説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】撮像領域における所定領域からの信号の抑制を少ない励起パルスで行うことができる磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】被検体を含む撮像領域において、一部が重複する2つの領域S11,S12を定める。この際、上記2つの領域の非重複領域に信号抑制領域が含まれ、上記2つの領域の重複領域に信号読取領域が含まれるようにする。次に、上記2つの領域にインバージョンパルスをそれぞれ印加することにより、上記非重複領域については、スピンの縦磁化を1回反転させて磁気共鳴信号を抑制し、上記重複領域W1については、スピンの縦磁化を2回反転させて実質的に元に戻す。その後、上記非重複領域における励起されたスピンの縦磁化がヌルポイントになった時点で信号収集用パルスシーケンスを開始し、上記重複領域W1からの磁気共鳴信号を収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の所定の領域からの磁気共鳴信号を抑制する磁気共鳴イメージング(imaging)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置による診断技術の一つとして、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS;Magnetic
Resonance Spectroscopy)が知られている。このMRSは、スピン(spin)の共鳴周波数が代謝物の種類によってわずかに異なることを利用して、磁気共鳴信号の周波数を基に代謝物に関する情報を得る技術である。例えば、磁気共鳴信号の周波数を画像化し、各代謝物の同定やその濃度、緩和時間などの情報を得るための化学シフトイメージング(CSI;Chemical Shift Imaging)が行われている。
【0003】
ところで、脳などのプロトンMRSにおいて測定対象となる代謝物の信号は、自由水からの信号(以下、水信号という)や脂肪からの信号(以下、脂肪信号という)と比較して非常に微量であり、測定部位にこれら自由水や脂肪が混入すると、観察の障害となる。そのため、このようなMRSにおいては、通常、水信号や脂肪信号の抑制を行う。
【0004】
頭部において脂肪は脳以外の組織に豊富に含まれているため、従来、脂肪信号の抑制には、OVS(Outer Volume Suppression)法を用いる(特許文献1、図1,図2等参照)。すなわち、撮影断面に垂直なスライス(slice)内を励起した後、勾配磁場を印加して、このスライス内のスピンの横磁化をディフェーズ(defease)させる。この工程を、脂肪領域が各スライスによって覆われるまで、スライスを順次変えながら繰り返し行う。なお、OVS法は、空間前飽和法、空間的プレサチュレーション(pre-saturation)法、Spatial−SATとも呼ばれる。
【0005】
図7は、頭部のMRSにおいてOVS法を適用する場合の例を示す図である。この図を用いて説明すると、被検体の頭部41を含む撮像領域Bにおいて、頭部中央部分を、磁気共鳴信号を読み出す関心領域Rとし、頭部周辺部分すなわち頭蓋近傍で略楕円状に分布する脂肪領域を覆うように複数のスライス(本例ではS1〜S8の8枚)を設定する。そして、これらのスライスについてスピンの励起とディフェーズを行う。
【0006】
図8は、OVS法による従来の脂肪信号抑制のシーケンス(sequence)を前工程として含んでいるCSIのパルスシーケンス(pulse sequence)の一例を示す図である。脂肪信号を抑制する前工程では、脂肪領域を覆うのに必要なスライスの数だけ励起を繰り返している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−346055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように従来の信号抑制法では、磁気共鳴信号を抑制したい領域を複数のスライスで覆うように励起するため、必然的にスライス数が多くなる。その結果、高周波パルスによって励起されたスピンは、すぐに信号強度を回復し始めるので、縦磁化の回復にバラツキが生じてしまい、抑制したい領域からの磁気共鳴信号を十分に抑制することが難しい。また、スライスの数が多くなると、スライスの設定が煩雑になるだけでなく、被検体に照射する励起パルスの数が増えるため、被検体への負担も増大する。
【0009】
このような事情により、少ない励起パルスで被検体における所定の領域からの不要な磁気共鳴信号を抑制することができる磁気共鳴イメージング装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点の発明は、被検体を含む撮像領域において一部が重複するよう定められた2つの領域に、インバージョンパルス(inversion pulse)をそれぞれ印加することにより、前記2つの領域の非重複領域については、スピンの縦磁化を1回反転させて該非重複領域からの磁気共鳴信号を抑制し、前記2つの領域の重複領域については、スピンの縦磁化を2回反転させて実質的に元に戻し、その後、信号収集用パルスシーケンスを実施して、前記重複領域からの磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0011】
第2の観点の発明は、前記インバージョンパルスのそれぞれの印加後に、クラッシャ(crusher)勾配パルスを印加することにより、前記非重複領域におけるスピンの横磁化をディフェーズさせる上記第1の観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0012】
第3の観点の発明は、前記非重複領域が、脂肪領域を含んでいる上記第1の観点または第2の観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0013】
第4の観点の発明は、前記信号収集用パルスシーケンスが、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)系のパルスシーケンスを含んでいる上記第1の観点から第3の観点のいずれか一つの観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0014】
第5の観点の発明は、前記撮像領域が、前記被検体の頭部を含む領域である上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0015】
第6の観点の発明は、前記2つの領域の一方が、前記撮像領域における非選択的領域であり、前記2つの領域の他方が、前記撮像領域における選択的領域である上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0016】
第7の観点の発明は、前記インバージョンパルスが、フリップ(flip)角が実質的に180°である上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0017】
第8の観点の発明は、前記インバージョンパルスが、断熱パルス(アディアバティックパルス(adiabatic pulse))である上記第7の観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0018】
第9の観点の発明は、前記非重複領域におけるスピンの縦磁化がヌルポイント(null point)となる時点に、前記信号収集用パルスシーケンスの実施を開始する上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【0019】
なお、上記観点の発明において、「被検体」は、人体だけでなく、動物も含まれる。また、上記観点の発明である磁気共鳴イメージング装置は、医療用に限定されず、産業用にも適用できる。
【発明の効果】
【0020】
上記観点の発明によれば、前工程において、一部が重複する2つの領域にそれぞれインバージョンパルスを印加するだけで、上記2つの領域の非重複領域からの磁気共鳴信号を抑制し、上記2つの領域の重複領域からの磁気共鳴信号を得ることができ、少ない励起パルスで被検体における所定の領域からの不要な磁気共鳴信号を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態の磁気共鳴イメージング装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】第一実施形態による脂肪信号の抑制を説明するための図である。
【図3】第一実施形態により実施されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【図4】第二実施形態による脂肪信号の抑制を説明するための図である。
【図5】第二実施形態により実施されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【図6】インバージョンパルス1回だけ印加する場合と2回重ねて印加する場合とにおける信号強度の変化を示す図である。
【図7】OVS法による従来の信号抑制を説明するための図である。
【図8】OVS法による従来の信号抑制シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0023】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置の構成を概略的に示す図である。
【0024】
図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、静磁場マグネット(magnet)部12、勾配コイル部13、RF(Radio Frequency)コイル部14、RF駆動部22、勾配駆動部23、データ(data)収集部24、被検体搬送部25、制御部30、記憶部31、操作部32、画像再構成部33、および表示部34を有している。
【0025】
静磁場マグネット部12は、静磁場を発生させ、静磁場空間11を生成する。
【0026】
勾配コイル(coil)部13は、電流の供給を受けて、スライス軸方向、位相エンコード(encode)方向、および周波数エンコード方向の3軸方向に勾配磁場を独立に発生させる。なお、ここでは、周波数エンコード方向、位相エンコード方向、およびスライス軸方向は、それぞれ、図1に示すx方向、y方向、およびz方向と対応している。
【0027】
RFコイル部14は、電流の供給を受けて、静磁場空間11内の被検体40のスピンを励起するための励起RFパルスを印加する。
【0028】
RF駆動部22は、制御部30からの制御信号を基にRFコイル部14を駆動して、静磁場空間11内に励起RFパルスを印加する。
【0029】
勾配駆動部23は、制御部30からの制御信号を基に勾配コイル部13を駆動して、静磁場空間11内に勾配磁場を発生させる。
【0030】
データ収集部24は、RFコイル部14が受信したエコー(echo)信号(磁気共鳴信号)を位相検波し、AD(Analog-Digital)変換して、エコー信号のデータを生成する。生成されたエコー信号のデータは、記憶部31に出力される。
【0031】
被検体搬送部25は、制御部30からの制御信号を基に、被検体40を静磁場空間11の内外に搬送する。
【0032】
制御部30は、操作部32からの操作信号を基に、決められたパルスシーケンスを実施するよう、RF駆動部22、勾配駆動部23、データ収集部24、被検体搬送部25の各部に制御信号を送って制御する。
【0033】
記憶部31は、データ収集部24により収集されたエコー信号のデータや、画像再構成部33により画像再構成処理して得られた画像データ等を記憶する。
【0034】
画像再構成部33は、制御部30からの制御により、記憶部31からエコー信号のデータを読み出し、そのエコー信号のデータに対して画像再構成処理を行って画像データを生成する。画像データは、記憶部31に出力される。
【0035】
表示部34は、操作部32の操作に必要な情報や、画像データが表す画像などを表示する。
【0036】
制御部30、記憶部31、画像再構成部33は、例えばコンピュータ(computer)により構成される。
【0037】
これより、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置の動作について説明する。
【0038】
本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、被検体の脂肪領域からのエコー信号(以下、脂肪信号という)を抑制するように設計された磁気共鳴スペクトロスコピー(以下、MRSという)系のパルスシーケンスを実施してエコー信号を収集し、そのエコー信号を基に画像を生成する。これにより、脂肪信号が抑制されたCSIの画像を生成する。
【0039】
なお、本例では、被検体の頭部MRSを想定する。また、実際には、信号抑制として、脂肪信号の抑制以外に、例えばCHESS(chemical shift selective)法等による、脳の自由水からのエコー信号(以下、水信号という)の抑制を行う。しかし、水信号の抑制は、通常一般的に行われていることなので、ここでは、水信号の抑制に係るパルスシーケンスの図示および説明を省略する。
【0040】
図2は、第一実施形態による脂肪信号の抑制を説明するための図である。また、図3は、第一実施形態により実施されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【0041】
図3に示すパルスシーケンスは、信号収集用のMRS系パルスシーケンスを基本としており、その特徴は破線で囲まれた、脂肪信号を抑制するための前工程にある。
【0042】
初めに、被検体40を含む撮像領域Bにおいて、スピンの縦磁化を反転させるインバージョンパルスを印加する2つの領域を、一部が重複するように決定する。このとき、その重複領域に、エコー信号を読み出す関心領域が含まれるようにする。また、その非重複領域すなわち上記2つの領域のいずれか一方だけしか存在しない領域に、エコー信号を抑制したい脂肪領域が含まれるようにする。ここでは、図2(a)に示すように、被検体40の頭部41における脳中央の矩形領域を関心領域Rとし、頭部41の頭蓋近傍で略楕円状に分布する脂肪領域Fからのエコー信号を抑制する場合を想定する。そして、図2(b)に示すように、上記2つの領域の一方である第1の領域S11として、関心領域Rをほぼ含み、図中右下斜め方向(+x方向および−y方向)に沿って延びるスライス領域を選択的に決定する。また、図2(c)に示すように、上記2つの領域の他方である第2の領域S12として、関心領域Rをほぼ含み、図中右上斜め方向(+x方向および+y方向)に沿って延びるスライス領域を選択的に決定する。これにより、「X」字形状の第1および第2の領域S11,S12の重複領域W1に、関心領域Rのほとんどが含まれ、第1および第2の領域S11,S12の非重複領域K1に、脂肪領域Fのほとんどが含まれる。
【0043】
次に、脂肪信号を抑制するためのパルスシーケンスを実施する。まず、図3に示すように、勾配パルスSx11,Sy11と、第1のインバージョンパルスRF11とを印加して、第1の領域S11をスライス選択し、この領域にインバージョンパルスを印加する。これにより、第1の領域S11におけるスピンを励起してその縦磁化を反転させる。なお、このインバージョンパルスは、スピンの縦磁化の向きを的確に反転させることができるよう、通常はフリップ角が実質的に180°のものを用いる。また、その中でも、広い空間におけるスピンの縦磁化を均一に反転させることができる断熱パルス(アディアバティックパルス;adiabatic pulse)が好適である。これは、特に高磁場で問題となる静磁場の不均一性によるスピンの縦磁化励起の不均一性を解消するためである。第1のインバージョンパルスRF11印加後は、クラッシャ勾配パルスC11を印加して、第1の領域S11において励起されたスピンの横磁化をディフェーズする。その後、図3に示すように、勾配パルスSx12,Sy12と、第2のインバージョンパルスRF12とを印加することにより、第2の領域S12をスライス選択するとともに、この領域にインバージョンパルスを印加する。これにより、第2の領域S12におけるスピンを励起してその縦磁化を反転させる。このとき、第1の領域S11においては、第1のインバージョンパルスRF11の印加により、すでにスピンの縦磁化は1回反転している。そのため、第1の領域S11および第2の領域S12の重複領域W1においては、第2のインバージョンパルスRF12の印加により、スピンの縦磁化に2回目の反転が生じ、縦磁化の向きは元に戻ることになる。つまり、第1の領域S11および第2の領域S12の重複領域W1では、図6(a)に示すように、スピンの縦磁化は略当初のままとなり、エコー信号の抑制効果はほとんど働かない。一方、第1の領域S11および第2の領域S12の非重複領域K1では、図6(b)に示すように、スピンの縦磁化は当初の状態から反転するので、ヌルポイントでMRSの信号収集を開始すると、エコー信号の抑制効果が働くことになる。
【0044】
その結果、関心領域Rからのエコー信号はほぼ得ることができ、脂肪領域Fからのエコー信号はほぼ抑制することができる。第2のインバージョンパルスRF12印加後は、クラッシャ勾配パルスC12を印加して、第2の領域S12において励起されたスピンの横磁化をディフェーズする。
【0045】
次に、非重複領域K1における励起したスピンの縦磁化がT1値に依存して回復し、ヌルポイントに達するまで、時間Twだけ待つ。そして、縦磁化がヌルポイントに達した時点で、信号収集用のMRS系パルスシーケンスの実施を開始する。これにより、抑制したい部分のT1値に依存してエコー信号の強度が低下したスペクトラム(spectrum)が収集できる。なお、MRSとしては、例えば図3に示すようなPRESS(point-resolved
spectroscopy)法などを用いることができる。PRESS法は、90°−180°−180°のスライス選択パルスによりスピンエコー信号を取得する方法である。
【0046】
(第二実施形態)
図4は、第二実施形態による脂肪信号の抑制を説明するための図である。また、図5は、第二実施形態により実施されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【0047】
初めに、被検体40を含む撮像領域50において、スピンの縦磁化を反転させるインバージョンパルスを印加する2つの領域を、一部が重複するように決定する。ここでは、図4(b)に示すように、上記2つの領域の一方である第1の領域S21として、撮像領域Bの全領域を含む領域を非選択的に決定する。また、図4(c)に示すように、上記2つの領域の他方である第2の領域S22として、関心領域Rを含み、図中縦方向(y方向)に延びる領域を選択的に決定する。これにより、第1および第2の領域S21,S22の重複領域W2に、関心領域Rが含まれ、第1および第2の領域S21,S22の非重複領域K2に、脂肪領域Fの多くが含まれる。
【0048】
次に、脂肪信号を抑制するためのシーケンスを実施する。まず、図5に示すように、第1のインバージョンパルスRF21を印加して、第1の領域S21にインバージョンパルスを印加する。これにより、第1の領域S21におけるスピンの縦磁化を励起して反転させる。第1のインバージョンパルスRF21印加後は、クラッシャ勾配パルスC21を印加して、第1の領域S21において励起されたスピンの横磁化をディフェーズする。その後、図5に示すように、勾配パルスSx22と、第2のインバージョンパルスRF22とを印加して、第2の領域S22をスライス選択し、この領域にインバージョンパルスを印加する。これにより、第2の領域S22におけるスピンの縦磁化を励起して反転させる。つまり、第1の領域S21および第2の領域S22の重複領域W2では、スピンの縦磁化は当初のままとなり、エコー信号の抑制効果は働かない。一方、第1の領域S21および第2の領域S22の非重複領域K2では、スピンの縦磁化は当初の状態から反転するので、エコー信号の抑制効果が働くことになる。その結果、関心領域Rからのエコー信号はほぼ得ることができ、脂肪領域Fからのエコー信号はほぼ抑制することができる。第2のインバージョンパルスRF22印加後は、クラッシャ勾配パルスC22を印加して、第2の領域S22において励起されたスピンの横磁化をディフェーズする。
【0049】
次に、励起したスピンの縦磁化が回復してヌルポイントに達するまで待ち、縦磁化がヌルポイントに達した時点で、MRS系のパルスシーケンスの実施を開始する。
【0050】
以上、上記の実施形態によれば、前工程において、一部が重複する2つの領域にそれぞれインバージョンパルスを印加するだけで、上記2つの領域の非重複領域からのエコー信号を抑制し、上記2つの領域の重複領域からのエコー信号を得ることができ、被検体における所定の領域からの不要なエコー信号を少ない励起パルスで抑制することができる。
【0051】
なお、発明の実施形態は、上記したものに限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加・変更等が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、インバージョンパルス印加後にクラッシャ勾配パルスを印加して、スピンの横磁化をディフェーズしているが、横磁化の信号を読み取る場合など、クラッシャ勾配パルスを印加しない場合も考えられる。
【0053】
また、上記の実施形態では、前工程において、2つのインバージョンパルスだけで、信号抑制を行っているが、さらに従来のOVS法や組織選択的プレサチュレーション法を適用して、信号抑制をより精度よく行うようにすることもできる。
【0054】
また、上記の実施形態では、脂肪信号を抑制しているが、他の組織や物質からの信号を抑制するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 磁気共鳴イメージング装置
12 静磁場マグネット部
13 勾配コイル部
14 RFコイル部
22 RF駆動部
23 勾配駆動部
24 データ収集部
25 被検体搬送部
30 制御部
31 記憶部
32 操作部
33 画像再構成部
34 表示部
40 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を含む撮像領域において一部が重複するよう定められた2つの領域に、インバージョンパルスをそれぞれ印加することにより、前記2つの領域の非重複領域については、スピンの縦磁化を1回反転させて該非重複領域からの磁気共鳴信号を抑制し、前記2つの領域の重複領域については、スピンの縦磁化を2回反転させて実質的に元に戻し、その後、信号収集用パルスシーケンスを実施して、前記重複領域からの磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記インバージョンパルスのそれぞれの印加後に、クラッシャ勾配パルスを印加することにより、前記非重複領域におけるスピンの横磁化をディフェーズさせる請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記非重複領域は、脂肪領域を含んでいる請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記信号収集用パルスシーケンスは、磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)系のシーケンスを含んでいる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記撮像領域は、前記被検体の頭部を含む領域である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記2つの領域の一方は、前記撮像領域における非選択的領域であり、前記2つの領域の他方は、前記撮像領域における選択的領域である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記インバージョンパルスは、フリップ角が実質的に180°である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記インバージョンパルスは、断熱パルス(アディアバティックパルス)である請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記非重複領域におけるスピンの縦磁化がヌルポイントとなる時点に、前記信号収集用パルスシーケンスの実施を開始する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−70964(P2012−70964A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218377(P2010−218377)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】