説明

磁気共鳴映像装置

【課題】 ユーザ側が撮影条件を柔軟に変更することができると共に、撮影条件変更操作を簡単且つ迅速に実行可能な磁気共鳴映像装置を提供すること。
【解決手段】 画像の画質及び撮影シーケンスの少なくとも一方に影響を及ぼし相互に干渉し合う複数の撮影パラメータのうちの少なくとも一つであって、所望の値又は所望の範囲内の値となるように優先的に設定される第1種パラメータ(例えば撮影時間、画像SNR、周波数読み出し方向のケミカルシフトピクセル、スライス方向の撮影範囲)が選択されると、撮影パラメータから予め選択される第2種パラメータであるTE、BWについて、第1種パラメータの値が所望の値又は所望の範囲内の値となるようなパラメータ毎の許容範囲の組み合わせからなる相互許容範囲を計算する。計算された相互許容範囲を提示し、TE、BWをまとめて入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 本発明は磁気共鳴映像装置に係り、良好なシーケンス条件の設定機能を有することで、撮影条件の変更を容易にするだけでなく、撮像に先立って最適な撮影条件を設定できることで、診断性能を向上させることが可能な磁気共鳴映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用画像機器は、被検体についての多くの情報を画像により提供するものであり、疾病の診断、治療や手術計画等を初めとする多くの医療行為において重要な役割を果たしている。現在では、主な医療用画像機器として、超音波診断装置、X線CT装置、磁気共鳴映像装置、核医学診断装置等がある。中でも磁気共鳴映像装置は、軟部組織において優れたコントラストをもつ画像を収集でき、医用画像診断において重要な位置を占めている。中でも、磁気共鳴映像装置は人体の解剖学的な断面図を非侵襲的に得る方法として極めて有効である。特に、骨におおわれた脳などの中枢神経系の診断装置として、広く活用されている。
【0003】
磁気共鳴映像装置は上記利点を有する一方、種々パラメータは干渉し合うため、撮影時間を筆頭にデータ収集帯域、スライス厚、スライス枚数、撮影条件などのトレードオフが複雑であると言える。従って、良好な画像を得るための撮影条件設定は、必ずしも容易とはいえない。このため、最適とはいえないまでも、条件を適当に緩和することで撮影自体は可能であるということから、例えば図C1、図C2に示すようにメーカ側であらかじめ準備された撮影条件を利用するか、あるいは少数の熟練した技師等(熟練者)があらかじめ作成した撮影条件から若干の条件変更により撮影を行っている。
【0004】
その一方、近年、RFコイルのアレイコイル化や傾斜磁場システムなどハードウェアの改善に伴い、SNRと撮影条件の許容範囲が広がっていること、電子的な読影手段が普及し、撮影枚数に対する制約が弱くなっていることなどにより、実際の撮影でも柔軟性を求められる傾向にある。実際に撮影条件を変更する場合には、目的により固定したい条件の優先順位が異なる。例えば、熟練者が作成した撮影条件に対してスライス枚数の追加を許すとき、TR(すなわち撮影時間)の延長を許容する場合と、TEもしくは撮影帯域を犠牲にしてTRを短縮することで、撮影時間の延長を許容しない場合などがある。これらの変更は、設定される許容範囲を超える場合には画質の劣化を招くため、それらの変更が適切であるのか否か、許容するか否か等を示す適切なガイドラインが必要である。また、例えば熟練者が新規に撮影条件を設計する場合でも、撮影時間優先、撮影帯域すなわち、水と脂肪のピクセルずれ優先、TE優先などの撮影自由度を許容するためのガイドラインがあれば、作業効率を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、従来の磁気共鳴映像装置は、既述の通りメーカ側等によって予め準備された撮影条件からの選択、及びこれからの若干の条件変更を可能とする制御が主流となっている。従って、撮影条件の変更には限界があると共に、本来変更に柔軟に対応しうる設計となっていないため、条件によっては煩雑な入力操作の繰り返しが必要とされ作業負担が大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ユーザ側が撮影条件を柔軟に変更することができると共に、撮影条件変更操作を簡単且つ迅速に実行可能な磁気共鳴映像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0008】
本発明の視点は、所定の撮影シーケンスに従う撮影動作を実行することで、被検体に発生する磁気共鳴信号に基づいて画像を生成する磁気共鳴映像装置であって、前記画像の画質及び前記撮影シーケンスの少なくとも一方に影響を及ぼし相互に干渉し合う複数の撮影パラメータのうちの少なくとも一つであって、所望の値又は所望の範囲内の値となるように優先的に設定される第1種パラメータを選択するための選択手段と、前記複数の撮影パラメータから予め選択される複数の第2種パラメータについて、前記第1種パラメータの値が前記所望の値又は前記所望の範囲内の値となるようなパラメータ毎の許容範囲の組み合わせからなる相互許容範囲を計算する計算手段と、計算された前記相互許容範囲を提示し、前記第2種パラメータの値の入力を促すインタフェースと、を具備することを特徴とする磁気共鳴映像装置である。
【発明の効果】
【0009】
以上本発明によれば、ユーザ側が撮影条件を柔軟に変更することができると共に、撮影条件変更操作を簡単且つ迅速に実行可能な磁気共鳴映像装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴映像装置10の概略構成を示した図である。磁気共鳴映像装置10は、被検体としての患者Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部と、を備えている。
【0012】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石101と、この磁石101に電流を供給する静磁場電源102とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場Hを発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル114が設けられている。このシムコイル114には、ホスト計算機20の制御下で、シムコイル電源115から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石101の開口部に退避可能に挿入できる。
【0013】
傾斜磁場発生部は、磁石101に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット103を備える。この傾斜磁場コイルユニット103は、互いに直交するX、Y及びZ軸方向の各傾斜磁場Gx、Gy、Gzを発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル103x、103y、103zを備える。傾斜磁場部はまた、x,y,zコイル103x、103y、103zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサ5の制御のもと、x,y,zコイル103x、103y、103zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0014】
傾斜磁場電源104からx,y,zコイル103x、103y、103zに供給されるパルス電流を制御することにより、物理軸である3軸X,Y,Z方向の傾斜磁場を合成して、互いに直交するスライス方向傾斜磁場Gs、位相エンコード方向傾斜磁場Ge、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Grの各論理軸方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、位相エンコード方向、および読出し方向の各傾斜磁場は、静磁場Hに重畳される。
【0015】
送受信部は、磁石101内の撮影空間にて被検体Pの近傍に配設されるRFコイル107(プローブ)と、このコイル107に接続された送信器108T及び受信器108Rとを備える。なお、本実施形態においては、RFコイル107は高周波送信のための送信コイルと、被検体内の各種の原子核に関する磁気共鳴信号を受信する受信コイルとに共用しているが、送信および受信コイルを別々に設ける構成としてもよい。
【0016】
送信器108T及び受信器108Rは、シーケンサ105の制御のもとで動作する。送信器108Tは、核磁気共鳴(NMR)を起こさせるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル107に供給する。このRF電流パルスによりRFコイル107は高周波磁場を発生しこれを被検体に印加する。
【0017】
受信器108Rは、RFコイル107が受信したエコー信号(高周波信号)を取り込み、これに前置増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅、フィルタリングなどの各種の信号処理を施した後、A/D変換してエコー信号に応じたデジタル量のエコーデータ(原データ)を生成する。
【0018】
制御・演算部は、シーケンサ(シーケンスコントローラとも呼ばれる)105、ホスト計算機20、演算ユニット110、記憶装置111、表示装置112、入力装置113、を有する。この内、ホスト計算機20は、記憶したソフトウエア手順により、シーケンサ105にパルスシーケンス情報を指令するとともに、装置全体の動作を統括する機能を有する。
【0019】
ホスト計算機20は、位置決め用スキャンなどの準備作業に引き続いて、撮影種、撮影条件に応じた所定のパルスシーケンスに基づいてイメージングスキャンを実施する。ここで、撮影種とは、あるコントラスト像を取得するための撮影の種類を意味する。具体的な撮影種としては、縦緩和強調(T1W)画像、横緩和強調(T2W)画像、拡散強調(DW)画像、流入(Time-Of-Flight)効果を利用したMR血管像(MRA)、Blood Oxygenation Level Dependent(BOLD)効果を利用した機能的MR画像(fMRI)、その他造影剤を使用した画像等を取得するための撮影が挙げられる。また、撮影条件とは、撮影種やパルスシーケンス毎に管理され撮影において設定される条件であり、複数の撮影パラメータから構成される。なお、撮影パラメータとは、画像の画質及びパルスシーケンスを含む撮影シーケンスの少なくとも一方に影響を及ぼすパラメータであり、具体例としては、撮影時間、画像SNR、周波数読み出し方向のケミカルシフトピクセル、スライス方向の撮影範囲、TE、TR、データ収集帯域(バンド幅BW)、スライス厚、マトリックスサイズ、ピクセルサイズ等を挙げることができる。
【0020】
また、ホスト計算機20は、撮影種、撮影条件に従って、データ処理及び画像処理を行う。また、ホスト計算機20は、撮影パラメータを管理し、所定形式のインタフェースにてユーザに提供する撮影条件管理部21を有している。この撮影条件管理部21の構成及び機能については、後で詳しく説明する。
【0021】
なお、ホスト計算機20によって制御されるイメージングスキャンは、画像再構成に必要なエコーデータの組を収集するスキャンであり、ここでは2次元スキャンに設定されている。また、パルスシーケンスとしては、3次元(3D)スキャンまたは2次元(2D)スキャンである。そのパルス列の形態としては、FE法(フィールドエコー法)、SE(スピンエコー)法、FSE(高速SE)法、FASE(高速 Asymmetric SE)法(すなわち、高速SE法にハーフフーリエ法を組み合わせたイメージング法)、EPI(エコープラナーイメージング)法、などが用いられる。このうち、EPI法、FSE法、FASE方では、一回の励起パルスに対して複数個のデータ収集を行うことで撮影の高速化を図っているが、この複数データの収集間隔をエコー間隔と呼び、シーケンス組み立て上重要なパラメータとして扱う場合がある。
【0022】
シーケンサ105は、CPUおよびメモリを備えており、ホスト計算機20から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源104、送信器108T、受信器108Rの動作を制御するとともに、受信器108Rが出力したエコーデータを一旦入力し、これを演算ユニット110に転送するように構成されている。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源104、送信器108Tおよび受信器108Rを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル103x、103y、103zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0023】
また、演算ユニット110は、受信器108Rが出力したエコーデータ(原データ又は生データ)をシーケンサ105を通して入力し、その内部メモリ上のフーリエ空間(k空間または周波数空間とも呼ばれる)にエコーデータを配置し、このエコーデータを各組毎に2次元又は3次元のフーリエ変換に付して実空間の画像データに再構成する。また演算ユニットは、必要に応じて、画像に関するデータの合成処理、差分演算処理などを行うことができる。
【0024】
この合成処理には、2次元の複数フレームの画像データを対応する画素毎に加算する加算処理、3次元データに対して視線方向の最大値又は最小値を選択する最大値投影(MIP)又は最小値(MIP)投影処理などが含まれる。また、合成処理の別の例として、フーリエ空間上で複数フレームの軸の整合をとってエコーデータのまま1フレームのエコーデータに合成するようにしてもよい。なお、加算処理には、単純加算処理、加算平均処理、重み付け加算処理などが含まれる。
【0025】
記憶装置111は、再構成された画像データのみならず、上述の合成処理や差分処理が施された画像データを保管することができる。
【0026】
表示装置112は画像を表示する。また入力装置113を介して、術者が希望する撮影条件、パルスシーケンス、画像合成や差分演算に関する情報、パラメータ制御に関する情報をホスト計算機20に入力できる。さらに、表示装置112は、後述する形態にて、撮影パラメータの入力・設定を実行するためのインタフェースを提供する。
【0027】
入力装置113は、撮影条件を構成するパラメータの値の入力、変更等を行うための入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)が設けられる。
【0028】
通信装置120は、ネットワークを介して他の装置と情報通信を行う。また、通信装置120は、第4の実施形態にて説明するように、記憶装置111内に格納された撮影情報を、ネットワークを介して所定のサーバに転送する。
【0029】
(撮影条件管理部)
次に、撮影条件管理部21の構成について詳しく説明する。
【0030】
図2は、撮影条件管理部21の構成を示したブロック図である。同図に示すように、チェック関数記憶部22、チェック関数テーブル記憶部23、許容範囲計算部24、判定部25を有している。
【0031】
チェック関数記憶部22は、設定された各撮影パラメータが許容範囲内であるか否かをチェックするチェック関数を撮影パラメータ毎に記憶する。
【0032】
チェック関数テーブル記憶部23は、撮影パラメータ設定の優先順位に応じたチェック関数の順番を定義するチェック関数テーブルを記憶する。
【0033】
許容範囲計算部24は、撮影種、パルスシーケンス等に基づいて各撮影パラメータの設定可能な範囲(許容範囲)を計算する。また、許容範囲計算部24は、優先的に設定される撮影パラメータの値に基づいて、それ以後に設定される各撮影パラメータの許容範囲を計算する。
【0034】
判定部25は、優先的に設定された撮影パラメータに応じてチェック関数テーブル記憶部23から対応するチェック関数テーブルを読み出し、これに従う順番でチェック関数記憶部22内のチェック関数を用いて、設定された撮影パラメータが許容範囲内であるか否かを判定する。
【0035】
(撮影条件設定支援機能)
次に、本磁気共鳴映像装置が有する撮影条件設定支援機能について説明する。本撮影条件設定支援機能は、ユーザが所望する撮影方針に応じて撮影パラメータ値設定の順位を決定し、これに従って相互に干渉し合う複数の撮影パラメータの値を設定させるものである。なお、本撮影条件設定支援機能は、撮影条件管理部21、演算ユニット110、表示装置112、入力装置113等によって実現される。また、以下においては説明を具体的にするため、パルスシーケンスとして典型的なFE法を採用した場合を例とする。
【0036】
FE法におけるパルスシーケンスのタイムチャートは、RFパルスの帯域、調整用傾斜磁場印加、データ収集帯域、データ収集開始点からk空間中心までの時間間隔等の撮影パラメータで表現される。データ収集開始点からk空間中心までの時間間隔をポイント数換算したものがエコーカット%で表される。データ収集帯域を狭帯域にするほどSNRは向上するが、エコーカット%を増やさないとTEを保持できない。また、TEとデータ収集帯域からスライス一枚あたりの最短TRが決まる。FE法(又はSE法、FSE法)で用いられるマルチスライス撮影場合、この最短TRはマルチスライス枚数、すなわち一回の撮影で撮影できるスライス方向の領域を決めるパラメータとして重要である。最短TRが延長した場合、同一のマルチスライス枚数を撮影しようとすると全体のTRが延長し、コントラストが劣化する。
【0037】
これらの相互に影響を及ぼすパラメータに対して、例えばユーザは次のような撮影方針を所望する場合がある。
【0038】
(1)SNR保持:他のパラメータ変更、たとえばマトリックスサイズを大きくピクセルサイズを小さくしたときにSNRをなるべく一定に保つようにバンド幅の方を変更する。この際、副作用として、TE、エコー間隔、TRや撮影時間の延長などがおきる。逆に、分解能を荒くすることで、バンド幅を広帯域に変更し、撮影時間の短縮が可能となる。ただし、この方法では、TR、TEなどが大きく変動してしまうのを防ぐため、あらかじめTE等の変化の幅を指定しておくなどのガイドラインが必要である。
【0039】
(2)TE、エコー間隔、TR、(バンド幅)一定:上記SNR保持によれば、TE、エコー間隔、TRなどコントラストを決めるパラメータが変動してしまう可能性がある。マトリックスサイズなど他のパラメータによらずこれらを一定に保つ。ただし、SNRが大きく変動してしまうのを防ぐため、マトリックスサイズ、スライス厚などの変化の幅をSNR換算で指定しておくなどのガイドラインが必要である。
【0040】
(3)時間およびスライス厚一定条件:カバレージすなわちスライス方向の撮影範囲の変更が前提となる場合には上記1、2のガイドラインでは、不十分な場合がある。すなわち、スライス枚数を増やしてカバレージを増加させる場合、一枚あたりのTRが一定であれば枚数増加分単純に撮影時間が増加してしまう。これを補うには、バンド幅を多少犠牲にしても1枚あたりTR、エコー間隔を短縮したり、PE方向のマトリックスサイズを減らすなどの必要がある。ただし、バンド幅を広くしすぎると画像のSNRが保持できなくなるので、PE方向のマトリックスサイズの低減、バンド幅、RO方向のマトリックス低減の順にパラメータの変更を行う。とくにバンド幅とRO方のマトリックスサイズ変更はループすることで、かなりの範囲幅のマージンをもつことが可能である。
【0041】
(4)時間およびSNR一定:上記と同様、カバレージ(すなわちスライス方向の撮影範囲)の変更が前提となる場合で、スライス厚に自由度がある場合には3)ではなく別の戦略をとることも可能である。つまり、一定の上限までスライス厚とスライスギャップを増加させることで、カバレージを確保する。それでもさらにスライス枚数が要求される部分は、TE若しくはエコー間隔固定でバンド幅を広帯域化することで補うなど余ったSNRを活用する。
【0042】
上記撮影方針のうち少なくとも一つを採用し撮影条件編集を行う場合、本撮影条件設定支援機能では、例えば撮影パラメータを第1種、第2種、第3種の三つのパラメータに分類する。ここで、第1種パラメータとは、撮影パラメータのうち、所望の値又は所望の範囲内の値となるように優先的に設定されるものである。また、第2種パラメータとは、撮影パラメータのうち、第1種パラメータが上記所望の値又は所望の範囲内の値となるような範囲内(許容範囲内)において、その値の設定を許容するパラメータである。また、第3種パラメータとは、撮影パラメータのうち、第1種パラメータ及び第2種パラメータが設定された後の設定可能な範囲内において、その値の設定を許容するパラメータである。
【0043】
なお、本実施形態においては説明を具体的にするため、スキャン時間、SNR、ケミカルシフトピクセル、カバレージを第1種パラメータとし、バンド幅、TE、エコー間隔を第2種パラメータとし、それ以外の撮影パラメータ(例えば、FOV、スライス枚数)を第3種パラメータとする。しかしながら、これに拘泥されず、撮影パラメータと第1種、第2種、第3種パラメータとの組み合わせはどのようなものであってもよい。
【0044】
図3は、本撮影条件設定支援機能に従う撮影パラメータ値の設定処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、患者名(患者ID)、検査ID等を含む患者情報、撮影シーケンス(今の場合、FE法)、撮影部位等が入力される(ステップS1)。
【0045】
次に、第1種パラメータを選択しその値を設定する(ステップS2)。ここでは、例えば第1種パラメータとしてSNRを選択し、その値が一定(すなわち、初期設定の値を維持するように)」となるように設定するものとする。
【0046】
次に、第2種のパラメータであるBW、TE、エコー間隔の値が入力されると共に(ステップS3)、第1種パラメータの値を維持するような第2種パラメータの相互許容範囲が計算される(ステップS4)。
【0047】
次に、チェック関数テーブル及びチェック関数を用いて入力された第2種パラメータの各値が相互許容範囲であるか否かを判定し(ステップS5)、相互許容範囲内でない場合には、ステップS3の処理が再度実行される。一方、入力された第2種パラメータの各値が相互許容範囲内である場合には、第3種のパラメータである残りの撮影パラメータの値が入力されると共に(ステップS6)、第1種、第2種パラメータの値を維持するような第3種パラメータの相互許容範囲が計算される(ステップS7)。
【0048】
次に、チェック関数テーブル及びチェック関数を用いて入力された第3種パラメータの各値が相互許容範囲であるか否かを判定し(ステップS8)、相互許容範囲内でない場合には、ステップS5の処理が再度実行される。一方、入力された第3種パラメータの各値が相互許容範囲内である場合には、各撮影パラメータの値による撮影条件に従ったスキャンが実行される(ステップS9)。
【0049】
(インタフェース)
次に、本磁気共鳴映像装置が有するインタフェースについて説明する。当該インタフェースは、上記撮影条件設定支援機能に関する操作の利便性を図るためのものである。以下、二つの実施例を挙げて説明する。
【0050】
(実施例1)
図4は、本磁気共鳴映像装置が有するインタフェースの一例を示した図である。同図において、第4段には第1種パラメータとして「Scan Time」、「SNR」、「Chemical Shift」、「Coverage」が、第2段、第3段には第2種パラメータとして、バンド幅と最短TEとの組み合わせパターン、TE及びエコーカット入力バーが、第1段にはオプション入力スイッチをそれぞれ示している。
【0051】
本インタフェースでは、「Scan Time」、「SNR」、「Chemical Shift」、「Coverage」の各スイッチによって第1種パラメータが選択されるようにユーザに促す。いずれかの第1種パラメータが選択されると、その値を一定に保つようなバンド幅と最短TEとの組み合わせパターンのみが表示される(排他的表示)。また、TE及びエコーカット入力バーは、選択された第1種パラメータの値を一定に保ち得る許容範囲内で表示される。
【0052】
(実施例2)
図5は、本磁気共鳴映像装置が有するインタフェースの他の例を示した図であり、同図に示すように、本実施例に係るインタフェースでは、所定のインタフェースにて第1種パラメータが選択された後に、第2種パラメータ(図5の例では、BW及びTE)を入力するためのインタフェースを示している。同図に示すように、BWの選択はラジオボタンで対応させる。BWのボタンには[Hz/Pix]単位のBWの値と、そのBWにおける選択可能なTEの範囲が併記されている。一方、TEの選択はスライドバーにより表示し、例えば、ユーザがTEとBWの選択を行う際にはTEの入力を優先する。なお、TEのスライドバーで表示する範囲は、選択されるBWスイッチに関わらず、全てのBWスイッチに対応する範囲を包含する全許容範囲を表示する。
【0053】
スライドバーの上のブランクは、TEのナンバーエントリー表示領域である。この領域に全許容範囲内の所望の値を入力することで、スライドバーによらずとも、TEの値を設定することができる。また、スライドバーの下には、現在選択中のTE「5.0」と、TE、BW以外の当該インタフェースでは直接的に選択されない他のパラメータ(隠れパラメータ:図5の例は解像度。)が同じ条件で撮影できるTEの範囲「5.0〜6.7」と、が視覚的に分かるように自動的に計算され表示される。
【0054】
本インタフェースを用いたTE、BWの入力は、操作された例えば次のようである。すなわち、TE及びBWのうち最も新しく設定されたパラメータの値が優先される。例えば、TEの値を設定した場合、そのTEの値を実現することが可能な(許容)範囲内のBWスイッチのみ選択可能とする一方、範囲外にあるBWを選択不可能として表示する(BWスイッチの排他的表示)。このような排他的表示により、TEの値が変わるごとにBWボタンの選択可能/不可能がリアルタイムに切り替わるようにする。
【0055】
以上述べた構成によれば、パルスシーケンスのパラメータ設定の自由度が向上することで撮影目的に合わせた最適なパラメータ設定が可能になり、撮影した画像の画質向上が期待できる。さらに、これらのパラメータ選択はトレードオフが多く熟練者にとっても困難な場合があるが、パラメータ変更の優先順位を定めることで、シーケンス撮影条件編集を単純化することができ、作業効率が向上する。非熟練者に対しては、熟練者の方針で、変更できるパラメータの種類が固定された状態で使用できるため、パラメータ変更に対する自由度を増加させつつ、安定した条件編集が可能になり生産性が向上する。
【0056】
また、本磁気共鳴映像装置によれば、互いに干渉し合う撮影パラメータの値を設定する場合、撮影方針に応じて優先的に設定したい撮影パラメータの値を設定し、その値を維持するように以降の撮影パラメータ設定が許容される。従って、ユーザは、従来の装置では複雑であった撮影条件変更等を迅速且つ簡単に行うことができ、柔軟な磁気共鳴画像の撮影を実現することができる。特に、優先させる撮影パラメータとして、撮影時間、画像SNR、ケミカルシフトピクセル、スライス方向の撮影範囲等を選択することで、従来の装置に比してパラメータ変更の自由度が増し、さらにこれらの相互作用を含むパラメータ変更の場合でもたとえば撮影時間が延長するなどの副作用の現れ方を制御することができる。
【0057】
また、本磁気共鳴映像装置によれば、優先させる第1種パラメータを設定した後、提示される相互許容範囲を用いて少なくとも2つの第2種パラメータの値をまとめて設定する。従って、ユーザは、撮影パラメータ間の複雑な干渉関係を気にすることなく、自身の撮影方針に従った撮影条件を簡単且つ迅速に設定することが可能である。また、第2種パラメータが設定された後であれは、残りの撮影パラメータの許容範囲計算は容易となるため、以降の煩雑な撮影条件設定についても簡略化することができる。
【0058】
また、本磁気共鳴映像装置によれば、第2種パラメータ同士の相関が提示される専用インタフェースを用いている。そのため、ユーザは、他のパラメータの値に配慮しつつ、各パラメータの値を設定することが可能である。
【0059】
本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0060】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上本発明によれば、ユーザ側が撮影条件を柔軟に変更することができると共に、撮影条件変更操作を簡単且つ迅速に実行可能な磁気共鳴映像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本実施形態に係る磁気共鳴映像装置の概略構成を示した図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る撮影条件管理部21の構成を示したブロック図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る撮影条件設定支援機能に従う撮影パラメータ値の設定処理の流れを示したフローチャートである。
【図4】図4は、本実施形態に係る磁気共鳴映像装置が有するインタフェースの一例を示した図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る磁気共鳴映像装置が有するインタフェースの他の例を示した図である。
【図6】図6は、従来の磁気共鳴映像装置における撮影パラメータの設定手順の一例を示した図である。
【図7】図7は、従来の磁気共鳴映像装置における撮影パラメータの設定手順の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0063】
10…磁気共鳴映像装置、12…撮影条件収集ユニット、13…撮影条件管理ユニット、20…ホスト計算機、21…撮影条件管理部、22…チェック関数記憶部、23…チェック関数テーブル記憶部、24…許容範囲計算部、25…判定部101…磁石、102…静磁場電源、103…傾斜磁場コイルユニット、103x.103y…コイル、104…傾斜磁場電源、105…シーケンサ、107…RFコイル、108T…送信器、108R…受信器、110…演算ユニット、111…記憶装置、112…表示装置、113…入力装置、114…シムコイル、115…シムコイル電源、120…通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮影シーケンスに従う撮影動作を実行することで、被検体に発生する磁気共鳴信号に基づいて画像を生成する磁気共鳴映像装置であって、
前記画像の画質及び前記撮影シーケンスの少なくとも一方に影響を及ぼし相互に干渉し合う複数の撮影パラメータのうちの少なくとも一つであって、所望の値又は所望の範囲内の値となるように優先的に設定される第1種パラメータを選択するための選択手段と、
前記複数の撮影パラメータから予め選択される複数の第2種パラメータについて、前記第1種パラメータの値が前記所望の値又は前記所望の範囲内の値となるようなパラメータ毎の許容範囲の組み合わせからなる相互許容範囲を計算する計算手段と、
計算された前記相互許容範囲を提示し、前記第2種パラメータの値の入力を促すインタフェースと、
を具備することを特徴とする磁気共鳴映像装置。
【請求項2】
前記第1種パラメータは、撮影時間、画像SNR、周波数読み出し方向のケミカルシフトピクセル、スライス方向の撮影範囲のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項3】
前記第2種パラメータは、エコー時間、エコー間隔、データ収集帯域のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項4】
前記計算手段は、前記第2種パラメータの少なくとも一つの値が設定された場合には、当該値に応じた前記相互許容範囲を再計算し、
前記インタフェースは、再計算された前記相互許容範囲を提示して、前記第2種パラメータの値の入力を促すこと、
を特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項5】
前記インタフェースによって入力された前記第2種パラメータの値が前記相互許容範囲内であるか否かを判定する判定手段をさらに具備し、
前記計算手段は、前記判定手段が入力された前記第2種パラメータの値が前記相互許容範囲内にあると判定した場合には、前記第1種及び第2種パラメータ以外の残余の撮影パラメータの許容範囲を計算し、
前記インタフェースは、計算された前記残余の撮影パラメータの許容範囲を提示し、前記残余の撮影パラメータの値の入力を促すこと、
を特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の磁気共鳴映像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−255189(P2006−255189A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77665(P2005−77665)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】