説明

磁気検知用能書とその検知方法

【課題】 簡単な構成で既存の印刷方法により、強磁性体粉末による印刷層を形成することができ、包装箱に能書を収納後、確実に検知可能な磁気検知用能書とその検知方法を提供する。
【解決手段】 強磁性体粉末を含む磁性インキによる印刷パターン14が能書12の紙面に複数列互いに平行に印刷されている。少なくとも一方の印刷パターン14は、基準となるデータが記録された基準パターン14aである。他の少なくとも一つの印刷パターン14は、能書12の識別を行う識別パターン14bである。強磁性体粉末は、保持力が2750エルステッド以上の強磁性体粉末であり、印刷パターン14は、各々独立した印刷単位が複数個直列に並んで設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装箱に収納された薬品の能書等に磁性インキで印刷を施し、その印刷部分の磁気を検出して、能書の有無及び種類を判別または識別可能とした磁気検知用能書とその検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医薬品の包装箱には、その包装箱内の医薬品の説明書である能書が収納されている。この能書は、薬剤毎に必ず添付しなければならないので、包装箱に薬剤を収納する際や封緘した後、能書が包装箱に入れられているか否かを確認する必要がある。
【0003】
能書の収納を封緘前に確認する方法として、能書の供給数と包装済みの箱の数を比較することにより確認する計数管理法や、光電管センサを用いて、能書を包装箱内に挿入する直前に能書の挿入を検知する方法がある。その他、能書を包装箱内に挿入後、封緘前の状態で包装箱をカメラにより撮影し、画像処理により能書の有無を確認する方法もある。
【0004】
また、包装箱に能書を収納し封緘後に能書を検知する方法として、能書収納後の包装箱の重量を調べて、能書の有無を検知する方法や、能書に蛍光剤を印刷し、能書挿入後の包装箱に特定波長の光を当てて、フォトルミネッセンスによる反射光に含まれる蛍光をチェックすることにより能書の有無を判別する方法がある。さらに、能書収納後の包装箱に、X線を照射して包装箱中の能書の影を検知する方法や、包装箱外からマイクロ波を照射して、能書による反射波を検知して能書の有無を判別する方法もある。
【0005】
さらに、能書にバーコードを印刷し、能書を箱内に入れる直前にバーコードを読み取って、能書検知に加えて種類に相違がないかどうかを確認する能書方法もある。
【0006】
その他、能書に磁性インキによるマークを印刷し、マークを有した能書を包装箱に収納して、包装箱の外からその能書に磁界をかけて中の磁性インキの強磁性体粒子を磁化し、包装箱中の能書の磁化されたマークの微弱な磁界を検知して能書を確認する装置も提案されている。
【0007】
さらに、能書の有無のみならず種類等の情報を確認する方法として、能書にバーコードを印刷し、能書を箱内に入れる直前にバーコードを読み取って能書の種類に相違がないかどうかを確認する方法もあった。
【0008】
一方、磁気カード等の安全性を高め偽造等を防止するための技術として、特許文献1に開示されているように、複数の磁気トラックに磁気パターンを形成したものもある。
【特許文献1】特開平11−25406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の技術の、能書を包装箱内に収納前に確認する方法の場合、実際に能書が収納されているか否かを判別するものではなく、包装箱内に確実に能書が収納されていることを判別することはできない。さらに、計数ミスや検知後の箱内への収納時にエラーが生じる恐れもある。
【0010】
また、重量を検知する場合も能書の種類を識別できるものではない。その他、フォトルミネッセンスによる場合やX線、マイクロ波を当てるものの場合、能書の材料や収納物への悪影響、温湿度による影響等があり、実用的なものではなかった。その他、バーコードを読み取る方法も、バーコードを読み取った後に能書が何らかの理由で包装箱に収納されなかった場合は検知できないものである。
【0011】
従って、上記従来の能書検知方法では、能書管理の完璧性を期待することはできず、特に医薬品の場合、万一にも納書が入っていなかったり誤った納書が入っていた場合、そのロットの製品を全て開封して検査したり、市場の製品を回収しなければならない事態が発生する恐れもある。
【0012】
一方、磁性インキにより包装箱内の能書を検知する方法の場合、箱外から能書を検知しなければならず、能書に印刷された強磁性体インキ層を磁気ヘッド等の磁気センサで接触して磁界を検知するものではなく、強磁性体インキ層と磁気センサとの間隔が広く、検知が難しいものであった。従って、磁気検知は、未だ医薬品の能書の有無の検知にのみ用いられ、種類の検知を実用化したものはない。
【0013】
その他、収納物を読み取ることができる手段として、ICカード等を用いることも考えられるが、このシステムはコストが高く大量の商品に適用できるものではない。
【0014】
この発明は上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で既存の印刷方法により、強磁性体粉末による印刷層を形成することができ、包装箱に能書を収納後、確実に検知可能な磁気検知用能書とその検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、フェライト等の強磁性体粉末を含む磁性インキによる印刷パターンが能書紙面に複数列互いに平行に印刷され、少なくとも一方の前記印刷パターンは基準となるデータが記録された基準パターンであり、他の少なくとも一つの前記印刷パターンが、前記能書の識別を行う識別パターンである磁気検知用能書である。
【0016】
前記強磁性体粉末は、保持力が2750エルステッド以上の強磁性体粉末である。また、前記印刷パターンは、各々独立した印刷単位が各列毎に複数個直列に並んで印刷パターンを形成しているものである。さらに、前記印刷パターンは、前記能書紙面の厚み方向に重ねて印刷されているものでも良い。
【0017】
さらに、前記印刷パターンの磁性インキが固化する前に、前記磁気検知用能書の前記印刷パターン中の強磁性体粉末を磁化して成るものである。
【0018】
また、前記印刷パターンの磁性インキは、平均粒径が1.0〜2.0μm、例えば1.3〜1.6μm程度の異方性の強磁性体粉末を含み、保持力が2750エルステッド以上であって、オフセット印刷により前記印刷パターンを形成し、印刷後前記磁性インキが固化する前に、前記印刷パターン中の強磁性体粉末を磁化してなる磁気検知用能書である。
【0019】
またこの発明は、強磁性体粉末を含む磁性インキによる印刷パターンが能書紙面に複数列互いに平行に印刷され、少なくとも一方の前記印刷パターンは基準となるデータが記録された基準パターンであり、他の少なくとも一つの前記印刷パターンが前記能書の識別を行う識別パターンとして設けられた磁気検知用能書を用い、包装箱に前記磁気検知用能書を収納する前または収納後に、前記複数列の印刷パターンを各々磁化し、その包装箱の移動中に前記包装箱の外側から前記基準パターンと識別パターンの磁界を検知し、前記基準パターンによる信号を基に前記識別パターンによる信号を判別する磁気検知用能書の検知方法である。
【発明の効果】
【0020】
この発明の磁気検知用能書とその検知方法は、磁性インキによる印刷パターンを高感度で検知することが可能であり、包装箱内の能書の有無及び種類等を、包装後に箱外から確実に確認することができる。しかも、磁性インキによる印刷も容易なものである。特に、印刷に際しては、既存の印刷装置を利用したオフセット印刷を利用することができ、新たな設備等を必要とせず、コストを抑えることができる。しかも、検知感度が良く印刷は1回でも良く、信頼性の高い能書検知が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1〜図4は、この発明の一実施形態を示すもので、例えば医薬品等の商品11を収容した包装箱10に収納された能書12を検知するものである。能書12には、図1に示すように、効能書きや注意書き等の説明文13とともに、強磁性体粉末を含む磁性インキによる複数列の印刷パターン14が形成されている。
【0022】
印刷パターン14は、各々独立した矩形の印刷単位、例えば長さが5mm〜10mmで幅が0.5mm〜5mm程度の印刷単位が、複数個直列に並んで印刷パターン14を形成している。印刷パターン14は、判別の基準となり所定の規則で印刷単位が直列に配列された基準パターン14aと、能書12の種類毎に印刷単位が設定された識別パターン14bとから成る。基準パターン14aと識別パターン14bは、直線的に配列され、互いに平行に並列に位置している。この印刷パターン14に含まれる強磁性体粉末としては、Fe,Ni,Coやそれらの化合物、または合金の粉末であり、保持力が2750エルステッド以上の強磁性体粉末である。例えば、平均粒径が1.0〜2.0μm、例えば1.3〜1.6μm程度の異方性フェライト粉末等がある。
【0023】
能書12の磁性インキによる印刷パターン14は、例えば包装箱10に収納する薬剤の種類に合わせて、印刷パターン14の識別パターン14bの数や配置を異にして印刷する。印刷方法はフレキソ印刷やオフセット印刷等適宜選択可能であるが、磁性インキを厚く印刷可能なフレキソ印刷が磁界検知には好ましい。しかし、能書12の印刷の観点では一般的なオフセット印刷が好ましく、保持力の高い前記強磁性体粉末が入った磁性インキを用いることにより、オフセット印刷による印刷パターン14を検知可能としている。
【0024】
この実施形態の能書検知方法は、図4に示すように、印刷会社の印刷工場15において、能書12の印刷工程21で、所定の収納物である薬剤に対応した印刷パターン14を磁性インキにより印刷する。そして、印刷パターン14の印刷後、着磁装置22により印刷パターン14が磁化される。ここで、印刷パターン14の印刷及び磁化に際して、磁性インキが固化する前に、能書12の印刷パターン14中の強磁性体粉末の磁化を行うと良い。これは、磁性インキが固化する前に強磁性体粉末を磁化させることにより、強磁性体粉末の磁化容易軸が磁界方向に揃えられて磁化され、残留磁束密度を向上させることができるからである。次に、能書折畳装置23により、所定の包装箱10に収納可能な大きさに能書12を折り畳む。そして、折り畳まれた能書12を商品11の製薬会社25に搬送する。
【0025】
製薬会社25では、包装箱10内に能書12を挿入する自動機が設けられ、所定の薬剤毎に包装箱10に所定の能書12を収納する。さらに、商品搬送用のベルトコンベア20に沿って磁界検知装置24と、その下流側の跳ね出し装置26が設けられている。跳ね出し装置26は、能書12が包装箱10内に収納されていない場合や、異なる能書12が包装箱10に収納されている場合、その包装箱10を跳ね出す。
【0026】
この実施形態の磁界検知装置24による能書検知は、ベルトコンベア20上で、移動中に磁界検知装置24により包装箱10の外から能書12の印刷パターン14の磁界を検知する。磁界検知装置24による検知波形は、図2に示すように、基準パターン14aに対応した波形(A)と、識別パターン14bの数や配置により、識別パターン14bに対応した波形(B)とが検知される。そして、基準パターン14aの波形を基準にして、識別パターン14bの波形から、収納された能書12を判別し種類等を識別する。
【0027】
また、印刷パターン14の着磁を商品の製薬会社25で行っても良い。この場合、包装箱10内に能書12を収納後に、箱外から着磁を行う。この後、上記と同様に、磁界検知装置24により、能書12を検知し種類等を識別する。
【0028】
この実施形態の磁気検知用能書とその検知方法によれば、複数種類の収納物に対応させて各々の能書12の識別パターン14bを変えて印刷し、包装箱10の外から商品11毎に正確に能書12の有無や種類を検知し識別することができる。しかも、ベルトコンベア20の変動等により、識別パターン14bの認識時の検知信号にタイミング的なずれが発生しても、並列に配置された基準パターン14aと識別パターン14bは、同様のタイミング上のずれを生じさせるものであり、基準パターン14aを基に識別パターン14bを判別することにより認識誤差を生じさせにくい。さらに、強磁性体粉末は、2750エルステッド以上の保持力を有したものを用いることにより、磁界検知装置24の磁気センサが印刷パターン14に接触していなくても正確に磁界を検知することができ、包装箱10内の能書12を、箱体の側壁空間を介して正確に検知することができる。また、高い保持力を有していることにより、搬送途中での外部磁界による影響を受けにくいものである。さらに、オフセット印刷による磁性インキの量でも正確な検知が可能となり、従来一般的に用いられているオフセット印刷をそのまま利用することができ、印刷回数も1回程度でよく、印刷速度やその他の条件を落とすことなく印刷することができる。従って、コストアップも最小限に抑えることができる。
【0029】
また、磁性インキが固化する前に印刷パターン14を磁化させることにより、磁気センサとの間隔があっても正確な検知が可能となる。さらに、印刷工程の中で着磁することにより、より近接した位置で磁気ヘッドにより着磁することができ、強い磁界で安定に磁化させることができる。
【0030】
なお、印刷パターン14は、図5(a)に示すように、基準パターン14aと識別パターン14bが、能書12の紙面の表裏で厚み方向に重ねて印刷されているものでも良く、図5(b)に示すように、基準パターン14aと識別パターン14bが、能書12の紙面の一方で厚み方向に重ねて印刷されているものでも良い。
【0031】
この発明の磁気検知用能書とその検知方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、磁性インキ中の強磁性体粉末は、適宜の強磁性体金属の粉末で良く、強磁性体粉末の粒子形状や大きさも適宜設定可能である。さらに、磁性インキの印刷パターンは検知可能なものであれば良く、大きさや形、数は適宜選択し得るものである。また、印刷パターンは連続的なものでも良く、着磁時の磁界パターンを変えて収納物を識別するものでも良い。また、検知対象の内容物も、医薬品の能書の他、食品の説明書や、お菓子のおまけ、その他包装材に収納される内容物に適宜利用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態の能書の印刷パターンを示す概略図である。
【図2】この発明の一実施形態の能書検知方法により検知された印刷パターンの、基準パターンの波形(A)と識別パターンの波形(B)を示す波形図である。
【図3】この発明の一実施形態の能書を収納する包装箱の斜視図である。
【図4】この発明の一実施形態の能書検知工程を示す概念図である。
【図5】この発明の他の実施形態の能書を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 包装箱
11 商品
12 能書
14 印刷パターン
14a 基準パターン
14b 識別パターン
22 着磁装置
24 磁界検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体粉末を含む磁性インキによる印刷パターンが能書紙面に複数列互いに平行に印刷され、少なくとも一方の前記印刷パターンは基準となるデータが記録された基準パターンであり、他の少なくとも一つの前記印刷パターンが、前記能書の識別を行う識別パターンであることを特徴とする磁気検知用能書。
【請求項2】
前記強磁性体粉末は、保持力が2750エルステッド以上の強磁性体粉末であることを特徴とする請求項1記載の磁気検知用能書。
【請求項3】
前記印刷パターンは、各々独立した印刷単位が各列毎に複数個直列に並んで印刷パターンを形成していることを特徴とする請求項1または2記載の磁気検知用能書。
【請求項4】
前記印刷パターンは、前記能書紙面の厚み方向に重ねて印刷されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の磁気検知用能書。
【請求項5】
前記印刷パターンの磁性インキが固化する前に、前記磁気検知用能書の前記印刷パターン中の強磁性体粉末を磁化して成ることを特徴とする1、2、3または4記載の磁気検知用能書。
【請求項6】
前記印刷パターンの磁性インキは、平均粒径が1.3〜1.6μm程度の異方性の強磁性体粉末を含み、保持力が2750エルステッド以上であって、オフセット印刷により前記印刷パターンを形成し、印刷後前記磁性インキが固化する前に、前記印刷パターン中の強磁性体粉末を磁化してなることを特徴とする請求項1記載の磁気検知用能書。
【請求項7】
強磁性体粉末を含む磁性インキによる印刷パターンが能書紙面に複数列互いに平行に印刷され、少なくとも一方の前記印刷パターンは基準となるデータが記録された基準パターンであり、他の少なくとも一つの前記印刷パターンが前記能書の識別を行う識別パターンとして設けられた磁気検知用能書を用い、包装箱に前記磁気検知用能書を収納する前または収納後に、前記複数列の印刷パターンを各々磁化し、その包装箱の移動中に前記包装箱の外側から前記基準パターンと識別パターンの磁界を検知し、前記基準パターンによる信号を基に前記識別パターンによる信号を判別することを特徴とする磁気検知用能書の検知方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−146451(P2006−146451A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333847(P2004−333847)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(391019500)朝日印刷株式会社 (70)
【出願人】(591011775)電子磁気工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】