神経刺激リード間の相対的位置決めを判断する方法及び装置
患者の組織に隣接して配置された2つのリードを作動させる方法及び神経刺激制御システムを提供する。複数の交差リード電気パラメータが測定され、電極リードの測定電気プロフィールが発生する。複数の交差リード電気パラメータが推定され、第1の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第1の基準電気プロフィールが発生する。第1の基準電気プロフィールが空間的にシフトされ、第2の既知のスタガ構成にある電極リードの第2の基準電気プロフィールが発生する。測定電気プロフィールが第1及び第2の基準電気プロフィールと比較され、比較に基づいて電極リード間の縦スタガが定量化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織刺激システムに関し、より具体的には、神経刺激リードの位置を判断するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能神経刺激システムは、様々な疾病及び障害において治療効果を有することを証明している。ペースメーカー及び「埋め込み可能心細動除去器(ICD)」は、いくつかの心臓疾患(例えば、不整脈)の治療において非常に有効であることを証明している。「脊髄刺激(SCS)」システムは、慢性疼痛症候群の治療のための治療方式として長い間受け入れられてきており、組織刺激の用途は、狭心症及び失禁のような更に別の用途に広がり始めている。「脳深部刺激(DBS)」もまた、不応性慢性疼痛症候群の治療に10年を大幅に超えて適用されてきており、また、最近では、DBSは、運動障害及び癲癇のような更に別の分野に適用されている。更に、最近の研究では、「末梢神経刺激(PNS)」システムが、慢性疼痛症候群及び失禁の治療において有効性を示しており、いくつかの更に別の用途が現在研究されている。また、NeuroControl(オハイオ州クリーブランド)によるFreehandシステムのような「機能的電気刺激(FES)」システムが、脊髄損傷の患者において麻痺肢にある程度の機能を回復させる上で適用されている。
【0003】
これらの埋め込み可能神経刺激システムは、典型的には、望ましい刺激部位に埋め込まれる刺激リードを担持する1つ又はそれよりも多くの電極と、刺激部位から離れて埋め込まれるが、刺激リードに直接結合されるか又はリード延長部を通じて刺激リードに間接的に結合されるかのいずれかである神経刺激器(例えば、埋め込み可能パルス発生器(IPG))とを含む。すなわち、組織を刺激し、患者に望ましい有効な治療を提供するように、電気パルスを神経刺激器から刺激リードに送出することができる。更に、神経刺激システムは、選択された刺激パラメータに従って電気刺激パルスを発生させるように神経刺激器に遠隔的に命令する遠隔制御器(RC)の形態にある手持ち式患者プログラム作成器を含むことができる。RC自体は、臨床医が、例えば、プログラミングソフトウエアパッケージがインストールされたラップトップのような汎用コンピュータを一般的に含む臨床医のプログラム作成器(CP)を使用することによってプログラムすることができる。
【0004】
SCS処置の関連において、1つ又はそれよりも多くの刺激リードは、リードによって担持された電極が望ましいパターン及び間隔で配置されて電極アレイを生成するように、患者の背中を通して硬膜外空間内に導入される。市場で入手可能な刺激リードの1つの種類は、リング電極を有する円柱体を含む経皮リードであり、この経皮リードは、皮膚を通して望ましい脊柱の間を通り、硬膜層の上の硬膜外空間内に入るTouhy状の針を通じて患部精髄組織との接触状態で導入することができる。片側性疼痛に対しては、経皮リードは、脊髄の対応する横側に配置される。両側性疼痛に対しては、経皮リードは、脊髄の正中線上に配置されるか、又は2つ又はそれよりも多くの経皮リードが脊髄正中線のそれぞれの側に配置され、更に、第3のリードが使用される場合には脊髄正中線上に配置される。脊髄のターゲット区域における刺激リードの適正配置の後に、リードは、刺激リードの移動を防止するために出口の部位に固定される。刺激リードの出口ポイントから離れた神経刺激器の設置を容易にするために、時にリード延長部が使用される。
【0005】
刺激リード又はリード延長部は、次に、IPGに接続され、IPGは、次に、電極を通じてターゲット組織、特に、背柱及び脊髄内の後根繊維に送出される電気パルスを発生させるように作動させることができる。刺激は、患者によって感知される疼痛信号を置換する別の感覚として特徴付けることができる錯感覚として公知の感覚をもたらす。手術中には(すなわち、外科的処置中には)、神経刺激器は、刺激の効果を試し、最適な疼痛緩和に関して刺激パラメータを調節するように作動させることができる。患者は、疼痛区域にわたる錯感覚の存在に関して口頭フィードバックを与えることができ、このフィードバックに基づいて、必要に応じてリード位置を調節し、再固定することができる。刺激パラメータの選択を容易にするために、「Boston Scientific Neuromodulation Corporation」から入手可能な「Bionic Navigator(登録商標)」のようなコンピュータプログラムを臨床医のプログラム作成器(CP)(上記に簡単に解説した)に組み込むことができる。次に、システムを完全に埋め込むために、いずれの切開部も閉鎖される。手術後(すなわち、外科的処置が完了した後)、臨床医は、コンピュータ処理によるプログラミングシステムを用いて治療を最適化し直すように刺激パラメータを調節することができる。
【0006】
電気刺激用途(例えば、神経刺激、心臓再同期治療等)では、マルチリード構成が益々使用されてきている。SCSの神経刺激用途では、複数のリードの使用は、刺激面積及び侵入深度(従って、カバレージ)を増大させるだけでなく、いずれかの縦方向単一リード構成に加えて横方向多重極(二重極、三重極、又は四重極)刺激のような刺激におけるアノード電極とカソード電極との更に別の組合せを可能にする。
【0007】
いくつかの研究は、侵入及び錯感覚のカバレージを改善するのに生理学的正中線の両側に対称に配置された狭間隔並列リードを使用する利点を明らかにしている(J.J.Struijk及びJ.Holsheimer著「三重極脊髄刺激:二重チャンネルシステムの理論的性能(Tripolar Spinal Cord Stimulation: Theoretical Performance of a Dual Channel System)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第34巻、第4号、1996年、273〜279ページ、J.Holsheimer、B.Nuttin、G.King、W.Wesselink、J.Gybels、及びP.de Sutter著「脊髄刺激のための新しいシステムを用いた錯感覚誘導の臨床評価(Clinical Evaluation of Paresthesia Steering with a New System for Spinal Cord Stimulation)」、Neurosurgery、第42巻 第3号、1998年、541〜549ページ、Holsheimer J.、Wesselink、W.A.著「脊髄刺激のための最適な電極幾何学構成:幅狭二重極及び三重極(Optimum Electrode Geometry for Spinal Cord Stimulation:the Narrow Bipole and Tripole)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第35巻、1997年、493〜497ページを参照されたい)。
【0008】
SCSの有効性は、身体のうちで患者が疼痛を受ける領域内で誘発される錯感覚に対応する刺激を脊髄組織に与える機能に関連する。従って、実用的な臨床の論理的フレームは、SCSからの有効な結果の取得が、電気刺激が患者の身体内で疼痛(すなわち、治療のターゲット)とほぼ同じ位置に配置される錯感覚を誘導することになるような脊髄組織に対する位置(縦横両方の)に1つ又は複数の神経刺激リードが配置されることに依存するということである。リードが正しく位置決めされなかった場合には、患者は、埋め込まれたSCSシステムから殆ど又は全く利益を受けないことになる。従って、正しいリード配置は、有効な疼痛治療と無効な疼痛治療の間の差を意味することができる。
【0009】
リードの移動が発生すると、適正な錯感覚カバレージは、殆どの場合、例えば、「Bionic Navigator(登録商標)」ソフトウエアを使用することによってIPGをプログラムし直すことによって再捕捉することができる。複数の経皮リードが使用される場合には、発生電界の極を適正に配置するために、IPGのプログラミングは、リードの間の相対位置の知識を多くの場合に必要とする。しかし、そのような情報は、蛍光透視撮像を実施しない限り、プログラム作成器に対して即座に利用することができるものではない。蛍光透視撮像は、電離放射線を伴い、時間及び経費を追加し、更に、嵩高な機器を必要とし、これらの両方により、臨床環境におけるその使用が限定され、臨床環境の外部におけるその使用が事実上妨げられる可能性がある。システムが完全に埋め込まれる前に、そのようなリード配置が適時に検出されない場合には、非効率的な治療がもたらされる可能性があり、時にリードの改修のための2度目の外科手術が必要である。従って、リード移動は、脊髄刺激治療の最も一般的な技術的弊害であり続けている。文献の再調査により、リード移動の発生率が約13.2%であることが示されている(T.Cameron著「慢性疼痛の治療のための脊髄刺激の安全性及び有効性:20年にわたる文献の再調査(Safety and Efficacy of Spinal Cord Stimulation for the Treatment of Chronic Pain: a 20−Year Literature Review)」、「J Neurosurg:Spine 2004」、100:254〜267ページを参照されたい)。
【0010】
現在、複数のリードの相対位置は、リード電極の間の電気信号を測定することによって電子的に推定することができる。例えば、「Bionic Navigator(登録商標)」ソフトウエアは、電極から測定されて媒体中の電流の流れに起因して発生する電界電位のプロフィールを精査することによって相対リード位置を推定する電子発生リード(EGL)走査を使用する。特に、EGL走査機能は、測定交差リード電界電位を既知のリード構成に対して「有限要素モデル(FEM)」から計算されたものと比較することによってリードスタガを検出する。FEMモデルは、電極上で測定されることが予想される電界電位の予想を与え、脊髄内の様々な要素の幾何学的性質及び電気挙動、並びに人体中に発生する電界電位に課せられる境界条件に対処する。リードスタガは、測定交差リード電界電位のプロフィールをいくつかの既知のリード構成に関するFEMモデルから計算されたものと比較することによって判断することができる。モデル化電界電位プロフィールが測定電界電位プロフィールと最良適合するリード構成は、検出リード構成として表される。
【0011】
この技術は、埋め込まれたリードの相対位置に関する情報を蛍光透視法を使用することなく取得する自動的な手段を与える。そのような情報は、プログラミング精度を高めるのに使用することができ、従って、患者の結果及び治療の有効性が改善される。FEMモデルによって発生する多くの基準プロフィールに対する測定電界電位プロフィールの比較は、計算負荷が高く、大量のメモリを必要とするが、CPは、これらの計算を効率的に実行するのに必要な処理パワー及びメモリを有するコンピュータに具現化される。
【0012】
次世代SCSシステムは、治療を改善するためにシステムの刺激プログラムに対するより高い制御を患者に与えることが予想されるので、より高いプログラミング機能(これまでCPにおいて見合わせられていた)をRC及びIPC内に組み込むことが提案されている。CPによるIPGのプログラミングにおける場合と同様に、IPGを適正にプログラムするのに必要である場合がある相対リード位置をRC内で電子的に判断する機能を有することが同じく望ましい。しかし、「EGL走査機能」の場合には、リードスタガを判断するために測定交差リード電界電位が比較される既知の電界電位プロフィールは、EGL走査処理中にロードされるデータベースに格納される。これは、RCにおいて利用可能ではない場合があるデータベースストレージのためのメモリ空間を必要とするので、現在のEGL走査機能をRC内に直接に移すのに潜在的な困難を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願番号第61/030,506号明細書
【特許文献2】米国特許第6,895,280号明細書
【特許文献3】米国特許出願番号第11/689,918号明細書
【特許文献4】米国特許出願番号第11/565,547号明細書
【特許文献5】米国特許第6,516,227号明細書
【特許文献6】米国特許第6,993,384号明細書
【特許文献7】米国特許出願番号第10/364,436号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J.J.Struijk及びJ.Holsheimer著「三重極脊髄刺激:二重チャンネルシステムの理論的性能(Tripolar Spinal Cord Stimulation: Theoretical Performance of a Dual Channel System)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第34巻、第4号、1996年、273〜279ページ
【非特許文献2】J.Holsheimer、B.Nuttin、G.King、W.Wesselink、J.Gybels、及びP.de Sutter著「脊髄刺激のための新しいシステムを用いた錯感覚誘導の臨床評価(Clinical Evaluation of Paresthesia Steering with a New System for Spinal Cord Stimulation)」、Neurosurgery、第42巻 第3号、1998年、541〜549ページ
【非特許文献3】Holsheimer J.、Wesselink、W.A.著「脊髄刺激のための最適な電極幾何学構成:幅狭二重極及び三重極(Optimum Electrode Geometry for Spinal Cord Stimulation:the Narrow Bipole and Tripole)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第35巻、1997年、493〜497ページ
【非特許文献4】T.Cameron著「慢性疼痛の治療のための脊髄刺激の安全性及び有効性:20年にわたる文献の再調査(Safety and Efficacy of Spinal Cord Stimulation for the Treatment of Chronic Pain: a 20−Year Literature Review)」、「J Neurosurg:Spine 2004」、100:254〜267ページ
【非特許文献5】Lee D.、Moffitt M.Bradley K.、Peterson D.著「電界成形による選択的神経活性化:脊髄刺激のための新しいコンピュータモデルからの結果(Selective Neural Activation by Field Sculpting: Results From a New Computer Model for Spinal Cord Stimulation)」、第16回計算神経科学年次会議、2006年7月7〜12日、カナダ、トロント:177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
すなわち、大量のメモリ空間を必要とすることなくリードの相対位置を判断する技術に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様により、患者の組織(例えば、脊髄組織)の近くに配置された2つの電極リードを作動させる方法を提供する。本方法は、複数の交差リード電気パラメータ(例えば、発生電界の電界電位)を測定して電極リードの測定電気プロフィールを発生させる段階(例えば、リードの一方によって担持された少なくとも1つの電極を作動させて組織内に電界を発生させ、発生電界に応じてリードの他方によって担持された複数の電極の各々において電気パラメータの振幅を測定することにより)を含む。
【0017】
本方法は、更に、複数の交差リード電気パラメータを推定して、第1の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させる段階(例えば、一方のリードによって担持された電極において発生した電界をモデル化することにより)と、他方のリードによって担持された電極の第1のセットにおける電気パラメータの振幅をモデル化電界を用いて推定する段階とを含む。本方法は、更に、第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて、第2の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させる段階(例えば、第1の電極セットからの推定振幅を他方のリードによって担持された電極の第2のセットにシフトさせることにより)と、他方のリードによって担持された電極のうちの終端の1つにおける電気パラメータの振幅をモデル化電界を用いて推定する段階とを含む。
【0018】
本方法は、更に、測定電気プロフィールを第1及び第2の基準電気プロフィールと比較する段階を含む。実時間解析を提供し、ストレージ空間を最底限に抑制するために、測定電気プロフィールを第1の基準電気プロフィールと比較する段階に続いて第2の基準電気プロフィールを発生させることができる。1つの方法では、第1のリードのスタガ構成と第2のリードのスタガ構成とは、互いから中心間電極間隔1つ分オフセットされ、複数の推定交差リード電気パラメータは、中心間電極間隔1つ分空間的にシフトされる。この場合、本方法は、更に、別の複数の交差リード電気パラメータを推定して、第1の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離オフセットされた第3の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第3の基準電気プロフィールを発生させる段階と、別の複数の推定交差リード電気パラメータを電極間隔1つ分空間的にシフトさせて、第3の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分オフセットされた第4の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第4の基準電気プロフィールを発生させる段階と、測定電気プロフィールを第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールと比較する段階とを含むことができる。
【0019】
本方法は、更に、比較に基づいて電極リード間の縦スタガを定量化する段階を含む。1つの方法では、測定電気プロフィールに最良適合する既知の電気プロフィールに対応する既知のスタガ構成は、定量化縦スタガとして選択される。任意的な方法では、定量化縦スタガを有するリードのグラフィック表現が表示される。別の任意的な方法では、神経刺激器は、定量化縦スタガに基づいて複数の刺激パラメータを用いてプログラムされる。
【0020】
任意的な方法は、付加的な複数の交差リード電気パラメータを推定して、中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離だけ互いからオフセットされた付加的な複数の既知のスタガ構成にある電極リードに関する付加的な複数の基準電気プロフィールをそれぞれ発生させる段階と、測定電気プロフィールを付加的な基準電気プロフィールと比較する段階と、測定電気プロフィールと第1、第2、及び付加的な基準電気プロフィールとの間の比較に基づいて電極リード間の縦スタガを定量化する段階とを含む。付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる距離は、例えば、事前判断することができ、又は測定電気プロフィールと付加的な基準電気プロフィールの少なくとも一部との間の比較に基づいて動的に選択することができる。
【0021】
本発明の第2の態様により、電極リードとの併用のための神経刺激制御システムを提供する。神経刺激制御システムは、ユーザから入力を受け取るように構成されたユーザインタフェースを含む。更に、神経刺激制御システムは、複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を発生させ、測定交差リード電気パラメータから電極リードの測定電気プロフィールを発生させ、複数の交差リード電気パラメータを推定して第1の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させ、第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて第2の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させ、測定電気プロフィールを第1及び第2の基準電気プロフィールと比較し、比較に基づいて電極リード間の縦スタガを定量化するように構成されたプロセッサを含む。これらのプロセッサ機能の詳細内容は、本方法に関して上述したものと同じとすることができる。更に、外部制御デバイスは、定量化縦スタガを有するリードを表示するためのディスプレイを含むことができる。神経刺激制御システムは、ユーザインタフェース及び少なくとも1つのプロセッサを含む外部制御デバイスを含むことができる。この場合、神経刺激制御システムは、複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を神経刺激器に無線送信するように構成された遠隔測定回路を更に含むことができる。代替的に、処理機能の少なくとも一部は、神経刺激デバイス自体の中に組み込むことができる。
【0022】
本発明の他の及び更に別の態様及び特徴は、本発明の限定ではなく例示を意図した以下に続く好ましい実施形態の詳細説明から明らかであろう。
【0023】
図面は、本発明の好ましい実施形態の設計及び有利性を示しており、これらの図面では、類似の要素を共通の参照番号で表記している。上記に列記したもの及び他の本発明の利点及び目的が如何に達成されるかをより明快に理解するために、上記に簡単に説明した本発明のより具体的な説明を添付図面に例示する本発明の特定的な実施形態を参照して行う。これらの図面が本発明の典型的な実施形態しか示しておらず、従って、これらの図面を本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないという理解の下に、本発明を添付図面を用いながら更に具体的かつ詳細に以下に説明かつ解説する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によって構成された脊髄刺激(SCS)システムの一実施形態の平面図である。
【図2】図1のSCSシステムに使用される埋め込み可能パルス発生器(IPG)と経皮刺激リードの別の実施形態との平面図である。
【図3】図1のSCSシステムの患者に対して使用する際の平面図である。
【図4】図1のIPGの内部構成要素のブロック図である。
【図5】図1のSCSシステムに対して使用することができる遠隔制御器の平面図である。
【図6】図5の遠隔制御器の内部構成要素のブロック図である。
【図7】図1のSCSシステムに対して使用することができる臨床医のプログラム作成器の構成要素のブロック図である。
【図8a】一方のリードが電流を供給するのに使用され、他方のリードが電界電位を測定するのに使用される図1のSCSシステムに使用される1対の電極リード及びそれに対応する測定電界電位プロフィールの図である。
【図8b】一方のリードが電流を供給するのに使用され、他方のリードが電界電位を測定するのに使用される図1のSCSシステムに使用される1対の電極リード及びそれに対応する測定電界電位プロフィールの図である。
【図9a】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成の電極から別の既知のリードのスタガ構成に変換する図1のSCSシステムのRCによって使用される「シフト」方式を示す平面図である。
【図9b】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成の電極から別の既知のリードのスタガ構成に変換する図1のSCSシステムのRCによって使用される「シフト」方式を示す平面図である。
【図10a】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成から電極中心間隔よりも小さく互いからオフセットされた別の既知のリードのスタガ構成に変換する図9aの「シフト」方式と併用される「掃引」を示す平面図である。
【図10b】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成から電極中心間隔よりも小さく互いからオフセットされた別の既知のリードのスタガ構成に変換する図9bの「シフト」方式と併用される「掃引」を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に続く説明は、脊髄刺激(SCS)システムに関する。しかし、本発明は、SCSにおける用途に十分に適するが、その最も広義の態様ではそのように限定することができないことは理解されるものとする。より正確には、本発明は、組織を刺激するのに使用されるあらゆる種類の埋め込み可能電気回路と併用することができる。例えば、本発明は、ペースメーカー、細動除去器、蝸牛刺激器、網膜刺激器、連係した体肢運動をもたらすように構成された刺激器、皮質刺激器、脳深部刺激器、末梢神経刺激器、微小刺激器のようなマルチリードシステムの一部として、又は尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼、頭痛などを治療するように構成されたあらゆる他の神経刺激器に対して使用することができる。
【0026】
最初に図1を参照すると、例示的なSCSシステム10は、一般的に、複数の経皮リード12(この場合、2つの経皮リード12(1)及び12(2))、埋め込み可能パルス発生器(IPG)14、外部遠隔制御器(RC)16、臨床医のプログラム作成器(CP)18、外部試験刺激器(ETS)20、及び外部充電器22を含む。
【0027】
IPG14は、アレイで配置された複数の電極26を担持する刺激リード12に2つのリード延長部24を通じて物理的に接続される。より詳細に以下に説明するが、IPG14は、刺激パラメータセットに従って電気刺激エネルギをパルス電気波形(すなわち、電気パルスの時系列)の形態で電極アレイ26に送出するパルス発生回路を含む。IPG14及び刺激リード12は、例えば、中空針、スタイレット、トンネリングツール、及びトンネリングストローと共に埋め込み可能神経刺激キットとして準備することができる。埋め込み可能キットを解説する更なる詳細内容は、「一時的神経刺激リード識別デバイス(Temporary Neurostimulation Lead Identification Device)」という名称の米国特許出願番号第61/030,506号明細書に開示されており、この文献は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0028】
刺激リード12には、経皮リード延長部28又は外部ケーブル30を通じてETS20を物理的に接続することができる。IPG14と類似のパルス発生回路を有するETS20もまた、電気刺激エネルギをパルス電気波形の形態で刺激パラメータセットに従って電極アレイ26に送出する。ETS20とIPG14との主な相違点は、ETS20が、供給される刺激の応答性を試すために、刺激リード12が埋め込まれた後でかつIPG14の埋め込みの前に試行ベースに使用される埋め込み不能デバイスである点である。例示的なETSの更なる詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書に説明されており、この文献は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0029】
RC16は、双方向RF通信リンク32を通じてETS20を遠隔測定制御するのに使用することができる。IPG14及び刺激リード12が埋め込まれた状態で、IPG14を双方向RF通信リンク34を通じて遠隔測定制御するためにRC16を使用することができる。そのような制御は、埋め込みの後にIPG14を起動又は停止させ、異なる刺激プログラムを用いてプログラムすることを可能にする。IPG14をプログラムし終わり、かつその電源を充電又はそうでなければ補充し終わった状態で、IPG14は、RC16がなくても、プログラムされた通りに機能することができる。
【0030】
CP18は、手術室及び予後の診察においてIPG14及びETS20をプログラムするための詳細な刺激パラメータを臨床医に供給する。CP18は、IR通信リンク36を通じてRC16を通してIPG14又はETS20と間接的に通信することによって上述の機能を実行することができる。代替的に、CP18は、RF通信リンク(図示せず)を通じてIPG14又はETS20と直接通信することができる。
【0031】
外部充電器22は、誘導リンク38を通じてIPG14を経皮的に充電するのに使用される可搬式デバイスである。簡潔化の目的で、外部充電器22の詳細内容に対しては、本明細書では説明しない。外部充電器の例示的な実施形態の詳細内容は、先に引用によって本明細書に組み込んだ米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。IPG14をプログラムし終わり、その電源を外部充電器22によって充電又はそうでなければ補充し終わった状態で、IPG14は、RC16又はCP18がなくても、プログラムされた通りに機能することができる。
【0032】
次に、図2を参照して刺激リード12及びIPG14の外部機能を簡単に以下に説明する。刺激リード12の各々は、8つの電極26(それぞれE1〜E8及びE9〜E16とラベル付けしている)を有する。リード及び電極の実際の個数及び形状は、当然ながら目標とする用途に従って変化することになる。経皮刺激リードを製造する構造及び方法を説明する更なる詳細内容は、「リードアセンブリ及びその作成法(Lead Assembly and Method of Making Same)」という名称の米国特許出願番号第11/689,918号明細書及び「神経刺激のための円柱多接点電極リード及びその作成法(Cylindrical Multi−Contact Electrode Lead for Neural Stimulation and Method of Making Same)」という名称の米国特許出願番号第11/565,547号明細書に開示されており、これらの開示内容は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0033】
IPG14は、電子構成要素及び他の構成要素(以下により詳細に説明する)を収容するための外側ケース40を含む。外側ケース40は、チタンのような導電性の生体適合性材料で構成され、内部電子機器が体組織及び体液から保護される密封区画を形成する。一部の場合には、外側ケース40は、電極として機能することができる。IPG14は、更に、電極26を外側ケース40内の内部電子機器(以下により詳細に説明する)に電気的に接続する方式で刺激リード12の近位端が嵌合するコネクタ42を含む。この目的のために、コネクタ42は、3つの経皮リード12の近位端を受け取るための2つのポート(図示せず)を含む。リード延長部24が使用される場合には、ポートは、代替的に、そのようなリード延長部24の近位端を受け取ることができる。
【0034】
以下により詳細に説明するが、IPG14は、パラメータセットに従って電気刺激エネルギを電極26に供給するパルス発生回路を含む。そのようなパラメータは、アノード(正)、カソード(負)として作動され、停止(ゼロ)される電極を定める電極組合せと、パルス振幅(IPG14が電極に定電流又は定電圧のいずれを供給するかに依存してミリアンペア又はボルトで測定される)、パルス持続時間(マイクロ秒で測定される)、パルス繰返し数(パルス毎秒で測定される)、及びパルス形状を定める電気パルスパラメータとを含むことができる。
【0035】
SCSシステム10の作動中に供給されるパルスパターンに関して、電気エネルギを伝達する又は受け取るように選択される電極を本明細書では「作動の」と呼び、それに対して電気エネルギを伝達する又は受け取るように選択されない電極を本明細書では「非作動の」と呼ぶ。電気エネルギ送出は、2つ(又はそれよりも多く)の電極の間で発生することになり、これらの電極のうちの1つは、電流が、IPGケース40内に含まれるエネルギソースから組織への経路と、組織からケース内に含まれるエネルギソースへのシンク経路とを有するようにIPGケース40とすることができる。電気エネルギは、単極又は多重極(例えば、二重極、三重極等)方式で組織に伝達することができる。
【0036】
単極送出は、リード電極26のうちで選択された1つ又はそれよりも多くがIPG14のケース40と共に作動され、従って、電気エネルギが選択された電極26とケース40との間で伝達される場合に発生する。単極送出は、リード電極26のうちの1つ又はそれよりも多くが、1つ又はそれよりも多くのリード電極26から離れて設けられた大きいリード電極群と共に作動されて単極効果をもたらすような場合、すなわち、電気エネルギが、1つ又はそれよりも多くのリード電極26から比較的等方的に伝達される場合に発生する場合もある。二重極送出は、リード電極26のうちの2つがアノードとカソードとして作動され、従って、電気エネルギが選択された電極26の間で伝達される場合に発生する。三重極送出は、リード電極26のうちの3つが、2つをアノードとし、残りの1つをカソードとして、又は2つをカソードとし、残りの1つをアノードとして作動される場合に発生する。
【0037】
図3を参照すると、刺激リード12は、患者48の脊椎46の中に埋め込まれる。刺激リード12の好ましい配置は、刺激される脊髄区域に近い硬膜に近く、すなわち、その近く又はその上に収まる。刺激リード12が脊椎46を出る位置の近くの空間の欠如に起因して、一般的に、IPG14は、腹部内又は臀部上方のいずれかにおける外科手術によって作成されたポケット内に埋め込まれる。IPG14は、当然ながら患者の身体の他の位置に埋め込むことができる。リード延長部24は、刺激リード12の出口ポイントから離れてIPG14を設置するのを容易にする。図3に示しているように、CP18は、RC16を通じてIPG14と通信を行う。刺激リード12は、患者の脊髄区域の近くに埋め込まれているように例示しているが、体肢又は脳のような周辺領域を含む患者の身体におけるどこにでも埋め込むことができる。埋め込み後、IPG14は、患者の制御の下で治療的刺激を供給するように使用される。
【0038】
次に、図4に着目し、ここでIPG14の主な内部構成要素を以下に説明する。IPG14は、データバス64上の制御論理62の制御下で、指定されたパルス振幅、パルス繰返し数、パルス幅、パルス形状、及びバースト率を有する所定のパルス波形に従って電気刺激エネルギを発生させるように構成された刺激出力回路60を含む。電気波形のパルス繰返し数及びパルス幅の制御は、適切な分解能、例えば、10μsを有することができるタイマ論理回路66によって容易にされる。刺激出力回路60によって発生する刺激エネルギは、コンデンサーC1〜C16を通じて電極26に対応する電気端子68に出力される。
【0039】
アナログ出力回路60は、指定された既知のアンペア数の刺激パルスを電気端子68へ又はそこから供給するための独立して制御される電流供給源か、又は指定された既知の電圧の刺激パルスを電気端子68において供給するか又は電気端子68に接続した多重化電流供給源又は多重化電圧供給源に供給するための独立して制御される電圧供給源かのいずれかを含むことができる。規定の振幅及び幅の刺激パルスを発生させる同じ機能を実行するのに適する出力回路の別の実施形態を含むこのアナログ出力回路の作動は、米国特許第6,516,227号明細書及び第6,993,384号明細書により完全に説明されており、これらの文献は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0040】
IPG14は、更に、IPG14にわたる様々なノード又は他のポイント72のステータス、例えば、電源電圧、温度、及びバッテリ電圧などをモニタするためのモニタ回路70を含む。取りわけ、電極26は、脊椎の硬膜外空間内に緊密に収まり、組織は導電性を有するので、電極26から電気測定値を取得することができる。重要な点として、モニタ回路70は、以下により詳細に説明するように、RC16及びCP18がリード12の間の相対位置を自動的に判断することができるように、そのような電気測定値を取得するように構成される。図示の実施形態では、リード12の相対位置を判断するためにモニタ回路70によって得られる電気測定値は、電界電位又は電界電位を導出するために使用することができる他の電気パラメータ(例えば、電流及び/又はインピーダンス)である。モニタ回路70は、それぞれの電極26と組織の間の結合効率を判断するために、及び/又は電極26とIPG14のアナログ出力回路60の間の接続に関する障害検出を容易にするために、各電極26におけるインピーダンスを測定することができる。
【0041】
電気データは、様々な手段のうちのいずれか1つを用いて測定することができる。例えば、電気データ測定は、先に引用によって本明細書に組み込んだ米国特許出願番号第10/364,436号明細書に説明されているように、電気刺激パルスが組織に印加されている間の時間の一部分の間、又は刺激の直後にサンプリングベースで行うことができる。代替的に、電気データ測定は、米国特許第6,516,227号明細書及び第6,993,384号明細書に説明されているように電気刺激パルスとは独立して行うことができ、これらの文献は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0042】
IPG14は、更に、データバス76上の制御論理62を制御して、モニタ回路70からデータバス78を通じてステータスデータを取得するマイクロコントローラ74の形態の処理回路を含む。更に、マイクロコントローラ74は、タイマ論理66を制御する。IPG14は、更に、マイクロコントローラ74に結合されたメモリ80と、発振器及びクロック回路82とを含む。それによってマイクロコントローラ74は、メモリ80、並びに発振器及びクロック回路82との組合せで、メモリ80に格納された適切なプログラムに従ってプログラム機能を実行するマイクロプロセッサシステムを構成する。代替的に、一部の用途では、マイクロプロセッサシステムによって提供される機能を適切な状態機械によって実行することができる。
【0043】
すなわち、マイクロコントローラ74は、必要な制御信号及びステータス信号を発生させ、それによってマイクロコントローラ74は、選択された作動プログラム及びパラメータに従ってIPG14の作動を制御することが可能になる。IPG14の作動を制御するのに、マイクロコントローラ74は、アナログ出力回路60を制御論理62及びタイマ論理66との組合せに用いて、電極26に電気パルスを個々に発生させることができ、それによって各電極26を単極ケース電極を含む他の電極26と対又は群にし、電流刺激パルスが供給される際の極性、振幅、率、及びパルス幅を制御することが可能になる。
【0044】
IPG14は、更に、RC16から適切な変調搬送波信号でプログラミングデータ(例えば、作動プログラム及び/又は刺激パラメータ)を受信するための交流(AC)受信コイル84と、AC受信コイル84を通じて受信する搬送波信号を復調してプログラミングデータを復元するための充電及び順方向遠隔測定(フォワードテレメトリ)回路86とを含み、この場合、これらのプログラミングデータは、メモリ80内、又はIPG14にわたって分散された他のメモリ要素(図示せず)に格納される。
【0045】
IPG14は、更に、モニタ回路70によって検知された情報データ(電界電位データ及びインピーダンスデータを含む)をRC16に送信するための帰還遠隔測定(バックテレメトリ)回路88及び交流(AC)送信コイル90を含む。IPG14の帰還遠隔測定機能は、そのステータスを検査することも可能にする。例えば、刺激パラメータに加えられたあらゆる変更は帰還遠隔測定を通じて確認され、それによってそのような変更が、IPG14内で正しく受け取られ、実施されたことが保証される。更に、RC16による照会時に、IPG14に格納された全てのプログラミング可能な設定をRC16にアップロードすることができる。
【0046】
IPG14は、更に、IPG14に作動電力を供給するための再充電可能電源92及び電力回路94を含む。再充電可能電源92は、例えば、リチウムイオンバッテリ又はリチウムイオンポリマーバッテリを含むことができる。再充電可能電源92は、未調整電圧を電力回路94に供給する。電力回路94は、次に、IPG14内に設けられた様々な回路による必要に応じて一部が調整され、一部が調整されない様々な電圧96を発生させる。再充電可能電源92は、AC受信コイル84によって受信される整流AC電力(又は他の手段、例えば、効率的なACからDCへのコンバータ回路によってA電力から変換されたDC電力)を用いて再充電される。電源92を再充電するために、AC磁場を発生させる外部充電器(図示せず)は、埋め込まれたIPG14の上の患者の皮膚に当てて又はそうでなければ隣接して配置される。外部充電器によって放出されるAC磁場は、AC受信コイル84内にAC電流を誘導する。充電及び順方向遠隔測定回路86は、AC電流を整流して、電源92を充電するのに使用されるDC電流を生成する。AC受信コイル84が、通信(例えば、プログラミングデータ及び制御データ)を無線で受信すること及び外部デバイスからエネルギを充填することの両方に使用されるように説明したが、AC受信コイル84は、専用充電コイルとして配置することができ、一方、コイル90のような別のコイルは、双方向遠隔測定に使用することができることを認めるべきである。
【0047】
図4の図は単に機能的なものであり、限定的であるように意図していないことに注意すべきである。当業者は、本明細書に提供する説明を理解した上で、提供かつ説明する機能を実行する多くの種類のIPG回路又は均等回路を即座に構成することができるであろう。SCSシステム10は、神経刺激器のためのIPGではなく、刺激リード12に接続した埋め込み可能受信機−刺激器(図示せず)を代替的に利用することができることに注意すべきである。この場合、埋め込まれた受信機、並びに受信機−刺激器に命令する制御回路に電力供給するための電源、例えば、バッテリは、受信機−刺激器に電磁リンクを通じて誘導結合された外部コントローラに収容されることになる。データ/電力信号は、埋め込まれた受信機−刺激器の上に配置されたケーブル接続の送信コイルから経皮的に結合される。埋め込まれた受信機−刺激器は信号を受信して、制御信号に従って刺激を発生させる。
【0048】
次に、図5を参照して、RC16の一例示的実施形態を以下に説明する。先に解説したように、RC16は、IPG14、CP18、又はETS20と通信を行うことができる。RC16は、内部構成要素(プリント回路基板(PCB)を含む)を収容するケーシング100と、ケーシング100の外面によって担持された照明表示画面102及びボタンパッド104とを含む。図示の実施形態では、表示画面102は、照明フラットパネル表示画面であり、ボタンパッド104は、フレックス回路の上に位置決めされた金属ドームを有する膜スイッチと、PCBに直接接続したキーパッドとを含む。任意的な実施形態では、表示画面102は、タッチスクリーン機能を有する。ボタンパッド104は、IPG14を起動及び停止することを可能にし、IPG14内の刺激パラメータの調節又は設定を可能にし、画面の間の選択を可能にする複数のボタン106、108、110、及び112を含む。
【0049】
図示の実施形態では、ボタン106は、IPG14を起動及び停止するように作動させることができるオン/オフボタンとして機能する。ボタン108は、RC106が画面表示及び/又はパラメータの間で切り換わることを可能にする選択ボタンとして機能する。ボタン110及び112は、パルス振幅、パルス幅、及びパルス繰返し数を含むIPG14によって発生するパルスの刺激パラメータのうちのいずれかを増大又は低下させるように作動させることができる上/下ボタンとして機能する。
【0050】
図6を参照して、ここで例示的なRC16の内部構成要素を以下に説明する。一般的に、RC16は、プロセッサ114(例えば、マイクロコントローラ)と、プロセッサ114による実行のための作動プログラムを格納するメモリ116と、リンク34(又はリンク32)(図1に示している)を通じて制御データ(刺激パラメータと、ステータス情報を提供する要求とを含む)をIPG14(又はETS20)に送信し、ステータス情報(測定電気データを含む)をIPG14(又はETS20)から受信するために、並びにリンク36(図1に示している)を通じてCP18から制御データを受信し、ステータスデータをCP18に送信するための遠隔測定(テレメトリ)回路118とを含む。更に、RC16は、ボタンパッド104から刺激制御信号を受け取り、表示画面102(図5に示している)にステータス情報を伝達するための入力/出力回路120を含む。RC16の機能及び内部構成要素の更なる詳細内容は、先に引用によって本明細書に組み込んだ米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。
【0051】
上記に簡単に解説したように、CP18は、複数の電極組合せのプログラミングを大幅に簡素化し、医師又は臨床医がIPG14、並びにRC16内にプログラミングされる望ましい刺激パラメータを即座に判断することを可能にする。この場合、埋め込み後のIPG14のプログラミング可能なメモリ内の刺激パラメータの修正は、臨床医により、IPG14と直接通信を行うことができ又はRC16を通じてIPG14と間接的に通信を行うことができるCP18を用いて実施される。すなわち、CP18は、医師又は臨床医が脊髄の近くの電極アレイ26の作動パラメータを修正するのに使用することができる。
【0052】
図3に示しているように、CP18の全体の外観は、ラップトップパーソナルコンピュータ(PC)のものであり、実際に、指向プログラミングデバイスを含むように適切に構成され、本明細書に説明する機能を実施するようにプログラムされたPCを用いて実施することができる。この場合、プログラミング技術は、CP18内に含まれるソフトウエア命令を実行することによって実施することができる。代替的に、そのようなプログラミング技術は、ファームウエア又はハードウエアを用いて実施することができる。いずれの場合にも、CP18は、IPG14(又はETS20)によって発生する電気刺激の特性を能動的に制御することができ、患者のフィードバックに基づいて最適な刺激パラメータを判断し、その後にこの最適な刺激パラメータを用いてIPG14(又はETS20)をプログラムすることを可能にする。
【0053】
臨床医がこれらの機能を実行することを可能にするために、CP18は、マウス121、キーボード122、及びケース126に収容されたプログラミング表示画面124を含む。マウス121に加えて又は代替的に、ジョイスティック、又はキーボード122に付随するキーの一部として含まれる方向キーのような他の指向プログラミングデバイスを使用することができることを認めるべきである。図7に示しているように、一般的に、CP18は、プロセッサ128(例えば、中央演算装置(CPU))と、臨床医がIPG14(又はETS20)及びRC16をプログラムすることを可能にするためにプロセッサ128を実行することができる刺激プログラミングパッケージ132を格納するメモリ130とを含む。更に、CP18は、リンク36(図1に示している)を通じて刺激パラメータをRC16にダウンロードし、RC16のメモリ116内に既に格納されている刺激パラメータをアップロードするための遠隔測定(テレメトリ)回路134を含む。遠隔測定回路134は、RC16を通じて間接的に制御データ(刺激パラメータと、ステータス情報を提供する要求とを含む)をIPG14(又はETS20)に送信し、ステータス情報(測定電気データを含む)をIPG14(又はETS20)から受信するようにも構成される。
【0054】
CP18は、2つのリードの間の相対位置を判断するために、1つ又はそれよりも多くの交差(クロス)リード電界測定値を取得し、これらの測定値を既知のリード構成の基準電界測定値と比較することにより、経皮リード12の相対的位置決め(例えば、スタガ(又はずれ)、分離及び/又は傾斜角)を自動的に判断するように構成される。以下に説明する実施形態では、電界電位測定値が得られるが、代替的に、インピーダンス測定値のような他の種類の測定値を取得することができる。CP18は、比較的高い処理パワー及び記憶機能を有するので、リード12の相対位置を判断するのに本発明の背景技術で解説したもののような従来の手段を使用することができる。
【0055】
CP18は、1つのリード12上のいくつかの電極上の電界電位を別のリード12上の電極から供給される電流に応じて測定することによってこの機能を提供する。特に、電流供給源の存在に起因する導電媒体中の電流の流れには、電位電界が伴う(付随する)ことは公知である。例示的に、点電流供給源では、電界電位は、ソース電流に次式のように関連する[1]。
ここで、Φは、電界電位であり、σは、媒体の導電率であり、rは、点電流供給源までの距離であり、Iは、印加されるソース電流である。一般的に、単極では、電界電位(絶対値)は、電流供給源からの距離が増大すると共に低下する。多重極リード12(1)、12(2)のシステム(図8a及び図8bに示している)では、電極(例えば、リード12(1)上の電極)のうちの各々から電流を供給して、他の全ての非能動的な電極(例えば、リード12(2)上の電極)上の電界電位を測定することによって一連の単極電位測定を実施することができる。各電極上で測定される電界電位は、距離との一般的な関係に従うことになり、電流供給源に最も近い電極が最も高い電界電位を有する。本明細書では点電流供給源モデルのみを例示的に使用するが、電界電位と、電流供給源と測定電極の間の距離との関係を表す上で、有限要素モデル(FEM)又は他の数学モデルのようなより複雑なモデルを使用することができることに注意すべきである。
【0056】
相対リード位置に関する情報を含むのは、交差(クロス)リード(すなわち、ソース電極を含むものとは別のリード)電極から測定される電界電位である。電流が1つの電極上で供給される場合には、交差リード電極上で測定される電界電位は、最も高い電界電位がソース電極に最も近い電極上で測定される可能性が高く、リードに沿って両側で徐々に低下する電界電位が測定されるパターンを示すことになる。例えば、図8a及び図8bに例示している図は、既知のリード位置に関連する交差リード電界電位プロフィールを示している。図8aは、両方のリード12(1)、12(2)が完全に整列している時の基準の場合を示している。ソース接点は、電極E4であり、ソース電極E4に最も近いのは電極E12であり、従って、ピーク電界電位は、電極E12上で測定される。リードがスタガされると、すなわち、ずらして配置されると、(例えば、図8bに例示しているように2つの電極がスタガされる)、ソース電極E4に最も近い交差(クロス)電極は、今度は電極E10になり、従って、このリードに沿って測定されるピーク電界電位も同じく、基準と比較して電極2つ分シフトする。電界電位プロフィールにおけるそのようなシフトは、相対リードのスタガの推定を可能にする特徴的パターンを与える。
【0057】
距離−電位関係に基づいて、交差リード電極上で測定されることが予想される電界電位のプロフィールを既知のリードのスタガに対して予想することができ、CP18のメモリ132内に、モデル化電界電位プロフィール及びそれに対応するリードのスタガ構成を含むルックアップテーブルとして格納することができる。図示の実施形態では、CP18は、これらの電界電位プロフィールを予想するのに数値積分モデル(例えば、FEM)を利用することができる。次に、実際のリードのスタガを推定するために、特定のリードのスタガに対して交差リード電極上で測定された電界電位プロフィールをその相似性/相関性に関して既知のリードのスタガのものに対して精査することができる。相似性/相関性を評価するために、相関性解析(例えば、ピアソン又はスピアマン)を使用することができる。この場合、検出リードのスタガは、モデル化電界電位プロフィールが、測定電界電位と最大相関性を有する際のものとして定められる。
【0058】
RC16は、限られた処理パワー及び記憶機能のみを有するので、計算負荷が高くて大量のストレージ空間を必要とするモデル化電界電位を発生するのに使用されるFEMは、RC16内では実施することができない。代替的に、RC16のプロセッサ114は、解析モデル、並びに以下により詳細に説明する「シフト」方式及び「掃引」手法を用いて実時間で様々なスタガ位置に対する基準電界電位プロフィールを順次発生させることによってリード12の相対位置を識別し、これらの基準プロフィールが発生する時にこれらを以前に測定された電界電位プロフィールと比較するための有効な手段を利用する。従って、RC16は、測定電界電位プロフィール及び一度に1つの基準電界電位プロフィールしか格納する必要がなく、それによってメモリストレージ空間が実質的に低減される。
【0059】
RC16は、上述のことを最初にIPG16(すなわち、図4に示しているモニタ回路70)に対して交差リード電気パラメータ(この場合、電界電位)を従来方式で測定してリード12の測定電気プロフィールを発生させるように命令することによって達成する。具体的には、第1のリード12(1)によって担持されたソース電極(例えば、電極E4)が、ソース電流を発生させるように作動され、発生したソース電流に応じて、第2のリード12(2)によって担持された測定電極の各々(例えば、電極E9〜E16の各々)において電界電位の振幅又は大きさが測定される。第1のリード12(1)上の他のソース電極(例えば、電極E1〜E3及びE5〜E8)も同様にソース電流を発生させるのに使用することができ、第2のリード12(2)によって担持された測定電極の各々(例えば、電極E9〜E16)をそれぞれの発生ソース電流を測定するのに使用することができる。
【0060】
従って、M×N個のデータポイントを有する測定電界電位プロフィールを発生させることができ、ここでMは、ソース電流を発生させるのに使用されるソース電極の個数であり、Nは、ソース電流に応じて電界電位を測定するのに使用される測定電極の個数である。第1のリード12(1)が電極E1〜E8を支持し、第2のリード12(2)が電極E9〜E16を担持する例示的な事例では、電界電位プロフィールは、M×N=64個のデータポイントを有することができる。冗長性又は代替性を与えるために、第2のリード12(2)上の電極をソース電流を発生させることに使用することができ、第1のリード12(1)上の電極をソース電流に応じて電界電位の振幅を測定することに使用することができる。いずれの場合にも、その後に、測定電界電位プロフィールをIPG14からRC16に無線送信することができ、そこでメモリ116(図6に示している)に格納することができる。
【0061】
次に、RC16は、「シフト」方式を用いて交差リード電気パラメータ(この場合交差リード電界電位)を推定して、様々な既知のリードのスタガ構成にある電極リードに対する基準電気プロフィールを発生させる。具体的には、RC16は、第1のリード12(1)によって担持された電極(例えば、電極E4)におけるソース電流に応じて発生する電界をモデル化し、第2のリード12(2)によって担持された電極(例えば、電極E9〜E16)の各々における電界電位の振幅をモデル化された電界を用いて推定することによって最初のリードのスタガ構成に対する最初の基準電界電位プロフィールを発生させる。モデル化される最初の既知のリードのスタガ構成は、図8aに示しているようにいかなるスタガも持たないリードのスタガ構成とすることができる。以下により詳細に説明するが、その後に、他の基準電界電位プロフィールを発生させるために、最初の基準電界電位プロフィールを空間的にシフトさせることができる。
【0062】
図示の実施形態では、FEMからの出力を近似するように、モデルデータを生成する簡単で直接的な手法を与える明示的な数式を用いて電界が解析的にモデル化される。この場合、解析モデルは、単極電界電位をソース電極に対する測定電極の2次元(x,y)位置(すなわち、ソース電極と測定電極の間の縦横の距離)の関数として表し、最小二乗誤差(LSE)という意味でFEM電界電位に対する最適曲線当て嵌めである。Lee D.、Moffitt M.Bradley K.、Peterson D.著「電界成形による選択的神経活性化:脊髄刺激のための新しいコンピュータモデルからの結果(Selective Neural Activation by Field Sculpting: Results From a New Computer Model for Spinal Cord Stimulation)」、第16回計算神経科学年次会議、2006年7月7〜12日、カナダ、トロント:177に説明されているように、目的電界電位が並列経皮リードのFEMから得られる。
【0063】
最適曲線当て嵌めは、次式の形式で得ることができる[2]。
ここで、I、σx、σy、kx、ky、C、及びτは、自由パラメータであり、x及びyは、ソース電極と測定電極の間の横距離及び縦距離である。FEMに対する最適曲線当て嵌めを与える1つの自由パラメータセットは、I=149.5437、σx=7.8359、σy=0.118942、kx=0.476833、ky=2.757028、C=57.9078、及びτ=0.0002945である。すなわち、既知のリードのスタガ構成に対する基準電界電位プロフィールを発生させるために、式[2]を用いて、各測定電極において予想される電界電位(すなわち、測定電極における電界電位の振幅)をいずれかの所定のソース電極に対して計算することができる。取りわけ、モデル方程式の形式は、リード幾何学構成とモデル化される組織媒体とに依存することになる。
【0064】
重要な点として、付加的な既知のリードのスタガ構成に対する基準電界電位プロフィールを計算上効率的な方式で発生させるために「シフト」方式が使用される。「シフト」方式は、1つの多重極リード(例えば、N個の接点のリード)が別のものに対して2つの近い電極の間の中心間距離に等しい量だけ移動された場合に、遠位電極又は近位電極を除く全ての電極がそれに隣接する電極の元の位置を占めることになるということに基づいている。従って、新しいリードのスタガ構成にあるこれらの電極の各々の上で測定されることが予想される電界電位は、以前のリードのスタガ構成において各々に隣接する電極に対して計算された電界電位値を取ることになり、これは、一端の電極における電界電位のみが不明であり、この電界電位しか、式[2]を用いて計算する必要がないことを意味する。電界電位値を対称性によって判断することができる一部の場合は(すなわち、対称な位置(ソース電極に対して)における電界電位値が利用可能な場合は)、いかなる計算も必要ではない。
【0065】
すなわち、「シフト」方式は、以前のリードのスタガ構成におけるリードに対して式[2]を用いて以前に計算された電界電位プロフィールを空間的にシフトさせることにより、新しいリードのスタガ構成に関する電界電位プロフィールを発生させる。以下により詳細に説明するが、電界電位プロフィールは、電界電位の推定振幅を以前のリードのスタガ構成における第1の測定電極セットから、第1の電極セットから電極n個分オフセットされた新しいリードのスタガ構成にある第2の測定電極セットにシフトさせることによって空間的にシフトされる。すなわち、リードのスタガが電極n個分変更されると、新しいスタガ構成にある電極部分集合は、ソース電極に対して以前のスタガ構成における電極部分集合と同じ位置を取ることになり、従って、後者の電極に前に割り当てられていた電界電位値を提供することになる。以下に説明する例示的な場合には、n=1(すなわち、電極1つ分のオフセット)であるが、オフセット数nは、リードのスタガ検出の望ましい分解能に依存するあらゆる数とすることができる。
【0066】
図示の実施形態では、リードの一端における電界電位を削除しなければならなくなり、リードの他端における電界電位を修正することが必要になるので、以前の電界電位プロフィールに対する値の部分集合のみが新しい電界電位プロフィールにシフトされることになる。すなわち、以前のリードのスタガ構成における最後尾の電極(リードシフトの方向に対して)に関連する電界電位値は、新しいリードのスタガ構成では必要とされなくなるので、この値は、新しい電界電位プロフィールから削除されることになる。しかし、新しいリードのスタガ構成における先頭の電極(リードシフトの方向に対して)は、以前のリードのスタガ構成における電界値に関連付けることができないので、この値は、式[2]を用いて(又は推定するのに対称性を用いて)計算することが必要になる。
【0067】
電界電位値のシフト、削除、及び修正は、図9a及び図9bを参照することで最も明快に説明することができる。電界電位計算は、2つのリード(リード1及びリード2)が初期スタガを有するという仮定で始まる。例えば、N個の接点のリードでは、図9aに示しているように、初期スタガが電極S0個分(リード1がリード2を超えている)であると仮定することができる。M通りのソース構成の各々に対して、交差リード電極の各々の上の電界電位(FPm1,FPm2,...FPmNと表記しており、この場合、m=1,2,...,Mである)をこれらの電極のソース電極ESからの距離に基づいて式[2]によって定められる解析モデルを用いて評価することができる。
【0068】
次に、リード2の位置を2つの近い電極の間の中心間距離に等しい量だけシフトさせることができ、従って、図9bに示しているように、提供するリードのスタガは、ちょうど電極中心間距離分だけ変更される(すなわち、スタガが電極(S0−1)個分に等しい)。従って、新しいリードのスタガ構成の電界電位(FPm1',FPm2',...FPmN-1'と表記している)は、初期リードのスタガ構成に対して前に計算されたFPm2,FPm3,...FPmNの値を取ることになる。新しいリードのスタガ構成では、FPmN(m=1,2,...,M)と表記している電界電位値のみが不明になり、式[2]によって定められる解析モデルを用いて計算することが必要になる。
【0069】
すなわち、「シフト」方式は、以前のリードのスタガ構成から得られた電界電位プロフィールをシフトさせ、先頭の電界電位値FPm1を削除し、終端にある新しい電界電位値FPmN'を修正することによって新しいスタガ構成における電界電位プロフィールを生成する。この場合、交差リード電極(すなわち、リード2上の電極)上の電界電位値は、FPm2,FPm3,...FPmN,FPmN'、m=1,2,...,Mになる。付加的な基準電界電位プロフィールを発生させるために、リードのスタガをちょうど電極中心間距離分だけ繰返し変更し、各新しいリードのスタガ構成においてシフト方式を実施することができる。
【0070】
従って、この「シフト」方式は、式[2]を用いて既に計算済みの電界電位値を利用し、それによって新しいリードのスタガ構成に必要な新しい計算の数を大幅に低減することが分る。各リードのスタガ構成において、計算電界電位プロフィールを保存するのにM×N(Mはソース構成の個数であり、Nは、測定電極の個数である)の行列しか必要ではなく、初期電界電位プロフィールの計算を除けば、各新しいリードのスタガ構成に対してM×1個の電界電位値しか計算する必要がない。
【0071】
2つのリードの場合には、一方のリードを1つの方向に移動することは、他方のリードを反対方向に移動することに等しいことに注意すべきである。従って、2つのリードに関する交差リード電界電位データも同様に反対方向にシフトされることになる。上述の例では、リード2が下に移動する時に、リード2に関する電界電位データプロフィールは、先頭の電界電位値を削除し、最後尾のデータエントリにある新しい電界電位値を修正することによってシフトされることになり、それに対してリード1に関する電界電位は、最後尾の電界電位値を削除し、先頭のデータエントリにある新しい電界電位値を修正することによってシフトされることになる。更に、リード1に関する電界電位プロフィールとリード2に関する電界電位プロフィールとを入れ替えると、評価中のスタガの方向が逆転されることになる(その理由は、スタガは、一方のリードの他方のリードに対する相対オフセットしか表さないからである)。この可換性は、同じ電界電位プロフィールを用いて2つのスタガ位置(2つの方向に対称な)の評価を可能にする(各電界電位プロフィールに対するリード割り当てを入れ替えるだけでよい)。
【0072】
「シフト」方式の目的は、既に計算済みの電界電位を利用することであり、それによって新しい計算の数が低減される。電界電位は、リードのスタガがちょうど電極中心間距離分だけシフトされる場合にのみ再使用することができる(その理由は、1つの電極が、それに隣接する電極の元の位置を完全に占めることになるからである)。1回のシフトでは、ちょうど電極中心間距離分の低分解能でリードのスタガを評価することしか可能にはならない。しかし、臨床用途では、リードのスタガがより高い分解能で評価されることになることが予想される。
【0073】
より高い分解能でリードのスタガを評価するために、RC16は、「シフト」方式と併せて「掃引」手法を実施する。「掃引」手法は、ちょうど電極分のオフセットの間の格差を埋めてより高い分解能を与えるためにリードのスタガを数回評価する。具体的には、各回において、リードのスタガは、ちょうど電極中心間距離1つの分の低分解能における上述の「シフト」方式を繰返し用いてシフトされる。しかし、各回における初期スタガ構成は、高分解能によって定められるより小さい距離だけオフセットされる。「掃引」手法を用いて高分解能を得る上で2つの手法が存在する。
【0074】
第1の種類の「掃引」手法では、高分解能は固定のものであって事前に定められ、初回を除く各回において、初期スタガ位置が、高分解能によって定められる量(例えば、電極中心間距離1/L個分、この場合Lは固定の任意の数)だけオフセットされる。図10aに示しているように、初回(数字「1」によって表す)には、初期リードのスタガ構成が+Nの電極として設定され、リードのスタガ(円として示している)が、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N,+N−1,+N−2...,−Nの電極において順次評価される。2回目(数字「2」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+N−1/Lの電極として設定され、リードのスタガ(三角形として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+(N−1/L),+N−1−1/L,+N−2−1/L,...,−N−1/Lの電極において順次評価される。3回目(数字「3」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+N−2Lの電極として設定され、リードのスタガ(正方形として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N−2/L,+N−1−2/L,+N−2−2/L,...,−N−2/Lの電極において順次評価される。最終回(文字「L」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+N−(L−1)/L)として設定され、リードのスタガ(菱形として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N−(L−1)/L),+(N−1−(L−1)/L),+(N−2−(L−1)/L),...,−N−(L−1)/L)の電極において順次評価される。
【0075】
第2の種類の「掃引」手法では、高分解能は変動し、初回を除く各回において、初期スタガ位置のオフセットが各回において半分に分割される(例えば、電極中心間距離1/2K-1個分、この場合、Kは回数)。図10bに示しているように、初回(数字「1」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+Nの電極として設定され、リードのスタガ(円として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N,+N−1,+N−2,...,−Nにおいて順次評価される。2回目(数字「2」で表す)には、初期リードのスタガ構成は、+(N−1/2)の電極に設定されるように電極中心間距離1/2個分だけオフセットされ、リードのスタガ(三角形として示している)は、+N−1/2,+N−3/2,+N−5/2,...,−N−1/2の電極において順次評価される。この2回目におけるリードのスタガ構成は、初回に評価されたものと共に、電極中心間距離1/2個分の分解能を与えることになる。3回目(数字「3」で表す)には、2つの初期リードのスタガ構成が+N−1/4及び+N−3/4に設定されるように初期リードのスタガ構成のオフセットは前と同様に半分に分割され、リードのスタガ(正方形として示している)は、+N−1/4,+N−3/4,+N−5/4,+N−7/4,+N−9/4,+N−11/4,...,−N−1/4,−N−3/4において順次評価される。この3回目におけるリードのスタガ構成は、前の回に評価されたものと共に、電極中心間距離1/4分の分解能を与えることになる。より高い分解能を得ることを必要とする場合には、そのような処理を繰り返すことができる。RC16は、現在の分解能が十分であるか否か、又はより高い分解能が必要であるか否かを判断するために、評価の各回の後にスタガ検出結果を検査することができる。
【0076】
各基準電界電位プロフィールを上述の「シフト」方式及び「掃引」手法を用いて発生させた後に、測定電界電位プロフィールは、現時点で発生している基準電界電位プロフィールと比較される。有利な態様においては、各基準電界電位プロフィールは、実時間で発生されて測定電界電位プロフィールと比較され、現在発生している基準電界電位プロフィールを保存/格納するのに使用されるメモリを各基準電界電位プロフィールが測定電界電位プロフィールと比較された後に解放することができ、その後に新しく発生する基準電界電位プロフィールを格納するのに再度使用することができるので、最小量のメモリしか必要とされない。取りわけ、RC16における処理時間を短縮するために、あらゆる解析モデル計算(この場合、モデル計算は式[2]を含む)をRC16の製造中にRC16のメモリ116内に得られる電界電位値をロードすることによって実施することができる。より大きなメモリ空間を必要とすることになるが、必要とされるメモリ空間量は、「シフト」方式によって依然として実質的に低減される。電界電位プロフィール比較の全てを実施し終わった後に、リードのスタガを定量化することができ、具体的には、測定電気プロフィールに最良適合する既知の基準電界電位プロフィールに対応する既知のスタガ構成が、定量化されたリードのスタガとして選択されることになる。
【0077】
基準電界電位プロフィールのうちのどれが測定電界電位プロフィールに最良適合するかを判断するために、様々な比較関数のうちのいずれかを用いてデータを互いに計算上で比較することができる。
【0078】
例えば、使用することができる1つの比較関数は、次式のように表すことができる「ピアソン相関係数」関数のような相関係数関数である。
ここで、rは、係数であり、MSRは、測定電界電位プロフィールの値(すなわち、第1のデータセット)を表し、REFは、比較される現在の基準電界電位プロフィールの値(すなわち、第2のデータセット)を表し、Mは、データセットの平均(第1のデータセット又は第2のデータセットのいずれか)を表し、iは、データセットの単一の要素(第1のデータセット又は第2のデータセットのいずれか)を表す。有利な態様においては、相関係数は、マグニチュードスケールに影響されず、−1(完全逆相関)から1(完全相関)までの範囲にわたる。この関数を用いて、最大値、すなわち、実際のデータとモデルベースのデータ推定値の間の最も高い相関を求める。
【0079】
使用することができる別の比較関数は、最小二乗ベースの関数であり、特に次式のように表すことができる差二乗和関数である。
ここで、SSDは、二乗差の和であり、MSR、REF、及びiは、上記に定義済みである。SSD関数は、実際のデータとモデルベースのデータ推定値のインスタンスの間の差を測定する。この関数を用いて、最小値、すなわち、実際のデータから最小限にしか異ならない推定値をもたらすモデルのインスタンスを求める。相互相関関数を含む他の比較関数、ウェーブレット関数、及び関連のマッチング手段を代替的に使用することができる。
【0080】
リードの間のスタガが識別された状態で、患者体内のリードの実際のスタガと推定上適合する識別されたリードのスタガに従って配置された電極26のグラフィック表現をディスプレイ102(図5に示している)を通じてユーザに表示することができる。リード12の間の相対位置が最適な位置から移動したか又はそうでなければ最適な位置にないことをリード12の間のスタガが示す場合には、(1)外科切除又は整復、及び(2)再プログラミングという2つの分類に収めることができる補正処置を取ることができる。一般的に、外科切除又は整復は、再プログラミングを実施可能な選択肢とするにはリード12のうちの1つ又はそれよりも多くが過度に遠くに移動したと判断された場合に使用されることになる。例えば、治療計画が、図8aに示している第2のリード12(2)上の電極E9の基準の位置に電極が設けられることを必要とした場合に、第2のリード12(2)が図8bに示している位置に移動すると、この基準の位置にはもはやいかなる電極も存在しないので、この治療計画は実施することができない。
【0081】
再プログラミングに関しては、各リード12の実際の移動(又は移動の欠如)に関する情報は、再プログラミングを受け持つ主体(すなわち、医師又はSCSシステム10)が、片方又は両方のリードの移動に起因してリード12(1)とリード12(2)の間の相対位置が変化したという認識を欠く場合にそうであろうものよりも遥かに効率的な方式で再プログラミングを進めることを可能にすることになる。例えば、図8aに例示しているリード12が、第1のリード12(1)上の電極E4、E5、及びE6から刺激パルスを供給し、第2のリード12(2)上の電極E13及びE14に流入させることを含む治療計画に使用され、第2のリード12(2)が図8bに例示している位置に移動した後に、リード12(2)だけが移動して電極2つ分に対応する距離移動したことが識別されたと仮定すると、治療計画を単純に電極E13及びE14の代わりに電極E11及びE12をそれぞれ使用することによって再プログラムすることができる。
【0082】
再プログラミングは、自動的に又は臨床医が実施することができる。リード移動が連続的にモニタされている場合に特に有利である自動再プログラミングは、全く自動のものとすることができる(すなわち、再プログラミングは、患者の認識なしに発生することになる)。代替的に、RC16は、少なくとも一方のリード12が他方に対して移動したことを患者に示し、自動再プログラミングによる刺激治療計画を試みるか、又は単純にリード移動を臨床医に報告するかの選択肢を与えることができる。RC16からの通知又は患者の苦情のいずれかに応じた臨床医による再プログラミングは、一般的に、CP18が、RC16からのリード移動データに基づいて治療計画を修正する(又は単純にその修正を示唆する)ことを可能にする段階を含むことになる。代替的に、リードの整復は、臨床医が再プログラミング中の使用において見直すために記録され、それによって治療計画を再プログラムするのに必要とされる臨床医の時間(及び経費)の量、並びに高価な蛍光透視処置を必要とすることになる可能性が低減する。
【0083】
交差リード分離距離を推定するのに、電界電位に加えて他の電気パラメータを使用することができることに注意すべきである。例えば、交差リード二重極インピーダンス測定値及び基準リード間二重極インピーダンス測定値を取得することができる(電極対をアノードとカソードとして用い、定電流を印加して電極の一方の上でインピーダンス測定値を取得することにより)。測定インピーダンスは、電極対の間の電界電位降下に比例することになる。二重極インピーダンスが大きい程、電極対の間の距離は大きい。従って、上述の「シフト」方式及び「掃引」手法において電界電位を使用する代わりに、測定インピーダンスプロフィール及び基準インピーダンスプロフィールを発生させるようにインピーダンスを使用することができる。更に、「シフト」方式及び「掃引」手法は、RC16のような限られた計算パワー及びメモリのみを有するデバイスにおける使用に十分に適するが、それらはまた、CP18においても利用することができる。更に、RC16(又はCP18)が上述の相対リード位置推定機能を実行するのではなく、IPG14自体がこれらの機能を実行し、その後に推定リード位置データをRC16(又はCP18)に送信することができる。
【0084】
本発明の特定的な実施形態を図示して説明したが、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定するように意図しておらず、当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変形及び修正を加えることができることが明らかであろう。従って、本発明は、特許請求によって定められる本発明の精神及び範囲に含めることができる代替、修正、及び均等物を網羅するように意図している。
【符号の説明】
【0085】
12 リード
14 埋め込み可能パルス発生器(IPG)
16 遠隔制御器(RC)
18 プログラム作成器(CP)
20 外部試験刺激器(ETS)
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織刺激システムに関し、より具体的には、神経刺激リードの位置を判断するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能神経刺激システムは、様々な疾病及び障害において治療効果を有することを証明している。ペースメーカー及び「埋め込み可能心細動除去器(ICD)」は、いくつかの心臓疾患(例えば、不整脈)の治療において非常に有効であることを証明している。「脊髄刺激(SCS)」システムは、慢性疼痛症候群の治療のための治療方式として長い間受け入れられてきており、組織刺激の用途は、狭心症及び失禁のような更に別の用途に広がり始めている。「脳深部刺激(DBS)」もまた、不応性慢性疼痛症候群の治療に10年を大幅に超えて適用されてきており、また、最近では、DBSは、運動障害及び癲癇のような更に別の分野に適用されている。更に、最近の研究では、「末梢神経刺激(PNS)」システムが、慢性疼痛症候群及び失禁の治療において有効性を示しており、いくつかの更に別の用途が現在研究されている。また、NeuroControl(オハイオ州クリーブランド)によるFreehandシステムのような「機能的電気刺激(FES)」システムが、脊髄損傷の患者において麻痺肢にある程度の機能を回復させる上で適用されている。
【0003】
これらの埋め込み可能神経刺激システムは、典型的には、望ましい刺激部位に埋め込まれる刺激リードを担持する1つ又はそれよりも多くの電極と、刺激部位から離れて埋め込まれるが、刺激リードに直接結合されるか又はリード延長部を通じて刺激リードに間接的に結合されるかのいずれかである神経刺激器(例えば、埋め込み可能パルス発生器(IPG))とを含む。すなわち、組織を刺激し、患者に望ましい有効な治療を提供するように、電気パルスを神経刺激器から刺激リードに送出することができる。更に、神経刺激システムは、選択された刺激パラメータに従って電気刺激パルスを発生させるように神経刺激器に遠隔的に命令する遠隔制御器(RC)の形態にある手持ち式患者プログラム作成器を含むことができる。RC自体は、臨床医が、例えば、プログラミングソフトウエアパッケージがインストールされたラップトップのような汎用コンピュータを一般的に含む臨床医のプログラム作成器(CP)を使用することによってプログラムすることができる。
【0004】
SCS処置の関連において、1つ又はそれよりも多くの刺激リードは、リードによって担持された電極が望ましいパターン及び間隔で配置されて電極アレイを生成するように、患者の背中を通して硬膜外空間内に導入される。市場で入手可能な刺激リードの1つの種類は、リング電極を有する円柱体を含む経皮リードであり、この経皮リードは、皮膚を通して望ましい脊柱の間を通り、硬膜層の上の硬膜外空間内に入るTouhy状の針を通じて患部精髄組織との接触状態で導入することができる。片側性疼痛に対しては、経皮リードは、脊髄の対応する横側に配置される。両側性疼痛に対しては、経皮リードは、脊髄の正中線上に配置されるか、又は2つ又はそれよりも多くの経皮リードが脊髄正中線のそれぞれの側に配置され、更に、第3のリードが使用される場合には脊髄正中線上に配置される。脊髄のターゲット区域における刺激リードの適正配置の後に、リードは、刺激リードの移動を防止するために出口の部位に固定される。刺激リードの出口ポイントから離れた神経刺激器の設置を容易にするために、時にリード延長部が使用される。
【0005】
刺激リード又はリード延長部は、次に、IPGに接続され、IPGは、次に、電極を通じてターゲット組織、特に、背柱及び脊髄内の後根繊維に送出される電気パルスを発生させるように作動させることができる。刺激は、患者によって感知される疼痛信号を置換する別の感覚として特徴付けることができる錯感覚として公知の感覚をもたらす。手術中には(すなわち、外科的処置中には)、神経刺激器は、刺激の効果を試し、最適な疼痛緩和に関して刺激パラメータを調節するように作動させることができる。患者は、疼痛区域にわたる錯感覚の存在に関して口頭フィードバックを与えることができ、このフィードバックに基づいて、必要に応じてリード位置を調節し、再固定することができる。刺激パラメータの選択を容易にするために、「Boston Scientific Neuromodulation Corporation」から入手可能な「Bionic Navigator(登録商標)」のようなコンピュータプログラムを臨床医のプログラム作成器(CP)(上記に簡単に解説した)に組み込むことができる。次に、システムを完全に埋め込むために、いずれの切開部も閉鎖される。手術後(すなわち、外科的処置が完了した後)、臨床医は、コンピュータ処理によるプログラミングシステムを用いて治療を最適化し直すように刺激パラメータを調節することができる。
【0006】
電気刺激用途(例えば、神経刺激、心臓再同期治療等)では、マルチリード構成が益々使用されてきている。SCSの神経刺激用途では、複数のリードの使用は、刺激面積及び侵入深度(従って、カバレージ)を増大させるだけでなく、いずれかの縦方向単一リード構成に加えて横方向多重極(二重極、三重極、又は四重極)刺激のような刺激におけるアノード電極とカソード電極との更に別の組合せを可能にする。
【0007】
いくつかの研究は、侵入及び錯感覚のカバレージを改善するのに生理学的正中線の両側に対称に配置された狭間隔並列リードを使用する利点を明らかにしている(J.J.Struijk及びJ.Holsheimer著「三重極脊髄刺激:二重チャンネルシステムの理論的性能(Tripolar Spinal Cord Stimulation: Theoretical Performance of a Dual Channel System)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第34巻、第4号、1996年、273〜279ページ、J.Holsheimer、B.Nuttin、G.King、W.Wesselink、J.Gybels、及びP.de Sutter著「脊髄刺激のための新しいシステムを用いた錯感覚誘導の臨床評価(Clinical Evaluation of Paresthesia Steering with a New System for Spinal Cord Stimulation)」、Neurosurgery、第42巻 第3号、1998年、541〜549ページ、Holsheimer J.、Wesselink、W.A.著「脊髄刺激のための最適な電極幾何学構成:幅狭二重極及び三重極(Optimum Electrode Geometry for Spinal Cord Stimulation:the Narrow Bipole and Tripole)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第35巻、1997年、493〜497ページを参照されたい)。
【0008】
SCSの有効性は、身体のうちで患者が疼痛を受ける領域内で誘発される錯感覚に対応する刺激を脊髄組織に与える機能に関連する。従って、実用的な臨床の論理的フレームは、SCSからの有効な結果の取得が、電気刺激が患者の身体内で疼痛(すなわち、治療のターゲット)とほぼ同じ位置に配置される錯感覚を誘導することになるような脊髄組織に対する位置(縦横両方の)に1つ又は複数の神経刺激リードが配置されることに依存するということである。リードが正しく位置決めされなかった場合には、患者は、埋め込まれたSCSシステムから殆ど又は全く利益を受けないことになる。従って、正しいリード配置は、有効な疼痛治療と無効な疼痛治療の間の差を意味することができる。
【0009】
リードの移動が発生すると、適正な錯感覚カバレージは、殆どの場合、例えば、「Bionic Navigator(登録商標)」ソフトウエアを使用することによってIPGをプログラムし直すことによって再捕捉することができる。複数の経皮リードが使用される場合には、発生電界の極を適正に配置するために、IPGのプログラミングは、リードの間の相対位置の知識を多くの場合に必要とする。しかし、そのような情報は、蛍光透視撮像を実施しない限り、プログラム作成器に対して即座に利用することができるものではない。蛍光透視撮像は、電離放射線を伴い、時間及び経費を追加し、更に、嵩高な機器を必要とし、これらの両方により、臨床環境におけるその使用が限定され、臨床環境の外部におけるその使用が事実上妨げられる可能性がある。システムが完全に埋め込まれる前に、そのようなリード配置が適時に検出されない場合には、非効率的な治療がもたらされる可能性があり、時にリードの改修のための2度目の外科手術が必要である。従って、リード移動は、脊髄刺激治療の最も一般的な技術的弊害であり続けている。文献の再調査により、リード移動の発生率が約13.2%であることが示されている(T.Cameron著「慢性疼痛の治療のための脊髄刺激の安全性及び有効性:20年にわたる文献の再調査(Safety and Efficacy of Spinal Cord Stimulation for the Treatment of Chronic Pain: a 20−Year Literature Review)」、「J Neurosurg:Spine 2004」、100:254〜267ページを参照されたい)。
【0010】
現在、複数のリードの相対位置は、リード電極の間の電気信号を測定することによって電子的に推定することができる。例えば、「Bionic Navigator(登録商標)」ソフトウエアは、電極から測定されて媒体中の電流の流れに起因して発生する電界電位のプロフィールを精査することによって相対リード位置を推定する電子発生リード(EGL)走査を使用する。特に、EGL走査機能は、測定交差リード電界電位を既知のリード構成に対して「有限要素モデル(FEM)」から計算されたものと比較することによってリードスタガを検出する。FEMモデルは、電極上で測定されることが予想される電界電位の予想を与え、脊髄内の様々な要素の幾何学的性質及び電気挙動、並びに人体中に発生する電界電位に課せられる境界条件に対処する。リードスタガは、測定交差リード電界電位のプロフィールをいくつかの既知のリード構成に関するFEMモデルから計算されたものと比較することによって判断することができる。モデル化電界電位プロフィールが測定電界電位プロフィールと最良適合するリード構成は、検出リード構成として表される。
【0011】
この技術は、埋め込まれたリードの相対位置に関する情報を蛍光透視法を使用することなく取得する自動的な手段を与える。そのような情報は、プログラミング精度を高めるのに使用することができ、従って、患者の結果及び治療の有効性が改善される。FEMモデルによって発生する多くの基準プロフィールに対する測定電界電位プロフィールの比較は、計算負荷が高く、大量のメモリを必要とするが、CPは、これらの計算を効率的に実行するのに必要な処理パワー及びメモリを有するコンピュータに具現化される。
【0012】
次世代SCSシステムは、治療を改善するためにシステムの刺激プログラムに対するより高い制御を患者に与えることが予想されるので、より高いプログラミング機能(これまでCPにおいて見合わせられていた)をRC及びIPC内に組み込むことが提案されている。CPによるIPGのプログラミングにおける場合と同様に、IPGを適正にプログラムするのに必要である場合がある相対リード位置をRC内で電子的に判断する機能を有することが同じく望ましい。しかし、「EGL走査機能」の場合には、リードスタガを判断するために測定交差リード電界電位が比較される既知の電界電位プロフィールは、EGL走査処理中にロードされるデータベースに格納される。これは、RCにおいて利用可能ではない場合があるデータベースストレージのためのメモリ空間を必要とするので、現在のEGL走査機能をRC内に直接に移すのに潜在的な困難を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願番号第61/030,506号明細書
【特許文献2】米国特許第6,895,280号明細書
【特許文献3】米国特許出願番号第11/689,918号明細書
【特許文献4】米国特許出願番号第11/565,547号明細書
【特許文献5】米国特許第6,516,227号明細書
【特許文献6】米国特許第6,993,384号明細書
【特許文献7】米国特許出願番号第10/364,436号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J.J.Struijk及びJ.Holsheimer著「三重極脊髄刺激:二重チャンネルシステムの理論的性能(Tripolar Spinal Cord Stimulation: Theoretical Performance of a Dual Channel System)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第34巻、第4号、1996年、273〜279ページ
【非特許文献2】J.Holsheimer、B.Nuttin、G.King、W.Wesselink、J.Gybels、及びP.de Sutter著「脊髄刺激のための新しいシステムを用いた錯感覚誘導の臨床評価(Clinical Evaluation of Paresthesia Steering with a New System for Spinal Cord Stimulation)」、Neurosurgery、第42巻 第3号、1998年、541〜549ページ
【非特許文献3】Holsheimer J.、Wesselink、W.A.著「脊髄刺激のための最適な電極幾何学構成:幅狭二重極及び三重極(Optimum Electrode Geometry for Spinal Cord Stimulation:the Narrow Bipole and Tripole)」、「Medical and Biological Engineering and Computing」、第35巻、1997年、493〜497ページ
【非特許文献4】T.Cameron著「慢性疼痛の治療のための脊髄刺激の安全性及び有効性:20年にわたる文献の再調査(Safety and Efficacy of Spinal Cord Stimulation for the Treatment of Chronic Pain: a 20−Year Literature Review)」、「J Neurosurg:Spine 2004」、100:254〜267ページ
【非特許文献5】Lee D.、Moffitt M.Bradley K.、Peterson D.著「電界成形による選択的神経活性化:脊髄刺激のための新しいコンピュータモデルからの結果(Selective Neural Activation by Field Sculpting: Results From a New Computer Model for Spinal Cord Stimulation)」、第16回計算神経科学年次会議、2006年7月7〜12日、カナダ、トロント:177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
すなわち、大量のメモリ空間を必要とすることなくリードの相対位置を判断する技術に対する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様により、患者の組織(例えば、脊髄組織)の近くに配置された2つの電極リードを作動させる方法を提供する。本方法は、複数の交差リード電気パラメータ(例えば、発生電界の電界電位)を測定して電極リードの測定電気プロフィールを発生させる段階(例えば、リードの一方によって担持された少なくとも1つの電極を作動させて組織内に電界を発生させ、発生電界に応じてリードの他方によって担持された複数の電極の各々において電気パラメータの振幅を測定することにより)を含む。
【0017】
本方法は、更に、複数の交差リード電気パラメータを推定して、第1の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させる段階(例えば、一方のリードによって担持された電極において発生した電界をモデル化することにより)と、他方のリードによって担持された電極の第1のセットにおける電気パラメータの振幅をモデル化電界を用いて推定する段階とを含む。本方法は、更に、第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて、第2の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させる段階(例えば、第1の電極セットからの推定振幅を他方のリードによって担持された電極の第2のセットにシフトさせることにより)と、他方のリードによって担持された電極のうちの終端の1つにおける電気パラメータの振幅をモデル化電界を用いて推定する段階とを含む。
【0018】
本方法は、更に、測定電気プロフィールを第1及び第2の基準電気プロフィールと比較する段階を含む。実時間解析を提供し、ストレージ空間を最底限に抑制するために、測定電気プロフィールを第1の基準電気プロフィールと比較する段階に続いて第2の基準電気プロフィールを発生させることができる。1つの方法では、第1のリードのスタガ構成と第2のリードのスタガ構成とは、互いから中心間電極間隔1つ分オフセットされ、複数の推定交差リード電気パラメータは、中心間電極間隔1つ分空間的にシフトされる。この場合、本方法は、更に、別の複数の交差リード電気パラメータを推定して、第1の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離オフセットされた第3の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第3の基準電気プロフィールを発生させる段階と、別の複数の推定交差リード電気パラメータを電極間隔1つ分空間的にシフトさせて、第3の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分オフセットされた第4の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第4の基準電気プロフィールを発生させる段階と、測定電気プロフィールを第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールと比較する段階とを含むことができる。
【0019】
本方法は、更に、比較に基づいて電極リード間の縦スタガを定量化する段階を含む。1つの方法では、測定電気プロフィールに最良適合する既知の電気プロフィールに対応する既知のスタガ構成は、定量化縦スタガとして選択される。任意的な方法では、定量化縦スタガを有するリードのグラフィック表現が表示される。別の任意的な方法では、神経刺激器は、定量化縦スタガに基づいて複数の刺激パラメータを用いてプログラムされる。
【0020】
任意的な方法は、付加的な複数の交差リード電気パラメータを推定して、中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離だけ互いからオフセットされた付加的な複数の既知のスタガ構成にある電極リードに関する付加的な複数の基準電気プロフィールをそれぞれ発生させる段階と、測定電気プロフィールを付加的な基準電気プロフィールと比較する段階と、測定電気プロフィールと第1、第2、及び付加的な基準電気プロフィールとの間の比較に基づいて電極リード間の縦スタガを定量化する段階とを含む。付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる距離は、例えば、事前判断することができ、又は測定電気プロフィールと付加的な基準電気プロフィールの少なくとも一部との間の比較に基づいて動的に選択することができる。
【0021】
本発明の第2の態様により、電極リードとの併用のための神経刺激制御システムを提供する。神経刺激制御システムは、ユーザから入力を受け取るように構成されたユーザインタフェースを含む。更に、神経刺激制御システムは、複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を発生させ、測定交差リード電気パラメータから電極リードの測定電気プロフィールを発生させ、複数の交差リード電気パラメータを推定して第1の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させ、第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて第2の既知のスタガ構成にある電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させ、測定電気プロフィールを第1及び第2の基準電気プロフィールと比較し、比較に基づいて電極リード間の縦スタガを定量化するように構成されたプロセッサを含む。これらのプロセッサ機能の詳細内容は、本方法に関して上述したものと同じとすることができる。更に、外部制御デバイスは、定量化縦スタガを有するリードを表示するためのディスプレイを含むことができる。神経刺激制御システムは、ユーザインタフェース及び少なくとも1つのプロセッサを含む外部制御デバイスを含むことができる。この場合、神経刺激制御システムは、複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を神経刺激器に無線送信するように構成された遠隔測定回路を更に含むことができる。代替的に、処理機能の少なくとも一部は、神経刺激デバイス自体の中に組み込むことができる。
【0022】
本発明の他の及び更に別の態様及び特徴は、本発明の限定ではなく例示を意図した以下に続く好ましい実施形態の詳細説明から明らかであろう。
【0023】
図面は、本発明の好ましい実施形態の設計及び有利性を示しており、これらの図面では、類似の要素を共通の参照番号で表記している。上記に列記したもの及び他の本発明の利点及び目的が如何に達成されるかをより明快に理解するために、上記に簡単に説明した本発明のより具体的な説明を添付図面に例示する本発明の特定的な実施形態を参照して行う。これらの図面が本発明の典型的な実施形態しか示しておらず、従って、これらの図面を本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないという理解の下に、本発明を添付図面を用いながら更に具体的かつ詳細に以下に説明かつ解説する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によって構成された脊髄刺激(SCS)システムの一実施形態の平面図である。
【図2】図1のSCSシステムに使用される埋め込み可能パルス発生器(IPG)と経皮刺激リードの別の実施形態との平面図である。
【図3】図1のSCSシステムの患者に対して使用する際の平面図である。
【図4】図1のIPGの内部構成要素のブロック図である。
【図5】図1のSCSシステムに対して使用することができる遠隔制御器の平面図である。
【図6】図5の遠隔制御器の内部構成要素のブロック図である。
【図7】図1のSCSシステムに対して使用することができる臨床医のプログラム作成器の構成要素のブロック図である。
【図8a】一方のリードが電流を供給するのに使用され、他方のリードが電界電位を測定するのに使用される図1のSCSシステムに使用される1対の電極リード及びそれに対応する測定電界電位プロフィールの図である。
【図8b】一方のリードが電流を供給するのに使用され、他方のリードが電界電位を測定するのに使用される図1のSCSシステムに使用される1対の電極リード及びそれに対応する測定電界電位プロフィールの図である。
【図9a】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成の電極から別の既知のリードのスタガ構成に変換する図1のSCSシステムのRCによって使用される「シフト」方式を示す平面図である。
【図9b】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成の電極から別の既知のリードのスタガ構成に変換する図1のSCSシステムのRCによって使用される「シフト」方式を示す平面図である。
【図10a】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成から電極中心間隔よりも小さく互いからオフセットされた別の既知のリードのスタガ構成に変換する図9aの「シフト」方式と併用される「掃引」を示す平面図である。
【図10b】電界電位値を1つの既知のリードのスタガ構成から電極中心間隔よりも小さく互いからオフセットされた別の既知のリードのスタガ構成に変換する図9bの「シフト」方式と併用される「掃引」を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に続く説明は、脊髄刺激(SCS)システムに関する。しかし、本発明は、SCSにおける用途に十分に適するが、その最も広義の態様ではそのように限定することができないことは理解されるものとする。より正確には、本発明は、組織を刺激するのに使用されるあらゆる種類の埋め込み可能電気回路と併用することができる。例えば、本発明は、ペースメーカー、細動除去器、蝸牛刺激器、網膜刺激器、連係した体肢運動をもたらすように構成された刺激器、皮質刺激器、脳深部刺激器、末梢神経刺激器、微小刺激器のようなマルチリードシステムの一部として、又は尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼、頭痛などを治療するように構成されたあらゆる他の神経刺激器に対して使用することができる。
【0026】
最初に図1を参照すると、例示的なSCSシステム10は、一般的に、複数の経皮リード12(この場合、2つの経皮リード12(1)及び12(2))、埋め込み可能パルス発生器(IPG)14、外部遠隔制御器(RC)16、臨床医のプログラム作成器(CP)18、外部試験刺激器(ETS)20、及び外部充電器22を含む。
【0027】
IPG14は、アレイで配置された複数の電極26を担持する刺激リード12に2つのリード延長部24を通じて物理的に接続される。より詳細に以下に説明するが、IPG14は、刺激パラメータセットに従って電気刺激エネルギをパルス電気波形(すなわち、電気パルスの時系列)の形態で電極アレイ26に送出するパルス発生回路を含む。IPG14及び刺激リード12は、例えば、中空針、スタイレット、トンネリングツール、及びトンネリングストローと共に埋め込み可能神経刺激キットとして準備することができる。埋め込み可能キットを解説する更なる詳細内容は、「一時的神経刺激リード識別デバイス(Temporary Neurostimulation Lead Identification Device)」という名称の米国特許出願番号第61/030,506号明細書に開示されており、この文献は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0028】
刺激リード12には、経皮リード延長部28又は外部ケーブル30を通じてETS20を物理的に接続することができる。IPG14と類似のパルス発生回路を有するETS20もまた、電気刺激エネルギをパルス電気波形の形態で刺激パラメータセットに従って電極アレイ26に送出する。ETS20とIPG14との主な相違点は、ETS20が、供給される刺激の応答性を試すために、刺激リード12が埋め込まれた後でかつIPG14の埋め込みの前に試行ベースに使用される埋め込み不能デバイスである点である。例示的なETSの更なる詳細内容は、米国特許第6,895,280号明細書に説明されており、この文献は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0029】
RC16は、双方向RF通信リンク32を通じてETS20を遠隔測定制御するのに使用することができる。IPG14及び刺激リード12が埋め込まれた状態で、IPG14を双方向RF通信リンク34を通じて遠隔測定制御するためにRC16を使用することができる。そのような制御は、埋め込みの後にIPG14を起動又は停止させ、異なる刺激プログラムを用いてプログラムすることを可能にする。IPG14をプログラムし終わり、かつその電源を充電又はそうでなければ補充し終わった状態で、IPG14は、RC16がなくても、プログラムされた通りに機能することができる。
【0030】
CP18は、手術室及び予後の診察においてIPG14及びETS20をプログラムするための詳細な刺激パラメータを臨床医に供給する。CP18は、IR通信リンク36を通じてRC16を通してIPG14又はETS20と間接的に通信することによって上述の機能を実行することができる。代替的に、CP18は、RF通信リンク(図示せず)を通じてIPG14又はETS20と直接通信することができる。
【0031】
外部充電器22は、誘導リンク38を通じてIPG14を経皮的に充電するのに使用される可搬式デバイスである。簡潔化の目的で、外部充電器22の詳細内容に対しては、本明細書では説明しない。外部充電器の例示的な実施形態の詳細内容は、先に引用によって本明細書に組み込んだ米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。IPG14をプログラムし終わり、その電源を外部充電器22によって充電又はそうでなければ補充し終わった状態で、IPG14は、RC16又はCP18がなくても、プログラムされた通りに機能することができる。
【0032】
次に、図2を参照して刺激リード12及びIPG14の外部機能を簡単に以下に説明する。刺激リード12の各々は、8つの電極26(それぞれE1〜E8及びE9〜E16とラベル付けしている)を有する。リード及び電極の実際の個数及び形状は、当然ながら目標とする用途に従って変化することになる。経皮刺激リードを製造する構造及び方法を説明する更なる詳細内容は、「リードアセンブリ及びその作成法(Lead Assembly and Method of Making Same)」という名称の米国特許出願番号第11/689,918号明細書及び「神経刺激のための円柱多接点電極リード及びその作成法(Cylindrical Multi−Contact Electrode Lead for Neural Stimulation and Method of Making Same)」という名称の米国特許出願番号第11/565,547号明細書に開示されており、これらの開示内容は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0033】
IPG14は、電子構成要素及び他の構成要素(以下により詳細に説明する)を収容するための外側ケース40を含む。外側ケース40は、チタンのような導電性の生体適合性材料で構成され、内部電子機器が体組織及び体液から保護される密封区画を形成する。一部の場合には、外側ケース40は、電極として機能することができる。IPG14は、更に、電極26を外側ケース40内の内部電子機器(以下により詳細に説明する)に電気的に接続する方式で刺激リード12の近位端が嵌合するコネクタ42を含む。この目的のために、コネクタ42は、3つの経皮リード12の近位端を受け取るための2つのポート(図示せず)を含む。リード延長部24が使用される場合には、ポートは、代替的に、そのようなリード延長部24の近位端を受け取ることができる。
【0034】
以下により詳細に説明するが、IPG14は、パラメータセットに従って電気刺激エネルギを電極26に供給するパルス発生回路を含む。そのようなパラメータは、アノード(正)、カソード(負)として作動され、停止(ゼロ)される電極を定める電極組合せと、パルス振幅(IPG14が電極に定電流又は定電圧のいずれを供給するかに依存してミリアンペア又はボルトで測定される)、パルス持続時間(マイクロ秒で測定される)、パルス繰返し数(パルス毎秒で測定される)、及びパルス形状を定める電気パルスパラメータとを含むことができる。
【0035】
SCSシステム10の作動中に供給されるパルスパターンに関して、電気エネルギを伝達する又は受け取るように選択される電極を本明細書では「作動の」と呼び、それに対して電気エネルギを伝達する又は受け取るように選択されない電極を本明細書では「非作動の」と呼ぶ。電気エネルギ送出は、2つ(又はそれよりも多く)の電極の間で発生することになり、これらの電極のうちの1つは、電流が、IPGケース40内に含まれるエネルギソースから組織への経路と、組織からケース内に含まれるエネルギソースへのシンク経路とを有するようにIPGケース40とすることができる。電気エネルギは、単極又は多重極(例えば、二重極、三重極等)方式で組織に伝達することができる。
【0036】
単極送出は、リード電極26のうちで選択された1つ又はそれよりも多くがIPG14のケース40と共に作動され、従って、電気エネルギが選択された電極26とケース40との間で伝達される場合に発生する。単極送出は、リード電極26のうちの1つ又はそれよりも多くが、1つ又はそれよりも多くのリード電極26から離れて設けられた大きいリード電極群と共に作動されて単極効果をもたらすような場合、すなわち、電気エネルギが、1つ又はそれよりも多くのリード電極26から比較的等方的に伝達される場合に発生する場合もある。二重極送出は、リード電極26のうちの2つがアノードとカソードとして作動され、従って、電気エネルギが選択された電極26の間で伝達される場合に発生する。三重極送出は、リード電極26のうちの3つが、2つをアノードとし、残りの1つをカソードとして、又は2つをカソードとし、残りの1つをアノードとして作動される場合に発生する。
【0037】
図3を参照すると、刺激リード12は、患者48の脊椎46の中に埋め込まれる。刺激リード12の好ましい配置は、刺激される脊髄区域に近い硬膜に近く、すなわち、その近く又はその上に収まる。刺激リード12が脊椎46を出る位置の近くの空間の欠如に起因して、一般的に、IPG14は、腹部内又は臀部上方のいずれかにおける外科手術によって作成されたポケット内に埋め込まれる。IPG14は、当然ながら患者の身体の他の位置に埋め込むことができる。リード延長部24は、刺激リード12の出口ポイントから離れてIPG14を設置するのを容易にする。図3に示しているように、CP18は、RC16を通じてIPG14と通信を行う。刺激リード12は、患者の脊髄区域の近くに埋め込まれているように例示しているが、体肢又は脳のような周辺領域を含む患者の身体におけるどこにでも埋め込むことができる。埋め込み後、IPG14は、患者の制御の下で治療的刺激を供給するように使用される。
【0038】
次に、図4に着目し、ここでIPG14の主な内部構成要素を以下に説明する。IPG14は、データバス64上の制御論理62の制御下で、指定されたパルス振幅、パルス繰返し数、パルス幅、パルス形状、及びバースト率を有する所定のパルス波形に従って電気刺激エネルギを発生させるように構成された刺激出力回路60を含む。電気波形のパルス繰返し数及びパルス幅の制御は、適切な分解能、例えば、10μsを有することができるタイマ論理回路66によって容易にされる。刺激出力回路60によって発生する刺激エネルギは、コンデンサーC1〜C16を通じて電極26に対応する電気端子68に出力される。
【0039】
アナログ出力回路60は、指定された既知のアンペア数の刺激パルスを電気端子68へ又はそこから供給するための独立して制御される電流供給源か、又は指定された既知の電圧の刺激パルスを電気端子68において供給するか又は電気端子68に接続した多重化電流供給源又は多重化電圧供給源に供給するための独立して制御される電圧供給源かのいずれかを含むことができる。規定の振幅及び幅の刺激パルスを発生させる同じ機能を実行するのに適する出力回路の別の実施形態を含むこのアナログ出力回路の作動は、米国特許第6,516,227号明細書及び第6,993,384号明細書により完全に説明されており、これらの文献は、引用によって本明細書に明示的に組み込まれている。
【0040】
IPG14は、更に、IPG14にわたる様々なノード又は他のポイント72のステータス、例えば、電源電圧、温度、及びバッテリ電圧などをモニタするためのモニタ回路70を含む。取りわけ、電極26は、脊椎の硬膜外空間内に緊密に収まり、組織は導電性を有するので、電極26から電気測定値を取得することができる。重要な点として、モニタ回路70は、以下により詳細に説明するように、RC16及びCP18がリード12の間の相対位置を自動的に判断することができるように、そのような電気測定値を取得するように構成される。図示の実施形態では、リード12の相対位置を判断するためにモニタ回路70によって得られる電気測定値は、電界電位又は電界電位を導出するために使用することができる他の電気パラメータ(例えば、電流及び/又はインピーダンス)である。モニタ回路70は、それぞれの電極26と組織の間の結合効率を判断するために、及び/又は電極26とIPG14のアナログ出力回路60の間の接続に関する障害検出を容易にするために、各電極26におけるインピーダンスを測定することができる。
【0041】
電気データは、様々な手段のうちのいずれか1つを用いて測定することができる。例えば、電気データ測定は、先に引用によって本明細書に組み込んだ米国特許出願番号第10/364,436号明細書に説明されているように、電気刺激パルスが組織に印加されている間の時間の一部分の間、又は刺激の直後にサンプリングベースで行うことができる。代替的に、電気データ測定は、米国特許第6,516,227号明細書及び第6,993,384号明細書に説明されているように電気刺激パルスとは独立して行うことができ、これらの文献は、引用によって本明細書に組み込まれている。
【0042】
IPG14は、更に、データバス76上の制御論理62を制御して、モニタ回路70からデータバス78を通じてステータスデータを取得するマイクロコントローラ74の形態の処理回路を含む。更に、マイクロコントローラ74は、タイマ論理66を制御する。IPG14は、更に、マイクロコントローラ74に結合されたメモリ80と、発振器及びクロック回路82とを含む。それによってマイクロコントローラ74は、メモリ80、並びに発振器及びクロック回路82との組合せで、メモリ80に格納された適切なプログラムに従ってプログラム機能を実行するマイクロプロセッサシステムを構成する。代替的に、一部の用途では、マイクロプロセッサシステムによって提供される機能を適切な状態機械によって実行することができる。
【0043】
すなわち、マイクロコントローラ74は、必要な制御信号及びステータス信号を発生させ、それによってマイクロコントローラ74は、選択された作動プログラム及びパラメータに従ってIPG14の作動を制御することが可能になる。IPG14の作動を制御するのに、マイクロコントローラ74は、アナログ出力回路60を制御論理62及びタイマ論理66との組合せに用いて、電極26に電気パルスを個々に発生させることができ、それによって各電極26を単極ケース電極を含む他の電極26と対又は群にし、電流刺激パルスが供給される際の極性、振幅、率、及びパルス幅を制御することが可能になる。
【0044】
IPG14は、更に、RC16から適切な変調搬送波信号でプログラミングデータ(例えば、作動プログラム及び/又は刺激パラメータ)を受信するための交流(AC)受信コイル84と、AC受信コイル84を通じて受信する搬送波信号を復調してプログラミングデータを復元するための充電及び順方向遠隔測定(フォワードテレメトリ)回路86とを含み、この場合、これらのプログラミングデータは、メモリ80内、又はIPG14にわたって分散された他のメモリ要素(図示せず)に格納される。
【0045】
IPG14は、更に、モニタ回路70によって検知された情報データ(電界電位データ及びインピーダンスデータを含む)をRC16に送信するための帰還遠隔測定(バックテレメトリ)回路88及び交流(AC)送信コイル90を含む。IPG14の帰還遠隔測定機能は、そのステータスを検査することも可能にする。例えば、刺激パラメータに加えられたあらゆる変更は帰還遠隔測定を通じて確認され、それによってそのような変更が、IPG14内で正しく受け取られ、実施されたことが保証される。更に、RC16による照会時に、IPG14に格納された全てのプログラミング可能な設定をRC16にアップロードすることができる。
【0046】
IPG14は、更に、IPG14に作動電力を供給するための再充電可能電源92及び電力回路94を含む。再充電可能電源92は、例えば、リチウムイオンバッテリ又はリチウムイオンポリマーバッテリを含むことができる。再充電可能電源92は、未調整電圧を電力回路94に供給する。電力回路94は、次に、IPG14内に設けられた様々な回路による必要に応じて一部が調整され、一部が調整されない様々な電圧96を発生させる。再充電可能電源92は、AC受信コイル84によって受信される整流AC電力(又は他の手段、例えば、効率的なACからDCへのコンバータ回路によってA電力から変換されたDC電力)を用いて再充電される。電源92を再充電するために、AC磁場を発生させる外部充電器(図示せず)は、埋め込まれたIPG14の上の患者の皮膚に当てて又はそうでなければ隣接して配置される。外部充電器によって放出されるAC磁場は、AC受信コイル84内にAC電流を誘導する。充電及び順方向遠隔測定回路86は、AC電流を整流して、電源92を充電するのに使用されるDC電流を生成する。AC受信コイル84が、通信(例えば、プログラミングデータ及び制御データ)を無線で受信すること及び外部デバイスからエネルギを充填することの両方に使用されるように説明したが、AC受信コイル84は、専用充電コイルとして配置することができ、一方、コイル90のような別のコイルは、双方向遠隔測定に使用することができることを認めるべきである。
【0047】
図4の図は単に機能的なものであり、限定的であるように意図していないことに注意すべきである。当業者は、本明細書に提供する説明を理解した上で、提供かつ説明する機能を実行する多くの種類のIPG回路又は均等回路を即座に構成することができるであろう。SCSシステム10は、神経刺激器のためのIPGではなく、刺激リード12に接続した埋め込み可能受信機−刺激器(図示せず)を代替的に利用することができることに注意すべきである。この場合、埋め込まれた受信機、並びに受信機−刺激器に命令する制御回路に電力供給するための電源、例えば、バッテリは、受信機−刺激器に電磁リンクを通じて誘導結合された外部コントローラに収容されることになる。データ/電力信号は、埋め込まれた受信機−刺激器の上に配置されたケーブル接続の送信コイルから経皮的に結合される。埋め込まれた受信機−刺激器は信号を受信して、制御信号に従って刺激を発生させる。
【0048】
次に、図5を参照して、RC16の一例示的実施形態を以下に説明する。先に解説したように、RC16は、IPG14、CP18、又はETS20と通信を行うことができる。RC16は、内部構成要素(プリント回路基板(PCB)を含む)を収容するケーシング100と、ケーシング100の外面によって担持された照明表示画面102及びボタンパッド104とを含む。図示の実施形態では、表示画面102は、照明フラットパネル表示画面であり、ボタンパッド104は、フレックス回路の上に位置決めされた金属ドームを有する膜スイッチと、PCBに直接接続したキーパッドとを含む。任意的な実施形態では、表示画面102は、タッチスクリーン機能を有する。ボタンパッド104は、IPG14を起動及び停止することを可能にし、IPG14内の刺激パラメータの調節又は設定を可能にし、画面の間の選択を可能にする複数のボタン106、108、110、及び112を含む。
【0049】
図示の実施形態では、ボタン106は、IPG14を起動及び停止するように作動させることができるオン/オフボタンとして機能する。ボタン108は、RC106が画面表示及び/又はパラメータの間で切り換わることを可能にする選択ボタンとして機能する。ボタン110及び112は、パルス振幅、パルス幅、及びパルス繰返し数を含むIPG14によって発生するパルスの刺激パラメータのうちのいずれかを増大又は低下させるように作動させることができる上/下ボタンとして機能する。
【0050】
図6を参照して、ここで例示的なRC16の内部構成要素を以下に説明する。一般的に、RC16は、プロセッサ114(例えば、マイクロコントローラ)と、プロセッサ114による実行のための作動プログラムを格納するメモリ116と、リンク34(又はリンク32)(図1に示している)を通じて制御データ(刺激パラメータと、ステータス情報を提供する要求とを含む)をIPG14(又はETS20)に送信し、ステータス情報(測定電気データを含む)をIPG14(又はETS20)から受信するために、並びにリンク36(図1に示している)を通じてCP18から制御データを受信し、ステータスデータをCP18に送信するための遠隔測定(テレメトリ)回路118とを含む。更に、RC16は、ボタンパッド104から刺激制御信号を受け取り、表示画面102(図5に示している)にステータス情報を伝達するための入力/出力回路120を含む。RC16の機能及び内部構成要素の更なる詳細内容は、先に引用によって本明細書に組み込んだ米国特許第6,895,280号明細書に開示されている。
【0051】
上記に簡単に解説したように、CP18は、複数の電極組合せのプログラミングを大幅に簡素化し、医師又は臨床医がIPG14、並びにRC16内にプログラミングされる望ましい刺激パラメータを即座に判断することを可能にする。この場合、埋め込み後のIPG14のプログラミング可能なメモリ内の刺激パラメータの修正は、臨床医により、IPG14と直接通信を行うことができ又はRC16を通じてIPG14と間接的に通信を行うことができるCP18を用いて実施される。すなわち、CP18は、医師又は臨床医が脊髄の近くの電極アレイ26の作動パラメータを修正するのに使用することができる。
【0052】
図3に示しているように、CP18の全体の外観は、ラップトップパーソナルコンピュータ(PC)のものであり、実際に、指向プログラミングデバイスを含むように適切に構成され、本明細書に説明する機能を実施するようにプログラムされたPCを用いて実施することができる。この場合、プログラミング技術は、CP18内に含まれるソフトウエア命令を実行することによって実施することができる。代替的に、そのようなプログラミング技術は、ファームウエア又はハードウエアを用いて実施することができる。いずれの場合にも、CP18は、IPG14(又はETS20)によって発生する電気刺激の特性を能動的に制御することができ、患者のフィードバックに基づいて最適な刺激パラメータを判断し、その後にこの最適な刺激パラメータを用いてIPG14(又はETS20)をプログラムすることを可能にする。
【0053】
臨床医がこれらの機能を実行することを可能にするために、CP18は、マウス121、キーボード122、及びケース126に収容されたプログラミング表示画面124を含む。マウス121に加えて又は代替的に、ジョイスティック、又はキーボード122に付随するキーの一部として含まれる方向キーのような他の指向プログラミングデバイスを使用することができることを認めるべきである。図7に示しているように、一般的に、CP18は、プロセッサ128(例えば、中央演算装置(CPU))と、臨床医がIPG14(又はETS20)及びRC16をプログラムすることを可能にするためにプロセッサ128を実行することができる刺激プログラミングパッケージ132を格納するメモリ130とを含む。更に、CP18は、リンク36(図1に示している)を通じて刺激パラメータをRC16にダウンロードし、RC16のメモリ116内に既に格納されている刺激パラメータをアップロードするための遠隔測定(テレメトリ)回路134を含む。遠隔測定回路134は、RC16を通じて間接的に制御データ(刺激パラメータと、ステータス情報を提供する要求とを含む)をIPG14(又はETS20)に送信し、ステータス情報(測定電気データを含む)をIPG14(又はETS20)から受信するようにも構成される。
【0054】
CP18は、2つのリードの間の相対位置を判断するために、1つ又はそれよりも多くの交差(クロス)リード電界測定値を取得し、これらの測定値を既知のリード構成の基準電界測定値と比較することにより、経皮リード12の相対的位置決め(例えば、スタガ(又はずれ)、分離及び/又は傾斜角)を自動的に判断するように構成される。以下に説明する実施形態では、電界電位測定値が得られるが、代替的に、インピーダンス測定値のような他の種類の測定値を取得することができる。CP18は、比較的高い処理パワー及び記憶機能を有するので、リード12の相対位置を判断するのに本発明の背景技術で解説したもののような従来の手段を使用することができる。
【0055】
CP18は、1つのリード12上のいくつかの電極上の電界電位を別のリード12上の電極から供給される電流に応じて測定することによってこの機能を提供する。特に、電流供給源の存在に起因する導電媒体中の電流の流れには、電位電界が伴う(付随する)ことは公知である。例示的に、点電流供給源では、電界電位は、ソース電流に次式のように関連する[1]。
ここで、Φは、電界電位であり、σは、媒体の導電率であり、rは、点電流供給源までの距離であり、Iは、印加されるソース電流である。一般的に、単極では、電界電位(絶対値)は、電流供給源からの距離が増大すると共に低下する。多重極リード12(1)、12(2)のシステム(図8a及び図8bに示している)では、電極(例えば、リード12(1)上の電極)のうちの各々から電流を供給して、他の全ての非能動的な電極(例えば、リード12(2)上の電極)上の電界電位を測定することによって一連の単極電位測定を実施することができる。各電極上で測定される電界電位は、距離との一般的な関係に従うことになり、電流供給源に最も近い電極が最も高い電界電位を有する。本明細書では点電流供給源モデルのみを例示的に使用するが、電界電位と、電流供給源と測定電極の間の距離との関係を表す上で、有限要素モデル(FEM)又は他の数学モデルのようなより複雑なモデルを使用することができることに注意すべきである。
【0056】
相対リード位置に関する情報を含むのは、交差(クロス)リード(すなわち、ソース電極を含むものとは別のリード)電極から測定される電界電位である。電流が1つの電極上で供給される場合には、交差リード電極上で測定される電界電位は、最も高い電界電位がソース電極に最も近い電極上で測定される可能性が高く、リードに沿って両側で徐々に低下する電界電位が測定されるパターンを示すことになる。例えば、図8a及び図8bに例示している図は、既知のリード位置に関連する交差リード電界電位プロフィールを示している。図8aは、両方のリード12(1)、12(2)が完全に整列している時の基準の場合を示している。ソース接点は、電極E4であり、ソース電極E4に最も近いのは電極E12であり、従って、ピーク電界電位は、電極E12上で測定される。リードがスタガされると、すなわち、ずらして配置されると、(例えば、図8bに例示しているように2つの電極がスタガされる)、ソース電極E4に最も近い交差(クロス)電極は、今度は電極E10になり、従って、このリードに沿って測定されるピーク電界電位も同じく、基準と比較して電極2つ分シフトする。電界電位プロフィールにおけるそのようなシフトは、相対リードのスタガの推定を可能にする特徴的パターンを与える。
【0057】
距離−電位関係に基づいて、交差リード電極上で測定されることが予想される電界電位のプロフィールを既知のリードのスタガに対して予想することができ、CP18のメモリ132内に、モデル化電界電位プロフィール及びそれに対応するリードのスタガ構成を含むルックアップテーブルとして格納することができる。図示の実施形態では、CP18は、これらの電界電位プロフィールを予想するのに数値積分モデル(例えば、FEM)を利用することができる。次に、実際のリードのスタガを推定するために、特定のリードのスタガに対して交差リード電極上で測定された電界電位プロフィールをその相似性/相関性に関して既知のリードのスタガのものに対して精査することができる。相似性/相関性を評価するために、相関性解析(例えば、ピアソン又はスピアマン)を使用することができる。この場合、検出リードのスタガは、モデル化電界電位プロフィールが、測定電界電位と最大相関性を有する際のものとして定められる。
【0058】
RC16は、限られた処理パワー及び記憶機能のみを有するので、計算負荷が高くて大量のストレージ空間を必要とするモデル化電界電位を発生するのに使用されるFEMは、RC16内では実施することができない。代替的に、RC16のプロセッサ114は、解析モデル、並びに以下により詳細に説明する「シフト」方式及び「掃引」手法を用いて実時間で様々なスタガ位置に対する基準電界電位プロフィールを順次発生させることによってリード12の相対位置を識別し、これらの基準プロフィールが発生する時にこれらを以前に測定された電界電位プロフィールと比較するための有効な手段を利用する。従って、RC16は、測定電界電位プロフィール及び一度に1つの基準電界電位プロフィールしか格納する必要がなく、それによってメモリストレージ空間が実質的に低減される。
【0059】
RC16は、上述のことを最初にIPG16(すなわち、図4に示しているモニタ回路70)に対して交差リード電気パラメータ(この場合、電界電位)を従来方式で測定してリード12の測定電気プロフィールを発生させるように命令することによって達成する。具体的には、第1のリード12(1)によって担持されたソース電極(例えば、電極E4)が、ソース電流を発生させるように作動され、発生したソース電流に応じて、第2のリード12(2)によって担持された測定電極の各々(例えば、電極E9〜E16の各々)において電界電位の振幅又は大きさが測定される。第1のリード12(1)上の他のソース電極(例えば、電極E1〜E3及びE5〜E8)も同様にソース電流を発生させるのに使用することができ、第2のリード12(2)によって担持された測定電極の各々(例えば、電極E9〜E16)をそれぞれの発生ソース電流を測定するのに使用することができる。
【0060】
従って、M×N個のデータポイントを有する測定電界電位プロフィールを発生させることができ、ここでMは、ソース電流を発生させるのに使用されるソース電極の個数であり、Nは、ソース電流に応じて電界電位を測定するのに使用される測定電極の個数である。第1のリード12(1)が電極E1〜E8を支持し、第2のリード12(2)が電極E9〜E16を担持する例示的な事例では、電界電位プロフィールは、M×N=64個のデータポイントを有することができる。冗長性又は代替性を与えるために、第2のリード12(2)上の電極をソース電流を発生させることに使用することができ、第1のリード12(1)上の電極をソース電流に応じて電界電位の振幅を測定することに使用することができる。いずれの場合にも、その後に、測定電界電位プロフィールをIPG14からRC16に無線送信することができ、そこでメモリ116(図6に示している)に格納することができる。
【0061】
次に、RC16は、「シフト」方式を用いて交差リード電気パラメータ(この場合交差リード電界電位)を推定して、様々な既知のリードのスタガ構成にある電極リードに対する基準電気プロフィールを発生させる。具体的には、RC16は、第1のリード12(1)によって担持された電極(例えば、電極E4)におけるソース電流に応じて発生する電界をモデル化し、第2のリード12(2)によって担持された電極(例えば、電極E9〜E16)の各々における電界電位の振幅をモデル化された電界を用いて推定することによって最初のリードのスタガ構成に対する最初の基準電界電位プロフィールを発生させる。モデル化される最初の既知のリードのスタガ構成は、図8aに示しているようにいかなるスタガも持たないリードのスタガ構成とすることができる。以下により詳細に説明するが、その後に、他の基準電界電位プロフィールを発生させるために、最初の基準電界電位プロフィールを空間的にシフトさせることができる。
【0062】
図示の実施形態では、FEMからの出力を近似するように、モデルデータを生成する簡単で直接的な手法を与える明示的な数式を用いて電界が解析的にモデル化される。この場合、解析モデルは、単極電界電位をソース電極に対する測定電極の2次元(x,y)位置(すなわち、ソース電極と測定電極の間の縦横の距離)の関数として表し、最小二乗誤差(LSE)という意味でFEM電界電位に対する最適曲線当て嵌めである。Lee D.、Moffitt M.Bradley K.、Peterson D.著「電界成形による選択的神経活性化:脊髄刺激のための新しいコンピュータモデルからの結果(Selective Neural Activation by Field Sculpting: Results From a New Computer Model for Spinal Cord Stimulation)」、第16回計算神経科学年次会議、2006年7月7〜12日、カナダ、トロント:177に説明されているように、目的電界電位が並列経皮リードのFEMから得られる。
【0063】
最適曲線当て嵌めは、次式の形式で得ることができる[2]。
ここで、I、σx、σy、kx、ky、C、及びτは、自由パラメータであり、x及びyは、ソース電極と測定電極の間の横距離及び縦距離である。FEMに対する最適曲線当て嵌めを与える1つの自由パラメータセットは、I=149.5437、σx=7.8359、σy=0.118942、kx=0.476833、ky=2.757028、C=57.9078、及びτ=0.0002945である。すなわち、既知のリードのスタガ構成に対する基準電界電位プロフィールを発生させるために、式[2]を用いて、各測定電極において予想される電界電位(すなわち、測定電極における電界電位の振幅)をいずれかの所定のソース電極に対して計算することができる。取りわけ、モデル方程式の形式は、リード幾何学構成とモデル化される組織媒体とに依存することになる。
【0064】
重要な点として、付加的な既知のリードのスタガ構成に対する基準電界電位プロフィールを計算上効率的な方式で発生させるために「シフト」方式が使用される。「シフト」方式は、1つの多重極リード(例えば、N個の接点のリード)が別のものに対して2つの近い電極の間の中心間距離に等しい量だけ移動された場合に、遠位電極又は近位電極を除く全ての電極がそれに隣接する電極の元の位置を占めることになるということに基づいている。従って、新しいリードのスタガ構成にあるこれらの電極の各々の上で測定されることが予想される電界電位は、以前のリードのスタガ構成において各々に隣接する電極に対して計算された電界電位値を取ることになり、これは、一端の電極における電界電位のみが不明であり、この電界電位しか、式[2]を用いて計算する必要がないことを意味する。電界電位値を対称性によって判断することができる一部の場合は(すなわち、対称な位置(ソース電極に対して)における電界電位値が利用可能な場合は)、いかなる計算も必要ではない。
【0065】
すなわち、「シフト」方式は、以前のリードのスタガ構成におけるリードに対して式[2]を用いて以前に計算された電界電位プロフィールを空間的にシフトさせることにより、新しいリードのスタガ構成に関する電界電位プロフィールを発生させる。以下により詳細に説明するが、電界電位プロフィールは、電界電位の推定振幅を以前のリードのスタガ構成における第1の測定電極セットから、第1の電極セットから電極n個分オフセットされた新しいリードのスタガ構成にある第2の測定電極セットにシフトさせることによって空間的にシフトされる。すなわち、リードのスタガが電極n個分変更されると、新しいスタガ構成にある電極部分集合は、ソース電極に対して以前のスタガ構成における電極部分集合と同じ位置を取ることになり、従って、後者の電極に前に割り当てられていた電界電位値を提供することになる。以下に説明する例示的な場合には、n=1(すなわち、電極1つ分のオフセット)であるが、オフセット数nは、リードのスタガ検出の望ましい分解能に依存するあらゆる数とすることができる。
【0066】
図示の実施形態では、リードの一端における電界電位を削除しなければならなくなり、リードの他端における電界電位を修正することが必要になるので、以前の電界電位プロフィールに対する値の部分集合のみが新しい電界電位プロフィールにシフトされることになる。すなわち、以前のリードのスタガ構成における最後尾の電極(リードシフトの方向に対して)に関連する電界電位値は、新しいリードのスタガ構成では必要とされなくなるので、この値は、新しい電界電位プロフィールから削除されることになる。しかし、新しいリードのスタガ構成における先頭の電極(リードシフトの方向に対して)は、以前のリードのスタガ構成における電界値に関連付けることができないので、この値は、式[2]を用いて(又は推定するのに対称性を用いて)計算することが必要になる。
【0067】
電界電位値のシフト、削除、及び修正は、図9a及び図9bを参照することで最も明快に説明することができる。電界電位計算は、2つのリード(リード1及びリード2)が初期スタガを有するという仮定で始まる。例えば、N個の接点のリードでは、図9aに示しているように、初期スタガが電極S0個分(リード1がリード2を超えている)であると仮定することができる。M通りのソース構成の各々に対して、交差リード電極の各々の上の電界電位(FPm1,FPm2,...FPmNと表記しており、この場合、m=1,2,...,Mである)をこれらの電極のソース電極ESからの距離に基づいて式[2]によって定められる解析モデルを用いて評価することができる。
【0068】
次に、リード2の位置を2つの近い電極の間の中心間距離に等しい量だけシフトさせることができ、従って、図9bに示しているように、提供するリードのスタガは、ちょうど電極中心間距離分だけ変更される(すなわち、スタガが電極(S0−1)個分に等しい)。従って、新しいリードのスタガ構成の電界電位(FPm1',FPm2',...FPmN-1'と表記している)は、初期リードのスタガ構成に対して前に計算されたFPm2,FPm3,...FPmNの値を取ることになる。新しいリードのスタガ構成では、FPmN(m=1,2,...,M)と表記している電界電位値のみが不明になり、式[2]によって定められる解析モデルを用いて計算することが必要になる。
【0069】
すなわち、「シフト」方式は、以前のリードのスタガ構成から得られた電界電位プロフィールをシフトさせ、先頭の電界電位値FPm1を削除し、終端にある新しい電界電位値FPmN'を修正することによって新しいスタガ構成における電界電位プロフィールを生成する。この場合、交差リード電極(すなわち、リード2上の電極)上の電界電位値は、FPm2,FPm3,...FPmN,FPmN'、m=1,2,...,Mになる。付加的な基準電界電位プロフィールを発生させるために、リードのスタガをちょうど電極中心間距離分だけ繰返し変更し、各新しいリードのスタガ構成においてシフト方式を実施することができる。
【0070】
従って、この「シフト」方式は、式[2]を用いて既に計算済みの電界電位値を利用し、それによって新しいリードのスタガ構成に必要な新しい計算の数を大幅に低減することが分る。各リードのスタガ構成において、計算電界電位プロフィールを保存するのにM×N(Mはソース構成の個数であり、Nは、測定電極の個数である)の行列しか必要ではなく、初期電界電位プロフィールの計算を除けば、各新しいリードのスタガ構成に対してM×1個の電界電位値しか計算する必要がない。
【0071】
2つのリードの場合には、一方のリードを1つの方向に移動することは、他方のリードを反対方向に移動することに等しいことに注意すべきである。従って、2つのリードに関する交差リード電界電位データも同様に反対方向にシフトされることになる。上述の例では、リード2が下に移動する時に、リード2に関する電界電位データプロフィールは、先頭の電界電位値を削除し、最後尾のデータエントリにある新しい電界電位値を修正することによってシフトされることになり、それに対してリード1に関する電界電位は、最後尾の電界電位値を削除し、先頭のデータエントリにある新しい電界電位値を修正することによってシフトされることになる。更に、リード1に関する電界電位プロフィールとリード2に関する電界電位プロフィールとを入れ替えると、評価中のスタガの方向が逆転されることになる(その理由は、スタガは、一方のリードの他方のリードに対する相対オフセットしか表さないからである)。この可換性は、同じ電界電位プロフィールを用いて2つのスタガ位置(2つの方向に対称な)の評価を可能にする(各電界電位プロフィールに対するリード割り当てを入れ替えるだけでよい)。
【0072】
「シフト」方式の目的は、既に計算済みの電界電位を利用することであり、それによって新しい計算の数が低減される。電界電位は、リードのスタガがちょうど電極中心間距離分だけシフトされる場合にのみ再使用することができる(その理由は、1つの電極が、それに隣接する電極の元の位置を完全に占めることになるからである)。1回のシフトでは、ちょうど電極中心間距離分の低分解能でリードのスタガを評価することしか可能にはならない。しかし、臨床用途では、リードのスタガがより高い分解能で評価されることになることが予想される。
【0073】
より高い分解能でリードのスタガを評価するために、RC16は、「シフト」方式と併せて「掃引」手法を実施する。「掃引」手法は、ちょうど電極分のオフセットの間の格差を埋めてより高い分解能を与えるためにリードのスタガを数回評価する。具体的には、各回において、リードのスタガは、ちょうど電極中心間距離1つの分の低分解能における上述の「シフト」方式を繰返し用いてシフトされる。しかし、各回における初期スタガ構成は、高分解能によって定められるより小さい距離だけオフセットされる。「掃引」手法を用いて高分解能を得る上で2つの手法が存在する。
【0074】
第1の種類の「掃引」手法では、高分解能は固定のものであって事前に定められ、初回を除く各回において、初期スタガ位置が、高分解能によって定められる量(例えば、電極中心間距離1/L個分、この場合Lは固定の任意の数)だけオフセットされる。図10aに示しているように、初回(数字「1」によって表す)には、初期リードのスタガ構成が+Nの電極として設定され、リードのスタガ(円として示している)が、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N,+N−1,+N−2...,−Nの電極において順次評価される。2回目(数字「2」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+N−1/Lの電極として設定され、リードのスタガ(三角形として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+(N−1/L),+N−1−1/L,+N−2−1/L,...,−N−1/Lの電極において順次評価される。3回目(数字「3」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+N−2Lの電極として設定され、リードのスタガ(正方形として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N−2/L,+N−1−2/L,+N−2−2/L,...,−N−2/Lの電極において順次評価される。最終回(文字「L」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+N−(L−1)/L)として設定され、リードのスタガ(菱形として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N−(L−1)/L),+(N−1−(L−1)/L),+(N−2−(L−1)/L),...,−N−(L−1)/L)の電極において順次評価される。
【0075】
第2の種類の「掃引」手法では、高分解能は変動し、初回を除く各回において、初期スタガ位置のオフセットが各回において半分に分割される(例えば、電極中心間距離1/2K-1個分、この場合、Kは回数)。図10bに示しているように、初回(数字「1」で表す)には、初期リードのスタガ構成は+Nの電極として設定され、リードのスタガ(円として示している)は、上記に解説した「シフト」方式を用いて+N,+N−1,+N−2,...,−Nにおいて順次評価される。2回目(数字「2」で表す)には、初期リードのスタガ構成は、+(N−1/2)の電極に設定されるように電極中心間距離1/2個分だけオフセットされ、リードのスタガ(三角形として示している)は、+N−1/2,+N−3/2,+N−5/2,...,−N−1/2の電極において順次評価される。この2回目におけるリードのスタガ構成は、初回に評価されたものと共に、電極中心間距離1/2個分の分解能を与えることになる。3回目(数字「3」で表す)には、2つの初期リードのスタガ構成が+N−1/4及び+N−3/4に設定されるように初期リードのスタガ構成のオフセットは前と同様に半分に分割され、リードのスタガ(正方形として示している)は、+N−1/4,+N−3/4,+N−5/4,+N−7/4,+N−9/4,+N−11/4,...,−N−1/4,−N−3/4において順次評価される。この3回目におけるリードのスタガ構成は、前の回に評価されたものと共に、電極中心間距離1/4分の分解能を与えることになる。より高い分解能を得ることを必要とする場合には、そのような処理を繰り返すことができる。RC16は、現在の分解能が十分であるか否か、又はより高い分解能が必要であるか否かを判断するために、評価の各回の後にスタガ検出結果を検査することができる。
【0076】
各基準電界電位プロフィールを上述の「シフト」方式及び「掃引」手法を用いて発生させた後に、測定電界電位プロフィールは、現時点で発生している基準電界電位プロフィールと比較される。有利な態様においては、各基準電界電位プロフィールは、実時間で発生されて測定電界電位プロフィールと比較され、現在発生している基準電界電位プロフィールを保存/格納するのに使用されるメモリを各基準電界電位プロフィールが測定電界電位プロフィールと比較された後に解放することができ、その後に新しく発生する基準電界電位プロフィールを格納するのに再度使用することができるので、最小量のメモリしか必要とされない。取りわけ、RC16における処理時間を短縮するために、あらゆる解析モデル計算(この場合、モデル計算は式[2]を含む)をRC16の製造中にRC16のメモリ116内に得られる電界電位値をロードすることによって実施することができる。より大きなメモリ空間を必要とすることになるが、必要とされるメモリ空間量は、「シフト」方式によって依然として実質的に低減される。電界電位プロフィール比較の全てを実施し終わった後に、リードのスタガを定量化することができ、具体的には、測定電気プロフィールに最良適合する既知の基準電界電位プロフィールに対応する既知のスタガ構成が、定量化されたリードのスタガとして選択されることになる。
【0077】
基準電界電位プロフィールのうちのどれが測定電界電位プロフィールに最良適合するかを判断するために、様々な比較関数のうちのいずれかを用いてデータを互いに計算上で比較することができる。
【0078】
例えば、使用することができる1つの比較関数は、次式のように表すことができる「ピアソン相関係数」関数のような相関係数関数である。
ここで、rは、係数であり、MSRは、測定電界電位プロフィールの値(すなわち、第1のデータセット)を表し、REFは、比較される現在の基準電界電位プロフィールの値(すなわち、第2のデータセット)を表し、Mは、データセットの平均(第1のデータセット又は第2のデータセットのいずれか)を表し、iは、データセットの単一の要素(第1のデータセット又は第2のデータセットのいずれか)を表す。有利な態様においては、相関係数は、マグニチュードスケールに影響されず、−1(完全逆相関)から1(完全相関)までの範囲にわたる。この関数を用いて、最大値、すなわち、実際のデータとモデルベースのデータ推定値の間の最も高い相関を求める。
【0079】
使用することができる別の比較関数は、最小二乗ベースの関数であり、特に次式のように表すことができる差二乗和関数である。
ここで、SSDは、二乗差の和であり、MSR、REF、及びiは、上記に定義済みである。SSD関数は、実際のデータとモデルベースのデータ推定値のインスタンスの間の差を測定する。この関数を用いて、最小値、すなわち、実際のデータから最小限にしか異ならない推定値をもたらすモデルのインスタンスを求める。相互相関関数を含む他の比較関数、ウェーブレット関数、及び関連のマッチング手段を代替的に使用することができる。
【0080】
リードの間のスタガが識別された状態で、患者体内のリードの実際のスタガと推定上適合する識別されたリードのスタガに従って配置された電極26のグラフィック表現をディスプレイ102(図5に示している)を通じてユーザに表示することができる。リード12の間の相対位置が最適な位置から移動したか又はそうでなければ最適な位置にないことをリード12の間のスタガが示す場合には、(1)外科切除又は整復、及び(2)再プログラミングという2つの分類に収めることができる補正処置を取ることができる。一般的に、外科切除又は整復は、再プログラミングを実施可能な選択肢とするにはリード12のうちの1つ又はそれよりも多くが過度に遠くに移動したと判断された場合に使用されることになる。例えば、治療計画が、図8aに示している第2のリード12(2)上の電極E9の基準の位置に電極が設けられることを必要とした場合に、第2のリード12(2)が図8bに示している位置に移動すると、この基準の位置にはもはやいかなる電極も存在しないので、この治療計画は実施することができない。
【0081】
再プログラミングに関しては、各リード12の実際の移動(又は移動の欠如)に関する情報は、再プログラミングを受け持つ主体(すなわち、医師又はSCSシステム10)が、片方又は両方のリードの移動に起因してリード12(1)とリード12(2)の間の相対位置が変化したという認識を欠く場合にそうであろうものよりも遥かに効率的な方式で再プログラミングを進めることを可能にすることになる。例えば、図8aに例示しているリード12が、第1のリード12(1)上の電極E4、E5、及びE6から刺激パルスを供給し、第2のリード12(2)上の電極E13及びE14に流入させることを含む治療計画に使用され、第2のリード12(2)が図8bに例示している位置に移動した後に、リード12(2)だけが移動して電極2つ分に対応する距離移動したことが識別されたと仮定すると、治療計画を単純に電極E13及びE14の代わりに電極E11及びE12をそれぞれ使用することによって再プログラムすることができる。
【0082】
再プログラミングは、自動的に又は臨床医が実施することができる。リード移動が連続的にモニタされている場合に特に有利である自動再プログラミングは、全く自動のものとすることができる(すなわち、再プログラミングは、患者の認識なしに発生することになる)。代替的に、RC16は、少なくとも一方のリード12が他方に対して移動したことを患者に示し、自動再プログラミングによる刺激治療計画を試みるか、又は単純にリード移動を臨床医に報告するかの選択肢を与えることができる。RC16からの通知又は患者の苦情のいずれかに応じた臨床医による再プログラミングは、一般的に、CP18が、RC16からのリード移動データに基づいて治療計画を修正する(又は単純にその修正を示唆する)ことを可能にする段階を含むことになる。代替的に、リードの整復は、臨床医が再プログラミング中の使用において見直すために記録され、それによって治療計画を再プログラムするのに必要とされる臨床医の時間(及び経費)の量、並びに高価な蛍光透視処置を必要とすることになる可能性が低減する。
【0083】
交差リード分離距離を推定するのに、電界電位に加えて他の電気パラメータを使用することができることに注意すべきである。例えば、交差リード二重極インピーダンス測定値及び基準リード間二重極インピーダンス測定値を取得することができる(電極対をアノードとカソードとして用い、定電流を印加して電極の一方の上でインピーダンス測定値を取得することにより)。測定インピーダンスは、電極対の間の電界電位降下に比例することになる。二重極インピーダンスが大きい程、電極対の間の距離は大きい。従って、上述の「シフト」方式及び「掃引」手法において電界電位を使用する代わりに、測定インピーダンスプロフィール及び基準インピーダンスプロフィールを発生させるようにインピーダンスを使用することができる。更に、「シフト」方式及び「掃引」手法は、RC16のような限られた計算パワー及びメモリのみを有するデバイスにおける使用に十分に適するが、それらはまた、CP18においても利用することができる。更に、RC16(又はCP18)が上述の相対リード位置推定機能を実行するのではなく、IPG14自体がこれらの機能を実行し、その後に推定リード位置データをRC16(又はCP18)に送信することができる。
【0084】
本発明の特定的な実施形態を図示して説明したが、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定するように意図しておらず、当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変形及び修正を加えることができることが明らかであろう。従って、本発明は、特許請求によって定められる本発明の精神及び範囲に含めることができる代替、修正、及び均等物を網羅するように意図している。
【符号の説明】
【0085】
12 リード
14 埋め込み可能パルス発生器(IPG)
16 遠隔制御器(RC)
18 プログラム作成器(CP)
20 外部試験刺激器(ETS)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織に隣接して配置された2つの電極リードを作動させる方法であって、
複数の交差リード電気パラメータを測定して、電極リードの測定電気プロフィールを発生させる段階と、
複数の交差リード電気パラメータを推定して、第1の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
前記第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて、第2の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
前記測定電気プロフィールを前記第1及び第2の基準電気プロフィールと比較する段階と、
前記比較に基づいて前記電極リード間の縦スタガを定量化する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電極リードの前記測定電気プロフィールの前記発生は、該リードの一方によって担持された少なくとも1つの電極を作動させて前記組織を通じて電流を供給する段階と、該供給電流に応答して、該リードの他方によって担持された複数の電極の各々において前記電気パラメータの振幅を測定する段階とを含み、
前記第1の基準電気プロフィールの前記発生は、前記一方のリードによって担持された電極において供給した電流に応答して発生した電界をモデル化する段階と、前記他方のリードによって担持された前記電極の第1のセットにおける前記電気パラメータの振幅を該モデル化電界を用いて推定する段階とを含み、
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、前記推定振幅を前記電極の第1のセットから前記他方のリードによって担持された前記電極の第2のセットにシフトさせる段階を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、前記他方のリードによって担持された前記電極のうちの終端の1つにおける前記電気パラメータの振幅を前記モデル化電界を用いて推定する段階を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のリードスタガ構成は、互いから中心間電極間隔1つ分オフセットされ、前記推定された複数の交差リード電気パラメータは、中心間電極間隔1つ分空間的にシフトされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
別の複数の交差リード電気パラメータを推定して、前記第1の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離オフセットされた第3の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第3の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
他方の推定された複数の交差リード電気パラメータを前記電極間隔1つ分空間的にシフトさせて、前記第3の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分オフセットされた第4の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第4の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
前記測定電気プロフィールを前記第3及び第4の基準電気プロフィールと比較する段階と、
前記測定電気プロフィールと前記第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールとの間の前記比較に基づいて前記電極リード間の前記縦スタガを定量化する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
付加的な複数の交差リード電気パラメータを推定して、中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離だけ互いからオフセットされた付加的な複数の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する付加的な複数の基準電気プロフィールをそれぞれ発生させる段階と、
前記測定電気プロフィールを前記付加的な基準電気プロフィールと比較する段階と、
前記測定電気プロフィールと前記第1、第2、及び付加的な基準電気プロフィールとの間の前記比較に基づいて前記電極リード間の前記縦スタガを定量化する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離は、予め判断されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離は、前記測定電気プロフィールと前記付加的な基準電気プロフィールの少なくとも一部との間の前記比較に基づいて動的に選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の基準電気プロフィールは、前記測定電気プロフィールを前記第1の基準電気プロフィールと比較する段階に続いて発生されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の交差リード電気パラメータを前記推定する段階は、前記リードの解析モデルを発生させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記解析モデルは、前記リード及び組織の数値積分モデルに対する最適当て嵌めであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定電気プロフィールに最良適合する前記既知の電気プロフィールに対応する前記既知のスタガ構成は、前記定量化縦スタガとして選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電気パラメータは、電界電位であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記定量化縦スタガを有する前記リードのグラフィック表現を表示する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記定量化縦スタガに基づいて複数の刺激パラメータを用いて神経刺激器をプログラムする段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組織は、脊髄組織であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
電極リードとの併用のための神経刺激制御システムであって、
ユーザから入力を受け取るように構成されたユーザインタフェースと、
複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を発生し、該測定交差リード電気パラメータから電極リードの測定電気プロフィールを発生させ、複数の交差リード電気パラメータを推定して第1の既知のスタガ構成にある該電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させ、該第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて第2の既知のスタガ構成にある該電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させ、該測定電気プロフィールを該第1及び第2の基準電気プロフィールと比較し、かつ該比較に基づいて該電極リード間の縦スタガを定量化するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記電極リードの前記測定電気プロフィールの前記発生は、該リードの1つによって担持された少なくとも1つの電極を作動させて組織内に電界を発生させる段階と、該発生電界に応答して、別の前記リードによって担持された複数の電極の各々において前記電気パラメータの振幅を測定する段階とを含み、
前記第1の基準電気プロフィールの前記発生は、前記1つのリードによって担持されたソース電極において発生された電界をモデル化する段階と、他方のリードによって担持された前記電極の第1のセットにおける前記電気パラメータの振幅を該モデル化電界を用いて推定する段階とを含み、
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、前記推定振幅を前記電極の第1のセットから他方のリードによって担持された前記電極の第2のセットにシフトさせる段階を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項19】
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、他方のリードによって担持された前記電極のうちの終端の1つにおける前記電気パラメータの振幅を前記モデル化電界を用いて推定する段階を含むことを特徴とする請求項18に記載の神経刺激制御システム。
【請求項20】
前記第1及び第2のリードスタガ構成は、互いから中心間電極間隔1つ分オフセットされ、前記推定された複数の交差リード電気パラメータは、中心間電極間隔1つ分空間的にシフトされることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサは、別の複数の交差リード電気パラメータを推定して、前記第1の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離オフセットされた第3の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第3の基準電気プロフィールを発生させ、別の推定された複数の交差リード電気パラメータを該電極間隔1つ分空間的にシフトさせて、該第3の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分オフセットされた第4の既知のスタガ構成にある該電極リードに関する第4の基準電気プロフィールを発生させ、かつ前記測定電気プロフィールを前記第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールと比較して、該測定電気プロフィールと該第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールとの間の該比較に基づいて該電極リード間の前記縦スタガを定量化するように更に構成されることを特徴とする請求項20に記載の神経刺激制御システム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのプロセッサは、付加的な複数の交差リード電気パラメータを推定して、中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離だけ互いからオフセットされた付加的な複数の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する付加的な複数の基準電気プロフィールをそれぞれ発生させ、前記測定電気プロフィールを該付加的な基準電気プロフィールと比較し、かつ該測定電気プロフィールと前記第1、第2、及び付加的な基準電気プロフィールとの間の該比較に基づいて前記電極リード間の前記縦スタガを定量化するように更に構成されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項23】
前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離は、前記少なくとも1つのプロセッサによって予め決定されることを特徴とする請求項22に記載の神経刺激制御システム。
【請求項24】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離を前記測定電気プロフィールと前記付加的な基準電気プロフィールの少なくとも一部との間の前記比較に基づいて動的に選択するように構成されることを特徴とする請求項22に記載の神経刺激制御システム。
【請求項25】
前記第2の基準電気プロフィールは、前記測定電気プロフィールを前記第1の基準電気プロフィールと比較する段階に続いて発生されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項26】
前記複数の交差リード電気パラメータを前記推定する段階は、前記リードの解析モデルを発生させる段階を含むことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項27】
前記解析モデルは、前記リード及び組織の数値積分モデルに対する最適当て嵌めであることを特徴とする請求項26に記載の神経刺激制御システム。
【請求項28】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記測定電気プロフィールに最良適合する前記基準電気プロフィールに対応する前記既知のスタガ構成を前記定量化縦スタガとして選択するように構成されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項29】
前記電気パラメータは、前記発生された電界の電界電位であることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項30】
前記定量化縦スタガを有する前記リードのグラフィック表現を表示するためのディスプレイを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項31】
前記プロセッサは、前記定量化縦スタガに基づいて遠隔測定回路によって複数の刺激パラメータを用いて神経刺激器をプログラムするように構成されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項32】
前記ユーザインタフェースと前記少なくとも1つのプロセッサとを収容する外部制御デバイスを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項33】
前記複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を神経刺激器に無線送信するように構成された遠隔測定回路を更に含むことを特徴とする請求項32に記載の神経刺激制御システム。
【請求項1】
患者の組織に隣接して配置された2つの電極リードを作動させる方法であって、
複数の交差リード電気パラメータを測定して、電極リードの測定電気プロフィールを発生させる段階と、
複数の交差リード電気パラメータを推定して、第1の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
前記第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて、第2の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
前記測定電気プロフィールを前記第1及び第2の基準電気プロフィールと比較する段階と、
前記比較に基づいて前記電極リード間の縦スタガを定量化する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電極リードの前記測定電気プロフィールの前記発生は、該リードの一方によって担持された少なくとも1つの電極を作動させて前記組織を通じて電流を供給する段階と、該供給電流に応答して、該リードの他方によって担持された複数の電極の各々において前記電気パラメータの振幅を測定する段階とを含み、
前記第1の基準電気プロフィールの前記発生は、前記一方のリードによって担持された電極において供給した電流に応答して発生した電界をモデル化する段階と、前記他方のリードによって担持された前記電極の第1のセットにおける前記電気パラメータの振幅を該モデル化電界を用いて推定する段階とを含み、
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、前記推定振幅を前記電極の第1のセットから前記他方のリードによって担持された前記電極の第2のセットにシフトさせる段階を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、前記他方のリードによって担持された前記電極のうちの終端の1つにおける前記電気パラメータの振幅を前記モデル化電界を用いて推定する段階を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のリードスタガ構成は、互いから中心間電極間隔1つ分オフセットされ、前記推定された複数の交差リード電気パラメータは、中心間電極間隔1つ分空間的にシフトされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
別の複数の交差リード電気パラメータを推定して、前記第1の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離オフセットされた第3の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第3の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
他方の推定された複数の交差リード電気パラメータを前記電極間隔1つ分空間的にシフトさせて、前記第3の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分オフセットされた第4の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第4の基準電気プロフィールを発生させる段階と、
前記測定電気プロフィールを前記第3及び第4の基準電気プロフィールと比較する段階と、
前記測定電気プロフィールと前記第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールとの間の前記比較に基づいて前記電極リード間の前記縦スタガを定量化する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
付加的な複数の交差リード電気パラメータを推定して、中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離だけ互いからオフセットされた付加的な複数の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する付加的な複数の基準電気プロフィールをそれぞれ発生させる段階と、
前記測定電気プロフィールを前記付加的な基準電気プロフィールと比較する段階と、
前記測定電気プロフィールと前記第1、第2、及び付加的な基準電気プロフィールとの間の前記比較に基づいて前記電極リード間の前記縦スタガを定量化する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離は、予め判断されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離は、前記測定電気プロフィールと前記付加的な基準電気プロフィールの少なくとも一部との間の前記比較に基づいて動的に選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の基準電気プロフィールは、前記測定電気プロフィールを前記第1の基準電気プロフィールと比較する段階に続いて発生されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の交差リード電気パラメータを前記推定する段階は、前記リードの解析モデルを発生させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記解析モデルは、前記リード及び組織の数値積分モデルに対する最適当て嵌めであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定電気プロフィールに最良適合する前記既知の電気プロフィールに対応する前記既知のスタガ構成は、前記定量化縦スタガとして選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電気パラメータは、電界電位であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記定量化縦スタガを有する前記リードのグラフィック表現を表示する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記定量化縦スタガに基づいて複数の刺激パラメータを用いて神経刺激器をプログラムする段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組織は、脊髄組織であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
電極リードとの併用のための神経刺激制御システムであって、
ユーザから入力を受け取るように構成されたユーザインタフェースと、
複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を発生し、該測定交差リード電気パラメータから電極リードの測定電気プロフィールを発生させ、複数の交差リード電気パラメータを推定して第1の既知のスタガ構成にある該電極リードに関する第1の基準電気プロフィールを発生させ、該第1の基準電気プロフィールを空間的にシフトさせて第2の既知のスタガ構成にある該電極リードに関する第2の基準電気プロフィールを発生させ、該測定電気プロフィールを該第1及び第2の基準電気プロフィールと比較し、かつ該比較に基づいて該電極リード間の縦スタガを定量化するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記電極リードの前記測定電気プロフィールの前記発生は、該リードの1つによって担持された少なくとも1つの電極を作動させて組織内に電界を発生させる段階と、該発生電界に応答して、別の前記リードによって担持された複数の電極の各々において前記電気パラメータの振幅を測定する段階とを含み、
前記第1の基準電気プロフィールの前記発生は、前記1つのリードによって担持されたソース電極において発生された電界をモデル化する段階と、他方のリードによって担持された前記電極の第1のセットにおける前記電気パラメータの振幅を該モデル化電界を用いて推定する段階とを含み、
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、前記推定振幅を前記電極の第1のセットから他方のリードによって担持された前記電極の第2のセットにシフトさせる段階を含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項19】
前記第2の基準電気プロフィールの前記発生は、他方のリードによって担持された前記電極のうちの終端の1つにおける前記電気パラメータの振幅を前記モデル化電界を用いて推定する段階を含むことを特徴とする請求項18に記載の神経刺激制御システム。
【請求項20】
前記第1及び第2のリードスタガ構成は、互いから中心間電極間隔1つ分オフセットされ、前記推定された複数の交差リード電気パラメータは、中心間電極間隔1つ分空間的にシフトされることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサは、別の複数の交差リード電気パラメータを推定して、前記第1の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離オフセットされた第3の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する第3の基準電気プロフィールを発生させ、別の推定された複数の交差リード電気パラメータを該電極間隔1つ分空間的にシフトさせて、該第3の既知のスタガ構成から中心間電極間隔1つ分オフセットされた第4の既知のスタガ構成にある該電極リードに関する第4の基準電気プロフィールを発生させ、かつ前記測定電気プロフィールを前記第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールと比較して、該測定電気プロフィールと該第1、第2、第3、及び第4の基準電気プロフィールとの間の該比較に基づいて該電極リード間の前記縦スタガを定量化するように更に構成されることを特徴とする請求項20に記載の神経刺激制御システム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのプロセッサは、付加的な複数の交差リード電気パラメータを推定して、中心間電極間隔1つ分よりも小さい距離だけ互いからオフセットされた付加的な複数の既知のスタガ構成にある前記電極リードに関する付加的な複数の基準電気プロフィールをそれぞれ発生させ、前記測定電気プロフィールを該付加的な基準電気プロフィールと比較し、かつ該測定電気プロフィールと前記第1、第2、及び付加的な基準電気プロフィールとの間の該比較に基づいて前記電極リード間の前記縦スタガを定量化するように更に構成されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項23】
前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離は、前記少なくとも1つのプロセッサによって予め決定されることを特徴とする請求項22に記載の神経刺激制御システム。
【請求項24】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記付加的な既知のスタガ構成が互いからオフセットされる前記距離を前記測定電気プロフィールと前記付加的な基準電気プロフィールの少なくとも一部との間の前記比較に基づいて動的に選択するように構成されることを特徴とする請求項22に記載の神経刺激制御システム。
【請求項25】
前記第2の基準電気プロフィールは、前記測定電気プロフィールを前記第1の基準電気プロフィールと比較する段階に続いて発生されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項26】
前記複数の交差リード電気パラメータを前記推定する段階は、前記リードの解析モデルを発生させる段階を含むことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項27】
前記解析モデルは、前記リード及び組織の数値積分モデルに対する最適当て嵌めであることを特徴とする請求項26に記載の神経刺激制御システム。
【請求項28】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記測定電気プロフィールに最良適合する前記基準電気プロフィールに対応する前記既知のスタガ構成を前記定量化縦スタガとして選択するように構成されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項29】
前記電気パラメータは、前記発生された電界の電界電位であることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項30】
前記定量化縦スタガを有する前記リードのグラフィック表現を表示するためのディスプレイを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項31】
前記プロセッサは、前記定量化縦スタガに基づいて遠隔測定回路によって複数の刺激パラメータを用いて神経刺激器をプログラムするように構成されることを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項32】
前記ユーザインタフェースと前記少なくとも1つのプロセッサとを収容する外部制御デバイスを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の神経刺激制御システム。
【請求項33】
前記複数の交差リード電気パラメータを測定する命令を神経刺激器に無線送信するように構成された遠隔測定回路を更に含むことを特徴とする請求項32に記載の神経刺激制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【公表番号】特表2013−503015(P2013−503015A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527044(P2012−527044)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/047031
【国際公開番号】WO2011/025979
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(507213592)ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション (34)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/047031
【国際公開番号】WO2011/025979
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(507213592)ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション (34)
【Fターム(参考)】
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