説明

磁気誘導装置

本発明は、磁気誘電装置(MID)に関し、この装置は、少なくとも1個の第1電気巻回と、少なくとも1個の第2電気巻回と、導電性閉ループを形成せずに、コアを少なくとも部分的に包囲する導電性カバー(ECC)とを有し、前記コアを介して、前記第1電気巻回と第2電気巻回とが磁気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気誘導装置と、この磁気誘導装置を利用する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気誘導装置、例えば変成(変圧)器とバラン(平衡−不平衡変成器 (Balun-Balanced- Unbalanced))は、さまざまなシステムで、例えば通信システムで使用される。従来の変成器は、平衡信号で使用されているが、数百MHz以上の周波数帯域の共通モード電流(CM)を取り除くのに有効ではない。十分に高いCMの除去は、高速データ通信のアプリケーションでは、特に重要であり、これにより、導電/放射を阻止し、データと干渉するノイズに対する耐性を向上できる。
【0003】
従来の信号用変成器がCM電流を除去するのに効果的でない原因は、通信用のアプリケーションの問題解決に使用される複雑な磁気装置と設計にある。このような複雑な装置と設計は、10/100/1000ベース・T・イーサネット(登録商標)・アプリケーションで通常使用され、各ライン対に対し、ライン変成器と共通モード・チョークとの組み合わせ構成を有する。パワー・オーバー・イーサネット(登録商標)(Power-over-Ethernet(登録商標) (POE))のアプリケーションは、上記の装置と設計でサポートされている場合には、自動変成器が各ライン対に追加され、一対のライン当たりの磁気誘導装置の数がさらに増える。磁気設計が複雑になると、不平衡の問題が起き、電磁気干渉(electromagnetic interference (EMI))とクロストークの原因となる。このような装置と設計の一例は、以下の文献に記載されている。
【0004】
非特許文献1は、ライン変成器と共通モード・チョークと自動変成器とを組み込んだIP磁気装置とブロードバンド変成器を介しての音声伝送技術を記載している。
【0005】
非特許文献2は、1000Base-TモジュールのEPG4001ASとEPG400 IAS-RCで、ライン変成器と共通モード・チョークと自動変成器とを組み込んだ装置を記載している。
【0006】
非特許文献3は、POE磁気装置と10/ 100BASE-TX VoIP磁気モジュールで、ライン変成器と共通モード・チョークと自動変成器とを組み込んだ装置を記載している。
【0007】
非特許文献4は、EDSO-G24の個別のシングル・ポート・ギガビット磁気構成要素を記載している。
【0008】
非特許文献5は、XRJH RJ45コネクタで、ライン変成器と共通モード・チョークを組み込んだ装置を記載している。
【0009】
高速のLANの従来の設計に関連する問題は、非特許文献6に記載されている。
【0010】
【非特許文献1】A data sheet LM00200 dated 2004, of Bel Fuse, Inc., of Jersey City, New Jersey, USA
【非特許文献2】A data sheet of PCA Electronics, Inc. of North Hills, California, USA
【非特許文献3】A data sheet H327.H dated August 2005, of Pulse(R) of San Diego, California, USA
【非特許文献4】A data sheet of Midcom, Inc. of South Dakota, USA, dated 12/1/2005, which is available at the company website www.midcom-inc.com
【非特許文献5】A data sheet of Xmultiple, of California USA, dated 30 June 2003
【非特許文献6】"EMI Considerations in Selection of Ethernet(登録商標) Magnetics", by Neven Pischl of Broadcom Corporation, presented in the Santa Clara Chapter Meeting of the IEEE EMC Society, May 11, 2004
【非特許文献7】Ian Purdie's Amateur Radio Tutorial Pages entitled "Double Balanced Mixers and Baluns", at http://my.integritynet.com.au/purdic/dbl_bal_mix.htm
【非特許文献8】www.microwaves 101.com/encyclopedia/mixersdoublebalanced.cfm.
【特許文献1】米国特許第3,123,787号明細書
【特許文献2】米国特許第5,719,544号明細書
【特許文献3】米国特許第6,720,885号明細書
【特許文献4】米国特許第4,484,171号明細書
【特許文献5】米国特許第4,464,544号明細書
【特許文献6】米国特許第3,851,287号明細書
【特許文献7】米国特許出願第2005/0162237号
【0011】
それ故に、高周波帯域における磁気誘導装置の電気性能の改善が、望まれている。以下に記載した文献は、磁気コンポーネントのリーク・インダクタンスを制御する方法を提案するが、共通モード電流の除去の問題は解決できない。
【0012】
特許文献1は、高い巻回比率を有するトロイダル変成器を記載する。
【0013】
特許文献2は、内部巻回結合とリーク・インダクタンスを制御する変成器と、このような変成器を用いた回路を記載する。
【0014】
特許文献3は、特に導電材料製の壁を有する導管を有する磁気フラックス・ガイド装置を開示する。
【0015】
次に示す資料は、絶縁変成器の内部巻回キャパシタンスを減少させ、共通モード電流をさらに除去するが、リーク・インダクタンスの制御の問題を解決できない。
【0016】
特許文献4は、絶縁変成器として使用されるシールドされた変成器で、巻回間キャパシタンスを大きく減らす変成器を記載する。
【0017】
特許文献5は、コロナ効果サウンド・エミッタを記載する。このエミッタは、コロナ放電を行う放電電極とそれを包囲する球状の対向する電極とを有する。この対向電極は、ハウジング内に一部収納される。このハウジングが、高周波生成器と、変調変成器と、パワー供給変成器とを有する。このパワー供給変成器は、放電電極に電流を供給する。
【0018】
特許文献6は、リーク電流の少ない絶縁システムを記載する。
【0019】
特許文献7は、通信用変成器を開示する。この変成器は、磁気コアと、この磁気コアの周囲に巻回された複数の変成用巻回と、この磁気コアに巻回された追加された巻回とを有する。この追加された巻回は、複数の変成用巻回の間に配置されて、信号の伝搬動作には関与しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、一実施例によれば、広い周波数帯域で動作でき、高周波帯域(数百MHz以上)で性能を向上させた磁気誘導装置(MID:Magnetic Inductance Device)を提供することである。高周波帯域と低周波帯域における性能の向上により、本発明の磁気誘導装置(MID)は、特に高速データ通信のアプリケーションと、高周波(即ち500KHz以上)で電力供給するアプリケーションに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従来の磁気誘導装置(MID)とその設計とは対照的に、本発明の磁気誘導装置(MID)は、リーク・インダクタンスの制御と共通モード電流の除去の強化を、1個の装置をベースに改善している点である。
【0022】
本明細書と特許請求の範囲において、用語「磁気誘導装置」(MID)は、特に種々のアプリケーションで採用される電気回路と磁気回路で、磁気誘導と磁気フラックスにより誘導される電流を利用する装置である。磁気誘導装置(MID)の一例には、変成器、バラン、電力ディバイダ、電力スプリッタ、電力コンバイナ、共通モード(CM)チョーク、磁気誘導素子を利用したミキシング装置、変調器、インダクタがある。
【0023】
本発明の目的と特徴は、明細書および図面から当業者に明らかとなる。
【0024】
かくして本発明の好ましい実施例によると、本発明の磁気誘導装置は、(A)少なくとも1個の第1電気巻回と、(B)少なくとも1個の第2電気巻回と、(C)導電性閉ループを形成せずに、コアを少なくとも部分的に包囲する導電性カバー(ECC)とを有する。前記コアを介して、前記第1電気巻回と第2電気巻回とが磁気的に接続される。
【0025】
好ましくは、前記導電性カバー(ECC)は、以下のコア部分を少なくとも部分的に包囲する。(i)前記第1電気巻回により包囲されたコア部分と、(ii)前記第2電気巻回により包囲されたコア部分と、(iii)前記第1電気巻回と第2電気巻回との間のコア部分である。
【0026】
さらに好ましくは、前記導電性カバー(ECC)は、前記第1電気巻回により包囲されたコア部分を包囲し、前記第1電気巻回により誘導される表面電流の導電パスが、前記第1電気巻回の近傍の導電性カバー(ECC)の外側表面から、コア近傍の導電性カバー(ECC)の内側表面方向に提供される。
【0027】
別の構成として、前記導電性カバー(ECC)は、前記第2電気巻回により包囲されたコア部分を包囲し、前記コア内の磁気フラックスにより誘導される表面電流の導電パスが、前記コア近傍の導電性カバー(ECC)の内側表面から、前記第2導電性巻回近傍の導電性カバー(ECC)の外側表面方向に形成される。
【0028】
さらに別の構成として、前記導電性カバー(ECC)は、前記第1電気巻回により包囲されたコア部分を包囲し、第2電気巻回により包囲されたコア部分を巻回の上から包囲する。前記導電性カバー(ECC)は、前記巻回の少なくとも一部の巻回絶縁と接触して、第1電気巻回からの磁気フラックスのリークを阻止する。
【0029】
好ましくは、前記導電性カバー(ECC)は、局部接地に、直接接続、キャパシタを介した接続、低インピーダンス回路を介しての接続の内の少なくとも1つの接続を介して電気的に接続される。
【0030】
前記局部接地は、局部導電性シャーシ接地、ホスト装置のシールド、ホスト装置のハウジング、プリント回路基板接地面、導電性プレートの内の少なくとも1つを含む。
【0031】
本発明の磁気誘導装置は、変圧器、バラン、電力ディバイダ、電力スプリッタ、電力コンバイナ、共通モード(CM)チョーク、磁気誘導素子をベースにしたミキシング装置、モジュレータの内の少なくとも1つを含む。
【0032】
好ましくは、前記導電性カバー(ECC)は、コア部分に沿って、第1電気巻回と第2電気巻回との間の少なくとも1カ所で局部接地に電気的に接続される。
【0033】
前記コアは、コア内にウインドウを規定する磁気フラックスの閉パスを有する。前記ウインドウは、ヒートシンク機能を含む導電性媒体で少なくとも部分的に充填され、接地されている。
【0034】
前記第1電気巻回と第2電気巻回の少なくとも一方は、リボン・ケーブルを有し、前記リボン・ケーブル内の各ワイヤは、少なくとも1カ所で隣接するワイヤに電気的に接続されて、リボン・ケーブル内の全てのワイヤ間に導電パスを形成する。
【0035】
別の構成として、前記第1電気巻回と第2電気巻回の少なくとも一方は、絶縁された導電体を有する。前記絶縁された導電体は、導電体を堆積し、その後、前記導電体を絶縁する絶縁層を堆積する金属堆積技術により生成される。
【0036】
さらに別の構成として、前記第1電気巻回と第2電気巻回の少なくとも一方は、同軸ケーブルの内側導体を有し、本発明の磁気誘導装置は、(D)前記同軸ケーブルの外側のシールドされた導体を有する第2の導電性カバー(ECC)を更に有する。前記同軸ケーブルは、コアを包囲する導電性閉ループを形成しない。
【0037】
本発明の磁気誘導装置は、好ましくは、イーサネット(登録商標)通信で使用されるライン終端ユニット(line termination unit (LTU))に含まれる、あるいはそれに付属する。
【0038】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明の磁気誘導装置は、(A)第1リボン・ケーブルを有する第1電気巻回と、(B)第2リボン・ケーブルを有する第2電気巻回とを有する。前記第1リボン・ケーブル内の各ワイヤは、少なくとも1カ所で、隣接するワイヤに電気的に接続されて、第1リボン・ケーブル内の全てのワイヤに導電パスを形成し、前記第2リボン・ケーブル内の各ワイヤは、少なくとも1カ所で、隣接するワイヤに電気的に接続されて、第2リボン・ケーブル内の全てのワイヤに導電パスを形成する。
【0039】
さらに、本発明の一実施例によれば、本発明は、導電性カバー(electrically-conductive cover (ECC))と、前記導電性カバー(ECC)上に巻回された電気回線とを有するインダクタを提供する。この導電性カバー(ECC)は、導電性閉ループを形成せずにコアを少なくとも部分的に包囲する。
【0040】
好ましくは、この導電性カバー(ECC)は、接地されている。
【0041】
本発明の一実施例によれば、磁気誘導装置のリーク・インダクタンスを低減し、共通モード(CM)信号を除去する方法が提供される。この方法は、(A)少なくとも1個の第1電気巻回と少なくとも1個の第2電気巻回とを用意するステップと、(B)コアを、少なくとも部分的に、導電性閉ループを形成することなく、導電性カバー(ECC)で包囲するステップ(前記コアを介して、前記第1電気巻回と第2電気巻回とが磁気的に結合され)と、(C)前記導電性カバー(ECC)を、局部接地に電気的に接続するステップとを有する。
【0042】
本発明の一実施例によれば、本発明の磁気誘導装置の金属損失を低減する方法は、(A)リボン・ケーブルを用意するステップと、(B)前記リボン・ケーブル内の各ワイヤを、少なくとも1カ所で、隣接するワイヤに電気的に接続して、リボン・ケーブル内のすべてのワイヤに電気パスを形成するステップと、(C)磁気誘導装置の電気巻回を形成する為に、磁気誘導装置のコアの周囲にリボン・ケーブルをラッピングするステップとを有する。
【0043】
さらに本発明の一実施例によれば、本発明のインダクタのリークインダクタンスを低減する方法は、(A)導電性閉ループを形成せずに、コアを導電性カバー(ECC)により少なくとも部分的に包囲するステップと、(B)前記導電性カバー(ECC)上に電気巻回を巻くステップとを有する。
【実施例】
【0044】
図1Aに接地した導電性カバー(ECC)を有する変成器を有する磁気誘導装置100の概略図が示されている。この磁気誘導装置100は、本発明の一実施例により構成され、動作する。
【0045】
磁気誘導装置100は、通信用のアプリケーションを含むさまざまなアプリケーションで、変成器として用いられる。磁気誘導装置100は、以下の要素を含む。即ち、少なくとも1個の第1電気巻き線110と、少なくとも1個の第2電気巻き線120と、コア130と、導電性カバー140とを有する。このコア130を介して第1電気巻き線110と第2電気巻き線120が磁気的に結合される。図面と明細書の記載を簡単にするために、1個の第1電気巻き線110と1個の第2電気巻き線120のみが図1Aに示されている。しかし、本発明は、如何なる数の第1電気巻き線110と第2電気巻き線120を有してもよい。本発明の磁気誘導装置100は、複数個の第1電気巻き線110と/又は複数個の第2電気巻き線120とを有してもよい。
【0046】
各第1電気巻き線110と第2電気巻き線120は、絶縁されたワイヤまたは絶縁された導体を含む。この絶縁された導体は、導電体を堆積し、この導電体を絶縁する絶縁層をその後堆積する適宜の金属堆積技術を用いて生成される。この金属堆積技術は、例えば積層(多層)金属堆積を含む。
【0047】
コア130は、磁気コアまたは空気コア、あるいはそれらの組み合わせ、あるいは他の材料製である。導電性カバー(ECC)140は、例えば固体金属材料(例、銅またはアルミ)、金属製メッシュ、薄い金属堆積層、導電性ペイントの少なくとも1つで形成される。
【0048】
本発明の一実施例によれば、導電性カバー140は、局部接地150に電気的に接続され、コア130を少なくとも部分的に包囲するが、導電性閉鎖ループを形成しない。この導電性閉ループの形成を阻止するために、導電性カバー140は、軸方向にギャップ160を有する。ギャップ160は、非導電材料製あるいは接着剤を含む。ギャップ160を具備した導電性カバー140のレイアウトの断面図を図1Bに示す。図1Bは、磁気誘導装置100の断面図である。
【0049】
導電性カバー140は、局部接地150に、次の接続形態の少なくとも1を介して電気的に接続される。即ち、直接接続、キャパシタを介しての接続、低インピーダンス回路を介しての接続。
【0050】
図1Bに示すように、導電性カバー140は、部分160にオーバーラップ部分162で重なり、コア130を完全に包囲することもできる。ギャップ160は、部分162と部分164の間に配置される。
【0051】
第1電気巻き線110と第2電気巻き線120をコアに沿って配置することにより、コア130の4種類の断面ができる。すなわち、第1電気巻き線110により包囲されるコア部分170と、第2電気巻き線120により包囲されるコア部分180と、第1電気巻き線110または第2電気巻き線120により包囲されないコア部分190、200である。このコア部分190、200は、第1電気巻き線110と第2電気巻き線120の間に配置される。
【0052】
導電性カバー140は、少なくとも部分的に次のコア部分を包囲する。即ち、コア部分170、180、190である。導電性カバー140は、局部接地150に、コア部分190に沿ったある場所で電気的に接続される。導電性カバー140は、コア部分200を完全に包囲する必要はない。導電性カバー140は、別の構成として、コア部分190の代わりに、コア部分200を少なくとも部分的に包囲して、同様な結果(効果)を得てもよい。このような条件の下では、導電性カバー140は、局部接地150にコア部分200に沿った所定の場所で電気的に接続される。
【0053】
導電性カバー140は、コア部分170、180を、第1電気巻き線110、120の下からあるいは上から、少なくとも部分的に包囲することができる。別の構成として、導電性カバー140は、第1電気巻き線110の下からコア部分170を、第2電気巻き線120の上からコア部分180を少なくとも部分的に包囲することもできる。あるいは第1電気巻き線110の上からコア部分170を、第2電気巻き線120の下からコア部分180を部分的に包囲することもできる。
【0054】
導電性カバー140が少なくとも部分的に第1電気巻き線110の下のコア部分170を包囲する場合には、導電性カバー140により、第1電気巻き線110により誘導される表面電流の導電パスが、第1電気巻き線110近傍の導電性カバー140の外側表面から、コア130近傍の導電性カバー140の内側表面に向けて形成される。この場合の磁気誘導装置100の断面における導電性カバー140表面の電流パスを図2に示す。
【0055】
図2において、番号201は、第1電気巻き線110内を、例えば時計方向に流れる電流を示す。この電流201は電流210を誘導する。この電流210は、導電性カバー140の外側表面では反時計方向に、その後、コア130近傍の導電性カバー140の内側表面では時計方向に進む。電流210は、ギャップ160に沿って、導電性カバー140の内側表面を進み、導電性カバー140の内側表面に沿って流れる電流220を生成する。電流220は、導電性カバー140の外側表面に、ギャップ160に沿って戻る。
【0056】
第1電気巻き線110下の導電性カバー140の内側表面上を流れる電流220は、コア130内に磁気フラックスを生成する。この磁気フラックスは、コア130に沿って進み、導電性カバー140の内側表面に表面電流を生成する。
【0057】
図1Aに戻ると、導電性カバー140が、第2電気巻き線120の下のコア部分180を少なくとも部分的に包囲する場合は、導電性カバー140により、コア130内の磁気フラックスにより誘導される表面電流の導電パスが、コア130近傍の導電性カバー140の内側表面から、第2電気巻き線120近傍の導電性カバー140の外側表面に向けて形成される。
【0058】
導電性カバー140がコア部分170、180を巻回の上から少なくとも部分的に包囲する場合は、導電性カバー140を、第1電気巻き線110と第2電気巻き戦120の少なくとも一部の巻回絶縁と接触して搭載し、第1電気巻き線110と第2電気巻き線120から放射される磁気フラックスのリークを阻止するのが好ましい。この場合を図3に示す。
【0059】
局部接地150は、好ましくは少なくとも次のものの1つを含む。局部導電性シャーシ接地、ホスト装置のシールド、ホスト装置のハウジング、大規模プリント回路接地面、大規模導電性プレート。
【0060】
第1電気巻き線110と第2電気巻き線120の少なくとも一方が、リボン・ケーブルを含むこともできる。このリボン・ケーブルの製造は、通常丸い絶縁されたワイヤが並んで配置しこれらを接着プロセスで一体に束ね、フレキシブルなリボンケーブルを構成する。この場合、リボン・ケーブルの各ワイヤは、ある場所でリボン・ケーブル内の隣接するワイヤに電気的に接続され、リボン・ケーブル内のすべてのワイヤを通る導電パスを生成する。MID巻回は、コア130の一部をこのようなリボン・ケーブルでラッピングすることにより形成してもよい。磁気誘導装置100は、第1リボン・ケーブルを導電性カバー140の第1部分上に、第2リボン・ケーブルを導電性カバー140の第2部分上にラッピングすることにより形成される。第1リボン・ケーブル内の各ワイヤは少なくともある場所で隣接するワイヤに電気的に接続される。第2リボン・ケーブル内の各ワイヤは少なくともある場所で隣接するワイヤに電気的に接続される。かくして、第1リボン・ケーブルは第1電気巻き線110を有し、第2リボン・ケーブルは第2電気巻き線120を有する。
【0061】
図4を参照すると、磁気誘導装置300は、一方の電気巻回が他方の電気巻回の上に配置され、接地されたECCを有する変成器を有する。磁気誘導装置300は、本発明の一実施例に従って構成され、動作する。
【0062】
磁気誘導装置300は、さまざまなアプリケーション例えば通信のアプリケーションで変成器として使用される。磁気誘導装置300が図1Aの磁気誘導装置100と異なる点は、電気巻線が重ねて配置される点である。図4の磁気誘導装置300においては、第1電気巻き線310は、コア320の一部を包囲し、導電性カバー330は、導電性閉ループを形成することなく、第1電気巻き線310を包囲する。第2電気巻き線340は、導電性カバー330の上に巻回(配置)される。第1電気巻き線310と第2電気巻き線340の役目が代わって、第1電気巻き線310は、導電性カバー330の内側にあり、第2の電気巻線として使用され、第2電気巻き線340は、導電性カバー330の外側にあり、第1の電気巻線として使用される。
【0063】
第1電気巻き線310と第2電気巻き線340のそれぞれは、絶縁されたワイヤあるいは絶縁された導電体を有する。これは、図1Aの磁気誘導装置100の第1電気巻き線110と第2電気巻き線120と同様である。
【0064】
導電性カバー330は、局部接地350に電気的に接続されるが、これは、図1Aの導電性カバー140を図1Aの局部接地150に電気的に接続するのに用いられた接続形態の1つに類似する接続形態で行われる。局部接地350は、図1Aの局部接地150に類似する。
【0065】
図5Aを参照すると、本発明の磁気誘導装置400の他の実施例は、接地された導電性カバー(ECC)を有する変成器とこの導電性カバー(ECC)の上で巻回と接地場所との間に追加されたスリーブとを有する。磁気誘導装置400は、本発明の一実施例により構成され、動作する。磁気誘導装置400はまた、例えば通信のアプリケーションのようなさまざまなアプリケーションで変成器として使用される。
【0066】
磁気誘導装置400は、以下の構成部品を含む。即ち、少なくとも1個の第1電気巻き線410と、少なくとも1個の第2電気巻き線420と、コア430と、導電性カバー440と、スリーブ450、451とを含む。コア430により第1電気巻き線410と第2電気巻き線420とは磁気的に結合される。第1電気巻き線410と第2電気巻き線420の少なくとも一方は、絶縁されたワイヤあるいは絶縁された導電体を有する。これは、図1Aの電気巻き線110、120で述べた通りである。導電性カバー440は、金属製材料、例えば銅またはアルミで製造される。
【0067】
図面と明細書の記載を簡単にするために、1個の第1電気巻き線410と1個の第2電気巻き線420のみが図5Aに示されている。しかし、本発明は如何なる数の第1電気巻き線410と第2電気巻き線420を有することも可能である。本発明の磁気誘導装置400は、複数個の第1電気巻き線410と/又は複数個の第2電気巻き線420とを有してもよい。
【0068】
本発明の一実施例によれば、導電性カバー440は、局部接地460に電気的に接続され、第1電気巻き線410と第2電気巻き線420の下のコア430を少なくとも部分的に包囲する。この際、導電性閉ループが形成されないようにする。この導電性閉ループが形成されるのを阻止するために、導電性カバー440は、軸方向にギャップ470を有する。
【0069】
導電性カバー440は、局部接地460に導電性手段を介して電気的に接続される。この導電性手段の一例は、導電性はんだ材料、導電性溶接材料、導電性接着材料あるいは図1Aの導電性カバー140を局部接地150に電気的に接続するのに用いられる接続手段に類似する手段の内の1つである。
【0070】
局部接地460は、図1Aの局部接地150に類似する。
【0071】
スリーブ450、451は、例えばフェライト製のスリーブである。スリーブ450、451は、導電性カバー(ECC)の部分454、455のそれぞれのインピーダンスを増加させるために付加される。導電性カバー(ECC)の部分454は、導電性カバー440の第1電気巻き線410と接地位置482の間にある。導電性カバー(ECC)の部分455は、導電性カバー440の第2電気巻き線420とロケーション483の間にある。
【0072】
ECC部分455のインピーダンスをスリーブ451で増加させることにより、高周波帯域における共通モード信号を更に除去できる。この理由は、第1電気巻き線410により誘導される共通モード電流は、接地位置482の場所で低インピーダンスの局部接地460に入り、高インピーダンスのECC部分455には流れないからである。同様に、ECC部分454のインピーダンスをスリーブ450で増加させることにより、高周波帯域における共通モード信号を更に除去できる。この理由は、第2電気巻き線420により誘導される共通モード電流は、ロケーション483の場所で低インピーダンスの局部接地460に入り、高インピーダンスのECC部分454には流れないからである。CM除去性能に対するECC部分454、455のインピーダンスの影響/効果を図6に示す。
【0073】
図5Bには、図5Aの磁気誘導装置400の共通モード除去の評価に採用される等価回路の例を示す。
【0074】
図5Bにおいて、C1は、第1電気巻き線410とその下の導電性カバー440の一部との間のキャパシタンスである。C2は、第2電気巻き線420とその下の導電性カバー440の一部との間のキャパシタンスである。L1は、ECC部分454のインダクタンスであり、L2は、ECC部分455のインダクタンスであり、L3は、導電性カバー440を局部接地460に接地する接地電極(図示せず)またはボンドのインダクタンスである。ECC部分454、455のインピーダンスは、ある種の理想的な(エネルギー散逸型)の構成要素であり、特にスリーブ450、451がフェライト・スリーブを含む場合にはそうである。以下の議論は、エネルギー散逸型の構成要素は無視する仮定のもとで行う。
【0075】
図5Bの等価回路を有する図5Aの磁気誘導装置400の共通モード除去性能を図6に示す。これは、L1、L2、L3がさまざまな周波数でさまざまなインピーダンスの値を採る場合の共通モード(CM)信号の排除の観点から見たものである。図6のグラフは、L1=L2として、L1とL3の間とL2とL3の間の比率の相対単位で示す。高周波領域(キャパシタンスC1、C2のインピーダンスは、L1、L2のインピーダンスよりも遙かに小さい)におけるCM信号除去は、L1とL3(即ち、L2とL3)の間の比率を増加させることで、大幅に向上する。
【0076】
図7A、7Bを参照すると、磁気誘導装置500は、接地されたECCを採用し、導電性媒体で少なくとも部分的に充填されたコア・ウインドウを有する変成器を含む。磁気誘導装置500は、本発明により構成され、動作する。磁気誘導装置500は、例えばさまざまな応用、例えば通信のアプリケーションにおける変成器として使用される。
【0077】
図7Aにおいて、磁気誘導装置500は、プリント回路基板510に搭載される。磁気誘導装置500において、第1電気巻き線520と第2電気巻き線530は、共通トロイダル・コア540に、導電性カバー560の内側部分および外側部分に形成されたホール550を通して巻回される(図7B)。第1電気巻き線520と第2電気巻き線530は、共通トロイダル・コア540で磁気的に結合される。第1電気巻き線520と第2電気巻き線530のそれぞれは、絶縁されたワイヤまたは導体を有する。これは、図1Aの磁気誘導装置100の第1電気巻き線110と第2電気巻き線120に説明した通りである。
【0078】
第1電気巻き線520と第2電気巻き線530と共通トロイダル・コア540は、金属製カプセルの下部部分570に搭載される。この金属製カプセルは、導電性カバー560の一部として使用される。導電性カバー560の下部部分570は、プリント回路基板510上の接地パッド580と電気的に接触している。かくして、導電性カバー560は、接地パッド580を介して接地される。導電性カバー560は、上部部分590を有する。この上部部分590は、上から共通トロイダル・コア540をカバーする。この導電性カバー560は、さらなるカバー(図示せず)とレイヤー(図示せず)を含む。このカバーは、第1電気巻き線520と第2電気巻き線530を上からカバーする。このレイヤー(図示せず)は、第1電気巻き線520と第2電気巻き線530のそれぞれとプリント回路基板510との間に配置される。導電性カバー560は、銅またはアルミのような金属製である。
【0079】
ギャップ600は、上部部分590と下部部分570の間に形成され、共通トロイダル・コア540周囲での導電性閉ループの形成を阻止する。ギャップ600は、導電性カバー560の内側に配置され、ギャップ600からの磁気フラックスのリークを抑える。
【0080】
共通トロイダル・コア540は、その中にウインドウ610を規定する磁気フラックス用の閉鎖パスを含む。ウインドウ610は、共通トロイダル・コア540のホール(孔)を含む。本発明の一実施例によれば、ウインドウ610は、導電性媒体で少なくとも一部充填される。この導電性媒体は、導電性カバー560とヒート・シンクの一部を含み、接地パッド580を介して接地(図示せず)される。導電性媒体は、例えば銅またはアルミ製である。
【0081】
図8Aを参照すると、磁気誘導装置700は、接地されたECCを用いる変成器と同軸ケーブルのワイヤを有する。磁気誘導装置700は、本発明により構成され、動作する。図8Bは、図8Aの磁気誘導装置700の断面を示す。磁気誘導装置700は、通信のアプリケーションを含むさまざまなアプリケーションで、変成器として使用される。
【0082】
磁気誘導装置700において、第1電気巻き線710と第2電気巻き線720の少なくとも一方の少なくとも一部は、同軸ケーブルの内側導体を含む。説明を簡単にするために、第1電気巻き線710と第2電気巻き線720が、同軸ケーブルの内側導体を含む状態で、図8Aに示す。磁気コア730を介して、第1電気巻き線710と第2電気巻き線720は磁気的に結合される。この磁気コア730は、線形開放コアとして示す。
【0083】
導電性カバー740は、第1電気巻き線710と第2電気巻き線720下の磁気コア730を、磁気コア730を包囲する導電性閉ループを形成しないように、少なくとも部分的に包囲する。
【0084】
本発明の一実施例によれば、追加の導電性カバー750、751が、磁気誘導装置700内で使用される。導電性カバー750、751は、同軸ケーブルの一部の外側シールド導体760を含む。同軸ケーブルの一部は、2つの隣接する同軸ケーブル部分の間にギャップ770を含むよう配置される(図8B)。このギャップ770が、磁気コア730の回りに導電性閉ループの形成を阻止する。図8Bによれば、ギャップ780が導電性カバー740内にもある。ギャップ780は、磁気コア730の周囲に導電性閉ループの形成を阻止する。
【0085】
同軸ケーブルの外側シールド導体760は、導電接続790、800を有する。導電接続790は、同軸ケーブルの隣接する部分の外側シールド導体760の隣接する部分の間に形成される。導電接続800は、外側シールド導体760と導電性カバー740の間で、ギャップ770近傍に形成される。導電性カバー740は、局部接地810に導電接続手段(図示せず)を介して接続される。
【0086】
図1A−3の各磁気誘導装置100と、図4の磁気誘導装置300と、図5Aの磁気誘導装置400と、図7A、7Bの磁気誘導装置500と、図8A、8Bの磁気誘導装置700は、少なくとも以下の装置の1つを含む、或いは含まれる。即ち、変成器、バルン、電力ディバイダ、電力スプリッタ、電力結合器、共通モード(CM)チョーク、磁気誘導コンポーネントによるミキシング部品、モジュレータ。
【0087】
モジュレータは、磁気誘導コンポーネントに基づくモジュレータを含んでもよい。
【0088】
ミキシング装置は、平衡ミキシング装置およびダブル平衡ミキシング装置を含んでもよい。ミキシング装置は、例えば、RF受信器において、無線周波数(RF)帯域とマイクロウェーブ帯域で使用することもできる。ミキシング装置の動作とアプリケーションの議論は、非特許文献7と非特許文献8に記載されている。
【0089】
磁気誘導装置100、300、400、500、700のいずれかが変成器を有する場合には、このような磁気誘導装置(MID)は、例えばイーサネット(登録商標)通信システム(図示せず)のライン終端ユニット(line termination unit (LTU))に含まれる。ライン終端ユニット(LTU)は、LAN磁気装置と一体に組み込まれるRJ45コネクタ(図示せず)を含む。RJ45コネクタは、通常LANあるいはパーソナル・エリア・ネットワーク(Personal Area Network (PAN))で使用される。このような場合、この磁気誘導装置(MID)は、RJ45コネクタに含まれるあるいはそれに関連づけて配置され、複数の従来の変成器、自動変成器、CMチョークを置換することができ、この置換は、CM信号の除去に優れた性能の為に行われる。各磁気誘導装置100、300、400、500、700は、ライン終端ユニット(LTU)内の磁気構成要素の複雑さを低減する。高周波アプリケーション用のライン終端ユニット(LTU)の磁気構成要素の複雑さを低減する一例を、図9A、9Bに示す。
【0090】
従来の磁気誘導装置(MID)と比較すると、本発明の磁気誘導装置100、300、400、500、700は、リーク・インダクタンスの制御と共通モード電流除去の向上の両方を1個の素子ベースで改善できる。各磁気誘導装置100、300、400、500、700において、それぞれ接地された導電性カバー(ECC)は、以下の二重機能を有する。(a)特定の容積内に磁気フラックスを閉じこめる。かくしてリーク・インダクタンスは、比較的高い周波数まで抑えることができ、1次巻き線と2次巻き線との間の電磁気結合は、1次巻き線と2次巻き線を近くに配置するあるいは相互に配置すること無しに、向上できる。(b)共通モード電流除去を向上できる。
【0091】
図9A、9Bを参照する。図9Aは、100/1000BaseTイーサネット(登録商標)・インターフェース回路でパワー・オーバー・イーサネット(登録商標)(Power-over-Ethernet(登録商標) (POE))もサポートする従来技術の磁気モジュールの電気回路図900を示す。図9Bは、本発明の一実施例により接地した導電性カバー(ECC)を採用した変成器を有する磁気誘導装置(MID)の本発明の一実施例による電気回路1000を表す。
【0092】
POEは、毎秒100メガビット、毎秒1ギガ(Gbit/sec)以上のデータ・レートでのイーサネット(登録商標)通信用に現在考えられるアプリケーションである。図9Aの回路900は、3個の磁気誘導装置(MID)を示す。この磁気誘導装置(MID)は、ライン・トランス910と、CMチョーク920と、オート・トランス930を有する。ライン・トランス910は、数十MHz以上の周波数でCMの除去が比較的少ない。CMチョーク920は、数十MHz以上の周波数でCM除去を増加させる。オート・トランス930は、直流電流(DC)注入用のセンタ・タップである。オート・トランス930は、CMチョーク920の巻回を通してDC電流が流れるのを阻止する。かくして、CMチョーク920の飽和を阻止する。ライン・トランス910のコアとCMチョーク920のコアとオート・トランス930のコアは、それぞれコア940、950、960で示される。オート・トランス930の共通モード信号の端子は、抵抗970とキャパシタ980を介して、局部接地990に接地される。これは、R−C終端ネットワークの基準電位となる。
【0093】
本発明の一実施例によれば、図9Bの回路1000は、1個の磁気誘導装置(MID)を有する。この磁気誘導装置(MID)は、第1電気巻き線1010と、第2電気巻き線1020と、磁気コア1030と、導電性カバー1040とを有する。この導電性カバー1040は、局部接地1060に電気接続1050を介して電気的に接続される。回路1000は、局部接地1070に共通モード終端用の抵抗1080とキャパシタ1090を介して接続される。局部接地1070に共通モード終端用の抵抗1080とキャパシタ1090を介して接続することは、図9Aの回路900において、局部接地990に抵抗970とキャパシタ980を介して接続するのと目的は同じである。
【0094】
回路1000は、2個の局部接地接続を有する。その一方の接続は、共通モード終端の目的を有する局部接地1070への接続であり、他方は、共通モード除去を向上させる目的を有する別の局部接地1060への接続である。ある実際のアプリケーションにおいては、局部接地1060と局部接地1070は、物理的に同一の局部接地を有してもよい。
【0095】
本発明の回路1000は、CM信号除去機能を強化している、これは、導電性カバー1040とこの導電性カバー1040を局部接地1060に接続することに起因する。それ故に、本発明の回路1000の1個の磁気誘導装置(MID)は、LAN用特にPOE磁気アプリケーション用の回路900の3個の磁気誘導装置(MID)を全て置換できる。本発明により接地されたECCを採用する1個の磁気誘導装置(MID)は、100MHzまでの周波数では60dB以上のCM信号除去ができ、1000MHz(1GHz)までの周波数では30dB以上のCM信号除去ができる。市販されている3個の磁気誘導装置(MID)を含む磁気誘導装置(MID)を図9Aに示す。これは、100MHzまでの周波数では40dBのCM信号除去、1GHzまでの周波数では最大20dBのCMの信号除去しかできない。本発明による接地された導電性カバー(ECC)を採用する1個の磁気誘導装置(MID)は、構成が簡単で且つ製造コストが安く、さらに良好な平衡を達成できる。その結果、現在市販されている磁気誘導装置(MID)に比較し、良好な共通モード(CM)−差動モード(DM)を向上させることができる。
【0096】
従来回路900と本発明回路1000との間の共通モード(CM)信号除去性能の大きな違いは、磁気誘導装置(MID)の単なる接地だけでは、良好な共通モード(CM)信号除去性能を得るためには十分ではないということの発見に基づく。磁気誘導装置(MID)の共通モード(CM)信号除去性能の大幅な改善は、磁気誘導装置(MID)内の導電性カバー(ECC)を精巧に具体化し、この導電性カバー(ECC)を局部接地に電気的に接続することである。これは、図1A、1B、3−5B、7A−8Bに示した通りである。
【0097】
図10を参照すると、磁気誘導装置(MID)は、接地された導電性カバー(ECC)を採用するインダクタ1100を有する。この磁気誘導装置(MID)は、本発明の一実施例により構成され、動作する。
【0098】
インダクタ1100は、以下の構成要素を有する。電気巻き線1110と、磁気コア1120のようなコアと、導電性カバー(ECC)1130である。導電性カバー1130は、導電性閉ループを形成せずに、少なくとも部分的に磁気コア1120を包囲する。電気巻き線1110は、導電性カバー1130上に巻回される。電気巻き線1110は、絶縁されたワイヤあるいは導体を有する。これは、図1Aの磁気誘導装置100の電気巻き線110、120で説明した通りである。
【0099】
ある種の実際的なアプリケーションにおいては、導電性カバー1130は、接地から切り離した状態の浮遊状態に維持し、磁気コア1120と電気巻き線1110からの磁気フラックスのリークを阻止する。
【0100】
別の構成として、導電性カバー1130は、局部接地1140に電気的に接続して、さらなる電気シールドを提供する。局部接地1140への接続は、図1Aの導電性カバー(ECC)140を局部接地150に電気的に接続するために用いられる接続形態の1つに類似した接続形態で行われる。局部接地1140は、図1Aの局部接地150に類似する。
【0101】
図1A−3の導電性カバー140、図4の導電性カバー330、図5Aの導電性カバー440、図7A、7Bの導電性カバー560、図8Aの導電性カバー740、750、図9Bの導電性カバー1040、図10の導電性カバー1130は、適宜の方法により実現できる。この適宜の方法は、導電性メッシュ、導電性ペイントあるいは他の導電性堆積の層、導電性の面等である。別の構成として、さらにそれに付加するものとして、導電性カバー(ECC)140、330、440、560、740、750、1040、1130は、複数の金属層を、堆積あるいは電気化学的に形成することにより、それぞれの電気巻線で実現できる。
【0102】
図11は、図1、3−5A、7A−8Bの磁気誘導装置(MID)の構成(製造)する方法を示すフローチャートである。
【0103】
図11の方法は、磁気誘導装置のリーク・インダクタンスの低減と共通モード(CM)信号除去の向上のために使用される。図11Aの方法は、少なくとも1個の第1電線巻回と少なくとも1個の第2電線巻回とを用意するステップ(1200)と、コアを導電性カバー(ECC)で、導電性閉ループを形成せずに、少なくとも部分的に包囲するステップ(1210)と、導電性カバー(ECC)を局部接地に電気的に接続するステップ(1220)とを含む。このコアを介して、少なくとも1個の第1電線巻回と少なくとも1個の第2電線巻回とが磁気的に結合される
【0104】
次に図12を参照する。
【0105】
図12の方法は、リボン・ケーブルを用意するステップ(1300)と、リボン・ケーブル内の各ワイヤを、少なくとも1つのスポットで、隣接するワイヤに電気的に接続し、リボン・ケーブル内の全てのワイヤに導電パスを生成するステップ(1310)と、磁気誘導装置(MID)のコアの周囲に前記リボン・ケーブルをラップして、磁気誘導装置(MID)の電気ワイヤ巻回を生成するステップ(1320)とを含む
【0106】
図13は、図10のインダクタを接続する方法を表すフローチャート図。
【0107】
図13の方法は、インダクタ1100のリーク・インダクタンスを低減するために用いられる。図13の方法は、コアを、導電性閉ループを形成せずに、導電性カバー(ECC)により、少なくとも部分的に包囲するステップ(1400)と、導電性カバー(ECC)に電気ワイヤを巻回するステップ(1410)とを含む。
【0108】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1A】接地された導電性カバー(ECC)を採用した変成器を有する本発明の一実施例の磁気誘導装置(MID)を表す図。
【図1B】図1Aの磁気誘導装置(MID)の断面図。
【図2】図1Aの磁気誘導装置(MID)の断面における導電性カバー(ECC)の表面上の電流パスを表す図。
【図3】接地された導電性カバー(ECC)を採用した変成器を有する本発明の他の実施例の磁気誘導装置(MID)を表す図。
【図4】接地された導電性カバー(ECC)を採用した変成器を有する本発明のさらに別の実施例の磁気誘導装置(MID)を表す図。
【図5A】接地された導電性カバー(ECC)を有する変成器と、この導電性カバー(ECC)の上に巻回と接地場所との間にスリーブとを有する本発明の一実施例の磁気誘導装置(MID)を表す図。
【図5B】図5Aの磁気誘導装置(MID)の共通電流の除去の評価に適用可能な等価回路を表す図。
【図6】導電性カバー(ECC)インダクタンスと接地ボンドのインダクタンスの間のさまざまな比率における、図5Aの磁気誘導装置(MID)の共通モード(CM)電流除去性能を表すグラフ。
【図7A】接地された導電性カバー(ECC)を採用する変性器と、導電媒体で少なくとも部分的に充填したコア・ウインドウとを有する本発明の磁気誘導装置(MID)の他の実施例の断面図。
【図7B】図7Aの磁気誘導装置(MID)の上面図。
【図8A】接地された導電性カバー(ECC)を有する変成器と同軸ケーブル・ワイヤリングを有する本発明のさらに別の実施例の磁気誘導装置(MID)を表す図。
【図8B】図8Aの磁気誘導装置(MID)の断面図。
【図9A】100/1000BaseTイーサネット(登録商標)・インターフェース回路でパワー・オーバー・イーサネット(登録商標)(Power-over-Ethernet(登録商標) (POE))をサポートする従来技術の磁気モジュールの電気回路図。
【図9B】本発明の一実施例により接地した導電性カバー(ECC)を採用した変成器を有する磁気誘導装置(MID)の本発明の一実施例による電気回路を表す。
【図10】接地された導電性カバー(ECC)を採用したインダクタを有する本発明の他の実施例の磁気誘導装置(MID)を表す図。
【図11】図1、3−5A、7A−8Bの磁気誘導装置(MID)の製造方法を表すフローチャート図。
【図12】金属損失を減らし、リボン・ケーブルを有する磁気誘導装置(MID)を製造する方法を表すフローチャート図。
【図13】図10のインダクタを接続する方法を表すフローチャート図。
【符号の説明】
【0110】
100 磁気誘導装置(MID)
110 第1電気巻き線
120 第2電気巻き線
130 コア
140 導電性カバー(ECC)
150 局部接地
160 部分
162 オーバーラップ部分
164 部分
170 コア部分
180 コア部分
190 コア部分
200 コア部分
201 電流
210 電流
220 電流
300 磁気誘導装置(MID)
310 第1電気巻き線
320 コア
330 導電性カバー(ECC)
340 第2電気巻き線
350 局部接地
400 磁気誘導装置(MID)
410 第1電気巻き線
420 第2電気巻き線
430 コア
440 導電性カバー(ECC)
450,451 スリーブ
454 ECC部分
455 ECC部分
460 局部接地
460 低インピーダンス接地
470 ギャップ
482 接地位置
483 ロケーション
500 磁気誘導装置(MID)
510 プリント回路基板(PCB)
520 第1電気巻き線
530 第2電気巻き線
540 共通トロイダル・コア
550 ホール
560 導電性カバー(ECC)
570 下部部分
580 接地パッド
590 上部部分
600 ギャップ
610 ウインドウ
700 磁気誘導装置(MID)
710 第1電気巻き線
720 第2電気巻き線
730 磁気コア
740,750,751 導電性カバー(ECC)
760 外側シールド導体
770,780 ギャップ
790 導電接続
800 導電接続
810 局部接地
100,200,300,400,500,700 磁気誘導装置(MID)
900 回路
910 ライン・トランス
920 CMチョーク
930 オート・トランス
940,950,960 コア
970 抵抗
980 キャパシタ
990 局部接地
1000 回路
1010 第1電気巻き線
1020 第2電気巻き線
1030 磁気コア
1040 導電性カバー(ECC)
1050 電気接続
1060,1070 局部接地
1080 共通モード終端抵抗
1090 キャパシタ
1100 インダクタ
1110 電気巻き線
1120 磁気コア
1130 導電性カバー(ECC)
1140 局部接地
140,330,440,560,740,750,1040,1130 導電性カバー(ECC)
1200:少なくとも1個の第1電線巻回と少なくとも1個の第2電線巻回とを用意する
1210:コアを導電性カバー(ECC)で、導電性閉ループを形成せずに、少なくとも 部分的に包囲する。このコアを介して、少なくとも1個の第1電線巻回と少な くとも1個の第2電線巻回とが磁気的に結合される
1220:導電性カバー(ECC)を局部接地に電気的に接続する
1300:リボン・ケーブルを用意する
1310:リボン・ケーブル内の各ワイヤを、少なくとも一カ所で、隣接するワイヤに電 気的に接続し、リボン・ケーブル内の全てのワイヤに導電パスを生成する
1320:磁気誘導装置(MID)のコアの周囲に前記リボン・ケーブルをラップして、 MIDの電気ワイヤ巻回を生成する
1400:コアを、導電性閉ループを形成せずに、導電性カバー(ECC)で、少なくと も部分的に包囲する
1410:導電性カバー(ECC)に電気ワイヤを巻回する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 少なくとも1個の第1電気巻回と、
(B) 少なくとも1個の第2電気巻回と、
(C) 導電性閉ループを形成せずに、コアを少なくとも部分的に包囲する導電性カバー(ECC)と
を有し、
前記コアを介して、前記第1電気巻回と第2電気巻回とが磁気的に接続される
ことを特徴とする磁気誘導装置。
【請求項2】
前記導電性カバー(ECC)は、以下のコア部分を少なくとも部分的に包囲する
(i)前記第1電気巻回により包囲されたコア部分と、
(ii)前記第2電気巻回により包囲されたコア部分と、
(iii)前記第1電気巻回と第2電気巻回との間のコア部分
ことを特徴とする請求項1記載の磁気誘導装置。
【請求項3】
前記導電性カバー(ECC)は、前記第1電気巻回により包囲されたコア部分を包囲し、
前記第1電気巻回により誘導される表面電流の導電性パスが、前記第1電気巻回の近傍の導電性カバー(ECC)の外側表面から、コア近傍の導電性カバー(ECC)の内側表面方向に提供される
ことを特徴とする請求項2記載の磁気誘導装置。
【請求項4】
前記導電性カバー(ECC)は、前記第2電気巻回により包囲されたコア部分を包囲し、
前記コア内の磁気フラックスにより誘導される表面電流の導電性パスが、前記コア近傍の導電性カバー(ECC)の内側表面から、前記第2導電性巻回近傍の導電性カバー(ECC)の外側表面方向に提供される
ことを特徴とする請求項2記載の磁気誘導装置。
【請求項5】
前記導電性カバー(ECC)は、前記第1電気巻回により包囲されたコア部分を包囲し、第2電気巻回により包囲されたコア部分を巻回の上から包囲し、
前記導電性カバー(ECC)は、前記巻回の少なくとも一部の巻回絶縁と接触して、第1電気巻回からの磁気フラックスのリークを阻止する
ことを特徴とする請求項2記載の磁気誘導装置。
【請求項6】
前記導電性カバー(ECC)は、局部接地に、直接接続、キャパシタを介した接続、低インピーダンス回路を介しての接続の内の少なくとも1つの接続を介して電気的に接続される
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の磁気誘導装置。
【請求項7】
前記局部接地は、局部導電性シャーシ接地、ホスト装置のシールド、ホスト装置のハウジング、プリント回路基板接地面、導電性プレートの内の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1−6のいずれかに記載の磁気誘導装置。
【請求項8】
変圧器、バラン、電力ディバイダ、電力スプリッタ、電力コンバイナ、共通モード(CM)チョーク、磁気誘導素子をベースにしたミキシング装置、モジュレータの内の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載の磁気誘導装置。
【請求項9】
前記導電性カバー(ECC)は、コア部分に沿って、少なくとも1カ所で局部接地に電気的に接続され、
前記1カ所は、第1電気巻回と第2電気巻回との間にある
ことを特徴とする請求項1−8のいずれかに記載の磁気誘導装置。
【請求項10】
前記コアは、コア内にウインドウを規定する磁気フラックスの閉パスを有し、
前記ウインドウは、ヒートシンク機能を含む導電性媒体で少なくとも部分的に充填され、接地されている
ことを特徴とする請求項1−9のいずれかに記載の磁気誘導装置。
【請求項11】
前記第1電気巻回と第2電気巻回の少なくとも一方は、リボン・ケーブルを有し、
前記リボン・ケーブル内の各ワイヤは、少なくとも1カ所で隣接するワイヤに電気的に接続されて、リボン・ケーブル内の全てのワイヤに導電性パスを形成する
ことを特徴とする請求項1−10のいずれかに記載の磁気誘導装置。
【請求項12】
前記第1電気巻回と第2電気巻回の少なくとも一方は、絶縁された導電体を有し、
前記絶縁された導電体は、導電体を堆積し、その後、前記導電体を絶縁する絶縁層を堆積する金属堆積技術により生成される
ことを特徴とする請求項1−11のいずれかに記載の磁気誘導装置。
【請求項13】
前記第1電気巻回と第2電気巻回の少なくとも一方は、同軸ケーブルの内側導体を有し、
(D) 前記同軸ケーブルの外側のシールドされた導体を有する第2の導電性カバー(ECC)
を更に有し、
前記同軸ケーブルは、コアを包囲する導電性閉ループを形成しないよう配置される
ことを特徴とする磁気誘導装置。
【請求項14】
(A) 第1リボン・ケーブルを有する第1電気巻回と、
(B) 第2リボン・ケーブルを有する第2電気巻回と、
を有し、
前記第1リボン・ケーブル内の各ワイヤは、少なくとも1カ所で、隣接するワイヤに電気的に接続されて、第1リボン・ケーブル内の全てのワイヤに導電性パスを形成し
前記第2リボン・ケーブル内の各ワイヤは、少なくとも1カ所で、隣接するワイヤに電気的に接続されて、第2リボン・ケーブル内の全てのワイヤに導電性パスを形成することを特徴とする磁気誘導装置。
【請求項15】
イーサネット(登録商標)通信に使用され、請求項1−12、14のいずれかに記載の磁気誘導装置を有する
ことを特徴とるライン終端ユニット(LTU)。
【請求項16】
導電性閉ループを形成せずに、コアを少なくとも部分的に包囲する導電性カバー(ECC)と、
前記導電性カバー(ECC)に巻回される電気巻き線と
を有する
ことを特徴とするインダクタ装置。
【請求項17】
前記導電性カバー(ECC)は接地されている
ことを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項18】
磁気誘導装置の共通モード(CM)信号を除去する方法において、
(A) 少なくとも1個の第1電気巻回と少なくとも1個の第2電気巻回とを用意するステップと、
(B) コアを、導電性閉ループを形成することなく、導電性カバー(ECC)で少なくとも部分的に包囲するステップと、
前記コアを介して、前記第1電気巻回と第2電気巻回とが磁気的に結合され、
(C) 前記導電性カバー(ECC)を、局部接地に電気的に接続するステップと
を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
磁気誘導装置の金属損失を低減する方法において、
(A) リボン・ケーブルを用意するステップと、
(B) 前記リボン・ケーブル内の各ワイヤを、少なくとも1カ所で、隣接するワイヤに電気的に接続して、リボン・ケーブル内のすべてのワイヤに電気パスを形成するステップと、
(C) 磁気誘導装置の電気巻回を形成する為に、磁気誘導装置のコアの周囲にリボン・ケーブルをラッピングするステップと
を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
インダクタのリークインダクタンスを低減する方法において、
(A) 導電性閉ループを形成せずに、コアを導電性カバー(ECC)で、少なくとも部分的に包囲するステップと、
(B) 前記導電性カバー(ECC)上に電気巻回を巻くステップと
を有する
ことを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−523606(P2008−523606A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545111(P2007−545111)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001343
【国際公開番号】WO2006/064499
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507335344)アドバンスド マグネティック ソリューションズ リミティド (1)
【Fターム(参考)】