説明

磁気記録媒体上の新規絵柄形成方法及びこれに用いる転写用積層体及び磁気記録媒体

【課題】転写工程を経て形成される磁気記録層を有する積層体に絵柄を形成する方法であって、該磁気記録層上に絵柄を形成しても該絵柄により磁気出力が変動することなく、また、形成するべき絵柄が決定した後に短納期で製造可能で、絵柄変更にも迅速に対応できる絵柄形成方法及び該絵柄形成方法を提供すること。
【解決手段】転写用積層体の転写材中または該転写材が転写される基材上に絵柄形成領域を形成し、該絵柄形成領域の着色剤を、エージングや熱圧プレス等で加熱することにより転写材を通って転写後の転写材の表面方向へと拡散させて、形成した絵柄を識別可能とする絵柄形成方法。転写後の転写材の磁気記録層上に着色層が形成され、さらにその上に保護層を兼ねた拡散防止層が形成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に磁気記録層を含む層状の転写材を転写してなる積層体に絵柄を形成する方法に関し、特にクレジットカード、銀行カードなどの磁気記録層を有する転写材を基材上に転写してなる磁気カードの、該磁気記録層側の表面上から識別可能な絵柄を形成する新規な絵柄形成方法及びこれに用いる転写用積層体、及び該絵柄形成方法により絵柄を形成した磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカード、銀行カードなど高い意匠性を要求される磁気カードにおいては、磁気ストライプの磁気記録層上に着色層を設け磁気記録層が元来持つ磁性粉由来の黒色、茶色を完全に隠蔽したカラー着色磁気ストライプが従来より知られ、近年は磁気記録層もしくは磁気記録層上に設けた着色層上に更に絵柄を形成した絵柄付き磁気ストライプも知られている。
この磁気ストライプを形成するには図11の工程図に示すように、転写基材上に剥離層、保護層または剥離機能を有する保護層を形成し、その上に絵柄を形成したのち、さらに磁気記録層の色相を隠蔽する着色層、磁気記録層、接着剤層を順に形成して積層体を作製し、該積層体を所望の幅に裁断して磁気ストライプ用の転写用積層体を得る。
このようにして得た磁気ストライプ用の転写用積層体をカード基材のオーバーシートに転写し、カード上の絵柄を施したセンターコアと、反対面のオーバーシートと共に熱プレス加工を行い、磁気ストライプ用の転写材がカード基材であるオーバーシートに埋め込まれた絵柄付き磁気ストライプカードを得る(図1参照)。
【0003】
このように、形成された絵柄付き磁気ストライプは、カードの表層側に位置する絵柄印刷部分のため、絵柄部と非絵柄部で、記録再生時の磁気ヘッドと磁気記録層との間の距離であるスペーシングが異なるが、このスペーシングの変化は磁気出力の変動を起こし、情報読み取り時のエラー発生の可能性を増大させる傾向が有る。
また、前記の絵柄付き磁気ストライプ用の転写用積層体の絵柄印刷は、該転写用積層体の製造においては、転写用基材上に剥離層、保護層または剥離機能を有する保護層の形成に次いで行われ、その後に着色層、磁気記録層、接着剤層が形成される。絵柄印刷は磁気ストライプ用の転写用積層体の製造工程の初期段階で行わなければならず、絵柄を決定、作製した後にさらに多くの工程と時間を要して磁気ストライプ用の転写用積層体が作製される。したがって、絵柄付き磁気ストライプ用転写材が完成した後に絵柄の修正が必要となった場合には、短時間の絵柄修正を行うことができず絵柄修正が大幅な納期遅れと効率の悪化を発生させる。
これら課題に対して、絵柄印刷による絵柄部、非絵柄部の段差を無くすためには、非印刷部の空間を埋めるように印刷部のネガパターンを用いて、絵柄部の上部全体に形成される隠蔽層と同じ色相のインキを印刷し非絵柄部の空間を埋める方法が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、この方法は、出力変動を抑制する効果は有るものの完全でなく、また、前記絵柄決定後から転写材が完成するまでの製造工程時間の短縮は不可能であり、絵柄修正に対応する場合には、もう一度最初の工程から作り直す場合と同様な時間が必要となることは避けられない。さらに非絵柄部分を埋めるための新たな塗布工程が必要となり生産効率の低下が避けられなかった。
【特許文献1】特開2000−155937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、磁気カードの磁気記録層を含む磁気ストライプ上に、表面から識別可能絵柄を形成する方法であって、絵柄の形成から磁気カード作製までの納期が短く、絵柄変更に迅速に対応できるとともに、絵柄により磁気出力が変動することのない磁気カードの製造方法、該磁気カードの製造に用いる転写用積層体、および該製造方法によって製造される磁気カードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は転写用基材上に形成された磁気記録層を含む層状の転写材を、基材上に転写してなる磁気記録媒体の該磁気記録層上への絵柄形成方法であって、前記転写材中または前記基材上に予め形成された絵柄形成領域の着色剤が、前記転写材中を転写後の表面に近い方向へと拡散することによって、前記絵柄形成領域の絵柄が識別可能となることを特徴とする絵柄形成方法を提供する。
さらに本発明は転写用基材上に磁気記録層と絵柄形成領域を有する層状の転写材が形成された転写用積層体であって、前記絵柄形成領域が磁気記録層の上方に形成されたことを特徴とする転写用積層体を提供する。
さらに本発明は、前記絵柄形成方法を実施するための、基材上に磁気記録層を含む層と、該磁気記録層側から識別可能な絵柄を形成するための転写用積層体であって、転写用基材上に磁気記録層を含む層状の転写材を有し、前記絵柄を形成する着色剤は少なくとも前記磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする転写用積層体を提供する。
また本発明は前記絵柄形成方法によって絵柄を形成されたことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
さらにまた本発明は、基材上に磁気記録層と、該磁気記録層側から認識可能な絵柄を有する磁気カードであって、前記絵柄を形成する着色剤は、前記絵柄に対応する位置の少なくとも磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布している磁気カードを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の絵柄形成方法によれば、絵柄形成領域の着色剤が磁気記録層を含む転写材を通って転写後の該転写材の表面に近い方向へと拡散することによって絵柄が識別可能となるため、絵柄を形成している着色剤は転写材の表面上ではなく、転写材中の膜厚方向に分布して絵柄を形成している。このため転写材の表面には絵柄による凹凸が形成されず平滑性が維持される。
本発明の絵柄形成方法を用いて磁気記録層上に絵柄を有する磁気カードを製造するときは、転写材中またはカード基材上のどちらかもしくは両方に形成された絵柄形成領域の着色剤は、カード製造工程における加熱、またはカード製造前のエージング工程における加熱によって、転写材を通り、カード化後に該転写材の表面近くとなる方向へと拡散して、転写材の膜厚方向に分布し前記絵柄が識別可能な状態となる。このため前記着色剤はカード表面には局在せず、絵柄の形成によって積層体表面に記録再生時の磁気ヘッドとの間の距離であるスペーシングの変動を生じないため、絵柄による磁気出力の変動が発生することない。
さらに絵柄形成領域は転写用積層体の転写材中またはカード基材上に形成できるため、転写用積層体の製造工程の最終段階や、あるいは転写用積層体とは個別に形成することが可能である。このため絵柄形成からカード作製までの納期を短くでき、絵柄の変更にも迅速に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては転写後に転写材の最上層となる部分を除けば、転写材中の任意の部分または、転写材が転写される位置の基材表面部分から選ばれる任意の位置に絵柄形成領域を形成することができる。しかしデザイン上の変更が頻繁に行われる絵柄形成領域を形成する工程は、積層体を形成する工程のできるだけ最終部分にあることが好ましく、例えばカード用基体上の磁気ストライプの上に絵柄を形成するときは、磁気ストライプ形成用の転写用積層体の例えば接着剤層上、または磁気ストライプが転写される基材側に絵柄形成領域が形成されることが好ましい。このように、例えば予め絵柄を印刷しない無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておくことで、磁気ストライプの絵柄を含む磁気カードのデザインが決定次第、転写用積層体またはカード用基材に絵柄印刷を行い、転写工程熱圧プレス工程を経てカード製造を行うことが出来るため、受注から短納期で絵柄磁気ストライプ付き磁気カードの製造が可能となる。
【0009】
また本発明の絵柄形成方法は、絵柄形成領域の着色剤を転写材の表面方向に拡散させて識別可能な絵柄を形成するため、絵柄形成領域上に着色剤が拡散して識別可能に保持される領域が必要である。該領域の膜厚は薄すぎると絵柄形成が十分に行われず、また着色剤が横方向に拡散して図柄が不鮮明になりやすい。これに対して該領域の膜厚が厚すぎるとやはり拡散領域が広がり過ぎて絵柄が不鮮明となる可能性がある。このために絵柄形成領域の上方に位置する積層体の膜厚の総計は、着色剤拡散防止層の膜厚を除いて2〜50μm程度が好ましく、3〜20μm程度がさらに好ましい。
【0010】
以下に、本発明の絵柄形成方法を用いた磁気記録媒体の例として磁気カードを製造する場合の方法について詳細に説明する。
本発明の絵柄形成方法の実施態様の一つとして、該絵柄形成方法を用いて転写後に識別可能な絵柄を、磁気カードの磁気ストライプ用転写材上に形成する方法について図2と、工程図である図9を参照しつつ説明を行う。図2は本発明の製造方法に用いる転写用積層体の断面図、図9は製造方法の流れである。図9においては絵柄形成からカード作製までの工定数が最も少なく、工程上最も有利な感熱転写剤層の上に絵柄形成領域を設ける場合について表示した。本方法においては図2に示すように、転写用基材9に必要に応じて着色剤拡散防止層1、着色層3を形成し、その上に磁気記録層4、さらにその上に必要に応じて感熱接着剤層5を積層して塗布形成し、無地の磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく。磁気ストライプ上に形成する絵柄が決定次第、磁気ストライプ用転写材の磁気記録層上に設けた感熱接着剤上に絵柄印刷を施し、絵柄形成機能を有する転写用積層体を作製する。磁気ストライプ用の転写用積層体は磁気ストライプ用転写材の状態での加熱(図9−(1))、によって、絵柄形成領域の着色剤が転写用積層体の転写用基材方向に拡散し、転写後に転写用基材から剥離され、基材上に転写された転写材表面から識別可能な状態となる(図3参照)。あるいは絵柄形成領域の着色剤は、磁気ストライプ用の転写材をオーバーシートに転写させた後センターコアと、センターコアの反対側のオーバーシートとともに合体してカード用基材を一体化させる熱プレス工程(図9−(2))により、磁気ストライプ用転写材がカード基材に埋め込まれるときに、着色剤がオーバーシートへ転写後の転写材の表面方向に拡散して、絵柄が磁気ストライプ表面より識別可能となる。なお、転写用積層体の状態におけるエージング工程(図9−(1))を行うと、着色剤をより確実に拡散できるため好ましい。
【0011】
また、本発明の絵柄形成方法のもう一つの実施態様として、絵柄をカード用基材であるオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に形成する方法について図4と工程図10に示す。本方法は、予め絵柄を印刷しない磁気ストライプ用の転写用積層体を作成しておく部分までは前記工程図9で示す方法同じであるが、磁気ストライプの絵柄が決定次第、絵柄をカード用基材の磁気ストライプが転写される部分に形成し、磁気ストライプ用転写材をオーバーシートに転写後、センターコアと合体しセンターコアの反対側のオーバーシートとともにカード用基材を一体化させる熱プレス工程を行って、磁気ストライプ用転写材をカード基材に埋め込む。このときに着色剤が磁気記録層を通ってオーバーシートに転写された転写材の表面方向に拡散することにより、該絵柄が磁気ストライプ表面より識別可能となる。
このようにして製造される磁気カードの磁気ストライプ部分の断面図(図5)に示すように、センターコア7のオーバーシート表面に積層されたカード基材オーバーシート6に磁気ストライプ用転写材の保護層を兼ねる着色剤拡散防止層1をカード表面に露出して磁気ストライプ用転写材が埋め込められており、磁気ストライプ用転写材の着色層3、磁気記録層4、感熱接着剤層5の厚み方向全てに亘って着色剤が拡散した絵柄着色剤拡散領域2を有している。このため着色剤拡散防止層1側から絵柄が識別可能となっている。
【0012】
以上の様な手順で磁気ストライプ部分に絵柄を有する磁気カードを形成することが出来るが、本発明の絵柄形成方法は磁気ストライプ以外の場所にも、また磁気カード以外の磁気記録媒体にも、さらに磁気記録層を有さない積層体へも適用することができる。このような場合の絵柄形成方法には図9、図10の工程図において磁気記録層を省略したり、他の層を構成上付け加えたり、磁気記録層を他の機能層に置き換えることによって対応することができる。さらに磁気ストライプ用の転写用積層体は基材の一部を被覆するだけであるが、基材全面を被覆するような転写用積層体を用いてもよい。
【0013】
以下に本発明の絵柄形成方法や磁気記録媒体の製造方法に用いる転写用積層体の各構成成分について、順を追ってさらに詳細に説明を行う。
本発明の転写用積層体の態様の一つである磁気ストライプ用の転写用積層体は、図2の断面構成図に示すように、転写用基材9上に、必要に応じて形成する着色剤拡散防止層1、必要に応じて形成する着色層3、磁気記録層4、必要に応じて形成する感熱接着剤層5を順次積層することにより製造することができる。そして、感熱接着剤層上に絵柄印刷10を設けることができる。
【0014】
本発明における絵柄形成方法に使用する転写用積層体において、転写基材フィルムとしては公知慣用のフィルムがいずれも使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド等のプラスチック等を挙げることができる。中でも抗張力や耐熱性を兼ね備えたポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、転写基材フィルムの厚さには特に制限はないが、通常3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0015】
本発明における絵柄形成方法に使用する転写用積層体においては着色剤拡散防止層を用いることが出来る。着色剤拡散防止層は熱により感熱接着剤層、磁気記録層、着色層を通して拡散した絵柄の着色剤が着色剤拡散防止層を超えて更に外部に拡散することを防止する特性を有し、さらに転写材の転写工程において、絵柄形成領域の着色剤が熱圧プレス用の金属板に付着するのを防止する。また、着色剤拡散防止層は、磁気ストライプ用転写材の磁気ストライプ用転写材の保護層としての機能を果たす。また着色剤拡散防止層としては、着色剤拡散防止層の直下まで拡散してきた着色剤の絵柄を識別できるように実質的に透明であることが好ましい。
【0016】
着色剤拡散防止層を構成する結着剤樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、およびこれらの樹脂の混合物を挙げることができる。着色剤を効果的に防止するためには前記樹脂のうちでガラス転移点が、着色剤が拡散するときの転写用積層体加熱温度や熱圧プレス温度より高いものを使用することが好ましい。
【0017】
着色剤拡散防止層用塗料に使用する溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類を挙げることができ、これらの溶剤は、2種類以上を混合して使用することもできる。
さらに、着色剤拡散防止層中には、必要に応じて、皮膜改質剤として大豆レシチン、マイクロシリカ、あるいはワックス等を添加することができる。また、ポリイソシアネート化合物などの硬化剤を添加して、樹脂バインダー分子間を架橋することは、着色剤拡散防止層の耐久性を向上させるために好ましい。
着色剤拡散防止層は効果的に着色剤の拡散を防止出来るように、多孔質形状を有していないことが重要で、層中に空孔を生じやすい各種フィラーを含まないものが好ましい。
【0018】
着色剤拡散防止層は、上記のように調整した拡散防止層用塗料をリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で仮支持体フィルム上に塗布することにより得られる。
着色剤拡散防止層の乾燥塗膜厚は、記録再生特性からいえば薄いほど良いが、強度、耐久性等とのバランスを考慮すると0.1〜5μmが好ましく、0.3〜2μmがさらに好ましい。
【0019】
本発明絵柄形成方法に使用する転写用積層体は着色層(隠蔽層)を有していても良い、結着剤樹脂と着色剤を成分として含有しており、磁気記録層に色相を隠蔽して着色層中を拡散する蛍光剤による蛍光絵柄の作製絵柄の形成、識別を容易にする。
着色剤に用いる顔料は、無機顔料としては、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウムなど、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、インダンスレン系など多々あるが特に限定されるものではない。また、上記顔料に代え、あるいは併用してフタロシアニン染料、アゾ染料、ニトロ染料、キノリン染料、メチン染料、アジン染料、ファタレイン染料等の染料を用いることもできる。
また、磁気層の色相を効果的に隠蔽可能な顔料として、リン片状金属粉も使用でき、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。リン片状金属粉は板状形状にボールミル等で調整されるが、これらの形状は、面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。厚みは0.1〜1μm程度である。
【0020】
着色層用塗料に使用する結着剤樹脂としては、公知慣用の結着剤樹脂が使用できる。例えば、保護層のところで述べた結着剤樹脂に加え、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリスチレン樹脂、セラック、アルキッド樹脂等が挙げられる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。
絵柄形成領域の着色剤は着色層を通って転写材の表面方向に拡散させることができる。拡散の速度、難易度は着色層に用いている樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と着色層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。着色剤の拡散を容易にするためには着色層に用いる結着剤樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
着色層用塗料に使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に保護層のところで述べた溶剤等が使用できる。
着色層の形成は、着色剤を結着剤樹脂、および結着剤樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて、着色層用塗料を作成し、これをリバース方式、グラビア塗布方式、ダイコート方式等の公知慣用の方式で塗布、乾燥することにより行うことが出来る。
【0021】
着色層の膜厚は、磁気記録層の茶色または黒色を隠蔽するには厚いことが好ましい。しかしながら、カード化した際に磁気記録層よりもカードの表層側に位置することになるため、着色層の膜厚を大きくしすぎると、スペーシングロスが大きくなり、再生出力特性が低下し、情報読み取り時のエラー発生の可能性が増大する。そのため、着色層の膜厚は、2〜5μm、特に3〜4μmであることが好ましい。
【0022】
本発明の絵柄形成方法及び転写用積層体における磁気記録層は、例えば磁性粉末、結着剤樹脂および結着剤樹脂を溶解する溶剤を含有した磁気記録層用塗料を転写用基材上、または着色材拡散防止層上、または着色層上に塗設して形成することができる。
該磁気記録層中に含有される磁性粉末としては、γ−酸化鉄、マグネタイト、コバルト被着酸化鉄、2酸化クロム、鉄系メタル磁性粉、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の公知の磁性粉末を用いることができる。保磁力が20〜320kA/mの範囲のものが好ましい。
磁気記録層に用いる結着剤樹脂としては、公知慣用の結着剤樹脂が使用できる。例えば一般的に、着色層のところで述べた結着剤樹脂等を使用することができる。また、イソシアネート化合物を用いて熱硬化することもできる。また、磁気記録層用塗料に用いる溶剤としては、例えば一般的に保護層のところで述べた溶剤等を使用することができる。
絵柄形成領域の着色剤は磁気記録層を通って転写材表面へと拡散させることができる。拡散の速度、難易度は樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と磁気記録層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。着色剤の拡散を容易にするためには磁気記録層に用いる結着剤樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0023】
磁性塗料には、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル等の助剤類、さらにはカーボンブラックその他のフィラー類を添加することもできる。
磁気記録層用塗料は、例えば上記磁性粉末、結着剤樹脂、溶剤を公知慣用の方法により、混練分散する事によって得られるが、混練分散機としては、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、コボルミル、サンドミル、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダー、等が使用できる。
磁気記録層用塗料の塗布方法においては、特に制限はなく、公知慣用の塗布方式を使用して良く、磁気塗料を所定量塗布後、磁性粉末の磁化容易方向が磁気記録層の塗布長手方向になるように配向処理を行って乾燥を行う。塗布方式としては、例えばグラビア方式、リバース方式、トランスファロールコーター方式、キスコーター方式、ダイコーター方式等が使用できる。
また、上記塗布方式により塗布後は、塗膜が乾燥しないうちに磁場配向処理を行うことが記録再生特性の点で好ましく。磁場配向方法は、公知の方式、例えば反発対向永久磁石、ソレノイド型電磁石等を用いることができる。磁場強度としては1000〜6000Gの範囲が好ましい。
磁気記録層の乾燥膜厚は、好ましくは2〜50μmの範囲であり、さらに好ましくは5〜20μmの範囲である。
【0024】
本発明の絵柄形成方法及び転写用積層体には、転写用積層体とカード用基材を接着させる目的で感熱接着剤層を用いることができる。感熱接着剤層は一般的には、感熱接着性を示す樹脂を含む。
感熱接着性を示す樹脂としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、あるいは、さらにビニルアルコール、無水マレイン酸あるいはアクリル酸などを加えた共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。
また、感熱接着剤層に用いる溶剤としては、例えば保護層のところで述べた溶剤を使用することができる。感熱接着剤層は感熱接着性を示す樹脂を溶剤に溶解させ、混合攪拌して接着剤塗料を調整し、この接着剤塗料を磁気記録層上にリバース方式、グラビア方式、ダイコート方式などの公知の方式により塗布、乾燥することによって得られる。
感熱接着剤層の膜厚は0.5〜15μmが好ましく、特に0.5〜5μmが好ましい。
絵柄形成領域の着色剤は感熱接着剤層を通って転写材の表面方向に拡散させることができる。拡散の速度、難易度は感熱接着剤層に用いている樹脂の種類によって異なるが、転写材に加えられる温度と磁気記録層に用いる樹脂を適宜選択して調整することができる。着色剤の拡散を容易にするためには感熱接着剤層に用いる結着剤樹脂のTgが転写材に加えられる温度より低いことが好ましい。
【0025】
本発明の絵柄形成方法および転写用積層体における絵柄形成領域の形成は以下の絵柄形成用インクの印刷によって行うことができる。絵柄形成用インクは、結着剤樹脂、着色剤と溶剤を含んでいる。
絵柄形成用インクの着色剤としては、従来各種の着色分野で使用されているモノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系、ペリレン系等の油溶性染料、無機顔料としては、アルミナ、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、酸化亜鉛、硫酸バリウムなど、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、アントラキノン系、チオインジゴ系、インダンスレン系等、多々あるが、熱により磁気記録層内、着色層内を良好に拡散できる特性を有していることが好ましく。染料が好適に用いられ特に油溶性染料の使用が好ましい。
絵柄形成用インクに使用する結着剤樹脂としては、公知慣用の結着剤樹脂が使用できる。例えば、絵柄着色剤拡散防止層、着色剤、磁気記録層、感熱接着剤層で述べた等が挙げられるが、絵柄印刷を施す感熱性接着剤、およびカード用オーバーシート基材への付着性と磁気ストライプ用転写材をカード基材オーバーシートへ接着性を阻害しない結着剤樹脂が好ましく、前記感熱接着剤用結着剤樹脂が好適に使用できる。
絵柄形成用インクに使用する溶剤としては、公知慣用の溶剤が使用でき、例えば、既に絵柄着色剤拡散防止層、着色剤、磁気記録層、感熱接着剤層のところで述べた溶剤等が使用できる。
【0026】
絵柄形成用インクは、着色剤を結着剤樹脂、および結着剤樹脂を溶解する溶剤中に単独、もしくは2種類以上混合し、二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、サンドミル、ディスパー等の公知慣用の方法で分散させて、絵柄形成用インクを作製する。
絵柄の印刷には、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の公知の印刷方法を用いることが出来るが、特に印刷品質、生産性の点から、特にグラビア印刷が適している。
絵柄形成領域の膜厚は、特に制限はないが膜厚が厚すぎると、一般的に磁気ストライプ用転写材はリール状に巻き上げているため、非印刷領域と印刷領域との膜厚差による段差が大きいと転写材を変形させ、磁気ストライプ用転写材とカード基材との接着性を悪化させる可能性があり、その膜厚は0.5〜5μmが好ましく、特に0.5〜2.0μmが好ましい。
こうして絵柄形成用インクを使用して例えば磁気ストライプ用転写材の感熱接着剤面、もしくはカード用基材の磁気ストライプが転写される部分に絵柄を形成する。
【0027】
こうして形成された絵柄を転写材内に拡散させる方法としては、転写工程前に転写基材上に転写材が存在する状態で、40〜80℃の高温環境下に数時間〜数日間放置させ、この熱により着色剤を拡散させて、着色剤を転写用基体側に拡散させ、転写材の転写後に転写材側から識別可能な状態にする方法と、転写材をカード基材のオーバーシートに転写した後、カード上の絵柄を施したセンターコアと反対面のオーバーシートと共に熱圧プレス用金属板に挟み込み100〜160℃の温度をかけ数十分から数時間の熱プレス加工を行って、着色剤を転写後の転写材表面側に拡散させて磁気カード表面より識別可能な状態にする方法がある。
【実施例】
【0028】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない、尚、以下「部」は質量部を表すものとする。
実施例、比較例には以下に示す、転写基材フィルムおよび各塗料を使用する。
A.転写基材フィルム 厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
B.着色剤拡散防止層用塗料(保護層機能を兼ねる)
セルロースアセテート樹脂 8部
(ダイセル化学社製『L−20』)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂 2部
(イーストマンケミカル社製『CAP−504−0.2』
アセトン 25部
酢酸エチル 25部
トルエン 20部
シクロヘキサノン 20部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分
に溶解させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、着色剤拡散防止層用塗料を作製した。
【0029】
C.着色層用塗料
リン片状金属粉:アルミニウム粉末 20部
(昭和アルミパウダー社製『210EA』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 16部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
シクロヘキサノン 17部
ポリイソシアネート 5部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解
させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、着色層用塗料を作製した。
【0030】
D.磁気記録層用塗料
バリウムフェライト磁性粉 100部
(戸田工業社製『MC−127』;保磁力 220kA/m)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 15部
(日本ゼオン社製『MR−110』)
ポリウレタン樹脂 10部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 50部
トルエン 50部
シクロヘキサノン 25部
ポリイソシアネート 10部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記材料を用い、特開平09−059541に示す方法により磁気記録層用塗料を作製した。
【0031】
E.感熱接着剤層用塗料
ポリウレタン樹脂 1部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 4部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 45部
トルエン 50部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、感熱接着剤塗料を作製した。
【0032】
F.絵柄用インク〔A〕
クロム錯塩染料のアミン塩 4部
〈C.I.ソルベントブラック43〉
(保土谷化学工業社製『アイゼンスピロンブラックGMHスペシャル』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 43部
トルエン 43部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、絵柄用インク〔A〕を作製した。
【0033】
G.絵柄用インク〔B〕
銅フタロシアニン染料〈C.I.ソルベントブルー70〉 4部
(BASF社製『Neozapon Blue 807』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(日信化学社製『ソルバインC5』)
MEK 43部
トルエン 43部
上記の材料を、ディスパーにて攪拌し充分に溶解させ均一化を行い、絵柄用インク〔B〕を作製した。
【0034】
H.絵柄用インク〔C〕
カーボンブラック 10部
(CABOT CORPORATION社製 『REGAL99R』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 40部
トルエン 40部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
カーボンブラック、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂と共に2本ロールにて前練肉を行い、その後に他の材料と共にサンドミルを通し、絵柄用インク〔C〕を作製した。
【0035】
I.絵柄用インク〔D〕
銅フタロシアニン顔料 10部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 8部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 2部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
MEK 40部
トルエン 40部
ポリイソシアネート 4部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
銅フタロシアニン顔料、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂と共に2本ロールにて前練肉を行い、その後に他の材料と共にサンドミルを通し、絵柄用インク〔D〕を作製した。
【0036】
J.非絵柄部充填用塗料
リン片状金属粉:アルミニウム粉末 20部
(昭和アルミパウダー社製『210EA』)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 16部
(ユニオンカーバイド社製『VAGH』)
ポリウレタン樹脂 4部
(大日本インキ化学工業社製『TS−03』)
メチルエチルケトン 75部
トルエン 75部
シクロヘキサノン 17部
ポリイソシアネート 5部
(大日本インキ化学工業社製『ハードナーNo.50(有効成分:50%)』)
上記の材料の内、ポリイソシアネートを除く全てを、ディスパーにて攪拌し充分に溶解
させた後に上記のポリイソシアネートを添加し、更にディスパーにて攪拌均一化を行い、着色層用塗料を作製した。
【0037】
(実施例1)
転写用基材として、厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の着色剤拡散防止層用塗料、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ着色剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、着色剤拡散防止層が1μm、着色層が4μm、磁気記録層が9μm、そして接着剤層が1.5μmとなるようにした。
絵柄形成領域として、上記作成した転写材の感熱接着剤層面上に絵柄用インク〔A〕をグラビア印刷方式により絵柄部分の膜厚が1μmとなるように図6に示すよう絵柄印刷を行い、60℃の高温室に24時間放置した。
上記で作製した磁気ストライプ用の転写用積層体を用いて転写材を所定の幅に裁断後、ヒートシールテスター(テスター産業社製)によりポリ塩化ビニル製のカード基体用オーバーシート(太平化学社製)に転写材を転写した後、仮支持体フィルムを除去し、カード基体用センターコアと反対面のオーバーシートと共に、平圧プレス機(試験用加硫プレス機 東洋精密製作所社製)を用いて140℃、1.3MPa、20〜30分の条件下で熱プレス加工し、その後、カード状に打ち抜いて磁気カード図8を作製した。
【0038】
(実施例2)
実施例1の絵柄印刷において、絵柄形成用インクを絵柄形成用インク〔B〕とした以外は実施例1と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例3)
実施例1の絵柄印刷において、絵柄印刷後の磁気ストライプ用転写材を60℃の高温室に24時間放置を行わない以外は、実施例1と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例4)
実施例2の絵柄印刷において、絵柄印刷後の磁気ストライプ用転写材を60℃の高温室に24時間放置を行わない以外は、実施例2と同様にして、磁気カードを作成した。
(実施例5)
実施例1において、磁気ストライプ用転写材は実施例1と同様に作成し、絵柄印刷をカード用基材であるオーバーシートの磁気ストライプが転写される部分に、絵柄用インク〔A〕を用いてグラビア印刷方式により図7に示すように、絵柄印刷を行った。それ以降は、実施例1の磁気カード作成方法と同様にして磁気カードを作成した。
(実施例6)
実施例3の絵柄印刷において、絵柄用インクを絵柄用インク〔B〕とした以外は実施例1と同様にして磁気カードを作成した。
【0039】
(比較例1)
転写基材フィルムとして、厚さ24μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルムの片面上に上記の着色剤拡散防止層用(保護層用)塗料を乾燥後の膜厚が1μmになるようリバースコーターを使用して塗布、乾燥を行った。
その後に、絵柄用インク〔C〕を用い、グラビア印刷により乾燥後の絵柄の膜厚が1μmとなるように絵柄を形成した。その後に、上記絵柄のネガパターンとなるグラビア版を用いて、非絵柄部充填用塗料を乾燥後の膜厚が1μmになるように前記絵柄用インク〔C〕で形成した絵柄部以外の部分に合うように印刷を行った。
その後に、着色層用塗料、磁気記録層用塗料、および感熱接着剤塗料をこの順に、いずれもリバースコーターを使用して塗布、乾燥し、それぞれ着色剤拡散防止層、着色層、磁気記録層、および感熱接着剤層を設けた。各層の乾燥後の膜厚は、着色層が4μm、磁気記録層が9μm、そして接着剤層が1.5μmとなるようにした。
上記で作製した磁気ストライプ用転写材を所定の幅に裁断後、ヒートシールテスター(テスター産業社製)によりポリ塩化ビニル製のカード基体用オーバーシート(太平化学社製)に転写材を転写した後、仮支持体フィルムを除去し、カード基体用センターコアと反対面のオーバーシートと共に、平圧プレス機(試験用加硫プレス機 東洋精機製作所社製)を用いて、精密140℃、1.3MPa、20〜30分の条件下で熱プレス加工し、その後、カード状に打ち抜いて磁気カードを作製した。
(比較例2)
比較例1において、絵柄用インクを絵柄用インク〔D〕とする以外は比較例2と同様にして磁気カードを作成した。
【0040】
以下の評価方法で実施例1〜実施例6、比較例1、比較例2の磁気カードの評価を行った。
(意匠性)
磁気カードの磁気ストライプ部分について目視で評価した。
○・・・コントラスト、発色共に良好である。
△・・・コントラストが不鮮明、あるいは発色が不十分。
×・・・コントラストが不鮮明でかつ、発色が不十分。
【0041】
(磁気カードの出力変動)
磁気カード表面の凹凸が原因で発生する再生出力の変動を測定することによって、積層体としての磁気カードの段差、凹凸の大きさを評価した。
得られた磁気カードについてISO/IEC7811−6に準拠し、BARNES社製MAGTESTER2000を用いてその記録再生特性の測定を行い、下記式により出力変動を求めた。なお、この磁気カードサンプルを作成するために使用した転写型磁気テープに関しては、それぞれのスペーシングにあわせて磁気記録層の膜厚を調整し、出力平均値が基準カード出力に等しくなるよう調整を行った。
出力変動(%)=((出力最大値−出力最小値)/出力平均値)×100
○・・・5%未満。
△・・・5%以上、10%未満。
×・・・10%以上。
(絵柄決定からの納期と絵柄変更の容易性)
カード完成までの工程数で示した(図9、図10、図11参照)
○・・・絵柄形成からカード完成までの工程数が少なく、カード納期や絵柄変更に迅速に対応が可能である。
×・・・絵柄形成からカード完成までの工程数が多くカード完成までに時間がかかるため、カード納期や絵柄変更に迅速に対応することができない。
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から明らかのように、本実施例1〜6は、従来の絵柄形成方法と同様の意匠性を確保でき、また、絵柄印刷に用いた染料が磁気記録層、着色層の空隙部分に拡散し着色しているため、絵柄部分と非絵柄部分で磁気ストライプ表面と磁気記録層の間の距離は実質的に変化しないため、絵柄に起因する出力変動は全く発生しない。また、絵柄決定からカード完成までの工程数が少ないため、納期を大幅に短縮でき、絵柄変更にも迅速に対応することが出来る。
また、従来用いていた絵柄印刷による絵柄部、非絵柄部において完成カードの磁気ストライプ表面から磁気記録層までのスペーシングの変化を無くすため、非印刷部に対して印刷部のネガパターンで隠蔽層と同じ色相のインキを印刷する方法は、理論的には、絵柄部の印刷、非絵柄部の充填印刷を合わせ込むことは可能であるが、実際には使用する転写基材の伸び等の影響を受け、印刷長手方向、幅方向における印刷合わせの振れの発生は避けられず、出力変動を無くすことは不可能である。またこの方法においてはネガパターンを形成するための工程が増える上、絵柄形成工程からカード完成までの工程数が多いので納期や絵柄変更に迅速に対応することができない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】磁気ストライプ用転写材で磁気記録層と絵柄を形成した従来の磁気カードの拡大断面図である。
【図2】本発明の絵柄形成方法に使用する転写用積層体の一つの実施態様を示す断面図である。
【図3】前記転写用積層体のエージングを行ったときに、絵柄の着色剤が拡散する様子を概念的に示した断面図である。
【図4】本発明の絵柄形成方法の一つの実施態様であって、オーバーシート基材側に着色層部分を形成する場合を概念的に示した断面図である。
【図5】本発明の絵柄形成方法によって形成された磁気カードの一つの実施態様を示す断面図である。
【図6】実施例1〜4で製造した磁気ストライプ形成用の転写用積層体と絵柄形成領域を示した概念図である。
【図7】実施例5の製造において絵柄形成領域を示した概略図である。
【図8】本発明の絵柄形成方法を用いて絵柄を形成された磁気カードの一つの実施態様を示す概略図である。
【図9】本発明の絵柄形成方法を用い、磁気記録層と絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の一例を表す図である。
【図10】本発明の絵柄形成方法を用い、磁気記録層と絵柄を有する磁気カードを転写用積層体を用いて製造するときの工程の他の例を表す図である。
【図11】磁気記録層と絵柄を有する磁気カードの従来の製造方法を表す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 着色剤拡散防止層
2 絵柄着色剤拡散領域
3 着色層
4 磁気記録層
5 感熱着色層
6 オーバーシート
7 センターコア
8 カード上の絵柄部
9 転写用基材
10 絵柄形成領域における絵柄部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写用基材上に形成された磁気記録層を含む層状の転写材を、基材上に転写してなる磁気記録媒体の該磁気記録層上への絵柄形成方法であって、前記転写材中または前記基材上に予め形成された絵柄形成領域の着色剤が、前記転写材中を転写後の表面に近い方向へと拡散することによって、前記絵柄形成領域の絵柄が識別可能となることを特徴とする絵柄形成方法。
【請求項2】
前記層状の転写材は、転写用基材と磁気記録層の間に着色層を有し、前記絵柄形成領域の着色剤は前記着色層を通って転写後の転写材の表面に近い方向へと拡散し、前記着色層を背景として識別される請求項1に記載の絵柄形成方法。
【請求項3】
前記絵柄形成領域の着色剤は前記着色層と前記磁気記録層を通って転写後の転写材の表面に近い方向へと拡散する請求項2に記載の絵柄形成方法。
【請求項4】
前記層状の転写材は、前記転写用基材との界面に実質的に透明な着色剤拡散防止層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の絵柄形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の絵柄形成方法によって絵柄を形成されたことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の絵柄形成方法によって絵柄を形成された磁気記録媒体を製造することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
転写用基材上に磁気記録層と絵柄形成領域を有する層状の転写材が形成された転写用積層体であって、前記絵柄形成領域が磁気記録層の上方に形成されたことを特徴とする転写用積層体。
【請求項8】
前記磁気記録層の下方にさらに着色層を有する請求項7に記載の転写用積層体。
【請求項9】
前記絵柄層の着色剤は熱により前記磁気記録層、または前記着色層、または前記磁気記録層と前記着色層を通って、転写後における前記転写材の表面に近い方向に拡散するものである請求項7または8に記載の転写用積層体。
【請求項10】
基材上に磁気記録層を含む層と、該磁気記録層側から識別可能な絵柄とを形成するための転写用積層体であって、転写用基材上に磁気記録層を含む層状の転写材を有し、前記絵柄を形成する着色剤は少なくとも前記磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする転写用積層体。
【請求項11】
前記層状の転写材は転写用基材に最も近い側に着色剤拡散防止層を有する請求項7〜10のいずれか1項に記載の転写用積層体。
【請求項12】
基材上に磁気記録層と、該磁気記録層側から識別可能な絵柄を有する磁気カードであって、前記絵柄を形成する着色剤は、前記絵柄に対応する位置の少なくとも磁気記録層の膜厚方向全幅にわたって分布していることを特徴とする磁気カード。
【請求項13】
磁気記録層の上方に着色剤拡散防止層を有する請求項12に記載の磁気カード。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−44250(P2006−44250A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191845(P2005−191845)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】