説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】折り返しアーチファクトの位置を撮影前に容易の把握することによって、折り返しアーチファクトの出現を防止することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、被検体からの磁気共鳴信号を収集するデータ収集手段と、前記データ収集手段により収集された前記磁気共鳴信号から画像データを生成する画像データ生成手段と、撮影条件に基づいて前記画像データ上において折返しアーチファクトの原因となる磁気共鳴信号が発生し得る領域を折返し注意領域として計算し、得られた前記折返し注意領域を表示装置に表示させる領域表示手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する磁気共鳴(MR:magnetic resonance)信号から画像を再構成する磁気共鳴イメージング装置に係り、特に、複数の表面コイルを備えたRFコイルを用いてMR信号を収集する磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、複数の表面コイルを備えたマルチコイルを用いてRFコイルを構成し、各表面コイルを用いてMR信号を収集する高速撮影技術が考案されている。この複数の表面コイルを用いた撮像は、パラレルイメージング(Parallel Imaging)と呼ばれ、Parallel Imagingには、アンフォールド(展開)処理を行うSubencoding法、SENSE(sensitivity encoding)法、サムオブスクエア(SoS: sum of square)画像を貼り合わせるPILS(Partially Parallel Imaging With Localized Sensitivities)法などがある。
【0004】
Parallel Imagingでは、スパイラル撮影などの特殊な撮影が行われる場合もあるが、一般的には、位相エンコード方向のデータ取得回数を減らし、その結果画像データに生じる折り返しが各表面コイルのそれぞれの感度分布の独立性を利用してアンフォールド処理される。Parallel Imaging用のマルチコイルの形状には、撮影対象部位に応じて様々なものがあり、研究用に特化したものもある。
【0005】
図24は、4つの表面コイルをZ軸方向に配置した従来のラダータイプのマルチコイルの形状例を示す図、図25は、2つの表面コイルをZ軸方向に同軸状に配置した従来のマルチコイルの形状の例を示す図、図26は、12個の表面コイルを複数の方向に配置した従来のラダータイプのマルチコイルの形状例を示す図である。
【0006】
例えば、図24に示すようなラダータイプ(梯子型)のマルチコイルは、心臓のみをターゲットに使用される。また実用的に用いられるマルチコイルには、図25のように被検体Pの周りに2つの表面コイルを備えたもののように表面コイルの数が必ずしも十分とは言えないものもある。逆に、図26に示すマルチコイルのように十分な数の表面コイルを備え、撮影断面の自由度を向上させるために被検体Pの周りに空間的に複数方向に表面コイルを配置したものもある。Z方向をエンコード方向にする場合には、図24に示すマルチコイルでは、4つの表面コイルがエンコード方向に並べられる構造となり、図25および図26にそれぞれ示すマルチコイルでは、それぞれ2つの表面コイルがエンコード方向に並べられる構造となる。そしてこのような種々の形状のマルチコイルがデータ受信用のRFコイルとして用いられる。
【0007】
しかしながら、Parallel Imagingでは、撮影対象が位相エンコード(PE: phase encode)方向に設定される撮像視野(FOV: field of view)(以下「設定FOVと称する」)よりも大きい場合にアンフォールド処理が適切に行われず、PE方向において設定FOVをはみ出した部分、すなわち折返し部分が画像の中央付近に折り返しアーチファクトとして現れるという問題がある。例えばコロナル断面画像を撮影する場合に長手方向の設定FOV端に撮影対象が存在すると、アンフォールド処理を適切に行うことができず、アーチファクトが残存する。特に受信用のマルチコイルがボリュームコイルのように要素コイルの数が少なく、1つの要素コイルの感度の広がりが大きいものである場合には、アンフォールド処理が適切に行われず、アーチファクトが残存する傾向にある。
【0008】
図27は、図25や図26のようにZ軸方向に2つの表面コイルを備えた従来のマルチコイルの感度分布を示す模式図である。
【0009】
図27において横軸はPE方向(Z軸方向)を示し、縦軸は各表面コイルの感度を示す。また、図27中の実線は、各表面コイルの感度分布を示す。図27に示すように、各表面コイルの感度は、各表面コイルの中心位置付近で大きくなり、各表面コイルの中心位置付近から離れた位置では小さくなる。
【0010】
これらの表面コイルを用いてデータを収集する場合に、収集されたデータにアンフォールド処理を適切に行って折り返しアーチファクトを完全に除去するためには、撮影対象からの信号が設定FOVで受信される必要がある。従って、図27に示すように各表面コイルの感度範囲を包含するように、設定FOVを撮影プラン時に設定するが必要となる。しかしながら、過剰に広い設定FOVを設定すると空間分解能が低下するという問題がある。
【0011】
逆に、空間分解能を向上させるために設定FOVを絞りすぎると、設定FOV外において受信された信号の影響によって折り返しアーチファクトが発生してしまう。
【0012】
図28は、図27に示す感度分布を有する従来のマルチコイルを用いたデータ収集において設定FOVを絞った場合にアーチファクトが発生する部分を説明する図である。
【0013】
図28において横軸はPE方向(Z軸方向)を示し、縦軸は各表面コイルの感度を示す。また、図28中の実線は、各表面コイルの感度分布を示す。
【0014】
図28に示すように、必要な空間分解能を維持するために各表面コイルの感度範囲よりも狭い設定FOVを設定して信号を収集すると、原空間(実空間)の3つの点からの信号が1点にフォールドされる。例えば、図28中のA1,A2,A3の3点からの信号が1点にフォールドされる。このため、独立した表面コイルがPE方向に実質的に2つしかない構成のマルチコイルを用いたParallel Imagingでは、アンフォールド処理が適切に行えずに、はみ出した部分R0の本来必要でない信号が折り返されてアーチファクトが発生する。
【0015】
このように設定FOVをはみ出した部分R0からの信号による折り返しアーチファクトは、画像の中央付近に現れる。しかし、通常撮影したい病変部が画像の中央付近に位置するように設定FOVが設定されるため、画像の読影上支障が出る恐れがある。従って、PE方向において、撮影対象が設定FOVよりも大きい場合には、各表面コイルの感度分布を包含するように設定FOVを設定することが重要である。
【0016】
一方、PE方向において、撮影対象が設定FOVよりも小さくなるように設定FOVを設定することによっても折り返しアーチファクトの発生を防止することができる。従って、撮影プラン時には撮影対象が設定FOVよりも小さくなるように設定FOVを設定することも重要となる。
【0017】
また、折り返しアーチファクトが出現したとしても、病変部のように読影に影響のない領域であれば、設定FOVをより小さく設定することができる。そして、空間分解能の向上やデータ収集量、データ処理時間の低減を図ることができる。従って折り返しアーチファクトの位置を撮影前に把握することが有効である。しかしながら、折り返しアーチファクトが出現する位置は、Parallel Imagingにおける撮影パラメータの1つである高速化率PIに依存して変化する。
【0018】
図29は、従来のParallel Imagingにおいて高速化率を2とした場合における折り返しアーチファクトの出現位置を示す図である。
【0019】
例えば、被検体Pの胴部におけるコロナル断面画像を撮像する場合には、撮影プラン時に図29(a)に示すようなPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。ここで、PE方向において設定FOVからはみ出した被検体のはみ出し領域R0が存在すると、折り返しアーチファクトが発生することとなる。
【0020】
図29(a)のようにPE方向の幅がPEFOVの設定FOVで撮影を行うと図29(b)に示すようにPE方向の幅がPEFOV/PIのフォールドされた画像データが得られる。ここでPI=2であるからフォールドされた画像データのPE方向の幅はPEFOV/2となる。
【0021】
次に、フォールドされた画像データのPE方向の各両端からそれぞれPEFOV×(1-1/PI)/2の範囲がアンフォールド領域とされる。ここでPI=2であるから、フォールドされた画像データの全ての領域がアンフォールド領域となる。また、図29(a)に示すはみ出し領域R0は、それぞれのアンフォールド領域境界の外側に隣接する各位置にフォールドされる。各アンフォールド領域の境界はフォールドされた画像の中央において隣接するため、2箇所のはみ出し領域R0からの各データもフォールドされた画像の中央において隣接することとなる。
【0022】
そして、アンフォールド領域の画像データがアンフォールド処理されると図29(c)に示すようなPE方向の幅がPEFOVの表示画像が生成される。しかしながら、はみ出し領域R0からのデータがアンフォールドされずに表示画像に残るため、結果として画像の中央部分にはみ出し領域R0の画像がアーチファクトとして出現することとなる。従って、アーチファクトが病変部に重なる恐れがある。
【0023】
これに対して、高速化率PIを変えることによって、アーチファクトの位置をPE方向にシフトさせることができる。
【0024】
図30は、従来のParallel Imagingにおいて高速化率を1.5とした場合における折り返しアーチファクトの出現位置を示す図である。
【0025】
例えば被検体Pの胴部におけるコロナル断面画像を撮像する場合に、撮影プラン時に図30(a)に示すようにはみ出し領域R0が存在した状態で、PE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。
【0026】
図30(a)のようにPE方向の幅がPEFOVの設定FOVで撮影を行うと図30(b)に示すようにPE方向の幅がPEFOV/PIのフォールドされた画像データが得られる。ここでPI=1.5であるからフォールドされた画像データのPE方向の幅はPEFOV/1.5となる。
【0027】
次に、フォールドされた画像データのPE方向の各両端からそれぞれPEFOV×(1-1/PI)/2の範囲がアンフォールド領域とされる。ここでPI=1.5であるから、フォールドされた画像データのPE方向の両端部付近における2つの領域がそれぞれアンフォールド領域となる。また、図30(a)に示すはみ出し領域R0は、それぞれのアンフォールド領域の境界の外側に隣接する各位置にフォールドされる。各アンフォールド領域の境界はフォールドされた画像の中央から高速化率に応じた距離だけシフトした位置となるため、2箇所のはみ出し領域R0からの各データもフォールドされた画像中央から高速化率に応じた距離だけシフトした位置となる。
【0028】
そして、アンフォールド領域の画像データがアンフォールド処理されると図30(c)に示すようなPE方向の幅がPEFOVの表示画像が生成される。しかしながら、はみ出し領域R0からのデータがアンフォールドされずに表示画像に残るため、結果として画像中央から高速化率に応じた距離だけシフトした位置にはみ出し領域R0の画像がアーチファクトとして出現することとなる。
【0029】
このように、高速化率を変化させると、折り返しアーチファクトの位置をPE方向に変えることができる。しかし、折り返しアーチファクトの位置は高速化率に依存して変化するため、オペレータによる予測は困難である。従って病変部において折り返しアーチファクトが発生しない最小の、つまり最適な設定FOVを撮影プラン時に設定することも困難である。
【0030】
このような背景の下、撮影プラン時に設定FOVと撮影対象との位置関係の如何に関わらず、PE方向の折り返しアーチファクトを低減させる折り返し防止機能(No Wrap機能)が考案されている(例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3参照)。
【0031】
この技術は、撮影プラン時における設定FOVよりも広いFOVをアンフォールド処理用に展開FOVとして設定し、アンフォールド処理によって一旦展開FOVの画像を生成するものである。そして、展開FOVの画像から設定FOVの画像が切り出されて表示画像とされる。
【0032】
図31は、従来のParallel ImagingにおいてNo Wrap機能を使用した場合における折り返しアーチファクトの出現位置を示す図である。
【0033】
例えば被検体Pの胴部におけるコロナル断面画像を撮像する場合に、撮影プラン時に図31(a)に示すようにはみ出し領域R0が存在した状態で、PE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。また、撮影プラン時には、設定FOVに対する展開FOVの倍率NoWrapも設定される。
【0034】
図31(a)のようにPE方向の幅がPEFOVの設定FOVで撮影を行うと図31(b)に示すようにPE方向の幅がPEFOV×NoWrap/PIのフォールドされた画像データが得られる。例えば、PI=2, NoWrap=2である場合には、フォールドされた画像データのPE方向の幅はPEFOVとなる。
【0035】
次に、フォールドされた画像データのPE方向の各両端からそれぞれPEFOV×NoWrap×(1-1/PI)/2の範囲がアンフォールド領域とされる。ここでPI=2, NoWrap=2である場合には、PE方向の各両端からそれぞれPEFOV/2の範囲がアンフォールド領域となるため、設定FOVの全範囲がアンフォールド処理の対象となる。また、図31(a)に示すはみ出し領域は、それぞれのアンフォールド領域の境界から外側に展開FOVの倍率NoWrapに応じた距離だけシフトした各位置にフォールドされる。従って、各アンフォールド領域の境界はフォールドされた画像の中央であるが、はみ出し領域R0は、フォールドされた画像の中央とはならない。
【0036】
次に、フォールドされた画像データのアンフォールド領域がアンフォールド処理されると、図31(c)に示すようなPE方向の幅がPEFOV×NoWrapの展開FOVを有する展開画像が生成される。従って、NoWrapの値が十分に大きければ、はみ出し領域R0からのデータが残ることなくアンフォールド処理される。NoWrap=2である場合には、展開画像のPE方向の幅はPEFOV×2となる。
【0037】
そして、展開FOVの展開画像から設定FOVの表示画像が切り出されて表示される。この結果、NoWrapの値の適切な設定によって、はみ出し領域R0による折り返しアーチファクトの発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2004−329613号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0263167号明細書
【非特許文献】
【0039】
【非特許文献1】Y. Machida, S. Uchizono, N. Ichinose “Fold-Over Aliasing Artifact Suppression Technique in MR Parallel Imaging: Considerations of Role of FOV in Image Formation Procedure”, Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 13(2005), p506
【非特許文献2】J.W. Goldfarb, M. Shinnar “Field-of-view Restrictions for Artifact-free SENSE Imaging”, Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 10(2002), (abstract 2412)
【非特許文献3】J.W. Goldfarb “The SENSE Ghost: Field-of-view Restrictions for SENSE Imaging”, J. Magn. Reson. Imaging 2004;20:1046-1051
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
上述したように必要な空間分解能を維持するために各表面コイルの感度範囲よりも狭い設定FOVを設定して信号を収集すると、アンフォールド処理が適切に行われず、PE方向において設定FOVをはみ出した部分が折り返しアーチファクトとして現れるという問題がある。特に位相エンコード方向の設定FOV端に対象が存在する場合や要素コイル数が少ない場合には、顕著な問題である。
【0041】
また、折り返しアーチファクトの位置を撮影前に把握することが折り返しアーチファクトの出現防止に有効である。しかしながら、折り返しアーチファクトが出現する位置は、Parallel Imagingにおける撮影パラメータの1つである高速化率PIに依存して変化するため予測が困難であるという問題がある。特に、従来のエンコード方向の折返し防止機能であるNo Wrap機能を用いた場合には、アンフォールド処理の対象となる展開FOVが設定FOVと異なるため、折り返しアーチファクトの出現位置の予測はさらに複雑となる。
【0042】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、折り返しアーチファクトの位置を撮影前に容易の把握することによって、折り返しアーチファクトの出現を防止することが可能な磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置は、被検体からの磁気共鳴信号を収集するデータ収集手段と、前記データ収集手段により収集された前記磁気共鳴信号から画像データを生成する画像データ生成手段と、撮影条件に基づいて前記画像データ上において折返しアーチファクトの原因となる磁気共鳴信号が発生し得る領域を折返し注意領域として計算し、得られた前記折返し注意領域を表示装置に表示させる領域表示手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置においては、折り返しアーチファクトの位置を撮影前に容易の把握することによって、折り返しアーチファクトの出現を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図。
【図2】図1に示すRFコイルの詳細構成の一例を示す図。
【図3】図2に示すWBコイルとフェーズドアレイコイルの配置例を示す断面模式図。
【図4】図1に示すコンピュータの機能ブロック図。
【図5】図4に示す信号抑制条件設定部によって設定されるプレサチュレーションパルスによる飽和領域を示す模式図。
【図6】図4に示す信号抑制条件設定部によって不要信号が発生しないように励起パルスおよびリフォーカスパルスの印加対象となるそれぞれのスライスを選択した例を示す模式図。
【図7】図4に示す感度マップデータベースに保存される表面コイルの感度マップの一例を示す模式図。
【図8】図4に示す想定感度データベースに保存される表面コイルの感度マップの一例を示す模式図。
【図9】図4に示す折返し除去処理部における折返し除去処理の説明および重み付け加算部52における重み付け加算用の重み関数の一例を示す図。
【図10】図1に示す磁気共鳴イメージング装置によりParallel Imagingを行う場合における流れの一例を示すフローチャート。
【図11】フォールドされた画像データに対してアンフォールド処理することによって生成された中間画像データと、フォールドされた画像データをそのまま重み付け加算によって合成する例を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が備えるコンピュータの機能ブロック図。
【図13】図12に示す磁気共鳴イメージング装置によりParallel Imagingを行う場合における流れの一例を示すフローチャート。
【図14】高速化率PI=2、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図15】高速化率PI=1.5、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図16】高速化率PI=1、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図17】高速化率PI=1、拡大率NoWrap=2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図18】高速化率PI=2、拡大率NoWrap=2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図19】高速化率PI=2、拡大率NoWrap=1.2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図20】高速化率PI=1.2、拡大率NoWrap=1.2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図21】高速化率PI=1.2、拡大率NoWrap=1.5として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図22】高速化率PI=1、拡大率NoWrap=1.2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって表示される折返し注意領域を示す図。
【図23】高速化率PI=1.5、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部によって複数の折返し注意領域に対応するそれぞれの折返しアーチファクトの出現位置が判別するための情報を折返し注意領域とともに表示させた例を示す図。
【図24】4つの表面コイルをZ軸方向に配置した従来のラダータイプのマルチコイルの形状例を示す図。
【図25】2つの表面コイルをZ軸方向に同軸状に配置した従来のマルチコイルの形状の例を示す図。
【図26】12個の表面コイルを複数の方向に配置した従来のラダータイプのマルチコイルの形状例を示す図。
【図27】図25や図26のようにZ軸方向に2つの表面コイルを備えた従来のマルチコイルの感度分布を示す模式図。
【図28】図27に示す感度分布を有する従来のマルチコイルを用いたデータ収集において設定FOVを絞った場合にアーチファクトが発生する部分を説明する図。
【図29】従来のParallel Imagingにおいて高速化率を2とした場合における折り返しアーチファクトの出現位置を示す図。
【図30】従来のParallel Imagingにおいて高速化率を1.5とした場合における折り返しアーチファクトの出現位置を示す図。
【図31】従来のParallel ImagingにおいてNo Wrap機能を使用した場合における折り返しアーチファクトの出現位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明に係る磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置の制御方法の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0047】
図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図である。
【0048】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21と、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイルユニット23およびRFコイル24とを図示しないガントリに内蔵した構成である。
【0049】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0050】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0051】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0052】
傾斜磁場コイルユニット23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイルユニット23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24はガントリに内蔵されず、寝台37や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0053】
また、傾斜磁場コイルユニット23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイルユニット23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0054】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0055】
RFコイル24は、送信器29および受信器30と接続される。RFコイル24は、送信器29から高周波信号を受けて被検体Pに送信する機能と、被検体P内部の原子核スピンの高周波信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0056】
図2は図1に示すRFコイル24の詳細構成の一例を示す図であり、図3は図2に示すWBコイル24aとフェーズドアレイコイル24bの配置例を示す断面模式図である。
【0057】
RFコイル24は、例えば送信用のRFコイル24と受信用のRFコイル24とから構成される。送信用のRFコイル24には、全身用(WB:whole-body)24aコイルが用いられる一方、受信用のRFコイル24には、フェーズドアレイコイル24bが用いられる。フェーズドアレイコイル24bは、複数の表面コイル24cを備え、各表面コイル24cは、それぞれ個別に受信系回路30aと接続される。
【0058】
また、フェーズドアレイコイル24bの各表面コイル24cは、例えば被検体Pの特定関心部位を含む断面Lの周囲となるZ軸周りに対称に配置される。さらにフェーズドアレイコイル24bの外側には、WBコイル24aが設けられる。そして、WBコイル24aにより被検体Pに高周波信号を送信する一方、WBコイル24aまたはフェーズドアレイコイル24bの各表面コイル24cにより多チャンネルで特定関心部位を含む断面LからのNMR信号を受信して各受信器30の各受信系回路30aに与えることができるように構成される。
【0059】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gzおよび高周波信号を発生させる機能を有する。
【0060】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0061】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいて高周波信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0062】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、特定の回路を設けてコンピュータ32を構成してもよい。
【0063】
図4は、図1に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0064】
コンピュータ32は、プログラムによりシーケンスコントローラ制御部40、k空間データベース41、撮影条件設定部42、信号抑制条件設定部43、画像再構成部44、実空間データベース45、後処理部46として機能する。また、後処理部46は、信号抑制判定部47、展開処理部48、折返し除去処理部49、感度マップデータベース50、想定感度データベース51、重み付け加算部52を備えている。
【0065】
シーケンスコントローラ制御部40は、入力装置33またはその他の構成要素からの情報に基づいてシーケンスコントローラ31にパルスシーケンスを与えることにより駆動制御させる機能を有する。すなわち、シーケンスコントローラ制御部40は、Parallel Imagingを含む任意のイメージングスキャンを実行させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部40は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース41に形成されたk空間(フーリエ空間)にk空間データとして配置する機能を有する。
【0066】
このため、k空間データベース41には、受信器30において生成された各生データがk空間データとして保存される。
【0067】
撮影条件設定部42は、入力装置33からの指示に従って撮影条件を設定し、撮影条件としてパルスシーケンスを信号抑制条件設定部43に与える機能を有する。特に、撮影条件設定部42は、PE方向の表面コイル24cの数に応じた位相エンコード数や設定FOV等のParallel Imaging用の撮影条件を設定できるように構成される。
【0068】
信号抑制条件設定部43は、Parallel Imagingにおける折返しアーチファクトの発生原因となる特定の空間部位からのMR信号を抑制するための信号抑制条件を撮影条件設定部42から取得したパルスシーケンスに対して設定する機能と、信号抑制条件の設定後におけるパルスシーケンスをシーケンスコントローラ制御部40および後処理部46に与える機能を有する。MR信号を抑制するための信号抑制方法は任意の方法を採用することができる。
【0069】
折返しアーチファクトの発生原因となる部位は、表面コイル24cの数、配置、感度分布等の条件によって異なるが、ここでは説明簡易化のため2つの表面コイル24cをPE方向に配置した最も単純なフェーズドアレイコイル24bを用いて撮像を行う場合について説明する。
【0070】
2つの表面コイル24cをPE方向に配置したフェーズドアレイコイル24bを用いて撮像を行う場合には、設定FOVからPE方向にはみ出した部分が折返しアーチファクトの発生原因となる空間部位となる。従って、設定FOVからPE方向にはみ出した部分からの信号は不要信号であると言える。特定の空間からの不要信号を抑制する手法としては、例えば、不要信号を抑制するためのプレサチュレーションパルスを印加する方法や不要信号が発生しないように励起パルスやリフォーカスパルスの印加対象となるスライスを選択する方法が挙げられる。
【0071】
図5は、図4に示す信号抑制条件設定部43によって設定されるプレサチュレーションパルスによる飽和領域を示す模式図である。
【0072】
図5において横軸はPE方向を示し、縦軸は2つの表面コイル24cの感度を示す。また図5中の実線は、各表面コイル24cの感度分布を示す。
【0073】
図5に示すように各表面コイル24cが感度を有する範囲内に設定FOVが設定される場合には、設定FOV外からの信号が折返しアーチファクトの発生原因となる不要信号となる。そこで、設定FOV外の不要信号が発生する領域R1をプレサチュレーションパルスによって飽和させることにより、理想的には設定FOV外からの信号をほぼ無信号化することができる。つまり、PE方向のFOV端からの信号が抑制されるようにプレサチュレーションパルスを印加することによって、プレサチュレーションパルスをPE方向のFOV端からFOV外にかけての領域R1における感度を抑制する感度フィルタとして機能させることができる。
【0074】
このようなプレサチュレーションパルスを印加することによって、設定FOVの中心付近におけるPE方向の点A1および設定FOV端付近における設定FOV内の点A2からの信号は収集され、設定FOV端付近における設定FOV外の点A3からの信号は得られないこととなる。
【0075】
図6は図4に示す信号抑制条件設定部43によって不要信号が発生しないように励起パルスおよびリフォーカスパルスの印加対象となるそれぞれのスライスを選択した例を示す模式図である。
【0076】
図6において横軸はPE方向を示し、縦軸は2つの表面コイル24cの感度を示す。また図5中の実線は、各表面コイル24cの感度分布を示す。
【0077】
励起パルスの印加時に選択されるスライスとリフォーカスパルスの印加時に選択されるスライスとを交差させると、共通部分R2からのみ信号を発生させることができる。これは、励起パルスおよびリフォーカスパルスの双方が印加される共通部分R2以外からの信号を抑制することに相当する。従って、リフォーカスパルスの印加時に選択されるスライスをPE方向に設定することによって、図6に示すようにFOV端からFOV外にかけての不要信号が発生する領域からの信号発生を抑制することができる。すなわち、励起パルスおよびリフォーカスパルスの双方が印加される共通部分R2の位置を制御することによって、2つの表面コイル24cの感度フィルタを形成することができる。
【0078】
そして、信号抑制条件設定部43は、上述したプレサチュレーションパルスや励起パルスおよびリフォーカスパルスにより励起およびリフォーカスされるスライスを撮影条件設定部42から取得したパルスシーケンスに対して設定するように構成される。
【0079】
画像再構成部44は、k空間データベース41からk空間データを取り込んでフーリエ変換等の画像再構成処理を施すことにより、実空間データである被検体Pの画像データを再構成する機能と、得られた画像データを実空間データベース45に書き込む機能とを有する。
【0080】
このため、実空間データベース45には、スキャンによって得られた画像データが保存される。
【0081】
後処理部46は、Parallel Imagingによって収集されたフォールドされた状態の画像データを実空間データベース45から読み込んで、アンフォールドされた画像データを生成する機能と、アンフォールドされた画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
【0082】
後処理部46の感度マップデータベース50には、フォールドされた状態の画像データに対してアンフォールド処理を施す際に必要となる設定FOV内における表面コイル24cの感度マップが保存されている。
【0083】
図7は、図4に示す感度マップデータベース50に保存される表面コイル24cの感度マップの一例を示す模式図である。
【0084】
図7において横軸はPE方向を示し、縦軸は表面コイル24cの感度を示す。また、図7中の実線は、表面コイル24cの感度分布を示す。図7に示すようにPE方向の設定FOV内における表面コイル24cの感度マップS1が感度マップデータベース50に保存される。
【0085】
想定感度データベース51は、プレサチュレーションパルスの印加や励起パルスおよびリフォーカスパルスが印加される共通部分の制御によって実質的にフィルタリングされた後に想定される表面コイル24cの想定感度マップが保存されている。
【0086】
図8は、図4に示す想定感度データベース51に保存される表面コイル24cの感度マップの一例を示す模式図である。
【0087】
図8において横軸はPE方向を示し、縦軸は表面コイル24cの感度を示す。また、図8中の実線は、表面コイル24cの感度分布を示す。図8に示すようにPE方向の設定FOV端における感度が0とされた設定FOV内における表面コイル24cの想定感度マップS2が想定感度データベース51に保存される。
【0088】
信号抑制判定部47は、実空間データベース45から読み込んだフォールドされた状態の画像データが、不要信号が十分に抑制された状態で得られたものであるか否かを判定する機能と、不要信号が十分に抑制されたと判定した場合にはフォールドされた状態の画像データを展開処理部48に与える一方、不要信号が十分に抑制されていない判定した場合にはフォールドされた状態の画像データを折返し除去処理部49に与える機能を有する。
【0089】
フォールドされた状態の画像データが、不要信号が十分に抑制された状態で得られたものであるか否かの判定方法としては、例えば、予め撮影条件ごとに不要信号の抑制が十分でるか否かを予め関連付けておく方法が挙げられる。この場合には、信号抑制判定部47は、信号抑制条件設定部43から取得したパルスシーケンスに基づいて信号抑制条件を参照する。そして、フォールドされた状態の画像データが、不要信号の抑制が十分に得られない信号抑制条件に従って収集された場合には、画像データ上において不要信号が十分に抑制されていないと判定する。
【0090】
ただし、不要信号が十分に抑制されているか否かの判定方法は任意である。例えば、フォールドされた状態の画像データのうち、抑制されるべき領域からの信号を予めノイズレベル程度に設定された閾値と比較し、閾値を超える無視できない強度の信号が検出された場合に不要信号が十分に抑制されていないと判定してもよい。また、フォールドされた状態の画像データまたはこの画像データから得られる参照用の画像データを表示装置34に表示させ、ユーザが目視により不要信号が十分に抑制されているか否かを判定するようにしてもよい。この場合には、不要信号が十分に抑制されているか否かのユーザによる判定結果が入力装置33から信号抑制判定部47に与えられる。
【0091】
展開処理部48は、信号抑制判定部47から取得したフォールドされた状態の画像データに対してアンフォールド処理を実行することによって、アンフォールドされた画像データを取得する機能と、アンフォールドされた画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。また、展開処理部48は、アンフォールド処理を実行する際、感度マップデータベース50に保存された表面コイル24cの感度マップを参照し、感度マップからアンフォールド処理用に逆変換マトリクスを作成できるように構成される。尚、感度マップから求めた逆変換マトリクスを用いるアンフォールド処理は、従来から広く知られており、Ra JB, Rim CY. “Fast imaging using subencoding data sets from multiple detectors.” Magn Reson Med 1993; 30: 142-145、K. P. Pruessmann, M. Weiger, M. B. Scheidegger, P. Boesiger, “SENSE: Sensitivity encoding for fast MRI” MRM 42:952-962(1999)等の文献に詳細が示されている。
【0092】
ここで、フォールドされた状態の画像データは、不要信号が十分に抑制されていれば、設定FOV外に被検体Pの部位が存在したとしても、設定FOV外の領域からの信号が無いという情報に基づいて適切にアンフォールド処理を実行することができる。例えば、図5に示すように設定FOVの中心付近におけるPE方向の点A1および設定FOV端付近における設定FOV内の点A2からのフォールドされた状態の信号を、設定FOV外の点A3からの信号は無いという情報に基づいてアンフォールドすることが可能となる。
【0093】
そこで、展開処理部48は、信号抑制条件設定部43から取得したパルスシーケンスに基づいて信号抑制条件を参照し、無信号領域を示す情報を得ることができるように構成される。これにより、設定FOV外に被検体Pの部位が存在したとしても、展開処理部48によりハーフマトリクス分のデータからアンフォールドされたフルFOVの画像を取得することが可能となる。
【0094】
一方、プレサチュレーションパルスの印加等による信号抑制は、必ずしも完全に行われるわけではない。実際の撮影では不要信号の発生領域において残留する信号が存在し得る。そのような場合には、信号抑制判定部47において、不要信号が十分に抑制されていないと判定されることとなる。そこで、後処理部46には、不要信号が十分に抑制されていないフォールドされた状態の画像データに対して残留信号による無視できない影響を除去するための処理を行う機能が備えられる。
【0095】
折返し除去処理部49は、信号抑制判定部47から取得したフォールドされた状態の画像データに対して、互いに異なる複数の折返し除去処理を行う機能と、各折返し除去処理によって生成されたアンフォールドされた状態の複数の中間画像データを重み付け加算部52に与える機能を有する。
【0096】
重み付け加算部52は、折返し除去処理部49から取得した折返し除去処理後の複数の中間画像データの重み付け加算を実行することによって、最終的な単一の画像データを生成する機能と、生成した画像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
【0097】
図9は図4に示す折返し除去処理部49における折返し除去処理の説明および重み付け加算部52における重み付け加算用の重み関数の一例を示す図である。
【0098】
図9のグラフにおいて横軸はPE方向を示し、縦軸は表面コイル24cの感度を示す。また実線は、表面コイル24cの感度分布を示す。
【0099】
図9の領域R1における不要信号の抑制が不十分である場合には、設定FOV内の中心付近における点A1からの信号と設定FOV内のFOV端付近における点A2からの信号をアンフォールドすると、設定FOV外のFOV端付近における点A3からの信号の影響が僅かながら残ることとなる。同様に、設定FOV内の中心付近における点B1からの信号と設定FOV内のFOV端付近における点B2からの信号をアンフォールドすると、設定FOV外のFOV端付近における点B3からの信号の影響が僅かながら残ることとなる。
【0100】
このとき設定FOV外のFOV端付近における点A3,B3からの不要信号による絶対的な信号強度の影響は僅かではあるものの、アンフォールドされた画像の中央付近において点A3,B3からの不要信号による信号強度の差異が画像の段差をもたらす恐れがある。すなわち、点A1,B1からの信号に混入する点A3,B3からの不要信号の絶対的な量そのものは診断の妨げになる程、大きくない場合が多い。しかしながら点A3,B3からの残留不要信号による画像の段差は、診断上支障となる恐れがある。
【0101】
このため、画像の中央付近の点A1,B1では、絶対的な信号強度を精度よく計算するというよりもむしろ段差を低減することが重要となる。そこで、設定FOV内の中心付近では点A1,B1からの信号の寄与度が支配的であるとし、若干信号強度としては精度が低下するもののFOV端付近からの信号の影響が殆どないものとして画像を作成するようにすれば、画像の中央付近に現れる段差のアーチファクトを低減することが可能となる。
【0102】
逆に、設定FOV内のFOV端付近における点A2,B2における信号値の計算にあたっては、より精度よく信号強度を求めるために、設定FOV内の中心付近における点A1,B1からの絶対的に強度が大きい信号の影響を通常のアンフォールド処理によって除去することが望ましい。この際、計算によって得られた設定FOV内のFOV端付近の点A2,B2における信号値には、設定FOV外のFOV端付近における点A3,B3からの残留不要信号の影響が残る。しかしながら、点A3,B3からの残留不要信号は、Parallel Imagingに限らず、様々なイメージングにおいて発生する自然な折返しとして影響を及ぼすに過ぎず、Parallel Imaging以外のフルFOVに対するイメージングによって生じるアーチファクトと同等のアーチファクトに留まる。
【0103】
そこで、以上のような診断上の要請から、折返し除去処理部49および重み付け加算部52は、折返し除去前の画像データの実空間の位置によって異なる折返し除去処理が行われるようにそれぞれ複数の異なる折返し除去処理および重み付け加算処理を実行するように構成される。具体例としては、FOV端からの折返しによる画像上の不整合が診断の妨げとなる設定FOV内の中心付近(例えば点A1,B1)の画像データに対しては、想定感度データベース51から読み込んだFOV端付近における感度が0とされた想定感度マップS2から作成された逆変換マトリクスを用いてアンフォールド処理が行われるようにする。
【0104】
一方、設定FOV内のFOV端付近(例えば点A2,B2)の画像データに対しては、感度マップデータベース50から読み込んだ本来の表面コイル24cの感度マップS1から作成された逆変換マトリクスを用いてアンフォールド処理が行われるようにする。つまり、設定FOV内の位置に応じて係数を変えた感度マトリクスを用いて画像データの逆変換処理を行う。
【0105】
そして、上述した折返し除去処理が行われるように、折返し除去処理部49は、折返し除去前のフォールドされた画像データに対して複数の異なる折返し除去処理を施し、それぞれの折返し除去処理によって得られる複数の中間画像データを重み付け加算部52に与えるように構成される。これに対し、重み付け加算部52は、折返し除去処理部49によって作成された複数の中間画像データを診断上の要請に合致するように重み付け加算するように構成される。
【0106】
図9の上部に示す感度分布を有する2つの表面コイル24cを用いて収集された画像データから2つの中間画像データを折返し除去処理によって得た場合には、図9の下部に示すようなPE方向の位置に依存した重み関数W1、W2によって2つの中間画像データが互いに重み付け加算される。すなわち、重み付け加算によって得られる画像データの中心付近では、感度が0とされた想定感度マップS2から逆変換マトリクスを作成してアンフォールド処理されることによって得られた中間画像データの成分が多くなるように重み関数W2が決定される。逆に、重み付け加算によって得られる画像データのFOV端付近では、本来の感度マップS1から逆変換マトリクスを作成してアンフォールド処理されることによって得られた中間画像データの成分が多くなるように重み関数W1が決定される。
【0107】
そして、このように異なる折返し除去処理によって得られた複数の中間画像データを重み付け加算部52において合成するようにすれば、従来よりもアーチファクトの影響が少なく品位の高い最終画像データを得ることが可能となる。
【0108】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
【0109】
図10は、図1に示す磁気共鳴イメージング装置20によりParallel Imagingを行う場合における流れの一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0110】
まず、予め寝台37に被検体Pがセットされる。また、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0111】
そして、ステップS1において、入力装置33の操作により指示情報が撮影条件設定部42に与えられ、PE方向の表面コイル24cの数に応じた位相エンコード数や設定FOV等のParallel Imaging用の撮影条件が設定される。すなわち、位相エンコード数が、Parallel Imagingではないイメージングよりも少なく設定され、折返しアーチファクトが発生しないように、なるべく狭い設定FOVが設定される。そして設定された撮影条件は、パルスシーケンスとして撮影条件設定部42から信号抑制条件設定部43に与えられる。
【0112】
次に、ステップS2において、信号抑制条件設定部43は、撮影条件設定部42から取得したパルスシーケンスに対して折返しアーチファクトの発生原因となる設定FOV端から設定FOV外にかけての領域から発生する不要信号が抑制されるようにプレサチュレーションパルスの印加や励起パルスおよびリフォーカスパルスの印加時において選択されるスライスを設定する。そして、信号抑制条件の設定後におけるパルスシーケンスは、信号抑制条件設定部43からシーケンスコントローラ制御部40および後処理部46に与えられる。
【0113】
次に、ステップS3において、入力装置33の操作によりParallel Imagingがシーケンスコントローラ制御部40に与えられると、Parallel Imaging用の撮影が実行される。すなわち、シーケンスコントローラ制御部40は信号抑制条件設定部43から受けたパルスシーケンスをシーケンスコントローラ31に与える。
【0114】
シーケンスコントローラ31は、シーケンスコントローラ制御部40から受けたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24から高周波信号を発生させる。
【0115】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24の各表面コイル24cにより受信されて受信器30内の対応する各受信系回路30aに与えられる。各受信系回路30aは、RFコイル24の各表面コイル24cからNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部40に与え、シーケンスコントローラ制御部40はk空間データベース41に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
【0116】
次に、画像再構成部44は、k空間データベース41からk空間データを取り込んでフーリエ変換等の画像再構成処理を施すことにより、実空間データである被検体Pの画像データを再構成し、得られた画像データを実空間データベース45に書き込む。この結果、実空間データベース45には、スキャンによって得られた画像データが保存される。ただし、画像データは、Parallel Imagingによって収集されたため、フォールドされた状態となっている。
【0117】
次に、ステップS4において、信号抑制判定部47は、実空間データベース45から読み込んだフォールドされた状態の画像データが、不要信号が十分に抑制された状態で得られたものであるか否かを判定する。この判定は、例えば、撮影条件と不要信号が十分に抑制されるか否かを関連付けた判定テーブルを信号抑制判定部47が参照することにより行われる。ただし、ユーザによる画像の目視や不要信号の強度に対する閾値処理によって、不要信号が十分に抑制されているか否かを判定してもよい。
【0118】
そして、信号抑制判定部47は、不要信号が十分に抑制されたと判定した場合にはフォールドされた状態の画像データを展開処理部48に与える。
【0119】
そうすると、ステップS5において、展開処理部48は、感度マップデータベース50に保存された表面コイル24cの感度マップを参照し、感度マップからアンフォールド処理用に逆変換マトリクスを作成する。そして、展開処理部48は、信号抑制判定部47から取得したフォールドされた状態の画像データに対して逆変換マトリクスを用いてアンフォールド処理を実行する。この結果、アンフォールドされた画像データは展開処理部48から表示装置34に与えられて表示される。
【0120】
このように作成された画像データは、折返しアーチファクトの発生原因となる不要信号が十分に抑制された状態で生成されたため、折返しアーチファクトが抑制された画像となる。このため、ユーザは、より高品質な画像を基に診断を行うことが可能となる。
【0121】
一方、ステップS4において、信号抑制判定部47が、不要信号が十分に抑制されていないと判定した場合にはフォールドされた状態の画像データを折返し除去処理部49に与える。
【0122】
そうすると、ステップS6において、折返し除去処理部49は、フォールドされた状態の画像データに異なる折返し除去処理をそれぞれ実行する。具体的には、折返し除去処理部49は、感度マップデータベース50に保存された表面コイル24cの感度マップを参照し、フォールドされた状態の画像データのFOV端付近に対するアンフォールド処理用に感度マップから逆変換マトリクスを作成する。また、折返し除去処理部49は、想定感度データベース51に保存されたFOV端の感度が0とされた表面コイル24cの想定感度マップを参照し、フォールドされた状態の画像データの中央付近に対するアンフォールド処理用に想定感度マップから逆変換マトリクスを作成する。
【0123】
そして、折返し除去処理部49は、フォールドされた状態の画像データに対して、本来の感度マップから作成された逆変換マトリクスおよびFOV端の感度が0とされた想定感度マップから作成された逆変換マトリクスの双方を用いてそれぞれアンフォールド処理を実行する。これにより得られた2つの中間画像データは、折返し除去処理部49から重み付け加算部52に与えられる。
【0124】
次に、ステップS7において、重み付け加算部52は、折返し除去処理部49から取得した2つの中間画像データの重み付け加算を実行することによって、最終的な単一の画像データを生成し、表示装置34に表示させる。このとき、重み付け加算に用いられる重み関数は、重み付け加算によって得られる画像データの中心付近では、感度が0とされた想定感度マップから逆変換マトリクスを作成してアンフォールド処理されることによって得られた中間画像データの成分が多くなり、逆に、重み付け加算によって得られる画像データのFOV端付近では、本来の感度マップから逆変換マトリクスを作成してアンフォールド処理されることによって得られた中間画像データの成分が多くなるように決定されている。
【0125】
従って、画像データの中央付近では折返しによる段差が抑制され、かつ画像データのFOV端付近では信号強度が高精度で求められる。また、不要信号の抑制が十分ではないものの、ある程度抑制されているため、折返しアーチファクトが低減された画像を診断用に供することができる。
【0126】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、Parallel Imagingにおいて、設定FOVの外部にも被検体が存在する場合に積極的に特定の空間部位のMR信号の発生を抑制し、信号抑制部位を既知情報として用いることによって折返しアーチファクトのない画像を得るようにしたものである。より具体的には、磁気共鳴イメージング装置20は、プレサチュレーションパルスの印加や励起範囲の設定等の信号抑制法によってParallel Imagingにおける折返しアーチファクトの発生原因となるPE方向のFOV端等の特定の空間位置におけるMR信号を抑制するようにしたものである。さらに、磁気共鳴イメージング装置20は、信号抑制が不完全である可能性を考慮して、空間位置に応じて生成条件を変えた複数の中間画像を作成し、作成した複数の中間画像を合成することによって、最終的な画像を得るようにしたものである。
【0127】
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、特にPE方向のFOV端に対象が存在する場合や、要素コイル数が少ない場合であってもParallel Imagingによって折返しアーチファクトのない良好な画像を取得することができる。そして、より信頼性の高い診断用画像を提供することができる。
【0128】
尚、上述した例では、不要信号の抑制が不十分な場合に、異なる折返し除去処理を行って重み付け加算するようにしたが、不要信号の抑制が不十分な場合に限らず、不要信号の抑制状況や目的とする診断画像に応じて、フォールドされた画像データに対して異なる折返し除去処理を行って中間画像データを生成した後、重み付け加算により各中間画像データを合成するようにしてもよい。また、上述した例では、感度マトリクスの係数を変えたアンフォールド処理により2つの中間画像データを作成したが、その他の折返し除去処理を行ってもよい。
【0129】
折返し除去処理の例としては感度マップから作成した逆変換マトリクスを用いたアンフォールド処理および想定感度マップから作成した逆変換マトリクスを用いたアンフォールド処理のように逆変換マトリクスの係数を変えた複数のアンフォールド処理の他、サムオブスクウェア処理のようにアンフォールド処理以外の処理等の処理が挙げられる。これらの処理は、フォールドされた状態の画像データと診断上作成すべき折返し除去後の画像データとの関係に応じて適宜選択される。
【0130】
図11は、フォールドされた画像データに対してアンフォールド処理することによって生成された中間画像データと、フォールドされた画像データをそのまま重み付け加算によって合成する例を示す図である。
【0131】
図11において、横軸はPE方向を示し、縦軸は信号値を示す。例えば、図11の点線D1に示すように設定FOV外の信号が抑制された状態で信号が収集される。この場合、設定FOV端付近における信号は破線D2で示す位置に折り返される。この結果、フォールドされた画像データの信号値は、アンフォールド領域内において折り返された破線D2で示す信号と点線D1で示す信号との和となるため、実線D3で示す信号となる。
【0132】
このような場合には、アンフォールド領域の中心付近R3の画像データはそのまま使用可能であるのに対し、アンフォールド領域の端部R4における画像データはアンフォールド処理によって展開する必要がある。そこで、アンフォールド処理によって生成された中間画像データと、フォールドされた状態の画像データを重み付け加算し、設定FOVの中心付近ではフォールドされた状態の画像データの成分が多くなり、設定FOVの端部付近ではアンフォールド処理によって生成された中間画像データの成分が多くなるように合成すればよい。
【0133】
また、上述した実施形態では、2つの表面コイル24cを用いて信号を収集する例について説明したが、3つ以上の表面コイル24cを用いて信号を収集する場合にも同様に折返しアーチファクトの発生原因となる不要信号を所望の信号抑制法によって抑制することができる。さらに、3次元的に感度分布を有する表面コイル24cを用いて信号を収集する場合や、3次元的に配置された表面コイル24cを用いて信号を収集する場合にも、空間的に折返しアーチファクトの発生原因となる不要信号が生じる領域を特定し、特定された領域からの不要信号を抑制することができる。そして、特定の空間部位における信号が0であるという既知情報を利用して適切な折返し除去処理を行うことが可能となる。
【0134】
図12は本発明の第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置が備えるコンピュータの機能ブロック図である。
【0135】
図12に示された、磁気共鳴イメージング装置20Aでは、コンピュータ32Aの機能が図1に示す磁気共鳴イメージング装置20と相違する。他の構成および作用については図1に示す磁気共鳴イメージング装置20と実質的に異ならないためコンピュータ32Aの機能ブロック図のみ図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0136】
磁気共鳴イメージング装置20Aのコンピュータ32Aは、プログラムによりシーケンスコントローラ制御部40、k空間データベース41、撮影条件設定部42、折返し注意領域表示部60、画像再構成部44、実空間データベース45、画像処理部61として機能する。
【0137】
シーケンスコントローラ制御部40は、入力装置33またはその他の構成要素からの情報に基づいてシーケンスコントローラ31にParallel Imaginを含むイメージング用のパルスシーケンスを与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部40は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース41に形成されたk空間(フーリエ空間)にk空間データとして配置する機能を有する。
【0138】
撮影条件設定部42は、入力装置33からの指示に従って設定FOV等の撮影条件を設定する機能と、設定された撮影条件をパルスシーケンスとしてシーケンスコントローラ制御部40に与える機能を有する。特に、撮影条件設定部42は、複数の表面コイル24cを用いたParallel Imaging用の撮影条件を設定できるように構成される。Parallel Imaging用の撮影条件の具体例としては、高速化率PIおよびPE方向の折返し防止機能のパラメータである拡大率NoWrapが挙げられる。高速化率PIは、1から最大表面コイル24cの数まで設定することができる。汎用的な表面コイル24cの数は、4個から8個程度である。
【0139】
また、折返し防止機能は、Parallel Imaging以外の通常のイメージングにおいて使用することもできる。折返し防止機能のパラメータNoWrapは、撮影プラン時にユーザにより設定される設定FOVに対するアンフォールド処理後の展開FOVの拡大率である。
【0140】
さらに、撮影条件設定部42は、設定FOV、高速化率PIおよび折返し防止機能の拡大率NoWrapを折返し注意領域表示部60に与える機能を有する。
【0141】
折返し注意領域表示部60は、撮影条件設定部42から受けた設定FOV、高速化率PIおよび拡大率NoWrapに基づいて、折返し注意領域、アンフォールド領域およびアンフォールド領域のPE方向における境界を求める機能と、求めた折返し注意領域、アンフォールド領域およびアンフォールド領域のPE方向における境界を設定FOVとともに表示装置34に表示させる機能を有する。
【0142】
ここで、折返し注意領域とは、折返しアーチファクトの原因となり得る信号の発生領域である。アンフォールド領域とは、Parallel Imagingにおけるデータ収集後の後処理であるアンフォールド処理の対象となる領域である。また、アンフォールド領域の境界付近には、折返し注意領域からの信号によって折返しアーチファクトが出現することとなる。
【0143】
また、必要に応じて折返し注意領域表示部60は、ある折返し注意領域内からの信号に対応する折返しアーチファクトの出現位置を示す情報を作成して表示装置34に表示させるように構成される。
【0144】
画像再構成部44は、k空間データベース41からk空間データを取り込んでフーリエ変換等の画像再構成処理を施すことにより、実空間データである被検体Pの画像データを再構成する機能と、得られた画像データを実空間データベース45に書き込む機能とを有する。
【0145】
画像処理部61は実空間データベース45から読み込んだ画像データに投影処理や断面変換処理等の必要な画像処理を行って表示装置34に表示させる機能を有する。
【0146】
次に磁気共鳴イメージング装置20Aの動作および作用について説明する。
【0147】
図13は、図12に示す磁気共鳴イメージング装置20AによりParallel Imagingを行う場合における流れの一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0148】
まず、予め寝台37に被検体Pがセットされる。また、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0149】
そして、ステップS10において、入力装置33の操作により撮影条件の指示情報が撮影条件設定部42に与えられ、設定FOV、Parallel Imagingの高速化率PIおよび折返し防止機能の拡大率NoWrapが仮設定される。撮影条件設定部42は、仮設定された設定FOV、高速化率PIおよび拡大率NoWrapを折返し注意領域表示部60に与える。
【0150】
次に、ステップS11において、折返し注意領域表示部60は、撮影条件設定部42から受けた設定FOV、高速化率PIおよび拡大率NoWrapに基づいて、折返し注意領域、アンフォールド領域およびアンフォールド領域のPE方向における境界を求める。そして、折返し注意領域表示部60は、求めた折返し注意領域、アンフォールド領域およびアンフォールド領域のPE方向における境界を表示装置34に表示させる。
【0151】
図14は、高速化率PI=2、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0152】
図14に示すように、例えば撮影対象となる被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。尚、PE方向に垂直な方向の設定FOVの幅も任意に設定され、設定された幅となる。
【0153】
拡大率NoWrap=1、すなわち折返し防止機能を使用しない場合、設定FOVのPE方向の外側の領域が折返し注意領域R5となる。この折返し注意領域R5は図14のように斜線表示やその他の任意の方法で識別可能に表示装置34に表示される。従って、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっており、この条件でParallel Imagingを実行すると、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現することが事前に確認できる。
【0154】
また、拡大率NoWrap=1の場合におけるアンフォールド領域R7は、設定FOVのPE方向の両側の境界からそれぞれ設定FOV内に向かって幅B1の領域となる。ここで、拡大率NoWrap=1の場合におけるアンフォールド領域R7の幅B1は、式(1)によって計算することができる。
【0155】
[数1]
B1=PEFOV×(1-1/PI) (1)
ここで、高速化率PI=2であるため、アンフォールド領域R7は、設定FOV内の全ての領域となる。また、折返しアーチファクトが出現する部分は、アンフォールド領域R7のPE方向の境界R8である。そこで、アンフォールド領域R7に加え、アンフォールド領域R7の境界R8の位置も識別可能に表示装置34に表示される。これにより、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現するという事実のみならず、折返しアーチファクトの出現位置も事前に容易に把握することが可能となる。
【0156】
図15は、高速化率PI=1.5、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0157】
図15に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。拡大率NoWrap=1であるため、設定FOVのPE方向の外側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。そして、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっているため、Parallel Imagingによってはみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現することが事前に確認できる。
【0158】
また、式(1)において、高速化率PI=1.5であるため、アンフォールド領域R7は、設定FOVの両端からそれぞれ幅B1=PEFOV/3の領域となる。従って、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現するアンフォールド領域R7の境界R8の位置は、設定FOVの両端から距離PEFOV/3の位置となる。
【0159】
さらに、折返し防止機能を使用せず、かつParallel Imaging以外の通常のイメージングを行う場合にも、折返し注意領域R5を求めて表示装置34に表示させることができる。この場合の撮影条件は、高速化率PI=1、拡大率NoWrap=1である。
【0160】
図16は、高速化率PI=1、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0161】
図16に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。拡大率NoWrap=1であるため、設定FOVのPE方向の外側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。そして、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっているため、イメージングによって、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現することが事前に確認できる。
【0162】
また、高速化率PI=1であるため、アンフォールド領域R7およびアンフォールド領域R7の境界R8は、表示されない。
【0163】
一方、拡大率NoWrap>1、すなわち折返し防止機能を使用する場合には、設定FOVのPE方向の端部から設定FOVの外側に向かって拡大率NoWrapに応じた距離GAPだけシフト位置よりもさらに外側が、折返し注意領域R5となる。このときの距離GAPは式(2)により計算することができる。
【0164】
[数2]
GAP=PEFOV(NoWrap−1)/2 (PI≧2NoWrap/(1+NoWrap))
=PEFOV(NoWrap−1)/PI (PI<2NoWrap/(1+NoWrap))
=PEFOV(NoWrap−1) (PI=1) (2)
また、拡大率NoWrap>1の場合におけるアンフォールド領域R7は、設定FOVのPE方向の両側の境界から設定FOVの外側に向かって距離GAPだけシフト位置から設定FOV内に向かって幅Bの領域となる。ここで、拡大率NoWrap>1の場合におけるアンフォールド領域R7の幅Bは、式(3)によって計算することができる。尚、式(3)は、拡大率NoWrap=1の場合も含んだ式である。
【0165】
[数3]
B=PEFOV×NoWrap×(1-1/PI) (3)
図17は、高速化率PI=1、拡大率NoWrap=2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0166】
図17に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。高速化率PI=1, 拡大率NoWrap=2であるため、設定FOVからPE方向に距離GAP(=PEFOV)だけシフトした位置に対し、設定FOVから離れた側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。図17の例では、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっていないため、イメージングによって、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現しないことが事前に確認できる。換言すれば、折返し防止機能によって、折返しアーチファクトの出現が防止できることが確認できる。
【0167】
また、高速化率PI=1であるため、アンフォールド領域R7およびアンフォールド領域R7の境界R8は、表示されない。
【0168】
図18は、高速化率PI=2、拡大率NoWrap=2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0169】
図18に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。高速化率PI=2, 拡大率NoWrap=2であるため、設定FOVからPE方向に距離GAP(=PEFOV/2)だけシフトした位置に対し、設定FOVから離れた側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。図18の例では、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっていないため、イメージングによって、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現しないことが事前に確認できる。換言すれば、折返し防止機能によって、折返しアーチファクトの出現が防止できることが確認できる。
【0170】
また、高速化率PI=2, 拡大率NoWrap=2であるため、アンフォールド領域R7は、設定FOVのPE方向の両側の境界から設定FOVの外側に向かって距離GAPだけシフト位置から設定FOV内に向かって幅B(=PEFOV)の領域となる。このアンフォールド領域R7および設定FOVの中央に位置するアンフォールド領域R7の境界R8は識別可能に表示装置34に表示される。このため、仮に折返し注意領域R5からの信号が存在する場合に、その信号によって出現する折返しアーチファクトの位置を把握することができる。
【0171】
図19は、高速化率PI=2、拡大率NoWrap=1.2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0172】
図19に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。高速化率PI=2, 拡大率NoWrap=1.2であるため、設定FOVからPE方向に距離GAP(=PEFOV/10)だけシフトした位置に対し、設定FOVから離れた側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。
【0173】
図19の例では、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっていないため、イメージングによって、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現しないことが事前に確認できる。換言すれば、折返し防止機能によって、折返しアーチファクトの出現が防止できることが確認できる。さらに、図19の例では、図18の例に比べてアンフォールド領域R7が狭く設定されるため、高速化率PI=2の場合には、撮影時間の増加防止の観点から拡大率NoWrap=2とするよりも拡大率NoWrap=1.2とした方がよいことが分かる。換言すれば、高速化率PI=2の場合には、拡大率NoWrap=1.2で十分であると言える。
【0174】
また、高速化率PI=2, 拡大率NoWrap=1.2であるため、アンフォールド領域R7は、設定FOVのPE方向の両側の境界から設定FOVの外側に向かって距離GAPだけシフト位置から設定FOV内に向かって幅B(=0.6×PEFOV)の領域となる。このアンフォールド領域R7および設定FOVの中央に位置するアンフォールド領域R7の境界R8は識別可能に表示装置34に表示される。このため、仮に折返し注意領域R5からの信号が存在する場合に、その信号によって出現する折返しアーチファクトの位置を把握することができる。
【0175】
図20は、高速化率PI=1.2、拡大率NoWrap=1.2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0176】
図20に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。高速化率PI=1.2, 拡大率NoWrap=1.2であるため、設定FOVからPE方向に距離GAP(=PEFOV/10)だけシフトした位置に対し、設定FOVから離れた側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。
【0177】
図20の例では、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっていないため、イメージングによって、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現しないことが事前に確認できる。
【0178】
また、高速化率PI=1.2, 拡大率NoWrap=1.2であるため、アンフォールド領域R7は、設定FOVのPE方向の両側の境界から設定FOVの外側に向かって距離GAPだけシフト位置から設定FOV内に向かって幅B(=PEFOV/5)の領域となる。このアンフォールド領域R7および設定FOVの両端部付近に位置するアンフォールド領域R7の境界R8は識別可能に表示装置34に表示される。このため、仮に折返し注意領域R5からの信号が存在する場合に、その信号によって出現する折返しアーチファクトの位置を把握することができる。
【0179】
図21は、高速化率PI=1.2、拡大率NoWrap=1.5として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0180】
図21に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。高速化率PI=1.2, 拡大率NoWrap=1.5の場合、式(2)においてPI<2NoWrap/(1+NoWrap)となる。尚、拡大率NoWrapについて解くと、NoWrap>PI/(2−PI)となる。従って、設定FOVからPE方向に距離GAP(≒0.4×PEFOV)だけシフトした位置に対し、設定FOVから離れた側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。
【0181】
図21の例では、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっていないため、イメージングによって、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現しないことが事前に確認できる。
【0182】
また、高速化率PI=1.2, 拡大率NoWrap=1.5の場合、アンフォールド領域R7は、計算上設定FOVの外側に位置することとなる。従って、アンフォールド領域R7およびアンフォールド領域R7の境界R8はいずれも敢えて表示装置34に表示する必要がない。
【0183】
また、Parallel Imaging以外の通常のイメージングにおいて折返し防止機能を使用する場合であっても、折返し注意領域R5を表示装置34に表示することができる。
【0184】
図22は、高速化率PI=1、拡大率NoWrap=1.2として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって表示される折返し注意領域を示す図である。
【0185】
図22に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。高速化率PI=1, 拡大率NoWrap=1.2であるため、設定FOVからPE方向に距離GAP(=0.2×PEFOV)だけシフトした位置に対し、設定FOVから離れた側の領域が折返し注意領域R5として識別可能に表示装置34に表示される。
【0186】
図22の例では、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pのはみ出し領域R6が、折返し注意領域R5と重なっていないため、イメージングによって、はみ出し領域R6の折返しアーチファクトが出現しないことが事前に確認できる。また、図16、図22および図17に示す各例によれば、Parallel Imagingを行わない場合に、折返し防止機能を使用しないと折返しアーチファクトが出現することが分かる。従って、折返しアーチファクトの出現を防止するためには、折返し防止機能を使用する必要がある。ただし、拡大率NoWrap=2とするよりも拡大率NoWrap=1.2とした方が撮影時間を短縮できることが分かる。
【0187】
また、高速化率PI=1であるため、アンフォールド領域R7およびアンフォールド領域R7の境界R8は、表示されない。
【0188】
さらに、折返し注意領域R5、アンフォールド領域R7およびアンフォールド領域R7の境界R8に加え、折返しアーチファクトの発生原因となる信号の領域と折返しアーチファクトの出現位置とを関連付けて表示させることもできる。
【0189】
図23は、高速化率PI=1.5、拡大率NoWrap=1として設定された場合に図12に示す折返し注意領域表示部60によって複数の折返し注意領域に対応するそれぞれの折返しアーチファクトの出現位置が判別するための情報を折返し注意領域とともに表示させた例を示す図である。
【0190】
図23に示すように、被検体Pの胴体部にPE方向の幅がPEFOVの設定FOVが設定される。拡大率NoWrap=1であるため、設定FOVのPE方向の外側の領域が折返し注意領域R5A、R5Bとして識別可能に表示装置34に表示される。ただし、一方の折返し注意領域R5AはCOLOR1により設定FOVの端部から離れるにつれて次第に色が薄くなるように着色される。また他方の折返し注意領域R5BはCOLOR1と異なるCOLOR2により設定FOVの端部から離れるにつれて次第に色が薄くなるように着色される。
【0191】
この場合、設定FOVからPE方向にはみ出した被検体Pの2つのはみ出し領域R6A、R6Bが、それぞれの折返し注意領域R5A、R5Bと重なっているため、Parallel Imagingによって各はみ出し領域R6A、R6Bに対応する2つの折返しアーチファクトがそれぞれ出現することが事前に確認できる。
【0192】
また、高速化率PI=1.5であるため、アンフォールド領域R7A、R7Bは、設定FOVの両端からそれぞれ幅B1=PEFOV/3の領域となる。従って、各はみ出し領域R6A、R6Bにそれぞれ対応する折返しアーチファクトが出現するアンフォールド領域R7A、R7Bの各境界R8A、R8Bの位置は、設定FOVの両端からそれぞれ距離PEFOV/3の位置となる。そこで、COLOR1により着色された折返し注意領域R5A内のはみ出し領域R6Aに対応する折返しアーチファクトの出現位置、すなわち、COLOR1により着色された折返し注意領域R5Aよりも離れた側におけるアンフォールド領域R7Aの境界R8AからCOLOR1により着色された折返し注意領域R5Aに向かう領域R9AもCOLOR1によりアンフォールド領域R7Aの境界R8Aから離れるにつれて次第に色が薄くなるように着色される。
【0193】
同様に、COLOR2により着色された折返し注意領域R5B内のはみ出し領域R6Bに対応する折返しアーチファクトの出現位置、すなわち、COLOR2により着色された折返し注意領域R5Bよりも離れた側におけるアンフォールド領域R7Bの境界R8BからCOLOR2により着色された折返し注意領域R5Bに向かう領域R9BもCOLOR2によりアンフォールド領域R7Bの境界R8Bから離れるにつれて次第に色が薄くなるように着色される。
【0194】
このように異なる色を用いて折返し注意領域R5A、R5Bに対応する折返しアーチファクトの出現位置を着色すれば、ユーザは折返し注意領域R5A、R5Bに対応するアーチファクトの出現位置を把握することができる。また、色が次第に薄くなるように折返し注意領域R5A、R5Bおよびアーチファクトの出現領域R9A、R9Bを着色することによって、折返しアーチファクトの方向性を示すこともできる。
【0195】
折返し注意領域R5A、R5Bおよび対応する折返しアーチファクトの出現領域R9A、R9Bの識別および方向性は色やグラデーション以外の方法により行ってもよい。例えば、模様や記号の表示を行ってもよい。
【0196】
以上のような撮影条件に応じた折返し注意領域、アンフォールド領域およびアンフォールド領域の境界並びに折返し注意領域に対応する折返しアーチファクトの出現位置が識別可能に表示装置34に表示される。このため、ユーザは、仮設定した撮影条件が適切であるか否かを事前に判断することができる。すなわち、ユーザは、折返しアーチファクトが診断に支障がでる位置に出現する恐れがあるか否か、過剰なデータ収集により撮影時間が長期化されていないか等を確認することができる。
【0197】
そして、仮設定した撮影条件が適切でなく、修正する必要があるとユーザが判定した場合には、再びステップS10において、入力装置33の操作により撮影条件の指示情報が撮影条件設定部42に与えられる。そして、新たな設定FOV、高速化率PIおよび拡大率NoWrapが仮設定される。
【0198】
このように、設定FOV、高速化率PIおよび拡大率NoWrapの仮設定および折返し注意領域等の表示を繰り返し行うことにより、より適切な撮影条件に修正される。例えば、ユーザは表示装置34に表示された折返し注意領域がはみ出し領域に重ならないように拡大率NoWrapを任意に変更し、より小さい拡大率NoWrapを設定することができる。すなわち、撮影時間が短くなるように拡大率NoWrapの最適化を行うことができる。
【0199】
そして、設定された撮影条件が適切であるとユーザが判定すると、入力装置33の操作により仮設定された撮影条件を確定させる。
【0200】
そうすると、ステップS12において、撮影条件設定部42は、撮影条件が確定されたと判断し、パルスシーケン等の撮影条件をシーケンスコントローラ制御部40に与える。
【0201】
次に、ステップS13において、入力装置33から撮像開始の指示がシーケンスコントローラ制御部40に与えられると、シーケンスコントローラ制御部40は撮影条件設定部42から受けたパルスシーケン等の撮影条件をシーケンスコントローラ31に与える。このため、シーケンスコントローラ31の傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30に対する制御によって撮影条件に応じたデータ収集が行われる。そして、収集された生データがk空間データとしてk空間データベース41に形成されたk空間に配置される。
【0202】
次に、画像再構成部44は、k空間データベース41からk空間データを取り込んでフーリエ変換等の画像再構成処理を施すことにより、実空間データである被検体Pの画像データを再構成し、得られた画像データを実空間データベース45に書き込む。さらに、画像処理部61は実空間データベース45から読み込んだ画像データに投影処理や断面変換処理等の必要な画像処理を行って表示装置34に表示させる。
【0203】
このように表示された画像は、予め折返しアーチファクトが発生せず、かつ撮影時間がより短縮されるような撮影条件で撮像されたものであるため、より高品質かつ短時間で得ることができる。そして、ユーザは予め意図した折返しアーチファクトのない画像を用いて診断を行うことができる。
【0204】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20Aは、Parallel Imagingの撮影プランを行う際に、予め設定FOVのPE方向における折返し危険領域、アンフォールド領域および折返しアーチファクトが出現するアンフォールド領域の境界領域を表示できるようにしたものである。
【0205】
これにより、折返しアーチファクトの出現位置を予め予測した撮影プランを行うことが容易となる。すなわち、最適な最小設定FOVや最適なParallel Imagingの高速化率PIを選択することができる。加えて、Parallel Imagingにおける折返しアーチファクトへの注意をユーザに喚起することができる。この結果、意図しない折返しアーチファクトの出現に起因する誤診や再撮影を回避をすることができる。
【0206】
尚、Parallel Imagingのアンフォールド処理はPE方向のみならず、スライスエンコード(SE: slice encode)方向にも行うことが可能である。このため、SE方向についても折返し危険領域、アンフォールド領域、アンフォールド領域の境界および折返し危険領域に対応する折返しアーチファクトの出現位置を表示するように磁気共鳴イメージング装置20Aを構成してもよい。またParallel Imaging以外の一般的なイメージングにおいてエンコード方向への折返し防止機能を使用する場合に、折返し危険領域を表示できるように磁気共鳴イメージング装置20Aを構成してもよい。さらに3つ以上の表面コイル24cを用いて高速化率PI>2としたParallel Imagingを行う場合であっても、上述した方法で折返し危険領域、アンフォールド領域、アンフォールド領域の境界および折返し危険領域に対応する折返しアーチファクトの出現位置を表示させることができる。
【0207】
また、上述した例では、拡大率NoWrapの最適化をユーザがマニュアルで行うものとしたが、折返し注意領域表示部60に拡大率NoWrapの最適化機能を設けて自動化してもよい。この場合には、設定FOVからのはみ出し領域の検出機能が折返し注意領域表示部60に備えられる。はみ出し領域の検出は例えば閾値処理により行うことができる。そして、折返し注意領域表示部60によって検出されたはみ出し領域と折返し注意領域との間に必要なギャップが得られる最小の拡大率NoWrapが折返し注意領域表示部60により設定される。
【0208】
以上の各実施形態における磁気共鳴イメージング装置20、20Aの双方の機能を備える磁気共鳴イメージング装置を提供することもできる。例えば、折返し注意領域の表示機能および折返しアーチファクトの発生原因となる不要信号の抑制機能の双方を磁気共鳴イメージング装置に設けることができる。この場合、折返し注意領域の表示機能によって事前に折返しアーチファクトがなるべく発生しないような撮影条件を設定し、設定した撮影条件によってもなお折返しアーチファクトの原因となる信号が収集される恐れがあるか否かを判断することができる。そして、折返し注意領域の表示機能によって不要信号が発生する空間部位を推定し、推定された空間部位における不要信号を不要信号の抑制機能によって抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0209】
20 磁気共鳴イメージング装置
21 静磁場用磁石
22 シムコイル
23 傾斜磁場コイルユニット
24 RFコイル
24a WBコイル
24b フェーズドアレイコイル
24c 表面コイル
25 制御系
26 静磁場電源
27 傾斜磁場電源
28 シムコイル電源
29 送信器
30 受信器
31 シーケンスコントローラ
32 コンピュータ
33 入力装置
34 表示装置
35 演算装置
36 記憶装置
37 寝台
40 シーケンスコントローラ制御部
41 k空間データベース
42 撮影条件設定部
43 信号抑制条件設定部
44 画像再構成部
45 実空間データベース
46 後処理部
47 信号抑制判定部
48 展開処理部
49 折返し除去処理部
50 感度マップデータベース
51 想定感度データベース
52 重み付け加算部
60 折返し注意領域表示部
61 画像処理部
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの磁気共鳴信号を収集するデータ収集手段と、
前記データ収集手段により収集された前記磁気共鳴信号から画像データを生成する画像データ生成手段と、
撮影条件に基づいて前記画像データ上において折返しアーチファクトの原因となる磁気共鳴信号が発生し得る領域を折返し注意領域として計算し、得られた前記折返し注意領域を表示装置に表示させる領域表示手段と、
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記領域表示手段は、設定された撮像視野に対して拡大した撮像視野に対して折返し除去処理を行う折返し防止機能のパラメータである拡大率を含む撮影条件に基づいて前記折返し注意領域を計算するように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記データ収集手段は、複数のコイルを用いたParallel Imagingによって前記磁気共鳴信号を収集するように構成される一方、
前記領域表示手段は、前記Parallel Imagingのパラメータである高速化率を含む撮影条件に基づいて前記折返し注意領域を計算するように構成される、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記データ収集手段は、複数のコイルを用いたParallel Imagingによって前記磁気共鳴信号を収集するように構成される一方、
前記領域表示手段は、前記画像データ生成手段によって生成された折返しを有する折返し画像データのアンフォールド処理の対象となる領域をアンフォールド領域として計算し、前記アンフォールド領域を表示装置に表示させるように構成される、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記データ収集手段は、複数のコイルを用いたParallel Imagingによって前記磁気共鳴信号を収集するように構成される一方、
前記領域表示手段は、前記画像データ生成手段によって生成された折返しを有する折返し画像データのアンフォールド処理の対象となる領域の境界を計算し、前記境界を表示装置に表示させるように構成される、
ことを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記領域表示手段は、複数の折返し注意領域からのそれぞれの磁気共鳴信号による折返しアーチファクトの各出現領域を、前記複数の折返し注意領域との対応関係が識別できるように表示装置に表示させるように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記領域表示手段は、前記折返し注意領域からの磁気共鳴信号による折返しアーチファクトの出現領域を、前記折返しアーチファクトの方向が視認できるように表示装置に表示させるように構成されることを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−192216(P2012−192216A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153543(P2012−153543)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2006−151938(P2006−151938)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】