説明

磁気歯車装置

【課題】トルク伝達の際に生じる渦電流損失を抑制することができ、トルク伝達効率を向上することができる磁気歯車装置を提供する。
【解決手段】入力回転軸1の軸線周りに設けた鉄心25の径方向外側に向けて設けた磁力発生面に複数の磁石24を周方向に並べて配置した入力側磁気歯車2と、入力側磁気歯車2を同軸状に囲んで設けられ、入力側磁気歯車2の磁力発生面に対向する鉄心33の磁力発生面に複数の磁石を周方向に並べて配置した出力側磁気歯車3と、入力側磁気歯車と出力側磁気歯車3の対向する磁力発生面間に、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の磁極間に介在するように周方向に並べて固設された電磁鋼製の磁気経路部材4と、入力側磁気歯車2の複数の磁石24の軸心側に同軸状に設けられた非磁性体構造部22と、出力側磁気歯車3の複数の磁石の径方向外側に同軸状に設けられた非磁性体構造部31とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石の磁気吸引・反発によってトルクを伝達する磁気歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減速装置としては、高効率での伝動が比較的容易に可能な歯車装置が広く一般に用いられているが、その他に磁石の磁気的吸引・反発によってトルクを伝達する磁気歯車装置がある。
【0003】
磁気歯車装置の従来技術として、例えば、同心状に配置した内輪磁気歯車と外輪磁気歯車の間に磁気を透過する複数の磁性バーを環状に配置し、内輪磁気歯車に入力したトルクを外輪磁気歯車に伝達するものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,378,710号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のような構造の磁気歯車装置において、磁石やヨークは相対的に変化する磁界中にさらされている。特に、磁気歯車装置の回転が高速である場合は磁界の相対変化が激しくなり、電磁誘導効果によって磁石やヨークに大きな渦電流が発生してエネルギーの損失(渦電流損)が生じ、効率が著しく低下してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、トルク伝達の際に生じる渦電流損失を抑制することができ、トルク伝達効率を向上することができる磁気歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、第1回転軸の軸線周りに設けた鉄心の径方向外側に向けて設けた磁力発生面に複数の磁石を周方向に並べて配置した第1磁気歯車と、前記第1磁気歯車を同軸状に囲んで設けられ、前記第1磁気歯車の磁力発生面に対向する鉄心の磁力発生面に複数の磁石を周方向に並べて配置した第2磁気歯車と、前記第1磁気歯車と前記第2磁気歯車の対向する磁力発生面間に、前記第1磁気歯車と第2磁気歯車の磁極間に介在するように周方向に並べて固設された電磁鋼製の磁気経路部材と、前記第1磁気歯車の複数の磁石の軸心側に同軸状に設けられた第1非磁性体構造部と、前記第2磁気歯車の複数の磁石の径方向外側に同軸状に設けられた第2非磁性体構造部とを備えたものとする。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記第1磁気歯車および前記第2磁気歯車の複数の磁石は、それぞれ、周方向に同極を対向するよう配置したものとする。
【0009】
(3)また、上記(1)において、好ましくは、前記第1非磁性体構造部の外周であって周方向に並べて配置された前記複数の磁石の間の位置に、径方向外側に向かって突出して設けられた嵌合突起部と、前記第1非磁性体構造部の外周に前記複数の磁石を径方向外側から覆うように配置されて前記第1磁気歯車を形成し、前記嵌合突起部と嵌合して第1非磁性体構造部に対する周方向及び径方向の動きを抑制する嵌合凹部を有する鉄心とを備えたものとする。
【0010】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記第1磁気歯車に設けられた複数の磁石の周方向の幅は、径方向外側に行くに従って狭くなるよう形成されたものとする。
【0011】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記磁気経路部材は、互いに絶縁して軸方向に積層した電磁鋼板により形成したものとする。
【0012】
(6)また、上記(1)において、好ましくは、前記磁石は、互いに絶縁して軸方向に積層した磁石により形成したものとする。
【0013】
(7)さらに、上記(1)において、好ましくは、前記鉄心は、互いに絶縁して軸方向に積層した電磁鋼板により形成したものとする。
【0014】
(8)また、上記(1)において、好ましくは、前記磁気経路部材は、非金属材料からなり軸方向に延在する複数の穴が形成された磁気経路部材ホルダーにより保持され、該磁気経路部材ホルダーの穴に軸方向に積層した電磁鋼板を設けたものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トルク伝達の際に生じる渦電流損失を抑制することができ、トルク伝達効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置の回転軸に垂直な面における断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置の回転軸を含む面における断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置の磁石配置を模式的に示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置を備えたガスタービン発電機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態を図面を用いて説明する。
【0018】
図4は、本実施の形態に係る磁気歯車装置100を備えたガスタービン発電機の構成図である。
【0019】
図4において、ガスタービン発電機は、取り入れた空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機90と、圧縮機90からの圧縮空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器91と、燃焼器91からの燃焼ガスにより回転駆動するタービン92と、タービン92と圧縮機90を連結し、タービン92の回転を圧縮機90に伝達する中間軸93と、圧縮機90に接続され、タービン92により回転駆動される入力回転軸1と、入力回転軸1及び出力回転軸5に接続され、入力回転軸1の回転数を変換して出力回転軸5に出力する磁気歯車装置100と、出力回転軸5に接続され、出力回転軸5の回転数に応じて発電を行う発電機94とを備えている。入力回転軸1、出力回転軸5、及びその他の回転軸は同軸上に配置され、複数の軸受95及びスラスト軸受(図示せず)により回転可能に支持されている。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態に係る磁気歯車装置100の回転軸に垂直な面における断面図であり、図2は回転軸を含む面における断面図である。
【0021】
図1及び図2において、磁気歯車装置100は、略円柱状の入力側磁気歯車2と、入力側磁気歯車2を同軸状に囲むように配置された略円筒状の出力側磁気歯車3と、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の間に配置された複数の磁気経路部材4とを有している。
【0022】
入力側磁気歯車2は、略円柱形状を有しており、その一端において入力回転軸1と同軸上に接続されている。また、出力側磁気歯車3は、出力回転軸5側(入力回転軸1と反対側)の一端を閉じた略円筒形状を有しており、その閉じた端部において出力回転軸5と同軸上に接続されている。入力回転軸1と出力回転軸5は同軸上に配置されており、したがって、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3は同軸状に形成されている。
【0023】
入力側磁気歯車2は、入力回転軸1の軸線上に沿うように設けられた軸中心部21と、軸中心部21に同軸状に接続された非磁性体構造部22と、非磁性体構造部22の外周に周方向に並べて配置された複数の磁石24と、非磁性体構造部22から複数の磁石24の間の位置において径方向外側に突出して設けられた嵌合突起部23と、非磁性体構造部22及び複数の磁石24の外周を覆うように配置され、嵌合突起部23と嵌合して非磁性体構造部22に対する周方向及び径方向の動きを抑制する嵌合凹部26を有する鉄心25とから構成されている。
【0024】
非磁性体構造部22を形成する非磁性体としては、例えば、非磁性金属であるオーステナイトステンレス、ニッケル合金、チタン合金や、非金属材料であるFRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)などがある。
【0025】
嵌合突起部23は、非磁性体構造部22と同じ材料により一体的に形成されており、その周方向の幅が径方向外側にいくに従って狭くなるよう形成されている。嵌合突起部23の非磁性体構造部22からの立ち上がり面は、谷部と山部とを交互に形成した波形状を有しており、同様の波形状を有する鉄心25の嵌合凹部26と嵌合するよう形成されている。
【0026】
磁石24は、非磁性体構造部22に沿って軸方向に延在するよう設けられており、互いに絶縁した薄板状の永久磁石を軸方向に積層することにより形成されている。また、磁石24は、径方向外側にいくに従って狭くなるように形成されている。このように形成した複数の磁石24は、互いの同極が周方向に対向する向きに配置されている。
【0027】
図3は、本実施の形態における磁石配置を模式的に示す図である。なお、図3において、嵌合突起部23の波形状などの細部は図示を省略している。
図3に示すように、複数の磁石24は、それぞれ、周方向にN極24aおよびS極24bを向けて配置されている。隣り合う磁石24は、互いの同極が周方向に対向する向きに配置されている。
【0028】
鉄心25は、非磁性体構造部22及び複数の磁石24の外周を覆うように、すなわち、径方向内側を非磁性体構造部22に当接した磁石24に、径方向外側および周方向両側から当接するよう形成されている。また、鉄心25は、非磁性体構造部22の嵌合突起部23に対応する位置に、その嵌合突起部23と嵌合可能な嵌合凹部26を有している。
【0029】
また、鉄心25は、互いに絶縁した薄板状の部材を軸方向に積層することによって形成されており、さらに、薄板状の各部材は、複数の磁石24の径方向外側部分で周方向に分割されている。そして、鉄心25は、分割された各部材を、嵌合突起部23に嵌合凹部26が嵌合するよう軸方向から挿入して積層することにより形成されている。これにより、鉄心25は、非磁性体構造部22に対して周方向及び径方向に強固に固定される。
【0030】
ここで、前述のように、磁石24は、径方向外側にいくに従って狭くなるように形成されており、鉄心25は、その磁石24に径方向外側および周方向両側から当接するよう形成されている。そして、鉄心25は、嵌合突起部23と嵌合凹部26の嵌合により非磁性体構造部22に対して周方向及び径方向に強固に固定される。つまり、磁石24は径方向へ働く力(例えば、入力側磁気歯車2の回転により生じる遠心力)に対して鉄心25により径方向外側の当接部で保持されるとともに、周方向両側の当接部によっても保持される。
【0031】
このように構成された入力側磁気歯車2において、隣り合う磁石24の磁力線は、同極である相手側の磁石24および非磁性体構造部22側には向かず、その磁力線のほとんどが径方向外側に作用する。したがって、入力側磁気歯車2においては、その外周面(径方向外側の面)が磁力発生面といえる。
【0032】
出力側磁気歯車3は、略円筒状に形成され入力側磁気歯車2と同軸状に配置された非磁性体構造部31と、非磁性体構造部31の内周に周方向に並べて配置された複数の磁石32と、磁石32を径方向内側および周方向両側から当接して覆うように配置された鉄心33とから構成されている。
【0033】
非磁性体構造部31を形成する非磁性体としては、入力側時期歯車2の非磁性体構造部21と同様に、例えば、非磁性金属であるオーステナイト、ステンレス、ニッケル合金チタン合金や、非金属材料であるFRP(繊維強化プラスチック)などがある。
【0034】
磁石32は、非磁性体構造部31に沿って軸方向に延在するよう設けられており、互いに絶縁した薄板状の永久磁石を軸方向に積層することにより形成されている。また、複数の磁石32は、互いの同極が周方向に対向する向きに配置されている。すなわち、図3に示すように、複数の磁石32は、それぞれ、周方向にN極32aおよびS極32bを向けて配置されており、隣り合う磁石32は、互いの同極が周方向に対向する向きに配置されており、非磁性体構造部突起34と嵌め合う構造となっており、磁石32で発生した周方向力を非磁性体構造部31に伝える構造となっている。
【0035】
鉄心33は、互いに絶縁した薄板状の部材を軸方向に積層することによって形成されている。また、鉄心33と非磁性体構造部突起34は、嵌め合う構造となっており、磁石32で発生した周方向力を非磁性体構造部31に伝える構造となっている。
【0036】
このように構成された出力側磁気歯車3において、隣り合う磁石32の磁力線は、同極である相手側の磁石32および非磁性体構造部31側には向かず、その磁力線のほとんどが径方向内側に作用する。したがって、出力側磁気歯車3においては、その内周面(径方向内側の面)が磁力発生面といえる。
【0037】
磁気経路部材4は、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の対向する磁力発生面間に同軸状に形成された樹脂製(例えば、非金属材料であるFRP)の磁気経路部材ホルダー41により保持されることにより、周方向に複数並べて配置されている。
【0038】
磁気経路部材ホルダー41には、軸方向に延在する穴が周方向に等間隔に複数設けられており、この穴に、互いに絶縁した薄板状の電磁鋼製部材を軸方向に積層することにより、磁気経路部材4が軸方向に延在するよう形成されている。磁気経路ホルダー41は、入力回転軸1側の一端にボルト42で接続された保持部43を介して磁気歯車装置100の基部等に固設されており、これにより、磁気経路部材41が固設されている。
【0039】
以上のように構成した本実施の形態の磁気歯車装置100において、入力側磁気歯車2、磁気経路部材ホルダー41を含む磁気経路部材4、及び、出力側磁気歯車3は、互いに径方向に十分な間隙が設けられて配置されており、回転駆動によって接触しないように構成されている。また、出力回転軸5側の端部において、入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3、及び、出力側磁気歯車3と磁気経路部材ホルダー41は、ボールベアリング2a,3aを介して互いに周方向に摺動可能に保持されており、各部材間の中心軸のずれが抑制されている。
【0040】
磁気歯車装置100の入力回転軸1(入力側磁気歯車2)の回転数と出力回転軸5(出力側磁気歯車3)の回転数の関係は、入力側磁気歯車2の磁力発生面における磁極の極対数と出力側磁気歯車3の磁力発生面における極対数の比により決まる。言い換えると、入力回転軸1の回転数と出力回転軸5の回転数の関係は、入力側磁気歯車2の磁石24の極対数と出力側磁気歯車3の磁石32の極対数の比で決まるということである。
【0041】
つまり、入力回転軸1の回転数(入力回転数)をNin、入力側磁気歯車2に設けられた磁石24の極対数をXin、出力回転軸5の回転数(出力回転数)をNout、出力側磁気歯車3に設けられた磁石32の極対数をXoutとすると、入力回転数Ninと出力回転数Noutの関係は以下の式で表される。なお、極性対とは、隣り合って配置されたN極とS極の組のことであり、極性対数(極対数)とは、N極とS極の組数のことである。
【0042】
Nin:Nout=Xout:Xin ・・・(1)
例えば、本実施の形態に示したように、磁石24の極対数を7(図1参照)、磁石32の極対数を17(図1参照)とすると、入力回転数Ninと出力回転軸Noutの比は、17:7となる。
【0043】
入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の間の伝達可能トルクは、磁石24,32の体積が増えるに従って増加する。その際、鉄心25,33、磁気経路部材4は、磁気飽和を起こさない寸法である必要がある。
【0044】
磁気経路部材4の員数を入力側磁気歯車2の磁力発生面の極性対数と出力側磁気歯車3の磁力発生面の極性対数の和となるように構成した場合に、入力回転軸1から出力回転軸5への伝達可能トルクは最大となる。この知見は、フーリエ解析等を用いたシミュレーションにより得られる。例えば、本実施の形態のように、入力側磁気歯車2の磁力発生面の極性対数を7、出力側磁気歯車3の磁力発生面の極性対数を17とした場合において、磁気経路部材4の員数を24とすると入力側磁気歯車2と出力側磁気歯車3の間の伝達可能トルクは最大となる。
【0045】
以上のように構成した本実施の形態の動作を説明する。
【0046】
圧縮機90及びタービン92を起動し、入力回転軸1を回転駆動すると磁気歯車装置100の入力側磁気歯車2が回転駆動される。入力側磁気歯車2の磁力発生面と出力側磁気歯車3の磁力発生面は、磁気経路部材4を介して磁気的に噛み合っている。具体的には、入力側磁気歯車2が磁気経路部材4に相対して回転すると、各磁気経路部材4の入力側磁気歯車2および出力側磁気歯車3との対向面がN極又はS極に交互に磁化される。このように、磁化された磁気経路部材4と出力側磁気歯車3の磁力発生面の間にはたらく磁気的吸引力または反発力によって出力側磁気歯車3は周方向に回転駆動される。すなわち、磁気歯車装置100は、磁気経路部材4を遊星歯車のように機能させて入力回転軸1の回転動力を出力回転軸5に伝達する。
【0047】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0048】
従来技術のような構造の磁気歯車装置において、磁石やヨークは相対的に変化する磁界中にさらされている。特に、磁気歯車装置の回転が高速である場合は磁界の相対変化が激しくなり、電磁誘導効果によって磁石やヨークに大きな渦電流が発生してエネルギーの損失(渦電流損)が生じ、効率が著しく低下してしまうという問題点があった。
【0049】
これに対し、本実施の形態においては、入力側磁気歯車2の複数の磁石24の軸心側と出力側磁気歯車3の複数の磁石32の径方向外側に非磁性体構造部22,31を設け、各磁気歯車2,3からの磁力線の径方向における磁気経路部材4と反対側への作用を抑制するよう構成し、さらに磁石24及び32の同一磁極を周方向に対向するように配置したことにより、磁石1個に対しSPM型(表面磁石型)の2倍の表面積が有効となり、非磁性体構造部22,31によりトルク伝達に有効な磁束が多くなるため、磁石量の低減が図れる。また、磁石24,32、鉄心25,33、磁気経路部材4を軸方向に積層構造とすることにより、トルク伝達の際に生じる渦電流損失を抑制することができ、トルク伝達効率を向上することができる。
【0050】
また、磁石24を径方向外側にいくに従って狭くなるように形成し、鉄心25が磁石24に径方向外側および周方向両側から当接するよう形成した。さらに、鉄心25が、嵌合突起部23と嵌合凹部26の嵌合により非磁性体構造部22に対して周方向及び径方向に強固に固定されるよう構成したので、磁石24は径方向へ働く力に対して鉄心25により径方向外側の当接部で保持されるとともに、周方向両側の当接部によっても保持される。すなわち、磁石24は、入力側磁気歯車2の回転により生じる遠心力に対してより強固に安定して保持されるので、従来の磁気歯車装置と比較して、入力側磁気歯車2の回転数がより高い場合にも対応することができる。
【0051】
また、磁気歯車2,3において、磁石24,32を鉄心25,33で覆う構造、すなわち、磁石24、32を磁気歯車2,3を埋め込む構造としたので、磁石25,33の表面における磁束変化を小さくすることができ、渦電流損を低減することができる。
【0052】
なお、入力側磁気歯車2の磁石24から発生する磁力線は嵌合突起部23付近を通りつつ鉄心25を通過し、磁気経路部材4を経て、出力側磁気歯車3に至るが、磁気経路部材4は小さく磁力線通過断面積も小さいため、磁気歯車装置100における伝達トルクの減少を避けつつ強度上必要な嵌合突起部23の寸法形状を確保することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 入力回転軸(第1回転軸)
2 入力側磁気歯車(第1磁気歯車)
3 出力側磁気歯車(第2磁気歯車)
4 磁気経路部材
5 出力回転軸(第2回転軸)
21 軸中心部
22 非磁性体構造部
23 嵌合突起部
24,32 磁石
25,33 鉄心
31 非磁性体構造部
34 非磁性体構造部突起
41 磁気経路部材ホルダー
42 ボルト
43 保持部
90 圧縮機
91 燃焼器
92 タービン
93 中間軸
94 発電機
95 軸受
100 磁気歯車装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸の軸線周りに設けた鉄心の径方向外側に向けて設けた磁力発生面に複数の磁石を周方向に並べて配置した第1磁気歯車と、
前記第1磁気歯車を同軸状に囲んで設けられ、前記第1磁気歯車の磁力発生面に対向する鉄心の磁力発生面に複数の磁石を周方向に並べて配置した第2磁気歯車と、
前記第1磁気歯車と前記第2磁気歯車の対向する磁力発生面間に、前記第1磁気歯車と第2磁気歯車の磁極間に介在するように周方向に並べて固設された電磁鋼製の磁気経路部材と、
前記第1磁気歯車の複数の磁石の軸心側に同軸状に設けられた第1非磁性体構造部と、
前記第2磁気歯車の複数の磁石の径方向外側に同軸状に設けられた第2非磁性体構造部と
を備えたことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記第1磁気歯車および前記第2磁気歯車の複数の磁石は、それぞれ、周方向に同極を対向するよう配置したことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記第1非磁性体構造部の外周であって周方向に並べて配置された前記複数の磁石の間の位置に、径方向外側に向かって突出して設けられた嵌合突起部と、
前記第1非磁性体構造部の外周に前記複数の磁石を径方向外側から覆うように配置されて前記第1磁気歯車を形成し、前記嵌合突起部と嵌合して第1非磁性体構造部に対する周方向及び径方向の動きを抑制する嵌合凹部を有する鉄心と
を備えたことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項4】
請求項3記載の磁気歯車装置において、
前記第1磁気歯車に設けられた複数の磁石の周方向の幅は、径方向外側に行くに従って狭くなるよう形成されたことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記磁気経路部材は、互いに絶縁して軸方向に積層した電磁鋼板により形成したことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記磁石は、互いに絶縁して軸方向に積層した磁石により形成したことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項7】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記鉄心は、互いに絶縁して軸方向に積層した電磁鋼板により形成したことを特徴とする磁気歯車装置。
【請求項8】
請求項1記載の磁気歯車装置において、
前記磁気経路部材は、非金属材料からなり軸方向に延在する複数の穴が形成された磁気経路部材ホルダーにより保持され、該磁気経路部材ホルダーの穴に軸方向に積層した電磁鋼板を設けたことを特徴とする磁気歯車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170264(P2012−170264A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30108(P2011−30108)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】