説明

磁気記録媒体および磁気記録再生装置

【課題】線記録密度/トラック密度の比率(BAR)を1より十分大きいビットパターン媒体を提供する。また、転送レートを面記録密度に応じて高めることができる磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】磁気ディスク媒体10は、非磁性基板12と、軟磁性裏打ち層(軟磁性層)14と、磁気記録層16を有する。磁気記録層16には、軟磁性層14に達する深さの環状の凹部(溝)18が設けられ、これにより、複数の環状の記録トラック20が形成されている。記録トラック20には、周方向に所定の周期で、くびれ部(狭窄部)22が形成されている。狭窄部22は、記録トラック20の端部24が、中心部へ向かって窪んだ形状であり、狭窄部22が形成される周期は、狭窄部22と狭窄部22の間がビット長に相当する周期である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高密度磁気記録技術におけるビット位置画定型の磁気記録媒体(ビットパターン媒体)およびこれを用いた磁気記録再生装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術の発達に促され、様々な分野でディジタル化が急速に進行しつつある。従来ディジタル機器の代表格であったパーソナルコンピュータやサーバに加え、家電・オーディオ・医療機器などでも大量のディジタルデータを貯える必要性が高まってきた。これら膨大なデータを蓄えるため、不揮発性ファイルシステムの中核である磁気ディスク装置(HDD)はこれまでにも増して急速な大容量化を求められている。磁気ディスク装置の大容量化とは、面記録密度即ち媒体上に記録するビット密度をより高めることを意味する。
【0003】
現在実用化されているHDDでは、面内記録・垂直記録いずれの記録方式においても強磁性多結晶薄膜からなる記録媒体が用いられている。図11は、従来の磁気記録媒体における記録状態の模式図である。従来の多結晶薄膜は高い一軸磁気異方性をもつ磁性粒子101と、それを取り囲む非磁性体102からなるのが一般的である。情報を記録するための基本操作は、記録媒体上の任意の位置に局所的な磁界を印加し、磁化極性を適当なタイミングで反転させることで磁化がほぼ180°変化する境界(磁化遷移103)を形成することであり、この磁化遷移103をディジタル情報の1に対応させている。また、この磁化遷移103付近における漏洩磁界分布の空間変化を適当な磁界センサで検出することがデータ再生に相当する。実際には、この記録再生動作の前後に符号化・復号化などの処理を経てHDDにおける情報の入出力が行われている。
【0004】
さて、記録密度とはすなわち磁化遷移103を単位面積内にいくつ書き込めるかであり、これを高めるには磁化遷移103の一つひとつをいかに急峻かつスムースに形成できるかが最も重要となる。この磁化遷移103は通常、図11に示したように、結晶粒界に沿ったジグザグのミクロ構造を有している。そしてこのジグザグの平均的な幅(遷移幅)が、いわば磁化遷移の急峻性を表しているということができる。この幅が広すぎる場合、ビットの間隔を詰められないために記録密度が増えないというだけでなく、再生信号に大きなノイズが加わるので、低いビット誤り率(BER)での安定した読み取りができないという問題がある。それゆえ現行の磁気記録システムにおいては、遷移幅が記録密度を制限する最も大きな要因のひとつとなっている。
【0005】
磁化遷移103の幅を狭くするには様々な手段が考えられる。特に媒体材料からのアプローチとしては、磁性粒子101を小さくすることでジグザグを縮小することが第一に重要である。しかしながら磁性粒子101を過度に微細化すると、磁気異方性エネルギー(磁化を一方向に向けておこうとするエネルギー)に対する熱エネルギー(磁化を不安定化させるエネルギー)の大きさが無視できなくなり、記録した時の磁化状態を長期間(通常約10年)保存しておくことが困難となる。また、これを防ぐために磁性粒子101の磁気異方性エネルギーを大きくしすぎると、磁気ヘッドからの記録磁界による磁化反転が困難になり、正確に情報を書き込むことが出来なくなってしまう。
【0006】
この問題を解決するため、いわば究極の磁気記録媒体として考えられているのがビットパターン媒体(BPM:Bit Patterned Media)である。これは図12に示すように、ディスク面上にデータを記録しうる領域(以下、有効領域200と呼ぶ)と記録不可能な領域(以下、無効領域202と呼ぶ)を、装置へ組み込む前にあらかじめ画定した記録媒体である。BPMの製法としては、何らかのリソグラフィ技術を用いることになるが、図11のように凹凸をつけることで凹部分を無効領域202にする方法が一般的であるが、この方法以外にも、媒体記録層の一部分の磁性を変化させる(例えば組成・ないし膜構造を変化させて保磁力を小さくする)ことで実質的に無効領域202とするような作製法も可能である。このBPMを用いた場合、磁気的に孤立したひとつの有効領域200そのもの、または隣り合う二つの有効領域200間の無効領域202が1ビットに対応しており、この有効領域内の磁化は磁界印加によってほぼ一斉スイッチするように材料・構造・寸法が設計されている。従ってBPMにおける磁化遷移は自動的にこの有効領域21間に生成されることとなり、パターン形成過程の精度内で磁化遷移をいくらでも急峻にすることが可能となる。このような媒体の概念は1970年代から提案されており(非特許文献1)、多結晶薄膜媒体に対する原理的な優位性は既に明らかとなっている(特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−164692号公報
【非特許文献1】J.Electrochem Soc.121, No.3, 110C (1973)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したアイランド状のBPMは原理的に高密度記録に適しているが、実用化するには次のような困難が存在すると考えられている。このような媒体が製品に適用されるのは1Tb/inを超える面記録密度であるとみられているが、この場合、各アイランドのサイズは20nm以下と非常に小さい。またトラックに沿う方向とトラックに交差する方向を同時にパターニングする必要があるため、最小加工寸法の制限からビット密度とトラック密度をほぼ同じにしなければならない。このため1Tb/inでの線記録密度は1000kFCI程度となり、現行製品(面記録密度100Gb/in程度)以下にまで低下させなければならない。HDDにおける線記録密度は内部転送レートを決めるキーパラメータのひとつであり、線記録密度の低下はBPMを適用した場合に、製品HDDのパフォーマンスを大幅に抑制しなければならない可能性が高いことを意味している。
【0009】
また、このような数十nm程度のサイズを有する強磁性粒子の磁化は、外部磁界に対して一斉回転モードで反転することがよく知られている。この磁化反転時には歳差運動というみそすり運動が必ず付随するため、反転にかかる時間(磁化スイッチング時間)には原理的な下限が存在する。従って、上記の低線記録密度を補償するためにディスク回転数増加で転送レートを向上しようとしても、磁化スイッチング時間により制限されてしまうことになる。
【0010】
更に記録媒体作製上の問題も考えられる。通常、半導体デバイスでは基板片面上に10〜10組程度のパターンを作製するが、アイランド状BPMにおいては基板両面に約1013個もの莫大な数の微細パターンを高精度に形成しなければならない。しかも基板1枚のコストは半導体デバイスのそれに対して一万分の一から十万分の一と考えられるため、桁違いの低コストと高歩留りが要求されることとなる。
【0011】
本発明の目的は、ビットパターン媒体において、線記録密度/トラック密度の比率(BAR)を1より十分大きくすることである。
本発明の他の目的は、磁気記録再生装置において、転送レートを記録密度に応じて高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の磁気記録媒体においては、基板と、基板の上部に設けられた磁気記録層とを有し、磁気記録層が複数の環状の記録トラックと、記録トラックの間の非記録領域とに分割されており、記録トラックの少なくとも片側の端部に、所定の周期で狭窄部を有するものである。
前記狭窄部は、記録トラックの両側の端部に設けられるのが望ましい。
前記所定の周期は、前記記録トラックのビット長に相当するものである。
上記他の目的を達成するために、本発明の磁気記録再生装置においては、上記磁気記録媒体と、磁気記録媒体を駆動する媒体駆動部と、磁気記録媒体の記録トラックに対してデータの記録・再生を行う磁気ヘッドと、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所望の記録トラックに位置決めする位置決め機構とを有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、記録トラック上に繋がったデータ領域とすることで、ビットパターン媒体の線記録密度/トラック密度の比率(BAR)を1より十分大きくすることができる。また、磁気記録再生装置の転送レートを、記録密度に応じて高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例による磁気記録媒体の構成と製造方法を図面を参照して詳細に説明する。
図1は磁気記録媒体が磁気ディスク媒体である場合の基本構成を示す模式図である。図2は平面図である。磁気ディスク媒体10は、非磁性基板12と、軟磁性裏打ち層(軟磁性層)14と、磁気記録層16を基本構成とする。磁気記録層16には、軟磁性層14に達する深さの環状の凹部(溝)18が設けられ、これにより、複数の環状の記録トラック20が形成されている。記録トラック20には、周方向に所定の周期で、くびれ部(狭窄部)22が形成されている。狭窄部22は、記録トラック20の端部24が、中心部へ向かって窪んだ形状であり、狭窄部22が形成される周期は、狭窄部22と狭窄部22の間がビット長に相当する周期である。
【0015】
上記磁気ディスク媒体10は、次のようにして作製することができる。非磁性基板12としては、化学強化ガラス基板、あるいはNiPめっきを施したアルミ基板が好適である。非磁性基板12の上に、スパッタリングにより、CoNbZr合金、CoTaZr合金またはCoFeTaZr合金の軟磁性層14を形成する。続いて、軟磁性層14の上に、FePtまたはCoPtに、Cr,Ni,Cu,Nb,Ta,Bの中から選択される1種以上の元素が、組成比20%以下の範囲で添加された合金の磁気記録層16を形成する。この磁気記録層16は、面内に交換結合した垂直磁気異方性薄膜である。次に、磁気記録層16の上にレジストあるいはSOG(Spin on glass)など、光や熱で硬化するマスク材料を塗布し、電子線描画によりこのマスク材料をパターニングして、環状の溝を形成する。このとき、マスク材料の溝と溝の間のランド部の狭窄部を形成する位置において、電子線のパワーをアップする。電子線のパワーをアップすることにより、マスク材料のランド部に狭窄部を形成することができる。次に、パターニングしたマスク材料をマスクとしてイオンミリング、反応性イオンエッチング(RIE)または湿式エッチング法を用いて、磁気記録層16と軟磁性層14の一部をエッチングし、マスク材料を剥離・洗浄により除去することにより、図1及び図2に示す磁気ディスク媒体10を作製することができる。
【0016】
上記のようにして作製した磁気ディスク媒体10に、記録磁界を印加した場合、磁気記録層16が面内に交換結合した垂直磁気異方性薄膜であるため、記録トラック20の狭窄部22と狭窄部22の間のビット領域に磁壁が発生する。磁壁は回転しながら高速に移動し、狭窄部22でトラップされて、90゜磁壁の磁化遷移が形成される。この磁気ディスク媒体10は、狭窄部22でビット位置が画定されるので、ビットパターン媒体ということができる。磁壁状の磁化遷移とすることで、記録過程における磁化反転は一斉回転モードではなく、磁壁移動モードとなるため、磁化の歳差運動によるスイッチングに比較して、磁化のスイッチングが高速に行われる。また、電子線描画によりマスクパターンを形成する際に、電子線のパワーアップの周期を短くすることにより、図3に示すように、ビット長を短くすることができる。ビット長を短くすることにより、線記録密度(BPI)が向上する。従来は、最小加工寸法の制限から、線記録密度を1000kFCI以上に高めることは困難であったが、上記実施例によれば、電子線のパワーアップの周期を短くすることで容易に線記録密度を高くすることができる。さらに、作製プロセスとしては、従来のディスクリートトラック媒体のプロセスに近いために、プロセス上の大きな変更はなく、低コストで安価な磁気ディスク媒体を作製することができる。
【0017】
図4に、上記実施例による磁気ディスク媒体10と、図12に示した従来のビットパターン媒体の、線記録密度、BAR、面記録密度を示す。従来のビットパターン媒体の最小加工寸法(12.7nm)をランド幅(記録トラック幅)とし、実施例による磁気ディスク媒体の最小加工寸法(12.7nm)を(W+W)/2とした。この最小加工寸法において、従来のビットパターン媒体の1Tb/inでの線記録密度は1000kFCI程度であるが、実施例による磁気ディスク媒体では1955kFCI程度であり、約2倍に高めることができる。また、BARは従来のビットパターン媒体が1であるのに対して、実施例による磁気ディスク媒体では2.3である。したがって、面記録密度は約1.5倍まで高めることができている。熱ゆらぎ係数は、従来の184に対して実施例では197であり、面記録密度が約1.5倍になっても熱ゆらぎ耐性は低下していないことがわかる。
【0018】
図5に、実施例による磁気ディスク媒体10と、図12に示した従来のビットパターン媒体の、線記録密度と磁化のスイッチング時間の関係をシミュレーションにより求めた結果を示す。従来のビットパターン媒体の磁化反転は歳差運動であるため、反転にかかる時間には下限が存在し、線記録密度を高くしてもスイッチング時間は短くならない。実施例による磁気ディスク媒体は、記録過程が磁壁移動モードなので、スイッチング時間が非常に短く、2500kFCI以上の高線記録密度では従来のビットパターン媒体の約10分の1である。したがって、このような実施例による磁気ディスク媒体を磁気ディスク装置に使用することにより、データの転送レートを飛躍的に向上することができる。
【0019】
上記実施例による磁気ディスク媒体10では、磁気記録層16をFePtまたはCoPtに、Cr,Ni,Cu,Nb,Ta,Bの中から選択される1種以上の元素が、組成比20%以下の範囲で添加された合金による面内に交換結合した垂直磁気異方性薄膜としたが、Co/Pd多層膜の人口格子型垂直磁気異方性薄膜とすることもできる。また、磁気記録層16には、軟磁性層14に達する深さの環状の凹部(溝)18を形成して、複数の環状の記録トラック20を形成したが、溝18はその深さが軟磁性層14に達することなく、磁気記録層16にのみ形成してもよい。あるいは、非磁性基板に環状の凹凸を形成し、その上部に軟磁性層と磁気記録層を積層することにより、磁気記録層に非磁性基板の凹凸を反映させることもできる。また、狭窄部22を記録トラックの両端部に形成したが、磁壁をトラップできるのであれば狭窄部を片側の端部にのみ形成してもよい。また、溝18及び狭窄部22の形成に電子線描画法を用いたが、レーザ露光あるいはインプリント技術を用いることもできる。また、溝18に非磁性体を充填し、平坦化した表面にカーボン等の保護膜を形成してもよい。保護膜を形成することにより、磁気記録層及び軟磁性層の腐食を防止することができ、さらに磁気ディスク媒体上を浮上する磁気ヘッドの浮上特性を安定化することができる。
【0020】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、記録トラック上に繋がったデータ領域とすることで、ビットパターン媒体の線記録密度/トラック密度の比率を1より十分大きくすることができ、1Tb/inを超える超高記録密度を実現することができる。また、磁壁状の磁化遷移とすることで、記録過程は一斉回転モードの磁化反転ではなく磁壁移動モードとなるため、磁化のスイッチング時間を短縮することができる。さらに、作製プロセスとしてはBPMに先立つ技術であるディスクリートトラック媒体に近いため、プロセス上の大きな変更がなく、低コストで安価な磁気ディスク媒体を作製することができる。
【0021】
図6は、上記実施例による磁気ディスク媒体を組み込んだ磁気ディスク装置の概略構成図である。磁気ディスク媒体10は、スピンドルモータ(媒体駆動部)35の回転軸に装着されて回転駆動される。磁気ヘッド31はサスペンション32に支持され、アクチュエータ(位置決め機構)33により磁気ディスク媒体10の所望の記録トラック20に位置決めされて磁気情報の読み書きを行う。アクチュエータ33は、機構制御系45によりフィードバック制御される。外部インターフェイス44を通して入力されたユーザデータは、コントローラ43及びデータ符号・復号系42で磁気記録系に好適な方法で符号化・整形され、記録再生プリアンプ41において記録電流に変換され、この電流が磁気ヘッド31の記録素子を励磁することで磁気ディスク媒体10の記録トラック20にビットが書き込まれる。ここで1ビットの長さは、記録トラック20の2つの狭窄部22の間の領域となる。逆に書き込まれたビット領域から出る漏洩磁界は、磁気ヘッド31の再生素子がセンスすることで電気信号に変換され、記録再生プリアンプ41及びデータ符号・復号系42で磁気記録系に好適な方法で波形整形・復号化処理がなされユーザデータが再現される。
【0022】
この磁気ディスク装置においては、磁気ディスク媒体10の面記録密度が高くなると同時に線記録密度も高くなっているので(従来の約2倍)、データの転送レートを面記録密度に応じて高めることができる。また、記録過程は磁壁移動モードとなるため、磁化のスイッチング時間の制限を受けることなくデータの転送レートを高めることができる。これらの効果により、1Tb/inを超える超高記録密度、高転送レートの磁気ディスク装置を実現することができる。
【0023】
本発明の第2の実施例における磁気ディスク装置のうち、特にヘッド・媒体に関わる部分の断面図を図7に示す。磁気ヘッド31は記録層に磁界を印加する強磁性体からなる主磁極51と記録磁界の分布を整えるためのトレーリングシールド52に加え、磁気ディスク媒体の磁気記録層16を加熱して一時的に保磁力を低下させるための加熱源となるレーザ光源55および光導波路56を有している。記録時のみ保磁力を低下させることができるので、常温では比較的大きな磁気異方性を有する記録層材料を用いる事ができ、記録された情報の長期安定性を高めて磁気ディスク装置の信頼性を高めることができた。また、ビット記録部分に形成される磁壁の幅(ヘッド移動方向の磁壁サイズ)は磁気異方性を高めるほど狭く出来るため、そのぶん線記録密度を高める事が出来る。図8にはビット誤り率の線記録密度依存性を示した。ここで磁気記録層16の磁気異方性を現す異方性磁界Hkを変化させて調べた。なお異方性磁界は室温においてディスク面内方向に磁界を印加して測定した磁化曲線に現れる飽和磁界で定義している。磁気ディスク装置に必要とされるビット誤り率は10−4以下とされているので、異方性磁界Hkを大きくするほど到達線記録密度は向上していることがわかる。しかしながら、磁気ヘッドから発生可能な磁界の強度には限度があるためHkを大きくしすぎると磁気記録層16の磁化を反転させることができずビット誤り率は低下すると考えられる。本実施例ではHk=17kOe(1360kA/m)において2400kBPIという高い線記録密度を実現することができた。
【0024】
なお、図7においては主磁極51とトレーリングシールド52の間に加熱源を配置したが、図9のようにトレーリングシールド52よりも更にトレーリング側に配置しても同等の効果が得られ、また図10のように主磁極51よりリーディング側に配置してもほぼ同じ特性が得られている。磁極と加熱源の配置はヘッドや記録再生系全体の設計から最適な組合せを選択する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例による磁気ディスク媒体の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す実施例による磁気ディスク媒体の平面模式図である。
【図3】実施例による磁気ディスク媒体の線記録密度を高くした場合の平面模式図である。
【図4】実施例による磁気ディスク媒体と従来媒体の線記録密度とBARと面記録密度を示す図である。
【図5】実施例による磁気ディスク媒体と従来媒体の線記録密度と磁化のスイッチング時間との関係を示す図である。
【図6】実施例による磁気ディスク媒体を搭載した磁気ディスク装置の概略構成図である。
【図7】第2の実施例における磁気ディスク媒体と磁気ヘッド部分を拡大した断面図である。
【図8】第2の実施例におけるビット誤り率特性を示した図である。
【図9】第2の実施例における磁気ヘッドの別の構成を示した断面図である。
【図10】第2の実施例における磁気ヘッドの別の構成を示した断面図である。
【図11】従来の磁気ディスク媒体における磁気記録状態の模式図である。
【図12】従来のビットパターン媒体の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
10…磁気ディスク媒体、12…非磁性基板、14…軟磁性裏打ち層、16…磁気記録層、18…凹部(溝)、20…記録トラック、22…狭窄部、24…記録トラックの端部、31…磁気ヘッド、32…サスペンション、33…アクチュエータ、35…スピンドルモータ、41…記録再生プリアンプ、42…データ符号・復号系、43…コントローラ、44…外部インターフェイス、45…機構制御系、51…磁気ヘッド主磁極、52…トレーリングシールド、55…レーザ光源、56…光導波路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の上部に設けられた磁気記録層とを有し、前記磁気記録層が複数の環状の記録トラックと、該記録トラックの間の非記録領域とに分割されている磁気記録媒体において、前記記録トラックの少なくとも片側の端部に、所定の周期で狭窄部を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記記録トラックの両側の端部に、所定の周期で狭窄部を有することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記所定の周期は、前記記録トラックのビット長に相当することを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記記録トラックの、線記録密度/トラック密度の比率が1より大きいことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記基板と前記磁気記録層の間に、軟磁性層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記磁気記録層はFePtまたはCoPtにCr,Ni,Cu,Nb,Ta,Bの中から選択される1種以上の元素が添加された合金の垂直磁気異方性薄膜であり、前記軟磁性層はCoNbZr、CoTaZrまたはCoFeTaZr合金であり、前記非記録領域は凹部であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項7】
前記磁気記録層はCo/Pd多層膜の人口格子型垂直磁気異方性薄膜であり、前記軟磁性層はCoNbZr、CoTaZrまたはCoFeTaZr合金であり、前記非記録領域は凹部であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記凹部に非磁性体が充填されていることを特徴とする請求項6または7記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
前記磁気記録層の磁化状態は、前記狭窄部の少なくとも一部分を境界として変化していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の磁気記録媒体。
【請求項10】
基板と、該基板の上部に設けられた磁気記録層とを有し、前記磁気記録層が複数の環状の記録トラックと、該記録トラックの間の非記録領域とに分割され、前記記録トラックの少なくとも片側の端部に、所定の周期で狭窄部を有する磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体を駆動する媒体駆動部と、前記磁気記録媒体の記録トラックに対してデータの記録・再生を行う磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体の所望の記録トラックに位置決めする位置決め機構とを有することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項11】
前記記録トラックの両側の端部に、所定の周期で狭窄部を有することを特徴とする請求項10記載の磁気記録再生装置。
【請求項12】
前記所定の周期は、前記記録トラックのビット長に相当することを特徴とする請求項10または11記載の磁気記録再生装置。
【請求項13】
前記記録トラックの、線記録密度/トラック密度の比率が1より大きいことを特徴とする請求項12記載の磁気記録再生装置。
【請求項14】
前記磁気記録層の磁化状態は、前記狭窄部の少なくとも一部分を境界として変化していることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【請求項15】
前記磁気ヘッドは、前記磁気記録層に磁界を印加する主磁極と、該主磁極からの記録磁界の分布を整えるためのトレーリングシールドと、前記磁気記録層を加熱して一時的に保磁力を低下させるための加熱源とを有していることを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−28787(P2011−28787A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270192(P2007−270192)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】