21(d)に点線で示したように、検査材からの磁気信号の変動が少ない領域に異物からの磁気信号18が重畳して検出されるため、異物の検出が容易になる。
【0062】
また、本発明の手法では、複数の検査試料を保持部材に配置して測定することも可能である。また、検査材自体が矩形であれば、保持部材14あるいはスペーサー16を使用せずに直接連続して配置させることでも、同様の効果を得ることができる。
【0063】
本実施例で述べた、磁気センサーの検出領域に存在する磁性体の量の変動を抑える方法を、実施例1から4に記載のキャンセル磁場を印加する方法と併用することでさらにバックグラウンド信号を低減することが可能である。
【0064】
以上、いくつかの実施例を示し、本発明の効果を説明した。実施例では円形の試料について述べたが本発明の効果は原理的に試料の形状に依らない。例えば矩形や円柱状の試料や不定形の試料でも本発明の効果は得られる。また、検出される異物についても、実施例では異物としてSUS304について述べたが、他のステンレス鋼(SUS316,SUS410など)でも、鉄系の材料でも磁性を有する物質であれば適用可能である。また、実施例では検査材として強磁性体であるフェライトについて述べたが、他の磁性を有する材料であればセラミック材料に限らず、例えば樹脂であっても適用可能である。
【0065】
また、磁気センサーとしても、SQUID磁気センサーだけでなく、MRセンサー、GMRセンサー、MIセンサー、光ポンピング磁束計、などの磁束計でも本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…試料、2…異物、3…検査材、4…検査材の磁化、5…異物の磁化、6…磁気セン
サー、7…検査材の残留磁気、8…異物の残留磁気、9…外部磁場、10…マグネトメータ、11…磁力線、12…平面型グラジオメータ、13…試料、14…保持部材、15…スペーサー、16…スペーサー、17…マグネトメータで検出される磁気信号波形、18…異物からの磁気信号、21…冷却容、22…外槽、23…内槽、24…液体窒素、25…サファイヤロッド、26…銅ロッド、28…SQUID、29…電磁シールド30…磁気シールド、31…磁気シールド、32…サファイヤ窓、33…固定ネジ、34…回転機構、35…回転軸、36…移動ステージ(垂直方向)、37…移動ステージ(水平方向)、38…切欠き穴、40,40‘…磁石、41…ヨーク、42…着磁用磁場印加機構、43…キャンセル磁場印加機構、60…バイクリスタル基板、61…バイクリスタル接合面、62…検出コイル、63…配線パッド、64…SQUIDリング、65…粒界ジョセフソン結合、66…検出コイルの中央部分、67…フィードバックコイル、68…配線パッド(フィードバックコイル用)、71…試料台、72…固定するための穴、80…着磁用磁場印加機構、81…キャンセル磁場印加機構、82…磁気シールド、83…搬送機構、84…消磁機構
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気センサーを使用した被破壊検査に関するもので、特に磁性を有する検査対象物に付着あるいは混入した磁性不純物の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料や導電性複合材料などの被破壊検査には、透過X線診断法、超音波診断法、渦流探傷法などが実用化されているが、いずれも数百μm以下の異物に関しては検出が容易ではない。一方、新しい非破壊検査技術として、高感度な磁気センサー、例えば超伝導量子干渉素子(SQUID(Superconducting QUantum Interference Device)),を使用し、欠陥や異物により生じる微弱な磁気信号や磁気信号の変動を検出する磁気的非破壊検査が注目されている。特に、異物が磁性を有する場合、異物のサイズが百μm以下でも磁気信号が大きければ十分検出可能である。
【0003】
例えば、特許文献1では、一様な磁界中で検査材の磁化率に応じて変化する磁界を検出することで、検査材中の欠陥や異物の検査可能なことが示されている。しかしながら、検査材が磁性体であり、検査材から発生する磁界(以下バックグラウンド信号と呼ぶ)が大きいと、異物や欠陥による微弱な磁界の変化がバックグラウンド信号に隠れてしまうため、異物や欠陥の検出が困難になる。
【0004】
大きなバックグラウンド信号を除去する方法として、特許文献2では、検査材と逆方向に帯磁した参照サンプルを使用して、磁気センサーに検出される検査材からのバックグラウンド信号を基準サンプルからの信号で打ち消すことが提案されている。また、特許文献3では、予め良品であることがわかっている基準サンプルの測定結果と検査対象の測定結果との比較を行うことが報告されている。また、特許文献4では、被検査対象物検出用の磁気センサーと参照信号用磁気センサーを使用し、検出用磁気センサーの信号から参照信号用磁気センサーを差し引くことでバックグラウンド信号を除去する方式が開示されている。この方法は環境磁気雑音の除去に広く用いられているグラジオメータ方式の一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-77516
【特許文献2】特開平10-26608
【特許文献3】特開平7-27743
【特許文献4】特開2002-257789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、検査材から発生する磁界(バックグラウンド信号)が大きいと、検査材からなる試料に含まれる欠陥や異物により生じる微弱な磁界の変化を検出することは困難であることは従来から大きな課題として認識されており、特許文献2-4の方法が提案されてきた。
【0007】
しかしながら、これらの解決方法は、磁気センサーで検出される試料自身から発生する磁気信号(磁界)が欠陥や異物以外の原因でばらつく場合には、効果を期待できない。すなわち、欠陥や異物からの磁気信号の変化が、試料自身の磁気信号のばらつき以上でないと判定が困難である。特に、検査材からのバックグラウンド信号が大きい場合には、絶対値としての磁気信号のばらつきも大きくなるため、微細な欠陥や異物の検出は益々困難になる。磁気センサーで検出される試料自身から発生する磁気信号の変動要因としては、試料寸法のばらつき、不均一な帯磁など試料構造に起因する原因だけでなく、試料と磁気センサの相対位置の変動(距離など)も原因となる。
【0008】
本発明の目的は、磁性を有する検査材からなる試料の異物検査において、バックグラウンド信号自身を低減させること、および、バックグラウンド信号の変動を抑制することにより、バックグラウンド信号の影響を受けにくい検査技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明においては、試料を移動可能な搬送機構と、磁気センサーと、前記試料に着磁用磁場を印加する着磁用磁場印加機構と、前記着磁用磁場とは異なる向きの磁場であり、磁場の大きさが前記資料に含まれる前記検査材の保磁力に相当する大きさであるキャンセル磁場を、前記着磁用磁場を印加した後で前記試料に印加するキャンセル磁場印加機構と、前記キャンセル磁場が印加された状態で前記試料から発生する磁気信号の測定を行う磁気センサーと、前記磁気センサーにより測定された結果を計測データとして収録し、当該計測データに基づき解析を実行し、前記試料の中に異物が含まれているか否かを判定する演算手段を備えることを特徴とする磁気信号計測装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、磁性体からなる検査材自体から発生するバックグラウンド磁気信号を低減することが可能になる。その結果、バックグラウンド磁気信号に隠れて検出しづらかった異物からの磁気信号の検出が容易になる。また、バックグラウンド磁気信号自体が小さくなることで、試料毎のバックグラウンド磁気信号の変動量も少なくなり、磁気信号の変動と異物の存在との対応を容易に関連づけることができる。
【0011】
その結果、従来困難であった磁性体試料に含まれる磁性異物の非破壊検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】磁気信号による異物検査の原理説明図。
【図2】磁気ヒステリシス特性(M-H特性)の説明図
【図3】磁気ヒステリシスカーブとキャンセル磁場との関係を説明するための図(a)異物の保磁力>検査材の保磁力の場合、(b)検査材の保磁力>異物の保磁力の場合
【図4】2つのキャンセル磁場を使用した場合における、磁気ヒステリシスカーブとキャンセル磁場との関係
【図5】残留磁気―印加磁場特性の一例
【図6】残留磁気―印加磁場特性とキャンセル磁場との関係を説明するための図
【図7】実施例1で使用した磁気信号計測装置の模式図(a)装置全体の断面図、(b) 装置に固定された試料台を上から見た模式図
【図8】(a)試料台と(b)試料配置図
【図9】実施例1で使用したSQUID磁気センサーの構造図
【図10】残留磁気―印加磁場特性。(a) フェライトコア、(b)SUS304粒子
【図11】SUS粒子を含まないフェライトコアの磁気信号波形。
【図12】表面にSUS304粒子を張り付けたフェライトコアの磁気信号波形。
【図13】SUS304粒子を含まないフェライトコアの磁気信号波形。(a) キャンセル磁場=-17mT、(b) キャンセル磁場=-22mT、(c)加算波形((a)+(b))
【図14】表面にSUS304粒子を張り付けたフェライトコアの磁気信号波形。(a) キャンセル磁場=-17mT、(b) キャンセル磁場=-22mT、(c)加算波形((a)+(b))
【図15】SUS304粒子の残留磁気信号のSQUID-試料間距離依存性
【図16】磁気センサーと試料の位置関係(a)検査材と磁気センサーの間に試料台が存在する場合、(b)試料と磁気センサーの間に試料台がない場合、 (c)は上下両方に磁気センサーを配置した構成例、 (d)試料の移動方向に沿って複数の磁気センサーを配置した構成例
【図17】本発明を適用した別の装置構成の一例
【図18】本発明を適用した別の装置構成の一例
【図19】本発明を適用した別の装置構成の一例
【図20】マグネトメータおよび1次微分平面型グラジオメータを使用した場合の検査材の磁化方向と検出される磁気信号波形の関係を説明する図
【図21】スペーサーを使用したバックグラウンド信号の低減方法を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の開示は、本発明の一実施例にすぎず、本発明の技術範囲を何ら限定するものではない。
(実施例1)
本発明者らは、試料を構成する検査材と検出すべき異物の磁化特性が異なることに着目し、試料の着磁方法を工夫することで、バックグラウンド信号の変動の影響を抑制し異物からの磁気信号を高精度に測定できることを見いだした。以下に、本発明の原理を説明する。
【0014】
まず、磁気信号による異物検査の原理を簡単に説明する。図1に測定原理を図示する。異物2と検査材3からなる試料1に外部磁場9を印加すると、検査材と異物の両方が磁化され、それぞれの磁化率(帯磁率)に応じて磁気信号が発生する。外部磁場を印加した状態で試料からの磁化を測定するのが磁化率測定法(帯磁率測定法)である。この場合、磁気センサー6には検査材の磁化4、異物の磁化5、および外部磁場9の成分が含まれる。
高感度に異物の混入を検出するためには、異物の磁化(信号成分)と“検査材の磁化および外部磁場成分”(バックグラウンド信号)の比率(SN比)を向上させることが必要である。通常、磁化率測定法では、外部磁場の方向が磁気センサーの検出方向と直行するように配置する、外部磁場のキャンセルコイルを磁気センサー近傍に設けるなど、磁気センサに外部磁場による磁気信号が可能な限り検出されないように工夫されている。そのため、通常、バックグラウンド信号の主成分は検査材の磁化となる。
【0015】
また別の方法として、印加磁場を遮断した後で、試料の残留磁気を測定する残留磁気法がある。この場合、高感度に異物を検出するためには、異物の残留磁気8(信号成分)と検査材の残留磁気7(バックグラウンド信号)の比率(SN比)を向上させることが必要である。したがって、磁化率測定法、残留磁気法のいずれの場合でも、検査材からの磁気信号を低減することがSN比の向上に有効となる。
【0016】
図2に磁性体の磁気ヒステリシスカーブを模式的に示す。磁気ヒステリシスカーブは印加磁場に対して磁性体の磁化を縦軸にプロットしたもので、磁性体の磁化過程を表している。(1)着磁前の状態(A)から磁場を印加すると、試料の磁化は曲線A-B((2)初期磁化曲線)に沿って増加していくが、徐々に磁化が飽和しB点で(3)飽和磁束密度に達する。ここから印加磁場を下げていくと、曲線B-C-D-Eの経路で試料の磁化は減少していく。磁性体試料の場合、印加磁場をゼロまで下げても試料の磁化はゼロにならず残留磁気((4)残留磁束密度)を示す(C点)。さらに逆方向に磁界を印加すると磁化は減少し、今度は逆方向に磁化される。丁度、試料の磁化がゼロになるときの印加磁場の大きさは(5)保磁力と呼ばれている(D点)。逆方向の磁界が十分大きいと再び試料の磁化は飽和する(E点)。
そこから、順方向に磁場を増加させていくと、曲線E-F-G-Bの経路で試料の磁化は変化する。
【0017】
検査材と検出すべき異物の磁化特性が異なる場合、検査材と検出すべき異物のそれぞれに対応した2つの磁気ヒステリシスカーブが存在する。図3に2つの磁気ヒステリシスカーブの関係を模式的に表す。点線は検査材のヒステリシスカーブ、実線は異物のヒステリシスカーブを示しており、 (a)は異物の保磁力が検査材の保磁力より大きい場合、(b)は検査材の保磁力が異物の保磁力より大きい場合を表している。前述した従来の方法では、一様な磁場を印加しながら試料の磁化を測定する、あるいは磁場を印加して着磁した後に残留磁気を測定するため、検査材の磁化による磁気信号が大きなバックグラウンド信号となっていた。
【0018】
本発明では試料を着磁した後で、着磁用の磁場と逆方向の磁場(キャンセル磁場)を印加しながら試料の磁化を測定する。例えば、図3(a)に示すように、検査材の保磁力に相当するキャンセル磁場を印加した状態で磁気信号を測定すると、検査材からの磁気信号はゼロになる。一方、異物の磁化もキャンセル磁場の印加により減少するが、保磁力が大きいため磁化が残っている。原理的にはバックグラウンド信号をゼロにできるため、検出すべき異物からの磁気信号とバックグラウンド信号の比(SN比)は大きくに改善され、バックグラウンド信号の影響を受けずに異物の検査が可能になる。実際には多少のバックグラウンド信号が残る可能性があるが、その場合にも、SN比は改善されており、従来は検査材からの磁気信号(バックグラウンド信号)に隠れていた異物の磁気信号を検出しやすくなる。また、本発明では、バックグラウンド信号自身の低減に伴い、バックグラウンド信号の変動も小さくなる効果も期待できる。
【0019】
また、本発明の方法は検査材の保磁力が異物の保磁力より大きい場合にも有効である。図3(b)に示すように、検査材の保磁力が異物の保磁力より大きい場合にも、検査材の保磁力に相当するキャンセル磁場を印加すると検査材の磁化はゼロになる。キャンセル磁場が異物の保磁力を越えているため、キャンセル磁場印加により、異物は逆方向に着磁され、異物からは磁気信号が発生する。その結果、バックグラウンド信号の低減、SN比の改善が可能となる。
【0020】
また、キャンセル磁場の均一性が不十分であったり、検査材の形状が複雑な場合、検査材により印加磁場が影響を受け不均一になる場合など、キャンセル磁場印加により完全に検査材の磁化をゼロにできない可能性がある。しかしながら、このような場合でも、本発明の方法を適用することで、本発明を適用しない場合よりもバックグラウンド信号を低減できるため、本発明の効果を活用できる。キャンセル磁場印加により完全に検査材の磁化をゼロにできない場合は、例えば、あらかじめ計測しておいた標準試料の磁気信号を差し引くことで検査材からの磁気信号をさらに低減させ、SN比を改善することもできる。標準試料の磁気信号としては、良品であることがわかっている試料の磁気信号や複数の良品試料の平均値などを用いることができる。しかし、良品試料の磁気信号のばらつきが元々大きい場合、標準試料の磁気信号の選定が困難なだけでなく、測定データの判定が難しくなる。
【0021】
また、検査材と異物との磁気特性の違いを利用すれば、図4に示すように、検査材の磁化がmになるキャンセル磁場(キャンセル磁場(A))と検査材の磁化が−m(絶対値が等しく、向きが逆)になるキャンセル磁場(キャンセル磁場(B))で磁気信号を測定し、測定結果を加算することで最終的に検査材の磁化を消去することも可能である。検査材と異物との磁気特性が異なるため、加算処理後も異物の信号は残っており検出可能である。この2つのキャンセル磁場を使用する方法は検査材自身のバックグラウンド信号を差し引くため、標準試料と検査試料とのばらつきの影響も抑制できるメリットがある。例えば、試料のサイズが標準よりも若干大きな場合、発生するバックグラウンド信号も大きくなる。
この場合、前述のあらかじめ計測しておいた標準試料の磁気信号を差し引く方法では、バックグラウンド信号を十分に削除できない。その結果、たとえ試料に異物が含まれていなくても、差し引き後のデータに大きな磁気信号が残り、不良との判定になる可能性がある。しかしながら、2つのキャンセル磁場を使用する方法では、試料のサイズの違いに応じて、2つのキャンセル磁場で検出される検査材の磁気信号の大きさも変化する。その結果、加算処理により試料のサイズの違いに応じた検査材からの磁気信号の除去が可能になる。
【0022】
ここまで、本発明を磁化率測定に適用した場合に、ついて説明してきたが、本発明は残留磁気測定にも有効である。
【0023】
図5に残留磁気―印加磁場特性の一例を示す。残留磁気―印加磁場特性は、試料に磁場を印加した後、磁場を遮断してから測定された試料の残留磁気を印加磁場に対してプロットすることで得られる。このように、残留磁気-印加磁場特性においても、図2に示した磁気ヒステリシスカーブと類似したヒステリシス特性が存在する。正方向の磁界を印加して着磁した後、逆方向の磁界を印加していくと、残留磁気信号はある逆方向の磁界を印加した後でゼロになる。また、検査材と検出すべき異物の磁化特性が異なる場合、検査材と検出すべき異物のそれぞれに対応した2つの磁気ヒステリシスカーブが存在する。したがって、図3、4で説明した磁化率特性の違いを使用した磁化率測定における本発明のアイデアを、残留磁気計測にも類似の考え方で適用できる。
【0024】
図6に磁気特性が異なる2つの残留磁気―印加磁場特性の関係を模式的に表す。点線を検査材の残留磁気―印加磁場特性、実線は異物の残留磁気―印加磁場特性とする。 正方向の磁界を印加して着磁した後、丁度、検査材の残留磁気がゼロになるような逆方向の磁場をキャンセル磁場として印加し、磁場を遮断した後で残留磁気信号を測定すると、検査材からの残留磁気信号はゼロになる。一方、異物の残留磁化もキャンセル磁場の印加により減少するが、図6に示した例ではキャンセル磁場を印加しても正方向の磁化がまだ残っている。そのため、原理的にはバックグラウンド信号がゼロの状態で、検出すべき異物からの残留磁気信号を計測可能になる。実際には多少のバックグラウンド信号が残る可能性があるが、その場合にも、SN比は改善されており、従来は検査材自体の磁気信号(バックグラウンド信号)に隠れていた異物の磁気信号を検出しやすくなる。このように、残留磁気―印加磁場特性にヒステリシスがあることを利用して、適切なキャンセル磁場を印加した後で測定することで、バックグラウンド信号を低減させ、微弱な磁気信号の検出が可能になる。
【0025】
同様に、図4で説明した2つのキャンセル磁場を使用した方法も残留磁気計測に適用することができることも自明である。
【0026】
実施例で述べてきたように、本発明では検査材と異物の磁気特性が異なっていることが必要である。通常の異物検査では、検査材と異物は材質が異なるため、磁気特性も異なっており、本発明を適用して効果を得ることができる。たとえ同じ材質であっても、異物はサイズか小さい、形状異方性がある、塑性変形により結晶構造が異なるなどの要因により検査材と異なる磁気特性を有する場合も適用可能である。
(実施例2)
工場の製造ラインでは、ベアリング、ボルト、ナット、撹拌羽、カッター、溶接の腐食部分など様々なところから種々の金属摩耗粉の混入が起きる。製造ラインは鉄製やSUS製(SUS304などステンレス)の部品が多く使用されているため、特に鉄やSUSの異物が混入しやすい。本実施例では、強磁性体であるフェライト製の部品に混入したSUS304の微粒子の検出に適用した場合について述べる。オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304は本来非磁性であるが、摩擦や溶接などでマルテンサイト系に塑性変形を起こし、強磁性体に変化する。異物として混入するSUS304は、混入する過程で応力を受け塑性変形を起こしており、磁気信号を発生する。本実施例では、高感度なSQUID磁気センサーを使用して、フェライトコアに付着したSUS304の検出をすることで、本発明の効果の検証を行った。本実施例では、試料として市販のフェライトコア(Schaffner製トロイダルコア、品番5975000801、外径3.95mm、内径2.15mm、厚さ1.35mm)を使用した。
【0027】
はじめに実施例で用いた磁気信号計測装置について説明する。図7に磁気信号計測装置の模式図を示す。環境磁気雑音のSQUID28への入力を低減するために、SQUID28およびSQUIDを冷却するための冷却容器21は電磁シールド29および磁気シールド30、31によって囲まれている。電磁シールド29はアルミニウムなどの電気抵抗が低い金属材料で構成されており、電磁波に対するシールド効率が高い。一方、磁気シールド30、31は、パーマロイ等の高透磁率材料から構成されており、主に磁気信号のシールドに有効である。磁気シールド31は装置全体を囲むことで、装置外部からの磁気雑音に有効である一方、磁気シールド30は装置外部からの磁気雑音だけでなく、装置内部の移動機構やモータなどから発生する磁気雑音に対しても有効である。しかしながら、磁気シールド30の一部には試料台71を挿入するための切欠き穴38が形成されている。
【0028】
このため、磁気シールド30だけでは装置外部からの磁気雑音のシールドが不足すると考え、装置全体を囲む磁気シールド31と組み合わせている。
【0029】
試料台71は固定ネジ33により回転軸35に固定されている。図8(a)に実験で使用した試料台71の模式図を示す。試料台は樹脂などの非磁性材料で作製されている。試料台71は円形で、外周部が立ち上がった構造になっており、中央には装置に固定するための貫通穴72が開いている。
【0030】
また、図7(b)は装置に固定された試料台を上から見た模式図であるが、図に示すようにSQUID28と対向する位置には試料1を磁化するための着磁用磁場印加機構42およびキャンセル磁場印加機構43を設置した。着磁用磁場印加機構42およびキャンセル磁場印加機構43はいずれも2つの磁石40,40‘とヨーク41で構成されており、2つの磁石の間に垂直方向の平行磁界が発生するように2つの磁石の磁化方向は揃っている。磁石を交換することで印加磁場の強度を独立して調整可能である。試料台71が図7(b)に示した矢印の方向に回転することで、着磁用磁場印加機構42により試料に着磁用の磁場を印加された後、引き続きキャンセル磁場印加機構43により試料に着磁用の磁場を印加される。その後、試料はSQUID磁気センサ上を通過し、試料から発生する磁気信号が検出される。
【0031】
本実施例では図8(b)に示すように、12個の円形の試料1が等間隔になるように試料台71に配置し、移動しないようにテープで固定した。各試料には1から12までの固有の番号(試料番号)が割り振られており、識別可能である。試料台71は穴72により、試料台71に固定され、試料台71は回転機構34に接続された回転軸35によって回転する。回転機構34は、移動ステージ36、37上でx、zの2軸方向に移動可能となっており、回転機構35の移動により、試料台71の一部が切り欠き穴38を通って、磁気シールド30の内部へ挿入される。試料台の回転に伴い、12個の試料は順次、着磁用磁場印加機構42およびキャンセル磁場印加機構43を通過し、その後、SQUID28の上を通過し、そのときの磁気信号が計測される。したがって、測定中には試料に外部磁界は印加されておらず、本装置は残留磁気法(図1参照)による測定に該当する。
【0032】
試料台は通常25rpmで回転しており、連続して5〜30回転分の信号を測定した。測定後、SN比を改善するために加算平均処理を行った。理論上SN比は加算回数の平方根に比例して向上する。加算平均処理により低減される雑音成分は試料とは関係ないランダムな雑音成分のみであり、試料に起因する残留磁気信号(異物からの信号と検査材からのバックグラウンド信号)は保存される。
【0033】
SQUIDに検出される試料からの磁気信号は、SQUIDと試料の距離に依存し、距離が離れるほど磁気信号が急激に減衰する。高感度に試料からの磁気信号を検出するためには、室温の試料1と低温のSQUID28との距離を小さくすることが重要である。本装置では、断熱に真空断熱層を使用し、薄いサファイヤウインドウ29により真空を維持された冷却容器の真空層部分にSQUID28が配置されている。サファイヤウインドウ29は非磁性の円筒部品39に固定されており、上下方向に位置合わせが可能である。試料下面とSQUIDとの距離は約1.5mmである。
SQUID28は熱伝導率の高い銅ロッド26及びサファイヤロッド25を介して液体窒素24により間接的に冷却されている。冷却容器の外槽22、内槽23は、SUSやFRP等の非磁性材料で構成される。SQUID28と銅ロッド26との間にサファイヤロッド25を介することにより、銅ロッド26から発生する磁気雑音の影響を低減する効果がある。
【0034】
本実施例の磁気信号計測装置ではSQUID28として、高温超電導SQUIDグラジオメータを使用した。図9は高温超電導SQUIDグラジオメータの構成を模式的に示す平面図である。図9(a)は全体を示す図、図9(b)は中央部分の拡大図である。検出コイル62及びSQUIDリング64は、SrTiO3やMgO等の単結晶を結晶軸が異なる方向で張り合わされた構造のバイクリスタル基板60上に形成された、YBa2Cu3Ox等の高温超電導材料を加工することで作製した。張り合わせ面はバイクリスタル接合面61と呼ばれる。SQUIDリング64は、バイクリスタル基板60に形成されたバイクリスタル接合面61を横切っており、バイクリスタル接合面61上に形成された超電導薄膜に粒界ジョセフソン結合65が形成されている。その結果、SQUIDリング64には2カ所の粒界ジョセフソン結合65が形成される。今回使用したSQUIDでは、1枚の基板上に同じ検出コイルと結合した2つのSQUIDリング64,64’が形成されており、そのうち特性が良い方のSQUIDを実験で使用した。
【0035】
検出コイル62は、一辺が5mmの2つのループからなる5x10mmの8の字型の微分コイルを構成しており、検出コイル62に磁束が入力すると、2つのループの各ループに生じる誘導電流の差分量が検出コイルの中央部分66を経由してSQUIDリング64、64‘に流れる。この電流が磁束として検出される。2つのループの中心間距離をベースライン、2つのループの中心を通る方向をベースライン方向と呼ぶ。2つの検出コイルの差を検出するグラジオメータでは、地磁気や環境雑音のように空間的に均一な磁気信号は2つの検出コイルに同時に鎖交する信号はキャンセルすることができる。検査材からのバックグラウンド信号が2つの検出コイルに同時に鎖交する場合には、バックグラウンド信号も低減することができる。
【0036】
フィードバックコイル67は、検出コイル62のうち片方のループを囲むように基板60上にパターニングされ形成されている。2つのフィードバックコイル67,67’の内、片方を使用した。配線の接続が必要なところには超電導薄膜の上に、金の配線パッド63,および68がパターニングされている。配線パッド63はSQUIDリング64と電気接続されており、配線パッド68はフィードバックコイル67と電気接続されている。
【0037】
図10(a)および(b)にフェライトコアおよび約400μm x 200μmのSUS304粒子の残留磁気-印加磁場特性を示す。横軸は印加磁場、縦軸はSQUID磁気センサーで検出された磁気信号を示しており、単位は磁束量子Φ0(=2.07x10-15Wb)である。+51.5mTの印加した後、逆方向の磁場を印加すると、残留磁気は下がりはじめ、フェライトコアの残留磁気は-19.4mTの磁場を印加すると残留磁気がほぼゼロとなった。一方、SUS304粒子では、約-17mT付近の逆磁場を印加すると残留磁気がほぼゼロになり、フェライトコアの残留磁気がゼロになる-19.4mTの磁場を印加するとSUS304粒子は逆方向着磁されることがわかる。
【0038】
図11に+51.5mTで着磁し、キャンセル磁場(Bcancel)は印加せずに測定したフェライト
コアの磁気信号波形(Bcancel=0mT)、および、+51.5mTで着磁した後に-19.4mTのキャンセル磁場を印加してから測定したフェライトコアの磁気信号波形(Bcancel=-19.4mT)の一例を示す。キャンセル磁場を印加することで、Bcancel=0mTでは48Φ0の磁気信号の変化が、約1/30の1.8Φ0にまで小さくなっていることがわかる。すなわち、適切なキャンセル磁場を印加することにより検査材であるフェライトコアからの磁気信号を著しく低減できることが確認できる。
【0039】
図12にフェライトコアの表面にSUS304粒子を張り付けた試料に対して、+51.5mTで着磁し、キャンセル磁場(Bcancel)は印加せずに測定した磁気信号波形(Bcancel=0mT)、および、+51.5mTで着磁した後に-19.4mTのキャンセル磁場を印加してから測定した磁気信号波形(Bcancel=-19.4mT)の一例を示す。Bcancel=0mTでは約42Φ0の磁気信号の変化が検出されたが、この値はフェライトコアだけの場合の値48Φ0に近く、またSUS粒子があるにも関わらず磁気信号の変化量は減少していた。したがって、単純に着磁して磁気信号を計測しただけでは、異物の存在を判定することは極めて困難である。
【0040】
一方、Bcancel=-19.4mTを印加して測定した場合、10.6Φ0の磁気信号の変化を検出できた。この値はフェライトコアだけの場合の値(1.8Φ0)よりも5倍以上大きく、異物の存在を判定するのに十分な値である。
【0041】
なお、本装置では、異物検出判定のしきい値を登録することで異物混入の判定が可能な構成となっている。あらかじめ磁気信号の最大変化量を例えば5Φ0と設定しておけば、例えば図12に示した試料のように10.6Φ0の磁気信号の変化が検出されれば、異常な磁気信号が検出されたこと、検出された試料番号が表示される。
【0042】
また、-19.4mTのキャンセル磁場を印加しても、フェライトコアだけの場合に完全に磁気信号がゼロになっていない。この結果は、キャンセル磁場の方向(着磁用磁場の方向も平行)以外の成分の影響と考えられる。
【0043】
飽和磁束密度に達するほど十分強い磁場を印加すれば、着磁用磁場の方向に垂直な成分はほとんど残っていない、あるいは、残っていても着磁用磁場の方向に垂直な面内に配向していない状態である。そのような状態であれば、キャンセル磁場に垂直な成分の影響はほとんど残らないと考えられる。しかしながら、本実施例では、実験装置の制約のため着磁用磁場として+52.5mTまでしか印可できなかった。そのため、本発明の効果は十分に確認できたものの、最適なキャンセル磁場でも若干の磁気信号が残ったと考えられる。
【0044】
また、キャンセル磁場に垂直な成分の影響を低減する別の方法として、着磁の時に磁化の方向を完全に揃えるほかに、少なくともキャンセル磁場に垂直な成分に対して、測定前にあらかじめ試料を消磁する方法も可能である。
【0045】
さらに、最適なキャンセル磁場でも若干の磁気信号が残った場合でも、磁気信号をさらに低減させる方法として、あらかじめ標準試料の磁気信号を計測しておき、差し引く方法が考えられる。特にキャンセル磁場を適用しても残っている磁気信号のばらつきが小さい場合は、標準信号との差分を求める方法は有効であり、場合によっては、異物からの磁気信号が検査材からの磁気信号の変動成分よりも小さい場合でも検出が可能になる。
(実施例3)
次に本発明の別の実施例を示す。実施例1と同じ装置を使用して、市販のフェライトコア(Schaffner製トロイダルコア、品番5975000801、外径3.95、内径2.15、厚さ1.35)に、粒径数百ミクロンのSUS304粒子を異物として混入させた試料の残留磁気信号の測定を行った。ただし、+52.5mTで着磁した後、キャンセル磁場として-17mTおよび-22mTのそれぞれの条件で測定を行った。
【0046】
図13にSUS304粒子を含まないフェライトコアだけの測定結果を示す。データの重なりを避け、見やすくするために縦軸方向にシフトして表示している。波形(a)、(b)はそれぞれキャンセル磁場-17mTおよび-22mTで測定した場合の磁気信号波形を示している。フェライトコアの磁化は残っており、大きな磁気信号の変化が検出されている。しかしながら、キャンセル磁場-17mTおよび-22mTでは磁気信号の変化量はほぼ等しく、極性が異なっている。すなわち、このキャンセル磁場-17mTおよび-22mTは図3(c)で示したキャンセル磁場(A)とキャンセル磁場(B)に対応している。図13の波形(c)は、波形(a)と(b)を加算した結果である。フェライトコアからの信号がほぼキャンセルされていることがわかる。信号がまだ若干のこっているが、これはキャンセル磁場(A)とキャンセル磁場(B)の最適化が不十分なためと考えられる。
【0047】
図14にSUS304粒子を表面に付けたフェライトコアの測定結果を示す。波形(a)、(b)はそれぞれキャンセル磁場-17mTおよび-22mTで測定した場合の磁気信号波形を、波形(c)は、波形(a)と(b)を加算した結果である。図10(b)に示した、SUS粒子の残留磁気-印加磁場特性からわかるように、-17mTのキャンセル磁場は丁度SUS粒子の残留磁気がゼロになる条件である。このため、図14の波形(a)は、SUS粒子があるにも関わらず、図13(a)のフェライトコアだけの信号波形とほぼ同じ形状になっている。一方、キャンセル磁場-22mTでの波形は、SUS粒子を含まない図13の結果と大きく異なっており、その結果、加算した波形に大きな磁気信号の変化が残っていることがわかる。加算した状態ではフェライトコアからの信号はキャンセルされることから、検出されている磁気信号は異物であるSUS304粒子からの磁気信号と判断できる。このように、検査材の磁化がmおよび−mとなるようなキャンセル磁場を使用して磁気信号を計測し、測定結果を加算することにより、検査材からの磁気信号をキャンセルする本発明の方法が有効であることが確認できた。
(実施例4)
本発明の別の実施例を示す。図15にSUS304粒子の残留磁気信号のSQUID-試料間距離依存性を示す。試料からの磁気信号はSQUID-試料間距離の増加と共に急激に減衰する。高感度に異物を検出するためには、異物と磁気センサーの距離を近づけることが重要である。
【0048】
しかしながら、検査材は厚みを持っているため、異物が磁気センサーから離れた側に混入した場合に検出が困難になる。
【0049】
図16に磁気センサーと試料の位置関係を表した模式図を示す。(a)は実施例1で使用した装置の場合に対応しており、試料1と磁気センサー6の間に試料台71が存在する。(b)は磁気センサ6を試料上面に配置した構成である。この場合、試料と磁気センサーの間に試料台がないため、試料と磁気センサー間距離を短縮でき、検出感度の改善が可能である。また、(c)は試料台7の上下に2つの磁気センサーを配置した構成である。異物2が片側のセンサーからは離れた位置に混入しても、もう一つの磁気センサが効率よく検出できるため、検出感度の改善が可能になる。
【0050】
また、(d)は試料の移動方向に沿って複数の磁気センサーを配置した構成である。実施例1では円盤状の試料台を使用し、容器を連続回転させることで繰り返し測定を行い、複数回の磁気信号波形を平均化していた。平均化により環境雑音などランダムに混入した磁気雑音信号を低減できる。図16(d)の構成では、一度の試料搬送で複数個の磁気センサーで複数回の磁気信号を計測できるようになっており、1つの磁気センサーで繰り替えし測定を行う場合と同じように複数回の磁気信号波形を平均化が可能である。複数の磁気センサーを使用するため計測時間の短縮も可能である。また、生産現場で製造装置と連結して測定する場合、試料を一直線に移動させて測定する方が製造ラインに組み込みやすい。
そのような場合に、磁気信号波形の平均化を行うには、複数の磁気センサーを並列して使用する構成が有効である。
(実施例5)
本発明の適用が可能な例として、いくつかの装置構成を示す。図17は本発明を適用した別の装置構成の一例である。環境雑音の影響を避けるため、磁気シールド82内に設置された磁気センサー6は、磁気センサー制御回路で駆動され、検出した信号データは、ADコンバータやパソコンからなるデータ収録解析回路に送られる。検査対象の試料は、例えばベルトコンベアーのような試料搬送機構83により搬送される。試料を搬送機構に乗せるための試料配置機構が必要な場合もある。
【0051】
試料は着磁用磁場印加機構80により所定の強度の磁場を印加され、ある方向に磁化される。続いてキャンセル磁場印加機構81により所定のキャンセル磁場が印加される。着磁やキャンセル磁場の印加には、電磁石を使用することができる。電磁石の場合、電流の大きさ、方向を調整することで任意の強度、方向の磁場を印加できるため、着磁用の電磁石とキャンセル用の電磁石を兼用することも可能である。また、着磁には比較的大きな磁場を印加する必要があるが、大きな磁場は高感度な磁気センサーの動作に悪影響を与える場合があるので、着磁は磁気シールドの外部で行う方が良い。その後、試料は磁気シールドに挿入され磁気センサーで磁気信号(残留磁気)が検出される。試料と共に移動する搬送機構部分は非磁性材料で構成することが望ましい。検出された磁気信号から異物の混入が判明した場合、該当する試料を除外するための選別機構も必要である。
【0052】
さらに、着磁機構やキャンセル磁場印加機構からの漏洩磁場が磁気信号の測定に影響を及ぼす場合には、図には示していないが、磁気シールド材で着磁機構やキャンセル磁場印加機構を囲むことで漏洩磁場の影響を抑えることができる。
【0053】
また、図18に別の装置構成の一例を示す。基本構成は図17の残留磁気を測定し、異物を検出する装置と同じであるが、図18の装置では磁気シールド82内にキャンセル磁場印加機構81が設置されている。すなわち、磁場を印加した状態で試料の磁化を測定する磁化率測定を行う場合の構成である。一般的には、残留磁気よりも磁場を印加した状態で測定した方が磁気信号が大きい。ただし、磁気センサー6が印加磁場の影響も受けるため、図には明示していないが印加磁場をキャンセルあるいは補正するための構成も必要な場合が多い。
【0054】
図19に別の装置構成の一例を示す。基本構成は図17の残留磁気を測定し、異物を検出する装置と同じであるが、図19の装置では、着磁用磁場印加機構80とキャンセル磁場印加機構81が兼用となっている。着磁用磁場とキャンセル磁場は磁場の方向が同じため、コイルに流す電流の向きと大きさを制御することで兼用可能である。また、図19の装置の一番大きな特徴は最初に試料1を消磁するための消磁機構84が付いている点である。事前に消磁を行うことで検査材の磁化状態の初期化が可能となり、着磁方向成分以外の残留磁気の影響を抑制できる。消磁については3軸すべての方向に対して消磁する事が望ましいが、困難な場合、試料の着磁方向と直交する方向の消磁を優先すべきである。着磁方向については、着磁とキャンセル磁場の印可を行うため、初期状態の影響を受けにくいからである。また、着磁方向が検出コイル面に垂直な方向で、かつ、平面型の一次微分グラジオメータで測定する場合、グラジオメータのベースライン方向の消磁が最も重要である。平面型の一次微分グラジオメータでは、検出コイル面に平行でベースライン方向に直交した方向に磁化した試料に対して検出感度が低いため、ベースライン方向に対して特に消磁が有効になる。
【0055】
なお、ここまで述べてきた実施例では、着磁用磁場(キャンセル磁場)の方向はSQUID検出面に垂直な方向で、また、試料の移動方向に対して垂直な方向であったが、本発明の方法は検査材の磁化自体を低減する方法であるため、磁気センサーの検出方向や試料の移動方向に対して特定の方向でのみ効果が現れるわけではない。つまり、どの方向に対して着磁用磁場とキャンセル磁場を適用しても検査材の磁化自体を低減する効果を得ることができる。だたし、着磁用磁場(キャンセル磁場)の方向と試料の移動方向、磁気センサーの検出方向の組み合わせにより、検出される磁気信号の形状や強度が変化する。検出感度に関して最適な方式は試料の形状も含めて考慮する必要がある。しかし、検査に必要な感度に対してマージンがある場合には、試料搬送の操作性、装置のメンテナンス性、コイルの配置や構造、製造コストなどを考慮し最適な形態を決めるべきである。ここで開示した実施例の形態は本発明の適用範囲をなんら制限するのもではない。
(実施例6)
次に、バックグラウンド信号を低減させる本発明の別の例を説明する。磁気信号による非破壊検査で検査材からの磁気信号が最も大きく変動するのは磁気センサーの信号検出領域に検査材が進入あるいは脱出したときである。つまり、磁気センサーの検出領域に存在する磁性体の量が変動するため、検出される磁気信号が変動する。そこで、本発明者らは、試料が移動しても磁気センサーの検出領域に存在する磁性体の量の変動を抑えることで、磁気信号の変動を抑制できることを見いだした。以下に、本発明の原理を説明する。
【0056】
まず、磁気信号の変動がある場合について説明する。図20(a)および(b)に磁気センサーとしてマグネトメータ10および平面型グラジオメータ12を使用して磁気信号を測定した場合の磁気信号波形を模式的に示す。試料1がy方向に移動して磁気センサーの信号検出領域を横切った場合、図20(a)に示すように、試料からは矢印で示したような磁力線11が発生し、マグネトメータでは上に凸の磁気信号波形が得られる。すなわち、試料1がマグネトメータ10の信号検出領域に進入するときに磁気信号が増加し、磁気センサーの信号検出領域から脱出するときに磁気信号がゼロに戻る。
【0057】
一方、2つの検出コイルを逆相で結合した平面型グラジオメータ10の場合、試料1が検出コイルのベースライン方向(y方向)に移動した場合に検出される磁気信号は図20(b)のような波形になる。この波形はマグネトメータで検出された上に凸の磁気信号波形を微分した形状である。
【0058】
いずれの場合も、試料の移動に伴い、検査材の磁気信号が大きく変動するため、微弱な磁気信号の検出が困難である。発明者らは、試料が移動した時に磁気センサーの検出領域に進入した磁性体の量の変動を低減することで、磁気信号の変動を抑制できることを見いだした。
【0059】
本発明の適用例を図21(a)に示す。試料とほぼ同じ磁気特性の材料からなる保持部材14に試料13をはめ込み、磁気センサーの信号検出領域を通過させることで、試料が移動しても磁気センサの検出領域を通過する、試料と保持部材との総和が一定となる。その結果、試料の移動に伴う磁気信号の変動を抑制できる。もし、保持部材と検査材の磁気特性が異なる場合、磁気センサの検出領域を通過する磁性体の体積が一定でも、磁気センサの検出領域に含まれる保持部材と検査材の割合が異なれば磁気センサが検出する磁気信号の変動が起きる。従って、持部材と検査材の磁気特性がたとえ異なる場合でも、保持部材と検査材の磁気特性の違いに起因する磁気信号の変動量が、検出すべき異物の磁気信号の変化量よりも少ないような材質の保持部材が望まれる。
【0060】
また、別の適用例を図21(b)に示す。試料の両端におよび試料間に試料とほぼ同じ磁気特性を有するスペーサー15,16を挿入することで、磁気センサの検出領域を通過する、試料とスペーサーとの総和が一定となる。その結果、磁気信号の変動が抑えられる。
【0061】
図21(c)に試料がはめ込まれた保持部材から発生する磁力線の分布を模式的に示す。保持部材の試料移動方向の長さは、磁気センサーの大きさよりも十分長いとする。そのような場合に、マグネトメータで検出される磁気信号波形17を図21(d)に示す。保持部材が磁気センサに進入あるいは脱出するときに、大きな磁気信号の変化が検出されるが、保持部材の中央付近では磁気信号の変動が少ない領域が生じる。したがって、検査材に微弱な磁気信号を有する異物が混入した場合、図21(d)に点線で示したように、検査材からの磁気信号の変動が少ない領域に異物からの磁気信号18が重畳して検出されるため、異物の検出が容易になる。
【0062】
また、本発明の手法では、複数の検査試料を保持部材に配置して測定することも可能である。また、検査材自体が矩形であれば、保持部材14あるいはスペーサー16を使用せずに直接連続して配置させることでも、同様の効果を得ることができる。
【0063】
本実施例で述べた、磁気センサーの検出領域に存在する磁性体の量の変動を抑える方法を、実施例1から4に記載のキャンセル磁場を印加する方法と併用することでさらにバックグラウンド信号を低減することが可能である。
【0064】
以上、いくつかの実施例を示し、本発明の効果を説明した。実施例では円形の試料について述べたが本発明の効果は原理的に試料の形状に依らない。例えば矩形や円柱状の試料や不定形の試料でも本発明の効果は得られる。また、検出される異物についても、実施例では異物としてSUS304について述べたが、他のステンレス鋼(SUS316,SUS410など)でも、鉄系の材料でも磁性を有する物質であれば適用可能である。また、実施例では検査材として強磁性体であるフェライトについて述べたが、他の磁性を有する材料であればセラミック材料に限らず、例えば樹脂であっても適用可能である。
【0065】
また、磁気センサーとしても、SQUID磁気センサーだけでなく、MRセンサー、GMRセンサー、MIセンサー、光ポンピング磁束計、などの磁束計でも本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1…試料、2…異物、3…検査材、4…検査材の磁化、5…異物の磁化、6…磁気セン
サー、7…検査材の残留磁気、8…異物の残留磁気、9…外部磁場、10…マグネトメータ、11…磁力線、12…平面型グラジオメータ、13…試料、14…保持部材、15…スペーサー、16…スペーサー、17…マグネトメータで検出される磁気信号波形、18…異物からの磁気信号、21…冷却容、22…外槽、23…内槽、24…液体窒素、25…サファイヤロッド、26…銅ロッド、28…SQUID、29…電磁シールド30…磁気シールド、31…磁気シールド、32…サファイヤ窓、33…固定ネジ、34…回転機構、35…回転軸、36…移動ステージ(垂直方向)、37…移動ステージ(水平方向)、38…切欠き穴、40,40‘…磁石、41…ヨーク、42…着磁用磁場印加機構、43…キャンセル磁場印加機構、60…バイクリスタル基板、61…バイクリスタル接合面、62…検出コイル、63…配線パッド、64…SQUIDリング、65…粒界ジョセフソン結合、66…検出コイルの中央部分、67…フィードバックコイル、68…配線パッド(フィードバックコイル用)、71…試料台、72…固定するための穴、80…着磁用磁場印加機構、81…キャンセル磁場印加機構、82…磁気シールド、83…搬送機構、84…消磁機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を移動可能な搬送機構と、
磁気センサーと、
前記試料に着磁用磁場を印加する着磁用磁場印加機構と、
前記着磁用磁場とは異なる向きの磁場であり、磁場の大きさが前記資料に含まれる前記検査材の保磁力に相当する大きさであるキャンセル磁場を、前記着磁用磁場を印加した後で前記試料に印加するキャンセル磁場印加機構と、
前記キャンセル磁場が印加された状態で前記試料から発生する磁気信号の測定を行う磁気センサーと、
前記磁気センサーにより測定された結果を計測データとして収録し、当該計測データに基づき解析を実行し、前記試料の中に異物が含まれているか否かを判定する演算手段を備えることを特徴とする磁気信号計測装置。
【請求項2】
前記試料に前記着磁用磁場を印加する前に、前記試料を消磁可能な消磁機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項3】
前記磁気センサーが、前記搬送機構の上側と下側の両方に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項4】
前記磁気センサーは、前記搬送機構における前記試料の移動経路に沿って複数配置され、
前記演算手段は、前記磁気センサーの各々の近傍を前記試料が通過するタイミングで同期を取り、複数の磁気センサーの信号を加算処理することを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記試料に含まれる検査材と略同一の磁気信号を発生するスペーサーを備え、当該スペーサーに前記試料を隣接して配置させることにより、前記試料の磁気信号を検出するときに、前記試料が一の前記磁気センサーによる磁気検出領域を移動しても、当該磁気検出領域に含まれる前記検査材と前記スペーサーの総和が等しくなるように制御されることを特長とする請求項1から4に記載の磁気信号計測装置。
【請求項6】
前記演算手段は、記憶部に保持されている良品の標準的な磁気信号データと検査結果を
比較することで前記試料の中に異物が含まれているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項7】
前記着磁用磁場と、前記キャンセル磁場は、逆方向の向きであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の磁気信号計測装置。
【請求項8】
前記試料の検査を実施する検査領域を形成する磁気シールド部を備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項1】
試料を移動可能な搬送機構と、
磁気センサーと、
前記試料に着磁用磁場を印加する着磁用磁場印加機構と、
前記着磁用磁場とは異なる向きの磁場であり、磁場の大きさが前記資料に含まれる前記検査材の保磁力に相当する大きさであるキャンセル磁場を、前記着磁用磁場を印加した後で前記試料に印加するキャンセル磁場印加機構と、
前記キャンセル磁場が印加された状態で前記試料から発生する磁気信号の測定を行う磁気センサーと、
前記磁気センサーにより測定された結果を計測データとして収録し、当該計測データに基づき解析を実行し、前記試料の中に異物が含まれているか否かを判定する演算手段を備えることを特徴とする磁気信号計測装置。
【請求項2】
前記試料に前記着磁用磁場を印加する前に、前記試料を消磁可能な消磁機構をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項3】
前記磁気センサーが、前記搬送機構の上側と下側の両方に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項4】
前記磁気センサーは、前記搬送機構における前記試料の移動経路に沿って複数配置され、
前記演算手段は、前記磁気センサーの各々の近傍を前記試料が通過するタイミングで同期を取り、複数の磁気センサーの信号を加算処理することを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、前記試料に含まれる検査材と略同一の磁気信号を発生するスペーサーを備え、当該スペーサーに前記試料を隣接して配置させることにより、前記試料の磁気信号を検出するときに、前記試料が一の前記磁気センサーによる磁気検出領域を移動しても、当該磁気検出領域に含まれる前記検査材と前記スペーサーの総和が等しくなるように制御されることを特長とする請求項1から4に記載の磁気信号計測装置。
【請求項6】
前記演算手段は、記憶部に保持されている良品の標準的な磁気信号データと検査結果を
比較することで前記試料の中に異物が含まれているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【請求項7】
前記着磁用磁場と、前記キャンセル磁場は、逆方向の向きであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の磁気信号計測装置。
【請求項8】
前記試料の検査を実施する検査領域を形成する磁気シールド部を備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気信号計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−203264(P2011−203264A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118635(P2011−118635)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2008−147560(P2008−147560)の分割
【原出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2008−147560(P2008−147560)の分割
【原出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]