説明

磁気記録装置のヘッド位置決め方法

【課題】構成的な追加を必要とせずヘッドの位置決め精度を向上することができ、安価にかつ信頼性の高いデータ信号の読み取りを実現することができる磁気記録装置のヘッド位置決め方法を提供する。
【解決手段】ヘッド位置決め計算式の切り換え領域へのデータの書き込み時には、その切り換え領域からヘッドをオフトラックさせて切り換え領域でのヘッドの位置決めをなくすことにより、磁気記録装置の回路および機構の構成的な変更をすることなく、精度の高いヘッドの位置決めを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体として磁気ディスクに磁気ヘッドを通じてデータを記録可能な磁気記録装置のヘッド位置決め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から情報記録装置として広く利用されている磁気記録装置(例えば、HDD:ハードディスクドライブ)は、図1に示すように、円盤状の磁気ディスクJD1上に数万本のトラック(図示せず)と放射線状でかつ円弧状に記録された数百個のサーボ信号パターン記録部SB1を持つことにより、そのサーボ信号パターン記録部SB1をヘッド(この場合は磁気ヘッド)が通過して得られたサーボ信号を利用して、トラックに対してヘッドを位置決めするための位置決め制御を行いつつ、磁気ディスクJD1に対してデータの書き込みおよび読み出しを行っている。
【0003】
そのサーボ信号パターン記録部SB1は、円6aで囲んだ部分の一部分を拡大した図2または図3に示すような形状を有しており、デジタル信号部DS1とアナログ信号部AS1に分かれている。デジタル信号部DS1は、オートゲインコントロール用の信号(AGC信号)が書かれているAGC信号部AG1とトラックナンバー信号等がデジタル信号にて書かれているトラックナンバー信号部TN1とからなる。アナログ信号部AS1は、複数種類のバースト信号部(図2では、Aバースト信号部AB1、Bバースト信号部BB1、Cバースト信号部CB1、Dバースト信号部DB1)と呼ばれる部分に分かれており、それぞれのバースト信号部からの出力電圧を読み取り、その電圧値から正確なヘッドの位置決めを行うために、ヘッドの詳細な位置を知るための信号が得られる部分である。
【0004】
アナログ信号部AS1において、リードヘッドがサーボ信号パターン記録部SB1を横切った場合、各バースト信号部による出力電圧が現れる。その値は一般的にリードヘッドがバースト信号部上を通過したときの軌跡と各バースト信号部の重なりあった部分の面積に比例する。したがって、そのバースト信号部からの出力電圧を読み取ることにより、トラックに対するリードヘッドの位置を判断する。
【0005】
以上のようなリードヘッドの位置判断によるヘッドの位置決め方法について、図4を用いて以下に説明する。
サーボ信号パターン記録部SB1内のトラックナンバー信号部TN1にかかれているトラックナンバーNは、サーボ制御に使用されるトラック(サーボトラック)の番号であり、実際にリードライトするトラック(データトラック)の番号ではない。データトラックの番号とサーボトラックの番号との間には次の関係がある。

データトラック=2/3*サーボトラック+a (aは定数)

図4の(1)の1点鎖線の部分がデータトラックのセンターである。(以降、「データトラック」を指す場合は、単に「トラック」と書く)
また、トラックセンター(データトラックセンター)では、バースト信号部(Aバースト信号部AB1、Bバースト信号部BB1、Cバースト信号部CB1、Dバースト信号部DB1)BS1からの各バースト信号(Aバースト信号、Bバースト信号、Cバースト信号、Dバースト信号)による4種類の組み合わせが得られる。

・Aバースト信号とBバースト信号が同じ電圧値でCバースト信号が最大
・Cバースト信号とDバースト信号が同じ電圧値でAバースト信号が最大
・Aバースト信号とBバースト信号が同じ電圧値でDバースト信号が最大
・Cバースト信号とDバースト信号が同じ電圧値でBバースト信号が最大

磁気記録装置は、その動作を制御するコントロール部(図示せず)からのヘッド制御用のデジタル信号を読み取り、その値に従ってヘッドを移動制御することで、そのN番目のトラックまでのヘッド移動が可能であり、N番目のトラックが決められた時点で、すでに上記バースト信号の4種類の組み合わせのうちどれかに決定される。このように、磁気記録装置は、ヘッドを移動させることによって、その移動により得られるバースト信号をその条件を満たすようにして、データトラックのセンターにヘッドを移動させる(オントラックという)ことを完了する。この場合のヘッドのオントラックとは、一般的には、ライトオントラックのことである。
【0006】
オントラックには、動作的に、前述したライトオントラックとリードオントラックがあり、次にリードオントラックについて説明する。
通常、磁気記録装置に使用されているヘッドにはライトヘッドとリードヘッドがあり、それら二つのヘッドは磁気ディスクJD1の半径方向にずれている。このずれる理由は2つ存在し、その1つはヘッド自体の特性又はばらつきによるものであり、もう1つは、図5(a)に示すように、ヘッドHD1がローターアームRA1のピポットセンターPC1を中心に磁気ディスクJD1上を回転移動し、なおかつ、ヘッドHD1のライトヘッドとリードヘッドが互いにローターアームRA1のピポットセンターPC1からの距離の違う位置にあるためである。
【0007】
そのため、図5(a)に示すように、ヘッドHD1が磁気ディスクJD1の半径方向に移動してヘッドHD1の位置するトラックナンバーが変化すると、図5(b)、図5(c)のように、ヘッドHD1のヘッド方向軸HJ1とトラックセンターTC1間のスキューが角度SK1から角度SK2の間で変化し、その角度変化によりライトヘッドとリードヘッドとでトラックセンターTC1に対して磁気ディスクJD1の半径方向にずれが生じる。したがって、データライトとデータリードを行うためには、そのヘッドHD1の位置決め動作としてライト用の位置決めとリード用の位置決めの2つの動作が必要となる。
【0008】
磁気記録装置において、サーボ信号パターン記録部SB1のバースト信号部BS1は、磁気ディスクJD1の外周部トラックも内周部トラックも同じパターンであり、内周および外周のどの位置でも位置決め制御ができるように設計している。そして、磁気記録装置のテスト中に、図6に示すように、ライトヘッドWH1とリードヘッドRH1の半径方向のずれであるリードライトオフセットRWOF1を、いくつかの半径位置で測定し、その測定値を基に、すべてのトラックセンターTC1におけるリードライトオフセットRWOF1を計算して求めている。
【0009】
図6に示すように、通常、ライトオントラックセンターWTC1は、Aバースト信号部AB1とBバースト信号部BB1からの各出力(Aバースト信号とBバースト信号)が等しい位置か、Cバースト信号部CB1とDバースト信号部DB1からの各出力(Cバースト信号とDバースト信号)が等しい位置に設定され、リードオントラックセンターRTC1は、ライトオントラックセンターWTC1からリードライトオフセットRWOF1分だけ移動した位置に設定される。
【0010】
上記のように2つのバースト信号の等しい位置がライトオントラックセンターWTC1となっている理由の1つは、書き込み時のヘッド位置決めの方が読み取り時のヘッド位置決めに比べて動作的に重要であるためである。書き込み時に正確なヘッドHD1の位置決めがされない場合には、隣接トラックに書き込まれているデータを上書きしてしまう可能性があるためである。もうひとつの理由として、2つのバースト信号が等しい位置にヘッドHD1を位置決め制御するのはた易く、その一方、ライトオントラックセンターWTC1からリードライトオフセットRWOF1分だけずらすために、バースト信号部BS1からの出力比を求めてその出力比を基にヘッドを位置決め制御することは、いくつかの誤差が生じてしまい位置決め制御に正確さが欠けるためである。
【0011】
ここで、いくつかの誤差とは、リードヘッドRH1の特性の問題やサーボ信号パターン記録部SB1の書き込みのばらつきである。リードヘッドRH1の幅が極端にせまいヘッドHD1での位置決めや、リードヘッドRH1の内周側と外周側での感度が均一でない場合には、バースト信号部BS1の出力とヘッドHD1の位置との関係は直線的ではなくなり、絶対的なヘッドHD1の位置決めは困難となる。
【0012】
サーボ信号パターン記録部(サーボトラッキングバターン)SB1を形成するためのサーボ信号書き込みの方式としては、代表的なものとして、磁気記録装置を組み立てた後にサーボ信号書き込み装置に組み込み、磁気記録装置のヘッドでサーボ信号書き込みを行うSTW(Servo Track Writer)方式と、磁気記録ディスクの状態でサーボ信号書き込み装置に組み込み、サーボ信号書き込み装置が有するヘッドでサーボ信号書き込みを行うMSTW(Media Servo Track Writer)方式とがある。
【0013】
MSTW方式は、複数枚の磁気ディスクを一度に回転ムラの少ないエアーモーターなどで回転駆動して書き込みを行うので、STW方式に比べて、RRO(Repeatable Run Out)の少ないサーボ信号パターン記録部SB1が書き込まれた磁気ディスクを、投資効率よく生産することが可能であるが、サーボ信号パターン記録部SB1を書き込んだ後に磁気記録装置を組み立てるため、サーボ信号パターン記録部SB1の偏芯によるシーク時間の問題や、データ転送レートが遅くなるなどの問題が発生する。
【0014】
しかしどちらの方式でも、モーターのNRRO(Non Repeatable Run Out)やサーボ信号書き込み装置のヘッド位置決め精度のばらつきなどが少なからず発生するため、サーボ信号パターン記録部SB1には記録位置的な誤差が含まれる。
【0015】
その誤差のため、トラックピッチはすべて同じとはならず、ひとつのトラックにおいて数100存在するサーボ信号パターン記録部SB1のすべての場所においても、トラックピッチは一定ではない。したがって、すべてのライトオントラックセンター、リードオントラックセンターにおいてもRROは存在し、そのRROの値と位相は一致しない。
【0016】
このことは、隣接するトラックにおいては、互いに隣接トラックのデータを上書きして消してしまったり、読めなくしてしまうという問題が発生する可能性があり、ライトオントラックとリードオントラックの間では、記録データを正確にリードできなくなる可能性がある。
【0017】
これらの問題を解消するために、磁気記録装置のヘッドにおいては、通常、図6に示すように、ライトヘッドWH1の幅はリードヘッドRH1の幅よりも大きくすることにより、リードオントラックセンターRTC1の位置決めが少々ずれたとしても、書き込みされたデータ上からリードヘッドRH1がはみ出さないように設計している。
【0018】
通常、ライトヘッドWH1の幅はトラック幅に対して70%から100%程度であり、リードヘッドRH1はライトヘッドWH1よりもトラック幅に対して20%から30%程度小さく設計されている。この20%から30%がいくつかの誤差を緩和し、正確なリード、ライトを行うことを可能としている。
【0019】
今後、磁気記録装置の記憶容量を上げるためにTPI(Track Per Inch)が高くなる。そうするとトラック幅に対する20%から30%という絶対値は小さくする必要性が出てくる。しかしながらこの値は、ヘッドの製造工程からある程度必要な絶対数値であるため、この数値を小さくすることは非常に困難である。また同じように、サーボ信号パターン記録部SB1の書き込み精度や、磁気記録装置のヘッド位置決め精度を、向上する必要性が発生する。
【0020】
次に、ヘッドの位置決め方式について、図7を用いて説明する。
図7は、リードヘッドRH1がバースト信号部BS1上を移動した際のDバースト信号部DB1によるヘッド出力信号からCバースト信号部CB1によるヘッド出力信号を引いた値(以降、D−Cと記す)と、Aバースト信号部AB1によるヘッド出力信号からBバースト信号部BB1によるヘッド出力信号を引いた値(以降、A−Bと記す)と、Cバースト信号部CB1によるヘッド出力信号からDバースト信号部DB1によるヘッド出力信号を引いた値(以降、C−Dと記す)を表している。
【0021】
Aバースト信号部AB1とBバースト信号部BB1の境目を中心にしてバースト信号部BS1の幅(サーボトラックピッチ)の約±25%の領域(2)は、A−BまたはB−Aの値によりヘッドの位置決めを行い、また、C、Dバースト信号部CB1、DB1の境目を中心にしてバースト信号部BS1の幅の約±25%の領域(3)、(1)は、C−DまたはD−Cの値によりヘッドの位置決めを行う。
【0022】
まず第1に、基準の場所に対してどれだけのバースト信号出力値であればヘッドがその基準の場所よりどれだけオフセットしているかを知るための前準備を行う。A−Bの値によりヘッドの位置決めを行う領域(2)とC−Dの値によりヘッドの位置決めを行う領域(3)の境目にヘッドを移動させる。その場所は、AとDの値が同じ大きさでBとCの値も同じ大きさで、なおかつ、Bの値がAの値より大きい位置である。この位置においてA−Bの値(−値)とC−Dの値(+値)を記憶する。
【0023】
このそれぞれの値が等しくなるその値を仮に基準値とする。基準値はA−Bの値、C−Dの値が0となるヘッドの位置からサーボトラックピッチに対して25%の距離だけオフセットしている位置にヘッドが位置していることを表す。この基準値を基準としてA−Bの値またはC−Dの値が変化するとその基準値に対して比例計算してヘッドの位置を求める。精度の高いヘッドの位置決めを求める場合には、比例計算ではなくヘッドとその位置の関係を測定し、非直線関係のテーブルを作成してヘッドの位置決めをする場合もある。
【0024】
ヘッドの位置決め計算式は、図2のバースト信号部BS1の場合には4種類存在する。すなわち、

A−B、C−D、B−A、D−C

の4種類である。場合によっては、

(A−B)−(C−D)、(C−D)−(B−A)、(B−A)−(D−C)、(D−C)−(A−B)

の4種類でも可能である。
【0025】
また、これまで説明したバースト信号部BS1とは異なり、図3に示すように、6種類のバースト信号のそれぞれに対応するバースト信号部(Aバースト信号部AB1、Bバースト信号部BB1、Cバースト信号部CB1、Dバースト信号部DB1、Eバースト信号部EB1、Fバースト信号部FB1)BS1を有するサーボ信号パターン記録部SB1に対するヘッドHD1の位置決め計算式は、

A−B、D−E、B−C、E−F、C−A、F−D

の6種類である。または、

(A−B)−(E−F)、(D−E)−(C−A)、(B−C)−(F−D)、(E−F)−(A−B)、(C−A)−(D−E)、(F−D)−(B−C)

の6種類でもヘッドの位置決めは可能である。
【0026】
サーボ信号パターン記録部SB1の書き込みには誤差が生じるので、トラックのピッチ、1つのトラックの全てのサーボ信号パターン記録部SB1の隣接トラック間の距離は、同一ではない。したがって、先に述べたA−B、C−Dが0となるヘッドRH1の位置から、サーボトラックピッチに対して25%である。というのは、理論値で有り、サーボ信号パターン記録部SB1の書き込み誤差を考慮すると、その値は1トラック中の全てのサーボ信号パターン記録部SB1で一致することはない。サーボ信号パターン記録部SB1の書き込み誤差は、サーボトラックに対して数%から5%程度の誤差が生じるので、その分だけ先に述べた25%という値も誤差が生じることとなる。
【0027】
トラックピッチが正確な値として現れないという問題と、1トラックの全てのサーボ信号パターン記録部SB1におけるバースト信号部BS1のトラックピッチが等しくないという問題が発生し、A−B、C−D、B−A、D−Cの値が、0近辺の場所では、その誤差は小さいが、これらの計算式の切り換え場所近辺ではその誤差は大きくなる。
【0028】
この部分の誤差が大きくなる理由を、図8(a)を用いて説明する。
図8(a)は、Aバースト信号部AB1がサーボトラックに対して5%長く、Bバースト信号部BB1が5%短くなるように、サーボ信号パターン記録部SB1が書き込まれたとき、リードヘッドRH1が、A−Bの値が0の場所から外周(OD)側にサーボトラックの27.5%移動したところを通過した場合のことを表している。サーボ信号書き込みにおいて、通常、Aバースト信号部AB1のトリミングとBバースト信号部BB1の書き込みは、同じ磁気ディスクJD1の回転で行われるため、このような誤差は頻繁に存在する。この時、A−BとD−Cの各値は同じになるので、どちらかの領域(2)、(1)の信号を選択してヘッドの位置決めを行うことになる。
【0029】
仮に領域(1)のD−Cの値を選択したとする。前準備で求めたA−B領域(2)とC−D領域(3)の境目のA−BとC−Dの各絶対値の値は、決められた数トラックにてすべてのサーボ信号に関しての平均値として求めている。このA−BとC−Dの各絶対値の値をMAX値とする。図8(a)ではAバースト信号部AB1の幅が広がっているので、A−B領域(2)とD−C領域(1)のヘッド位置とその値に直線性があるとすると、A−BとD−Cの絶対値はMAX値よりも大きな値になり、D−Cが0になる値から27.5%内周(ID)側にずれたところと判断される。
【0030】
次に、仮に領域(2)のA−Bの値を選択したとすると、A−Bが0になる値から27.5%外周側にずれたところと判断される。このときヘッドHD1を制御するシステムは、バースト信号部BS1の位置ずれは考慮していないわけであるから、A−Bが0となる位置とその位置からもっとも近いD−Cが0となる位置の距離は、サーボトラックの50%と判断される。すると、このときD−C領域(1)でヘッド制御する場合とA−B領域(2)ではヘッドの位置は違うと判断されることになる。その差は5%ということになる。
【0031】
次に、図8(b)を用いて誤差が大きくなる理由を説明する。
バースト信号部BS1の書き込みずれは図8(a)と同じとする。領域(1)のD−Cの値が0となる位置から内周側にサーボトラックの25%ずれた位置をリードヘッドRH1が通過した場合と、領域(2)のA−Bの値が0となる位置から外周側にサーボトラックの25%ずれた位置をリードヘッドRH1が通過した場合とでは、図8(b)のように、リードヘッドRH1の位置は異なるがヘッドを制御するシステムは同じ位置を移動したと判断する。
【0032】
このように必然的なサーボ信号パターン記録部SB1の書き込み誤差があり、また必然的なヘッドの位置決め制御システムのNRROがある場合、2つの位置決め計算式を使用しなければならない領域については、2つの位置決め計算式のそれぞれのRRO成分がNRROになり大きなNRROが発生することになる。
【0033】
RRO成分はサーボ制御において検知することができ、補正が可能であるがNRROは補正することはできない。
1つの位置決め計算式でヘッドの位置決めを行う領域では、必然的なサーボ信号パターン記録部SB1の書き込み誤差があり、また必然的なヘッドの位置決め制御システムのNRROがある場合であっても、相対的なヘッドの位置決めは可能である。例えば、ある場所で読み取りミスがあったため内周側または外周側に数%オフトラックさせて再度読み取りを行おうとした場合、ある程度正確に行うことが可能である。
【0034】
または、そのような場所ではRROを求め、そのときのサーボ制御を考慮することで、サーボ信号パターン記録部SB1の書き込みずれ量を知ることが可能である。この方式をWORF(Wedge Off Set Reduction Field)またはBCV(Burst Correction Value)と呼んでいる。しかしながら、2つの位置決め計算式を使用しなければならない領域では、このような方式は効率よく正確に使用することはできない。
【0035】
ハイエンドの磁気記録装置においては、正確に早く読み取ることが要求されていることと、データ転送レートを上げる目的でモーターの回転速度を上げているためモーターまたは記録装置の機構に起因するNRRO成分が高くなることから、WORFが取り入れられているものが存在する。
【0036】
WORFとは、前述したように、サーボ信号パターン記録部SB1へのサーボ信号(Wedge)の書き込みずれを測定し、その値をサーボ信号パターン記録部SB1の前または後ろにデジタル信号にて書き込んでおき、サーボ制御時には、サーボ信号パターン記録部SB1のバースト信号部BS1の値とそのずれ量を表したデジタル信号を基に、ヘッドHD1の位置決めをするという方式である。
【0037】
この方式では、ライトオントラックでは比較的正確にそのずれ量を測定することが可能であるが、リードオントラックの場合にヘッドの位置決め信号の切り替わる領域において正確なずれ量を測定することができないので、正確な補正ができない。
【0038】
WORFは、そのトラックのRRO成分からサーボ信号パターン記録部SB1のずれを読み取る技術であるが、ヘッドHD1の位置決め信号の切り替わる領域においてNRRO成分が増加することにより、十分な補正ができないためである。
【0039】
この対策についての従来技術(例えば、特許文献1を参照)を、次に説明する。
その内容は、あるトラックにヘッド位置決めする際、すべてのサーボ信号が1種類の位置決め計算式で位置決めし、2つの位置決め計算式で位置決めする領域においても無理やり1種類の位置決め計算式でヘッドの位置決めをし、効率の良いWORFを行うというものである。
【0040】
しかしながら、この方式では1つの位置決め計算式で制御する領域が広くなり、ヘッドの位置と位置決め計算式の関係が非線形の関係になる可能性が高く、ヘッドの位置決め誤差が大きくなる問題が発生する。
【特許文献1】US2005/0128634
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
しかしながら上記のような従来のヘッド位置決め方法では、サーボ信号パターン記録部SB1の書き込み誤差とヘッドHD1の位置決め信号の計算式の切り換え部が存在することと、磁気記録装置のランアウトが存在することにより、ヘッドの位置決め信号の計算式の切り換え部近辺でリードヘッドRH1を位置決めしようとした場合、ランアウトのNRRO成分が増加することから、ヘッドの位置決め精度が低下するという問題点を有していた。
【0042】
また、磁気記録装置において、ヘッドHD1の位置決め精度を向上するためにWORFとよばれる方式が存在するが、この方式では、NRRO成分に関しては補正できないので、ヘッドの位置決め計算式の切り換え領域では、WORFを効率よく行うことができないという問題点をも有していた。
【0043】
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、回路および機構の構成的な追加を必要とせずヘッドの位置決め精度を向上することができ、安価にかつ信頼性の高いデータ信号の読み取りを実現することができる磁気記録装置のヘッド位置決め方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0044】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、トラックにデータの磁気記録が可能な磁気ディスクと、前記磁気ディスクに前記データを書き込むライトヘッドと前記磁気ディスクから前記データを読み取るリードヘッドが互いに近接して設けられたヘッドと、前記ヘッドが一端に支持された状態で前記磁気ディスク上を略半径方向に自在に移動可能なように、他端を支点として回動するローターアームとを有し、前記磁気ディスク上に、複数種類のバースト信号部を有し前記ヘッドの移動制御による位置決め時の指標となるヘッド位置決め信号記録部が複数個形成された磁気記録装置であって、データ書き込み時とデータ読み取り時とで、前記ライトヘッドと前記リードヘッドに対して、同一トラックに対する位置ずれを補正して位置決めするためのリードライトオフセットを有するとともに、前記バースト信号部から得られるバースト信号の電圧値が用いられた計算式で、前記ヘッドの移動中にその所定間隔で切り換えられて前記ヘッドの位置を判断するためのヘッド位置決め計算式を複数種類有する磁気記録装置に対して、前記データ書き込み時には、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え領域に前記ライトヘッドの中心が位置決めされるトラックでは前記ライトヘッドをオフトラックさせて前記データの書き込みを行い、該トラックに対する前記データ読み取り時には、前記リードライトオフセット量と前記ライトヘッドのオフトラック量とから得られた新たなオフセット量に基づいて、前記リードヘッドを位置決めして前記データの読み取りを行うことを特徴とする。
【0045】
また、本発明の請求項2に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項1に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え領域は、ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値とすることを特徴とする。
【0046】
また、本発明の請求項3に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項1または請求項2に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記ランアウトの幅を、前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下とすることを特徴とする。
【0047】
また、本発明の請求項4に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項2または請求項3に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値をBとし、書き込み時において、前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より外周側に有る場合には、前記外周側に、Bの値をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行い、前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より内周側に有る場合には、前記内周側に、Bの値をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行うことを特徴とする。
【0048】
また、本発明の請求項5に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項2または請求項3に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記ライトヘッドの中心とヘッド位置決め計算式の切り換え位置までの距離をAとするとともに、前記ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値をBとし、書き込み時において、前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より外周側に有る場合には、前記外周側に、BとAの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行い、前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より内周側に有る場合には、前記内周側に、BとAの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行うことを特徴とする。
【0049】
また、本発明の請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項2または請求項3に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記ライトヘッドの中心とヘッド位置決め計算式の切り換え位置までの距離をAとするとともに、前記ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値をBとし、計算式の切り換えピッチをCとし、書き込み時において、前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より外周側に有る場合には、前記外周側に、Bと2×A×B/Cの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行い、前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より内周側に有る場合には、前記内周側に、Bと2×A×B/Cの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行うことを特徴とする。
【0050】
また、本発明の請求項7に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記バースト信号部は、第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部の4種類とし、前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記4種類の前記バースト信号は、前記4種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記4種類間で順番に90度の位相差を持たせ、前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第3バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、交互に割り当てることを特徴とする。
【0051】
また、本発明の請求項8に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記バースト信号部は、第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部の4種類とし、前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記4種類の前記バースト信号は、前記4種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記4種類間で順番に90度の位相差を持たせ、前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差と、第3バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差と、第3バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差との和を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、交互に割り当てることを特徴とする。
【0052】
また、本発明の請求項9に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項7または請求項8に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記4種類の前記バースト信号は、前記周期における前記信号の発生期間の方を信号の無い期間より短くすることを特徴とする。
【0053】
また、本発明の請求項10に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記バースト信号部は、第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部、第5バースト信号部、第6バースト信号部の6種類とし、前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記6種類の前記バースト信号は、前記6種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記6種類間で順番に60度の位相差を持たせ、前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第4バースト信号の値と第5バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第2バースト信号の値と第3バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第5バースト信号の値と第6バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第3バースト信号の値と第1バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第6バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、順次割り当てることを特徴とする。
【0054】
また、本発明の請求項11に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記バースト信号部は、第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部、第5バースト信号部、第6バースト信号部の6種類とし、前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記6種類の前記バースト信号は、前記6種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記6種類間で順番に60度の位相差を持たせ、前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差と、第5バースト信号の値と第6バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第2バースト信号の値と第3バースト信号の値間の差と、第4バースト信号の値と第6バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、第1バースト信号の値と第3バースト信号の値間の差と、第4バースト信号の値と第5バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、順次割り当てることを特徴とする。
【0055】
また、本発明の請求項12に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項10または請求項11に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記6種類の前記バースト信号は、前記周期における前記信号の発生期間の方を信号の無い期間より短くすることを特徴とする。
【0056】
また、本発明の請求項13に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、請求項7から請求項12のいずれかに記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、前記ヘッド位置決め信号記録部におけるRROを求め、そのときのサーボ制御を考慮して、前記ヘッド位置決め信号記録部の書き込みずれ量を知る方式であるWORF方式により、ヘッド位置決めを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0057】
以上のように本発明によれば、ヘッド位置決め計算式の切り換え場所でのヘッドの位置決めをなくすことにより、磁気記録装置の回路および機構の構成的な変更をすることなく、精度の高いヘッドの位置決めを可能にする。
【0058】
また、ヘッド位置決め計算式の切り換え場所でのヘッドの位置決めをなくすことにより、数%のトラックのマップアウトもする必要がなくなり、磁気記録装置の回路および機構の構成的な変更をすることなく、精度の高いヘッドの位置決めを効率よく実施することを可能にする。
【0059】
また、ヘッド位置決め計算式の切り換え場所でのヘッドの位置決めをなくすことにより、数%のトラックのマップアウトもする必要がなくなり、さらに理論上すべてのトラックピッチが同じになり、磁気記録装置の回路および機構の構成的な変更をすることなく、精度の高いヘッドの位置決めを効率よく実施することを可能にする。
【0060】
また、ヘッド位置決め計算式の切り換え場所でのヘッドの位置決めをなくすことにより、ヘッドの位置決めの誤差成分であるRROを削除するWORFを効率よく使用できるため、精度の高いヘッドの位置決めが可能となる。
【0061】
以上のように本発明により、回路および機構の構成的な追加を必要とせずヘッドの位置決め精度を向上することができ、安価にかつ信頼性の高いデータ信号の読み取りを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、本発明の実施の形態を示す磁気記録装置のヘッド位置決め方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の磁気記録装置のヘッド位置決め方法を説明する。
【0063】
本発明の磁気記録装置のヘッド位置決め方法においては、基本的に、2種類のヘッド位置決め計算式を使用しなければならないトラックをなくすことにより、ヘッドの位置決め精度を向上させるものである。通常、2種類のヘッド位置決め計算式を使用しなければならないトラックは、図6に示すように、ライトオントラックには存在せず、リードオントラックのみに存在し、この状態がヘッドの位置決め制御において問題となる。
【0064】
そこで本発明では、このリードオントラックにて問題となるトラックの信号書き込み時には、読み取り時に2種類のヘッド位置決め計算式を使用しなくても良いように、ライトヘッドWH1を当該トラックからオフトラックして信号を書き込むことを特徴とする。
【0065】
リードオントラックは、トラックの半径またはライトヘッドWH1とリードヘッドRH1の配置位置のばらつき、またはローターアームRA1の寸法のばらつき、モーターとローターアームRA1の距離のばらつきなどにより、磁気記録装置ごと、またそれらの各ヘッドごとに違ってくる。さらにリードライトオフセットRWOF1は、ヘッドHD1が磁気ディスクJD1の例えば最外周から最内周へと移動する際に通過するトラックごとに、徐々に変化する。TPIが120K程度の磁気記録装置のリードライトオフセットは、磁気ディスクJD1の最外周で4トラック程度であり、最内周で−3トラック程度である。
【0066】
ヘッドHD1の位置決め精度は磁気ディスクJD1の回転ごとにそのヘッドHD1の位置は若干変化し、通常、データトラック±8%程度以内に位置決めされる。したがって、この±8%の位置決めにおいて、2つ以上のヘッド位置決め計算式を使用する領域が問題となってくる。この磁気ディスクJD1の回転ごとに変化するヘッド位置の変化量(上記±8%)のことを、ランアウトまたはTMR(Track Mis Resistration)と呼ぶ。
【0067】
以下、ヘッド位置決め信号記録部として図2に示すサーボ信号パターン記録部SB1からのサーボ信号を例として、またヘッドHD1の位置決め計算式を、A−BとC−Dとして説明する。
【0068】
1つのヘッド位置決め計算式を基にヘッドを位置決めする領域として、仮に正確に書かれたサーボ信号パターン記録部SB1上ではデータトラックの33%がサーボ制御できるが、サーボ信号パターン記録部SB1の書き込みミスを考慮すると40%程度が、サーボ制御できるように設計される必要がある。そのように設計された場合に、それぞれのヘッド位置決め計算式の値が0となる位置から±20%の領域は、そのヘッド位置決め計算式で当該ヘッドの位置決め制御が可能である。
【0069】
次に、ヘッド位置決め計算式の切り換え領域にかかわるトラックは、全体のトラック数のうちでどれだけの割合で存在するかについて説明する。
ライトオントラックについてはヘッド位置決め計算式が0となる位置であるため問題ないので、ヘッド位置決め計算式の切り換え領域が問題となるリードオントラックについて図9を用いて以下に説明する。
【0070】
図9は横軸(X軸)がデータトラックで縦軸(Y軸)がリードライトオフセットRWOF1の値を表すグラフである。図9に示すように、このグラフのY軸方向の値0との交点はリードライトオフセットRWOF1が0のトラックを表している。その位置から外周側(トラック番号が小さくなる方向)に移動するとリードライトオフセットRWOF1は(+)側に変化し、内周側(トラック番号が大きくなる方向)に移動すると(−)側に変化する。
【0071】
ヘッド位置決め計算式はデータトラックの1/3ごとに変化するので、X軸との交点の位置からリードライトオフセットRWOF1の値が1/3データトラックの倍数移動したそれぞれの位置を基準にして、データトラックの±8%(ランアウト)の領域に存在するリードオントラックが、ヘッド位置決め計算式の切り換え領域をまたがることになる。すなわち、データトラックの33%(1/3)ごとに16%のヘッド位置決め計算式の切り換え領域があるということになり、全体のトラック数の16/33、つまり約50%のトラックが、ヘッド位置決め計算式の切り換え領域にまたがることになる。
【0072】
ヘッドの位置決めばらつき(ランアウト)は±8%程度であり、この±8%の中に、ヘッド位置決め計算式の切り換え領域が問題となるトラックも含まれており、ここで問題となるヘッドの位置決めはリードオントラックに関するものである。したがって、この領域に信号を書き込む時は、ランアウト分だけ磁気ディスクに対して外周又は内周にあらかじめオフトラックして書き込みを行えば、読み取りの時に、ヘッド位置決め計算式の切り換え領域にまたがることなく1つのヘッド位置決め計算式により、ヘッドの位置決めが可能となる。
【0073】
なお、書き込みの際にライトヘッドWH1を内周側にずらすか外周側にずらすかの判断は、読み取りの際に、リードヘッドRH1のセンターがヘッドの位置決め信号の切り換え位置に対して、外周側か内周側かで判断する。リードヘッドRH1のセンターがもし内周側だと、書き込み時のライトヘッドWH1を内周側にランアウト分だけずらせばよい。
【0074】
ランアウトは先に書いたように通常8%程度である。書き込み時には、ヘッドの位置決め精度をよくするために、ヘッド位置決め計算式が0になる位置にて書き込みすることが主流であることを述べたが、オフセット量が8%程度ならば、ヘッドの位置とヘッドの位置決め計算式の関係の直線性はそれほど損なわれることもなく、2つのヘッド位置決め計算式を使用することもないので、ヘッドの位置決め精度に関して問題にはならない。
【0075】
書き込み時にずらす値は、そのランアウト程度の値だと、読みとり時に1つのヘッド切り換え計算式で制御することが可能であるが、その値が大きすぎると書き込み時に2つのヘッド切り換え計算式を使用しなければならなくなり、書き込み時に問題が発生することになる。その問題の発生しない最大のオフセット(ずれ)可能距離は、ヘッドの位置決め切り換え計算式のピッチの1/4の値(トラックピッチの8.33%)となる。
【0076】
書き込み時にオフセットしないトラックと、外周または内周にランアウト分またはヘッドの位置決め切り換え計算式のピッチの1/4オフセットするトラックが、生じることとなる。
【0077】
ランアウト分(8%)オフセットするトラックとオフセットしないトラックのトラックピッチは、ランアウト分だけ狭くなる。これだけ狭くなるとオーバーライトの問題が生じる可能性があるため、そのどちらかのトラックはマップアウトし使用しないようにする。
そのマップアウトされるトラックの数は次のように推測される。
【0078】
120kTPIの磁気記録装置において、磁気ディスクJD1の最内周と最外周のリードライトオフセットRWOF1の差は、約7データトラックである。位置決め計算式の切り換えはデータトラックの1/3ごとであるから、切り換え場所にまたがる領域は21箇所程度となり、それぞれの場所で書き込み時に外周側と内周側に移動させるので、その重複するトラックは全体のトラック数の内42箇所程度となる。この数字は、トラック約8万個からすれば約0.05%であり大した数字ではなく、マップアウトしたとしても磁気記録装置の記憶容量を大きく損なうものではなく、この程度は、磁気記録装置としては実用上問題のない量である。
【0079】
図10は上記内容を流れ図に表したものである。
まず、書き込み時のライトヘッドのセンターから1番近いヘッド位置決め計算式の切り換え位置までの距離Aと、ランアウトの幅以上でヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値Bとの比較を行う(ステップS101)。
【0080】
ここで、Bは上記任意に決定したどれか1つの値でありかつ定数である。また、これらAおよびBは、磁気記録装置がもっているリードライトオフセットRWOF1の値と、磁気記録装置が出荷前のテストなどで行うランアウトの結果とから、容易に求めることが可能である。
【0081】
上記比較の結果、等しいかAが大きければ従来の方式(ステップS150:ステップS107〜ステップS109)で書き込み後に読み出しを行う。Bが大きいと、書き込み時ライトヘッドのセンターが、一番近いヘッド位置決め計算式の切り換え位置から磁気ディスクの外周側か内周側にあるかを判断する(ステップS102)。この判断もリードライトオフセット値とランアウト値から容易に判断できる。
【0082】
もし外周側であれば、書き込み時に、従来のライトオントラックの位置より外周側にBだけオフトラックさせて書き込みを行い(ステップS103〜ステップS104)、読み取り時は、そのオフトラック量とリードライトオフセット量を考慮(加算)して、リードヘッドの位置決めを行い、読み出しを行う(ステップS105〜ステップS106)。
【0083】
もし内周側であれば、書き込み時に、従来のライトオントラックの位置より内周側にBだけオフトラックさせて書き込みを行い(ステップS110〜ステップS111)、読み取り時は、そのオフトラック量とリードライトオフセット量を考慮(加算)して、リードヘッドの位置決めを行い、読み出しを行う(ステップS112〜ステップS113)。
【0084】
マップアウトするトラックは、計算でも求めることは可能であるが、磁気記録装置のディフェクト検査で決定しても良い。
以上の方式により、容易にヘッドの位置決めを改善することができ、書き込みおよび読み出し精度を向上することが可能である。
【0085】
以上のヘッド位置決め方法は、図11および図12のように表すことができる。すなわち、図11は本実施の形態1の書き込み時のオフトラック量をトラックごとに表したグラフであり、図12は本実施の形態1の読み出し時にリードヘッドを位置決めする際に、従来の書き込み位置からオフセットさせる距離をトラックごとに表したグラフである。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の磁気記録装置のヘッド位置決め方法を説明する。
【0086】
実施の形態1ではマップアウトされるトラックが数10トラック(120kTPI)発生する。本実施の形態2はそのマップアウトを不必要とするものである。
書き込み信号記録部のライトオントラックセンターWTC1から内外周側にランアウト分の領域にヘッド位置決め計算式の切り換え部が存在するトラックが、ヘッド位置決めに関して問題となる。そのヘッド位置決め計算式の切り換え部が、書き込み信号切り換え部からランアウト分だけ外周側または内周側の範囲の中心付近であったり、外周側から少し内周側に入った部分であったり、または内周側部分であったりする。
【0087】
中心部分であるならばランアウト分以上ずらす必要があるが、その領域に少し入ったところにヘッド位置決め計算式の切り換え部が存在する場合は、その少し入った分だけずらして信号を書き込みすればよい。
【0088】
ヘッド位置決め計算式の切り換え部にかかるトラックのずらす量を、ヘッド位置決め計算式の切り換え部からの距離に応じて比例するようにずらす。こうすればトラックピッチがランアウト分狭くなるトラックはなくなり、マップアウトする必要はなくなる。ただし、ずらす量をトラックごとに変化させる訳であるから、このずらす領域のトラックピッチが、若干、従来方式のトラックピッチに比べ狭くなる。その狭くなる量について、120kTPIの磁気記録装置では、トラックピッチに関して推測すると次のようになる。
【0089】
最外周から最内周までトラック数は約80000トラックであり、問題となるトラックは、前述のように約50%である40000トラックである。最外周と最内周でのリードライトオフセットRWOF1の差は、前述のように約7トラックであり、ヘッド位置決め計算式の切り換え領域は、トラックの最外周から最内周の間に約21箇所存在する。これらの各1箇所に存在する問題となるトラックは40000/21となり、約1900となる。この1900トラックでランアウトの2倍(16%)の距離を等分化することになる。すると、トラックの16%/1900となり、0.0084%である。この程度は、磁気記録装置としては誤差と言え、実用上、問題のない量である。
【0090】
図13は上記内容を流れ図に表したものである。
まず、書き込み時のライトヘッドのセンターから1番近いヘッド位置決め計算式の切り換え位置までの距離Aと、ランアウトの幅以上でヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値Bとの比較を行う(ステップS301)。
【0091】
ここで、Bは上記任意に決定したどれか1つの値でありかつ定数である。また、これらAおよびBは、磁気記録装置がもっているリードライトオフセットRWOF1の値と、磁気記録装置が出荷前のテストなどで行うランアウトの結果とから、容易に求めることが可能である。
【0092】
上記比較の結果、等しいかAが大きければ従来の方式(ステップS350:ステップS307〜ステップS309)で書き込み後に読み出しを行う。Bが大きいと、書き込み時ライトヘッドのセンターが、一番近いヘッド位置決め計算式の切り換え位置から磁気ディスクの外周側か内周側にあるかを判断する(ステップS302)。この判断もリードライトオフセット値とランアウト値から容易に判断できる。
【0093】
もし外周側であれば、書き込み時に、従来のライトオントラックの位置より外周側に(B−A)だけオフトラックさせて書き込みを行い(ステップS303〜ステップS304)、読み取り時は、そのオフトラック量とリードライトオフセット量を考慮(加算)して、リード時のヘッド位置決めを行い、読み出しを行う(ステップS305〜ステップS306)。
【0094】
もし内周側であれば、書き込み時に、従来のライトオントラックの位置より内周側に(B−A)だけオフトラックさせて書き込みを行い(ステップS310〜ステップS311)、読み取り時は、そのオフトラック量とリードライトオフセット量を考慮(加算)して、リード時のヘッド位置決めを行い、読み出しを行う(ステップS312〜ステップS313)。
【0095】
こうすることにより、マップアウトする必要はなくなり、容易にヘッドの位置決めを改善することができ、書き込みおよび読み出し精度を向上することが可能である。
以上のヘッド位置決め方法は、図14および図15のように表すことができる。すなわち、図14は本実施の形態2の書き込み時のオフトラック量をトラックごとに表したグラフであり、図15は本実施の形態2の読み出し時にリードヘッドを位置決めする際に、従来の書き込み位置からオフセットさせる距離をトラックごとに表したグラフである。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の磁気記録装置のヘッド位置決め方法を説明する。
【0096】
実施の形態2ではマップアウトトラックは無くすことが可能となるが、一部のデータの書き込みピッチ(トラックピッチ)が若干ではあるが狭くなるか、またはトラックピッチが2種類存在するという問題が発生する。
【0097】
本実施の形態3は、実施の形態2の問題を解決し、すべての書き込み信号のトラックピッチを同じにするものである。
ヘッド位置決め計算式の値が0になる場所から切り換え部間でのすべてのトラックを、それらの各距離に応じてずらす。その結果、すべてのトラックが同じピッチとなる。そのトラックピッチは従来のピッチにくらべ狭くなる。その狭くなる量について、120kTPIの磁気記録装置では、トラックピッチに関して推測すると次のようになる。
【0098】
実施の形態の2ではトラックピッチの変化は約0.0084%程度の変化であると述べたが、実施の形態2では問題となるトラック40000個で問題となる領域を避けたあとの領域を分割した。これに対し、本実施の形態3では、すべてのトラック80000個で分割することになるため、そのトラックピッチの変化は0.0084%×40000/80000となり、0.0042%となる。この程度は、磁気記録装置としては誤差と言え、実用上、問題のない量である。
【0099】
図16は上記内容を流れ図に表したものである。
まず、書き込み時のライトヘッドのセンターから1番近いヘッド位置決め計算式の切り換え位置までの距離をAとし、ランアウトの幅以上でヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値をBとし、計算式の切り換えピッチをCとする。
【0100】
ここで、Bは上記任意に決定したどれか1つの値でありかつ定数である。また、これらAおよびBおよびCは、磁気記録装置がもっているリードライトオフセットRWOF1の値と、磁気記録装置が出荷前のテストなどで行うランアウトの結果とから、容易に求めることが可能である。
【0101】
次に、書き込み時のライトヘッドのセンターが、一番近いヘッド位置決め計算式の切り換え位置から磁気ディスクの外周側にあるか内周側にあるかを判断する(ステップS601)。磁気記録装置がもつリードライトオフセット値とランアウト値から容易に判断できる。
【0102】
もし外周側であれば、書き込み時に、従来のライトオントラックの位置より外周側にB×(1−2×A/C)だけオフトラックさせて書き込みを行い(ステップS602〜ステップS603)、読み取り時は、そのオフトラック量とリードライトオフセット量を考慮(加算)して、リード時のヘッド位置決めを行い、読み出しを行う(ステップS604〜ステップS605)。
【0103】
もし内周側であれば、書き込み時に、従来のライトオントラックの位置より内周側にB×(1−2×A/C)だけオフトラックさせて書き込みを行い(ステップS606〜ステップS607)、読み取り時は、そのオフトラック量とリードライトオフセット量を考慮(加算)して、リード時のヘッド位置決めを行い、読み出しを行う(ステップS608〜ステップS609)。
【0104】
こうすることにより、トラックのマップアウトが必要なくなり、また均一なトラックピッチでの書き込みおよび読み取りをすることが可能になり、書き込みおよび読み出し精度を向上することが可能である。
【0105】
以上のヘッド位置決め方法は、図17および図18のように表すことができる。すなわち、図17は本実施の形態3の書き込み時のオフトラック量をトラックごとに表したグラフであり、図18は本実施の形態3の読み出し時にリードヘッドを位置決めする際に、従来の書き込み位置からオフセットさせる距離をトラックごとに表したグラフである。
【0106】
なお、上記の実施の形態1、2、3のヘッド位置決め方法を実行したあとWORFを行えば、ライトオントラックは従来と変わらず、正確にランアウトを削減することができ、従来十分にランアウトを削減できなかったリードオントラックにおいても、ライトオントラックと同じように、ランアウトを削減でき、さらに正確なヘッド位置決めが可能となり、磁気記録装置の書き込みおよび読み出し精度を向上することができる。
【0107】
なお、上記の各実施の形態では、バースト信号の幅がサーボトラック幅と等しく、かつバースト信号としてトリミングされたトリムドバースト信号を含むサーボ信号に関して説明したが、バースト信号としてトリミングされないアントリムドバースト信号を含むサーボ信号(この場合、幅はサーボトラック幅と等しいとは限らない)でも、同様に実施が可能である。
【0108】
図19は各実施の形態で説明したバースト信号部でありトリミングされたトリムドバースト信号部とそれらに対応する各バースト信号波形の電圧値を表した図である。図20は他の実施の形態として説明したバースト信号部でありトリミングされないアントリムドバースト信号部とそれらに対応する各バースト信号波形の電圧値を表した図である。
【0109】
図19および図20において、Bバースト信号部BB1に対応するBバースト信号波形に着目すると、(1)の期間が「信号の発生期間」であり、(2)の期間が「信号の無い期間」である。すなわち、バースト信号波形の波高値の50%以上の値である部分の時間長さが「信号の発生期間」であり、バースト信号波形の波高値の50%未満の値である部分の時間長さが「信号の無い期間」である。
【0110】
また、同様に、図19および図20においてBバースト信号波形に着目すると、(1)の期間と(2)の期間の合計が「信号の発生期間の周期」であり、(1)の期間と((1)の期間+(2)の期間)の比率すなわち(1)の期間/((1)の期間+(2)の期間)(ON比率(%))が「デューティ比」である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の磁気記録装置のヘッド位置決め方法は、回路および機構の構成的な追加を必要とせずヘッドの位置決め精度を向上することができ、安価にかつ信頼性の高いデータ信号の読み取りを実現することができるもので、記録媒体として磁気ディスクにデータを記録可能な磁気記録装置等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるサーボ信号パターン記録部の説明図
【図2】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるサーボ信号パターン記録部(1)の部分拡大図
【図3】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるサーボ信号パターン記録部(2)の部分拡大図
【図4】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法の説明図
【図5】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるローターアームの回転移動によるスキュー角の変化の説明図
【図6】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるライトオントラックとリードオントラックとの位置関係の説明図
【図7】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるリードヘッドがバースト信号部上を移動した時の説明図
【図8】従来の磁気記録装置のヘッド位置決め方法における計算式の切り換え場所近辺で誤差が大きくなる理由の説明図
【図9】本発明の実施の形態1の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるデータトラックとリードライトオフセット値の関係説明図
【図10】同実施の形態1の磁気記録装置のヘッド位置決め方法における手順を示す流れ図
【図11】同実施の形態1の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるデータトラックごとのオフトラック量の説明図
【図12】同実施の形態1の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるデータトラックごとの書き込み位置からのオフセット距離の説明図
【図13】本発明の実施の形態2の磁気記録装置のヘッド位置決め方法における手順を示す流れ図
【図14】同実施の形態2の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるデータトラックごとのオフトラック量の説明図
【図15】同実施の形態2の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるデータトラックごとの書き込み位置からのオフセット距離の説明図
【図16】本発明の実施の形態3の磁気記録装置のヘッド位置決め方法における手順を示す流れ図
【図17】同実施の形態3の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるデータトラックごとのオフトラック量の説明図
【図18】同実施の形態3の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるデータトラックごとの書き込み位置からのオフセット距離の説明図
【図19】各実施の形態の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるトリムドバースト信号部とそれらに対応する各バースト信号波形を表した図
【図20】他の実施の形態の磁気記録装置のヘッド位置決め方法におけるアントリムドバースト信号部とそれらに対応する各バースト信号波形を表した図
【符号の説明】
【0113】
AB1 Aバースト信号部
AG1 AGC信号部
AS1 アナログ信号部
BB1 Bバースト信号部
BS1 バースト信号部
CB1 Cバースト信号部
DB1 Dバースト信号部
DS1 デジタル信号部
EB1 Eバースト信号部
EN1 円周方向
FB1 Fバースト信号部
HD1 ヘッド(磁気ヘッド)
HJ1 ヘッド方向軸
HN1 半径方向
JD1 磁気ディスク
MD1 メディア
PC1 ピポットセンター
RA1 ローターアーム
RH1 リードヘッド
RTC1 リードオントラックセンター
RWOF1 リードライトオフセット
SB1 サーボ信号パターン記録部
SK1、SK2 スキュー角
TC1 トラックセンター
TN1 トラックナンバー信号部
WH1 ライトヘッド
WTC1 ライトオントラックセンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックにデータの磁気記録が可能な磁気ディスクと、
前記磁気ディスクに前記データを書き込むライトヘッドと前記磁気ディスクから前記データを読み取るリードヘッドが互いに近接して設けられたヘッドと、
前記ヘッドが一端に支持された状態で前記磁気ディスク上を略半径方向に自在に移動可能なように、他端を支点として回動するローターアームとを有し、
前記磁気ディスク上に、複数種類のバースト信号部を有し前記ヘッドの移動制御による位置決め時の指標となるヘッド位置決め信号記録部が複数個形成された磁気記録装置であって、
データ書き込み時とデータ読み取り時とで、前記ライトヘッドと前記リードヘッドに対して、同一トラックに対する位置ずれを補正して位置決めするためのリードライトオフセットを有するとともに、
前記バースト信号部から得られるバースト信号の電圧値が用いられた計算式で、前記ヘッドの移動中にその所定間隔で切り換えられて前記ヘッドの位置を判断するためのヘッド位置決め計算式を複数種類有する磁気記録装置に対して、
前記データ書き込み時には、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え領域に前記ライトヘッドの中心が位置決めされるトラックでは前記ライトヘッドをオフトラックさせて前記データの書き込みを行い、
該トラックに対する前記データ読み取り時には、前記リードライトオフセット量と前記ライトヘッドのオフトラック量とから得られた新たなオフセット量に基づいて、前記リードヘッドを位置決めして前記データの読み取りを行う
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記ヘッド位置決め計算式の切り換え領域は、
ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値とする
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記ランアウトの幅を、前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下とする
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値をBとし、
書き込み時において前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より外周側に有る場合には、
前記外周側に、Bの値をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行い、
前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より内周側に有る場合には、
前記内周側に、Bの値をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行う
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記ライトヘッドの中心とヘッド位置決め計算式の切り換え位置までの距離をAとするとともに、
前記ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値をBとし、
書き込み時において前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より外周側に有る場合には、
前記外周側に、BとAの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行い、
前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より内周側に有る場合には、
前記内周側に、BとAの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行う
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記ライトヘッドの中心とヘッド位置決め計算式の切り換え位置までの距離をAとするとともに、
前記ランアウトの幅以上で前記ヘッド位置決め計算式の切り換えピッチの1/4幅以下のどれか任意に決定した値をBとし、
計算式の切り換えピッチをCとし、
書き込み時において前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より外周側に有る場合には、
前記外周側に、Bと2×A×B/Cの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行い、
前記ライトヘッドの中心が、前記ヘッド位置決め計算式の切り換え位置より内周側に有る場合には、
前記内周側に、Bと2×A×B/Cの差をオフトラックさせて、前記データの書き込みを行う
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項7】
請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記バースト信号部は、
第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部の4種類とし、
前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記4種類の前記バースト信号は、前記4種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記4種類間で順番に90度の位相差を持たせ、
前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、
第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第3バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、
交互に割り当てる
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項8】
請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記バースト信号部は、
第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部の4種類とし、
前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記4種類の前記バースト信号は、前記4種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記4種類間で順番に90度の位相差を持たせ、
前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、
第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差と、第3バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差と、第3バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差との和を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、
交互に割り当てる
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記4種類の前記バースト信号は、
前記周期における前記信号の発生期間の方を信号の無い期間より短くする
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項10】
請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記バースト信号部は、
第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部、第5バースト信号部、第6バースト信号部の6種類とし、
前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記6種類の前記バースト信号は、前記6種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記6種類間で順番に60度の位相差を持たせ、
前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、
第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第4バースト信号の値と第5バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第2バースト信号の値と第3バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第5バースト信号の値と第6バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第3バースト信号の値と第1バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第6バースト信号の値と第4バースト信号の値間の差を前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、
順次割り当てる
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項11】
請求項4または請求項5または請求項6に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記バースト信号部は、
第1バースト信号部、第2バースト信号部、第3バースト信号部、第4バースト信号部、第5バースト信号部、第6バースト信号部の6種類とし、
前記ヘッドが等速移動したときに得られる前記6種類の前記バースト信号は、前記6種類間において信号の発生期間とその周期が同じとし、かつ、前記6種類間で順番に60度の位相差を持たせ、
前記トラックに対して、前記ヘッドの移動方向に、
第1バースト信号の値と第2バースト信号の値間の差と、第5バースト信号の値と第6バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第2バースト信号の値と第3バースト信号の値間の差と、第4バースト信号の値と第6バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域と、
第1バースト信号の値と第3バースト信号の値間の差と、第4バースト信号の値と第5バースト信号の値間の差との差を、前記ヘッド位置決め計算式として前記ヘッドの位置決めを行う領域とを、
順次割り当てる
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記6種類の前記バースト信号は、
前記周期における前記信号の発生期間の方を信号の無い期間より短くする
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。
【請求項13】
請求項7から請求項12のいずれかに記載の磁気記録装置のヘッド位置決め方法であって、
前記ヘッド位置決め信号記録部におけるRROを求め、そのときのサーボ制御を考慮して、前記ヘッド位置決め信号記録部の書き込みずれ量を知る方式であるWORF方式により、ヘッド位置決めを行う
ことを特徴とする磁気記録装置のヘッド位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−93753(P2009−93753A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263858(P2007−263858)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】