説明

磁界センサ

磁界センサは、表面が少なくとも部分的に湾曲されている磁化可能なコアと、このコアを磁化するための磁化装置と、コア内の磁気領域を特定するための特定装置とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
磁界を測定するためのフラックスゲートセンサが公知である。このようなフラックスゲートセンサの1つのバリエーションでは、軟磁性のコアが交番磁界にさらされる。この交番磁界は、交番する磁界方向によってこのコアを磁気的な飽和状態にする。コアの磁化反転(Ummagnetisierung)は常に、交番磁界が外部磁界を補償するときに行われる。この磁化反転の時点に基づいて、生成された交番磁界を基準に、外部磁界が特定される。このようなセンサは薄膜技術として、半導体基板上に製造される。これはしばしばMEMSセンサとも称される。
【0002】
公開されていない特許出願DE102009028515.5号は、MEMS技術による磁界センサを示している。ここではコイルが磁界を平行六面体状のコア内に生成する。
【0003】
本発明の課題は、磁化反転の時点をより正確に特定することができる磁界センサを提供することである。
【0004】
発明の開示内容
本発明は、請求項1の特徴部分に記載されている構成を有する磁界センサによって、上述の課題を解決する。従属請求項には、有利な実施形態が記載されている。
【0005】
磁界センサは磁化可能なコアと、コアを磁化する磁化装置と、コア内の磁界を特定するための特定装置を有している。ここでこのコアの表面は少なくとも部分的に湾曲されている。殊に、微少磁界センサ(MEMS)では、コアの表面を湾曲化することによって、不良な磁化可能領域が生じることが回避される。従ってコアの磁区は、磁化反転のために著しく異なった磁界を必要としない。このようにして、磁化反転時点の静的な変動が低減され、磁界センサの測定精度が改善される。
【0006】
コアは、正の曲率を有する長手部分を有する。ここでこの曲率は、長手部分全体にわたって正である。殊にこの湾曲は、長手部分に沿って、特定の値を超えない。従って、丸みが付けられた輪郭を有するコアが得られ、不良の磁化可能区がさらに低減される。
【0007】
コアは、自身の長手軸に対して軸対称に形成される。平坦な実施形態とは異なり、このようにして、コアのさらなる角および辺が回避される。従って、コアの複数の区の磁化性は同じ形状になる。これによってさらに、磁界特定が改善される。
【0008】
コアは、尖った終端部分ないしは円すい状の終端部分を有する。これと結び付いている閉鎖区(Abschlussdomaenen)の低減ないし回避によって、磁化反転が、さらに短い時間領域に移される。従って、磁界センサの測定精度がさらに向上する。
【0009】
さらにコアを非対称に形成することができる。これは例えば、コアの長手軸に沿ったコアの幾何学形状的な重心が、コアの外寸を歪ませることによって、終端部分の方向に移されることによって行われる。これは例えば、コアを実質的に台形状に形成することによって行われる。これによってコアの磁化反転過程の開始がより良好に規定されて、コアの磁化反転の時間的な再現性がさらに改善される。
【0010】
別の実施形態では、このコアは、自身の長手軸に沿って、異なる大きさの長手部分面積を備えた複数の部分を有している。従って定められた磁化の領域が、磁化反転プロセスを開始するときに、特定される。
【0011】
以下で、本発明を、添付図面に関連してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】フラックスゲート磁界センサの原理図
【図2】図1に示された磁界センサでの時間的な経過特性
【図3】図1に示された磁界センサのための種々のコアの図
【実施例】
【0013】
図1は、磁界センサ100の原理図を示している。磁界センサ100は第1のコイル110と、第2のコイル120と、コア130とを有している。磁界センサ100は薄膜システムとして形成されている。ここでコア130は、微少(MEMS)磁界センサ100の実施例において、数100μm〜数mmの長さであり、典型的に20〜200μmの幅を有する。第1のコイル110および第2のコイル120はそれぞれ1つまたは複数の巻き線を含んでおり、各巻き線は、磁界センサ100の基板上に形成される。ここでこれらの巻き線はコア130を包囲している、またはコア130の隣に延在している。第2のコイル120によって、コア130内の磁界に対する指標が特定される。これは例えば磁束密度または磁束である。
【0014】
第1のコイル110に周期的な(例えば三角形の)電圧経過特性が印加される。従って、コア130の領域において磁界が形成される。これは周期的に増減する。コア130は有利には、低いヒステリシスを伴う軟磁性材料から成る。
【0015】
コア130の磁化の方向が変化すると、第1のコイル110によって生起された交番磁界によって、コア130は周期的に磁化反転される。磁化反転の時点で、第2のコイル120(ピックアップコイル)内に電圧U2が誘起される。このような電圧パルス220の時点に基づいて、後述するように、外部磁界が特定される。このパルスの時点をできるだけ正確に測定するために、このパルスの幅は三角電圧U1の周期に関して、できるだけ狭くなければならない。この目的のために通常は、コア130の材料は次のように選択される。すなわち、コア130のヒステリシスができるだけ小さくなるように選択される。
【0016】
微少化されたフラックスゲート磁界センサの場合には、コア130の材料および製造プロセスを相応に選択することによるコア130のヒステリシスの小ささの最適化には、微少化されたシステムの製造プロセスの範囲内に限界が設けられる。さらに、コイル110、120およびコア130の微少化が進むとともに、パルス220の強さが低減する。従って、信号電圧U2の評価が困難になる。
【0017】
図2は、図1に示された磁界センサ100での、電圧U1およびU2の時間的な経過特性のダイヤグラム200を示している。ダイヤグラム200の上方部分に示された経過特性210は、図1に示された第1のコイル110での電圧U1の経過特性をあらわしている。ダイヤグラム200の下方部分に示されたパルス220は、図1に示された第2のコイル120でのU2の電圧パルスに相応する。
【0018】
経過特性210は対称な三角信号である。コア130の磁化は、経過特性210に比例している。時点t1、t4、t5およびt8では、経過特性210の電圧U1は値0を有している。外部磁界が印加されていない場合には、この時点で、図1に示されたコア130の磁化反転が行われる。これは図1に示されたコイル120の電圧U2のパルス220によって、その時点で検出される。
【0019】
コア130が外部磁界によって事前に磁化されている場合には、この外部磁界が第1のコイル110によって生起された磁界によって補償された各時点で、コア130の磁化反転が行われる。図2では、第1の経過特性210が外部磁化230に相応する場合、すなわち時点t2、t3、t6およびt7が常に、このような場合である。
【0020】
パルス220相互の相対的な長さから、ないしは経過特性210に対するパルス220の相対的な長さから、外部磁界の強さないしは方向が特定される。パルス220ないしは時点t1〜t8の測定をできるだけ正確に実施することを可能にするために、電圧U2のパルス220が所定の電圧に達することが必要であり、ここでその幅ができるだけ狭いことが必要である。
【0021】
コア130のような強磁性の物質は通常は、磁区を伴う結晶構造を有する。このような区は磁区(ワイス−区)と称され、約10−8〜10−4mの領域における拡がりを有している。これらの磁区の間の境界はブロッホ壁と称される。一般的に磁区は、飽和まで磁化される。ここで異なる磁区の磁化は、異なる方向を有する。磁界が上昇すると、ブロッホ壁は、外部磁界の方向に配向されている磁区のためにシフトする。外部磁界がさらに上昇すると、最終的には、ますます多くの磁区が自身の磁化配向を変える。
【0022】
これらのブロッホ壁のシフト運動は、強磁性物質、粒界または磁気物質自体の境界の結晶内での格子損失によって、自身の運動において、阻止される。このような作用は「ピニング(ピン止め)」と称される。従って強磁性物質の磁化は、外部の常に上昇する磁界に従って上昇するのではなく、小さい差において、すなわちバークハウゼンジャンプで上昇する。これによって、強磁性物質の一様な磁化反転が阻止される。従って、図1に示されたコア130の場合には、図2に示されたパルス220は、時間(水平)方向において拡張される。本発明の核心部分は、コア130を次のように形成することである。すなわち、コア130のできるだけ均一かつ迅速な磁化反転が、微少磁界センサ100において可能になるように形成することである。このために、コア130の境界は、ピニング作用が低減されるように形成されている。さらにコア130は、磁化反転プロセスがコア130の形状によって影響されるように形成される。
【0023】
図3は、図1に示された磁界センサ100に対する種々のコア130の長手部分を示している。図示された長手部分310〜370はそれぞれコア130に関する。このコアは実質的に平らである。従って長手部分310〜370は、コア130の平面図に相応する。このようなコアは有利には薄膜技術で製造される。
【0024】
本発明の1つのバリエーションでは、コア130は例えば、コア130の長手軸Lに関して軸対称に形成されている。従って、コア130の三次元形状はそれぞれ、長手部分310〜370を自身の長手軸を中心に回転させることによって特定され、該当するコアは円形の横断面のみを有する。平らな成形と丸い成形との間の中間形状も可能であり、これは例えば平らにされた横断面ないしは楕円形状の横断面を有する。このようなコアを製造するために、薄膜技術を用いたものとは異なる製造方法が必要になることがある。
【0025】
長手部分310〜370はそれぞれ、コア130の表面Oが湾曲されている部分を有している。この部分では、ブロッホ壁の移動が、コア130を制限することによって、低減された程度に阻止される。全ての長手部分310〜370において、各長手部分の長さと幅の比は、次のように選択されている。すなわち、ブロッホ壁の運動ができるだけ妨害されないように選択されている。このように形成されたコア130は、この文献では「幅が狭いコア」とされている。
【0026】
第1の長手部分310は、終端部分Eが丸められている矩形の形状を有している。終端部分Eの丸め部分はそれぞれ対で融合されている。従って、終端部分Eは半円形状または楕円部分を有している。
【0027】
第2の長手部分320は、第1の長手部分に相応しているが、付加的に、終端部の間の中央部分Mの幅は狭くなっている。終端部分Eと、幅が狭くなっている部分Mとの間の移行部は、有利には丸められて延在している。幅が狭くなっている部分Mによって、コア130の跳躍的な磁化に必要な磁界強度が、コア130の形状を介して制御される。幅が狭い部分Mの領域において、高い磁束密度が存在する。これは、部分Mの迅速な磁化反転を促す。厚さが増している終端部分Eによって、図2における電気信号形状210が同じ場合には、より小さい磁界が生じる。これは、測定領域および配向に関して構成部分に利点を提供する。このような効果によって、図2のパルス220の時間的な再現性も改善され、これによって、図1に示された、微少化された磁界センサ100のノイズが低減される。
【0028】
第3の長手部分330は、矩形の中央領域Mを含んでいる。この中央領域は、それぞれ2つの三角形終端部分Eに移行する。三角形終端部分Eの先端形状は、この領域における不良な磁化を回避し、さらに、コア130によってシフトするブロッホ壁に、開始点ないしは終端点を提供する。閉鎖区の欠損によって、コア130の全体的な材料は、長手部分330において信号220に寄与する。
【0029】
第4の長手部分340は、対称な楕円形の形状を有している。このような長手部分の利点に関しては、上述した、第3の長手部分330に関する実施形態が当てはまる。付加的に、長手部分340のこの楕円形状によって、外部磁界にアクセス困難な領域の存在が回避される。
【0030】
第5の長手部分350は、第1の長手部分310の中央部分Mの幅を顕著に狭めたものに相応する。このように顕著に幅を狭めることによって、この領域において極端な磁束密度上昇が生じる。これは、迅速に、接している領域の磁化反転を生じさせる。
【0031】
第6の長手部分360は、第1の長手部分310の基本形状を基礎とし、さらにより平らに丸み付けられた終端部分E並びにセグメント化された中央領域Mを有している。セグメント化された中央領域Mにおいては、第1の幅を有するセグメントA1と、第2の幅を有するセグメントA2が(水平方向において)交互に配置されている。隣接するセグメントA1、A2の間の移行部が、図示のように矩形に延在していても、または、第5の長手部分350の中央領域Mにおいて示されているように丸められて延在していてもよい。長手部分360の切り込みが入れられたこの縁部によって、ブロッホ壁のピニングが低減され、同時に、定められた磁化の領域が、磁化反転プロセスを開始するために提供される。隣接するセグメントA1、A2の幅の比は任意に選択可能であり、示された比1:1を有している必要はない。
【0032】
第7の長手部分370は、第1の長手部分310を台形状に歪めたものを基礎とする。この歪みによって、矩形は台形になる。ここで台形の基本線は、コア130の長手軸Lに対して平行に延在する、またはコア370のように、長手軸Lに対して垂直に延在する。長手軸370の所定の非対称性によって、磁化反転過程の改善された所定の開始、ひいては、図2に示されたパルス220の改善された時間的な再現性が得られる。コア130の面重心は、第7の長手部分の場合には、横軸Qの右側にある。この横軸は長手軸Lをコア130において半分にする。第7の長手部分370の所定の非対称性は基本的には、各長手部分310〜360に使用可能であり、相応の歪みによって実現される。
【0033】
長手部分310〜370によって示されたコア130の形状によって、殊に、丸められた部分を設けることによって、コア130の時間的に正確に定められかつ円滑な、コア130の磁化反転が、図1に示された微少化されたシステム100において改善される。本発明に相応するコア130の形状によって効果的に、磁界センサ100の測定精度が改善される。ここで付加的なさらなる措置、例えばコア130ないしは磁界センサ100に対する材料の選択または製造プロセスの選択が、コア130の磁化反転のさらなる最適化のために用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・磁化可能なコア(130)と、
・当該コア(130)を磁化するための磁化装置(110)と、
・コア(130)内の磁界を特定するための特定装置(120)とを有しており、
前記コア(130)の表面(O)が少なくとも部分的に湾曲されている、磁界センサ(100)において、
前記コアは2つの終端部を有しており、当該2つの終端部の間の中央部分(M、Q)において前記コアの幅は狭くなっている、
ことを特徴とする磁界センサ(100)。
【請求項2】
前記コアの前記長手部分(320、350)は、幅が増した終端部分(E)を備えた終端部を有している、請求項1記載の磁界センサ(100)。
【請求項3】
前記コアの前記長手部分(350)は中央部分(M)において顕著に幅が狭められており、
殊に、前記終端部の幅の約37.5%に狭められている、請求項1または2記載の磁界センサ(100)。
【請求項4】
前記コアの前記長手部分(360)は、セグメント化された中央部分(M)を有しており、
・当該セグメント化において、第1の幅を有するセグメント(A1)と第2の幅を有するセグメント(A2)とが水平方向に交互に配置されており、
・前記第1の幅を有するセグメント(A1)の幅は狭くなっており、前記第2の幅を有するセグメント(A2)は前記終端部と同じ幅を有している、請求項1記載の磁界センサ(100)。
【請求項5】
前記コア(130)の前記長手部分(370)は、角が丸められている台形の形状を有している、請求項1記載の磁界センサ(100)。
【請求項6】
前記コア(130)の前記長手部分(310〜370)は、正の曲率を備えた輪郭を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の磁界センサ(100)。
【請求項7】
前記コア(130)は長手軸(L)を有しており、当該長手軸(L)に対して軸対称に形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の磁界センサ(100)。
【請求項8】
前記コア(130)の前記長手部分(330)は、尖っている終端部分(E)を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の磁界センサ(100)。
【請求項9】
前記コア(130)は、前記長手軸(L)上に垂直に延在している横軸(Q)に関して非対称に形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の磁界センサ(100)。
【請求項10】
前記コア(130)の前記表面(O)は、前記区間(M、E、A1、A2)の間の移行領域において湾曲されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の磁界センサ(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−513117(P2013−513117A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542416(P2012−542416)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065922
【国際公開番号】WO2011/069738
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】