説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】MRI装置が稼働していない間に消費される電力量を抑えつつ、機器に生じる結露を防ぐ。
【解決手段】冷却水分配部11が、MRI装置100の電源がオンである間は、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水を配給する。また、冷却水分配部11は、MRI装置100の電源がオンからオフに変わった場合に、冷却水分配部11は、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を撮像する装置である。かかるMRI装置は、撮像領域に静磁場を発生させる静磁場磁石や、静磁場内に置かれた被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイル、被検体に高周波パルスを印加する高周波コイルなど、被検体内を撮像するために必要な各種の機器を備える。これらの機器の中には、運転中に発熱するため冷却が必要なものもある。そのため、従来、MRI装置が備える機器に冷却水などの冷媒を循環させることで、各機器を冷却する冷却技術があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、ここでいう冷却が必要な機器の中には、常時冷却が必要なものと、MRI装置が稼動している間のみ冷却が必要なものとがある。常時冷却が必要な機器とは、例えば、MRI装置が稼働していない間も運転を続ける機器である。このような機器の例としては、静磁場磁石として用いられる超伝導磁石の冷媒(液体ヘリウムなど)を冷却するための冷凍機などがある。一方、MRI装置が稼働している間のみ冷却が必要な機器とは、例えば、MRI装置が稼働していない間は運転が停止される機器である。このような機器の例としては、傾斜磁場コイルや傾斜磁場電源などがある。
【0004】
しかし、前述した冷却技術では、MRI装置の稼働状態に関わらず、冷却対象である全ての機器に冷媒を循環させるものが一般的である。したがって、MRI装置が稼働していない間は、運転が停止している機器、すなわち冷却が不要な機器にも冷却水が循環されることになる。この結果、例えば夜間などにMRI装置が設置された部屋の室温と冷却水の水温との差が大きくなった場合に、運転が停止している機器に結露が生じてしまう可能性があった。
【0005】
結露は、機器の故障を招く重大な原因となりうることが知られている。そのため、例えば、MRI装置が稼働していない間は、エアコンなどの空調機器を運転することで、MRI装置が設置された部屋の室温が結露を生じない温度になるように調整されていた。さらに、空調機器の故障に備えて、冷媒が循環される機器を温めることで結露を防止する結露防止用システムが用いられる場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−240765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術では、MRI装置が稼働していない間に、前述した空調機器や結露防止用システムを運転するために電力が消費される。これに対し、MRI装置の利用者からは、省エネのため、MRI装置が稼働していない間に消費される電力量を抑えたいという要望があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、MRI装置が稼働していない間に消費される電力量を抑えつつ、機器に生じる結露を防ぐことが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、磁気共鳴イメージング装置が、常時冷却が必要な第1の機器と、装置が稼動している間のみ冷却が必要な第2の機器と、冷媒供給手段により供給される冷媒を前記第1の機器及び前記第2の機器に分配する冷媒分配手段とを備え、前記冷媒分配手段は、装置の電源がオンである間は前記第1の機器及び前記第2の機器それぞれに冷媒を配給し、前記電源がオンからオフに変わった場合に、前記第2の機器への冷媒の配給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、MRI装置が稼働していない間に消費される電力量を抑えつつ、機器に生じる結露を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施例1に係るMRI装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本実施例1に係る冷却水分配部の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本実施例1に係る冷却水分配部における流路の切り替えを説明するための図(1)である。
【図4】図4は、本実施例1に係る冷却水分配部における流路の切り替えを説明するための図(2)である。
【図5】図5は、本実施例1に係る冷却水分配部の動作手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施例2に係る冷却水分配部の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、本実施例2に係る冷却水分配部における流路の切り替えを説明するための図(1)である。
【図8】図8は、本実施例2に係る冷却水分配部における流路の切り替えを説明するための図(2)である。
【図9】図9は、本実施例2に係る冷却水分配部の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るMRI装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、MRI装置が備える各機器を冷却するための冷媒として、冷却水が用いられる場合について説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、本実施例1に係るMRI装置100の構成について説明する。図1は、本実施例1に係るMRI装置100の構成を示す構成図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、高周波コイル3、天板4、傾斜磁場電源5、送信部6、受信部7、シーケンス制御装置8、計算機システム9、冷凍機10、冷却水分配部11及び冷却水供給装置12を有する。
【0014】
例えば、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、高周波コイル3、天板4は、撮影室に設置される。また、例えば、傾斜磁場電源5、送信部6、受信部7、シーケンス制御装置8、計算機システム9、冷凍機10及び冷却水分配部11は、コンピュータ室に設置される。また、例えば、冷却水供給装置12は、屋外に設置される。
【0015】
静磁場磁石1は、被検体Pが置かれる撮像領域に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、真空容器1a、冷媒容器1b及び超電導コイル1cを有する。真空容器1aは、概略円筒形状に形成されており、円筒壁内が真空状態に保たれる。この真空容器1aの内側に形成された空間が、被検体Pが置かれる撮像領域となる。冷媒容器1bは、概略円筒形状に形成されており、真空容器1aの円筒壁内に収納される。なお、一般的な例としては、冷媒容器1bは、容器内を十分に低温な状態に保つため、円筒壁内に冷媒として液体ヘリウムを収容する。超電導コイル1cは、冷媒容器1bの円筒壁内に配置され、液体ヘリウムに浸漬される。この超電導コイル1cは、真空容器1aの内側にある撮像領域に静磁場を発生させる。
【0016】
傾斜磁場コイル2は、概略円筒形状に形成され、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、傾斜磁場電源5から供給される電流により、撮像領域に設定されたX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を発生させる。かかる傾斜磁場コイル2は、スキャンの実行中にパルス電流が繰り返し供給されるため発熱する。
【0017】
高周波コイル3は、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。この高周波コイル3は、撮像領域に置かれた被検体Pに対して、送信部6から送信される高周波パルスを照射する。また高周波コイル3は、高周波パルスによる水素原子核の励起によって被検体Pから放出される磁気共鳴信号を受信する。
【0018】
天板4は、図示していない寝台によって支持される。また、天板4は、撮影時には被検体Pが載置され、被検体Pとともに撮像領域内へ移動される。
【0019】
傾斜磁場電源5は、シーケンス制御装置8からの指示に基づいて、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。この傾斜磁場電源5は、スキャンの実行中に発熱する。
【0020】
送信部6は、シーケンス制御装置8からの指示に基づいて、高周波コイル3に高周波パルスを送信する。かかる送信部6は、高周波コイル3に送信する高周波パルスを発生させるための高周波電源を有する。この高周波電源は、スキャンの実行中に発熱する。
【0021】
受信部7は、高周波コイル3によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化することで生データを生成する。そして、受信部7は、生成した生データをシーケンス制御装置8に送信する。
【0022】
シーケンス制御装置8は、計算機システム9による制御のもと、傾斜磁場電源5、送信部6及び受信部7をそれぞれ駆動することによって被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御装置8は、スキャンを行った結果として受信部7から生データが送信されると、その生データを計算機システム9に送信する。
【0023】
計算機システム9は、操作者によって行われる操作に基づいてMRI装置100全体を制御する。例えば、計算機システム9は、入力部、表示部、シーケンス制御部、画像再構成部、記憶部、表示部、主制御部などを有する。入力部は、操作者から各種入力を受け付ける。表示部は、被検体の画像を含む各種情報を表示する。シーケンス制御部は、操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス制御装置8にスキャンを実行させる。画像再構成部は、シーケンス制御装置8から送信された生データに基づいて被検体Pの画像を再構成する。記憶部は、再構成された画像などを記憶する。主制御部は、操作者からの指示に基づいて各機能部の動作を制御する。
【0024】
冷凍機10は、静磁場磁石1内の超伝導コイル1cを冷却する。一般的な例としては、冷凍機10は、静磁場磁石1に充填された液体ヘリウムを介して超伝導コイル1cを冷却する。この冷凍機10は、静磁場磁石1が常に超伝導の状態に保たれるように、MRI装置100が稼働していない間も常時運転を続ける。
【0025】
冷却水分配部11は、冷却水供給装置12により供給される冷却水を冷却が必要な各機器に分配する。例えば、冷却水分配部11は、冷却水供給装置12から冷却水が送られると、その冷却水を冷却が必要な各機器に設けられた冷却管それぞれに配給する。また、冷却水分配部11は、各機器を循環した冷却水が各機器から戻されると、その冷却水を冷却水供給装置12に送る。なお、かかる冷却水分配部11については後に詳細に説明する。
【0026】
冷却水供給装置12は、冷却水分配部11に冷却水を供給する。例えば、冷却水供給装置12は、所定の温度に調整された冷却水を冷却水分配部11に送る。また、冷却水供給装置12は、冷却水分配部11から冷却水が戻されると、その冷却水を所定の温度に冷却したうえで冷却水分配部11に送る。
【0027】
ここで、上述した各機器の中には、常時冷却が必要な機器(第1の機器)と、MRI装置100が稼動している間のみ冷却が必要な機器(第2の機器)とが含まれる。例えば、冷凍機10は、MRI装置100が稼働していない間も運転を続けるため、常時冷却が必要である。また、例えば、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6は、MRI装置100が稼働していない間は運転が停止されるため、MRI装置100が稼働している間のみ冷却が必要である。かかる冷却が必要な各機器には、それぞれ、冷却水分配部11から送られる冷却水を機器に循環させるための冷却管が設けられる。
【0028】
そして、このような構成のもと、本実施例1では、冷却水分配部11が、MRI装置100の電源がオンである間は、冷却が必要な各機器に冷却水を配給する。また、冷却水分配部11は、MRI装置100の電源がオンからオフに変わった場合に、MRI装置100が稼働している間のみ冷却が必要な機器への冷却水の配給を停止する。
【0029】
すなわち、本実施例1では、MRI装置100が稼働していない間は、常時冷却が必要な機器のみに冷却水が循環され、運転が停止している機器すなわち冷却が不要な機器には冷却水が循環されない。このため、例えば夜間などにMRI装置100が設置された部屋の室温と冷却水の水温との差が大きくなった場合でも、運転が停止している機器に結露が生じない。このことから、MRI装置100が稼働していない間に、空調機器や結露防止用システムを運転させる必要がなくなる。したがって、本実施例1によれば、MRI装置100が稼働していない間に消費される電力量を抑えつつ、機器に生じる結露を防ぐことが可能になる。
【0030】
以下では、冷却水分配部11による各機器の冷却について詳細に説明する。なお、本実施例1では、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6が冷却される場合について説明する。
【0031】
まず、本実施例1に係る冷却水分配部11の構成について説明する。図2は、本実施例1に係る冷却水分配部11の構成を示すブロック図である。また、図3及び4は、本実施例1に係る冷却水分配部11における流路の切り替えを説明するための図である。
【0032】
図2に示すように、冷却水分配部11は、制御端子11aを介して計算機システム9に接続される。また、計算機システム9と制御端子11aとの間には、絶縁トランス13が挿入される。
【0033】
絶縁トランス13は、冷却水分配部11と計算機システム9とを絶縁する。このように、絶縁トランス13が冷却水分配部11と計算機システム9とを絶縁することによって、水漏れ等により冷却水分配部11に漏電が発生した場合でも、漏れた電流が計算機システム9に流れず、計算機システム9が安全な状態に保たれる。
【0034】
計算機システム9は、MRI装置100の電源を制御するとともに、その電源の状態を冷却水分配部11に伝達する。例えば、計算機システム9は、操作者によってMRI装置100の電源をオフにする操作が行われた場合に、MRI装置100が稼働していない間も運転を続ける必要がある機器を除いて、MRI装置100が備える各機器への電源供給が停止するよう制御する。
【0035】
また、計算機システム9は、操作者によってMRI装置100の電源をオンにする操作が行われた後は、制御端子11aに電流を供給することで、MRI装置の電源がオンであることを冷却水分配部11に伝達する。また、計算機システム9は、操作者によってMRI装置100の電源をオフにする操作が行われた後は、制御端子11aへの電流供給を停止することで、MRI装置100の電源がオフであることを冷却水分配部11に伝達する。
【0036】
冷却水分配部11は、計算機システム9から制御端子11aに電流が供給されている間は、冷却が必要な各機器に冷却水を配給する。また、冷却水分配部11は、計算機システム9から電流が供給されなくなった場合に、MRI装置100が稼働している間のみ冷却が必要な機器への冷却水の配給を停止する。
【0037】
例えば、図2に示すように、冷却水分配部11は、カプラ11b〜11k、バルブ11l〜11u、第1電磁弁11v、第2電磁弁11w及び流量調節バルブ11xを有する。そして、冷却水分配部11内には、以下で説明するように冷却水を流通させる複数の流路が設けられている。
【0038】
まず、冷却水供給装置12から送られる冷却水は、カプラ11bを介して冷却水分配部11に流入し、バルブ11lに送られる。バルブ11lを通った冷却水は、バルブ11m、第1電磁弁11v及び第2電磁弁11wそれぞれに送られる。バルブ11mを通った冷却水は、カプラ11cを介して冷凍機10へ送られる。
【0039】
第1電磁弁11vを通った冷却水は、バルブ11n、11o及び11pそれぞれに送られる。バルブ11nを通った冷却水は、カプラ11dを介して傾斜磁場コイル2へ送られる。バルブ11oを通った冷却水は、カプラ11eを介して傾斜磁場電源5へ送られる。バルブ11pを通った冷却水は、カプラ11fを介して送信部6へ送られる。第2電磁弁11wを通った冷却水は、流量調節バルブ11xを通って、バルブ11uに送られる。
【0040】
一方、冷凍機10から送られる冷却水は、カプラ11gを介して冷却水分配部11に流入し、バルブ11qに送られる。傾斜磁場コイル2から送られる冷却水は、カプラ11hを介して冷却水分配部11に流入し、バルブ11rに送られる。傾斜磁場電源5から送られる冷却水は、カプラ11iを介して冷却水分配部11に流入し、バルブ11sに送られる。送信部6から送られる冷却水は、カプラ11jを介して冷却水分配部11に流入し、バルブ11tに送られる。
【0041】
バルブ11q、11r、11s及び11tそれぞれを通った冷却水は、それぞれバルブ11uに送られる。バルブ11uを通った冷却水は、カプラ11kを介して冷却水供給装置12へ送られる。
【0042】
ここで、バルブ11lは、冷却水供給装置12から送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11mは、冷凍機10へ送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11nは、傾斜磁場コイル2へ送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11oは、傾斜磁場電源5へ送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11pは、送信部6へ送られる冷却水の流量を調節する。
【0043】
バルブ11qは、冷凍機10から送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11rは、傾斜磁場コイル2から送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11sは、傾斜磁場電源5から送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11tは、送信部6から送られる冷却水の流量を調節する。バルブ11uは、冷却水供給装置12へ送られる冷却水の流量を調節する。
【0044】
そして、第1電磁弁11vは、計算機システム9から電流が供給されると流路を開放し、計算機システム9からの電流供給が停止すると流露を閉塞する。一方、第2電磁弁11wは、第1の電磁弁11vとは逆に、計算機システム9から電流が供給されると流路を閉塞し、計算機システム9からの電流供給が停止すると流露を開放する。
【0045】
つまり、計算機システム9から電流が供給されている場合には、第1電磁弁11vが流路を開放し、第2電磁弁11wが流路を閉塞する。この結果、図3に示すように、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水が配給されるようになる。一方、計算機システム9からの電流供給が停止した場合には、第1電磁弁11vが流路を閉塞し、第2電磁弁11wが流路を開放する。この結果、図4に示すように、冷凍機10のみに冷却水が配給され、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6には冷却水が配給されないようになる。
【0046】
すなわち、第1電磁弁11v及び第2電磁弁11wは、計算機システム9から制御端子11aに電流が供給されている間は、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水を配給するよう動作する。また、第1電磁弁11v及び第2電磁弁11wは、計算機システム9から電流が供給されなくなった場合に、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給を停止するよう動作する。
【0047】
なお、流量調節バルブ11xは、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給が停止される前後で冷凍機10に配給される冷却水の流量が概略一定に保たれるように、冷凍機10に配給される冷却水の流量を調節する。すなわち、流量調節バルブ11xに流れる冷却水の流量は、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給が停止される前に傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれへ送られる冷却水の流量の合計と同じになるようにあらかじめ調整される。
【0048】
このように、流量調節バルブ11xが冷凍機10に配給される冷却水の流量を調節することによって、冷凍機10へ冷却水が過度に送られるのを防ぐことができる。これにより、冷却水分配部11と冷凍機10との間に設けられる配管の内壁や、冷凍機10に設けられる冷却管の内壁が冷却水によって削り取られる現象を防ぐことができる。このように、管の内壁が削り取られる現象はエロージョンと呼ばれる。
【0049】
なお、図2では図示を省略しているが、冷却水分配部11において冷却水が流れる流路には、冷却水の圧力を計測可能な圧力計や、冷却水の水温を計測可能な温度計が設けられるのが望ましい。
【0050】
次に、本実施例1に係る冷却水分配部11の動作手順について説明する。図5は、本実施例1に係る冷却水分配部11の動作手順を示すフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、冷却水分配部11では、MRI装置100の電源がオンの状態になった場合には(ステップS10,Yes)、第1電磁弁11vが流路を開放する(ステップS11)。その後、第2電磁弁11wが流路を閉塞する(ステップS12)。これにより、冷却水分配部11は、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水を配給する(ステップS13)。
【0052】
一方、MRI装置100の電源がオフの状態になった場合には(ステップS10,No)、第2電磁弁11vが流路を開放する(ステップS14)。その後、第1電磁弁11wが流路を閉塞する(ステップS15)。これにより、冷却水分配部11は、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給を停止する(ステップS16)。
【0053】
上述したように、本実施例1では、冷却水分配部11が、MRI装置100の電源がオンである間は、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水を配給する。また、冷却水分配部11は、MRI装置100の電源がオンからオフに変わった場合に、冷却水分配部11は、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給を停止する。
【0054】
すなわち、本実施例1では、MRI装置100が稼働していない間は、冷凍機10のみに冷却水が循環され、運転が停止している傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6には冷却水が循環されない。このため、MRI装置100が稼働していない間に、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6に生じる結露を防ぐことができる。このことから、MRI装置100が稼働していない間に、空調機器や結露防止用システムを運転させる必要がなくなる。したがって、本実施例1によれば、MRI装置100が稼働していない間に消費される電力量を抑えつつ、機器に生じる結露を防ぐことが可能になる。
【0055】
また、本実施例1では、流量調節バルブ11xが、冷凍機10に配給される冷却水の流量を調節する。したがって、冷凍機10へ冷却水が過度に送られるのを防ぐことができるので、冷却水分配部11と冷凍機10との間に設けられる配管の内壁や、冷凍機10に設けられる冷却管の内壁にエロージョンが生じるのを防ぐことができる。
【0056】
また、本実施例1では、計算機システム9が、MRI装置100の電源の状態を冷却水分配部11に伝達する。また、絶縁トランス13が、冷却水分配部11と計算機システム9とを絶縁する。したがって、本実施例1によれば、水漏れ等により冷却水分配部11に漏電が発生した場合でも、計算機システム9を保護することができる。なお、本実施例1では絶縁トランス13を用いた場合について説明したが、冷却水分配部11と計算機システム9とを絶縁するための絶縁手段はこれに限られない。例えば、冷却水分配部11と計算機システム9とを光伝達素子を介して接続するようにしてもよい。
【0057】
なお、上記実施例1では、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の分配を制御するための手段として2つの電磁弁を用いた場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、2つの電磁弁の代わりに3方弁が用いられてもよい。なお、ここでいう3方弁とは、1つの入水口と2つの出水口を有し、入水口から流入した水が2つの出水口のいずれか一方から流出するように流路を切り替えることが可能な弁である。
【実施例2】
【0058】
以下では、実施例2として、3方弁を用いた場合について説明する。なお、本実施例2に係るMRI装置の構成は図1に示したものと同様であり、冷却水分配部の構成が異なるのみである。そこで、本実施例2では、冷却水分配部の構成及び動作手順について説明する。
【0059】
まず、本実施例2に係る冷却水分配部の構成について説明する。図6は、本実施例2に係る冷却水分配部21の構成を示すブロック図である。また、図7及び8は、本実施例2に係る冷却水分配部21における流路の切り替えを説明するための図である。なお、ここでは説明の便宜上、図2に示した各機器と同様の役割を果たす機器については、同一の符号を付すこととしてその詳細な説明を省略する。
【0060】
本実施例2に係る冷却水分配部21は、実施例1で説明した冷却水分配部11と同様に、計算機システム9から制御端子11aに電流が供給されている間は、冷却が必要な各機器に冷却水を配給する。また、冷却水分配部21は、計算機システム9から電流が供給されなくなった場合に、MRI装置100が稼働している間のみ冷却が必要な機器への冷却水の配給を停止する。
【0061】
例えば、図6に示すように、冷却水分配部21は、カプラ11b〜11k、バルブ11l〜11u、3方弁21y及び流量調節バルブ11xを有する。そして、冷却水分配部21内には、以下で説明するように冷却水を流通させる複数の流路が設けられている。
【0062】
まず、冷却水供給装置12から送られる冷却水は、カプラ11bを介して冷却水分配部21に流入し、バルブ11lに送られる。バルブ11lを通った冷却水は、バルブ11m及び3方弁21yの入水口それぞれに送られる。バルブ11mを通った冷却水は、カプラ11cを介して冷凍機10へ送られる。
【0063】
3方弁21yの一方の出水口から流出した冷却水は、バルブ11n、11o及び11pそれぞれに送られる。バルブ11nを通った冷却水は、カプラ11dを介して傾斜磁場コイル2へ送られる。バルブ11oを通った冷却水は、カプラ11eを介して傾斜磁場電源5へ送られる。バルブ11pを通った冷却水は、カプラ11fを介して送信部6へ送られる。3方弁21yの他方の出水口から流出した冷却水は、流量調節バルブ11xを通って、バルブ11uに送られる。
【0064】
一方、冷凍機10から送られる冷却水は、カプラ11gを介して冷却水分配部21に流入し、バルブ11qに送られる。傾斜磁場コイル2から送られる冷却水は、カプラ11hを介して冷却水分配部21に流入し、バルブ11rに送られる。傾斜磁場電源5から送られる冷却水は、カプラ11iを介して冷却水分配部21に流入し、バルブ11sに送られる。送信部6から送られる冷却水は、カプラ11jを介して冷却水分配部21に流入し、バルブ11tに送られる。
【0065】
バルブ11q、11r、11s及び11tそれぞれを通った冷却水は、それぞれバルブ11uに送られる。バルブ11uを通った冷却水は、カプラ11kを介して冷却水供給装置12へ送られる。
【0066】
そして、3方弁21yは、計算機システム9から電流が供給されると、入水口から流入した冷却水がバルブ11n、11o及び11pそれぞれに流れるように流路を切り替える。この結果、図7に示すように、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水が配給されるようになる。一方、3方弁21yは、計算機システム9から電流が供給されると、入水口から流入した冷却水が流量調節バルブ11xに流れるように流路を切り替える。この結果、図8に示すように、冷凍機10のみに冷却水が配給され、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6には冷却水が配給されないようになる。
【0067】
すなわち、3方弁21yは、計算機システム9から制御端子11aに電流が供給されている間は、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水を配給するよう動作する。また、3方弁21yは、計算機システム9から電流が供給されなくなった場合に、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給を停止するよう動作する。
【0068】
次に、本実施例2に係る冷却水分配部21の動作手順について説明する。図9は、本実施例2に係る冷却水分配部21の動作手順を示すフローチャートである。
【0069】
図9に示すように、冷却水分配部21では、MRI装置100の電源がオンの状態になった場合には(ステップS20,Yes)、3方弁21yが、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6へ通じるバルブ側に冷却水が流れるように流路を切り替える(ステップS21)。これにより、冷却水分配部21は、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水を配給する(ステップS22)。
【0070】
一方、MRI装置100の電源がオフの状態になった場合には(ステップS20,No)、3方弁21yが、流量調節バルブ11x側に冷却水が流れるように流路を切り替える(ステップS23)。これにより、冷却水分配部21は、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給を停止する(ステップS24)。
【0071】
上述したように、本実施例2では、冷却水分配部21が、MRI装置100の電源がオンである間は、冷凍機10、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6それぞれに冷却水を配給する。また、冷却水分配部11は、MRI装置100の電源がオンからオフに変わった場合に、冷却水分配部11は、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6への冷却水の配給を停止する。
【0072】
したがって、本実施例2によれば、実施例1と同様に、MRI装置100が稼働していない間に、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源5及び送信部6に生じる結露を防ぐことができる。このことから、MRI装置100が稼働していない間に、空調機器や結露防止用システムを運転させる必要がなくなる。したがって、本実施例2によれば、MRI装置100が稼働していない間に消費される電力量を抑えつつ、機器に生じる結露を防ぐことが可能になる。さらに、3方弁を用いることで、より確実に流路を切り替えることができる。
【符号の説明】
【0073】
100 MRI装置
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 高周波コイル
4 天板
5 傾斜磁場電源
6 送信部
7 受信部
8 シーケンス制御装置
9 計算機システム
10 冷凍機
11 冷却水分配部
11v 第1電磁弁
11w 第2電磁弁
11x 流量調節バルブ
12 冷却水供給装置
13 絶縁トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常時冷却が必要な第1の機器と、
装置が稼動している間のみ冷却が必要な第2の機器と、
冷媒供給手段により供給される冷媒を前記第1の機器及び前記第2の機器に分配する冷媒分配手段とを備え、
前記冷媒分配手段は、装置の電源がオンである間は前記第1の機器及び前記第2の機器それぞれに冷媒を配給し、前記電源がオンからオフに変わった場合に、前記第2の機器への冷媒の配給を停止することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記冷媒分配手段は、前記第2の機器への冷媒の配給が停止される前後で前記第1の機器に配給される冷媒の流量が概略一定に保たれるように、当該第1の機器に配給される冷媒の流量を調節する流量調節部を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記電源の状態を前記冷媒分配手段に伝達する制御手段と、
前記冷媒分配手段と前記制御手段との間に挿入され、前記冷媒分配手段と前記制御手段とを絶縁する絶縁手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−156113(P2011−156113A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19575(P2010−19575)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】