説明

磁気共鳴イメージング装置、スライス位置設定方法、およびプログラム

【課題】肝臓の下端の検出精度を高める。
【解決手段】コロナルスキャンVSを実行して、肝臓LVを含む部位のコロナル画像データCI〜CIを取得する。次に、コロナル画像データCI〜CIの中から、肝臓を横切るコロナル画像データCI〜CIを特定する。コロナル画像データCI〜CIを特定したら、セグメンテーション法などを適用して、コロナル画像データCI〜CIごとに、肝臓の下端の候補点PL〜PLを決定する。決定された候補点PL〜PLの中から、最下位に位置する候補点PLを探し出することにより、肝臓の下端を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置、スライス位置設定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置で被検体を撮影する場合、一般的には、オペレータが手動で撮影部位にスライス位置を設定している。しかし、スライス位置を手動で設定するのは、オペレータに負担が掛かるなどの問題がある。そこで、スライス位置を自動で設定する技術が開示されている。例えば、椎間板のスライス位置を自動で設定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-051248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年、脳や肝臓などの部位についても、スライス位置を自動で設定する技術が研究されている。例えば、肝臓のスライス位置を自動で設定する方法の一つとして、スライス位置決め用の画像データを収集し、収集した画像データから肝臓の特徴点(例えば、肝臓の上端および下端)を検出し、検出した肝臓の特徴点に基づいて、肝臓のスライス位置を設定する方法がある。しかし、肝臓の特徴点として、肝臓の上端および下端を検出する場合、肝臓の上端は高い精度で検出することができるが、肝臓の下端は検出誤差が大きくなりやすいので、肝臓の位置や形状に合うようにスライス位置を設定することが難しいという問題がある。したがって、撮影したい部位に適したスライス位置を自動で設定することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の部位の特徴点を含む領域の断面画像を表す複数の断面画像データを作成する断面画像データ作成手段と、
前記複数の断面画像データに基づいて、前記所定の部位の特徴点の候補となる複数の候補点を決定する候補点決定手段と、
前記複数の候補点に基づいて、前記所定の部位の特徴点を決定する特徴点決定手段と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置である。
【0006】
本発明の第2の態様は、被検体の所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定方法であって、
前記所定の部位の特徴点を含む領域の断面画像を表す複数の断面画像データを作成する断面画像データ作成ステップと、
前記複数の断面画像データに基づいて、前記所定の部位の特徴点の候補となる複数の候補点を決定する候補点決定ステップと、
前記複数の候補点に基づいて、前記所定の部位の特徴点を決定する特徴点決定ステップと、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定ステップと、
を有する、スライス位置設定方法である。
【0007】
本発明の第3の態様は、被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記所定の部位の特徴点を含む領域の断面画像を表す複数の断面画像データを作成する断面画像データ作成処理と、
前記複数の断面画像データに基づいて、前記所定の部位の特徴点の候補となる複数の候補点を決定する候補点決定処理と、
前記複数の候補点に基づいて、前記所定の部位の特徴点を決定する特徴点決定処理と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
複数の候補点に基づいて所定の部位の特徴点を決定するので、所定の部位に適したスライス位置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【図2】被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
【図3】MRI装置100の処理フローを示す図である。
【図4】コロナルスキャンVSにより取得された画像データを概略的に示す図である。
【図5】コロナル画像データを特定するときの説明図である。
【図6】所定の信号強度範囲Rの決め方の一例の説明図である。
【図7】特定されたコロナル画像データCI〜CIを示す図である。
【図8】各コロナル画像データCI〜CIごとに決定された肝臓の下端の候補点を示す図である。
【図9】肝臓の下端を決定する方法の一例の説明図である。
【図10】肝臓の上端を決定する方法の一例を示す図である。
【図11】設定されたスライス位置を示す概略的に図である。
【図12】第2の形態のMRI装置200の概略図である。
【図13】第2の形態において被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
【図14】MRI装置200の処理フローを示す図である。
【図15】スカウトスキャンSCで設定されるスライスの説明図である。
【図16】スカウトスキャンSCにより取得されたスカウト画像データDIを概略的に示す図である。
【図17】作成された1D投影データPRを示す図である。
【図18】コロナルスキャンVSにより取得された画像データを概略的に示す図である。
【図19】各コロナル画像データCI〜CIごとに決定された肝臓の下端の候補点を示す図である。
【図20】肝臓の腹部側の部分が除外されたスキャン範囲RS′を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施するための形態について説明するが、発明を実施するための形態は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴イメージング装置を示す概略図である。
【0012】
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))装置100は、磁場発生装置2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0013】
磁場発生装置2は、被検体12が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配磁場を印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0014】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、ボア21に移動できるように構成されている。クレードル31によって、被検体12はボア21に搬送される。
【0015】
受信コイル4は、被検体12の腹部から胸部に渡って取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0016】
MRI装置100は、更に、シーケンサ5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、中央処理装置9、操作部10、および表示部11を有している。
【0017】
シーケンサ5は、中央処理装置9の制御を受けて、後述するスキャン(図2参照)を実行するための情報を送信器6および勾配磁場電源7に送る。
【0018】
送信器6は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、RFコイル24を駆動する駆動信号を出力する。
【0019】
勾配磁場電源7は、シーケンサ5から送られた情報に基づいて、勾配コイル23を駆動する駆動信号を出力する。
【0020】
受信器8は、受信コイル4で受信された磁気共鳴信号を信号処理し、信号処理により得られたデータを中央処理装置9に伝送する。
【0021】
中央処理装置9は、シーケンサ5および表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取った信号に基づいて画像を再構成するなど、MRI装置100の各種の動作を実現するように、MRI装置100の各部の動作を制御する。中央処理装置9は、例えばコンピュータ(computer)によって構成される。中央処理装置9は、断面画像データ作成手段91、候補点決定手段92、特徴点決定手段93、およびスライス位置設定手段94などを有している。
【0022】
断面画像データ作成手段91は、コロナルスキャンVS(図2参照)により取得されたデータに基づいて、肝臓LVを含む領域のコロナル断面画像を表すコロナル画像データCI〜CI(図4参照)を作成する。
【0023】
候補点決定手段92は、コロナル画像データCI〜CIに基づいて、肝臓LVの下端の候補となる複数の候補点PL〜PL(図8参照)と、肝臓LVの上端の候補となる複数の候補点PU〜PU(図10参照)とを決定する。
【0024】
特徴点決定手段93は、候補点PL〜PLに基づいて肝臓の下端を決定し、候補点PU〜PUに基づいて肝臓の上端を決定する。
【0025】
スライス位置設定手段94は、特徴点決定手段93により決定された肝臓の下端および上端の位置に基づいて、肝臓のスライス位置を設定する。
【0026】
中央処理装置9は、断面画像データ作成手段91、候補点決定手段92、特徴点決定手段93、およびスライス位置設定手段94の一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。中央処理装置9は、課題を解決するための手段に記載された計算機の一例である。
【0027】
操作部10は、オペレータ13により操作され、種々の情報を中央処理装置9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
【0028】
磁気共鳴イメージング装置100は、上記のように構成されている。
次に、被検体12を撮影するときに実行されるスキャンについて説明する。
【0029】
図2は、被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
第1の形態では、コロナルスキャンVSおよび本スキャンMCが実行される。
【0030】
コロナルスキャンVSは、肝臓を含む領域のコロナル画像データを取得するためのスキャンであり、肝臓が高信号で描出されるようなスキャンが行われる。コロナル画像データは、肝臓の上端および下端を特定するために用いられる画像データである。第1の形態では、コロナルスキャンVSは、3D(Dimension)イメージングのためのパルスシーケンスを用いて被検体12をスキャンする3Dスキャンである。コロナルスキャンVSの後、本スキャンMCが実行される。本スキャンMCは、肝臓の画像データを収集するためのイメージングスキャンである。
【0031】
次に、被検体12を撮影するときのMRI装置100の処理フローについて説明する。
【0032】
図3は、MRI装置100の処理フローを示す図である。
尚、以下では、肝臓を撮影するときの処理フローについて説明するが、本発明は、肝臓以外の別の部位を撮影する場合にも適用できる。
【0033】
ステップST11では、コロナルスキャンVS(図2参照)が実行される。
図4は、コロナルスキャンVSにより取得された画像データを概略的に示す図である。
【0034】
コロナルスキャンVSを実行することによって、肝臓LVを含む領域の3D画像データTDを取得することができる。図4に示す記号R−L、S−I、およびA−Pは、それぞれ、RL方向(左右方向)、SI方向(頭尾方向)、およびAP方向(前後方向)を表している。断面画像データ作成手段91(図1参照)は、コロナルスキャンVSにより取得された3D画像データTDから、肝臓LVを含む領域のコロナル断面画像を表す画像データ(以下、「コロナル画像データ」と呼ぶ。)CI〜CIを作成する。尚、図4の下側には、コロナル画像データCI〜CIを一列に並べて示してある。
コロナルスキャンVSを実行した後、ステップST12に進む。
【0035】
ステップST12では、候補点決定手段92(図1参照)が、コロナル画像データCI〜CIに基づいて、肝臓LVの下端の候補となる複数の候補点を決定する。以下に、候補点を決定する手順の一例について説明する。
【0036】
候補点決定手段92は、先ず、コロナル画像データCI〜CIの中から、肝臓LVを横切るコロナル画像データを特定する。コロナル画像データを特定するときの手順について、図5を参照しながら説明する。
【0037】
図5は、コロナル画像データを特定するときの説明図である。
候補点決定手段92は、各コロナル画像データCI〜CIについて、ヒストグラムH〜Hを作成する。ヒストグラムの横軸は、コロナル画像データの各ピクセルの信号強度を表しており、縦軸は、各信号強度を有するピクセルの数を表している。
【0038】
一般的に、肝臓LVが高信号で描出される方法で撮影すると、肝臓LVを横切るコロナル画像データのヒストグラムには、横軸(ピクセルの信号強度)の所定の信号強度範囲Rに、肝臓LVの高信号に起因したピークPが現れる。したがって、コロナル画像データのヒストグラムのピークPが、所定の信号強度範囲Rに現れる場合、そのコロナル画像データは、肝臓LVを横切っている可能性が高いと考えられる。一方、コロナル画像データのヒストグラムのピークPが、所定の信号強度範囲Rに現れない場合、コロナル画像データは、肝臓LVを横切っている可能性が低いと考えられる。そこで、第1の形態では、所定の信号強度範囲RにピークPが現れる場合、コロナル画像データは肝臓LVを横切っていると判断し、一方、所定の信号強度範囲RにピークPが現れない場合、コロナル画像データは肝臓LVを横切っていないと判断する。したがって、所定の信号強度範囲RにピークPが現れるか否かを判断することによって、コロナル画像データCI〜CIの中から、肝臓LVを横切るコロナル画像データを特定することができる。ピークPが現れるか否かを判断する方法としては、例えば、ヒストグラムの情報エントロピーの値によって判断する方法がある。
【0039】
尚、所定の信号強度範囲Rは、被検体12のスキャンを行う前に事前に決められている。以下に、所定の信号強度範囲Rの決め方の一例を説明する(図6参照)。
【0040】
図6は、所定の信号強度範囲Rの決め方の一例の説明図である。
先ず、複数(数十名程度)の被検体SU〜SUの肝臓LV〜LVをスキャンし、肝臓LV〜LVのデータを取得する。データを取得したら、取得したデータに基づいて、被検体SU〜SUごとに、肝臓LV〜LVの信号強度の平均値M〜Mを求める。そして、信号強度の平均値M〜Mのヒストグラムを求める。
【0041】
ヒストグラムの横軸は、信号強度の平均値M〜Mであり、縦軸は、信号強度の平均値M〜Mが現れる頻度である。このようなヒストグラムを作成し、ヒストグラムの標準偏差σを求める。この標準偏差σの範囲を、所定の信号強度範囲Rとして採用することができる。
【0042】
第1の形態では、コロナル画像データCI〜CIのうち、コロナル画像データCI〜CIが、所定の信号強度範囲RにピークPが現れたとする。したがって、コロナル画像データCI〜CIが、肝臓を横切っているコロナル画像データとして特定される。図7に、特定されたコロナル画像データCI〜CIを示す。
【0043】
コロナル画像データCI〜CIを特定した後、候補点決定手段92は、特定した各コロナル画像データCI〜CIごとに、肝臓の下端の候補となる候補点を決定する(図8参照)。
【0044】
図8は、各コロナル画像データCI〜CIごとに決定された肝臓の下端の候補点を示す図である。
【0045】
第1の形態では、各コロナル画像データCI〜CIにセグメンテーション法を適用して、コロナル画像データCI〜CIごとに、肝臓の下端の候補となる候補点PL〜PLを決定する。セグメンテーション法としては、例えば、Active
Shape Modelを使用することができる。候補点PL〜PLを決定した後、ステップST13に進む。
【0046】
ステップST13では、特徴点決定手段93(図1参照)が、候補点PL〜PLに基づいて、肝臓の下端を決定する(図9参照)。
【0047】
図9は、肝臓の下端を決定する方法の一例の説明図である。
特徴点決定手段93は、候補点PL〜PLの中で、SI方向の位置が最も低い候補点PLを、肝臓LVの下端と決定する。ただし、肝臓LVの下端の決定方法は、他の方法であってもよい。例えば、候補点PLのSI方向の位置を、候補点PLに隣接する候補点(例えば、候補点Pk+1)のSI方向の位置に基づいて補正し、SI方向の位置が補正された後の候補点PLを、肝臓LVの下端と決定してもよい。肝臓の下端PLを決定した後、ステップST14に進む。
【0048】
ステップST14では、肝臓の上端を決定する(図10参照)。
図10は、肝臓の上端を決定する方法の一例を示す図である。
【0049】
肝臓の上端を決定する方法としては、肝臓の下端を決定した方法と同様に、セグメンテーション法を用いる方法が考えられる。各コロナル画像データCI〜CIにセグメンテーション法を適用して、肝臓の上端の候補となる候補点PU〜PUを決定し、これらの複数の候補点PU〜PUの中から、最上点に位置する候補点PUを、肝臓の上端と決定することができる。
【0050】
尚、図10に示す方法の代わりに、3D画像データTDをAP方向に投影し、投影データに基づいて、肝臓の上端を決定してもよい。肝臓は高信号で描出されるが、肝臓に隣接する肺は、低信号で描出されるので、投影データを作成すると、投影データの中に、信号強度が急激に変化する位置が表れる。したがって、投影データの中で、信号強度が急激に変化する位置を検出することによって、肝臓の上端の位置を検出することができる。
【0051】
肝臓の上端の位置を検出した後、ステップST15に進む。
ステップST15では、スライス位置設定手段94(図1参照)が、ステップST13およびST14で決定された肝臓の下端および上端に基づいて、肝臓のスライス位置を設定する(図11参照)。
【0052】
図11は、設定されたスライス位置を示す概略的に図である。
スライス位置設定手段94は、肝臓の上端PUと下端PLとの間を含むように、スライス位置SL〜SLを設定する。スライス位置SL〜SLが設定されたら、ステップST16に進み、本スキャンを行い、フローを終了する。
【0053】
第1の形態では、コロナル画像データCI〜CIごとに、肝臓の下端の候補点PL〜PLを決定し、決定された候補点PL〜PLの中から、肝臓の下端を決定している。肝臓の下端は、肝臓の最下位に位置しているので、決定された候補点PL〜PLの中から、最下位に位置する候補点PLを探し出すことによって、肝臓の下端を決定することができる。したがって、被検体の肝臓の位置や大きさなどに適したスライス位置を設定することができる。
【0054】
第1の形態では、コロナルスキャンVSは、3Dスキャンであるが、3Dスキャンの代わりに、2Dマルチスライス・スキャンを実行することによって、コロナル画像データCI〜CIを取得してもよい。
【0055】
第1の形態では、コロナルスキャンVSを実行しているが、肝臓の下端を決定することができるのであれば、コロナルスキャンVSの代わりに、コロナル断面とは別の断面(例えば、オブリーク断面)の画像データを取得するためのスキャンを実行してもよい。
【0056】
(2)第2の形態
図12は、第2の形態のMRI装置200の概略図である。
【0057】
第2の形態では、中央処理装置9は、スキャン範囲決定手段90、断面画像データ作成手段91、候補点決定手段92、特徴点決定手段93、およびスライス位置設定手段94などを有している。
【0058】
スキャン範囲決定手段90は、後述するスカウトスキャンSC(図13参照)により取得された画像データに基づいて、コロナルスキャンVSのスキャン範囲RS(図17参照)を決定する。
【0059】
断面画像データ作成手段91は、コロナルスキャンVSにより取得されたデータに基づいて、肝臓LVを含む領域のコロナル断面画像を表すコロナル画像データCI〜CI(図18参照)を作成する。
【0060】
候補点決定手段92は、コロナル画像データCI〜CIに基づいて、肝臓LVの下端の候補となる複数の候補点PL〜PLと、肝臓LVの上端の候補となる複数の候補点PU〜PUとを決定する。
【0061】
特徴点決定手段93は、候補点PL〜PLに基づいて肝臓の下端を決定し、候補点PU〜PUに基づいて肝臓の上端を決定する。
【0062】
スライス位置設定手段94は、特徴点決定手段93により決定された肝臓の下端および上端の位置に基づいて、肝臓のスライス位置を設定する。
【0063】
尚、その他の構成は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。
次に、第2の形態において、被検体12を撮影するときに実行されるスキャンについて説明する。
【0064】
図13は、第2の形態において被検体12を撮影するときに実行されるスキャンの説明図である。
【0065】
第2の形態では、スカウトスキャンSC、コロナルスキャンVS、および本スキャンMCが実行される。
【0066】
スカウトスキャンSCは、スカウト画像データを取得するためのスキャンであり、肝臓が高信号で描出されるようなスキャンである。スカウト画像データは、次のコロナルスキャンVSのスキャン範囲を特定するために用いられるデータである。第2の形態では、スカウトスキャンSCは、2Dイメージングのためのパルスシーケンスを用いて被検体12をスキャンする2Dスキャンである。
【0067】
コロナルスキャンVSは、第1の形態と同様に、肝臓を含む領域のコロナル画像データを取得するためのスキャンである。ただし、第2の形態におけるコロナルスキャンVSを実行するときのスキャン範囲は、スカウトスキャンSCにより取得されたサジタル画像データに基づいて決定されている。
【0068】
本スキャンMCは、第1の形態と同様に、肝臓の画像データを収集するためのイメージングスキャンである。
【0069】
第2の形態では、上記のスキャンが実行される。
次に、第2の形態におけるMRI装置200の処理フローについて説明する。
【0070】
図14は、MRI装置200の処理フローを示す図である。
ステップST1では、スカウトスキャンSCが実行される。
【0071】
図15は、スカウトスキャンSCで設定されるスライスの説明図である。
図15(a)は、RL方向から見たスライスSLを示す図、図15(b)は、AP方向から見たスライスSLを示す図である。
【0072】
スカウトスキャンSCでは、スライスSLに肝臓LVの下端PLが含まれるようにスライス選択される。肝臓LVの下端PLは、正中面に対して右手側に位置するので、正中面から右手側の一定の範囲がスライスSLに含まれるようにスライス厚tを設定することにより、スライスSL内に肝臓LVの下端PLを含めることができる。このようにスカウトスキャンSCを実行することにより、サジタル面にデータが投影された投影画像データと同等のスカウト画像データを取得することができる。図16に、スカウトスキャンSCにより取得されたスカウト画像データDIを概略的に示す。スカウト画像データDIを取得した後、ステップST2に進む。
【0073】
ステップST2では、スキャン範囲決定手段90(図1参照)が、スカウト画像データDIに基づいて、次のステップST11で実行されるコロナルスキャンVSのスキャン範囲を決定する。以下に、スキャン範囲の決定方法について説明する。
【0074】
スキャン範囲決定手段90は、先ず、スカウト画像データDIを、SI方向(頭尾方向)に投影し、1D投影データを作成する(図17参照)。
【0075】
図17は、作成された1D投影データPRを示す図である。
スキャン範囲決定手段90は、スカウト画像データDIのSI方向の積分値を投影することにより、1D投影データPRを作成している。そして、1D投影データPRに基づいて、肝臓LVのAP方向の範囲を求める。スカウト画像データDIは、肝臓が高信号に描出されているので、1D投影データPRの中で、データ値の大きい部分は肝臓であり、データ値の低い部分は、肝臓の周囲の組織であると考えられる。したがって、1D投影データPRを、データ値が大きい部分と小さい部分とに分けるための閾値THを設定しておくことによって、点a〜点bの範囲を肝臓のAP方向の範囲として特定することができる。このようにして特定された肝臓の範囲が、次のステップST11で実行されるコロナルスキャンVSのAP方向のスキャン範囲RSとして設定される。スキャン範囲RSを設定した後、ステップST11に進む。
【0076】
ステップST11では、ステップST2で設定したスキャン範囲RSに従って、コロナルスキャンVS(図13参照)が実行される。
【0077】
図18は、コロナルスキャンVSにより取得された画像データを概略的に示す図である。
【0078】
コロナルスキャンVSを実行することによって、肝臓LVを含む領域の3D画像データTDを取得することができる。断面画像データ作成手段91(図12参照)は、コロナルスキャンVSにより取得された3D画像データTDから、コロナル画像データCI〜CIを作成する。
【0079】
第2の形態では、肝臓のAP方向の範囲を、スキャン範囲RSとして、コロナルスキャンVSを実行しているので、作成されたコロナル画像データCI〜CIには、肝臓の断面が含まれている。コロナル画像データCI〜CIを作成した後、ステップST12に進む。
【0080】
ステップST12では、候補点決定手段92(図12参照)が、コロナル画像データCI〜CIごとに、肝臓LVの下端の候補となる複数の候補点を決定する(図19参照)。
【0081】
図19は、各コロナル画像データCI〜CIごとに決定された肝臓の下端の候補点を示す図である。
【0082】
候補点PL〜PLの決定方法は、第1の形態と同様に、セグメンテーション法を用いることができる。候補点PL〜PLを決定したら、ステップST13に進み、第1の形態と同様に、候補点PL〜PLの中で、SI方向の位置が最も低い候補点PLを、肝臓LVの下端と決定する。肝臓の下端を決定したら、ステップST14に進む。
【0083】
ステップST14では、肝臓の上端を決定する。肝臓の上端を決定する方法としては、第1の形態と同様に(図10参照)、肝臓の上端の候補となる候補点PU〜PUを決定し、これらの複数の候補点PU〜PUの中から、最上点に位置する候補点PUを、肝臓の上端と決定する方法がある。
【0084】
尚、候補点PU〜PUを決定する代わりに、スカウト画像データDI(図17参照)をAP方向に投影し、投影データに基づいて、肝臓の上端を決定してもよい。肝臓は高信号で描出されるが、肝臓に隣接する肺は、低信号で描出されるので、投影データを作成すると、投影データの中に、信号強度が急激に変化する位置が表れる。したがって、投影データの中で、信号強度が急激に変化する位置を検出することによって、肝臓の上端の位置を検出することができる。
【0085】
肝臓の上端を決定したら、ステップST15に進み、スライス位置SL〜SLを設定し(図11参照)、ステップST16で本スキャンを実行し、フローが終了する。
【0086】
第2の形態でも、第1の形態と同様に、候補点PL〜PLの中から、最下位に位置する候補点PLを探し出すことによって、肝臓の下端を決定することができる。したがって、被検体の肝臓の位置や大きさなどに適したスライス位置を設定することができる。
【0087】
また、第2の形態では、図17に示すように、肝臓のAP方向の範囲を、コロナルスキャンVSのスキャン範囲RSとしている。しかし、肝臓の下端は、通常、背中側(posterior側)に位置しているので、肝臓の腹部側の部分は、コロナルスキャンVSのスキャン範囲から除外してもよい(図20参照)。
【0088】
図20は、肝臓の腹部側の部分が除外されたスキャン範囲RS′を示す図である。
スキャン範囲RS′は、肝臓の腹部側の部分を含んでいないので、スキャン範囲RSよりも狭くすることができる。したがって、スキャン範囲RS′に従ってコロナルスキャンVSを実行することにより、コロナルスキャンVSのスキャン時間を短縮することができる。
【0089】
第2の形態では、スカウトスキャンSCは、2Dスキャンであるが、3Dスキャンであってもよい。
【0090】
第2の形態では、スカウト画像データDIのSI方向の積分値を投影することにより、1D投影データPRを作成している(図17参照)。しかし、SI方向の積分値の代わりに、SI方向の最大値、平均値、又は最小値など、積分値以外の値を投影して1D投影データPRを作成してもよい。また、スキャン範囲RSを決定することができるのであれば、スカウト画像データDIをAP方向とは別の方向に投影し、1D投影データを作成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
2 磁場発生装置
3 テーブル
4 受信コイル
5 シーケンサ
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 中央処理装置
10 操作部
11 表示部
12 被検体
13 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
91 断面画像データ作成手段
92 候補点決定手段
93 特徴点決定手段
94 スライス位置設定手段
100 MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記所定の部位の特徴点を含む領域の断面画像を表す複数の断面画像データを作成する断面画像データ作成手段と、
前記複数の断面画像データに基づいて、前記所定の部位の特徴点の候補となる複数の候補点を決定する候補点決定手段と、
前記複数の候補点に基づいて、前記所定の部位の特徴点を決定する特徴点決定手段と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定手段と、
を有する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記複数の断面画像データを取得するための第1のスキャンを実行する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記候補点決定手段は、
前記複数の断面画像データの中から、前記所定の部位を横切る断面画像データを特定し、特定された各断面画像データごとに、前記候補点を決定する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記候補点決定手段は、
前記複数の断面画像データの各々のヒストグラムを作成し、前記ヒストグラムに基づいて、前記所定の部位を横切る断面画像データを特定する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1のスキャンの前に、前記第1のスキャンのスキャン範囲を決定するための第2のスキャンを実行する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記第2のスキャンにより取得された画像データに基づいて前記スキャン範囲を決定するスキャン範囲決定手段を有する、請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記スキャン範囲決定手段は、
前記第2のスキャンにより取得された画像データの1D投影データを作成し、前記1D投影データに基づいて、前記スキャン範囲を決定する、請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記断面画像データは、コロナル画像データである、請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記所定の部位は肝臓であり、
前記特徴点は、肝臓の下端又は上端、若しくは、肝臓の下端および上端の両方である、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
被検体の所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定方法であって、
前記所定の部位の特徴点を含む領域の断面画像を表す複数の断面画像データを作成する断面画像データ作成ステップと、
前記複数の断面画像データに基づいて、前記所定の部位の特徴点の候補となる複数の候補点を決定する候補点決定ステップと、
前記複数の候補点に基づいて、前記所定の部位の特徴点を決定する特徴点決定ステップと、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定ステップと、
を有する、スライス位置設定方法。
【請求項11】
被検体の所定の部位を撮影する磁気共鳴イメージング装置のプログラムであって、
前記所定の部位の特徴点を含む領域の断面画像を表す複数の断面画像データを作成する断面画像データ作成処理と、
前記複数の断面画像データに基づいて、前記所定の部位の特徴点の候補となる複数の候補点を決定する候補点決定処理と、
前記複数の候補点に基づいて、前記所定の部位の特徴点を決定する特徴点決定処理と、
前記所定の部位の特徴点の位置に基づいて、前記所定の部位のスライス位置を設定するスライス位置設定処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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