説明

磁気共鳴イメージング用コントラスト剤及びそれに関する方法

【課題】本発明のある面では、磁気共鳴イメージング用のコントラスト剤に関係する方法及び組成物を提供する。
【解決手段】ここに提供するコントラスト剤は、遺伝子の指示によって、イン・シトゥーで生成されて、利用可能な金属原子を封鎖する際に強力になる。典型的なコントラスト剤には、金属結合性タンパク質が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
導入
イン・ビボでの遺伝子発現を可視化することを可能にするツールは、医学及び生物科学の将来にとって基本的に重要である。遺伝医学の新たな分野は、何処で、何時、治療用遺伝子が送達されたか及び所望のタンパク質が発現されたかどうかを示すことのできる非侵襲的なイメージング法を必要としている。基礎生物学的研究の部門においては、イン・ビボでの遺伝子発現のタイミングと位置のイメージを得る能力は、基本的に必要なものである。
【背景技術】
【0002】
科学者は、典型的には、遺伝子発現を、関心ある遺伝子と共に発現されるマーカー遺伝子を、転写又は翻訳融合物として組み込むことによってモニターする。マーカー遺伝子産物の検出は、最も頻繁に、組織学的標品を利用して(例えば、β−ガラクトシダーゼアッセイを利用して)、又は蛍光顕微鏡検査を利用して(例えば、グリーン蛍光タンパク質即ちGFPを利用して)達成される。これらの方法の何れも、組織又は他の細胞の巨視的集合体の非侵襲的イメージングを可能にしない。組織学的標品を必要とするマーカーは、患者材料を犠牲にすることなく検出することができない。蛍光マーカーは、生細胞においてイメージを得ることができるが、最も洗練された光学技術を利用しても、約500μmを超える深さの組織でイメージを得ることはできない。他の方法例えばPET(陽電子放射断層撮影法)、ガンマーカメラ、及びSPECT(単光子放射断層撮影法)が、イン・ビボでの遺伝子発現を検出するために利用されてきたが、これらの何れも、1立方ミリメートル以上のオーダーの空間的解像度の限界を被るものである。
【0003】
MRIは、光学的に不透明な対象の非侵襲的イメージングを可能にする広く用いられている臨床診断用ツールであり、軟組織間のコントラストを高い空間的解像度で提供する。主たる臨床応用において、MRIシグナルは、イメージ化される物質中に存在する水の陽子に由来する。組織のイメージ強度は、幾つかの因子により決定される。特定の組織の物理的特性例えば陽子密度、スピン−格子緩和時間(T1)、及びスピン−スピン緩和時間(T2)は、しばしば、利用可能なシグナルの量を決定する。
【0004】
「コントラスト剤」と呼ばれる幾つかの組成物が、異なる組織間の増大されたコントラストを与えるために開発されてきた。コントラスト剤は、一般に、T1、T2又は両者に影響を及ぼす。一般に、コントラスト剤は、不対電子d又はfを有する金属を組み込むことにより増強される。例えば、T1コントラスト剤は、しばしば、毒性を制限するために低分子量分子にキレート化されたランタン系列金属イオン(通常、Gd3+)を含む。T2剤は、しばしば、デキストランで被覆された磁鉄鉱(FeO−Fe23)の小粒子からなる。両方の型の剤は、組織内の可動水と相互作用してコントラストを生成し;この微視的相互作用の詳細は、剤の型によって異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最も広く用いられているコントラスト剤は、外因性であり、これは、コントラスト剤が外部で生成されてから、イメージを得るべき組織又は細胞へ送達されることを意味している。外因性コントラスト剤は、一般に、血管系により送達され、典型的には、非選択的分布を有して、生理的に不活性である。これらの外因性コントラスト剤は、固有のコントラストの乏しい解剖学的構造を強調するため並びに正常な血流を中断させ又は血液脳関門の破壊を引き起こす様々な病状を可視化するために利用される。これらの剤の何れも、細胞膜を容易には横切らず、それ故、現存する技術は、細胞内事象の分析に適用するのは困難である。
【0006】
分子医学及び生物学的研究の要求に対して、この強力なイメージング技術を適用するために、新世代のMRIコントラスト剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)患者材料のイメージを生成させる方法であって、該方法は、下記
複数の細胞を含む患者材料を用意し;そして
それらの細胞のイメージを磁気共鳴イメージングにより得る
ことを含み、上記の細胞のサブセットが、MRI検出可能な量のコントラストタンパク質を含む、当該方法。
【0008】
(2)測定可能な量のコントラストタンパク質を含む細胞が、測定可能な量のコントラストタンパク質を含まない材料の細胞又は他の成分から区別されうる、(1)に記載の方法。
【0009】
(3)遺伝子発現を検出する方法であって、該方法は、下記
コントラストタンパク質をコードする組換え核酸を含む細胞を用意し;そして
その細胞のイメージを磁気共鳴イメージングにより得る
ことを含み、このコントラストタンパクの磁気共鳴イメージングによる検出が、該コントラストタンパク質をコードする核酸が発現されていること及び/又は発現されたことを示す、当該方法。
【0010】
(4)コントラストタンパク質が、金属結合性タンパク質である、(3)に記載の方法。
【0011】
(5)コントラストタンパク質を、フェリチンタンパク質;トランスフェリンレセプタータンパク質;鉄調節タンパク質;及び鉄スカベンジャータンパク質よりなる群から選択する、(3)に記載の方法。
【0012】
(6)コントラストタンパク質が、配列番号:2及び4よりなる群から選択するタンパク質と少なくとも60%同一である、(3)に記載の方法。
【0013】
(7)細胞が、細胞培養の部分である、(3)に記載の方法。
【0014】
(8)細胞が、イン・ビトロ組織の部分である、(3)に記載の方法。
【0015】
(9)細胞が、多細胞生物の部分である、(3)に記載の方法。
【0016】
(10)細胞が、哺乳動物の部分である、(3)に記載の方法。
【0017】
(11)細胞が、植物の部分である、(3)に記載の方法。
【0018】
(12)コントラストタンパク質のコード配列を含む核酸を含む哺乳動物細胞のトランスフェクションに適したウイルス粒子。
【0019】
(13)コントラストタンパク質を、フェリチンタンパク質;トランスフェリンレセプタータンパク質;鉄調節タンパク質;及び鉄スカベンジャータンパク質よりなる群から選択する、(12)に記載のウイルス粒子。
【0020】
(14)コントラストタンパク質を、配列番号:2及び4よりなる群から選択する、(12)に記載のウイルス粒子。
【0021】
(15)核酸が、ヒトL鎖フェリチン及びヒトH鎖フェリチンのコード配列を含む、(12)に記載のウイルス粒子。
【0022】
(16)ウイルス粒子が、次のものの少なくとも一つに由来する、(12)に記載のウイルス粒子:アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス及びポリオウイルス。
【0023】
(17)哺乳動物細胞をトランスフェクトするのに適したコロイド懸濁液であって、コントラストタンパク質のコード配列を含む核酸を含む当該コロイド懸濁液。
【0024】
(18)コントラストタンパク質を、フェリチンタンパク質;トランスフェリンレセプタータンパク質;鉄調節タンパク質;及び鉄スカベンジャータンパク質よりなる群から選択する、(17)に記載のコロイド懸濁液。
【0025】
(19)コントラストタンパク質を、配列番号:2及び4よりなる群から選択する、(17)に記載のコロイド懸濁液。
【0026】
(20)核酸が、ヒトL鎖フェリチン及びヒトH鎖フェリチンのコード配列を含む、(17)に記載のコロイド懸濁液。
【0027】
(21)核酸が、次のものの少なくとも一つと複合体化している、(17)に記載のコロイド懸濁液:巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソーム。
【0028】
(22)非ヒト多細胞生物であって、コントラストタンパク質のコード配列を含む組換え核酸を含む、当該非ヒト多細胞生物。
【0029】
(23)コントラストタンパク質を、フェリチンタンパク質;トランスフェリンレセプタータンパク質;鉄調節タンパク質;及び鉄スカベンジャータンパク質よりなる群から選択する、(22)に記載の非ヒト多細胞生物。
【0030】
(24)コントラストタンパク質を、配列番号:2及び4よりなる群から選択する、(22)に記載の非ヒト多細胞生物。
【0031】
(25)核酸が、ヒトL鎖フェリチン及びヒトH鎖フェリチンのコード配列を含む、(22)に記載の非ヒト多細胞生物。
【0032】
(26)生物を、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ショウジョウバエ、線虫及び魚類よりなる群から選択する、(22)に記載の非ヒト多細胞生物。
【0033】
(27)生物が、植物である、(22)に記載の非ヒト多細胞生物。
【0034】
(28)金属結合性タンパク質をコードする組換え核酸を含む多細胞生物のトランスフェクション用のベクターであって、該ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、アルファウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス及びポリオウイルスよりなる群から選択するウイルスの少なくとも一つに由来するウイルスベクターである、当該ベクター。
【0035】
(29)金属結合性タンパク質を、フェリチンタンパク質;トランスフェリンレセプタータンパク質;鉄調節タンパク質;及び鉄スカベンジャータンパク質よりなる群から選択する、(28)に記載のベクター。
【0036】
(30)金属結合性タンパク質が、哺乳動物フェリチンタンパク質である、(28)に記載のベクター。
【0037】
(31)金属結合性タンパク質が、配列番号:2又は4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、(28)に記載のベクター。
【0038】
(32)金属結合性タンパク質をコードする核酸の発現が、構成的プロモーターによって調節される、(28)に記載のベクター。
【0039】
(33)(28)に記載のベクターを含む細胞。
【0040】
(34)細胞を、細菌細胞、植物細胞、真菌細胞及び動物細胞よりなる群から選択する、(33)に記載の細胞。
【0041】
(35)細胞が、哺乳動物細胞である、(33)に記載の細胞。
【0042】
(36)細胞が、癌細胞である、(35)に記載の細胞。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】擬似腫瘍におけるフェリチン増加と1/T1(a)及び1/T2(b)との間の関係を示した図である。
【図2】16時間のフェリチン充填期間後の全細胞の存在を示すデータを示した図である。
【図3】3つの擬似腫瘍試料のMRIイメージを示した図である。
【図4】コントラストタンパク質軽鎖フェリチン(LF)及び重鎖フェリチン(HF)でトランスフェクトしたペレット化9Lグリオーマ細胞のMRIイメージを示した図である。
【図5】コントラストタンパク質軽鎖フェリチン(LF)及び重鎖フェリチン(HF)をアデノウイルスによって感染させたペレット化9L細胞のMRIイメージを示した図である。
【図6】ヒトフェリチン重鎖cDNAの配列(BC016009)(配列番号:1)を示した図である。
【図7】ヒトフェリチン重鎖アミノ酸配列(AAH16009)(配列番号:2)を示した図である。
【図8】ヒトフェリチン軽鎖cDNA配列(XM_050469)(配列番号:3)を示した図である。
【図9】ヒトフェリチン軽鎖アミノ酸配列(XP_050469)(配列番号:4)を示した図である。
【図10】マウスフェリチン重鎖cDNA配列(NM_010239.1)(配列番号:5)を示した図である。
【図11】マウスフェリチン重鎖アミノ酸配列(NP_034369.1)(配列番号:6)を示した図である。
【図12】マウスフェリチン軽鎖1cDNA配列(NM_010240.1)(配列番号:7)を示した図である。
【図13】マウスフェリチン軽鎖1アミノ酸配列(NP_034370.1)(配列番号:8)を示した図である。
【図14】マウスフェリチン軽鎖2cDNA配列(NM_008049.1)(配列番号:9)を示した図である。
【図15】マウスフェリチン軽鎖2アミノ酸配列(NP_032075.1)(配列番号:10)を示した図である。
【図16】ドブネズミフェリチンサブユニットHcDNA配列(NM_012848.1)(配列番号:11)を示した図である。
【図17】ドブネズミフェリチンサブユニットHアミノ酸配列(NP_036980.1)(配列番号:12)を示した図である。
【図18】ドブネズミフェリチン軽鎖1cDNA配列(NM_022500.1)(配列番号:13)を示した図である。
【図19】ドブネズミフェリチン軽鎖1アミノ酸配列(NP_071945.1)(配列番号:14)を示した図である。
【図20】ヒトトランスフェリンレセプターcDNA配列(NM_003234)(配列番号:15)を示した図である。
【図21】ヒトトランスフェリンレセプターアミノ酸配列(NP_003225)(配列番号:16)を示した図である。
【図22】ヒトトランスフェリンレセプター2cDNA配列(NM_003227)(配列番頭:17)を示した図である。
【図23】ヒトトランスフェリンレセプター2アミノ酸配列(NM_003218)(配列番号:18)を示した図である。
【図24】マウストランスフェリンレセプターコード配列(NM_011638)(配列番号:19)を示した図である。
【図25】マウストランスフェリンレセプターアミノ酸配列(NP_035768)(配列番号:20)を示した図である。
【図26】マウストランスフェリンレセプター2核酸配列(NM_015799)(配列番号:21)を示した図である。
【図27】マウストランスフェリンレセプター2アミノ酸配列(NP_056614)(配列番号:22)を示した図である。
【0044】
図1.擬似腫瘍におけるフェリチン増加と1/T1(a)及び1/T2(b)との間の関係。実線は、最小二乗法によってデータに適合させたものである(目印として)。これらの値は、対照用ペレットの平均基線値(1.5mg/mlのフェリチン)を超えるフェリチン増加を与えるように標準化されており;実験試料を、様々な濃度のクエン酸第二鉄アンモニウム(FAC)とインキュベートし、対照用試料を、FACの非存在下でインキュベートした。エラーバーは、N=4の実験についての標準偏差を表している。
図2.16時間のフェリチン充填期間後の全細胞の存在を示すデータ。各FAC濃度(及び対照)について、インキュベーション期間の前後の細胞を、血球計数器を利用して3回計数し、結果を平均した。エラーバーは、別々のインキュベーション実験(N=4)についての標準偏差を表している。
図3.3つの擬似腫瘍試料のMRIイメージ。ここに、(a)は、対照であり、(b)及び(c)は、それぞれ2.7及び4のフェリチン増加を含む試料である。これらの試料の間のコントラストは、このT2加重イメージにおいて容易に明らかである。イメージを、Bruker7−Tesla MRIシステム(TE/TR=45/2000ms、128×128像点)と1mm厚のスライスを利用して同時に得た。ペレットサイズは、直径約4mmであった。
図4:コントラストタンパク質軽鎖フェリチン(LF)及び重鎖フェリチン(HF)でトランスフェクトしたペレット化9Lグリオーマ細胞のMRIイメージ。左側の試料は、対照である(インキュベーション中DNAは加えられていない)。イメージコントラストは、これらの2つのペレット間で容易に識別できる。レポーターの発現は、MRイメージにおいて細胞を暗くする。このイメージを、11.7Tesla MRIシステム及び標準的T2加重2DFTパルスシーケンスを利用して得た。このイメージを、4℃で得た。
図5:コントラストタンパク質軽鎖フェリチン(LF)及び重鎖フェリチン(HF)をアデノウイルスによって感染させたペレット化9L細胞のMRIイメージ。左側の試料は、対照(非感染細胞)である。イメージコントラストは、これらの2つのペレット間で容易に識別できる。(これらのペレット中の強い暗点は泡によるアーティファクトであることに注意されたい。)このイメージを、11.7Tesla MRIシステム及び標準的T2加重2DFTパルスシーケンスを利用して得た。このイメージを、4℃で得た。
図6:ヒトフェリチン重鎖cDNAの配列(BC016009)(配列番号:1)。コード領域に下線を付けてある。
図7:ヒトフェリチン重鎖アミノ酸配列(AAH16009)(配列番号:2)。
図8:ヒトフェリチン軽鎖cDNA配列(XM_050469)(配列番号:3)コード領域には下線を引いてある。
図9:ヒトフェリチン軽鎖アミノ酸配列(XP_050469)(配列番号:4)。
図10:マウスフェリチン重鎖cDNA配列(NM_010239.1)(配列番号:5)。コード領域には下線を引いてある。
図11:マウスフェリチン重鎖アミノ酸配列(NP_034369.1)(配列番号:6)。
図12:マウスフェリチン軽鎖1cDNA配列(NM_010240.1)(配列番号:7)。コード領域には下線を引いてある。
図13:マウスフェリチン軽鎖1アミノ酸配列(NP_034370.1)(配列番号:8)。
図14:マウスフェリチン軽鎖2cDNA配列(NM_008049.1)(配列番号:9)。コード領域には下線を引いてある。
図15:マウスフェリチン軽鎖2アミノ酸配列(NP_032075.1)(配列番号:10)。
図16:ドブネズミフェリチンサブユニットHcDNA配列(NM_012848.1)(配列番号:11)。コード領域には下線を引いてある。
図17:ドブネズミフェリチンサブユニットHアミノ酸配列(NP_036980.1)(配列番号:12)
図18:ドブネズミフェリチン軽鎖1cDNA配列(NM_022500.1)(配列番号:13)。コード領域には下線を引いてある。
図19:ドブネズミフェリチン軽鎖1アミノ酸配列(NP_071945.1)(配列番号:14)。
図20:ヒトトランスフェリンレセプターcDNA配列(NM_003234)(配列番号:15)。コード領域には下線を引いてある。
図21:ヒトトランスフェリンレセプターアミノ酸配列(NP_003225)(配列番号:16)。
図22:ヒトトランスフェリンレセプター2cDNA配列(NM_003227)(配列番頭:17)。コード領域には下線を引いてある。
図23:ヒトトランスフェリンレセプター2アミノ酸配列(NM_003218)(配列番号:18)。
図24:マウストランスフェリンレセプターコード配列(NM_011638)(配列番号:19)。
図25:マウストランスフェリンレセプターアミノ酸配列(NP_035768)(配列番号:20)。
図26:マウストランスフェリンレセプター2核酸配列(NM_015799)(配列番号:21)。コード領域には下線を引いてある。
図27:マウストランスフェリンレセプター2アミノ酸配列(NP_056614)(配列番号:22)。
【発明を実施するための形態】
【0045】
ある面において、この発明は、患者材料中で核酸配列の指示により合成される磁気共鳴イメージング用のコントラスト剤に関係する。これらのコントラスト剤は、利用可能な金属原子(典型的には、鉄原子)を封鎖することによって増強される。ある面において、この核酸配列は、金属結合性タンパク質であって、直接又は間接的に作用して、該タンパク質が生成された細胞にコントラスト効果を与える当該金属結合性タンパク質をコードする。この発明は、更に、主題のコントラスト剤を生成する方法及び利用する方法に関係する。
【0046】
ある具体例において、この発明は、患者材料のイメージを、複数の細胞を含む患者材料のイメージを得ることによって生成する方法(これらの細胞の一つのサブセットが、MRIで検出可能な量のコントラストタンパク質を含む)に関係する。好適具体例において、異なる細胞中に存在するコントラストタンパク質の量は識別可能であり、適宜、測定可能な量のコントラストタンパク質を含む細胞を、測定可能な量のコントラストタンパク質を含まない細胞又は他の物質成分から識別することができる。
【0047】
他の具体例において、この発明の方法は、コントラスト剤をコードする組換え核酸を含む細胞のイメージを得ることによる遺伝子発現の検出を含む。好ましくは、このコントラストタンパク質の磁気共鳴イメージングによる検出は、該コントラストタンパク質をコードする核酸が発現され及び/又は発現されたことを示す。適宜、このコントラスト剤は、タンパク質であり、好ましくは、金属結合性タンパク質である。金属結合性タンパク質の典型的クラスには、フェリチンタンパク質;トランスフェリンレセプタータンパク質;鉄調節タンパク質;及び鉄スカベンジャータンパク質が含まれる。この発明の典型的な金属結合性タンパク質には、配列番号2、4、6、8、10、12及び14の何れかに示した配列に少なくとも60%同一(適宜、少なくとも70%、80%、90%、95%、99%又は100%同一)の金属結合性タンパク質が含まれる。或は、このタンパク質は、配列番号16、18、20又は22の何れかに示した配列と少なくとも60%同一(適宜、少なくとも70%、80%、90%、95%、99%又は100%同一)である。
【0048】
ここに記載の方法は、本質的に、イン・シトゥーでコントラスト剤を生成することのできる任意の物質を用いて利用することができる。例えば、患者材料は、細胞であってよく、適宜、細胞培養物の部分、イン・ビトロ組織の部分又は多細胞生物(例えば、菌類、植物又は動物)の部分である細胞であってよい。好適具体例において、患者材料は、生きている哺乳動物例えばマウス又はヒトである。
【0049】
更なる面において、この発明は、コントラスト剤をコードする組換え核酸を含む多細胞生物のトランスフェクションのためのベクターを提供する。ある具体例において、このコントラスト剤は、金属結合性タンパク質である。適宜、このベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルス及び前記のものの任意のハイブリッドの群から選択するウイルスに由来するウイルスベクターである。
【0050】
更なる面において、この発明は、この発明の核酸の患者材料への導入のための送達システムを包含する。ある具体例において、この発明は、哺乳動物細胞をトランスフェクトするためのウイルス粒子であって、コントラスト剤(例えば、上記のコントラスト剤)のコード配列を含む核酸を含む当該ウイルス粒子を提供する。適宜:このウイルス粒子は、次の少なくとも一つから得られる:アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス及びポリオウイルス。更なる具体例において、この発明は、コントラスト剤(例えば、上記のコントラスト剤)のコード配列を含む核酸を含む哺乳動物細胞をトランスフェクトするのに適したコロイド懸濁液を提供する。随意の種類のコロイド懸濁液には、次のもののうちの少なくとも一つが含まれる:巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソーム。
【0051】
尚更なる面において、この発明は、コントラスト剤(例えば、上記のコントラスト剤)のコード配列を含む組換え核酸を含む細胞、細胞培養物、組織化細胞培養物、組織、器官及び非ヒト生物を提供する。ある具体例において、この生物は、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ショウジョウバエ、線虫及び魚類、或は植物又は菌類よりなる群から選択される。更なる具体例において、これらの細胞、細胞培養物、組織化細胞培養物、組織、器官及び非ヒト生物は、上記のようなベクターを含むことができる。
【0052】
本発明の実施には、別途示さない限り、当分野の技能範囲内にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の慣用技術を用いることができる。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 第二版、Sambrook, Fritsch 及び Maniatis 編 (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989);DNA Cloning, 第I及びII巻(D.N. Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait編、1984);Mullis等、米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames及びS.J. Higgins編、1984);Transcription And Translation (B.D. Hames 及び S.J. Higgins編、1984);Culture Of Animal Cells (R.I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);論文、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Gene Transfer Vector For Mammalian Cells (J.H. Miller及びM.P. Calos編、1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology, 第154及び155巻(Wu等編), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編、Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, 第I-IV巻(D.M. Weir及びC.C. Blackwell編、1986);Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0053】
1.定義
「コード配列」は、ここでは、特定のタンパク質をコードする核酸の部分を指すために用いられる。コード領域は、イントロン及び他の非コード配列によって中断されうるが、それらは、結局、翻訳前に除去される。
【0054】
「コロイド懸濁液」は、ここでは、細胞への送達のための少なくとも一の核酸を含むコロイド懸濁液を指すために用いられる。このコロイド懸濁液中の物質は、一般に、核酸を防護し、核酸の細胞膜を横切る送達を容易にするようにデザインされる。典型的なコロイド懸濁液には、脂質ミセル、チューブ、ラフト、サンドイッチ、及び他の脂質構造が含まれ、しばしばカチオン性脂質が含まれるが、これらに限られない。他のコロイド懸濁液には、ナノカプセル、ミクロビーズ、及び小さい核酸結合性ポリマー構造などが含まれる。
【0055】
用語「コントラスト剤」は、ここでは、直接又は間接に或は両方で、イン・ビボでコントラスト効果を生成する分子を指すために用いられる。典型的具体例において、「コントラスト剤」は、「コントラストタンパク質」又は「コントラストポリペプチド」と交換可能に用いられる。直接的エフェクターの場合には、コントラストタンパク質は、典型的には、緩和時間T1、T2又はT2*に影響を及ぼす複合体を形成する。しばしば、直接的コントラストタンパク質は、金属タンパク質複合体を形成する。コントラストタンパク質の典型的カテゴリーには、例えば、金属結合性タンパク質及び/又は少なくとも一の金属結合性タンパク質の産生を刺激する薬剤などが含まれる。間接的エフェクターには、直接的コントラストタンパク質の細胞による産生を引き起こす分子及び/又は直接的コントラストタンパク質の機能的、生化学的及び/若しくは生物物理学的特性を調節し、それによりコントラスト効果を創出する分子が含まれる。間接的エフェクターの典型的カテゴリーは、例えば、タンパク質及び/又は直接的コントラストタンパク質の発現に影響を与え、直接的コントラストタンパク質の活性を調節し、金属結合性タンパク質への金属結合を調節し、鉄調節タンパク質の発現を調節し、及び/又は鉄調節タンパク質の活性を調節する核酸などを包含する。
【0056】
用語「コントラスト効果」には、MRIに関してここで用いる場合、細胞又は組織を他のものから検出可能に異ならせるMRIシグナルの任意の変化が含まれる。コントラスト効果には、T1、T2及び/又はT2*に対する効果が含まれうる。MRIにおいては、一般に、可動水を含む患者を、大きい静的な磁場内に位置させる。この磁場は、水中の水素原子核の磁気モーメント(スピン)の幾つかを場の向きに整列させる傾向がある。スピン格子緩和時間(T1)は、磁場の向きに沿って平衡化するように磁場に置かれた核の一集団についての時定数である。T1は、スピン系から環境(格子)へのエネルギー移動の時定数である。スピン−スピン緩和時間(T2)は、互いに位相内に残るようにラーモア回転数で歳差運動する核についての時定数である。或は、T2は、スピン位相記憶時間と呼ばれる。この位相のコヒーレンスの喪失は、一般にスピン間の相互作用による磁場の低周波数の揺らぎに帰するものである。緩和時間T2*は、1/T2*=1/T2+γΔB(ここに、γは核ジャイロ磁気比であり、ΔBは静的外部磁場不均等性である)として定義される。
【0057】
用語「コントラスト遺伝子」又は「コントラスト核酸」は、ここでは、交換可能に、コントラストタンパク質のコード配列を含む核酸を指すために用いられる。
【0058】
「外的に調節されるプロモーター」は、当業者によって制御された仕方で与えられうる条件に応じて転写に影響を及ぼす核酸である。外的に調節されるプロモーターは、特異的な化学物質例えばテトラサイクリン又はIPTGにより、或は他の条件例えば温度、pH、酸化状態などによって調節されうる(これらは、転写部位に対して外部から容易に制御されうる)。
【0059】
用語「フェリチンタンパク質」は、結合した鉄を有する多数の構造を形成する傾向を特徴とし、第一のらせん内に鉄配位Glu残基を含み且つ第二のらせん内にGlu−X−X−Hisモチーフを含むらせん束構造を有する二鉄カルボキシレートタンパク質の任意の群を包含することを意図している。ある種のフェリチンは、主としてFe(III)状態の結合した鉄を保持している。バクテリオフェリチンは、ヘムタンパク質である傾向がある。脊椎動物のフェリチンは、2つ以上のサブユニットから集合する傾向があり、哺乳動物のフェリチンは、しばしば、重鎖と軽鎖から集合する。多くのフェリチンは、内部に鉄に富む凝集物を有する中空の構造を形成する。典型的なフェリチンを下記の表1に与える。
【0060】
「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性をいう。相同性及び同一性は、各々、比較の目的に関して整列させることのできる各配列中の一つの位置を比較することにより測定することができる。比較される配列中の同等の位置が同じ塩基又はアミノ酸によって占められているならば、それらの分子は、その位置で同じであり;同等の部位が同じ又は類似する(例えば、立体的及び/又は電気的性質において類似する)アミノ酸残基により占められているならば、それらの分子は、その位置で相同(類似)であるということができる。相同性/類似性又は同一性のパーセンテージとしての表現は、比較する配列に共有される位置での同じ又は類似するアミノ酸の数の関数をいう。「無関係の」又は「非相同性の」配列は、本発明の配列と40%未満の同一性を共有する(好ましくは、25%未満の同一性を共有する)。
【0061】
用語「相同性」は、類似の機能又はモチーフを有する遺伝子又はタンパク質の同定に利用される配列類似性の数学的に基礎付けられた比較を記載する。これらの本発明の核酸及びタンパク質配列は、「問合せ配列」として利用して、公開されたデータベースに対する検索を行なって、例えば他のファミリーメンバー、関連配列又は同族体を同定することができる。かかる検索は、Altschul等、(1990) J Mol. Biol. 215:403-10 のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を利用して行なうことができる。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12を用いて行なって、この発明の核酸分子に相同な核酸配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を用いて行なって、この発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップ入りアラインメントを得るために、Altschul等、(1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402 に記載されたようなGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合には、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びBLAST)のデフォルトパラメーターを利用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov. を参照されたい。
【0062】
ここで用いる場合、「同一性」は、配列マッチングを最大にするように整列させた(即ち、ギャップ及び挿入を考慮した)2つ以上の配列中の対応する位置における同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセンテージを意味する。同一性は、公知の方法によって容易に計算することができ、該方法は、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M.編、Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genomes Projects, Smith, D.W.編、Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M.及びGriffin, H.G.編、Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;及び Sequence Analysis Primer, Gribskov, M.及び Devereux, J.編、M Stockton Press, New York, 1991;及び Carillo, H.及び Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されたものを含むが、これらに限られない。同一性を測定するための方法は、試験した配列の間での最大のマッチを与えるようにデザインされている。その上、同一性を測定するための方法は、公衆が利用できるコンピュータープログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性を測定するためのコンピュータープログラム法には、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.等、Nucleic Acids Research 12(1);387(1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul, S.F.等、J.Molec.Biol.215:403-410(1990)及びAltschul等、Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1997))が含まれるが、これらに限られない。BLAST Xプログラムは、公衆が、NCBI及び他の供給源から利用することができる(BLAST Manual, Altschul, S.等、NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894;Altschul, S.等、J.Mol.Biol.215:403-410(1990))。
【0063】
用語「鉄結合性タンパク質」は、ここで用いる場合、生理的に適切な条件下で鉄に結合するタンパク質を包含することを意図している。ある種の鉄結合性タンパク質は、鉄とヘムなどの補因子を介して相互作用する。他の多くの典型的な補因子も又、ここに記載する。他の鉄結合性タンパク質は、ヒスチジン、アスパルテート、グルタメート、アスパラギン及びグルタミンを含む適当なアミノ酸(これらに限られない)を用いて鉄結合部位を形成する。この発明の鉄結合性タンパク質は鉄に結合するが、それらが他の金属にも結合することは、ありそうなことである。従って、「鉄結合性タンパク質」は、ここで用いる場合、そのタンパク質が専ら鉄に結合することを指すことを意味しないか、そのタンパク質が他の金属よりも一層強く鉄に結合することさえも意味しない。
【0064】
「鉄調節タンパク質」は、細胞における鉄の利用、プロセッシング及び/又は蓄積に関与するタンパク質をいう。鉄調節タンパク質には、例えば、鉄ホメオスタシスを調節するタンパク質、細胞内外への鉄の輸送を調節するタンパク質、鉄関連エレメントの生成の調節に関与するタンパク質例えばフェリチン及びトランスフェリンなどが含まれる。鉄調節タンパク質は、鉄に直接結合してもしなくてもよい。
【0065】
ここで用いる場合、用語「核酸」は、ポリヌクレオチド例えばデオキシリボ核酸(DNA)、適宜、リボ核酸(RNA)をいう。この用語は、ヌクレオチド類似体(塩基及び/又は主鎖に関する類似体例えばペプチド核酸、ロックされた核酸、マンニトール核酸などを含む)から作られたRNA又はDNAの類似体を包含し、記載した具体例に適用可能であれば、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)、二本鎖又は一層高オーダーのポリヌクレオチドを包含するとも理解されるべきである。
【0066】
用語「操作可能に結合された」は、ここで用いる場合、調節配列と遺伝子との間の関係をいう。もし調節配列を遺伝子に対して、その調節配列が、生成される遺伝子産物の量に対する測定可能な効果を発揮できるように位置させれば、その調節配列は、その遺伝子と操作可能に結合されている。
【0067】
「ポリリンカー」は、少なくとも一種の制限酵素による開裂のための、少なくとも2つの、好ましくは3つ、4つ又はそれより多くの制限部位を含む核酸である。この制限部位は、重複してよい。各制限部位は、好ましくは、5、6、7、8ヌクレオチド以上の長さである。
【0068】
「組換えヘルパー核酸」又は一層単純に「ヘルパー核酸」は、第二の核酸がキャプシッドに包まれることを可能にする機能的コンポーネントをコードする核酸である。典型的には、本発明の関連において、ヘルパープラスミド又は他の核酸は、ウイルスベクターがキャプシッド中に包まれることを可能にするウイルス機能及び構造タンパク質をコードする。一つの好適具体例において、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ヘルパー核酸は、AAVポリペプチドをコードし、且つAAV ITR領域を欠くプラスミドである。例えば、一具体例において、このヘルパープラスミドは、アデノウイルスITR配列で置き換えられてAAV ITR領域を除くAAVゲノムをコードする。これは、例えば組換えによる野生型AAVウイルスの生成を阻止するが、AAV複製欠損組換えベクターが複製すること及びキャプシッドに包まれることを可能にする。
【0069】
「調節用核酸」又は「調節配列」には、操作可能に結合されたオープンリーディングフレームの転写に対して効果を発揮することのできる任意の核酸が含まれる。調節用核酸は、コアプロモーター、エンハンサー又はリプレッサーエレメント、完全な転写調節領域、又は前記の何れかの機能的部分であってよい。前記のものの変異体バージョンも又、調節用核酸と考えられる。
【0070】
「転写融合物」は、少なくとも2つのコード領域を含むmRNAの発現を引き起こす核酸構造である。換言すれば、2つ以上のオープンリーディングフレームを一つの転写融合物に組織化し、それで、両オープンリーディングフレームが単一mRNAの部分として発現され、その後、宿主細胞により特定されたように、別々のポリペプチドを生じるようにすることができる。転写融合物中のオープンリーディングフレームは、同じ転写調節の対象となる傾向があるが、コードされたポリペプチドは、異なる翻訳後の運命(例えば、分解など)をたどることとなりうる。「転写融合物」は、2つ以上のオープンリーディングフレームが単一のポリペプチドを生じるように結合された「翻訳融合物」と対照的でありうる。「翻訳融合物」中の融合ポリペプチドは、同様な転写、翻訳及び翻訳後調節を受ける傾向がある。
【0071】
ここで用いる場合、用語「トランスフェクション」は、核酸例えば発現ベクターのレシピエント細胞への導入を意味し、一般に用いられる用語例えばウイルス又はウイルスベクターに関して「感染」を包含することを意図している。用語「トランスダクション」は、ここでは、核酸のトランスフェクションが核酸のウイルス送達による場合に、一般に用いられている。「トランスフォーメーション」は、ここで用いる場合、細胞の遺伝子型が、外因性DNA又はRNAの細胞による取込みの結果として変化する過程をいい、例えば、トランスフォームされた細胞は、組換え型のポリペプチドを発現し、トランスファーされた遺伝子からのアンチセンスの発現の場合には、組換えタンパク質の天然型の発現が中断される。
【0072】
ここで用いる場合、用語「導入遺伝子」は、細胞に導入された核酸配列をいう。導入遺伝子が導入された細胞から分裂した娘細胞は、やはり、その導入遺伝子を含むといわれる(それが、欠失しない限り)。導入遺伝子は、例えば、それが導入されたトランスジェニック動物にとって部分的に又は完全に異種の即ち外来のポリペプチドをコードすることができる。適宜、導入遺伝子にコードされたポリペプチドは、それが導入されたトランスジェニック動物又は細胞の内因性遺伝子と相同であってよいが、そのゲノム中に、挿入された細胞のゲノムを変化させるような仕方で挿入されるようにデザインすることができ又は挿入される(例えば、それは、天然の遺伝子と異なる位置に挿入される)。導入遺伝子は、選択したコード配列の最適発現に必要でありうる少なくとも一つの転写調節配列及び任意の他の核酸(例えば、イントロン)を含むことができる。導入遺伝子は又、ポリペプチドをコードしない領域を含むこともできるが、かかる場合には、一般に機能的に活性なRNA例えばrRNA、tRNA、リボザイムなどの発現を指示する。「治療用導入遺伝子」は、患者にとって有益である仕方で、生物学的機能を変化させる目的のために、細胞、組織及び/又は生物体に導入される導入遺伝子である。
【0073】
「一過性トランスフェクション」は、外因性核酸が、比較的短期間保持される(しばしば、該核酸は、トランスフェクトされた細胞のゲノムに組み込まれない)場合をいい、例えば、エピソームDNAがmRNAに転写されてタンパク質に翻訳される場合をいう。細胞は、ウイルス性コード領域を含む核酸構築物が細胞膜の内側に導入された場合には、該核酸構築物によって「安定にトランスフェクト」されており、それらのウイルス性コード領域は、娘細胞により受け継がれうる。
【0074】
「ウイルス粒子」は、少なくとも一種の核酸及び少なくとも一種のウイルス性タンパク質を含む外被の集合物である。一般に、核酸の細胞への送達において利用するためのウイルス粒子は、核酸を細胞に挿入する能力を保持するが、多くの他の機能(例えば、自律複製能)については欠損していてよい。
【0075】
2.典型的方法
幾つかの面において、この発明は、遺伝子の指令によりイン・シトゥーで生成され、金属原子の封鎖によって強力にされた細胞内コントラスト剤を利用してMRIを実施する方法に関係する。これらの封鎖された金属原子は、好ましくは、内因性の金属原子例えば鉄原子である。ある具体例において、この発明の方法は、患者の材料を、細胞内コントラスト剤例えば金属結合性タンパク質の合成の指令をコードする核酸と接触させることを含む。かかる具体例では、適当な細胞により取り込まれた際に、この核酸は、金属結合性タンパク質の生成を指示し、該タンパク質は、利用可能な金属原子との結合によってコントラスト剤として強力になる。他の具体例において、この発明の方法は、患者材料を、細胞内の金属の量を増大させることにより又は金属結合性タンパク質の発現及び/若しくは活性に影響を及ぼすことにより、コントラストに間接的に影響を与えるタンパク質又は核酸と接触させることを含む。ここに記載の細胞内コントラスト剤は、本質的に、かかる剤を生成することのできる任意の生物学的物質のイメージングに利用することができ、該生物学的物質には、培養細胞、組織、及び単細胞生物体から多細胞生物体(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、他の脊椎動物、高等植物、昆虫、線虫、菌類など)まで及ぶ生きた生物体が含まれるが、これらに限られない。殆どの生物学的系は、強力なコントラスト効果を有する様々な金属を含有しているが、鉄が、細胞内コントラスト剤の強化において有用であるだけ十分に濃縮された唯一の金属であるということは理解される。しかしながら、所望であれば、イメージを得るべき物質は、外因性金属原子を補うことができ、かかるプロトコールは、好ましくは、外因性金属原子により引き起こされる有害な影響を減じるために最適化されよう。
【0076】
ある具体例において、ここに記載の新しいコントラスト技術を用いて、イン・シトゥーの遺伝子発現の制御を研究することができる。例えば、コントラストタンパク質をコードする核酸を、関心ある細胞、組織及び/又は患者に導入することができる。このコントラストタンパク質の発現に適した細胞内条件を有する細胞を、このコントラストタンパク質を生成しない細胞から、MRIによって区別することができる。ある具体例において、このコントラストタンパク質をコードする核酸を、構成的に活性な調節配列に操作可能に結合させる。更なる具体例において、このコントラストタンパク質を調節配列に、該コントラストタンパク質の生成を、温度変化、インデューサー又はリプレッサーの濃度などの少なくとも一つの外因的に制御される条件の適用によって調節できるように操作可能に結合させる。更に別の具体例においては、この調節配列の活性は、少なくとも部分的に未知である。更なる具体例において、コントラストタンパク質をコードする核酸は、調節配列に操作可能に結合されない(又は、弱いプロモーターに操作可能に結合される)。この型の「プロモーターレス」構築物は、「エンハンサートラップ」と類似の仕方で調節活性を与える内因性配列を同定するために利用することができる。
【0077】
ある典型的具体例において、この発明の方法及び組成物は、関心ある導入遺伝子例えば治療用導入遺伝子の発現をモニターするために利用される。患者材料を、関心ある導入遺伝子例えば治療用導入遺伝子及び調節配列に操作可能に結合されたコントラストタンパク質のコード配列を含む核酸構築物の両方と接触させる。一つの変法においては、関心ある導入遺伝子の生成とコントラストタンパク質の生成の両方を、機能的に類似する(適宜、同一の)調節配列によって調節する。例えば、患者材料を強い構成的プロモーターの指示下で導入遺伝子と接触させたならば、コントラストタンパク質をコードする遺伝子の発現も又、同じプロモーター又は類似の発現パターンを有するようにデザインされたプロモーターの指示下にあるべきである。幾つかの変法においては、関心ある導入遺伝子を先ず導入し、その後、遅れて、コントラストタンパク質をコードする核酸を導入する。他の変法においては、コントラストタンパク質をコードする核酸を、関心ある導入遺伝子と同時に導入し、適宜、コントラスト核酸及び関心ある導入遺伝子を同じベクター上に位置させる。ある具体例において、コントラスト核酸は、関心ある導入遺伝子との転写融合物として発現される。更なる具体例において、コントラスト遺伝子と関心ある導入遺伝子(又は、その第二のコピー)は、融合タンパク質として発現しうる。融合タンパク質のアプローチは、治療用導入遺伝子の効力が転写後調節により影響を受けると考えられる場合には望ましい。患者材料は、MRIによってイメージを得ることができ、コントラストタンパク質を有する細胞は、検出されえて、コントラストタンパク質を有しない細胞から区別されうる。好適具体例において、MRIにより検出されるコントラストのレベルは、関心ある導入遺伝子の発現レベルと相関し又は該レベルを指示する。
【0078】
更なる典型的具体例において、この発明の方法及び組成物は、関心ある調節配列のイン・シトゥー調節活性を研究するために利用することができる。患者材料を、関心ある調節配列に操作可能に結合されたコントラストタンパク質をコードする核酸と接触させる。一度適当な細胞内に内在化されたならば、このコントラスト遺伝子は、関心ある調節配列により調節されたレベルで発現される。好適具体例において、MRIにより検出されるコントラストのレベルは、関心ある調節配列の活性のレベルと相関する。関心ある調節配列は、本質的に、プロモーター、エンハンサー、完全なプロモーター/エンハンサー領域、前記のものの変異し若しくは変化した形態、又は前記のものの少なくとも一部分を含む(これらに限られない)任意の調節配列であってよい。
【0079】
更なる典型的具体例において、ここに記載した方法を利用して、生理的に重要な調節配列が活性かどうかをイン・シトゥーで測定することができる。例えば、p53タンパク質は、部分的にDNA損傷に応じて調節作用を発揮する広く認められている細胞増殖とアポトーシスのレギュレーターである。それ故、p53応答性調節配列を、コントラストタンパク質をコードする核酸に操作可能に結合して含む構築物は、p53調節経路が活性化された細胞のイン・シトゥーでの検出を可能にする。同様に、この発明の方法を用いて、例えば、前増殖性シグナリング経路の状態を(例えば、癌性又は前癌性細胞を同定するために)研究し、又は炎症性経路の状態を(例えば、移植された臓器内又はその近くの宿主及び/又はドナー組織において)評価し、又は発生過程におけるプロモーター活性化などの像を非侵襲的に得ることができる。この開示の故に、当業者は、無数の関連する方法を開発することができるであろう。
【0080】
生物学者により日常的に行なわれている伝統的なレポーター遺伝子アッセイ例えばβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)又はグリーン蛍光タンパク質(GFP)を利用するアッセイと本発明のある具体例との間での類似が注目されうる。従って、この発明のある方法は、他の一般に用いられる細胞スクリーニング法に関する別法として利用することができる。例えば、候補の医薬を評価する方法は、伝統的に、その候補の医薬を、情報を与えるレポーター遺伝子構築物を有する細胞と接触させることを含みうる。今や、この標準的レポーター遺伝子は、コントラスト遺伝子によって置き換わられうるし、標準的な検出システムは、MRIシステムによって置き換わられうる。本発明のある具体例を利用して、伝統的なレポーター遺伝子アッセイに取って代わることができるが、これらの伝統的アッセイは、それらの有用性が遥かに限られている。例えば、伝統的なアッセイは、無傷の組織の深部での遺伝子発現を可視化することには無力な光学ベースの読み取り技術を利用しており、しばしば、生物学的材料の組織学的処理を必要とする。対照的に、本発明のある具体例は、MRIコントラスト剤をレポーター遺伝子として用いており、それは、光学的に不透明な組織の深部のシグナルのMRIによる読み出しを可能にし、所望であれば、読み出しを、患者材料の生物学的機能の破壊を殆ど又は全く伴わずに得ることができる。
【0081】
更に別の典型的具体例において、この発明の方法及び組成物を利用して、患者材料に投与されたベクターの破壊を評価することができる。例えば、生物体をトランスフェクトするためにデザインされたベクターは、コントラストタンパク質をコードする核酸を適当なプロモーターに操作可能に結合して含むことができる。適宜、プロモーターは、広範な組織型において検出可能なレベルの発現を与えるように選択されよう。例えば、強い構成的プロモーターを選択することができる。トランスフェクトされた生物学的材料は、このベクターでトランスフェクトされた細胞を同定するためにMRIにより像形成される。この典型的な方法は、多くの異なる方法(例えば、特に関心のある解剖学的領域又は臓器への導入、循環系、リンパ系などへの導入)と結合させることができ、これらのアプローチの各々により得られたベクターの分布と転写レベルを比較するために利用することができる。特定の組織を標的とする送達システムの場合には、典型的方法論を利用して、組織特異性を確認し又は最適化させることができる。他の例証として、本方法を用いて、研究者が、特定の遺伝子治療システムの施与後に得られた遺伝子発現の位置及び適宜そのレベルを測定することを可能にすることによって、遺伝子治療プロトコールを最適化し又は開発することができる。
【0082】
この発明の多くの具体例は、人為的に誘導された細胞内コントラスト剤の生成に関係する。前述の具体例の多くにおいて、細胞内コントラスト剤の生成は、直接的コントラストタンパク質をコードする核酸の導入により達成される。一般に、このコントラスト剤の生成は、別法によって達成されうる。例えば、細胞内コントラスト剤のイン・シトゥー生成を、間接的コントラスト剤をコードする核酸の導入によって刺激することができる。間接的コントラスト剤は、例えば、鉄のホメオスタシスを調節し、直接的コントラスト剤をコードする外因性遺伝子の発現を調節し及び/又は直接的コントラスト剤として作用しうる内因性タンパク質例えばフェリチンの活性を調節するタンパク質又は核酸であってよい。他の例として、このコントラスト剤の生成は、患者材料をこのコントラスト剤の生成を誘出する組成物と接触させることにより刺激されうる。例えば、細胞を、細胞にフェリチン(有効なコントラスト剤)を生成させる薬剤例えば鉄供給源と接触させることができる。従って、この発明は、直接的コントラスト剤でない薬剤及び核酸でもタンパク質でもないがそれにもかかわらず細胞内コントラスト剤のイン・シトゥー生成の誘導に有用である薬剤を包含するということが理解される。
【0083】
ある面において、この発明の核酸は、汎用の又は生物体/組織/細胞型特異的な様々なベクターの何れかを用いて、及び様々な送達システム例えばリポソーム、ウイルス粒子、エレクトロポレーションなどの何れかと組み合わせて、生物学的材料に導入することができる。更なる面において、この発明のタンパク質は又、様々な方法例えばリポソーム融合、エレクトロポレーション、細胞により内在化される部分への結合などで、細胞に直接投与することもできる。
【0084】
コントラストタンパク質をコードする核酸を細胞に導入するある具体例において、短期間だけ又は適宜調節された期間にわたって活性で又は細胞内に存在する遺伝子を有することは望ましいことでありうる。所望であれば、一過性トランスフェクション系を、好ましくは、平均で1〜2日間より短期間にわたって発現を可能にするベクターを利用することができる。別法として、又は合同して、遺伝子発現を、外的に調節されるプロモーターにより制御することができ、或は更なる例として、コントラスト遺伝子又はその一部分を、少なくとも一つの組換え部位に関して、レコンビナーゼの活性化が、コントラストタンパク質をコードする核酸の不活性化(又は、好適であれば、活性化)を引き起こすように位置を定めることができる。
【0085】
この発明の多くの具体例は、多数のコントラストタンパク質をコードする核酸例えば、哺乳動物フェリチンの重鎖及び軽鎖をコードする核酸、又はフェリチン及びトランスフェリンレセプターをコードする核酸の利用を包含する。
【0086】
ある具体例において、細胞内コントラスト剤は、患者材料における安全性のために選択され、ここに、該患者は、ヒト患者であり、細胞内コントラスト剤は、好ましくは、ヒトにおける使用に関して暗然である。
【0087】
3.コントラスト剤
多くの面において、上記のように、この発明の方法は、少なくとも一種のコントラスト剤を用い、それは、イン・ビボでMRIコントラストを生成する。このコントラストタンパク質は、直接又は間接的に、細胞にMRIコントラストを与える二次的タンパク質の生成を引き起こすことにより、MRIコントラストを与える。直接的エフェクターの場合には、このコントラストタンパク質は、典型的には、緩和時間T1、T2及び/又はT2*の少なくとも一つに変化を引き起こす複合体を形成し、該変化は、MRI中にコントラスト効果へと導く。しばしば、直接的コントラストタンパク質は、金属タンパク質複合体を形成する。間接的エフェクターの場合には、このコントラスト剤は、例えば、タンパク質又は核酸であってよく、それは、鉄ホメオスタシスを調節し、直接的コントラスト剤をコードする内因性遺伝子の発現を調節し、及び/又は直接的コントラスト剤として作用しうる内因性タンパク質の活性を調節し、それにより、コントラスト効果を生じる。一つの典型的具体例において、ここに記載のこれらの方法及び/又は組成物は、鉄ホメオスタシスに影響を与える間接的コントラスト剤及び直接的コントラスト剤例えば金属結合性タンパク質を含む。
【0088】
金属結合性ポリペプチドを直接的コントラスト剤として用いるこの発明の面において、金属結合性タンパク質は、好ましくは、効果的なコントラストを与える少なくとも一つの金属に結合する。様々な金属が、コントラスト剤の元素として有効であり、特に、d又はfオービタルに不対電子を有するもの例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、ガドリニウム(Gd)などが有効である。上記のように、鉄は、哺乳動物及び他の生物体中に比較的高レベルで存在し、それ故、鉄の検出可能な蓄積は、外因的な鉄の補足の助けなしで生成しうるので、特に興味深い。従って、この発明の好適な金属結合性タンパク質は、鉄結合性タンパク質である。T2コントラスト剤を用いる具体例において、金属結合の幾何学は、重要でないが、そのコントラストは、一層多量の金属が一緒に濃縮された場合ほど、一層大きい傾向がある。ある好適具体例において、効果的な金属は、金属に富む凝集物(適宜、直径が10ピコメートルより大きい、適宜、100ピコメートルより大きい、1ナノメートルより大きい、10ナノメートルより大きい又は100ナノメートルより大きい結晶様凝集物)に結合される。或は、金属に富む凝集物は、ポリペプチド複合体中で、直径1〜100ナノメートルの範囲あるはずである。特に好適な具体例において、金属に富む凝集物は、超常磁性の特性を示す。鉄結合性ポリペプチドを利用する場合には、それは、もしポリペプチドが鉄を無毒性のFe(III)酸化状態で保持するならば好適である。Fe(II)も又、有効なコントラスト剤であるが、Fe(II)は、潜在的に有害なヒドロキシル基を生成する鉄触媒されるハーバーワイス反応に参加しうる。
【0089】
好適具体例において、この発明の直接的コントラストタンパク質は、次の特性を有する:迅速な細胞内タンパク質アセンブリ及び金属ローディング、大きな常磁性磁化率を有する金属に富む凝集物の形成を促進する傾向、及び金属を比較的無毒性の形態(例えば、鉄の場合、Fe(III)状態)で保持する能力。
【0090】
ある面において、金属結合性ポリペプチドは、金属代謝を混乱させ及び、コントラスト効果を有する内因性金属結合性ポリペプチドの発現を刺激することにより細胞のコントラスト特性も変化させうる。これは又、細胞内の特定の金属の蓄積又は涸渇へと導きうる。例えば、高親和性の鉄結合性タンパク質の一過性の発現は、細胞内の不安定な鉄のプールの一時的な減少を生じうるし、トランスフェリンレセプターの生成を刺激し、それにより鉄の細胞内への正味の取り込みを増大させる。
【0091】
種々の金属についての金属結合性タンパク質の正確な結合親和性は臨界的ではないが、少なくとも一種の効果的な金属についてナノモル未満の親和性を有するポリペプチドは、有用でありえ、適宜、このポリペプチドは、少なくとも一種の効果的な金属について、10-15M、10-20Mより小さい解離定数を有するであろうことが、一般に予想される。多くの金属結合性タンパク質が少なくとも一種より多くの金属と結合するであろうということは理解される。例えば、ラクトフェリンは、金属例えばマンガン及び亜鉛と複合体を形成するであろう。フェリチン−鉄複合体は、一般に、少量(おそらく、極微量)の他の金属を含むと予想される。一般に、鉄結合性タンパク質が、例えばマンガン、コバルト、亜鉛及びクロムなどの金属と結合することは、鉄のイン・ビボでの濃度及び豊富さがこれらの他の金属より遥かに高いので鉄結合性タンパク質は主として鉄と結合するであろうが、ありそうなことである。
【0092】
この発明の幾つかの典型的な金属結合性ポリペプチドを与える。これは、網羅的一覧表であることを意図するものではないし、本明細書中の技術の故に、当業者は、他の有用な金属結合性ポリペプチドを同定し又はデザインすることができよう。
【0093】
ある典型的具体例において、少なくとも一種のフェリチンは、コントラスト剤として利用することができる。この発明のフェリチンは、結合した鉄を有する二量体又は多量体構造を形成する傾向及び第一のらせん内に鉄配位Glu残基を含み且つ第二のらせん内にGlu−X−X−Hisモチーフを含むらせん束構造を有することを特徴とする二鉄カルボキシレートタンパク質の任意の群を包含する。ある種のフェリチンは、主としてFe(III)形態の結合した鉄を保持している。典型的フェリチンの一覧表を表1に与える。この一覧表は、例を与えることを意図しており、包括的であることを意図していない。多くの公知のフェリチンは含まれておらず、殆どの脊椎動物種は、コントラスト剤として利用できるフェリチン形態を有するであろうということは理解される。この明細書の故に、当業者は、更なるフェリチン同族体を同定することができよう。ある具体例において、コントラスト剤として利用するためのフェリチンは、配列番号:2及び/又は配列番号:4のアミノ酸配列と少なくとも50%の、適宜、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%又は100%の同一性を有するべきである。
【0094】
多くの具体例において、この発明の方法論は、脊椎動物フェリチンをコントラスト剤として用いる。脊椎動物フェリチンは、典型的には、空隙に境界を定める殻の内に集合する大きい複合体を形成し、該殻内には、鉄が鉱物形態で密集した形態で蓄積している。殆どの哺乳動物フェリチンは、2つのサブユニット型、H鎖及びL鎖よりなる。典型的に、これらの2種の鎖の内因性mRNAは、鉄調節タンパク質(IRP)への結合によってフェリチンの翻訳を調節する殆ど同じ鉄応答性エレメント(IRE)を5’末端近くに有する。フェリチンの異所的発現のための核酸構築物をデザインする場合、IRE配列を省くか或は破壊することは、しばしば、望ましいであろう。培養細胞を高めた鉄濃度と接触させることは、典型的には、L鎖及びH鎖両方の強いアップレギュレーションを引き起こすが、鉄キレート剤例えばデスフェリオキサミンでの処理は、フェリチン生成を抑制する。この発明の好適フェリチンは、Fe(II)型からFe(III)型への鉄酸化ステップの両方を触媒し且つ核形成及び鉄鉱物コアの成長をも触媒する。多数のサブユニットからなるフェリチンの場合には、全サブユニットを自然の複合体中で見出されるものに近い化学量論にて発現することは、典型的には、望ましい。しかしながら、広範囲のサブユニット比が、典型的には、効果的であろうということは、著名である。例えば、ヒトH鎖は、鉄に結合するホモポリマーを形成することができる。過剰発現から生じる過剰のフェリチンは、典型的には、細胞内で分解され、主な崩壊生成物は、ヘモシデリン沈着であり;これらも又、コントラスト剤として有効である。
【0095】
【表1】

【0096】
更なる具体例において、この発明の金属結合性タンパク質は、シデロフォアによる非常に高い親和性を有する金属と結合するタンパク質として定義される金属スカベンジャーである。かかるタンパク質は、コントラスト剤として利用することができる。一つの機構に拘束されることは望まないが、かかるタンパク質が、主に、間接的コントラスト剤として作用するであろうということは予想される。例えば、細胞内で発現された鉄スカベンジャータンパク質は、鉄イオンを除去し且つ細胞内空間内の不安定な鉄のプールに由来する該イオンに強く結合することができる。それ故、MRIコントラストは、鉄が結合したキレート化合物自体と、細胞自体の鉄調節機構の結果として封鎖されて貯蔵された更なるイオンとの結合により増強されうる。金属スカベンジャータンパク質中に存在しうる典型的なシデロフォアには、ヘモグロビン及び、鉄に関する八面配位体球を与える(通常、6酸素原子により形成される)任意の他の薬剤が含まれる。一般に、これらは、次の2つの範疇に入る:(a)カテコール例えば、2,3−ジヒドロキシ−N−ベンゾイルセリン3分子よりなる環状構造を含む腸内バクトリン。更なる例には、セリンがグリシン又はスレオニンで置換された薬剤が含まれる。ここでは又、偽バクトリンなどの環状構造より直鎖状構造を有するカテコールシデロフォアも含まれる;(b)ヒドロキサメートは、様々な種類のヒドロキサム酸を含む環状又は直鎖状ペプチドを有する大きい変化しやすい原子団を含む。一般的な例には、フェリクローム、フェリオキサミン、及びアエロバクトリンが含まれる。更なる例には、植物シデロフォア例えばフィトシデロフォアが含まれる。典型的な金属スカベンジャータンパク質には、シデロフィリンファミリーの鉄結合性タンパク質例えば哺乳動物トランスフェリン、オボトラスフェリン、ラクトフェリン、メラノトランスフェリン、セルトリトランスフェリン、ニューロトランスフェリン、粘膜トランスフェリン及び細菌トランスフェリン例えばインフルエンザ菌、淋菌及び髄膜炎菌で見出されたものが含まれる。
【0097】
更なる具体例において、鉄調節タンパク質(IRP)をコントラストタンパク質として利用することができる。IRPは、鉄の取込み(例えば、トランスフェリンレセプター)、利用(例えば、エリスロイド5−アミノレブリネートシンターゼ)又は貯蔵(例えば、H−フェリチン及びL−フェリチン)において機能するタンパク質の合成を調節する鉄調節RNA結合性タンパク質である。IRPにより調節されるタンパク質は、少なくとも一つの鉄応答性エレメント(IRE)と呼ばれるステムループモチーフを含むmRNAによりコードされる。低イオン濃度では、IRPは、IREに結合して、影響されるmRNAの安定性又は翻訳を調節する。一般に、IREが、mRNAの5’UTR領域内に位置する場合には(例えば、フェリチンの場合)、IRPは、翻訳をブロックして、低鉄濃度における減少したタンパク質生成を引き起こす。IREが3’UTR内に位置する場合(例えば、トランスフェリンレセプターの場合)、IRPは、典型的には、mRNAを安定化し、それにより、低鉄濃度に応答しての遺伝子産物の生成を増大させる。IRP2をコードする遺伝子のターゲティングによる欠失を有するマウスは、神経組織における鉄の有意の蓄積を示す(LaVaute等、2001, Nat.Genet.27(2):209-14)。従って、IRPの例えばアンチセンス又はRNAi方法論による操作は、コントラスト効果を与えることができる。この発明のIRPは、典型的には、鉄により調節される様式でIREに結合する能力を有するであろう。この発明の好適IRPは、脊椎動物IRP例えばヒトIRP1(受入れ番号P21399及びZ11559)、ヒトIRP2(受入れ番号AAA69901及びM58511)、ラットIRE−BP1(受入れ番号Q63270及びL23874)、マウスIRE−BP1(受入れ番号P28271及びX61147)、ニワトリIRE−BP(受入れ番号Q90875及びD16150)などである。一般に、患者の生物学的材料のIREに結合するIRPを用いることは望ましいことであり、ある具体例においては、これは、患者の種に由来するIRPを利用することにより達成されうる。この発明のある面において、コントラストタンパク質は、ヒトIRP1及び/又はIRP2のアミノ酸配列と少なくとも60%同一の、適宜、少なくとも70%、80%、90%、95%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0098】
更なる面において、この発明のコントラストタンパク質は、細胞の鉄ホメオスタシスを混乱させるものであってよい。例えば、トランスフェリンレセプタータンパク質、及び/又はトランスフェリンレセプタータンパク質の発現及び/若しくは機能を調節する分子をコントラスト剤として利用することができる。トランスフェリンレセプターは、鉄担持タンパク質トランスフェリンのレセプター媒介性エンドサイトーシスを媒介し、それにより、細胞の鉄の取込みを媒介する。それ故、この発明の一具体例において、トランスフェリンレセプターの標的細胞におけるレベル及び/又は活性を調節して細胞の鉄の取込みを増大させ、それにより、その細胞にフェリチンの生成を引き起こすことができる。最終的な結果は、過剰のフェリチンの蓄積であり、これはMRIコントラストを生成するであろう。典型的なトランスフェリンレセプターには、配列番号:16、18、20及び22が含まれる。この発明のある面において、コントラストタンパク質は、ヒトトランスフェリンレセプター1及び/又はヒトトランスフェリンレセプター2のアミノ酸配列と少なくとも60%同一の、適宜、少なくとも70%、80%、90%、95%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0099】
更なる具体例において、この発明のコントラストタンパク質は、例えば、分子生物学の技術を用いることにより巧みに処理されうる。例えば、他の特性の内で、主題のコントラストタンパク質の構造を、コントラスト効果、安定性(例えば、イン・ビボでのタンパク質分解に対する増大した又は減少した耐性)、抗原性、又は安全性を増大させるなどの目的のために改変することが可能である。かかる改変タンパク質は、例えば、アミノ酸の置換、欠失又は付加によって生成することができる。加えて、ここで論じたタンパク質の任意の単純な変異体は、保存的置換により得ることができる。例えば、ロイシンのイソロイシン又はバリンによる、アスパルテートのグルタメートによる、スレオニンのセリンによる孤立した置換、又はアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による同様の置換(保存的変異)が、その結果生成する分子の生物学的活性に対して主たる効果を有しないであろうということを予想することは合理的である。保存的置換は、側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で起きるものである。遺伝子にコードされたアミノ酸は、次の4つのファミリーに分割することができる:(1)酸性=アスパルテート、グルタメート;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非帯電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、ときには、芳香族アミノ酸として一緒に分類される。同様の仕方で、アミノ酸の全範囲を、(1)酸性=アスパルテート、グルタメート;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン、(3)脂肪族=グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン(セリン及びスレオニンは、適宜、脂肪族ヒドロキシルとして別に分類される);(4)芳香族=フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)アミド=アスパラギン、グルタミン;及び(6)硫黄含有=システイン及びメチオニンとしてグループ分けすることができる(例えば、Biochemistry, 第二版、L. Stryer編、W.H. Freeman and Co., 1981参照)。
【0100】
この発明は、更に、主題のコントラストタンパク質のコンビナトリアル変異体のセット並びに機能的な切り詰め変異体を生成する方法を企図している。かかるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、上記のような望ましい性質の幾つかを有する巧みに処理されたコントラストタンパク質を生成することである。
【0101】
潜在的に巧みに処理されたコントラストタンパク質のライブラリーを生成することのできる多くの方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成を、自動化DNA合成装置で行なうことができ、次いで、それらの合成遺伝子を、発現のために適当な遺伝子に連結する。遺伝子の縮重セットの目的は、一混合物中で、潜在的なコントラストタンパク質配列の所望のセットをコードするすべての配列を提供することである。かかる技術は、他のタンパク質の方向付けられた進化において用いられてきた(例えば、Scott等、(1990) Science 249:386-390; Roberts等、(1992) PNAS USA 89:2429-2433; Devlin等、(1990) Science 249:404-406; Cwirla等、(1990) PNAS USA 87:6378-6382; 並びに米国特許第5,223,409号、5,198,346号及び5,096,815号参照)。
【0102】
或は、他の形態の突然変異誘発を利用して、コンビナトリアルライブラリーを生成することができる。例えば、巧みに処理したコントラストタンパク質を生成させて、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発などを利用してスクリーニングすることにより(例えば、Ruf等、(1994) Biochemistry 33:1565-1572; Wang等、(1994) J.Biol.Chem.269:3095-3099; Balint等、(1993)参照)、リンカースキャニング突然変異誘発により(Gustin等、(1993) Virology 193:653-660; Brown等、(1992) Mol.Cell Biol.12:2644-2652; McKnight等、(1982) Science 232:316);飽和突然変異誘発により(Meyers等、(1986) Science 232:613);PCR突然変異誘発により(Leung等、(1989) Method Cell Mol Biol 1:11-19);又は科学的突然変異誘発などを含むランダム突然変異誘発(Miller等、(1992) A Short Course in Bacterial Genetics, CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY;及びGreener等、(1994) Strategies in Mol Biol 7:32-34)によってライブラリーから単離することができる。
【0103】
ポリペプチドのアミノ酸配列の変化が機能的同族体を生じるかどうかは、変異体ポリペプチドの、例えば、所望の金属に結合し、十分なMRIコントラストを細胞中に生成し、そして減少した細胞毒性を生成する能力を評価することによって容易に測定することができる。
【0104】
更なる面において、コントラストタンパク質の任意の組合せを用いて、所望のコントラスト効果を得ることができる。
【0105】
4.構築物及びベクター
ある面において、この発明は、少なくとも一つのコントラスト剤をコードする核酸を含むベクター及び核酸構築物を提供する。このベクター又は構築物の他の特徴は、一般に、如何にコントラスト剤を生成させて利用するかに依って、望ましい特徴を与えるようにデザインされる。典型的な望ましい特徴には、所望のレベルでの遺伝子発現、異なる遺伝子の発現を反映する遺伝子発現、容易なクローン化、患者の細胞における一過性の又は安定した遺伝子発現などが含まれるが、これらに限られない。
【0106】
ある面において、コントラスト剤の一過性の発現を与えるベクターを利用することは望ましいことである。かかるベクターは、一般に、細胞内で不安定であり、それで、コントラスト剤の発現に必要な核酸が、比較的短時間後に失われる。典型的な一過性発現用ベクターを、平均時間、日、週又は月にわたって遺伝子発現を与えるようにデザインすることができる。しばしば、一過性発現ベクターは、宿主の安定なゲノムに組み込まれるように組換えしない。典型的な一過性発現ベクターには:アデノウイルス由来のベクター、アデノ随伴ベクター、単純ヘルペスウイルス由来のベクター、アデノ随伴/単純ヘルペスウイルスハイブリッドベクター、インフルエンザウイルスベクター(特に、インフルエンザAウイルスベースのもの)、及びアルファウイルス例えばシンビス及びセムリキ森林ウイルスが含まれる。
【0107】
幾つかの面において、この発明は、コントラストタンパク質をコードする容易にクローン化できる核酸を含むベクター又は構築物を提供する。例えば、コード配列は、片側又は両側でポリリンカーと隣接していてよい。ポリリンカーは、当業者が、コード配列を必要とされる様々な異なるベクター及び構築物に容易に挿入することを可能にすることに関して有用である。他の例においては、コード配列は、少なくとも一つの組換え部位と隣接していてよい。様々な市販のクローニングシステムは、組換え部位を利用して、所望の核酸の種々のベクターへの移動を容易にする。例えば、Invitrogen Gateway(商標)技術は、ラムダファージレコンビナーゼ酵素を利用して、標的核酸を第二の核酸と組み換える。各核酸は、適当なラムダ認識配列例えばattL又はattBと隣接している。他の変法においては、トポイソメラーゼIなどのレコンビナーゼを、適当な認識部位と隣接する核酸と共に利用することができる。例えば、ワクシニアウイルストポイソメラーゼIタンパク質は、(C/T)CCTT配列を認識する。これらの組換えシステムは、必要とされる隣接カセットのベクター間での迅速なシャッフリングを可能にする。構築物又はベクターは、所望であれば、隣接ポリリンカーと隣接組換え部位の両方を含むことができる。
【0108】
ある面において、コントラスト遺伝子は、プロモーターに操作可能に結合される。プロモーターは、例えば、強い又は構成的プロモーター例えばSV40の初期及び後期プロモーター、又はアデノウイルス若しくはサイトメガロウイルス最初期プロモーターであってよい。適宜、外的に調節されるプロモーター例えばtetプロモーター、IPTG調節されるプロモーター(GAL4、Plac)、又はtrpシステムを使用することは、望ましいであろう。この明細書の故に、当業者は、下流での利用に応じて、他の有用なプロモーターを容易に同定することができる。例えば、この発明は、典型的なプロモーター例えばT7RNAポリメラーゼにより発現が指示されるT7プロモーター、ラムダファージの主要なオペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセレートキナーゼ又は他の解糖酵素、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母a交配因子のプロモーター、バキュロウイルス系のポリヘドロンプロモーター及び原核若しくは真核細胞又はそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られた他の配列、又はこれらの他の組合せを利用することができる。加えて、上記のように、プロモーターに操作可能に結合されたコントラスト遺伝子であって、それが置かれた細胞の状態についての有用な情報を提供する当該コントラスト遺伝子を有することは望ましいであろう。ある具体例において、バックグラウンドノイズを超える検出を可能にするコントラストタンパク質の標的細胞内での濃縮を達成することは望ましいであろうということが予想され、ある検出システムを用いた場合には、これは、少なくとも1nM又は少なくとも10nMのタンパク質濃度に翻訳されよう。
【0109】
この発明のベクターは、本質的に、構築物遺伝子を細胞又はウイルス内に導入し及び/又は維持するためにデザインされた任意の核酸であってよい。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/MCV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo及びpHyg由来のベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターの幾つかは、細菌プラスミド例えばpBR322由来の配列により改変されて、原核及び真核細胞の両方での複製及び薬物耐性選択を容易にしてある。或は、ウイルス例えばウシパピローマウイルス(BPV−1)又はエプスタインバールウイルス(pHEBo、pREP由来及びp205)の誘導体を利用することができる。遺伝子治療に適した他のベクター系を、以下に記載する。
【0110】
5.細胞、組織化細胞培養、及び組織
多くの面において、この発明は、コントラスト剤をコードする核酸を含む細胞、組織化細胞培養、及び組織を提供する。トランスフォーム又はトランスフェクトされた細胞を生成する方法は、当分野で広く知られており、ここに記載の方法は、本質的に、細菌、カビ、植物及び動物細胞を含む(これらに限られない)関心ある任意の細胞型について利用することができるということが予想される。この発明の好適具体例は、哺乳動物細胞を利用する。特に関心のある細胞には、トランスフォームされた細胞又は他の細胞(腫瘍の部分であるか又はイン・ビトロでの癌のモデルとして有用であるもの)、幹細胞又は前駆細胞、及び患者のための細胞治療のために調製された細胞が含まれる。この発明の細胞は、培養細胞、細胞株、組織中に位置された細胞及び/又は生物体の部分である細胞であってよい。
【0111】
これらの細胞は、組織化された細胞培養(即ち、ランダムでない構造を発生させる細胞培養)を生成するために及び患者への移植のための臓器又は臓器様構造を生成するために利用することができるということが更に予想される。かかる細胞における遺伝子発現の幾つかの面を非侵襲的にモニターし、又はかかる細胞におけるMRIコントラストを提供することは有用でありうる。例えば、損傷した筋肉への投与のために又は治療用タンパク質を生成する細胞の群としての投与のために、筋肉前駆細胞を利用して、筋肉様器官を発生させることができる(例えば、米国特許第5,399,346号;6,207,451号;5,538,722号参照)。他の細胞培養法が、移植のための神経、すい臓、肝臓及び他の多くの臓器型を生成するために利用されてきた(例えば、米国特許第6,146,889号;6,001,647号;5,888,705号;5,851,832号及びPCT公開番号WO 00/36091;WO 01/53461;WO 01/21767参照)。この性質の細胞は、培養の初期ステージにおいて、コントラスト遺伝子によって安定にトランスフェクトされうるか、又は組織化培養物は、培養における一層遅い時点で、一過的に又は安定にトランスフェクトして、細胞機能の幾つかの面を評価することができる。トランスフェクトされた細胞は、遺伝子産物を送達するために、患者に投与することができ、この方法論は、エキス・ビボ遺伝子療法又は細胞療法として有効である。コントラストタンパク質をコードする核酸は、遺伝子発現又は投与された細胞の生存力をモニターするために、かかる細胞に導入することができ、患者に投与することができる。遺伝子アデノシンデアミナーゼでトランスフェクトされた細胞は、エキス・ビボ遺伝子療法として、重症複合型免疫不全症(SCID)の患者に送達されてきた(Cavazzana-Calvo等、2000, Science 288(5466):669-72)。
【0112】
6.生物体及びイン・ビトロ組織への送達のための核酸
細胞のエキス・ビボ改変にもかかわらず、多くの状況において、細胞をイン・ビボで改変することが望まれうる。この目的のために、様々な技術が、標的組織及び細胞のイン・ビボでの改変のために開発されてきた。トランスフェクションを可能にし、場合によってはウイルスの宿主中への組込みを可能にする上記のような多くのウイルス性ベクターが開発されてきた。例えば、Dubensky等、(1984) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81, 7529-7533;Kaneda等、(1989) Science 243, 375-378;Hiebert等、(1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86, 3594-3598;Hatzoglu等、(1990) J.Biol.Chem. 265, 17285-17293及びFerry等、(1991) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88, 8377-8381を参照されたい。このベクターは、注射(例えば、静脈注射又は筋肉注射)、吸入、又は他の非経口様式によって投与することができる。非ウイルス性の送達方法例えばリポソームとの複合体による又は注射、カテーテル若しくは遺伝子銃によるDNAの投与も又、利用することができる。一般に、ヒト患者において、コントラスト剤をコードする核酸の一過性の発現を与える核酸及び/又は送達システムをデザインすることは好適であろう。
【0113】
一般に、核酸を導入する方法は、組織の性質、必要とされる細胞改変の効率、特定の細胞を改変する機会の数、導入される核酸組成物への組織の接近容易性などに依存するであろう。このDNA導入は、組込みを生じる必要はない。事実、非組込みは、しばしば、導入されたDNAの一過性の発現を生じ、一過性発現は、しばしば、十分であり、好適でさえある。
【0114】
ポリヌクレオチドの哺乳動物(ヒト又は非ヒト哺乳動物)への導入のための任意の手段を、この発明の様々な構築物の意図する患者への送達のために、この発明の実施に適応させることができる。この発明の一具体例において、これらの核酸構築物は、トランスフェクションによって(即ち、「裸の」核酸の送達により又はコロイド分散システムとの複合体にて)細胞へ送達することができる。コロイドシステムには、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ及び脂質ベースのシステム(水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む)が含まれる。この発明の典型的なコロイドシステムは、脂質複合体化又はリポソーム配合されたDNAである。前者のアプローチにおいて、DNAを例えば脂質と配合する前に、所望のDNA構築物を有する導入遺伝子を含むプラスミドを、先ず、実験的に、発現に最適にすること(例えば、5’非翻訳領域内にイントロンを含ませること及び不必要な配列の削除)ができる(Felgner等、Ann NY Acad Sci 126-139, 1995)。DNAを例えば様々な脂質又はリポソーム材料と配合することは、公知の方法及び材料を利用して達成することができ、レシピエント哺乳動物に送達することができる。例えば、Canonico等、Am J Respir Cell Mol Biol 10:24-29, 1994;Tsan等、Am J Physiol 268;Alton等、Nat Genet. 5:135-142, 1993及びCarson等の米国特許第5,679,647号を参照されたい。
【0115】
適宜、リポソーム又は他のコロイド分散システムが標的とされる。ターゲティングは、解剖学的及び機械論的因子に基づいて分類することができる。解剖学的分類は、選択性のレベル(例えば、臓器特異的、細胞特異的及びオルガネラ特異的)に基づく。機械論的ターゲティングは、それが受動的か能動的かに基づいて区別することができる。受動的ターゲティングは、洞様毛細血管を含む臓器内の細網内皮系(RES)の細胞に分布するリポソームの自然の傾向を利用する。他方、能動的ターゲティングは、自然に存在する部位以外の臓器及び細胞型へのターゲティングを達成するために、リポソームを特異的リガンド例えばモノクローナル抗体、糖、糖脂質、又はタンパク質と結合させることによる又はリポソームの組成若しくは大きさを変化させることによるリポソームの変化を含む。
【0116】
ターゲティング送達システムの表面は、様々な方法で改変することができる。リポソームによるターゲティング送達システムの場合には、ターゲティングリガンドとリポソーム二層との安定な結合を維持するために、脂質グループを脂質二層に組み込むことができる。様々な結合基を、脂質鎖をターゲティングリガンドに結合させるために利用することができる。あるレベルのターゲティングが、選択した投与方法によって達成されうる。
【0117】
この発明のある変形において、これらの核酸構築物は、細胞に送達され、特に、生物体又は培養組織内の細胞にウイルスベクターを利用して送達される。この導入遺伝子は、遺伝子治療において有用な様々なウイルス性ベクター例えば組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス由来のベクター、アデノ随伴ウイルス/単純ヘルペスウイルスハイブリッドベクター、インフルエンザウイルスベクター(特に、インフルエンザAウイルスに基づくもの)、及びアルファウイルス例えばシンビス及びセムリキ森林ウイルス、又は組換え細菌又は真核生物プラスミドの何れかに組み込むことができる。ウイルス性ベクターの選択及び利用についての以下の更なるガイダンスは、実務家にとって助けとなろう。以下に一層詳細に記載したように、主題の発現用構築物のかかる具体例は、特に、様々なイン・ビボ及びエキス・ビボの遺伝子治療プロトコールにおける利用のために企図される。
【0118】
A.ヘルペスウイルスシステム
様々なヘルペスウイルスベースのベクターが、遺伝子の哺乳動物への導入のために開発されてきた。例えば、1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)は、神経系への遺伝子トランスファーのために特に興味深いヒトの神経向性ウイルスである。標的細胞への感染の後に、ヘルペスウイルスは、しばしば、溶菌生活環又は潜伏性生活環の何れかをとり、核内エピソームとして維持される。殆どの場合において、潜伏感染した細胞は、免疫系によって拒絶されない。例えば、HSV−1が潜伏感染したニューロンは、正常に機能し、拒絶されない。幾つかのヘルペスウイルスは、細胞型特異的プロモーターを有し、それらは、ウイルスが潜伏型である場合でさえ発現される。
【0119】
典型的なヘルペスウイルスゲノムは、100〜250kbに及ぶ直鎖状の二本鎖DNA分子である。HSV−1は、152kbのゲノムを有する。このゲノムは、内部反復配列(IRL及びIRS)により何れかの向きに結合された長い及び短い領域(それぞれ、UL及びUSと呼ばれる)を含むことができる。ユニークな領域の非リンカー末端には、末端反復(TRL及びTRS)がある。HSV−1において、80〜90個の遺伝子の凡そ半分は、必須でなく、非必須遺伝子の欠失は、凡そ40〜50kbの外来DNAのスペースを創出する(Glorioso等、1995)。潜伏性活性化転写物の発現を駆動する2つの潜伏性の活性プロモーターが同定されており、ベクター導入遺伝子発現のために有用であることが判明しうる。
【0120】
HSV−1ベクターは、アンプリコン及び組換えHSV−1ウイルス型において利用可能である。アンプリコンは、細菌により生成される大腸菌の複製起点のOriC、OriS(HSV−1複製起点)、HSV−1パッケージング配列、最初期プロモーターの制御下の導入遺伝子及び選択マーカーを含むプラスミドである(Federoff等、1992)。このアンプリコンは、すべての失われた構造及び調節遺伝子をトランスで与えるヘルパーウイルスを含む細胞株(温度感受性変異株)にトランスフェクトされる。一層最近のアンプリコンは、プラスミドのエピソーム維持のためのエプスタイン−バールウイルス由来の配列を含む(Wang及びVos, 1996)。組換えウイルスは、最初期遺伝子の一つ例えばトランスで与えられるICP4の欠失により複製欠損にされる。幾つかの最初期遺伝子の欠失は、実質的に、細胞傷害性を減じ、野生型の潜伏ウイルスではサイレントであろうプロモーターからの発現を可能にする。これらのプロモーターは、長期遺伝子発現の指示において利用することができる。条件付き複製変異体は、許容細胞株中で複製する。許容細胞株は、細胞の酵素をウイルスの欠損を補うように供給する。変異体は、チミジンキナーゼ(During等、1994)、リボヌクレアーゼ(Kramm等、1997)、UTPアーゼ、又は神経毒性因子g34.5(Kesari等、1995)を含む。これらの変異体は、癌の治療に特に有用であり、他の細胞種よりも早く増殖する新生細胞を殺す(Andreansky等、1996, 1997)。複製制限されたHSV−1ベクターは、ヒトの悪性中皮腫の治療のために用いられてきた(Kucharizuk等、1997)。ニューロン以外に、野生型のHSV−1は、他の非ニューロン細胞型例えば皮膚に感染することができ(Al-Saadi等、1983)、HSV由来のベクターは、導入遺伝子を広範囲の細胞型に送達するために有用でありうる。ヘルペスウイルスベクターの他の例は、当分野で公知である(米国特許第5,631,236号及びWO 00/08191)。
【0121】
B.アデノウイルスベクター
本発明で有用なウイルス遺伝子送達システムは、アデノウイルス由来のベクターである。アデノウイルスの遺伝的構成の知識(36kBの、直鎖で二本鎖のDNAウイルス)は、アデノウイルスDNAの大きい断片を最大8kBまで外来の配列で置換することを可能にする。レトロウイルスと対照的に、アデノウイルスDNAの宿主細胞への感染は、アデノウイルスDNAが潜在的遺伝毒性を伴わずにエピソーム様式で複製できるので、染色体への組込みを生じない。又、アデノウイルスは、構造的に安定であり、ゲノムの再配列は、大規模増幅後に検出されていない。アデノウイルスは、事実上すべての上皮細胞に、それらの細胞周期段階にかかわらずに感染することができる。加えて、細胞のアデノウイルスベクター媒介のトランスフェクションは、しばしば、一過性事象である。免疫応答とプロモーターサイレンシングの組合せは、アデノウイルスベクターに導入された導入遺伝子が発現される時間を制限するように見える。
【0122】
アデノウイルスは、中位の大きさのゲノム、操作の容易さ、高い力価、広い標的細胞範囲、及び高い感染力の故に、遺伝子トランスファー用ベクターとしての利用に特に適している。このウイルス粒子は、比較的安定であり且つ精製及び濃縮に従順であって、上記のように、感染力のスペクトルに影響を与えるように改変することができる。更に、アデノウイルスは、増殖させて操作するのが容易であり、イン・ビトロ及びイン・ビボで広い宿主範囲を示す。このグループのウイルスは、高力価(例えば、109〜1011プラーク形成単為(PFU)/ml)で得ることができ、それらは、高度に感染性である。その上、アデノウイルスゲノムの外来DNAを運搬する能力(最大8キロベース)は、他の遺伝子送達ベクターと比較して大きい(Berkner等、前出;Haj-Ahmand及びGraham(1986) J.Virol.57:267)。現在使用されており、それ故、本発明で好まれる殆どの複製欠損アデノウイルスベクターは、ウイルスのE1及びE3遺伝子の全部又は部分を欠失しているが、アデノウイルスの遺伝物質の80%までも保持している(例えば、Jones等、(1979) Cell 16:683;Berkner等、前出;及びGraham等、Methods in Molecular Biology, E.J.Murray編(Humana, Clifton, NJ, 1991)7巻、109-127頁参照)。この発明の挿入されたポリヌクレオチドの発現は、例えば、E1Aプロモーター、主要な後期プロモーター(MLP)及び関連するリーダー配列、ウイルス性E3プロモーター、又は外来的に付加されたプロモーター配列の制御下にあってよい。
【0123】
アデノウイルスのゲノムは、それが、関心ある遺伝子産物をコードするが、正常な溶菌性ウイルス生活環において複製する能力に関しては不活性化されるように操作することができる(例えば、Berkner等、(1988) Bio Techniques 6:616;Rosenfeld等、(1991) Science 252:431-434;及びRosenfeld等、(1992) Cell 68:143-155参照)。アデノウイルスAd5型dl324株又はアデノウイルスの他の株(例えば、Ad2、Ad3、Ad7など)に由来する適当なアデノウイルスベクターは、同業者に周知である。
【0124】
アデノウイルスは、細胞型特異的(即ち、限られた細胞型にのみ感染し及び/又は限られた細胞型においてのみ導入遺伝子を発現する)であってよい。例えば、これらのウイルスは、遺伝子を、例えば、Henderson及びSchuurの米国特許第5,698,443号(1997年12月16日発行)に記載されたように、標的宿主細胞により特異的に調節される転写開始領域の転写制御下に含むように巧みに処理することができる。こうして、複製コンピテントなアデノウイルスを、例えば、細胞特異的応答エレメントを挿入して複製に必要なタンパク質例えばE1A又はE1Bの合成を調節することによって、ある細胞に限ることができる。
【0125】
幾つかのアデノウイルス型のDNA配列は、Genbankから入手できる。例えば、ヒトアデノウイルス5型は、GenBank受入れ番号M73260を有する。このアデノウイルスDNA配列は、現在同定されている42のヒトアデノウイルスの任意の型から得ることができる。様々なアデノウイルス株が、American Type Culture Collection (メリーランド、Rockville在)から入手でき、又は商業的及び学術的供給源から入手できる。ここに記載したような導入遺伝子は、制限消化、リンカー連結又は末端充填及び連結によって、任意のアデノウイルスベクター及び送達プロトコールに組み込むことができる。
【0126】
アデノウイルス産生細胞株は、アデノウイルス遺伝子E1、E2a及びE4DNA配列の少なくとも一つを含むことができ、パッケージングに関して、これらの遺伝子の少なくとも一つが変異し又は欠失したアデノウイルスベクターが、例えば、Kadan等のPCT/US95/15947(WO 96/18418);Kovesdi等のPCT/US95/07341(WO 95/346671);Imler等のPCT/FR94/00624(WO94/28152);Perrocaudet等のPCT/FR94/00851(WO 95/02697);Wang等のPCT/US95/14793(WO96/14061)に記載されている。
【0127】
C.AAVベクター
主題のポリヌクレオチドの送達に有用な更に別のウイルスベクターシステムは、アデノ随伴ウイルスである(AAV)。アデノ随伴ウイルスは、アデノウイルス又はヘルペスウイルスなどの他のウイルスを、効率的な複製及び生産的生活環のためのヘルパーウイルスとして必要とする天然の欠損ウイルスである(総説については、Muzyczka等、Curr.Topics in Micro.and Immunol.(1992) 158:97-129を参照されたい)。
【0128】
AAVは、如何なる病気の原因とも関連付けられていない。AAVは、トランスフォーミングウイルスでも発癌ウイルスでもない。AAVのヒト細胞株の染色体への組込みは、これらの細胞の増殖特性又は形態的特徴に如何なる有意の変化も引き起こさない。AAVのこれらの特性は又、それを、潜在的に有用なヒト遺伝子治療用ベクターとして推奨する。
【0129】
AAVは又、そのDNAを非分割細胞例えば肺上皮細胞に組み込むことができて、高頻度の安定な組込みを示す少数のウイルスの一つでもある(例えば、Flotte等、(1992) Am.J.Respir.Cell.Mol.Biol.7:349-356;Samulski等、(1909) J.Virol.63:3822-3828;及びMcLaughlin等、(1989) J.Virol.62:1963-1973参照)。AAVの300塩基対という少ない塩基対を含むベクターは、パッケージされえて、組み込まれうる。外来DNAのためのスペースは、約4.5kbに限られている。Tratschin等、(1985) Mol.Cell.Biol.5:3251-3260に記載されたようなAAVベクターを利用して、DNAを細胞に導入することができる。様々な核酸が、AAVを利用して、種々の細胞型に導入されてきた(例えば、Hermonat等、(1984) PNAS USA 81:6466-6470;Tratschin等、(1985) Mol.Cell.Biol.4:2072-2081;Wondisford等、(1988) Mol.Endocrinol.2:32-39;Tratschin等、(1984) J.Virol.51:611-619;及びFlotte等、(1993) J.Biol.Chem.268:3781-3790参照)。
【0130】
典型的に用いられるAAVベースの発現ベクターは、導入遺伝子のサブクローニングに利用することのできる制限部位に隣接する145ヌクレオチドAAV逆向き末端反復(ITR)を含み、該サブクローニングは、利用可能な制限部位を直接利用して行なうか又は導入遺伝子を制限酵素によって切り出してから、末端を平滑化し、適当なDNAリンカーと連結し、制限消化し、そしてITR間の部位に連結することによって行なう。AAVベクターの容量は、通常、約4.4kbである(Kotin, R.M., Human Gene Therapy 5:793-801, 1994及びFlotte等、J.Biol.Chem.268:3781-3790, 1993)。
【0131】
AAVストックは、Hermonat及びMuzyczka(1984) PNAS 81:6466,に記載されたものをSamulski等(1989) J.Virol.63:3822に記載されたpAAV/Adを利用して改変したようにして生成することができる。このウイルスの濃縮及び精製は、AAVベクターのイン・ビボでの発現の初期の報告(Flotte等、J.Biol.Chem.268:3781-3790, 1993)に用いられたような塩化セシウム勾配中でのバンド形成のような報告された方法により又はO'Riordan等のWO97/08298に記載されたようなクロマトグラフィー精製によって達成することができる。AAVベクターのイン・ビトロでのパッケージングを行なう方法も又、利用可能であり、粒子にパッケージされるDNAの大きさの制限がないという利点を有している(1997年11月18日発行のZhou等の米国特許第5,688,676号を参照されたい)。この手順は、無細胞パッケージング抽出物の調製物を包含する。
【0132】
D.アデノウイルスAAVハイブリッドベクター
アデノウイルスAAVハイブリッドベクターが生成されており、典型的には、アデノウイルスの一部及びプロモーターの制御下の選択した導入遺伝子に隣接するAAVに由来する5’及び3’逆向き末端反復配列を含む核酸を含むアデノウイルスキャプシッドにより表される。例えば、Wilson等の国際特許出願公開No.WO 96/13598を参照されたい。このハイブリッドベクターは、高力価の導入遺伝子の宿主細胞への送達及び導入遺伝子を宿主細胞の染色体にrep遺伝子の存在下で安定に組み込む能力を特徴とする。このウイルスは、事実上すべての細胞型に感染することができ(アデノウイルス配列により与えられる)、導入遺伝子の宿主細胞ゲノムへの安定な長期間の組込みが可能である(AAV配列により与えられる)。
【0133】
このベクターで用いられるアデノウイルス核酸配列は、このハイブリッドウイルス粒子の産生にヘルパーウイルスの利用が必要となる最少配列量から、アデノウイルスの選択された欠失だけに及ぶ(これらの欠失遺伝子産物は、ハイブリッドウイルス過程においてパッケージング細胞により供給されうる)。例えば、ハイブリッドウイルスは、アデノウイルスの5’及び3’逆向き末端反復(ITR)配列を含むことができる(複製起点として機能する)。利用することのできるAd5ゲノムの左側の末端配列(5’)配列は、伝統的なアデノウイルスゲノムの1〜約360bpに及び(マップユニット0−1とも呼ばれる)、5’ITR及びパッケージング/エンハンサードメインを含む。このハイブリッドウイルスの3’アデノウイルス配列は、約580ヌクレオチドの右末端3’ITR配列(凡そ35,353bp−アデノウイルスの末端、凡そマップユニット98.4〜100と呼ばれる)を含む。
【0134】
導入遺伝子の組込みのための方法及び材料、該導入遺伝子を含む組換えウイルスの増殖及び精製、並びに細胞及び哺乳動物のトランスフェクションにおけるその利用を含む主題の発明の実施において有用でありうるアデノウイルス及びアデノウイルスAAVハイブリッド技術についての更なる詳細なガイドラインについては、Wilson等、WO 94/28938、WO 96/13597及びWO 96/26285並びにこれらにおいて引用された参考文献をも参照されたい。
【0135】
E.レトロウイルス
レトロウイルスベクターを構築するために、関心ある核酸をウイルスゲノムにあるウイルス性配列の代りに挿入して、複製欠損のウイルスを生成する。ビリオンを生成するために、gal、pol及びenv遺伝子を含むがLTR及びpsiコンポーネントを有しないパッケージング細胞株を構築する(Mann等、(1983) Cell 33:153)。ヒトcDNAをレトロウイルスのLTR及びpsiと一緒に含む組換えプラスミドをこの細胞株に導入し(例えば、リン酸カルシウム沈殿により)、このpsi配列は、この組換えプラスミドのRNA転写物がウイルス粒子にパッケージされることを可能にし、その後、それらは、培養培地に分泌される(Nicolas及びRubenstein (1988) 「Retroviral Vectors」、Rodriguez及びDenhardt編、Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses. Stoneham:Butterworth; Temin, (1986)「Retrovirus Vectors for Gene Transfer: Efficient Integration into and Expression of Exogenous DNA in Vertebrate Cell Genome」、Kucherlapati編、Gene Transfer. New York: Plenum Press; Mann等、1983, 前出)。その後、組換えレトロウイルスを含む培地を集めて、適宜、濃縮し、遺伝子トランスファーに利用する。レトロウイルスベクターは、広範囲の様々な細胞型に感染することができる。組込み及び安定な発現は、宿主細胞の分割を必要とする(Paskind等、(1975) Virology 67:242)。この面は、特に、これらのベクターが、増殖する細胞の選択的ターゲティングを即ち網膜上膜の細胞の選択的ターゲティングを可能にするので(これらが、PVR患者の眼において増殖している唯一の細胞であるので)、PVRの治療に適している。
【0136】
レトロウイルスの利用のための主な先行必要条件は、特に、細胞集団における野生型ウイルスの拡大の可能性に関するそれらの利用の安全性を確実にすることである。複製欠損レトロウイルスのみを生成する特殊化された細胞株(「パッケージング細胞」と呼ばれる)の開発は、遺伝子治療のためのレトロウイルスの有用性を増大させており、欠損レトロウイルスは、遺伝子治療目的のための遺伝子トランスファーにおける利用に関して十分に特性表示されている(総説としては、Miller, A.D.(1990) Blood 76:271を参照されたい)。こうして、レトロウイルスコード配列(gag、pol、env)の部分が、本発明のタンパク質例えばレトロウイルスを複製欠損にする転写アクチベーターをコードする核酸により置換された組換えレトロウイルスを構築することができる。この複製欠損レトロウイルスを、次いで、ビリオン中にパッケージして、それを、標準的技術によるヘルパーウイルスの利用により、標的細胞に感染させるために利用することができる。組換えレトロウイルスを生成して、かかるウイルスをイン・ビトロ又はイン・ビボで細胞に感染させるためのプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F.M.等(編) Greene Publishing Associates, (1989), 第9.10-9.14章及び他の標準的な実験室用マニュアル中に見出すことができる。適当なレトロウイルスの例には、pLJ、pZIP、pWE及びpEMが含まれ、これらは、当業者に周知である。好適なレトロウイルスベクターは、pSR MSVtkNeo(Sawyers等、(1995) J.Exp.Med.181:307)及びその誘導体である。例えば、これらのベクターの両方にあるユニークなBamHI部位を、これらのベクターを、Clackson等によりPCT/US96/09948に記載されたように、BamHIで消化して、クレノーを用いて充填することにより除去し、再連結して、それぞれ、pSMTN2及びpSMTX2を生成することができる。環境栄養性及び両栄養性レトロウイルスシステムの両方の調製に適当なパッケージングウイルス株の例には、Crip、Cre、2及びAmが含まれる。
【0137】
レンチウイルスを含むレトロウイルスは、様々な遺伝子を、神経細胞、上皮細胞、網膜細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞、骨髄細胞を含む多くの異なる細胞型に、イン・ビトロ及び/又はイン・ビボで導入するために利用されてきた(例えば、Federico (1999) Curr.Opin.Biotechnol.10:448による総説;Eglitis等、(1985) Science 230:1395-1398;Danos及びMulligan, (1988) PNAS USA 85:6460-6464;Wilson等、(1988) PNAS USA 85:3014-3018;Armentano等、(1980) PNAS USA 87:6141-6145;Huber等、(1991) PNAS USA 88:8039-8043;Ferry等、(1991) PNAS USA 88:8377-8381;Chowdhury等、(1991) Science 254:1802-1805;van Beusechem等、(1992) PNAS USA 89:7640-7644;Kay等、(1992) Human Gene Therapy 3:641-647;Dai等、(1992) PNAS USA 89:10892-10895;Hwu等、(1993) J.Immunol.150:4104-4115;米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願WO 89/07136;PCT出願WO 89/02468;PCT出願WO 89/05345;及びPCT出願WO 92/07573を参照されたい)。
【0138】
更に、ウイルス粒子表面のウイルスパッケージングタンパク質を改変することにより、レトロウイルスの感染スペクトルを制限することが可能であり、従って、レトロウイルスベースのベクターの感染スペクトルを制限することが可能であるということが示されている(例えば、PCT公開WO93/25234、WO94/06920及びWO94/11524参照)。例えば、レトロウイルスベクターの感染スペクトルの改変のためのストラテジーは、次のことを含む:細胞表面抗原に特異的な抗体をこのウイルスのenvタンパク質に結合させ(Roux等、(1989) PNAS USA 86:9079-9083;Julan等、(1992) J.Gen Virol 73:3251-3255;及びGoud等、(1983) Virology 163:251-254);又は細胞表面リガンドをこのウイルスのenvタンパク質に結合させる(Neda等、(1991) J.Biol.Chem.266:14143-14146)。結合は、タンパク質又は他の様々なもの(例えば、envタンパク質をアシアロ糖タンパク質に変換するためのラクトース)との化学的架橋の形態であってよく、並びに融合タンパク質(例えば、一本鎖抗体/env融合タンパク質)の生成によるものであってもよい。この技術は、感染を制限してある種の組織型に向けるのに有用であるが、又、環境栄養性ベクターを両栄養性ベクターに変換するためにも利用できる。
【0139】
F.他のウイルス性システム
この発明のポリヌクレオチドの送達のために利用することのできる他のウイルス性ベクターシステムは、ワクシニアウイルス、アルファウイルス、ポックスウイルス、アレナウイルス、ポリオウイルスなどから誘導されている。かかるベクターは、様々な哺乳動物細胞に対する幾つかの魅力的な特徴を提供する。(Ridgeway(1988) Rodriguez R L, Denhardt D T 編、Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses. Stoneham: Butterworth; Baichwal and Sugden (1986) Kucherlapati R 編、Gene transfer. New York: Plenum Press; Coupar等 (1988) Gene, 68:1-10; Walther and Stein (2000) Drugs 60:249-71; Timiryasova等 (2001) J Gene Med 3:468-77; Schlesinger (2001) Expert Opin Biol Ther 1:177-91; Khromykh (2000) Curr Opin Mol Ther 2:555-69; Friedmann (1989) Science 244:1275-1281;Ridgeway, 1988, 前出; Baichwal and Sugden, 1986, 前出; Coupar等、1988; Horwich等、(1990) J.Virol., 64:642-650)
【0140】
7.トランスジェニック動物
ここに記載した技術を利用して、核酸をヒト又は動物患者に送達することができるが、他の方法を利用して、コントラストタンパク質をコードする組換え核酸を取り込んだ非ヒトトランスジェニック動物を生成することができる。
【0141】
典型的具体例において、この発明の「トランスジェニック非ヒト動物」を、導入遺伝子を非ヒト動物の生殖細胞系列に導入することによって生成する。様々な発生段階の胎児標的細胞を利用して、導入遺伝子を導入することができる。胎児標的細胞の発生段階に依って種々の方法が利用される。この発明を実施するために利用される任意の動物の特定の系統は、一般的な良好な健康、良好な胎児生成、胎児における良好な前核可視性、及び良好な生殖適合性に関して選択される。加えて、ハプロタイプは、重要な因子である。例えば、トランスジェニックマウスを生成する場合、C57BL/6又はFVB系統などの系統が、しばしば、用いられる(Jackson Laboratory, メイン、Bar Harbor在)。好適な系統例えばC57BL/6又はDBA/1が、選択されうる。この発明の実施に利用される系統は、それら自身がトランスジェニック動物であってよく且つ/又はノックアウト動物(即ち、部分的に又は完全に抑制された少なくとも一つの遺伝子を有する動物から得られる)であってよい。
【0142】
一具体例において、コントラストタンパク質をコードする核酸を含む構築物を、第一ステージの胎児に導入する。接合子は、マイクロインジェクションの最良の標的である。このマウスにおいて、雄性前核は、直径約20マイクロメートルの大きさに達し、これは、1〜2plのDNA溶液の前核注射を可能にする。接合子の遺伝子トランスファーの標的としての利用は、殆どの場合に、注入されたDNAが最初の分裂前に宿主の遺伝子に組み込まれる点において主要な利点を有する(Brinster等(1985) PNAS 82:4438-4442)。結果として、このトランスジェニック動物のすべての細胞は、組み込まれた導入遺伝子を有することになる。これは、一般に、生殖細胞の50%が導入遺伝子を保持するので、導入遺伝子の創出動物の子孫への効率的な伝達にも反映される。
【0143】
通常、受精した胎児は、前核が現れるまで、適当な培地中でインキュベートされる。この時点の頃に、導入遺伝子を含むヌクレオチド配列を雌性又は雄性前核に下記のように導入する。幾つかの種例えばマウスにおいては、雄性前核が好ましい。外因性の遺伝物質を接合子の雄性DNA相補物に、卵核又は接合子雌性前核による過程を受ける前に加えることは、最も好ましい。卵核又は雌性前核は、おそらく雄性DNAのプロタミンをヒストンで置き換え、それにより、二倍体接合子を形成するための雌性及び雄性DNA相補物の結合を容易にすることにより雄性DNA相補物に影響を与える分子を放出すると考えられる。
【0144】
それ故、外因性の遺伝物質を雄性相補物DNA又は任意の他の相補物DNAに、雌性前核による影響を受ける前に加えることは、好ましい。例えば、外因性の遺伝物質を、初期雄性前核に、雄性前核の形成後できるだけ早く(それは、雄性及び雌性前核が十分に離れており、両者が細胞膜の近くに位置しているときである)加える。或は、この外因性遺伝物質を、精子の核に、それが脱凝縮を受けるように誘導された後に加えることができよう。外因性遺伝物質を含む精子を、次いで、卵に加えることができ又は脱凝縮された精子を卵に加え、その後できるだけ早く導入遺伝子構築物を加えることができよう。
【0145】
導入遺伝子ヌクレオチド配列の胎児への導入は、当分野で公知の任意の手段例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション又はリポフェクションによって達成することができる。導入遺伝子ヌクレオチド配列の胎児への導入後に、その胎児を、イン・ビトロで、様々な時間にわたってインキュベートすることができ、又は代理宿主へ再移植することができ、或は両方を行なうことができる。成熟するまでのイン・ビトロでのインキュベーションは、この発明の範囲内にある。一つの一般的方法は、胎児をイン・ビトロで種に依って約1〜7日間インキュベートしてから、代理宿主に再移植することである。
【0146】
この発明の目的のために、接合子は、本質的に、完全な生物体に発生することのできる二倍体細胞の形成である。一般に、接合子は、配偶子に由来する2つの一倍体核の融合によって、自然に又は人為的に、形成された核を含む卵から構成される。従って、配偶子核は、当然に和合性のもの即ち分化して機能的な生物体に発生することのできる生存力のある接合子を生じるものでなければならない。一般に、正倍数性接合子が好適である。もし異数性接合子が得られたならば、染色体数は、何れかの配偶子が由来した生物体の正倍数について一つより多く変化すべきでない。
【0147】
類似の生物学的問題に加えて、物理的なものも又、接合子の核に加えられうる又は接合子の核の一部を形成する遺伝物質に加えられうる外因性の遺伝物質の量(例えば、容積)を左右する。もし遺伝物質が除去されなければ、加えられうる外因性遺伝物質の量は、物理的に破壊的でなく吸収される量によって制限される。一般に、挿入された外因性遺伝物質の容積は、約10ピコモルを超えない。添加の物理的影響は、接合子の生存力を物理的に破壊するほど大きくはないに違いない。DNA配列の数及び種類の生物学的限界は、特定の接合子及び外因的遺伝物質の機能に依って変化し、当業者には容易に明らかとなろう。何故なら、外因的遺伝物質を含む生成した接合子の遺伝物質は、生物学的に、接合子の機能的生物体への分化及び発生を開始して維持することができるに違いないからである。
【0148】
接合子に加えられる導入遺伝子構築物のコピー数は、加えられる外因的遺伝物質の全量に依存し、遺伝的トランスフォーメーションを起こすことのできる量となろう。理論的には、唯一つのコピーが必要とされるが、一般に、導入遺伝子構築物の多数のコピー(例えば、1,000〜20,000コピー)が、一コピーが機能的であることを保証するために利用される。本発明に関して、挿入された外因性DNA配列の各々の一つより多くの機能的コピーを有することには、しばしば、それらの外因性DNA配列の表現型の発現を増大させるという利点がある。
【0149】
外因性遺伝物質の核内遺伝物質への添加を可能にする如何なる技術でも、それが、細胞、核膜又は他の存在する細胞構造若しくは遺伝子構造に対して破壊的でない限り利用することができる。外因的遺伝物質は、好ましくは、マイクロインジェクションによって核内遺伝物質に挿入する。細胞及び細胞構造のマイクロインジェクションは、当分野で公知であり、利用されている。
【0150】
再移植は、標準的方法を利用して達成される。通常、代理宿主を麻酔して、胎児をその卵管に挿入する。特定の宿主に移植される胎児の数は、種によって変化し、通常、その種が自然に産む子の数に匹敵する。
【0151】
代理宿主のトランスジェニック子孫を、導入遺伝子の存在及び/又は発現について、任意の適当な方法によってスクリーニングすることができる。スクリーニングは、しばしば、サザーンブロット又はノーザンブロット分析により、導入遺伝子の少なくとも一部分に相補的であるプローブを利用して達成される。導入遺伝子にコードされるタンパク質に対する抗体を利用するウエスタンブロット分析を、導入遺伝子産物の存在についてのスクリーニングのための別法として又は追加の方法として利用することができる。典型的には、DNAは、尾組織から調製し、導入遺伝子について、サザーン分析又はPCRによって分析する。或は、導入遺伝子を最高レベルで発現していると考えられる組織又は細胞を、導入遺伝子の存在及び発現について、サザーン分析又はPCRを利用して試験する(任意の組織又は細胞を、この分析に利用できるが)。
【0152】
導入遺伝子の存在を評価するための別法又は追加の方法には、制限はしないが、適当な生化学的アッセイ例えば酵素及び/又は免疫学的アッセイ、特定のマーカー又は酵素活性についての組織学的染色、フローサイトメトリー分析などが含まれる。血液の分析も又、血中の導入遺伝子産物の存在を検出し並びに導入遺伝子の様々な種類の血液細胞及び他の血液成分のレベルに対する効果を評価するために有用でありうる。或は、MRIを利用して、導入遺伝子の発現を可視化することができる。
【0153】
トランスジェニック動物を生成するための別法には、イン・ビボ又はエキス・ビボ(イン・ビトロ)での、雄動物生殖細胞への、所望の核酸のトランスフェクションが含まれる(例えば、米国特許第6,316,692号参照)。一つのアプローチにおいて、この核酸は、イン・シトゥーで、動物の生殖腺へ送達される(イン・ビボトランスフェクション)。トランスフェクトされた生殖細胞は、それら自身の環境で分化することができ、その後、この核酸の生殖細胞への組込みを示す動物を選択する。選択した動物を交配させ又はそれらの精子を精液注入若しくはイン・ビトロ受精に利用してトランスジェニック子孫を生成することができる。この選択を、一方又は両方の生殖腺の生検後に、又は動物の射精液の検査後に行なって、所望の核酸配列の組込みを確実にすることができる。或は、雄の生殖細胞を、ドナー動物から単離してトランスフェクトし、又はイン・ビトロで遺伝的に変化させることができる。この遺伝子操作後に、トランスフェクトした生殖細胞を選択して、適当なレシピエント動物の精巣にトランスファーする。これらの生殖細胞のトランスファー前に、レシピエントの精巣を、一般に、内因性生殖細胞を不活性化し又は破壊する多くの方法(ガンマー線照射、化学処理、感染性因子例えばウイルス、又は自己免疫的涸渇又はこれらの組合せを含む)の一つ又は組合せにより処理する。この処理は、レシピエントの精巣の、変化されたドナー細胞によるコロニー形成を容易にする。適当に改変された精子細胞を有する動物は、自然に交配させることができ、或は、それらの精子を、精液注入又はイン・ビトロでの受精に利用する。
【0154】
典型的具体例において、トランスジェニック動物を、単一細胞胎児のレンチウイルスベクターによるイン・ビトロ感染によって生成することができる。例えば、Lois等、Science 295:868-872 (2002)を参照されたい。
【0155】
レトロウイルス感染は又、導入遺伝子を非ヒト動物に導入するために利用することもできる。発生中の非ヒト胎児は、胚盤胞ステージまでイン・ビトロで培養することができる。この期間中、卵割球は、レトロウイルス感染のための標的でありうる(Jaenich, R. (1976) PNAS 73:1260-1264)。酵素処理により透明帯を除去することによって、卵割球の効率的感染が得られる(Manipulating the Mouse Embryo, Hogan編、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, 1986)。導入遺伝子を導入するために利用されるウイルスベクターシステムは、典型的には、導入遺伝子を運ぶ複製欠損レトロウイルスである(Jahner等(1985) PNAS 82:6927-6931; Van der Putten等(1985) PNAS 82:6148-6152)。トランスフェクションは、卵割球をウイルス産生細胞の単層上で培養することによって容易に且つ効率的に得られる(Van der Putten, 前出;Stewart等(1987) EMBO J. 6:383-388)。或は、感染は、一層遅い段階で行なうこともできる。ウイルス又はウイルス産生細胞を胞胚腔に注入することができる(Jahner等(1982) Nature 298:623-628)。これらの創出動物の殆どは、組込みがトランスジェニック非ヒト動物を形成した細胞のサブセットでのみ起きるので、導入遺伝子についてのモザイクである。更に、この創出動物は、導入遺伝子の様々なレトロウイルス挿入を、一般に子孫において分離するゲノム中の種々の位置に含むことができる。加えて、導入遺伝子を生殖細胞系列に導入することも又、妊娠中期胎児の子宮内レトロウイルス感染によって可能である(Jahner等(1982)前出)。
【0156】
導入遺伝子の導入のための標的細胞の第四の型は、胚性幹細胞(ES)である。ES細胞は、イン・ビトロで培養された予備移植胎児から得られて、胎児と融合される(Evans等(1981) Nature 292:154-156; Bradley等(1984) Nature 309:255-258; Gossler等(1986) PNAS 83:9065-9069; 及びRobertson等(1986) Nature 322:445-448)。導入遺伝子は、DNAトランスフェクションにより又はレトロウイルス媒介のトランスダクションによって、効率的にES細胞に導入されうる。かかるトランスフォームされたES細胞は、その後、非ヒト動物由来の胚盤胞と合わされる。これらのES細胞は、その後、胎児にコロニーを形成して、生成したキメラ動物の生殖細胞系列に寄与する。総説に関しては、Jaenisch, R.(1988) Science 240:1468-1474を参照されたい。
【0157】
一般に、トランスジェニック動物の子孫は、トランスジェニック動物と適当な相手との交配により、又はトランスジェニック動物から得られた卵及び/又は精子のイン・ビトロ受精によって得ることができる。相手との交配を行なう場合には、その相手は、トランスジェニック及び/又はノックアウトであってもなくてもよく;それがトランスジェニックである場合には、それは、同じ若しくは異なる導入遺伝子又はそれら両方を含むことができる。或は、この相手は、親系統であってよい。イン・ビトロ受精を利用する場合は、受精した胎児を代理宿主に移植し又はイン・ビトロでインキュベートし又はこれら両方をすることができる。何れかの方法を利用して、この子孫を、導入遺伝子の存在について、上記の方法又は他の適当な方法を利用して評価することができる。
【0158】
本発明により生成されたトランスジェニック動物は、コントラスト剤をコードする外因性遺伝物質を含む。更に、この配列は、好ましくは、導入遺伝子の発現を可能にする調節配列に結合させる。イン・シトゥーで生成されたコントラスト剤は、MRIによって可視化されうる。
【0159】
8.MRI方法論
一般に、この発明のコントラスト剤は、MRI検出システムにおける利用のためにデザインされている。MRIの最も一般的な装具において、患者材料中に含まれる可動水の分子中の水素原子核(陽子)が観察される。患者材料は、大きな静的磁場内に置かれる。この場は、水中の水素原子核に関係する磁気モーメントを場の向きに沿って整列させる傾向がある。これらの核は、ラーモア回転数にセットされたパルス高周波(RF)放射によって平衡から摂動し、これは、陽子が共鳴によりエネルギーを吸収する磁場強度に比例する特徴的な回転数である。RFの除去に際して、これらの核は、受信機のアンテナに一過性の電圧を誘導し;この一過性の電圧は、核磁気共鳴(NMR)シグナルを構成する。空間的情報は、大きい静的場に重ねられた磁場勾配の選択的適用によって、NMRシグナルの周波数及び/又は位相の両方に暗号化される。一過性の電圧は、一般に、デジタル化され、その後、これらのシグナルは、例えば、イメージを生成するためのコンピューターを利用することにより処理されうる。
【0160】
この発明は、今や、一般的に記載されたが、それは、下記の実施例を参照することにより、一層容易に理解されよう。該実施例は、単に、本発明のある面及び具体例の説明目的のために含まれるものであって、この発明を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0161】
実施例1:フェリチンを過剰発現するK562細胞のNMR:擬似腫瘍研究
我々は、細胞内金属結合性ポリペプチドの過剰発現の、強力なMRIコントラスト剤としての利用の実行可能性を示すデータを記載する。これらの初期の結果は、生きているヒト骨髄性白血病(K562)細胞内のフェリチンに集中される。
【0162】
K562細胞のNMR特性の調節におけるフェリチンの感度を研究するために、我々は、擬似「腫瘍」試料を合成した。これらは、変化する量の過剰の細胞内フェリチンをイン・ビトロで生成するように刺激されたK562細胞よりなった。次いで、細胞を、低融点アガロース中に懸濁させて、小さいペレットを形成した。スピン−格子緩和率(1/T1)及びスピン−スピン緩和率(1/T2)をペレット中で測定して、フェリチンの影響を定量した。(これらの緩和時間の調節は、MRIにおけるコントラストのイメージ化を生じさせる。)これらの試料に使用した同じ細胞において、我々は、総フェリチン含量をELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を利用してアッセイした。
【0163】
この実験のために、試料は、フェリチンを過剰発現するように、2%ウシ胎児血清を補ったRPMI培養培地中の変化する濃度のクエン酸第二鉄アンモニウム(FAC)との16時間のインキュベーションにより刺激されたK562細胞よりなった。インキュベーション後に、細胞を洗浄した。各FAC濃度について、107細胞をNMR試料のために計数し、106細胞をELISAアッセイ(Alpha Diagnostics Int. Inc., テキサス、San Antonio在)用に取っておいた。これらのNMR試料のために用いた細胞を、小型プラスチック管中の50μlの低融点アガロース中に再懸濁させた。1/T1及び1/T2の測定を室温で、Bruker Minispecリラクソメーター(Bruker Instruments, マサチューセッツ、Billerica在)を利用して行なった。ELISAに用いる細胞は、溶解用緩衝液で処理して放出されたタンパク質の全量のコンシステンシーを、ビシンコニン酸タンパク質定量アッセイ(Pierce Inc., イリノイ、Rockford在)を利用して確認した。フェリチン濃度を、細胞ペレット容積にわたる平均として計算した。
【0164】
NMR変化とフェリチン含量との間の相関関係を図1に示してある。これらの結果は、バックグラウンドを超えるフェリチン発現のささやかな増加に伴う緩和時間の実質的な変化を示しており;これらの変化は、MRIを利用して容易に観察される(下記)。これらの擬似腫瘍は、200細胞/nlの細胞密度を有する。
【0165】
実施例2:毒性研究
フェリチン合成は、一時的に細胞の鉄代謝を混乱させる。これの、細胞の長期間の健康に対する悪影響は、依然としてイン・ビボで完全に測定しなければならないが、様々なイン・ビトロ実験からの指示は、フェリチン過剰発現は様々な細胞株において有害でなく、特に一過性の発現は有害でないことを示している。これは、我々の実験において、上記の実施例1に記載したK562細胞において確認された。各FAC濃度(及び対照)について、インキュベーション期間の前後の細胞を、血球計数器を利用して3回計数し、結果を平均した。図2は、16時間のフェリチン充填期間の後の残存細胞パーセントを示している。これらの擬似腫瘍において、基線レベルの10倍を超えるフェリチン増加のみが、20%のオーダーの細胞喪失を生じた。観察可能なMRIコントラストを与えるのに必要とされるフェリチン増加は、2〜4桁のものだけである。
【0166】
実施例3:擬似腫瘍のMRI
擬似腫瘍におけるフェリチン過剰発現は、MRIを利用して容易に可視化することができる。図3は、MRI実験で用いた3つのペレットのMRIイメージスライスを示している。このイメージにおいて、コントラストは、主として、T2加重したものである。図3において、(a)は、対照であり、(b)−(c)は、それぞれ、2.7及び4のフェリチン増加を含む試料である(図1参照)。イメージは、Bruker7−Tesla MRIシステム(TE/TR=45/2000ms、128×128像点)と1mm厚のスライスを利用して、同時に得られた。ペレットサイズは、直径約4mmであった。
【0167】
実施例4:組換えフェリチンを含む細胞のMRI研究
軽及び重フェリチンの両方の導入遺伝子(それぞれ、LF及びHFと示される)を、様々な細胞株(例えば、K562及びRat 9L神経膠肉腫)に、脂質ベースのトランスフェクション法及びウイルスを利用して導入した。その結果を、ELISA、NMR及びMRIを利用して分析した。典型的結果を図4及び5に示す。欠損鉄調節エレメントを有するヒト軽鎖及び重鎖フェリチンcDNAを利用した。標準的分子生物学技術を利用して、両導入遺伝子を、CMVの最初期プロモーターの制御下に置いた。これらの導入遺伝子の完全性を、DNA断片の電気泳動とその後の様々な制限酵素による消化及びDNA配列決定によって確認した。
【0168】
トランスフェクションによるフェリチンの導入
9L細胞(Fischer 344 ラット神経膠肉腫)を、10%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン、ストレプトマイシン及びグルタミンを補ったDMEM中でインキュベートした。細胞をトランスフェクションの1日前に24ウェルプレートにプレートして、60〜80%集密まで到達させた。これらの細胞を、無血清DMEMですすいでから、同溶液で覆った。DNA混合物を下記のように調製した。試薬リポフェクタミン(商標)(Invitrogen, カリフォルニア、Carlsbad在)を、無血清DMEM中の同量のLF及びHF DNAと合わせた。試薬Plus(商標)(Invitrogen, カリフォルニア、Carlsbad在)を、このDNA溶液に加えて、トランスフェクション効率を増大させた。このDNA混合物を、これらの細胞に加えてから、3時間、37℃でインキュベートし、その後、10%FBSを含むDMEMを加えた。細胞を、トランスフェクションの48時間後又は96時間後に集めて、計数した。加えて、対照用試料を、9L細胞を、DNAをリポフェクタミン(商標)−Plus(商標)−DMEM混合物に加えないこと以外は上記と同じ条件下でインキュベートすることによって調製した。48又は96時間後の収穫に際して、DNAレポーターと共にインキュベートした試料と対照用試料との間で有意の細胞数の差は認められなかった。従って、これらのコントラスト剤と関係する明確な毒性はなかった。
【0169】
トランスフェクション後のフェリチン増加をアッセイするために、9L細胞を、上記のように調製した。これらの細胞内タンパク質を、M−PER(商標)抽出試薬(Pierce Biotechnology, カリフォルニア、Mountain View在)を利用して抽出し、フェリチン含量を、ELISAキット(Alpha diagnostics, テキサス、San Antonio在)を利用してアッセイした。結果は、典型的には、トランスフェクトされた細胞において約3ng/mlのフェリチン濃度を示し、トランスフェクトされてない細胞では、無視できる量(約0.0ng/ml)のヒトフェリチンを示した。(この9L細胞株は、ラットに由来し、ELISAで使用した抗体は、ヒトのフェリチンのみを検出し、交叉反応性はない。)
【0170】
細胞内鉄含量を、トランスフェクトされた細胞及び対照用細胞で測定して、導入遺伝子発現を伴う増大した鉄の取込みを確認した。これらの実験のために、20×106細胞を上記の方法を利用して、プレートしてトランスフェクトした。対照用細胞も又、上記のように調製した(インキュベーション溶液にDNAは加えなかった)。トランスフェクションの96時間後に細胞を集めて計数した。標準的方法[2001 Blood 97(9), 2863]を利用して、細胞をPBS中で洗い、ペレットを酸溶液に溶解させてバトフェナントロリンサルコネート溶液で処理した。この溶液の光吸収は、分光光度計を利用して、535nmで読まれ、鉄濃度を計算した。その結果は、トランスフェクトされた細胞の対照と比較しての正味の鉄含量における約1.5増加の因子を示している。
【0171】
トランスフェクトされた細胞のペレットでの1/T2の測定を行なった。細胞(20×106)を上記のように導入遺伝子でトランスフェクトした。細胞をトランスフェクション後96時間で集め、PBSで2回洗って、0.2mlミクロ遠心管に移した。細胞を再び遠心分離して上清を捨てた。NMR測定を、これらのペレットについて、4℃で、20MHzのBruker Minispec NMRアナライザー(Bruker Instruments, マサチューセッツ、Billerica在)を利用して行なった。これらの結果は、典型的に、トランスフェクトされた細胞において、対照を超える1/T2の約15%増加の因子を示している。
【0172】
上記のNMR実験用に調製したのと同じ細胞ペレットを利用して、我々は、コントラストタンパク質の発現による1/T2の変化が、MRイメージにおいて満足すべきコントラストを与えることを確認した。これらのペレットを含むミクロ遠心管を、MRI装置内に置き、標準的T2加重2次元フーリエ変換(2DFT)スピン−エコーパルス配列を利用してイメージを得た。図4は、典型的データを表示していて、同時に得られた2つのペレットによる高解像度MRIスライスを示しており;左のペレットは、対照であり、右のペレットは、コントラストタンパク質を発現する細胞を含んでいる。イメージコントラストは、これらの2つの試料間で明らかにはっきりしている。
【0173】
ウイルスベクターによるフェリチンの導入
コントラストタンパク質は又、ウイルスベクターによっても細胞に導入されてきた。感染細胞は、ELISA、NMR及びMRIを利用して特性決定された。MRIデータは、コントラストタンパク質を感染させた細胞と未感染(対照)の細胞との間の明瞭なコントラストを示している。これらの実験のために、LF及びHF導入遺伝子を、各々、別個の複製欠損アデノウイルスに取り込ませた。これらのウイルスを、市販のAdeno−X(商標)システム(Clontech, カリフォルニア、Palo Alto在)を利用して製造業者の指示に従って構築した。この導入遺伝子の発現を、CMVプロモーターを利用して制御した。HEK−293細胞株をウイルスストックの生成に利用した。HEK−293細胞においてウイルス生成による細胞病理学的効果が明らかな場合には、細胞を集め、溶解させて、上清を集めた。これらの上清は、アデノウイルスに富み、哺乳動物細胞に感染させてMRIコントラスト効果を示すために利用した。9L細胞を、10%FBS、ペニシリン、ストレプトマイシン、及びグルタミンを補ったDMEM中でインキュベートした。細胞(約20×106)を、感染の1日前に24ウェルプレートにプレートして、60〜80%集密に到達させた。次いで、これらの細胞を無血清DMEMですすいでから、同溶液で覆った。それぞれの上清に由来するLF及びHFアデノウイルスの両方の同容積をこれらの9L細胞に加えた。これらのウイルス及び細胞を、無血清培地で0.5時間インキュベートしてから、FBSをこのDMEMに加えて10%FBSを与えた。48時間のインキュベーションの後に、これらの細胞を収穫して、すすぎ、そしてコントラスト遺伝子の効果を分析した。図5は、感染した及び未感染(対照)の9L細胞の2つのペレットの典型的なMRIデータを示している。これらのデータは、上記のトランスフェクション実験と同様の仕方でT2加重2DFTスピン−エコー配列を利用して得られた。左のペレットは対照であり、右のペレットは、LF及びHF導入遺伝子を感染された細胞を含んでいる。イメージコントラストは、これらの2つの試料間で明らかにはっきりしている。
【0174】
実施例5:コントラストタンパク質をコードする核酸のイン・ビボ導入
この実験は、この発明のコントラスト剤のイン・ビボでの送達を示すためにデザインしたものである。
【0175】
この実施例では、2つの腫瘍試料をヌードマウスに移植する。HSV送達を巧みに処理して、配列番号:2及び4に表されたヒトフェリチンのコード配列を含む核酸構築物を含有させる。一方の腫瘍試料にこのHSV+フェリチンベクターを注入し、他方の腫瘍試料には、「空の」HSVベクターを注入する。このマウスをMRIにかけて、HSV+フェリチン試料と「空の」HSV試料との間のコントラストを比較する。
【0176】
参考文献の援用
ここで引用した特許、刊行物及び配列データベース項目のすべてを、参考として本明細書中に援用する。次のものも参考として援用する:Trinder等、Int.J.Biochem.& Cell Biol., 35:292-296(2003);Fleming等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:10653-10658(2002);及びFleming等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:2214-2219(2000)。
【0177】
当業者は、ここに記載したこの発明の特定の具体例に対する多くの同等物を認識し、又は日常的実験を利用して確かめることができよう。かかる同等物は、後記の請求の範囲に包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者材料のイメージを生成させる方法であって、該方法は、下記
複数の細胞を含む患者材料を用意し;そして
それらの細胞のイメージを磁気共鳴イメージングにより得る
ことを含み、上記の細胞のサブセットが、MRI検出可能な量のコントラストタンパク質を含む、当該方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−92208(P2011−92208A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6164(P2011−6164)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2003−574029(P2003−574029)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【復代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【Fターム(参考)】