説明

磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法

【課題】心筋組織の血流画像を適切に収集すること。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、第1撮像実行部と、特定部と、第2撮像実行部とを備える。第1撮像実行部は、被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、所定の期間中、心筋を含む撮像領域をk空間のセグメント毎に連続撮像することにより、標識化からデータ収集までの時間が異なる複数のMRデータを非造影で収集する。特定部は、収集された複数のMRデータに基づいて、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定する。第2撮像実行部は、特定された時間をパルスシーケンスの該当パラメータに設定し、被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、心筋を含む撮像領域を撮像することにより、MRデータを非造影で収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI(Magnetic Resonance Imaging))は、静磁場に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF(Radio Frequency))信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴(MR(Magnetic Resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。この磁気共鳴イメージングの分野において、造影剤を用いずに血流画像を取得する手法として、非造影MRA(Magnetic Resonance Angiography)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第12/763,643号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0068175号明細書
【特許文献3】米国特許第6,782,286号明細書
【特許文献4】米国特許第6,801,800号明細書
【特許文献5】米国特許第7,613,496号明細書
【特許文献6】特開2001−252263号公報
【特許文献7】特開2006−198411号公報
【特許文献8】国際公開第2004/003851号
【特許文献9】米国特許出願公開第2011/0071382号明細書
【特許文献10】特開2011−83592号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Zun, et al., ”Assessment of Myocardial Blood Flow (MBF) in Humans Using Arterial Spin Labeling (ASL): Feasibility and Noise Analysis,” MRM, Vol.62, pages 975-983 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、心筋組織の血流画像を適切に収集することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、第1撮像実行部と、特定部と、第2撮像実行部とを備える。第1撮像実行部は、被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRF(Radio Frequency)パルスを印加した後、所定の期間中、心筋を含む撮像領域をk空間のセグメント毎に連続撮像することにより、標識化からデータ収集までの時間が異なる複数のMR(Magnetic Resonance)データを非造影で収集する。特定部は、収集された複数のMRデータに基づいて、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定する。第2撮像実行部は、特定された時間をパルスシーケンスの該当パラメータに設定し、被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、心筋を含む撮像領域を撮像することにより、MRデータを非造影で収集する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態に係るMRIシステムの概略ブロック図である。
【図2】図2は、実施形態に係るtime−SLIP(Spatial Labeling Inversion Pulse)シーケンスを説明するための図である。
【図3】図3は、実施形態に係るMRIシステムにおいて実行されるコンピュータプログラムコードの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態に係るシネ画像を説明するための図である。
【図5】図5は、実施形態に係るtime−SLIPシーケンスを説明するための図である。
【図6】図6は、実施形態に係るシネ画像を説明するための図である。
【図7】図7は、実施形態に係るtime−SLIPシーケンスの他の例を説明するための図である。
【図8】図8は、実施形態に係るtime−SLIPシーケンスの他の例を説明するための図である。
【図9A】図9Aは、実施形態における標識化領域と撮像領域との関係を説明するための図である。
【図9B】図9Bは、実施形態における標識化領域と撮像領域との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すMRI(Magnetic Resonance Imaging)システムは、架台部10(断面図で示す)と、互いに接続される様々な関連のシステム構成要素20とを含む。少なくとも架台部10は、通常シールドルーム内に設置される。図1に示す1つのMRIシステムは、静磁場B0磁石12と、G、G、及びG傾斜磁場コイルセット14と、RF(Radio Frequency)コイルアセンブリ16との実質的に同軸円筒状の配置を含む。この円筒状に配置された要素の水平軸線に沿って、被検体テーブル11によって支持された被検体9の頭部を取り囲むように示された撮像ボリューム18がある。
【0009】
MRIシステム制御部22は、表示部24、キーボード/マウス26、及びプリンタ28に接続される入力/出力ポートを備える。言うまでもなく、表示部24は、制御入力もまた備えるような多様性のあるタッチスクリーンであってもよい。
【0010】
MRIシステム制御部22は、MRIシーケンス制御部30とインタフェース接続する。MRIシーケンス制御部30は、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ32、並びに、RF送信部34、及び、送信/受信スイッチ36(同じRFコイルが、送信及び受信の両方に用いられる場合)を制御する。当業者には自明であるが、1つ以上の電極8を被検体に装着し、心電(ECG(Electrocardiogram))信号や末梢脈波ゲート信号をMRIシーケンス制御部30へ出力するとよい。また、MRIシーケンス制御部30は、特定のパルスシーケンスのパラメータを設定する操作者入力やシステム入力を用いてMR画像を生成するために、有用なパルスシーケンスを実行するための好適なプログラムコード構造38へのアクセスを有する。
【0011】
MRIシステム20は、表示部24に出力する処理された画像データを作成できるように、MRIデータ処理部42に入力を供給するRF受信部40を含む。また、MRIデータ処理部42を、画像再構成プログラムコード構造44及びMR画像記憶部46にアクセスできるように構成してもよい(例えば、実施形態及び画像再構成プログラムコード構造44に従った処理で得られたMRIデータを格納するために)。
【0012】
また、図1は、MRIシステムプログラム/データ格納部50を一般化した描写を示す。MRIシステムプログラム/データ格納部50に格納されるプログラムコード構造(例えば、time−SLIP画像及びシネ画像の生成、生成のための操作者入力等のために)は、MRIシステムの様々なデータ処理構成要素にアクセス可能なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納される。当業者には自明であるが、プログラム格納部50は、正常運転時にそのように格納されたプログラムコード構造に対して直近の必要性を有するシステム20の処理コンピュータのうちの様々なコンピュータに分割し、且つ少なくとも一部を直結してもよい(すなわち、MRIシステム制御部22に普通に格納したり、直結したりする代わりに)。
【0013】
実際、当業者には自明であるが、図1の描写は、本明細書で後述する実施形態を実行できるように若干の変更を加えた一般的なMRIシステムの非常に高度に簡素化した図である。システム構成要素は、様々な論理収集の「ボックス」に分割でき、通常、多数のデジタル信号処理装置(DSP(Digital Signal Processors))、超小型演算処理装置、特殊用途向け処理回路(例えば、高速A/D変換、高速フーリエ変換、アレイ処理用等)を含む。これら処理装置のそれぞれは、通常、各クロックサイクル(又は所定数のクロックサイクル)が発生すると、物理データ処理回路がある物理的状態から別の物理的状態へ進むクロック動作型の「状態機械」である。
【0014】
動作中に、処理回路(例えば、CPU(Central Processing Unit)、レジスタ、バッファ、計算ユニット等)の物理的状態が、あるクロックサイクルから別のクロックサイクルへ漸進的に変化するだけでなく、連結されているデータ格納媒体(例えば、磁気記憶媒体のビット格納部)の物理的状態も、そのようなシステムの動作中に、ある状態から別の状態へ変わる。例えば、MRI再構成プロセスの終了時、物理的記憶媒体のコンピュータ読み取り可能なアクセス可能データ値格納場所のアレイは、いくつかの事前の状態(例えば、全部一律の「ゼロ」値又は全部「1」値)から新しい状態に変わる。その新しい状態では、そのようなアレイの物理的場所の物理的状態は、最小値と最大値との間で変動し、現実世界の物理的事象及び状況(例えば、撮像ボリューム空間内の被検体の組織)を表現する。当業者には自明であるが、格納されたデータ値のそのようなアレイは、物理的構造を表し且つ構成もする。つまり、命令レジスタの中に順次読み込まれてMRIシステム20の1つ以上のCPUによって実行されたとき、動作状態の特定シーケンスが発生して、MRIシステム内中に移行されるコンピュータ制御プログラムコードの特定構造が構成される。
【0015】
下記の実施形態は、データの収集、処理、MR画像の生成、表示などを行うことを目的として改良された方法を提供する。
【0016】
MRIの技術として、造影剤を用いずに心筋の血流を評価するASL(Arterial Spin Labeling)法が知られている。ASL法は、血液そのものをRFパルスにより磁気的に標識化(ラベリング)し、標識化した血液をトレーサとして用いることで、パフュージョン(Perfusion)画像等を得る撮像法である。例えば、MRIシステムは、標識化された血液の寄与のないcontrol画像、及び、標識化パルスの一例としてのインバージョンパルスの印加により標識化された血液の寄与のあるtag画像を収集し、収集した両画像の差分処理を行う。この差分処理によって静止した組織はキャンセルされるので、MRIシステムは、撮像領域内に流入した血液成分のみの画像を得ることができる。なお、ASL法については、例えば、Zunらによる、“Assessment of Myocardial Blood Flow(MBF) in Humans Using Arterial Spin Labeling(ASL): Feasibility and Noise Analysis”、Magnetic Resonance in Medicine、62巻、975〜983頁(2009)を参照されたい。ここで、(ストレスパフュージョンを伴う及び伴わない)心筋中のタグのオンオフ信号差を検査するために、2次元のASLシーケンスを用いる。
【0017】
また、MRIの技術として、time−SLIP(Spatial Labeling Inversion Pulse)法が知られている。time−SLIP法は、撮像領域に流入又は流出する流体を、この撮像領域とは独立した位置で標識化し、撮像領域に流入又は流出する流体の信号値を高く又は低くすることで、流体を描出する撮像法である。例えば、MRIシステムは、同期信号(例えばR波)から一定の待ち時間後にtime−SLIPパルスを印加する。このtime−SLIPパルスは、領域非選択インバージョンパルス及び領域選択インバージョンパルスを含み、領域非選択インバージョンパルスは、オン又はオフを設定することができる。領域選択インバージョンパルスによって撮像領域に流入(又は流出)する流体を標識化すると、BBTI(Black-Blood Time to Inversion)時間後に流体が到達した部分の信号の輝度が高く(領域非選択インバージョンパルスがオフの場合は低く)なる。このtime−SLIP法については、例えば、2010年4月20日に米国出願された第12/763、643号も参照されたい。この米国出願においては、適切なBBTI時間を選択することによって、タグ付けされた(又は、マークされた)血流分布の観察に、非造影の心筋パフュージョンtime−SLIP法が用いられている。
【0018】
ここで、time−SLIP法においては、BBTIのパラメータ値(以下、適宜「BBTI値」という)を適切に選択することが重要である。なぜならば、BBTl値の選択が適切でない場合、タグ付けされた血流ボーラスが、画像化されたROI(Region Of Interest)に到達しない場合や、MRデータが収集される時点までに既にROIを通過してしまう場合が発生し得るからである。もっとも、このBBTl値を適切に選択することは難しい。このBBTI値は、被検体毎に変動し、また、同じ被検体であっても、心拍数や他の被検体特有の状況などによって変動するからである。
【0019】
ここで、実施形態に係るMRIシステムは、可変的に位置決め可能なシネサブシーケンス(cine sub-sequence)が組み込まれたtime−SLIP法による血管造影撮像によって、BBTI値の適切な選択が難しいという問題の軽減、除去を実現することができる。具体的には、実施形態に係るMRIシステムは、高い時間分解能で、心筋パフュージョンの信号差を見つけるために、2Dのシネシーケンスを用いて、任意の心時相(例えば、心拡張期)における心筋の信号強度の変化を検査する。また、実施形態に係るMRIシステムは、フローアウト(flow-out)を用いて心時相における信号変化を検査するために、balanced SSFP(Steady State Free Precession:定常状態自由歳差運動)による2Dのtime−SLIP法を用いることができる。
【0020】
特に、シネサブシーケンス(例えば、2次元(例えば、1空間次元及び1時間次元)、又は、3次元(例えば、2空間次元及び1時間次元)のbSSFP又はFFE(Fast Field Echo))が組み込まれた実施形態において、操作者やMRIシステムは、所定のパルスシーケンスに対して、BBTI値の範囲を自由に選択することができる。例えば、実施形態において、time−SLIP法によるパルスシーケンス(以下、適宜「time−SLIPシーケンス」という)に組み込まれているセグメント化されたシネサブシーケンスの継続時間は、(例えば、操作者又はMRIシステムによって)制御可能である。同様に、例えば、実施形態において、シネサブシーケンスの後の回復時間(例えば、新しいデータ収集サイクルの前の回復時間)、及び、任意の初期トリガからの遅延時間(例えば、1つ以上のタグ付けRFパルスが印加される前に選択された心臓のトリガイベントの後の遅延時間)も制御可能である。
【0021】
実施形態に係るMRIシステムは、time−SLIPシーケンスにおいて、データ収集サイクル内で可変的に位置決め可能なシネサブシーケンスによるデータ収集の後は、あらゆる必須の画像減算処理、あるいは、収集したMR信号に対する他の処理や分析を(例えば、画像間の位置合わせ付きで)自動的に実行することができる。好ましくは、実施形態に係るMRIシステムは、必要な画像の差分操作を実行する前に、適切であれば、その後複数のパルスシーケンスを自動的に実行できるように、RFタグ「オン」及び「オフ」のパラメータを操作者(又はシステム)が事前選択できる。
【0022】
最終的に、実施形態に係るMRIシステムは、画像化された心筋内の血液パフュージョン信号の輝度変化の表示を、表示や格納、あるいは、遠隔システム又は遠隔地への転送等の形態で提供することができる。MRIシステムは、シネサブシーケンスが組み込まれたtime−SLIPシーケンスによって収集された、MRIシネ画像フレームのうちの確認された1つを提供するか、あるいは、別のtime−SLIPシーケンスを実行することにより収集された画像を提供する。この別のtime−SLIPシーケンスは、最適なMRIシネ画像フレームが事前に特定されることによって決定されるので、適切なBBTI値を用いて実行される。
【0023】
シネサブシーケンスが組み込まれたtime−SLIPシーケンスには、例えば、(a)フローイン(flow-in)血管造影法を実現するために1つの領域選択インバージョンパルスをROIの上流に印加する場合と、b)フローアウト(flow-out)血管造影法を実現するために領域選択インバージョンパルス及び領域非選択インバージョンパルスをROIに印加する場合とがある。また、領域選択インバージョンパルスのオン/オフを交互に設定することで、血管を出力するためのサブトラクションを容易にすることができる。
【0024】
実施形態におけるtime−SLIPシーケンスには、制御可能な3つの時間(例えば、初期のトリガ遅延時間、セグメント化されたシネサブシーケンスの継続時間、及び回復時間)がある。一方、領域選択インバージョンパルスのオン/オフを交互に行うスキャンにおいては、初期のトリガ遅延時間及びシネサブシーケンスの継続時間のみ(例えば、操作者及びMRIシステムプログラミングの一方又は両方によって)選択可能となる。なお、(例えば、シネ画像フレーム間の動きアーチファクトを補償するように)同一ROIの複数の画像について、画像間の位置合わせを十分留意して実施することが望ましい。
【0025】
実施形態に係るMRIシステムは、セグメント化されたシネサブシーケンスが組み込まれたtime−SLIPシーケンスを用いることで、(1つの領域選択インバージョンパルスを用いたフローイン血管造影法によるか、領域選択インバージョンパルス及び領域非選択インバージョンパルスを用いたフローアウト血管造影によるかにかかわらず)被検体の心周期中の信号変化を描出することができる。フローイン血管造影法においては、MRIシステムは、領域選択インバージョンパルスを心筋に印加する。すると、time−SLIPシーケンスの間、心筋の信号強度はBBTI時間の増加に伴って減少する。フローアウト血管造影法においては、領域選択インバージョンパルス及び領域非選択インバージョンパルスを心筋の上流部分に印加する。すると、time−SLIPシーケンスの間、心筋の信号強度はBBTI時間の増加に伴って増加する。領域選択インバージョンパルスのオン/オフを交互に設定する手法(以下、適宜「オン/オフ交互手法」という)においては、心筋の信号強度はBBTI時間の増加に伴って増加する。オン/オフ交互手法は、背景信号を除去するとともに、心筋に流入する血流の観察にも役立つ。
【0026】
実施形態に係るMRIシステムは、信号の輝度変化が効果的なシネサブシーケンス中のBBTI値を、後のtime−SLIPシーケンスにおいて使用する可能性がありそうな有効なBBTI値の候補として、取得する。後のtime−SLIPシーケンスは、シネサブシーケンスが組み込まれていない(他の任意のシーケンスを用いる)time−SLIPシーケンスである。また、実施形態に係るMRIシステムは、(最適なBBTI値の決定に用いる)シネ画像フレーム自体についても、心筋パフュージョン画像として用いることができる。
【0027】
例えば、実施形態に係るMRIシステムは、シネサブシーケンスが組み込まれた初期のtime−SLIPシーケンスにおいては、適切なBBTI値を特定することを目的として、比較的迅速且つ効果的な2Dのtime−SLIPシーケンスを実施する。そして、実施形態に係るMRIシステムは、その後、心筋の3次元画像を描出することを目的として、非常に長い、シネサブシーケンスが組み込まれない3Dのtime−SLIPシーケンスを、複数スライスにわたって複数回実施する。
【0028】
図2は、可変的に位置決め可能なシネサブシーケンスが組み込まれたtime−SLIPシーケンスを説明するための図である。図2において、上部のラインは、被検体のECG(Electrocardiogram)信号のR波を示す。図2に示すように、実施形態に係るMRIシステムは、初期のトリガ遅延時間D1の後に、標識化のためのRFパルスであるインバージョンパルスA及びB(例えば、180°パルス)の両方又は一方を印加する。初期のトリガ遅延時間D1は、一般に短く、ゼロに近い場合がある。傾斜磁場パルスは、図面の簡易にするために、図2においては明示されていない。また、図2に示すように、実施形態に係るMRIシステムは、継続時間D2の間、セグメント化されたシネサブシーケンスによるデータ収集を継続する。例えば、実施形態に係るMRIシステムは、RFパルス、傾斜磁場パルス(SS(Slice Select)パルス、PE(Phase Encode)パルス、及びRO(Read Out)パルス)などを好適に初期化した状態で、少なくとも被検体の心拡張期を網羅する300〜400ミリ秒程度、シネサブシーケンスによるデータ収集を継続することで、連続したBBTI時間で効果的に撮像された4〜5枚程度のシネ画像フレームを描出する。
【0029】
また、図2に示すように、初期のBBTl遅延間隔D4(例えば、600ミリ秒程度)は、初期のトリガ遅延時間からの遅延時間であってセグメント化されたシネサブシーケンスの開始時間として位置付けられる。実施形態に係るMRIシステムは、セグメント化されたシネサブシーケンスの後、更に、回復時間D3の後、次のデータ収集サイクルを開始する(例えば、核磁化が適切な開始状態に戻ることができるように)。
【0030】
実施形態においては、操作者やMRIシステムが、所定の被検体のECG信号に適合するように、これらの時間間隔を選択することができる。例えば、操作者やMRIシステムは、D1、D2、D3、及びD4の全て、又はいずれか3つを選択することで、1つのシーケンス全体の時間間隔を効果的に画定することができる。又は、心拡張期の任意の部分を含むようにシネサブシーケンスが配置されていれば、操作者やMRIシステムは、他の時間間隔を、例えばMRIシステムに定義された初期設定値に画定することもできる。また、実施形態においては、操作者やMRIシステムは、インバージョンパルスA及びBの両方又は一方の使用や不使用についても、選択又は事前設定することができる。実施形態に係るMRIシステムは、領域非選択インバージョンパルスA及び領域選択インバージョンパルスBを用いた場合、選択的にマーク付け、すなわち標識化された血液の心筋への流入を描出することが可能になる。
【0031】
図3は、実施形態に係るMRIシステムにおいて実行されるコンピュータプログラムコードの処理手順を示すフローチャートである。まず、MRIシステムは、操作者やMRIシステムによるパラメータ設定の入力が完了したかを判定する(ステップS01)。例えば、操作者入力は、GUI(Graphical User Interface)300に示される通りである。例えば、実施形態において、操作者は、時間間隔D1、D2、D3、及びD4のうちのいくつかを、ステップS01にて選択することができる。なお、操作者は、これらの時間間隔のうち、1つ、2つ、又は3つのみを選択し、MRIシステムが、残りの時間間隔を決定してもよい。また、全体の時間間隔の長さが既知であり、且つ、n個の時間間隔が存在する場合、操作者やMRIシステムは、n−1個の時間間隔を画定する。操作者やMRIシステムは、インバージョンパルスA及びBに対するタグ付けの事前設定を、必要に応じて独立に画定することができる(すなわち、操作者やMRIシステムは、インバージョンパルスA及びBそれぞれのオン/オフを事前に設定することができる)。操作者やMRIシステムは、オン/オフ交互手法についても、画定することができる。操作者やMRIシステムは、タグ付け位置を二者択一的に選択することができるように(例えば、ROIの上流部分、又は、ROIの内側部分)、フローインモード又はフローアウトモードを二者択一的に選択することができる。これらのパルスシーケンスのパラメータの全部又は一部は、好適なGUIによって、操作者選択又はMRIシステム選択の両方又は一方が可能である。
【0032】
ステップS01においてパルスシーケンスのパラメータが画定されると(ステップS01肯定)、MRIシステムは、シネサブシーケンスが組み込まれたtime−SLIPシーケンスを、MRデータを収集するように実行する(ステップS02)。シネサブシーケンスとして使用するための好適なシネシーケンスは、それ自体公知である。例えば、米国特許出願第2008/0061780A1号(2007年9月10日出願、2008年3月13日公開)、及び、第12/722、875号(2010年3月12日出願)の一方又は両方を参照されたい。そのようなシネシーケンスはまた、セグメント化されたシネシーケンスと呼ばれてもよい(例えば、そのようなシネシーケンスは、少なくともk空間にセグメント化される場合があるからである)。
【0033】
続いて、MRIシステムは、好適な画像再構成処理を実行する(ステップS03)。この画像再構成処理には、画像間の位置合わせと、位置合わせ後の画像の減算処理が含まれる。そして、実施形態に係るMRIシステムは、収集したシネ画像フレームを、図4に示すように表示する。図4から明らかであるように、連続したシネ画像フレームのうちのフレーム4が最も鮮明である。従って、操作者又はMRIシステムは、そのフレームに対応して関連付けられたBBTl時間を、適切なBBTI時間として特定することができる。適切なシネ画像フレーム、及び対応するBBTl時間についての特定はまた、(図3のステップS04に示されているように)操作者に画像を表示することなく、好適にプログラムされたコンピュータ処理によっても実行可能である。ステップS05において、MRIシステムは、操作者やMRIシステムによって、許容可能な適切なBBTI時間が特定されたかを判定する(ステップS05)。特定されていない場合(ステップS05否定)、MRIシステムは、操作者やMRIシステムによるパラメータ設定の入力のために、再び、ステップS01に戻る。
【0034】
一方、適切な画像やBBTI時間が特定された場合(ステップS05肯定)、MRIシステムは、特定されたこのBBTI時間を用いて(例えば、マルチスライスデータ収集サイクルの連続する3Dの使用が望まれるであろう)time−SLlPシーケンスによるMRA画像を再び収集するという操作者やMRIシステムによる指示があるか否かを判定する(ステップS06)。time−SLlPシーケンスによるMRA画像を収集すると判定した場合(ステップS06肯定)、MRIシステムは、ステップS05において特定した適切なBBTI値を含む、選択したパラメータを用いて、time−SLIPシーケンスを実行する(ステップS07)。続いて、MRIシステムは、ステップS07において収集されたMRデータに対して、必要とされる画像の減算処理を含み、且つ、周知の好適な画像位置合わせを用いる、画像再構成を実行する(ステップS08)。ステップS06において、time−SLlPシーケンスによるMRA画像を収集しないと判定された場合(ステップS06否定)、MRIシステムは、(事実上、既に特定された適切なBBTI値を用いている)事前に選択されたシネ画像フレームを、最終的な出力画像として出力する(ステップS09)。
【0035】
最終的な出力画像が、選択されたシネ画像フレームであろうと、図3のステップS08において得られた、適切なBBTI値を用いて新しいtime−SLIPシーケンスで収集されたMRA画像であろうと、MRIシステムは、適切なtime−SLIPシーケンスのMRA画像を、更に処理する。あるいは、MRIシステムは、適切なtime−SLIPシーケンスのMRA画像を、格納及び表示、並びに、何か他の又は遠隔の施設/工程/システムへの転送/エキスポートのすべて又はいずれかを行う(例えば、MRIシステムは、当業者には既に周知の手順によって、様々な組織部位に向けて心筋の血流を好適に定量化できるように、一方の画像のピクセル値の大きさを、別の画像の対応するピクセル値の大きさから減算すること、及び、一方の画像の複素数値ピクセルを、別の画像の対応する複素数値ピクセルから減算することの、一方又は両方のような、ピクセル毎の減算画像処理を行う)。
【0036】
さて、以下では、上述した実施形態に係るMRIシステムについて、改めて説明する。実施形態に係るMRIシステムは、第1撮像実行部と、特定部と、第2撮像実行部とを備える。第1撮像実行部は、被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、所定の期間中、心筋を含む撮像領域をk空間のセグメント毎に連続撮像する。この結果、第1撮像実行部は、標識化からデータ収集までの時間が異なる複数のMRデータを非造影で収集する。また、特定部は、第1撮像実行部によって収集された複数のMRデータに基づいて、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定する。また、第2撮像実行部は、特定部によって特定された時間をパルスシーケンスの該当パラメータに設定する。そして、第2撮像実行部は、被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、心筋を含む撮像領域を撮像することにより、MRデータを非造影で収集する。第1撮像実行部、特定部、及び第2撮像実行部は、例えば、図1に示したMRIシステム制御部22内に備えられ(図示を省略)、MRIシステムの各部を制御することにより、上述した各種機能を実現する。
【0037】
各部の機能について、具体例を挙げつつ詳細に説明する。まず、第1撮像実行部は、例えば、セグメント化されたシネサブシーケンスが組み込まれた、time−SLIPシーケンスを実行する。図5は、実施形態に係るtime−SLIPシーケンスを説明するための図である。図5に示すように、第1撮像実行部は、被検体の心位相に関するトリガ(例えば、R波)から所定の遅延時間経過した後、インバージョンパルスA及びB(又は、インバージョンパルスBのみ)を印加する。
【0038】
続いて、第1撮像実行部は、所定の期間中(図5において、『シネサブシーケンス』の四角で示す)、例えば、セグメントk−space法によるシネサブシーケンスを実行する。このセグメントk−space法は、k空間を複数のセグメントに分割し、セグメント毎に順次k空間データを収集するデータ収集法である。例えば、図5に示すように、k空間が3セグメントに分割されたとする。第1撮像実行部は、ある心拍において、セグメント1について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。ここで収集されるMRデータは、図5に示すように、シネ画像#1〜#6のそれぞれに対応するセグメント1のk空間データである。また、第1撮像実行部は、別の心拍において、セグメント2について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。更に、第1撮像実行部は、別の心拍において、セグメント3について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。このように、第1撮像実行部は、複数の心拍にわたり、全セグメント分、且つ、BBTI時間が異なる複数の心時相分のMRデータを収集する。なお、実施形態において、第1撮像実行部は、被検体の心周期のうち、心拡張期を含む所定の期間、連続撮像する。
【0039】
次に、特定部は、第1撮像実行部によって収集された複数のMRデータに基づいて、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定する。ここで、特定部による特定処理には、いくつかの手法が考えられる。なお、以下に説明する手法1〜3は一例に過ぎない。
【0040】
まず、手法1において、例えば、特定部は、収集された複数のMRデータから複数のMRA(Magnetic Resonance Angiography)画像を生成する。すなわち、特定部は、セグメント毎に収集された、BBTI時間が異なる複数のMRデータを、BBTI値毎に集約して再構成し、BBTI時間が異なる複数のMRA画像を生成する。この場合、特定部は、複数の心拍にまたがって収集されたMRデータを1枚のMRA画像に集約することになるので、位置合わせを行うことが望ましい。そして、特定部は、生成した複数のMRA画像を表示部24に出力し、所定のMRA画像を指定する入力を操作者から受け付ける。
【0041】
図6は、実施形態に係るシネ画像を説明するための図である。例えば、特定部は、図6に示すように、BBTI時間が異なる複数のMRA画像(シネ画像#1〜#6)を表示部24に出力する。すると、操作者は、例えば、シネ画像#4が適切なMRA画像であると判断し、シネ画像#4を指定する入力を行う。特定部は、この入力を受け付け、指定されたMRA画像に対応するBBTI時間(BBTI=T0+3Δ)を、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間として特定する。なお、ここでいう「撮像領域内の所定位置」とは、例えば、診断を行う医師等が実際に観察したいと考える位置などのことであり、任意に設定することが可能である。
【0042】
また、手法2において、例えば、特定部は、収集された複数のMRデータの信号値を解析し、解析した信号値の解析結果に基づいて、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を自動的に特定する。例えば、特定部は、BBTI時間が異なる複数のMRA画像を生成した後、MRA画像毎に、MRA画像内のある領域(例えば、撮像領域内の所定位置に対応する)について信号値を解析する。そして、特定部は、この領域の信号値が最も高い画像(又は、最も低い画像)を判定し、この画像に対応するBBTI時間を、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間として特定する。
【0043】
また、手法3において、例えば、特定部は、収集された複数のMRデータの信号値を解析し、解析した信号値の解析結果を表示部24に出力する。例えば、特定部は、BBTI時間が異なる複数のMRA画像を生成した後、MRA画像毎に、MRA画像内のある領域(例えば、撮像領域内の所定位置に対応する)について信号値を解析する。そして、特定部は、この信号値の推移を示すグラフを、対応するMRA画像のインデックスとともに表示部24に出力する。すると、操作者は、例えば、このグラフ上で、信号値が最も高いMRA画像を指定する入力を行う。特定部は、この入力を受け付け、指定されたMRA画像に対応するBBTI時間を、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間として特定する。
【0044】
こうして、標識化された血液が撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間が特定されると、第2撮像実行部は、特定部によって特定された時間を、パルスシーケンスの該当パラメータに設定する。例えば、第2撮像実行部は、シネサブシーケンスが組み込まれていない、通常のtime−SLIPシーケンスのパラメータであるBBTI値に、特定部によって特定された時間を設定する。そして、第2撮像実行部は、このtime−SLIPシーケンスを実行し、MRデータを収集する。なお、例えば、第1撮像実行部は2次元のMRデータを収集し、第2撮像実行部は3次元のMRデータを収集する。
【0045】
このように、実施形態に係るMRIシステムは、第2撮像実行部による撮像に適切なパラメータ(BBTI値)を適用するために、第1撮像実行部による撮像を行う。この点、上述した実施形態においては、第1撮像実行部による撮像の時間分解能が高いことから、より適切なパラメータ(BBTI値)を選択し、第2撮像実行部による撮像に適用することができる。すなわち、上述した実施形態においては、第1撮像実行部が、セグメント化されたシネサブシーケンスによってMRデータを収集するので、撮像の時間分解能が高い。数msec〜数十msecオーダのサーキュレーションを行うことが可能である。
【0046】
なお、実施形態に係るMRIシステムは、この第1撮像実行部によって実行されるtime−SLIPシーケンスに関する様々なパラメータを、操作者による設定を受け付ける、あるいは、MRIシステム内で自動的に決定するなどする。すなわち、実施形態に係るMRIシステムは、所定の期間に関するパラメータの設定を受け付ける受付部を更に備え、第1撮像実行部は、受け付けられたパラメータの設定に従って、所定の期間をパルスシーケンスの時間軸上に位置付け、連続撮像を実行する。受付部は、例えば、図1に示したMRIシステム制御部22内に備えられる(図示を省略)。
【0047】
例えば、受付部は、図2を用いて説明した、D1、D2、D3、及びD4のうち、少なくとも1つの設定を受け付ける。図2に示すように、D1は、被検体の心位相に関するトリガ(R波)から最初のRFパルス(インバージョンパルスA又はインバージョンパルスB)を印加するまでの時間である。また、D2は、所定の期間の継続時間である。また、D3は、所定の期間の終点から後段のサイクルの始点までの時間である。また、D4は、最初のRFパルス(インバージョンパルスA又はインバージョンパルスB)から所定の期間の始点までの時間である。
【0048】
ここで、D3を設定する意味を説明すると、図5に示すように、第1撮像実行部によって実行されるtime−SLIPシーケンスは、その内部において、所定の期間(図5において、『シネサブシーケンス』の四角で示す)を含むサイクルを繰り返し実行するものである。そして、後述するように、1つのMRA画像は、各サイクルで収集された各セグメントを集約して生成される。ここで、被検体の心周期は必ずしも一定であるとは限らないので、被検体の心位相に関するトリガ(例えば、R波)からの経過時間のみを基準として各セグメントのMRデータを収集すると、例えば、セグメント間で、縦磁化成分の回復にばらつきが生じ得る。すると、各セグメントを集約して生成されるMRA画像の画質も低下することになる。そこで、実施形態においては、例えば、回復時間として確保すべきD3を設定する(あるいは、インバージョンパルスを印加してからの経過時間として設定してもよい)。そして、例えば、第1撮像実行部は、このD3を確保できないうちに次のR波が検知された場合には、MRデータの収集を行わずに次のサイクルまで待機する。一方、第1撮像実行部は、このD3を確保した後に次のR波が検知された場合には、MRデータの収集を行う。
【0049】
次に、図7は、実施形態に係るtime−SLIPシーケンスの他の例を説明するための図である。例えば、第1撮像実行部は、図7に示すように、インバージョンパルスのオン/オフを交互に行ってもよい。この場合、第1撮像実行部は、ある心拍においてインバージョンパルスを印加した上で、セグメント1について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。ここで収集されるMRデータは、図5に示した場合と同様に、シネ画像#1〜#6のそれぞれに対応するセグメント1のk空間データである。続いて、第1撮像実行部は、別の心拍においてインバージョンパルスを印加することなく、同じセグメント1について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。その後、第1撮像実行部は、別の心拍において今度はインバージョンパルスを印加し、セグメント2について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。このように、第1撮像実行部は、インバージョンパルスを印加する収集と印加しない収集とを交互に行ってもよい。
【0050】
なお、インバージョンパルスを印加する収集と印加しない収集との関係について説明を補足すると、図7の例においては、第1R波から、インバージョンパルスを印加してセグメント1について収集するシネサブシーケンスaの開始点までの時間と、第4R波から、インバージョンパルスを印加せずにセグメント1について収集するシネサブシーケンスbの開始点までの時間とが、同じである(図7においてd100)。しかしながら、実施形態はこれに限られるものではない。シネサブシーケンスbはインバージョンパルスを印加しない(第4R波と第5R波との間でインバージョンパルスを印加しない)ので、例えば、第2R波からシネサブシーケンスaの開始点までの時間と、第4R波からシネサブシーケンスbの開始点までの時間とが同じになるように(図7においてd200)してもよい。すなわち、この場合、シネサブシーケンスbは、第4R波からd200時間経過後に開始される。
【0051】
なお、実施形態は、インバージョンパルスを印加する収集と印加しない収集とを交互に行う手法に限られるものではない。例えば、1画像分、インバージョンパルスを印加しない収集をまとめて行い、その後、インバージョンパルスを印加する収集を連続して行ってもよい。例えば、セグメント1〜3についてインバージョンパルスを印加しない収集を行った後に、各セグメントについて、インバージョンパルスを印加する収集を連続して行ってもよい。また、1画像分のインバージョンパルスを印加しない収集は、最初に限られず、任意のタイミング(中間のタイミングや、最後など)で行われればよい。
【0052】
次に、図8は、実施形態に係るtime−SLIPシーケンスの他の例を説明するための図である。例えば、第1撮像実行部は、図8に示すように、BBTI時間が異なる複数の3次元データを収集してもよい。例えば、第1撮像実行部は、ある心拍において、3次元データの1セグメントであるスライスエンコード1について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。また、第1撮像実行部は、別の心拍において、スライスエンコード2について、BBTI時間が異なる複数のMRデータを収集する。図8においては図示を適宜省略するが、このように、第1撮像実行部は、複数の心拍にわたり、全スライスエンコード分、且つ、BBTI時間が異なる複数の心時相分のMRデータを収集する。
【0053】
更に、以下では、実施形態における標識化領域と撮像領域との関係を説明しておく。図9A及び9Bは、実施形態における標識化領域と撮像領域との関係を説明するための図である。
【0054】
図9Aは、フローイン(flow-in)血管造影法を説明するための図である。実施形態において、フローイン(flow-in)血管造影法の場合、領域非選択インバージョンパルスであるインバージョンパルスAは印加されず、領域選択インバージョンパルスであるインバージョンパルスBのみが印加される。インバージョンパルスBは、撮像領域とは独立に、撮像領域外に設定された、標識化領域に印加される。標識化領域は、図9Aに示すように、心筋の上流に位置付けられる大動脈に設定される。標識化領域にインバージョンパルスBが印加されることにより、標識化領域内の血液の縦磁化成分は反転する。こうして、標識化領域内の血液が標識化され、撮像領域内において、BBTI時間後に血液が到達した部分の信号値は低くなる。
【0055】
図9Bは、フローアウト(flow-out)血管造影法を説明するための図である。実施形態において、フローアウト(flow-out)血管造影法の場合、領域非選択インバージョンパルスであるインバージョンパルスA、及び、領域選択インバージョンパルスであるインバージョンパルスBの両方が印加される。インバージョンパルスAは、撮像領域全体に印加される。撮像領域全体にインバージョンパルスAが印加されることにより、撮像領域内の心筋及び血液の縦磁化成分は反転する。続いて、インバージョンパルスBは、撮像領域とは独立に、撮像領域内に設定された標識化領域に印加される。標識化領域は、図9Bに示すように、心筋の上流に位置付けられる大動脈に設定される。標識化領域にインバージョンパルスBが印加されることにより、標識化領域内の血液の縦磁化成分は、インバージョンパルスAとインバージョンパルスBとの間の時間分だけ回復した後に、選択的に反転する。こうして、標識化領域内の血液が標識化され、撮像領域内において、BBTI時間後に血液が到達した部分の信号値は高くなる。
【0056】
なお、フローイン(flow-in)血管造影法及びフローアウト(flow-out)血管造影法の定義は上述に限られるものではなく、定義の仕方によっては、その逆の名称や他の名称で呼ばれてもよい。また、撮像領域や標識化領域の設定も、撮像目的等に応じて任意に変更することが可能である。更に、応用例として、標識化の手法は、例えば、インバージョンパルスを連続的に照射するpCASL(Pulsed Continuous Arterial Spin Labeling)法でもよい。
【0057】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁気共鳴イメージング装置及び磁気共鳴イメージング方法によれば、心筋組織の血流画像を適切に収集することが可能になる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
8 電極
9 被検体
10 架台
11 被検体テーブル
12 静磁場B0磁石
14 Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット
16 RFコイルアセンブリ
18 撮像ボリューム
20 システム構成要素
22 MRIシステム制御部
24 表示部
26 キーボード/マウス
28 プリンタ
30 MRIシーケンス制御部
32 Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ
34 RF送信部
36 送信/受信スイッチ
38 MRIデータ取得プログラムコード構造
40 RF受信部
42 MRIデータ処理部
44 画像再構成プログラムコード構造
46 MR画像記憶部
50 プログラム/データ格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRF(Radio Frequency)パルスを印加した後、所定の期間中、前記心筋を含む撮像領域をk空間のセグメント毎に連続撮像することにより、標識化からデータ収集までの時間が異なる複数のMR(Magnetic Resonance)データを非造影で収集する第1撮像実行部と、
収集された複数のMRデータに基づいて、標識化された血液が前記撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定する特定部と、
特定された時間をパルスシーケンスの該当パラメータに設定し、前記被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、前記心筋を含む撮像領域を撮像することにより、MRデータを非造影で収集する第2撮像実行部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記所定の期間に関するパラメータの設定を受け付ける受付部を更に備え、
前記第1撮像実行部は、受け付けられたパラメータの設定に従って、前記所定の期間をパルスシーケンスの時間軸上に位置付け、前記連続撮像を実行することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第1撮像実行部は、前記パルスシーケンス内において、前記所定の期間を含むサイクルを繰り返し実行するものであって、
前記受付部は、前記所定の期間に関するパラメータとして、前記被検体の心位相に関するトリガから最初のRFパルスを印加するまでの第1時間、前記所定の期間の継続時間である第2時間、前記所定の期間の終点から後段のサイクルの始点までの第3時間、及び、前記最初のRFパルスから前記所定の期間の始点までの第4時間のうち、少なくとも1つの設定を受け付けることを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記第1撮像実行部は、前記被検体の心周期のうち、心拡張期を含む所定の期間、前記心筋を含む撮像領域を連続撮像することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1撮像実行部は、2次元のMRデータを収集し、
前記第2撮像実行部は、3次元のMRデータを収集することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記特定部は、収集された複数のMRデータから生成した複数のMRA(Magnetic Resonance Angiography)画像を表示部に出力し、所定のMRA画像を指定する入力を操作者から受け付けることで、指定された該MRA画像に対応する時間であって標識化からデータ収集までの時間を、標識化された血液が前記撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間として特定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記特定部は、収集された複数のMRデータから複数のMRA画像を生成する場合に、位置合わせを行うことを特徴とする請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記特定部は、収集された複数のMRデータから解析した信号値の解析結果に基づいて、標識化された血液が前記撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記特定部は、収集された複数のMRデータから解析した信号値の解析結果を表示部に出力し、解析結果に対する入力を操作者から受け付けることで、標識化された血液が前記撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
磁気共鳴イメージング装置で実行される磁気共鳴イメージング方法であって、
被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、所定の期間中、前記心筋を含む撮像領域をk空間のセグメント毎に連続撮像することにより、標識化からデータ収集までの時間が異なる複数のMRデータを非造影で収集する第1撮像実行工程と、
収集された複数のMRデータに基づいて、標識化された血液が前記撮像領域内の所定位置に到達するまでの時間を特定する特定工程と、
特定された時間をパルスシーケンスの該当パラメータに設定し、前記被検体の心筋に流入する血液に標識化のためのRFパルスを印加した後、前記心筋を含む撮像領域を撮像することにより、MRデータを非造影で収集する第2撮像実行工程と
を含んだことを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−105982(P2012−105982A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250110(P2011−250110)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】