磁石ユニットおよびエレベータの磁気ガイド装置
【課題】制御性を損なうことなく、組み立てが容易で、固定強度が高く、小型化が可能な磁気ユニットおよびエレベータの磁気ガイド装置を提供する。
【解決手段】磁気ユニット6は、磁性部材に対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石13a,13bと鉄心12a,12bとからなる内部磁石部17と、この内部磁石部17と磁性部材とで形成される磁気回路の外側に位置し、永久磁石13a,13bの両磁極近傍に磁極を有する電磁石16a,16bと鉄心14a,14bとからなる外部電磁石部18a,18bとを備える。
【解決手段】磁気ユニット6は、磁性部材に対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石13a,13bと鉄心12a,12bとからなる内部磁石部17と、この内部磁石部17と磁性部材とで形成される磁気回路の外側に位置し、永久磁石13a,13bの両磁極近傍に磁極を有する電磁石16a,16bと鉄心14a,14bとからなる外部電磁石部18a,18bとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気力を利用して移動体を非接触で支持する磁石ユニットと、この磁石ユニットを用いたエレベータの磁気ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの乗りかごは、昇降路内に垂直方向に設置された一対のガイドレールに支持され、巻上機に巻きかけられたロープを介して走行動作する。その際、負荷荷重の不均衡や乗客の移動によって生じる乗りかごの揺動は、ガイドレールによって抑制される。
【0003】
ここで、エレベータの乗りかごに用いられるガイド装置として、ガイドレールに接する車輪とサスペンションとで構成されたローラガイド、もしくは、ガイドレールに対して摺動して案内するガイドシュー等が用いられる。しかし、このような接触型のガイド装置では、ガイドレールの歪みや継ぎ目などで振動や騒音が発生し、また、ローラガイドが回転するときに騒音が発生する。このため、エレベータの快適性が損なわれるといった問題があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、非接触で乗りかごを案内する方法が提案されている。
【0005】
すなわち、電磁石により構成された磁気ガイド装置を乗りかごに搭載し、鉄製のガイドレールに対して磁力を作用させて、乗りかごを非接触で案内する方法がある。これは、乗りかごの四隅に配置された電磁石がガイドレールを3方向から囲み、ガイドレールとガイド装置との間の空隙の大きさに応じて電磁石を励磁制御して、乗りかごをガイドレールに対して非接触に案内するものである。
【0006】
また、上記電磁石を用いた構造で問題となる制御性の低下および消費電力の増大等を解決する手段として、永久磁石を用いる方法がある。永久磁石と電磁石を併用することにより、諸費電力を抑えつつ、低剛性・長ストロークで乗りかごを支持する磁気ガイド装置を実現できる。
【0007】
さらに、永久磁石を用いた方法としては、永久磁石と電磁石の構成を改善し、電磁石による磁力制御性の向上等を図った構成も提案されている。
【0008】
ここで、永久磁石と電磁石を併用する磁気ガイド装置においては、磁石ユニットの構成によって、性能と共に構造強度、組立性が大きく異なる。一般的な磁石ユニットの構成では、コイルが永久磁石と磁極の間に配置されている。つまり、磁石ユニットの中心付近にコイルが多数配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−178563号公報
【特許文献2】特開2001−19286号公報
【特許文献3】特開2005−350267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
磁石ユニットを構成する永久磁石やコイルには機械的な強度がないため、固定は鉄心部分で行うことが前提となる。しかし、鉄心部分にはコイルが巻かれているために、固定部材の配置が制限され、組み立てが困難である。また、鉄心の周りに巻回されたコイルの厚み部分を避けて磁石ユニットの上下に固定部材を設置しなければならず、高さ方向にサイズが大きくなり、固定強度も低くなりやすい。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、制御性を損なうことなく、組み立てが容易で、固定強度が高く、小型化が可能な磁気ユニットおよびエレベータの磁気ガイド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態に係る磁石ユニットは、磁性部材に対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、この内部磁石部と磁性部材とで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部とを備える。
【0013】
本実施形態に係るエレベータの磁気ガイド装置は、磁性体を含むガイドレールと、このガイドレールに沿って移動する乗りかごと、この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールに対して非接触にて支持し、前記ガイドレールに対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、この内部磁石部とガイドレールとで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部を備えた磁石ユニットと、上記磁石ユニットの上記磁気回路の状態を検出するセンサ部と、このセンサ部の検出信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段とを具備して構成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は同実施形態における磁気ガイド装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は同実施形態における磁気ガイド装置に設けられた磁石ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は同実施形態における磁気ガイド装置の磁力制御を行うための磁気ガイド制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は同実施形態における磁気ガイド装置に設けられた磁石ユニットの構成を上面から見た場合の平面図である。
【図6】図6は同実施形態における磁石ユニットがx方向に変位した状態を示す図である。
【図7】図7は同実施形態における磁石ユニットがy方向に変位した状態を示す図である。
【図8】図8は同実施形態における磁石ユニットがガイドレールに対して中立位置にあるときの磁束分布を示す図である。
【図9】図9は同実施形態における磁石ユニットがx方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。
【図10】図10は同実施形態における磁石ユニットがy方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。
【図11】図11は同実施形態における磁石ユニットの電磁石を永久磁石と同一方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。
【図12】図12は同実施形態における磁石ユニットの電磁石を永久磁石と逆方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。
【図13】図13は同実施形態における磁石ユニットの一方の電磁石を永久磁石と同一方向に励磁すると同時に、他方の電磁石を永久磁石bと逆方向に励磁した場合の磁束分布を示す図である。
【図14】図14は同実施形態における磁石ユニットの電磁石を外部に配置して励磁した場合の特性を示す図である。
【図15】図15は同実施形態における磁石ユニットの電流と磁力との関係を示す図である。
【図16】図16は同実施形態における磁石ユニットを用いて磁気ガイド装置を構成した場合の斜視図である。
【図17】図17は従来構成の磁石ユニットを示す斜視図である。
【図18】図18は従来構成の磁石ユニットを用いて磁気ガイド装置を構成した場合の斜視図である。
【図19】図19は同実施形態における磁気ガイド装置の構成を上面から見た場合の平面図である。
【図20】図20は第2の実施形態に係る磁気ガイド装置の構成を示す斜視図である。
【図21】図21は同実施形態における磁気ガイド装置の構成を上面から見た場合の平面図である。
【図22】図22は第3の実施形態に係る磁石ユニットの構成を上面から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の構成を示す斜視図である。
【0017】
エレベータの昇降路1内には、鉄製で強磁性体からなる一対のガイドレール2が立設されている。乗りかご4は、図示せぬ巻き上げ機に捲き掛けられたロープ3によって吊り下げられている。この乗りかご4は、上記巻上機の回転駆動に伴い、ガイドレール2に沿って昇降動作する。なお、図中の4aはかごドアであり、乗りかご4が各階に着床したときに開閉動作する。
【0018】
ここで、図1において、乗りかご4の左右方向をx、前後方向をy、上下方向をzとする。
【0019】
乗りかご4のかご枠4bの上下左右の四隅の連結部に、ガイドレール2に対向させて磁気ガイド装置5がそれぞれ取り付けられている。後述するように、この磁気ガイド装置5の磁力を制御することで、乗りかご4がガイドレール2から浮上して非接触で走行することができる。
【0020】
図2は磁気ガイド装置5の構成を示す斜視図である。
【0021】
磁気ガイド装置5は、磁石ユニット6とガイドレール2との間に形成される物理量(磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙)を検出するための複数個のギャップセンサ7と、それらを支持している台座8とで構成されている。また、ガイドレール2の乗りかごに対向した面、すなわちx方向に直交する面を第1ガイド面9aとし、乗りかごの前後方向すなわちy方向に直交する面のうちかごドア4a側を第2ガイド面9b、その反対側を第3ガイド面9cとする。
【0022】
なお、磁気ガイド装置5は、図1に示したように乗りかご4のかご枠4bの上下左右の四隅の連結部に設けられており、それぞれに同様の構成である。
【0023】
図3は磁気ガイド装置5に設けられた磁石ユニット6の構成を示す斜視図である。
【0024】
磁石ユニット6は、内部磁石部17と、一対の外部電磁石部18a,18bとで構成されている。
【0025】
内部磁石部17は、中央鉄心11と、一対の側部鉄心12a,12bと、中央鉄心11と側部鉄心12a,12bの間に介挿された2つの永久磁石13a,13bとで構成される。
【0026】
中央鉄心11は、ガイドレール2の第1ガイド面9aに対向するように設置された端面を有する。側部鉄心12a,12bは、第2ガイド面9bおよび第3ガイド面9cに対向するように配置された端面を有する。
【0027】
外部電磁石部18a,18bは、内部磁石部17の両側面に配置され、コの字型の外部鉄心14a,14bとその外部鉄心14a,14bに巻回されたコイル15a,15bからなる第1電磁石16a、第2電磁石16bで構成される。
【0028】
内部磁石部17と外部磁石部18a,18bの間には非磁性材料からなるスペーサ20a,20b,20c,20dが配置されており、それぞれの間に磁気的なギャップを形成している。
【0029】
ここで、中央鉄心11の第1ガイド面9aに対向する端部を第1磁極19aとする。また、側部鉄心12a,12bにおける第2ガイド面9b、第3ガイド面9cに対向する鉄心端部をそれぞれ第2磁極19b、第3磁極19cとする。このような構成とすることで、第1磁極19aと、第2磁極19b、第3磁極19cがガイドレール2を介して直交する構成となり、内部磁石部17は全体としてE字形状に形成される。
【0030】
このような構成において、コイル15a,15bを磁石ユニット6の外側に配置して外部磁石部18a,18bを構成している点が従来構成と異なる。また、内部磁石部17と外部磁石部18aとの間に非磁性体のスペーサ20a,20bを介在させ、内部磁石部17と外部磁石部18bとの間に非磁性体のスペーサ20c,20dを介在させている点が従来構成と異なる。なお、本実施形態の構成と従来構成との違いについては、後に図17を参照して詳しく説明する。
【0031】
磁石ユニット6は、3つの磁極19a、19b、19cをガイドレール2の各ガイド面9a,9b,9cに空隙を介して対向させるように乗りかご4に設置される。したがって、磁石ユニット6の各磁極19a、19b、19cとガイドレール2の各ガイド面9a,9b,9cとの間には、永久磁石13a,13bおよび各電磁石16a、16bに起因する磁束が形成され、空隙の大きさとコイル15a,15bに流れる電流に応じて所定の磁力が発生することになる。
【0032】
これにより、各電磁石16a、16bのコイル15a,15bに流す電流を操作することで、この磁石ユニット6とガイドレール2との間に生じる磁力を任意に操作することが可能となる。したがって、ギャップセンサ7等によって検出された磁石ユニット6の磁気回路の状態量をもとに計算した電圧をコイル15a,15bに励磁し、磁力を適切に制御することで、ガイドレール2と磁気ガイド装置5(乗りかご4)とを接触させることなく安定して支持することができる。
【0033】
図4は磁気ガイド装置5の磁力制御を行うための磁気ガイド制御装置21の構成を示すブロック図である。
【0034】
磁気ガイド制御装置21は、センサ部22と、制御演算器23と、ドライバ24とを備え、乗りかご4の四隅に設置された磁石ユニット6の吸引力を制御する。なお、図4では、便宜的にセンサ部22を含めて示されているが、実際にはセンサ部22は、その一部を磁気ガイド装置5等の制御装置外部に設けられている。
【0035】
センサ部22は、磁石ユニット6の磁気回路の状態を検出するためのものであり、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙の大きさを検出するギャップセンサ7と、外部電磁石部18a,18bのコイル15a,15bに流れる電流値を検出する電流センサ25とで構成されている。
【0036】
制御演算器23は、センサ部22からの信号に基づいて乗りかご4を非接触案内させるべく、外部電磁石部18a,18bのコイル15a,15bに印加する電圧を演算する。
【0037】
ドライバ24は、制御演算器23の出力に基づいて外部電磁石部18a,18bのコイル15a,15bに電力を供給する。
【0038】
このような構成において、磁石ユニット6とガイドレール2との間に所定のギャップ長を維持させるべく、コイル15a,15bに流れる電流値を制御する。また、非接触で乗りかご4を支持した状態で、コイル15a,15bに流れる電流値を積分器を介してフィードバックする。これにより、定常状態にあるときには、乗りかご4の重量および不平衡力の大きさに関わらず永久磁石13a,13bだけの磁力で乗りかご4を支持する、いわゆる「ゼロパワー制御」が行われる。
【0039】
このゼロパワー制御によって、乗りかご4がガイドレール2に対して非接触で安定に支持される。そして、定常状態では、コイル15a,15bに流れる電流は零に収束し、安定支持に必要となる力は永久磁石13a,13bの磁力だけで済むようになる。
【0040】
これは、乗りかご4の重量やバランスが変化した場合でも同様である。すなわち、乗りかご4に何らかの外力が加えられた場合、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を所定の大きさに収束させるために、過渡的にコイル15a,15bに電流が流れる。しかし、再度安定状態になった際には、上記制御手法を用いることにより、コイル15a,15bに流れる電流は、零に収束する。そして、乗りかご4に加わる荷重と、永久磁石13a,13bの磁力によって発生する吸引力とが釣り合う大きさの空隙が形成される。
【0041】
本実施形態における磁石ユニット6の構成を上面から見た場合の平面図を図5に示す。また、図中に磁石ユニット6およびガイドレール2を通過する主磁束の概略を破線で示す。
【0042】
磁石ユニット6の中で主磁束を形成する内部磁石部17がガイドレール2の近傍に配置されている。そのため、永久磁石13a,13bによって形成される永久磁石磁束31aの磁路が比較的短くなり、全体的な磁気抵抗が小さくなる。したがって、永久磁石13a,13bの磁力を従来よりも強くガイドレール2に作用させることができるようになる。つまり、永久磁石13a,13bの大きさが同等の場合にはより強い磁力を作用させることができる。一方、必要な磁力を同等とすれば、小さな永久磁石13a,13bでその磁力を実現できるようになる。
【0043】
さらに、永久磁石13a,13bによって形成される磁路の外側に電磁石16a,16bを配置し、電磁石16a,16bとガイドレール2とによって形成される磁束の磁路を電磁石磁束32a,32bとする。その際、電磁石16a,16bの磁極を永久磁石13a,13bの磁極近傍に配置することにより、電磁石磁束32a,32bの一部が、永久磁石磁束31a〜31dと重なるように形成することができる。結果的に、ガイドレール2と磁極19a,19b,19cとの間の空隙を通過する磁束は、永久磁石磁束31a,31bと電磁石磁束32a,32bとが共存する配置となる。
【0044】
このように、磁石ユニット6の内側に永久磁石13a,13b、外側に電磁石16a,16bを配置して、内部磁石部17で永久磁石13a,13bに起因する磁力を形成すると共に、外部電磁石部18a,18bで電磁石16a,16bに起因する磁力を形成する。これにより、電磁石16a,16bの磁力を制御することで、ガイドレール2に対する磁石ユニット6の磁力を調整し、位置を制御できるようになる。
【0045】
ここで、本実施形態の磁石ユニット6がガイドレール2に作用させる磁力の様子を詳細に説明する。
【0046】
(a)中立状態
図5には、中立位置における磁石ユニット6とガイドレール2との間に形成される主磁束の概要を示している。電磁石16a,16bを励磁していない場合には、永久磁石13a,13bにより形成される磁束は、ガイドレールとの間で形成される永久磁石磁束31a、31bと、外部電磁石部18a,18bとの間で形成される永久磁石磁束31c、31dの2つに大きく分離される。
【0047】
磁石ユニット6とガイドレール2との相対的な位置関係が中立状態にあるときには、内部磁石部17と外部電磁石部18a,18bとの間に介在された非磁性体のスペーサ20a,20b,20c,20dが磁気抵抗となり、磁束の大半が外部電磁石部18a,18b側に流入することがない。
【0048】
その際、スペーサ20a,20b,20c,20dによる非磁性部分の距離を磁石ユニット6とガイドレール2とが中立位置にあるときに形成されるすき間の距離と同等かそれ以上の距離とすることで、外部電磁石部18a,18b側に形成される永久磁石磁束31c、31dが大きくなりすぎないようにすることが望ましい。
【0049】
(b)x方向に変位した状態
図6は磁石ユニット6がx方向に変位した状態を示す図である。
【0050】
磁石ユニット6(乗りかご4)がx方向に変位してガイドレール2に近づいた場合、第1ガイド面9aおよび第1磁極19aを通過する磁束が強くなり、x方向の吸引力が強まる。
【0051】
(c)y方向に変位した状態
図7は磁石ユニット6がy方向に変位した状態を示す図である。
【0052】
磁石ユニット6がy方向に変位してガイドレール2に近づいた場合、第2ガイド面9bおよび第2磁極19bの部分の磁気ギャップが小さくなり、永久磁石磁束31aに寄与する磁気抵抗が小さくなると共に、永久磁石磁束31cに寄与する磁気抵抗が相対的に大きくなる。したがって、外部電磁石部18a,18ba側に回る磁束が相対的に小さくなり、大部分の磁束が磁石ユニット6とガイドレール2との間で形成されることになる。
【0053】
一方、第3ガイド面9cと第3磁極19cとの間のギャップが広がるため、磁気抵抗が大きくなり、永久磁石磁束31bは弱まると共に、永久磁石磁束31dの磁束が強まる。そのため、結果的にy方向に作用する力は第2ガイド面9bおよび第2磁極間19bでは強まり、第3ガイド面9cおよび第3磁極19c間では弱まり、y方向の磁力を得ることができる。
【0054】
このとき、変位に対する磁力の変化割合は、外部電磁石部18a,18bがない従来構成の場合には、単純に磁気回路中の磁気抵抗が磁石ユニット6とガイドレール2との間の距離で変化する分のみで変化し、それに応じた磁束の変化量として得られていた。
【0055】
これに対し、本実施形態の構成では、磁石ユニット6とガイドレール2との間の磁気抵抗が大きくなって磁束が弱まると同時に、外部電磁石部18a,18bに回る磁束が多くなることで、より顕著に磁束の変化が生じることになる。したがって、従来構成よりも磁力の変化割合を大きくとることができるようになり、結果的に磁石ユニット6の小型化が可能となる。
【0056】
次に、図8〜図10を参照して、上記各状態における磁石ユニット6の磁束分布について説明する。
【0057】
(a)中立状態
図8は磁石ユニット6がガイドレール2に対して中立位置にあるときの磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0058】
電磁石16a,16bを励磁していない状態で、磁石ユニット6がガイドレール2に対して中立位置にある場合には、永久磁石13a,13bにより形成される磁束はガイドレール2と内部磁石部17との間で形成されると共に、外部電磁石部18a,18bにも略均等に形成される。
【0059】
(b)x方向に変位した状態
図9は磁石ユニット6がx方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0060】
磁石ユニット6(乗りかご4)がx方向に変位し、磁石ユニット6とガイドレール2との間のx方向の距離が短くなった場合には、第1ガイド面9aと第1磁極19aとの間の磁気抵抗が小さくなり、磁束が強まることで、x方向の磁力が増加する。
【0061】
(c)y方向に変位した状態
図10は磁石ユニット6がy方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0062】
磁石ユニット6がy方向に変位した場合には、磁石ユニット6の第2ガイド面9bと第2磁極19bとの間のy方向の距離が短くなる。そのため、第2ガイド面9bと第2磁極19bとの間の磁気抵抗が小さくなり、外部電磁石部18a,18b側に回る磁束よりも、内部磁石部18a,18bとガイドレール2との間に回る磁束が強まる。一方で、距離が離れた第3ガイド面9cと第3磁極19cとの間では磁気抵抗が大きくなり、相対的に磁気抵抗が小さな外部電磁石部18a,18b側に磁束が回るため、結果的に大きな力がy方向に作用することになる。
【0063】
次に、図11〜図14を参照して、磁石ユニット6の電磁石16a,16bを励磁した場合について説明する。
【0064】
(a)同一方向に励磁
図11は磁石ユニット6の電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと同一方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0065】
磁石ユニット6の電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと同一方向に磁束が形成されるように励磁した場合には、図11のように磁束が形成される。このとき、電磁石16a,16bの励磁前は外部電磁石部18a,18bに回っていた永久磁石13a,13bの磁束が外部鉄心14a,14bに流れにくくなる。それに伴い、内部磁石部17とガイドレール2との間の磁束が強まることになる。
【0066】
すなわち、電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと同一方向に励磁した場合には、全ガイド面9a,9b,9cと全磁極19,19b,19cとの間の磁束が強まる。このため、第2ガイド面9bと第2磁極19bに作用する磁力と、第3ガイド面9cと第3磁極19cに作用する磁力とが相殺され、結果的に第1ガイド面9aと第1磁極19aとの間で増加する磁力のみが影響を及ぼす。これにより、x方向の磁力を得ることができる。
【0067】
(b)逆方向に励磁
図12は磁石ユニット6の電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと逆方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0068】
電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと逆向きに励磁した場合には、図12のような磁束分布となる。すなわち、永久磁石13a,13bで形成される磁束が外部電磁石18a,18b側に引き込まれる。そのため、各ガイド面9a,9b,9cと各磁極19,19b,19cとの間に形成される磁束が弱まり、磁力を低減させることができる。この場合、y方向の磁力変化は相殺されるため、結果的にx方向の磁力を減少させることができる。
【0069】
(c)一方を同一方向、他方を逆方向に励磁
図13は磁石ユニット6の一方の電磁石16aを永久磁石13aと同一方向に励磁すると同時に、他方の電磁石16bを永久磁石13bと逆方向に励磁した場合の磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0070】
電磁石16aを永久磁石13aと同一方向に励磁すると同時に、反対側の電磁石16bを永久磁石13bと逆方向に励磁した場合、永久磁石13aで形成される磁束は、電磁石16aの作用により、第2ガイド面9bと第2磁極19bの間に作用することになる。
【0071】
一方、永久磁石13bで形成される磁束は、電磁石16bの作用により、第3磁極19c側には回りにくくなり、外部鉄心14b側に引き込まれて、第3ガイド面9cとの間の磁力は弱まる。結果的に、y方向の磁力を得ることができる。また、電磁石16aと電磁石16bを逆向きに励磁することによって、−y方向の力を得ることもできる。
【0072】
次に、本実施形態のように磁石ユニット6の電磁石16a,16bを外部に配置して励磁した場合の特性について説明する。
【0073】
図14は磁石ユニット6の電磁石16a,16bを外部に配置して励磁した場合の特性を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。また、図15は磁石ユニット6の電流と磁力との関係を示す図である。図中のaが本実施形態の特性、bが従来構成の特性を示している。
【0074】
本実施形態のように、磁石ユニット6の電磁石16a,16bを外部に配置して励磁した場合には、従来構成のように電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bの磁気回路中に配置した構成とは異なる特性を得ることができる。
【0075】
すなわち、図14に示すように磁石ユニット6がy方向に変位し、さらに電磁石16a,16bを−y方向の磁力を得るように励磁した場合に、ガイドレール2に近い方の第2磁極19bにほとんど磁束が形成されない状態を作ることができる。
【0076】
この状態から、さらにコイル15a,15bに流す電流を大きくしていき、第2ガイド面9bと第2磁極19bとの間の磁力を弱めると共に、第3ガイド面9cと第3磁極19cとの間の磁束を強めていくものとする。
【0077】
このような場合、磁極近傍にコイルが配置された従来構成では、磁極の極性が反転し、弱めていた磁力を強める方向に逆転してしまう。つまり、図15の破線で示す特性bのように、電流を大きくしていく途中で逆向きの磁力が生じる。このため、電流の上限値を磁力反転前までに設定しておく必要などがあり、制御が難しくなるといった欠点がある。
【0078】
これに対し、本実施形態の構成では、さらに大きな電流を流した場合でも、図14に示すような状態で永久磁石13aと外部鉄心14aとの間で磁束が強まるだけであり、第2磁極19bの極性を反転させて磁束を強めることがほとんどない。したがって、図15の実線で示す特性aとなり、電流を上げても磁力の向きが反転せず、制御しやすいといった利点がある。この特性はx方向にも同様の効果を得ることができ、磁力を弱める際に磁極の極性が反転し、強めてしまうことを避けられる。
【0079】
図16は本実施形態における磁石ユニット6を用いて磁気ガイド装置5を構成した場合の斜視図である。なお、磁石ユニット6の構成については図3と同様であり、各部の符号は省略する。
【0080】
磁気ガイド装置5として構成するために、磁石ユニット6の形状を固定すると共に、センサ等を配置するためのユニット上板41とユニット下板42とで磁石ユニット6の上下を挟み込む。
【0081】
ユニット上板41とユニット下板42の外面上には、センサ台43を介してギャップセンサ7が設置される。このギャップセンサ7によって、ガイドレール2と磁石ユニット6との相対的な距離を検出する。このとき、磁石ユニット6の内部磁石部17の上下に平面が確保されている。このため、ユニット上板41とユニット下板42を磁石ユニット6に直接固定することができると共に、ユニット上板41およびユニット下板42の面上に図16に示すようなギャップセンサ7およびセンサ台43を配置するスペースを確保することができる。
【0082】
また、ユニット上板41およびユニット下板42には、低摩擦樹脂からなるガイド44が設けられている。このガイド44は、ガイドレール2と接触したときに磁石ユニット6を保護すると共に、接触時の固体潤滑としての役割を持つ。
【0083】
なお、締結ボルト45によって磁石ユニット6の鉄心11、12a,12bをユニット上板41、ユニット下板42に固定すると共に、外部電磁石部18a,18bの外部鉄心14a,14bも同様に固定することで、磁石ユニット6の形状を強固に確保することができる。
【0084】
締結ボルトの固定位置の一例を図19に示す。図19は磁気ガイド装置5の構成を上面から見た場合の平面図である。締結ボルト46によって台座8と鉄心11を強固に固定することができるため、磁気ガイド装置5全体の剛性を十分に高めることができる。
【0085】
ここで、図17および図18を参照して、従来構成の磁石ユニットと本実施形態の構成の磁石ユニットとの違いについて説明する。
【0086】
図17は従来構成の磁石ユニットを示す斜視図、図18は従来構成の磁石ユニットを用いて磁気ガイド装置を構成した場合の斜視図である。従来構成の磁石ユニットを6’で示し、その磁石ユニットを用いた磁気ガイド装置を5’で示す。
【0087】
図17に示すように、磁石ユニット6’は、永久磁石13a,13bと磁極との間にコイル15a’〜15d’が配置されている。この磁石ユニット6’にユニット上板41およびユニット下板42を設置するためには、コイル15a’〜15d’によって形成される段差を回避して平面を構成しなければならない。そこで、図18に示すように、固定冶具50を介在させてコイル15a’〜15d’の高さ分の嵩上げを行う。
【0088】
このような固定冶具50を用いて磁気ガイド装置5’を構成した場合、部品点数が増加するばかりではなく、磁石ユニット6’を組み立てる際に基準面を確保することが困難であり、組み立て性が損なわれる。
【0089】
また、磁石ユニット6’に直接接触している部品は固定冶具50のみとなるため、この固定冶具50によって磁石ユニット6’を強固に固定する必要がある。しかし、磁石ユニット6’の永久磁石13a,13bの近傍は比較的強固に固定することができるが、磁極近傍については、コイル15a,15bを避けて固定しなければならないため、スペースを確保することが難しい。また、固定の基礎となる部品が近傍にないために、強固に固定することが困難である。強固に固定するにしても、さらに冶具を用いてユニット上板41およびユニット下板42との間を埋める必要があるため、十分な強度を得ることが難しい。
【0090】
また、コイル15a’〜15d’の上下にユニット上板41およびユニット下板42を配置するため、磁気ガイド装置5’全体の高さが高くなり、装置の大型化、重量の増加の要因となって、乗りかご4への据付性が低下する。
【0091】
また、コイル15a’,15c’がガイドレール2の側にあることで、寸法上の制約となり、コイル15a’,15c’を大きくすることができない。何らかの要因でガイドレール2に磁石ユニット6’が接触した際、コイル15a’,15c’が触れることで破損や断線するといった可能性がある。
【0092】
一方、本実施形態の磁石ユニット6を用いて磁気ガイド装置5を構成した場合には、ユニット上板41およびユニット下板42を鉄心11、12a,12bに直接接触させることができるので組み立てが簡単である。また、磁極先端に至るまで強固に固定することができると共に、磁気ガイド装置5の高さを従来よりも低くすることができる。したがって、結果的に装置の小型化と共に部品点数の削減、重量の低減を図ることが可能となる。また、コイル15a,15bがガイドレール2に面していないことから、コイル15a,15bが何らかの要因により破損や断線といった可能性を低減することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、スペーサ20a,20b,20c,20dの形状を直方体としたブロックで構成しているが、非磁性材料であれば、その形状は特に関係しない。すなわち、内部磁石部17と外部電磁石部18a,18bとの間に非磁性部分あるいは空隙を確保することができれば、どのような介在物を用いてもよい。
【0094】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0095】
図20は第2の実施形態に係る磁気ガイド装置5の構成を示す斜視図である。図21は同実施形態における磁気ガイド装置5の構成を上面から見た場合の平面図である。なお、磁石ユニット6の構成については図3と同様であり、各部の符号は省略する。
【0096】
上記第1の実施形態では、磁石ユニット6をユニット上板41およびユニット下板42によって固定する構成とした。これに対し、第2の実施形態では、図20および図21に示すように、磁石ユニット6の外部電磁石部18a,18bを内部磁石部17にスペーサ20a,20b,20c,20dを介して固定した上で磁気ガイド装置5を構成する。
【0097】
この場合、外部電磁石部18a,18bの外部鉄心14a,14bおよびスペーサ20a,20b,20c,20dに貫通した穴をあけ、その穴を通したボルト47によって内部磁石部17の中央鉄心11および側部鉄心12a,12bに固定することができる。
【0098】
このように構成することによって、ユニット上板41およびユニット下板42を取り付ける前に、磁石ユニット6の全体の形状を確立することができる。このため、組み立て性が向上すると共に、スペーサ20a,20b,20c,20dを介して内部磁石部17に対して電磁石16a,16bの相対的な位置を精度よく固定することができる。これにより、組み立て性による特性のばらつきを抑えることができる。
【0099】
また、第2の実施形態のように、外部電磁石部18a,18bを内部磁石部17に直接固定した場合には、ユニット上板41およびユニット下板42を上記第1の実施形態のようにコイル15a,15bを避けて両側部を切り欠いた形状とする必要はなく、内部磁石部17の上下面にのみ固定する形状としてもよい。
【0100】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図22は第3の実施形態に係る磁石ユニット6の構成を上面から見た場合の平面図である。
【0101】
上記第1および第2の実施形態では、磁石ユニット6の内部磁石部17の両側部に外部電磁石部18a,18bを配置する構成とした。この場合、永久磁石13a,13bは、第1磁極19aを挟んで両側に、第1磁極19aと平行に磁極を形成する向きに配置される。また、外部電磁石部18a,18bは、永久磁石13a,13bの外側にスペーサ20を介して第1磁極19aと平行に磁極を形成する向きに配置される。
【0102】
これに対し、第3の実施形態では、図22に示すように、永久磁石13a,13bをガイドレール2と直交する向きに配置している。すなわち、永久磁石13a,13bは、第1磁極19aを挟んで両側に第2磁極19bと第3磁極19cと平行に磁極を形成する向きに配置される。
【0103】
また、外部電磁石部18は、その永久磁石13a,13bの外側つまりガイドレール2の反対側にスペーサ20を介して第2磁極19b,第3磁極19cと平行に磁極を形成する向きに配置される。
【0104】
このような構成において、上記第1の実施形態と同様に、2つの電磁石16a,16bをそれぞれ励磁することによって、x方向およびy方向の磁力を制御することができる。
【0105】
このように、ガイドレール2の反対側に永久磁石13a,13bと外部電磁石部18を配置した構成にすることで、磁石ユニット6のy方向の長さを短くすることができる。また、上記第1および第2の実施形態の構成では左右に分割されていた外部鉄心14a,14bを1つの外部鉄心14に一体化することができ、部品点数を削減することができるなどの利点がある。
【0106】
以上のように少なくとも1つの実施形態によれば、制御性を損なうことなく、組み立てが容易で、固定強度が高く、小型化が可能な磁気ユニットおよびエレベータの磁気ガイド装置を提供することができる。
【0107】
なお、上記各実施形態では、エレベータの乗りかごを例にして説明したが、本発明は磁気力を利用して移動体を非接触で支持するものであれば、そのすべてに適用可能である。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…昇降路、2…ガイドレール、3…ロープ、4…乗りかご、4a…かごドア、5…磁気ガイド装置、6…磁石ユニット、7…ギャップセンサ、8…台座、9a…第1ガイド面、9b…第2ガイド面、9c…第3ガイド面、11…中央鉄心、12a,12b…側部鉄心、13a,13b…永久磁石、14a,14b…外部鉄心、15a,15b…コイル、16a,16b…電磁石、17…内部磁石部、18a,18b…外部磁石部、19a…第1磁極、19b…第2磁極、19c…第1磁極、20a〜20d…スペーサ、21…制御装置、22…センサ部、23…演算器、24…ドライバ、25…電流検出器、31a〜31d…永久磁石磁束、32a,32b…電磁石磁束、41…ユニット上板、42…ユニット下板、43…センサ台、44…ガイド、45〜47…締結ボルト、50…固定冶具。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気力を利用して移動体を非接触で支持する磁石ユニットと、この磁石ユニットを用いたエレベータの磁気ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの乗りかごは、昇降路内に垂直方向に設置された一対のガイドレールに支持され、巻上機に巻きかけられたロープを介して走行動作する。その際、負荷荷重の不均衡や乗客の移動によって生じる乗りかごの揺動は、ガイドレールによって抑制される。
【0003】
ここで、エレベータの乗りかごに用いられるガイド装置として、ガイドレールに接する車輪とサスペンションとで構成されたローラガイド、もしくは、ガイドレールに対して摺動して案内するガイドシュー等が用いられる。しかし、このような接触型のガイド装置では、ガイドレールの歪みや継ぎ目などで振動や騒音が発生し、また、ローラガイドが回転するときに騒音が発生する。このため、エレベータの快適性が損なわれるといった問題があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、非接触で乗りかごを案内する方法が提案されている。
【0005】
すなわち、電磁石により構成された磁気ガイド装置を乗りかごに搭載し、鉄製のガイドレールに対して磁力を作用させて、乗りかごを非接触で案内する方法がある。これは、乗りかごの四隅に配置された電磁石がガイドレールを3方向から囲み、ガイドレールとガイド装置との間の空隙の大きさに応じて電磁石を励磁制御して、乗りかごをガイドレールに対して非接触に案内するものである。
【0006】
また、上記電磁石を用いた構造で問題となる制御性の低下および消費電力の増大等を解決する手段として、永久磁石を用いる方法がある。永久磁石と電磁石を併用することにより、諸費電力を抑えつつ、低剛性・長ストロークで乗りかごを支持する磁気ガイド装置を実現できる。
【0007】
さらに、永久磁石を用いた方法としては、永久磁石と電磁石の構成を改善し、電磁石による磁力制御性の向上等を図った構成も提案されている。
【0008】
ここで、永久磁石と電磁石を併用する磁気ガイド装置においては、磁石ユニットの構成によって、性能と共に構造強度、組立性が大きく異なる。一般的な磁石ユニットの構成では、コイルが永久磁石と磁極の間に配置されている。つまり、磁石ユニットの中心付近にコイルが多数配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−178563号公報
【特許文献2】特開2001−19286号公報
【特許文献3】特開2005−350267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
磁石ユニットを構成する永久磁石やコイルには機械的な強度がないため、固定は鉄心部分で行うことが前提となる。しかし、鉄心部分にはコイルが巻かれているために、固定部材の配置が制限され、組み立てが困難である。また、鉄心の周りに巻回されたコイルの厚み部分を避けて磁石ユニットの上下に固定部材を設置しなければならず、高さ方向にサイズが大きくなり、固定強度も低くなりやすい。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、制御性を損なうことなく、組み立てが容易で、固定強度が高く、小型化が可能な磁気ユニットおよびエレベータの磁気ガイド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態に係る磁石ユニットは、磁性部材に対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、この内部磁石部と磁性部材とで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部とを備える。
【0013】
本実施形態に係るエレベータの磁気ガイド装置は、磁性体を含むガイドレールと、このガイドレールに沿って移動する乗りかごと、この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールに対して非接触にて支持し、前記ガイドレールに対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、この内部磁石部とガイドレールとで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部を備えた磁石ユニットと、上記磁石ユニットの上記磁気回路の状態を検出するセンサ部と、このセンサ部の検出信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段とを具備して構成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は同実施形態における磁気ガイド装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は同実施形態における磁気ガイド装置に設けられた磁石ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は同実施形態における磁気ガイド装置の磁力制御を行うための磁気ガイド制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は同実施形態における磁気ガイド装置に設けられた磁石ユニットの構成を上面から見た場合の平面図である。
【図6】図6は同実施形態における磁石ユニットがx方向に変位した状態を示す図である。
【図7】図7は同実施形態における磁石ユニットがy方向に変位した状態を示す図である。
【図8】図8は同実施形態における磁石ユニットがガイドレールに対して中立位置にあるときの磁束分布を示す図である。
【図9】図9は同実施形態における磁石ユニットがx方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。
【図10】図10は同実施形態における磁石ユニットがy方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。
【図11】図11は同実施形態における磁石ユニットの電磁石を永久磁石と同一方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。
【図12】図12は同実施形態における磁石ユニットの電磁石を永久磁石と逆方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。
【図13】図13は同実施形態における磁石ユニットの一方の電磁石を永久磁石と同一方向に励磁すると同時に、他方の電磁石を永久磁石bと逆方向に励磁した場合の磁束分布を示す図である。
【図14】図14は同実施形態における磁石ユニットの電磁石を外部に配置して励磁した場合の特性を示す図である。
【図15】図15は同実施形態における磁石ユニットの電流と磁力との関係を示す図である。
【図16】図16は同実施形態における磁石ユニットを用いて磁気ガイド装置を構成した場合の斜視図である。
【図17】図17は従来構成の磁石ユニットを示す斜視図である。
【図18】図18は従来構成の磁石ユニットを用いて磁気ガイド装置を構成した場合の斜視図である。
【図19】図19は同実施形態における磁気ガイド装置の構成を上面から見た場合の平面図である。
【図20】図20は第2の実施形態に係る磁気ガイド装置の構成を示す斜視図である。
【図21】図21は同実施形態における磁気ガイド装置の構成を上面から見た場合の平面図である。
【図22】図22は第3の実施形態に係る磁石ユニットの構成を上面から見た場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る磁気ガイド装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の構成を示す斜視図である。
【0017】
エレベータの昇降路1内には、鉄製で強磁性体からなる一対のガイドレール2が立設されている。乗りかご4は、図示せぬ巻き上げ機に捲き掛けられたロープ3によって吊り下げられている。この乗りかご4は、上記巻上機の回転駆動に伴い、ガイドレール2に沿って昇降動作する。なお、図中の4aはかごドアであり、乗りかご4が各階に着床したときに開閉動作する。
【0018】
ここで、図1において、乗りかご4の左右方向をx、前後方向をy、上下方向をzとする。
【0019】
乗りかご4のかご枠4bの上下左右の四隅の連結部に、ガイドレール2に対向させて磁気ガイド装置5がそれぞれ取り付けられている。後述するように、この磁気ガイド装置5の磁力を制御することで、乗りかご4がガイドレール2から浮上して非接触で走行することができる。
【0020】
図2は磁気ガイド装置5の構成を示す斜視図である。
【0021】
磁気ガイド装置5は、磁石ユニット6とガイドレール2との間に形成される物理量(磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙)を検出するための複数個のギャップセンサ7と、それらを支持している台座8とで構成されている。また、ガイドレール2の乗りかごに対向した面、すなわちx方向に直交する面を第1ガイド面9aとし、乗りかごの前後方向すなわちy方向に直交する面のうちかごドア4a側を第2ガイド面9b、その反対側を第3ガイド面9cとする。
【0022】
なお、磁気ガイド装置5は、図1に示したように乗りかご4のかご枠4bの上下左右の四隅の連結部に設けられており、それぞれに同様の構成である。
【0023】
図3は磁気ガイド装置5に設けられた磁石ユニット6の構成を示す斜視図である。
【0024】
磁石ユニット6は、内部磁石部17と、一対の外部電磁石部18a,18bとで構成されている。
【0025】
内部磁石部17は、中央鉄心11と、一対の側部鉄心12a,12bと、中央鉄心11と側部鉄心12a,12bの間に介挿された2つの永久磁石13a,13bとで構成される。
【0026】
中央鉄心11は、ガイドレール2の第1ガイド面9aに対向するように設置された端面を有する。側部鉄心12a,12bは、第2ガイド面9bおよび第3ガイド面9cに対向するように配置された端面を有する。
【0027】
外部電磁石部18a,18bは、内部磁石部17の両側面に配置され、コの字型の外部鉄心14a,14bとその外部鉄心14a,14bに巻回されたコイル15a,15bからなる第1電磁石16a、第2電磁石16bで構成される。
【0028】
内部磁石部17と外部磁石部18a,18bの間には非磁性材料からなるスペーサ20a,20b,20c,20dが配置されており、それぞれの間に磁気的なギャップを形成している。
【0029】
ここで、中央鉄心11の第1ガイド面9aに対向する端部を第1磁極19aとする。また、側部鉄心12a,12bにおける第2ガイド面9b、第3ガイド面9cに対向する鉄心端部をそれぞれ第2磁極19b、第3磁極19cとする。このような構成とすることで、第1磁極19aと、第2磁極19b、第3磁極19cがガイドレール2を介して直交する構成となり、内部磁石部17は全体としてE字形状に形成される。
【0030】
このような構成において、コイル15a,15bを磁石ユニット6の外側に配置して外部磁石部18a,18bを構成している点が従来構成と異なる。また、内部磁石部17と外部磁石部18aとの間に非磁性体のスペーサ20a,20bを介在させ、内部磁石部17と外部磁石部18bとの間に非磁性体のスペーサ20c,20dを介在させている点が従来構成と異なる。なお、本実施形態の構成と従来構成との違いについては、後に図17を参照して詳しく説明する。
【0031】
磁石ユニット6は、3つの磁極19a、19b、19cをガイドレール2の各ガイド面9a,9b,9cに空隙を介して対向させるように乗りかご4に設置される。したがって、磁石ユニット6の各磁極19a、19b、19cとガイドレール2の各ガイド面9a,9b,9cとの間には、永久磁石13a,13bおよび各電磁石16a、16bに起因する磁束が形成され、空隙の大きさとコイル15a,15bに流れる電流に応じて所定の磁力が発生することになる。
【0032】
これにより、各電磁石16a、16bのコイル15a,15bに流す電流を操作することで、この磁石ユニット6とガイドレール2との間に生じる磁力を任意に操作することが可能となる。したがって、ギャップセンサ7等によって検出された磁石ユニット6の磁気回路の状態量をもとに計算した電圧をコイル15a,15bに励磁し、磁力を適切に制御することで、ガイドレール2と磁気ガイド装置5(乗りかご4)とを接触させることなく安定して支持することができる。
【0033】
図4は磁気ガイド装置5の磁力制御を行うための磁気ガイド制御装置21の構成を示すブロック図である。
【0034】
磁気ガイド制御装置21は、センサ部22と、制御演算器23と、ドライバ24とを備え、乗りかご4の四隅に設置された磁石ユニット6の吸引力を制御する。なお、図4では、便宜的にセンサ部22を含めて示されているが、実際にはセンサ部22は、その一部を磁気ガイド装置5等の制御装置外部に設けられている。
【0035】
センサ部22は、磁石ユニット6の磁気回路の状態を検出するためのものであり、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙の大きさを検出するギャップセンサ7と、外部電磁石部18a,18bのコイル15a,15bに流れる電流値を検出する電流センサ25とで構成されている。
【0036】
制御演算器23は、センサ部22からの信号に基づいて乗りかご4を非接触案内させるべく、外部電磁石部18a,18bのコイル15a,15bに印加する電圧を演算する。
【0037】
ドライバ24は、制御演算器23の出力に基づいて外部電磁石部18a,18bのコイル15a,15bに電力を供給する。
【0038】
このような構成において、磁石ユニット6とガイドレール2との間に所定のギャップ長を維持させるべく、コイル15a,15bに流れる電流値を制御する。また、非接触で乗りかご4を支持した状態で、コイル15a,15bに流れる電流値を積分器を介してフィードバックする。これにより、定常状態にあるときには、乗りかご4の重量および不平衡力の大きさに関わらず永久磁石13a,13bだけの磁力で乗りかご4を支持する、いわゆる「ゼロパワー制御」が行われる。
【0039】
このゼロパワー制御によって、乗りかご4がガイドレール2に対して非接触で安定に支持される。そして、定常状態では、コイル15a,15bに流れる電流は零に収束し、安定支持に必要となる力は永久磁石13a,13bの磁力だけで済むようになる。
【0040】
これは、乗りかご4の重量やバランスが変化した場合でも同様である。すなわち、乗りかご4に何らかの外力が加えられた場合、磁石ユニット6とガイドレール2との間の空隙を所定の大きさに収束させるために、過渡的にコイル15a,15bに電流が流れる。しかし、再度安定状態になった際には、上記制御手法を用いることにより、コイル15a,15bに流れる電流は、零に収束する。そして、乗りかご4に加わる荷重と、永久磁石13a,13bの磁力によって発生する吸引力とが釣り合う大きさの空隙が形成される。
【0041】
本実施形態における磁石ユニット6の構成を上面から見た場合の平面図を図5に示す。また、図中に磁石ユニット6およびガイドレール2を通過する主磁束の概略を破線で示す。
【0042】
磁石ユニット6の中で主磁束を形成する内部磁石部17がガイドレール2の近傍に配置されている。そのため、永久磁石13a,13bによって形成される永久磁石磁束31aの磁路が比較的短くなり、全体的な磁気抵抗が小さくなる。したがって、永久磁石13a,13bの磁力を従来よりも強くガイドレール2に作用させることができるようになる。つまり、永久磁石13a,13bの大きさが同等の場合にはより強い磁力を作用させることができる。一方、必要な磁力を同等とすれば、小さな永久磁石13a,13bでその磁力を実現できるようになる。
【0043】
さらに、永久磁石13a,13bによって形成される磁路の外側に電磁石16a,16bを配置し、電磁石16a,16bとガイドレール2とによって形成される磁束の磁路を電磁石磁束32a,32bとする。その際、電磁石16a,16bの磁極を永久磁石13a,13bの磁極近傍に配置することにより、電磁石磁束32a,32bの一部が、永久磁石磁束31a〜31dと重なるように形成することができる。結果的に、ガイドレール2と磁極19a,19b,19cとの間の空隙を通過する磁束は、永久磁石磁束31a,31bと電磁石磁束32a,32bとが共存する配置となる。
【0044】
このように、磁石ユニット6の内側に永久磁石13a,13b、外側に電磁石16a,16bを配置して、内部磁石部17で永久磁石13a,13bに起因する磁力を形成すると共に、外部電磁石部18a,18bで電磁石16a,16bに起因する磁力を形成する。これにより、電磁石16a,16bの磁力を制御することで、ガイドレール2に対する磁石ユニット6の磁力を調整し、位置を制御できるようになる。
【0045】
ここで、本実施形態の磁石ユニット6がガイドレール2に作用させる磁力の様子を詳細に説明する。
【0046】
(a)中立状態
図5には、中立位置における磁石ユニット6とガイドレール2との間に形成される主磁束の概要を示している。電磁石16a,16bを励磁していない場合には、永久磁石13a,13bにより形成される磁束は、ガイドレールとの間で形成される永久磁石磁束31a、31bと、外部電磁石部18a,18bとの間で形成される永久磁石磁束31c、31dの2つに大きく分離される。
【0047】
磁石ユニット6とガイドレール2との相対的な位置関係が中立状態にあるときには、内部磁石部17と外部電磁石部18a,18bとの間に介在された非磁性体のスペーサ20a,20b,20c,20dが磁気抵抗となり、磁束の大半が外部電磁石部18a,18b側に流入することがない。
【0048】
その際、スペーサ20a,20b,20c,20dによる非磁性部分の距離を磁石ユニット6とガイドレール2とが中立位置にあるときに形成されるすき間の距離と同等かそれ以上の距離とすることで、外部電磁石部18a,18b側に形成される永久磁石磁束31c、31dが大きくなりすぎないようにすることが望ましい。
【0049】
(b)x方向に変位した状態
図6は磁石ユニット6がx方向に変位した状態を示す図である。
【0050】
磁石ユニット6(乗りかご4)がx方向に変位してガイドレール2に近づいた場合、第1ガイド面9aおよび第1磁極19aを通過する磁束が強くなり、x方向の吸引力が強まる。
【0051】
(c)y方向に変位した状態
図7は磁石ユニット6がy方向に変位した状態を示す図である。
【0052】
磁石ユニット6がy方向に変位してガイドレール2に近づいた場合、第2ガイド面9bおよび第2磁極19bの部分の磁気ギャップが小さくなり、永久磁石磁束31aに寄与する磁気抵抗が小さくなると共に、永久磁石磁束31cに寄与する磁気抵抗が相対的に大きくなる。したがって、外部電磁石部18a,18ba側に回る磁束が相対的に小さくなり、大部分の磁束が磁石ユニット6とガイドレール2との間で形成されることになる。
【0053】
一方、第3ガイド面9cと第3磁極19cとの間のギャップが広がるため、磁気抵抗が大きくなり、永久磁石磁束31bは弱まると共に、永久磁石磁束31dの磁束が強まる。そのため、結果的にy方向に作用する力は第2ガイド面9bおよび第2磁極間19bでは強まり、第3ガイド面9cおよび第3磁極19c間では弱まり、y方向の磁力を得ることができる。
【0054】
このとき、変位に対する磁力の変化割合は、外部電磁石部18a,18bがない従来構成の場合には、単純に磁気回路中の磁気抵抗が磁石ユニット6とガイドレール2との間の距離で変化する分のみで変化し、それに応じた磁束の変化量として得られていた。
【0055】
これに対し、本実施形態の構成では、磁石ユニット6とガイドレール2との間の磁気抵抗が大きくなって磁束が弱まると同時に、外部電磁石部18a,18bに回る磁束が多くなることで、より顕著に磁束の変化が生じることになる。したがって、従来構成よりも磁力の変化割合を大きくとることができるようになり、結果的に磁石ユニット6の小型化が可能となる。
【0056】
次に、図8〜図10を参照して、上記各状態における磁石ユニット6の磁束分布について説明する。
【0057】
(a)中立状態
図8は磁石ユニット6がガイドレール2に対して中立位置にあるときの磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0058】
電磁石16a,16bを励磁していない状態で、磁石ユニット6がガイドレール2に対して中立位置にある場合には、永久磁石13a,13bにより形成される磁束はガイドレール2と内部磁石部17との間で形成されると共に、外部電磁石部18a,18bにも略均等に形成される。
【0059】
(b)x方向に変位した状態
図9は磁石ユニット6がx方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0060】
磁石ユニット6(乗りかご4)がx方向に変位し、磁石ユニット6とガイドレール2との間のx方向の距離が短くなった場合には、第1ガイド面9aと第1磁極19aとの間の磁気抵抗が小さくなり、磁束が強まることで、x方向の磁力が増加する。
【0061】
(c)y方向に変位した状態
図10は磁石ユニット6がy方向に変位した場合の磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0062】
磁石ユニット6がy方向に変位した場合には、磁石ユニット6の第2ガイド面9bと第2磁極19bとの間のy方向の距離が短くなる。そのため、第2ガイド面9bと第2磁極19bとの間の磁気抵抗が小さくなり、外部電磁石部18a,18b側に回る磁束よりも、内部磁石部18a,18bとガイドレール2との間に回る磁束が強まる。一方で、距離が離れた第3ガイド面9cと第3磁極19cとの間では磁気抵抗が大きくなり、相対的に磁気抵抗が小さな外部電磁石部18a,18b側に磁束が回るため、結果的に大きな力がy方向に作用することになる。
【0063】
次に、図11〜図14を参照して、磁石ユニット6の電磁石16a,16bを励磁した場合について説明する。
【0064】
(a)同一方向に励磁
図11は磁石ユニット6の電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと同一方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0065】
磁石ユニット6の電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと同一方向に磁束が形成されるように励磁した場合には、図11のように磁束が形成される。このとき、電磁石16a,16bの励磁前は外部電磁石部18a,18bに回っていた永久磁石13a,13bの磁束が外部鉄心14a,14bに流れにくくなる。それに伴い、内部磁石部17とガイドレール2との間の磁束が強まることになる。
【0066】
すなわち、電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと同一方向に励磁した場合には、全ガイド面9a,9b,9cと全磁極19,19b,19cとの間の磁束が強まる。このため、第2ガイド面9bと第2磁極19bに作用する磁力と、第3ガイド面9cと第3磁極19cに作用する磁力とが相殺され、結果的に第1ガイド面9aと第1磁極19aとの間で増加する磁力のみが影響を及ぼす。これにより、x方向の磁力を得ることができる。
【0067】
(b)逆方向に励磁
図12は磁石ユニット6の電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと逆方向に励磁したときの磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0068】
電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bと逆向きに励磁した場合には、図12のような磁束分布となる。すなわち、永久磁石13a,13bで形成される磁束が外部電磁石18a,18b側に引き込まれる。そのため、各ガイド面9a,9b,9cと各磁極19,19b,19cとの間に形成される磁束が弱まり、磁力を低減させることができる。この場合、y方向の磁力変化は相殺されるため、結果的にx方向の磁力を減少させることができる。
【0069】
(c)一方を同一方向、他方を逆方向に励磁
図13は磁石ユニット6の一方の電磁石16aを永久磁石13aと同一方向に励磁すると同時に、他方の電磁石16bを永久磁石13bと逆方向に励磁した場合の磁束分布を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。
【0070】
電磁石16aを永久磁石13aと同一方向に励磁すると同時に、反対側の電磁石16bを永久磁石13bと逆方向に励磁した場合、永久磁石13aで形成される磁束は、電磁石16aの作用により、第2ガイド面9bと第2磁極19bの間に作用することになる。
【0071】
一方、永久磁石13bで形成される磁束は、電磁石16bの作用により、第3磁極19c側には回りにくくなり、外部鉄心14b側に引き込まれて、第3ガイド面9cとの間の磁力は弱まる。結果的に、y方向の磁力を得ることができる。また、電磁石16aと電磁石16bを逆向きに励磁することによって、−y方向の力を得ることもできる。
【0072】
次に、本実施形態のように磁石ユニット6の電磁石16a,16bを外部に配置して励磁した場合の特性について説明する。
【0073】
図14は磁石ユニット6の電磁石16a,16bを外部に配置して励磁した場合の特性を示す図である。矢印が磁束の方向を示す。また、図15は磁石ユニット6の電流と磁力との関係を示す図である。図中のaが本実施形態の特性、bが従来構成の特性を示している。
【0074】
本実施形態のように、磁石ユニット6の電磁石16a,16bを外部に配置して励磁した場合には、従来構成のように電磁石16a,16bを永久磁石13a,13bの磁気回路中に配置した構成とは異なる特性を得ることができる。
【0075】
すなわち、図14に示すように磁石ユニット6がy方向に変位し、さらに電磁石16a,16bを−y方向の磁力を得るように励磁した場合に、ガイドレール2に近い方の第2磁極19bにほとんど磁束が形成されない状態を作ることができる。
【0076】
この状態から、さらにコイル15a,15bに流す電流を大きくしていき、第2ガイド面9bと第2磁極19bとの間の磁力を弱めると共に、第3ガイド面9cと第3磁極19cとの間の磁束を強めていくものとする。
【0077】
このような場合、磁極近傍にコイルが配置された従来構成では、磁極の極性が反転し、弱めていた磁力を強める方向に逆転してしまう。つまり、図15の破線で示す特性bのように、電流を大きくしていく途中で逆向きの磁力が生じる。このため、電流の上限値を磁力反転前までに設定しておく必要などがあり、制御が難しくなるといった欠点がある。
【0078】
これに対し、本実施形態の構成では、さらに大きな電流を流した場合でも、図14に示すような状態で永久磁石13aと外部鉄心14aとの間で磁束が強まるだけであり、第2磁極19bの極性を反転させて磁束を強めることがほとんどない。したがって、図15の実線で示す特性aとなり、電流を上げても磁力の向きが反転せず、制御しやすいといった利点がある。この特性はx方向にも同様の効果を得ることができ、磁力を弱める際に磁極の極性が反転し、強めてしまうことを避けられる。
【0079】
図16は本実施形態における磁石ユニット6を用いて磁気ガイド装置5を構成した場合の斜視図である。なお、磁石ユニット6の構成については図3と同様であり、各部の符号は省略する。
【0080】
磁気ガイド装置5として構成するために、磁石ユニット6の形状を固定すると共に、センサ等を配置するためのユニット上板41とユニット下板42とで磁石ユニット6の上下を挟み込む。
【0081】
ユニット上板41とユニット下板42の外面上には、センサ台43を介してギャップセンサ7が設置される。このギャップセンサ7によって、ガイドレール2と磁石ユニット6との相対的な距離を検出する。このとき、磁石ユニット6の内部磁石部17の上下に平面が確保されている。このため、ユニット上板41とユニット下板42を磁石ユニット6に直接固定することができると共に、ユニット上板41およびユニット下板42の面上に図16に示すようなギャップセンサ7およびセンサ台43を配置するスペースを確保することができる。
【0082】
また、ユニット上板41およびユニット下板42には、低摩擦樹脂からなるガイド44が設けられている。このガイド44は、ガイドレール2と接触したときに磁石ユニット6を保護すると共に、接触時の固体潤滑としての役割を持つ。
【0083】
なお、締結ボルト45によって磁石ユニット6の鉄心11、12a,12bをユニット上板41、ユニット下板42に固定すると共に、外部電磁石部18a,18bの外部鉄心14a,14bも同様に固定することで、磁石ユニット6の形状を強固に確保することができる。
【0084】
締結ボルトの固定位置の一例を図19に示す。図19は磁気ガイド装置5の構成を上面から見た場合の平面図である。締結ボルト46によって台座8と鉄心11を強固に固定することができるため、磁気ガイド装置5全体の剛性を十分に高めることができる。
【0085】
ここで、図17および図18を参照して、従来構成の磁石ユニットと本実施形態の構成の磁石ユニットとの違いについて説明する。
【0086】
図17は従来構成の磁石ユニットを示す斜視図、図18は従来構成の磁石ユニットを用いて磁気ガイド装置を構成した場合の斜視図である。従来構成の磁石ユニットを6’で示し、その磁石ユニットを用いた磁気ガイド装置を5’で示す。
【0087】
図17に示すように、磁石ユニット6’は、永久磁石13a,13bと磁極との間にコイル15a’〜15d’が配置されている。この磁石ユニット6’にユニット上板41およびユニット下板42を設置するためには、コイル15a’〜15d’によって形成される段差を回避して平面を構成しなければならない。そこで、図18に示すように、固定冶具50を介在させてコイル15a’〜15d’の高さ分の嵩上げを行う。
【0088】
このような固定冶具50を用いて磁気ガイド装置5’を構成した場合、部品点数が増加するばかりではなく、磁石ユニット6’を組み立てる際に基準面を確保することが困難であり、組み立て性が損なわれる。
【0089】
また、磁石ユニット6’に直接接触している部品は固定冶具50のみとなるため、この固定冶具50によって磁石ユニット6’を強固に固定する必要がある。しかし、磁石ユニット6’の永久磁石13a,13bの近傍は比較的強固に固定することができるが、磁極近傍については、コイル15a,15bを避けて固定しなければならないため、スペースを確保することが難しい。また、固定の基礎となる部品が近傍にないために、強固に固定することが困難である。強固に固定するにしても、さらに冶具を用いてユニット上板41およびユニット下板42との間を埋める必要があるため、十分な強度を得ることが難しい。
【0090】
また、コイル15a’〜15d’の上下にユニット上板41およびユニット下板42を配置するため、磁気ガイド装置5’全体の高さが高くなり、装置の大型化、重量の増加の要因となって、乗りかご4への据付性が低下する。
【0091】
また、コイル15a’,15c’がガイドレール2の側にあることで、寸法上の制約となり、コイル15a’,15c’を大きくすることができない。何らかの要因でガイドレール2に磁石ユニット6’が接触した際、コイル15a’,15c’が触れることで破損や断線するといった可能性がある。
【0092】
一方、本実施形態の磁石ユニット6を用いて磁気ガイド装置5を構成した場合には、ユニット上板41およびユニット下板42を鉄心11、12a,12bに直接接触させることができるので組み立てが簡単である。また、磁極先端に至るまで強固に固定することができると共に、磁気ガイド装置5の高さを従来よりも低くすることができる。したがって、結果的に装置の小型化と共に部品点数の削減、重量の低減を図ることが可能となる。また、コイル15a,15bがガイドレール2に面していないことから、コイル15a,15bが何らかの要因により破損や断線といった可能性を低減することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、スペーサ20a,20b,20c,20dの形状を直方体としたブロックで構成しているが、非磁性材料であれば、その形状は特に関係しない。すなわち、内部磁石部17と外部電磁石部18a,18bとの間に非磁性部分あるいは空隙を確保することができれば、どのような介在物を用いてもよい。
【0094】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0095】
図20は第2の実施形態に係る磁気ガイド装置5の構成を示す斜視図である。図21は同実施形態における磁気ガイド装置5の構成を上面から見た場合の平面図である。なお、磁石ユニット6の構成については図3と同様であり、各部の符号は省略する。
【0096】
上記第1の実施形態では、磁石ユニット6をユニット上板41およびユニット下板42によって固定する構成とした。これに対し、第2の実施形態では、図20および図21に示すように、磁石ユニット6の外部電磁石部18a,18bを内部磁石部17にスペーサ20a,20b,20c,20dを介して固定した上で磁気ガイド装置5を構成する。
【0097】
この場合、外部電磁石部18a,18bの外部鉄心14a,14bおよびスペーサ20a,20b,20c,20dに貫通した穴をあけ、その穴を通したボルト47によって内部磁石部17の中央鉄心11および側部鉄心12a,12bに固定することができる。
【0098】
このように構成することによって、ユニット上板41およびユニット下板42を取り付ける前に、磁石ユニット6の全体の形状を確立することができる。このため、組み立て性が向上すると共に、スペーサ20a,20b,20c,20dを介して内部磁石部17に対して電磁石16a,16bの相対的な位置を精度よく固定することができる。これにより、組み立て性による特性のばらつきを抑えることができる。
【0099】
また、第2の実施形態のように、外部電磁石部18a,18bを内部磁石部17に直接固定した場合には、ユニット上板41およびユニット下板42を上記第1の実施形態のようにコイル15a,15bを避けて両側部を切り欠いた形状とする必要はなく、内部磁石部17の上下面にのみ固定する形状としてもよい。
【0100】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図22は第3の実施形態に係る磁石ユニット6の構成を上面から見た場合の平面図である。
【0101】
上記第1および第2の実施形態では、磁石ユニット6の内部磁石部17の両側部に外部電磁石部18a,18bを配置する構成とした。この場合、永久磁石13a,13bは、第1磁極19aを挟んで両側に、第1磁極19aと平行に磁極を形成する向きに配置される。また、外部電磁石部18a,18bは、永久磁石13a,13bの外側にスペーサ20を介して第1磁極19aと平行に磁極を形成する向きに配置される。
【0102】
これに対し、第3の実施形態では、図22に示すように、永久磁石13a,13bをガイドレール2と直交する向きに配置している。すなわち、永久磁石13a,13bは、第1磁極19aを挟んで両側に第2磁極19bと第3磁極19cと平行に磁極を形成する向きに配置される。
【0103】
また、外部電磁石部18は、その永久磁石13a,13bの外側つまりガイドレール2の反対側にスペーサ20を介して第2磁極19b,第3磁極19cと平行に磁極を形成する向きに配置される。
【0104】
このような構成において、上記第1の実施形態と同様に、2つの電磁石16a,16bをそれぞれ励磁することによって、x方向およびy方向の磁力を制御することができる。
【0105】
このように、ガイドレール2の反対側に永久磁石13a,13bと外部電磁石部18を配置した構成にすることで、磁石ユニット6のy方向の長さを短くすることができる。また、上記第1および第2の実施形態の構成では左右に分割されていた外部鉄心14a,14bを1つの外部鉄心14に一体化することができ、部品点数を削減することができるなどの利点がある。
【0106】
以上のように少なくとも1つの実施形態によれば、制御性を損なうことなく、組み立てが容易で、固定強度が高く、小型化が可能な磁気ユニットおよびエレベータの磁気ガイド装置を提供することができる。
【0107】
なお、上記各実施形態では、エレベータの乗りかごを例にして説明したが、本発明は磁気力を利用して移動体を非接触で支持するものであれば、そのすべてに適用可能である。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…昇降路、2…ガイドレール、3…ロープ、4…乗りかご、4a…かごドア、5…磁気ガイド装置、6…磁石ユニット、7…ギャップセンサ、8…台座、9a…第1ガイド面、9b…第2ガイド面、9c…第3ガイド面、11…中央鉄心、12a,12b…側部鉄心、13a,13b…永久磁石、14a,14b…外部鉄心、15a,15b…コイル、16a,16b…電磁石、17…内部磁石部、18a,18b…外部磁石部、19a…第1磁極、19b…第2磁極、19c…第1磁極、20a〜20d…スペーサ、21…制御装置、22…センサ部、23…演算器、24…ドライバ、25…電流検出器、31a〜31d…永久磁石磁束、32a,32b…電磁石磁束、41…ユニット上板、42…ユニット下板、43…センサ台、44…ガイド、45〜47…締結ボルト、50…固定冶具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性部材に対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、
この内部磁石部と磁性部材とで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部と
を備えたことを特徴とする磁石ユニット。
【請求項2】
上記内部磁石部は、
上記磁性部材の一面に対向する第1磁極と、この第1磁極とは異なる極性で、上記第1磁極とほぼ直行し、かつ上記磁性部材を介して互いに対向するように配置された同極の第2および第3磁極とを有し、上記第1、第2及び第3磁極を端部としたE字形状となるように構成され、
上記第1磁極と上記第2磁極との間、上記第1磁極と上記第3磁極との間に上記永久磁石が介在されており、
上記外部電磁石部は、
上記内部磁石部の上記永久磁石の両磁極の近傍に磁極を有し、かつ、上記内部磁石部との間に非磁性体のスペーサが介在されていることを特徴とする請求項1記載の磁石ユニット。
【請求項3】
上記スペーサによる非磁性部分の距離は、上記磁性部材が上記内部磁石部磁極との間で中立位置にあるときに形成されるすき間と同等あるいはそれ以上であることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項4】
上記内部磁石部の上記永久磁石は、
上記第1磁極と平行に磁極を形成する向きに配置され、
上記外部電磁石部の上記電磁石は、
上記永久磁石の外側に上記スペーサを介して上記第1磁極と平行に磁極を形成する向きに配置されていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項5】
上記内部磁石部の上記永久磁石は、
上記第2および第3磁極と平行に磁極を形成する向きに配置され、
上記外部電磁石部の上記電磁石は、
上記永久磁石の外側に上記スペーサを介して上記第2および第3磁極と平行に磁極を形成する向きに配置されていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項6】
上記外部電磁石部は、
上記内部磁石部に対して上記スペーサを挟んでボルトで締結されていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項7】
上記内部磁石部の一部と締結された固定板が配置され、上記内部磁石部をE字形状に固定する構成となっていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項8】
上記内部磁石部の一部と上記外部電磁石部の一部とを締結した固定板が配置され、上記内部磁石部をE字形状に固定すると共に上記外部電磁石部を固定する構成となっていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項9】
磁性体を含むガイドレールと、
このガイドレールに沿って移動する乗りかごと、
この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールに対して非接触にて支持し、前記ガイドレールに対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、この内部磁石部とガイドレールとで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部を備えた磁石ユニットと、
上記磁石ユニットの上記磁気回路の状態を検出するセンサ部と、
このセンサ部の検出信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの磁気ガイド装置。
【請求項10】
上記制御手段は、
上記センサ部で検出された状態量に基づいて、上記電磁石の電流をゼロに収束させながら上記磁気回路が安定するように制御することを特徴とする請求項9記載のエレベータの磁気ガイド装置。
【請求項1】
磁性部材に対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、
この内部磁石部と磁性部材とで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部と
を備えたことを特徴とする磁石ユニット。
【請求項2】
上記内部磁石部は、
上記磁性部材の一面に対向する第1磁極と、この第1磁極とは異なる極性で、上記第1磁極とほぼ直行し、かつ上記磁性部材を介して互いに対向するように配置された同極の第2および第3磁極とを有し、上記第1、第2及び第3磁極を端部としたE字形状となるように構成され、
上記第1磁極と上記第2磁極との間、上記第1磁極と上記第3磁極との間に上記永久磁石が介在されており、
上記外部電磁石部は、
上記内部磁石部の上記永久磁石の両磁極の近傍に磁極を有し、かつ、上記内部磁石部との間に非磁性体のスペーサが介在されていることを特徴とする請求項1記載の磁石ユニット。
【請求項3】
上記スペーサによる非磁性部分の距離は、上記磁性部材が上記内部磁石部磁極との間で中立位置にあるときに形成されるすき間と同等あるいはそれ以上であることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項4】
上記内部磁石部の上記永久磁石は、
上記第1磁極と平行に磁極を形成する向きに配置され、
上記外部電磁石部の上記電磁石は、
上記永久磁石の外側に上記スペーサを介して上記第1磁極と平行に磁極を形成する向きに配置されていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項5】
上記内部磁石部の上記永久磁石は、
上記第2および第3磁極と平行に磁極を形成する向きに配置され、
上記外部電磁石部の上記電磁石は、
上記永久磁石の外側に上記スペーサを介して上記第2および第3磁極と平行に磁極を形成する向きに配置されていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項6】
上記外部電磁石部は、
上記内部磁石部に対して上記スペーサを挟んでボルトで締結されていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項7】
上記内部磁石部の一部と締結された固定板が配置され、上記内部磁石部をE字形状に固定する構成となっていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項8】
上記内部磁石部の一部と上記外部電磁石部の一部とを締結した固定板が配置され、上記内部磁石部をE字形状に固定すると共に上記外部電磁石部を固定する構成となっていることを特徴とする請求項2記載の磁石ユニット。
【請求項9】
磁性体を含むガイドレールと、
このガイドレールに沿って移動する乗りかごと、
この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールに対して非接触にて支持し、前記ガイドレールに対して3方向から空隙を介して対向する磁極を有する永久磁石と鉄心とからなる内部磁石部と、この内部磁石部とガイドレールとで形成される磁気回路の外側に位置し、上記永久磁石の両磁極近傍に磁極を有する電磁石と鉄心とからなる外部電磁石部を備えた磁石ユニットと、
上記磁石ユニットの上記磁気回路の状態を検出するセンサ部と、
このセンサ部の検出信号に基づいて、上記磁石ユニットの磁気力を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの磁気ガイド装置。
【請求項10】
上記制御手段は、
上記センサ部で検出された状態量に基づいて、上記電磁石の電流をゼロに収束させながら上記磁気回路が安定するように制御することを特徴とする請求項9記載のエレベータの磁気ガイド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2012−158431(P2012−158431A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19015(P2011−19015)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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