磁気相殺型変圧器
【課題】残留磁束を低減することができる磁気相殺型変圧器を提供する。
【解決手段】磁気相殺型変圧器1は、通電時に磁束を生じる複数の巻線Mが巻かれているものであって、前記複数の巻線(1次の巻線M1、2次の巻線M2)と、前記複数の巻線が巻き回しされる磁脚部Ji及びこの磁脚部Jiを固定する基部Kiを有するコアCoと、を備え、磁束の磁束方向がいずれの組み合せをとっても互いに打ち消し合うように、前記巻線Mが、前記磁脚部Jiに交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする。
【解決手段】磁気相殺型変圧器1は、通電時に磁束を生じる複数の巻線Mが巻かれているものであって、前記複数の巻線(1次の巻線M1、2次の巻線M2)と、前記複数の巻線が巻き回しされる磁脚部Ji及びこの磁脚部Jiを固定する基部Kiを有するコアCoと、を備え、磁束の磁束方向がいずれの組み合せをとっても互いに打ち消し合うように、前記巻線Mが、前記磁脚部Jiに交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線に生じる磁束を相殺して変圧する磁気相殺型変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通電時に巻線に生じる磁束を相殺する磁気相殺型変圧器(例えば、特許文献1参照)では、1次巻線と2次巻線とが1つのコアにおいて、ほぼ一対一に磁気相殺するように、逆向きに巻かれている。つまり、磁気相殺型変圧器では、1次巻線によって生じる閉磁路を形成する磁束と、2次巻線によって閉磁路を形成する磁束とが互いに打ち消し合うように構成されている。
【0003】
また、従来の磁気相殺型変圧器では、1次巻線と2次巻線とがコアの磁脚部において上下に積み重なるように巻かれている。さらに、コアは、通常、組み立てを容易にするために、少なくとも2つのブロックが接合面を介して接合することによって構成されている。
【0004】
ここで、図9を参照して、従来の磁気相殺型変圧器について説明する。従来の磁気相殺型変圧器101は、1次巻線103aと2次巻線103bとがそれぞれ一塊になっている分離巻線103を採用している。また、この従来の磁気相殺型変圧器101では、コア105が上部105aと下部105bとで非対称形状に構成されている。
【0005】
また、ここで、従来の分離巻線についてもふれておく。図10に示したように、分離巻線は、1次巻線と2次巻線とをそれぞれ一塊にしたものを、上下に積み重ねるように巻き回ししたものである。そして、この分離巻線を採用した従来の磁気相殺型変圧器101は、図10の「断面形状」に示したように、1次巻線103aと2次巻線103bとが分離して巻かれている。
【0006】
さらに、ここで、従来の非対称型コア(EIコア)についてもふれておく。図11に示したように、従来の非対称型コア105は、上部の板状のブロック(アルファベットのIを横にした形)105aと、下部のブロック(アルファベットのEを横にした形)105bとが異なる形状に構成されており、コアが接合面を介して非対称形状となっている。そして、この図11の「コア断面」に示したように、コアの断面が非対称形状になっているので、1次巻線103a、2次巻線103bで通電時にそれぞれ発生する磁束が不均等に打ち消し合うことになる。
【0007】
そして、従来の磁気相殺型変圧器は、通電時に1次巻線に生じた磁束と2次巻線に生じた磁束とを相殺することで、コアにおける磁気飽和を防止することができ、変圧器本体を小型化することができる。
【特許文献1】特開2005−224058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の磁気相殺型変圧器には、1次巻線と2次巻線とが各々一塊になって、コアの磁脚部において上下に積み重なるように巻かれており、コアの磁束密度分布が不均一となってしまうという問題がある。また、コアの接合面を通って閉磁路を形成する磁束と、コアの接合面を通らずに閉磁路を形成する磁束とが発生し、磁束が均一に相殺されずに相殺されて、残留磁束が生じてしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、残留磁束を低減することができる磁気相殺型変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の磁気相殺型変圧器は、通電時に磁束を生じる複数の巻線が巻かれている磁気相殺型変圧器であって、前記複数の巻線と、前記複数の巻線が巻き回しされる磁脚部及びこの磁脚部を固定する基部を有するコアと、を備え、前記磁束の磁束方向がいずれの組み合せをとっても互いに打ち消し合うように前記磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、磁気相殺型変圧器は、通電時に巻線に生じる磁束の磁束方向のいずれの組み合わせをとっても互いに打ち消し合うように、巻線が磁脚部に交互に重なって巻き回しされているので、磁束を均一に相殺することができる。
【0012】
請求項2に記載の磁気相殺型変圧器は、請求項1に記載の磁気相殺型変圧器において、前記コアが2分割のブロックからなり、当該コアの2分割となる接合面を境に対称形状となる対称型コアであることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、磁気相殺型変圧器は、接合面を境に対称形状となる対称型コアを用いたことで、コアの接合面を通って閉磁路を形成する磁束と、コアの接合面を通らずに閉磁路を形成する磁束とのバランスが取れ、磁束を均一に相殺することができる。
【0014】
請求項3に記載の磁気相殺型変圧器は、請求項1又は2に記載の磁気相殺型変圧器において、前記コアが、一つの磁脚部を備え、前記複数の巻線は、第1の巻線と第2の巻線とからなり、前記第1の巻線及び前記第2の巻線が、磁束の方向が互いに打ち消しあうように、前記一つの磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、磁気相殺型変圧器は、一つの磁脚部において、第1の巻線と第2の巻線とに通電時に生じる磁束が互いに打ち消しあって、磁束を均一に相殺することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、巻線によって生じる磁束を均一に相殺することができ、残留磁束を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
(磁気相殺型変圧器の構成)
図1は、磁気相殺型変圧器の概略図である。この図1に示したように、磁気相殺型変圧器1は、通電時に磁束を生じる第1の巻線M1と第2の巻線M2とが、2つのブロック(Co1、Co2)からなるコアCoに巻かれて構成されている。なお、磁気相殺型とは、並列に巻き回された巻線にて生じる磁束の磁束方向がいずれの組合せをとっても互いに逆向きになっており、磁束を相殺する(打ち消し合う)型式を指している。
【0018】
第1の巻線M1と第2の巻線M2は、1周分ごと上下方向に交互に重なるように構成されており、通電時に生じる磁束方向が互いに逆向きになるように巻かれている。第1の巻線M1と第2の巻線M2は、通電時に電流の進行方向に対して、右回転に磁束を生じるものである。つまり、磁気相殺型変圧器1では、第1の巻線M1と第2の巻線M2とに通電する電流の方向(通電方向、図1の矢印)が逆向きになるようにしている。
【0019】
また、これら第1の巻線M1と第2の巻線M2との巻き半径は、コアCoの磁脚部Jiの半径とほぼ同じになるように構成されている(すなわち、巻線とコアCoの磁脚部Jiとの間の空間が小さくなるように構成されている)。そして、通電時に、第1の巻線M1と第2の巻線M2に生じる磁束は、均一にコアCoの接合面を通過する。これによって、第1の巻線M1と第2の巻線M2に生じる磁束は、磁束方向が逆向きで、同様の閉磁路を形成することになり、均一に磁気を相殺することができる。
【0020】
第1の巻線M1と第2の巻線M2とは、巻き数nもほぼ同じに構成され、ほぼ同じ幅w、厚さtとを備え、ほぼ同じ巻線の上下間隔sとなるように、コアCoの磁脚部に巻き回しされている。そして、これら第1の巻線M1と第2の巻線M2との材質には、導電率の高い金属(例えば、銅、銀、アルミニウム等)を採用している。
【0021】
そして、巻線の上下方向の間隔sが、巻線の厚さtよりも若干大きくなるように構成されており、この第1の巻線M1と第2の巻線M2とは、重なり合うように巻かれている。つまり、巻線の上下方向の間隔sが、巻線の厚さtより若干大きくなるように構成されている。そして、第1の巻線M1の1周分の上下の巻線の間に、第2の巻線M2の1周分の巻線が挿入されるように形成されている。逆に、第2の巻線M2の1周分の上下の巻線の間に第1の巻線M1の1周分の巻線が挿入されているということもできる。この実施形態では、第1の巻線M1と第2の巻線M2とは、いわゆるバイファイラ巻線Mによって構成されている(詳細は後記する)。
【0022】
なお、図1において、第1の巻線M1を拡大して示したように、第1の巻線M1の上下間隔(ハッチング部分)sに第2の巻線M2が介挿されることになる。このように、磁気相殺型変圧器1では、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが交互に重なるように構成されている。
【0023】
すなわち、この図1における第1の巻線M1を拡大した箇所において、第1の巻線M1は、当該第1の巻線M1と第2の巻線M2とが螺旋状に巻き回しされている上側(一方側、螺旋の上部)に該当し、第2の巻線M2が下側(他方側、螺旋の下部)に該当している。
【0024】
コアCoは、2つのブロック(Co1、Co2)が接合することで、ほぼ直方体の形状に形成されており、接合面を境に対称形状に構成されている。このコアCoは、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが巻かれる磁脚部Jiと、それ以外の部分である基部Kiとから構成されている。この実施形態では、コアCoは、対称型コア(EEコア)によって構成されている(詳細は後記する)。
【0025】
そして、コアCoの材質は、鉄等の金属(例えば、フェライト、珪素鋼、軟磁性材料等)で構成されている。また、コアCoの接合面は、2つのブロック(Co1、Co2)と同じ金属の金属粉を焼結することで、2つのブロック(Co1、Co2)を一体化するために形成された面である。なお、コアCoは珪素鋼板等を積層して形成することもできる。
【0026】
磁脚部Jiは、コアCoにおいて、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが巻き回されている箇所である。この実施形態では、2つブロック(Co1、Co2)のほぼ中央に円柱状に形成された部分である。
【0027】
基部Kiは、コアCoにおいて、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが巻き回しされていない箇所である。
【0028】
この磁気相殺型変圧器1は、第1の巻線M1と第2の巻線M2とを重ねるようにコアCoの磁脚部Jiに巻き回しすることで、通電時に、これら第1の巻線M1と第2の巻線M2によって生じる磁束を均一に相殺することができ、残留磁束を低減することができる。
【0029】
つまり、磁気相殺型変圧器1では、第1の巻線M1の上下方向の巻線の間に第2の巻線M2が挿入されており、逆に、第2の巻線M2の上下方向の巻線の間に第1の巻線M1が挿入されており、通電方向が逆向きであるので、隣接する巻線同士で通電時に生じる磁束を打ち消し合う。これによって、従来のように第1の巻線と第2の巻線とを一塊にして上下方向に積み重ねるよりも、隣接する巻線同士で確実に磁束を相殺することができ、残留磁束の低減が図れる。
【0030】
(磁気相殺型変圧器を組み込んだ回路の例)
次に、図2を参照して、磁気相殺型変圧器1を電力変換器に組み込んだ場合について説明する。この図2に示した電力変換器2は、磁気相殺型変圧器1(カップルドインダクタ)を用いて、一方の端子に印加された電圧(入力電圧)を昇圧又は降圧して他方の端子に出力する磁気相殺型変圧器DC/DCコンバータであり、インダクタL1と、2個のキャパシタC1、C2と、4個のスイッチ素子SW1、SW2、SW3、SW4と、を備えている。
【0031】
この電力変換器2では、スイッチ素子SW1、SW2、SW3、SW4をオンオフ制御することで、インダクタL1の放出電流をキャパシタC1又はC2に充電させた後、放電させることで、所望の電圧に、印加された電圧(入力電圧)を昇圧又は降圧している。そして、その場合に、磁気相殺型変圧器1において、直流残留磁束を低減しているので、電力変換器2では、大出力、高い昇圧率で昇圧することが可能となり、動作領域を拡大することができる。
【0032】
例えば、この電力変換器2では、スイッチ素子SW2、SW4をオンオフ制御して、インダクタL1の放出電流を、キャパシタC2に充電させることで昇圧動作を行わせることができる。そして、この場合に、磁気相殺型変圧器1では、インダクタL1からの放出電流が通電する際に、第1の巻線M1(図1参照)と第2の巻線M2(図1参照)とにおいて発生する磁束の磁束方向が逆向きであり、互いに重なるように巻かれているので、磁束を確実に相殺することができる。
【0033】
(バイファイラ巻線について)
次に、図3を参照して、バイファイラ巻線について説明する。
図3に示すように、バイファイラ巻線は、1次巻線と2次巻線とを互いの巻線が上下に重なるように巻き回したものである。そして、磁気相殺型変圧器1は、このように巻き回したバイファイラ巻線をコアCoに組み込むことで構成されており、図3の「断面形状」に示したように、1次巻線と2次巻線とが交互に巻かれている。
【0034】
そして、これらバイファイラ巻線を採用した場合と分離巻線を採用した場合とについて、昇圧率を実測した結果を、図4に示す。
この図4に示すように、入力電圧を100V〜300Vとした場合、分離巻線とバイファイラ巻線とでは、昇圧率に差が生じ、特に、入力電圧が300V付近の場合、分離巻線では1.5倍程度の昇圧率に留まってしまうが、バイファイラ巻線では2倍程度の昇圧率を維持することができる。
【0035】
(対称型コアについて)
次に、図5を参照して、対称型コアについて説明する。
図5に示したように、磁気相殺型変圧器1では、コアCoに対称型コア(EEコア)を採用している。つまり、ブロックCo1とブロックCo2とが同じ形状(両方ともアルファベットのEを横にした形)に構成されており、コアCoが接合面を介して対称形状となっている。そして、この図5の「コア断面」に示したように、コアの断面が接合面を中心軸として対称形状になっているので、1次巻線M1、2次巻線M2で通電時にそれぞれ発生する磁束が均等に打ち消し合うことになる。
【0036】
(残留磁束の発生メカニズムについて)
次に、図6〜図8を参照して、磁気相殺型変圧器における残留磁束(直流残留磁束)の発生メカニズムについて説明する。なお、ここでは、残留磁束の発生メカニズムについて、非対称型コア(EIコア)にバイファイラ巻線を採用した場合、対称型コア(EEコア
)にバイファイラ巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器1)、非対称型コアに分離巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器101)、非対称型コアにバイファイラ巻線を採用した場合の4つの場合について説明する。
【0037】
図6(a)に示したように、非対称型コア(EIコア)にバイファイラ巻線を採用した場合、1次巻線による磁束である1次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1と、ギャップを通る磁束G2とが生じる。これに対し、2次巻線による磁束である2次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が不均一になる。この結果、残留磁束はバイファイラ巻線によって低減できるがコアが非対称であるため若干残る。
【0038】
図6(b)に示したように、対称型コア(EEコア)にバイファイラ巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器1)、1次巻線による磁束である1次磁束と2次巻線による磁束である2次磁束とは、ギャャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が均一になる。この結果、残留磁束は低減でき非常に少なくなる。
【0039】
図7(a)に示したように、非対称型コア(EIコア)に分離巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器101)、1次巻線による磁束である1次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1と、ギャップを通る磁束G2とが生じる。これに対し、2次巻線による磁束である2次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が不均一になる。また、分離巻線が採用されているため、1次磁束と2次磁束とにおいて相互に打ち消しあう磁束が少ない。この結果、残留磁束は非常に多く残る。
【0040】
図7(b)に示したように、対称型コア(EEコア)に分離巻線を採用した場合、1次巻線による磁束である1次磁束と2次巻線による磁束である2次磁束とは、ギャャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が均一になる。しかし、分離巻線が採用されているため、1次磁束と2次磁束とにおいて相互に打ち消し合う磁束が少ない。この結果、残留磁束は多く残る。
【0041】
図8を参照しながら、図6、図7で示した直流残留磁束の変化についてまとめて説明する。
図8に示したように、対称型コアとバイファイラ巻線とを採用した磁気相殺型変圧器1の残留磁束が非常に少なくなる。そして、非対称型コアとバイファイラ巻線とを採用した場合に、その次に残留磁束が少なくなる。また、対称型コアと分離巻線とを採用した場合には、残留磁束は多く残る。さらに、非対称型コアと分離巻線とを採用した場合、残留磁束は非常に多く残る。なお、解析した結果、分離巻線を採用した場合に比べ、バイファイラ巻線を採用した場合には、残留磁束を1/10程度に低減することができるがが、非対称型コアを採用した場合に比べ、対称型コアを採用した場合、さらに残留磁束を数%程度低減することができる。
【0042】
なお、この図8において、コアに施したハッチングは、残留磁束を示している。そして、この残留磁束の大きさは、対称型コア+バイファイラ巻線の残留磁束<非対称型コア+バイファイラ巻線の残留磁束<対称型コア+分離巻線の残留磁束<非対称型コア+分離巻線の残留磁束となっている。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、バイファイラ巻線Mが巻き回しされる磁脚部Jiが1つの場合について説明したが、この磁脚部Jiが複数あってもよい。ただし、この場合、コアCoにおいて、磁脚部Ji間の距離が等しくなるように配置する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気相殺型変圧器の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る磁気相殺型変圧器を組み込んだ回路の例を示した図である。
【図3】バイファイラ巻線を示した図である。
【図4】バイファイラ巻線を採用した場合の昇圧率と分離巻線を採用した場合の昇圧率とを示した図である。
【図5】対称型コアを示した図である。
【図6】バイファイラ巻線を採用した場合の残留磁束について示した図である。
【図7】分離巻線を採用した場合の残留磁束について示した図である。
【図8】残留磁束の変化を示した図である。
【図9】従来の磁気相殺型変圧器の概略図である。
【図10】従来の分離巻線を示した図である。
【図11】従来の非対称型コアを示した図である。
【符号の説明】
【0045】
1 磁気相殺型変圧器
M 巻線(バイファイラ巻線)
M1 1次の巻線
M2 2次巻線
Co コア(対称型コア)
Co1、Co2 ブロック
Ji 磁脚部
Ki 基部
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線に生じる磁束を相殺して変圧する磁気相殺型変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通電時に巻線に生じる磁束を相殺する磁気相殺型変圧器(例えば、特許文献1参照)では、1次巻線と2次巻線とが1つのコアにおいて、ほぼ一対一に磁気相殺するように、逆向きに巻かれている。つまり、磁気相殺型変圧器では、1次巻線によって生じる閉磁路を形成する磁束と、2次巻線によって閉磁路を形成する磁束とが互いに打ち消し合うように構成されている。
【0003】
また、従来の磁気相殺型変圧器では、1次巻線と2次巻線とがコアの磁脚部において上下に積み重なるように巻かれている。さらに、コアは、通常、組み立てを容易にするために、少なくとも2つのブロックが接合面を介して接合することによって構成されている。
【0004】
ここで、図9を参照して、従来の磁気相殺型変圧器について説明する。従来の磁気相殺型変圧器101は、1次巻線103aと2次巻線103bとがそれぞれ一塊になっている分離巻線103を採用している。また、この従来の磁気相殺型変圧器101では、コア105が上部105aと下部105bとで非対称形状に構成されている。
【0005】
また、ここで、従来の分離巻線についてもふれておく。図10に示したように、分離巻線は、1次巻線と2次巻線とをそれぞれ一塊にしたものを、上下に積み重ねるように巻き回ししたものである。そして、この分離巻線を採用した従来の磁気相殺型変圧器101は、図10の「断面形状」に示したように、1次巻線103aと2次巻線103bとが分離して巻かれている。
【0006】
さらに、ここで、従来の非対称型コア(EIコア)についてもふれておく。図11に示したように、従来の非対称型コア105は、上部の板状のブロック(アルファベットのIを横にした形)105aと、下部のブロック(アルファベットのEを横にした形)105bとが異なる形状に構成されており、コアが接合面を介して非対称形状となっている。そして、この図11の「コア断面」に示したように、コアの断面が非対称形状になっているので、1次巻線103a、2次巻線103bで通電時にそれぞれ発生する磁束が不均等に打ち消し合うことになる。
【0007】
そして、従来の磁気相殺型変圧器は、通電時に1次巻線に生じた磁束と2次巻線に生じた磁束とを相殺することで、コアにおける磁気飽和を防止することができ、変圧器本体を小型化することができる。
【特許文献1】特開2005−224058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の磁気相殺型変圧器には、1次巻線と2次巻線とが各々一塊になって、コアの磁脚部において上下に積み重なるように巻かれており、コアの磁束密度分布が不均一となってしまうという問題がある。また、コアの接合面を通って閉磁路を形成する磁束と、コアの接合面を通らずに閉磁路を形成する磁束とが発生し、磁束が均一に相殺されずに相殺されて、残留磁束が生じてしまうという問題がある。
【0009】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、残留磁束を低減することができる磁気相殺型変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の磁気相殺型変圧器は、通電時に磁束を生じる複数の巻線が巻かれている磁気相殺型変圧器であって、前記複数の巻線と、前記複数の巻線が巻き回しされる磁脚部及びこの磁脚部を固定する基部を有するコアと、を備え、前記磁束の磁束方向がいずれの組み合せをとっても互いに打ち消し合うように前記磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、磁気相殺型変圧器は、通電時に巻線に生じる磁束の磁束方向のいずれの組み合わせをとっても互いに打ち消し合うように、巻線が磁脚部に交互に重なって巻き回しされているので、磁束を均一に相殺することができる。
【0012】
請求項2に記載の磁気相殺型変圧器は、請求項1に記載の磁気相殺型変圧器において、前記コアが2分割のブロックからなり、当該コアの2分割となる接合面を境に対称形状となる対称型コアであることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、磁気相殺型変圧器は、接合面を境に対称形状となる対称型コアを用いたことで、コアの接合面を通って閉磁路を形成する磁束と、コアの接合面を通らずに閉磁路を形成する磁束とのバランスが取れ、磁束を均一に相殺することができる。
【0014】
請求項3に記載の磁気相殺型変圧器は、請求項1又は2に記載の磁気相殺型変圧器において、前記コアが、一つの磁脚部を備え、前記複数の巻線は、第1の巻線と第2の巻線とからなり、前記第1の巻線及び前記第2の巻線が、磁束の方向が互いに打ち消しあうように、前記一つの磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、磁気相殺型変圧器は、一つの磁脚部において、第1の巻線と第2の巻線とに通電時に生じる磁束が互いに打ち消しあって、磁束を均一に相殺することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、巻線によって生じる磁束を均一に相殺することができ、残留磁束を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
(磁気相殺型変圧器の構成)
図1は、磁気相殺型変圧器の概略図である。この図1に示したように、磁気相殺型変圧器1は、通電時に磁束を生じる第1の巻線M1と第2の巻線M2とが、2つのブロック(Co1、Co2)からなるコアCoに巻かれて構成されている。なお、磁気相殺型とは、並列に巻き回された巻線にて生じる磁束の磁束方向がいずれの組合せをとっても互いに逆向きになっており、磁束を相殺する(打ち消し合う)型式を指している。
【0018】
第1の巻線M1と第2の巻線M2は、1周分ごと上下方向に交互に重なるように構成されており、通電時に生じる磁束方向が互いに逆向きになるように巻かれている。第1の巻線M1と第2の巻線M2は、通電時に電流の進行方向に対して、右回転に磁束を生じるものである。つまり、磁気相殺型変圧器1では、第1の巻線M1と第2の巻線M2とに通電する電流の方向(通電方向、図1の矢印)が逆向きになるようにしている。
【0019】
また、これら第1の巻線M1と第2の巻線M2との巻き半径は、コアCoの磁脚部Jiの半径とほぼ同じになるように構成されている(すなわち、巻線とコアCoの磁脚部Jiとの間の空間が小さくなるように構成されている)。そして、通電時に、第1の巻線M1と第2の巻線M2に生じる磁束は、均一にコアCoの接合面を通過する。これによって、第1の巻線M1と第2の巻線M2に生じる磁束は、磁束方向が逆向きで、同様の閉磁路を形成することになり、均一に磁気を相殺することができる。
【0020】
第1の巻線M1と第2の巻線M2とは、巻き数nもほぼ同じに構成され、ほぼ同じ幅w、厚さtとを備え、ほぼ同じ巻線の上下間隔sとなるように、コアCoの磁脚部に巻き回しされている。そして、これら第1の巻線M1と第2の巻線M2との材質には、導電率の高い金属(例えば、銅、銀、アルミニウム等)を採用している。
【0021】
そして、巻線の上下方向の間隔sが、巻線の厚さtよりも若干大きくなるように構成されており、この第1の巻線M1と第2の巻線M2とは、重なり合うように巻かれている。つまり、巻線の上下方向の間隔sが、巻線の厚さtより若干大きくなるように構成されている。そして、第1の巻線M1の1周分の上下の巻線の間に、第2の巻線M2の1周分の巻線が挿入されるように形成されている。逆に、第2の巻線M2の1周分の上下の巻線の間に第1の巻線M1の1周分の巻線が挿入されているということもできる。この実施形態では、第1の巻線M1と第2の巻線M2とは、いわゆるバイファイラ巻線Mによって構成されている(詳細は後記する)。
【0022】
なお、図1において、第1の巻線M1を拡大して示したように、第1の巻線M1の上下間隔(ハッチング部分)sに第2の巻線M2が介挿されることになる。このように、磁気相殺型変圧器1では、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが交互に重なるように構成されている。
【0023】
すなわち、この図1における第1の巻線M1を拡大した箇所において、第1の巻線M1は、当該第1の巻線M1と第2の巻線M2とが螺旋状に巻き回しされている上側(一方側、螺旋の上部)に該当し、第2の巻線M2が下側(他方側、螺旋の下部)に該当している。
【0024】
コアCoは、2つのブロック(Co1、Co2)が接合することで、ほぼ直方体の形状に形成されており、接合面を境に対称形状に構成されている。このコアCoは、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが巻かれる磁脚部Jiと、それ以外の部分である基部Kiとから構成されている。この実施形態では、コアCoは、対称型コア(EEコア)によって構成されている(詳細は後記する)。
【0025】
そして、コアCoの材質は、鉄等の金属(例えば、フェライト、珪素鋼、軟磁性材料等)で構成されている。また、コアCoの接合面は、2つのブロック(Co1、Co2)と同じ金属の金属粉を焼結することで、2つのブロック(Co1、Co2)を一体化するために形成された面である。なお、コアCoは珪素鋼板等を積層して形成することもできる。
【0026】
磁脚部Jiは、コアCoにおいて、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが巻き回されている箇所である。この実施形態では、2つブロック(Co1、Co2)のほぼ中央に円柱状に形成された部分である。
【0027】
基部Kiは、コアCoにおいて、第1の巻線M1と第2の巻線M2とが巻き回しされていない箇所である。
【0028】
この磁気相殺型変圧器1は、第1の巻線M1と第2の巻線M2とを重ねるようにコアCoの磁脚部Jiに巻き回しすることで、通電時に、これら第1の巻線M1と第2の巻線M2によって生じる磁束を均一に相殺することができ、残留磁束を低減することができる。
【0029】
つまり、磁気相殺型変圧器1では、第1の巻線M1の上下方向の巻線の間に第2の巻線M2が挿入されており、逆に、第2の巻線M2の上下方向の巻線の間に第1の巻線M1が挿入されており、通電方向が逆向きであるので、隣接する巻線同士で通電時に生じる磁束を打ち消し合う。これによって、従来のように第1の巻線と第2の巻線とを一塊にして上下方向に積み重ねるよりも、隣接する巻線同士で確実に磁束を相殺することができ、残留磁束の低減が図れる。
【0030】
(磁気相殺型変圧器を組み込んだ回路の例)
次に、図2を参照して、磁気相殺型変圧器1を電力変換器に組み込んだ場合について説明する。この図2に示した電力変換器2は、磁気相殺型変圧器1(カップルドインダクタ)を用いて、一方の端子に印加された電圧(入力電圧)を昇圧又は降圧して他方の端子に出力する磁気相殺型変圧器DC/DCコンバータであり、インダクタL1と、2個のキャパシタC1、C2と、4個のスイッチ素子SW1、SW2、SW3、SW4と、を備えている。
【0031】
この電力変換器2では、スイッチ素子SW1、SW2、SW3、SW4をオンオフ制御することで、インダクタL1の放出電流をキャパシタC1又はC2に充電させた後、放電させることで、所望の電圧に、印加された電圧(入力電圧)を昇圧又は降圧している。そして、その場合に、磁気相殺型変圧器1において、直流残留磁束を低減しているので、電力変換器2では、大出力、高い昇圧率で昇圧することが可能となり、動作領域を拡大することができる。
【0032】
例えば、この電力変換器2では、スイッチ素子SW2、SW4をオンオフ制御して、インダクタL1の放出電流を、キャパシタC2に充電させることで昇圧動作を行わせることができる。そして、この場合に、磁気相殺型変圧器1では、インダクタL1からの放出電流が通電する際に、第1の巻線M1(図1参照)と第2の巻線M2(図1参照)とにおいて発生する磁束の磁束方向が逆向きであり、互いに重なるように巻かれているので、磁束を確実に相殺することができる。
【0033】
(バイファイラ巻線について)
次に、図3を参照して、バイファイラ巻線について説明する。
図3に示すように、バイファイラ巻線は、1次巻線と2次巻線とを互いの巻線が上下に重なるように巻き回したものである。そして、磁気相殺型変圧器1は、このように巻き回したバイファイラ巻線をコアCoに組み込むことで構成されており、図3の「断面形状」に示したように、1次巻線と2次巻線とが交互に巻かれている。
【0034】
そして、これらバイファイラ巻線を採用した場合と分離巻線を採用した場合とについて、昇圧率を実測した結果を、図4に示す。
この図4に示すように、入力電圧を100V〜300Vとした場合、分離巻線とバイファイラ巻線とでは、昇圧率に差が生じ、特に、入力電圧が300V付近の場合、分離巻線では1.5倍程度の昇圧率に留まってしまうが、バイファイラ巻線では2倍程度の昇圧率を維持することができる。
【0035】
(対称型コアについて)
次に、図5を参照して、対称型コアについて説明する。
図5に示したように、磁気相殺型変圧器1では、コアCoに対称型コア(EEコア)を採用している。つまり、ブロックCo1とブロックCo2とが同じ形状(両方ともアルファベットのEを横にした形)に構成されており、コアCoが接合面を介して対称形状となっている。そして、この図5の「コア断面」に示したように、コアの断面が接合面を中心軸として対称形状になっているので、1次巻線M1、2次巻線M2で通電時にそれぞれ発生する磁束が均等に打ち消し合うことになる。
【0036】
(残留磁束の発生メカニズムについて)
次に、図6〜図8を参照して、磁気相殺型変圧器における残留磁束(直流残留磁束)の発生メカニズムについて説明する。なお、ここでは、残留磁束の発生メカニズムについて、非対称型コア(EIコア)にバイファイラ巻線を採用した場合、対称型コア(EEコア
)にバイファイラ巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器1)、非対称型コアに分離巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器101)、非対称型コアにバイファイラ巻線を採用した場合の4つの場合について説明する。
【0037】
図6(a)に示したように、非対称型コア(EIコア)にバイファイラ巻線を採用した場合、1次巻線による磁束である1次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1と、ギャップを通る磁束G2とが生じる。これに対し、2次巻線による磁束である2次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が不均一になる。この結果、残留磁束はバイファイラ巻線によって低減できるがコアが非対称であるため若干残る。
【0038】
図6(b)に示したように、対称型コア(EEコア)にバイファイラ巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器1)、1次巻線による磁束である1次磁束と2次巻線による磁束である2次磁束とは、ギャャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が均一になる。この結果、残留磁束は低減でき非常に少なくなる。
【0039】
図7(a)に示したように、非対称型コア(EIコア)に分離巻線を採用した場合(磁気相殺型変圧器101)、1次巻線による磁束である1次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1と、ギャップを通る磁束G2とが生じる。これに対し、2次巻線による磁束である2次磁束では、ギャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が不均一になる。また、分離巻線が採用されているため、1次磁束と2次磁束とにおいて相互に打ち消しあう磁束が少ない。この結果、残留磁束は非常に多く残る。
【0040】
図7(b)に示したように、対称型コア(EEコア)に分離巻線を採用した場合、1次巻線による磁束である1次磁束と2次巻線による磁束である2次磁束とは、ギャャップ(接合面)を通らない磁束G1がほとんど生じず、ギャップを通る磁束G2が生じる。このため、1次磁束と2次磁束において、打ち消し合う磁束が均一になる。しかし、分離巻線が採用されているため、1次磁束と2次磁束とにおいて相互に打ち消し合う磁束が少ない。この結果、残留磁束は多く残る。
【0041】
図8を参照しながら、図6、図7で示した直流残留磁束の変化についてまとめて説明する。
図8に示したように、対称型コアとバイファイラ巻線とを採用した磁気相殺型変圧器1の残留磁束が非常に少なくなる。そして、非対称型コアとバイファイラ巻線とを採用した場合に、その次に残留磁束が少なくなる。また、対称型コアと分離巻線とを採用した場合には、残留磁束は多く残る。さらに、非対称型コアと分離巻線とを採用した場合、残留磁束は非常に多く残る。なお、解析した結果、分離巻線を採用した場合に比べ、バイファイラ巻線を採用した場合には、残留磁束を1/10程度に低減することができるがが、非対称型コアを採用した場合に比べ、対称型コアを採用した場合、さらに残留磁束を数%程度低減することができる。
【0042】
なお、この図8において、コアに施したハッチングは、残留磁束を示している。そして、この残留磁束の大きさは、対称型コア+バイファイラ巻線の残留磁束<非対称型コア+バイファイラ巻線の残留磁束<対称型コア+分離巻線の残留磁束<非対称型コア+分離巻線の残留磁束となっている。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、バイファイラ巻線Mが巻き回しされる磁脚部Jiが1つの場合について説明したが、この磁脚部Jiが複数あってもよい。ただし、この場合、コアCoにおいて、磁脚部Ji間の距離が等しくなるように配置する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気相殺型変圧器の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る磁気相殺型変圧器を組み込んだ回路の例を示した図である。
【図3】バイファイラ巻線を示した図である。
【図4】バイファイラ巻線を採用した場合の昇圧率と分離巻線を採用した場合の昇圧率とを示した図である。
【図5】対称型コアを示した図である。
【図6】バイファイラ巻線を採用した場合の残留磁束について示した図である。
【図7】分離巻線を採用した場合の残留磁束について示した図である。
【図8】残留磁束の変化を示した図である。
【図9】従来の磁気相殺型変圧器の概略図である。
【図10】従来の分離巻線を示した図である。
【図11】従来の非対称型コアを示した図である。
【符号の説明】
【0045】
1 磁気相殺型変圧器
M 巻線(バイファイラ巻線)
M1 1次の巻線
M2 2次巻線
Co コア(対称型コア)
Co1、Co2 ブロック
Ji 磁脚部
Ki 基部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に磁束を生じる複数の巻線が巻かれている磁気相殺型変圧器であって、
前記複数の巻線と、
前記複数の巻線が巻き回しされる磁脚部及びこの磁脚部を固定する基部を有するコアと、を備え、
前記磁束の磁束方向がいずれの組み合せをとっても互いに打ち消し合うように、前記巻線が、前記磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする磁気相殺型変圧器。
【請求項2】
前記コアが2分割のブロックからなり、当該コアの2分割となる接合面を境に対称形状となる対称型コアであることを特徴とする請求項1に記載の磁気相殺型変圧器。
【請求項3】
前記コアは、一つの磁脚部を備え、
前記複数の巻線は、第1の巻線と第2の巻線とからなり、
前記第1の巻線及び前記第2の巻線が、磁束の方向が互いに打ち消しあうように、前記一つの磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気相殺型変圧器。
【請求項1】
通電時に磁束を生じる複数の巻線が巻かれている磁気相殺型変圧器であって、
前記複数の巻線と、
前記複数の巻線が巻き回しされる磁脚部及びこの磁脚部を固定する基部を有するコアと、を備え、
前記磁束の磁束方向がいずれの組み合せをとっても互いに打ち消し合うように、前記巻線が、前記磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする磁気相殺型変圧器。
【請求項2】
前記コアが2分割のブロックからなり、当該コアの2分割となる接合面を境に対称形状となる対称型コアであることを特徴とする請求項1に記載の磁気相殺型変圧器。
【請求項3】
前記コアは、一つの磁脚部を備え、
前記複数の巻線は、第1の巻線と第2の巻線とからなり、
前記第1の巻線及び前記第2の巻線が、磁束の方向が互いに打ち消しあうように、前記一つの磁脚部に交互に重なって巻き回しされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気相殺型変圧器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−266978(P2009−266978A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113326(P2008−113326)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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