磁気共鳴イメージング装置及び方法
【課題】フルオロスコピー等の連続撮像において、撮影時間を延長することなく、傾斜磁場の非線形性や磁場不均一に起因するアーチファクトを低減する。
【解決手段】MRI装置は、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを、該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測し、角度毎に少なくとも一つの計測データを収集する撮影手段と、前記計測データをk空間に再配置し画像再構成する画像再構成手段とを備え、撮影手段は、被検体の所望の領域について時系列の撮影を行い、複数組の計測データを取得する。画像再構成手段は、k空間への計測データの再配置に先立ち、角度毎に、計測データから選択した基準データをもとに補正用位相を算出し、算出された補正用位相を用いて計測データを位相補正する。
【解決手段】MRI装置は、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを、該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測し、角度毎に少なくとも一つの計測データを収集する撮影手段と、前記計測データをk空間に再配置し画像再構成する画像再構成手段とを備え、撮影手段は、被検体の所望の領域について時系列の撮影を行い、複数組の計測データを取得する。画像再構成手段は、k空間への計測データの再配置に先立ち、角度毎に、計測データから選択した基準データをもとに補正用位相を算出し、算出された補正用位相を用いて計測データを位相補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴(以下、「NMR」と略記する)現象を利用して被検体の検査部位の断層画像を得る磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」と略記する)装置に関し、特にk空間を放射状にサンプリングするシーケンスを用いた時に発生するアーチファクトを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置では、撮影中に被検体が動いた場合、その影響は画像全体に及び、位相エンコード方向に画像が流れた様なアーチファクト(以下、「体動アーチファクト」と略記する)が生じる。これは、一般的にk空間と呼ばれるデータ空間上の各格子点のエコー信号をサンプリングする際に、周波数エンコード方向に平行なサンプリングを位相エンコード方向に繰り返す(以下、「直交系(Cartesian)サンプリング法」という)為である。
【0003】
この直交系(Cartesian)サンプリング法に対して、非直交系(Non-Cartesian)サンプリングと呼ばれる手法があり、ラディアルサンプリング法([非特許文献1])や、ラディアルサンプリング法に位相エンコードを組み合わせた、ハイブリッドラディアル法([非特許文献2]、この文献ではプロペラMRI法といわれている)がその一例である。
【0004】
ラディアルサンプリング法は、k空間の略一点(一般的には原点)を回転中心として回転角を変えながら放射状にサンプリングを行い、一枚の画像再構成に必要なエコー信号を得る技術である。ラディアルサンプリング法を用いて撮影を行った場合、放射状にサンプリングを行うことから、体動アーチファクトが画像の周辺に散らばる(つまり、注目すべき視野の外側へ出る)ため、直交系サンプリング法の撮影と比較して体動アーチファクトが目立たなくなり、体動に対してロバストといわれている。
【0005】
しかし、ラディアルサンプリング法は、k空間を放射状に取得することから、エコー信号毎に撮影面内の読み出し傾斜磁場の配分が異なることになる。そのため、傾斜磁場の非線形性や磁場不均一があると、この影響がエコー信号毎に変化することになる。つまり、k空間の座標に基づいて計算した、シーケンス実行時の傾斜磁場印加量と、エコー信号取得時に実際に印加された傾斜磁場量とが異なることになり、エコー信号を正しいk空間の座標に配置できない。このようなことから、直交系サンプリング法と比較して、ラディアルサンプリング法は画像に傾斜磁場の非線形性や磁場不均一によるアーチファクトを生じやすい、という問題がある。ラディアルサンプリング法における上記アーチファクトを補正するため、シーケンス実行前にあらかじめ傾斜磁場の非線形性を測定しておき、本計測に反映する手法がある[非特許文献3]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G. H. Glover et al, Projection Reconstruction Techniques for Reduction of Motion Effects in MRI, Magnetic Resonance in Medicine 28: 275-289 (1992)
【非特許文献2】James G. Pipe, Motion Correction With PROPELLER MRI: Application to Head Motion and Free-Breathing Cardiac Imaging, Magnetic Resonance in Medicine 42: 963-969(1999)
【非特許文献3】D. C. Peters et a1, Centering the Projection Reconstruction Trajectory: Reducing Gradient Delay Errors, Magnetic Resonance in Medicine 50: 1-6(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[非特許文献3]に開示された手法では、傾斜磁場の非線形を測定するための余分な計測が必要になるので、全撮影時間が延長してしまう課題がある。
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ラディアルサンプリング法、或いはハイブリッドラディアル法において、付加的なデータ計測をしないで撮影時間を延長すること無く、傾斜磁場の非線形性や磁場不均一に起因するアーチファクトを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のMRI装置は次の様に構成される。
静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場を発生する手段と、被検体から発生するエコー信号を受信する手段とを備え、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを、該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測し、角度毎に少なくとも一つの計測データを収集する撮影手段と、前記計測データを前記k空間に再配置し画像再構成する画像再構成手段とを備え、
前記画像再構成手段は、k空間への計測データの再配置に先立ち、前記角度毎に、前記計測データから選択した基準データをもとに補正用位相を算出し、算出された補正用位相を用いて前記計測データを位相補正する手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のMRI装置は、例えば、ラディアルサンプリング法或いはハイブリッドラディアル法による計測を行なうMRI装置に適用することができ、前者の場合、撮影手段は、一つの角度につき一つの計測軌跡に対応するエコーを計測し、画像再構成手段は、当該一つのエコーを前記基準データとする。また後者の場合、撮影手段は、一つの角度につき、位相エンコードされた複数の平行軌跡に対応するエコーを計測し、画像再構成手段は、前記複数のエコーから選択した少なくとも一つのエコーを前記基準データとする。
【0010】
なお本発明において計測軌跡とは、k空間に配置されたエコーデータによってk空間に描かれる仮想的な線を意味し、計測軌跡は一つのエコーを発生させるために付与される傾斜磁場によって決まる。また平行軌跡とは、k空間において互いに平行である計測軌跡を意味する。
【0011】
本発明のMRI装置は、ラディアルサンプリング法やハイブリッドラディアル法において、傾斜磁場の非線形性や静磁場不均一に起因するアーチファクトを低減することができる。
【0012】
本発明のMRI装置において、位相補正手段は、例えば、基準データをk空間座標の1つの軸についてフーリエ変換し、変換後のデータの、被検体の存在する位置における位相を補正用位相とする。或いは、基準データをk空間座標の1つの軸についてフーリエ変換し、変換後のデータの位相を補正用位相として、それぞれの座標位置について補正する。或いは、基準データをk空間座標の1つの軸についてフーリエ変換し、変換後のデータの位相を関数フィッティングしたものを補正用位相とする。
【0013】
本発明のMRI装置は、連続撮影を行なうMRI装置にも適用できる。
例えば、撮影手段は、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測して一組の計測データの取得を繰り返し、前記位相補正手段は、前記一組の計測データの一つを選択して補正用位相を算出し、当該補正用位相を用いて、他の計測データを補正する。
【0014】
また本発明のMRI装置は、被検体を載せたベッドを移動させながら撮影を行なうMRI装置にも適用できる。
例えば、本発明のMRI装置は、被検体を静磁場中で移動させる移動手段をさらに備え、前記撮影手段は、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら実施する一組の計測データの取得と前記移動手段による被検体の移動とを同期させながら繰り返し、前記位相補正手段は、前記繰り返しにおいて、1以上の前記一組の計測データの取得毎に補正用位相を更新し、更新された補正用位相を更新後に取得される計測データに適用して位相補正する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ラディアルサンプリング法、或いはラディアルサンプリング法に位相エンコードを組み合わせたハイブリッドラディアル法に対し、取得したデータから静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するエコー信号のピークずれを算出して補正することにより、付加的なデータ計測をしないで撮影時間を延長すること無く、画像の信号消失などの静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するアーチファクトを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示す図。
【図2】本発明が適用されるラディアルMRI法のグラディエントエコーのパルスシーケンスを説明する図。
【図3】本発明が適用されるハイブリッドラディアル法のパルスシーケンスを説明する図。
【図4】一般的なグラディエントエコーのパルスシーケンスを説明する図。
【図5】サンプリング方法とk空間を説明する図。
【図6】傾斜磁場誤差の影響を説明する図。
【図7】傾斜磁場オフセットの影響を説明する図。
【図8】本発明の第1の実施の形態の信号処理を説明する図。
【図9】本発明の信号処理を説明する図。
【図10】本発明の第2の実施の形態の信号処理を説明する図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の信号処理を説明する図。
【図12】本発明を連続撮像に適用した第4の実施の形態を説明する図。
【図13】本発明をベッド移動撮像に適用した第5の実施の形態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
図1は本発明が適用されるMRI装置の一例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
【0019】
静磁場発生系2は、被検体1の周りの空間にその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式または常電導方式あるいは超電導方式の磁場発生手段が配置されている。
【0020】
傾斜磁場発生系3は、X,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシーケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向の傾斜磁場を被検体1に印加する。3軸方向の傾斜磁場を組み合わせることにより、任意の方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を発生させて被検体1に対するスライス面を設定するとともに、任意の方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)及び周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を発生して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0021】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0022】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるためにRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、電磁波(RFパルス)が被検体1に照射される。
【0023】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル14bと増幅器15と直交位相検波器16とA/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起される被検体1の応答の電磁波(NMR信号)が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
【0024】
信号処理系7は、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0025】
なお、図1において、送信側及び受信側の高周波コイル14a、14bと傾斜磁場コイル9は、被検体1の周りの空間に配置された静磁場発生系2の静磁場空間内に設置されている。
【0026】
現在MRI装置の撮影対象スピン種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質であるプロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮影する。
【0027】
次に、上記MRI装置において実施される撮影方法を説明する。図2および図3に、本発明が適用されるラディアルサンプリング法(以下、「ラディアルMRI法」という)およびハイブリッドラディアル(プロペラMRIとも呼ばれている)法によるパルスシーケンスの例として、それぞれグラディエントエコー系のパルスシーケンス示す。また図4に直交系サンプリング法によるパルスシーケンス、図5(a)、(b)、(d)に、これらパルスシーケンスにより取得したデータのk空間への配置を示す。
【0028】
図2〜4のRF、A/D、echoはそれぞれ、RFパルス501、AD変換(サンプリングウィンドウ)505、エコー信号(図2について603、図3について707〜710、図4について506)のタイミングを表す。Gs、Gp、Grは、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場の軸を表す。ラディアルMRI法およびハイブリッドラディアル法においては、Gp、Grの二つの軸の傾斜磁場が位相エンコード傾斜磁場パルスおよび周波数エンコード傾斜磁場パルスとして印加される。図2における507、図3における702、図4における507は計測の繰り返し又は繰り返し時間(RFパルス501の間隔)を、図2における508、図3における701、図4における508は画像取得時間を示す。
【0029】
まず図2に示すラディアルMRI法のパルスシーケンスについて説明する。このパルスシーケンスは、図4で示した直交系サンプリング法とは、位相エンコード傾斜磁場の軸Gpにも周波数エンコード傾斜磁場と同様の傾斜磁場601を印加することと、パルスシーケンスの各繰り返し507毎にGp,Gr軸に印加する傾斜磁場601、602の振幅を変えることが異なっている。k空間の縦軸と横軸は、それぞれ位相エンコード傾斜磁場および周波数エンコード傾斜磁場の軸に対応しているので、パルスシーケンスの各繰り返し507で異なる量の傾斜磁場601、602の振幅を用いることで、k空間の略一点を中心として放射状に回転したデータを取得できる。
【0030】
図2のパルスシーケンスを用いてサンプリングしたエコー信号をk空間に配置した結果を図5(b)に示す。図5(b)は、507を12回繰り返し、それぞれ603-1〜603-cのエコー信号を取得した場合である。この場合、k空間を均等に埋めるために必要な回転角△θ(802)は、
△θ=π/12 (1)
であり、このようなサンプリングを行うため、Gp軸、Gr軸の傾斜磁場出力GR,GPは、直交系サンプリング法で用いる周波数エンコード傾斜磁場の出力をG、繰り返し番号をn(1≦n≦12)とした時、
GP=G×sin(△θ×(n-1)) (2)
GR=G×cos(△θ×(n-1)) (3)
である。ラディアルMRI法のメリットは、直交系サンプリング法の場合と比較して、少ないエコー数でも分解能が良いことと、体動によるゴースト若しくはアーチファクトが発生しにくいことである。また、撮影時の回転角を調整することで、被検体の体動による画質への影響を少なくできる。
【0031】
ハイブリッドラディアル法のパルスシーケンスは、上述のラディアルMRI法に位相エンコードを付加したものであり、図3に示すように、計測701を複数(図では4つ)のブロック702-1〜702-4に分割し、それぞれのブロック内で複数(図では5個)のエコー信号を取得する。このパルスシーケンスと図2に示すラディアルMRI法のパルスシーケンスとの違いは、ブロック702-1〜702-4毎に異なるk空間上の回転角となるように、傾斜磁場出力を設定し、それぞれのブロック702-1〜702-4内では、位相エンコードパルスを付加していることである。図3では、傾斜磁場パルス703、704は回転角度に応じて出力が変化する傾斜磁場パルス、傾斜磁場パルス703、704の前に出力される傾斜磁場パルス705、706は位相エンコード量を付加する傾斜磁場パルスである。図の場合では、第1のブロック702-1内で位相エンコード量705-1の異なる5つのエコー信号707-1〜707-5を取得した後、第2のブロック702-2に移行して、位相エンコード量705-2及び706-2の異なる5つのエコー信号708-1〜708-5を取得する。この操作を第3のブロック702-3、第4のブロック702-4についても同様に行い、エコー信号709-1〜709-5、710-1〜710-5を取得し、画像再構成に必要な全てのエコー信号を取得する。なお、図の場合は、ブロック702-1はKx軸に、ブロック702-3はKy軸に並行となるようにシーケンスを実行している(ブロック702-1とブロック702-3は互いに直交する)ため、傾斜磁場ブロック706-1と705-3には位相エンコード成分が含まれず、出力が一定である。
【0032】
このようにして取得したエコー信号を、k空間に配置した結果を、図5(d)に示す。この場合では、各ブロック702-1〜702-4毎に、角度804で回転し、それぞれのブロック内では位相エンコード量が異なる5個のエコー信号を取得している。例えば、第1のブロック702-1では、位相エンコード量の異なる5つのエコー信号群707-1〜707-5を取得しており、第2のブロック702-2では、第1のブロックと同様に位相エンコード量の異なる5つのエコー信号群708-1〜708-5を取得する。これらブロックのデータをk空間に配置すると、それぞれ805-1,805-2となり、ブロック間は互いに角度804だけ異なっている。なおハイブリッドラディアル法では、回転角度毎の計測の単位を意味するブロックは、ブレードとも呼ばれる。
【0033】
ラディアルMRI法およびハイブリッドラディアル法で取得したデータは、k空間の規則正しい格子座標にはのらない。そこで、サンプリングしたデータから補間処理を用いて、規則正しい格子座標上のデータを作成するグリッディング処理を行なう。グリッディング処理については、例えば[非特許文献4]に記載されている。以下、簡単に説明する。
【非特許文献4】J. I. Jackson et al, Selection of a Convolution Function for Fourier Inversion Using Gridding, IEEE Trans. Med. Imaging, vo1.10, pp.473-478
【0034】
図5(c)は、非直交系サンプリング法で取得したデータを、グリッディング処理してk空間に配置した場合の模式図である。k空間801は、図5(c)の黒丸で示すように規則正しい格子点の座標を有する。しかし、非直交系サンプリングで取得したデータは803-1〜803-3の様にk空間に対して異なる軌跡(座標)を通るので、白丸で示すサンプリングされたデータはk空間の格子点座標(図5(c)中の黒丸)と一致しない。グリッディング処理では、これらサンプリングされたデータ(図中の白丸)を用いて、補間処理により規則正しい格子点座標(図5(c)中の黒丸)にデータを再配置する。補間処理は、例えばSinc関数やKaiser-Besse1関数の補間用関数を用いて行う。
【0035】
グリッディング処理をすることにより、計測データは直交系サンプリングで計測された計測データと同様にフーリエ変換することにより画像再構成することができる。グリッディング処理において、白丸で示すデータの座標は、そのデータを取得するために設定された(例えば式(2)、(3)で算出された)傾斜磁場の振幅で決まる座標として扱われる。しかし実際にデータを取得する際に印加された傾斜磁場に誤差が生じた場合には、データは実際に配置されるべき座標とは異なる座標(算出された座標)にあるものとしてグリッディング処理されることになり、その結果、再構成された画像は誤差による影響を受ける。そこで本発明のMRI装置の信号処理系は、グリッディング処理に先立って、取得したデータに対し、傾斜磁場の誤差を補正する処理を行なう。
【0036】
まず傾斜磁場の誤差がデータに与える影響について説明する。一例として、エコー信号取得中の読み出し傾斜磁場軸に誤差が生じた場合の例を説明する。図6は、図2のシーケンスの一回の繰り返しを示し、読み出し傾斜磁場軸の誤差によって傾斜磁場オフセットを生じている場合(b)と、傾斜磁場オフセットが無い場合(a)を示している。誤差すなわち傾斜磁場オフセットがない場合には、読み出し傾斜磁場軸に印加したディフェイズ傾斜磁場パルス301-1と、読み出し傾斜磁場パルス302-1の積分量が0となる時間(すなわち、図の場合はA部とB部の面積が同じとなる時間)にエコー信号301が生じる。
【0037】
これに対し、読み出し傾斜磁場方向に傾斜磁場誤差あるいは静磁場不均一によるオフセット-G0がある場合、図6(b)のように読み出し傾斜磁場パルスの印加量に、傾斜磁場オフセット量-G0を加えたものがエコー信号取得中に印加された傾斜磁場の総量となるため、傾斜磁場オフセットと同極性に印加するディフェイズ傾斜磁場パルス301-2の面積は、見かけ上大きくなる(A')。一方、傾斜磁場オフセットと逆極性に印加される読み出し傾斜磁場パルス302-2は、面積が見かけ上小さくなり(B')、読み出し傾斜磁場軸に印加した傾斜磁場パルスの積分量が0となる時間は、図6(a)の場合と比較して後ろ側へP0だけシフトする。
【0038】
このようなエコー信号のピーク位置シフトは、上述した傾斜磁場オフセットのほか、傾斜磁場の立ち上がり時間のずれや、傾斜磁場の非線形性、静磁場不均一などによっても同様に生じる。ここでは、これらの要因をまとめて傾斜磁場誤差と呼んでいる。
【0039】
次にこのような傾斜磁場誤差がラディアルMRI法による計測データに与える影響について、図7を用いて説明する。図7は、k空間中心部を拡大して示しており、白丸は実際に計測したデータ点を、黒丸はk空間の格子点座標を表す。
図7(a)は、傾斜磁場誤差が無い理想的な状態であり、計測したエコー信号903上のデータ点は、k空間の1点(図7では原点)を中心にして放射状に規則正しく並ぶ。
【0040】
これに対し、傾斜磁場誤差に起因してピーク位置ずれがあった場合には、k空間の回転方向に応じてエコー信号を配置すると、図7(b)で示すように、ピーク位置のデータ点は原点からずれ、エコー信号904上のデータ点は規則正しい放射状にならない。
再構成時のグリッディングではシーケンス計算時の座標を用いるため、すなわち、本来図7(b)の白丸で示す位置にある計測データが、図7(a)の白丸で示す位置にあるとしてグリッディングがなされるため、この誤差の影響で画像の信号消失などが発生して画質が劣化し、アーチファクトとなる。
ハイブリッドラディアル法の場合は、図5(d)で示すブロック805の回転角毎に図7(b)と同様の誤差が生じ、この場合もアーチファクトとなる。この傾斜磁場誤差は、読み出し傾斜磁場パルスの印加軸によって変わる要素も含まれるため、ラディアルMRI法では回転角に応じて傾斜磁場誤差の影響が異なることが多い。
【0041】
以上説明した、ラディアルMRI法のアーチファクト発生要因を踏まえて、本発明のMRI装置の補正処理の実施の形態を説明する。
<第1の実施の形態>
本発明のMRI装置の第1の実施の形態を、図8を用いて説明する。図8は、ラディアルMRI法又はハイブリッドラディアル法実施時の補正処理の各処理ステップを示すフローチャートである。なお、図8の「ブロック」は回転角度毎の単位を表す。つまり、ラディアルMRI法ではブロックは各エコー信号に対応(即ち、ブロック数=プロジェクション数)し、ハイブリッドラディアル法ではブロックはブレードに対応する(即ち、ブロック数=ブレード数)。以下、図8に基づいて各処理ステップを詳細に説明する。
【0042】
ステップ101で、1ブロックの計測を行う。つまり、ラディアルMRI法では1つのエコー信号を、ハイブリッドラディアル法では1つのブレードに属するエコー信号群の計測を行う。
【0043】
ステップ102で、ブロック単位で取得したエコー信号を一次元フーリエ変換してエコーデータとする。つまり、ラディアルMRI法ではステップ101で計測した1つのエコー信号を一次元フーリエ変換し、ハイブリッドラディアル法ではステップ101で計測した1つのブレードに属するエコー信号群の各々を一次元フーリエ変換する。
【0044】
ステップ103で、ブロック内のエコーデータから、補正の基準となるデータを選出する。図9に基準データの選出の一例を示す。斜線で示す領域が基準として選出するブロックを表す。図9(a)は、ブロック数が10のラディアルMRI法の場合である。ラディアルMRI法の場合はブロック内に1エコーしか取得しないので、それぞれのブロックのデータを基準データ110-1〜110-aとする。図9(b)はブロック111の数が5、ブロック内のエコー数が4のハイブリッドラディアル法の場合である。ハイブリッドラディアル法の場合、ブロック内のデータは全てk空間の回転角が同じであるので、基準データl12は各ブロック内で一つ選出すればよい。例えば、ブロック内のデータはそれぞれ異なる位相エンコードが付加されているが、基準データとしては、位相エンコードを付加しないで取得したデータ(位相エンコードが0のデータ)を選出すればよい。
【0045】
ステップ104で、ステップ103で選出した基準データの位相を算出する。ステップ105で、ステップ104で算出した基準データの位相からブロック内のエコーデータを補正するための位相を作成する。補正用位相作成の具体的な方法は、後述する。
【0046】
ステップ106で、ステップ105で作成した補正用位相を用いて、ブロック内のエコーデータを補正する。位相補正処理としては、例えば、補正対象となる複素データをC(n,x)、補正用の位相をφ(n,x)としたとき、補正後のデ一タC'(n,x)は、
Re[C'(n,x)]=Re[C(n,x)]×cos(φ(n,x))−lm[C(n,x)]×sin(φ(n,x))
Im[C'(n,x)]=lm[C(n,x)]×cos(φ(n,x))+Re[C(n,x)]×sin(φ(n,x)) (8)
である(ここで、Re[],Im[]はそれぞれデータの実部、虚部を表す)。ラディアルMRI法では、各ブロックが1エコーのみ有するので、補正用位相を取得した基準データのみに対して式(8)の位相補正を行う。ハイブリッドラディアル法では、ブロック内に複数のデータがあるので、基準データから作成した補正用位相を用いて各データに対して式(8)の位相補正を行う。
【0047】
ステップ107で、ブロック単位で位相補正されたエコー信号を一次元逆フーリエ変換してk空間のデータに戻す。
【0048】
ステップ108で、最終ブロックか否かをチェックし、最終ブロックであれば次のステップ109に移行し、最終ブロックでなければステップ10bを介してステップ101に戻り、次ぎのブロックの処理を進める。そして、上記101〜108のステップを最後のブロックになるまで繰り返す。つまり、上記ステップ101〜107を、ラディアルMRI法ではエコー信号毎に、ハイブリッドラディアル法ではブレード毎に繰り返す。
【0049】
ステップ109で、位相補正された全ブロックデータをグリッディングして、k空間の各格子点上のデータを求める。ステップ10aで、ステップ109でグリッディングされたk空間データを二次元フーリエ変換して画像を得る。以上迄が、図8のフローチャートの説明である。
【0050】
次に上記ステップ105で行われる補正用位相作成の具体的方法を説明する。ステップ105で作成される補正用位相は、以下に例示するものがあり、いずれかを上記式(8)のφ(n,x)として用いる。以下の補正用位相を用いた補正は、以下の番号順により精緻な補正となる。
【0051】
1.位相オフセット成分
取得したエコー信号をグリッディングしてk空間データを作成する際、エコー信号の位相オフセットがエコー毎に異なる場合、エコー間で信号が打ち消し合い画質が劣化する。そこで、全てのエコー信号について位相オフセット成分を計算し補正することでこれを改善する。エコー信号の位相オフセット成分は、フーリエ変換後のデータにも同量の位相オフセットとなるので、基準データから位相オフセットを算出して補正するのが良い。この時、位相オフセットは、位相の一次成分や高次成分の影響を避けるため、基準データの中心座標(例えば、基準データの点数がXの場合、X/2の位置)の位相を用い、
φ0(n)=arc tan(Im[S(n,X/2)]/Re[S(n,X/2)]) (4)
により算出する(ここで、S(n,x)はブロック内の基準データを表す。nはブロック番号、xは位置座表を表す。)。このφ0(n)を補正用の位相とする。
φ(n,x)=φ0(n) (5)
【0052】
2.単純位相
エコー信号毎のピーク位置のずれを補正するために、基準データの位相をそのまま補正用の位相とすることで、ピーク位置ずれに起因する一次成分の位相補正を行う。従って、補正用の位相は、
φ(n,x)=arctan(Im[S(n,x)]/Re[S(n,x)]) (6)
である。
【0053】
このような単純位相による位相補正によって、例えば図7(a)に示されている様に、位相補正されたk空間内のエコー信号群は所定の略一点(例えば原点)を中心に回転対称な配置となる。つまり、ブロック毎のエコー信号の、読み出し傾斜磁場方向のピーク位置が略一致して、その一致点を中心とした回転対称な配置となる。また単純位相は位相オフセット成分を含んでいるので、単純位相を用いることにより位相オフセットの補正も同時に行なわれることになる。
【0054】
3.位相フィッティング
静磁場不均一が大きい場合や、撮影対象に脂肪などが含まれる場合には、局所的に位相が回転するので、基準データの位相にはピーク位置ずれ以外にこれらの成分が含まれる場合がある。そのため、基準データの位相をそのまま用いると、局所的に画像コントラストが歪む場合がある。
【0055】
そこで、算出したデータを所定の関数でフィッティングすることによって、ピーク位置ずれ以外の位相回転の影響を排除する。フィッティング処理では、基準データの位相をアンラップ処理した後、一次あるいは高次関数を用いてフィッティングするのが良い。例えば、フィッティング用関数として二次関数を用い、各ブロックのフィッティング後の0次、一次、二次の係数をそれぞれφ0(n)、φ1(n)、φ2(n)とした場合、補正用の位相は
φ(n,x)=φ2(n)×x2+φ1(n)×x+φ0(n) (7)
である(フィッティング次数を一次とした場合は、φ2(n)=0である)。
【0056】
このような位相フィッティングによる位相補正によって、上記2の単純位相を用いた補正と同様に、位相補正されたk空間内のエコー信号群は所定の一点(例えば原点)を中心に回転対称な配置となるが、上記2の場合と比較して、ピーク位置ずれに起因する以外の位相成分を排除できるので、ブロック毎のエコー信号のピーク位置の一致度をより高めることができる。以上迄が、補正用位相作成の具体的方法の説明である。
【0057】
以上説明したように本実施例によれば、静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するエコー信号のピークずれがあっても、それを補正することにより、画像の信号消失などのアーチファクトを低減して、画質を向上させることができる。
【0058】
<第2の実施の形態>
次に、本発明のMRI装置の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態との主な違いは、最初に全ての計測201を実施後、データを補正用する点、および基準データは各ブロックから選択するのではなく、所望のブロック間隔を置いて選択することができる点である。図10は、本実施の形態による、ラディアルMRI法又はハイブリッドラディアル法実施時の補正処理の各処理ステップを示すフローチャートである。尚、図8のフローチャートと同じ処理を表す処理ステップには、同じステップ番号を付している。また図10の「ブロック」は回転角度毎の単位を表すことも図8と同様である。以下、図8のフローチャートと異なる処理ステップのみ詳細に説明し、同じ処理ステップについは概要を説明するのみとする。
【0059】
ステップ201で、全ブロックのデータを計測する。
ステップ102で、全ブロックのエコー信号をそれぞれ一次元フーリエ変換してエコーデータとする。つまり、図8のステップ102の処理を、全ブロックについて行う。
【0060】
ステップ202で、補正用位相を取得するための基準データを選出する。基準データは、図8のステップ103と同様にブロック毎に選出しても良いし、任意のブロックのデータを選別して選択しても良い。選択の一例を図9(c)に示す。図9(c)は、図9(a)と同一の計測の場合であるが、基準用データとして、113のみを選択し、114は基準用データとして選択しない場合である。
【0061】
ステップ104で、図8のステップ104と同様に、ステップ202で選出した基準データの位相を算出する。ステップ105で、図8のステップ105と同様に、ステップ104で算出した基準データの位相からブロック内のデータを補正するための位相を作成する。補正位相は、前述した1〜3(位相オフセット、単純位相、位相フィッティング)のいずれを用いてもよい。
【0062】
ステップ203で、ステップ105で作成した補正用位相を元に、補正用位相の補間処理を行う。この補間処理は、基準データをブロック毎に選択した場合には行なわなくてもよい。基準データを任意の間隔で選択したブロックから選択した場合に、選択したブロックで作成された補正用位相を用いて、選択されなかったブロックの補正用位相を補間により求める。
【0063】
補間処理としては、各ブロックで作成した補正用位相φ(n,x)をブロック方向(n方向)に所定の関数でフィッティングする。例えば二次関数でフィッティングする場合、フィッティング後の0次、一次、二次の係数をそれぞれψ0(x),ψ1(x),ψ2(x)としたとき、補正用の位相は、
ψ(n,x)=ψ2(x)×n2+ψ1(x)×n+ψ0(x) (9)
である。この補正用位相は、ラディアルMRI法又はハイブリッドラディアル法で問題となる傾斜磁場誤差が、傾斜磁場印加軸の割合に依存して変化することを考慮したものである。
【0064】
ブロック方向の補間処理を行なうことにより、少ないブロックのデータから補正用位相を作成できる。従って、例えばブロックの基準データが極端に歪んで劣化した場合、基準データをリジェクトすることが考えられるが、この場合にも適用できる。
【0065】
ステップ106で、図8のステップ106と同様に、ステップ203で作成した各ブロックの補正用位相ψ(n,x)を用いて、ブロック毎にそのブロック内のデータを位相補正する。
ステップ107で、図8のステップ107と同様に、ブロック単位で位相補正されたエコー信号を一次元逆フーリエ変換してk空間のデータに戻す。
【0066】
ステップ109で、図8のステップ109と同様に、位相補正された全ブロックデータをグリッディングして、k空間の各格子点上のデータを求める。
ステップ10aで、図8のステップ10aと同様に、ステップ109でグリッディングされたk空間データを二次元フーリエ変換して画像を得る。
以上迄が、図10のフローチャートの説明である。
【0067】
以上説明した第1および第2の実施の形態では、ステップ105で補正用位相を作成する際、高次関数でフィッティングする例(段落番号0051で説明した、3.位相フィッティング)を示したが、フィッティング結果のうち、特定の次数の係数のみを用いて補正用位相を作成することもできる。この場合は、まずフィッティング関数として高次関数を用いてフィッティング後の位相マップを得るとともに、結果(フィッティング後の位相マップ)から、エコーのピーク位置ずれに直接関係する一次の成分を取り出し、この成分の補正を行なう。これにより、フィッティング後の位相マップの精度を向上でき、最初からフィッティング関数として一次関数を用いた場合よりも補正の精度を良くすることができる。
【0068】
また、ステップ203で補正用の位相を補間する際も、特定の次数の係数のみを補間して使用することもできる。これも、エコーのピーク位置ずれに起因する成分のみを補正するのに効果的である。
【0069】
<第3の実施の形態>
次に、本発明のMRI装置の第3の実施の形態を説明する。この実施の形態は、位相エンコードを伴うハイブリッドラディアル法で取得したデータの位相補正に適用される。本実施の形態は、第1の実施の形態或いは第2の実施の形態の、基準を選択するステップ(ステップ103或いはステップ202)において、位相エンコード方向のピークずれを補正する処理を追加すること以外は、第1の実施の形態或いは第2の実施の形態と同様である。
【0070】
ハイブリッドラディアルシーケンスにおいては、ブロック毎に位相エンコードを付加したデータを取得するが、このとき、各ブロックで取得したデータに位相エンコード方向(以下、PE方向)にピークずれがある場合、位相エンコードを付加しないで取得したデータを基準データとして選出しても、最適なデータではない。
【0071】
そこで、基準データの選出ステップ(第1の実施の形態のステップ103あるいは第2の実施の形態のステップ202)において、図11に示すような、位相エンコード方向の処理121〜126を加える。
【0072】
ステップ121で、PE方向にフーリエ変換する。
ステップ122で、PE方向の参照データを選出する。参照データCPE(y)(1≦y≦Y)としては、PE方向のフーリエ変換後のデータをI(x,y)(1≦x≦X,1≦y≦Y)とした場合、例えば読み出し方向のデータ点数の中心位置(X/2,y)のデータを選択し、
CPE(y)=I(X/2,y) (10)
とする。
【0073】
ステップ123で、ステップ122で作成したPE方向の参照データCPE(y)を用いて、補正用の位相、Φ(x,y)を作成する。このとき、
Φ(x,y)=arctan(Im[CPE(y)]/Re[CPE(y)]) (11)
である。また、補正用位相Φ(x,y)の精度を向上するために、関数でフィッティングしても良い。
【0074】
ステップ124で、ステップ123で作成した補正用の位相Φ(x,y)を用いて、ブロック内のデータを位相補正する。位相補正処理としては、式(8)と同様の処理を行う。
ステップ125で、PE方向に逆フーリエ変換する。
ステップ126で、補正用基準データを選出する。これは、第1の実施例の103及び第2の実施例の202で記載した処理と同じである。
【0075】
以上説明したように本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、傾斜磁場誤差が、傾斜磁場印加軸の割合に依存して変化する場合にも、その誤差の影響を除去して、画質を向上させることができる。
【0076】
<第4の実施の形態>
次に、本発明のMRI装置の第4の実施の形態を説明する。上述した第1から第3の実施の形態では、1回の撮像(一つのk空間データの位相補正)の例を説明したが、本実施の形態は、ダイナミック撮影やフルオロスコピーのような連続撮影に本発明を適用したものである。図12に連続撮像の一例として、フルオロスコピー(ダイナミック撮像)に本発明を適用した実施の形態を模式的に示す。
【0077】
フルオロスコピーは、検査対象の同一領域を時系列的に撮像し、時系列的に得られる画像の表示・更新を繰り返す。ここで撮像は、ラディアルMRI法或いはハイブリッドラディアル法のパルスシーケンスによって行う。時系列画像132は、それぞれ独立したk空間データ131-1〜131-nを用いて再構成されたものでもよいし、時間的に隣接する画像同士でk空間データの一部を共用して再構成されたものでもよい。図示する実施の形態では、2枚目以降の画像は、隣接する画像同士で1つのk空間データの2分の1を共用して画像再構成された場合(エコーシェア法)を示している。
【0078】
画像再構成に先立ち、ラディアルMRI法或いはハイブリッドラディアル法によって取得したk空間データの回転角度方向(ブロック方向)の位相補正を行なう。位相補正は、前述した第1〜第3の実施の形態と同様に行なう。すなわち、k空間データの各ブロックのデータを一次元フーリエ変換し、変換後のデータから基準データを選択し、この基準データを用いて補正用位相を作成し、ブロック内のデータを位相補正する。ハイブリッドラディアル法の場合には、さらにブロック内のデータについて位相エンコード方向にピーク位置を揃えるための位相補正を行なってもよい。
【0079】
位相補正に用いる補正用位相は、1枚の画像再構成が可能なk空間データが収集される度に作成してもよいが、エコーのピーク位置ずれの原因となる傾斜磁場誤差が経時的な要因を含まない場合、1回だけ作成し、それを全ての画像再構成用のデータに適用することも可能である。或いは連続して取得されるk空間データに対し、所定の頻度(複数回に1回の割合)で補正用位相を更新し、更新された補正用位相を用いて、その後に画像再構成に供されるデータをブロック毎に位相補正してもよい。
【0080】
図12に示す実施の形態では、1枚の画像を再構成可能なk空間データ131-1が取得されると、その計測データから補正用位相133-1を作成し、k空間データ131-1を補正し、グリッディング後、画像再構成し1枚目の画像132-1を作成、表示する。2枚目の画像132-2は、k空間データ131-1のうち後半で取得されたデータと、k空間データ131-2のうち前半で取得されたデータとを用いて画像再構成される。その際、画像再構成に用いるデータは、k空間データ131-1を用いて作成された補正用位相133-1を用いて位相補正される。以後、k空間データ131-4が取得されるまでは、補正用位相133-1を用いて画像132-3〜132-6の再構成に用いるデータを補正する。k空間データ131-4が取得されると、その計測データから補正用位相133-2を作成し、以後のデータの補正に用いる。
【0081】
<第5の実施の形態>
本発明をベッド移動撮像に適用した第5の実施の形態を説明する。図13は、ベッド移動撮像法に本発明による位相補正を適用した例を模式的に示す図である。ベッド移動撮像は、被検体を載せたベッドを静磁場空間(撮像空間)に対し相対的に移動させながら撮像することにより、大きさに制限のある撮像空間よりも広い被検体領域を撮像する技術である。ベッド移動撮像へのラディアルMRI法或いはハイブリッドラディアル法の適用においてスライス方向の制限はないが、図ではベッド移動方向に平行な方向をスライス方向とした場合を示している。この撮像方法では、ベッドを連続移動して撮像することにより、CT装置におけるスパイラルスキャンと同様の撮像が可能となる。ここでは説明を簡単にするために、ベッドをスライス毎にステップ的に移動し撮像する場合を説明する。
【0082】
図13に示す実施の形態では、足から頭に向けてステップ状にベッドを移動しながら体軸と直交する断面を順次撮像する。ここで1つのスライス画像データ141-1〜141-nは、図12の1つのk空間データに対応しており、1つのk空間データから一つのスライス画像データが再構成される。再構成に際しては、第1〜第3の実施の形態と同様に、まず1つのk空間データを一次元フーリエ変換し、変換後のデータからブロック毎に基準データを選択し、補正用位相を作成し、ブロック内のエコーのピーク位置が一致するように位相を補正する。一つのk空間データを収集するごとに補正用位相を作成し、位相補正を行なってもよいが、図13に示す実施の形態では、3枚のスライスを撮像する度に、新たなに補正用位相を作成し、それを3枚のスライスを画像再構成するための各計測データに用いて位相補正する。
【0083】
ベッド移動撮像では、スライス毎に被検体の撮像位置が異なるので傾斜磁場や静磁場不均一の局所的な変化が静止撮像の場合より多く生じる可能性がある。従ってベッド移動方向に付いて精度よい補正を行なうためには、補正用位相を作成する頻度を高くするか、作成した補正用位相をベッド移動方向に補間し、補正用位相を作成しなかった計測データに適用する。
【0084】
スライス毎に位相補正後のデータを一次元逆フーリエ変換した後、グリッディングしてk空間に再配置し、画像再構成し画像データを作成する。各スライスの画像データを合成することにより被検体の全身画像データを得る。
【0085】
本実施の形態によれば、非直交系サンプリング法を適用したベッド移動撮像において静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するアーチファクトを低減できる。特にベッド移動方向について補正用位相作成の頻度を上げることにより、被検体に依存する磁場不均一の影響も排除することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態で開示された内容にとどまらず、本発明の趣旨を踏まえた上で各種形態を取り得る。例えば、上記実施の形態ではグラディエントエコーパルスシーケンスについて記載したが、ラディアルサンプリング法及びハイブリッドラディアル法はパルスシーケンスの種類には依存せず、SEパルスシーケンス、FSEパルスシーケンス、EPIパルスシーケンスなどに適用できる。
【0087】
また、ラディアルMRI法及びハイブリッドラディアル法の実施の形態として、二次元面内のGr軸,Gp軸でk空間の回転を行う場合について説明したが、Gr軸,Gp軸は撮影空間のX,Y,Zの任意の軸と対応させることが可能であり、オブリーク撮影やオフセンター撮影も実行できる。更に、三次元球内での回転を行うこともできる。
【0088】
また、図ではラディアルMRI法やハイブリッドラディアル法の例としてブロック数を少なく示したが、実際の撮影では、ブロック数とブロック内のエコー数は任意に設定することができ、この場合も同様の処理を行う。同様に、ラディアルMRI法についても、取得するエコー数及び回転角、セグメント数は任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0089】
1・・・被検体、2・・・静磁場発生系、3・・・傾斜磁場発生系、4・・・シーケンサ、5・・・送信系、6・・・受信系、7・・・信号処理系、8・・・中央処理装置(CPU)、9・・・傾斜磁場コイル、10・・・傾斜磁場電源、11・・・高周波発振器、12・・・変調器、13・・・高周波増幅器、14a・・・高周波コイル(送信側)、14b・・・高周波コイル(受信側)、15・・・増幅器、16・・・直交位相検波器、17・・・A/D変換器、18・・・磁気ディスク、19・・・光ディスク、20・・・ディスプレイ、501・・・高周波パルス、502・・・スライス選択傾斜磁場、503・・・位相エンコード傾斜磁場パルス、504・・・周波数エンコード傾斜磁場パルス、505・・・データサンプルウインド、506・・・エコー信号、507・・・繰り返し時間間隔、508・・・画像取得時間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴(以下、「NMR」と略記する)現象を利用して被検体の検査部位の断層画像を得る磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」と略記する)装置に関し、特にk空間を放射状にサンプリングするシーケンスを用いた時に発生するアーチファクトを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置では、撮影中に被検体が動いた場合、その影響は画像全体に及び、位相エンコード方向に画像が流れた様なアーチファクト(以下、「体動アーチファクト」と略記する)が生じる。これは、一般的にk空間と呼ばれるデータ空間上の各格子点のエコー信号をサンプリングする際に、周波数エンコード方向に平行なサンプリングを位相エンコード方向に繰り返す(以下、「直交系(Cartesian)サンプリング法」という)為である。
【0003】
この直交系(Cartesian)サンプリング法に対して、非直交系(Non-Cartesian)サンプリングと呼ばれる手法があり、ラディアルサンプリング法([非特許文献1])や、ラディアルサンプリング法に位相エンコードを組み合わせた、ハイブリッドラディアル法([非特許文献2]、この文献ではプロペラMRI法といわれている)がその一例である。
【0004】
ラディアルサンプリング法は、k空間の略一点(一般的には原点)を回転中心として回転角を変えながら放射状にサンプリングを行い、一枚の画像再構成に必要なエコー信号を得る技術である。ラディアルサンプリング法を用いて撮影を行った場合、放射状にサンプリングを行うことから、体動アーチファクトが画像の周辺に散らばる(つまり、注目すべき視野の外側へ出る)ため、直交系サンプリング法の撮影と比較して体動アーチファクトが目立たなくなり、体動に対してロバストといわれている。
【0005】
しかし、ラディアルサンプリング法は、k空間を放射状に取得することから、エコー信号毎に撮影面内の読み出し傾斜磁場の配分が異なることになる。そのため、傾斜磁場の非線形性や磁場不均一があると、この影響がエコー信号毎に変化することになる。つまり、k空間の座標に基づいて計算した、シーケンス実行時の傾斜磁場印加量と、エコー信号取得時に実際に印加された傾斜磁場量とが異なることになり、エコー信号を正しいk空間の座標に配置できない。このようなことから、直交系サンプリング法と比較して、ラディアルサンプリング法は画像に傾斜磁場の非線形性や磁場不均一によるアーチファクトを生じやすい、という問題がある。ラディアルサンプリング法における上記アーチファクトを補正するため、シーケンス実行前にあらかじめ傾斜磁場の非線形性を測定しておき、本計測に反映する手法がある[非特許文献3]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G. H. Glover et al, Projection Reconstruction Techniques for Reduction of Motion Effects in MRI, Magnetic Resonance in Medicine 28: 275-289 (1992)
【非特許文献2】James G. Pipe, Motion Correction With PROPELLER MRI: Application to Head Motion and Free-Breathing Cardiac Imaging, Magnetic Resonance in Medicine 42: 963-969(1999)
【非特許文献3】D. C. Peters et a1, Centering the Projection Reconstruction Trajectory: Reducing Gradient Delay Errors, Magnetic Resonance in Medicine 50: 1-6(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[非特許文献3]に開示された手法では、傾斜磁場の非線形を測定するための余分な計測が必要になるので、全撮影時間が延長してしまう課題がある。
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ラディアルサンプリング法、或いはハイブリッドラディアル法において、付加的なデータ計測をしないで撮影時間を延長すること無く、傾斜磁場の非線形性や磁場不均一に起因するアーチファクトを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のMRI装置は次の様に構成される。
静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場を発生する手段と、被検体から発生するエコー信号を受信する手段とを備え、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを、該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測し、角度毎に少なくとも一つの計測データを収集する撮影手段と、前記計測データを前記k空間に再配置し画像再構成する画像再構成手段とを備え、
前記画像再構成手段は、k空間への計測データの再配置に先立ち、前記角度毎に、前記計測データから選択した基準データをもとに補正用位相を算出し、算出された補正用位相を用いて前記計測データを位相補正する手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明のMRI装置は、例えば、ラディアルサンプリング法或いはハイブリッドラディアル法による計測を行なうMRI装置に適用することができ、前者の場合、撮影手段は、一つの角度につき一つの計測軌跡に対応するエコーを計測し、画像再構成手段は、当該一つのエコーを前記基準データとする。また後者の場合、撮影手段は、一つの角度につき、位相エンコードされた複数の平行軌跡に対応するエコーを計測し、画像再構成手段は、前記複数のエコーから選択した少なくとも一つのエコーを前記基準データとする。
【0010】
なお本発明において計測軌跡とは、k空間に配置されたエコーデータによってk空間に描かれる仮想的な線を意味し、計測軌跡は一つのエコーを発生させるために付与される傾斜磁場によって決まる。また平行軌跡とは、k空間において互いに平行である計測軌跡を意味する。
【0011】
本発明のMRI装置は、ラディアルサンプリング法やハイブリッドラディアル法において、傾斜磁場の非線形性や静磁場不均一に起因するアーチファクトを低減することができる。
【0012】
本発明のMRI装置において、位相補正手段は、例えば、基準データをk空間座標の1つの軸についてフーリエ変換し、変換後のデータの、被検体の存在する位置における位相を補正用位相とする。或いは、基準データをk空間座標の1つの軸についてフーリエ変換し、変換後のデータの位相を補正用位相として、それぞれの座標位置について補正する。或いは、基準データをk空間座標の1つの軸についてフーリエ変換し、変換後のデータの位相を関数フィッティングしたものを補正用位相とする。
【0013】
本発明のMRI装置は、連続撮影を行なうMRI装置にも適用できる。
例えば、撮影手段は、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測して一組の計測データの取得を繰り返し、前記位相補正手段は、前記一組の計測データの一つを選択して補正用位相を算出し、当該補正用位相を用いて、他の計測データを補正する。
【0014】
また本発明のMRI装置は、被検体を載せたベッドを移動させながら撮影を行なうMRI装置にも適用できる。
例えば、本発明のMRI装置は、被検体を静磁場中で移動させる移動手段をさらに備え、前記撮影手段は、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら実施する一組の計測データの取得と前記移動手段による被検体の移動とを同期させながら繰り返し、前記位相補正手段は、前記繰り返しにおいて、1以上の前記一組の計測データの取得毎に補正用位相を更新し、更新された補正用位相を更新後に取得される計測データに適用して位相補正する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ラディアルサンプリング法、或いはラディアルサンプリング法に位相エンコードを組み合わせたハイブリッドラディアル法に対し、取得したデータから静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するエコー信号のピークずれを算出して補正することにより、付加的なデータ計測をしないで撮影時間を延長すること無く、画像の信号消失などの静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するアーチファクトを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示す図。
【図2】本発明が適用されるラディアルMRI法のグラディエントエコーのパルスシーケンスを説明する図。
【図3】本発明が適用されるハイブリッドラディアル法のパルスシーケンスを説明する図。
【図4】一般的なグラディエントエコーのパルスシーケンスを説明する図。
【図5】サンプリング方法とk空間を説明する図。
【図6】傾斜磁場誤差の影響を説明する図。
【図7】傾斜磁場オフセットの影響を説明する図。
【図8】本発明の第1の実施の形態の信号処理を説明する図。
【図9】本発明の信号処理を説明する図。
【図10】本発明の第2の実施の形態の信号処理を説明する図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の信号処理を説明する図。
【図12】本発明を連続撮像に適用した第4の実施の形態を説明する図。
【図13】本発明をベッド移動撮像に適用した第5の実施の形態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
図1は本発明が適用されるMRI装置の一例の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、図1に示すように、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7と、シーケンサ4と、中央処理装置(CPU)8とを備えて構成される。
【0019】
静磁場発生系2は、被検体1の周りの空間にその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに永久磁石方式または常電導方式あるいは超電導方式の磁場発生手段が配置されている。
【0020】
傾斜磁場発生系3は、X,Y,Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とから成り、後述のシーケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X,Y,Zの3軸方向の傾斜磁場を被検体1に印加する。3軸方向の傾斜磁場を組み合わせることにより、任意の方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を発生させて被検体1に対するスライス面を設定するとともに、任意の方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)及び周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を発生して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0021】
シーケンサ4は、高周波磁場パルス(以下、「RFパルス」という)と傾斜磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段で、CPU8の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0022】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるためにRFパルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル14aとから成る。高周波発振器11から出力された高周波パルスをシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調し、この振幅変調された高周波パルスを高周波増幅器13で増幅した後に被検体1に近接して配置された高周波コイル14aに供給することにより、電磁波(RFパルス)が被検体1に照射される。
【0023】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル14bと増幅器15と直交位相検波器16とA/D変換器17とから成る。送信側の高周波コイル14aから照射された電磁波によって誘起される被検体1の応答の電磁波(NMR信号)が被検体1に近接して配置された高周波コイル14bで検出され、増幅器15で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、信号処理系7に送られる。
【0024】
信号処理系7は、光ディスク19、磁気ディスク18等の外部記憶装置と、CRT等からなるディスプレイ20とを有し、受信系6からのデータがCPU8に入力されると、CPU8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像をディスプレイ20に表示すると共に、外部記憶装置の磁気ディスク18等に記録する。
【0025】
なお、図1において、送信側及び受信側の高周波コイル14a、14bと傾斜磁場コイル9は、被検体1の周りの空間に配置された静磁場発生系2の静磁場空間内に設置されている。
【0026】
現在MRI装置の撮影対象スピン種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質であるプロトンである。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮影する。
【0027】
次に、上記MRI装置において実施される撮影方法を説明する。図2および図3に、本発明が適用されるラディアルサンプリング法(以下、「ラディアルMRI法」という)およびハイブリッドラディアル(プロペラMRIとも呼ばれている)法によるパルスシーケンスの例として、それぞれグラディエントエコー系のパルスシーケンス示す。また図4に直交系サンプリング法によるパルスシーケンス、図5(a)、(b)、(d)に、これらパルスシーケンスにより取得したデータのk空間への配置を示す。
【0028】
図2〜4のRF、A/D、echoはそれぞれ、RFパルス501、AD変換(サンプリングウィンドウ)505、エコー信号(図2について603、図3について707〜710、図4について506)のタイミングを表す。Gs、Gp、Grは、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場の軸を表す。ラディアルMRI法およびハイブリッドラディアル法においては、Gp、Grの二つの軸の傾斜磁場が位相エンコード傾斜磁場パルスおよび周波数エンコード傾斜磁場パルスとして印加される。図2における507、図3における702、図4における507は計測の繰り返し又は繰り返し時間(RFパルス501の間隔)を、図2における508、図3における701、図4における508は画像取得時間を示す。
【0029】
まず図2に示すラディアルMRI法のパルスシーケンスについて説明する。このパルスシーケンスは、図4で示した直交系サンプリング法とは、位相エンコード傾斜磁場の軸Gpにも周波数エンコード傾斜磁場と同様の傾斜磁場601を印加することと、パルスシーケンスの各繰り返し507毎にGp,Gr軸に印加する傾斜磁場601、602の振幅を変えることが異なっている。k空間の縦軸と横軸は、それぞれ位相エンコード傾斜磁場および周波数エンコード傾斜磁場の軸に対応しているので、パルスシーケンスの各繰り返し507で異なる量の傾斜磁場601、602の振幅を用いることで、k空間の略一点を中心として放射状に回転したデータを取得できる。
【0030】
図2のパルスシーケンスを用いてサンプリングしたエコー信号をk空間に配置した結果を図5(b)に示す。図5(b)は、507を12回繰り返し、それぞれ603-1〜603-cのエコー信号を取得した場合である。この場合、k空間を均等に埋めるために必要な回転角△θ(802)は、
△θ=π/12 (1)
であり、このようなサンプリングを行うため、Gp軸、Gr軸の傾斜磁場出力GR,GPは、直交系サンプリング法で用いる周波数エンコード傾斜磁場の出力をG、繰り返し番号をn(1≦n≦12)とした時、
GP=G×sin(△θ×(n-1)) (2)
GR=G×cos(△θ×(n-1)) (3)
である。ラディアルMRI法のメリットは、直交系サンプリング法の場合と比較して、少ないエコー数でも分解能が良いことと、体動によるゴースト若しくはアーチファクトが発生しにくいことである。また、撮影時の回転角を調整することで、被検体の体動による画質への影響を少なくできる。
【0031】
ハイブリッドラディアル法のパルスシーケンスは、上述のラディアルMRI法に位相エンコードを付加したものであり、図3に示すように、計測701を複数(図では4つ)のブロック702-1〜702-4に分割し、それぞれのブロック内で複数(図では5個)のエコー信号を取得する。このパルスシーケンスと図2に示すラディアルMRI法のパルスシーケンスとの違いは、ブロック702-1〜702-4毎に異なるk空間上の回転角となるように、傾斜磁場出力を設定し、それぞれのブロック702-1〜702-4内では、位相エンコードパルスを付加していることである。図3では、傾斜磁場パルス703、704は回転角度に応じて出力が変化する傾斜磁場パルス、傾斜磁場パルス703、704の前に出力される傾斜磁場パルス705、706は位相エンコード量を付加する傾斜磁場パルスである。図の場合では、第1のブロック702-1内で位相エンコード量705-1の異なる5つのエコー信号707-1〜707-5を取得した後、第2のブロック702-2に移行して、位相エンコード量705-2及び706-2の異なる5つのエコー信号708-1〜708-5を取得する。この操作を第3のブロック702-3、第4のブロック702-4についても同様に行い、エコー信号709-1〜709-5、710-1〜710-5を取得し、画像再構成に必要な全てのエコー信号を取得する。なお、図の場合は、ブロック702-1はKx軸に、ブロック702-3はKy軸に並行となるようにシーケンスを実行している(ブロック702-1とブロック702-3は互いに直交する)ため、傾斜磁場ブロック706-1と705-3には位相エンコード成分が含まれず、出力が一定である。
【0032】
このようにして取得したエコー信号を、k空間に配置した結果を、図5(d)に示す。この場合では、各ブロック702-1〜702-4毎に、角度804で回転し、それぞれのブロック内では位相エンコード量が異なる5個のエコー信号を取得している。例えば、第1のブロック702-1では、位相エンコード量の異なる5つのエコー信号群707-1〜707-5を取得しており、第2のブロック702-2では、第1のブロックと同様に位相エンコード量の異なる5つのエコー信号群708-1〜708-5を取得する。これらブロックのデータをk空間に配置すると、それぞれ805-1,805-2となり、ブロック間は互いに角度804だけ異なっている。なおハイブリッドラディアル法では、回転角度毎の計測の単位を意味するブロックは、ブレードとも呼ばれる。
【0033】
ラディアルMRI法およびハイブリッドラディアル法で取得したデータは、k空間の規則正しい格子座標にはのらない。そこで、サンプリングしたデータから補間処理を用いて、規則正しい格子座標上のデータを作成するグリッディング処理を行なう。グリッディング処理については、例えば[非特許文献4]に記載されている。以下、簡単に説明する。
【非特許文献4】J. I. Jackson et al, Selection of a Convolution Function for Fourier Inversion Using Gridding, IEEE Trans. Med. Imaging, vo1.10, pp.473-478
【0034】
図5(c)は、非直交系サンプリング法で取得したデータを、グリッディング処理してk空間に配置した場合の模式図である。k空間801は、図5(c)の黒丸で示すように規則正しい格子点の座標を有する。しかし、非直交系サンプリングで取得したデータは803-1〜803-3の様にk空間に対して異なる軌跡(座標)を通るので、白丸で示すサンプリングされたデータはk空間の格子点座標(図5(c)中の黒丸)と一致しない。グリッディング処理では、これらサンプリングされたデータ(図中の白丸)を用いて、補間処理により規則正しい格子点座標(図5(c)中の黒丸)にデータを再配置する。補間処理は、例えばSinc関数やKaiser-Besse1関数の補間用関数を用いて行う。
【0035】
グリッディング処理をすることにより、計測データは直交系サンプリングで計測された計測データと同様にフーリエ変換することにより画像再構成することができる。グリッディング処理において、白丸で示すデータの座標は、そのデータを取得するために設定された(例えば式(2)、(3)で算出された)傾斜磁場の振幅で決まる座標として扱われる。しかし実際にデータを取得する際に印加された傾斜磁場に誤差が生じた場合には、データは実際に配置されるべき座標とは異なる座標(算出された座標)にあるものとしてグリッディング処理されることになり、その結果、再構成された画像は誤差による影響を受ける。そこで本発明のMRI装置の信号処理系は、グリッディング処理に先立って、取得したデータに対し、傾斜磁場の誤差を補正する処理を行なう。
【0036】
まず傾斜磁場の誤差がデータに与える影響について説明する。一例として、エコー信号取得中の読み出し傾斜磁場軸に誤差が生じた場合の例を説明する。図6は、図2のシーケンスの一回の繰り返しを示し、読み出し傾斜磁場軸の誤差によって傾斜磁場オフセットを生じている場合(b)と、傾斜磁場オフセットが無い場合(a)を示している。誤差すなわち傾斜磁場オフセットがない場合には、読み出し傾斜磁場軸に印加したディフェイズ傾斜磁場パルス301-1と、読み出し傾斜磁場パルス302-1の積分量が0となる時間(すなわち、図の場合はA部とB部の面積が同じとなる時間)にエコー信号301が生じる。
【0037】
これに対し、読み出し傾斜磁場方向に傾斜磁場誤差あるいは静磁場不均一によるオフセット-G0がある場合、図6(b)のように読み出し傾斜磁場パルスの印加量に、傾斜磁場オフセット量-G0を加えたものがエコー信号取得中に印加された傾斜磁場の総量となるため、傾斜磁場オフセットと同極性に印加するディフェイズ傾斜磁場パルス301-2の面積は、見かけ上大きくなる(A')。一方、傾斜磁場オフセットと逆極性に印加される読み出し傾斜磁場パルス302-2は、面積が見かけ上小さくなり(B')、読み出し傾斜磁場軸に印加した傾斜磁場パルスの積分量が0となる時間は、図6(a)の場合と比較して後ろ側へP0だけシフトする。
【0038】
このようなエコー信号のピーク位置シフトは、上述した傾斜磁場オフセットのほか、傾斜磁場の立ち上がり時間のずれや、傾斜磁場の非線形性、静磁場不均一などによっても同様に生じる。ここでは、これらの要因をまとめて傾斜磁場誤差と呼んでいる。
【0039】
次にこのような傾斜磁場誤差がラディアルMRI法による計測データに与える影響について、図7を用いて説明する。図7は、k空間中心部を拡大して示しており、白丸は実際に計測したデータ点を、黒丸はk空間の格子点座標を表す。
図7(a)は、傾斜磁場誤差が無い理想的な状態であり、計測したエコー信号903上のデータ点は、k空間の1点(図7では原点)を中心にして放射状に規則正しく並ぶ。
【0040】
これに対し、傾斜磁場誤差に起因してピーク位置ずれがあった場合には、k空間の回転方向に応じてエコー信号を配置すると、図7(b)で示すように、ピーク位置のデータ点は原点からずれ、エコー信号904上のデータ点は規則正しい放射状にならない。
再構成時のグリッディングではシーケンス計算時の座標を用いるため、すなわち、本来図7(b)の白丸で示す位置にある計測データが、図7(a)の白丸で示す位置にあるとしてグリッディングがなされるため、この誤差の影響で画像の信号消失などが発生して画質が劣化し、アーチファクトとなる。
ハイブリッドラディアル法の場合は、図5(d)で示すブロック805の回転角毎に図7(b)と同様の誤差が生じ、この場合もアーチファクトとなる。この傾斜磁場誤差は、読み出し傾斜磁場パルスの印加軸によって変わる要素も含まれるため、ラディアルMRI法では回転角に応じて傾斜磁場誤差の影響が異なることが多い。
【0041】
以上説明した、ラディアルMRI法のアーチファクト発生要因を踏まえて、本発明のMRI装置の補正処理の実施の形態を説明する。
<第1の実施の形態>
本発明のMRI装置の第1の実施の形態を、図8を用いて説明する。図8は、ラディアルMRI法又はハイブリッドラディアル法実施時の補正処理の各処理ステップを示すフローチャートである。なお、図8の「ブロック」は回転角度毎の単位を表す。つまり、ラディアルMRI法ではブロックは各エコー信号に対応(即ち、ブロック数=プロジェクション数)し、ハイブリッドラディアル法ではブロックはブレードに対応する(即ち、ブロック数=ブレード数)。以下、図8に基づいて各処理ステップを詳細に説明する。
【0042】
ステップ101で、1ブロックの計測を行う。つまり、ラディアルMRI法では1つのエコー信号を、ハイブリッドラディアル法では1つのブレードに属するエコー信号群の計測を行う。
【0043】
ステップ102で、ブロック単位で取得したエコー信号を一次元フーリエ変換してエコーデータとする。つまり、ラディアルMRI法ではステップ101で計測した1つのエコー信号を一次元フーリエ変換し、ハイブリッドラディアル法ではステップ101で計測した1つのブレードに属するエコー信号群の各々を一次元フーリエ変換する。
【0044】
ステップ103で、ブロック内のエコーデータから、補正の基準となるデータを選出する。図9に基準データの選出の一例を示す。斜線で示す領域が基準として選出するブロックを表す。図9(a)は、ブロック数が10のラディアルMRI法の場合である。ラディアルMRI法の場合はブロック内に1エコーしか取得しないので、それぞれのブロックのデータを基準データ110-1〜110-aとする。図9(b)はブロック111の数が5、ブロック内のエコー数が4のハイブリッドラディアル法の場合である。ハイブリッドラディアル法の場合、ブロック内のデータは全てk空間の回転角が同じであるので、基準データl12は各ブロック内で一つ選出すればよい。例えば、ブロック内のデータはそれぞれ異なる位相エンコードが付加されているが、基準データとしては、位相エンコードを付加しないで取得したデータ(位相エンコードが0のデータ)を選出すればよい。
【0045】
ステップ104で、ステップ103で選出した基準データの位相を算出する。ステップ105で、ステップ104で算出した基準データの位相からブロック内のエコーデータを補正するための位相を作成する。補正用位相作成の具体的な方法は、後述する。
【0046】
ステップ106で、ステップ105で作成した補正用位相を用いて、ブロック内のエコーデータを補正する。位相補正処理としては、例えば、補正対象となる複素データをC(n,x)、補正用の位相をφ(n,x)としたとき、補正後のデ一タC'(n,x)は、
Re[C'(n,x)]=Re[C(n,x)]×cos(φ(n,x))−lm[C(n,x)]×sin(φ(n,x))
Im[C'(n,x)]=lm[C(n,x)]×cos(φ(n,x))+Re[C(n,x)]×sin(φ(n,x)) (8)
である(ここで、Re[],Im[]はそれぞれデータの実部、虚部を表す)。ラディアルMRI法では、各ブロックが1エコーのみ有するので、補正用位相を取得した基準データのみに対して式(8)の位相補正を行う。ハイブリッドラディアル法では、ブロック内に複数のデータがあるので、基準データから作成した補正用位相を用いて各データに対して式(8)の位相補正を行う。
【0047】
ステップ107で、ブロック単位で位相補正されたエコー信号を一次元逆フーリエ変換してk空間のデータに戻す。
【0048】
ステップ108で、最終ブロックか否かをチェックし、最終ブロックであれば次のステップ109に移行し、最終ブロックでなければステップ10bを介してステップ101に戻り、次ぎのブロックの処理を進める。そして、上記101〜108のステップを最後のブロックになるまで繰り返す。つまり、上記ステップ101〜107を、ラディアルMRI法ではエコー信号毎に、ハイブリッドラディアル法ではブレード毎に繰り返す。
【0049】
ステップ109で、位相補正された全ブロックデータをグリッディングして、k空間の各格子点上のデータを求める。ステップ10aで、ステップ109でグリッディングされたk空間データを二次元フーリエ変換して画像を得る。以上迄が、図8のフローチャートの説明である。
【0050】
次に上記ステップ105で行われる補正用位相作成の具体的方法を説明する。ステップ105で作成される補正用位相は、以下に例示するものがあり、いずれかを上記式(8)のφ(n,x)として用いる。以下の補正用位相を用いた補正は、以下の番号順により精緻な補正となる。
【0051】
1.位相オフセット成分
取得したエコー信号をグリッディングしてk空間データを作成する際、エコー信号の位相オフセットがエコー毎に異なる場合、エコー間で信号が打ち消し合い画質が劣化する。そこで、全てのエコー信号について位相オフセット成分を計算し補正することでこれを改善する。エコー信号の位相オフセット成分は、フーリエ変換後のデータにも同量の位相オフセットとなるので、基準データから位相オフセットを算出して補正するのが良い。この時、位相オフセットは、位相の一次成分や高次成分の影響を避けるため、基準データの中心座標(例えば、基準データの点数がXの場合、X/2の位置)の位相を用い、
φ0(n)=arc tan(Im[S(n,X/2)]/Re[S(n,X/2)]) (4)
により算出する(ここで、S(n,x)はブロック内の基準データを表す。nはブロック番号、xは位置座表を表す。)。このφ0(n)を補正用の位相とする。
φ(n,x)=φ0(n) (5)
【0052】
2.単純位相
エコー信号毎のピーク位置のずれを補正するために、基準データの位相をそのまま補正用の位相とすることで、ピーク位置ずれに起因する一次成分の位相補正を行う。従って、補正用の位相は、
φ(n,x)=arctan(Im[S(n,x)]/Re[S(n,x)]) (6)
である。
【0053】
このような単純位相による位相補正によって、例えば図7(a)に示されている様に、位相補正されたk空間内のエコー信号群は所定の略一点(例えば原点)を中心に回転対称な配置となる。つまり、ブロック毎のエコー信号の、読み出し傾斜磁場方向のピーク位置が略一致して、その一致点を中心とした回転対称な配置となる。また単純位相は位相オフセット成分を含んでいるので、単純位相を用いることにより位相オフセットの補正も同時に行なわれることになる。
【0054】
3.位相フィッティング
静磁場不均一が大きい場合や、撮影対象に脂肪などが含まれる場合には、局所的に位相が回転するので、基準データの位相にはピーク位置ずれ以外にこれらの成分が含まれる場合がある。そのため、基準データの位相をそのまま用いると、局所的に画像コントラストが歪む場合がある。
【0055】
そこで、算出したデータを所定の関数でフィッティングすることによって、ピーク位置ずれ以外の位相回転の影響を排除する。フィッティング処理では、基準データの位相をアンラップ処理した後、一次あるいは高次関数を用いてフィッティングするのが良い。例えば、フィッティング用関数として二次関数を用い、各ブロックのフィッティング後の0次、一次、二次の係数をそれぞれφ0(n)、φ1(n)、φ2(n)とした場合、補正用の位相は
φ(n,x)=φ2(n)×x2+φ1(n)×x+φ0(n) (7)
である(フィッティング次数を一次とした場合は、φ2(n)=0である)。
【0056】
このような位相フィッティングによる位相補正によって、上記2の単純位相を用いた補正と同様に、位相補正されたk空間内のエコー信号群は所定の一点(例えば原点)を中心に回転対称な配置となるが、上記2の場合と比較して、ピーク位置ずれに起因する以外の位相成分を排除できるので、ブロック毎のエコー信号のピーク位置の一致度をより高めることができる。以上迄が、補正用位相作成の具体的方法の説明である。
【0057】
以上説明したように本実施例によれば、静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するエコー信号のピークずれがあっても、それを補正することにより、画像の信号消失などのアーチファクトを低減して、画質を向上させることができる。
【0058】
<第2の実施の形態>
次に、本発明のMRI装置の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態との主な違いは、最初に全ての計測201を実施後、データを補正用する点、および基準データは各ブロックから選択するのではなく、所望のブロック間隔を置いて選択することができる点である。図10は、本実施の形態による、ラディアルMRI法又はハイブリッドラディアル法実施時の補正処理の各処理ステップを示すフローチャートである。尚、図8のフローチャートと同じ処理を表す処理ステップには、同じステップ番号を付している。また図10の「ブロック」は回転角度毎の単位を表すことも図8と同様である。以下、図8のフローチャートと異なる処理ステップのみ詳細に説明し、同じ処理ステップについは概要を説明するのみとする。
【0059】
ステップ201で、全ブロックのデータを計測する。
ステップ102で、全ブロックのエコー信号をそれぞれ一次元フーリエ変換してエコーデータとする。つまり、図8のステップ102の処理を、全ブロックについて行う。
【0060】
ステップ202で、補正用位相を取得するための基準データを選出する。基準データは、図8のステップ103と同様にブロック毎に選出しても良いし、任意のブロックのデータを選別して選択しても良い。選択の一例を図9(c)に示す。図9(c)は、図9(a)と同一の計測の場合であるが、基準用データとして、113のみを選択し、114は基準用データとして選択しない場合である。
【0061】
ステップ104で、図8のステップ104と同様に、ステップ202で選出した基準データの位相を算出する。ステップ105で、図8のステップ105と同様に、ステップ104で算出した基準データの位相からブロック内のデータを補正するための位相を作成する。補正位相は、前述した1〜3(位相オフセット、単純位相、位相フィッティング)のいずれを用いてもよい。
【0062】
ステップ203で、ステップ105で作成した補正用位相を元に、補正用位相の補間処理を行う。この補間処理は、基準データをブロック毎に選択した場合には行なわなくてもよい。基準データを任意の間隔で選択したブロックから選択した場合に、選択したブロックで作成された補正用位相を用いて、選択されなかったブロックの補正用位相を補間により求める。
【0063】
補間処理としては、各ブロックで作成した補正用位相φ(n,x)をブロック方向(n方向)に所定の関数でフィッティングする。例えば二次関数でフィッティングする場合、フィッティング後の0次、一次、二次の係数をそれぞれψ0(x),ψ1(x),ψ2(x)としたとき、補正用の位相は、
ψ(n,x)=ψ2(x)×n2+ψ1(x)×n+ψ0(x) (9)
である。この補正用位相は、ラディアルMRI法又はハイブリッドラディアル法で問題となる傾斜磁場誤差が、傾斜磁場印加軸の割合に依存して変化することを考慮したものである。
【0064】
ブロック方向の補間処理を行なうことにより、少ないブロックのデータから補正用位相を作成できる。従って、例えばブロックの基準データが極端に歪んで劣化した場合、基準データをリジェクトすることが考えられるが、この場合にも適用できる。
【0065】
ステップ106で、図8のステップ106と同様に、ステップ203で作成した各ブロックの補正用位相ψ(n,x)を用いて、ブロック毎にそのブロック内のデータを位相補正する。
ステップ107で、図8のステップ107と同様に、ブロック単位で位相補正されたエコー信号を一次元逆フーリエ変換してk空間のデータに戻す。
【0066】
ステップ109で、図8のステップ109と同様に、位相補正された全ブロックデータをグリッディングして、k空間の各格子点上のデータを求める。
ステップ10aで、図8のステップ10aと同様に、ステップ109でグリッディングされたk空間データを二次元フーリエ変換して画像を得る。
以上迄が、図10のフローチャートの説明である。
【0067】
以上説明した第1および第2の実施の形態では、ステップ105で補正用位相を作成する際、高次関数でフィッティングする例(段落番号0051で説明した、3.位相フィッティング)を示したが、フィッティング結果のうち、特定の次数の係数のみを用いて補正用位相を作成することもできる。この場合は、まずフィッティング関数として高次関数を用いてフィッティング後の位相マップを得るとともに、結果(フィッティング後の位相マップ)から、エコーのピーク位置ずれに直接関係する一次の成分を取り出し、この成分の補正を行なう。これにより、フィッティング後の位相マップの精度を向上でき、最初からフィッティング関数として一次関数を用いた場合よりも補正の精度を良くすることができる。
【0068】
また、ステップ203で補正用の位相を補間する際も、特定の次数の係数のみを補間して使用することもできる。これも、エコーのピーク位置ずれに起因する成分のみを補正するのに効果的である。
【0069】
<第3の実施の形態>
次に、本発明のMRI装置の第3の実施の形態を説明する。この実施の形態は、位相エンコードを伴うハイブリッドラディアル法で取得したデータの位相補正に適用される。本実施の形態は、第1の実施の形態或いは第2の実施の形態の、基準を選択するステップ(ステップ103或いはステップ202)において、位相エンコード方向のピークずれを補正する処理を追加すること以外は、第1の実施の形態或いは第2の実施の形態と同様である。
【0070】
ハイブリッドラディアルシーケンスにおいては、ブロック毎に位相エンコードを付加したデータを取得するが、このとき、各ブロックで取得したデータに位相エンコード方向(以下、PE方向)にピークずれがある場合、位相エンコードを付加しないで取得したデータを基準データとして選出しても、最適なデータではない。
【0071】
そこで、基準データの選出ステップ(第1の実施の形態のステップ103あるいは第2の実施の形態のステップ202)において、図11に示すような、位相エンコード方向の処理121〜126を加える。
【0072】
ステップ121で、PE方向にフーリエ変換する。
ステップ122で、PE方向の参照データを選出する。参照データCPE(y)(1≦y≦Y)としては、PE方向のフーリエ変換後のデータをI(x,y)(1≦x≦X,1≦y≦Y)とした場合、例えば読み出し方向のデータ点数の中心位置(X/2,y)のデータを選択し、
CPE(y)=I(X/2,y) (10)
とする。
【0073】
ステップ123で、ステップ122で作成したPE方向の参照データCPE(y)を用いて、補正用の位相、Φ(x,y)を作成する。このとき、
Φ(x,y)=arctan(Im[CPE(y)]/Re[CPE(y)]) (11)
である。また、補正用位相Φ(x,y)の精度を向上するために、関数でフィッティングしても良い。
【0074】
ステップ124で、ステップ123で作成した補正用の位相Φ(x,y)を用いて、ブロック内のデータを位相補正する。位相補正処理としては、式(8)と同様の処理を行う。
ステップ125で、PE方向に逆フーリエ変換する。
ステップ126で、補正用基準データを選出する。これは、第1の実施例の103及び第2の実施例の202で記載した処理と同じである。
【0075】
以上説明したように本実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、傾斜磁場誤差が、傾斜磁場印加軸の割合に依存して変化する場合にも、その誤差の影響を除去して、画質を向上させることができる。
【0076】
<第4の実施の形態>
次に、本発明のMRI装置の第4の実施の形態を説明する。上述した第1から第3の実施の形態では、1回の撮像(一つのk空間データの位相補正)の例を説明したが、本実施の形態は、ダイナミック撮影やフルオロスコピーのような連続撮影に本発明を適用したものである。図12に連続撮像の一例として、フルオロスコピー(ダイナミック撮像)に本発明を適用した実施の形態を模式的に示す。
【0077】
フルオロスコピーは、検査対象の同一領域を時系列的に撮像し、時系列的に得られる画像の表示・更新を繰り返す。ここで撮像は、ラディアルMRI法或いはハイブリッドラディアル法のパルスシーケンスによって行う。時系列画像132は、それぞれ独立したk空間データ131-1〜131-nを用いて再構成されたものでもよいし、時間的に隣接する画像同士でk空間データの一部を共用して再構成されたものでもよい。図示する実施の形態では、2枚目以降の画像は、隣接する画像同士で1つのk空間データの2分の1を共用して画像再構成された場合(エコーシェア法)を示している。
【0078】
画像再構成に先立ち、ラディアルMRI法或いはハイブリッドラディアル法によって取得したk空間データの回転角度方向(ブロック方向)の位相補正を行なう。位相補正は、前述した第1〜第3の実施の形態と同様に行なう。すなわち、k空間データの各ブロックのデータを一次元フーリエ変換し、変換後のデータから基準データを選択し、この基準データを用いて補正用位相を作成し、ブロック内のデータを位相補正する。ハイブリッドラディアル法の場合には、さらにブロック内のデータについて位相エンコード方向にピーク位置を揃えるための位相補正を行なってもよい。
【0079】
位相補正に用いる補正用位相は、1枚の画像再構成が可能なk空間データが収集される度に作成してもよいが、エコーのピーク位置ずれの原因となる傾斜磁場誤差が経時的な要因を含まない場合、1回だけ作成し、それを全ての画像再構成用のデータに適用することも可能である。或いは連続して取得されるk空間データに対し、所定の頻度(複数回に1回の割合)で補正用位相を更新し、更新された補正用位相を用いて、その後に画像再構成に供されるデータをブロック毎に位相補正してもよい。
【0080】
図12に示す実施の形態では、1枚の画像を再構成可能なk空間データ131-1が取得されると、その計測データから補正用位相133-1を作成し、k空間データ131-1を補正し、グリッディング後、画像再構成し1枚目の画像132-1を作成、表示する。2枚目の画像132-2は、k空間データ131-1のうち後半で取得されたデータと、k空間データ131-2のうち前半で取得されたデータとを用いて画像再構成される。その際、画像再構成に用いるデータは、k空間データ131-1を用いて作成された補正用位相133-1を用いて位相補正される。以後、k空間データ131-4が取得されるまでは、補正用位相133-1を用いて画像132-3〜132-6の再構成に用いるデータを補正する。k空間データ131-4が取得されると、その計測データから補正用位相133-2を作成し、以後のデータの補正に用いる。
【0081】
<第5の実施の形態>
本発明をベッド移動撮像に適用した第5の実施の形態を説明する。図13は、ベッド移動撮像法に本発明による位相補正を適用した例を模式的に示す図である。ベッド移動撮像は、被検体を載せたベッドを静磁場空間(撮像空間)に対し相対的に移動させながら撮像することにより、大きさに制限のある撮像空間よりも広い被検体領域を撮像する技術である。ベッド移動撮像へのラディアルMRI法或いはハイブリッドラディアル法の適用においてスライス方向の制限はないが、図ではベッド移動方向に平行な方向をスライス方向とした場合を示している。この撮像方法では、ベッドを連続移動して撮像することにより、CT装置におけるスパイラルスキャンと同様の撮像が可能となる。ここでは説明を簡単にするために、ベッドをスライス毎にステップ的に移動し撮像する場合を説明する。
【0082】
図13に示す実施の形態では、足から頭に向けてステップ状にベッドを移動しながら体軸と直交する断面を順次撮像する。ここで1つのスライス画像データ141-1〜141-nは、図12の1つのk空間データに対応しており、1つのk空間データから一つのスライス画像データが再構成される。再構成に際しては、第1〜第3の実施の形態と同様に、まず1つのk空間データを一次元フーリエ変換し、変換後のデータからブロック毎に基準データを選択し、補正用位相を作成し、ブロック内のエコーのピーク位置が一致するように位相を補正する。一つのk空間データを収集するごとに補正用位相を作成し、位相補正を行なってもよいが、図13に示す実施の形態では、3枚のスライスを撮像する度に、新たなに補正用位相を作成し、それを3枚のスライスを画像再構成するための各計測データに用いて位相補正する。
【0083】
ベッド移動撮像では、スライス毎に被検体の撮像位置が異なるので傾斜磁場や静磁場不均一の局所的な変化が静止撮像の場合より多く生じる可能性がある。従ってベッド移動方向に付いて精度よい補正を行なうためには、補正用位相を作成する頻度を高くするか、作成した補正用位相をベッド移動方向に補間し、補正用位相を作成しなかった計測データに適用する。
【0084】
スライス毎に位相補正後のデータを一次元逆フーリエ変換した後、グリッディングしてk空間に再配置し、画像再構成し画像データを作成する。各スライスの画像データを合成することにより被検体の全身画像データを得る。
【0085】
本実施の形態によれば、非直交系サンプリング法を適用したベッド移動撮像において静磁場不均一や傾斜磁場の非線形性に起因するアーチファクトを低減できる。特にベッド移動方向について補正用位相作成の頻度を上げることにより、被検体に依存する磁場不均一の影響も排除することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態で開示された内容にとどまらず、本発明の趣旨を踏まえた上で各種形態を取り得る。例えば、上記実施の形態ではグラディエントエコーパルスシーケンスについて記載したが、ラディアルサンプリング法及びハイブリッドラディアル法はパルスシーケンスの種類には依存せず、SEパルスシーケンス、FSEパルスシーケンス、EPIパルスシーケンスなどに適用できる。
【0087】
また、ラディアルMRI法及びハイブリッドラディアル法の実施の形態として、二次元面内のGr軸,Gp軸でk空間の回転を行う場合について説明したが、Gr軸,Gp軸は撮影空間のX,Y,Zの任意の軸と対応させることが可能であり、オブリーク撮影やオフセンター撮影も実行できる。更に、三次元球内での回転を行うこともできる。
【0088】
また、図ではラディアルMRI法やハイブリッドラディアル法の例としてブロック数を少なく示したが、実際の撮影では、ブロック数とブロック内のエコー数は任意に設定することができ、この場合も同様の処理を行う。同様に、ラディアルMRI法についても、取得するエコー数及び回転角、セグメント数は任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0089】
1・・・被検体、2・・・静磁場発生系、3・・・傾斜磁場発生系、4・・・シーケンサ、5・・・送信系、6・・・受信系、7・・・信号処理系、8・・・中央処理装置(CPU)、9・・・傾斜磁場コイル、10・・・傾斜磁場電源、11・・・高周波発振器、12・・・変調器、13・・・高周波増幅器、14a・・・高周波コイル(送信側)、14b・・・高周波コイル(受信側)、15・・・増幅器、16・・・直交位相検波器、17・・・A/D変換器、18・・・磁気ディスク、19・・・光ディスク、20・・・ディスプレイ、501・・・高周波パルス、502・・・スライス選択傾斜磁場、503・・・位相エンコード傾斜磁場パルス、504・・・周波数エンコード傾斜磁場パルス、505・・・データサンプルウインド、506・・・エコー信号、507・・・繰り返し時間間隔、508・・・画像取得時間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場を発生する手段と、被検体から発生するエコー信号を受信する手段とを備え、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを、該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測し、角度毎に少なくとも一つの計測データを収集する撮影手段と、前記計測データを前記k空間に再配置し画像再構成する画像再構成手段と、前記k空間への計測データの再配置に先立ち、前記角度毎に、前記計測データから選択した基準データをもとに補正用位相を算出し、算出された補正用位相を用いて前記計測データを位相補正する位相補正手段を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記撮影手段は、前記被検体の所望の領域について時系列の撮影を行い、複数組の計測データを取得し、
前記位相補正手段は、1ないし複数組それぞれについて、計測データの少なくとも一つを一次元フーリエ変換したデータをもとに補正用位相を算出し、前記補正用位相を用いて、前記計測データを一次元フーリエ変換したデータに対し位相補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記位相補正手段は、前記複数組の計測データのうち、一組の計測データの一つを選択して補正用位相を算出し、当該補正用位相を用いて、他の計測データを補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1の磁気共鳴イメージング装置であって、前記被検体を静磁場中で移動させる移動手段をさらに備え、
前記撮影手段は、一組の計測データの取得と前記移動手段による被検体の移動とを同期させながら繰り返し、
前記位相補正手段は、前記繰り返しにおいて、1以上の前記一組の計測データの取得毎に補正用位相を更新し、更新された補正用位相を更新後に取得される計測データに適用して位相補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
所望の領域をラディアルサンプリング法又はハイブリッドラディアルサンプリング法のパルスシーケンスにより時系列に撮像し、時系列で得られた画像の表示・更新を繰り返すデータを取得する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記ラディアルサンプリング法又はハイブリッドラディアルサンプリング法の角度の異なる計測軌跡の角度毎に補正用位相を算出する算出部と、
時系列で得られる複数のデータのうち1ないし複数の計測データについて、角度毎に前記補正用位相を用いて補正を行う位相補正部と、
前記位相補正された1ないし複数の計測データから画像を再構成する画像再構成部とを備え、
前記算出部は、計測データを一次元方向にフーリエ変換したデータをもとに補正用位相を算出し、
前記位相補正部は、一次元方向にフーリエ変換した計測データに対し行い、
前記画像再構成部は、位相補正後の計測データを一次元方向に逆フーリエ変換後に画像再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
磁気共鳴イメージング装置を用いて、所望の領域をラディアルサンプリング法又はハイブリッドラディアルサンプリング法のパルスシーケンスにより時系列に撮像し、時系列で得られた画像の表示・更新を繰り返すデータを取得する磁気共鳴イメージング方法であって、
前記ラディアルサンプリングン法又はハイブリッドラディアルサンプリング法の角度の異なる計測軌跡の角度毎に補正用位相を算出するステップと、
時系列で得られる複数のデータのうち1ないし複数の計測データについて、角度毎に前記補正用位相を用いて補正を行うステップと、
前記位相補正された1ないし複数の計測データから画像を再構成するステップとを含み、
前記補正用位相を算出するステップは、計測データを一次元方向にフーリエ変換したデータをもとに補正用位相を算出し、
前記補正を行うステップは、一次元方向にフーリエ変換した計測データに対し行い、
位相補正後の計測データを一次元方向に逆フーリエ変換後に画像再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
【請求項1】
静磁場、傾斜磁場および高周波磁場の各磁場を発生する手段と、被検体から発生するエコー信号を受信する手段とを備え、k空間における1以上の計測軌跡に対応するエコーデータを、該計測軌跡のk空間座標軸に対する角度を変えながら計測し、角度毎に少なくとも一つの計測データを収集する撮影手段と、前記計測データを前記k空間に再配置し画像再構成する画像再構成手段と、前記k空間への計測データの再配置に先立ち、前記角度毎に、前記計測データから選択した基準データをもとに補正用位相を算出し、算出された補正用位相を用いて前記計測データを位相補正する位相補正手段を備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記撮影手段は、前記被検体の所望の領域について時系列の撮影を行い、複数組の計測データを取得し、
前記位相補正手段は、1ないし複数組それぞれについて、計測データの少なくとも一つを一次元フーリエ変換したデータをもとに補正用位相を算出し、前記補正用位相を用いて、前記計測データを一次元フーリエ変換したデータに対し位相補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記位相補正手段は、前記複数組の計測データのうち、一組の計測データの一つを選択して補正用位相を算出し、当該補正用位相を用いて、他の計測データを補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1の磁気共鳴イメージング装置であって、前記被検体を静磁場中で移動させる移動手段をさらに備え、
前記撮影手段は、一組の計測データの取得と前記移動手段による被検体の移動とを同期させながら繰り返し、
前記位相補正手段は、前記繰り返しにおいて、1以上の前記一組の計測データの取得毎に補正用位相を更新し、更新された補正用位相を更新後に取得される計測データに適用して位相補正することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
所望の領域をラディアルサンプリング法又はハイブリッドラディアルサンプリング法のパルスシーケンスにより時系列に撮像し、時系列で得られた画像の表示・更新を繰り返すデータを取得する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記ラディアルサンプリング法又はハイブリッドラディアルサンプリング法の角度の異なる計測軌跡の角度毎に補正用位相を算出する算出部と、
時系列で得られる複数のデータのうち1ないし複数の計測データについて、角度毎に前記補正用位相を用いて補正を行う位相補正部と、
前記位相補正された1ないし複数の計測データから画像を再構成する画像再構成部とを備え、
前記算出部は、計測データを一次元方向にフーリエ変換したデータをもとに補正用位相を算出し、
前記位相補正部は、一次元方向にフーリエ変換した計測データに対し行い、
前記画像再構成部は、位相補正後の計測データを一次元方向に逆フーリエ変換後に画像再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
磁気共鳴イメージング装置を用いて、所望の領域をラディアルサンプリング法又はハイブリッドラディアルサンプリング法のパルスシーケンスにより時系列に撮像し、時系列で得られた画像の表示・更新を繰り返すデータを取得する磁気共鳴イメージング方法であって、
前記ラディアルサンプリングン法又はハイブリッドラディアルサンプリング法の角度の異なる計測軌跡の角度毎に補正用位相を算出するステップと、
時系列で得られる複数のデータのうち1ないし複数の計測データについて、角度毎に前記補正用位相を用いて補正を行うステップと、
前記位相補正された1ないし複数の計測データから画像を再構成するステップとを含み、
前記補正用位相を算出するステップは、計測データを一次元方向にフーリエ変換したデータをもとに補正用位相を算出し、
前記補正を行うステップは、一次元方向にフーリエ変換した計測データに対し行い、
位相補正後の計測データを一次元方向に逆フーリエ変換後に画像再構成することを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−46837(P2013−46837A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264125(P2012−264125)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−528461(P2007−528461)の分割
【原出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−528461(P2007−528461)の分割
【原出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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