説明

磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体

【課題】 支持体ロールの熱収縮と巻芯の熱膨張によって生じる応力による品質悪化や歩留まり低下を防ぐことができる磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】 本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、支持体を巻芯に巻回して支持体ロールを形成したとき、巻芯の外径(mm)をDとし、支持体の巻長(m)をLとし、巻芯の円周方向の線膨張係数(/℃)をαとしたおとき、200≧54000/D+0.007L+10αの関係が成り立つものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体に関し、特に、製造時に熱処理の影響によって磁気記録媒体が変形することを防止できる磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、磁気記録媒体の製造工程を説明する図である。図4(a)に示すように、原反ロールから帯状の支持体51を搬送させ、塗布部41において、この支持体51の一方の面に磁性層塗布部材42によって磁性層を塗布し、また、他方の面にバックコート層を塗布する。そして、磁性層が塗布された支持体51を支持体巻取部43に巻回させる。次に、図4(b)に示すように、支持体巻取部43から支持体51をカレンダー部45に送り出し、該カレンダー部45に設けられた複数のカレンダーロール44同士の間に搬送させる。このとき、支持体51をカレンダーロール44同士の間のニップに通過させることで、支持体51における磁性層表面の平滑性が向上される。そして、支持体51を巻芯52に巻回させて支持体ロール46を形成する(例えば、下記特許文献1及び2参照。)。その後、図4(c)に示すように、支持体ロール46には、所定の温度(従来では、約60℃から70℃の範囲)に設定された環境雰囲気47で、30時間から50時間放置される熱処理工程が行われる。ここで、例えば磁気テープを製造する際には、熱処理が施された支持体ロール46を裁断工程においてスリッタによって長手方向にスリットすることで、所定のテープ幅を有する磁気テープを製造している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−285445号公報
【特許文献2】特開平6−295436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の磁気記録媒体の製造方法では、図4(c)に示す熱処理により、支持体ロール46に熱収縮が発生するとともに巻芯52が熱膨張し、巻回されて重ね合う支持体ロール46同士の間で、支持体51の熱収縮時の変形及び巻芯52の熱膨張による応力によって、カレンダー工程によって平滑化された磁性層表面が、面の粗いバックコート層に押し付けられて変形し、表面粗さ(Ra)が増加することがあった。表面粗さ(Ra)の増加は巻芯側で顕著で、また、ターン数(巻回数)が多いほど強くなる。表面粗さ(Ra)の芯外差は、エラーなどの磁気テープの芯外差の原因となっていた。
【0005】
また、熱処理工程での熱収縮によって、該支持体ロール46の内部には、図5に示すような円筒座屈と称される周方向に沿った変形や皺や、図6に示す支持体ルール56のようにシンチングと称される軸方向Sに沿った変形や皺が発生することがある。支持体ロール46に円筒座屈やシンチングが生じると、出力変動が生じたり、裁断工程でスリットされた磁気テープの幅寸法精度が低下し、サーボ信号の記録時や再生時にヘッドが追従できずにトラッキングエラーを引き起こしてしまう。
【0006】
さらに、巻芯の熱膨張が大きいと、熱処理により原反の厚みムラの癖がつきやすく、磁気テープの動的湾曲が大きくなったり、静的湾曲の極性(向き)が途中で変化したりする。これらにより、磁気テープをテープリールに巻回させたときの巻姿が悪化したり、磁気テープのエッジダメージの原因となることが懸念される。
【0007】
このため、従来より、支持体ロール46に熱処理を施した際に、巻芯に熱膨張が発生することを防止して、支持体の表面粗さRaが増大したり変形したりすることを防止することが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、製造工程において支持体ロールの変形を防止して、製品の品質の均一化と品質向上ができる磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
(1) 支持体を巻芯に巻回して支持体ロールを形成したとき、前記巻芯の外径(mm)をDとし、前記支持体の巻長(m)をLとし、前記巻芯の円周方向の線膨張係数(/℃)をαとしたとき、200≧54000/D+0.007L+10αの関係が成り立つことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(2) 前記巻芯が、その円周方向の線膨張係数が5×10−6以下で、且つ、円周方向のヤング率が8000kg/mm以上の材質からなることを特徴とする上記(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(3) 前記巻芯の材質がCFRPであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4) 前記支持体ロールに、温度が50℃以上の環境雰囲気において熱処理を行うことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5) 上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法によって製造された磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造工程において巻芯の膨張の影響がなく、支持体ロールに過度な応力を発生させることを防止することができ、バックコート層に磁性層が押し付けられ、磁性層表面の表面粗さ(Ra)が増加することを防止でき、また、品質が均一にできる。また、巻き芯の材料としてCFRPを用いた場合には、熱処理工程での巻芯の膨張や熱収縮によって支持体に与えられる応力が小さくなり、磁気テープを製造した際に、テープの直線性が低下することがなく、トラッキングエラーが生じることを防止できる。さらに、低熱収縮率化を図ることができ、支持体の円筒座屈やシンチングが発生することを防止し、製造された磁気テープを巻回させたときの巻姿の悪化を防止でき、磁気テープの品質や歩留りが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態の磁気記録媒体の製造方法は、長尺状の支持体の一方の面に強磁性粉末及び結合剤を含む磁性層を塗布形成する工程と、該支持体の他方の面にバックコート層を塗布形成する塗布工程と、磁性層及びバックコート層が形成された支持体をカレンダー処理するカレンダー工程と、カレンダー処理された支持体に熱処理を施す熱処理工程と、カレンダー処理された支持体を長手方向にスリットする裁断工程とを有する。裁断工程の後にサーボ工程を有していてもよい。なお、本実施形態において、塗布工程,カレンダー工程は、従来の製造方法に従い行うことができる。
【0012】
図1は、カレンダー処理された支持体を巻芯に巻回させている状態を説明する図である。図2は、図1の支持体が巻回される巻芯を示す図である。図1に示すように、カレンダー工程においてカレンダーロール12によってカレンダー処理された支持体Bが、円筒状の巻芯11の外周面に巻き取られることによって支持体ロール10が形成される。
【0013】
図2に示すように、巻芯11が円筒状の本体を有し、該本体の周面に支持体Bを重ねて巻回させることで、支持体ロールが構成される。巻芯11には、その周方向の回転を軸支するための軸支部が、両端の側板において軸方向に延設されている。巻芯の構造は問わない。例えば、巻芯の内部には、リブなどの補強が設けられていてもよく、円筒部が2重構造になっていてもよい。
【0014】
本実施形態において、巻芯11の外径Dを400mm以上とし、支持体Bの厚さtを5μm以上とする。ここで、支持体Bの厚さtは、支持体Bを巻芯11に巻回する回数をnとし、巻き芯11に巻回された支持体B全体の厚さをTとしたとき、t=T/nによって得ることができる。また、巻芯11に巻回する支持体Bの長さをLとしたとき、1000m≦L≦12000mとしたが、支持体の長さLはこの範囲に限定されない。
【0015】
さらに、本実施形態において、上記巻芯11を構成する材料として、カーボンファイバー(CFRP)を使用した。ここで、巻芯11の材料は、線膨張係数α(/℃)を5×10−6以下のものを用いることができ、例えば、LEX材(日本鋳造株式会社 登録商標)を用いることができる。
巻芯11を上記材料で構成したときに、線膨張率の際による熱変形を抑えるため、ボディと側板とをともに同じ材質とすることが好ましい。また、外周の低熱膨張の材質部を取り外し式のスリーブとしてもよい。また、外形は、円筒形でも50μm/Rのクラウン形状になっていてもよい。また、巻き芯の材質は、巻き取り時の同伴エアを効率良く排除し、円筒座屈を防止するため、ヤング率8000kg/mm以上とすることが好ましい。
【0016】
本発明者は、200≧54000/D+0.007L+10αの関係が成り立つように設定することで、支持体Bに熱処理工程を行ったときに、巻芯11の熱膨張を低くし、かつ、支持体Bの熱収縮による応力を低く抑えて、支持体Bの磁性層がバックコート層に押し当てられることを防止できることを見出した。こうすることで、磁性層表面の表面粗さ(Ra)が増大することを防止することができる。
【0017】
また、本発明者は、巻芯11を線膨張係数を5×10−6以下で且つヤング率8000kg/mm以上の材料で構成することで、支持体ロール10に熱処理を施した際に、円筒座屈やシンチングが生じることを防止できることを見出した。すると、再生時に出力変動が生じたり、裁断工程でスリットされた磁気テープの幅寸法精度が低下し、サーボ信号の記録時や再生時にヘッドが追従できずにトラッキングエラーを引き起こしたりしてしまうことを防止できる。
【0018】
図3は、本実施形態の支持体ロールの熱処理工程を示す図である。本実施形態の熱処理工程では、支持体ロール10を環境雰囲気21の温度を50℃以上として熱処理を行った。ここで、環境雰囲気21の温度は、50℃から120℃の範囲とし、1時間から50時間の範囲で熱処理を行うことが好ましい。
【0019】
以下に、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法により得られる磁気記録媒体としては、例えば、磁気テープである。磁気テープの利用分野は特に限定されないが、例えば、コンピュータデータのバックアップなどに使用される磁気テープカートリッジに使用することで効果を得ることができる。
【0020】
磁気テープとしては、基本的に支持体の一方の側に磁性層を、そして該支持体の他方の側にバックコート層をそれぞれ有する構成の磁気テープを意味し、例えば、支持体と磁性層との間に更に非磁性層を設けた構成の磁気テープであってもよい。
【0021】
支持体としては、従来から磁気テープの支持体材料として用いられているものを使用することができ、特に非磁性のものが好ましい。これらの例としては、ポリエステル類(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフタレートとの混合物、エチレンテレフタレート成分とエチレンナフタレート成分を含む重合物)、ポリオレフィン類(例、ポリプロピレン)、セルロース誘導体類(例、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)、ポリカーボネート、ポリアミド(中でも芳香族ポリアミド、アラミド)、ポリイミド(中でも全芳香族ポリイミド)などの合成樹脂フィルムを挙げることができる。これらの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、芳香族ポリアミド、及びアラミドが好ましい。支持体の厚みは、特に制限はないが、2〜8μm(更に好ましくは、3〜8μm、特に好ましくは、3〜7μm)の範囲にあることが好ましい。
【0022】
磁性層は、基本的には強磁性粉末及び結合剤から形成されている。また、磁性層には、通常更に潤滑剤、導電性粉末としてカーボンブラック、そして研磨剤が含有されている。強磁性粉末としては、例えば、γ−Fe2 3 、Fe3 4 、FeOx (x=1.33〜1.5)、CrO2 、Co含有γ−Fe2 3 、Co含有FeOx (x=1.33〜1.5)、強磁性金属粉末、及び板状六方晶フェライト粉末を挙げることができる。本発明においては、強磁性粉末として、強磁性金属粉末、あるいは板状六方晶フェライト粉末の使用が好ましい。特に好ましくは、強磁性金属粉末である。
【0023】
上記強磁性金属粉末は、その粒子の比表面積が好ましくは30〜70m2 /gであって、X線回折法から求められる結晶子サイズは、50〜300Aである。比表面積が余り小さいと高密度記録に充分に対応できなくなり、余り大き過ぎても分散が充分に行えず、従って平滑な面の磁性層が形成できなくなるため同様に高密度記録に対応できなくなる。強磁性金属粉末は、少なくともFeを含むことが必要であり、具体的には、Fe、Fe−Co、Fe−Ni、Fe−Zn−Ni又はFe−Ni−Coを主体とした金属単体あるいは合金である。またこれらの強磁性金属粉末の磁気特性については、高い記録密度を達成するために、その飽和磁化量(σs )は110emu/g以上、好ましくは120emu/g以上、170emu/g以下である。又保磁力(Hc)は、800〜3000エルステッド(Oe)(好ましくは、1500〜2500Oe)の範囲である。そして、透過型電子顕微鏡により求められる粉末の長軸長(即ち、平均粒子径)は、0.5μm以下、好ましくは、0.01〜0.3μmで軸比(長軸長/短軸長、針状比)は、5以上、20以下、好ましくは、5〜15である。更に特性を改良するために、組成中にB、C、Al、Si、P等の非金属、もしくはその塩、酸化物が添加されることもある。通常、前記金属粉末の粒子表面は、化学的に安定化させるために酸化物の層が形成されている。
【0024】
上記板状六方晶フェライト粉末は、その比表面積は25〜65m2 /gであって、板状比(板径/板厚)が2〜15、板径は0.02〜1.0μmである。板状六方晶フェライト粉末は、強磁性金属粉末と同じ理由からその粒子サイズが大きすぎても小さすぎても高密度記録が難しくなる。板状六方晶フェライトとしては、平板状でその平板面に垂直な方向に磁化容易軸がある強磁性体であって、具体的には、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、及びそれらのコバルト置換体等を挙げることができる。これらの中では、特にバリウムフェライトのコバルト置換体、ストロンチウムフェライトのコバルト置換体が好ましい。本発明で用いる板状六方晶フェライトには、更に必要に応じてその特性を改良するためにIn、Zn、Ge、Nb、V等の元素を添加してもよい。またこれらの板状六方晶フェライト粉末の磁気特性については、高い記録密度を達成するために、前記のような粒子サイズが必要であると同時に飽和磁化(σs )は少なくとも50emu/g以上、好ましくは53emu/g以上である。又保磁力は、700〜2000エルステッド(Oe)の範囲であり、900〜1600Oeの範囲であることが好ましい。
【0025】
上記の強磁性粉末の含水率は0.01〜2重量%とすることが好ましい。また結合剤の種類によって含水率を最適化することが好ましい。強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組み合わせにより最適化することが好ましく、そのpHは通常4〜12の範囲であり、好ましくは5〜10の範囲である。強磁性粉末は、必要に応じて、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもよい。表面処理を施す際のその使用量は、通常強磁性粉末に対して、0.1〜10重量%である。表面処理を施すことにより、脂肪酸などの潤滑剤の吸着を100mg/m2 以下に抑えることができる。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、及びSrなどの無機イオンが含まれる場合があるが、その含有量は5000ppm以下であれば特性に影響を与えることはない。
【0026】
潤滑剤は、磁性層表面ににじみ出ることによって、磁性層表面と磁気ヘッド、ドライブのガイドポールとシリンダとの間の摩擦を緩和し、摺接状態を円滑に維持させるために添加される。潤滑剤としては、例えば、脂肪酸、あるいは脂肪酸エステルを挙げることができる。脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、及びパルミトレイン酸等の脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0027】
また脂肪酸エステルとしては、例えば、ブチルステアレート、 sec−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、オレイルオレエート、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でアシル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でアシル化してジオールとしたもの、そしてグリセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げることができる。これらのものは、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。潤滑剤の通常の含有量は、磁性層の強磁性粉末100重量部に対して、0.2〜20重量部(好ましくは、0.5〜10重量部)の範囲である。
【0028】
カーボンブラックは、磁性層の表面電気抵抗(Rs)の低減、動摩擦係数(μK値)の低減、走行耐久性の向上、及び磁性層の平滑な表面性を確保する等の種々の目的で添加される。カーボンブラックは、その平均粒子径が3〜350nm(更に好ましくは、10〜300nm)の範囲にあることが好ましい。また、その比表面積は、5〜500m2 /g(更に好ましくは、50〜300m2 /g)であることが好ましい。DBP吸油量は、10〜1000mL/100g(更に好ましくは、50〜300mL/100g)の範囲にあることが好ましい。またpHは、2〜10、含水率は、0.1〜10%、そしてタップ密度は、0.1〜1g/ccであることが好ましい。
【0029】
カーボンブラックは様々な製法で得たものが使用できる。使用できるカーボンブラックの例としては、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック及びランプブラックを挙げることができる。カ−ボンブラックの具体的な商品例としては、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCANXC−72(以上、キャボット社製)、#35、#50、#55、#60及び#80(以上、旭カ−ボン(株)製)、#3950B、#3750B、#3250B、#2400B、#2300B、#1000、#900、#40、#30、及び#10B(以上、三菱化学(株)製)、CONDUCTEXSC、RAVEN150、50、40、15(以上、コロンビアカ−ボン社製)、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ−500およびケッチェンブラックECDJ−600(以上、ライオンアグゾ(株)製)を挙げることができる。カーボンブラックの通常の添加量は、強磁性粉末100重量部に対して、0.1〜30重量部であり、好ましくは、0.2〜15重量部の範囲である。
【0030】
研磨剤としては、例えば、溶融アルミナ、炭化珪素、酸化クロム(Cr2 3)、コランダム、人造コランダム、ダイアモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメリー(主成分:コランダムと磁鉄鉱)を挙げることができる。これらの研磨剤は、モース硬度5以上(好ましくは、6以上)であり、平均粒子径が、0.05〜1μm(更に好ましくは、0.2〜0.8μm)の大きさのものが好ましい。研磨剤の添加量は通常、強磁性粉末100重量部に対して、3〜25重量部(好ましくは、3〜20重量部)の範囲である。
【0031】
磁性層の結合剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、及びビニルエーテルを構成単位として含む重合体、あるいは共重合体を挙げることができる。共重合体としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタアクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタアクリル酸エステル−スチレン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロビニルエーテル−アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
【0032】
上記の他に、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂(セルロースアセテートブチレート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロースなど)、ポリ弗化ビニル、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂なども利用することができる。
【0033】
また熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物を挙げることができる。
【0034】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、及びイソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネ−トを挙げることができる。
【0035】
上記ポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、及びポリカプロラクトンポリウレタンなどの構造を有する公知のものが使用できる。
【0036】
本発明において、磁性層の結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、及びニトロセルロースの中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、ポリウレタン樹脂との組み合わせ、またはこれらに更にポリイソシアネートを組み合わせて構成することが好ましい。
【0037】
結合剤としては、より優れた分散性と得られる層の耐久性を得るために必要に応じて、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2 (Mは水素原子、またはアルカリ金属塩基を表わす。)、−OH、−NR2 、−N+ 3 (Rは炭化水素基を表わす。)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくとも一つの極性基を共重合または付加反応で導入して用いることが好ましい。このような極性基は、結合剤に10-1〜10-8モル/g(更に好ましくは、10-2〜10-6モル/g)の量で導入されていることが好ましい。
【0038】
磁性層の結合剤は、強磁性粉末100重量部に対して、通常5〜50重量部(好ましくは10〜30重量部)の範囲で用いられる。なお、磁性層に結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソシアネートを組み合わせて用いる場合は、全結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70重量%、ポリウレタン樹脂が2〜50重量%、そしてポリイソシアネートが2〜50重量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。
【0039】
磁気テープの磁性層を形成するための塗布液には、磁性粉末を結合剤中に良好に分散させるために、分散剤を添加することができる。また必要に応じて、可塑剤、カーボンブラック以外の導電性粒子(帯電防止剤)、防黴剤などを添加することもできる。分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜18個の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数11〜17個のアルキル基、又はアルケニル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属石けん、前記の脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、及び銅フタロシアニン等を使用することができる。これらは、単独でも組み合わせて使用しても良い。分散剤は、磁性層の結合剤100重量部に対して通常0.5〜20重量部の範囲で添加される。
【0040】
次に、バックコート層について説明する。バックコート層はカーボンブラックと結合剤とから形成されていることが好ましい。また無機粉末や潤滑剤が更に添加されていることが好ましい。カーボンブラックは、平均粒子サイズの異なる二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。この場合、平均粒子サイズが10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子サイズが230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好ましい。一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また微粒子状カーボンブラックは一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。一方、粒子サイズが230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバック層の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0041】
微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。RAVEN2000B(18nm)、RAVEN1500B(17nm)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800(17nm)(キャボット社製)、PRINTEX90(14nm)、PRINTEX95(15nm)、PRINTEX85(16nm)、PRINTEX75(17nm)(以上、デグサ社製)、#3950(16nm)(三菱化学(株)製)。また粗粒子状カーボンブラックの具体的な商品の例としては、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製)、RAVENMTP(275nm)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができる。
【0042】
バックコート層において、平均粒子サイズの異なる二種類のものを使用する場合、10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと230〜300nmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率(重量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、95:5〜85:15の範囲である。バックコート層中のカーボンブラック(その全量)の含有量は、結合剤100重量部に対して、通常30〜110重量部の範囲であり、好ましくは、50〜90重量部の範囲である。
【0043】
無機粉末は、硬さの異なる二種類のものを併用することが好ましい。具体的には、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉末とを使用することが好ましい。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。また軟質無機粉末の平均粒子サイズは、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、特に、炭酸カルシウムが好ましい。バックコート層内の軟質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100重量部に対して10〜140重量部の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、35〜100重量部の範囲である。
【0044】
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加することにより、バックコート層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これをカーボンブラックと共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバックコート層となる。またこの無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。硬質無機粉末は、その平均粒子サイズが80〜250nm(更に好ましくは、100〜210nm)の範囲にあることが好ましい。
【0045】
モース硬度が5〜9の硬質無機質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2 3 )を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いても良いし、あるいは併用しても良い。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100重量部に対して通常3〜30重量部の範囲であり、好ましくは、3〜20重量部の範囲である。
【0046】
バックコート層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、磁性層に記載した潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バックコート層において、潤滑剤は結合剤100重量部に対して通常1〜5重量部の範囲で添加される。またバックコート層に、磁性層に記載した分散剤を添加することもできる。分散剤の添加量は、磁性層に添加する量と同様な量とすることができる。
【0047】
バックコート層の結合剤は、前記磁性層に記載した結合剤を使用することができる。使用できる結合剤としては、ニトロセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び硬化剤としてのポリイソシアネートを挙げることができる。バックコート層の結合剤はカーボンブラック100重量部に対して、通常5〜250重量部(好ましくは、10〜200重量部)である。
【0048】
本発明の磁気テープは、支持体と磁性層との間に更に非磁性層が設けられた構成のものであってもよい。即ち、支持体の一方の側に非磁性層と磁性層とをこの順に有し、かつ該支持体の他方の側にバックコート層を有する構成の磁気テープであってもよい。非磁性層は、非磁性粉末及び結合剤を含む実質的に非磁性の層である。この非磁性層は、その上の磁性層の電磁変換特性に影響を与えないように実質的に非磁性であることが必要であるが、磁性層の電磁変換特性に影響を与えない程度に少量の磁性粉末が含有されていても特に問題にはならない。また通常、非磁性層には、これらの成分以外に潤滑剤が含まれている。
【0049】
非磁性層で用いられる非磁性粉末としては、例えば、非磁性無機粉末、カーボンブラックを挙げることができる。非磁性無機粉末は、比較的硬いものが好ましく、モース硬度が5以上(更に好ましくは、6以上)のものが好ましい。非磁性無機粉末の例としては、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、二酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウムを挙げることができる。これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。これらのうちでは、二酸化チタン、α−アルミナ、α−酸化鉄、又は酸化クロムが好ましい。非磁性無機粉末の平均粒子径は、0.01〜1.0μm(好ましくは、0.01〜0.5μm、特に、0.02〜0.1μm)の範囲にあることが好ましい。
【0050】
カーボンブラックは、磁性層に導電性を付与して帯電を防止すると共に、非磁性層上に形成される磁性層の平滑な表面性を確保する目的で添加される。非磁性層で用いるカーボンブラックは、前記の磁性層に記載したカーボンブラックを使用することができる。但し、非磁性層で使用するカーボンブラックは、その平均粒子径が35nm以下(更に好ましくは、10〜35nm)であることが好ましい。カーボンブラックの通常添加量は、非磁性層に、全非磁性無機粉末100重量部に対して、3〜20重量部であり、好ましくは、4〜18重量部、更に好ましくは、5〜15重量部である。
【0051】
潤滑剤としては、前記の磁性層にて記載した脂肪酸、あるいは脂肪酸エステルを使用することができる。潤滑剤の添加量は、非磁性層の全非磁性粉末100重量部に対して、通常0.2〜20重量部の範囲である。
【0052】
非磁性層の結合剤としては、前述した磁性層にて記載した結合剤を使用することができる。結合剤は、非磁性層の非磁性粉末100重量部に対して、通常5〜50重量部(好ましくは10〜30重量部)の範囲で用いられる。なお、非磁性層に結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソシアネートを組み合わせて用いる場合は、全結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70重量%、ポリウレタン樹脂が2〜50重量%、そしてポリイソシアネートが2〜50重量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。なお、非磁性層においても前記の磁性層に添加することができる任意成分を添加してもよい。
【0053】
本発明の磁気テープは、磁性層(非磁性層が設けられた構成の場合には、磁性層と非磁性層)及びバックコート層を形成するための塗布液をそれぞれ調製した後、磁性層用の塗布液を長尺状の支持体ウエブの一方の側に、そして他方の側にバックコート層用塗布液をそれぞれ従来の方法に従い塗布形成し、乾燥することで長尺磁気記録ウエブを得ることができる。その後、このウエブをカレンダ処理し、続いて長さ方向にスリットして所望の幅の磁気テープを得た後、その磁性層表面を、前述した成型体で摺動することからなる本発明に従う処理を行うことにより、磁気テープを製造することができる。
【0054】
非磁性層を有する態様の磁気テープの場合に、磁性層及び非磁性層の形成方法は特に限定されないが、磁性層は、非磁性層用塗布液を支持体上に塗布後、形成された塗布層(非磁性層)が湿潤状態にあるうちにこの上に磁性層用塗布液を塗布する、所謂ウエット・オン・ウエット方式による塗布方法を利用して形成されたものであることが好ましい。
【0055】
上記ウエット・オン・ウエット方式による塗布方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、あるいはエクストルージョン塗布装置などを用いて、支持体上にまず非磁性層を形成し、該非磁性層が湿潤状態にあるうちに、支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、磁性層を形成する方法(特開昭60−238179号、特公平1−46186号、及び特開平2−265672号公報参照)。
(2)二つの塗布液用スリットを備えた単一の塗布ヘッドからなる塗布装置を用いて支持体上に磁性層、及び非磁性層をほぼ同時に形成する方法(特開昭63−88080号、特開平2−17921号、及び特開平2−265672号各公報参照)。
(3)バックアップローラ付きエクストルージョン塗布装置を用いて、支持体上に磁性層及び非磁性層をほぼ同時に形成する方法(特開平2−174965号公報参照)。非磁性層及び磁性層は同時重層塗布法を利用して形成することが好ましい。
【0056】
磁気テープのバックコート層の表面は、テープが巻かれた状態で磁性層の表面に転写される傾向にある。このためバックコート層の表面も比較的高い平滑性を有していることが好ましい。磁気テープのバックコート層の表面は、その表面粗さRa(カットオフ0.08mmの中心線平均粗さ)が、0.003〜0.060μmの範囲にあるように調整されていることが好ましい。なお、表面粗さは、通常塗膜形成後、カレンダーによる表面処理工程において、用いるカレンダーロールの材質、その表面性、そして圧力等により、調節することができる。
【0057】
本発明の製造方法に従って製造される、支持体の一方の側に磁性層を、他方の側にバックコート層を有する単層構成の磁気テープの磁性層は、その厚みが、1.0〜3.0μm(更に好ましくは、1.5〜2.5μm)の範囲にあることが好ましい。またこの構成の磁気テープの全体の厚みは4.0〜12.0μm、更に好ましくは、4.0〜10.0μm)の範囲にあることが好ましい。また、バックコート層の厚みは、0.1〜1.0μm(更に好ましくは、0.2〜0.8μm)の範囲にあることが好ましい。
【0058】
非磁性層を有する構成の磁気テープの磁性層は、その厚みが、0.01〜1.0μm(更に好ましくは、0.05〜0.5μm)の範囲にあることが好ましい。また、非磁性層の厚みは、0.01〜3.0μm(更に好ましくは、0.5〜2.5μm)の範囲にあることが好ましい。磁性層の厚みと非磁性層の厚みとの比は、1:2〜1:15(更に好ましくは、1:5〜1:12)の範囲にあることが好ましい。非磁性層を有する構成の磁気テープの全体の厚み及びバックコート層の厚みは、前記の単層構成の磁気テープと同じ範囲にあることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下の試験によって実施例及び比較例を比較検討し、本発明の構成による効果を説明する。
本試験では、磁性層が形成された厚さ9μmの支持体を下記表1に示す巻芯に巻き取り、同じ条件及び工程によって、試料となる磁気テープ(スリットされた支持体)を作成し、これら磁気テープに対して図示しない磁気記録ヘッドを追従させてドロップアウト(DO)が発生するか否かを確認する試験を行った。ここで、54000/D+0.007L+10αの式で得られる値をP値とする。ここで、P値は支持体巻き取りの強さを示す指標である。
【0060】
本試験では、巻芯として、径が300mm,400mm及び480mmのうちいずれかのものを使用し、材質がアルミニウム(Al)とCFRPとのうちいずれかを使用した。また、巻芯として、線膨張係数が2.30×10-5のものと2.00×10-6のものとのうちいずれかを使用した。また、巻芯に巻き取られた支持体の長さ(表1では処理長)は、4000m、又は、8000m、又は、12000mとした。本試験において、ドロップアウトが発生したものを×で示し、ドロップアウトが発生しなかった良好なものを○で示した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、P値が200を越える支持体ロールでは磁気テープのドロップアウトが発生するものの、P値が200以下の支持体ロールではドロップアウトが発生しない磁気テープが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】支持体を巻芯に巻回させている状態を説明する図である。
【図2】図1の支持体が巻回される巻芯を示す図である。
【図3】本実施形態の支持体ロールの熱処理工程を示す図である。
【図4】磁気記録媒体の製造工程を説明する図である。
【図5】支持体ロールに円筒座屈が生じた状態を説明する図である。
【図6】支持体ロールにシンチングが生じた状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0064】
10 支持体ロール
11 巻芯
B 支持体
D 巻芯の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体を巻芯に巻回して支持体ロールを形成したとき、前記巻芯の外径(mm)をDとし、前記支持体の巻長(m)をLとし、前記巻芯の円周方向の線膨張係数(/℃)をαとしたとき、200≧54000/D+0.007L+10αの関係が成り立つことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記巻芯が、その円周方向の線膨張係数が5×10−6以下で、且つ、円周方向のヤング率が8000kg/mm以上の材質からなることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記巻芯の材質がCFRPであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記支持体ロールに、温度が50℃以上の環境雰囲気において熱処理を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
上記請求項1から4のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法によって製造された磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−73047(P2006−73047A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252260(P2004−252260)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】