説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】RF磁場をマルチチャンネルで送信する場合に、送信経路の誤配線を容易に検出すること。
【解決手段】送信制御部26aは、複数の送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相が360度の範囲で等間隔にずれるように複数の送信ユニット(71〜74)を制御する。そして、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルにて隣り合う2つの送信チャンネルである送信チャンネルペアごとに磁場強度が異なるRF磁場が順次送信されるように複数の送信ユニットを制御する。そして、検出部26bは、信号強度測定部22aの測定結果(信号強度データ23a)から、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件を決定し、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件が同一であるか否かに基づいて、複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を画像化する装置である。具体的には、磁気共鳴イメージング装置は、静磁場内に置かれた被検体に高周波(RF:Radio Frequency)磁場を送信し、それにより被検体から発せられる磁気共鳴(MR: Magnetic Resonance)信号を検出する。そして、磁気共鳴イメージング装置は、検出したMR信号に基づいて磁気共鳴画像(MRI画像)を再構成する。
【0003】
ここで、撮像領域内のRF磁場(B1)が不均一である場合、撮像領域の被検体内がRF磁場により均一に励起されないため、被検体内から発せられるMR信号にばらつきが生じ、その結果、再構成されるMRI画像には、歪みが生じる。
【0004】
特に、B1不均一は、高解像度のMRI画像が短時間で撮像可能となる超高磁場MRI装置(例えば、静磁場強度が3テスラの3テスラMRI装置)で増大することが知られている。これは、RF磁場の浸透力がRF磁場の周波数に依存することに起因するものであり、共鳴周波数の高い超高磁場MRI装置では、RF磁場の浸透力が低下し、撮像領域の深部までRF磁場が到達せず、例えば、撮像領域の中心部からのMR信号が低下することとなる。
【0005】
そこで、近年、RF磁場をマルチチャンネルで送信することで、B1不均一を解消することが可能なMRI装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。なお、以下では、RF磁場をマルチチャンネルで送信するMRI装置のことを、マルチRF送信MRI装置と記す。
【0006】
マルチRF送信MRI装置は、本撮像の前に、各送信チャンネルそれぞれにて、被検体の撮像領域からのMR信号が最大となるRF磁場の強度レベル(以下、RFLと記載する)を決定する。そして、マルチRF送信MRI装置は、本撮影時に、決定された各チャンネルのRFL条件(90度条件と呼ばれることもある)に基づいて、被検体の撮像領域に対して各送信チャンネルから位相が調整されたRF磁場を送信することで、B1不均一を解消する。
【0007】
具体的には、マルチRF送信MRI装置においては、RF磁場を送信する送信コイルに複数の送信ポートが送信チャンネルごとに設置される。さらに、マルチRF送信MRI装置においては、送信チャンネルごとに複数のRF送信ユニットが設置される。ここで、RF送信ユニットは、対応する送信ポート経由で送信コイルから送信されるRF磁場の位相、RFLおよびRF磁場送信のON/OFFを制御する装置であり、各送信ポートは、対応するRF送信ユニットと同軸ケーブルなどにより接続される。
【0008】
かかる構成において、マルチRF送信MRI装置の送信コイルは、各RF送信ユニットから送信されたRFLの情報(ゲイン情報)に基づいて、重み付けが異なるRFLがパラメータとして設定されたRF磁場を送信チャンネルごとに送信する。そして、マルチRF送信MRI装置は、各RF磁場により発生したMR信号の強度を測定した後に、送信チャンネルごとにMR信号が最大となるRFLを決定することで、B1が撮像領域にて略均一となる90度条件を決定する。
【0009】
ところで、送信ポートとRF送信ユニットとの間の送信経路の配線は、人間による手作業により行なわれる。しかし、送信チャンネルが複数あるために、送信ポートとRF送信ユニットとの配線に誤配線が発生する可能性があり、通常、誤配線の検出は、目視により行なわれている。ここで、誤配線の状態でも、マルチRF送信MRI装置は、自動的に90度条件を決定し、決定した90度条件により撮像を行なう。しかし、誤配線の状態で決定された90度条件では、各チャンネルのRFLが、MR信号が最大となるRFLとは異なるため、B1不均一が解消されないこととなる。そこで、マルチRF送信MRI装置では、例えば、配線ケーブルの色を変えるなど、送信経路に見かけ上違いを持たせることで誤配線を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2004−526547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、近年、送信チャンネル数は、増大化する傾向にある。このため、上記した従来の技術では、送信チャンネル数が増大すると、すべての送信経路に見かけ上違いを持たせることができない場合があり、送信経路の誤配線を目視により検出することが困難となる。
【0012】
また、例えば、本撮影により再構成されたMRI画像を解析して、B1不均一に起因する画像の歪みが補正されているか否かを検出することで、誤配線を検出することも考えられる。しかし、B1不均一の度合いは、被検体の体格や送信コイルの状態、受信コイルの状態などに大きく依存する。このため、例えば、MRI画像の歪みを示す値などを、誤配線を検出するための絶対的な値として用いることは、困難である。
【0013】
このように、上記した従来の技術では、RF磁場をマルチチャンネルで送信する場合に、送信経路の誤配線を容易に検出することができないという課題があった。
【0014】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、RF磁場をマルチチャンネルで送信する場合に、送信経路の誤配線を容易に検出することが可能となる磁気共鳴イメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、磁気共鳴イメージング装置が、複数の送信チャンネルから高周波磁場を送信する送信コイルと、前記複数の送信チャンネルごとに設置され、該当する送信チャンネルからの高周波磁場の送信を制御する複数の送信ユニットと、前記複数の送信ユニットと前記送信コイルとを前記複数の送信チャンネルごとに接続する複数の送信経路と、前記複数の送信チャンネルそれぞれから送信される高周波磁場の位相が異なるように前記複数の送信ユニットを制御したうえで、当該複数の送信チャンネルにて隣り合う2つの送信チャンネルである送信チャンネルペアごとに高周波磁場が送信されるように前記複数の送信ユニットを制御する制御手段と、前記制御手段の制御により送信された高周波磁場により発生した前記送信チャンネルペアごとの磁気共鳴信号に基づいて、前記複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、RF磁場をマルチチャンネルで送信する場合に、送信経路の誤配線を容易に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施例に係る送信コイルおよび送信部の構成例を説明するための図である。
【図3】図3は、本実施例に係るデータ処理部および制御部の構成を説明するための図である。
【図4】図4は、1段階目の誤配線検出処理において送信制御部が実行する位相制御処理を説明するための図である。
【図5】図5は、1段階目の誤配線検出処理における検出部を説明するための図である。
【図6】図6は、2段階目の誤配線検出処理において送信制御部が実行する位相制御処理を説明するための図である。
【図7】図7は、2段階目の誤配線検出処理における検出部を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施例に係るMRI装置の誤配線検出処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、磁気共鳴イメージング装置を「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」と呼ぶ。
【実施例】
【0019】
まず、本実施例に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を説明するための図である。
【0020】
図1に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイル6、送信部7、受信コイル8、受信部9、シーケンス制御部10および計算機システム20を有する。
【0021】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石などが使用される。
【0022】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0023】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する装置である。
【0024】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場およびリードアウト用傾斜磁場にそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮影断面(スライス面)を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0025】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮影口)内へ挿入する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、後述する制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0026】
送信コイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波(RF:Radio Frequency)磁場を発生する。
【0027】
送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル6に送信する。具体的には、送信部7は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。
【0028】
ここで、本実施例に係るMRI装置100は、RF磁場をマルチチャンネルで送信可能な装置である。具体的には、本実施例に係るMRI装置100においては、RF磁場を送信する送信コイル6に複数の送信ポートが送信チャンネルごとに設置される。さらに、本実施例に係るMRI装置100においては、送信チャンネルごとに複数のRF送信ユニットが送信部7に設置される。ここで、複数のRF送信ユニットは、上述した送信部7の各機能を、送信チャンネルごとに行なうために設置される。すなわち、各RF送信ユニットは、対応する送信ポート経由で送信コイル6から送信されるRF磁場の位相、RF磁場の強度レベル(RFL)およびRF磁場送信のON/OFFを制御する装置であり、対応する送信ポートと同軸ケーブルなどの送信経路により接続される。
【0029】
例えば、本実施例に係る送信コイル6および送信部7は、図2に示すように構成されている。図2は、本実施例に係る送信コイルおよび送信部の構成例を説明するための図である。
【0030】
図2に示す構成例では、送信チャンネルが「n個」からなる場合を図示している。かかる場合、送信コイル6においては、「第1送信ポート61、第2送信ポート62、第3送信ポート63、第4送信ポート64、・・・、第n送信ポート6n」が設置され、送信部7においては、「第1送信ユニット71、第2送信ユニット72、第3送信ユニット73、第4送信ユニット74、・・・、第n送信ユニット7n」が設置される。すなわち、「第1送信ポート61および第1送信ユニット71」は、「第1送信チャンネル」に対応する。
【0031】
そして、図2に示すように、送信ポートおよび送信ユニットそれぞれは、送信チャンネルごとに送信経路(例えば、同軸ケーブル)により接続される。かかる構成において、例えば、第2送信ユニット72は、第2送信ポート62からのRF磁場送信のON/OFFを制御したり、第2送信ポート62から送信されるRF磁場の位相およびRFLを制御したりする。なお、各送信ユニットは、後述する制御部26の指示に基づいて、対応する送信ポートからのRF磁場の送信制御を行なう。
【0032】
図1に戻って、受信コイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴(MR: Magnetic Resonance)信号を受信する。そして、受信コイル8は、MR信号を受信すると、受信したMR信号を受信部9へ出力する。
【0033】
なお、本実施例に係る受信コイル8は、「第1送信ポート61、第2送信ポート62、第3送信ポート63、第4送信ポート64、・・・、第n送信ポート6n」のすべて、または、一部から送信されたRF磁場により発生した磁気共鳴信号を受信する。そして、本実施例に係る受信部9は、受信したMR信号に、送信チャンネルを識別するためのチャンネル識別情報を対応付けて受信部9へ出力する。
【0034】
受信部9は、受信コイル8から出力されるMR信号を入力して磁気共鳴信号のデータを生成する。具体的には、受信部9は、選択器、前段増幅器、位相検波器およびアナログデジタル変換器を有する。選択器は、受信コイル8から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力されるMR信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換器は、位相検波器から出力される信号をデジタル変換することでMR信号のデータを生成する。なお、本実施例に係る受信部9は、MR信号のデータを、チャンネル識別情報に対応付けて生成する。
【0035】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部9からMR信号データが送信されると、そのMR信号データを計算機システム20へ転送する。
【0036】
なお、「シーケンス情報」とは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信コイル6に送信する高周波信号の強さや高周波信号を送信するタイミング、受信部9がMR信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を時系列に沿って定義した情報である。
【0037】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行ない、インタフェース部21、データ処理部22、記憶部23、入力部24、表示部25および制御部26を有する。
【0038】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部10からMR信号データを受信する。MR信号データを受信すると、インタフェース部21は、受信したMR信号データを記憶部23に格納する。なお、本実施例に係るインタフェース部21は、MR信号データとともにチャンネル識別情報を受信し、MR信号データとチャンネル識別情報とを対応付けたうえで、記憶部23に格納する。
【0039】
データ処理部22は、記憶部23に記憶されたMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、画像データ(磁気共鳴画像)を再構成する。また、データ処理部22は、記憶部23に記憶されたMR信号データの強度(MR信号強度)を測定したり、再構成した磁気共鳴画像の解析を行なったりする。なお、データ処理部22については、後に詳述する。
【0040】
記憶部23は、インタフェース部21により受信されたMR信号データや、データ処理部22による処理結果(磁気共鳴画像、MR信号強度の測定結果、磁気共鳴画像の解析結果など)を記憶する。なお、記憶部23が記憶する内容については、後に詳述する。
【0041】
入力部24は、操作者から各種操作や情報入力を受け付け、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスやキーボードなどを有し、表示部25と協働することによって、各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をMRI装置100の操作者に対して提供する。
【0042】
表示部25は、後述する制御部26による制御のもと、画像データ等の各種の情報を表示する。表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスが利用可能である。
【0043】
制御部26は、図示していないCPUやメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される撮影条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部10に送信することでスキャンを制御する。また、制御部26は、スキャンの結果としてシーケンス制御部10から送られるMR信号データのデータ処理を制御する。
【0044】
なお、図1に示すように、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、寝台4、寝台制御部5、送信コイル6および受信コイル8は、撮影室に設置される。また、図1に示すように、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、受信部9、シーケンス制御部10および計算機システム20は、操作室に設置される。
【0045】
このように、本実施例に係るMRI装置100は、RF磁場をマルチチャンネルで送信する装置であり、B1不均一を解消する機能を有する。具体的には、MRI装置100は、本撮像の前に、各送信チャンネルそれぞれにて、被検体の撮像領域からのMR信号が最大となるRFLを決定する。そして、MRI装置100は、本撮影時に、決定された各チャンネルのRFLの条件(以下、90度条件と記載する)に基づいて、被検体の撮像領域に対して各送信チャンネルから位相が調整されたRF磁場を送信することで、B1不均一を解消する。
【0046】
そして、本実施例に係るMRI装置100は、RF磁場をマルチチャンネルで送信する場合に、送信経路の誤配線を容易に検出することが可能となるように、以下に説明するデータ処理部22および制御部26の処理を実行する。
【0047】
なお、以下では、送信チャンネルが「4個」である場合について説明する。図3は、本実施例に係るデータ処理部および制御部の構成を説明するための図である。
【0048】
図3に示すように、送信コイル6には、第1送信ポート61〜第4送信ポート64が設置され、送信部7には、第1送信ユニット71〜第4送信ユニット74が設置される。なお、図3では、送信経路の接続が正常配線である場合を示している。
【0049】
また、以下では、第1送信ポート61および第1送信ユニット71の送信チャンネルを第1送信チャンネルまたはCH1と記載し、第2送信ポート62および第2送信ユニット72の送信チャンネルを第2送信チャンネルまたはCH2と記載し、第3送信ポート63および第3送信ユニット73の送信チャンネルを第3送信チャンネルまたはCH3と記載し、第4送信ポート64および第4送信ユニット74の送信チャンネルを第4送信チャンネルまたはCH4と記載する。
【0050】
データ処理部22は、図3に示すように、信号強度測定部22aと、画像再構成部22bと、標準偏差算出部22cとを有する。また、記憶部23は、図3に示すように、信号強度測定部22aの処理結果を記憶する信号強度データ23aと、標準偏差算出部22cの処理結果を記憶する標準偏差データ23bとを有する。なお、記憶部23は、図示しないが、インタフェース部21により受信されたMR信号データや、画像再構成部22bの処理結果も記憶する。また、制御部26は、図3に示すように、送信制御部26aと、検出部26bとを有する。
【0051】
信号強度測定部22aは、記憶部23からMR信号データを読み出して、読み出したMR信号の強度を測定し、測定した結果を信号強度データ23aに格納する。具体的には、信号強度測定部22aは、測定したMR信号の強度を、チャンネル識別情報に対応付けて、信号強度データ23aに格納する。これにより、強度を測定したMR信号が、どの送信チャンネルから送信されたRF磁場により発生したものであるかが識別可能となる。
【0052】
画像再構成部22bは、記憶部23からMR信号データを読み出して、読み出したMR信号データから磁気共鳴画像を再構成し、再構成した磁気共鳴画像を記憶部23に格納する。具体的には、画像再構成部22bは、再構成した磁気共鳴画像を、チャンネル識別情報に対応付けて、記憶部23に格納する。これにより、画像再構成部22bが磁気共鳴画像を再構成するために用いたMR信号データが、どの送信チャンネルから送信されたRF磁場により発生したものであるかが識別可能となる。
【0053】
標準偏差算出部22cは、記憶部23から磁気共鳴画像を読み出して、読み出した磁気共鳴画像の各画素の画素値のばらつきを示す指標値を算出する。例えば、標準偏差算出部22cは、磁気共鳴画像の各画素の画素値の標準偏差を算出し、算出した標準偏差を、チャンネル識別情報に対応付けて、標準偏差データ23bに格納する。これにより、標準偏差が算出された磁気共鳴画像が、どの送信チャンネルから送信されたRF磁場により発生したMR信号データに基づいて再構成されたものであるかが識別可能となる。
【0054】
そして、本撮像時の90度条件を決定する前に、操作者から入力部24を介して、誤配線検出要求を受け付けた場合に、送信制御部26aおよび検出部26bは、処理を開始する。
【0055】
すなわち、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルそれぞれから送信されるRF磁場の位相が異なるように複数の送信ユニットを制御する。そして、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルにて隣り合う2つの送信チャンネルである送信チャンネルペアごとにRF磁場が送信されるように複数の送信ユニットを制御する。そして、検出部26bは、送信制御部26aの制御により送信されたRF磁場により発生した送信チャンネルペアごとのMR信号に基づいて、複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する。
【0056】
より具体的には、誤配線検出処理は、2段階にて実行される。1段階目の誤配線検出処理において、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相が360度の範囲で等間隔にずれるように複数の送信ユニットを制御する。具体的には、送信チャンネルが「n個」である場合、送信制御部26aは、「第1送信ポート61、第2送信ポート62、第3送信ポート63、第4送信ポート64、・・・、第n送信ポート6n」それぞれから送信されるRF磁場の位相が、「360/n」度ずつずれるように、「第1送信ユニット71、第2送信ユニット72、第3送信ユニット73、第4送信ユニット74、・・・、第n送信ユニット7n」を制御する。なお、送信制御部26aの指示は、インタフェース部21およびシーケンス制御部10を介して、各送信ユニットに送信される。
【0057】
図3に示す構成例では、送信チャンネルが「4個」であるので、送信制御部26aは、「第1送信ポート61、第2送信ポート62、第3送信ポート63、第4送信ポート64」それぞれから送信されるRF磁場の位相が90度ずつずれるように、「第1送信ユニット71、第2送信ユニット72、第3送信ユニット73、第4送信ユニット74」を制御する。図4は、1段階目の誤配線検出処理において送信制御部が実行する位相制御処理を説明するための図である。
【0058】
すなわち、図4に示すように、1段階目の誤配線検出処理において、CH1から送信されるRF磁場の位相が「0度」である場合、CH2から送信されるRF磁場の位相は、「90度」となり、CH3から送信されるRF磁場の位相は、「180度」となり、CH4から送信されるRF磁場の位相は、「270度」となる。
【0059】
そして、1段階目の誤配線検出処理において、送信制御部26aは、送信チャンネルペアごとに磁場強度が異なるRF磁場が順次送信されるように複数の送信ユニットを制御する。具体的には、送信制御部26aは、0または1といった重み付けが異なるRFLがパラメータとして設定されたRF磁場を送信チャンネルペアごとに送信する。例えば、送信制御部26aは、「CH1およびCH2」の送信チャンネルペアのみで磁場強度が異なるRF磁場が順次送信されるように第1送信ユニット71〜第4送信ユニット74を制御する。そして、送信制御部26aは、「CH2およびCH3」の送信チャンネルペア、「CH3およびCH4」の送信チャンネルペアについても、同様の制御を順次行なう。なお、送信制御部26aは、「CH4およびCH1」の送信チャンネルペアについても、同様の制御を行なってもよい。
【0060】
かかるRF磁場の送信制御が送信チャンネルペアごとに順次行なわれると、信号強度測定部22aは、磁場強度の異なるRF磁場それぞれにより被検体Pから発生したMR信号の強度を順次測定して、信号強度データ23aに格納する。そして、検出部26bは、信号強度データ23aを参照して、送信チャンネルペアごとに、MR信号の強度の最大値を決定し、最大値となったMR信号を発生させたRFLを決定する。すなわち、検出部26bは、送信チャンネルペアごとの90度条件を決定する。なお、検出部26bは、MR信号の強度が最大となったRFLの情報を、送信制御部26aから取得する。
【0061】
これにより、検出部26bは、「CH1およびCH2」の90度条件、「CH2およびCH3」の90度条件、「CH3およびCH4」の90度条件を決定する。
【0062】
そして、検出部26bは、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件が同一であるか否かに基づいて、複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する。すなわち、正常配線であるならば、送信チャンネルペアを構成する2つの送信チャンネルそれぞれから送信されるRF磁場の位相差は、同一であるので、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件は、同一となる。しかし、誤配線であるならば、送信チャンネルペアを構成する2つの送信チャンネルそれぞれから送信されるRF磁場の位相差は、異なるので、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件は、同一とならない。
【0063】
図5は、1段階目の誤配線検出処理における検出部を説明するための図である。例えば、CH1における第1送信ポート61と第1送信ユニット71との送信経路が正常配線であると仮定する。かかる場合、各CHの送信経路の配線状態は、図5に示す状態1〜状態6のパターンに大別される。
【0064】
図5に示すように、状態1は、各チャンネルから送信されるRF磁場の位相が「CH1:0、CH2:90、CH3:180、CH4:270」の場合である。すなわち、状態1は、CH1が正常配線であるならば、すべての送信チャンネルが正常配線である状態である。また、状態2は、各チャンネルから送信されるRF磁場の位相が「CH1:0、CH2:90、CH3:270、CH4:180」の場合である。すなわち、状態2は、CH1が正常配線であるならば、第3送信ポート63と第4送信ユニット74とが接続され、第4送信ポート64と第3送信ユニット73とが接続された誤配線の状態である。また、図5に示すように、状態3は、各チャンネルから送信されるRF磁場の位相が「CH1:0、CH2:180、CH3:90、CH4:270」の場合である。すなわち、状態3は、CH1が正常配線であるならば、第2送信ポート62と第3送信ユニット73とが接続され、第3送信ポート63と第2送信ユニット72とが接続された誤配線の状態である。
【0065】
また、図5に示すように、状態4は、各チャンネルから送信されるRF磁場の位相が「CH1:0、CH2:180、CH3:270、CH4:90」の場合である。すなわち、状態4は、CH1が正常配線であるならば、第2送信ポート62と第3送信ユニット73とが接続され、第3送信ポート63と第4送信ユニット74とが接続され、第4送信ポート64と第2送信ユニット72とが接続された誤配線の状態である。また、図5に示すように、状態5は、各チャンネルから送信されるRF磁場の位相が「CH1:0、CH2:270、CH3:90、CH4:180」の場合である。すなわち、状態5は、CH1が正常配線であるならば、第2送信ポート62と第4送信ユニット74とが接続され、第3送信ポート63と第2送信ユニット72とが接続され、第4送信ポート64と第3送信ユニット73とが接続された誤配線の状態である。また、図5に示すように、状態6は、各チャンネルから送信されるRF磁場の位相が「CH1:0、CH2:270、CH3:180、CH4:90」の場合である。すなわち、状態6は、CH1が正常配線であるならば、第2送信ポート62と第4送信ユニット74とが接続され、第4送信ポート64と第2送信ユニット72とが接続された誤配線の状態である。
【0066】
状態1では、検出部26bによる90度条件比較結果は、図5に示すように、「一致」となる。また、状態2〜5では、送信チャンネルペアを構成する送信チャンネルからそれぞれ送信されるRF磁場の位相差が「90度、−90度、−180度」の3つの組み合わせがあることから、検出部26bによる90度条件比較結果は、図5に示すように、90度条件が「不一致」となる。また、状態6では、送信チャンネルペアを構成する送信チャンネルからそれぞれ送信されるRF磁場の位相差がすべて「−90度」となることから、図5に示すように、90度条件決定不可となる。
【0067】
したがって、検出部26bは、CH1が正常配線であると仮定した1段階目において、図5に示すように、90度条件が一致と判定されない状態2〜6を「誤配線」として検出する。すなわち、1段階目においては、状態2〜6のような送信チャンネル間での配線がスワップされた状態の誤配線が検出される。また、送信経路の接続が未接続である場合や、送信経路の接続が接触不良である場合では90度条件が決定されないので、1段階目において、検出部26bは、未接続および接触不良の誤配線も検出することができる。
【0068】
そして、送信制御部26aおよび検出部26bは、90度条件が送信チャンネルペアそれぞれで一致する場合(状態1の場合)、図5に示すように、さらに2段階目の誤配線検出処理を行なう。すなわち、1段階目の誤配線検出処理が「CH1が正常配線である」と仮定に基づいて行なれたものであることから、2段階目の誤配線検出処理は、「CH1が正常配線である」とした仮定を検証するために行なわれる。
【0069】
すなわち、隣り合う送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相が等間隔で「(360/n)度(本実施例では、90度)」ずれていて、90度条件が送信チャンネルペアそれぞれで一致する場合であっても、実際には、各送信チャンネルの接続状態は、すべての送信チャンネルが同一個数分(1個分〜n−1個分)ずれて接続されている回転パターンの誤配線である可能性がある。図6は、2段階目の誤配線検出処理において送信制御部が実行する位相制御処理を説明するための図である。
【0070】
したがって、90度条件比較結果が「一致」する状態1は、実際には、図6の(A)に示すように、状態1−1〜1−4の4つの回転パターンに大別される。すなわち、図6の(A)に示す状態1−1は、「CH1:0、CH2:90、CH3:180、CH4:270」の正常配線である。また、図6の(A)に示す状態1−2は、「CH1:90、CH2:180、CH3:270、CH4:0」の1個ずれの回転パターンによる誤配線である。また、図6の(A)に示す状態1−3は、「CH1:180、CH2:270、CH3:0、CH4:90」の2個ずれの回転パターンによる誤配線である。また、図6の(A)に示す状態1−4は、「CH1:270、CH2:0、CH3:90、CH4:180」の3個ずれの回転パターンによる誤配線である。
【0071】
そこで、送信制御部26aは、送信チャンネルペアそれぞれの強度条件が同一である場合、複数の送信チャンネルから選択した一つの送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相がさらにずれるように複数の送信ユニットを制御する。ここで、位相をさらにずらす送信チャンネルの選択および選択した送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相は、MRI装置100の性能によって決定される。例えば、MRI装置100の性能から、位相差が「120度」である2つのRF磁場を送信することで、磁気共鳴画像の標準偏差(すなわち、磁気共鳴画像の歪み)が低下することが既知であるとする。かかる場合、送信制御部26aは、CH2から送信されるRF磁場の位相が、CH1から送信されるRF磁場の位相に対して「120度」ずれるように、第2送信ユニット72を制御する。
【0072】
さらに、MRI装置100の性能から、位相差が「120度」である2つのRF磁場を送信する場合に、磁気共鳴画像の標準偏差がさらに低下するRFLも既知であるならば、送信制御部26aは、CH2から送信されるRFLの調整も、第2送信ユニット72を介して行なう。
【0073】
かかる位相の制御を行なったうえで、送信制御部26aは、送信チャンネルペアそれぞれからRF磁場が送信されるように複数の送信ユニットを制御する。なお、2段階目の誤配線検出処理では、「CH1およびCH2」、「CH2およびCH3」、「CH3およびCH4」および「CH4およびCH1」の送信チャンネルペアごとにRF磁場の送信が順次行なわれるように、第1送信ユニット71〜第4送信ユニット74が送信制御部26aにより制御される。
【0074】
これにより、2段階目の誤配線検出処理において、状態1−1では、図6の(B)に示すように、CH1から送信されるRF磁場の位相が「0度」である場合、CH2から送信されるRF磁場の位相は、「120度」となり、CH3から送信されるRF磁場の位相は、「180度」となり、CH4から送信されるRF磁場の位相は、「270度」となる。また、状態1−2では、図6の(B)に示すように、CH4から送信されるRF磁場の位相が「0度」である場合、CH1から送信されるRF磁場の位相は、「120度」となり、CH2から送信されるRF磁場の位相は、「180度」となり、CH3から送信されるRF磁場の位相は、「270度」となる。
【0075】
また、状態1−3では、図6の(B)に示すように、CH3から送信されるRF磁場の位相が「0度」である場合、CH4から送信されるRF磁場の位相は、「120度」となり、CH1から送信されるRF磁場の位相は、「180度」となり、CH2から送信されるRF磁場の位相は、「270度」となる。また、状態1−4では、図6の(B)に示すように、CH2から送信されるRF磁場の位相が「0度」である場合、CH3から送信されるRF磁場の位相は、「120度」となり、CH4から送信されるRF磁場の位相は、「180度」となり、CH1から送信されるRF磁場の位相は、「270度」となる。
【0076】
そして、送信制御部26aは、送信チャンネルペアそれぞれからRF磁場が順次送信されるように第1送信ユニット71〜第4送信ユニット74を制御する。
【0077】
かかるRF磁場の送信制御が送信チャンネルペアごとに順次行なわれると、画像再構成部22bは、送信チャンネルペアごとの磁気共鳴画像を再構成し、標準偏差算出部22cは、送信チャンネルペアごとの磁気共鳴画像それぞれにおいて、標準偏差を算出する。
【0078】
そして、検出部26bは、標準偏差データ23bを参照して、送信チャンネルペアそれぞれの磁気共鳴画像の標準偏差を比較することで、複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する。図7は、2段階目の誤配線検出処理における検出部を説明するための図である。
【0079】
例えば、検出部26bは、図7に示すように、標準偏差が低下している送信チャンネルペアが「CH1&CH2」である場合、状態1−1に対応する「正常配線」と検出する。また、検出部26bは、図7に示すように、標準偏差が低下している送信チャンネルペアが「CH4&CH1」である場合、状態1−2に対応する「誤配線」と検出する。また、検出部26bは、図7に示すように、標準偏差が低下している送信チャンネルペアが「CH3&CH4」である場合、状態1−3に対応する「誤配線」と検出する。また、検出部26bは、図7に示すように、標準偏差が低下している送信チャンネルペアが「CH2&CH3」である場合、状態1−4に対応する「誤配線」と検出する。
【0080】
なお、検出部26bは、検出結果を、誤配線のパターンとともに、表示部25にて表示させる。これにより、誤配線が検出されたことを認識したMRI装置100の操作者または設置業者は、送信経路の配線作業を行なうことができる。
【0081】
また、配線作業を行なった後、操作者または設置業者は、再度、誤配線検出処理を要求することもでき、正常配線である旨が表示部25にて表示された時点で、操作者は、本撮像の撮像条件において、各送信チャンネルの90度条件をMRI装置100にて決定する。これにより、MRI装置100は、被検体Pの本撮像を行なう。
【0082】
次に、図8を用いて、本実施例に係るMRI装置100の処理について説明する。図8は、本実施例に係るMRI装置の誤配線検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0083】
図8に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、誤配線検出要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、誤配線検出要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、MRI装置100は、待機状態となる。
【0084】
一方、誤配線検出要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、1段階目の誤配線検出処理のために、送信制御部26aは、360度の範囲で等間隔となるように、複数の送信チャンネルそれぞれから送信されるRF磁場の位相を設定し(ステップS102、図4参照)、隣り合う2つの送信チャンネルである送信チャンネルペアごとに、90度条件を決定するためのRF磁場を、設定した位相にて送信するように複数の送信ユニット(第1送信ユニット71〜第4送信ユニット74)を制御する(ステップS103)。すなわち、送信制御部26aは、送信チャンネルペアごとに、磁場強度の異なるRF磁場が順次送信されるように、第1送信ユニット71〜第4送信ユニット74を制御する。
【0085】
そして、検出部26bは、信号強度測定部22aの測定結果から、送信チャンネルペアごとの90度条件を決定し(ステップS104)、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件が一致するか否かを判定する(ステップS105)。
【0086】
ここで、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件が一致しない場合(ステップS105否定)、検出部26bは、複数の送信チャンネルにおいて送信経路の配線状態が誤配線であると判定し(ステップS111)、処理を終了する。すなわち、検出部26bは、第1段階目のステップS111において、送信チャンネル間の配線スワップや、送信ポートと送信ユニットとの間の未接続、または接触不良のいずれかに起因した誤配線を検出する。
【0087】
一方、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件が一致する場合(ステップS105肯定)、2段階目の誤配線検出処理のために、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルから選択した一つの送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相がさらにずれるように設定する(ステップS106、図6の(B)参照)。そして、送信制御部26aは、送信制御部26aは、送信チャンネルペアそれぞれからRF磁場が送信されるように複数の送信ユニットを制御する(ステップS107)。
【0088】
そして、標準偏差算出部22cは、画像再構成部22bが再構成した送信チャンネルペアごとの磁気共鳴画像それぞれから標準偏差を算出する(ステップS108)。
【0089】
そして、検出部26bは、標準偏差データ23bを参照して、送信チャンネルペアそれぞれの磁気共鳴画像の標準偏差を比較した結果、標準偏差が低下した送信チャンネルペアが、正常配線である場合に相当するか否かを判定する(ステップS109)。
【0090】
ここで、標準偏差が低下した送信チャンネルペアが、正常配線である場合に相当しない場合(ステップS109否定)、検出部26bは、誤配線であると判定し(ステップS111)、処理を終了する。すなわち、検出部26bは、第2段階目のステップS111において、回転パターンの誤配線を検出する。
【0091】
一方、標準偏差が低下した送信チャンネルペアが、正常配線である場合に相当する場合(ステップS109肯定)、検出部26bは、正常配線であると判定し(ステップS110)、誤配線検出処理を終了する。
【0092】
上述したように、本実施例では、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルそれぞれから送信されるRF磁場の位相が異なるように複数の送信ユニットを制御する。そして、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルにて隣り合う2つの送信チャンネルである送信チャンネルペアごとにRF磁場が送信されるように複数の送信ユニットを制御する。そして、検出部26bは、送信制御部26aの制御により送信されたRF磁場により発生した送信チャンネルペアごとのMR信号に基づいて、複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する。
【0093】
したがって、本実施例によれば、送信経路の誤配線を自動的に検出することができ、RF磁場をマルチチャンネルで送信する場合に、送信経路の誤配線を容易に検出することが可能となる。
【0094】
また、本実施例によれば、誤配線検出処理が2段階で実行され、1段階目の誤配線検出処理において、送信制御部26aは、複数の送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相が360度の範囲で等間隔にずれるように複数の送信ユニットを制御する。そして、送信制御部26aは、送信チャンネルペアごとに磁場強度が異なるRF磁場が順次送信されるように複数の送信ユニットを制御する。そして、検出部26bは、信号強度測定部22aの測定結果から、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件を決定し、送信チャンネルペアそれぞれの90度条件が同一であるか否かに基づいて、複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する。
【0095】
したがって、本実施例によれば、送信チャンネル間の配線スワップや、送信ポートと送信ユニットとの間の未接続、または接触不良のいずれかに起因した誤配線を自動的に検出することが可能となる。
【0096】
また、本実施例によれば、送信制御部26aは、送信チャンネルペアそれぞれの強度条件が同一である場合、2段階目の誤配線検出処理において、複数の送信チャンネルから選択した一つの送信チャンネルから送信されるRF磁場の位相がさらにずれるように複数の送信ユニットを制御し、送信チャンネルペアそれぞれからRF磁場が送信されるように複数の送信ユニットを制御する。そして、検出部26bは、標準偏差算出部22cの算出結果である標準偏差データ23bを参照して、送信チャンネルペアそれぞれの磁気共鳴画像の標準偏差を比較することで、複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する。
【0097】
したがって、本実施例によれば、第1段階目では検出できなかった回転パターンの誤配線を自動的に検出することが可能となる。また、本実施例によれば、誤配線によるB1不均一に起因した磁気共鳴画像の歪みの発生を回避して、再撮像によりRF磁場を被検体Pに再度照射することを回避すること可能となる。また、本実施例によれば、設置業者による配線作業の負担を軽減することが可能となる。
【0098】
なお、上記した実施例では、2段階目の誤配線検出処理にて、一つの送信チャンネルのRF磁場の位相が、標準偏差が低下する位相となるように制御する場合について説明したが、本実施例はこれに限定されるものではない。例えば、本実施例は、2段階目の誤配線検出処理にて、一つの送信チャンネルのRF磁場の位相が、磁気共鳴画像が再構成不可(例えば、位相差が−90度)となる位相となるように制御する場合であってもよい。すなわち、本実施例は、2段階目の誤配線検出処理にて、磁気共鳴画像が再構成されなかった送信チャンネルペアを検出することで、正常配線か誤配線かを検出する場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、RF磁場をマルチチャンネルで送信する場合に有用であり、特に、送信経路の誤配線を容易に検出することに適する。
【符号の説明】
【0100】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
4a 天板
5 寝台制御部
6 送信コイル
61 第1送信ポート
62 第2送信ポート
63 第3送信ポート
64 第4送信ポート
6n 第n送信ポート
7 送信部
71 第1送信ユニット
72 第2送信ユニット
73 第3送信ユニット
74 第4送信ユニット
7n 第n送信ユニット
8 受信コイル
9 受信部
10 シーケンス制御部
20 計算機システム
21 インタフェース部
22 データ処理部
22a 信号強度測定部
22b 画像再構成部
22c 標準偏差算出部
23 記憶部
23a 信号強度データ
23b 標準偏差データ
24 入力部
25 表示部
26 制御部
26a 送信制御部
26b 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信チャンネルから高周波磁場を送信する送信コイルと、
前記複数の送信チャンネルごとに設置され、該当する送信チャンネルからの高周波磁場の送信を制御する複数の送信ユニットと、
前記複数の送信ユニットと前記送信コイルとを前記複数の送信チャンネルごとに接続する複数の送信経路と、
前記複数の送信チャンネルそれぞれから送信される高周波磁場の位相が異なるように前記複数の送信ユニットを制御したうえで、当該複数の送信チャンネルにて隣り合う2つの送信チャンネルである送信チャンネルペアごとに高周波磁場が送信されるように前記複数の送信ユニットを制御する制御手段と、
前記制御手段の制御により送信された高周波磁場により発生した前記送信チャンネルペアごとの磁気共鳴信号に基づいて、前記複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出する検出手段と、
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
磁気共鳴信号の強度を測定する測定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記複数の送信チャンネルから送信される高周波磁場の位相が360度の範囲で等間隔にずれるように前記複数の送信ユニットを制御したうえで、前記送信チャンネルペアごとに磁場強度が異なる高周波磁場が順次送信されるように前記複数の送信ユニットを制御し、
前記検出手段は、前記測定手段の測定結果から、前記送信チャンネルペアごとに、磁気共鳴信号の強度が最大となる高周波磁場強度の強度条件を決定し、前記送信チャンネルペアそれぞれの強度条件が同一であるか否かに基づいて、前記複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
磁気共鳴信号から再構成された磁気共鳴画像の各画素の画素値のばらつきを示す指標値を算出する算出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記送信チャンネルペアそれぞれの強度条件が同一である場合、前記複数の送信チャンネルから選択した一つの送信チャンネルから送信される高周波磁場の位相がさらにずれるように前記複数の送信ユニットを制御したうえで、前記送信チャンネルペアそれぞれから高周波磁場が送信されるように前記複数の送信ユニットを制御し、
前記検出手段は、前記送信チャンネルペアそれぞれから送信された高周波磁場により発生した磁気共鳴信号に基づいて再構成された磁気共鳴画像それぞれにおいて前記算出手段が算出した指標値を比較することで、前記複数の送信経路の接続が正常配線であるか誤配線であるかを検出することを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−172750(P2011−172750A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39248(P2010−39248)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】