説明

磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置

【課題】 MRI装置において静磁場不均一を調整する際に、その利便性を向上させる。
【解決手段】 被検体を配置する撮像空間に静磁場を発生させる静磁場発生手段と、前記撮像空間における静磁場を均一に調整するための静磁場不均一調整手段と、を備えた磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置において、該静磁場不均一測定装置において得られた各箇所での磁場測定の結果を、周波数スペクトルで表示する表示手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(以下、MRIという。)装置における静磁場不均一測定装置に係り、特にMRI装置において静磁場不均一を調整する際に、その利便性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生するNMR信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換されることにより画像に再構成される。
【0003】
このMRI装置では、撮影のために必要となる静磁場を調整するシミング(例えば、特許文献1参照)において、所望の撮像空間内の磁場を複数箇所測定する必要があるが、この測定においては従来、高価かつ複雑なガウスメーターによる方法と、安価かつ手動のMRIシステムの周波数測定機能を利用した方法があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-73752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、安価かつ手動のMRIシステムの周波数測定機能を利用した方法では、中心周波数に対して周波数測定する範囲に制限があり、また、各測定箇所において、測定結果の周波数の数字のみしか出力されなかった。そのため得られた結果が適切な値かどうか判断する材料がなく、使用者の経験で再測定の必要の有無を判断したり、装置の動作確認のための余分な作業に時間を費やすことが多々あった。また、調整が進められて間もないMRIシステムだと、測定される磁場の値が、磁場測定の中心周波数から大きくずれたまま、測定されてしまう場合があり、その場合でも、使用者は、調整作業を精度の悪いまま進めてしまうおそれがある問題があった。
【0006】
本発明の目的は、MRI装置において静磁場不均一を調整する際に、精度良く磁場測定を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、被検体を配置する撮像空間に静磁場を発生させる静磁場発生手段と、前記撮像空間における静磁場を均一に調整するための静磁場不均一調整手段と、を備えた磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置において、該静磁場不均一測定装置において得られた各箇所での磁場測定の結果を、周波数スペクトルで表示する表示手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置が提供される。
【0008】
前記磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置は、複数箇所での磁場測定を行った後、任意の箇所での前記磁場測定結果を、前記周波数スペクトルで表示する手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置が提供される。
【0009】
前記磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置は、得られた前記周波数スペクトルの表示結果に応じて、前記磁場測定における測定の周波数帯域を変換する手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、MRI装置において静磁場不均一を調整する際に、その利便性を向上させ、精度良く磁場測定を行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を説明するための図である。
【図2】本発明に係るMRI装置の外観図である。
【図3】本発明に係るオープン型MRI装置の被検体を配置する空間33における静磁場均一度の測定方法を説明する図である。
【図4】本発明に係る簡易磁場測定用プレートに取り付ける送受信兼用簡易磁場測定器の結線図である。
【図5】撮像空間の各測定箇所を測定した場合の数値結果の表示画面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明のMRI装置の好ましい実施形態について詳説する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
最初に、本発明に係るMRI装置の一例の全体概要を図1に基づいて説明する。図1は、本発明に係るMRI装置の一実施例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、MRI装置は静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
【0014】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、体軸方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源が配置されている。
【0015】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置の座標系(静止座標系)であるX,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮影時には、スライス面(撮影断面)に直交する方向にスライス選択傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0016】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0017】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1にRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとから成る。高周波発振器11から出力されたRFパルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調されたRFパルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、RFパルスが被検体1に照射される。
【0018】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル) 14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起された被検体1の応答のNMR信号が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
【0019】
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有する。受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0020】
操作部25は、MRI装置の各種制御情報や上記信号処理系7で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール又はマウス23、及び、キーボード24から成る。この操作部25はディスプレイ20に近接して配置され、操作者がディスプレイ20を見ながら操作部25を通してインタラクティブにMRI装置の各種処理を制御する。
【0021】
なお、図1において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0022】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【実施例】
【0023】
次に図2を用い、本発明の実施例に係るMRI装置の外観図を説明する。図2によれば、本発明に係るMRI装置は、静磁場の調整の際に、31で示したガントリに、簡易磁場測定用プレート32を取り付ける。
【0024】
次に図3を用い、本発明に係るオープン型MRI装置の被検体を配置する空間33における静磁場均一度の測定方法を説明する。
【0025】
ただし、図3は、本実施例の静磁場均一度の測定方法の説明がより分かりやすいように、ベース板34に対し空間33を挟んで対向して配置する上部構造物を省略して図示している。この場合の上部構造物は下部構造物と略同一の構成である。空間33には静磁場発生装置により静磁場が発生している。操作者は、台座35とプレート36と、を備えた静磁場均一度測定治具を空間33の略中央底部に対し、台座35が平行となるように設置する。プレート36は、台座35の一部に台座35と垂直になるように固定されている。
【0026】
この為、プレート36は、操作者により、空間33の静磁場に対し略平行となる向き、つまりベース板34に対し垂直となる向きに設置される。この場合、MRI装置の高周波コイル(送信コイル)14a、傾斜磁場コイル9、は操作者により外され、高周波コイル(送信コイル)14a、傾斜磁場コイル9を固定するベース板34の上に台座35を設置する。本発明の静磁場均一度測定方法で使用するRFプローブ37は、自身で電磁波を照射するため静磁場均一度測定を行う場合、特にMRI装置の高周波コイル(送信コイル)14aを必要としない。設置したプレート36は、その中心部に加え、外周にも略均等にRFプローブ37を固定することが可能な固定治具38を複数箇所備えている。空間33における静磁場均一度を測定する場合は、操作者は、プレート36の複数箇所に備えられた固定治具38に、送受信兼用簡易磁場測定器の単一のRFプローブ37を順次、所望する箇所の固定治具38に取り付け静磁場均一度測定を行う。台座35を備えたプレート36は、ベース板34の上に安定的に設置しているため、操作者は、空間33における各箇所において、静磁場均一度の測定を安定的に実施することができる。
【0027】
また、静磁場均一度測定治具の台座35は、外周台座と内周台座と、から成り、さらに、プレート36は、内周台座に固定され、且つ内周台座に対し垂直となるように設置されている。外周台座の内側には、内周台座の外側に設けられた切り欠きに掛かる突起が設けられ、また、切り欠きは、例えば30度毎に設けられている。操作者は、外周台座をベース板34に固定し、外周台座に対し、内周台座を回転させ、内周台座の各々の切り欠きに外周台座の突起を掛けることで、MRI装置の空間33において、プレート36を、静磁場方向を回転軸とした向きに30度ずつ回転させることが容易にできる。操作者は、その各々の回転角度で静磁場均一度測定を行うことで、MRI装置の空間33において、より多くの箇所から静磁場均一度の測定データを取得することが出来る。
【0028】
これにより、操作者はMRI装置の空間33において、広域且つ高次元の静磁場均一度の測定データを収集することが出来るため、より正確な静磁場均一度測定が可能となる。
【0029】
ここで、本実施例の静磁場均一度測定治具は、内周台座にプレート36を固定しているが、内周台座ではなく、外周台座にプレート36を固定してもよい。その場合、操作者は、外周台座ではなく、内周台座をベース板34に固定して静磁場均一度測定を行う。
【0030】
また、静磁場均一度測定治具の材質は主に塩化ビニール等の安価な材料で構成することが可能である。
【0031】
次に、図4は、図2で取付けられた簡易磁場測定用プレート32に取り付ける送受信兼用簡易磁場測定器の結線図である。
【0032】
図4において、39は、照射信号を発生させるRF unitであり、40は、RF unit39に接続され、RF unit39で発生された照射信号を減衰させるAttenuatorであり、41は、Attenuator40に接続され、Attenuator40で減衰された照射信号を増幅するRF Power Amp(RF PA)であり、42は、RF Power Ampのいくつかの不使用のラインを終端させるDummy Load、43は、RF Power Amp42に接続され、RF Power Ampで増幅された照射信号に含まれるノイズを低減させるためのFilter Box、44は、Filter box 43に接続され、信号の送受の切り替えを行なうTransmitting and Receiving box(T/R Box)45は、Transmitting and Receiving box44に接続され、その先端に配置された液体から成るファントムへ照射パルスを送りMR信号を受信するTransmitting and Receiving Probe(T/R Probe)であり 、信号を送受するコイル等から成るもの、46 は、Transmitting and Receiving box44に接続され、Transmitting and Receiving box44で受信されたMR信号を増幅するためのアンプを内蔵した寝台(TB)である。寝台46はまた、MR信号を増幅してそれをFilter Box 43を介してRF Unit39に送る。このような構成の結線図により、磁場均一度測定に必要な箇所で各受信信号の周波数をそれぞれ求めることで、静磁場不均一の測定が可能である。
【0033】
図5は、図4で結線図を示した送受信兼用簡易磁場測定器で撮像空間の各測定箇所を測定した場合の数値結果の表示画面(GUI)である。図5の本発明に係る送受信兼用簡易磁場測定器のGUI画面において、47は測定を指示するためのSTART釦と、48は磁場測定開始時と終了時に撮像空間中心の静磁場を測定した結果を表示するためのボックスと、49は磁場測定のBandwidth(周波数帯域)を入力するためのボックス、50は、撮像空間の各測定箇所において測定された結果を各測定箇所の位置に応じて基準となる中心周波数に対しての増減で表形式で表示するためのボックス、51及び52は、各測定箇所の位置それぞれ毎に、得られた磁場測定結果の周波数スペクトルをグラフで表示するためのボックスであり、51は測定箇所の位置を表示するためのもの、52は計測したNMR信号をフーリエ変換して得られた結果をグラフで表示したものである。
【0034】
上記実施例によれば、各測定箇所で測定する際に、1回1回各測定結果を周波数スペクトルのグラフ52で確認して、適切な場合には次の測定箇所の測定へ移行するといったことが可能となる。また、周波数スペクトル52を見て、磁場測定のための信号がノイズに埋もれている、信号量が極端に少ないなどにより再測定が必要な場合は、測定箇所のマスを再選択し、START釦47をクリックすることで再測定が可能となる。また周波数スペクトルのグラフ52でPeakが無いなど信号が範囲にない場合は、Bandwidthのボックス49内にある周波数範囲を変更して、START釦47をクリックして再測定を行う。全測定箇所の測定が終了した後も、全体の数値結果をみて確認が必要と思われる測定箇所の結果は、ボックス50にて必要と思われる測定箇所を選択することで、その測定結果を周波数スペクトルのグラフ52に表示して参照し、調整作業を開始する前に再度全測定が必要かを判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
47 START釦、48 静磁場測定結果、49 Brandwidth、50 測定結果表、51 位置表示、52 結果グラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を配置する撮像空間に静磁場を発生させる静磁場発生手段と、前記撮像空間における静磁場を均一に調整するための静磁場不均一調整手段と、を備えた磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置において、該静磁場不均一測定装置において得られた各箇所での磁場測定の結果を、周波数スペクトルで表示する表示手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置。
【請求項2】
前記磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置は、複数箇所での前記磁場測定を行った後、任意の箇所での前記磁場測定の結果を、前記周波数スペクトルで表示する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置。
【請求項3】
前記磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置は、得られた前記周波数スペクトルの表示結果に応じて、前記磁場測定における測定の周波数帯域を変換する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置における静磁場不均一測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223299(P2012−223299A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92560(P2011−92560)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】