説明

磁気探傷装置

【課題】ワイヤーロープの着脱機構が単純で、ワイヤーロープに対する着脱が容易であり壊れにくく、且つ、構造も単純で製造コストの低減を図ることである。
【解決手段】プローブ本体が、ワイヤーロープの外径より大きい間隔をあけて設置された第1のガイド部と第2のガイド部とを備え、第1のガイド部と第2のガイド部とに、各々、第1のU字状溝と第2のU字状溝とが設けられ、第1のU字状溝の開口部の方向と第2のU字状溝の開口部の方向とが反対であり、且つ、第1のU字状溝のU字断面と第2のU字状溝のU字断面とを対向させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石等により磁化させたワイヤーロープからの漏洩磁束を検出して、ワイヤーロープの損傷部を探す磁気探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旧来、ワイヤーロープの探傷検査は目視で行われていたが、多大の時間と労力を要するとともに、内部断線を検出できないため、近年、電磁探傷法が用いられている。特に、局部損傷を検出する電磁探傷法には、磁束漏洩法が用いられる。
磁束漏洩法を用いた磁気探傷装置(磁気探傷装置と記す)は、ワイヤーロープを磁化する磁化器と、プローブコイルを内蔵したプローブと、検出信号を処理する制御器などから構成されている。このような磁気探傷装置の一つとして、磁化器とプローブとが一体となった磁化器付プローブの部分と、制御器の部分とが別体であり、磁化器付プローブと制御器とが信号ケーブルで連結されているものがある。
【0003】
上記磁気探傷装置において、磁化器は、短冊状の強磁性板上に一対の永久磁石を、一方の磁石がN極の磁極となり他方の磁石がS極の磁極となるように、所定の間隔で配設してある。
そして、各磁石は非磁性のマグネットケースで覆われ、各マグネットケースの上端部には、強磁性鉄板からなるホールピースが配設され、各磁石の磁極として導出している。
【0004】
また、プローブは、各ホールピース部と接続する脚部と両脚部に橋絡された梁部とからなっている。そして、脚部は磁化器の磁極をワイヤーロープの周壁面に接近して導出するポール部であり、梁部はワイヤーロープを摺接して通過するガイド壁が形成されたガイド部である。ガイド部は半円弧状の溝が長手方向に設けられた2個一対の割形片で形成されており、ガイド壁は2個一対の割形片の各半円弧状の溝を合わせることにより形成されている。また、ガイド部には、ガイド壁の内面側に漏洩磁束を検出する検出器が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−198684号公報(第4頁、第5頁、第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の磁気探傷装置では、プローブにおけるガイド部が、2個一対の割形片で形成されており、各割形片は、その根元を脚部に固定ピンで回動可能に取り付けられている。また、2個一対の割形片の根元部には、2個一対の割形片の各半円弧状の溝を合わせるためのばねが設けられている。
そのため、特許文献1に記載の磁気探傷装置では、ワイヤーロープに対する磁化器付プローブの着脱には、ガイド部における2個一対の割形片を、根元部に設けられたばねに抗して、先端部を開いて行う必要があり、着脱機構が複雑であり、磁化器付プローブを破損しかねないとの問題があった。
また、磁化器付プローブのガイド部の構造が複雑であり、磁化器付プローブの製造コスト、すなわち、磁気探傷装置の製造コストが高くなるとの問題もあった。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ワイヤーロープの着脱機構が単純で、ワイヤーロープに対する着脱が容易であり壊れにくく、且つ、構造も単純であり、製造コストが低い磁気探傷装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる磁気探傷装置は、磁化器付プローブ部と制御器部とを有し、ワイヤーロープの損傷部を検出する磁気探傷装置であって、磁化器付プローブ部が、磁化器収納部に収納された磁化器と磁化器収納部の一方側に一体で形成されたプローブ本体とで形成され、プローブ本体が、探傷されるワイヤーロープの外径より大きい間隔をあけて設置された第1のガイド部と第2のガイド部と、センサとを備え、第1のガイド部には、U字の側部が磁化器収納部の一方の面と略平行となる第1のU字状溝が設けられ、第2のガイド部には、U字の側部が磁化器収納部の一方の面と略平行となる第2のU字状溝が設けられ、第1のU字状溝におけるU字の上部開口部の方向と第2のU字状溝におけるU字の上部開口部の方向とが反対であり、且つ、第1のU字状溝のU字断面と第2のU字状溝のU字断面とが対向しており、第1のU字状溝の壁部には、非磁性の第1のガイド板が設けられ、第2のU字状溝の壁部には、非磁性の第2のガイド板が設けられたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わる磁気探傷装置は、磁化器付プローブ部と制御器部とを有し、ワイヤーロープの損傷部を検出する磁気探傷装置であって、磁化器付プローブ部が、磁化器収納部に収納された磁化器と磁化器収納部の一方側に一体で形成されたプローブ本体とで形成され、プローブ本体が、探傷されるワイヤーロープの外径より大きい間隔をあけて設置された第1のガイド部と第2のガイド部と、センサとを備え、第1のガイド部には、U字の側部が磁化器収納部の一方の面と略平行となる第1のU字状溝が設けられ、第2のガイド部には、U字の側部が磁化器収納部の一方の面と略平行となる第2のU字状溝が設けられ、第1のU字状溝におけるU字の上部開口部の方向と第2のU字状溝におけるU字の上部開口部の方向とが反対であり、且つ、第1のU字状溝のU字断面と第2のU字状溝のU字断面とが対向しており、第1のU字状溝の壁部には、非磁性の第1のガイド板が設けられ、第2のU字状溝の壁部には、非磁性の第2のガイド板が設けられたものであり、ワイヤーロープに対する着脱が容易で壊れにくく、且つ、構造が単純で製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる磁気探傷装置における磁化器付プローブの斜視模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係わる磁気探傷装置における磁化器付プローブの正面断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係わる磁気探傷装置における磁化器付プローブのセンサとポール部とを説明する斜視模式図である。
【図4】本実施の形態の磁化器付プローブをワイヤーロープにセットする工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係わる磁気探傷装置における磁化器付プローブの斜視模式図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係わる磁気探傷装置における磁化器付プローブの正面断面模式図である。
本実施の形態の磁気探傷装置は、図1および図2に示す磁化器付プローブ部100と、この磁化器付プローブ部100と電気的に接続された制御器部(図示せず)とを備えている。
図1および図2に示すように、本実施の形態の磁気探傷装置における磁化器付プローブ部100は、磁化器1が収納された磁化器収納部2と、この磁化器収納部2の一方側に磁化器収納部2と一体に形成された、第1のガイド部11と第2のガイド部12と、磁化器収納部2の第1のガイド部11と第2のガイド部12とが形成された側の反対の面に設けられた取手4とを備えている。そして、第1のガイド部11と第2のガイド部12とでプローブ本体3を形成している。
【0012】
本実施の形態では、第1のガイド部11と第2のガイド部12とが、探傷されるワイヤーロープの外径より大きい間隔で設置されている。
また、第1のガイド部11には、第1のU字状溝11aが形成され、第2のガイド部12には、第2のU字状溝12aが形成されている。そして、第1のU字状溝11aと第2のU字状溝12aとは、U字の側部が磁化器収納部2の一方の面と略平行となり、U字の上部開口部の方向が反対となるように、配置されている。
【0013】
また、第1のガイド部11と第2のガイド部12とは、第1のU字状溝11aのU字断面と第2のU字状溝12aのU字断面とが対向するように設置されている。
また、第1のU字状溝11aの壁部には、非磁性の第1のガイド板11bが設けられており、第2のU字状溝12aの壁部には、非磁性の第2のガイド板12bが設けられている。そして、第1のガイド部11と第2のガイド部12とを通過するワイヤーロープは、これらの第1のガイド板11bと第2のガイド板12bとに摺接する。
また、第1のガイド板11bのワイヤーロープと摺接する面の反対側の面である裏面には、第1のセンサ5aが接しており、第2のガイド板12bのワイヤーロープと摺接する面の反対側の面である裏面には、第2のセンサ5bが接している。
【0014】
本実施の形態では、磁化器収納部2に収納された磁化器1は、短冊状の強磁性板で形成されたヨーク6と、ヨーク6の両端部の上面に配設された、第1の永久磁石7と第2の永久磁石8とを備えている。そして、第1の永久磁石7がN極の磁極7aとなり第2の永久磁石8がS極の磁極8aとなっている。また、第1の永久磁石7と第2の永久磁石8との間は、所定の間隔があけられている。
また、第1の永久磁石7には、N極の磁極7aを第1のガイド部11に導出する第1のポール部9が設けられ、第2の永久磁石8には、S極の磁極8aを第2のガイド部12に導出する第2のポール部10が設けられている。
【0015】
また、ヨーク6上には、N極の磁極7aを形成する第1の永久磁石7の側面に接して第1のセンサ台13が設けられ、S極の磁極8aを形成する第2の永久磁石8の側面に接して第2のセンサ台14が設けられている。
そして、第1のセンサ台13上には、第1のセンサ5aが設置され、第2のセンサ台14上には、第2のセンサ5bが設置されている。
【0016】
図3は、本発明の実施の形態1に係わる磁気探傷装置における磁化器付プローブのセンサとポール部とを説明する斜視模式図である。
図3では、磁化器付プローブ部100における、第1のガイド部11において第1のガイド板11bを外すとともに、磁化器収納部2において側壁部を取り除いた状態を示している。
図3に示すように、第1のセンサ5aは、第1のガイド板11bの面に接して沿う形状に湾曲している。
また、第1のポール部9は、直角三角形体において、斜辺を第1のガイド板11bの裏面に沿って接するように湾曲させた形状であり、一辺が第1の永久磁石7のN極の磁極7aに接続されている。
【0017】
第2のガイド部12の構造も第1のガイド部11の構造と同様であり、図示されていないが、第2のセンサ5bは、第2のガイド板12bの裏面に接して沿う形状に湾曲しており、第2のポール部10は、直角三角形体において、斜辺を第2のガイド板12bの面に沿って接するように湾曲させた形状であり、一辺が第2の永久磁石8のS極の磁極8aに接続されている。
すなわち、第1,第2のポール部9,10が上記のような構造であり、非磁性の第1,第2のガイド板11b,12bの各々の部分に設けられているので、第1のガイド部11と第2のガイド部12とを通過するワイヤーロープを磁化できるようになっている。
また、第1,第2のセンサ5a,5bが湾曲して、ガイド部を通過するワイヤーロープを囲むように設けられているので、漏洩磁束を高感度に検出できる。
【0018】
本実施の形態において、ヨーク6を形成する短冊状の強磁性板に用いられる材料としては、例えば、鉄などが挙げられる。
また、第1,第2の永久磁石7,8に用いられる磁石としては、例えば、強磁力が得られるネオジウム系Nd−Fe−B焼結磁石のような希土類永久磁石などが挙げられる。
また、非磁性の第1,第2のガイド板11b,12bに用いられる材料としては、例えば、SUS304などが挙げられる。
また、第1,第2のセンサ5a,5bとしては、例えば、コイルや磁気素子などが挙げられる。
【0019】
図4は、本実施の形態の磁化器付プローブをワイヤーロープにセットする工程を示す図である。
図4(a)に示す第1の工程では、磁化器付プローブ部100が、第1のガイド部11と第2のガイド部12との間隙部をワイヤーロープ50に覆設できる方向に傾けられる。
図4(b)に示す第2の工程では、傾けられた磁化器付プローブ部100の、第1のガイド部11と第2のガイド部12との間隙部を、ワイヤーロープ50に覆設する。
【0020】
図4(c)に示す第3の工程では、ワイヤーロープ50に第1のガイド部11と第2のガイド部12との間隙部に覆設された磁化器付プローブ部100を、第1のガイド部11の第1のU字状溝11aと第2のガイド部12の第2のU字状溝12aとが、ワイヤーロープ50に覆設する方向に回転する。
そして、図4(d)に示すように、磁化器付プローブ部100が、ワイヤーロープ50に、第1のU字状溝11aと第2のU字状溝12aとを覆設して、セットされる。
また、この工程を逆に行うことにより、ワイヤーロープ50から、磁化器付プローブ部100を取り外すことができる。
【0021】
本実施の形態の磁気探傷装置は、磁化器付プローブ自身を回転することで、磁化器付プローブ部を、ワイヤーロープにセットできるとともに、ワイヤーロープから取り外すこともでき、磁化器付プローブ部の着脱が容易である。それ故、ワイヤーロープを停止できない状態で、ワイヤーロープに異物などの突起物等を発見した場合でも、素早く磁化器付プローブ部をワイヤーロープから離脱させることが可能である。
また、プローブ本体が、機械的に動く構造でないので、堅牢であるとともに、構造が単純であり製造コストが安い。
【0022】
また、第1のガイド部における第1のU字状溝のU字の上部開口部の方向と、第2のガイド部における第2のU字状溝のU字の上部開口部の方向とが反対であるので、ロープ全周の検査をすることが可能である。
本実施の形態の磁気探傷装置は、磁化器付プローブ部と制御器部とが別体であり、磁化器付プローブ部と制御器部とが信号ケーブルで電気的に接続されているが、磁化器付プローブ部の磁化器収納部に、磁化器とともに制御器部を収納し、磁化器付プローブ部と制御器部とが一体である磁気探傷装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係わる磁気探傷装置は、磁化器付プローブ部におけるプローブ本体の、第1のガイド部と第2のガイド部との間の間隙部をワイヤーロープに覆設した後、磁化器付プローブ部を回転して、磁化器付プローブ部をワイヤーロープにセットするので、ワイヤーロープを頻繁に探傷する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 磁化器、2 磁化器収納部、3 プローブ本体、4 取手、5a 第1のセンサ、
5b 第2のセンサ、6 ヨーク、7 第1の永久磁石、7a N極の磁極、
8 第2の永久磁石、8a S極の磁極、9 第1のポール部、10 第2のポール部、
11 第1のガイド部、11a 第1のU字状溝、11b 第1のガイド板、
12 第2のガイド部、12a 第2のU字状溝、12b 第2のガイド板、
13 第1のセンサ台、14 第2のセンサ台、50 ワイヤーロープ、
100 磁化器付プローブ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化器付プローブ部と制御器部とを有し、ワイヤーロープの損傷部を検出する磁気探傷装置であって、
上記磁化器付プローブ部が、磁化器収納部に収納された磁化器と上記磁化器収納部の一方側に一体で形成されたプローブ本体とで形成され、上記プローブ本体が、上記探傷されるワイヤーロープの外径より大きい間隔をあけて設置された第1のガイド部と第2のガイド部と、センサとを備え、上記第1のガイド部には、U字の側部が上記磁化器収納部の一方の面と略平行となる第1のU字状溝が設けられ、上記第2のガイド部には、U字の側部が上記磁化器収納部の一方の面と略平行となる第2のU字状溝が設けられ、上記第1のU字状溝におけるU字の上部開口部の方向と上記第2のU字状溝におけるU字の上部開口部の方向とが反対であり、且つ、上記第1のU字状溝のU字断面と上記第2のU字状溝のU字断面とが対向しており、上記第1のU字状溝の壁部には、非磁性の第1のガイド板が設けられ、上記第2のU字状溝の壁部には、非磁性の第2のガイド板が設けられた磁気探傷装置。
【請求項2】
上記第1のガイド板の裏面が、磁化器の第1の永久磁石のN極の磁極に載置された第1のポール部と、上記磁化器の第1のセンサ台に設置された第1のセンサとに接しており、上記第2のガイド板の裏面が、上記磁化器の第2の永久磁石のS極の磁極に載置された第2のポール部と、上記磁化器の第2のセンサ台に設置された第2のセンサとに接していることを特徴とする請求項1に記載の磁気探傷装置。
【請求項3】
上記第1のポール部の第1のガイド板の裏面との接触部が、上記第1のガイド板の裏面に沿うように湾曲しており、上記第2のポール部の第2のガイド板の裏面との接触部が、上記第2のガイド板の裏面に沿うように湾曲していることを特徴とする請求項2に記載の磁気探傷装置。
【請求項4】
上記第1のセンサの第1のガイド板の裏面との接触部が、上記第1のガイド板の裏面に沿うように湾曲しており、上記第2のセンサの第2のガイド板の裏面との接触部が、上記第2のガイド板の裏面に沿うように湾曲していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の磁気探傷装置。
【請求項5】
上記磁化器付プローブ部と上記制御器部とが別体であり、上記磁化器付プローブ部と上記制御器部とが信号ケーブルで電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁気探傷装置。
【請求項6】
上記磁化器付プローブ部の磁化器収納部に磁化器と制御器部とが収納され、上記磁化器付プローブ部と上記制御器部とが一体であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁気探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−237214(P2011−237214A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107219(P2010−107219)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】