説明

磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置

【課題】磁気転写を行うために取り付けがなされたパターン形成体に付着した異物を、検出できるようにする。
【解決手段】第1ホルダに保持された第1マスタのサーボ・パターン形成面に光を照射し且つ拡散反射する光を受光することで第1マスタのサーボ・パターン形成面を撮像し、第2ホルダに保持された第2マスタのサーボ・パターン形成面に光を照射し且つ拡散反射する光を受光することで第2マスタのサーボ・パターン形成面を撮像し、第1マスタ、第2マスタの各撮像結果から、第1マスタおよび第2のマスタの両者への異物の付着が認められない場合に、第1ホルダに保持された第1マスタと第2ホルダに保持された第2マスタとの間に磁気記録媒体を挟み込んで、第1マスタに形成された第1パターンおよび第2マスタに形成された第2パターンを磁気転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の製造方法、磁気記録媒体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハード・ディスク・ドライブ等に代表される磁気記録装置では、回転する磁気記録媒体に対し、磁気ヘッドを用いたデータの書き込みおよび読み取りが行われる。
この種の磁気記録装置では、磁気記録媒体上の目的とする位置に磁気ヘッドを移動させ、且つ、その位置でのデータの書き込みおよび読み取りを行わせるために、磁気ヘッドの位置決めを行っている。このため、磁気記録媒体には、予め、磁気ヘッドによって読み取られるとともに磁気ヘッドの位置決めに使用される位置決めデータが記録されている。
【0003】
公報記載の従来技術として、磁気記録媒体に対する位置決めデータ等の記録を、所謂磁気転写方式にて行うことが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、記録すべきデータに対応したパターンが形成された2枚のパターン形成体によって磁気記録媒体を挟み込んだ状態で、2枚のパターン形成体と磁気記録媒体とを挟んで一方向に向かう磁力を加えることで、磁気記録媒体に対するパターンの磁気的な転写を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−324314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気転写方式を用いた磁気記録媒体の製造において、パターン形成体におけるパターンの形成面に異物が付着していると、磁気転写を行う際にパターン形成体と磁気記録媒体との間に異物が挟み込まれてしまい、磁気転写後のパターン形成体および磁気記録媒体のそれぞれに、異物に起因する欠陥が生じ得る。
本発明は、磁気転写を行うために取り付けがなされたパターン形成体に付着した異物を、検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、下記[1]〜[16]に係る発明が提供される。
[1]保持体に保持され且つパターンが形成されたパターン形成体に対し、パターンが形成されたパターン形成面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、パターン形成面から拡散反射する光を受光することで、パターン形成面を撮像する工程と、
パターン形成面の撮像結果に基づいてパターン形成面に対する異物の付着を判断する工程と、
判断する工程においてパターン形成面への異物の付着が認められない場合に、保持体に保持されたパターン形成体におけるパターン形成面に磁気記録媒体における記録面を接触させ、パターン形成体と接触する磁気記録媒体に対し、パターンを磁気転写する工程と
を含む磁気記録媒体の製造方法。
[2]磁気転写する工程では、保持体に保持されたパターン形成体におけるパターン形成面に対し相対的に進退可能に設けられる押付部材を用い、磁気記録媒体における記録面の裏面を介して、パターン形成体に対する磁気記録媒体の押し付けを行い、
撮像する工程では、押付部材における磁気記録媒体の押し付け面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、押し付け面から拡散反射する光を受光することで、押し付け面を撮像し、
判断する工程では、押し付け面の撮像結果に基づいて押し付け面に対する異物の付着を判断し、
判断する工程において押し付け面への異物の付着が認められない場合に、磁気転写する工程を実行すること
を特徴とする[1]記載の磁気記録媒体の製造方法。
[3]パターンは、パターン形成面における凹凸で構成されることを特徴とする[1]または[2]記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0007】
[4]第1保持体に保持され且つ第1パターンが形成された第1パターン形成体に対し、第1パターンが形成された第1形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、第1形成面から拡散反射する光を受光することで、第1形成面を撮像する工程と、
第2保持体に保持され且つ第2パターンが形成された第2パターン形成体に対し、第2パターンが形成された第2形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、第2形成面から拡散反射する光を受光することで、第2形成面を撮像する工程と、
第1形成面の撮像結果に基づく第1形成面への異物の付着と、第2形成面の撮像結果に基づく第2形成面への異物の付着とを判断する工程と、
判断する工程において第1形成面および第2形成面の両者への異物の付着が認められない場合に、第1保持体および第2保持体を相対的に移動させることで、第1パターン形成体における第1形成面と第2パターン形成体における第2形成面との間に、磁気情報を記録する磁気記録媒体を挟み込み、挟み込まれた磁気記録媒体に対し、第1パターンおよび第2パターンを磁気転写する工程と
を含む磁気記録媒体の製造方法。
[5]判断する工程において第1形成面および第2形成面の両者への異物の付着が認められた場合に、磁気転写する工程の実行を禁止することを特徴とする[4]記載の磁気記録媒体の製造方法。
[6]第1パターン形成体における第1形成面と第2パターン形成体における第2形成面とが対峙するように第1保持体および第2保持体が配置され、
第1形成面を撮像する工程と第2形成面を撮像する工程とを、並列して実行することを特徴とする[4]または[5]記載の磁気記録媒体の製造方法。
[7]判断する工程では、
第1保持体に取り付けられた後であって磁気転写で使用される前の第1パターン形成体における第1形成面を予め撮像して得られた第1基準データと、第1形成面を撮像する工程で得られた第1撮像データとの比較に基づいて第1形成面に対する異物の付着の有無を判断し、
第2保持体に取り付けられた後であって磁気転写で使用される前の第2パターン形成体における第2形成面を予め撮像して得られた第2基準データと、第2形成面を撮像する工程で得られた第2撮像データとの比較に基づいて第2形成面に対する異物の付着の有無を判断すること
を特徴とする[4]乃至[6]のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
[8]第1パターンは第1形成面における凹凸で形成され、
第2パターンは第2形成面における凹凸で形成されること
を特徴とする[4]乃至[7]のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0008】
[9]パターンがパターン形成面に形成されたパターン形成体を保持する保持体と、
保持体に保持されたパターン形成体に対し、パターン形成面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射する光照射手段と、
光照射手段にて照射され、パターン形成面にて拡散反射した光を受光することでパターン形成面を撮像する撮像手段と、
パターン形成体を保持した保持体におけるパターン形成面に磁気記録媒体における記録面を接触させ、パターン形成体と接触する磁気記録媒体に対し、パターンを磁気転写する磁気転写手段と
を含む磁気記録媒体の製造装置。
[10]パターン形成面を撮像して得られた撮像データに基づいてパターン形成面に異物が付着しているか否かを判断する判断手段と、
判断手段にてパターン形成面への異物の付着が認められない場合に、磁気転写手段による磁気記録媒体への磁気転写を許可する許可手段と
をさらに含むことを特徴とする[9]記載の磁気記録媒体の製造装置。
[11]保持体に保持されたパターン形成体におけるパターン形成面に対し相対的に進退可能に設けられ、磁気記録媒体における記録面の裏面を介して、パターン形成体に磁気記録媒体を押し付ける押付部材をさらに含み、
光照射手段は、押付部材における記録媒体の押し付け面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、
撮像手段は、光照射手段にて照射され、押し付け面にて拡散反射した光を受光することで押し付け面を撮像すること
を特徴とする[9]または[10]記載の磁気記録媒体の製造装置。
[12]押し付け面を撮像して得られた撮像データに基づいて押し付け面に異物が付着しているか否かを判断する判断手段と、
判断手段にて押し付け面への異物の付着が認められない場合に、磁気転写手段による磁気記録媒体への磁気転写を許可する許可手段と
をさらに含むことを特徴とする[11]記載の磁気記録媒体の製造装置。
【0009】
[13]第1パターンが第1形成面に形成された第1パターン形成体を保持する第1保持体と、
第2パターンが第2形成面に形成された第2パターン形成体を保持する第2保持体と、
第1保持体に保持された第1パターン形成体に対し、第1形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、且つ、第2保持体に保持された第2パターン形成体に対し、第2形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射する光照射手段と、
光照射手段にて照射され、第1形成面にて拡散反射した光を受光することで第1形成面を撮像し、且つ、光照射手段にて照射され、第2形成面にて拡散反射した光を受光することで第2形成面を撮像する撮像手段と、
第1パターン形成体を保持した第1保持体と第2パターン形成体を保持した第2保持体とを相対的に移動させることで、第1パターン形成体における第1形成面と第2パターン形成体における第2形成面との間に、磁気情報を記録する磁気記録媒体を挟み込み、挟み込まれた磁気記録媒体に対し、第1パターンおよび第2パターンを磁気転写する磁気転写手段と
を含む磁気記録媒体の製造装置。
[14]第1形成面を撮像して得られた第1撮像データに基づいて第1形成面に異物が付着しているか否かを判断し、且つ、第2形成面を撮像して得られた第2撮像データに基づいて第2形成面に異物が付着しているか否かを判断する判断手段と、
判断手段にて第1形成面および第2形成面の両者への異物の付着が認められない場合に、磁気転写手段による磁気記録媒体への磁気転写を許可する許可手段と
をさらに含むことを特徴とする[13]記載の磁気記録媒体の製造装置。
[15]撮像手段は、
筐体と、
筐体を第1保持体と第2保持体とに挟まれた領域と挟まれていない領域との間で移動させる移動機構と、
筐体に取り付けられ、移動機構による移動に伴って、第1保持体に保持された第1パターン形成体の第1形成面に対向配置されることで第1形成面を撮像する第1撮像部と、
筐体に取り付けられ、移動機構による移動に伴って、第2保持体に保持された第2パターン形成体の第2形成面に対向配置されることで第2形成面を撮像する第2撮像部と
を有することを特徴とする[13]または[14]記載の磁気記録媒体の製造装置。
[16]第1保持体に取り付けられた後であって磁気転写で使用される前の第1パターン形成体における第1形成面を予め撮像して得られた第1基準データと、第2保持体に取り付けられた後であって磁気転写で使用される前の第2パターン形成体における第2形成面を予め撮像して得られた第2基準データとを記憶する記憶手段をさらに備え、
判断手段は、記憶手段から読み出した第1基準データと第1形成面を撮像して得られた第1撮像データとの比較に基づいて第1形成面に対する異物の付着の有無を判断し、且つ、第2基準データと第2形成面を撮像して得られた第2撮像データとの比較に基づいて第2形成面に対する異物の付着の有無を判断すること
を特徴とする[13]乃至[15]のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気転写を行うために取り付けがなされたパターン形成体に付着した異物を、検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態が適用される磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置の構成の一例を示した図である。
【図2】磁気記録媒体の断面構成の一例を示す図である。
【図3】磁気記録媒体の片面の上面図である。
【図4】本実施の形態における磁気記録媒体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】磁気転写工程で用いられる磁気転写装置の上面図である。
【図6】図5に示す磁気転写装置のVI−VI断面図である。
【図7】図5に示すVII−VII断面すなわち受光ユニットのYZ断面図である。
【図8】磁気転写装置で用いられるマスタ情報記録体の構成の一例を示す図である。
【図9】磁気転写装置における制御ブロックの一例を示す図である。
【図10】磁気転写工程の一例を示すフローチャートである。
【図11】第1光源によって照射された光が、第1マスタにて反射し、第1受光部にて受光される様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される磁気記録媒体1を備えた磁気記録再生装置の構成の一例を示した図である。
この磁気記録再生装置は、データを磁気情報として磁気的に記録する磁気記録媒体1と、磁気記録媒体1を回転駆動させる回転駆動部2と、磁気記録媒体1にデータを書き込むとともに磁気記録媒体1に記録されたデータを読み取る磁気ヘッド3と、磁気ヘッド3を搭載するキャリッジ4と、キャリッジ4を介して磁気記録媒体1に対して磁気ヘッド3を相対移動させるヘッド駆動部5と、外部から入力された情報を処理して得られた記録信号を磁気ヘッド3に出力し、磁気ヘッド3からの再生信号を処理して得られた情報を外部に出力する信号処理部6とを備えている。
ここで、本実施の形態では、磁気記録媒体1が円盤状の形状を有しており、後述するように、その両面にそれぞれデータを記録するための記録層が形成されている。そして、図1に示す例では、1台の磁気記録再生装置に複数(ここでは3枚)の磁気記録媒体1が取り付けられている。
【0013】
図2は、図1に示す磁気記録媒体1の断面構成の一例を示す図である。なお、磁気記録媒体1に対するデータの記録方式には面内記録方式と垂直記録方式とが存在するが、本実施の形態では、垂直記録方式において使用される磁気記録媒体1について説明を行う。
この磁気記録媒体1は、円盤状の基板100と、円盤状の基板100の両面上に形成された密着層110と、密着層110の上に形成された軟磁性下地層120と、軟磁性下地層120の上に形成された配向制御層130と、配向制御層130の上に形成された非磁性下地層140と、非磁性下地層140の上に形成された垂直記録層150と、垂直記録層150の上に形成された保護層160と、保護層160の上に形成された潤滑層170とを備えている。そして、本実施の形態では、基板100の両面のそれぞれに、密着層110、軟磁性下地層120、配向制御層130、非磁性下地層140、垂直記録層150、保護層160、および潤滑層170が形成されるようになっている。なお、以下の説明においては、必要に応じて、基板100の両面に密着層110から保護層160までを積層したもの、換言すれば、基板100に潤滑層170以外を形成したものを、積層基板180と称することがある。
【0014】
図3は、磁気記録媒体1の片面の上面図である。また、図3には、磁気記録媒体1の表面に設けられる複数のデータ領域を模式的に示している。
本実施の形態における磁気記録媒体1は、上述したように円盤状の形状を有しており、その中央部には磁気記録媒体1の表裏を貫通する円形状の孔が形成されている。以下の説明では、磁気記録媒体1における円形状の孔の縁を内端1aと称し、磁気記録媒体1における外周の縁を外端1bと称する。
【0015】
図3に示す磁気記録媒体1の表面には、磁気ヘッド3(図1参照)を用いたデータの読み書きを行うための読み書きデータ記憶領域A1と、磁気ヘッド3を用いたデータの読み書きにおいて磁気ヘッド3の位置決めに用いられるデータ(位置決めデータという)を記憶する位置決めデータ記憶領域A2とが設けられている。この例において、位置決めデータ記憶領域A2は、磁気記録媒体1の表面に、放射状に複数設けられている。また、磁気記録媒体1の表面には、同心円状に、複数のトラックTが設けられる。なお、図示はしていないが、図3に示す磁気記録媒体1の裏面にも、同様にして、読み書きデータ記憶領域A1と位置決めデータ記憶領域A2とが設けられている。ただし、磁気記録媒体1の表裏面のそれぞれに設けられた位置決めデータ記憶領域A2は、表裏で位置を合わせなくてもかまわない。
【0016】
磁気記録媒体1の位置決めデータ記憶領域A2には、位置決めデータとして、例えば、磁気ヘッドによる読み取り時において検出信号の利得調整に用いられるAGC(Auto Gain Control)パターン、サーボ信号の検出に用いられる検出パターン、サーボ・トラックのシリンダ情報あるいはセクタ情報の検出に用いられるアドレス・パターン、そして目的とするトラックTに磁気ヘッドを移動させた後にそのトラックT上に磁気ヘッドを追従させるのに用いられるバースト・パターン(いずれも図示せず)等を含むサーボ・パターンが、磁気記録媒体1に設けられた垂直記録層150に磁気記録されている。
【0017】
磁気記録媒体1に転写されるパターンには、上記のサーボ・パターンの他に、プリサーボ・パターンが含まれる。プリサーボ・パターンとは、ハード・ディスク・ドライブがサーボ・パターンを生成するために用いるパターンであり、セルフサーボ・パターンとも呼ばれる。そして、サーボ・パターンは磁気記録媒体1の両面に形成されるのに対し、プリサーボ・パターンは磁気記録媒体1の片面のみに形成すれば可能な場合がある。
【0018】
図4は、本実施の形態における磁気記録媒体1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
磁気記録媒体1の製造に先立ち、予め円盤状に形成されるとともに中央部に表裏を貫通する円形状の孔が形成された基板100を準備し、予備洗浄を行った後、この基板100に対する研磨を行う(ステップ101)。ステップ101における基板100の研磨は、例えばダイヤモンドスラリーを用いたメカニカルポリッシュで行うことが望ましい。
【0019】
次に、研磨が施された基板100に対し、前洗浄を行う(ステップ102)。ステップ102における基板100の前洗浄は、研磨が施された基板100を、純水あるいは超純水に浸漬して超音波振動を加えながら行うことが好ましい。そして、前洗浄がなされた基板100は、速やかにスピン法等で乾燥させることが好ましい。
【0020】
続いて、前洗浄が施された基板100の両面に対し、密着層110、軟磁性下地層120、配向制御層130、非磁性下地層140、垂直記録層150および保護層160を順次積層する成膜工程を行う(ステップ103)。ここで、生産性を向上させるという観点からすれば、ステップ103における各層の形成を、例えばそれぞれが成膜機能を備えた複数のチャンバを直列に接続したインライン式成膜装置で行うことが好ましい。また、生産性を向上させるという観点からすれば、成膜工程で形成される各層をスパッタリング法で形成することが望ましい。ただし、保護層160の強度を確保しつつ薄膜化するという観点からすれば、密着層110から垂直記録層150についてはスパッタリング法で形成する一方、保護層160についてはCVD法で形成することが好ましい。このように、前洗浄が施された基板100に対し成膜工程を行うことで、積層基板180(図2参照)が得られる。
【0021】
そして、成膜工程によって得られた積層基板180に対し、後洗浄を行う(ステップ104)。
次に、後洗浄が施された積層基板180に対し、潤滑剤を塗布し(ステップ105)、積層基板180に潤滑層170を形成する。続いて、潤滑層170が塗布された積層基板180を100℃程度で数分間加熱するベークを行う(ステップ106)。これにより、潤滑層170に含まれる水分が揮発し、且つ、積層基板180の最表面側に設けられた保護層160と保護層160に接する潤滑層170との密着性が高まる。以上により、磁気記録媒体1が得られる。
【0022】
次いで、ベークが施された磁気記録媒体1の両面をワイピングする(ステップ107)。ワイピング工程は、磁気記録媒体1の両面に付着したスパッタダスト等を拭き取るために行われる。
そして、ワイピングが施された磁気記録媒体1の両面に対しバーニッシュを行う(ステップ108)。
【0023】
次に、バーニッシュが施された磁気記録媒体1に対し、初期磁化を行う(ステップ109)。この例では、垂直記録方式で用いられる磁気記録媒体1を対象としているため、初期磁化工程は、磁気記録媒体1の表面に垂直方向に一方向の初期直流磁界を印加することによって行われる。その際に印加する初期直流磁界は永久磁石、電磁石によって発生させることが可能であり、好ましくは、より安定で磁力の強いNdFeB系の焼結磁石を用いて発生させるのが好ましい。また、初期磁化工程は磁気記録媒体1と磁石とを非接触状態で行うことが、磁気記録媒体1の表面の清浄性を維持する上で好ましい。
【0024】
ここで、本実施の形態の磁気記録媒体1における垂直記録層150(第1磁性層151、第2磁性層153、第3磁性層155)の保磁力Hcは、通常、320kA/m(約4000Oe)以上になっている。よって、初期磁化工程では、垂直記録層150の各磁性層を直流磁化することが可能な磁石を用いるとよい。
【0025】
その後、初期磁化が施された磁気記録媒体1に対し、表面検査を行う(ステップ110)。表面検査工程では、初期磁化後の磁気記録媒体1の表裏面への塵埃の付着や異常突起の有無を検査する。
そして、表面検査が完了した磁気記録媒体1に対し磁気転写を行い(ステップ111)、磁気記録媒体1の両面または片面に位置決めデータ記憶領域A2(図3参照)を設ける。
【0026】
続いて、磁気転写が施された磁気記録媒体1に対しグライド検査を行う(ステップ112)。グライド検査工程では、磁気転写済の磁気記録媒体1の表面に突起物が無いかどうか、実際に磁気ヘッドを浮上走行させて検査する。磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体1をデータの書き込み(記録)および読み出し(再生)を実行する際に、磁気記録媒体1の表面に浮上量(磁気記録媒体1と磁気ヘッドとの間隔)以上の高さの突起があると、磁気ヘッドが突起にぶつかって磁気ヘッドが損傷したり、磁気記録媒体1に欠陥が発生したりする原因となる。このため、グライド検査では、そのような高い突起の有無を検査する。
【0027】
次いで、グライド検査に合格した磁気記録媒体1に対し、サーティファイ検査を行う(ステップ113)。サーティファイ検査工程では、通常の磁気記録再生装置と同様に、磁気記録媒体1に対して磁気ヘッドで予め決められた信号を記録した後、記録した信号を再生し、得られた再生信号によって磁気記録媒体1の記録不良を検出し、磁気記録媒体1の電気特性や欠陥の有無など磁気記録媒体1の品質を確かめる。上述した方法で製造した磁気記録媒体1には、既にサーボ・パターンまたはプリサーボ・パターンが書き込まれているため、サーボ情報を用いない従来の方式でのサーティファイ検査を実施することが困難となっている。このため、本実施の形態では、磁気記録媒体1に磁気転写されたサーボ・パターンまたはプリサーボ・パターン(位置決めデータ)を利用して磁気ヘッドを特定箇所に位置づけし、データの読み書きを行う形式の検査を行う。
そして、サーティファイ検査に合格した磁気記録媒体1が、製品として出荷されることになる。
【0028】
では、ステップ111の磁気転写工程について、より詳細に説明する。本実施の形態における磁気転写工程では、磁気記録媒体1の両面に対するマスタ情報記録体200(図8参照)を用いた磁気転写と、磁気転写で使用するマスタ情報記録体200の表面検査とを、交互に実行していることに特徴がある。
【0029】
図5は磁気転写工程で用いられる磁気転写装置10の上面図を示しており、図6は図5に示す磁気転写装置10のVI−VI断面図を示している。図5および図6には、磁気記録媒体1の両面にサーボ・パターンを磁気転写することのできる磁気転写装置10を例示している。なお、以下では、図5において、図中上側から下側に向かう方向をX方向、図中右側から左側に向かう方向をY方向、図中奥側から手前側に向かう方向をZ方向として説明を行う。
【0030】
本実施の形態の磁気転写装置10は、磁気記録媒体1にサーボ・パターンを磁気転写するための磁気転写部20と、磁気転写部20において磁気記録媒体1にサーボ・パターンを磁気転写するのに用いられるマスタ情報記録体200の表面状態を検査するマスタ検査部70とを備えている。
【0031】
これらのうち、磁気転写手段の一例としての磁気転写部20は、図示しない基台に固定した状態で搭載され、サーボ・パターンが予め記録されたマスタ情報記録体200を固定した状態で保持する第1ホルダ30と、図示しない基台に対しY方向および−Y方向に移動できるように配置され、サーボ・パターンが予め記録されたマスタ情報記録体200を固定した状態で保持する第2ホルダ40とを備える。また、第1ホルダ30に取り付けられたマスタ情報記録体200および第2ホルダ40に取り付けられたマスタ情報記録体200は、互いにサーボ・パターンの記録面を対向させた状態で配置されている。なお、以下の説明においては、第1ホルダ30に取り付けられたマスタ情報記録体200を第1マスタと称することがあり、また、第2ホルダ40に取り付けられたマスタ情報記録体200を第2マスタと称することがある。なお、本実施の形態では、第1ホルダ30が第1保持体として、また、第2ホルダ40が第2保持体として、それぞれ機能している。
【0032】
また、マスタ情報記録体200(第1マスタ)を保持した第1ホルダ30背面側には、図示しない第1磁石を備えた第1磁石部材50が配置されている。この第1磁石部材50は、第1ホルダ30に対向配置される第1磁石を保持する第1磁石保持部51と、第1磁石保持部51の背面側からY方向に沿って伸びる第1磁石支持部52とを備えている。第1磁石支持部52は、図示しない基台に対しY方向には固定された状態で支持され、且つ、Y方向を軸として回転可能に支持されている。これにより、第1磁石支持部52の回転に伴って、第1磁石保持部51に保持された第1磁石が回転するようになっている。
【0033】
一方、他のマスタ情報記録体200(第2マスタ)を保持した第2ホルダ40の背面側には、図示しない第2磁石を備えた第2磁石部材60が配置されている。第2磁石部材60は、第2ホルダ40に対向配置される第2磁石を保持する第2磁石保持部61と、第2磁石部材61の背面側からY方向に沿って伸びる第2磁石支持部62とを備えている。第2磁石支持部62は、図示しない基台に対してY方向および−Y方向に進退可能に支持され、且つY方向を軸として回転可能に支持されている。これにより、第2磁石支持部62の進退に伴って第2磁石保持部61に保持された第2磁石が進退するとともに、第2磁石支持部62の回転に伴って第2磁石保持部61に保持された第2磁石が回転するようになっている。
【0034】
そして、本実施の形態では、第1磁石部材50に設けられた第1磁石と第2磁石部材60に設けられた第2磁石とが、第1ホルダ30および第2ホルダ40を挟んで対向するように配置される。また、第1磁石部材50および第2磁石部材60は、第1磁石と第2磁石とを対向させた状態を維持しながら、ともに回転するように構成されている。
【0035】
また、第1ホルダ30は、第1マスタの保持面と第1磁石部材50との対向面とを貫通し、第1マスタの保持面において第1マスタの取り付け位置中央部に開口が設けられた2つの第1吸引路31と、第1マスタの保持面と第1磁石部材50との対向面とを貫通し、第1マスタの保持面において第1マスタの取り付け位置の外側に開口が設けられた2つの第2吸引路32とを備える。そして、第1ホルダ30は、第1マスタの保持面において第2吸引路32の開口よりも外側に周方向に沿って取り付けられたOリング33を備えている。なお、第1ホルダ30の第1マスタの保持面での第1吸引路31の2つの開口には、第1ホルダ30に第1マスタを取り付けた際に、第1マスタ側に設けられた第1貫通孔200aおよび第2貫通孔200b(ともに後述する図8(a)参照)が重ね合わされるようになっている。
【0036】
これに対し、第2ホルダ40は、第1ホルダ30と対向する側の面に第2マスタを保持するとともに、その背面側には第2磁石部材60が設けられた記録体保持部40aと、記録体保持部40aの周縁を覆うように設けられた筒状体40bとを備えている。また、第2ホルダ40は、筒状体40bの内周面に周方向に沿って取り付けられ、周方向にわたって記録体保持部40aの外周面に接触するOリング41をさらに備えている。ここで、第2ホルダ40を構成する記録体保持部40aおよび筒状体40bは、互いに独立して第1ホルダ30に対し進退可能に取り付けられている。また、筒状体40bの第1ホルダ30と対向する側の端部は、第1ホルダ30に設けられたOリング33に対し一周にわたって対向し且つ接触するようになっている。なお、第2ホルダ40の記録体保持部40aには、第1ホルダ30のような吸引路は設けられていない。このため、記録体保持部40aに取り付けられるマスタ情報記録体200には、第1貫通孔200aおよび第2貫通孔200b(ともに後述する図8(a)参照)を設けておく必要がない。
【0037】
一方、マスタ検査部70は、第1ホルダ30に取り付けられた第1マスタに光を照射する第1光源71と、第2ホルダ40に取り付けられた第2マスタに光を照射する第2光源72と、第1光源71にて照射され第1マスタにて反射した反射光を受光し且つ第2光源72にて照射され第2マスタにて反射した反射光を受光する受光ユニット73と、受光ユニット73をY方向および−Y方向に案内するガイドレール74とを備えている。
【0038】
ここで、光照射手段の一例としての第1光源71および第2光源72は、磁気転写部20からみて−X方向側に固定して取り付けられており、第1光源71は第2ホルダ40よりも第1ホルダ30に近い側に、第2光源72は第1ホルダ30よりも第2ホルダ40に近い側に、それぞれ位置している。また、第1光源71および第2光源72は、それぞれ、レーザ発生装置やハロゲンランプと、Z方向に伸びる棒状の導光体とを備え、X方向に向けて光を出射するロッド照明装置にて構成することができる。
【0039】
また、ガイドレール74は、第1ホルダ30および第2ホルダ40の間において図示しない基台に取り付けられるようになっており、撮像手段の一例としての受光ユニット73は、検査を行っていない場合に、第1ホルダ30および第2ホルダ40の間から−X方向に退避することで、第1光源71と第2光源72との間に配置されるようになっている。なお、以下の説明では、図6に示す受光ユニット73の位置を退避位置と称する。
【0040】
図7は、図5に示すVII−VII断面すなわち受光ユニット73のYZ断面の一例を示している。
この受光ユニット73は、直方体状の外形を有し且つZ方向に延びる筐体の一例としての枠体80と、枠体80における−Y方向側に取り付けられ且つZ方向に延びる第1受光部81と、枠体80におけるY方向側に取り付けられ且つZ方向に延びる第2受光部82とを備えている。ここで、第1撮像部の一例としての第1受光部81は、Z方向に沿って延びる第1ロッドレンズアレイ81aと、第1ロッドレンズアレイ81aよりもY方向側においてZ方向に沿って延びる第1受光素子列81bとを備えている。また、第2撮像部の一例としての第2受光部82は、Z方向に沿って伸びる第2ロッドレンズアレイ82aと、第2ロッドレンズアレイ82aよりも−Y方向側においてZ方向に沿って伸びる第2受光素子列82bとを備えている。ここで、第1ロッドレンズアレイ81aおよび第2ロッドレンズアレイ82aは、それぞれ、Z方向に沿って複数のロッドレンズを配列したもので構成されている。また、第1受光素子列81bおよび第2受光素子列82bは、それぞれ、例えばCCDイメージセンサやCMOSセンサ等の受光素子を、Z方向に沿って複数配列した1次元のラインセンサで構成されている。
【0041】
そして、受光ユニット73のX方向への移動に伴い、第1受光部81が第1ホルダ30に取り付けられた第1マスタ(マスタ情報記録体200)と対向し、且つ、第2受光部82が第2ホルダ40に取り付けられた第2マスタ(マスタ情報記録体200)と対向するようになっている。
【0042】
図8は、磁気転写装置10で用いられるマスタ情報記録体200(第1マスタ、第2マスタ)の構成の一例を示す図である。ここで、図8(a)はマスタ情報記録体200の上面図を、また、図8(b)は図8(a)におけるVIIIB−VIIIB断面図を、それぞれ示している。
【0043】
マスタ情報記録体200は、磁気記録媒体1よりも直径が大きい円盤状の形状を有している。また、マスタ情報記録体200の一方の面には、サーボ・パターンに対応する微細な凹凸が形成されたサーボ・パターン形成領域SPが設けられている。この例において、サーボ・パターン形成領域SPは、マスタ情報記録体200の一方の面に、中央部と外縁部とを除いて、放射状に複数設けられている。なお、図6等に示す第1ホルダ30あるいは第2ホルダ40にマスタ情報記録体200を取り付けた際には、サーボ・パターン形成領域SPを設けた面が、互いに露出した状態で対向することになる。
【0044】
また、第1ホルダ30に取り付けられる方のマスタ情報記録体200(第1マスタ)の中央部には、上述した理由により、表裏を貫通する第1貫通孔200aおよび第2貫通孔200bが設けられている。これら第1貫通孔200aおよび第2貫通孔200bは、マスタ情報記録体200においてサーボ・パターン形成領域SPよりも内側(中心側)に設けられている。なお、第2ホルダ40に取り付けられる方のマスタ情報記録体200(第2マスタ)には、上述した理由により、これら第1貫通孔200aおよび第2貫通孔200bは不要である。ここで、本実施の形態では、第1マスタとして用いられるマスタ情報記録体200が第1パターン形成体として、第1マスタにおけるサーボ・パターン形成領域SPが第1パターンとして、第1マスタにおけるサーボ・パターン領域SPの形成面が第1形成面として、それぞれ機能している。他方、本実施の形態では、第2マスタとして用いられるマスタ情報記録体200が第2パターン形成体として、第2マスタにおけるサーボ・パターンSPが第2パターンとして、第2マスタにおけるサーボ・パターン形成領域SPの形成面が第2形成面として、それぞれ機能している。
【0045】
次に、構造について説明すると、マスタ情報記録体200は、円盤状の基体201と、この基体201の一方の面に形成されたマスタ磁性層202と、マスタ磁性層202の上に形成されたマスタ保護層203とを備えている。ここで、図8(b)は、サーボ・パターン形成領域SPにおけるマスタ情報記録体200の断面構成を示しており、この部位には、サーボ・パターンに対応した凸部204および凹部205が存在している。なお、マスタ情報記録体200の一方の面のうち、サーボ・パターン形成領域SP以外の領域は、マスタ情報記録体200と磁気記録媒体1との吸着を防ぐため、サーボ・パターン形成領域SPにおける凹部205と同じ高さとなっている。
【0046】
マスタ情報記録体200は公知の方法によって製造できるが、例えば次の製造方法を掲げることができる。先ず、シリコンウェハの表面に電子線レジストをスピンコート法により塗布する。塗布後、このレジストに対し、電子線露光装置を用いて、サーボ・パターンに対応させて変調した電子ビームを照射し、レジストを露光する。その後、レジストを現像し、未露光部分を除去して、シリコンウェハ上にレジストのパターンを形成する。
【0047】
次いで、このレジストパターンをマスクとして用い、シリコンウェハに対して反応性エッチング処理を行い、レジストでマスクされていない箇所を掘り下げる。このエッチング処理後、シリコンウェハ上に残存するレジストを溶剤で洗浄除去する。その後、シリコンウェハを乾燥させてマスタ情報記録体200を作製するための原盤を得る。
【0048】
この原盤上に、Niからなる導電層をスパッタリング法により10nm程度形成する。その後、この導電層を形成した原盤を母型として用い、電鋳法により、この原盤上に数μm厚のNi層を形成する。その後、Ni層を原盤から外し、このNi層を洗浄等して、表面に凸部を配設した基体201を得る。
【0049】
次いで、この基体201の表面にマスタ磁性層202を形成する。このマスタ磁性層202については磁気記録媒体1に用いられる磁性層(第1磁性層151等)と同じものが使用できる。またマスタ磁性層202の上には磁気記録媒体1と同様にマスタ保護層203を形成する。このマスタ保護層203は、マスタ情報記録体200の耐摩耗性すなわちマスタ情報記録体200の転写耐久性を高めるものであり、数nm程度の厚さの硬質炭素膜等を用いることができる。以上の製造工程によってマスタ情報記録体200を得ることができる。
なお、このようにして得られたマスタ情報記録体200は、例えば10万枚以上の磁気記録媒体1の製造(磁気転写)に繰り返し使用される。
【0050】
図9は、図5等に示す磁気転写装置10における制御ブロックの一例を示す図である。
磁気転写装置10は、装置全体の動作を制御するためのコントローラ300を備えている。このコントローラ300は、第2ホルダ40をY方向に進退させるためのホルダ駆動部301、受光ユニット73をX方向に進退させるための受光ユニット駆動部302、第1光源71を点灯・消灯させる第1光源駆動部303、第2光源72を点灯・消灯させる第2光源駆動部304、第1受光素子列81bを駆動する第1受光素子列駆動部305、第2受光素子列82bを駆動する第2受光素子列駆動部306、磁気転写部20に対する磁気記録媒体1の搬入・搬出を行う媒体搬送部307、第1ホルダ30に設けられた第1吸引路31および第2吸引路32に接続された吸引機構(図示せず)を駆動する吸引駆動部308、第1磁石部材50および第2磁石部材60を駆動する磁石駆動部309に、それぞれ制御信号を出力するようになっている。ここで、本実施の形態では、受光ユニット駆動部302およびガイドレール74(図5参照)が、移動機構として機能するようになっている。また、本実施の形態では、コントローラ300が、判断手段および許可手段として機能するようになっている。
また、コントローラ300には、第1マスタおよび第2マスタの表面検査において合否判断に使用される基準データを記憶する記憶手段の一例としての基準データ記憶部310が接続され、さらに、表面検査の結果を出力する表示部311が接続されている。なお、基準データ記憶部310に記憶される基準データの内容については後述する。
【0051】
では、図5乃至図9と、図10に示すフローチャートとを用いて、磁気転写装置10によるステップ111(図4参照)の磁気転写工程(磁気記録媒体1への磁気転写および各マスタ情報記録体200(第1マスタ、第2マスタ)の表面検査)について説明を行う。なお、初期状態において、磁気転写装置10を構成する各部は、図5および図6に示した位置に配置されているものとする。ただし、初期状態において、磁気転写部20に対する磁気記録媒体1の取り付けは行われていないものとする。
【0052】
動作の開始に伴い、コントローラ300が、サーボ・パターンの転写に先立って、マスタ検査部70を用いて、第1ホルダ30に取り付けられた第1マスタおよび第2ホルダ40に取り付けられた第2マスタの撮像を行わせる(ステップ201)。ここで、ステップ201は、第1形成面を撮像する工程と、第2形成面を撮像する工程とに対応する。
【0053】
次に、コントローラ300が、ステップ201で得られた第1マスタの撮像データに対し、基準データ記憶部310から読み出した第1マスタの基準データを用いて画像処理を施し、且つ、ステップ201で得られた第2マスタの撮像データに対し、基準データ記憶部100から読み出した第2マスタの基準データを用いて画像処理を施す(ステップ202)。続いて、コントローラ300は、第1マスタの撮像データに関する画像処理結果(以下の説明では第1処理データと称する)に基づいて第1マスタ(より詳細には第1マスタにおけるサーボ・パターン形成面)に異常が生じているか否かを判断する(ステップ203)。ステップ203において第1マスタに異常が生じていないと判断した場合、コントローラ300は、次に、第2マスタの撮像データに関する画像処理結果(以下の説明では第2処理データと称する)に基づいて第2マスタ(より詳細には第2マスタにおけるサーボ・パターン形成面)に異常が生じているか否かを判断する(ステップ204)。ここで、ステップ203およびステップ204は、第1形成面の撮像結果に基づく第1形成面への異物の付着と、第2形成面の撮像結果に基づく第2形成面への異物の付着とを判断する工程と対応する。
【0054】
ステップ204において第2マスタに異常が生じていないと判断した場合、すなわち、第1マスタおよび第2マスタの両者に異常が生じていないと判断した場合、コントローラ300は、磁気転写部20(第1マスタ、第2マスタ)を用いて、磁気記録媒体1の両面にサーボ・パターンを磁気転写させる(ステップ205)。ここで、ステップ205は、挟み込まれた磁気記録媒体に対し、第1パターンおよび第2パターンを磁気転写する工程に対応する。
【0055】
それから、コントローラ300は、さらに次に磁気転写を行うべき磁気記録媒体1が存在するか否かの判断を行う(ステップ206)。ステップ206において次の磁気記録媒体1が存在すると判断した場合、コントローラ300は、ステップ201に戻って再び第1マスタおよび第2マスタの表面検査を実行させる。一方、ステップ206において次の磁気記録媒体1が存在しないと判断した場合、コントローラ300は、一連の動作を完了させる。
【0056】
他方、ステップ203において第1マスタに異常が生じていると判断した場合、および、ステップ204において第2マスタに異常が生じていると判断した場合、コントローラ300は、表示部311に向けて制御信号(メッセージ)を出力し(ステップ207)、発生した異常に応じたメッセージ(『第1マスタに異常が生じています』、『第1マスタを交換してください』など)を表示部311に表示させる。そして、この場合において、コントローラ300は、磁気記録媒体1に対する新たな磁気転写を行わせることなく、一連の動作を中断させる。なお、ステップ207においてメッセージが表示された後は、異常の発生要因となったマスタ情報記録体200の清掃が行われた後、上述したプロセスを繰り返し行うことになる。
【0057】
続いて、各ステップにおける磁気転写装置10の動作について説明を行う。
まず、ステップ201では、第1光源駆動部303が第1光源71を消灯状態から点灯状態に移行させ、且つ、第2光源駆動部304が第2光源72を消灯状態から点灯状態に移行させる。次に、受光ユニット駆動部302が、退避位置にある受光ユニット73を、ガイドレール74に沿ってX方向に一定速度で移動させる。これに伴い、受光ユニット73に取り付けられた第1受光部81は、第1ホルダ30に取り付けられた第1マスタとの対向領域をX方向に沿って順次通過し、同時に、受光ユニット73に取り付けられた第2受光部82は、第2ホルダ40に取り付けられた第2マスタとの対向領域をX方向に沿って順次通過する。この間、第1受光部81には、第1光源71によって照射され、第1マスタのサーボ・パターン形成面にて反射した光が順次入射し、第2受光部82には、第2光源72によって照射され、第2マスタのサーボ・パターン形成面にて反射した光が順次入射する。
【0058】
より具体的に説明すると、第1受光部81では、第1マスタからの反射光が第1ロッドレンズアレイ81aを通過して第1受光素子列81bに集光される。このとき、第1受光素子列駆動部305は、受光ユニット73のX方向への移動速度に応じて予め決められた間隔にて、第1受光素子列81bによる受光結果をコントローラ300に出力する。これにより、第1受光部81は、Z方向を主走査方向とする1ライン分の撮像データを、X方向を副走査方向として順次出力することになる。
【0059】
一方、第2受光部82では、第2マスタからの反射光が第2ロッドレンズアレイ82aを通過して第2受光素子列82bに集光される。このとき、第2受光素子列駆動部306は、受光ユニット73のX方向への移動速度に応じて予め決められた間隔にて、第2受光素子列82bによる受光結果をコントローラ300に出力する。これにより、第2受光部82は、Z方向を主走査方向とする1ライン分の撮像データを、X方向を副走査方向として順次出力することになる。
本実施の形態において、第1受光部81による受光・出力動作および第2受光部82による受光・出力動作は、並列且つ同時進行的に行われる。
【0060】
その後、X方向に移動する受光ユニット73が第1マスタおよび第2マスタに挟まれた領域を通過すると、第1マスタおよび第2マスタの撮像が完了する。そして、受光ユニット駆動部302は、撮像を完了した受光ユニット73を、ガイドレール74に沿って−X方向に移動させ、再び退避位置で停止させる。なお、このときの受光ユニット73の移動速度は、撮像を行っているときの受光ユニット73の移動速度よりも高速とすることが望ましい。また、受光ユニット73による撮像が完了した後、第1光源駆動部303が第1光源71を点灯状態から消灯状態に移行させ、且つ、第2光源駆動部304が第2光源72を点灯状態から消灯状態に移行させる。
【0061】
次に、ステップ202では、コントローラ300が、第1受光部81から主走査方向1ライン分ずつ入力されてくる第1マスタの撮像データを、副走査方向に順次配列していき、第1マスタ1枚分の撮像データ(以下の説明では第1撮像データと称する)を作成する。また、コントローラ300は、第2受光部82から主走査方向1ライン分ずつ入力されてくる第2マスタの撮像データを、副走査方向に順次配列していき、第2マスタ1枚分の撮像データ(以下の説明では第2撮像データと称する)を作成する。
【0062】
さらに、コントローラ300は、基準データ記憶部310に格納されていた第1マスタの基準データ(以下の説明では第1基準データと称する)を読み出す。ここで、第1基準データとは、現在使用している第1マスタが第1ホルダ30に取り付けられた後、実際に磁気転写に使用される前の初期状態において、マスタ検査部70(より具体的には第1光源71および第1受光部81)を用いて取得された第1マスタの撮像データのことをいう。そして、コントローラ300は、第1基準データと第1撮像データとを用い、画素毎に差分を求める画像処理を実行することで、第1処理データを得る。
【0063】
一方、コントローラ300は、基準データ記憶部310に記憶されていた第2マスタの基準データ(以下の説明では第2基準データと称する)を読み出す。ここで、第2基準データとは、現在使用している第2マスタが第2ホルダ40に取り付けられた後、実際に磁気転写に使用される前の初期状態において、マスタ検査部70(より具体的には第2光源72および第2受光部82)を用いて取得された第2マスタの撮像データのことをいう。そして、コントローラ300は、第2基準データと第2撮像データとを用い、画素毎に差分を求める画像処理を実行することで、第2処理データを得る。
【0064】
ここで、図11は、第1光源71(図6参照)によって照射された光が、第1マスタ(マスタ情報記録体200)にて反射し、第1受光部81にて受光される様子を説明するための図である。なお、図11(a)、(b)は、第1マスタのサーボ・パターン形成面に埃等の異物Dが付着していない場合を例示しており、図11(a)は図6におけるYZ断面を、図11(b)は図11(a)において第1受光部81側から第1マスタをみた図を、それぞれ示している。また、図11(c)、(d)は、第1マスタのサーボ・パターン形成面に埃等の異物Dが付着している場合を例示しており、図11(c)は図6におけるYZ断面を、図11(d)は図11(c)において第1受光部81側から第1マスタをみた図を、それぞれ示している。
【0065】
本実施の形態では、第1マスタのサーボ・パターン形成面に対し、ほぼ平行に近い浅い角度で、第1光源71からの光が照射されるようになっている。これに対し、第1受光部81は、第1マスタのサーボ・パターン形成面に対し、第1ロッドレンズアレイ81a(図7参照)の受光面が、ほぼ垂直となるように配置されている。このため、第1受光部81は、第1光源71にて照射され、第1マスタのサーボ・パターン形成面にて反射する光のうち、拡散反射光を受光するようになっている。なお、第1マスタのサーボ・パターン形成面と第1光源71から照射される光との成す角度は、0°を超え45°未満となる範囲から選択することができるが、後述するように、より小さな異物を検出可能とするためには、0°に近づけることが望ましい。
【0066】
本実施の形態の第1マスタは、上述したように、その表面にサーボ・パターンに応じた凹凸が形成されている。このため、例えば図11(a)、(b)に示すように、異物Dが付着していない状態においても、第1光源71から斜めに入射してくる光により、凹部205のうち凸部204の背後となる領域には、凸部204に応じた第1の影S1が形成されることになる。一方、例えば図11(c)、(d)に示すように、凹部205に異物Dが付着している場合には、第1光源71から斜めに入射してくる光により、凹部205には、凸部204に起因する第1の影S1に加え、異物Dに起因する第2の影S2も形成されることになる。
【0067】
ここで、異物Dは、第1マスタを磁気転写に使用することで、第1マスタと磁気記録媒体1とが接触する際に付着しやすくなることが知られている。特に、磁気転写に伴って第2ホルダ40が移動したり、第1磁石支持部52および第2磁石支持部62が回転したりすることで、これらの部材に付着した埃等が、異物として第1マスタや第2マスタに付着しやすくなる事態が生じ得る。したがって、逆にみれば、交換直後の初期状態において、第1マスタのサーボ・パターン形成面に対する異物Dの付着は、生じにくいといえる。このため、本実施の形態では、第1基準データを、第1マスタ交換後の初期状態において予め取得しておき、第1マスタへの異物Dの付着を検出するためのリファレンスとして利用している。なお、このときに得られる第1基準データは、凸部204の存在に応じた濃淡を有するものとなる。
【0068】
また、第1マスタに異物Dの付着が生じていない場合、ステップ201での撮像において、第1マスタには、図11(a)、(b)に示したように、凸部204に起因する第1の影S1が生じる一方、異物Dに起因する第2の影S2は生じない。このため、得られる第1撮像データは、第1基準データと同じく、凸部204の存在に応じた濃淡を有するものとなる。したがって、第1マスタに異物Dが付着していない場合は、第1基準データと第1撮像データとを用い、画素毎に差分を求めることで得られた第1処理データが、第1マスタの全域にわたってほぼ一定になる。
【0069】
これに対し、第1マスタに異物Dの付着が生じている場合、ステップ201での撮像において、第1マスタには、図11(c)、(d)に示したように、凸部204に起因する第1の影S1に加え、異物Dに起因する第2の影S2も生じる。このため、得られる第1撮像データは、第1基準データとは異なり、凸部204および異物Dの存在に応じた濃淡を有するものとなる。したがって、第1マスタに異物Dが付着している場合は、第1基準データと第1撮像データとを用い、画素毎に差分を求めることで得られた第1処理データが、第2の影S2の存在領域を除いてほぼ一定になる。逆に言えば、第2の影S2の存在領域における差分が、他の領域よりも突出することになる。
【0070】
このため、差分の閾値を予め適切な値に設定しておくことで、ステップ203において、第1マスタの異常すなわち第1マスタに対する異物Dの付着の有無を判断することが可能になる。
また、この例では、第1マスタに対し0°を超え45°未満となる浅い角度で第1光源71からの光を入射させていているので、異物Dによって凹部205に形成される第2の影S2の長さを、異物Dの実際の高さよりも大きくすることができる。このため、第1受光部81を用いて、第1受光素子列81bの分解能よりも、実際の径が小さい異物Dの検出を行うことが可能になる。
なお、ここでは第1光源71および第1受光部81を用いて第1マスタの検査を行う場合を例に説明を行ったが、第2マスタについても、第2光源72および第2受光部82により、同じ手法を用いて検査を行うことができる。このとき、第2マスタのサーボ・パターン形成面と第2光源72から照射される光との成す角度は、0°を超え45°未満となる範囲から選択することができるが、より0°に近づけることが望ましい。
また、上述した説明においては、第1光源71および第2光源72から出力される光の波長について特に言及していなかったが、例えば青色光や紫外光など、より波長の短い光を用いることにより、異物Dの検出分解能をより高めることが可能になる。
【0071】
また、ステップ205では、まず、媒体搬送部307が、磁気転写前の磁気記録媒体1を保持しつつ、第1ホルダ30と第2ホルダ40との間、より具体的には、第1ホルダ30に取り付けられた第1マスタと正対する位置まで搬送する。次に、吸引駆動部308が、第1吸引路31を介した吸引を開始させることで第1ホルダ30側に磁気記録媒体1を吸着させ、第1ホルダ30に取り付けられた第1マスタのサーボ・パターン形成面に磁気記録媒体1の一方の面を接触させる。そして、第1ホルダ30側に磁気記録媒体1を吸着させてから、磁気記録媒体1の保持を解除し、第1ホルダ30および第2ホルダ40の対向領域から退避する。
【0072】
続いて、磁気転写部20において、第2ホルダ40(記録体保持部40a、筒状体40b)および第2磁石部材60が第1ホルダ30側に近づく方向へと移動を開始する。これに伴い、まず、筒状体40bの周部端面が第1ホルダ30に設けられたOリング33に突き当たった後に停止する。また、記録体保持部40aおよび第2磁石部材60は、筒状体40bが停止した後も第1ホルダ30側に近づく方向へと移動を続け、第1ホルダ30に設けられた第1マスタと可動ホルダ40の記録体保持部40aに設けられた第2マスタとによって磁気記録媒体1を挟み込んだ後に停止する。なお、記録体保持部40aの停止位置は予め決められており、その結果、第1マスタ、第2マスタおよび1枚の磁気記録媒体1には、予め設定された軽い荷重が加えられる。また、このとき、第1ホルダ30と記録体保持部40aと筒状体40bとの間には、第1ホルダ30に設けられたOリング33と筒状体40bに設けられたOリング41とを用いて、閉空間が形成される。続いて、第2吸引路32を介した吸引を開始させることで、閉空間内に存在する第1マスタ、第2マスタと1枚の磁気記録媒体1との間に存在する隙間が真空引きされ、閉空間内外の差圧によって第1マスタ、第2マスタの各サーボ・パターン形成面と1枚の磁気記録媒体1の両面とがそれぞれ密着していく。
【0073】
次に、第1磁石部材50および第2磁石部材60は、第1磁石支持部52および第2磁石支持部62を軸とし、第1マスタ、第2マスタと1枚の磁気記録媒体1とを挟んで、第1磁石および第2磁石を対向させた状態を維持しながら少なくとも1回転する。
第1磁石および第2磁石が1回転する間、第1マスタ、第2マスタに挟まれた磁気記録媒体1では、第1磁石および第2磁石により、初期磁化工程とは逆向きの直流磁界が周方向に順次印加される。すると、磁気記録媒体1のうち、第1ホルダ30側の第1マスタと接する側では、この第1マスタの凹部205と対向する部位における磁性層の磁化の向きは初期磁化工程後の状態を維持するものの、凸部204と接する部位における磁性層の磁化の向きは反転した状態となる。また、この磁気記録媒体1のうち、第2ホルダ40側の第2マスタと接する側でも、この第2マスタの凹部205と対向する部位における磁性層の磁化の向きは初期磁化工程後の状態を維持するものの、凸部204と接する部位における磁性層の磁化の向きは反転した状態となる。このようにして、転写前媒体の両面には、それぞれ、第1マスタ、第2マスタに設けられた凹凸の配列からなるサーボ・パターンが、磁化の向きの配列からなるサーボ・パターンとして転写される。その結果、磁気記録媒体1の位置決めデータ記憶領域A2には、サーボ・パターンが記憶される。
【0074】
このようにして磁気転写が完了すると、まず、第2吸引路32を介した吸引を停止して閉空間内を大気圧とし、次いで、第2ホルダ40(記録体保持部40a、筒状体40b)および第2磁石部材60が元の位置への後退を開始する。これにより、固定ホルダ30に保持された転写済媒体は、外部に露出した状態となる。
【0075】
それから、媒体搬送部307が、第1ホルダ30と第2ホルダ40との間、より具体的には、第1ホルダ30に取り付けられた第1マスタと正対する位置まで移動して停止し、磁気転写済の磁気記録媒体1を保持する。続いて、吸引駆動部308が、第1吸引路31を介した吸引を終了させることで第1ホルダ30側への磁気記録媒体1の吸着を解除する。その後、媒体搬送部307が、磁気転写済の磁気記録媒体1を保持しつつ、第1ホルダ30および第2ホルダ40の対向領域から退避する。
【0076】
なお、本実施の形態では、それぞれ1次元のラインセンサを用いて第1マスタおよび第2マスタの撮像を行っていたが、これに限られるものではなく、例えば2次元のエリアセンサを用いるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、第1マスタの撮像と第2マスタの撮像とを並行して行うようにしていたが、これに限られるものではなく、第1マスタの撮像と第2マスタの撮像とを順次行うようにしてもよい。
さらに、本実施の形態では、1枚の磁気記録媒体1に磁気転写を行う毎に第1マスタおよび第2マスタの検査を行うようにしていたが、これに限られるものではなく、複数枚(例えば10枚、100枚、…)の磁気記録媒体1に磁気転写を行う毎に第1マスタおよび第2マスタの検査を行うようにしてもよい。
【0077】
また、本実施の形態では、第1ホルダ30が保持するマスタ情報記録体200(第1マスタ)と、第2ホルダ40が保持するマスタ情報記録体200(第2マスタ)との間に、磁気記録媒体1を挟み込むことで、磁気記録媒体1の両面にサーボ・パターン(プレサーボ・パターンを含む)等を磁気転写する例について説明を行った。ただし、これに限られるものではなく、例えば第1ホルダ30が保持するマスタ情報記録体200に磁気記録媒体1の片面を接触させ、この磁気記録媒体1の片面にのみサーボ・パターン等を磁気転写する構成としてもよい。この場合において、磁気記録媒体1は、例えば第2吸引路32等を介した吸着等によってマスタ情報記録体200に接触させるようにしてもかまわない。ただし、マスタ情報記録体200に対する磁気記録媒体1の密着性を高めるという観点からすれば、マスタ情報記録体200を保持する第2ホルダ40に代えて、第1ホルダ30に対して進退可能な平板状の押付部材を設け、第1ホルダ30に保持されたマスタ情報記録体200に対し、押付部材を用いて磁気記録媒体1を押し付けるようにすることが望ましい。
【0078】
ここで、例えば前者の押付部材を有しない構成を採用した場合には、マスタ検査部70に第2光源72および第2受光部82を設ける必要はなく、第1光源71および第1受光部82を用いてマスタ情報記録体200の表面(サーボ・パターンの形成面)を撮像した結果に基づいて、マスタ情報記録体200に対する異物Dの付着の有無を判定し、磁気記録媒体1に対する磁気転写の実行の可否を決めればよい。
【0079】
一方、例えば後者の押付部材を有する構成を採用した場合には、第1光源71および第1受光部81を用いてマスタ情報記録体200を撮像した結果に基づいて、マスタ情報記録体200に対する異物の付着の有無を判定するとともに、第2光源72および第2受光部82を用いて押付部材の押し付け面(磁気記録媒体1との接触面)を撮像した結果に基づいて、押付部材に対する異物Dの付着の有無を判定し、磁気記録媒体1に対する磁気転写の実行の可否を決めればよい。
【符号の説明】
【0080】
1…磁気記録媒体、10…磁気転写装置、20…磁気転写部、30…第1ホルダ、40…第2ホルダ、70…マスタ検査部、71…第1光源、72…第2光源、73…受光ユニット、81…第1受光部、82…第2受光部、200…マスタ情報記録体、201…基体、202…マスタ磁性層、203…マスタ保護層、204…凸部、205…凹部、300…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持体に保持され且つパターンが形成されたパターン形成体に対し、当該パターンが形成されたパターン形成面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、当該パターン形成面から拡散反射する光を受光することで、当該パターン形成面を撮像する工程と、
前記パターン形成面の撮像結果に基づいて当該パターン形成面に対する異物の付着を判断する工程と、
前記判断する工程において前記パターン形成面への異物の付着が認められない場合に、前記保持体に保持された前記パターン形成体における当該パターン形成面に磁気記録媒体における記録面を接触させ、当該パターン形成体と接触する当該磁気記録媒体に対し、前記パターンを磁気転写する工程と
を含む磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記磁気転写する工程では、前記保持体に保持された前記パターン形成体における前記パターン形成面に対し相対的に進退可能に設けられる押付部材を用い、前記磁気記録媒体における前記記録面の裏面を介して、当該パターン形成体に対する当該磁気記録媒体の押し付けを行い、
前記撮像する工程では、前記押付部材における前記磁気記録媒体の押し付け面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、当該押し付け面から拡散反射する光を受光することで、当該押し付け面を撮像し、
前記判断する工程では、前記押し付け面の撮像結果に基づいて当該押し付け面に対する異物の付着を判断し、
前記判断する工程において前記押し付け面への異物の付着が認められない場合に、前記磁気転写する工程を実行すること
を特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記パターンは、前記パターン形成面における凹凸で構成されることを特徴とする請求項1または2記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
第1保持体に保持され且つ第1パターンが形成された第1パターン形成体に対し、当該第1パターンが形成された第1形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、当該第1形成面から拡散反射する光を受光することで、当該第1形成面を撮像する工程と、
第2保持体に保持され且つ第2パターンが形成された第2パターン形成体に対し、当該第2パターンが形成された第2形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、当該第2形成面から拡散反射する光を受光することで、当該第2形成面を撮像する工程と、
前記第1形成面の撮像結果に基づく当該第1形成面への異物の付着と、前記第2形成面の撮像結果に基づく当該第2形成面への異物の付着とを判断する工程と、
前記判断する工程において前記第1形成面および前記第2形成面の両者への異物の付着が認められない場合に、前記第1保持体および前記第2保持体を相対的に移動させることで、前記第1パターン形成体における前記第1形成面と前記第2パターン形成体における前記第2形成面との間に、磁気情報を記録する磁気記録媒体を挟み込み、挟み込まれた当該磁気記録媒体に対し、前記第1パターンおよび前記第2パターンを磁気転写する工程と
を含む磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記判断する工程において前記第1形成面および前記第2形成面の両者への異物の付着が認められた場合に、前記磁気転写する工程の実行を禁止することを特徴とする請求項4記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記第1パターン形成体における前記第1形成面と前記第2パターン形成体における前記第2形成面とが対峙するように前記第1保持体および前記第2保持体が配置され、
前記第1形成面を撮像する工程と前記第2形成面を撮像する工程とを、並列して実行することを特徴とする請求項4または5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記判断する工程では、
前記第1保持体に取り付けられた後であって前記磁気転写で使用される前の前記第1パターン形成体における前記第1形成面を予め撮像して得られた第1基準データと、前記第1形成面を撮像する工程で得られた第1撮像データとの比較に基づいて当該第1形成面に対する異物の付着の有無を判断し、
前記第2保持体に取り付けられた後であって前記磁気転写で使用される前の前記第2パターン形成体における前記第2形成面を予め撮像して得られた第2基準データと、前記第2形成面を撮像する工程で得られた第2撮像データとの比較に基づいて当該第2形成面に対する異物の付着の有無を判断すること
を特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記第1パターンは前記第1形成面における凹凸で形成され、
前記第2パターンは前記第2形成面における凹凸で形成されること
を特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
パターンがパターン形成面に形成されたパターン形成体を保持する保持体と、
前記保持体に保持された前記パターン形成体に対し、前記パターン形成面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段にて照射され、前記パターン形成面にて拡散反射した光を受光することで当該パターン形成面を撮像する撮像手段と、
前記パターン形成体を保持した前記保持体における前記パターン形成面に磁気記録媒体における記録面を接触させ、当該パターン形成体と接触する当該磁気記録媒体に対し、前記パターンを磁気転写する磁気転写手段と
を含む磁気記録媒体の製造装置。
【請求項10】
前記パターン形成面を撮像して得られた撮像データに基づいて当該パターン形成面に異物が付着しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段にて前記パターン形成面への異物の付着が認められない場合に、前記磁気転写手段による前記磁気記録媒体への磁気転写を許可する許可手段と
をさらに含むことを特徴とする請求項9記載の磁気記録媒体の製造装置。
【請求項11】
前記保持体に保持された前記パターン形成体における前記パターン形成面に対し相対的に進退可能に設けられ、前記磁気記録媒体における前記記録面の裏面を介して、当該パターン形成体に当該磁気記録媒体を押し付ける押付部材をさらに含み、
前記光照射手段は、前記押付部材における前記記録媒体の押し付け面との成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、
前記撮像手段は、前記光照射手段にて照射され、前記押し付け面にて拡散反射した光を受光することで当該押し付け面を撮像すること
を特徴とする請求項9または10記載の磁気記録媒体の製造装置。
【請求項12】
前記押し付け面を撮像して得られた撮像データに基づいて当該押し付け面に異物が付着しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段にて前記押し付け面への異物の付着が認められない場合に、前記磁気転写手段による前記磁気記録媒体への磁気転写を許可する許可手段と
をさらに含むことを特徴とする請求項11記載の磁気記録媒体の製造装置。
【請求項13】
第1パターンが第1形成面に形成された第1パターン形成体を保持する第1保持体と、
第2パターンが第2形成面に形成された第2パターン形成体を保持する第2保持体と、
前記第1保持体に保持された前記第1パターン形成体に対し、前記第1形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射し、且つ、前記第2保持体に保持された前記第2パターン形成体に対し、前記第2形成面と成す角度が0°を超え且つ45°未満となるように光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段にて照射され、前記第1形成面にて拡散反射した光を受光することで当該第1形成面を撮像し、且つ、当該光照射手段にて照射され、前記第2形成面にて拡散反射した光を受光することで当該第2形成面を撮像する撮像手段と、
前記第1パターン形成体を保持した前記第1保持体と前記第2パターン形成体を保持した前記第2保持体とを相対的に移動させることで、前記第1パターン形成体における前記第1形成面と前記第2パターン形成体における前記第2形成面との間に、磁気情報を記録する磁気記録媒体を挟み込み、挟み込まれた当該磁気記録媒体に対し、前記第1パターンおよび前記第2パターンを磁気転写する磁気転写手段と
を含む磁気記録媒体の製造装置。
【請求項14】
前記第1形成面を撮像して得られた第1撮像データに基づいて当該第1形成面に異物が付着しているか否かを判断し、且つ、前記第2形成面を撮像して得られた第2撮像データに基づいて当該第2形成面に異物が付着しているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段にて前記第1形成面および前記第2形成面の両者への異物の付着が認められない場合に、前記磁気転写手段による前記磁気記録媒体への磁気転写を許可する許可手段と
をさらに含むことを特徴とする請求項13記載の磁気記録媒体の製造装置。
【請求項15】
前記撮像手段は、
筐体と、
前記筐体を前記第1保持体と前記第2保持体とに挟まれた領域と挟まれていない領域との間で移動させる移動機構と、
前記筐体に取り付けられ、前記移動機構による移動に伴って、前記第1保持体に保持された前記第1パターン形成体の前記第1形成面に対向配置されることで当該第1形成面を撮像する第1撮像部と、
前記筐体に取り付けられ、前記移動機構による移動に伴って、前記第2保持体に保持された前記第2パターン形成体の前記第2形成面に対向配置されることで当該第2形成面を撮像する第2撮像部と
を有することを特徴とする請求項13または14記載の磁気記録媒体の製造装置。
【請求項16】
前記第1保持体に取り付けられた後であって前記磁気転写で使用される前の前記第1パターン形成体における前記第1形成面を予め撮像して得られた第1基準データと、前記第2保持体に取り付けられた後であって前記磁気転写で使用される前の前記第2パターン形成体における前記第2形成面を予め撮像して得られた第2基準データとを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記判断手段は、前記記憶手段から読み出した前記第1基準データと前記第1形成面を撮像して得られた第1撮像データとの比較に基づいて当該第1形成面に対する異物の付着の有無を判断し、且つ、前記第2基準データと前記第2形成面を撮像して得られた第2撮像データとの比較に基づいて当該第2形成面に対する異物の付着の有無を判断すること
を特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項記載の磁気記録媒体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−119043(P2012−119043A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269940(P2010−269940)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】