説明

磁気記録媒体

【課題】超高記録密度を実現しかつ生産性の高い磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】可撓性支持体上に規則的に配列した間隔1μm以下の細孔を形成し、該細孔に球状の磁性粉を配置してなる磁気記録媒体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主として、究極的に記録容量が大きく、かつ大量生産を必要とする磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の一つである磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピユーターテープなど種々の用途があるが、特にデータバックアップ用の磁気テープ(バックアップテープ)の分野ではバックアップ対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数100GB以上の記憶容量のものが商品化されており、今後もハードディスクのさらなる大容量化に対応するためこの種バックアップテープの高容量化は不可欠となっている。
【0003】
データをバックアップする記録媒体としては高容量化と同時に大量に生産する必要がある。磁気テ−プは、可撓性支持体上に連続的かつ高速に磁性層を形成し、裁断した部分全てを製品とすることが出来るので、大量生産に適した磁気記録媒体といえる。現在データバックアップ用の磁気テープは、塗布型媒体と蒸着型媒体とに大別される。塗布型の磁気記録媒体は分散した磁性塗料を可撓性支持体上に塗布することで製造されるので、非常に高速に支持体を搬送させても製造することが出来るという長所がある。しかしこの製造方法では磁気ヘッドと接触する表面を極限まで平滑にすることは難しく、この点が高密度化を妨げている要因となっている。
【0004】
逆に蒸着型の磁気記録媒体は製造法的に、非常に平滑な表面性を得ることができ、高記録密度を実現するという点で非常に有利である。しかし金属を熱して蒸気状にし可撓性支持体上に製膜するという製造法上、それほど高速に支持体を搬送することができない。また蒸着は高真空中で行うので、製膜時には支持体や材料を真空漕内に導入し、その後漕内をエアポンプで排気して高真空を得るという工程が必要であり、この点でも大量生産を行うことが難しい。また蒸着磁性層は直接磁気ヘッドと接触するとすぐに傷が入ってしまうほど耐久性が良くないので、蒸着層の上にダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層が必要であり、この層があることで磁気ヘッドと磁性層の間にはやはりスペーシングが生じてしまい、究極的な高密度記録化を妨げている。
【0005】
また薄層磁性層を形成する場合に、膜厚の平均値が0.3μm以下になっていても、厚みムラが大きく、例えば±10%も厚み変動があると極端に特性を落としてしまう。長手方向の測定範囲を変えることで、影響を及ぼす特性が変わってくる。100μm以下の範囲で測定した厚みムラは電磁変換特性と良く相関し、厚みムラが大きくなるに従ってエラーレートマージンの劣化を招く。また1mm〜100mmの範囲で測定した場合の厚みムラは、再生出力の変動を招き、信号のドロップアウトとして計測されてしまう可能性が大きくなる。
【0006】
このように高記録密度化と大量生産性は相反しているが、究極の高密度化という点では課題とする点が更に多く存在している。これは硬質基体上に製膜して形成される磁気記録媒体、特にハードディスク媒体などでも同様の状況にある。一般的に磁気信号を記録再生する最小単位である1ビットには複数の磁気粒が含まれている。塗布型磁気記録媒体であればこれは超微粒磁性粒子に対応し、蒸着型やハードディスクで用いられるスパッタ法による媒体ではグレインと呼ばれる結晶粒が対応する。このように複数の粒が1ビット中に含まれるので、ビットとビットの境界は粒の形状を反映して非常に不均一なものであり、更に各ビット境界の形状が異なるものになる。読み出し時にはこの不均一さとバラツキが原因となって、ノイズが発生するが、この状況は1ビットの大きさが小さくなる、従って高記録密度になるに従って顕著になる。高記録密度の状況では、前記の原因によって信号のS/Nが劣化し、エラーレートの上昇や、最終的には読み出しができないといった状況を招くことになる。
【0007】
このようにビット境界が不均一なことによって高記録密度化が妨げられてしまうので、積極的にビット境界を均一に形成しようとする試みがなされている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4など)。これらにはトラック幅手方向の境界を均一にするディスクリートトラックメディアや、単位粒1つ1つを磁気的に孤立させるパターンドメディアが含まれる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−157520号公報(インプリントらしい)
【特許文献2】特開2004−238713号公報(アルミ陽極酸化)
【特許文献3】特開2004−235613号公報(インプリント)
【特許文献4】特開2002−359138号公報(ハロゲン)
【特許文献5】特開2004−164692号公報(PMMA)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記してきたように磁気記録媒体の高密度化に当たっては、単位粒の孤立化が大変有効であることが示されてきている。しかしディスクリートトラックメディアにしろパターンドメディアにしろ、基本的には硬質の基体上に形成することを前提としており、磁気テープのような高記録密度かつ大面積の高記録容量磁気記録媒体に適応することは考えてこられなかった。
【0010】
そこで、本発明は、可撓性支持体上に高速に製造することができる、パターンド磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、あらかじめ形成した細孔に、球状の磁性粒子を埋め込むことによって実現が可能となることを見出した。
【0012】
本発明は、以上の知見をもとにして、完成されたものである。すなわち、本発明は可撓性支持体上に球状の磁性体を配置してなる磁気記録媒体であり、該磁性体は、該支持体上に規則的に配列した細孔中に配置され、該細孔間の間隔が1μm以下であり、かつ記録システムにおける記録再生方向の平行方向及び垂直方向に対して周期性を持つことを特徴とする、磁気記録媒体(請求項1)と前記磁性体の平均粒子径が30nm以下であることを特徴とする、請求項1記載の磁気記録媒体(請求項2)とから構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明による磁気記録媒体によれば非常に高記録密度の連続的な磁気記録媒体を高速に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の磁気記録媒体の好ましい実施形態を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。磁気記録媒体はデジタル記録用であり、可撓性磁性支持体の少なくとも一面上に磁気記録層が設けられている。特に走行高信頼性が必要であるテープ媒体では、支持体の前記磁気記録層の他面上に、バックコート層を設けることができる。以下に本発明を実施するための、非磁性支持体、磁気記録層、バックコート層について詳述する。
【0015】
非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm)以上で、且つ幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm)以上であることが好ましく、さらに長手方向のヤング率が9.9GPa(1000kg/mm)以上、且つ幅方向のヤング率が7.9GPa(800kg/mm)以上がより好ましい。非磁性支持体の長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm)以上がよいのは、長手方向のヤング率が5.9GPa(600kg/mm)未満では、テープ走行が不安定になるためである。非磁性支持体の幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm)以上がよいのは、幅方向のヤング率が3.9GPa(400kg/mm)未満では、テープのエッジダメージが発生しやすくなるためである。
【0016】
このような特性を満足する非磁性支持体には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸の芳香族ポリアミドベースフィルム、芳香族ポリイミドフィルム等がある。なお非磁性支持体の厚みは用途によって異なるが、磁気記録媒体が磁気テープである場合、通常1〜7μmのものが使用される。より好ましくは2.5〜4.5μmである。この範囲の厚さの非磁性支持体が使用されるのは、1μm未満では製膜が難しく、またテープ強度が小さくなり、7μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、テープ1巻当りの記憶容量が小さくなるためである。また非磁性支持体の磁性層形成面の表面中心線平均粗さ(Ra)は2.5nm以上20nm以下がより好ましい。20nm以下がより好ましいのは、20nm以下であれば、下層非磁性層を薄くしても下層非磁性層表面及び磁性層表面の凹凸が小さくなるためである。
【0017】
本発明にかかわる磁気記録層の製造においては、大別して以下2つの製造プロセスを新規に組み合わせることで実現できる。その他の製造方法においては、既存の磁気テープ等磁気記録媒体の製造プロセスを使用することができる。まず第1が可撓上支持体に規則的に細孔を形成するプロセスであり、第2が細孔に磁性体を配置するプロセスである。以下それぞれについて詳述する。
【0018】
本発明では、細孔中に球状の強磁性体を充填して磁気記録媒体としており、本発明に係る規則的に細孔を形成するプロセスとしては、特に制限されず従来公知のプロセスを用いることができる。本発明による細孔の直径は1μm以下が好ましく、5nm〜100nmの範囲が特に好ましい。細孔のアスペクト比(深さ/直径)は2〜10程度であることが好ましい。各細孔の断面は均一であることが好ましく、可撓性支持体表面に対し垂直で、直線的であることが好ましい。なお細孔の形状は円形だけでなく、矩形や楕円形等としてもよい。
【0019】
これらの方法には基盤を直接加工して細孔を形成する方法と、パターンを転写するインプリント方式とがある。直接加工する方法としては、リソグラフィー法や、アルミナの陽極酸化法などが上げられる。インプリント方式においては、一般的に用いられる、フィルム上にマスターとなる平板を押しつける方法の他に、フィルムを搬送するロールに細孔の元となるパターンを形成して、これを連続的に転写させる方式が考えられる。
【0020】
特に連続的に大量生産する磁気記録媒体を製造する場合、ロールによるインプリント方法が優れている。微細孔の形成方法としては、特開2003−157520号公報、特開2003−157520号公報などの技術を応用することが出来る。これらのロールによるインプリント装置によれば、あらかじめロールの表面部分に形成した微細パターンによる特定の配置情報を持つ円筒状のマスター担体に、フィルムを微細パターン面に沿って対接し、またフィルムを挟んで円筒状のマスター担体に接するようにタッチロールにより、磁気テープと円筒状のマスター担体との対接が確実に行われつつ走行する。タッチロールの材質は、合成ゴムや軟質樹脂などの弾性体が好ましい。また、タッチロールの代わりに圧縮空気を吹き付けてもよい。
【0021】
前記対接部分に、外部熱印加が行える手段を設けることにより、微細パターンの転写を効率よく行うことができる。熱印加は40〜60℃が好ましい。マスター担体を幅広の円筒状にすることで原反シート状または、多数本のスレーブテープを同時にパターン転写を効率よく行うことができる。
【0022】
またリソグラフィーを用いたパターニングを用いることも出来る。このリソグラフィーの方法は、特開2002−359138号公報などに記載のある技術を応用することが出来、以下の順で形成される。(1)可撓性支持体上にレジスト膜を塗布等で作成し、(2)紫外線や電子線等でレジスト膜にパターンを形成、(3)このレジストパターンをマスクとして可撓性支持体をエッチング、(4)残ったレジストやエッチング残を除去する合計4つのプロセスからなる。これによって可撓性支持体上にエッジングパターンの細孔を形成することが出来る。このうちレジストパターニングプロセスと残留物除去プロセスは、一般的な半導体技術を応用することが出来る。
【0023】
まず可撓性支持体上にレジストをコーティングする。レジスト塗布プロセスには、グラビア塗布、ダイ塗布などのコンバーティング製造方法により簡易に行うことが出来る。乾燥後の膜厚は20〜200nm程度が好ましい。次に一般的にはEB描画などを用いてレジストを選択的に露光、現像し、細孔の配置に相当するレジストパターンを形成する。このとき細孔領域とする部分を露光させ、それ以外をレジストで被覆したままにする。
【0024】
特に本発明のような極小の細孔パターンを形成し大量生産する工程として、ジブロックコポリマーの自己組織化を用いた方法が適している。これは特開2004−164692号公報などの技術の応用によって達成できる。これはレジストパターンを形成するときに、ジブロックコポリマーの自己組織化現象を利用している。自己組織化が起こるジブロックコポリマーとしては、光ディスク基板等に一般的に利用されているポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるコポリマーがあげられる。
【0025】
PSとPMMAを混合した溶液を可撓性支持体上にグラビアコーターなどで塗布すると、両者は層分離を起こし、PSからなる海状領域中にPMMAが島状に規則配列する。ここでジブロックコポリマーの組成比と分子量を制御することで、様々なパターンを形成することが可能である。これをオゾン中にさらすとPSが選択的に気化されるので、抜けたPS部分が細孔パターンである、規則的なPMMAのレジストパターンを得ることができる。このジブロックコポリマーの自己組織化現象を利用してレジストのパターニングを行えば、長時間を要するEB描画によるレジストのパターニングが不要になるので、プロセスの簡略化に極めて有効な手段となる。
【0026】
可撓性支持体のエッジングの方法としては、半導体プロセスで使用されるReactive Ion Etching(RIE)や、イオンミリング等の物理的なエッチング方法による製造方法(特開平05−205257号公報)、化学的エッジング工程による製造方法(特開2002−359138号公報)を応用することができる。特に化学的エッジングにおいては、大幅な工程の簡略化が可能となり、イオンミリング等の工程に伴うダメージもなくすことができるので、可撓性支持体を用いる本発明には特に適している。
【0027】
化学的エッジングでは、これらのレジストパターニングを終えた可撓性支持体を、活性な反応ガス中と反応させるチャンバーに搬送する。活性な反応ガスはハロゲンを含むことが好ましく、またラジカル活性であることが更に好ましい。ハロゲンを含むガスとしては、CF4、CHF3、CH22、C26、C48、Cl2、CCl22、CF3I、C24などが特に好ましい。またラジカルの発生方法には従来公知の方法を使用することが出来るが、特にプラズマCVD装置やドライエッチング装置で行うことが好ましい。これらの装置のチャンバー内に反応ガスを導入し、高周波電圧をかけてプラズマを発生させると、反応ガスに電界加速された電子が衝突し、反応ガスを分離した化学的に極めて活性なラジカルを生成できる。このような反応活性なガスを使用することで、可撓性支持体を常温でエッジングすることが出来る。
【0028】
またドライプロセスでは無く、ウェットプロセスでも同様の細孔を形成することが出来る。例えばHCl溶液を用いてハロゲン化させてもよい。
【0029】
最後にレジストおよびエッジング残留物を除去して、細孔が規則的に配列した可撓性支持体を形成することが出来る。ここでレジストおよびエッジング残留物の除去には、酸素プラズマによるアッシングを用いることができる。
【0030】
また上述したイオンミリングを使用した従来のパターニング方法では、酸化耐性の高いTi等の金属やSiO等の無機膜をマスクとして使用するので、酸化反応の後にRIE工程によりこれらのマスクを除去することが必要であり、この時に媒体の一部表面がスパッタによりダメージを受けてしまう。これに対しハロゲン化反応によるパターニング方法では、媒体表面へのダメージが極めて小さい酸素アッシングでレジストを簡便に剥離することができる。
【0031】
強磁性粉を細孔に保持するためには、細孔のアスペクト比が大きい方が好ましいが、これには特開2004−238713号公報で示されるようなアルミニウムの陽極酸化によるエッジング法が、上述のリソグラフィーによる方法以上に適している。この方法によれば細孔のアスペクト比が5〜10の範囲、直径が5nm〜200nmの範囲、細孔間隔が直径以上で500nmの範囲で制御性良く作製することが出来る。
【0032】
まず一般的な金属製膜方法で金属Alを可撓性支持体上に成膜する。このAlの成膜には抵抗加熱による真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などが適している。Al薄膜の厚みは50nm〜500nmの範囲が好ましい。
【0033】
続いて成膜したAlを硫酸、シュウ酸、りん酸などの酸性電解液中で陽極酸化すると、ポーラス型陽極酸化被膜が形成される(特開2004−238713号公報等)。このポーラス被膜は、直径が数nm〜数100nmの微細細孔が数10nm〜数500nmの間隔で平行に配列し、アスペクト比は高く、断面の一様性に優れている。細孔の直径及び間隔は、酸化電圧、酸化時間、エッチング処理方法などの条件で制御できる。
【0034】
特に陽極酸化の開始点をあらかじめ形成しておくことで、細孔の垂直性、直線性、独立性を高めることが出来る。これには予備的に陽極酸化でポーラス被膜を形成・除去後、再び陽極酸化を行う方法や(“Japanese Journal of Applied Phisics”,Vol.35,Part2,No.1B,pp.L126−L129,1996年1月15日)、インプリントを用いて細孔の形成開始点を形成する方法がある(特開平10−121292号公報等)。細孔を規則的に作製するには、細孔配列としてはハニカム配列や長方配列やその特別な場合である正方配列などが好ましい。
【0035】
アルミニウムの陽極酸化には各種の酸が利用可能であるが、微細な間隔の細孔を作製するには硫酸浴、比較的大きな間隔の細孔を作製するにはりん酸浴、その間の細孔を作製するには蓚酸浴が好ましい。細孔の直径は陽極酸化後にりん酸などの溶液中でエッチングする方法により拡大可能である。
【0036】
上記陽極酸化層としてはAlが一般的に用いられるが、Alを主成分とする膜で陽極酸化できるものならば、他の元素が含まれていてもかまわない。また上記陽極酸化には下地電極層を用いることが出来るがこれには、各種の金属が利用可能である。
【0037】
最終的に形成された細孔の間隔と直径は一定で、蜂の巣状または正方状に規則的に配列していることが好ましく、特にパターンドメディアとして用いる場合に重要である。さらに細孔の形状は筒状であり支持体に対して直線的で、かつ垂直に立っていることが望ましい。
【0038】
次に本発明の第2番目のプロセスであるパターン細孔に球状強磁性粉を充填する方法について述べる。磁性粉として使用する球状磁性粉としては、CoまたはL10規則構造を有するMPt(M=Co,Fe,Ni)、Fe16を主成分とする球状磁性粉が適している。これらが規則正しく充填されていることが、高密度記録や十分な信号検出の為に特に重要である。
【0039】
上層磁性層に添加する球状強磁性磁性粉の保磁力は、135kA/m〜360kA/m(1700〜4500Oe)が好ましく、175kA/m〜290kA/m(2200〜3600Oe)が好ましい。飽和磁化量は、70〜200A・m/kg(70〜200emu/g)が好ましく、90〜180A・m/kg(90〜180emu/g)がより好ましい。なお、この磁性層の磁気特性と、強磁性磁性粉の磁気特性は、いずれも試料振動形磁束計で外部磁場1.28MA/m(16kOe)での測定値をいうものである。
【0040】
また、本発明の球状強磁性磁性粉の平均径としては、2〜30nmが好ましく、2〜25nmがより好ましく、3〜20nmが更に好ましい。この範囲が好ましいのは、30nmより大きいと粒子の大きさに基づく粒子ノイズが大きくなり、C/N特性を向上させることが困難になる。また、平均長軸長が2nm未満となると保磁力が低下し、同時に磁性粉の凝集力が増大するため塗料中への分散が困難になるためである。なお、上記の平均長軸長は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影した写真の粒子サイズを実測し、100個あたりの平均値により求めたものである。また、この球状強磁性鉄系金属粉のBET比表面積は、35〜85m2/gが好ましく、40〜80m2/gがより好ましく、50〜70m2/gが最も好ましい。
【0041】
上記細孔中に充填物を埋め込みするには真空蒸着法やスパッタリング法なども利用可能であるが、アスペクト比が大きな細孔へ埋め込むには電着法が好ましい。電着法で積層膜を作製するには電着途中で電着液を変える方法以外にも、電解電位の異なるイオンを含む溶液中でパルス電着する方法が可能である。すなわち電解電位の大きいCoイオンが含まれる電着溶液にPtやCu、Niなど電解電位の小さいイオンを小さい比率で加えておき、電解電位の小さいイオンのみを低電圧で析出させた後、高電圧で濃度の濃いCoを析出させることが可能である。L10規則構造を有するMPt(M=Co,Fe,Ni)の形成においてもパルス電着で積層膜を成膜後、熱処理してもよい。
【0042】
しかしさらに好ましい方法は塗布による方法である。以上のような球状強磁性粉を結合材中に分散させ、細孔を形成したフィルム上に塗布し、細孔中に磁性粉を配置させることにより磁気記録媒体を形成する。磁性粉が細孔中に配置された後、結合材はそのまま保持されていても良いし、除去しても良い。
【0043】
磁性粉分散に使用される結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂、ニトロセルロースなどの中から選ばれる少なくとも1種と、ポリウレタン樹脂との組み合わせがある。中でも、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂とポリウレタン樹脂を併用するのが好ましい。ポリウレタン樹脂には、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタンなどがある。これらの結合剤は、強磁性鉄系金属粉100重量部に対して、200〜1500重量部、好ましくは300〜700重量部の範囲で用いられる。
【0044】
官能基としてCOOH、SOM、OSOM、P=O(OM)、O−P=O(OM)、[Mは水素原子、アルカリ金属塩基又はアミン塩] 、OH、NR、N[R、R、R、R、R は水素または炭化水素基]、エポキシ基を有する、高分子からなる結合剤が使用される。このような結合剤を使用するのは、上述のように磁性粉等の分散性が向上するためである。2種以上の樹脂を併用する場合には、官能基の極性を一致させるのが好ましく、中でも−SOM基同士の組み合わせが好ましい。
【0045】
これらの結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基などと結合させて架橋する熱硬化性の架橋剤を併用するのが望ましい。この架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどや、これらのイソシアネート類とトリメチロールプロパンなどの水酸基を複数個有するものとの反応生成物、上記イソシアネート類の縮合生成物などの各種のポリイソシアネートが好ましい。これらの架橋剤は、結合剤100重量部に対して、通常10〜50重量部の割合で用いられる。より好ましくは15〜35重量部である。
【0046】
用いられる有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等が単独、もしくは任意の比率で混合して使用できる。
【0047】
表層塗布層の裏面に設けたバックコート層は、従来公知のものであり、走行性向上を目的としている。バックコート層の厚さは、0.2〜0.8μmが好ましい。この範囲が良いのは、0.2μm未満では、走行性向上効果が不充分で、0.8μmを越えるとテープ全厚が厚くなり、1巻当たりの記憶容量が小さくなるためである。またバックコート層の塗布には、従来公知のグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、ダイ塗布装置などで行うことができる。
【0048】
バックコート層に用いられるカーボンブラック(CB)としては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用できる。通常、小粒径カーボンと大粒径カーボンを使用する。小粒径カーボンには、粒径が5nm〜200nmのものが使用されるが、粒径10nm〜100nmのものがより好ましい。この範囲がより好ましいのは、粒径が10nm以下になるとCBの分散が難しく、粒径が100nm以上では多量のCBを添加することが必要になり、何れの場合も表面が粗くなり、磁性層への裏移り(エンボス)原因になるためである。大粒径カーボンとして、小粒径カーボンの5〜15重量%、粒径300〜400nmの大粒径カーボンを使用すると、表面も粗くならず、走行性向上効果も大きくなる。小粒径カーボンと大粒径カーボン合計の添加量は無機粉体重量を基準にして60〜98重量%が好ましく、70〜95重量%がより好ましい。表面粗さRaは3〜8nmが好ましく、4〜7nmがより好ましい。
【0049】
またバックコート層には強度向上を目的に、粒径が100nm〜600nmの酸化鉄を添加するのが好ましく、200nm〜500nmがより好ましい。添加量は無機粉体重量を基準にして2〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
【0050】
磁性塗料の主な製造方法としては、次に示す方法が挙げられる。まずニーダ、二軸連続式混練装置(エクストルーダ)等の強力な混練機を用いて、磁性粉と少量の結合剤樹脂を混練し、更に溶剤を加えて固形分濃度35〜45%(重量基準、以下同じ)にして攪拌、ペースト状のミルベースを得る。上記混練工程において使用される二軸連続式混練機は、その混練部(バレル)に加熱・冷却可能な装置を装備し、該混練部の温度を、20〜50℃、好ましくは25〜35℃に制御することにより調整される。ここで、上記混練部の温度が20℃未満であると、混練物へのぬれ性アップが図れず、分散性向上もねらうことができず、また50℃を越えると、混練物の粘性が低下し、所望の剪断力を作用させることができなくなる。また、上記混練工程において混練する際の混練条件は、混練時間が2〜5分であるのが好ましく、混練物の供給速度が5〜15kg/hであるのが好ましい。次いで、サンドミル等により分散操作を行って、固形分の分散状態を向上させる。
【0051】
上層磁性層の平均乾燥厚みを20nm〜100nmの任意の厚みで精度良く生産性良く塗布することは、前記上層磁性層の塗料を0.15μm〜0.7μm程度で塗布する。また上層磁性層に用いる溶媒の表面張力が高いことが好ましい。表面張力の高い溶媒としてはシクロヘキサノン、ジオキサンなどがある。
【0052】
磁性層を塗布した後に細孔に磁性粉を配置するためには、超音波領域の振動でフィルムを処理することが適している。フィルムを指し渡したガイドロールをフィルム対向方向に振動させる。このときの振動周期は1〜100kHz、振動振幅は1〜1,000μmの範囲が好ましい。この範囲でフィルムを振動させることで、周期配列した細孔に球状の強磁性粉が挿入される。1細孔に付き1粒子であることが最も好ましいが、2〜3粒子であってもかまわない。
【0053】
また磁性粉を細孔に配置するために、交流磁場を用いることが出来る。前記磁性層を塗布した後、直流配向・乾燥を行う前に高周波磁場を照射すると、細孔に強磁性粉が挿入される。高周波磁場の周波数は100Hz〜500kHz程度が好ましく、振幅は10kA/m〜500kA/mの範囲が好ましい。
【0054】
バックコート層は、表層塗布層の塗布と配置処理の前後いずれかの工程で塗布する。また表層塗布層とバックコート層の塗布、及び配置処理の後、表層塗布層、バックコート層の硬化を促進するために、40℃〜80℃のエージング処理を施してもかまわない。
【0055】
磁性層の厚みは20〜100nmの範囲にあることが好ましい。また塗布硬化後樹脂成分のみを除去し、磁性層の厚みを1〜15nmにすることが更に好ましい。この場合磁性層塗布に先立って、結合材と剥離剤をこの順で支持体上に塗布しておくことで実現できる。結合材の膜厚は1〜5nm、剥離剤は10〜30nmの範囲が好ましい。結合材としてはポリ塩化ビニル−共重合体が好ましい。剥離剤としてはパーフロロエーテルなどが好ましい。
【0056】
特に前述の超音波振動による細孔配置工程において磁性粉が十分配置できない場合、塗布硬化後の樹脂成分の除去は有効である。振動条件が最適であれば磁性粉は全て細孔に配置されるが、複数個が同一細孔に導入されることもあり得る。細孔径を磁性粉と同程度に小さくすれば、同一細孔に複数個入ることは防げるが、細孔形成工程が複雑になりコストの上昇をまねく。従ってある程度大きめの細孔を形成し、振動条件を最適化して一つの細孔に一つ磁性粉を配置するかわりに、細孔に入りきらなかった磁性粉を前述の方法で除去することも出来る。
【0057】
上層磁性層の磁気記録媒体としての保磁力は、ヘッド走行方向で135kA/m〜360kA/m(1700〜4500Oe)が好ましい。この範囲が好ましいのは、保磁力が135kA/m未満では、反磁界によって出力が減少し、360kA/mを越えるとヘッドによる書き込みが困難になるためである。
【0058】
表層塗布層の平均線中心粗さRaは0.2〜3.0nmの範囲に含まれることが好ましく、0.3〜2.0nmの範囲にあることがより好ましい。Raが3.0nmいかが好ましいのは、3.0nmを超えると出力の短波長成分が急激に低下し、再生分解能が劣化するからである。またRaが0.3nmを下回るとヘッドや走行ガイドとの摩擦が上昇し、耐久性が劣化すること、またこの範囲のRaを得るには製造が困難で、工程コストがかかりすぎるためである。なおこの表面平滑性は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて5μm×5μmの視野を512×512ピクセルで測定、各点の平均線からの絶対値の算術平均したときの値である。
【0059】
このような粒度分布の組み合わせと表面平滑性を実現した磁気記録媒体を製造するためには、上記の表層塗布工程を行った後に、磁場配向、溶剤乾燥工程を設けて、これらを適宜組み合わせることによって実現する。
【0060】
前記表層塗布層のヤング率は、非磁性支持体の長手方向ヤング率の平均値に対して、40〜100%であることが好ましい。この範囲に塗布層のヤング率がすると、テープの耐久性が大きく、且つテープ-ヘッド間のタッチがよくなる。50〜100%の範囲がより好ましく、60〜90%の範囲がさらに好ましい。この範囲が好ましいのは40%未満では塗布膜の耐久性が小さくなり、100%を越えるとテープ-ヘッド間のタッチが悪くなるためである。なお、本発明では下層非磁性層と上層磁性層からなる塗布層のヤング率を制御する方法の一つとしてカレンダー条件による制御法を用いた。
【0061】
本発明の磁気記録媒体の表層塗布層面、及びその反対のバックコート層面のステンレス鋼に対する摩擦係数は、0.5以下、さらに0.3以下が好ましい。また表層塗布層の表面固有抵抗は10〜1011オーム/sq、バックコート層の表面電気抵抗は10〜10オーム/sq が好ましい。前記の要領で作成した媒体をテープに組み込んだテープカートリッジは、1巻当たりの容量が大きく、信頼性も高く、データバックアップ用テープとして、特に優れている。
【0062】
(実施例1)以下、本発明の具体的な実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の、インプリント方式による微細パターン転写装置の要部を示す図である。これに示すように、例えば筐体(1a)の中に、マスター担体と転写対象の磁気シートとを保持して、両者の表面を密着させる機構(1d)、及びテープを走行させる機構から構成される。
【0063】
図2は本実施形態に関係するマスター担体の表面構造を説明するための概念図である。これに示すように、マスター担体は、直径20〜1000mmの例えばステンレス製の金属ロールであり、磁気シートに接触する部分に微細パターンを有する。微細パターンは、一般的なリソグラフィーや陽極酸化法により設けたり、一般的なリソグラフィーや陽極酸化法により形成したシートを貼り付けて設けたりすることができる。これはあらかじめ所定の位置に、位置情報がエンボス状に記録されている。この細孔の配置は、フィルムに転写される配置と対応関係にある。
【0064】
マスター担体を使用した微細パターン転写装置を使用して、基体フィルムに位置情報を書き込む工程を説明する。まず微細パターン装置のマスター担体に沿わせてフィルムをセットする。そして油圧や空気圧を利用したタッチロール(図1 1d)にて圧力を加えて、マスター担体の位置情報が記録された面とフィルムの転写対象面とを密着させる。
【0065】
タッチロールによる圧接に用いる弾性体は、非磁性で円筒状の弾性を有する高分子材料、例えば合成ゴムや軟質樹脂からなる。そして弾性体は、上述したようにフィルムの背面接触面に当接され、マスター担体と向き合う方向の圧力が外部から与えられることによって、マスター担体との間に挟み込まれたフィルムに圧力がかかり、マスター担体の転写パターンと、フィルムの被転写層とが互いに密着されるように圧接させる。フィルムに加える圧力(線厚)は、980〜7840N/m(1〜8kgf/cm)が好ましい。
【0066】
また上述した例では、互いに合致させたマスター担体とフィルム裏面から弾性体を押圧圧接させるようにした構成としたが、フィルム張力を制御することによってこの弾性体を用いない構成をとることもできる。この場合のフィルム長手方向に必要とする張力は、0.98〜9.8N/mが好ましい。
【0067】
次に熱の発生装置により、マスター担体とフィルム両者に対して、転写効果を得るための熱を加える。この外部熱印加手段は、熱発生コイル(図示せず)あるいはこれが巻かれたヒーターが、マスター担体とフィルム両面方向に関して対向するように配置することによって構成できる。このバイアス熱により、支持体の所定の位置に、マスター担体の微細パターンが位置情報としてフィルムに転写される。このエンボス転写を、フィルムを移動させながら行う。これはマスター担体とフィルムを上記のように圧接接触させた状態で、フィルムを走行させる。このときフィルムの走行速度は、マスター担体に記録されている微細パターンと、実際にフィルムに形成させるべきパターンによって一意的に決まる。マスター担体はフィルム走行に対して完全につれ回るように制御されている。
【0068】
図3に示すようにフィルム表面において細孔が一定間隔で規則的に配置形成されている様子がわかる。各細孔に球状強磁性粉末を埋め込むことで、1粒子1記録ビットとすることが出来る。各細孔は完全に独立した領域にすることが望ましいが、少なくとも細孔の表面部分が分離していることで、各領域は磁気的に分離される。各細孔はそれぞれ球状強磁性粉が1つだけ埋め込まれるように、直径5nm〜30nmが好ましく、直径8nm〜20nmがさらに好ましい。
【0069】
(実施例2)次にリソグラフィーによる細孔形成方法について述べる。まずその表面にネガレジストをコーティングし、EB描画により80nm角の細孔に相当するパターンを形成した。この後Arイオンビームミリングで試料表面を均一にエッチングした。レジストで被覆されていない領域の支持体を約20nm程度エッチングしたところで、残りのレジストを酸素アッシャーで除去した。この後CMP処理で表面を研磨、独立な約80nm角の細孔パターンを得た。
【0070】
(実施例3)まずフィルム上にダイコートにより厚み約1.0μmのレジストを塗布し、EB(電子ビーム)描画露光、現像を行って図4に示すようなレジストパターンを形成した。なおここでは、細孔のサイズを直径20nmの円とした。
【0071】
さらに誘導結合プラズマ(ICP:Inductive Coupled Plasma)装置を用いて発生させプラズマによる、化学的エッジングを行った。ICP装置は、プラズマ発生機能を持つCoilRFとは別にプラズマを基板側に誘導する機能を持つPlatenRFが備えられており、これらは別々に出力設定が可能である。例えばCoilRFを300W、PlatenRFを0Wに設定することで、ラジカル反応に適した高密度プラズマを生成するとともに、支持体表面にはダメージを与えない。特に支持体表面のスパッタを防止する時には、反応装置内の圧力を10〜30mtorr、好ましくは約20mtorrに設定する。
【0072】
試料を密封チャンバー内に入れ、チャンバー内でプラズマを発生させ、ここにCFガスを導入し、Fラジカルを生成させた。反応ガスとしてCF4を使用し、ガス流量を10〜50sccm、好ましくは約20sccmとする。こうして、試料表面をFラジカルに約30秒曝露した。なお、この時の試料温度は室温とした。CFガスから生成した活性なFラジカルにレジストに被覆されていな支持体を曝した場合は、露出している支持体表面はFラジカルにより次第に深さ方向にハロゲン化される。
【0073】
こうしてハロゲン化された領域はハライド層となり、細孔として形成される。一方、レジストにより表面が被覆されている領域はそのままとして残る。細孔の深さは20nmの深さとした。これにより、細孔領域をハロゲン化で形成したパターンドを得ることができる。
【0074】
イオンミリングを用いた場合には細孔の加工表面、側壁にダメージが残るが、上述した実施例3の製造方法によれば、このようなダメージを受けることはない。よって、プロセスに起因する特性劣化が生じにくい。この後、レジストを酸素アッシャーで除去した。
【0075】
従来のイオンビームミリングを用いる方法では、このような薄いレジストを用いることは困難であるが、化学的な手法を用いる実施例3の方法では、十分にレジストとして使用することができる。
【0076】
(実施例4)最後にアルミナ陽極酸化による細孔形成方法を示す。図5において、5aが細孔、5bは酸化アルミニウムを主成分とする層(アルミナ)、5cは下地電極層(導電層)、5dが支持体である。
【0077】
上記支持体上にガラス、アルミニウム、カーボン、プラスティック、Siなどを電極用の下地に使用することが出来るが、アルミニウム基板の場合は硬度を確保するためにNiP膜をメッキ法などによりさらなる下地層を形成しておくことが望ましい。次に一般的な真空蒸着法により、金属Alを下地層上に200nm成膜した。
【0078】
続いて成膜したAlを硫酸電解液中で陽極酸化し、ポーラス型陽極酸化皮膜が形成した。この皮膜の細孔は、直径20nm、間隔が150nmで、蜂の巣状に規則的に配列している。アスペクト比は6であった。
【0079】
(実施例1−1)上述した細孔形成工程により作成したそれぞれの支持体上に以下の磁性層塗料を塗布することで、磁気記録媒体を作成した。
<<磁性層用塗料成分>>
(1)
球状強磁性鉄系金属粉 100部
(N/Fe:25at%、Y/Fe:2at%、Al/Fe:5wt%、
σs:100A・m/kg、Hc:280kA/m、
pH:9.5、粒子径:15nm)
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体 10部
(含有−SONa基:0.7×10-4当量/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
(含有−SONa基:1.0×10-4当量/g)
メチルエチルケトン 245部
トルエン 85部
(2)
ポリイソシアネート 4部
シクロヘキサノン 167部
上記の磁性層用塗料成分(1)をニーダーで混練したのち、サンドミルでビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを用いて滞留時間を45分として分散し、これに磁性層用塗料成分(2)を加え攪拌・濾過後、磁性層用塗料とした。この磁性層用塗料を、上記の実施例に従って細孔を形成した支持体上に、乾燥・カレンダー後の厚さが1.1μmとなるように塗布、磁場配向処理した。磁場配向処理は、ドライヤ前にN−N対抗磁石(0.5T)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側75cmからN−N対抗磁石(0.5T)を2基50cm間隔で設置して行った。このとき塗布ヘッド後方3mにある2つのガイドロールを、フィルムに対向するように100kHzで振動させた。塗布速度は100m/分とした。
【0080】
その後乾燥、カレンダー処理し磁気シートを得た。
【0081】
<<バックコ−ト層用塗料成分>>
カ−ボンブラック(粒径:25nm) 80部
カ−ボンブラック(粒径:370nm) 10部
酸化鉄(粒径:400nm) 10部
ニトロセルロ−ス 45部
ポリウレタン樹脂(SONa基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
トルエン 260部
メチルエチルケトン 525部
上記バックコ−ト層用塗料成分をサンドミルで滞留時間45分として分散した後、ポリイソシアネート15部を加えてバックコ−ト層用塗料を調整し濾過後、上記で作製した磁気シ−トの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダー後の厚みが0.5μmとなるように塗布し乾燥した。
【0082】
また、磁気記録媒体の上部表面は、ダイヤモンドスラリー等を用いた精密研磨を施しており、そのRms(2乗平均の平方根)は1nm以下である。さらに表面には保護層を形成してもよく、ヘッドとの摩擦に対して耐磨耗性を持たせるために、カーボンの他カーバイト、窒化物等の非磁性材料を用いることが可能である。本発明の磁気記録媒体は特に垂直磁気記録媒体として有効であり、磁気記録装置として用いるには、図7にあるように上記媒体以外に読み取り書き込みヘッド、モーターなどの駆動制御装置、信号処理回路、防塵ケース等を組み込むことが必要である。しかし、磁気記録再生装置において、磁気記録媒体の駆動は回転のみ、磁気ヘッドの駆動は円周上のスライドのみに限定されるものではない。
【0083】
(実施例1−2)実施例1−1の磁性層塗布に先立って、細孔を形成した支持体上に、結合材と剥離剤を結合材の膜厚3nm、剥離剤は20nmになるように重層塗布する。結合材はポリ塩化ビニル−共重合体、剥離剤はパーフロロエーテルを用いた。その後実施例1−1と同様に磁気シートを作成し、最後に結合層を除去した。
【0084】
評価はMFM(磁気力顕微鏡)像の観測及びVSM(振動試料型磁力計)用いた。各実施例で典型的な強磁性体の磁気パターンであるコントラストの良い唐草模様を持つ長手磁気記録媒体の像が観察された。
【0085】
このように本発明による磁気記録媒体によれば、パターンドメディア構造自体が有する、優れた熱揺らぎ耐性と隣接ビットからのクロストーク、パーシャルイレイズの遮断効果に加えて、製造工程中に受けるダメージの減少による磁気特性の向上、プロセスの短縮化を図ることができる。これと同時に磁気テープ製造時に必要な連続工程でパターンドメディアを製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】インプリント方式による微細パターン転写装置
【図2】マスター担体の表面構造の概念図
【図3】細孔が一定間隔で規則的に配置形成されているフィルム表面
【図4】フィルム上に露光したレジストパターン
【図5】アルミナ陽極酸化で形成した細孔
【符号の説明】
【0087】
1a シールドがなされた筐体の中
1b 転写対象のスレーブフィルム
1c マスター担体
1d 両者の表面を密着させる機構
5a 細孔
5b 酸化アルミニウムを主成分とする層(アルミナ)
5c 下地電極層(導電層)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性支持体上に球状の磁性体を配置してなる磁気記録媒体であり、該磁性体は、該支持体上に規則的に配列した細孔中に配置され、該細孔間の間隔が1μm以下であり、かつ記録システムにおける記録再生方向の平行方向及び垂直方向に対して周期性を持つことを特徴とする、磁気記録媒体。
【請求項2】
前記磁性体の平均粒子径が30nm以下であることを特徴とする、請求項1記載の磁気記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−133940(P2007−133940A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324248(P2005−324248)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】