神経系疾患の予防又は治療のためのラサギリンの経皮吸収貼付剤、及びその調製方法
本発明は、基質成分と化学作用を起こさない支持層と、ラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を含有する基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含むことを特徴とする神経系疾患の予防又は治療のためのラサギリンの経皮吸収貼付剤に関する。また、上記基質は、無機又は有機物材料を充填剤とする有機高分子材料およびラサギリンを含む多量の微貯留庫を含むポリマーを含む粘着物である。また、基質にはさらに一種又は一種以上のラサギリンの経皮吸収を促進する物質が含まれ、前記有機高分子材料を基礎とするポリマーはラサギリンの貯留庫と粘着剤として用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物製剤の分野に関するものであり、具体的には、基質成分と化学作用を起こさない支持層と、有効量のラサギリン及びその薬学的に許容可能な塩を含有する基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護箔片又は膜片を含む神経系疾患の予防又は治療用のラサギリン(ransagiline)の経皮吸収薬物貼付剤、及びその調製方法に関している。
【背景技術】
【0002】
ラサギリン(ransagiline)は選択性のモノアミンオキシダーゼB阻害剤であり、例えば、パーキンソン病(PD)、抑鬱症などの中枢神経系疾患の治療に用いられ、既にヨーロッパで販売されている。ラサギリンの化学構造式は以下のとおりである。
【化1】
【0003】
パーキンソン病は、神経中枢におけるドーパミン神経の退化、神経伝達物質であるドーパミンの放出量の減少による結果であると考えられている。伝達物質であるドーパミンの放出量の不足により、患者の筋肉コントロール失調を招致し、振戦、筋肉硬直、全身緊張、関節の動きの制限を引き起こし、更に、寝返りが困難となり、行動弛緩動作緩慢、不器用、活動不調、靴紐を結んだり、ボタンを掛けるような精密な動作の完成不能になり、重症者は起立や歩行も困難で、姿勢異常などの症状を有している。
【0004】
パーキンソン病の薬物治療の主要な目的は、直接又は間接的に、大脳内のドーパミンの含有量を増加させることにある。パーキンソン病を治療する薬品は主にL―ドーパ、ドーパミン受容体作動薬、アマンタジン、抗コリン薬などがある。60年代の末、L―ドーパ(L−dopa)は神経伝達物質であるドーパミンの代わりの薬物として、パーキンソン病の治療に使われ始め、今まで、依然として主要な治療薬物である。L―ドーパは大脳外において速やかに脱カルボキシル化されてドーパミンに転換されるので、多量のL―ドーパの浪費を引き起こし、また、不良反応もよく発生する。従って、L―ドーパは通常脱炭酸酵素阻害薬とともに使用され、L―ドーパの血液脳関門の通過能力を向上させる。パーキンソン病を治療するもう一つの薬物類別はドーパミン受容体作動薬(dopamine agonist)であり、ブロモクリプチン及びメシル酸ペルゴリドを含む。ドーパミンの分解酵素を阻害することで、大脳におけるドーパミンの含有量を上昇させる。ドーパミン作動薬は比較的長い半減期を有し、直接に受容体に作用することができ、L―ドーパの投与回数と投与量を減少させることができる(李天晴、中国薬学会科技開発中心、パーキンソン病治療薬物市場分析、中国薬学会ホームページ)。
【0005】
ラサギリンは不可逆の選択性のモノアミンオキシダーゼB(MAOB)阻害剤である。無作為二重盲検の臨床研究により、ラサギリンの早期PDの治療有効性を調べた(Arch Neurol,2004;61:561〜566)。404例の早期PD患者を研究対象とし、患者はラサギリン(1mg/d又は2mg/d)の治療を1年間受け、或いは、まずラサギリンの治療を六ヶ月間受けてからプラセボを六ヶ月間服用した。主要な評価指標は統合パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のスコアの変化である。その結果、371例の患者は臨床研究を完成し、1年間2mg/dラサギリン治療による患者は、後六ヶ月間プラセボ治療を受けた患者より、そのUPDRSの平均スコアが2.29単位低く、1年間1mg/dラサギリン治療を受けた患者より、そのUPDRSの平均スコアが1.82単位低いことを表した。つまり、研究者により、1年間ラサギリン(1mg/d又は2mg/d)の治療を受けた患者はその機能減退の度合いがプラセボ群より低いことが分かる。ラサギリンは他の抗振戦麻痺の薬物と似ているが、その毒副作用(主に、不眠、吐き気及び幻覚を含む)の発生率がより低い。
【0006】
ラサギリンの薬効が強く、また、経口投与すると、摂食のせいで血中の薬物ピーク濃度が60%下がり、更に、パーキンソン病の患者は行動不便になり、経口投与が困難であるので、ラサギリンを二日に一回又はより長い期間に一回経皮投与にすることが必要である。また、ラサギリンは選択性のモノアミンオキシダーゼB(MAOB)阻害剤であるが、その血中薬物濃度が高い場合には、同時にMAO−A、MAO−Bが抑制され、いわゆる「チーズ反応」という現象が発生し、即ち、患者は不可逆の非選択性の薬物を服用する時に、同時にチラミンやドーパミンを含有する薬品や食品を服用すると、高血圧性危機を引き起こす。熟したチーズには多量のチラミン成分が含まれるので、このような反応は「チーズ反応」と呼ばれている。患者はラサギリン10mg/日を服用するとともにL―ドーパを併用する場合には、高血圧や体位性高血圧などの心血管不良反応で、治療を中断する報道がある。これらの不良反応はMAO−A、MAO−Bの非選択性阻害と関わっている可能性がある。ラサギリンの経皮吸収貼付剤の吸収は緩やかなので、「チーズ反応」を減少、又は避けることができる。また、一旦、患者が「チーズ反応」で不都合を感じすれば、直ちに貼付剤を引き剥がし、更なる重大な事態を避けることができる。
【0007】
US2004013620には、その活性成分がラサギリンを含み、下記式の構造を有する経皮浸透促進剤を使用することを特徴とする経皮治療の体系が記載されている。
【化2】
【0008】
該経皮浸透促進剤はラサギリンの経皮透過を促進する効果に対して、あまり好適ではない。また、スプレー経皮吸収を採用するので、投与が不便である。従って、投与に便利で、経皮吸収効果がより良い貼付剤を探求し、患者へより多くの選択を提供することは大いに必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、基質成分と化学作用を起こさない不活性の支持層と、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含み、基質層は有機高分子ポリマー材料を含み、及び無機又は有機物材料を調節剤とする薬物貯留庫であり、該貯留庫にはラサギリンが含まれ、基質にはさらに一種又は多種のラサギリンの経皮吸収を促進する物質が含まれていることを特徴とする神経系疾患の予防又は治療のためのラサギリンの経皮吸収貼付剤を提供することにある。必要に応じて、前記の基質層には薬物徐放性の基質層及び/又は粘着層が更に含まれてもよく、薬物徐放性の基質層にも活性物質であるラサギリンが含まれてもよく、粘着層には活性物質であるラサギリンが含まれてもよく、含まれなくてもよい。もし、薬物貯留庫基質層又は薬物徐放性の基質層は適当な粘性を有すれば、単独で一つの粘着層を加える必要がない。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤により、パーキンソン病、アルツハイマー病、抑鬱症、児童多動症、レストレスレッグス症候群、多発性硬化症、及び離脱症候群を予防又は治療する用途を提供することにある。
【0011】
前記のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、基質層におけるラサギリンやその薬学的に許容可能な塩の有効量は0.01mg/cm2〜50mg/cm2であり、有効量はラサギリンの遊離アルカリで計算される。
【0012】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤は、経皮治療用の施用面積が1cm2〜50cm2である。
【0013】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、そのラサギリン又は薬学的に許容可能な塩は、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質層に存在している。
【0014】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、そのラサギリンの薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、或いは硫酸塩を含み、好ましくはメタンスルホン酸塩である。
【0015】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、その基質層における有機高分子ポリマー材料は、ポリアクリレート及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、シリコーン重合体及びその誘導体、ポリイソブチレン及びその誘導体、エチレン−酢酸エチレン共重合体およびその誘導体、或いはポリカルボキシエチレン及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種である。
【0016】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、その基質層における無機又は有機物材料である調節剤は、水、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸、塩酸、硫酸、シリカ、ケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、三ケイ酸ナトリウム、三ケイ酸カリウム、二酸化チタン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メタノール、エタノール、プロピノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、尿素、石油エーテル、ポビドン類、ポリエチレングリコール類、長鎖脂肪アルコール類、油脂類、或いは類脂質類物質から選ばれる一種または多種である。
【0017】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、基質におけるラサギリンの経皮吸収を促進する物質(ラサギリン経皮吸収促進剤)は、エタノール、プロピレングリコール、オレイン酸、オレインアルコール、リノール酸、ラウリルアルコール、ラウリン酸、イソプロピルミリステート、ラウロカプラム(LAUROCAPRAM)及びその同族体、或いはテルペン類の物質から選ばれる少なくとも一種である。ラサギリンと経皮吸収促進剤との重量比は1:1〜1:5である。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、ラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法を2種類提供することにある。
【0019】
方法一:
a.有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を50℃〜200℃に加熱された有機高分子ポリマー材料に添加すること、
b.調節剤と経皮吸収促進物質を加え、均一に混合し、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、そして、
c.該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜を形成し、保護層を貼ること
を含むことを特徴とするラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【0020】
方法二:
a.有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を一定の揮発性のある溶媒に添加し、有機高分子ポリマー材料を加え、完全に膨張させること、
b.同時又は順次に調節剤及び経皮吸収促進物質を加え、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、
c.その後、該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜を形成し、保護層を貼ること
を含むことを特徴とするラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【0021】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法において、ステップcには、更に、任意の方法を用いて数回繰り返して塗布し、多数層の薄膜の基質層を得てもよいことが含まれる。
【0022】
必要に応じて、前記の多数層の薄膜の基質層には、一層の薬物徐放層及び/又は粘着層がさらに塗布されてもよい。
【0023】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、その治療または予防される神経系疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、抑鬱症、児童多動症、レストレスレッグス症候群、多発性硬化症、及び離脱症候群である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の目的は、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩に用いられる経皮投与体系を開発することにある。具体的には、貼付剤であり、その経皮吸収効果はUS2004013620に記載のものより良く、使用される皮膚浸透促進剤がより一般的で、入手しやすい。
【0025】
従って、本発明は、特に、該活性物質であるラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を最も効率的に該体系に含ませること、及び皮膚への伝達に注目している。
【0026】
本発明によれば、基質成分と化学作用を起こさない不活性の支持層と、有効量のラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する薬物組成物である基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含み、前記基質は粘性及び/又は非粘性の有機高分子ポリマー材料を含み、及び無機又は有機物材料を充填剤とする薬物貯留庫及び/又は粘着体であり、該基質層における多量の微貯留庫はラサギリンを含み、基質にはさらに一種又は一種以上の選択性のモノアミンオキシダーゼ阻害剤(ラサギリン)の経皮吸収を促進する物質が含まれている、神経系疾患を予防又は治療するラサギリン含有経皮吸収薬物貼付剤及びその調製方法を提供する。前記有機高分子ポリマー材料は、ラサギリンやその薬学的に許容可能な塩の基質材料として、ポリアクリレート及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、シリコーン重合体及びその誘導体、ポリイソブチレン及びその誘導体、エチレン−酢酸エチレン共重合体およびその誘導体、ポリカルボキシエチレン及びその誘導体が好ましい。その有機高分子ポリマー材料は、皮膚に貼りやすいように、一定の自己粘性を有してもよい。
【0027】
前記の基質層における多量の微貯留庫包摂は、人体における有効の血中薬物濃度を持続的に維持するように、ラサギリンの放出を少なくとも2−3日又はより長い時間(一週間)に長く制御できる。
【0028】
必要な場合には、前記の基質層は薬物徐放性の基質層又は粘着基質層を更に含むことができる。必要な場合とは、基質層に採用される異なる高分子ポリマーの粘性特性と薬物放出の制御速度の特性によって決められる。
【0029】
前記の不活性の支持層(バッキング層)には箔片或いはポリエチレン、ポリプロピレンなどの膜材を複合してなる膜片、或いは不織布などが用いられる。保護層(粘着防止層)も箔片或いはポリエチレン、ポリプロピレン或いはポリカーボネートなどの膜材で複合してなる膜片を用いてもよく、パラフィンやメチルシリコン油で処理された滑らかな厚紙を用いてもよい。
【0030】
最も簡単な実施例において、これらの基質体系は単相の基質である。それは一つの支持層と、活性物質を含有し、一定の自己粘性を有する一つの高分子ポリマー基質層と、一つの使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含む。より複雑な実施例は多数層の基質を含み、また、これらの基質層には非粘着層と制御膜が含まれてもよい。成分同士の凝集力を改善するために、基質は不活性のフィラーを用いてもよい。
【0031】
基質体系において、活性物質であるラサギリンは、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)などの少なくとも一種の形態で存在している。いずれの形態で存在しても、基質体系に対して、活性成分はいずれも過飽和であり、また、この場合には最大の熱力学的活性を有する。高分子ポリマーにおける遊離基団は活性成分の放出に大きな影響を与えるので、有機や無機の調節剤を多少加入しなければならない。活性成分を必要な形態で存在させ、一方、活性成分の放出を調節するとともに、基質の理化学的性質を改変することができ、塗布しやすく、活性物質が基質からより浸出しやすい性質を持たせる。ラサギリンは通常メタンスルホン酸塩や塩酸塩の形態で存在し、比較的強い解離性を有するので、実施例1〜5においては、NaOH水溶液でPH値を7.5に調節した。該PH値の条件で、ラサギリンはほどんど遊離アルカリの形態で存在することができ、吸収が促進され、一方、PHが高すぎて、皮膚に刺激を与えるということもなく、また、NaOHが便利で入手しやすいので、好適である。実施例6において、トリエタノールアミンは調節剤としてPH値を8.5に調節し、シリコーン膜層により隔離するので、その刺激性が強くない。また、NaOHなどの他の塩基性物質で調節してもよいが、トリエタノールアミンの塩基性が温和であり、調製されたゲルが均一で気泡や顆粒がないので、好適である。
【0032】
処方において、全てのラサギリンは遊離アルカリの形態で皮膚を透過することが必要であるが、高分子有機材料基質において、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)などの形態で存在してもよい。例えば、ラサギリンのマイクロクリスタルや無定形の分散の形態は、溶媒法により、ラサギリンをエタノール又は水に溶解し、そして、ポビドン、ポリビニルアルコールと混合し、エタノールや水を揮発させるとラサギリンのポビドンやポリビニルアルコールにおける無定形の分散体が得られ、その後、それを有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などと混合して貼付剤を調製する。分散体のキャリヤとして、ポビドンやポリビニルアルコールは、尿素、ポリエチレングリコール類、繊維類などに替えてもよい。注意すべきなのは、ポビドン、ポリビニルアルコール、繊維類の中のメチルセルロース、エチルセルロースなどのような融点が比較的高いキャリヤでは、調製する際に溶媒法を用いるが、尿素やポリエチレングリコール類の中のポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000のようなものでは、溶融法で調製する。例えば、ラサギリンと細化されたポリエチレングリコール4000とを均一に混合し、40〜60℃に加熱して溶融させた後、急激に温度を下げて、それを再び固体に転化させるとラサギリンのマイクロクリスタルや無定形の分散の形態が得られ、その後、有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などと混合して貼付剤を調製する。ラサギリンが微乳、サブ微乳の形態で存在することは、油脂類、例えば、液状パラフィン、ワセリン、セチルアルコールやオクタデカノールのような長鎖脂肪アルコール類などを内相とし、水中油型の微乳、サブ微乳を形成する。ラサギリンは遊離アルカリの形態で油相に溶解し、過飽和状態になり、熱力学的に不安定状態なので、析出し、皮膚を透過しやすい。該微乳、サブ微乳は高速攪拌法、高速乳化均質法により調製でき、調製された微乳、サブ微乳を有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などと混合して貼付剤を調製することができる。ラサギリンの脂質体の形態の経皮吸収貼付剤は、リピド類物質、例えば、レシチン、水素化レシチン、コレステロールなどでラサギリンを包んで脂質体を調製することができる。その方法としては、薄膜法、逆相蒸発法、凍結乾燥法、PH−匂配法、高速攪拌法、高速乳化均質法などが挙げられる。調製されたラサギリン脂質体は有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などとともに貼付剤として調製する。上記のマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)のラサギリンの調製方法は、いずれも当業者が従来の相応の常用される製剤調製技術により実現することができる。
【0033】
皮膚の角質層は経皮吸収の主な障碍であるので、角質層を軟化させ、皮膚組織における脂質類の流動性を上げる物質は、活性成分の経皮吸収効果を増強することができる。一部の有機溶媒、脂肪酸、脂肪アルコール、ラウロカプラム、界面活性剤、角質層保湿剤、テルペン及び植物揮発油、サイクロデキストリン類などはいずれも活性成分の経皮吸収の増強効果を有する。本発明において、エタノール、プロピレングリコール、オレイン酸、オレインアルコール、リノール酸、ラウリルアルコール、ラウリン酸、イソプロピルミリステート、ゾリドン(zolidone)類、またはテルペン類、或いはこれらの任意の混合物が好ましい。その中、ゾリドン類では、ラウロカプラムが好ましく、テルペン類では、メントールが好ましい。実験によれば、ラサギリン:経皮吸収促進物質=1:1〜1:5(W/W)の場合には、ラサギリンが比較的良好な経皮吸収を有することを見出した。ラサギリン:経皮吸収促進物質<1:3(W/W)の場合には、経皮吸収促進物質の使用量の変化は、ラサギリンの吸収に対する影響は特に顕著ではなく、ラサギリン:経皮吸収促進物質が1:5(W/W)の場合には、ラサギリンの吸収は著しく向上される。しかし、経皮吸収促進物質の含有量が高すぎると、関連する副作用が起こる。我々は多量の実験により、以下の結論を得た。即ち、ラサギリンの経皮吸収効果への影響ファクターは多いが、その影響の度合では、基質>浸透促進剤を含有するか否か>主薬は遊離アルカリになるかどうか>浸透促進剤の種類の順次である。親水性のポリビニルアルコール(PVA124)を薬物含有コロイド層とする場合には、その透過効果は、ポリアクリレート樹脂、ポリイソブチレン、シリコーン重合体よりはるかに高い。基質が同じである場合には、浸透促進剤を加えたものと遊離アルカリになるものはそうではないものより高い。加えた浸透促進剤の種類について、それは浸透に影響を与えるが、それほど大きくない。その原因は、基質とラサギリンとの相互間の理化学的作用がラサギリンの放出に対して非常に重要な作用を及ぼすことによる。親水性のポリビニルアルコール(PVA124)を薬物含有コロイド層とするラサギリン貼付剤は、皮膚と外界の水分を吸収することができ、ラサギリンの飽和溶液を形成させ、ラサギリンの放出を促進すると共に、ラサギリンの浸透量を極めて大きく増加させる。
【0034】
投与貼付剤の調製の詳細について、実施例で説明する。作成した投与貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell、有効の受け取る面積が1.28cm2、体積が7ml)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。全ての貼付剤は、いずれも皮膚を介して十分多い量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが確認された。
【0035】
本発明のラサギリンの経皮吸収貼付剤は、2−3日に一回、又はより長い時間で例えば週一回投与してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0037】
以下の実施例は本発明の内容を更に説明するためのものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
実施例1:オレイン酸を皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリアクリレート基質の貼付剤
【0039】
クロロホルム中で50g、50%(w/w)のEudragit E100溶液を水中で完全に膨張したポリアクリレート粘着剤の溶液250gに加えてから、さらに50gのオレイン酸(即ち、低量のオレイン酸)を加えた後、均一に攪拌した。
【0040】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを上記の攪拌している溶液に加えた。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを100℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0041】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0042】
オレイン酸の添加量は150g(即ち、中量のオレイン酸)又は250g(高量のオレイン酸)でもよく、以降の操作ステップは上記と同じにした。
【0043】
作成した高、中、低量のオレイン酸を含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0044】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表1、2及び3に示す。表1:低量のオレイン酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表2:中量のオレイン酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表3:高量のオレイン酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図9に示す。
【0045】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のオレイン酸を含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1786μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のオレイン酸を含有する貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であり、その浸透速度がより速いことを表した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
実施例2:リノール酸を皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリアクリレート基質の貼付剤
【0050】
クロロホルム中で50g、50%(w/w)のEudragit E100溶液を水中で完全に膨張したポリアクリレート粘着剤の溶液250gに加えてから、さらに50gのリノール酸(即ち、低量のリノール酸)を加えた後、均一に攪拌した。
【0051】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを上記の攪拌している溶液に加えた。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを100℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0052】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0053】
リノール酸の添加量は150g(即ち、中量のリノール酸)又は250g(高量のリノール酸)でもよく、以下の操作ステップは上記と同じにした。
【0054】
作成した高、中、低量のリノール酸を含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0055】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表4、5及び6に示す。表4:低量のリノール酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表5:中量のリノール酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表6:高量のリノール酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図10に示す。
【0056】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のリノール酸を含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1785.25μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。しかし、オレイン酸を含有する貼付剤と、リノール酸を含有する貼付剤とは差異がない。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
実施例3:オレイン酸とプロピレングリコールを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリアクリレート基質の貼付剤
【0061】
クロロホルム中で50g、50%(w/w)のEudragit E100溶液を水中で完全に膨張したポリアクリレート粘着剤の溶液200gに加えてから、さらに250gのリノール酸(即ち、高量のリノール酸)を加えた後、均一に攪拌した。
【0062】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを上記の攪拌している溶液に加えた。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを100℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0063】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0064】
作成した高量オレイン酸とプロピレングリコールを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0065】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果を表7に示す。ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図11に示す。
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量オレイン酸とプロピレングリコールを含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1814μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。しかし、高量のオレイン酸を含有する貼付剤と比べて、高量オレイン酸とプロピレングリコールを含有する貼付剤は、そのラサギリンの累積浸透量が大きくは向上されていない。
【0066】
【表7】
【0067】
実施例4:イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリビニルピロリドン基質の貼付剤
【0068】
20gの水酸化ナトリウムと15gのリン酸を25%(w/w)のポリビニルピロリドンのエタノール溶液500gに加え、回転速度600回/分で1時間攪拌した後、順次にバッチにて100gのコロイドシリカを加え、80gのラサギリンと20gのイソプロピルミリステート(低量のイソプロピルミリステート)をバッチにて加え、続いて攪拌しながら1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えて、PH値を7.5にした。少なくとも1時間攪拌して、均一にした後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを80℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0069】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0070】
イソプロピルミリステートの添加量は40g(即ち、中量のイソプロピルミリステート)又は60g(高量のイソプロピルミリステート)でもよく、以下の操作ステップは上記と同じにした。
【0071】
作成した高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0072】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表8、9及び10に示す。表8:低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表9:中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表10:高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図12に示す。
【0073】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1741μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であり、その浸透速度がより速いことを表した。低量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤と中量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤とのラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は差異が大きくなく、両者のラサギリンの累積浸透量と浸透速度は比較的近接していることを表している。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
実施例5:ラウロカプラムを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有するシリコーン重合体基質の貼付剤
【0078】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に加え、100gの石油エーテルと50gのラウロカプラム(即ち、低量のラウロカプラム)を加えた後、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌した。攪拌しながら1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えて、PH値を7.5にした。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0079】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0080】
ラウロカプラムの添加量は150g(即ち、中量のラウロカプラム)又は250g(高量のラウロカプラム)でもよく、以下の操作ステップは上記と同じにした。
【0081】
作成した高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0082】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表11、12及び13に示す。表11:低量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表12:中量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表13:高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図13に示す。
【0083】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1798.5μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であり、その浸透速度がより速いことを表している。低量のラウロカプラムを含有する貼付剤と中量のラウロカプラムを含有する貼付剤とのラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は差異が大きくなく、両者のラサギリンの累積浸透量と浸透速度が比較的近接していることを表している。
【0084】
【表11】
【0085】
【表12】
【0086】
【表13】
【0087】
実施例6:ラウロカプラムを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する多数層のポリイソブチレン基質の貼付剤
【0088】
45gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを10%(w/w)のポリイソブチレン(120gのMML−100+150gのLM−MS)のクロロホルム溶液に加え、200gの石油エーテルと40gのラウロカプラム(即ち、低量のラウロカプラムを含み、同方法で140gのラウロカプラムを加えると中量であり、同方法で240gのラウロカプラムを加えると高量である)を加えてから、この混合物を回転速度300回/分で1時間攪拌した。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調節し、60℃で60分間乾燥させて使用に供した。
【0089】
5gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを10%(w/w)のポリイソブチレン(12gのMML−100+15gのLM−MS)のクロロホルム溶液に加え、30gの石油エーテルと10gのラウロカプラムを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌した。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで上記調製した薄膜に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0090】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0091】
作成した高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図2に示す。
【0092】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表14、15と16に示す。表14:低量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表15:中量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表16:高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図14に示す。
【0093】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1818.75μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であるが、18時間後は、緩やかになり、ラサギリンの浸透速度が遅くなることを表し、二層のポリイソブチレン基質におけるラサギリンの浸透速度が違うことを説明している。低量のラウロカプラムを含有する貼付剤と中量のラウロカプラムを含有する貼付剤とのラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は差異が大きくなく、両者のラサギリンの累積浸透量と浸透速度は比較的近接していることを表している。
【0094】
【表14】
【0095】
【表15】
【0096】
【表16】
【0097】
実施例7:メントールを皮膚浸透促進剤とし、ラサギリンを含有し、エチレン−酢酸エチレン共重合体を基質とする貼付剤
【0098】
50gのラサギリンを25%(w/w)のエチレン−酢酸エチレン共重合体(120gのCelgard 2400)のクロロホルム溶液に加え、50gのメントール(即ち、低量のメントールを含み、同方法で150gのメントールを加えると中量であり、同方法で250gのメントールを加えると高量である)を加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調節し、60℃で60分間乾燥させて使用に供した。
【0099】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0100】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0101】
作成した高、中、低量のメントールを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図3に示し、その平面模式図を図4に示す。
【0102】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表17、18と19に示す。表17:低量のメントールを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表18:中量のメントールを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表19:高量のメントールを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図15に示す。
【0103】
これにより、高量のメントールを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1633.25に至って、且つラサギリンの時間―累積浸透量の曲線はほぼ直線になることが分かる。低量のメントールと中量のメントールとを含有するラサギリン貼付剤のラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は非常に近接しており、この二種の量のメントールを含有する場合には、ラサギリンの累積浸透量と浸透速度は非常に近接し、差異があまりないことを表している。
【0104】
【表17】
【0105】
【表18】
【0106】
【表19】
【0107】
実施例8:ラサギリンを含有し、ポリカルボキシエチレンを基質とし、エチレン−酢酸エチレン共重合体を徐放膜とし、イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする貼付剤
【0108】
2gのポリカルボキシエチレン(Carbomer 940)を70%(V/V)エタノール純水溶液200gに添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。順次に45gのラサギリン、40gのイソプロピルミリステート(即ち、低量のイソプロピルミリステートを含み、同方法で140gのイソプロピルミリステートを加えると中量であり、同方法で240gのイソプロピルミリステートを加えると高量である)、40gのグリセロールを加えてから、この混合物を回転速度300回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。その後、30回/分の攪拌速度で、0.5mol/Lのトリエタノールアミン溶液を緩やかに加え、体系のPH値を8.5に調節し、粘度が最大のゲル状にさせた。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調節した。
【0109】
5gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを15%(w/w)のエチレン−酢酸エチレン共重合体(15gのCelgard 2400)のクロロホルム溶液に加え、30gの石油エーテルと10gのイソプロピルミリステートを加えてから、この混合物を回転速度300回/分で1時間攪拌した。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで上記作成した薄膜に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0110】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、回転速度300回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0111】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0112】
作成した高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図5に示し、その平面模式図を図6に示す。
【0113】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表20、21と22に示す。表20:低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表21:中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表22:高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図12に示す。
【0114】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1635.25μgに至り、また、18時間後、ラサギリンの浸透速度が明らかに遅くなったことから、エチレン−酢酸エチレン共重合体の徐放膜が徐放作用をしたと判断できる。低量と中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、そのラサギリンの累積浸透量と浸透速度に一定の差異が有るが、高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤との差異ほど大きくない。
【0115】
【表20】
【0116】
【表21】
【0117】
【表22】
【0118】
従って、本発明の貼付剤によれば、約5〜10cm2の大きさの貼付剤を用いて、経皮吸収で2〜3日の治療必要量に到達でき、また、多数層の貼付剤を調製する方式で、ラサギリンの浸透速度を制御することができる。当該投与貼付剤の材料は来源が広く、入手しやすく、製造しやすく、且つ、基質の表面全部を介してラサギリンを伝達して皮膚吸収させることができるので、US2004013620に記載の体系に対して、調製方法が簡単で、原料の来源が広く、入手しやすく、薬物の放出がより緩やかで、薬物の放出時間がより長く、皮膚を介しての吸収量がより完全であるなどの利点を有する。
【0119】
実施例9:ラサギリンを含有し、ポリビニルアルコール共重合体を基質とし、イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする貼付剤
【0120】
50gのポリビニルアルコール共重合体(50gのPVA124)を450gの純水溶液に添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。それに25gのラサギリンを添加し、5gのイソプロピルミリステート(即ち、低量のイソプロピルミリステートを含み、同方法で10gのイソプロピルミリステートを加えると中量であり、同方法で20gのイソプロピルミリステートを加えると高量である)を加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調製し、60℃で70分間乾燥して使用に供した。
【0121】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、該混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調製し、60℃で乾燥させた。
【0122】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0123】
作成した高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図3に示し、その平面模式図を図4に示す。
【0124】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表23、24と25に示す。表23:低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表24:中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表25:高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図17に示す。
【0125】
これにより、高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が3362.25μgに至り、且つラサギリンの時間―累積浸透量の関係曲線がほぼ直線になることが分かる。高量と中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、そのラサギリンの時間―累積浸透量の関係曲線が非常に近接するので、この二種の量のイソプロピルミリステートを含有する場合には、ラサギリンの累積浸透量と浸透速度は非常に近接し、差異があまりないことを表している。該実施例において、48時間の際の累積浸透量が前記の実施例1〜8より明らかに多いので、ポリビニルアルコール共重合体が水を吸収してラサギリンの飽和溶液を形成したことが、ラサギリンの経皮吸収効果を極めて促進したことを説明している。
【0126】
【表23】
【0127】
【表24】
【0128】
【表25】
【0129】
従って、本発明の貼付剤によれば、約5〜10cm2の大きさの貼付剤を用いて、経皮吸収で2〜3日の治療必要量に到達でき、また、多数層の貼付剤を調製する方式で、ラサギリンの浸透速度を制御することができる。当該投与貼付剤の材料は来源が広く、入手しやすく、製造しやすく、且つ、基質の表面全部を介してラサギリンを伝達して皮膚吸収させることができるので、US2004013620に記載の体系に対して、調製方法が簡単で、原料の来源が広く、入手しやすく、薬物の放出がより緩やかで、薬物の放出時間がより長く、皮膚を介して吸収量がより完全であるなどの利点を有する。
【0130】
実施例10:ラサギリンを含有し、ポリビニルアルコール共重合体を基質とし、イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする多数層の貼付剤
【0131】
50gのポリビニルアルコール共重合体(50gのPVA124)を450gの純水溶液に添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。それに100gのトリエタノールアミンを添加し、10gのイソプロピルミリステートを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調製し、70℃で60分間乾燥して使用に供した。
【0132】
50gのポリビニルアルコール共重合体(50gのPVA124)を450gの純水溶液に添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。それに25gのラサギリンを添加し、10gのイソプロピルミリステートを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで上記作成した薄膜に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調製し、70℃で60分間乾燥して使用に供した。
【0133】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、該混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調製し、60℃で乾燥させた。
【0134】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0135】
作成したラサギリンの経皮吸収の多数層の貼付剤の断面模式図を図7に示し、その平面模式図を図18に示す。
【0136】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果を表26に示す。ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図14に示す。
【0137】
これにより、該実施例におけるラサギリンの多数層の貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が3970.5μgに至り、且つラサギリンの時間―累積浸透量の関係曲線はほぼ直線になることが分かる。該実施例において、48時間の際の累積浸透量は前記の実施例1〜8より明らかに多い。実施例9と比べて、イソプロピルミリステートの使用量は中等しかないにもかかわらず、その累積浸透量は、実施例9における高量のイソプロピルミリステート含有の累積浸透量より大きいので、ポリビニルアルコール共重合体が水を吸収してラサギリンの飽和溶液を形成する上、調節剤基質層に含まれるトリエタノールアミンが侵入してラサギリンを遊離させ、ラサギリンの経皮吸収効果を更に向上させることを説明している。
【0138】
【表26】
【0139】
従って、本発明の貼付剤によれば、約5〜10cm2の大きさの貼付剤を用いて、経皮吸収で2〜3日の治療必要量に到達でき、また、多数層の貼付剤を調製する方式で、ラサギリンの浸透速度を制御することができる。当該投与用貼付剤の材料は来源が広く、入手しやすく、製造しやすく、且つ、基質の表面全部を介して、ラサギリンを伝達して皮膚吸収させることができるので、US2004013620に記載の体系に対して、調製方法が簡単で、原料の来源が広く、入手しやすく、薬物の放出がより緩やかで、薬物の放出時間がより長く、皮膚を介しての吸収量がより完全であるなどの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施例1、2、3の貼付剤の断面模式図である。
【図2】実施例4の貼付剤の断面模式図である。
【図3】実施例5、7の貼付剤の断面模式図である。
【図4】実施例5、7の貼付剤の平面模式図である。
【図5】実施例6の貼付剤の断面模式図である。
【図6】実施例6の貼付剤の平面模式図である。
【図7】実施例8の貼付剤の断面模式図である。
【図8】実施例8の貼付剤の平面模式図である。
【図9】実施例1の貼付剤において、高、中、低量のオレイン酸を含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図10】実施例2の貼付剤において、高、中、低量のリノール酸を含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図11】実施例3の貼付剤において、オレイン酸とプロピレングリコールを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図12】実施例4の貼付剤において、高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図13】実施例5の貼付剤において、高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図14】実施例6の貼付剤において、高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図15】実施例7の貼付剤において、高、中、低量のメントールを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図16】実施例8の貼付剤において、高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図17】実施例9の貼付剤において、高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図18】実施例10の貼付剤において、イソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物製剤の分野に関するものであり、具体的には、基質成分と化学作用を起こさない支持層と、有効量のラサギリン及びその薬学的に許容可能な塩を含有する基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護箔片又は膜片を含む神経系疾患の予防又は治療用のラサギリン(ransagiline)の経皮吸収薬物貼付剤、及びその調製方法に関している。
【背景技術】
【0002】
ラサギリン(ransagiline)は選択性のモノアミンオキシダーゼB阻害剤であり、例えば、パーキンソン病(PD)、抑鬱症などの中枢神経系疾患の治療に用いられ、既にヨーロッパで販売されている。ラサギリンの化学構造式は以下のとおりである。
【化1】
【0003】
パーキンソン病は、神経中枢におけるドーパミン神経の退化、神経伝達物質であるドーパミンの放出量の減少による結果であると考えられている。伝達物質であるドーパミンの放出量の不足により、患者の筋肉コントロール失調を招致し、振戦、筋肉硬直、全身緊張、関節の動きの制限を引き起こし、更に、寝返りが困難となり、行動弛緩動作緩慢、不器用、活動不調、靴紐を結んだり、ボタンを掛けるような精密な動作の完成不能になり、重症者は起立や歩行も困難で、姿勢異常などの症状を有している。
【0004】
パーキンソン病の薬物治療の主要な目的は、直接又は間接的に、大脳内のドーパミンの含有量を増加させることにある。パーキンソン病を治療する薬品は主にL―ドーパ、ドーパミン受容体作動薬、アマンタジン、抗コリン薬などがある。60年代の末、L―ドーパ(L−dopa)は神経伝達物質であるドーパミンの代わりの薬物として、パーキンソン病の治療に使われ始め、今まで、依然として主要な治療薬物である。L―ドーパは大脳外において速やかに脱カルボキシル化されてドーパミンに転換されるので、多量のL―ドーパの浪費を引き起こし、また、不良反応もよく発生する。従って、L―ドーパは通常脱炭酸酵素阻害薬とともに使用され、L―ドーパの血液脳関門の通過能力を向上させる。パーキンソン病を治療するもう一つの薬物類別はドーパミン受容体作動薬(dopamine agonist)であり、ブロモクリプチン及びメシル酸ペルゴリドを含む。ドーパミンの分解酵素を阻害することで、大脳におけるドーパミンの含有量を上昇させる。ドーパミン作動薬は比較的長い半減期を有し、直接に受容体に作用することができ、L―ドーパの投与回数と投与量を減少させることができる(李天晴、中国薬学会科技開発中心、パーキンソン病治療薬物市場分析、中国薬学会ホームページ)。
【0005】
ラサギリンは不可逆の選択性のモノアミンオキシダーゼB(MAOB)阻害剤である。無作為二重盲検の臨床研究により、ラサギリンの早期PDの治療有効性を調べた(Arch Neurol,2004;61:561〜566)。404例の早期PD患者を研究対象とし、患者はラサギリン(1mg/d又は2mg/d)の治療を1年間受け、或いは、まずラサギリンの治療を六ヶ月間受けてからプラセボを六ヶ月間服用した。主要な評価指標は統合パーキンソン病評価尺度(UPDRS)のスコアの変化である。その結果、371例の患者は臨床研究を完成し、1年間2mg/dラサギリン治療による患者は、後六ヶ月間プラセボ治療を受けた患者より、そのUPDRSの平均スコアが2.29単位低く、1年間1mg/dラサギリン治療を受けた患者より、そのUPDRSの平均スコアが1.82単位低いことを表した。つまり、研究者により、1年間ラサギリン(1mg/d又は2mg/d)の治療を受けた患者はその機能減退の度合いがプラセボ群より低いことが分かる。ラサギリンは他の抗振戦麻痺の薬物と似ているが、その毒副作用(主に、不眠、吐き気及び幻覚を含む)の発生率がより低い。
【0006】
ラサギリンの薬効が強く、また、経口投与すると、摂食のせいで血中の薬物ピーク濃度が60%下がり、更に、パーキンソン病の患者は行動不便になり、経口投与が困難であるので、ラサギリンを二日に一回又はより長い期間に一回経皮投与にすることが必要である。また、ラサギリンは選択性のモノアミンオキシダーゼB(MAOB)阻害剤であるが、その血中薬物濃度が高い場合には、同時にMAO−A、MAO−Bが抑制され、いわゆる「チーズ反応」という現象が発生し、即ち、患者は不可逆の非選択性の薬物を服用する時に、同時にチラミンやドーパミンを含有する薬品や食品を服用すると、高血圧性危機を引き起こす。熟したチーズには多量のチラミン成分が含まれるので、このような反応は「チーズ反応」と呼ばれている。患者はラサギリン10mg/日を服用するとともにL―ドーパを併用する場合には、高血圧や体位性高血圧などの心血管不良反応で、治療を中断する報道がある。これらの不良反応はMAO−A、MAO−Bの非選択性阻害と関わっている可能性がある。ラサギリンの経皮吸収貼付剤の吸収は緩やかなので、「チーズ反応」を減少、又は避けることができる。また、一旦、患者が「チーズ反応」で不都合を感じすれば、直ちに貼付剤を引き剥がし、更なる重大な事態を避けることができる。
【0007】
US2004013620には、その活性成分がラサギリンを含み、下記式の構造を有する経皮浸透促進剤を使用することを特徴とする経皮治療の体系が記載されている。
【化2】
【0008】
該経皮浸透促進剤はラサギリンの経皮透過を促進する効果に対して、あまり好適ではない。また、スプレー経皮吸収を採用するので、投与が不便である。従って、投与に便利で、経皮吸収効果がより良い貼付剤を探求し、患者へより多くの選択を提供することは大いに必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、基質成分と化学作用を起こさない不活性の支持層と、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含み、基質層は有機高分子ポリマー材料を含み、及び無機又は有機物材料を調節剤とする薬物貯留庫であり、該貯留庫にはラサギリンが含まれ、基質にはさらに一種又は多種のラサギリンの経皮吸収を促進する物質が含まれていることを特徴とする神経系疾患の予防又は治療のためのラサギリンの経皮吸収貼付剤を提供することにある。必要に応じて、前記の基質層には薬物徐放性の基質層及び/又は粘着層が更に含まれてもよく、薬物徐放性の基質層にも活性物質であるラサギリンが含まれてもよく、粘着層には活性物質であるラサギリンが含まれてもよく、含まれなくてもよい。もし、薬物貯留庫基質層又は薬物徐放性の基質層は適当な粘性を有すれば、単独で一つの粘着層を加える必要がない。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤により、パーキンソン病、アルツハイマー病、抑鬱症、児童多動症、レストレスレッグス症候群、多発性硬化症、及び離脱症候群を予防又は治療する用途を提供することにある。
【0011】
前記のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、基質層におけるラサギリンやその薬学的に許容可能な塩の有効量は0.01mg/cm2〜50mg/cm2であり、有効量はラサギリンの遊離アルカリで計算される。
【0012】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤は、経皮治療用の施用面積が1cm2〜50cm2である。
【0013】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、そのラサギリン又は薬学的に許容可能な塩は、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質層に存在している。
【0014】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、そのラサギリンの薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、或いは硫酸塩を含み、好ましくはメタンスルホン酸塩である。
【0015】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、その基質層における有機高分子ポリマー材料は、ポリアクリレート及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、シリコーン重合体及びその誘導体、ポリイソブチレン及びその誘導体、エチレン−酢酸エチレン共重合体およびその誘導体、或いはポリカルボキシエチレン及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種である。
【0016】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、その基質層における無機又は有機物材料である調節剤は、水、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸、塩酸、硫酸、シリカ、ケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、三ケイ酸ナトリウム、三ケイ酸カリウム、二酸化チタン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メタノール、エタノール、プロピノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、尿素、石油エーテル、ポビドン類、ポリエチレングリコール類、長鎖脂肪アルコール類、油脂類、或いは類脂質類物質から選ばれる一種または多種である。
【0017】
本発明のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、基質におけるラサギリンの経皮吸収を促進する物質(ラサギリン経皮吸収促進剤)は、エタノール、プロピレングリコール、オレイン酸、オレインアルコール、リノール酸、ラウリルアルコール、ラウリン酸、イソプロピルミリステート、ラウロカプラム(LAUROCAPRAM)及びその同族体、或いはテルペン類の物質から選ばれる少なくとも一種である。ラサギリンと経皮吸収促進剤との重量比は1:1〜1:5である。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、ラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法を2種類提供することにある。
【0019】
方法一:
a.有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を50℃〜200℃に加熱された有機高分子ポリマー材料に添加すること、
b.調節剤と経皮吸収促進物質を加え、均一に混合し、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、そして、
c.該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜を形成し、保護層を貼ること
を含むことを特徴とするラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【0020】
方法二:
a.有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を一定の揮発性のある溶媒に添加し、有機高分子ポリマー材料を加え、完全に膨張させること、
b.同時又は順次に調節剤及び経皮吸収促進物質を加え、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、
c.その後、該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜を形成し、保護層を貼ること
を含むことを特徴とするラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【0021】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法において、ステップcには、更に、任意の方法を用いて数回繰り返して塗布し、多数層の薄膜の基質層を得てもよいことが含まれる。
【0022】
必要に応じて、前記の多数層の薄膜の基質層には、一層の薬物徐放層及び/又は粘着層がさらに塗布されてもよい。
【0023】
本発明に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤において、その治療または予防される神経系疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、抑鬱症、児童多動症、レストレスレッグス症候群、多発性硬化症、及び離脱症候群である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の目的は、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩に用いられる経皮投与体系を開発することにある。具体的には、貼付剤であり、その経皮吸収効果はUS2004013620に記載のものより良く、使用される皮膚浸透促進剤がより一般的で、入手しやすい。
【0025】
従って、本発明は、特に、該活性物質であるラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を最も効率的に該体系に含ませること、及び皮膚への伝達に注目している。
【0026】
本発明によれば、基質成分と化学作用を起こさない不活性の支持層と、有効量のラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する薬物組成物である基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含み、前記基質は粘性及び/又は非粘性の有機高分子ポリマー材料を含み、及び無機又は有機物材料を充填剤とする薬物貯留庫及び/又は粘着体であり、該基質層における多量の微貯留庫はラサギリンを含み、基質にはさらに一種又は一種以上の選択性のモノアミンオキシダーゼ阻害剤(ラサギリン)の経皮吸収を促進する物質が含まれている、神経系疾患を予防又は治療するラサギリン含有経皮吸収薬物貼付剤及びその調製方法を提供する。前記有機高分子ポリマー材料は、ラサギリンやその薬学的に許容可能な塩の基質材料として、ポリアクリレート及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、シリコーン重合体及びその誘導体、ポリイソブチレン及びその誘導体、エチレン−酢酸エチレン共重合体およびその誘導体、ポリカルボキシエチレン及びその誘導体が好ましい。その有機高分子ポリマー材料は、皮膚に貼りやすいように、一定の自己粘性を有してもよい。
【0027】
前記の基質層における多量の微貯留庫包摂は、人体における有効の血中薬物濃度を持続的に維持するように、ラサギリンの放出を少なくとも2−3日又はより長い時間(一週間)に長く制御できる。
【0028】
必要な場合には、前記の基質層は薬物徐放性の基質層又は粘着基質層を更に含むことができる。必要な場合とは、基質層に採用される異なる高分子ポリマーの粘性特性と薬物放出の制御速度の特性によって決められる。
【0029】
前記の不活性の支持層(バッキング層)には箔片或いはポリエチレン、ポリプロピレンなどの膜材を複合してなる膜片、或いは不織布などが用いられる。保護層(粘着防止層)も箔片或いはポリエチレン、ポリプロピレン或いはポリカーボネートなどの膜材で複合してなる膜片を用いてもよく、パラフィンやメチルシリコン油で処理された滑らかな厚紙を用いてもよい。
【0030】
最も簡単な実施例において、これらの基質体系は単相の基質である。それは一つの支持層と、活性物質を含有し、一定の自己粘性を有する一つの高分子ポリマー基質層と、一つの使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含む。より複雑な実施例は多数層の基質を含み、また、これらの基質層には非粘着層と制御膜が含まれてもよい。成分同士の凝集力を改善するために、基質は不活性のフィラーを用いてもよい。
【0031】
基質体系において、活性物質であるラサギリンは、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)などの少なくとも一種の形態で存在している。いずれの形態で存在しても、基質体系に対して、活性成分はいずれも過飽和であり、また、この場合には最大の熱力学的活性を有する。高分子ポリマーにおける遊離基団は活性成分の放出に大きな影響を与えるので、有機や無機の調節剤を多少加入しなければならない。活性成分を必要な形態で存在させ、一方、活性成分の放出を調節するとともに、基質の理化学的性質を改変することができ、塗布しやすく、活性物質が基質からより浸出しやすい性質を持たせる。ラサギリンは通常メタンスルホン酸塩や塩酸塩の形態で存在し、比較的強い解離性を有するので、実施例1〜5においては、NaOH水溶液でPH値を7.5に調節した。該PH値の条件で、ラサギリンはほどんど遊離アルカリの形態で存在することができ、吸収が促進され、一方、PHが高すぎて、皮膚に刺激を与えるということもなく、また、NaOHが便利で入手しやすいので、好適である。実施例6において、トリエタノールアミンは調節剤としてPH値を8.5に調節し、シリコーン膜層により隔離するので、その刺激性が強くない。また、NaOHなどの他の塩基性物質で調節してもよいが、トリエタノールアミンの塩基性が温和であり、調製されたゲルが均一で気泡や顆粒がないので、好適である。
【0032】
処方において、全てのラサギリンは遊離アルカリの形態で皮膚を透過することが必要であるが、高分子有機材料基質において、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)などの形態で存在してもよい。例えば、ラサギリンのマイクロクリスタルや無定形の分散の形態は、溶媒法により、ラサギリンをエタノール又は水に溶解し、そして、ポビドン、ポリビニルアルコールと混合し、エタノールや水を揮発させるとラサギリンのポビドンやポリビニルアルコールにおける無定形の分散体が得られ、その後、それを有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などと混合して貼付剤を調製する。分散体のキャリヤとして、ポビドンやポリビニルアルコールは、尿素、ポリエチレングリコール類、繊維類などに替えてもよい。注意すべきなのは、ポビドン、ポリビニルアルコール、繊維類の中のメチルセルロース、エチルセルロースなどのような融点が比較的高いキャリヤでは、調製する際に溶媒法を用いるが、尿素やポリエチレングリコール類の中のポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000のようなものでは、溶融法で調製する。例えば、ラサギリンと細化されたポリエチレングリコール4000とを均一に混合し、40〜60℃に加熱して溶融させた後、急激に温度を下げて、それを再び固体に転化させるとラサギリンのマイクロクリスタルや無定形の分散の形態が得られ、その後、有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などと混合して貼付剤を調製する。ラサギリンが微乳、サブ微乳の形態で存在することは、油脂類、例えば、液状パラフィン、ワセリン、セチルアルコールやオクタデカノールのような長鎖脂肪アルコール類などを内相とし、水中油型の微乳、サブ微乳を形成する。ラサギリンは遊離アルカリの形態で油相に溶解し、過飽和状態になり、熱力学的に不安定状態なので、析出し、皮膚を透過しやすい。該微乳、サブ微乳は高速攪拌法、高速乳化均質法により調製でき、調製された微乳、サブ微乳を有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などと混合して貼付剤を調製することができる。ラサギリンの脂質体の形態の経皮吸収貼付剤は、リピド類物質、例えば、レシチン、水素化レシチン、コレステロールなどでラサギリンを包んで脂質体を調製することができる。その方法としては、薄膜法、逆相蒸発法、凍結乾燥法、PH−匂配法、高速攪拌法、高速乳化均質法などが挙げられる。調製されたラサギリン脂質体は有機高分子基質、皮膚浸透促進剤などとともに貼付剤として調製する。上記のマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)のラサギリンの調製方法は、いずれも当業者が従来の相応の常用される製剤調製技術により実現することができる。
【0033】
皮膚の角質層は経皮吸収の主な障碍であるので、角質層を軟化させ、皮膚組織における脂質類の流動性を上げる物質は、活性成分の経皮吸収効果を増強することができる。一部の有機溶媒、脂肪酸、脂肪アルコール、ラウロカプラム、界面活性剤、角質層保湿剤、テルペン及び植物揮発油、サイクロデキストリン類などはいずれも活性成分の経皮吸収の増強効果を有する。本発明において、エタノール、プロピレングリコール、オレイン酸、オレインアルコール、リノール酸、ラウリルアルコール、ラウリン酸、イソプロピルミリステート、ゾリドン(zolidone)類、またはテルペン類、或いはこれらの任意の混合物が好ましい。その中、ゾリドン類では、ラウロカプラムが好ましく、テルペン類では、メントールが好ましい。実験によれば、ラサギリン:経皮吸収促進物質=1:1〜1:5(W/W)の場合には、ラサギリンが比較的良好な経皮吸収を有することを見出した。ラサギリン:経皮吸収促進物質<1:3(W/W)の場合には、経皮吸収促進物質の使用量の変化は、ラサギリンの吸収に対する影響は特に顕著ではなく、ラサギリン:経皮吸収促進物質が1:5(W/W)の場合には、ラサギリンの吸収は著しく向上される。しかし、経皮吸収促進物質の含有量が高すぎると、関連する副作用が起こる。我々は多量の実験により、以下の結論を得た。即ち、ラサギリンの経皮吸収効果への影響ファクターは多いが、その影響の度合では、基質>浸透促進剤を含有するか否か>主薬は遊離アルカリになるかどうか>浸透促進剤の種類の順次である。親水性のポリビニルアルコール(PVA124)を薬物含有コロイド層とする場合には、その透過効果は、ポリアクリレート樹脂、ポリイソブチレン、シリコーン重合体よりはるかに高い。基質が同じである場合には、浸透促進剤を加えたものと遊離アルカリになるものはそうではないものより高い。加えた浸透促進剤の種類について、それは浸透に影響を与えるが、それほど大きくない。その原因は、基質とラサギリンとの相互間の理化学的作用がラサギリンの放出に対して非常に重要な作用を及ぼすことによる。親水性のポリビニルアルコール(PVA124)を薬物含有コロイド層とするラサギリン貼付剤は、皮膚と外界の水分を吸収することができ、ラサギリンの飽和溶液を形成させ、ラサギリンの放出を促進すると共に、ラサギリンの浸透量を極めて大きく増加させる。
【0034】
投与貼付剤の調製の詳細について、実施例で説明する。作成した投与貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell、有効の受け取る面積が1.28cm2、体積が7ml)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。全ての貼付剤は、いずれも皮膚を介して十分多い量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが確認された。
【0035】
本発明のラサギリンの経皮吸収貼付剤は、2−3日に一回、又はより長い時間で例えば週一回投与してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0037】
以下の実施例は本発明の内容を更に説明するためのものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
実施例1:オレイン酸を皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリアクリレート基質の貼付剤
【0039】
クロロホルム中で50g、50%(w/w)のEudragit E100溶液を水中で完全に膨張したポリアクリレート粘着剤の溶液250gに加えてから、さらに50gのオレイン酸(即ち、低量のオレイン酸)を加えた後、均一に攪拌した。
【0040】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを上記の攪拌している溶液に加えた。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを100℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0041】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0042】
オレイン酸の添加量は150g(即ち、中量のオレイン酸)又は250g(高量のオレイン酸)でもよく、以降の操作ステップは上記と同じにした。
【0043】
作成した高、中、低量のオレイン酸を含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0044】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表1、2及び3に示す。表1:低量のオレイン酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表2:中量のオレイン酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表3:高量のオレイン酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図9に示す。
【0045】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のオレイン酸を含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1786μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のオレイン酸を含有する貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であり、その浸透速度がより速いことを表した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
実施例2:リノール酸を皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリアクリレート基質の貼付剤
【0050】
クロロホルム中で50g、50%(w/w)のEudragit E100溶液を水中で完全に膨張したポリアクリレート粘着剤の溶液250gに加えてから、さらに50gのリノール酸(即ち、低量のリノール酸)を加えた後、均一に攪拌した。
【0051】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを上記の攪拌している溶液に加えた。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを100℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0052】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0053】
リノール酸の添加量は150g(即ち、中量のリノール酸)又は250g(高量のリノール酸)でもよく、以下の操作ステップは上記と同じにした。
【0054】
作成した高、中、低量のリノール酸を含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0055】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表4、5及び6に示す。表4:低量のリノール酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表5:中量のリノール酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表6:高量のリノール酸を含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図10に示す。
【0056】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のリノール酸を含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1785.25μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。しかし、オレイン酸を含有する貼付剤と、リノール酸を含有する貼付剤とは差異がない。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
実施例3:オレイン酸とプロピレングリコールを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリアクリレート基質の貼付剤
【0061】
クロロホルム中で50g、50%(w/w)のEudragit E100溶液を水中で完全に膨張したポリアクリレート粘着剤の溶液200gに加えてから、さらに250gのリノール酸(即ち、高量のリノール酸)を加えた後、均一に攪拌した。
【0062】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを上記の攪拌している溶液に加えた。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを100℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0063】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0064】
作成した高量オレイン酸とプロピレングリコールを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0065】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果を表7に示す。ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図11に示す。
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量オレイン酸とプロピレングリコールを含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1814μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。しかし、高量のオレイン酸を含有する貼付剤と比べて、高量オレイン酸とプロピレングリコールを含有する貼付剤は、そのラサギリンの累積浸透量が大きくは向上されていない。
【0066】
【表7】
【0067】
実施例4:イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する単層のポリビニルピロリドン基質の貼付剤
【0068】
20gの水酸化ナトリウムと15gのリン酸を25%(w/w)のポリビニルピロリドンのエタノール溶液500gに加え、回転速度600回/分で1時間攪拌した後、順次にバッチにて100gのコロイドシリカを加え、80gのラサギリンと20gのイソプロピルミリステート(低量のイソプロピルミリステート)をバッチにて加え、続いて攪拌しながら1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えて、PH値を7.5にした。少なくとも1時間攪拌して、均一にした後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを80℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0069】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0070】
イソプロピルミリステートの添加量は40g(即ち、中量のイソプロピルミリステート)又は60g(高量のイソプロピルミリステート)でもよく、以下の操作ステップは上記と同じにした。
【0071】
作成した高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0072】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表8、9及び10に示す。表8:低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表9:中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表10:高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図12に示す。
【0073】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1741μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であり、その浸透速度がより速いことを表した。低量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤と中量のイソプロピルミリステートを含有する貼付剤とのラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は差異が大きくなく、両者のラサギリンの累積浸透量と浸透速度は比較的近接していることを表している。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
実施例5:ラウロカプラムを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有するシリコーン重合体基質の貼付剤
【0078】
50gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に加え、100gの石油エーテルと50gのラウロカプラム(即ち、低量のラウロカプラム)を加えた後、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌した。攪拌しながら1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えて、PH値を7.5にした。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0079】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0080】
ラウロカプラムの添加量は150g(即ち、中量のラウロカプラム)又は250g(高量のラウロカプラム)でもよく、以下の操作ステップは上記と同じにした。
【0081】
作成した高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図1に示す。
【0082】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表11、12及び13に示す。表11:低量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表12:中量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表13:高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図13に示す。
【0083】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1798.5μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であり、その浸透速度がより速いことを表している。低量のラウロカプラムを含有する貼付剤と中量のラウロカプラムを含有する貼付剤とのラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は差異が大きくなく、両者のラサギリンの累積浸透量と浸透速度が比較的近接していることを表している。
【0084】
【表11】
【0085】
【表12】
【0086】
【表13】
【0087】
実施例6:ラウロカプラムを皮膚浸透促進剤とする、ラサギリンを含有する多数層のポリイソブチレン基質の貼付剤
【0088】
45gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを10%(w/w)のポリイソブチレン(120gのMML−100+150gのLM−MS)のクロロホルム溶液に加え、200gの石油エーテルと40gのラウロカプラム(即ち、低量のラウロカプラムを含み、同方法で140gのラウロカプラムを加えると中量であり、同方法で240gのラウロカプラムを加えると高量である)を加えてから、この混合物を回転速度300回/分で1時間攪拌した。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調節し、60℃で60分間乾燥させて使用に供した。
【0089】
5gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを10%(w/w)のポリイソブチレン(12gのMML−100+15gのLM−MS)のクロロホルム溶液に加え、30gの石油エーテルと10gのラウロカプラムを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌した。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで上記調製した薄膜に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0090】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0091】
作成した高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図2に示す。
【0092】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表14、15と16に示す。表14:低量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表15:中量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表16:高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図14に示す。
【0093】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1818.75μgに至ったことから、この種の貼付剤は皮膚を介して十分な量を提供して、全身に作用する目的を達成できることが分かる。高量のラウロカプラムを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量の曲線はより急な傾斜であるが、18時間後は、緩やかになり、ラサギリンの浸透速度が遅くなることを表し、二層のポリイソブチレン基質におけるラサギリンの浸透速度が違うことを説明している。低量のラウロカプラムを含有する貼付剤と中量のラウロカプラムを含有する貼付剤とのラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は差異が大きくなく、両者のラサギリンの累積浸透量と浸透速度は比較的近接していることを表している。
【0094】
【表14】
【0095】
【表15】
【0096】
【表16】
【0097】
実施例7:メントールを皮膚浸透促進剤とし、ラサギリンを含有し、エチレン−酢酸エチレン共重合体を基質とする貼付剤
【0098】
50gのラサギリンを25%(w/w)のエチレン−酢酸エチレン共重合体(120gのCelgard 2400)のクロロホルム溶液に加え、50gのメントール(即ち、低量のメントールを含み、同方法で150gのメントールを加えると中量であり、同方法で250gのメントールを加えると高量である)を加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。1mol/lのNaOH水溶液を緩やかに加えながら攪拌して、PH値を7.5にした。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調節し、60℃で60分間乾燥させて使用に供した。
【0099】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0100】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0101】
作成した高、中、低量のメントールを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図3に示し、その平面模式図を図4に示す。
【0102】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表17、18と19に示す。表17:低量のメントールを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表18:中量のメントールを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表19:高量のメントールを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図15に示す。
【0103】
これにより、高量のメントールを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1633.25に至って、且つラサギリンの時間―累積浸透量の曲線はほぼ直線になることが分かる。低量のメントールと中量のメントールとを含有するラサギリン貼付剤のラサギリンの時間―累積浸透量の曲線は非常に近接しており、この二種の量のメントールを含有する場合には、ラサギリンの累積浸透量と浸透速度は非常に近接し、差異があまりないことを表している。
【0104】
【表17】
【0105】
【表18】
【0106】
【表19】
【0107】
実施例8:ラサギリンを含有し、ポリカルボキシエチレンを基質とし、エチレン−酢酸エチレン共重合体を徐放膜とし、イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする貼付剤
【0108】
2gのポリカルボキシエチレン(Carbomer 940)を70%(V/V)エタノール純水溶液200gに添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。順次に45gのラサギリン、40gのイソプロピルミリステート(即ち、低量のイソプロピルミリステートを含み、同方法で140gのイソプロピルミリステートを加えると中量であり、同方法で240gのイソプロピルミリステートを加えると高量である)、40gのグリセロールを加えてから、この混合物を回転速度300回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。その後、30回/分の攪拌速度で、0.5mol/Lのトリエタノールアミン溶液を緩やかに加え、体系のPH値を8.5に調節し、粘度が最大のゲル状にさせた。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調節した。
【0109】
5gのラサギリンを50℃〜80℃の無水エタノール200mlに溶解し、そして、それを15%(w/w)のエチレン−酢酸エチレン共重合体(15gのCelgard 2400)のクロロホルム溶液に加え、30gの石油エーテルと10gのイソプロピルミリステートを加えてから、この混合物を回転速度300回/分で1時間攪拌した。均一な分散体を得た後、それを適当なブレードで上記作成した薄膜に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0110】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、回転速度300回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを60℃で60分間乾燥した後の重量が60g/m2になるように調製した。
【0111】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0112】
作成した高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図5に示し、その平面模式図を図6に示す。
【0113】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表20、21と22に示す。表20:低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表21:中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表22:高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図12に示す。
【0114】
これにより、全ての貼付剤は第48時間目に、その累積浸透量が1000μg以上であることが分かる。高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が1635.25μgに至り、また、18時間後、ラサギリンの浸透速度が明らかに遅くなったことから、エチレン−酢酸エチレン共重合体の徐放膜が徐放作用をしたと判断できる。低量と中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、そのラサギリンの累積浸透量と浸透速度に一定の差異が有るが、高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤との差異ほど大きくない。
【0115】
【表20】
【0116】
【表21】
【0117】
【表22】
【0118】
従って、本発明の貼付剤によれば、約5〜10cm2の大きさの貼付剤を用いて、経皮吸収で2〜3日の治療必要量に到達でき、また、多数層の貼付剤を調製する方式で、ラサギリンの浸透速度を制御することができる。当該投与貼付剤の材料は来源が広く、入手しやすく、製造しやすく、且つ、基質の表面全部を介してラサギリンを伝達して皮膚吸収させることができるので、US2004013620に記載の体系に対して、調製方法が簡単で、原料の来源が広く、入手しやすく、薬物の放出がより緩やかで、薬物の放出時間がより長く、皮膚を介しての吸収量がより完全であるなどの利点を有する。
【0119】
実施例9:ラサギリンを含有し、ポリビニルアルコール共重合体を基質とし、イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする貼付剤
【0120】
50gのポリビニルアルコール共重合体(50gのPVA124)を450gの純水溶液に添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。それに25gのラサギリンを添加し、5gのイソプロピルミリステート(即ち、低量のイソプロピルミリステートを含み、同方法で10gのイソプロピルミリステートを加えると中量であり、同方法で20gのイソプロピルミリステートを加えると高量である)を加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調製し、60℃で70分間乾燥して使用に供した。
【0121】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、該混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調製し、60℃で乾燥させた。
【0122】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0123】
作成した高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの経皮吸収貼付剤の断面模式図を図3に示し、その平面模式図を図4に示す。
【0124】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果をそれぞれ表23、24と25に示す。表23:低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表24:中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;表25:高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤の時間―累積浸透量;ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図17に示す。
【0125】
これにより、高量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が3362.25μgに至り、且つラサギリンの時間―累積浸透量の関係曲線がほぼ直線になることが分かる。高量と中量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリン貼付剤は、そのラサギリンの時間―累積浸透量の関係曲線が非常に近接するので、この二種の量のイソプロピルミリステートを含有する場合には、ラサギリンの累積浸透量と浸透速度は非常に近接し、差異があまりないことを表している。該実施例において、48時間の際の累積浸透量が前記の実施例1〜8より明らかに多いので、ポリビニルアルコール共重合体が水を吸収してラサギリンの飽和溶液を形成したことが、ラサギリンの経皮吸収効果を極めて促進したことを説明している。
【0126】
【表23】
【0127】
【表24】
【0128】
【表25】
【0129】
従って、本発明の貼付剤によれば、約5〜10cm2の大きさの貼付剤を用いて、経皮吸収で2〜3日の治療必要量に到達でき、また、多数層の貼付剤を調製する方式で、ラサギリンの浸透速度を制御することができる。当該投与貼付剤の材料は来源が広く、入手しやすく、製造しやすく、且つ、基質の表面全部を介してラサギリンを伝達して皮膚吸収させることができるので、US2004013620に記載の体系に対して、調製方法が簡単で、原料の来源が広く、入手しやすく、薬物の放出がより緩やかで、薬物の放出時間がより長く、皮膚を介して吸収量がより完全であるなどの利点を有する。
【0130】
実施例10:ラサギリンを含有し、ポリビニルアルコール共重合体を基質とし、イソプロピルミリステートを皮膚浸透促進剤とする多数層の貼付剤
【0131】
50gのポリビニルアルコール共重合体(50gのPVA124)を450gの純水溶液に添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。それに100gのトリエタノールアミンを添加し、10gのイソプロピルミリステートを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで医療用不織布に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調製し、70℃で60分間乾燥して使用に供した。
【0132】
50gのポリビニルアルコール共重合体(50gのPVA124)を450gの純水溶液に添加し、80℃で4時間加熱還流して完全に膨張させた。それに25gのラサギリンを添加し、10gのイソプロピルミリステートを加えてから、この混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して均一な分散体を得た。均一に攪拌した後、それを適当なブレードで上記作成した薄膜に塗布し、その性状をそれぞれ面積が約30cm2である円形とし、その湿った薄膜の厚さを調製し、70℃で60分間乾燥して使用に供した。
【0133】
74%のシリコーン重合体(40gのBioPSA 7−4201+40gのBioPSA 7−4301)を含有するヘプタン溶液に、100gの石油エーテルを加えてから、該混合物を回転速度600回/分で1時間攪拌して、均一な分散体を得た。それを適当なブレードで上記の円形区域の周辺に塗布し、その湿った薄膜の厚さを調製し、60℃で乾燥させた。
【0134】
該乾燥後の基質薄膜を23μm厚さのポリエステル薄膜で覆った後、貼付剤を一枚ずつ最後の薄片に切った。
【0135】
作成したラサギリンの経皮吸収の多数層の貼付剤の断面模式図を図7に示し、その平面模式図を図18に示す。
【0136】
作成した貼付剤の浸透力は、フランズセル(Franz cell)、及びへアレスのマウスの腹部皮膚により調べた。高速液体クロマトグラフィでラサギリンの異なる時点での含有量を測定し、それにより、ラサギリンの累積浸透量を算出した。その結果を表26に示す。ラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフを図14に示す。
【0137】
これにより、該実施例におけるラサギリンの多数層の貼付剤は、第48時間目に、その累積浸透量の平均値が3970.5μgに至り、且つラサギリンの時間―累積浸透量の関係曲線はほぼ直線になることが分かる。該実施例において、48時間の際の累積浸透量は前記の実施例1〜8より明らかに多い。実施例9と比べて、イソプロピルミリステートの使用量は中等しかないにもかかわらず、その累積浸透量は、実施例9における高量のイソプロピルミリステート含有の累積浸透量より大きいので、ポリビニルアルコール共重合体が水を吸収してラサギリンの飽和溶液を形成する上、調節剤基質層に含まれるトリエタノールアミンが侵入してラサギリンを遊離させ、ラサギリンの経皮吸収効果を更に向上させることを説明している。
【0138】
【表26】
【0139】
従って、本発明の貼付剤によれば、約5〜10cm2の大きさの貼付剤を用いて、経皮吸収で2〜3日の治療必要量に到達でき、また、多数層の貼付剤を調製する方式で、ラサギリンの浸透速度を制御することができる。当該投与用貼付剤の材料は来源が広く、入手しやすく、製造しやすく、且つ、基質の表面全部を介して、ラサギリンを伝達して皮膚吸収させることができるので、US2004013620に記載の体系に対して、調製方法が簡単で、原料の来源が広く、入手しやすく、薬物の放出がより緩やかで、薬物の放出時間がより長く、皮膚を介しての吸収量がより完全であるなどの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】実施例1、2、3の貼付剤の断面模式図である。
【図2】実施例4の貼付剤の断面模式図である。
【図3】実施例5、7の貼付剤の断面模式図である。
【図4】実施例5、7の貼付剤の平面模式図である。
【図5】実施例6の貼付剤の断面模式図である。
【図6】実施例6の貼付剤の平面模式図である。
【図7】実施例8の貼付剤の断面模式図である。
【図8】実施例8の貼付剤の平面模式図である。
【図9】実施例1の貼付剤において、高、中、低量のオレイン酸を含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図10】実施例2の貼付剤において、高、中、低量のリノール酸を含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図11】実施例3の貼付剤において、オレイン酸とプロピレングリコールを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図12】実施例4の貼付剤において、高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図13】実施例5の貼付剤において、高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図14】実施例6の貼付剤において、高、中、低量のラウロカプラムを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図15】実施例7の貼付剤において、高、中、低量のメントールを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図16】実施例8の貼付剤において、高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図17】実施例9の貼付剤において、高、中、低量のイソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【図18】実施例10の貼付剤において、イソプロピルミリステートを含有するラサギリンの時間―累積浸透量の関係のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質成分と化学作用を起こさない不活性の支持層と、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含み、
前記基質層は有機高分子ポリマー材料を含み、無機又は有機物材料を調節剤とする薬物貯留庫であり、該貯留庫にはラサギリンが含まれ、基質にはさらに一種又は多種のラサギリンの経皮吸収を促進する物質が含まれていることを特徴とする、神経系疾患の予防又は治療のためのラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項2】
前記基質層には薬物徐放性基質層及び/又は粘着層が更に含まれている、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項3】
前記基質層におけるラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩の有効量が0.01mg/cm2〜50mg/cm2である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項4】
前記ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩が、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質層に存在している、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項5】
前記ラサギリンの薬学的に許容可能な塩が、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、或いは硫酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項6】
前記ラサギリンの薬学的に許容可能な塩がメタンスルホン酸塩である、請求項5に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項7】
前記有機高分子ポリマー材料が、ポリアクリレート及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、シリコーン重合体及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリイソブチレン及びその誘導体、エチレン−酢酸エチレン共重合体およびその誘導体、並びにポリカルボキシエチレン及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項8】
前記無機又は有機物材料である調節剤が、水、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸、塩酸、硫酸、シリカ、ケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、三ケイ酸ナトリウム、三ケイ酸カリウム、二酸化チタン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メタノール、エタノール、プロピノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、尿素、石油エーテル、ポビドン類、ポリエチレングリコール類、長鎖脂肪アルコール類、油脂類、或いはリピド類物質から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項9】
前記基質におけるラサギリンの経皮吸収を促進する物質が、エタノール、プロピレングリコール、オレイン酸、オレインアルコール、リノール酸、メントール、ラウリルアルコール、ラウリン酸、イソプロピルミリステート、ゾリドン類、或いはテルペン類物質から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項10】
以下のステップ:
a. 有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を50℃〜200℃に加熱された有機高分子ポリマー材料に添加すること、
b. 調節剤と経皮吸収促進物質を加え、均一に混合し、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、
c.該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜を形成し、保護層を貼ること
を含むことを特徴とする、ラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項11】
以下のステップ:
a.有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を一定の揮発性のある溶媒に添加し、有機高分子ポリマー材料を加え、完全に膨張させること、
b.同時又は順次に調節剤及び経皮吸収促進物質を加え、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、そして
c.その後、該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜になってから、保護層を貼ること
を含むことを特徴とする、ラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項12】
ステップcが、更に、任意の方法を用いて数回繰り返して塗布し、多数層の薄膜基質層を得ることを含む、請求項10又は11に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項13】
ステップcが、更に、最外層がラサギリンを含まない粘着層でもよいことを含む、請求項10又は11に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項14】
前記の治療又は予防するための神経系疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、抑鬱症、児童多動症、レストレスレッグス症候群、多発性硬化症、及び離脱症候群である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項1】
基質成分と化学作用を起こさない不活性の支持層と、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を含有する基質層と、使用前に引き剥がさなければならない保護層とを含み、
前記基質層は有機高分子ポリマー材料を含み、無機又は有機物材料を調節剤とする薬物貯留庫であり、該貯留庫にはラサギリンが含まれ、基質にはさらに一種又は多種のラサギリンの経皮吸収を促進する物質が含まれていることを特徴とする、神経系疾患の予防又は治療のためのラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項2】
前記基質層には薬物徐放性基質層及び/又は粘着層が更に含まれている、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項3】
前記基質層におけるラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩の有効量が0.01mg/cm2〜50mg/cm2である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項4】
前記ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩が、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質層に存在している、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項5】
前記ラサギリンの薬学的に許容可能な塩が、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、或いは硫酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項6】
前記ラサギリンの薬学的に許容可能な塩がメタンスルホン酸塩である、請求項5に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項7】
前記有機高分子ポリマー材料が、ポリアクリレート及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、シリコーン重合体及びその誘導体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリイソブチレン及びその誘導体、エチレン−酢酸エチレン共重合体およびその誘導体、並びにポリカルボキシエチレン及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項8】
前記無機又は有機物材料である調節剤が、水、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸、塩酸、硫酸、シリカ、ケイ酸、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、三ケイ酸ナトリウム、三ケイ酸カリウム、二酸化チタン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メタノール、エタノール、プロピノール、プロピレングリコール、グリセロール、ブタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、尿素、石油エーテル、ポビドン類、ポリエチレングリコール類、長鎖脂肪アルコール類、油脂類、或いはリピド類物質から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項9】
前記基質におけるラサギリンの経皮吸収を促進する物質が、エタノール、プロピレングリコール、オレイン酸、オレインアルコール、リノール酸、メントール、ラウリルアルコール、ラウリン酸、イソプロピルミリステート、ゾリドン類、或いはテルペン類物質から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【請求項10】
以下のステップ:
a. 有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を50℃〜200℃に加熱された有機高分子ポリマー材料に添加すること、
b. 調節剤と経皮吸収促進物質を加え、均一に混合し、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、
c.該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜を形成し、保護層を貼ること
を含むことを特徴とする、ラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項11】
以下のステップ:
a.有効量のラサギリンやその薬学的に許容可能な塩を一定の揮発性のある溶媒に添加し、有機高分子ポリマー材料を加え、完全に膨張させること、
b.同時又は順次に調節剤及び経皮吸収促進物質を加え、ラサギリン又はその薬学的に許容可能な塩を、塩、遊離アルカリ、マイクロクリスタル、無定形の分散、マイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、サブマイクロエマルション カプセル化(encapsulation)、リピド カプセル化(encapsulation)、又はミセル カプセル化(encapsulation)から選ばれる少なくとも一つの形態で基質に存在させ、混合物基質を得ること、そして
c.その後、該混合物基質を不活性の支持層に塗布し、均一な薄膜になってから、保護層を貼ること
を含むことを特徴とする、ラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項12】
ステップcが、更に、任意の方法を用いて数回繰り返して塗布し、多数層の薄膜基質層を得ることを含む、請求項10又は11に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項13】
ステップcが、更に、最外層がラサギリンを含まない粘着層でもよいことを含む、請求項10又は11に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤の調製方法。
【請求項14】
前記の治療又は予防するための神経系疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、抑鬱症、児童多動症、レストレスレッグス症候群、多発性硬化症、及び離脱症候群である、請求項1に記載のラサギリンの経皮吸収薬物貼付剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2009−529011(P2009−529011A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557581(P2008−557581)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/CN2007/000713
【国際公開番号】WO2007/101400
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508269363)重▲慶▼医葯工▲業▼研究院有限責任公司 (3)
【出願人】(508269374)上海▲復▼星医葯(集▲団▼)股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/CN2007/000713
【国際公開番号】WO2007/101400
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(508269363)重▲慶▼医葯工▲業▼研究院有限責任公司 (3)
【出願人】(508269374)上海▲復▼星医葯(集▲団▼)股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
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