説明

磁気記録媒体およびヘッドスライダならびにそれらの製造方法

【課題】ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダを得られる技術を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体やヘッドスライダにおける潤滑層が、特定の構造を有する含フッ素ポリマー含んでなる組成物からなり、Fowkes式によって求めた当該潤滑層の表面自由エネルギーが12〜17mN/mの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の特性を有する磁気記録媒体およびヘッドスライダに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録装置においては、記録変換素子(本発明では単にヘッドともいう)を備えたヘッドスライダが、磁気記録媒体であるハードディスク上を浮上しながら情報の読み書きを行う。
【0003】
ヘッドと、ハードディスク上で磁気情報を記録(書き込み)または再生(読み取り)するための磁性層との距離は磁気スペーシングと呼ばれ、磁気スペーシングが狭いほど記録密度が向上する。
【0004】
ヘッドの媒体表面からの距離をヘッド浮上量と呼び、ヘッド浮上量が小さいほど、磁気スペーシングも小さくなる。しかしながら、ハードディスクドライブは、温度や湿度、気圧の違いにより、構成部品の熱膨張や、空気の密度が変化し、ヘッド浮上量は変化する。一般的に、温度が低いと、ヘッド浮上量は増加し、その増加に伴い磁気スペーシングが増加し、磁気記録は低下してしまう。このため現在では、磁気ヘッドの周囲部にヒーターを設置し、ヘッドの浮上量が大きくなった場合、ヒータコイルに電流を流し、ヘッドを熱膨張させ、ヘッド浮上量を一定に保つDFH(dynamic flying height)方式と呼ばれる技術が採用されている。
【0005】
なお、近年の記録密度と転送速度の向上に伴い、低浮上化、高速回転化が進み、現在、ヘッド浮上高さは10nm程度、回転数は15000回転/分(rpm)程度となっている。ハードディスクドライブにおいては、このような環境下におけるドライブの信頼性を高めるため、一般に磁気ディスク上やヘッドスライダ上に組成物がおよそ1〜2nmの厚さで塗布されている。この組成物はヘッドがディスクに接触する際に摩擦や摩耗を減らし、障害の発生を防止している。
【0006】
このため、この組成物について各種の検討がなされている(たとえば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平2006−137904号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、磁気ヘッドと磁気記録媒体とは容易に接触しやすく、接触時の衝撃で、ヘッドクラッシュといった障害が発生し易くなる。特にDFH方式によるヘッドの浮上量の制御が行われている場合には、ヘッドと磁気記録媒体が接触する機会が増える傾向にある。本発明はこのような、ヘッドと磁気記録媒体とが接触する際にヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を有する磁気記録媒体、ヘッドスライダおよびそれらの製造方法を提供することを目的としている。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、磁性層と、磁性層上にある保護層と、保護層上にある潤滑層とを含む磁気記録媒体であって、潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギーが12〜17mN/mの範囲にある、磁気記録媒体
【0009】
【化9】

【0010】
【化10】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)が提供される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、磁気記録媒体に対し、記録および/または再生を行うための記録変換素子を備え、磁気記録媒体に面する側のヘッドスライダ面に潤滑層を有するヘッドスライダであって、潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギーが12〜17mN/mの範囲にある、ヘッドスライダ
【0012】
【化11】

【0013】
【化12】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)が提供される。
【0014】
これらの発明態様により、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダが得られる。製品合格率を向上させることも可能である。ヘッドと媒体とが接触する際のヘッドの振動を従来に比べて低減できる潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダを得ることも可能である。これらの潤滑層では、膜厚を非常に小さくできる、高い浮上安定性を実現できる、幅広い温度環境での信頼性を高めることができる等の効果のいずれかを同時に実現することもできる。
【0015】
これらの発明態様においては、潤滑層の膜厚が1.5nm以下であることや、組成物についてその膜厚と表面自由エネルギーとの関係を求めたときに、組成物の膜厚がゼロのときの表面自由エネルギーをSFE、組成物の膜厚の変化によらずに組成物の表面自由エネルギーが一定値を示す場合の表面自由エネルギーをSFEとした場合に、潤滑層の表面自由エネルギーSFEが、
被覆率={(SFE−SFE)/SFE−SFE)}×100
で定められる被覆率が90%以上である関係を満足することが好ましい。
【0016】
本発明の更に他の一態様によれば、磁性層と、磁性層上にある保護層と、保護層上にある潤滑層とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギーがある範囲にあるように、組成物の種類と潤滑層の作製条件と保護層の作製条件とを選択する、磁気記録媒体の製造方法
【0017】
【化13】

【0018】
【化14】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)が提供される。
【0019】
本発明の更に他の一態様によれば、磁気記録媒体に対し、記録および/または再生を行うための記録変換素子を備え、磁気記録媒体に面する側のヘッドスライダ面に潤滑層を有するヘッドスライダの製造方法であって、潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギーがある範囲にあるように、組成物の種類と潤滑層の作製条件と潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択する、ヘッドスライダの製造方法
【0020】
【化15】

【0021】
【化16】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)が提供される。
【0022】
これらの方法の発明態様については、表面自由エネルギーが12〜17mN/mの範囲にあるように、組成物の種類と潤滑層の作製条件と保護層の作製条件または潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択することや、潤滑層の膜厚を1.5nm以下になるように、前記組成物の種類と前記潤滑層の作製条件と前記保護層の作製条件または潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択することや、組成物についてその膜厚と表面自由エネルギーとの関係を求めたときに、組成物の膜厚がゼロのときの表面自由エネルギーをSFE、組成物の膜厚の変化によらずに組成物の表面自由エネルギーが一定値を示す場合の表面自由エネルギーをSFEとした場合に、潤滑層の表面自由エネルギーSFEが、
被覆率={(SFE−SFE)/SFE−SFE)}×100
で定められる被覆率がある値以上である関係を満足するように、組成物の種類と潤滑層の作製条件と潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択すること、特にこの被覆率が90範囲%以上である関係を満足するように、組成物の種類と潤滑層の作製条件と保護層の作製条件または潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択することが好ましい。
【0023】
本発明態様により、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダを製造する場合に高い信頼性や低い歩留まりを実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダが得られる。製品合格率を向上させることも可能である。ヘッドと媒体とが接触する際のヘッドの振動を従来に比べて低減できる潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダを得ることも可能である。これらの潤滑層では、膜厚を非常に小さくできる、高い浮上安定性を実現できる、幅広い温度環境での信頼性を高めることができる等の効果のいずれかを同時に実現することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の実施の形態を図、表、式、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、式、実施例等及び説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0026】
なお、以下、本発明を主としてハードディスク装置について説明するが、本発明に係る「ヘッドスライダ」には、ロード/アンロードタイプの機構で動作するもの、コンタクト・スタート・ストップの機構で動作するもの、完全浮上方式で情報を記録し、再生するもの、気液混合方式で情報を記録し、再生するもの、コンタクト方式で情報を記録し、再生するものなど、ハードディスク装置用のものに限らず、いかなるヘッドスライダも含まれる。DFH方式を採用したものが好ましい。
【0027】
また、本発明に係る「磁気記録媒体」は、ハードディスク装置に使用される、面内媒体、SFM(Synthetic Ferrimagnetic MediumまたはAntiferromagnetically Coupled Media)、垂直記録媒体、パターンド媒体など、どのような記録媒体であってもよい。また、本発明に係る「磁気記録装置」には、このようなヘッドスライダや磁気記録媒体を使用するすべての磁気記録装置が含まれる。
【0028】
このような装置を図1,2に例示する。図1はハードディスク装置の内部構造を示す模式的平面図であり、図2は、ヘッド(記録変換素子)と、磁気記録媒体との関係を示す模式的横断面図(磁気記録媒体磁性層に垂直な方向で切断した図)である。
【0029】
このハードディスク装置は、図1に示すように磁気記録媒体1とヘッドを備えたヘッドスライダ2、磁気記録媒体1の回転制御機構(たとえばスピンドルモータ)3、ヘッドの位置決め機構4および記録再生信号の処理回路(リードライトアンプ等)5を主要構成要素としている。
【0030】
ヘッドスライダ2は、図2に示すように、サスペンジョン6およびヘッドスライダ2を柔軟に支持するためのジンバル7により、ヘッドの位置決め機構4と連結されており、その先端にヘッド8が設けられている。ヘッドスライダ面にはヘッド保護層9とヘッド潤滑層10が設けられている。
【0031】
磁気記録媒体11は、図2の下方から基板12、Cr下地層13,磁性層14,媒体保護層15,媒体潤滑層16等がある。シード層等のその他の層が設けられる場合もあるが本図では省略してある。各層の厚さは、ハードディスクの場合、媒体潤滑層で1〜2nm程度、媒体保護層で3〜5nm程度、磁性層で20nm程度、Cr下地層で10nm程度が一般的である。
【0032】
本発明に係る磁気記録媒体やヘッドスライダに使用される潤滑層は、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギー(SFE: surface free energy)が12〜17mN/mの範囲にある。
【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

なお、式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。
【0035】
式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルは、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させて作製することができるが、その他の方法によってもよい。式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させたものとその他の方法によって作製させたものの混合物でもよい。本発明に係る組成物にはこれら以外の成分を含んでいてもよい。式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとの反応で生じる副生物や未反応物が存在していてもよい。このような意味から、式(1)において、上記p,qは、実測上、整数とならない場合が多い。
【0036】
式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマー中には、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと同一構造のポリマーが含まれる。したがって、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマー中の成分で式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルとその他の式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルとは区別できない。このような場合には、敢えて区別する必要はなく、全てを「(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル」と考えてもよい。また、この組成物の作製手順等が判明している場合には、分けて考えてもよい。
【0037】
なお、以下においては本発明に係る組成物を、主に、本発明に係るポリマーのみからなるものとして説明するが、本発明に係るポリマー以外の潤滑剤成分を含んでいてもよい。潤滑層を形成する前は溶媒として他の有機物を含んでいてもよい。
【0038】
上記組成物は、数平均分子量が500〜5000であり、かつ19FNMRで観測される式(3)で表される末端基のモル数(A)と式(4)で表される末端基のモル数(B)の比率(A:B)が10:90〜95:5の範囲にあることが好ましい。数平均分子量が500未満では、たとえば磁気ディスク上に塗布した場合、高速回転による飛散量が増大し易い。数平均分子量が5000を超えると、潤滑剤としての流動性が不充分となりやすい。また、Aの割合が大きければ基板吸着力をより高くできるが、上記範囲を超えて大きくなりすぎると、基板吸着力が高くなる一方、潤滑剤としての流動性が不充分となりやすい。Bの割合が大きければ流動性をより高くできるが、上記範囲を超えて大きくなりすぎると、基潤滑剤としての流動性が高くなる一方、基板吸着力が不充分となりやすい。
【0039】
【化19】

【0040】
【化20】

なお、上記組成物が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル単独からなるものであれば、数平均分子量は式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルの数平均分子量として求めればよいが、その他の潤滑剤を含む場合には、それらが一つのポリマーであるように扱って、数平均分子量を求める。溶媒が存在する場合には溶媒を除去した後に数平均分子量を求める。
【0041】
上記組成物は式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル{この中には式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーも含まれる}単独よりなる組成物であっても十分な効果を発揮するが、その他に、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル以外の含フッ素化合物を含有していてもよい。この場合の「式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル以外の含フッ素化合物」は、パーフルオロポリエーテル構造を主鎖に有することが好ましい。具体的には、式(2)で表されるポリマーまたは式(6)で表されるポリマー、さらには式(2)で表されるポリマーと式(6)で表されるポリマーとを混合使用し、潤滑剤としての機能の最適化を図ることも可能である。式(2)で表されるポリマーを加えれば流動性をより高くでき、式(6)で表されるポリマーを加えれば基板吸着力をより高くできる。
【0042】
【化21】

【0043】
【化22】

この場合の量比は、組成物中における、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルのモル数(C)と(2)で表されるポリマーのモル数(D)の和に対する式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルのモル数(C)の割合が10%以上(すなわち、(C/(C+D))×100≧10)であることが好ましい。10%未満では、(2)で表されるポリマーの飛散によるトラブルが生じる恐れがある。
【0044】
また、組成物中における、Cと(6)で表されるポリマーのモル数(E)の和に対するCの割合が10%以上(すなわち、(C/(C+E))×100≧10)であることが好ましい。10%未満では、組成物の流動性が不足する場合がある。CとEの和に対するCの割合が60%以上であることがより好ましい。
【0045】
また、上記組成物中における、CとDとEとの和に対するCの割合が10%以上(すなわち、(C/(C+D+E))×100≧10)であることが好ましい。10%未満では、本発明の効果が出にくくなる場合がある。
【0046】
基板吸着力と潤滑剤としての流動性とのバランスは、式(2)で表されるポリマーと式(5)で表されるグリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)とを反応させ、組成物として作製する場合に比較的容易に実現することができる。
【0047】
【化23】

この組成物を潤滑剤として使用する場合には、混合物のまま使用しても、精製して式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルの含有量を高めて使用してもよい。組成物中における、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルの割合としては、40重量%以上が好ましい。なお、この場合における「式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル」には、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーも含まれる。
【0048】
これらの組成物は、磁性層と、磁性層上にある保護層と、保護層上にある磁気記録媒体潤滑層とを含む磁気記録媒体用の潤滑剤として、磁気記録媒体潤滑層を形成するのに好ましく使用することができる。
【0049】
上記と同様、これらの組成物は、磁気記録媒体に対し、記録および/または再生を行うための記録変換素子を備えたヘッドスライダであって、磁気記録媒体に面する側のヘッドスライダ面にヘッドスライダ潤滑層を有する、ヘッドスライダ用の潤滑剤として、ヘッドスライダ潤滑層を形成するのにも好ましく使用することができる。
【0050】
なお、これらの場合における潤滑層の作製方法には特に制限はなく公知の方法を採用できる。適当な溶媒を用いて粘度を調節した液を塗布し、加熱、紫外線照射等で固化あるいは硬化させる方法が一般的である。
【0051】
これらの潤滑層については、特に、組成物の塗布後に、活性エネルギー線処理と加熱処理の少なくともいずれか一方の処理を施すと、保護層や磁気記録媒体に面する側のヘッドスライダ面との密着力(基板吸着力)が増し、好ましい。活性エネルギー線処理と加熱処理とは、その両方を採用する場合には、両者を同時に行ってもよく、いずれか一方を先に行いその後他方を行ってもよい。更に複数回の活性エネルギー線処理および/または加熱処理を組み合わせてもよい。活性エネルギー線としては紫外線を例示することができる。加熱処理における加熱温度の範囲には特に制限はないが、結合効率と熱安定性の点で80〜200℃の範囲が好ましい。
【0052】
なお、活性エネルギー線および/または熱で処理された後には、架橋構造が生じたりして、本発明に係るポリマーが変性する場合があるが、このような状態の組成物も本発明の範疇に属する。すなわち、活性エネルギー線および/または熱で処理された後の組成物中に、本発明の係るポリマーが単離された状態で存在していなくても、活性エネルギー線および/または熱で処理される前の組成物中にこれらが存在したと判断できれば、活性エネルギー線および/または熱で処理された後の組成物も本発明に係る組成物である。
【0053】
このようにして得られた組成物を使用した潤滑層は、膜厚を非常に小さくできる、高い浮上安定性を実現できる、幅広い温度環境での信頼性を高めることができる等の効果のいずれかを同時に実現することもできる。このため、このようにして得られた組成物を使用した潤滑層を含む磁気記録媒体および/またはヘッドスライダを有する磁気記録装置では、長期間に渡ってヘッドクラッシュ等のトラブルを防止または大幅に減少させることができる。
【0054】
このような潤滑層について、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギーが12〜17mN/mの範囲にあると、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダが得られることが見出された。これは、恐らく、潤滑層のSFEが表面自由エネルギーが低くなれば、ヘッドが磁気記録媒体に固着しにくくなるためであろうと考えられる。17mN/mより表面エネルギーが高い潤滑膜では、保護膜状に存在する潤滑膜は疎らに存在することを意味し、潤滑膜そのものの持つ潤滑機能が失われてしまう。下限については、表面自由エネルギーを低くするためには、潤滑膜を厚くする必要がある。ただし12mN/mの表面自由エネルギーは、ほぼ分子一層膜厚で達成しうるもので、それ以上の膜厚では、これより下に表面自由エネルギーを下げることができない。なお、厚い潤滑膜では悪影響が発生する。例えば、磁気ヘッドと磁気記録媒体の磁気的距離が大きくなり、磁気記録密度が下がる。場合によっては、潤滑剤の凝集が起こりやすく、ヘッドクラッシュが発生しやすくなる。
【0055】
潤滑層の表面自由エネルギーはFowkes式によって求める。Fowkes式は次のように表される。
【0056】
固体試料の表面自由エネルギーをγS、液体試料の表面自由エネルギーをγL、固体試料/液体試料の接触角をθSL、固体試料/液体試料の界面自由エネルギーをγSLとすれば(11)式に示すYoungの式が成立する。
【0057】
γSL・cosθSLSL ・・・(11)
また、液体が固体表面に付着することにより安定化するエネルギーである接着仕事WSLはDupreの式(12)に従う。
【0058】
γSL = WSLSL・・・(12)
以上の2式からYoung- Dupreの式(13)が導出され、接着仕事は液体の表面自由エネルギーと接触角から求められることになる。
【0059】
WSLL(1+cosθSL)・・・(13)
この接着仕事に対して表面自由エネルギーの各成分の幾何平均則を適用すると、(14)式が成り立つ。
【0060】
WSL= 2√(γSd・γLd)+2√(γSh・γLh)・・・(14)
ここでd、hは分散成分、水素結合成分を意味する。
【0061】
2種類の液体(i, j)を用いれば接着仕事について次の関係が成り立つ。
【0062】
【数1】

【0063】
【数2】

従って、2種類以上の液体の接触角を実測し接着仕事を求めれば次の関係から固体の表面自由エネルギーを各成分毎に求めることができる。この関係式をFowkes式と呼ぶ。またこの関係式より、表面自由エネルギーγ=γd+γhが求められる。したがって、この固体として潤滑層を使用すれば、Fowkes式によって、潤滑層の表面自由エネルギーが求められる。なお、潤滑層が完全に潤滑剤によってのみ構成されていれば、Fowkes式によって得られる潤滑層の表面自由エネルギーは一定値になるはずであるが、その下になる保護層等が幾分でも露出している場合にはその影響を受けて変動するために、一定値とはならない。したがって、本方法で潤滑層の表面自由エネルギーを求める場合には、潤滑層の下にある保護層等毎に測定を行う必要がある。
【0064】
上記組成物については、更に被覆率を考慮することが重要であることが判明した。具体的には、上記組成物のいずれかについて、その膜厚と表面自由エネルギーとの関係を求めたところ、図3に示すような関係が得られた。図3においてSFEは、組成物の膜厚がゼロのときの表面自由エネルギーであり、SFEは、組成物の膜厚の変化によらずに組成物の表面自由エネルギーが一定値を示す場合の表面自由エネルギーである。
【0065】
表面自由エネルギーは潤滑層の下にある保護層の表面が潤滑層に覆われることにより低下すると考えることができる。したがって、図3のXの位置で保護層の表面が潤滑層で完全に覆われることになり、その後一定値(SFE)を示すものと考えることができる。
【0066】
このように考えると、この組成物を使用した潤滑層の表面自由エネルギーがある値(SFE)である場合の保護層の被覆率を、
被覆率={(SFE−SFE)/SFE−SFE)}×100
で定めることが可能である。
【0067】
この被覆率が90%以上である関係を満足することが好ましいことが判明した。このことは、この被覆率が90%以上であれば、100%でなくとも保護層の実用上の被覆には十分であることを意味するものと思われる。
【0068】
上限については特に制限はなく、実際に許容される磁気スペーシングによってその膜厚が制限を受けることになる。実用上は、潤滑層の膜厚として1.5nm以下であることが好ましい。潤滑層の膜厚はどのような方法で測定してもよい。FT-IRなどの光学的な測定方法を好ましく採用できる。
【0069】
なお、上記において表面自由エネルギーおよび膜厚の測定は、実際の磁気記録媒体やヘッドスライダ上において行う必要はなく、モデル的に行えば十分である。この場合の保護層は、表面自由エネルギーに影響を与えるので、実際に使用する保護層と同じ物を使用する。
【0070】
このようにして、上記諸形態により、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダが得られる。これにより、製品合格率を向上させることも可能となる。ヘッドと媒体とが接触する際のヘッドの振動を従来に比べて低減できる潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダを得ることも可能である。
【実施例】
【0071】
次に本発明の実施例を詳述する。以下において、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギーを単にSFEとも言う。
なお、各測定は以下のように行った。
【0072】
[式(3)で表される末端基のモル数(A)と式(4)で表される末端基のモル数(B)の比率(A:B)]
日本電子社製の装置GX-500を用いて19FNMRから求めた。
【0073】
[潤滑層の表面エネルギー]
DLC(ダイアモンドライク)膜(保護層に使用する条件でモデル的に作製したもの)上に潤滑層を形成し、協和界面科学(株)製CA−W150を用いて、水およびジヨードメタンを溶媒として用い、上記のFowkes式によって求めた。
【0074】
[膜厚]
フーリエ変換赤外分光光度計法を使用し、C−F結合の吸光度により膜厚を測定した。
【0075】
[浮上試験]
圧電素子によりヘッドと磁気記録媒体とが接触した時に信号を発生するAE(アコースティックエミッション)センサーを用い、5400rpmで回転している磁気記録媒体(円板)の半径13〜31mmの間をシークさせた。このとき、シーク時間中AE出力が全て150mW以下の磁気記録媒体を合格とし、一回でも150mWを超えるAE出力を記録した磁気記録媒体を不合格とした。各膜厚において20面測定し、合格率を求めた。合格率は20面中の合格面数の割合である。
【0076】
[振動振幅評価試験]
DFH機能を備えた単板評価器を用い、DFHヒータを作動して熱膨張を起こし、接触時のスライダーの振動を検出した。振動を検出するためにヘッドには、LDV(Laser Doppler Velocimeter:He-Neレーザーによるドップラー効果により振動を検出する装置)を取り付けた。
【0077】
[タッチダウン/テイクオフ試験]
初めにヘッドを浮上させておき、その時の回転数を保ったまま、徐々に減圧していき、ヘッドがディスクに接触した時にタッチダウンが起こったとした。その後気圧を徐々に上げていくときにヘッドが浮上しディスクと接触しなくなるかどうか(すなわちテイクオフしたかどうか)を見た。
【0078】
テイクオフ率は、タッチダウン/テイクオフ試験の実施した媒体数を分母とし、テイクオフした媒体数を分子として算出した。1.66nm以上の膜厚の媒体は、GHT(浮上)が不合格となったため、テイクオフ試験は、行わなかった。
【0079】
[実施例1]
式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル{分子量3800、末端置換率*48%、式(1)において、p=20,q=20}を用い、潤滑層の厚さを変えた磁気記録媒体を作製し、SFEおよび被覆率を測定した。
【0080】
*このポリエーテルの末端基は式(3)または式(4)のどちらか
であるため、
[式(4)の末端基量÷{式(3)の末端基量+式(4)の末端基量}]
×100
を末端置換率とした。
【0081】
具体的には、このフッ素含有ポリエーテルを有機溶媒バートレル(三井・デュポンフルオロケミカル社製)に溶解し、引き上げ法により、磁気記録媒体のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)よりなる保護層上に塗布し、潤滑剤が塗布された媒体を130℃で、48分加熱処理することにより潤滑層を得た。
【0082】
被覆率の計算では、SFEを63mN/mとした。表1の結果より、SFEは、膜厚が1.42〜1.66nmの間以降ではほぼ一定になったのでその平均値である12.4mN/mをSFEとした。
【0083】
結果を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
実施例1の種々の膜厚の潤滑層を有する磁気記録媒体を作製し、磁気記録媒体の浮上試験とタッチダウン/テイクオフ試験とを行った。
【0085】
結果を表1に示す。SFEとタッチダウン/テイクオフ試験との関係では、SFEが18.0mM/mでは、タッチダウン/テイクオフ試験でタッチダウン後、気圧を徐々に上げてもテイクオフしなかった。しかしながら、SFEが16.4mM/m以下では、全てのサンプルにおいて、テイクオフすることが確認された。このことは、潤滑層のSFEが高いとヘッドが媒体に固着してしまったためであると考えることができる。
【0086】
すなわち、SFEの観点から見れば、SFEが17mM/m以下の潤滑層を採用することにより、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダが得られると言える。12mM/mより低いSFEは実現していないので、下限については、現状では12mM/mと考えることができる。このように、SFEは、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層かどうかを評価するのに適した特性である。
【0087】
更に、この結果を被覆率とタッチダウン/テイクオフ試験との関係から見れば、被覆率が100%以下であっても90%以上であれば良好な結果を得られるといえる。したがって、被覆率によるこのような評価もヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層かどうかを評価するのに適した特性であると言える。
【0088】
なお、表1の結果を見れば、ある値以上の膜厚も、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を得るのに有効であると考えることもできる。しかしながら、磁気記録媒体の浮上試験を行った結果、表1の浮上試験の合格率の結果が示すように、膜厚が厚くなると、ヘッドと磁気記録媒体との接触が増大し、合格率が低下する傾向が示される。これは、膜厚の増大と共に、磁気スペーシングが減少するための当然の結果と思われる。したがって、膜厚のみでは、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を実現する指標としては不十分である。浮上試験の合格率の結果を見ると、膜厚の観点からは、1.5nm以下が好ましいようである。なお、膜厚1.18nm時の合格率はイレギュラーなデータである。
【0089】
これに対して、SFEは膜厚に関係する特性ではなく、ヘッドが磁気記録媒体から離れやすいかどうかを示すための直接的特性と言えよう。したがって、潤滑剤の構成や粘度等の物性が異なり、膜厚が種々変わる場合にも使用できる特性であると考えることができる。
【0090】
なお、上記に示したように、SFE、被覆率、膜厚は、それぞれ、程度の差はあれ、ヘッドが磁気記録媒体から離れやすいかどうかを示す指標としての価値を有すると考えることができる。したがって、これらの特性について、「SFEがある範囲」、「被覆率がある値以上」、「膜厚がある値以下」の条件を適宜組み合わせた条件を満足すること、より具体的には、「SFEが12〜17mN/mの範囲」、「被覆率が90%以上」、「膜厚が1.5nm以下」の条件を適宜組み合わせた条件を満足することは、ヘッドと磁気記録媒体とが接触した後ヘッドが再び磁気記録媒体から離れやすい潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダを製造するときの信頼性を高め、歩留まりを向上させる上で有用であると考えることができる。
【0091】
具体的に言えば、磁性層と、磁性層上にある保護層と、保護層上にある潤滑層とを含む磁気記録媒体や磁気記録媒体に対し、記録および/または再生を行うための記録変換素子を備え、当該磁気記録媒体に面する側のヘッドスライダ面に潤滑層を有するヘッドスライダの製造方法であって、潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなる場合に、Fowkes式によって求めた潤滑層の表面自由エネルギーがある範囲にあるように、より具体的には、12〜17mN/mの範囲にあるように、組成物の種類と潤滑層の作製条件と保護層の作製条件または潤滑層に接触するヘッドスライダ面(たとえばヘッドスライダの保護層)の作製条件とを選択することや、潤滑層の膜厚がある値以下になるように組成物の種類と潤滑層の作製条件と保護層の作製条件または潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択すること、より具体的にいえば1.5nm以下になるように組成物の種類と潤滑層の作製条件と保護層の作製条件または潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択すること、や、上記被覆率がある値以上である関係を満足するように、より具体的にいえば90%以上である関係を満足するように、組成物の種類と潤滑層の作製条件と保護層の作製条件または潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択することは、磁気記録媒体やヘッドスライダの製造方法として有用であるといえる。なお、この場合における潤滑層の作製条件には特に制限はない。塗膜の形成方法に関係する公知の条件を適宜選択することができる。保護層の作製条件や潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件は主に使用される材料やその表面の平坦度/粗度を意味するが、その他の作製条件が含まれていてもよい。
【0092】
【表1】

[実施例3]
実施例1の潤滑層(膜厚0.9nm)を有する磁気記録媒体と従来の潤滑剤(FOMBLIN(R) Z TETRAOL)を塗布してなる潤滑層(膜厚0.9nm)を有する磁気記録媒体との振動振幅試験を行った。
【0093】
結果を表2と図4とに示す。図4より、本発明の潤滑層は、従来の潤滑層よりも振動振幅が小さくなっていることが理解できる。
【0094】
【表2】

この結果から、上記の各発明態様により、ヘッドと媒体とが接触する際のヘッドの振動を従来に比べて低減できる潤滑層を持つ磁気記録媒体やヘッドスライダを得ることも可能であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】ハードディスク装置の内部構造を示す模式的平面図である。
【図2】ヘッドと、磁気記録媒体との関係を示す模式的横断面図である。
【図3】表面自由エネルギーと膜厚との関係を示すグラフである。
【図4】振動振幅の様子を示すチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1 磁気記録媒体
2 ヘッドスライダ
3 回転制御機構
4 ヘッドの位置決め機構
5 記録再生信号の処理回路
6 サスペンジョン
7 ジンバル
8 ヘッド
9 ヘッド保護層
10 ヘッド潤滑層
11 磁気記録媒体
12 基板
13 Cr下地層
14 磁性層
15 媒体保護層
16 媒体潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層と、当該磁性層上にある保護層と、当該保護層上にある潤滑層とを含む磁気記録媒体であって、
当該潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、
Fowkes式によって求めた当該潤滑層の表面自由エネルギーが12〜17mN/mの範囲にある、磁気記録媒体
【化24】

【化25】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)。
【請求項2】
前記組成物についてその膜厚と前記表面自由エネルギーとの関係を求めたときに、当該組成物の膜厚がゼロのときの表面自由エネルギーをSFE、当該組成物の膜厚の変化によらずに当該組成物の表面自由エネルギーが一定値を示す場合の表面自由エネルギーをSFEとした場合に、前記潤滑層の表面自由エネルギーSFEが、
被覆率={(SFE−SFE)/SFE−SFE)}×100
で定められる被覆率が90%以上である関係を満足する、請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記組成物の数平均分子量が500〜5000であり、かつ19FNMRで観測される、前記組成物中の式(3)で表される末端基のモル数(A)と式(4)で表される末端基のモル数(B)の比率(A:B)が10:90〜95:5の範囲にある、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
【化26】

【化27】

【請求項4】
前記組成物中における、前記式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルの割合が、40重量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテル以外の、パーフルオロポリエーテル構造を主鎖に有する含フッ素化合物を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
磁気記録媒体に対し、記録および/または再生を行うための記録変換素子を備え、当該磁気記録媒体に面する側のヘッドスライダ面に潤滑層を有するヘッドスライダであって、
当該潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、
Fowkes式によって求めた当該潤滑層の表面自由エネルギーが12〜17mN/mの範囲にある、ヘッドスライダ
【化30】

【化31】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)。
【請求項7】
磁性層と、当該磁性層上にある保護層と、当該保護層上にある潤滑層とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
当該潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、
Fowkes式によって求めた当該潤滑層の表面自由エネルギーがある範囲にあるように、当該組成物の種類と当該潤滑層の作製条件と当該保護層の作製条件とを選択する、磁気記録媒体の製造方法
【化36】

【化37】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)。
【請求項8】
磁気記録媒体に対し、記録および/または再生を行うための記録変換素子を備え、当該磁気記録媒体に面する側のヘッドスライダ面に潤滑層を有するヘッドスライダの製造方法であって、
当該潤滑層が、式(1)で表されるフッ素含有ポリエーテルと、式(2)で表される含フッ素ポリマーとグリシドールとを反応させてなるポリマーとの少なくともいずれか一方を含んでなる組成物からなり、
Fowkes式によって求めた当該潤滑層の表面自由エネルギーがある範囲にあるように、当該組成物の種類と当該潤滑層の作製条件と前記潤滑層に接触するヘッドスライダ面の作製条件とを選択する、ヘッドスライダの製造方法
【化38】

【化39】

(式(1)において、p,qは、他の式中の記号とは独立に、ゼロ以上の実数(ただし、pとqは同時にゼロにはならない)であり、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。式(2)中、pおよびqは、他の式中の記号とは独立に、同時にゼロにはならない任意の0または正の整数を表し、CFCFOとCFOの構造単位は、互いにランダムな配列をとってもブロック化した配列をとってもよい。)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−151849(P2009−151849A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326973(P2007−326973)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】