説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】 磁気共鳴エコー信号をデジタル化する際に磁気共鳴エコー信号に生じる位相ずれの影響による断面画像の精度低下を抑える。
【解決手段】 RFパルス検出部13aは、RFデータからRFパルス信号を検出する。位相検出部13bは、RFパルス信号の位相を検出する。位相補正部13cは、エコー信号にデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するべく、位相検出部13bにより検出された位相に基づいてRFデータを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)は、RFパルスを測定対象(被検体)に放射したのちに測定対象から放射されるエコー信号(磁気共鳴エコー信号)を観測することで測定対象の断面画像を得る装置である。一般にMRI装置では、1つの画像を得るために複数個のエコー信号が必要となる。複数のエコー信号の周波数および位相を解析することによって断面画像を得ることができる。このため、これらの複数のエコー信号を取得する際にそれぞれ放射するRFパルスの周波数が一定である必要がある。RFパルスの放射には送信コイルが用いられ、エコー信号の受信には受信コイルが用いられる。
【0003】
受信コイルで受信したエコー信号をアナログデジタル変換器(ADC)でデジタル化して得たデジタル信号を無線伝送することによって、受信コイルを無線化する方式が特許文献1により知られている。
【0004】
このようにエコー信号をデジタル化する場合には、RFパルスを生成するために使用されるクロック信号(以下、第1のクロック信号と称する)の周波数にADCを駆動するためのクロック信号(以下、第2のクロック信号と称する)の周波数が一致している必要がある。これらの第1および第2のクロック信号の周波数が互いに異なっている場合、デジタル化されたエコー信号の位相にずれが生じ、このエコー信号から再構成される断面画像の精度が劣化してしまうためである。
【0005】
特許文献1では、第1のクロック信号をリファレンス信号として無線伝送し、このリファレンス信号を基準として第2のクロック信号を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,384,536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方式を用いた場合、リファレンス信号が劣化なく伝送されれば、第2のクロック信号と第1のクロック信号とを高精度に同期させることが可能となる。しかしながら一般に無線伝送においては、無線伝送に関わるさまざまな装置を経由することで、伝送信号にノイズが加算されてしまう。また無線伝送の間に、マルチパスフェージングやドップラー変動といった歪みを受ける。これらの結果として、リファレンス信号を劣化させずに無線伝送することは困難であり、劣化したリファレンス信号を基準として生成された第2のクロック信号は第1のクロック信号とは周波数が異なってしまう恐れがあった。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、磁気共鳴エコー信号をデジタル化する際に磁気共鳴エコー信号に生じる位相ずれの影響による断面画像の精度低下を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様による磁気共鳴イメージング装置は、第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスが到来した際には当該励起パルスに応じた高周波信号を、かつ前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーが到来した際には当該磁気共鳴エコーに応じた高周波信号をそれぞれ出力する受信コイルと、第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、前記高周波信号または前記高周波信号に対して規定処理が施された後の信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、前記磁気共鳴エコーに前記デジタル変換部でのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するべく、前記位相検出部により検出された位相に基づいて前記高周波データを補正する補正部とを備える。
【0010】
本発明の第2の態様による磁気共鳴イメージング装置は、第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスが到来した際には当該励起パルスに応じた高周波信号を、かつ前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーが到来した際には当該磁気共鳴エコーに応じた高周波信号をそれぞれ出力する受信コイルと、第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、前記高周波信号または前記高周波信号に対して規定処理が施されたのちの信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、前記位相検出手段により検出された位相の経時変化に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部とを備える。
【0011】
本発明の第3の態様による磁気共鳴イメージング装置は、第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスに応じた高周波信号を出力するアンテナと、前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーに応じた高周波信号を出力する受信コイルと、第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、前記アンテナおよび前記受信コイルが出力した前記高周波信号または当該高周波信号に規定処理を施した後の信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、前記磁気共鳴エコーに前記デジタル変換部でのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するべく、前記位相検出部により検出された位相に基づいて前記高周波データを補正する補正部とを備える。
【0012】
本発明の第4の態様による磁気共鳴イメージング装置は、第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスに応じた高周波信号を出力するアンテナと、前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーに応じた高周波信号を出力する受信コイルと、第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、前記アンテナおよび前記受信コイルが出力した前記高周波信号または当該高周波信号に規定処理を施した後の信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、前記位相検出手段により検出された位相の経時変化に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁気共鳴エコー信号をデジタル化する際に磁気共鳴エコー信号に生じる位相ずれの影響による断面画像の精度低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成を示す図。
【図2】図1中のコイル側装置および補正ユニットのブロック図。
【図3】撮像の際に図2中の受信コイルで得られる高周波信号の一例を示す図。
【図4】図3に示す高周波信号の一部を拡大して示す図。
【図5】図2中のADCの飽和レベルの影響で飽和した高周波信号の一例を示す図。
【図6】第1の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図。
【図7】第2の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図。
【図8】第3の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図。
【図9】第2の実施形態に係るMRI装置の要部の構成を示すブロック図。
【図10】第3実施形態に係るMRI装置の要部の構成を示すブロック図。
【図11】第4の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図。
【図12】図11中の補正ユニットおよびコイル側装置のブロック図。
【図13】第5の実施形態に係るMRI装置における補正ユニットおよびコイル側装置のブロック図。
【図14】第6の実施形態に係るMRI装置の構成を示す図。
【図15】図14中のコイル側装置のブロック図。
【図16】第7の実施形態に係るMRI装置におけるコイル側装置のブロック図。
【図17】第8の実施形態に係るMRI装置におけるコイル側装置のブロック図。
【図18】第9の実施形態に係るMRI装置の要部のブロック図。
【図19】RFパルス信号の波形の一例を示す図。
【図20】図19中のRFパルス信号の一部の拡大図。
【図21】RFパルス信号をその包絡線とまったく同じ関数で除算して得られる信号の波形の一例を示す図。
【図22】RFパルス信号をその包絡線から少しずれた包絡線であらわされる関数で除算して得られる信号の波形の一例を示す図。
【図23】ΔTとToffとの差と2つの区間で測定した位相値の差の絶対値との関係を示す図。
【図24】RFパルス信号の位相をRFパルス信号の波形がある閾値を超えるタイミングを使って検出する原理を示す図。
【図25】RFパルス信号の位相をRFパルス信号の波形がある閾値を超えるタイミングを使って検出する原理を示す図。
【図26】第1乃至第9の実施形態の変形例を示すブロック図。
【図27】第1乃至第9の実施形態の変形例を示すブロック図。
【図28】第4の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図。
【図29】第5の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図。
【図30】第6の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)101の構成を示す図である。
【0017】
MRI装置101は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイルユニット6、コイル側装置7、クロック生成部8、RFパルス生成部9、RFパルス・傾斜磁場制御部10、アンテナ11、データ受信部12、補正ユニット13、データ処理部14、再構成システム15、記憶部16、表示部17、入力部18および主制御部19を具備する。なお、これらの各部のうち、コイル側装置7以外の各部は、コイル側装置7とは別体のシステム側装置に備えられる。なおシステム側装置は、ガントリと処理ユニットとに分けられることもある。この場合は例えば、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイルユニット6、RFパルス生成部9、RFパルス・傾斜磁場制御部10、アンテナ11およびデータ受信部12がガントリに備えられ、クロック生成部8、補正ユニット13、データ処理部14、再構成システム15、記憶部16、表示部17、入力部18および主制御部19が処理ユニットに備えられる。
【0018】
静磁場磁石1は、中空の円筒形をなし、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0019】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形をなし、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3種のコイルが組み合わされている。傾斜磁場コイル2は、上記の3種のコイルが傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場方向と同方向とする。X,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮影断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0020】
寝台4は、寝台制御部5の制御の下に、天板4aをその長手方向(図1中における左右方向)および上下方向に移動させる。通常、この長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように寝台4が設置される。天板4aには、被検体200が載置される。寝台4は、天板4aの移動によって、被検体200を傾斜磁場コイル2の内部の空間(撮像空間)内に挿入する。
【0021】
送信コイルユニット6は、1つまたは複数のコイルを円筒状のケースに収容して構成される。送信コイルユニット6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。送信コイルユニット6は、RFパルス生成部9からRFパルス信号の供給を受けてRFパルスを放射する。
【0022】
コイル側装置7は、天板4a上に載置されたり、天板4aに内蔵されたり、あるいは被検体200に装着される。そして撮影時には、被検体200とともに撮像空間内に挿入され、被検体200から放射された磁気共鳴エコーや送信コイルユニット6から放射されたRFパルスを含む電磁波を受けて電気的なRF信号を得る。このRF信号には、磁気共鳴エコーを表す磁気共鳴エコー信号(以下、エコー信号と記す)およびRFパルスを表すRFパルス信号を含む。コイル側装置7は、RF信号をデジタル化して得られる高周波データ(RFデータ)を含んだ伝送用信号を無線送信する。
【0023】
クロック生成部8は、所定周波数の第1のクロック信号を発生する。この第1のクロック信号は、MRI装置101の全体の動作タイミングの基準となるシステムクロックとしても使用されても良い。
【0024】
RFパルス生成部9は、RFパルス信号を第1のクロック信号に同期して生成する。
【0025】
RFパルス・傾斜磁場制御部10は、主制御部19の制御の下に、所要のパルスシーケンスに従って各傾斜磁場を変化させるように傾斜磁場電源3を制御するとともに、主制御部19から設定されるパラメタ(以下、RFパラメタと称する)に従ったRFパルスを生成するようにRFパルス生成部9を制御する。なお、RFパラメタは、RFパルスについての放射タイミング、位相、電力、ならびに信号波形などを表す。
【0026】
アンテナ11は、コイル側装置7から放射された電磁波を受けて伝送用信号を得る。
【0027】
データ受信部12は、アンテナ11で得られた伝送用信号からRFデータを抽出する。具体的にはデータ受信部12は、伝送用信号に対して増幅、復調および復号などを施す。すなわちデータ受信部12は、伝送用信号を以降の処理に適するレベルまで増幅する。次にデータ受信部12は、増幅後の伝送用信号を検波して符号化状態のRFデータを抽出する。さらにデータ受信部12は、抽出したRFデータに施されているデジタル送信のための符号化を復号することで、元のRFデータを得る。
【0028】
補正ユニット13は、RFデータの一部が表すエコー信号に生じている位相ずれを補償するようにRFデータを補正する。
【0029】
データ処理部14は、補正ユニット13により補正されたのちのRFデータに対し、ゲイン制御、周波数変換、ならびに直交検波を施す。
【0030】
再構成システム15は、データ処理部14で処理された後のRFデータに基づいて、被検体200に関する画像を再構成する。
【0031】
記憶部16は、再構成システム15で再構成された画像を示す画像データなどの各種のデータを記憶する。
【0032】
表示部17は、再構成システム15で再構成された画像や、MRI装置101をユーザが操作するための各種の操作画面などの各種の情報を主制御部19の制御の下に表示する。表示部17としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0033】
入力部18は、オペレータからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力部18としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0034】
主制御部19は、図示していないCPUやメモリ等を有しており、MRI装置101を総括的に制御する。主制御部19は、オペレータの操作などに基づいて決定した撮像条件に適応するRFパルスについての放射タイミング、位相、電力、ならびに信号波形などを設定する機能と、これらを表したRFパラメタを生成してRFパルス生成部9および補正ユニット13に与える機能とを備える。
【0035】
図2はコイル側装置7および補正ユニット13のブロック図である。なお、図2において図1と同一部分には同一の符号を付している。
【0036】
コイル側装置7は、受信コイル7a、クロック生成部7b、アナログデジタル変換器(ADC)7c、データ送信部7dおよびアンテナ7eを具備する。
【0037】
受信コイル7aは、被検体200から放射された磁気共鳴エコーや送信コイルユニット6から放射されたRFパルスを受けて、電気的なRF信号を得る。
【0038】
クロック生成部7bは、第1のクロック信号とほぼ同じ周波数の第2のクロック信号を生成する。
【0039】
ADC7cは、受信コイル7aで得られたRF信号を第2のクロック信号に同期したサンプリングタイミング毎にサンプリングして量子化することにより、RF信号をRFデータに変換する。
【0040】
データ送信部7dは、RFデータを無線伝送するための伝送用信号を生成する。具体的にはデータ送信部7dは、RFデータに対して、符号化、変調およびレベル調整などを施す。すなわちデータ送信部7dは、RFデータに対し、デジタル送信のための符号化を施す。この符号化には、例えば畳み込み符号、リードソロモン符号、ターボ符号、あるいはLDCP符号などを適用可能である。そしてデータ送信部7dは、符号化した後のRFデータにより搬送波を変調することによって伝送用信号を得る。さらにデータ送信部7dは、伝送用信号のレベルを無線伝送するのに適するレベルに調整した上でアンテナ7eに供給する。
【0041】
アンテナ7eは、伝送用信号を電磁波として放射する。
【0042】
補正ユニット13は、RFパルス検出部13a、位相検出部13bおよび位相補正部13cを含む。
【0043】
RFパルス検出部13aは、データ受信部12で抽出されたRFデータが表すRF信号からRFパルス信号を検出する。
【0044】
位相検出部13bは、RFパルス検出部13aで検出されたRFパルス信号の位相を検出する。
【0045】
位相補正部13cには、RFパルス生成部9に与えられるのと同じRFパラメタが主制御部19から与えられる。位相補正部13cは、RFパラメタに表された位相と位相検出部13bで検出された位相とに基づいて、RFデータが表すエコー信号にADC7cでのデジタル化に際して生じる位相ずれ量を算出する。位相補正部13cは、上記の算出した位相ずれ量を補償するようにRFデータを補正する。位相補正部13cで補正されたのちのRFデータが補正ユニット13の出力としてデータ処理部14に与えられる。
【0046】
次に以上のように構成されたMRI装置101の動作について説明する。ただし、エコー信号を被検体200で生じさせ、エコー信号を収集し、この収集したエコー信号に基づいて被検体200に関する画像を再構成する動作などのような既存のMRI装置と同様な動作については説明を省略し、MRI装置101の特徴的な動作を中心に説明することとする。
【0047】
MRI装置101での被検体200の撮像では、送信コイルユニット6から放射されるRFパルスによって励起されたスピンが熱的平衡状態に戻る過程で生じる磁気共鳴エコーを受信コイル7aにより受信する。磁気共鳴エコーは微弱な電磁波であるため、受信コイル7aは被検体200に近接して配置される。このため、RFパルスも受信コイル7aに到達している。従って、撮像の際に受信コイル7aで得られる高周波信号は、例えば図3に示すような信号となる。すなわち、受信コイル7aで得られる高周波信号には、RFパルス信号P1,P2,P3…のそれぞれの後に、エコー信号E1,E2,E3…が生じる。なお、図3においては、RFパルス信号P1,P2,P3…の全てが、90度パルスと180度パルスの組み合わせによりなる例を示しているが、これは適用するパルスシーケンスにより異なることがある。
【0048】
上記のような高周波信号は、RFパルス信号およびエコー信号を含んだままでADC7cに入力される。ADC7cは、入力されるRF信号を第2のクロック信号に同期してデジタル化してRFデータを得る。
【0049】
さて、クロック生成部7bは、第1のクロック信号とできるだけ近い周波数を持つ第2のクロック信号を生成するように動作する。しかしながら、クロック生成部7bは第1のクロック信号との同期を取っておらず、第1および第2のクロック信号の周波数が互いに一致する保証はない。そして実際には、クロック生成部7bを構成する部品の特性のばらつきなどに起因して、第1および第2のクロック信号に周波数ずれが生じてしまうことがある。そして第1および第2のクロック信号に周波数ずれが生じていると、RFデータが表すRF信号には、デジタル化前の本来のRF信号に対して位相ずれが生じる。
【0050】
話を簡単にするために、RFパルス信号中の基準タイミングにおける本来の位相(以下、RF正規位相と称する)と、エコー信号中の基準タイミングにおける本来の位相(以下、エコー正規位相と称する)とが一定である場合を考える。この場合には、RF正規位相およびエコー正規位相の時間変化特性は、図3に破線L1で示すような特性となるはずである。しかしながら第1および第2のクロック信号に周波数ずれが生じていると、RFデータが表すRF信号におけるRFパルス信号中の基準タイミングの位相(以下、RF実位相と称する)およびエコー信号中の基準タイミングの位相(以下、エコー実位相と称する)の時間変化特性は、例えば図3に実線L2で示すような特性になってしまう。
【0051】
なお、RF正規位相とエコー正規位相とが互いに異なる場合、RF正規位相が複数のRFパルス信号のそれぞれで異なる場合、あるいはエコー正規位相が複数のエコー信号のそれぞれで異なる場合も当然ある。しかしこれらの場合でも第1および第2のクロック信号に周波数ずれが生じているならば、RF実位相およびエコー実位相の時間変化特性がRF正規位相およびエコー正規位相の時間変化特性とは異なってしまうことに変わりはない。そして、RF実位相の時間変化特性とエコー実位相の時間変化特性とには相関がある。
【0052】
従って、RF正規位相とRF実位相との位相差に基づくことでエコー正規位相とエコー実位相との間のずれを補償することが可能であり、そのための補正を補正ユニット13において以下のように行う。
【0053】
まず、RFパルス検出部13aにより、RFデータが表すRF信号中からRFパルス信号を検出する。
【0054】
RFパルス検出部13aにおける処理は、RFパルス信号を検出できれば如何なる処理であっても良いが、例えば次のような処理を適用することができる。
【0055】
(第1の検出処理例)
RF信号中にRFパルスが含まれる期間は、RFパルス生成部9がRFパルスを出力するタイミングから明らかである。そこでRFパルス検出部13aは、RFパラメタに基づいてRF信号中にRFパルスが含まれる期間を判定し、その期間にデータ受信部12から出力されるRFデータをRFパルスを表すものとして検出する。ただしこの場合には、主制御部19からRFパルス検出部13aへとRFパラメタを与えるようにする。あるいは、RFパルス生成部9がRFパルスを出力する期間を、RFパルス生成部9または主制御部19からRFパルス検出部13aへと通知しても良い。
【0056】
(第2の検出処理例)
一般に、RFパルスはエコー信号に比べて振幅が大きい。すなわち図4に示すようにRFパルスの最大振幅値A1はエコー信号の最大振幅値A2よりも大きくなっている。この性質を利用してRFパルス検出部13aでは、RFデータが表すRF信号の振幅値が振幅値A1よりも小さく、かつ振幅値A2よりも大きく設定された閾値を上回ったことに応じてRFパルスを表すRFデータが入力されていることを認識し、当該RFデータをRFパルスを表すものとして検出する。
【0057】
(第3の検出処理例)
ADC7cは一般に、表現可能な振幅レベルに限りがある。そしてこの表現可能な振幅レベルの範囲を例えば図5のR1のようにエコー信号の最大振幅A2に合わせて調整すると、RFデータが表すRF信号は、例えば図5に示す区間P11のように一部区間が飽和することになる。この性質を利用してRFパルス検出部13aは、RFデータが表すRF信号が飽和したのち、この飽和が解消されるタイミングをもってRFパルスを表すRFデータが入力されていることを認識し、当該RFデータをRFパルスを表すものとして検出する。
【0058】
次に位相検出部13bにより、RFパルス検出部13aで検出されたRFパルス中の基準タイミングにおける位相、すなわちRF実位相を検出する。
【0059】
なお、RFデータが表すRFパルス信号の波形が図5に示すように飽和している場合、この飽和した部分の波形は歪みが生じている。このように歪んだ波形を用いて位相検出部13bにて位相を検出すると、その検出結果に誤差が生じてしまう場合がある。そこで位相検出部13bでは、図5中の区間P12のように飽和が生じない区間の波形を使うことが望ましい。
【0060】
位相検出部13bでは、RFパルスの周波数がわかっている場合には、その周波数成分とRFパルス検出部13aで検出されたRFパルス信号との相関計算をすることによって位相を求めることが可能である。
【0061】
さて、位相補正部13cは、位相検出部13bで検出されたRF実位相に基づいて、RFデータが表す信号に生じている位相ずれを補償するべくRFデータを補正する。位相補正部13cにおける処理は、RFデータが表す信号に生じている位相ずれを低減する処理であれば如何なる処理であっても良いが、例えば次のような処理を適用することができる。
【0062】
(第1の補正処理例)
位相補正部13cは、位相検出部13bでRF実位相が新たに検出されると、そのRF実位相のRF正規時相に対する位相差を求める。そして位相補正部13cは、当該位相差を減じ得る補正量を設定する。典型的には、RF実位相のRF正規時相に対する位相差と絶対値が同じで方向が異なる量を補正量とする。つまり、RF実位相のRF正規時相に対する位相差が+30度であるならば、位相補正部13cは補正量を−30度に設定する。そして位相補正部13cは、このように設定した補正量を次にRF実位相が検出されるまでの間に渡って適用し、その補正量だけ位相を変化させるようにRFデータを補正する。
【0063】
図6は第1の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図である。図6は、RF正規位相およびRF実位相の時間変化特性が図3に示すものであることを前提としている。
【0064】
この場合、タイミングT1において検出されるRF実位相Pb1はRF正規位相Pa1と一致し、RF実位相Pb1のRF正規位相Pa1に対する位相差は0である。そこで位相補正部13cは、次にRF実位相が検出されるタイミングT3までの間は、補正量を0とする。かくして、エコー信号E1については、位相の補正は行われない。
【0065】
タイミングT3において検出されるRF実位相Pb2のRF正規位相Pa2に対する位相差がPD1となっている。そこで位相補正部13cは、次にRF実位相が検出されるタイミングT5までの間は、補正量を−PD1とする。かくしてエコー信号E2については、PD1だけ位相を遅らせるように補正される。
【0066】
このように第1の補正処理例では、あるRFパルス信号に基づいて検出されたRF実位相のRF正規位相に対する位相差を、そのRFパルス信号の直後に生じるエコー信号における位相ずれ量であると見なしてエコー信号における位相ずれを補償するための補正量を設定している。ただし、図3に示すように、RF実位相が検出されるタイミングがエコー信号のタイミングとは異なるためにエコー信号の位相ずれの量はRF実位相のRF正規位相に対する位相差とは異なることがあるし、一回のエコー信号の中でも位相ずれ量が時間とともに変動することがある。例えば図3では、RF実位相のRF正規位相に対する位相差は、タイミングT1よりもタイミングT2のほうが、タイミングT3よりもタイミングT4のほうが、さらにはタイミングT5よりもタイミングT6のほうがそれぞれ大きい。しかしながら、RFパルス信号の放射を停止してからエコー信号が生じるまでの期間や一回のエコー信号が生じている期間は僅かであるために、その期間における位相ずれ量も僅かである。このために第1の補正処理例によってエコー信号における位相ずれを十分に低減できる。
【0067】
(第2の補正処理例)
位相補正部13cは、位相検出部13bで過去に検出されたRF実位相を少なくとも1つ保持しておく。この位相補正部13cが保持するRF実位相は、最も最近に検出されたものを含むことが好ましい。位相補正部13cは、位相検出部13bでRF実位相が新たに検出されると、この新たなRF実位相と上記の保持してある過去のRF実位相とに基づいて補完処理によって、RF実位相の前回の検出タイミングから今回の検出タイミングまでのRF実位相の変化特性を判定する。続いて位相補正部13cは、エコー信号が到来するタイミングの近辺のタイミングにおけるRF実位相を上記の変化特性に基づいて推定する。さらに位相補正部13cは、推定したRF実位相のRF正規位相に対する位相差を求める。そして位相補正部13cは、当該位相差を減じ得る補正量を設定する。ただし、ここで設定する補正量は、RF実位相の前回の検出タイミングから今回の検出タイミングまでにデータ受信部12で受信されたRFデータに適用するべきものである。そこで位相補正部13cは、RFデータを少なくともRFパルス信号の繰り返し周期分はバッファリングしておく。そして、RF実位相の前回の検出タイミングから今回の検出タイミングまでにデータ受信部12で受信されたRFデータを、上記のように新たに設定した補正量だけ位相を変化させるように補正する。
【0068】
図7は第2の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図である。図7は、RF正規位相およびRF実位相の時間変化特性が図3に示すものであることを前提としている。
【0069】
この場合、位相補正部13cは、タイミングT1において検出されるRF実位相Pb1とタイミングT3において検出されるRF実位相Pb2とに基づいて、タイミングT1からタイミングT3までの期間におけるRF実位相の変化特性を図7に示すように推定する。この特性に基づいて位相補正部13cは、タイミングT11におけるRF実位相とRF励起位相との位相差PD11を求め、タイミングT3からタイミングT5までの補正量を−PD11とする。そしてこの期間には、タイミングT1からタイミングT3までの期間にデータ受信部12で受信されたRFデータが、PD11だけ位相を遅らせるように補正される。つまりエコー信号E1については、PD11だけ位相を遅らせるように補正される。
【0070】
このように第2の補正処理例では、複数のRFパルス信号に基づいてそれぞれ検出された複数のRF実位相に基づいてエコー信号が到来するタイミングの近辺のタイミングにおける位相ずれ量を推定してエコー信号における位相ずれを補償するための補正量を設定している。ただし、図3に示すように、一回のエコー信号の中でも位相ずれ量が時間とともに変動することがある。しかしながら、一回のエコー信号が生じている期間は僅かであるために、その期間における位相ずれ量も僅かである。このために第2の補正処理例によってエコー信号における位相ずれを十分に低減できる。
【0071】
(第3の補正処理例)
位相補正部13cは、第2の補正処理例の場合と同様に、RF実位相の前回の検出タイミングから今回の検出タイミングまでのRF実位相の変化特性を判定する。続いて位相補正部13cは、RF実位相の変化特性に基づいてRF実位相のRF正規位相に対する位相差の変化特性の傾きを反転させた特性として補正量の変化特性を求める。そして位相補正部13cは、RF実位相の今回の検出タイミングから次の検出タイミングまでにおける補正量を上記の補正量の変化特性に応じて設定する。さらに位相補正部13cは、第2の補正処理例の場合と同様にバッファリングしておいたRFデータを上記のように設定した補正量で補正する。
【0072】
図8は第3の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図である。図8は、RF正規位相およびRF実位相の時間変化特性が図3に示すものであることを前提としている。
【0073】
この場合、位相補正部13cは、タイミングT1において検出されるRF実位相Pb1とタイミングT3において検出されるRF実位相Pb2とに基づいて、タイミングT1からタイミングT3までの期間におけるRF実位相の変化特性を図8に示すように推定する。この特性に基づいて位相補正部13cは、タイミングT3からタイミングT5までの補正量を図8に示すような変化特性で変更しながら設定する。そしてこの期間には、タイミングT1からタイミングT3までの期間にデータ受信部12で受信されたRFデータが、上記のような変化特性で設定される補正量だけ位相を遅らせるように補正される。
【0074】
このように第3の補正処理例では、RF実位相のRF正規位相に対する位相差の変化特性に基づいて位相ずれ量の変化に追随するように補正量を設定している。従って、RF実位相が検出されるタイミングとエコー信号のタイミングとのずれや一回のエコー信号がある程度の期間に渡り継続することに起因する位相ずれ量の変化をも考慮した補償が行えるので、エコー信号における位相ずれを高精度に低減できる。
【0075】
なお、図7および図8では、RF実位相の変化特性を求めるための補完処理として線形補完を採用した例を示している。しかしながら、最小2乗曲線による補完やスプライン補完などの別の補完法を任意に採用可能である。
【0076】
以上のように第1の実施形態によれば、エコー信号およびRFパルス信号をいずれもADC7cによりデジタル化させておき、このデジタル化の際にRFパルス信号に生じた位相ずれに基づいて、エコー信号にデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するための補正量を設定し、その補正量だけエコー信号の位相を補正する。このため、第1のクロック信号と第2のクロック信号との間に周波数ずれがあった場合でも、それに起因したエコー信号の位相ずれを低減することができる。そしてこれにより、位相ずれの小さなエコー信号に基づいた高精度な画像の再構成を行うことが可能となる。
【0077】
(第2の実施形態)
第2の実施形態におけるMRI装置102の概略構成は第1の実施形態におけるMRI装置101と同様である。そしてMRI装置102がMRI装置101と異なるのは、コイル側装置7および補正ユニット13の構成にある。
【0078】
図9はMRI装置102の要部の構成を示すブロック図である。なお、図9において図1および図2と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0079】
MRI装置102におけるコイル側装置7は、受信コイル7a、クロック生成部7b、ADC7c、アンテナ7e、RFパルス検出部7fおよびデータ送信部7gを具備する。すなわちMRI装置102におけるコイル側装置7は、MRI装置101のコイル側装置7におけるデータ送信部7dに代えてデータ送信部7gを備えるとともに、RFパルス検出部7fを追加して備える。
【0080】
RFパルス検出部7fには、ADC7cから出力されるRFデータが入力される。RFパルス検出部7fは、第1の実施形態におけるRFパルス検出部13aと同様な処理によってRFデータが表すRF信号中からRFパルス信号を検出する。
【0081】
データ送信部7gは、データ送信部7dと同様な処理によって伝送用信号を得る。ただしデータ送信部7gは、RFパルス検出部7fでの検出結果に基づいて、ADC7cから出力されるRFデータのうちのRFパルス信号およびエコー信号を表す部分を含んだ一部のみに基づいて伝送用信号を生成する。
【0082】
MRI装置102における補正ユニット13は、位相検出部13bおよび位相補正部13cを具備する。すなわちMRI装置102における補正ユニット13は、MRI装置101の補正ユニット13におけるRFパルス検出部13aを有していない。そしてデータ受信部12から出力されるRFデータが位相検出部13bに入力される。
【0083】
このMRI装置102においては、第1の実施形態で説明したエコー信号の位相ずれの補償のためにRFデータを補正する処理に関しては、RFパルス信号の検出のみをコイル側装置7にて行う点がMRI装置101と異なっている。
【0084】
かくしてこの第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0085】
さらに第2の実施形態によれば、RFデータのうちのRFパルス信号およびエコー信号のいずれをも表さない区間については無線伝送しない。このため、無線伝送するデータの量を削減できる。すなわち、データ送信部7gによるデータの伝送レートをデータ送信部7dよりも低減することができる。
【0086】
ただし第2の実施形態では、RFパルス検出部7fを備えるために、コイル側装置7は第1の実施形態よりも大型化してしまう可能性がある。そこで、コイル側装置7を小型化することをデータの伝送レートを低減することよりも優先する場合には、第2の実施形態よりも第1の実施形態の方が好適となる。
【0087】
(第3の実施形態)
第3の実施形態におけるMRI装置103の概略構成は第1の実施形態におけるMRI装置101と同様である。そしてMRI装置103がMRI装置101と異なるのは、コイル側装置7および補正ユニット13の構成にある。
【0088】
図10はMRI装置103の要部の構成を示すブロック図である。なお、図10において図1および図2と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0089】
MRI装置103におけるコイル側装置7は、受信コイル7a、クロック生成部7b、ADC7c、アンテナ7e、RFパルス検出部7h、位相検出部7iおよびデータ送信部7jを具備する。すなわちMRI装置103におけるコイル側装置7は、MRI装置101のコイル側装置7におけるデータ送信部7dに代えてデータ送信部7jを備えるとともに、RFパルス検出部7hおよび位相検出部7iを追加して備える。
【0090】
RFパルス検出部7hには、ADC7cから出力されるRFデータが入力される。RFパルス検出部7hは、第1の実施形態におけるRFパルス検出部13aと同様な処理によってRFデータが表すRF信号からRFパルス信号を検出する。
【0091】
位相検出部7iは、第1の実施形態における位相検出部13bと同様な処理によって、RFパルス検出部7hで検出されたRFパルスの位相を検出し、その位相値を表す位相データを出力する。
【0092】
データ送信部7jは、データ送信部7dと同様な処理によって伝送用信号を得る。ただしデータ送信部7gは、ADC7cから出力されるRFデータのうちのエコー信号を表す部分を含んだ一部のみに基づいて伝送用信号を生成する。またデータ送信部7dは、位相検出部7iが出力する位相データに基づく伝送用信号を生成する。
【0093】
MRI装置102における補正ユニット13は、位相補正部13cを具備する。すなわちMRI装置102における補正ユニット13は、MRI装置101の補正ユニット13におけるRFパルス検出部13aおよび位相検出部13bを有していない。そしてデータ受信部12から出力されるRFデータおよび位相データが位相検出部13bに入力される。
【0094】
このMRI装置103においては、第1の実施形態で説明したエコー信号の位相ずれの補償のためにRFデータを補正する処理に関しては、RFパルスの検出と、RF実位相の検出とをコイル側装置7にて行う点がMRI装置101と異なっている。
【0095】
かくしてこの第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0096】
さらに第3の実施形態によれば、RFデータのうちのエコー信号を表さない区間については無線伝送しない。このため、無線伝送するデータの量を削減できる。すなわち、データ送信部7jによるデータの伝送レートをデータ送信部7dよりも低減することができる。なお、第3の実施形態によれば、RFデータの他に位相データも無線伝送する必要があるが、位相データは1つの位相値を表すだけでよいのでデータサイズは小さくて良く、無線伝送するデータの量は第1および第2の実施形態のいずれよりも低減できる。
【0097】
ただし第3の実施形態では、RFパルス検出部7hおよび位相検出部7iを備えるために、コイル側装置7は第1および第2の実施形態よりも大型化してしまう可能性がある。そこで、コイル側装置7を小型化することをデータの伝送レートを低減することよりも優先する場合には、第3の実施形態よりも第1または第2の実施形態の方が好適となる。
【0098】
(第4の実施形態)
図11は第4の実施形態に係るMRI装置104の構成を示す図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0099】
MRI装置104は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイルユニット6、クロック生成部8、RFパルス生成部9、RFパルス・傾斜磁場制御部10、アンテナ11、データ受信部12、補正ユニット13、データ処理部14、再構成システム15、記憶部16、表示部17、入力部18、主制御部19、コイル側装置20およびデータ送信部21を具備する。
【0100】
すなわちMRI装置104は、MRI装置101におけるコイル側装置7に代えてコイル側装置20を備える。さらにMRI装置104は、データ送信部21を追加して備える。
【0101】
コイル側装置20は、天板4a上に載置されたり、あるいは被検体200に装着される。そして撮影時には、被検体200とともに撮像空間内に挿入され、被検体200から放射された磁気共鳴エコーや送信コイルユニット6から放射されたRFパルスを含む電磁波を受けて電気的なRF信号を得る。コイル側装置20は、RF信号をデジタル化して得られたRFデータを含んだ上り伝送用信号を無線送信する。
【0102】
データ送信部21には、主制御部19からRFパラメタが与えられる。データ送信部21は、RFパラメタを含んだ下り伝送用信号を生成し、この下り伝送用信号をアンテナ11に供給する。なお、下り伝送用信号は、FDD(frequency division duplex)、TDD(time division duplex)あるいはCDD(code division duplex)などの周知の双方向通信方式を利用して上り伝送用信号と分離可能とする。アンテナ11は、データ受信部12とデータ送信部23とで別々に用意しても良い。その場合、アンテナは2つ以上になる。
【0103】
図12は補正ユニット13およびコイル側装置20のブロック図である。なお、図12において図1、図2および図9と同一部分には同一の符号を付している。
【0104】
コイル側装置20は、受信コイル7a、クロック生成部7b、ADC7c、アンテナ7e、RFパルス検出部7f、データ送信部7g、データ受信部20a、位相検出部20bおよびクロック制御部20cを具備する。すなわちコイル側装置20は、第2の実施形態におけるコイル側装置7が具備する要素に追加してデータ受信部20a、位相検出部20bおよびクロック制御部20cを備える。アンテナ7eは、データ受信部22aとデータ送信部7dとで別々に用意しても良い。その場合、アンテナは2つ以上になる。
【0105】
データ受信部20aは、アンテナ11を介してデータ送信部21により無線送信された下り伝送用信号をアンテナ7eを介して受けて、この下り伝送用信号からRFパラメタを抽出する。データ受信部20aは、抽出したRFパラメタをクロック制御部20cへ与える。
【0106】
位相検出部20bは、第1の実施形態における位相検出部13bと同様な処理によって、RFパルス検出部7fで検出されたRFパルスの位相を検出し、その位相値を表す位相データを出力する。
【0107】
クロック制御部20cには、RFパルス生成部9に与えられるのと同じRFパラメタが、データ送信部21、アンテナ11,7eおよびデータ受信部20aを介して主制御部19から与えられる。クロック制御部20cは、RFパラメタに表された位相と位相検出部20bで検出された位相との位相差の時間変化傾向を求め、それに基づいて第2のクロック信号の周波数を調整するようにクロック生成部7bを制御する。
【0108】
このMRI装置104では、エコー信号にADC7cでのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するためのRFデータの補正は、第2の実施形態と同様に行われる。かくしてこの第4の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0109】
ところで、RF実位相のRF正規位相に対する位相ずれ量が±180度を超えると、その位相ずれ量を正しく判定することができなくなる。例えば+190度の位相回転は、−170度の位相回転と同じ位相になり、これら2つの状態を区別することはできない。このような位相を区別できない状態を位相の不確定性と呼び、これが発生した場合には位相補正部13cにて適正な補正が行えなくなる。
【0110】
しかしながらMRI装置104では、クロック制御部20cが、位相検出部20bで検出されたRF実位相のRF正規位相に対する位相差の時間変化傾向を監視する。そしてクロック制御部20cは、当該位相差が、時間とともに増加する傾向にあるならば第2のクロック信号の周波数を下げるように、また時間とともに減少する傾向にあるならば第2のクロック信号の周波数を上げるようにクロック生成部7bを制御する。
【0111】
これにより、第1のクロック信号と第2のクロック信号との周波数差が小さく保たれ、RF実位相のRF正規位相に対する位相ずれ量が±180度を超えてしまう可能性を低減でき、位相の不確定性が発生する可能性を低減することができる。従って、位相補正部13cにて適正な補正を行える可能性を高めることが可能である。
【0112】
(第5の実施形態)
第5の実施形態におけるMRI装置105の概略構成は第4の実施形態におけるMRI装置104と同様である。そしてMRI装置105がMRI装置104と異なるのは、補正ユニット13およびコイル側装置20の構成にある。
【0113】
図13は補正ユニット13およびコイル側装置20のブロック図である。なお、図13において図1、図2および図10と同一部分には同一の符号を付している。
【0114】
コイル側装置20は、受信コイル7a、クロック生成部7b、ADC7c、アンテナ7e、RFパルス検出部7h、位相検出部7i、データ送信部7j、データ受信部20dおよびクロック制御部20eを具備する。すなわちコイル側装置20は、第3の実施形態におけるコイル側装置7が具備する要素に追加してデータ受信部20dおよびクロック制御部20eを備える。
【0115】
データ受信部20dは、アンテナ11を介してデータ送信部21により無線送信された下り伝送用信号をアンテナ7eを介して受けて、この下り伝送用信号からRFパラメタを抽出する。データ受信部20dは、抽出したRFパラメタをクロック制御部20eへ与える。
【0116】
クロック制御部20eには、RFパルス生成部9に与えられるのと同じRFパラメタが、データ送信部21、アンテナ11,7eおよびデータ受信部20aを介して主制御部19から与えられる。クロック制御部20cは、RFパラメタに表された位相と位相検出部7iで検出された位相との位相差の時間変化傾向を求め、それに基づいて第2のクロック信号の周波数を調整するようにクロック生成部7bを制御する。
【0117】
このMRI装置105では、エコー信号にADC7cでのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するためのRFデータの補正は、第3の実施形態と同様に行われる。かくしてこの第5の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0118】
さらにMRI装置105では、クロック制御部20eが、位相検出部7iで検出されたRF実位相のRF正規位相に対する位相差の時間変化傾向を監視する。そしてクロック制御部20eは、当該位相差が、時間とともに増加する傾向にあるならば第2のクロック信号の周波数を下げるように、また時間とともに減少する傾向にあるならば第2のクロック信号の周波数を上げるようにクロック生成部7bを制御する。
【0119】
これにより、第1のクロック信号と第2のクロック信号との周波数差が小さく保たれ、RF実位相のRF正規位相に対する位相ずれ量が±180度を超えてしまう可能性を低減でき、位相の不確定性が発生する可能性を低減することができる。従って、位相補正部13cにて適正な補正を行える可能性を高めることが可能である。
【0120】
(第6の実施形態)
図14は第6の実施形態に係るMRI装置106の構成を示す図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0121】
MRI装置106は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイルユニット6、クロック生成部8、RFパルス生成部9、RFパルス・傾斜磁場制御部10、アンテナ11、データ受信部12、データ処理部14、再構成システム15、記憶部16、表示部17、入力部18、主制御部19、コイル側装置22およびデータ送信部23を具備する。
【0122】
すなわちMRI装置106は、MRI装置101におけるコイル側装置7に代えてコイル側装置22を備える。さらにMRI装置106は、補正ユニット13を備えないとともに、データ送信部23を追加して備える。補正ユニット13を備えないために、データ受信部12から出力されるRFデータはデータ処理部14に入力される。
【0123】
コイル側装置22は、天板4a上に載置されたり、あるいは被検体200に装着される。そして撮影時には、被検体200とともに撮像空間内に挿入され、被検体200から放射された磁気共鳴エコーや送信コイルユニット6から放射されたRFパルスを含む電磁波を受けて電気的なRF信号を得る。このRF信号には、磁気共鳴エコーを表す磁気共鳴エコー信号(以下、エコー信号と記す)およびRFパルスを表すRFパルス信号を含む。コイル側装置22は、RF信号をデジタル化するとともに第1の実施形態において補正ユニット13で行っていたのと同様な補正処理を施して得られたRFデータを含んだ上り伝送用信号を無線送信する。
【0124】
データ送信部23には、主制御部19からRFパラメタが与えられる。データ送信部23は、RFパラメタを含んだ下り伝送用信号を生成し、この下り伝送用信号をアンテナ11に供給する。なお、下り伝送用信号は、FDD(frequency division duplex)やTDD(time division duplex)などの周知の双方向通信方式を利用して上り伝送用信号と分離可能とする。
【0125】
図15はコイル側装置22のブロック図である。なお、図15において図1および図2と同一部分には同一の符号を付している。
【0126】
コイル側装置22は、受信コイル7a、クロック生成部7b、ADC7c、データ送信部7d、アンテナ7e、データ受信部22a、RFパルス検出部22b、位相検出部22cおよび位相補正部22dを具備する。すなわちコイル側装置22は、第1の実施形態におけるコイル側装置7が具備する要素に追加してデータ受信部22a、RFパルス検出部22b、位相検出部22cおよび位相補正部22dを備える。
【0127】
データ受信部12は、アンテナ11を介してデータ送信部23により無線送信された下り伝送用信号をアンテナ7eを介して受けて、下り伝送用信号からRFパラメタを抽出する。データ受信部12は、抽出したRFパラメタを位相補正部22dへ与える。
【0128】
RFパルス検出部22bは、第1の実施形態におけるRFパルス検出部13aと同様な処理によってRFデータが表すRF信号中からRFパルス信号を検出する。
【0129】
位相検出部22cは、第1の実施形態における位相検出部13bと同様な処理によって、RFパルス検出部22bで検出されたRFパルスの位相を検出し、その位相値を表す位相データを出力する。
【0130】
位相補正部22dには、RFパルス生成部9に与えられるのと同じRFパラメタが、データ送信部23、アンテナ11,7eおよびデータ受信部22aを介して主制御部19から与えられる。位相補正部22dは、RFパラメタに表された位相と位相検出部22cで検出された位相とに基づいて、RFデータが表すエコー信号にADC7cでのデジタル化に際して生じる位相ずれ量を算出する。位相補正部22dは、上記の算出した位相ずれ量を補償するようにRFデータを補正する。位相補正部22dで補正されたのちのRFデータがデータ送信部7dに与えられる。
【0131】
このMRI装置106では、MRI装置101では補正ユニット13で行っていた処理の全てをコイル側装置22にて行う。そして当該処理は、補正ユニット13で行っていた処理と同様である。ただし、主制御部19で生成されるRFパラメタを位相補正部22dに当たる必要があるため、データ送信部23アンテナ11,7eおよびデータ受信部22aによりRFパラメタを無線伝送している。
【0132】
かくしてこの第6の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0133】
なお、第6の実施形態においては、システム側装置では受信コイル7aで受信されたRFパルスに関するデータを必要としない。そこでデータ送信部7dは、RFデータのうちのエコー信号を含んだ一部のデータのみを含んだ上り伝送用信号を生成しても良い。そしてこのようにすれば、無線伝送するデータの量を第1の実施形態よりも削減できる。すなわち、データ送信部7dによるデータの伝送レートを第1の実施形態よりも低減することができる。
【0134】
ただし第6の実施形態では、データ受信部22a、RFパルス検出部22b、位相検出部22cおよび位相補正部22dを備えるために、コイル側装置22はコイル側装置7よりも大型化してしまう可能性がある。そこで、コイル側装置を小型化することをデータの伝送レートを低減することよりも優先する場合には、第6の実施形態よりも第1の実施形態の方が好適となる。
【0135】
(第7の実施形態)
第7の実施形態におけるMRI装置107の概略構成は第6の実施形態におけるMRI装置106と同様である。そしてMRI装置107がMRI装置106と異なるのは、コイル側装置22の構成にある。
【0136】
図16はコイル側装置22のブロック図である。なお、図16において図1、図2および図15と同一部分には同一の符号を付している。
【0137】
コイル側装置22は、受信コイル7a、クロック生成部7b、ADC7c、データ送信部7d、アンテナ7e、データ受信部22a、RFパルス検出部22b、位相検出部22c、位相補正部22dおよびクロック制御部22eを具備する。すなわちコイル側装置22は、第6の実施形態におけるコイル側装置22が具備する要素に追加してクロック制御部22eを備える。
【0138】
クロック制御部22eには、RFパルス生成部9に与えられるのと同じRFパラメタが、データ送信部23、アンテナ11,7eおよびデータ受信部22aを介して主制御部19から与えられる。クロック制御部22eは、RFパラメタに表された位相と位相検出部22cで検出された位相との位相差の時間変化傾向を求め、それに基づいて第2のクロック信号の周波数を調整するようにクロック生成部7bを制御する。
【0139】
このMRI装置107では、エコー信号にADC7cでのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するためのRFデータの補正は、第6の実施形態と同様に行われる。かくしてこの第7の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0140】
さらにMRI装置107では、クロック制御部22eが、位相検出部22cで検出されたRF実位相のRF正規位相に対する位相差の時間変化傾向を監視する。そしてクロック制御部22eは、当該位相差が、時間とともに増加する傾向にあるならば第2のクロック信号の周波数を下げるように、また時間とともに減少する傾向にあるならば第2のクロック信号の周波数を上げるようにクロック生成部7bを制御する。
【0141】
これにより、第1のクロック信号と第2のクロック信号との周波数差が小さく保たれ、RF実位相のRF正規位相に対する位相ずれ量が±180度を超えてしまう可能性を低減でき、位相の不確定性が発生する可能性を低減することができる。従って、位相補正部22dにて適正な補正を行える可能性を高めることが可能である。
【0142】
(第8の実施形態)
第8の実施形態におけるMRI装置108の概略構成は第6の実施形態におけるMRI装置106と同様である。そしてMRI装置108がMRI装置106と異なるのは、コイル側装置22の構成にある。
【0143】
図17はコイル側装置22のブロック図である。なお、図17において図1、図2および図15と同一部分には同一の符号を付している。
【0144】
コイル側装置22は、受信コイル7a、クロック生成部7b、ADC7c、データ送信部7d、アンテナ7e、データ受信部22a、RFパルス検出部22b、位相検出部22cおよびクロック制御部22eを具備する。すなわちコイル側装置22は、第6の実施形態におけるコイル側装置22が具備する要素のうちの位相補正部22dを備えていない。そして補正ユニット13を備えないために、ADC7cから出力されるRFデータはデータ送信部7dに入力される。
【0145】
このMRI装置108では、エコー信号にADC7cでのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するためのRFデータの補正は行わない。
【0146】
しかしながら、第1のクロック信号と第2のクロック信号との周波数差を減少させるための第2のクロック信号の周波数の調整は第6の実施形態と同様に行われる。
【0147】
従って、第1のクロック信号と第2のクロック信号との周波数差が小さく保たれ、エコー信号にADC7cでのデジタル化に際して生じる位相ずれも小さく保たれることになる。そしてこれにより、位相ずれの小さなエコー信号に基づいた高精度な画像の再構成を行うことが可能となる。
【0148】
なお、第8の実施形態では、再構成される画像の精度は第1乃至第7の実施形態に比べて悪くなる。しかしながら第8の実施形態ではRFデータの補正は行わないから、第8の実施形態は第1乃至第7の実施形態に比べて簡易な構成により実現できる。
【0149】
(第9の実施形態)
第9の実施形態におけるMRI装置109の構成は、第1の実施形態におけるMRI装置101とほぼ同様である。そしてMRI装置109がMRI装置101と異なるのは、位相検出部13bの構成にある。
【0150】
図18はMRI装置109の要部のブロック図である。なお、図1および図2と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0151】
MRI装置109の位相検出部13bは、第1位相測定部131、第2位相測定部132、オフセット選出部133および位相出力部134を具備する。
【0152】
第1位相測定部131は、RFパルス検出部13aから出力されるRFパルス信号中の第1の区間内の信号を、RF正規位相に対してオフセットToffだけずらしたSINC関数で除算した信号を用いて第1の位相値を測定する。第1位相測定部131は、それぞれ異なる複数のオフセットToffに関して第1の位相値をそれぞれ測定する。
【0153】
第2位相測定部132は、RFパルス検出部13aから出力されるRFパルス信号中の第2の区間内の信号を、RF正規位相に対してオフセットToffだけずらしたSINC関数で除算した信号を用いて第2の位相値を測定する。第2位相測定部132は、第1位相測定部131が使用するのと同じ複数のオフセットToffに関して第2の位相値をそれぞれ測定する。
【0154】
オフセット選出部133は、同一のオフセットToffに関する第1の位相値と第2の位相値との差の絶対値を複数のオフセットToffのそれぞれに関して求め、この差が最小となるオフセットToff_minを複数のオフセットToff中から選出する。
【0155】
位相出力部134は、オフセットToff_minに関する第1の位相値をRFパルス検出部13aが検出したRFパルスの位相値として出力する。
【0156】
次に以上のように構成されたMRI装置109の動作について説明する。なお、位相検出部13bの動作以外は前記第1の実施形態におけるMRI装置101の動作と同様であるので、その説明は省略する。そしてここでは、位相検出部13bの動作について詳細に説明する。
【0157】
さて、第1の実施形態において説明したように、RFパルス信号の周波数がわかっている場合には、相関計算により位相を計算することが可能である。ただし、RFパルス信号はある一定の周波数成分だけからなる信号ではなく、なんらかの変調がかかった信号となっている。例えばRFパルス信号は、SINC関数とSIN関数の積によって表される。この場合、RFパルス信号を時間tの関数として式(1)のように表すことができる。
【数1】

【0158】
第1のクロック信号の周波数と第2のクロック信号の周波数とにずれがない場合には、式(1)をADC7cでサンプリングして得られる信号は、全てのRFパルスで基本的に同じ信号として観測される。その一方で、第1のクロック信号の周波数と第2のクロック信号の周波数とにずれがある場合には、そのずれの量に応じてサンプリングタイミングに遅れまたは進みが生じる。その結果として、あるRFパルスをサンプリングして得られる信号と、次のRFパルスをサンプリングして得られる信号との間にはずれが生じる。サンプルタイミングのずれがΔTだけある場合に、サンプル周期Tsampでサンプリングして得られる信号は式(2)で表される。
【数2】

【0159】
式(2)のうち、2π・ΔT・fcが位相ずれの項である。従ってこの信号は、前述の通りに同じ周波数をもつ信号、すなわち周波数がfcである信号と相関演算をすることにより、上記の位相ずれの項を算出することができる。これを式で表すと式(3)となる。ただしangle(.)は、1つの複素数値の実部と虚部をそれぞれ2次元平面の2つの軸に割り当てた場合のベクトルの位相を計算する演算を表している。
【数3】

【0160】
式(3)による位相ずれの検出では、相関演算をするサンプル内でSINC関数の項がほとんど変化しない場合、すなわちfsが十分に小さい場合には、高い精度で位相ずれを検出することができる。その一方で、相関演算をするサンプル内でSINC関数の項が大きく変化する場合、すなわちfsが大きい場合には、SINC関数の変化に伴って波形に歪みが生じ、検出した位相ずれ値に誤差が生じてしまう場合がある。逆にいえば、SINC関数の項を除去してから相関演算を行えば、SINC関数による影響を回避することが可能となる。
【0161】
図19はRFパルス信号の波形の一例を示す図である。
【0162】
図19に示すように、RFパルス信号は、一定周波数のSIN信号S1をSINC関数によって振幅変調して形成される。従って、RFパルス信号の包絡線の振幅はSINC関数の項によって表され、包絡線E11のように時間とともに変化する。
【0163】
図20は図19中の領域R11内のRFパルス信号の拡大図である。
【0164】
RFパルス信号は包絡線E11を持っているので、この包絡線E11とまったく同じ関数でRFパルス信号を除算すれば、包絡線の振幅が一定となり、図21に示すような波形の信号が得られる。一方で、包絡線E11から少しずれた包絡線E12であらわされる関数でRFパルス信号を除算した場合には、除算後の信号の包絡線の振幅は一定とはならず、たとえば図22に示すような波形の信号が得られる。
【0165】
図21に示す信号では、SINC関数の項がほぼ完全に除去できており、この信号に基づけばRFパルス信号の位相値を高精度で測定することが可能である。しかしながら、図22に示す信号ではSINC関数の項の影響が少なからず残っているために上記のようなSINC関数による影響を回避し切れず、RFパルス信号の位相値の測定精度が低下してしまう。
【0166】
このように、RFパルス信号からSINC関数の成分を除去するに当たっては、RFパルス信号におけるSINC関数と除算に用いるSINC関数とのタイミングをできるだけ近づけることが望ましい。しかしながらRFパルス検出部13aから出力されるRFパルス信号の位相は未知であり、SINC関数の成分のタイミングも未知である。
【0167】
ここで、所定の基準タイミングからToffだけタイミングをずらしたSINC関数により除算して得られた信号を使って、RFパルス信号のk0サンプル目からk0+kwサンプル目までを相関演算して検出される位相値を次の式(4)で表わす。
【数4】

【0168】
これまでの説明からも明らかなように式(4)による求まる位相値は、RFパルス信号におけるSINC関数の成分のタイミングと上記の基準タイミングとのずれΔTとToffとが等しい場合にもっとも高精度になる。逆にいえば、ΔTとToffとが等しくない場合には、式(4)により求まる位相値には誤差が乗っている。また、その誤差の量や正負の極性は、相関演算を行った範囲で信号が受けている波形の歪みによって変化する。例えば図20中の区間P21と区間P22のそれぞれに関して式(4)による位相値の算出を行った場合、ΔTとToffとが等しい場合には、区間P21,P22のいずれでも図21に示すような信号に基づく適切な位相検出が行われることになる。従って、区間P21,P22のそれぞれで算出される位相値の差は0に近い値になる。一方、ΔTとToffとが等しくない場合には、区間P21,P22のそれぞれで図22に示すような信号に基づく位相検出が行われることになるが、区間P21,P22のそれぞれで波形の歪み方が異なるために、区間P21,P22のそれぞれで算出される位相値の差が大きくなる。このように、互いに時間的にずれた2つの区間のそれぞれで測定した位相値どうしの差の絶対値は、一般にΔTとToffとの差の絶対値が大きいほど大きくなる傾向がある。
【0169】
図23はΔTとToffとの差と2つの区間で測定した位相値の差の絶対値との関係を示す図である。図23では、横軸がΔTとToffとの差を表し、縦軸が2つの区間で測定した位相値の差の絶対値を表す。
【0170】
図23からも、ΔTとToffとの差が0に近づくにつれて、2つの区間で測定した位相値の差の絶対値が急激に減少することがわかる。この性質を用いると、2つの区間で測定した位相値の差の絶対値がもっとも小さくなるToffを調べることによって、ΔTに近い値を判定することができる。これを式であらわすと次の式(5)となる。
【数5】

【0171】
このようにして求めたtoptを使って次の式(6)により算出した位相値は、SINC関数の影響が効率的に削減された高精度な位相値となる。
【数6】

【0172】
以上のような原理に基づく位相検出のためにMRI装置109では、例えば区間P21のような第1の区間に関して式(4)により複数のToffに関する位相値を第1の位相値としてそれぞれ算出し、例えば区間P22のような第2の区間に関して式(4)により複数のToffに関する位相値を第2の位相値としてそれぞれ算出する。
【0173】
オフセット選出部133は、複数のToffのそれぞれに関して、そのToffについての第1および第2の位相値の差の絶対値を求める。そしてオフセット選出部133は、これにより得られる複数の絶対値のうちの最小値に関するToffをToff_minとして選出する。
【0174】
そして位相出力部134は、複数の第1の位相値のうちでToff_minに関するものを、RFパルス検出部13aが検出したRFパルスの位相値として、すなわち位相検出部13bでの検出結果として出力する。
【0175】
かくしてこの第9の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0176】
そして第9の実施形態では、SINC関数とSIN関数の積によって表されるRFパルス信号の位相を高精度に検出することができるので、エコー信号に生じている位相ずれ量を高精度に求めることができる。従って、エコー信号に生じている位相ずれを高精度に補償することが可能で、画像再構成の精度をさらに向上することが可能である。
【0177】
なお、この第9の実施形態における位相検出部の構成は、第2乃至第8の実施形態における位相検出部13b,7i,20b,22cにも適用可能である。
【0178】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0179】
(1) RFパルス信号の位相は、RFパルス信号の波形がある閾値を超えるタイミングを使って検出することも可能である。その原理を図24および図25を参照して説明する。
【0180】
第2のクロック信号の周波数が第1のクロック信号の周波数に対してずれている場合には、そのずれの量に応じて、RFパルス信号をサンプリングするタイミングに遅れまたは進みが生じる。その結果として、RFデータから検出されたRFパルス信号とRFパルス生成部9で生成されたRFパルス信号とを重ねたときに、図24に示すようにタイミングのずれが生じて観測される。ここで閾値を0とした場合、閾値0を超えるタイミングは、一方のRFパルス信号S11ではタイミングT21となり、他方のRFパルス信号S12ではタイミングT22となる。この2つのタイミングT21,T22どうしの差である時間差D1を、RFパルス信号の周期、すなわちRFパルス信号の周波数の逆数で割って、さらに2πを乗じて求まる値がRFパルス信号S11,S12どうしの位相差である。
【0181】
ただし、RFデータにおいてRFパルス信号は離散的なサンプリング値により表されているので、RFパルス信号のレベルが閾値に到達したタイミングをRFデータから直接的に求めることができない。そこで図25に示すように、ある連続する2サンプルがそれぞれ閾値を下回る値と上回る値であった場合に、その間を補完することによって波形が閾値を超えるタイミングを推定すればよい。ただしこの場合には、補完が不完全であるために位相の検出結果に誤差が生じる。図25の例では、実際の時間差がD11であるのに対して、補完を用いて測定された時間差はD12となってしまう。一般に、RFパルス信号の周波数、すなわち波形の変動速度に対してサンプリング周波数が高いほど、サンプリング後の波形がより細かく表わされるため、上記の補完の精度が高くなり、位相の検出結果に生じる誤差が小さくなる。従って、本変形例を利用して位相を検出する場合には、サンプリング周波数が高いことが望ましいといえる。逆にいえば、サンプリング周波数が高い場合、本変形例を適用するのに好適であるといえる。
【0182】
(2) 送信コイルユニット6からRFパルスを放射した際に、受信コイル7aの感度が磁気共鳴エコーを十分に受信できる程度に高く設定されていると、送信コイルユニット6から放射されたRFパルスが受信コイル7aに吸収されて、被検体200のスピンを励起する効率が低下してしまうことがある。そしてこれへの対策として、デカップリングが行われることがある。デカップリングとは、受信コイル7aの感度を一時的に低下させる処理である。
【0183】
このデカップリングを行う場合、受信コイル7aで得られるRFエコー信号のSN比が大幅に悪化し、RFエコー信号の位相検出の精度が低下してしまう恐れがある。そこで前記第1乃至第9の実施形態のいずれにおいても、ADC7cに与えるためのRFパルス信号を、図26に示すように受信コイル7aとは別に備えたアンテナ24を用いて得ても良い。
【0184】
ただしこの場合にアンテナ24は、受信コイル7aと比べて、被検体200から離して配置することが望ましい。
【0185】
(3) 第1乃至第9の実施形態では、クロック生成部8で生成された第1のクロック信号をコイル側装置に無線伝送し、クロック生成部7bではこの無線伝送された第1のクロック信号に同期して第2のクロック信号を生成しても良い。
【0186】
図27は第1のクロック信号を無線伝送するための構成例を示す図である。
【0187】
図27に示す例では、クロック送信部25、アンテナ26,27およびクロック受信部28を追加して設けており、クロック生成部8が出力する第1のクロック信号を、クロック送信部25、アンテナ26,27およびクロック受信部28により無線伝送してクロック生成部7bに入力している。
【0188】
このようにして第2のクロック信号の生成を第1のクロック信号に同期して行うことによって、第2のクロック信号の第1のクロック信号に対する位相ずれが不確定性を起こしてしまう程に大きくなってしまう確率を低減できるため、エコー信号の位相ずれの補償を安定的に実現することが可能である。
【0189】
なお、RFパラメタを無線伝送する場合には、このRFパラメタを第1のクロック信号に多重して無線伝送しても良い。その場合、データ送信部21またはデータ送信部23およびクロック送信部25とは、第1のクロック信号にRFパラメタを多重化した伝送信号を無線送信する送信部に置き換える。データ受信部20a,20d,22aのいずれかとクロック受信部28とも、上記の伝送信号からRFパラメタおよび第1のクロック信号を分離する受信部に置き換える。 (4) 第1の検出処理例を、第5実施形態の位相検出部7iおよび第6乃至第8の実施形態の位相検出部22cに適用する場合には、それらの位相検出部に対してデータ受信部20a,22aからRFパラメタを与えるようにする。また第1の検出処理例を、第3実施形態の位相検出部7iに適用する場合には、例えば第4の実施形態におけるデータ送信部21およびデータ受信部20aに相当する要素を追加して、これらの要素を介して主制御部19から位相検出部7iへとRFパラメタを与えるようにする。
【0190】
(5) 第4の検出処理例を位相検出部7i,20b,22cに適用する場合には、位相検出部7i,20b,22cにてRFパルス信号の周波数が分かっている必要がある。そこでこの場合には、データ受信部20a,20dから位相検出部7i,20b,22cへとRFパラメタを与えて、このRFパラメタに基づいてRFパルス信号の周波数を位相検出部7i,20b,22cにて判定する。ただし、第3の実施形態の場合には、RFパラメタをシステム側装置からコイル側装置7へと伝送することができない。そこで第3の実施形態において位相検出部7iにて第4の検出処理例を適用する場合には、第4の実施形態のデータ送信部21およびデータ受信部20aを追加して備えるようにする。
【0191】
(6) 第2の実施形態および第4の実施形態においては、RFパルス信号のうちの図5に示す区間P12のように飽和していない区間内の信号のみを伝送することが望ましい。このようにして飽和している区間の信号を送信しないことで、無駄なデータを送ることを避けられるため、データ送信部7gのデータレートを効率的に低減することができる。
【0192】
(7) 第4、第5、および第7の実施形態のように、エコー信号の位相補正と第2のクロック信号の周波数調整との双方を行う場合には、システム側装置およびコイル側装置の双方にRFパルス検出部および位相検出部を個別に設けても良い。これにより、システム側装置とコイル側装置との間でRFパルスデータおよび位相データを伝送する必要がない。
【0193】
(8) 主制御部19から各部へは、RFパラメタの全てを通知する必要はなく、RF正規位相やRFパルス信号の周波数などのような必要な情報の判断材料となるパラメタのみを通知すればよい。
【0194】
(9) 受信コイル7aとADC7cの間には、RF信号を調整するためのアナログ回路が挿入されてもよい。例えば、ゲインを調整するためのアンプや、帯域制限するためのフィルタや、周波数変換するためのミキサなどが挿入されてもよい。図26に示すようにRFパルス信号をアンテナ23で得る場合には、これらのアナログ回路の前で受信コイル7aで受信した信号とアンテナ23で受信した信号を合成してもよい。このようにすると、エコー信号とRFパルス信号が同じ調整を受けるため、位相関係を保存しやすくなる。
【0195】
(10) ADC7cよりも後段側に、RF信号を調整するためにRFデータを処理するデジタル回路が挿入されてもよい。例えば、ゲインを調整するデジタルゲイン調整回路や、帯域制限するためのデジタルフィルタや、周波数変換するためのデジタルミキサなどが挿入されてもよい。これらの処理は、RFパルス信号とエコー信号とで同じ処理を施してもよい。このようにすると、エコー信号とRFパルス信号とが同じ調整を受けるため、位相関係を保存しやすくなる。またRFパルス信号とエコー信号とで異なる処理をする場合には、各RFパルス信号毎になされる処理をそれぞれ同じにし、また各エコー信号毎になされる処理をそれぞれ同じにしてもよい。このようにすると、RFパルス信号間、およびエコー信号間の相対的な位相関係が一定となるため、位相の検出および補正がしやすくなる。
【0196】
(11) 一度設定した補正量を複数のエコー信号の位相ずれの補償のために利用しても良い。例えば、撮像開始前における準備作業として補正量を設定し、その補正量を当該撮像が終了するまで利用しても良い。
【0197】
(12) 第1乃至第3の補正処理例によれば、エコー信号の位相を本来の位相に近づけるように補正することができる。しかしながら、RF実位相を検出するタイミングはRF正規位相を求めるタイミングとは必ずしも一致しないため、エコー信号の位相を本来の位相に完全に合わせることは困難である。また、1つのRFパルス内でRF実位相が検出されるタイミングは、複数のRFパルスのそれぞれで変化してしまう恐れがある。そしてこのようなタイミングの変化のために、複数のエコー信号のそれぞれの補正後の位相がばらついてしまう恐れがある。
【0198】
上記の点を考慮して第1の補正処理例を以下のように変形した第4の補正処理も適用が可能である。
【0199】
まず、位相検出部13bで検出されるRF実位相は、RF信号に含まれるRFパルスが全て同一波形である場合、一定の基準位相に対する位相のずれ量を表す値となる。従って、RF実位相に一定の係数を乗じた値として補正量を設定すれば、複数のエコー信号のそれぞれの位相を一定の位相に合わせることができる。ただし、基準位相はRF正規位相とは無関係な位相であり、かつ基準位相とRF正規位相との位相差は位相補正部13cで認識することはできない。このため、複数のエコー信号のそれぞれの位相を本来の位相に合わせることにはならない。しかしながら、複数のエコー信号の位相が互いに一致していれば、高精度の画像の再構成は可能であり、この第4の補正処理例による補正も有効である。
【0200】
具体的には、例えば上記の係数を−1とする。この場合には位相補正部13cは、RF実位相と絶対値が同じで方向が異なる量を補正量とすることになる。つまり、RF実位相が−20度であるならば、位相補正部13cは補正量を+20度に設定する。そして位相補正部13cは、このように設定した補正量を次にRF実位相が検出されるまでの間に渡って適用し、その補正量だけ位相を変化させるようにRFデータを補正する。
【0201】
図28は第4の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図である。図28は、RF正規位相およびRF実位相の時間変化特性が図3に示すものであることを前提としている。
【0202】
この場合、タイミングT1において検出されるRF実位相Pb1は負である。そこで位相補正部13cは、次にRF実位相が検出されるタイミングT3までの間は、補正量をPb1の絶対値とする。
【0203】
タイミングT3において検出されるRF実位相Pb2は正である。そこで位相補正部13cは、次にRF実位相が検出されるタイミングT5までの間は、補正量を−Pb2とする。
【0204】
かくしてこのような処理により、エコー信号E1,E2,E3…のそれぞれの位相を基準位相付近に揃えることができる。
【0205】
ところで、使用するパルスシーケンスによっては、RFパルス生成部9はRFパルスの位相を変化させることがある。この場合には、RF実位相の経時変化には上記のRFパルスの位相変化分を含むことになるため、上述のように設定された補正量にはこの位相変化分を含んでしまう。そこで、RFパルス生成部9が生成するRFパルスの位相が変化される場合には、位相補正部13cはRFパラメタに基づいてRFパルスの位相変化量を求め、当該位相変化量を差し引くように補正したのちのRF実位相に基づいて上記のように補正量を設定するようにする。
【0206】
なお、以上の第4の補正処理例で第1の補正処理例に対して加えた変更を第2の補正処理例および第3の補正処理例に対してそれぞれ同様に加えた第5の補正処理例および第6の補正処理例を適用することも可能である。
【0207】
図29は第5の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図である。図30は第6の補正処理例で設定される補正量の変化の一例を示す図である。
【0208】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0209】
1…静磁場磁石、2…傾斜磁場コイル、3…傾斜磁場電源、4…寝台、5…寝台制御部、6…送信コイルユニット、7…コイル側装置、7a…受信コイル、7b…クロック生成部、7c…アナログデジタル変換器(ADC)、7d,7g…データ送信部、7e…アンテナ、7f…RFパルス検出部、7g…データ送信部、7h…RFパルス検出部、7i…位相検出部、7j…データ送信部、8…クロック生成部、9…パルス生成部、10…パルス・傾斜磁場制御部、11…アンテナ、12…データ受信部、13…補正ユニット、13a…RFパルス検出部、13b…位相検出部、13c…位相補正部、14…データ処理部、15…再構成システム、16…記憶部、17…表示部、18…入力部、19…主制御部、20…コイル側装置、20a…データ受信部、20b…位相検出部、20c…クロック制御部、20d…データ受信部、20e…クロック制御部、21…データ送信部、22…コイル側装置、22a…データ受信部、22b…RFパルス検出部、22c…位相検出部、22d…位相補正部、22e…クロック制御部、23…データ送信部、24…アンテナ、25…クロック送信部、26,27…アンテナ、28…クロック受信部、101,102,103,104,105,106,107,108,109…磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、131…第1位相測定部、132…第2位相測定部、133…オフセット選出部、134…位相出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、
前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、
前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、
前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスが到来した際には当該励起パルスに応じた高周波信号を、かつ前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーが到来した際には当該磁気共鳴エコーに応じた高周波信号をそれぞれ出力する受信コイルと、
第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、
前記高周波信号または前記高周波信号に対して規定処理が施された後の信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、
前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、
前記磁気共鳴エコーに前記デジタル変換部でのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するべく、前記位相検出部により検出された位相に基づいて前記高周波データを補正する補正部とを具備したことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記位相検出部により検出された位相の経時変化に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する第2の位相検出部と、
前記第2の位相検出部により検出された位相の経時変化に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、
前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、
前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、
前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスが到来した際には当該励起パルスに応じた高周波信号を、かつ前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーが到来した際には当該磁気共鳴エコーに応じた高周波信号をそれぞれ出力する受信コイルと、
第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、
前記高周波信号または前記高周波信号に対して規定処理が施されたのちの信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、
前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、
前記位相検出手段により検出された位相の経時変化に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部とを具備したことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、
前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、
前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、
前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスに応じた高周波信号を出力するアンテナと、
前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーに応じた高周波信号を出力する受信コイルと、
第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、
前記アンテナおよび前記受信コイルが出力した前記高周波信号または当該高周波信号に規定処理を施した後の信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、
前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、
前記磁気共鳴エコーに前記デジタル変換部でのデジタル化に際して生じる位相ずれを補償するべく、前記位相検出部により検出された位相に基づいて前記高周波データを補正する補正部とを具備したことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記位相検出部により検出された位相の経時変化に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する第2の位相検出部と、
前記第2の位相検出部により検出された位相の経時変換に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
第1のクロック信号を生成する第1のクロック生成部と、
前記第1のクロック信号に基づいて励起パルス信号を生成するパルス生成部と、
前記励起パルス信号に基づいて励起パルスを無線送信する送信コイルと、
前記送信コイルから無線送信された前記励起パルスに応じた高周波信号を出力するアンテナと、
前記励起パルスの作用により被検体から放射された磁気共鳴エコーに応じた高周波信号を出力する受信コイルと、
第2のクロック信号を生成する第2のクロック生成部と、
前記アンテナおよび前記受信コイルが出力した前記高周波信号または当該高周波信号に規定処理を施した後の信号を前記第2のクロック信号に同期してデジタル化して高周波データを得るデジタル変換部と、
前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出する位相検出部と、
前記位相検出手段により検出された位相の経時変化に基づいて前記第2のクロック信号の周波数を調整する調整部とを具備したことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記磁気共鳴イメージング装置は、システム側装置とコイル側装置とを含み、
前記システム側装置は、前記第1のクロック生成部、前記パルス生成部、前記送信コイル、前記パルス検出部、前記位相検出部および前記補正部を備え、
前記コイル側装置は、前記受信コイル、前記第2のクロック生成部および前記デジタル変換部を備え、
さらに前記コイル側装置は、前記高周波データを無線送信する無線送信部をさらに備え、
前記システム側装置は、前記無線送信部により無線送信された前記高周波データを受信する無線受信部をさらに備え、
前記パルス検出部は、前記無線受信部で受信された前記高周波データから前記励起パルスに相当する励起パルスデータを検出し、
前記補正部は、前記無線受信部で受信された前記高周波データを補正することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5および請求項6のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記磁気共鳴イメージング装置は、システム側装置とコイル側装置とを含み、
前記システム側装置は、前記第1のクロック生成部、前記パルス生成部、前記送信コイル、前記位相検出部および前記補正部を備え、
前記コイル側装置は、前記受信コイル、前記第2のクロック生成部、前記デジタル変換部および前記パルス検出部を備え、
さらに前記コイル側装置は、前記高周波データおよび前記パルス検出部により検出された励起パルスデータを無線送信する無線送信部をさらに備え、
前記システム側装置は、前記無線送信部により無線送信された前記高周波データおよび前記励起パルスデータを受信する無線受信部をさらに備え、
前記位相検出部は、前記無線受信部で受信された前記励起パルスデータが表すパルスの位相を検出し、
前記補正部は、前記無線受信部で受信された前記高周波データを補正することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項5、請求項6および請求項7のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記磁気共鳴イメージング装置は、システム側装置とコイル側装置とを含み、
前記システム側装置は、前記第1のクロック生成部、前記パルス生成部、前記送信コイルおよび前記補正部を備え、
前記コイル側装置は、前記受信コイル、前記第2のクロック生成部、前記デジタル変換部、前記パルス検出部および前記位相検出部を備え、
さらに前記コイル側装置は、前記高周波データおよび前記位相検出部により検出された位相を表す位相データを無線送信する無線送信部をさらに備え、
前記システム側装置は、前記無線送信部により無線送信された前記高周波データおよび前記位相データを受信する無線受信部をさらに備え、
前記補正部は、前記無線受信部で受信された前記位相データが表す位相に基づいて、前記無線受信部で受信された前記高周波データを補正することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5および請求項6のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記磁気共鳴イメージング装置は、システム側装置とコイル側装置とを含み、
前記システム側装置は、前記第1のクロック生成部、前記パルス生成部および前記送信コイルを備え、
前記コイル側装置は、前記受信コイル、前記第2のクロック生成部、前記デジタル変換部、前記パルス検出部、前記位相検出部および前記補正部を備え、
さらに前記コイル側装置は、前記補正部により補正されたのちの高周波データを無線送信する無線送信部をさらに備え、
前記システム側装置は、前記無線送信部により無線送信された前記高周波データを受信する無線受信部をさらに備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5および請求項6のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記第1のクロック信号を無線送信するクロック送信部と、
前記クロック送信部により無線送信された前記第1のクロック信号を受信するクロック受信部とをさらに具備し、
前記第2のクロック生成部は、前記クロック受信部により受信された前記第1のクロック信号に同期して前記第2のクロック信号を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記パルス生成部が前記励起パルス信号を生成するタイミングを設定する設定手段をさらに備え、
前記パルス検出部は、前記設定手段により設定された前記タイミングに基づいて前記励起パルスデータを検出することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記パルス検出部は、前記高周波データが表す信号レベルが規定レベル以上となった時点を前記励起パルスデータの開始時点とすることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項16】
前記デジタル変換部は、前記励起パルスの到来時における前記受信コイルの出力信号の最大レベルよりも小さく、前記磁気共鳴エコーの到来時における前記受信コイルの出力信号の最大レベルよりも大きな飽和レベルを有し、
前記パルス検出部は、前記高周波データが表す信号レベルが前記飽和レベルとなった時点を前記励起パルスデータの開始時点とすることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
前記デジタル変換部は、前記励起パルスの到来時における前記受信コイルの出力信号の最大レベルよりも小さく、前記磁気共鳴エコーの到来時における前記受信コイルの出力信号の最大レベルよりも大きな飽和レベルを有し、
前記パルス検出部は、前記高周波データが表す信号レベルが前記飽和レベルから前記飽和レベルよりも低レベルに変化した後における前記デジタル変換部の出力データを前記励起パルスデータとして検出することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項18】
前記位相検出部は、前記パルス検出部により検出された前記励起パルスデータが表す信号波形の一部と前記パルス生成部が生成した前記励起パルスと同じ周波数成分からなる信号との相関演算により前記励起パルスデータが表すパルスの位相を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項19】
前記パルス生成部は、その振幅変動が第1の関数と第2の関数との積として求まる関数により表される信号として前記励起パルス信号を生成し、
前記位相検出部は、
前記パルス検出部により検出された前記励起パルスデータが表すパルスの一部である第1の区間内の信号をそれぞれ異なる複数のオフセット量のオフセットを与えた前記第2の関数でそれぞれ除算することで複数の第3の関数を求め、さらに前記複数の第3の関数のそれぞれと前記第1の関数との相関演算により前記複数のオフセット量のそれぞれに応じた複数の第1の位相値を算出する第1の位相値算出部と、
前記パルス検出部により検出された前記励起パルスデータが表すパルスの一部であり前記第1の区間とは異なる第2の区間内の信号を前記複数のオフセット量のオフセットを与えた前記第2の関数でそれぞれ除算することで複数の第4の関数を求め、さらに前記複数の第4の関数のそれぞれと前記第1の関数との相関演算により前記複数のオフセット量のそれぞれに応じた複数の第2の位相値を算出する第2の位相値算出部と、
同一の前記オフセット量に応じた第1および第2の位相値の差として前記複数のオフセット量のそれぞれに応じた複数の位相差を算出する位相差算出部と、
前記位相差算出部により算出された前記複数の位相差のうちの最小の位相差に応じたオフセット量に関して前記第1の位相値算出部で算出された前記第1の位相値または前記第2の位相値算出部で算出された前記第2の位相値として前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を選出する選出部とをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項20】
前記位相検出部は、前記パルス検出部により検出された前記励起パルスデータが表す信号レベルのうちで連続する2サンプルに関し、かつ一方が閾値を下回るとともに他方が前記閾値を上回る2つの信号レベルに基づく補間処理により前記パルス検出部により検出された前記励起パルスデータが表すパルスの信号レベルが前記閾値に到達するタイミングを求め、当該タイミングとして前記パルス検出部により検出された励起パルスデータが表すパルスの位相を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−193989(P2011−193989A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63106(P2010−63106)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】