磁気共鳴イメージング装置
【課題】RFコイル表面に固定された基板の振動を抑制することで当該基板上に搭載された電子部品の接続信頼性が高く、被検体スペースが広い磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、筒形状の傾斜磁場コイルと、傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面が扁平形状であるRFコイル2と、両コイル間のRFコイル2表面上に固定され、複数の電子部品28、29が接続される基板12と、基板12における電子部品28、29搭載面の反対側の面に、第1の粘着材21aを介して貼り付けられる補強板19とを備えている。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、筒形状の傾斜磁場コイルと、傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面が扁平形状であるRFコイル2と、両コイル間のRFコイル2表面上に固定され、複数の電子部品28、29が接続される基板12と、基板12における電子部品28、29搭載面の反対側の面に、第1の粘着材21aを介して貼り付けられる補強板19とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜磁場コイル断面の少なくとも内側の形状が横長である磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、主に、撮像空間に静磁場を生成する超電導磁石等の静磁場磁石と、被検体からの核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号を発生させるためのRF(radio frequency)コイルと、NMR信号に位置情報を与えるために傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルから構成される。
【0003】
一般に、被検体(患者)を中心に、静磁場磁石が最も外側に配置され、その内側に傾斜磁場コイルが設置され、さらにその内側の被検体に最も近い位置にRFコイルが設置される。
被検体である患者は、検査用ベッドに仰向けに寝た状態で、傾斜磁場コイルとRFコイルとで形成される円筒構造体内に入り撮影される。MRIの構造と原理の詳細については、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
従来、傾斜磁場コイルとRFコイルの断面形状は円形であったが、患者の圧迫感を低減するために患者が入るスペースを広げ、断面形状が楕円のような横長な形状とすることが提案されている。例えば、特許文献3では、傾斜磁場コイルの外側の断面形状は円形だが、その内側断面形状を横長とした構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142646号公報
【特許文献2】特開2008−119214号公報
【特許文献3】特開2011−72461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記したように、十分な患者が入るスペースを確保するために、傾斜磁場コイル内側の横長な断面の幅を大きくした場合、成形上、その左右の側面部の厚さは従来よりも薄くなる。側面部の厚さが薄くなることにより断面係数の低下により剛性が低下し、磁場を発生させたときに傾斜磁場コイルに生じる振動が従来以上に大きくなる。
この傾斜磁場コイルの振動は、その内側のRFコイルにも伝達され、RFコイルの振動も従来以上に大きくなる可能性がある。
【0007】
さらに、RFコイルの横断面長手方向の幅も可能な限り大きくするため、水平方向に長径をもつ略楕円状のRFコイルの側面部の最も外方に突出した部位を傾斜磁場コイルに接触させる構造とする場合が考えられる。この場合、振動する傾斜磁場コイルに接触構造のRFコイルの振動はさらに増加する可能性がある。
【0008】
ところが、RFコイルの外側表面(外面)には、コイルやコンデンサ等の複数の電子部品が搭載されている。RFコイルの振動が従来以上に増加すると、当該電子部品の接続部が外力を受けて断線することが懸念される。特に、RFコイル外面上に固定されたガラスエポキシ等で製造された回路基板上に搭載された電子部品は、回路基板自身が固有振動数で共振してより大きく振動し、断線することが懸念される。
【0009】
本発明は上記実状に鑑み、RFコイル表面に固定された基板の振動を抑制することで当該基板上に搭載された電子部品の接続信頼性が高く、被検体スペースが広い磁気共鳴イメージング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、筒形状の傾斜磁場コイルと、前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面が扁平形状であるRFコイルと、前記両コイル間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面に、第1の粘着材を介して貼り付けられる補強板とを備えている。
【0011】
第2の本発明に関わる磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、筒形状の傾斜磁場コイルと、前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面形状は扁平形状であるRFコイルと、前記両RFコイルの間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面の前記RFコイルへの固定部位置に、第2の粘着材を介して貼り付けられる支持部材とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、RFコイル表面に固定された基板の振動を抑制することで当該基板上に搭載された電子部品の接続信頼性が高く、被検体スペースが広い磁気共鳴イメージング装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わる実施形態1の磁気共鳴イメージング装置の正面側から見た傾斜磁場コイルとRFコイル周辺部の概略構造を示す図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】RFコイルの概略構造を示す斜視図である。
【図4】中央部に電子部品を接続した従来のガラスエポキシ製の試験基板を示す平面図である。
【図5】ボルトで固定するスパンを90mmとした場合の不図示の加振機による入力加速度振幅と試験基板の応答加速度振幅の関係を示す図である。
【図6】入力加速度振幅と、電子部品の接続断線が発生したスイープ回数との関係を、固定スパンをパラメータとして示す図である。
【図7】振動により回路基板表面に発生する応力を解析的に求めるためのモデルを示す図である。
【図8】(a)は実施形態1の回路基板を被固定面側から見た平面図であり、(b)は(a)のB方向矢視図であり、(c)は(a)のC方向矢視図である。
【図9】支持板を示す斜視図である。
【図10】円環状の支持板材を示す斜視図である。
【図11】(a)は実施形態2の回路基板を被固定面側から見た平面図であり、(b)は(a)のD方向矢視図であり、(c)は(a)のE方向矢視図である。
【図12】(a)は実施形態3の回路基板を被固定面側から見た平面図であり、(b)は(a)のF方向矢視図であり、(c)は(a)のG方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<<実施形態1>>
図8に、実施形態1に関わるRFコイルへ固定する基板の概略構造を示す。
図1に、本発明に係わる実施形態1の磁気共鳴イメージング装置の正面側から見た傾斜磁場コイルとRFコイル周辺部の概略構造を示す。図2には、図1のA−A線断面での概略構造を示す。
【0015】
実施形態1の磁気共鳴イメージング装置(MRI)Mは、磁界の中に被検体(患者)Pを入れ、体内の原子、例えば水素(H)の原子核に核磁気共鳴現象を発生させ、当該核磁気共鳴現象で得られる電磁波を検出して画像化して体内の異常を発見するための装置である。
原子核としては、水素以外の炭素(C)、リン(P)、ナトリウム(Na)等のその他の原子核でもよい。
【0016】
磁気共鳴イメージング装置Mは、被検体(患者)Pが横たわる撮像空間Sに静磁場を生成する超電導磁石等の静磁場磁石5と、被検体Pからの核磁気共鳴(NMR)信号(電磁波)を発生させるとともに受信するためのRFコイル2と、NMR信号に位置情報を与えるために傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイル1とを備え構成される。
【0017】
磁気共鳴イメージング装置Mは、被検体(患者)Pを中心に、内部に略円柱状空間が形成される静磁場磁石5が最も外側に配置され、その内側に筒状の傾斜磁場コイル1が設置され、さらにその内側の被検体(患者)Pに最も近い位置に筒状のRFコイル2が設置される。
【0018】
傾斜磁場コイル1は、撮像空間Sに該傾斜磁場コイル1に流れる電流により傾斜磁場を生成するためにコイルが巻線され形成されている。
傾斜磁場コイル1は、外面が略円筒状を呈する一方、十分な被検体(患者)Pのスペースを確保するために、内面はRFコイル2を収納すべく略楕円筒状を呈している。別言すれば、傾斜磁場コイル1は、筒状の形状を有し、その中心軸に垂直な断面の内面が横長の扁平形状を呈している。
【0019】
図3に、RFコイルの概略構造を示す。
RFコイル2は、被検体PからのNMR信号を発生させるために高周波磁場を形成するとともに、被検体PからのNMR信号を検出する。
RFコイル2は、筒状の形状を有し、十分な被検体Pのスペースを確保するために、その中心軸に垂直な断面が横長の扁平形状を呈している。
【0020】
RFコイル2は、その中心軸方向の両端縁に形成されるツバ部6a、6bとツバ部6a、6b間の筒状の胴部6cとを有するボビン6を最内側に有する。ボビン6は、例えばガラスエポキシ等の樹脂製である。
RFコイル2は、銅箔7を貼ったガラスエポキシ等の薄膜のシート6sを、ボビン6の胴部6cの外周面に巻き付けて形成される。そして、RFコイル2の銅箔7には、所々にコンデンサ8やコイル9等の電子部品が接続されている。
【0021】
さらに、RFコイル2の外面(表面)上には、コンデンサ28やコイル29等の複数の電子部品が実装(搭載)される回路基板12が、ボルト、ナット等で螺設されている。回路基板12は、例えばガラスエポキシ製であり、配線パターンがエッチング等で形成されている。
【0022】
回路基板12は、RFコイル2への給電配線のための基板であり、コイル(銅箔7やコイル9等)への電磁的な影響を抑制するために、回路基板12とその配線13はボビン6上の銅箔7等から離隔して設置している。
図1、図2に示すように、傾斜磁場コイル1とRFコイル2は、それぞれの支持体3、4を介して、静磁場磁石5の筐体に固定される。
【0023】
前記したように、傾斜磁場コイル1の内部を、横断面水平方向に長い横長の扁平な構造、すなわち水平方向に長径をもつ略楕円形状とした場合、その両側面部1sの厚さ(図1参照)が従来よりも薄くなる。このように、傾斜磁場コイル1の形状が中心軸について対称でなくなるため、撮像空間Sへの磁場印加時に傾斜磁場コイル1内に発生する応力が不均一となり、その振動が従来よりも大きくなることが想定される。そのため、傾斜磁場コイル1からRFコイル2に伝達される振動が大きくなる可能性がある。
【0024】
さらに、RFコイル2の横断面長手方向の幅(横断面略楕円形状の水平方向に延びる長径の寸法)を可能な限り大きくするため、RFコイル2の側方の最も突出した部位の側部2sを傾斜磁場コイル1に接触させた場合には、傾斜磁場コイル1の振動がRFコイル2に常に直接伝達されることから、RFコイル2の振動がさらに増加することが懸念される。
【0025】
実際に、横断面横長の扁平形状のRFコイル2に印加する電磁周波数をスイープ(変化)させて、RFコイル2に発生する振動を測定する実験を行ったところ、従来の横断面円状のRFコイルの場合の約十倍の振動加速度が計測された例も報告されている。
RFコイル2の外面(表面)に直接接続されたコンデンサ8やコイル9等の電子部品の接続信頼性を解析等により検討したところ、前記の従来の約十倍の振動が加わった場合でもその接続部には微小なひずみしか発生せず、断線する懸念は小さいことが明らかとなった。
【0026】
これに対して、RFコイル2の外面に固定された回路基板12上に実装(搭載)された電子部品(コンデンサ28やコイル29等)は、以下の結果より、その接続が断線する可能性があると判断される。その根拠を示す実験結果を以下に説明する。
実験は、図4に示す中央部に電子部品16を接続した従来のガラスエポキシ製の回路基板14、すなわち外形寸法が、100×50mm、厚さは標準厚である1.6mmの回路基板14を、ボルト15で4箇所固定し、これに加振機により周波数をスイープ(変化)させた振動を加えた場合の電子部品16の接続寿命を検討した。
【0027】
図5に、ボルト15で固定する固定スパンsを従来の90mmとした場合の不図示の加振機による入力加速度振幅と回路基板の応答加速度振幅の関係を示す。
試験した範囲では、回路基板14は600Hz近辺(図5のピーク(1)の580Hz)と3000Hz近辺(図5のピーク(2)の3140Hz)で共振点、つまり固有振動数を持つことが判明した。特に、600Hz付近の共振点(図5のピーク(1))では、入力加速度振幅100m/s2の場合、回路基板14は全振幅量約2mmの大きな振動が発生した。
【0028】
図6に、入力加速度振幅と電子部品の接続断線が発生したスイープ回数との関係を、固定スパンsをパラメータとして示す。図6の縦軸に試験基板14に印加した入力加速度振幅(m/s2)をとり、図6の横軸に電子部品が断線したスイープ回数(回)をとっている。
入力加速度振幅100m/s2、●印の固定スパン90mmの場合、10回程度のスイープの実施で断線が発生した。前記の横断面形状が横長なRFコイル2の振動測定では、加振の周波数600Hz付近での振動加速度振幅は約100m/s2だった。
【0029】
したがって、従来と同様にRFコイル2上の回路基板12(図3参照)を試験用の回路基板14と同じ固定スパン90mmで固定した場合、ごく短期間で断線が発生すると予測された。つまり、RFコイル2上の回路基板12は、図6の●印の固定スパン90mmの入力加速度振幅100m/s2の場合から、10回前後のスイープで断線が発生すると予想される。
【0030】
ここで、RFコイル2上の回路基板12(図3参照)の振動を低減し、回路基板12上に実装された電子部品の接続断線を防止するためには、回路基板12の断面係数が増加するとその応力σが減少することから、回路基板12の厚さを従来よりも厚くすることが有効である。
図7に示すような、加速度(a)により分布荷重w(単位長さ当りの荷重w)が負荷されたはりを考えた場合、材料力学の公式より、中央部の中立軸からの表面の位置h/2における応力σは次の式(1)で表される。
【0031】
【数1】
ここで、Lは固定スパン(固定箇所の距離)(図4の固定スパンs)、b、hはそれぞれ回路基板の幅、厚さ、aは振動加速度、rは回路基板の密度である。
【0032】
また、分布荷重wは、力=質量×加速度 と表されることから、はりの単位長さ当りの質量rbhを用いて、w=a×rbhと表される。
式(1)より、回路基板12の応力はその厚さhに反比例することが分る。
したがって、例えば厚さhを従来の1.6mmの2倍の約3mmとすれば、式(1)より応力σは1/2に低減され、加速度aを1/2に低減した場合に相当する。
【0033】
しかし、ガラスエポキシ製の回路基板は、標準厚さ1.6mm以上のものは一般的に市販されておらず特注品となるため、標準寸法外の回路基板を使用することは若干のコスト増を招来する。
そこで、図8に示すように、コンデンサ28やコイル29が実装(搭載)される回路基板12に塩化ビニル等の補強板19を貼り付ける(接触して設ける)ことでみかけ上の断面係数を高くし、回路基板12の振動に対する剛性を強化することが有効である。
【0034】
回路基板12を補強板19に貼り付けるときに、粘弾性的特性を有する粘着テープや接着材の粘着材21aを使用すれば、その粘着テープ等の粘着材21aによる粘性減衰力による減衰効果で、共振点(固有振動数)での振動ピークが抑制される効果も期待できる。
さらに、貼り付けた補強板19が振動によりはがれてしまうことを防止するため、回路基板12のRFコイル2への4箇所での固定部k1、k2、k3、k4に加え、回路基板12の中央部付近にも固定部k5、k6を設けることが望ましい。
【0035】
回路基板12の中央部に固定部k5、k6を設けることにより、固定部k5と固定部k1または固定部k4との各固定スパンや固定部k6と固定部k2または固定部k3との各固定スパンが、中央部付近に固定部k5、k6を設けない場合の固定部k1と固定部k4との固定スパンや固定部k2と固定部k3との固定スパンより小さくなることによる振動(振幅)低減効果も期待できる。
何故なら、各固定スパンは、振動の節間の距離となるので、中央部付近に固定部k5、k6を設けた場合、設けない場合に比較し、振動の節間の距離が短くなるからである。
【0036】
固定スパンL、すなわち固定部距離の振動の節間の距離を小さくすることによる効果は、式(1)と図6に示す実験結果から明らかである。
例えば、Lを1/2(45mm)とすれば、式(1)から応力σはL2に比例するので、応力σは1/4に低減され、応力σが比例する加速度aを1/4に低減したと同等の効果が得られる。さらに、式(1)から応力σが反比例する回路基板厚さhを2倍にする対策と合わせて実施すれば、加速度を1/2×1/4の1/8に低減したと同じ効果が得られ、問題がない実績がある従来の振動レベルに近付けることができる。
【0037】
一方、例えば図6の実験結果からは、スパン30mmとした場合、従来のスパン90mmの場合の加速度振幅100m/s2での寿命の約5倍の加速度での寿命に相当することが確認できる。すなわち、図6から、スパン90mmの場合(図6の●印)の加速度振幅100m/s2の断線したスイープ回数は、スパン30mmの場合(図6の■印)での加速度振幅が約500m/s2の断線したスイープ回数にほぼ相当することが分る。
【0038】
これより、回路基板12の固定部(k1〜k6)のスパンを30mmとした場合、振動加速度を約1/5低減とした場合と同等の効果が得られると言える。
回路基板12の厚さhを2倍にする対策(式(1)よりσが1/2となり、加速度aを1/2にしたことと同等の効果)と合わせて実施することにより、加速度を1/10に低減したと同等であり、従来と同等の加速度に低減した効果が得られる。
【0039】
さらに、式(1)でのL2/hの値を考えると、入力加速度振幅100m/s2で電子部品の接続断線が懸念される、スパンLが従来の90mm、厚さhが回路基板の標準厚1.6mmの組み合わせの場合、L2/hは5060mmである。
【0040】
前記したように、横断面横長の扁平形状のRFコイル2では従来の円筒形状のRFコイルの場合の約十倍の振動加速度が報告されているため、回路基板12の式(1)の応力σを従来と同等レベルに低減するためには、回路基板12に印加される加速度aが十倍なので、回路基板12の密度rが等しいとした場合、L2/hの値を、少なくとも1/10の約500mm以下に低減する必要がある。
【0041】
実験的に応力低減効果が1/5と確認された固定スパンLを30mmで、厚さhを標準厚1.6mmの2倍の3mmとすればトータルでの応力低減効果が1/10未満となり、このときの L2/h は300mmである。よって、L2/hを300以下にできれば、より確実に電子部品の接続の信頼性を確保するため望ましい。
【0042】
図8は、RFコイル上に固定された、電子部品が実装された回路基板の概略構造の例を示す図である。図8(a)は回路基板を被固定面側から見た平面図であり、図8(b)は図8(a)のB方向矢視図であり、図8(c)はRFコイル2の外周の接線方向に見た図8(a)のC方向矢視図である。
図8(a)に示すように、回路基板12をRFコイル2のボビン6の胴部6cの外方に突出する曲面上に安定して固定する必要がある。
【0043】
図8(b)に示すように、平板状の回路基板12の下面に対してRFコイル2が凸状に形成され、回路基板12をそのままRFコイル2の凸状の外面に固定すると中央部がRFコイル2に当接し、縁部がRFコイル2から浮いた非接触の状態になる。
そのため、回路基板12のRFコイル2の周方向の縁部に対向する補強板19の下部に、さらに図9に示す短冊状の2本の支持板20(20A、20B)を、粘着材21を介して、貼り付ける。粘着材21は、粘弾性的特性を有する粘着テープや接着材等であり、粘着材21による粘性減衰による減衰効果で、共振点(固有振動数)での振動ピークが抑制される効果がある。
【0044】
そして、図8(c)に示すように、ボルト10の雄ネジ部を、回路基板12、粘着材21a、補強板19、粘着材21、支持板20にそれぞれ穿設される孔を挿通させ、ボルトnをボルト10の雄ネジ部に螺着して、回路基板12はRFコイル2に取着される。
図9に示す支持板20Aは、薄い板厚の細長い短冊状の長形状を呈しており、固定部k1、k5、k4の各位置にボルト10(図8参照)の雄ネジ部が挿通される挿通孔a1、a5、a4が貫設されている。
【0045】
同様に、支持板20Bは、薄い板厚の細長い短冊状の長形状を呈しており、固定部k2、k6、k3の各位置にボルト10(図8参照)の雄ネジ部が挿通される挿通孔a2、a6、a3が貫設されている。
支持板20(20A、20B)、例えば塩化ビニル等の樹脂、ゴム等が用いられ、特に限定されない。しかし、支持板20は回路基板12に伝達される振動の減衰作用を有する材料が望ましい。
【0046】
短冊状の支持板20には、回路基板12の補強板としての効果も期待され、さらに振動を低減するためにも有効に作用する。
回路基板12の固定(k1〜k6)はボルト10やナットn等で、RFコイル2の中心軸に沿った支持板20(20A、20B)の長手方向の位置で行い、支持板20Aの両端部(k1、k4)と中央部(k5)、および、支持板20Bの両端部(k2、k3)と中央部(k6)の各3箇所以上で固定するのが好ましい。
【0047】
RFコイル2の中心軸に沿った方向の支持板20(20A、20B)の長手方向の位置での固定は、回路基板12の下面とRFコイル2の外面(表面)との距離が等しいため、支持板20(20A、20B)の回路基板12やRFコイル2の外面からの剥離(はがれ)を抑制することができるためである。
なお、支持板20(20A、20B)は、固定部k1〜k6にそれぞれ独立して設ける図10に示す環状の支持板材30としてもよい。
【0048】
各支持板材30には、ボルト10の雄ネジ部が挿通する挿通孔30aが貫設されている。支持板材30は、例えば塩化ビニル等の樹脂、ゴム等が用いられ、特に限定されない。しかし、支持板材30に、回路基板12の振動に対する減衰作用を有する材料がより好ましい。
図10では、支持板材30が環状の場合を例示したが、回路基板12とRFコイル2との間にクリアランスを形成できれば、その形状は限定されないのは勿論である。
【0049】
また、図9の支持板20(20A、20B)は固定部を3つずつ固定し、図10の支持板材30固定部を1つずつ固定する支持部材を例示したが、回路基板12とRFコイル2との間にクリアランスを形成でき、かつ振動の減衰作用を有すれば、固定部を幾つ固定するかは、任意に選択可能である。
なお、図8では回路基板12上の主な部品(コンデンサ28、コイル29)のみを示し、その他の部品や配線や配線パターン等は省略している。
【0050】
また、図3に示した例では回路基板12の数は1個の場合を例示したが、複数の回路基板12を同様に固定する。さらに、図3では、回路基板12の位置はRFコイル2の上部として示したが、それ以外の位置、すなわち側面部や下部等に接続される場合もある。いずれの場合でも、前記した対策により同様の断線防止効果が得られる。
回路基板12の取り付け位置は、RFコイル2が扁平形状のため、その上・下部は空きスペースが存在し、入出力端子の接続作業が容易で、スペースの観点から望ましい。一方、RFコイル2の両側部(図1の側部2s)は振動が発生した際に振動の節に成り易く、振動振幅が小さい傾向にあるので、回路基板12の防振の観点から望ましい。
【0051】
上記構成によれば、RFコイル2の表面(外面)に固定された回路基板12の振動を抑制して回路基板12上の電子部品の接続部の信頼性を向上することができる。
これにより、より被検体(患者)Pのスペースが広い、横長な傾斜磁場コイル1の横断面内側形状とRFコイル2横断面形状を有する磁気共鳴イメージング装置Mを提供することができる。
【0052】
<<実施形態2>>
次に、実施形態2の磁気共鳴イメージング装置Mについて説明する。
図11に、実施形態2に関わるRFコイルへ固定する回路基板の概略構造を示す。図11(a)は回路基板を被固定面側から見た平面図であり、図11(b)は図11(a)のD方向矢視図であり、図11(c)はRFコイル2の外周の接線方向に見た図11(a)のE方向矢視図である。
【0053】
実施形態2では、実施形態1の回路基板12と異なり、回路基板22の固定部の一部(k25、k26)を、補強板19、支持板20のみ(粘着材21を含む)をRFコイル2に固定する構成としたものである。
実施形態2における実施形態1と同様な構成要素には同一の符号を付して示し、詳細な説明を省略する。
【0054】
実施形態2の図11に示す例では、回路基板22の中央部2箇所の固定部k25、k26は、回路基板22の下方に貼り付けられる(接触して設けられる)補強板19、支持板20のみ(粘着材21を含む)をRFコイル2に固定する構造とした。
補強板19の固定部k25、k26には、固定用ボルト10のボルト頭10tが回路基板22に突出しないよう、回路基板22の設置面側に、固定用ボルト10のボルト頭10tが収容されるザグリ(凹)部17が設けられている。
【0055】
この構造とすることにより、補強板19の回路基板22からのはがれ防止の観点では不利となるが、固定用ボルト10の存在に制限を受けることなく、または、阻害されずに、コンデンサ28、コイル29等の電子部品を回路基板22に実装できる利点が得られる。
また、さらに回路基板22のRFコイル2への固定箇所を増やし、より強固に振動を抑制することが容易となり、その点でも有利である。
【0056】
なお、実施形態2では、回路基板22の中央付近の固定部を外面に固定用のボルト頭10tが突出しないように、回路基板22、補強板19に凹状のザグリ(凹)部17を設ける場合を例示したが、回路基板22のコーナ部の固定部k21〜k24において回路基板22、補強板19に凹状のザグリ(凹)部17を設け、固定用ボルト10のボルト頭10tが回路基板22の外面に突出しないように構成してもよい。また、回路基板22のコーナ部の固定部または中央付近の固定部のうちの少なくとも何れかを固定用ボルト10のボルト頭10tが回路基板22に突出しないように構成してもよい
【0057】
<<実施形態3>>
次に、実施形態3の磁気共鳴イメージング装置Mについて説明する。
実施形態3では、実施形態1の回路基板12に相当する回路基板32(32A、32B)を分割する構成としたものである。
図12に、実施形態3に関わるRFコイルへ固定する回路基板の概略構造を示す。図12(a)は回路基板を被固定面側から見た平面図であり、図12(b)は図12(a)のF方向矢視図であり、図12(c)はRFコイル2の外周の接線方向に見た図12(a)のG方向矢視図である。
【0058】
実施形態1や実施形態2のように回路基板12、22の中央部に固定部k5、k6(図8参照)、固定部k25、k26(図11参照)を設けた場合、RFコイル2のボビン6の変形にならって回路基板12、22がそれぞれ変形してしまい、コンデンサ28やコイル29等の電子部品の接続信頼性に影響を及ぼす可能性がある。
【0059】
そこで、実施形態3の図12に示した例では、回路基板32、補強板19、支持板20A、20Bをそれぞれ2枚の回路基板32A、32B、2枚の補強板19A、19B、2セットの支持板20A1、20B1、20A2、20B2に分割し、回路基板32Aのコーナ箇所の固定部ka31〜ka34および回路基板32Bのコーナ箇所の固定部kb31〜kb34で固定する構造としている。
これにより、ボビン6の変形の影響が、回路基板32A、補強板19A、支持板20A1、20B1と、回路基板32B、補強板19B、支持板20A2、20B2との分割された空間p1で開放されるようにしている。2枚の回路基板32A、32Bの間は配線52で結線され、電気的接続を図っている。
なお、実施形態3では、回路基板32、補強板19、支持板20A、20Bをそれぞれ2分割した場合を例示したが、2分割以上としてもよい。
【0060】
<<その他の実施形態>>
前記実施形態では、回路基板12、22、32に補強板19を貼り付ける場合を例示したが、回路基板12、22、32の強度を高めたり、厚肉に形成することで、補強板19(19A、19B)を設けることなく構成してもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、回路基板12、22、32をコーナ部4箇所でRFコイル2に固定する場合を例示したが、平板の回路基板を安定的に固定できる3箇所以上であれば固定箇所の数は限定されない。また、回路基板のコーナ部以外の縁部を固定する構成としてもよい。しかしながら、回路基板をコーナ部4箇所で固定すると固定作業が容易であるとともに、回路基板を安定してRFコイル2に固定できるので、最も望ましい。
【0062】
なお、前記実施形態では、回路基板12のRFコイル2への固定を、ボルト、ナット等を用いて行う場合を例示したが、樹脂等の弾性材で弾性変形を利用して固定したりしてもよく、回路基板12のRFコイル2への固定方法は、ボルト以外の方法も適宜選択可能である。
【0063】
また、前記実施形態では、様々な構成を説明したが、説明した各構成を適宜組み合わせて構成してもよい。これにより、組み合わせた作用効果を奏する。
以上、本発明の様々な実施形態を述べたが、その説明は典型的であることを意図したものである。そして、さらに多くの実施態様が本発明の範囲内で可能である。すなわち、本発明の範囲内で様々な変更と修正が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 傾斜磁場コイル
2 RFコイル
8、28 コンデンサ(電子部品)
9、29 コイル(電子部品)
12、22、32、32A、32B 回路基板(基板)
17 ザグリ部(凹部)
19 補強板
20 支持板(支持部材)
21 粘着材(第2の粘着材)
21a 粘着材(第1の粘着材)
30 支持板材(支持部材)
32、32A、32B 回路基板(分割される基板)
52 配線
h 厚さ(基板と補強板を合わせた厚さ)
k1〜k6、k21〜k26、ka31〜ka36、kb31〜kb36 固定部
ka31〜ka36、kb31〜kb36 固定部
L 固定スパン(基板の前記RFコイルへの固定部の(最小)間隔)
M 磁気共鳴イメージング装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜磁場コイル断面の少なくとも内側の形状が横長である磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、主に、撮像空間に静磁場を生成する超電導磁石等の静磁場磁石と、被検体からの核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号を発生させるためのRF(radio frequency)コイルと、NMR信号に位置情報を与えるために傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルから構成される。
【0003】
一般に、被検体(患者)を中心に、静磁場磁石が最も外側に配置され、その内側に傾斜磁場コイルが設置され、さらにその内側の被検体に最も近い位置にRFコイルが設置される。
被検体である患者は、検査用ベッドに仰向けに寝た状態で、傾斜磁場コイルとRFコイルとで形成される円筒構造体内に入り撮影される。MRIの構造と原理の詳細については、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
従来、傾斜磁場コイルとRFコイルの断面形状は円形であったが、患者の圧迫感を低減するために患者が入るスペースを広げ、断面形状が楕円のような横長な形状とすることが提案されている。例えば、特許文献3では、傾斜磁場コイルの外側の断面形状は円形だが、その内側断面形状を横長とした構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142646号公報
【特許文献2】特開2008−119214号公報
【特許文献3】特開2011−72461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記したように、十分な患者が入るスペースを確保するために、傾斜磁場コイル内側の横長な断面の幅を大きくした場合、成形上、その左右の側面部の厚さは従来よりも薄くなる。側面部の厚さが薄くなることにより断面係数の低下により剛性が低下し、磁場を発生させたときに傾斜磁場コイルに生じる振動が従来以上に大きくなる。
この傾斜磁場コイルの振動は、その内側のRFコイルにも伝達され、RFコイルの振動も従来以上に大きくなる可能性がある。
【0007】
さらに、RFコイルの横断面長手方向の幅も可能な限り大きくするため、水平方向に長径をもつ略楕円状のRFコイルの側面部の最も外方に突出した部位を傾斜磁場コイルに接触させる構造とする場合が考えられる。この場合、振動する傾斜磁場コイルに接触構造のRFコイルの振動はさらに増加する可能性がある。
【0008】
ところが、RFコイルの外側表面(外面)には、コイルやコンデンサ等の複数の電子部品が搭載されている。RFコイルの振動が従来以上に増加すると、当該電子部品の接続部が外力を受けて断線することが懸念される。特に、RFコイル外面上に固定されたガラスエポキシ等で製造された回路基板上に搭載された電子部品は、回路基板自身が固有振動数で共振してより大きく振動し、断線することが懸念される。
【0009】
本発明は上記実状に鑑み、RFコイル表面に固定された基板の振動を抑制することで当該基板上に搭載された電子部品の接続信頼性が高く、被検体スペースが広い磁気共鳴イメージング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、筒形状の傾斜磁場コイルと、前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面が扁平形状であるRFコイルと、前記両コイル間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面に、第1の粘着材を介して貼り付けられる補強板とを備えている。
【0011】
第2の本発明に関わる磁気共鳴イメージング装置は、磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、筒形状の傾斜磁場コイルと、前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面形状は扁平形状であるRFコイルと、前記両RFコイルの間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面の前記RFコイルへの固定部位置に、第2の粘着材を介して貼り付けられる支持部材とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、RFコイル表面に固定された基板の振動を抑制することで当該基板上に搭載された電子部品の接続信頼性が高く、被検体スペースが広い磁気共鳴イメージング装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わる実施形態1の磁気共鳴イメージング装置の正面側から見た傾斜磁場コイルとRFコイル周辺部の概略構造を示す図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】RFコイルの概略構造を示す斜視図である。
【図4】中央部に電子部品を接続した従来のガラスエポキシ製の試験基板を示す平面図である。
【図5】ボルトで固定するスパンを90mmとした場合の不図示の加振機による入力加速度振幅と試験基板の応答加速度振幅の関係を示す図である。
【図6】入力加速度振幅と、電子部品の接続断線が発生したスイープ回数との関係を、固定スパンをパラメータとして示す図である。
【図7】振動により回路基板表面に発生する応力を解析的に求めるためのモデルを示す図である。
【図8】(a)は実施形態1の回路基板を被固定面側から見た平面図であり、(b)は(a)のB方向矢視図であり、(c)は(a)のC方向矢視図である。
【図9】支持板を示す斜視図である。
【図10】円環状の支持板材を示す斜視図である。
【図11】(a)は実施形態2の回路基板を被固定面側から見た平面図であり、(b)は(a)のD方向矢視図であり、(c)は(a)のE方向矢視図である。
【図12】(a)は実施形態3の回路基板を被固定面側から見た平面図であり、(b)は(a)のF方向矢視図であり、(c)は(a)のG方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<<実施形態1>>
図8に、実施形態1に関わるRFコイルへ固定する基板の概略構造を示す。
図1に、本発明に係わる実施形態1の磁気共鳴イメージング装置の正面側から見た傾斜磁場コイルとRFコイル周辺部の概略構造を示す。図2には、図1のA−A線断面での概略構造を示す。
【0015】
実施形態1の磁気共鳴イメージング装置(MRI)Mは、磁界の中に被検体(患者)Pを入れ、体内の原子、例えば水素(H)の原子核に核磁気共鳴現象を発生させ、当該核磁気共鳴現象で得られる電磁波を検出して画像化して体内の異常を発見するための装置である。
原子核としては、水素以外の炭素(C)、リン(P)、ナトリウム(Na)等のその他の原子核でもよい。
【0016】
磁気共鳴イメージング装置Mは、被検体(患者)Pが横たわる撮像空間Sに静磁場を生成する超電導磁石等の静磁場磁石5と、被検体Pからの核磁気共鳴(NMR)信号(電磁波)を発生させるとともに受信するためのRFコイル2と、NMR信号に位置情報を与えるために傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイル1とを備え構成される。
【0017】
磁気共鳴イメージング装置Mは、被検体(患者)Pを中心に、内部に略円柱状空間が形成される静磁場磁石5が最も外側に配置され、その内側に筒状の傾斜磁場コイル1が設置され、さらにその内側の被検体(患者)Pに最も近い位置に筒状のRFコイル2が設置される。
【0018】
傾斜磁場コイル1は、撮像空間Sに該傾斜磁場コイル1に流れる電流により傾斜磁場を生成するためにコイルが巻線され形成されている。
傾斜磁場コイル1は、外面が略円筒状を呈する一方、十分な被検体(患者)Pのスペースを確保するために、内面はRFコイル2を収納すべく略楕円筒状を呈している。別言すれば、傾斜磁場コイル1は、筒状の形状を有し、その中心軸に垂直な断面の内面が横長の扁平形状を呈している。
【0019】
図3に、RFコイルの概略構造を示す。
RFコイル2は、被検体PからのNMR信号を発生させるために高周波磁場を形成するとともに、被検体PからのNMR信号を検出する。
RFコイル2は、筒状の形状を有し、十分な被検体Pのスペースを確保するために、その中心軸に垂直な断面が横長の扁平形状を呈している。
【0020】
RFコイル2は、その中心軸方向の両端縁に形成されるツバ部6a、6bとツバ部6a、6b間の筒状の胴部6cとを有するボビン6を最内側に有する。ボビン6は、例えばガラスエポキシ等の樹脂製である。
RFコイル2は、銅箔7を貼ったガラスエポキシ等の薄膜のシート6sを、ボビン6の胴部6cの外周面に巻き付けて形成される。そして、RFコイル2の銅箔7には、所々にコンデンサ8やコイル9等の電子部品が接続されている。
【0021】
さらに、RFコイル2の外面(表面)上には、コンデンサ28やコイル29等の複数の電子部品が実装(搭載)される回路基板12が、ボルト、ナット等で螺設されている。回路基板12は、例えばガラスエポキシ製であり、配線パターンがエッチング等で形成されている。
【0022】
回路基板12は、RFコイル2への給電配線のための基板であり、コイル(銅箔7やコイル9等)への電磁的な影響を抑制するために、回路基板12とその配線13はボビン6上の銅箔7等から離隔して設置している。
図1、図2に示すように、傾斜磁場コイル1とRFコイル2は、それぞれの支持体3、4を介して、静磁場磁石5の筐体に固定される。
【0023】
前記したように、傾斜磁場コイル1の内部を、横断面水平方向に長い横長の扁平な構造、すなわち水平方向に長径をもつ略楕円形状とした場合、その両側面部1sの厚さ(図1参照)が従来よりも薄くなる。このように、傾斜磁場コイル1の形状が中心軸について対称でなくなるため、撮像空間Sへの磁場印加時に傾斜磁場コイル1内に発生する応力が不均一となり、その振動が従来よりも大きくなることが想定される。そのため、傾斜磁場コイル1からRFコイル2に伝達される振動が大きくなる可能性がある。
【0024】
さらに、RFコイル2の横断面長手方向の幅(横断面略楕円形状の水平方向に延びる長径の寸法)を可能な限り大きくするため、RFコイル2の側方の最も突出した部位の側部2sを傾斜磁場コイル1に接触させた場合には、傾斜磁場コイル1の振動がRFコイル2に常に直接伝達されることから、RFコイル2の振動がさらに増加することが懸念される。
【0025】
実際に、横断面横長の扁平形状のRFコイル2に印加する電磁周波数をスイープ(変化)させて、RFコイル2に発生する振動を測定する実験を行ったところ、従来の横断面円状のRFコイルの場合の約十倍の振動加速度が計測された例も報告されている。
RFコイル2の外面(表面)に直接接続されたコンデンサ8やコイル9等の電子部品の接続信頼性を解析等により検討したところ、前記の従来の約十倍の振動が加わった場合でもその接続部には微小なひずみしか発生せず、断線する懸念は小さいことが明らかとなった。
【0026】
これに対して、RFコイル2の外面に固定された回路基板12上に実装(搭載)された電子部品(コンデンサ28やコイル29等)は、以下の結果より、その接続が断線する可能性があると判断される。その根拠を示す実験結果を以下に説明する。
実験は、図4に示す中央部に電子部品16を接続した従来のガラスエポキシ製の回路基板14、すなわち外形寸法が、100×50mm、厚さは標準厚である1.6mmの回路基板14を、ボルト15で4箇所固定し、これに加振機により周波数をスイープ(変化)させた振動を加えた場合の電子部品16の接続寿命を検討した。
【0027】
図5に、ボルト15で固定する固定スパンsを従来の90mmとした場合の不図示の加振機による入力加速度振幅と回路基板の応答加速度振幅の関係を示す。
試験した範囲では、回路基板14は600Hz近辺(図5のピーク(1)の580Hz)と3000Hz近辺(図5のピーク(2)の3140Hz)で共振点、つまり固有振動数を持つことが判明した。特に、600Hz付近の共振点(図5のピーク(1))では、入力加速度振幅100m/s2の場合、回路基板14は全振幅量約2mmの大きな振動が発生した。
【0028】
図6に、入力加速度振幅と電子部品の接続断線が発生したスイープ回数との関係を、固定スパンsをパラメータとして示す。図6の縦軸に試験基板14に印加した入力加速度振幅(m/s2)をとり、図6の横軸に電子部品が断線したスイープ回数(回)をとっている。
入力加速度振幅100m/s2、●印の固定スパン90mmの場合、10回程度のスイープの実施で断線が発生した。前記の横断面形状が横長なRFコイル2の振動測定では、加振の周波数600Hz付近での振動加速度振幅は約100m/s2だった。
【0029】
したがって、従来と同様にRFコイル2上の回路基板12(図3参照)を試験用の回路基板14と同じ固定スパン90mmで固定した場合、ごく短期間で断線が発生すると予測された。つまり、RFコイル2上の回路基板12は、図6の●印の固定スパン90mmの入力加速度振幅100m/s2の場合から、10回前後のスイープで断線が発生すると予想される。
【0030】
ここで、RFコイル2上の回路基板12(図3参照)の振動を低減し、回路基板12上に実装された電子部品の接続断線を防止するためには、回路基板12の断面係数が増加するとその応力σが減少することから、回路基板12の厚さを従来よりも厚くすることが有効である。
図7に示すような、加速度(a)により分布荷重w(単位長さ当りの荷重w)が負荷されたはりを考えた場合、材料力学の公式より、中央部の中立軸からの表面の位置h/2における応力σは次の式(1)で表される。
【0031】
【数1】
ここで、Lは固定スパン(固定箇所の距離)(図4の固定スパンs)、b、hはそれぞれ回路基板の幅、厚さ、aは振動加速度、rは回路基板の密度である。
【0032】
また、分布荷重wは、力=質量×加速度 と表されることから、はりの単位長さ当りの質量rbhを用いて、w=a×rbhと表される。
式(1)より、回路基板12の応力はその厚さhに反比例することが分る。
したがって、例えば厚さhを従来の1.6mmの2倍の約3mmとすれば、式(1)より応力σは1/2に低減され、加速度aを1/2に低減した場合に相当する。
【0033】
しかし、ガラスエポキシ製の回路基板は、標準厚さ1.6mm以上のものは一般的に市販されておらず特注品となるため、標準寸法外の回路基板を使用することは若干のコスト増を招来する。
そこで、図8に示すように、コンデンサ28やコイル29が実装(搭載)される回路基板12に塩化ビニル等の補強板19を貼り付ける(接触して設ける)ことでみかけ上の断面係数を高くし、回路基板12の振動に対する剛性を強化することが有効である。
【0034】
回路基板12を補強板19に貼り付けるときに、粘弾性的特性を有する粘着テープや接着材の粘着材21aを使用すれば、その粘着テープ等の粘着材21aによる粘性減衰力による減衰効果で、共振点(固有振動数)での振動ピークが抑制される効果も期待できる。
さらに、貼り付けた補強板19が振動によりはがれてしまうことを防止するため、回路基板12のRFコイル2への4箇所での固定部k1、k2、k3、k4に加え、回路基板12の中央部付近にも固定部k5、k6を設けることが望ましい。
【0035】
回路基板12の中央部に固定部k5、k6を設けることにより、固定部k5と固定部k1または固定部k4との各固定スパンや固定部k6と固定部k2または固定部k3との各固定スパンが、中央部付近に固定部k5、k6を設けない場合の固定部k1と固定部k4との固定スパンや固定部k2と固定部k3との固定スパンより小さくなることによる振動(振幅)低減効果も期待できる。
何故なら、各固定スパンは、振動の節間の距離となるので、中央部付近に固定部k5、k6を設けた場合、設けない場合に比較し、振動の節間の距離が短くなるからである。
【0036】
固定スパンL、すなわち固定部距離の振動の節間の距離を小さくすることによる効果は、式(1)と図6に示す実験結果から明らかである。
例えば、Lを1/2(45mm)とすれば、式(1)から応力σはL2に比例するので、応力σは1/4に低減され、応力σが比例する加速度aを1/4に低減したと同等の効果が得られる。さらに、式(1)から応力σが反比例する回路基板厚さhを2倍にする対策と合わせて実施すれば、加速度を1/2×1/4の1/8に低減したと同じ効果が得られ、問題がない実績がある従来の振動レベルに近付けることができる。
【0037】
一方、例えば図6の実験結果からは、スパン30mmとした場合、従来のスパン90mmの場合の加速度振幅100m/s2での寿命の約5倍の加速度での寿命に相当することが確認できる。すなわち、図6から、スパン90mmの場合(図6の●印)の加速度振幅100m/s2の断線したスイープ回数は、スパン30mmの場合(図6の■印)での加速度振幅が約500m/s2の断線したスイープ回数にほぼ相当することが分る。
【0038】
これより、回路基板12の固定部(k1〜k6)のスパンを30mmとした場合、振動加速度を約1/5低減とした場合と同等の効果が得られると言える。
回路基板12の厚さhを2倍にする対策(式(1)よりσが1/2となり、加速度aを1/2にしたことと同等の効果)と合わせて実施することにより、加速度を1/10に低減したと同等であり、従来と同等の加速度に低減した効果が得られる。
【0039】
さらに、式(1)でのL2/hの値を考えると、入力加速度振幅100m/s2で電子部品の接続断線が懸念される、スパンLが従来の90mm、厚さhが回路基板の標準厚1.6mmの組み合わせの場合、L2/hは5060mmである。
【0040】
前記したように、横断面横長の扁平形状のRFコイル2では従来の円筒形状のRFコイルの場合の約十倍の振動加速度が報告されているため、回路基板12の式(1)の応力σを従来と同等レベルに低減するためには、回路基板12に印加される加速度aが十倍なので、回路基板12の密度rが等しいとした場合、L2/hの値を、少なくとも1/10の約500mm以下に低減する必要がある。
【0041】
実験的に応力低減効果が1/5と確認された固定スパンLを30mmで、厚さhを標準厚1.6mmの2倍の3mmとすればトータルでの応力低減効果が1/10未満となり、このときの L2/h は300mmである。よって、L2/hを300以下にできれば、より確実に電子部品の接続の信頼性を確保するため望ましい。
【0042】
図8は、RFコイル上に固定された、電子部品が実装された回路基板の概略構造の例を示す図である。図8(a)は回路基板を被固定面側から見た平面図であり、図8(b)は図8(a)のB方向矢視図であり、図8(c)はRFコイル2の外周の接線方向に見た図8(a)のC方向矢視図である。
図8(a)に示すように、回路基板12をRFコイル2のボビン6の胴部6cの外方に突出する曲面上に安定して固定する必要がある。
【0043】
図8(b)に示すように、平板状の回路基板12の下面に対してRFコイル2が凸状に形成され、回路基板12をそのままRFコイル2の凸状の外面に固定すると中央部がRFコイル2に当接し、縁部がRFコイル2から浮いた非接触の状態になる。
そのため、回路基板12のRFコイル2の周方向の縁部に対向する補強板19の下部に、さらに図9に示す短冊状の2本の支持板20(20A、20B)を、粘着材21を介して、貼り付ける。粘着材21は、粘弾性的特性を有する粘着テープや接着材等であり、粘着材21による粘性減衰による減衰効果で、共振点(固有振動数)での振動ピークが抑制される効果がある。
【0044】
そして、図8(c)に示すように、ボルト10の雄ネジ部を、回路基板12、粘着材21a、補強板19、粘着材21、支持板20にそれぞれ穿設される孔を挿通させ、ボルトnをボルト10の雄ネジ部に螺着して、回路基板12はRFコイル2に取着される。
図9に示す支持板20Aは、薄い板厚の細長い短冊状の長形状を呈しており、固定部k1、k5、k4の各位置にボルト10(図8参照)の雄ネジ部が挿通される挿通孔a1、a5、a4が貫設されている。
【0045】
同様に、支持板20Bは、薄い板厚の細長い短冊状の長形状を呈しており、固定部k2、k6、k3の各位置にボルト10(図8参照)の雄ネジ部が挿通される挿通孔a2、a6、a3が貫設されている。
支持板20(20A、20B)、例えば塩化ビニル等の樹脂、ゴム等が用いられ、特に限定されない。しかし、支持板20は回路基板12に伝達される振動の減衰作用を有する材料が望ましい。
【0046】
短冊状の支持板20には、回路基板12の補強板としての効果も期待され、さらに振動を低減するためにも有効に作用する。
回路基板12の固定(k1〜k6)はボルト10やナットn等で、RFコイル2の中心軸に沿った支持板20(20A、20B)の長手方向の位置で行い、支持板20Aの両端部(k1、k4)と中央部(k5)、および、支持板20Bの両端部(k2、k3)と中央部(k6)の各3箇所以上で固定するのが好ましい。
【0047】
RFコイル2の中心軸に沿った方向の支持板20(20A、20B)の長手方向の位置での固定は、回路基板12の下面とRFコイル2の外面(表面)との距離が等しいため、支持板20(20A、20B)の回路基板12やRFコイル2の外面からの剥離(はがれ)を抑制することができるためである。
なお、支持板20(20A、20B)は、固定部k1〜k6にそれぞれ独立して設ける図10に示す環状の支持板材30としてもよい。
【0048】
各支持板材30には、ボルト10の雄ネジ部が挿通する挿通孔30aが貫設されている。支持板材30は、例えば塩化ビニル等の樹脂、ゴム等が用いられ、特に限定されない。しかし、支持板材30に、回路基板12の振動に対する減衰作用を有する材料がより好ましい。
図10では、支持板材30が環状の場合を例示したが、回路基板12とRFコイル2との間にクリアランスを形成できれば、その形状は限定されないのは勿論である。
【0049】
また、図9の支持板20(20A、20B)は固定部を3つずつ固定し、図10の支持板材30固定部を1つずつ固定する支持部材を例示したが、回路基板12とRFコイル2との間にクリアランスを形成でき、かつ振動の減衰作用を有すれば、固定部を幾つ固定するかは、任意に選択可能である。
なお、図8では回路基板12上の主な部品(コンデンサ28、コイル29)のみを示し、その他の部品や配線や配線パターン等は省略している。
【0050】
また、図3に示した例では回路基板12の数は1個の場合を例示したが、複数の回路基板12を同様に固定する。さらに、図3では、回路基板12の位置はRFコイル2の上部として示したが、それ以外の位置、すなわち側面部や下部等に接続される場合もある。いずれの場合でも、前記した対策により同様の断線防止効果が得られる。
回路基板12の取り付け位置は、RFコイル2が扁平形状のため、その上・下部は空きスペースが存在し、入出力端子の接続作業が容易で、スペースの観点から望ましい。一方、RFコイル2の両側部(図1の側部2s)は振動が発生した際に振動の節に成り易く、振動振幅が小さい傾向にあるので、回路基板12の防振の観点から望ましい。
【0051】
上記構成によれば、RFコイル2の表面(外面)に固定された回路基板12の振動を抑制して回路基板12上の電子部品の接続部の信頼性を向上することができる。
これにより、より被検体(患者)Pのスペースが広い、横長な傾斜磁場コイル1の横断面内側形状とRFコイル2横断面形状を有する磁気共鳴イメージング装置Mを提供することができる。
【0052】
<<実施形態2>>
次に、実施形態2の磁気共鳴イメージング装置Mについて説明する。
図11に、実施形態2に関わるRFコイルへ固定する回路基板の概略構造を示す。図11(a)は回路基板を被固定面側から見た平面図であり、図11(b)は図11(a)のD方向矢視図であり、図11(c)はRFコイル2の外周の接線方向に見た図11(a)のE方向矢視図である。
【0053】
実施形態2では、実施形態1の回路基板12と異なり、回路基板22の固定部の一部(k25、k26)を、補強板19、支持板20のみ(粘着材21を含む)をRFコイル2に固定する構成としたものである。
実施形態2における実施形態1と同様な構成要素には同一の符号を付して示し、詳細な説明を省略する。
【0054】
実施形態2の図11に示す例では、回路基板22の中央部2箇所の固定部k25、k26は、回路基板22の下方に貼り付けられる(接触して設けられる)補強板19、支持板20のみ(粘着材21を含む)をRFコイル2に固定する構造とした。
補強板19の固定部k25、k26には、固定用ボルト10のボルト頭10tが回路基板22に突出しないよう、回路基板22の設置面側に、固定用ボルト10のボルト頭10tが収容されるザグリ(凹)部17が設けられている。
【0055】
この構造とすることにより、補強板19の回路基板22からのはがれ防止の観点では不利となるが、固定用ボルト10の存在に制限を受けることなく、または、阻害されずに、コンデンサ28、コイル29等の電子部品を回路基板22に実装できる利点が得られる。
また、さらに回路基板22のRFコイル2への固定箇所を増やし、より強固に振動を抑制することが容易となり、その点でも有利である。
【0056】
なお、実施形態2では、回路基板22の中央付近の固定部を外面に固定用のボルト頭10tが突出しないように、回路基板22、補強板19に凹状のザグリ(凹)部17を設ける場合を例示したが、回路基板22のコーナ部の固定部k21〜k24において回路基板22、補強板19に凹状のザグリ(凹)部17を設け、固定用ボルト10のボルト頭10tが回路基板22の外面に突出しないように構成してもよい。また、回路基板22のコーナ部の固定部または中央付近の固定部のうちの少なくとも何れかを固定用ボルト10のボルト頭10tが回路基板22に突出しないように構成してもよい
【0057】
<<実施形態3>>
次に、実施形態3の磁気共鳴イメージング装置Mについて説明する。
実施形態3では、実施形態1の回路基板12に相当する回路基板32(32A、32B)を分割する構成としたものである。
図12に、実施形態3に関わるRFコイルへ固定する回路基板の概略構造を示す。図12(a)は回路基板を被固定面側から見た平面図であり、図12(b)は図12(a)のF方向矢視図であり、図12(c)はRFコイル2の外周の接線方向に見た図12(a)のG方向矢視図である。
【0058】
実施形態1や実施形態2のように回路基板12、22の中央部に固定部k5、k6(図8参照)、固定部k25、k26(図11参照)を設けた場合、RFコイル2のボビン6の変形にならって回路基板12、22がそれぞれ変形してしまい、コンデンサ28やコイル29等の電子部品の接続信頼性に影響を及ぼす可能性がある。
【0059】
そこで、実施形態3の図12に示した例では、回路基板32、補強板19、支持板20A、20Bをそれぞれ2枚の回路基板32A、32B、2枚の補強板19A、19B、2セットの支持板20A1、20B1、20A2、20B2に分割し、回路基板32Aのコーナ箇所の固定部ka31〜ka34および回路基板32Bのコーナ箇所の固定部kb31〜kb34で固定する構造としている。
これにより、ボビン6の変形の影響が、回路基板32A、補強板19A、支持板20A1、20B1と、回路基板32B、補強板19B、支持板20A2、20B2との分割された空間p1で開放されるようにしている。2枚の回路基板32A、32Bの間は配線52で結線され、電気的接続を図っている。
なお、実施形態3では、回路基板32、補強板19、支持板20A、20Bをそれぞれ2分割した場合を例示したが、2分割以上としてもよい。
【0060】
<<その他の実施形態>>
前記実施形態では、回路基板12、22、32に補強板19を貼り付ける場合を例示したが、回路基板12、22、32の強度を高めたり、厚肉に形成することで、補強板19(19A、19B)を設けることなく構成してもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、回路基板12、22、32をコーナ部4箇所でRFコイル2に固定する場合を例示したが、平板の回路基板を安定的に固定できる3箇所以上であれば固定箇所の数は限定されない。また、回路基板のコーナ部以外の縁部を固定する構成としてもよい。しかしながら、回路基板をコーナ部4箇所で固定すると固定作業が容易であるとともに、回路基板を安定してRFコイル2に固定できるので、最も望ましい。
【0062】
なお、前記実施形態では、回路基板12のRFコイル2への固定を、ボルト、ナット等を用いて行う場合を例示したが、樹脂等の弾性材で弾性変形を利用して固定したりしてもよく、回路基板12のRFコイル2への固定方法は、ボルト以外の方法も適宜選択可能である。
【0063】
また、前記実施形態では、様々な構成を説明したが、説明した各構成を適宜組み合わせて構成してもよい。これにより、組み合わせた作用効果を奏する。
以上、本発明の様々な実施形態を述べたが、その説明は典型的であることを意図したものである。そして、さらに多くの実施態様が本発明の範囲内で可能である。すなわち、本発明の範囲内で様々な変更と修正が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 傾斜磁場コイル
2 RFコイル
8、28 コンデンサ(電子部品)
9、29 コイル(電子部品)
12、22、32、32A、32B 回路基板(基板)
17 ザグリ部(凹部)
19 補強板
20 支持板(支持部材)
21 粘着材(第2の粘着材)
21a 粘着材(第1の粘着材)
30 支持板材(支持部材)
32、32A、32B 回路基板(分割される基板)
52 配線
h 厚さ(基板と補強板を合わせた厚さ)
k1〜k6、k21〜k26、ka31〜ka36、kb31〜kb36 固定部
ka31〜ka36、kb31〜kb36 固定部
L 固定スパン(基板の前記RFコイルへの固定部の(最小)間隔)
M 磁気共鳴イメージング装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、
筒形状の傾斜磁場コイルと、
前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面が扁平形状であるRFコイルと、
前記両コイル間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、
前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面に、第1の粘着材を介して貼り付けられる補強板とを
備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板における前記補強板の貼り付け面の反対側の面の前記RFコイルへの固定部位置に、第2の粘着材を介して貼り付けられる支持部材を備える
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の前記RFコイル表面への固定部は前記基板の縁部と前記基板の中央部付近に設けられる
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、
筒形状の傾斜磁場コイルと、
前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面形状は扁平形状であるRFコイルと、
前記両RFコイルの間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、
前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面の前記RFコイルへの固定部位置に、第2の粘着材を介して貼り付けられる支持部材とを
備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の固定部は前記基板の縁部と前記基板の中央部付近に設けられる
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の固定部は前記基板の縁部に設けられ、前記補強板は前記基板の中央部付近で前記RFコイルと固定され、
前記補強板表面の固定部位置の何れかには、前記基板の固定用部材の頭部が収容される凹部が設けられる
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板は前記補強板とともに2分割以上に分割され、前記各基板は電気的に接続され、
前記各基板の縁部は前記RFコイルと固定される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板は前記補強板、前記支持部材とともに2分割以上に分割されており、前記各基板は電気的に接続され、
前記各基板の縁部は前記RFコイルと固定される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板は前記支持板を伴って2分割以上に分割されており、前記各基板は電気的に接続され、
前記各基板の縁部は前記RFコイルと固定される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項1から請求項3または請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の前記RFコイルへの固定部の間隔をLmmとし、前記基板と前記補強板を合わせた厚さをhmmとした場合、L2/hが500mm以下である
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項4、請求項5または請求項9のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の固定部の間隔をLmmとし、前記基板の厚さをhmmとした場合、L2/hが500mm以下である
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項3または請求項5または請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記基板が固定される縁部は、コーナ部の4箇所である
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記傾斜磁場コイルは、その中心軸に垂直な断面の内面が横長の扁平形状を有する
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項1】
磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、
筒形状の傾斜磁場コイルと、
前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面が扁平形状であるRFコイルと、
前記両コイル間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、
前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面に、第1の粘着材を介して貼り付けられる補強板とを
備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板における前記補強板の貼り付け面の反対側の面の前記RFコイルへの固定部位置に、第2の粘着材を介して貼り付けられる支持部材を備える
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の前記RFコイル表面への固定部は前記基板の縁部と前記基板の中央部付近に設けられる
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
磁気共鳴現象を用いる磁気共鳴イメージング装置であって、
筒形状の傾斜磁場コイルと、
前記傾斜磁場コイルの内方に設けられ、筒形状を有するとともにその中心軸方向に垂直な断面形状は扁平形状であるRFコイルと、
前記両RFコイルの間の前記RFコイル表面上に固定され、複数の電子部品が接続される基板と、
前記基板における前記電子部品搭載面の反対側の面の前記RFコイルへの固定部位置に、第2の粘着材を介して貼り付けられる支持部材とを
備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の固定部は前記基板の縁部と前記基板の中央部付近に設けられる
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の固定部は前記基板の縁部に設けられ、前記補強板は前記基板の中央部付近で前記RFコイルと固定され、
前記補強板表面の固定部位置の何れかには、前記基板の固定用部材の頭部が収容される凹部が設けられる
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板は前記補強板とともに2分割以上に分割され、前記各基板は電気的に接続され、
前記各基板の縁部は前記RFコイルと固定される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板は前記補強板、前記支持部材とともに2分割以上に分割されており、前記各基板は電気的に接続され、
前記各基板の縁部は前記RFコイルと固定される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板は前記支持板を伴って2分割以上に分割されており、前記各基板は電気的に接続され、
前記各基板の縁部は前記RFコイルと固定される
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項1から請求項3または請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の前記RFコイルへの固定部の間隔をLmmとし、前記基板と前記補強板を合わせた厚さをhmmとした場合、L2/hが500mm以下である
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項4、請求項5または請求項9のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記基板の固定部の間隔をLmmとし、前記基板の厚さをhmmとした場合、L2/hが500mm以下である
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項3または請求項5または請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記基板が固定される縁部は、コーナ部の4箇所である
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記傾斜磁場コイルは、その中心軸に垂直な断面の内面が横長の扁平形状を有する
ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−111126(P2013−111126A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258228(P2011−258228)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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