説明

磁気共鳴無線周波数コイルのための多電流素子

【課題】 従来の無線周波数コイルは、磁気共鳴を使用した信号を励起し、検出するためには不適切である。
【解決手段】2つ以上の電流経路を有する電流ユニットは無線周波数コイル内の素子の各々の大きさ、位相、タイミング、周波数、位置の制御を可能にする。各電流素子について、電流は位相角度、周波数、大きさに関して調整することができる。電流ユニットの多数の電流経路は多数の空間領域をターゲッティングするため、または、大きさ、位相、タイミング、間隔、周波数において単一の領域をターゲッティングするための素子の組合せにより発生/検出された磁場の戦略的組合せのために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
(関連出願)
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている2004年5月7日に出願され、「MULTI−CURRENT ELEMENTS FOR MAGNETIC RESONANCE RADIO FREQUENCY COILS」と題された米国仮特許出願第60/568889号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている2004年5月11日に出願され、「MULTI−CURRENT ELEMENTS FOR MAGNETIC RESONANCE RADIO FREQUENCY COILS」と題された米国仮特許出願第60/569810号明細書の優先権を主張する。
【0003】
本出願は、2001年7月31日に出願され、「RADIO FREQUENCY MAGNETIC FIELD UNIT WITH APERTURE」と題された米国特許出願第09/919479号明細書の継続出願である2003年8月8日に出願され、「RADIO FREQUENCY MAGNETIC FIELD UNIT WITH APERTURE」と題された米国特許出願第10/637261号明細書に関連し、この各々は参照により本明細書に組み込まれている。
【0004】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている2003年4月21日に出願され、「RADIO FREQUENCY GRADIENT AND SHIM COIL」と題された米国特許出願第10/420541号明細書に関連する。
【0005】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている2004年10月4日に出願され、「PARALLEL TRANSCEIVER FOR NUCLEAR MAGNETIC RESONANCE SYSTEM」と題された米国特許出願第10/957870号明細書に関連する。
【0006】
(政府の権利)
本主題事項は、部局許諾番号MIND Institute and Kech Foundation、NIH−P41 RR08079、NIH−R01 CA94200、NIH−R01 EB00085、および、NIH R33 CA94318のもとで国立衛生研究所(NIH)によって部分的に支援されている。米国政府は、本発明に特定の権利を有することができる。
【技術分野】
【0007】
本主題事項は、磁気共鳴画像形成や分光分析法への使用のための無線周波数コイルに関し、より詳細には、多数の電流経路を有する電流素子を使用した磁気共鳴信号の励起と検出のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0008】
従来の無線周波数コイルは、磁気共鳴を使用した信号を励起し、検出するためには不適切である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本無線周波数コイルはいくつかの電流ユニットを含む。各電流ユニットは多数の電流素子を含み、別個の独立したモジュール内に複数の電流経路を提供している。各電流経路を流れる電流は、同じ電流素子の他の電流経路内の電流とは、または、他の電流ユニットの経路内の電流とは独立している。電流経路によって電磁場を励起し、または検出することができる。電流ユニットは時々電流素子とも呼ばれている。
【0010】
1つの例において、コイルの各電流ユニットは個別に指定され、かつ、独立に制御される。
【0011】
(伝送線路素子を例えば含む)電流ユニットは、コイル内のRF電磁場を変化させる形で配置構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】いくつかの電流素子を有する無線周波数コイルの図である。
【図2A】伝送線路電流素子およびループ電流素子を有する電流ユニットの図である。
【図2B】開口を備えた電流素子の導電体の図である。
【図3】1対の直交ループ電流素子を有する電流ユニットの図である。
【図4】図3の電流ユニットに対応する電磁場の図である。
【図5A】3つの導電体伝送線路電流素子および2つのループ電流素子を有する電流ユニットの図である。
【図5B】3つの導電体伝送線路電流素子を有する電流ユニットの一部の図である。
【図6】直交ループ電流素子を有する4つの電流ユニットを有する面コイルの図である。
【図7A】Z軸上の段階的変化を持つ複数の電流ユニットを有するコイルの図である。
【図7B】先細りになった輪郭を有する電流ユニットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
他の態様は、以下の詳細な説明を読み、本明細書の一部を形成する図面を見ると明らかになる。
【0014】
図面において、同じ番号は、いくつかの図を通じて実質的に同様の構成部分を示す。異なる文字の添字を有する同じ番号は、実質的に同様の構成部分の異なる事例を表す。
【0015】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照し、同図面において、本主題事項を実施することができる特定の実施形態が図示の方法によって示されている。これらの実施形態は、当業者が本主題事項を実施することを可能にするための十分な詳細において説明されており、本主題事項の範囲から逸脱せずに、実施形態を組み合わせたり、他の実施形態を利用できることだけでなく、構造的、機械的、論理的、電気的な変更を行なえることは理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は限定する意味では取られず、かつ、本主題事項は従属する特許請求の範囲およびそれらの均等物により定義されている。
【0016】
図1は電流ユニット200を有する無線周波数コイル100の図である。各電流ユニット200は多数の電流経路を含んでいる。コイル100は、導電性遮蔽面と呼ばれることがある導電性外側面90を備えたボリューム・コイルとして配置構成されている。用語「遮蔽」が、導電体の間の障壁またはRFコイルの外部導電体を述べるために使用されることがある。様々な例において、コイル100は外部導電体90、独立した導電性遮蔽、または、外部導電体90と独立した導電性遮蔽の双方を含む。
【0017】
コイル100の内側80が問題の領域であり、検査する患者を収容するように配置構成されている。示された例において、各電流ユニット200は機械的構造または接着性の結合により隣接した電流ユニットの近くに配置されている。1つの例において、コイルの構造は隣接する誘電体部材の付近に配置された複数の導電性素子を含む。
【0018】
1つの例において、各電流ユニットは直交位相の、または、円偏極された電磁場を発生または受信する。電流ユニットは、コイル内に所望の電磁場を発生させるためにコイル回路内に規則的または不規則なパターンで配置される。電流ユニットは、ボリューム・コイルまたは面コイルの配置構成に配列させることができる。電流ユニットを有するコイルは、磁気共鳴解剖学的画像形成、並列画像形成、分子画像形成、多核画像形成、機能的画像形成のために使用することができる。加えて、1つまたは複数の電流ユニットを有するコイルを、電子常磁性共鳴(EPR)、電子スピン共鳴(ESR)、核磁気共鳴(NMR)分光分析法に対して使用することができる。
【0019】
図2Aは伝送線路電流素子とループ電流素子を有する電流ユニット200Aの図である。伝送線路電流素子は第1の導電体210Aと第2の導電体215Aを含んでいる。第1の導電体210Aと第2の導電体215Aは平行に整列されており、誘電体220によって分離されている。様々な例において、第1の導電体210Aと第2の導電体215Aは銅、アルミニウム、または、他の合金の導電体を含む。誘電体220は誘電体または絶縁性材料を含み、それらの例は合成材料またはポリマ材料を含む。加えて、電流ユニット200Aはループ電流素子225を含む。ループ電流素子は、電流ユニット200Aの下側面240Aに配置され、かつ、絶縁層205により第2の導電体215Aから分離されて示されている。絶縁層205は誘電体220の材料と同じでも異なってもよい。1つの例において、側面235Aは、隣接する電流ユニットに接着またはその他で固着するように配置構成された平坦な面であり、円筒形または他の形状のボリュームを形成するように互いに関して角度を付けられている。1つの例において、外側面230Aはコイルの外側を表す。第1の導電体210Aと第2の導電体215Aのいずれか一方または双方は、孔、スロット、または開口部を含んでもよく、または、第2の導電体215Aに関して図に示されたように一体の面としてもよい。
【0020】
電流搬送電流ユニット200AはRFコイルのために無線周波数(RF)電磁場を発生するために使用できる。1つの例において、電流ユニット200Aは、2つ以上の位相角や、大きさ、周波数の電流と電磁場を支援するために配置構成された多数の導電体素子を含む。
【0021】
図2Bは開口を備えた第2の導電体215Bを有する電流ユニット200Aの図である。第2の導電体215Bは3つの開口部217を含むが、1つまたは複数の開口部217が考えられていることを理解されよう。
【0022】
図3は直交関係にある1対のループ電流素子を有する電流ユニット200Bの図である。第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは、各々が、約90度の角度θを形成する線で交差する平面内に存在するが、他の角度も考えらる。角度θは軸246Aと軸251Aにより示されている。外側面230B、側面235B、内側面240Bは、電流ユニット200Bの外側の寸法のいくつかを決めている。
【0023】
示されている例において、第1のループ電流素子245Aは1つの磁気双極子を発生し、第2のループ電流素子250Aは第2の磁気双極子を発生する。これらの2つの双極子の電磁場は、図4に示されているように相対的に直交位相において駆動され、そのため、円偏極された電磁場を生成する。1つの例において、第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは、各々が無線周波数信号を受信し、かつ、各々が各電流素子に対して異なっているであろう、ある特定の周波数において共鳴するように同調されている。
【0024】
1つの例において、第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは異なった周波数に同調される。1つの例において、第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは異なった大きさに駆動される。1つの例において、第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは、異なった位相角に、電気的または機械的に調整される。1つの例において、第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは励起方式に従ってオンオフ切り換えられる。スイッチのオンオフは、電流素子または電流ユニットに送られた電力の変調を含む。第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aのいずれか一方または双方は、送信、受信、または、その双方のために使用される。1つの例において、第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは同時または順次に通電される。様々な例において、第1のループ電流素子245Aと第2のループ電流素子250Aは同様または異なったサイズであり、かつ、互いを基準として異なった空間的位置と向きで配列されている。3つ以上の電流素子も使用できる。
【0025】
図3において、2つの示された電流素子の各々は1つの平面内に存在し、かつ、2つの平面は線上で直交する。
【0026】
図4は図3の電流ユニット200Bに対応する電磁場の図である。特に、電流素子245Aは軸251Bと整列されて示されている電磁場252を励起または検出するように配置構成されている。加えて、電流素子250Aは軸246Bと整列されて示されている電磁場247を励起または検出するように配置構成されている。
【0027】
図5Aは3つの導電体伝送線路電流素子と2つのループ電流素子を有する電流ユニット200Cの部分図である。外側面230Cは第1の導電体210Bを含み、内側面240Cは第2の導電体215Cを含み、各々は電流ユニット200Cの誘電体236により分離されている。第1の導電体210Bと第2の導電体215Cは平行に整列され、かつ、各々は中間導電体280Aとも平行である。3つの平行な導電体、すなわち、第1の導電体210B、第2の導電体215C、中間導電体280Aは3つの独立した伝送線路素子を、したがって、3つの別個の電流経路となっている。例えば、別個の伝送線路は第1の導電体210Bと第2の導電体215C、第1の導電体210Bと中間導電体280A、さらには、第2の導電体215Cと中間導電体280Aの間に設けられる。電流ユニット200Cの導電性素子のいずれか、または、全てはZ軸に沿ったスロット、孔、または、開口を含むことができる。
【0028】
加えて、電流ユニット200Cは、誘電体236中に配置され、または、埋め込まれ、かつ、中間導電体280Aに近接した第1のループ電流素子260と第2のループ電流素子270を含む。角度αは、第1のループ電流素子260の平面と第2のループ電流素子270の平面の間の相対角度を表す。角度βは、第1のループ電流素子260の平面と中間導電体280Aの間の相対角度を表す。角度αと角度βは、所望の励起電磁場または検出感度となるように選択されている。様々な例において、角度αは約90度であり、角度βは45度であるが、他の角度も考えられる。
【0029】
図5Bは伝送線路として配列された導電体210C、280B、215Dを有する電流ユニット200Eの部分図である。明確さのために、誘電体は図から省略されており、電流ユニットの輪郭はダッシュ線で示されている。導電体210Cと280Bの間のより小さな分離距離は空間領域370のターゲッティングを可能にする。導電体210Cと215Dの間のより大きな分離距離は空間領域380のターゲッティングを可能にする。特定の空間領域をターゲッティングすることは、励起用信号で空間領域を駆動すること、または、空間領域から信号を受信することを含む。
【0030】
図6は、各々が直交ループ電流素子を有する4つの電流ユニット200Dを有する面コイル300の図である。例えば、電流ユニット200Dは、実質的に90度の角度で整列させられたループ電流素子245Bとループ電流素子250Bを含む。ボクセル350A、350B、350C、350Dは問題の領域の空間領域を表す。加えて、各電流要素に伴う電磁場はライン・セグメントとして表されている。例えば、ボクセル350Aに関しては、電流素子245Bが励起電磁場360Aを発生し、かつ、電流素子250Bを使用して電磁場360Bから生成された信号を検出する。電流ユニット200Dの各々も電磁場365A、370A、380Aを発生し、かつ、それぞれボクセル350B、350C、350Dに対応する電磁場365B、370B、380Bにより生成された信号を検出する。
【0031】
前述の例において、各電流ユニットの1つの電流素子が励起させ、同じ電流ユニットの他の電流素子は信号の受信する。加えて、コイルの1つの電流素子が励起させることができ、他の各電流素子が受信することができるか、または、同じ電流素子が励起と受信の双方を行うことができる。
【0032】
他の組合せも考えられる。例えば、第1の電流ユニット200Dを励起信号を送信するために使用することができ、第2の電流ユニット200Dを発生された信号を受信するために使用することができる。
【0033】
本主題事項によるRFコイルの例は図7Aに示されたコイル700を含む。同図は、電流ユニット200FがZ軸電磁場の段階的変化を発生するように配置構成されている多ユニット・コイルを示す。各電流ユニットの壁はコイルのZ軸に沿って先細りになっている。隣接し合う電流ユニット200Fは示された例において交番する方向に整列されているが、他の配置構成も考えられる。セグメント710は互いに平行とはなっていない伝送線路素子の1つの導電体として機能する。各電流ユニット200Fは信号ケーブルに結合され、かつ、各信号ケーブルは送信/受信スイッチを介して送信機または受信機に接続されるか、送信機と受信機の双方に接続される。各電流ユニット200Fは、駆動ユニット、受信ユニット、または、駆動・受信ユニットの双方のいずれかとして機能することができる。
【0034】
図7Bは先細りになった輪郭を有する例示的電流ユニット200Fの図である。例において、寸法730Aは寸法730Bより大きく、寸法740Aは寸法740Bより大きいが、Z軸上の段階的変化をもたらすための他の配置構成も考えられる。
【0035】
1つの例において、Z軸は、図2Bに示されているように、電流ユニットのZ軸に沿った孔またはスロットなどの手段により符号化されている。間隔、直径、形状位置、その他の要因はZ軸の符号化を達成するために変化させることができる。
【0036】
例示的変形例
1つの例において、コイルは多数の電流経路を有する各電流ユニットを備えた複数の電流ユニットを含む。様々な例において、電流ユニットはボリュームの周囲に、または、面内に配置構成されている。本主題事項により配置構成された横方向電磁(TEM)コイルは複数の電流ユニットを含む。電流ユニットはボリューム・コイルの面内に少なくとも1つの開口を設けるように配列される。加えて、電流ユニットは、むくの、または末端開口を含む背面版を使用して組み立てられている。1つの例では、背面版は導電性である。
【0037】
加えて、電流ユニットは、電流の流れのための少なくとも1つの末端リング、および、いくつかの横木を有する鳥篭構造に配列されてもよい。少なくとも1つの横木は、多数の電流経路を有する電流ユニットとすることができる。
【0038】
1つの例において、コイルは、各々がいくつかの導電体を有し、かつ、磁気共鳴の励起または受信のためのユニットとして組み立てられている独立した電流ユニットを含む。1つの例において、コイルは隣接する誘電体で製作されており、いくつかの導電体は、磁気共鳴の励起または受信のために誘電体の上または内側に作成されている。
【0039】
様々な例において、電流経路は伝送線路またはループ・パスを含む。伝送線路は、2つ以上の同心導電性素子、ストリップ線路、微小ストリップ、導波路、または、絶縁性誘電体により分離された平行な導電体の配置構成物を含むことができる。導電性素子は固体ストリップ、孔またはスロットのあるストリップ、ワイヤ、または、チューブを含むことができる。
【0040】
電流ユニットは2つ以上の電磁場を発生させることができる。発生された電磁場を問題の領域で空間領域内に向ける、または、制御するために、他の回路または構造がコイルに結合されて配置構成されている。問題の領域がこの電磁場により励起され、誘発信号は問題の領域から受信される。1つの例において、電流ユニットは問題の領域内で空間領域内の電磁場を検出する。
【0041】
1つの例において、電流ユニットの電流経路は導電性経路内の電流を調整することにより所望の電磁場を発生する。導電性経路内の電流の大きさ、位相、周波数、タイミング、空間的位置は、いずれの他の電流素子または電流経路内の電流とも独立に選択することができる。
【0042】
1つの例において、各電流素子は問題の領域内で励起電磁場を発生させるために独立に通電することができる。各励起電磁場は問題の領域内の1つまたは複数の空間領域に結合される。
【0043】
1つの例において、個別の導電体経路は多電流ユニット・コイルの円偏極または各電流素子の近傍における円偏極を可能にする。
【0044】
1つの例において、単一の電流ユニットは1つまたは複数の電磁場に寄与する各電流素子に直交駆動を供給することができる。
【0045】
1つの例において、コイルの電流素子は共通の周波数で動作させることができるか、または、1つまたは複数の電流素子が異なった共鳴周波数に操作または同調させることができる。加えて、各電流素子は異なった大きさ、位相、周波数、タイミング、または、空間的位置の電流で駆動することができる。
【0046】
1つの例において、ループ電流素子は、電磁場の方向が電流の流れに応じて決定される磁気双極子に対応する電磁場を生成する。
【0047】
1つの例において、電流ユニットは、2つの異なった励起電磁場を生成する所定の配置構成または可変配置構成を有する2つの導電性経路を含む。これらの電磁場は空間的な向き、位相角度、大きさ、周波数、タイミング、または、それらの何らかの組合せに関して異なっている。特に、空間的な向きおよび大きさは異なった空間領域を規定する。
【0048】
1つの例において、2つ以上の電流ループが設置されている。様々な例において、電流ユニットの電流ループは同じ、または、異なった平面のいずれか内に存在するように配置構成されており、各々は異なった位相角度を利用して同じ空間領域に結合されている。1つの例において、電流素子は独立したベクトルを持つ空間領域に結合されている。
【0049】
1つの例において、電流ユニットは2つの直交電磁場を発生する2つの電流素子を含む。適した周波数の選択は異なった核種の検出を可能にする。
【0050】
1つの例において、電流ユニットは2つ以上の導電性経路を含む電流ユニットであり、各経路内の電流は、電流の位相、電流の大きさ、電流の周波数、電流の切換え、または、電流の空間的配置において操作できる。
【0051】
様々な例において、コイルは、1テスラから12テスラ、ならびに、より大きな、または、より小さな電磁場強度のB0静電磁場を発生する磁石とともに使用するように配置構成されている。
【0052】
1つの例において、各電流ユニットは2つ以上の電流素子を有する個別のモジュールである。1つの例において、電流素子は独立したモジュール内に配置され、かつ、本明細書に説明されているように、空間領域の励起と検出を行う形で動作される。
【0053】
1つの例において、電流ユニットは問題の領域の異なった部分に結合される。例えば、第1の電流ユニットは問題の領域に面的に結合され、他の電流ユニットはより大きな深さに貫通して結合している。
【0054】
1つの例において、2つ以上の電流素子は、遮蔽を基準として異なった位置に、電流ユニット内に配置されている。例えば、第1の電流素子は遮蔽から約1cmにあり、第2の電流素子は遮蔽から約2cmにある。遮蔽は独立した導電体または電流ユニットの伝送線路の導電体とすることができる。
【0055】
1つの例において、コイルの電流ユニットは、誘導性または容量性などのリアクタンス性結合により相互に結合されるか、または、有線接続される。1つの例において、コイルの1つまたは複数の電流ユニットは互いから遮蔽することにより、または、リアクタンス性の結合解除により相互に結合解除される。
【0056】
様々な例において、コイルは磁気共鳴画像形成、電子常磁性共鳴、電子スピン共鳴、その他の応用例で使用される。1つの例によれば、多数の導電体を有する電流ユニットは2つ以上の位相角度、大きさ、周波数の電流と電磁場を発生し検出する。
【0057】
1つの例において、電流ユニットは改善された信号対雑音比のために、直交電磁場を発生するために円位相偏極を利用して通電される。1つの理論によれば、信号対雑音比は、信号強度、空間解像度、または、画像獲得の速度を改善するために例えば使用できる核磁気共鳴信号において、√2の係数で改善する。1つの例において、電流ユニットは並列画像形成の応用例のための離散的サンプル空間領域に結合する。
【0058】
1つの例において、直交位相になった電磁場は、並列画像形成の性能を改善するために、サンプル内の独立した磁化ベクトル場に結合する。
【0059】
1つの例において、電流ユニットの多数の電流経路は、サンプル内の異なった領域に電磁場結合を拡張するために、異なる大きさで駆動される。多電流の大きさと位相を、問題の領域をターゲッティングするために組み合わせることができる。
【0060】
電流ユニットの多電流経路は、代謝の画像形成と分光分析法などの多核種用の応用例に対しては多数の周波数に同調する。
【0061】
1つの例において、相互の素子を遮蔽または結合するために多電流経路おと接地経路が使用されている。
【0062】
1つの例において、コイルは複数の電流ユニットを含み、各電流ユニットは少なくとも1つの電流素子を有する。例えば、(1つの電流ユニットの)第1の電流素子は第1の配置構成を有し、残りの電流ユニットの他の全ての電流素子は第1の配置構成とは異なる第2の配置構成を有する。ループ電流素子を有するコイルを考てみる。少なくとも1つの電流素子が図3の電流経路245Aにより示されたように整列され、少なくとも1つの他の電流素子は電流経路250Aにより示されたように整列されている。1つの例において、隣接し合う電流ユニットは整列が交番する電流素子を有する。1つの例において、各電流ユニットは他の全ての電流素子とは異なって整列された電流素子を有する。加えて、別の例は遮蔽導電体を基準として異なった位置にあるループ電流素子を有するコイルを含む。例えば、第1の電流ユニットは遮蔽導電体から第1の距離に配置された電流導電体を有し、第2の隣接する電流ユニットは遮蔽導電体から第2の距離に配置された電流導電体を有する。
【0063】
1つの例において、異なった電流素子の各々における電流の周波数、位相、大きさ、位置、または、タイミングは、他のいずれの電流素子における電流とも独立に選択されている。
【0064】
1つの例において、コイルはX軸、Y軸、または、Z軸に沿った段階的変化を有する無線周波数信号を発生または受信するために配置構成された電流ユニットを含む。1つの例において、Z軸は電流ユニットの主要な寸法に整列されている。例の方法により、段階的変化をもたらすために、非平行側面または誘電体の変化する厚さ、開口、または、他の構造物を使用することができる。
【0065】
1つの例において、16チャンネルストリップ線路横方向電磁(TEM)コイルは、RF磁場の大きさがX軸、Y軸、または、Z軸に沿った段階的変化となるように配置構成されている。この空間的に変化するRFの輪郭は、全ての3つの次元におけるSENSE低減を可能にする。
【0066】
例示的コイルは25cmの内径と16cmの長さを有し、かつ、7テスラの電磁場の大きさで頭部の均一な画像を生成するように作成されている。16個の電流素子は、これらの素子が調和して駆動(送信および受信)できるように、テフロン(登録商標)誘電体上に等しく間隔を空けられ、かつ、7テスラにおける陽子のラーモア周波数に独立に同調され、マッチングされている。示された例において、隣接した電流ユニットはリアクタンス的に減結合されている。各素子に対して、テフロン誘電体は上向きまたは下向きの方向に先細りの輪郭を有し、空間的に変化する分路容量を構成する。1つの例において、導電体の幅対誘電体の厚さの比は一定であり、そのため、インピーダンスも一定である。
【0067】
軸平面内でコイルの性能を悪く抑制せずにZ軸におけるk空間副符号化を受け入れることによりSENSEの性能を向上させる空間的に変化するRF磁場を作成するために、他の配置構成も考えられる。例示的コイルは、Z軸には磁場を作成しない電流素子を利用して、Z軸、さらにはX軸とY軸におけるSENSE符号化を可能にする。
【0068】
<付記1>
無線周波数コイルのための電流ユニットであって、
誘電体に近接した第1の無線周波数電流経路と、
前記誘電体に近接した前記第1の無線周波数電流経路とは独立した第2の無線周波数電
流経路と、を含み、
前記第1の無線周波数電流経路と前記第2の無線周波数電流経路は磁気共鳴画像形成の
ために配置構成されている電流ユニット。
<付記2>
前記誘電体に近接した第3の無線周波数電流経路をさらに含み、前記第3の無線周波数
電流経路は前記第1の電流経路と前記第2の電流経路とは独立しており、前記第3の無線
周波数電流経路は磁気共鳴画像形成のために配置構成されている付記1に記載の電流ユ
ニット。
<付記3>
前記第1の無線周波数電流経路、前記第2の無線周波数電流経路、前記無線周波数電流
経路が、実質的に平面状であり、かつ、平行に整列している付記2に記載の電流ユニッ
ト。
<付記4>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路の少なくとも1つは誘電体内に埋め込まれて
いる付記1に記載の電流ユニット。
<付記5>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路の少なくとも1つは複数の孔、スロット、穴
、または、開口を含む付記1に記載の電流ユニット。
<付記6>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路の少なくとも1つはZ軸に沿って符号化する
ように配置構成されている付記1に記載の電流ユニット。
<付記7>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路の少なくとも1つはX軸とY軸の少なくとも
1つに沿って符号化するように配置構成されている付記1に記載の電流ユニット。
<付記8>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路の少なくとも1つは導電性ループを含む請求
項1に記載の電流ユニット。
<付記9>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路の少なくとも1つは面に沿って先細りとなっ
ている付記1に記載の電流ユニット。
<付記10>
磁気共鳴無線周波数コイルであって、
互いに近接して配列され、かつ、各電流ユニットは少なくとも2つの電流経路を有する
少なくとも2つの電流ユニットを含み、第1の電流経路は励起磁場を発生するように配置
構成され、第2の電流経路は信号を検出するように配置構成されているコイル。
<付記11>
前記少なくとも2つの電流ユニットはボリュームの周囲に分布されている付記10に
記載のコイル。
<付記12>
前記少なくとも2つの電流ユニットは面の周辺に分布されている付記10に記載のコ
イル。
<付記13>
前記コイルは1と12テスラの間の磁場強度を有する静磁場内で動作するために配置構
成されている付記10に記載のコイル。
<付記14>
磁気共鳴無線周波数コイルのための電流ユニットであって、
各電流素子が第1の電流経路、および前記第1の電流経路と平行の関係にある第2の電
流経路を有する第1の電流素子と第2の電流素子であって、前記第1の電流素子は第1の
平面内に存在し、前記第2の電流素子は第2の平面内に存在する電流素子を含み、
前記第1の平面は前記第2の平面とは異なっており、かつ、前記第1の平面と前記第2
の平面は直円上で交差している電流ユニット。
<付記15>
前記第1の電流素子と前記第2の電流素子の少なくとも1つはループ導電体を含む請求
項14に記載の電流ユニット。
<付記16>
前記第1の電流素子と前記第2の電流素子に近接して配置されている第3の電流素子を
さらに含む付記15に記載の電流ユニット。
<付記17>
各平面電流素子が実質的に平行に整列され、かつ、前記第1の電流素子と前記第2の電
流素子に近接して配置されている複数の平面電流素子をさらに含む付記15に記載の電
流ユニット。
<付記18>
電流ユニットの第1の電流経路を使用して無線周波数磁気共鳴コイル内に第1の磁場を
発生するステップと、
前記電流ユニットの第2の電流経路を使用して第2の磁場を発生するステップと、
前記電流ユニットを使用して信号を検出するステップと、を含む方法。
<付記19>
前記検出するステップは前記コイルのZ軸に沿った符号化を含む付記18に記載の方
法。
<付記20>
前記発生するステップは電流、周波数、位相角度、間隔、タイミングの少なくとも1つ
を変調するステップを含む付記18に記載の方法。
<付記21>
前記発生するステップは前記電流ユニットに供給される電力を変調するステップを含む
付記18に記載の方法。
<付記22>
前記第1の電流経路を第1の特定の共鳴周波数に同調するステップをさらに含む付記
18に記載の方法。
<付記23>
前記第2の電流経路を第2の特定の共鳴周波数に同調するステップをさらに含み、前記
第1の特定の共鳴周波数は前記第2の特定の共鳴周波数とは異なっている付記22に記
載の方法。
<付記24>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路をリアクタンス的に結合するステップをさら
に含む付記18に記載の方法。
<付記25>
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路をリアクタンス的に結合解除するステップを
さらに含む付記18に記載の方法。
<付記26>
前記第1の電流経路を第1の空間領域に結合し、かつ、前記第2の電流経路を第2の空
間領域に結合するステップをさらに含む付記18に記載の方法。
<付記27>
互いに近接して配列され、かつ、各電流ユニットが少なくとも2つの電流経路を有する
少なくとも2つの電流ユニットを含み、少なくとも1つの電流経路は磁場を発生するステ
ップまたは信号を受信するステップの少なくとも1つのために配置構成されている磁気共
鳴無線周波数コイル。
<付記28>
前記少なくとも2つの電流ユニットはボリュームの周囲に分布されている付記27に
記載のコイル。
<付記29>
前記少なくとも2つの電流ユニットは面の周囲に分布されている付記27に記載のコ
イル。
<付記30>
前記コイルは1と12テスラの間の磁場強度を有する静磁場中で動作するために配置構
成されている付記27に記載のコイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴無線周波数コイルであって、
互いに近接して配列され、かつ、各電流ユニットは少なくとも2つの電流経路を有する少なくとも2つの電流ユニットを含み、第1の電流経路および第2の電流経路は、励起磁場を発生するように、および/または信号を検出するように配置構成され、
前記第1の電流経路の励起磁場は、前記第2の電流経路の励起磁場に対して相対的に直交位相において駆動され、および/または前記第2の電流経路の励起磁場に対して相対的に直交位相において受信されることを特徴とするコイル。
【請求項2】
前記少なくとも2つの電流ユニットはボリュームの周囲に分布されている請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記少なくとも2つの電流ユニットは面の周辺に分布されている請求項1に記載のコイル。
【請求項4】
第1の導電体と第2の導電体をさらに含み、前記第1の導電体と前記第2の導電体はループである請求項1に記載のコイル。
【請求項5】
前記コイルは1と12テスラの間の磁場強度を有する静磁場内で動作するために配置構成されている請求項1に記載のコイル。
【請求項6】
電流ユニットの第1の電流経路を使用して無線周波数磁気共鳴コイル内に第1の磁場を発生するステップと、
前記電流ユニットの第2の電流経路を使用して、前記第1の磁場に直交する第2の磁場を発生するステップと、
前記電流ユニットを使用して信号を検出するステップと、を含む方法。
【請求項7】
前記検出するステップは前記コイルのZ軸に沿った段階的変化の符号化を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記発生するステップは電流、周波数、位相角度、間隔、タイミングの少なくとも1つを変調するステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記発生するステップは前記電流ユニットに供給される電力を変調するステップを含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電流経路を第1の特定の共鳴周波数に同調するステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の電流経路を第2の特定の共鳴周波数に同調するステップをさらに含み、前記第1の特定の共鳴周波数は前記第2の特定の共鳴周波数とは異なっている請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路をリアクタンス的に結合するステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の電流経路と前記第2の電流経路をリアクタンス的に結合解除するステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の電流経路を第1の空間領域に結合し、かつ、前記第2の電流経路を第2の空間領域に結合するステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項15】
互いに近接して配列され、かつ、各電流ユニットが少なくとも2つの電流経路を有する少なくとも2つの電流ユニットを含み、少なくとも1つの電流経路は磁場を発生するステップまたは信号を受信するステップの少なくとも1つのために配置構成されている磁気共鳴無線周波数コイル。
【請求項16】
前記少なくとも2つの電流ユニットはボリュームの周囲に分布されている請求項15に記載のコイル。
【請求項17】
前記少なくとも2つの電流ユニットは面の周囲に分布されている請求項15に記載のコイル。
【請求項18】
前記コイルは1と12テスラの間の磁場強度を有する静磁場中で動作するために配置構成されている請求項15に記載のコイル。
【請求項19】
磁気共鳴無線周波数コイルであって、
伝送線路として配列された2またはそれ以上の導電体をそれぞれが有する、1つまたは複数の電流素子を含み、
第1の導電体と第2の導電体の分離距離は、2またはそれ以上の異なる空間領域への送信および/または前記電流要素が2またはそれ以上の異なる空間領域からの信号を受信するのを可能にすることを特徴とするコイル。
【請求項20】
前記第1の導電体と第2の導電体は非平行である請求項19に記載のコイル。
【請求項21】
前記第1の導電体と第2の導電体はZ軸に沿って段階的に変化する無線周波数電磁場を生成するように配列されている請求項20に記載のコイル。
【請求項22】
各電流素子は2またはそれ以上の導電体および1つの遮蔽を含み、第1の導電体と第2の導電体は前記遮蔽に対して平行である請求項19に記載のコイル。
【請求項23】
第1の導電体は第1の空間領域をターゲッティングし、第2の導電体は第2の空間領域をターゲッティングするよう構成される得る請求項19に記載のコイル。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2013−63334(P2013−63334A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3326(P2013−3326)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2007−511697(P2007−511697)の分割
【原出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(305023366)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (39)
【Fターム(参考)】