説明

磁気記録媒体製造方法および磁気記録媒体製造装置

【課題】本発明は、塵埃汚染の機会の低減による磁気ディスク媒体の品質向上する磁気ディスク媒体の製造方法、製造装置を提供する。
【解決手段】各工程の製造開始に際して磁気記録媒体を収納ケースから取り出して製造を行い、製造が終了すると再び収納ケースに戻し、次工程に移動させる磁気記録媒体製造方法であって、
磁性膜が形成され、該磁性膜上に潤滑剤が塗布された磁気記録媒体をテープにより平滑化するテープバーニッシュ工程と、平滑化された磁気記録媒体を収納ケースから取り出し、出荷用ケースに詰めかえるケース交換工程と、出荷用ケースから磁気記録媒体を取り出し試験を行い、良品を出荷用ケースに収納する媒体試験工程と、を有する磁気記録媒体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の塵埃等を除去するための磁気記録媒体製造方法および磁気記録媒体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気ディスク媒体製造工程は、磁気ディスク媒体に磁性膜を形成し、潤滑剤を塗布し、潤滑剤を塗布した磁気ディスク媒体をテープにより平滑化し、平滑化した磁気ディスク媒体について媒体試験を行う。媒体試験の終了後、良品媒体を試験工程用のケースから出荷用のケースに移し変える。そしてこの中の一部媒体の表面欠陥測定を行い、ロット判定の合格品について出荷が行なわれている。この表面欠陥測定は、出荷用のケースに移し替える際の媒体のハンドリングによる塵埃等の問題の有無を検査するものである。そのため、媒体の塵埃汚染を最小限に押えることを考えるならば、媒体試験直後に清浄な出荷用のケースに収納、梱包することが理想である。
しかしながら、この実現のためには、試験工程用のケースと出荷用のケースを同時に供給し、ライン化する必要があり、その分設備投資費用、設備占有面積等が増えることから、難しい面がある。また、設備等の面から負担が大きい(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭56−090428号公報(第4頁左下欄14行から右下欄第4行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、特許文献1では、磁気ディスク媒体を磁気ディスク装置への組み込む際に、再度テープバーニッシュを行うこととしているが、出荷用ケースに組み込む際の塵埃については考慮されていない。
【0004】
本願発明は、磁気ディスク製造工程において、出荷用ケースへの媒体の詰め替えをできるだけ媒体試験工程の近くで行うことにより、媒体のハンドリング回数、環境への暴露時間を低減して、塵埃汚染や損傷を抑え、品質向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の磁気記録媒体製造方法は、各工程の製造開始に際して磁気記録媒体を収納ケースから取り出して製造を行い、製造が終了すると再び収納ケースに戻し、次工程に移動させる磁気記録媒体製造方法であって、磁性膜が形成され、該磁性膜上に潤滑剤が塗布された磁気記録媒体をテープにより平滑化するテープバーニッシュ工程と、平滑化された磁気記録媒体を収納ケースから取り出し、出荷用ケースに詰めかえるケース交換工程と、出荷用ケースから磁気記録媒体を取り出し試験を行い、良品を出荷用ケースに収納する媒体試験工程と、有する構成である。
【0006】
この構成により、テープバーニッシュ後に磁気ディスク媒体を工程用の収納ケースから出荷用ケースへ詰め替えを行い、その後媒体試験工程になるので、品質の保証もでき、抜き取りなどの検査工程も必要がなくなる。
【0007】
また、ケース交換工程は、磁気記録媒体を収納している収納ケースを取得する収納ケース取得工程と、取得された収納ケースの磁気記録媒体を一括してハンガーに掛けるハンガー掛け工程と、
ハンガーに掛けられた磁気記録媒体から収納ケースを分離し排出する収納ケース分離排出工程と、出荷用ケースを取得する出荷用ケース取得工程と、取得した出荷用ケースにハンガー上の磁気記録媒体を一括挿入する磁気記録媒体収納工程と、磁気記録媒体を収納した出荷用ケースをハンガーから抜き取る出荷用ケース抜き取り工程と、抜き取られた出荷用ケースを媒体試験工程に供給する出荷用ケース供給工程と、を有する構成である。
【0008】
この構成により、テープバーニッシュ後で媒体試験前に、磁気ディスク媒体を工程用の収納ケースからクリーンな出荷用の収納ケースに自動的に交換しているため、塵埃等による媒体への影響を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、塵埃汚染の機会の低減できるので、磁気ディスク媒体の品質が向上でき、また試験工程後出荷前に独立して設けていた表面欠陥測定工程の削除が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施例1)
図1に、磁気ディスク媒体製造装置の構成図を示す。
【0011】
磁気ディスク媒体製造装置1は、磁性膜形成部2、潤滑剤塗布部3、テープバーニッシュ部4とケース交換処理部5、媒体試験部6から構成される。
【0012】
ケース交換処理部5は、ロボット部51、ケース交換部52を有する。
【0013】
磁性膜形成部2では、工程ケース7から磁気ディスク媒体8の基板を取り出し磁性膜を形成後、再び工程ケース7に磁気ディスク媒体8を収納する。工程ケース7とは、磁気ディスク媒体8を収納するケースである。各工程間では、工程ケース7がコンベアにより運搬される。
【0014】
潤滑剤塗布部3では、工程ケース7から磁気ディスク媒体8を一括で取り出し潤滑剤の入っている処理槽に浸ける。そして、一定時間経過後、再び元の工程ケース7に磁気ディスク媒体8を収納する。
【0015】
テープバーニッシュ部4では、工程ケース7から磁気ディスク媒体8を1枚単位で取り出してバーニッシュテープで磁気ディスク媒体表面の凹凸や塵埃を除去し再び元の工程ケース7に磁気ディスク媒体8を収納する。
【0016】
ケース交換処理部5では、工程ケース7から出荷用の出荷用ケースへ磁気ディスク媒体8を入れ替える。
【0017】
工程ケース7は、磁気ディスク媒体8の収納ケースであり、プロセス投入前はクリーン洗浄されているが、各プロセス工程において何回かケース内の媒体取出しと収納が行われるため、磁気ディスク媒体8が塵埃汚染されている可能性がある。そのため、クリーン洗浄された出荷用ケースを新たに使用するものです。
【0018】
媒体試験部6は、磁気ディスク媒体8を出荷用ケースから1枚づつ取り出しリードライト試験を行う。
【0019】
ロボット部51は、テープバーニッシュされた磁気ディスク媒体8についてハンガー11を使用して工程ケース7と分離し、分離された磁気ディスク媒体8を出荷用ケースに収納し、媒体試験部6のコンベアに出荷用ケースを投入する。
【0020】
ケース交換部52は、コンベアに出荷用の出荷用ケースを投入し、工程ケース7との交換のため、ハンガー11の位置まで搬送する。また、空になった工程ケース7を排出する。
【0021】
図2に実施例の工程ケースの説明図を示す。
【0022】
図2(a)に工程ケース7の平面図であり、磁気ディスク媒体8が25枚収納されている状態を示している。
【0023】
図2(b)は、工程ケース7の側面図を示し、磁気ディスク媒体8が収納されている図を示す。
【0024】
図3に実施例の磁気ディスク媒体の製造工程の説明図を示す。
【0025】
磁気ディスク媒体8の製造工程は、磁性膜形成工程、潤滑剤塗布工程、テープバーニッシュ工程、ケース交換処理工程、媒体試験工程からなる。
【0026】
まず、磁性膜形成部2により、磁性膜形成工程が実行される。工程ケース7から磁気ディスク媒体の基板を取り出して下地膜、磁性膜、保護膜等を形成後、再び工程ケース7に磁気ディスク媒体8を収納する。そして、工程ケース7は、次工程にコンベアで搬送される(S1ステップ)。
【0027】
次に、潤滑剤塗布部3により、潤滑塗布工程が実行される。工程ケース7から磁気ディスク媒体8を一括で取り出し潤滑剤の入っている処理槽に浸ける。そして、一定時間経過後、再び元の工程ケース7に磁気ディスク媒体8を収納する。工程ケース7は、次工程にコンベアで搬送される(S2ステップ)。
【0028】
次に、テープバーニッシュ部4により、テープバーニッシュ工程が実行される。工程ケース7から磁気ディスク媒体8を1枚単位で取り出してバーニッシュテープで磁気ディスク媒体表面の凹凸や塵埃を除去し再び元の工程ケース7に磁気ディスク媒体8を収納する。そして、工程ケース7は、次工程にコンベアで搬送される(S3ステップ)。
【0029】
次に、工程ケース7から、出荷用ケースへのケース交換処理工程が実行される。工程ケース7から磁気ディスク媒体8を一括で取り出し、その磁気ディスク媒体8を出荷用ケースへ一括で移し替えを行う。そして、出荷用ケースは、次工程にコンベアで搬送される(S4ステップ)。
【0030】
媒体試験部6は、媒体試験工程を実行する。工程ケース7から磁気ディスク媒体8を1枚毎に取り出しリードライト試験を行い試験結果に基づき、出荷用ケースに良品の磁気ディスク媒体8を収納する(S5ステップ)。
【0031】
図4に、実施例の出荷用ケースへの媒体詰め替えの製造工程の説明図を示す。
【0032】
図5に、実施例の出荷用ケースへのケース交換処理の説明図を示す。
【0033】
出荷用ケースへの媒体移し替え工程の詳細は、次のように行われる。
【0034】
テープバーニッシュ工程から工程ケース7に入った磁気ディスク媒体8が、コンベアで供給されるので、ケース交換用のロボット部51により工程ケース7をコンベアから取得する(S11ステップ)。図5(a)(1)参照。
【0035】
ロボット部51は、ロボットハンド12をケース交換部52に設置されているハンガー11に向けて前進させる(S12ステップ)。図5(a)(1)参照。
【0036】
工程ケース7の磁気ディスク媒体8をハンガー11に一括で引っ掛ける(S13ステップ)。図5(a)(2)参照。
【0037】
ロボットハンド12が下降することで、工程ケース7と磁気ディスク媒体8が分離される(S14ステップ)。図5(a)(3)参照。
【0038】
工程ケース7は、ケース交換部52のコンベアにより排出される(S15ステップ)。図5(a)(4)参照。
【0039】
一方、ケース交換部52のコンベアから新品ケースの出荷用ケースが供給される(S16ステップ)。図5(b)(1)参照。
【0040】
ケース交換部52のコンベアから供給された出荷用ケースをケース交換用のロボットが取得する(S17ステップ)。図5(b)(2)参照。
【0041】
ロボットハンド12が上昇することで、ハンガー11の磁気ディスク媒体8を出荷用ケースへ一括挿入する(S18ステップ)。図5(b)(3)参照。
【0042】
ロボットハンド12が後退することで、磁気ディスク媒体8を収納した出荷用ケースがハンガー11から抜き取られる(S19ステップ)。図5(b)(4)参照。
【0043】
ロボットハンド12が旋回して、コンベア上に降ろし、出荷用ケースを磁気ディスク媒体試験に供給するためのストック場所にコンベアにより移動させる(S20ステップ)。
【0044】
このような処理による結果として、本願発明は、塵埃汚染の機会の低減できるので、磁気ディスク媒体8の品質が向上でき、また試験工程後出荷前に独立して設けていた表面欠陥測定工程の削除が可能となる。
【0045】
また、現状のタクトタイムを維持させて試験工程に新品ケースを供給させるには、大幅なライン変更が必要となるが、テープバーニッシュ装置に媒体移し替え機能を付加する手段を設けることで、設備投資費用などの面からも効果的な方法を実現することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、塵埃汚染の機会の低減による磁気ディスク媒体の品質向上する磁気ディスク媒体の製造装置、製造方法を提供する用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例の磁気ディスク媒体製造装置の構成図
【図2】実施例の工程ケースの説明図
【図3】実施例の磁気ディスク媒体製造工程の説明図
【図4】実施例の出荷用ケースへの媒体詰め替えの製造工程の説明図
【図5】実施例の出荷用ケースへのケース交換処理の説明図
【符号の説明】
【0048】
1 磁気ディスク媒体製造装置
2 磁性膜形成部
3 潤滑剤塗布部
4 テープバーニッシュ部
5 ケース交換処理部
6 媒体試験部
7 工程ケース
8 磁気ディスク媒体
11 ハンガー
12 ロボットハンド
51 ロボット部
52 ケース交換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各工程の製造開始に際して磁気記録媒体を収納ケースから取り出して製造を行い、製造が終了すると再び収納ケースに戻し、次工程に移動させる磁気記録媒体製造方法であって、
磁性膜が形成され、該磁性膜上に潤滑剤が塗布された磁気記録媒体をテープにより平滑化するテープバーニッシュ工程と、
平滑化された磁気記録媒体を収納ケースから取り出し、出荷用ケースに詰めかえるケース交換工程と、
出荷用ケースから磁気記録媒体を取り出し試験を行い、良品を出荷用ケースに収納する媒体試験工程と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体製造方法。
【請求項2】
ケース交換工程は、
磁気記録媒体を収納している収納ケースを取得する収納ケース取得工程と、
取得された収納ケースの磁気記録媒体を一括してハンガーに掛けるハンガー掛け工程と、
ハンガーに掛けられた磁気記録媒体から収納ケースを分離し排出する収納ケース分離排出工程と、
出荷用ケースを取得する出荷用ケース取得工程と、
取得した出荷用ケースにハンガー上の磁気記録媒体を一括挿入する磁気記録媒体収納工程と、
磁気記録媒体を収納した出荷用ケースをハンガーから抜き取る出荷用ケース抜き取り工程と、
抜き取られた出荷用ケースを媒体試験工程に供給する出荷用ケース供給工程と、
を含む請求項1記載の磁気記録媒体製造方法。
【請求項3】
各工程の製造開始に際して磁気記録媒体を収納ケースから取り出して製造を行い、製造が終了すると再び収納ケースに戻し、次工程に移動させる磁気記録媒体製造装置であって、
磁性膜が形成され、該磁性膜上に潤滑剤が塗布された磁気記録媒体をテープにより平滑化するテープバーニッシュ手段と、
平滑化された磁気記録媒体を収納ケースから取り出し、出荷用ケースに詰めかえるケース交換手段と、
出荷用ケースから磁気記録媒体を取り出し試験を行い、良品を出荷用ケースに収納する媒体試験手段と、
を有することを特徴とする磁気記録媒体製造装置。
【請求項4】
ケース交換手段は、
磁気記録媒体を収納している収納ケースを取得する収納ケース取得手段と、
取得された収納ケースの磁気記録媒体を一括してハンガーに掛けるハンガー掛け手段と、
ハンガーに掛けられた磁気記録媒体から収納ケースを分離し排出する収納ケース分離排出手段と、
出荷用ケースを取得する出荷用ケース取得手段と、
取得した出荷用ケースにハンガー上の磁気記録媒体を一括挿入する磁気記録媒体収納手段と、
磁気記録媒体を収納した出荷用ケースをハンガーから抜き取る出荷用ケース抜き取り手段と、
抜き取られた出荷用ケースを媒体試験工程に供給する出荷用ケース供給手段と、
を含む請求項3記載の磁気記録媒体製造装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−87457(P2007−87457A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272255(P2005−272255)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】