説明

神経障害性疼痛の治療に使用される化合物

本発明は、神経障害性疼痛、詳細には神経障害性異痛、詳細には慢性神経障害性異痛の治療に使用される医薬の生産のための、およびより一般的には痛みを軽減する医薬の生産のための、有効成分としてのβ−アドレナリン受容体アゴニストの使用に関する。本発明が適用される主な分野は生物医学的分野、より詳細には治療学の分野学である。本発明は特に、痛みを治療するために現在使用されている抗鬱薬の代わりとして使用可能な薬物を提供することを目的とする。本発明は人および獣の臨床分野で使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経障害性疼痛、詳細には神経障害性異痛、詳細には慢性神経障害性異痛の治療に使用される医薬の生産のための、より一般的には痛みを軽減する医薬の生産のための、有効成分としてのβ−アドレナリン受容体アゴニストである化合物の使用に関する。
【0002】
本発明が適用される主な分野は生物医学的分野、より詳細には治療学の分野である。本発明は人および獣の臨床分野で使用される。
本発明は特に、痛みを治療するために現在使用されている治療薬の代わりとして使用可能な薬物を提供することを目的とする。
【0003】
以下の説明では、括弧間の参照符号(x)は、実施例の最後にある参考文献一覧を指す。
【背景技術】
【0004】
最近の臨床研究(非特許文献1)(1)によれば、神経障害性要素のある慢性痛の罹患率
はフランスの母集団中の6.9%であり、そのためフランスの約400万人の個人に影響が及んでいる。
【0005】
神経障害性疼痛は、一般に、非特許文献2(2)に記載されているように神経系の機能障
害または病変に関連する慢性疾患である。神経障害性疼痛は、永続的な分子の改変を伴う。有効な長期治療も、神経系の可塑性を伴い、これは最初の数日間は効果がなく、その後痛みを緩和する。
【0006】
慢性神経障害性疼痛は、ほとんどの従来の鎮痛薬による治療が長時間にわたって効果がないため、臨床的に治療するのが難しい。これは特に、結果に対する耐性が現れるアヘン剤(オピエート)の場合にあてはまる。
【0007】
持続性神経障害性疼痛の薬理学的治療は、現在主として、抗痙攣薬(たとえばプレガバリンまたはガバペンチン)または三環系抗鬱薬(たとえばアミトリプチリン、ノルトリプチリン、クロミプラミン、イミプラミン、またはデシプラミン)、混合セロトニン、およびノルアドレナリン再取り込み阻害剤抗鬱薬(たとえばデュロキセチンまたはヴェンァファキシ)を使用している。現在、抗痙攣薬および抗鬱薬は、神経障害性疼痛と戦う第一の治療として種々の国で推薦されている2つの規定の選択肢である(非特許文献3〜8)(3)
(4) (5) (6) (7) (8))。
【0008】
神経系に影響を及ぼす大部分の成人病に関して、すべての患者に有効であり、かつすべての患者が耐えられる利用可能な薬物は存在しない。
たとえば、抗鬱薬は有効であるが、それらの使用は実際には特定の問題を提起する:
1)心理的影響:痛みに苦しむ患者の中は、鬱ではないのに精神障害を治療することが知られている「抗鬱薬」の処方を受け入れるのに困難がある人もいる;
2)あまり許容されず、かつ約30%の患者に影響を及ぼす(McQuay et al., 1996, (3))副作用:たとえば、眠気または鎮静作用、目のかすみ、便秘、尿閉または排尿困難、口腔乾燥症、多汗症、体重増加、頻脈または心不整脈、起立性低血圧、インポテンス、震え、痙攣、精神錯乱、攻撃性の増大、妄想症および自殺行動、胸量の増大、乳汁漏出症、アレルギー性皮膚反応、構音障害、好酸球増多症、白血球減少症、顆粒球減少症、血小板減少、失神;
3)作用の特異性の不足:抗鬱薬が、モノアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンおよ
びセロトニンのような)の細胞外レベルを増加させることにより、すべてのアドレナリン受容体およびセロトニン受容体に、かかる種々の受容体が神経障害性疼痛に効果があるか否かにかかわらず作用する;
4)患者間の作用の変動性:抗鬱薬は患者の一部でのみ有効である(30%〜50%の間の患者)(非特許文献3および6(3) (6))。
【0009】
臨床医にとって、患者の症例にとって最も適した薬物を患者に提案するために、現在知られているよりもより多様な一連の薬物を有することが不可欠である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bouhassira D, Lant駻i-Minet M, Attal N, Laurent B, Touboul C. Prevalence of chronic pain with neuropathic characteristics in the general population. Pain 2008, 136:380-387.
【非特許文献2】Merksey H, Bogduk N, editors. Classification of Chronic Pain. IASP Press, Seattle 1994.
【非特許文献3】McQuay HJ, Tram鑽 M, Nye BA, Caroll D, Wiffen PJ, Moore RA. A systemic review of antidepressants in neuropathic pain. Pain 1996, 68:217-227.
【非特許文献4】Hempenstall K, Nurmikko TJ, Johnson RW, A’Hern RP, Rice ASC. Analgesic therapy in postherpetic neuralgia: a quantitative systematic review. PLoS Medicine 2:e164.
【非特許文献5】Gilron I, Watson CP, Cahill CM, Moulin DE. Neuropathic pain: a practical guide for the clinician. CMAJ 2006, 175:265-275.
【非特許文献6】Attal N, Cruccu G, Haanpaa M, Hansson P, Jensen TS, Nurmikko T, Sampaio C, Wiffen P, EFNS Task Force. European Journal of Neurology 2006, 13:1153-1169.
【非特許文献7】Moulin DE, Clark AJ, Gilron I, Ware MA, Watson CP, Sessle BJ, Coderre T, Morley-Foster PK, Stinson J, Boulanger A, Peng P, Finley GA, Taenzer P, Squire P, Dion D, Cholkan A, Gilani A, Gordon A, Henry J, Jovey R, Lynch M, Mailis-Gagnon A, Panju A, Rollman GB, Velly A, Canadian Pain So ciety. Pharmacological management of chronic neuropathic pain - consensus and guidelines from the Canadian Pain Society. Pain Research Management 2007, 12:13-21.
【非特許文献8】Dworkin RH, O'Connor AB, Backonja M, Farrar JT, Finerup NB, Jensen TS, Kalso EA, Loeser JD, Miaskowski C, Nurmikko TJ, Portenoy RK, Rice ASC, Stacey BR, Treede RD, Turk DC, Wallace MS. Pharmacological management of neuropathic pain: evidence-based recommendation. Pain 2007, 132:237-251.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、痛みの治療に使用することが可能であり、かつ、より有効で、より耐性が高く、かつ、より容易に受け入れられ、そして作用がより標的化されている、新しい分子が実際に必要とされている。
【0012】
たとえば、神経刺激技術、外科技術、鍼灸技術および精神分析等の神経障害性疼痛の他の治療法が現在使用されているが、これらの技術は、医師による繰り返しの介入や、任意選択の入院を必要とするため、実施が困難であり、時間が長くかかりがちで、かつ/または必ずしも満足のいくものとは限らない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記要求を実際に満たし、先行技術の欠点を解決する。
神経障害性疼痛を軽減するために抗鬱薬が臨床的に使用されている30年を越える間、β−アドレナリン受容体アゴニストが抗鬱薬と同じ効果を有する可能性があり、神経障害性疼痛の永続的な軽減のために抗鬱薬の代わりとして使用できる可能性があることは未だかつて想定されてこなかった。この状況は明らかに、α2−アドレナリン受容体が関与すると仮定されている痛みに対する抗鬱薬の正確な作用機構についての知識が乏しいという結果から来ている。その理由は、α2−アドレナリン受容体アゴニストは、短期服用されると、痛覚消失を促進することが可能であり、手術時の痛みを処理する際に併用療法として慣例的に使用されているためである(Crassous et al., 2007, Current Topics in Medicinal Chemistry 7:187-194.(9))。したがって、α2−アドレナリン受容体アゴニストが抗鬱薬の効果の原因であると想像するのは容易で自然に見えたが、これは今まで証明されていなかった。本願発明者らは、このことが当てはまらず、神経障害性疼痛に対する抗鬱薬の治療効果にとって不可欠なアドレナリン受容体は、実際にはβ2−アドレナリン受容体であることを実証した。
【0014】
本願発明者らは、慢性神経障害性疼痛に対する抗鬱薬の治療効果の原因であるアドレナリン受容体を同定した。それらはベータファミリーのアドレナリン受容体であり、詳細にはβ2サブタイプのアドレナリン受容体である。神経障害性疼痛のマウスモデルでは、ベータまたはβ2アドレナリン受容体のブロックにより、抗鬱薬の治療作用が実際に消失した。さらに、このモデルで神経障害性異痛を緩和するには、種々のβ2−アドレナリンまたはβ−アドレナリンアゴニストを投与するだけで十分である。痛くないはずの刺激に応答した痛い感覚である異痛は、神経障害性疼痛の重要な症状である。β2−アドレナリンアゴニスト、より広い概念ではβ−アドレナリンアゴニストは、神経障害性疼痛を治療し、かつ抗鬱薬の現在の使用に対する標的化した代替物を提示することを可能にし得る。
【0015】
したがって、本発明は、神経障害性疼痛の治療、特に神経障害性異痛の治療に使用される薬物の生産のための有効成分としてのβ−アドレナリンアゴニストの使用方法に関する。本発明によれば、痛みの形式は慢性であってよい。
【0016】
用語「神経障害性疼痛」は、MerkseyおよびBogduk(1994)(2)に記載されているような侵害受容経路を構成する要素の1つである機能障害および/または病変に関連する痛みを意味する。これは、たとえば、末梢神経(軸索および/またはミエリンが関与)の、脊髄の、または脊髄より上位の構造の病変または炎症に続く痛みを含む。病変または機能障害は、たとえば機械的に由来するものであるか(たとえば外傷後);手術後のものであるか;傷跡の下の神経病変に関連するか(たとえば、開胸後症候群の場合);手足切断の場合の幻肢に関連するか;エントラップメントニューロパシーにおける神経圧迫に関連するか;炎症性要素を伴う場合がある状況である、椎間板ヘルニアにより引き起こされる神経根障害における神経根圧迫に関連するか;対麻痺患者の痛みを引き起こす脊髄の切断または外傷に関連するか;たとえば代謝に由来する、たとえばアルコール中毒または糖尿病、異甲状腺症によるニューロパシー;欠失ニューロパシー;たとえば虚血に由来する、たとえば末梢動脈虚血、脊髄虚血、脳卒中に関連するか;たとえば毒性に由来する、たとえば薬物に関する、たとえばツルニチニチソウ派生物に基づく、白金塩に基づく、抗癌化学療法に関連するか;アミオダロンに関連するか;工業的毒性物質、たとえばアクリルアミド、接着剤に関連するか;たとえば感染由来、たとえばHIV、ヘルペス、水痘、帯状疱疹に関連するか;たとえば免疫アレルギー由来、たとえば腫瘍随伴性神経障害、Guillain−Barr症候群に関連するか;たとえば遺伝由来、たとえば小線維ニューロパシーに関連する。
【0017】
本発明によれば、β−アドレナリンアゴニストには、好ましくはβ2−アドレナリンアゴニストであるか、またはβ2−アドレナリンアゴニスト作用を有するより特異性の低い分子である。
【0018】
本発明によれば、β−アドレナリンアゴニストは、バンブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、イソプロテレノール(またはイソプレナリン)、レバルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、リトドリン、サルブタモール(またはアルブテロール)、サルメテロール、テルブタリンまたはツロブテロールからなる群からたとえば選択される。用語「アゴニスト」はさらに、上述のアゴニストの医薬として許容される塩、および/またはこれらのアゴニストの混合物、および/またはそれらアゴニストの混合物の医薬として許容される塩を意味する。
【0019】
本発明の目的で、医薬として許容される塩は、たとえば塩酸塩、硫酸塩、臭化物塩、臭化水素酸塩、水和物(たとえば二水和物、三水和物、四水和物等)、ナトリウム塩、フマル酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、二硝酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、プロピオン酸塩、キシナホ酸塩またはヒドロキシナホ酸塩である。
【0020】
本発明によれば、薬はヒトまたは獣に使用され得る。
本発明によれば、薬物は、患者または動物に投与可能な適切な任意の形式であってもよい。投与は直接実行されてもよい、つまり純粋なまたは実質的に純粋なアゴニストまたは純粋または実質的に純粋な医薬として許容される該アゴニストの塩を使用してもよいし、医薬として許容される担体との混合物であってもよいし、または医薬として許容される媒体の形であってもよい。したがって、薬物は、純粋または実質的に純粋な形のアゴニストまたはその塩であるか、適切な溶媒に溶解させたアゴニストであるか、もしくは患者または動物への投与用および患者または動物による吸収に適した一般的形式のアゴニストであってよい。
【0021】
薬は、たとえば、以下からなる群から選択される形式であってよい:注射可能な形式(たとえばVentolin(登録商標))、シロップ(たとえばAtarax(登録商標))、経口溶剤(たとえばEfferalgan(登録商標)3%)、錠剤(たとえばAspirine du Rhone(登録商標)[アスピリン])、分解錠剤(たとえばClaradol(登録商標))、フィルムコーティング錠(たとえばApranax(登録商標))、分解フィルムコーティング錠(たとえばZyrtecset(登録商標))、胃抵抗性錠剤(たとえばアスピリン(登録商標)PH 8500mg 胃抵抗性錠剤)、コーティング錠(たとえばFervex(登録商標))、分散錠剤(たとえばSpasmocalm(登録商標))、チュアブル錠(たとえばRennie(登録商標))、ブリスターパック(たとえばVentodisks(登録商標))、ゲルカプセル(たとえばPolyprine(登録商標)ゲル)、発泡生成物(たとえばEfferalgan(登録商標))、分解発泡錠(たとえばPrednisolone Arrow(登録商標))、口液剤用粉末(たとえばDoliprane(登録商標))、経口懸濁液用顆粒剤(たとえばApranax(登録商標))、吸入用懸濁液(たとえばAiromir
Autohaler(登録商標))、吸入用粉末剤(たとえばAsmelor Novalizer(登録商標))、ネブライザによる吸入用溶液(たとえばSalbutamol Arrow(登録商標))、ゲルカプセルに入れた吸入用粉末剤(たとえばForadil(登録商標))、坐薬(たとえばDoliprane(登録商標))、目薬(たとえばRifamycin Chibret(登録商標))、クリーム(たとえばFucidin(登録商標)2%)、軟膏(たとえばMupiderm(登録商標))、ゲル(たとえばFinacea(登録商標))、スプレー(たとえばNasonex(登録商標))、パッチ(たとえばDurogesic(登録商標))、トローチ剤(たとえばStrepsils(登録商標))、および静脈内潅流用溶液(たとえばSalbutamol Merck(登録商標))、硬膜外、関節内もしくは関節周囲、末梢、局所、または傍脊椎投与用溶液(たとえばLidocaine Adrenaline Aguett
ant(登録商標)2%注射剤)、もしくは脊髄内投与用溶液(たとえばBupiforan(登録商標)0.25%注射剤)、または湿潤用、特に局所湿潤用溶液(たとえばBupiavcaine Aguettant(登録商標)0.25%注射剤)。これらの例では、アゴニストは上記薬物の有効成分にさらに追加されるか、またはそれらと置き換え可能である。これらの薬物の各々の組成は、たとえばVidal辞書(2007年版)に見つけることが可能である。
【0022】
医薬として許容される担体は、たとえば、医薬の使用に従ってヒトまたは動物に上記アゴニストを投与するのに使用される任意の公知の医薬として許容される担体であってよい。たとえば、担体は、ポビドン、コロイドシリカ、滑石、微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、ゼラチン、レシチン、スターチ、クロスポビドン、グリセロール、パラフィン、ブチルヒドロキシアニソール、ヘトロラタム、ラノリンおよびアラビアゴムからなる群から選択され得る。
【0023】
医薬として許容される媒体は、本願で定義する、ヒトまたは動物に上記アゴニストを投与するのに適した任意の公知の媒体であってよい。媒体は、たとえばエタノール、すくロース、グリセロール、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸、水、食塩水、流動パラフィン、ブチルヒドロキシアニソール、ワセリン、ラノリンまたはアラビアゴムであってよい。
【0024】
本発明によれば、投与は好ましくは長期のもの(慢性的)である。用語「長期投与」または「長期治療(長期処理)」は、本願では、少なくとも数日、たとえば数週間、たとえば数か月、たとえば数年にわたって繰り返されるかまたは維持される摂取を意味する。たとえば、長期投与は、上記の形式のうちいずれか一つで、薬物を数回摂取または投与することから成ってもよいし;またはたとえば長期間作用する形式でまたはたとえばドリップまたはパッチで作用の持続時間が長期間にわたって維持される形式で一回または繰り返し摂取することから成ってもよい。たとえば、長期投与は、1日に1回、2回、3回、またはそれより多くの回数の摂取または投与であってもよく、たとえば一日、二日、三日等、たとえば一週間、二週間、三週間等、たとえば一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月等、一年、二年、三年等の期間であってよい。
【0025】
本発明によれば、薬物は、本発明の実施において医薬として許容され、かつ有効なアゴニストの任意の用量を含んでもよい。たとえば、薬物は投与を可能にする用量からなり、たとえばヒトでは0.01〜120mg/日に及び、たとえば0.01〜20mg/日であってよい。これはたとえば、バンブテロールについては10〜20mg/日、クレンブテロールについては0.02〜0.2mg/日、フェノテロールについては0.05〜0.8mg/日、ホルモテロールについては0.01〜0.05mg/日、イソプロテレノール(またはイソプレナリン)については0.2〜10mg/日、ピルブテロールについては0.2〜3mg/日、リトドリンについては0.05〜72mg/日、サルブタモールについてはたとえば0.05〜120mgまたは0.1〜36mg/日、サルメテロールについては0.025〜0.1mg/日、テルブタリンについては0.5〜13.5mg/日、メタプロテレノールについては0.5〜60mg/日、レバルブテロールについては0.3〜4mg/日、レプロテロールについては0.5〜12mg/日、ツロブテロールについては1〜6mg/日、またはビトルテロールについては0.5〜10mg/日である。これらはもちろん例であり、用量はかかる治療および投与方法に対する患者の感度に従って詳細に調節可能である。
【0026】
本発明は、上記に定義したアゴニストを患者に投与することを含む、痛み、詳細には神経障害性疼痛(たとえば神経障害性異痛)を治療する方法に関する。患者はヒトまたは動物であってよい。使用可能なアゴニストおよび製剤が上記に例として挙げた通りである。
【0027】
投与は、当業者に公知の任意の手段によって実施可能であり、詳細には上述のアゴニストを投与するための任意の公知の手段により実施可能である。投与の方法の例は以下に説明する。
【0028】
たとえば、投与は、アゴニストの直接注射により、または潅流により、シロップ、経口液剤、錠剤、発泡錠剤、フィルムコーティング剤、分解錠剤、コーティング錠剤、胃抵抗性錠剤、分散剤、もしくはチュアブル錠剤、ブリスターパック錠剤、ゲルカプセル、トローチ剤、経口液剤用粉末または顆粒剤の形で経口摂取により、懸濁液の使用、吸入用粉末の使用、ゲルカプセルに入れた吸入用粉末剤の使用、またはネブライザによる吸入用溶液の使用により、坐薬の服用により、クリーム、軟膏またはゲルの使用により、噴霧剤の使用により、パッチの使用により、硬膜外、関節内もしくは関節周囲、局所もしくは末梢、くも膜下腔内、傍脊椎、局所投与、湿潤、または潅流により実施される。これらの様々な投与経路に使用可能な組成物の例が上述される。
【0029】
投与は、痛み、詳細には神経障害性疼痛の治療のために医薬として許容される有効な送達を可能にするように定義可能である。たとえば投与は、たとえばヒトでは0.01〜120mg/日の範囲、たとえば0.01から20mg/日であってよい。これはたとえば、バンブテロールについては10〜20mg/日、クレンブテロールについては0.02〜0.2mg/日、フェノテロールについては0.05〜0.8mg/日、ホルモテロールについては0.01〜0.05mg/日、イソプロテレノール(またはイソプレナリン)については0.2〜10mg/日、ピルブテロールについては0.2〜3mg/日、リトドリンについては0.05〜72mg/日、サルブタモールについてはたとえば0.05〜120mgまたは0.1〜36mg/日、サルメテロールについては0.025〜0.1mg/日、テルブタリンについては0.5〜13.5mg/日の要領であってよい。これらはもちろん例であり、用量はかかる治療に対する患者の感度に従って詳細に調節可能である。
【0030】
投与は単回投与として実行されてもよいし、または数回投与として実行されてもよい。
本発明の方法によるβ−アドレナリンのアゴニストの投与はたとえば長期投与であってよい。
【0031】
たとえば長期投与されるβ−アドレナリンのアゴニストの用量は、0.01〜20mg/日の間、たとえば0.05〜15mg/日の間、たとえば0.05〜10mg/日の間、たとえば0.1〜5mg/日の間であるか、別の用量ではたとえば0.15〜350μg/kg/日の間、たとえば0.8〜250μg/kg/日の間、たとえば0.8〜170μg/kg/日の間、たとえば1.5〜90μg/kg/日の間であってよい。
【0032】
本発明に従って使用されるβまたはβ2アドレナリンアゴニストの作用は、痛み(たとえば神経障害性異痛)を治療するための抗鬱薬の作用よりも分子レベルにてより正確であるが、その理由は、かかるアゴニストが他のアドレナリン受容体へ影響を及ぼさずに治療効果の原因である受容体に直接作用することが可能であるためである。このようなより標的化した作用により、有害な副作用が明確に低減される。
【0033】
本発明は、特には長期間にわたるがこれに制限されるわけではない期間の、神経障害性疼痛(たとえば神経障害性異痛)の治療のためのβ−アドレナリンアゴニストの使用方法に関する。特に、神経障害性疼痛(詳細には神経障害性異痛)の動物モデルから本願発明者が得た実験データは、ヒトの臨床の状況に非常に近いが、かかる分子での処理後に痛みの症状がかなり改善することを明確に示している。
【0034】
さらに、上記分子は、他の状態の治療のためにヒトの臨床分野で既に使用されており、このことは神経障害性疼痛に関する最初の治験を促進し、特に加速している。したがって、治療の見通しはすぐである。多くのβまたはβ2アドレナリンアゴニスト分子が、既に販売許可を得ており、本質的に喘息発作もしくは慢性閉塞性肺疾患、または子宮収縮の抑制のため等、他の病理状態の場合には一般に使用されている。しかしながら、これらの分子は神経障害性疼痛に対して(たとえば神経障害性異痛に対して)は未だ試験されていない。上記許可の存在は、副作用の臨床試験が既に実行されており、より少ない費用で神経障害性疼痛に関する試験および臨床の使用への進行を潜在的に促進/加速することを意味している。
【0035】
さらに、長期治療の効能は、長期治療を受け入れ、かつそれに従う患者に大きく依存する。心理的に、喘息に対して処方されることが知られている分子での治療を受け入れる方が、鬱病に対して処方されることが知られている精神医学目的の分子での治療を受け入れるよりも容易であるかもしれない。
【0036】
他の利点は、以下の実施例を読めば当業者には明らかとなろう。実施例は添付の図を参照しつつ非限定的な例示のために明らかに与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1および2に記載される、カフ無しの対照マウス(「Sham」)またはカフ有りの神経障害性マウス(「Cuff」)に対する生理食塩水(「Sal」)またはノルトリプチリン(「Nor」)の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載した手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図2】実施例3に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、生理食塩水(「Sal」)またはノルトリプチリン溶液(「Nor」)と、α2−アドレナリンアンタゴニストのヨヒンビンまたはβ−アドレナリンアンタゴニストのプロプラノロールとの同時処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って実施例1に記載した手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図3】2つのグラフを含む。第1のグラフは、実施例4、5および6に記載される、神経障害性動物における、ノルトリプチリンと、β1−アドレナリンアンタゴニストメトプロロール、β2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551またはβ3−アドレナリンアンタゴニストSR59230Aとの同時処理の効果を示す。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。第2のグラフは、実施例5に記載される、ノルトリプチリンと、β2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551との同時処理の効果を示す。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って実施例1に記載した手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図4】実施例7に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、クレンブテロールの最初の注射(「急性注射」)の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、注射後の時間が(分)で表わされる。
【図5】実施例7に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、クレンブテロール(「Clen」)による治療の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図6】実施例8に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、クレンブテロールと、β2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551との同時処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図7】実施例9に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、バンブテロールの最初の注射(「急性注射」)の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、注射後の時間が(分)で表わされる。
【図8】実施例9に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、バンブテロールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図9】実施例10に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、フェノテロールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図10】実施例11に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、0.5mg/kgの用量のホルモテロールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図11】実施例11に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、0.05mg/kgの用量のホルモテロールの最初の注射(「急性注射」)の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、注射後の時間が(分)で表わされる。
【図12】実施例11に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、種々の用量(0.05mg/kg、0.005mg/kg、0.0005mg/kg)のホルモテロールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図13】実施例12に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、サルブタモールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図14】実施例12に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、吸入によるサルブタモールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術前と、実施例12に記載された処理の開始前、および処理の終了時の日数で時間が表わされる。
【図15】実施例13に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、サルメテロールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図16】実施例13に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、吸入によるサルメテロールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術前と、実施例12に記載された処理の開始前および処理の終了時の日数で時間が表わされる。
【図17】実施例14に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、テルブタリンによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図18】実施例14に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、テルブタリン(0.5mg/kg)または生理食塩水による処理の効果を示すグラフ。左側のグラフは左足(手術なし)の結果を示す。右側のグラフは右足(手術あり)の結果を示す。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図19】実施例14に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、0.5mg/kgの用量のテルブタリンと、β2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551との同時処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。
【図20】実施例14に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、種々の用量(0.25mg/kg、0.125mg/kg、0.05mg/kg、0mg/kg)のテルブタリンによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図21】実施例14に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、対照溶液(生理食塩水、「用量0」)、種々の用量のテルブタリン、およびノルトリプチリンによる長期処理の効果の比較を要約したグラフ。上側のグラフは左足(手術なし)の結果を与え、下側のグラフは、右足(手術あり)の結果を与える。y軸に沿って、動物の回復が手術前の動物の感度のパーセンテージとして示される。
【図22】実施例14に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、ゲルを使用したテルブタリン(Ter)による処理の効果を示すグラフ。対照ゲルはテルブタリンを含んでいない。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図23】実施例14に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、テルブタリン(Ter)のインプラントの適合の効果を示すグラフ。対照インプラントはテルブタリンを含んでいない。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図24】実施例15に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、フェノテロールの、サルブタモールの、サルメテロールの、およびテルブタリンの最初の注射(「急性注射」)の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、注射後の時間が(分)で表わされる。
【図25】実施例16に記載される、神経障害性(「Cuff」)動物における、対照溶液(生理食塩水)による、ノルトリプチリンによる、バンブテロールによる、クレンブテロールによる、フェノテロールによる、ホルモテロールによる、サルブタモールによる、サルメテロールによる、テルブタリンによる、イソプレナリンによる、リトドリンによる、メタプロテレノールによる、およびプロカテロールによる長期処理の効果の比較を要約したグラフ。y軸に沿って、動物の回復が手術前の動物の感度のパーセンテージとして示される。
【図26】実施例17に記載される、対照(「Sham」)動物における、対照溶液(生理食塩水)による、ノルトリプチリンによる、バンブテロールによる、クレンブテロールによる、フェノテロールによる、ホルモテロールによる、サルブタモールによる、サルメテロールによる、テルブタリンによる、イソプレナリンによる、リトドリンによる、メタプロテレノールによる、およびプロカテロールによる長期処理の効果の比較を要約したグラフ。y軸に沿って、動物の回復が手術前の動物の感度のパーセンテージとして示される。
【図27】実施例18に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、バンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、またはサルメテロールと、β2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551との同時処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。
【図28】実施例19に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、腹腔内またはくも膜下腔内注射したサルブタモールと、β2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551との同時処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。
【図29】実施例20に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、イソプレナリン(またはイソプロテレノール)による処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図30】実施例20に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、イソプレナリンとβ2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551との同時処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。
【図31】実施例20に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、リトドリンによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図32】実施例20に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、リトドリンと、β2−アドレナリンアンタゴニストICI 118,551との同時処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。
【図33】実施例20に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、メタプロテレノールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図34】実施例20に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、ゲルを使用したメタプロテレノールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【図35】実施例20に記載される、対照(「Sham」)または神経障害性(「Cuff」)動物における、プロカテロールによる処理の効果を示すグラフ。y軸に沿って、作用した圧力がグラム(g)で表わされる。x軸に沿って、実施例1に記載された手術から始まる日数で時間が表わされる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の実施例において、実験のプロトコルおよび結果は、神経障害性疼痛、詳細には神経障害性異痛を治療するためのβ−アドレナリンアゴニストの提案につながる本願発明者の科学的データを示す。発明者らは特に以下のことを実験的に実証している:
1.α2−アドレナリン受容体(たとえばヨヒンビンによる)の繰り返しの遮断は、抗鬱薬の鎮痛効果のブロックに効果がない:したがって、この効果にはα2−アドレナリン受容体が関与しない;
2.β−アドレナリン受容体(たとえばプロプラノロールによる)の繰り返しの遮断は、抗鬱薬の治療効果をブロックする:したがって、βアドレナリン受容体は、神経障害性疼痛、たとえば神経障害性異痛に対する抗鬱薬の治療効果の原因である。ノルトリプチリンで処理していようがしていまいが、対照動物の反応にはプロプラノロールは影響を及ぼさないため、この結果は特異的である。
【0039】
発明者らはさらに、βアドレナリン受容体の3つのサブタイプに特異的な分子:β1−アドレナリン受容体に対するメトプロロール;β2−アドレナリン受容体に対するICI
118,551;およびβ3−アドレナリン受容体に対するSR59230Aを試験し、β2−アドレナリン受容体アンタゴニストだけが抗鬱薬の効果をブロックすることを示
している。これは、神経障害性疼痛(たとえば神経障害性異痛)に対する抗鬱薬の治療効果が、β2−アドレナリン受容体を必要とすることを実証している。ノルトリプチリンで処理していようがしていまいが、対照動物の反応にはICI 118,551は影響を及ぼさないため、この結果は特異的である。
【0040】
その後、発明者らは、種々のβ2−アドレナリン受容体特異的アゴニストの長期処理が、神経障害性疼痛(たとえば神経障害性異痛)を完全に消失させ、したがって抗鬱薬の使用の代わりとして使用することが可能であることを実証している。この実証は、たとえばクレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、リトドリン、メタプロテレノールおよびプロカテロールに対してなされた。同じ実証が、たとえばいずれも一般的なβ−アドレナリンのアゴニストであるバンブテロールおよびイソプレナリンに対してなされた。β2−アドレナリンアゴニスト、より一般にはβ−アドレナリンアゴニストは、神経障害性疼痛(より詳細には神経障害性異痛)を治療可能にする場合がある。
【0041】
発明者らは、神経障害性疼痛(たとえば神経障害性異痛)に対するβ2−アドレナリン受容体アゴニストのこの効果が、考慮してもアゴニストの最初の注射後では急性で観察されないことを実証している。これは、たとえばクレンブテロール、バンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、サルブタモール、サルメテロールおよびテルブタリンに対して実証された。したがって慢性の治療が必要である。
【0042】
発明者らは、種々のβ2−アドレナリン受容体特異的アゴニストによる長期処理が、対照動物の感度に特異的に影響しないことを示している。この実証は、たとえばクレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、リトドリン、メタプロテレノールおよびプロカテロールに対して成された。同じ実証が、たとえばいずれも一般的なβ−アドレナリンのアゴニストであるバンブテロールおよびイソプレナリンに対してなされた。従って、治療用量で、β2−アドレナリンアゴニスト、より一般にはβ−アドレナリンのアゴニストは、長期では侵害受容の感度に特異的効果を及ぼさない。
【0043】
発明者らは、β2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551が、神経障害性疼痛(たとえば神経障害性異痛)に対するβ−アドレナリン受容体アゴニストによる長期処理の治療効果をブロックすることを実証している。この実証は、たとえばバンブテロール、イソプレナリン、クレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン、リトドリンおよびプロカテロールに対して成された。神経障害性疼痛(たとえば神経障害性異痛)に対するこれらのアゴニストによる処理の効果には、β2−アドレナリン受容体に対するそれらアゴニストの作用が明らかに関与している。
【0044】
発明者らは、くも膜下腔内に送達されたβ2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551がβ−アドレナリン受容体アゴニストによる長期処理の治療効果をブロックすることを実証している。この実証は、たとえばサルブタモールに対して成された。これらの結果は、脊髄および/または後根神経節がβ2−アドレナリンアゴニストの治療効果に関与することを示している。
【0045】
発明者らは、β2−アドレナリン受容体アゴニスト(たとえばサルブタモール、サルメテロール)を吸入により投与すると、神経障害性異痛が緩和されることを実証している。
発明者らは、β2−アドレナリン受容体アゴニスト(たとえばテルブタリン、メタプロテレノール)をゲルの形で経皮的に投与すると、神経障害性異痛が緩和されることを実証している。
【0046】
発明者らは、β2−アドレナリン受容体アゴニスト(たとえばテルブタリンインプラント)の連続的送達により、神経障害性異痛が緩和されることを実証している。
操作プロトコルおよび得られた結果の詳細を、以下の実施例で与える。
【0047】
実施例1:神経障害性疼痛のマウスモデル
実験はオスの成体マウスに対して実行した。薬学的実験をC57BL/6Jマウス(到着時3〜6週齢、Charles River社、フランス国L’Arbresle所在)を使用して実行した。
【0048】
すべての実験は、6〜9週齢のマウスを用いて開始した。ゲル適用実験に関しては、マウスを個別に収容した。すべての他の実験に関しては、マウスを1個のケージ当たり4〜5匹組み合わせ、食物と水は自由摂取とし、照明は12時間で昼/夜に切り替えた(午前6時に点灯)。手順は86/6609/EECガイドラインに従って行った。
【0049】
モデルは、各マウスの右坐骨神経の主枝の周囲にポリエチレン製のカフを配置することにより得られる。任意の手術前に、種々の実験群間でベースラインの機械的侵害受容閾値および体重が等しくなるように、マウスを種々の実験群に割り当てた。手術はケタミン−キシラジン麻酔(ケタミン:17mg/ml、キシラジン2.5mg/ml、4ml/kgの割合で腹膜腔内注射)(有限会社Centravet、フランス国Taden所在)下で行なった。坐骨神経の主枝を露出し、中空のPE−20ポリエチレン製チューブ(「Harvard Apparatus」、フランス国Les Ulis所在)の2mm長部分を前記枝の周囲に配置した(「Cuff」群)。このプロトコルは以前に公表されたものである(Benbouzid, M. et al. Biological Psychiatry 63:633-636 (2008) (10)お
よびBenbouzid, M. et al. European Journal of Pain 12:591-599 (2008) (11))。対照マウスは、同じ手順に従って操作したが、カフは配置しなかった(「Sham」群)。実験群は、各対照(「Sham」)群につき少なくとも4匹のマウスおよび各神経障害性(「Cuff」)群につき少なくとも5匹のマウスから構成される。
【0050】
坐骨神経の主枝の周囲にポリエチレンカフ(「Cuff」群)を配置することで、対照動物(「対照」または「Sham」群)と比較して、機械的アロディニア、つまり通常痛くない刺激に対する反応につながる。これは、図1のグラフによって示されるように、マウスによる足引っ込め反応につながる圧力の閾値が大いに減少することを意味している。
【0051】
試験のため、以下の実施例では、フォンフレイ(von Frey)フィラメントでマウスの足に圧力をかける(Bioseb, Chaville, France) (Benbouzid, M. et al. Biological Psychiatry 63:633-636 (2008) (10) およびBenbouzid, M. et al. European Journal
of Pain 12:591-599 (2008) (11))。マウスは、高くしたグリッド上に配置した透明な
Plexiglas(登録商標)箱(7cm×9cm×7cm)の中に置かれる。試験の前に、マウスを15分間この装置に慣れさせる。試験中、フォンフレイフィラメントを、浮力に従って各後足足底の表面に適用する(0.16gから足の引っ込め反応まで、または最高10gまで)。各フィラメントを1本の足当たり5回試験し、5回の試験にわたって観察された3回以上の引っ込めが存在することにより閾値が定義される。上述したように手術前に、動物はそのベースライン侵害受容反応を確立するために予備試験した。長期処理実験およびアンタゴニストの注射の繰り返しの間、試験は朝、その日の最初の注射の前に行なわれる。急性アゴニスト注射実験の間、試験は、グラフで示される時間経過に従って最初の注射後に行なわれる。
【0052】
カフを設置する手術は0日目に相当する。以前に公表された(Benbouzid, M. et al. Biological Psychiatry 63:633-636 (2008) (10) およぼBenbouzid, M. et al. European
Journal of Pain 12:591-599 (2008) (11)))ように、かかるマウスから得られた機械的アロディニアは2か月よりも長い間続く。
【0053】
この神経障害性マウスモデルは、以前に公表されている(Benbouzid, M. et al. Biological Psychiatry 63:633-636 (2008) (10))ように、三環系抗鬱薬(ノルトリプチリン
またはアミトリプチリン)による長期処理に対する感度が高い。
注射により実行されるすべての治療に関し、かかる注射は体重10mg当たり50mμLで腹腔内に与えた。
【0054】
実施例2:三環系抗鬱薬の治療効果
実施例1に記載の方法で得られたマウスモデルにおいて、異痛が正確に適所に存在する場合、カフを設置した手順の15日後に、治療的処理を5mg/kgの割合の抗鬱性ノルトリプチリンすなわち「Nor」(塩酸ノルトリプチリン、たとえばSigma−Aldrich社(カタログ番号N7261)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水に希釈)を用いて開始した。注射は1日2回(朝と夕方)とした。この処理は臨床的に観察されるものを再現したものであり、最初は効果がないが、続いて異痛を完全に消失させる。
【0055】
マウスの「プラセボ(偽薬)」群には、抗鬱薬なしで食塩水のみ(0.9%NaCl溶液)を注射した(0.9%食塩水の注射に対し、グラフ「Sal」)。この「Sal」群は実験中ずっとアロディニア(異痛症)のままである。
【0056】
この実施例の結果を添付の図1に示す。
対照(すなわち「Sham」群)のマウスの侵害受容感度は、ノルトリプチリンによる治療により影響されず、それらの侵害受容閾値は実験の間じゅう安定のままである。
【0057】
実施例3:抗鬱薬の作用に対するα2−アドレナリン受容体ブロックの効果の欠如と抗鬱薬の作用に対するβアドレナリン受容体ブロックの効果の存在
図2の左側のグラフは、実施例2に記載されたように3週間ノルトリプチリン(5mg/kg、1日2回)で処理した(したがって異痛の軽減を経験した)神経障害性(「Cuff」)動物では、ノルトリプチリンとα2−アドレナリン受容体アンタゴニスト(ブロッカー)(ヨヒンビン、2mg/kg、腹腔内)(塩酸ヨヒンビン、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号Y3125)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)とによる同時処理が、治療効果に影響がないことを示している。したがって、ノルトリプチリンの治療効果には、α2−アドレナリン受容体の動員が関与していない。
【0058】
βアドレナリン受容体のブロックは、抗鬱薬の治療効果を抑制する。
図2の右側のグラフは、3週間ノルトリプチリン(5mg/kg、1日2回)で処理した神経障害性動物では、実施例2に記載されたようなノルトリプチリンとβ−アドレナリン受容体アンタゴニスト(プロプラノロール、5mg/kg、腹腔内)(+/−)−塩酸プロプラノロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号P0884)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)とによる同時処理が、異痛を数日で再現させることを示している。したがって、抗鬱薬の治療効果には、β−アドレナリン受容体が関与する。
【0059】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ヨヒンビンまたはプロプラノロールの注射によっては影響されず、その侵害受容閾値は実験中ずっと安定のままである。
【0060】
同じ結果が、5mg/kg プロプラノロールの代わりにソタトール(2mg/kg、(+/−)塩酸ソタトール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号S0278)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈))を使用しても得られる。
【0061】
実施例4:抗鬱薬の作用に対するβ1−アドレナリン受容体ブロックの効果の欠如
図3の左側のグラフは、実施例2に記載されたように3週間ノルトリプチリンで処理した神経障害性動物では、ノルトリプチリンとβ1−アドレナリン受容体アンタゴニスト(メトプロロール、2mg/kg、腹腔内)(+/−)メトプロロール (+)−酒石酸塩、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号M5391)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)とによる6日間の同時処理が、治療効果に影響がないことを示している。
【0062】
同じ結果が、2mg/kg メトプロロールの代わりにアテノロール 5mg/kg(アテノロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号A7655)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)を使用しても得られる。
【0063】
実施例5:抗鬱薬の作用に対するβ2−アドレナリン受容体ブロックの効果の存在
図3の左側のグラフは、実施例2に記載されたように3週間ノルトリプチリンで処理した神経障害性動物では、ノルトリプチリンとβ2−アドレナリン受容体アンタゴニスト(ICI 118,551、2mg/kg、腹腔内)(ICI 118,551塩酸塩、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号I127)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)とによる6日間の同時処理が、神経障害性異痛の再現につながることを示している。
【0064】
β2−アドレナリン受容体のブロックは、抗鬱薬の治療効果を抑制する。
図3の右側のグラフは、ICI 118,551が上述したようにノルトリプチリン(「Nor」)と同時投与された場合の、カフを備えたマウス(「Cuff」)の神経障害性疼痛の再現の時間経過を詳述している。グラフは、同時処理の開始後48時間以内に異痛が再現することを示している。
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ICI 118,551注射によって影響されない。
【0065】
実施例6:抗鬱薬の作用に対するβ3−アドレナリン受容体ブロックの効果の欠如
図3の左側のグラフは、ノルトリプチリンで3週間処理した神経障害性動物では、ノルトリプチリンとβ3−アドレナリン受容体アンタゴニスト(SR59230A、2.5mg/kg、腹腔内)(SR59230A、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号S8688)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)とによる6日間の同時処理が、治療効果に影響がないことを示している。
【0066】
実施例7:治療:β2−アドレナリン受容体アゴニストのクレンブテロールは神経障害性異痛を緩和する。
図4のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるクレンブテロール(0.3mg/kg、腹腔内)(塩酸クレンブテロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号C5423)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)の最初の注射が、2週間の間、神経障害性(「Cuff」)マウスの機械的アロディニアに効果がないことを示している。
【0067】
また、対照(すなわち「Sham」)群のマウスも、かかるアゴニストの最初の投与によって影響されない。
図5のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるクレンブテロール(「Clen」、0.3mg/kg、腹腔内、1日2回(朝と夕方))(塩酸クレンブテロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号C5423)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、神経障害性(「Cuff」)マウスにおける機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0068】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、クレンブテロール注射によって影響されない。
これらのデータは、クレンブテロールの投与が神経障害性疼痛、特には神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0069】
実施例8:クレンブテロールの作用に対するβ2−アドレナリン受容体ブロックの効果
図6のグラフは、実施例7に記載されたようにクレンブテロールで3週間処理した後、クレンブテロールとβ2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551(「ICI」、2mg/kg、腹腔内、実施例5に記載)が同時投与される場合、これにより異痛が数日のうちに神経障害性(「Cuff」)動物で再現されることを示している。したがって、クレンブテロールの治療効果には、β2−アドレナリン受容体に対するその作用が関与している。
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ICI 118,551注射によっては影響されない。
【0070】
実施例9:治療:βアドレナリン受容体アゴニストであるバンブテロールは神経障害性異痛を緩和する。
図7のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるバンブテロール(0.5mg/kg、腹腔内)(塩酸バンブテロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号B8684)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)の最初の注射が、2週間の間、神経障害性(「Cuff」)マウスで異痛治療効果がないことを示している。
【0071】
また、対照(すなわち「Sham」)群のマウスも、かかるアゴニストの最初の投与によって影響されない。
図8のグラフは、β−アドレナリンアゴニストであるバンブテロール(0.5mg/kg、1日2回(朝と夕方))(塩酸バンブテロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号B8684)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0072】
対照(「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、バンブテロール注射によって影響されない。
これらのデータは、バンブテロールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0073】
実施例10:治療:β2−アドレナリン受容体アゴニストのフェノテロールは神経障害性異痛を緩和する。
図9のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるフェノテロール(0.7mg/kg、1日2回(朝と夕方))(臭化水素酸フェノテロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号F1016)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0074】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、フェノテロール注射によって影響されない。
これらのデータは、フェノテロールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0075】
実施例11:治療:β2−アドレナリン受容体アゴニストのホルモテロールは神経障害性異痛を緩和する。
図10のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるホルモテロール(0.5mg/kgおよび注射、1日2回(朝と夕方))(フマル酸ホルモテロール二水和物、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号F9552)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0076】
図11のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるホルモテロール(0.05mg/kg、腹腔内)の急性注射が、2週間の間、神経障害性(「Cuff」)マウスにおいて異痛治療効果がないことを示している。
【0077】
また、対照(すなわち「Sham」)群のマウスは、この用量でのかかるアゴニストの最初の投与によって影響されない。
図12のグラフは、0.05mg/kgまたは0.005mg/kgの用量のβ2−アドレナリンアゴニストのホルモテロールによる処理(一日二回(朝と夕方)注射)が、長期処理後に右足(神経障害性の足)の機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。実験群は、すべての対照(「Sham」)群は4匹のマウスから構成され、神経障害性(「Cuff」)群の5匹のマウスは0.05mg/kgまたは0.005mg/kgの用量を受け、神経障害性(「Cuff」)群の4匹のマウスは0.0005mg/kgの用量を受けている。
【0078】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ホルモテロール注射によって影響されない。
これらのデータは、ホルモテロールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0079】
実施例12:治療:β2−アドレナリン受容体アゴニストのサルブタモールは神経障害性異痛を緩和する。
図13のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるサルブタモール(2mg/kgおよび注射、1日2回(朝と夕方))(ヘミ硫酸サルブタモール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号S5013)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを緩和することを示している。
【0080】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、サルブタモール注射によって影響されない。
これらのデータは、サルブタモールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0081】
図14のグラフは、吸入によるβ2−アドレナリンアゴニストであるサルブタモールによる処理(1日2回(朝と夕方))(吸入器中の硫酸サルブタモール、たとえばVentolin(登録商標)の名前でGlaxoSmithKline社等の供給業者から入手可能)が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを緩和することを示している。この処理を実行するために、動物を吸入室(たとえばGlax
oSmithKline社等の供給業者から入手可能、Babyhaler(登録商標)吸入室、参照番号7072184)の中に個別に入れ、吸入室の主空気出口を封鎖した。加圧したVentolin(登録商標)キャニスタを吸入室に接続し、マウスの鼻口部が吸入器に接近している時に一度押すと、一投与セッション当たり100μg(すなわち200μg/日)のサルブタモールが吸入室へ送られる。その後、動物を5分間吸入室の中に配置し、取り出し、ケージに戻す。処理は、坐骨神経の周囲にカフを配置する手術の2週間後に開始した。吸入器が一投与セッション当たり一回押される2週間の処理後、処理を、吸入器が一投与セッション当たり三回押される9日間の処理に変更した。図14のグラフは、手術前、処理開始前、および処理の最後の日の結果に相当する。処理のための対照動物(未処理動物)は同じ手順に従ったが、サルブタモールの送達は無しとした。
これらのデータは、吸入によるサルブタモールの投与が、神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0082】
実施例13:治療:β2−アドレナリン受容体アゴニストのサルメテロールは神経障害性異痛を緩和する。
図15のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるサルメテロール(1mg/kg、1日2回の注射(朝と夕方))(キシナホ酸サルメテロール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号S5068)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0083】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、サルメテロール注射によって影響されない。
これらのデータは、サルメテロールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0084】
図16のグラフは、吸入(1日2回(朝と夕方))(吸入器中のキシナホ酸サルメテロール、たとえばSerevent(登録商標)の名前でGlaxoSmithKline社等の供給業者から入手可能)によるβ2−アドレナリンアゴニストであるサルメテロールによる処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを緩和することを示している。この治療を実行するために、動物を吸入室(たとえばGlaxoSmithKline社等の供給業者から入手可能、Babyhaler(登録商標)吸入室、参照番号7072184)の中に個別に入れ、急入室の主空気出口を封鎖した。加圧したSerevent(登録商標)キャニスタを吸入室に接続し、マウスの鼻口部が吸入器に接近している時に二度押すと、一投与セッション当たり50μg(すなわち100μg/日)のサルメテロールが吸入室へ送られる。その後、動物を5分間吸入室の中に配置し、取り出し、ケージに戻す。処理は、坐骨神経の周囲にカフを配置する手術の2週間後に開始した。吸入器が一投与セッション当たり二回押される2週間の処理後、処理を、吸入器が一投与セッション当たり四回押される9日間の処理に変更した。図14のグラフは、手術前、処理開始前、および処理の最後の日の結果に相当する。処理のための対照動物(未処理動物)は同じ手順に従ったが、サルメテロールの送達は無しとした。
【0085】
これらのデータは、吸入によるサルメテロールの投与が、神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0086】
実施例14:治療:β2−アドレナリン受容体アゴニストのテルブタリンは神経障害性異痛を緩和する。
図17のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるテルブタリン(5mg/kg、1日2回の注射(朝と夕方))(ヘミ硫酸テルブタリン、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号T2528)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを
含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に完全に機械的アロディニアを抑制することを示している。
【0087】
図18のグラフは、長期処理後にβ2−アドレナリンアゴニストのテルブタリン(0.5mg/kg、1日2回注射(朝と夕方))による処理が右足(「Cuff」を設ける手術を受けた足)の機械的アロディニアを完全に抑制するが、非神経障害性左足(手術を受けなかった足)の反応には特異的に影響しないことを示している。
【0088】
図19のグラフは、0.5mg/kg(注射、1日2回(朝と夕方))の用量のテルブタリンで3週間処理した後、テルブタリンとβ2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551(「ICI」、2mg/kg、腹腔内、実施例5に記載)が同時投与された場合、これにより神経障害性(「Cuff」)動物で異痛が数日のうちに再現することを示している。グラフは、テルブタリンによる3週間の処理、およびICI 118,551による4日間の同時処理後の動物の侵害受容閾値を示している。したがって、テルブタリンの治療効果は、β2−アドレナリン受容体に対するその作用が明らかに関与する。
【0089】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ICI 118,551注射によっては影響されない。
図20のグラフは、0.25mg/kgまたは0.125mg/kg(一日二回注射(朝と夕方))の用量のβ2−アドレナリンアゴニストのテルブタリンによる処理が、長期処理後に右足(神経障害性足)の機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0090】
図21のグラフは、テルブタリンの異痛治療作用の用量反応研究に関するデータを要約している。グラフは、侵害受容閾値の変化を、実験開始時の感度の%として示している。データは、動物の処理の第3週目になされた測定に関して平均したものである。プラセボ(食塩水、用量0として示す)で処理した動物の機械的感度は、実験の間安定のままである。神経障害性(「Cuff」)動物は、カフを備えた右足の機械的アロディニアを経験する。0.125mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kgまたは5mg/kgの用量のβ2−アドレナリンアゴニストであるテルブタリンによる神経障害性動物の長期処理(3週間)により、非神経障害性左足の機械的感度に影響せず、神経障害性右足の異痛が抑制される。これらの同じ処理は対照(「Sham」)動物には影響しない。比較のため、抗鬱薬であるノルトリプチリン(「Nor」、5mg/kg、1日2回(朝と夕方))の効果も示す。抗鬱薬ノルトリプチリンも、対照動物の感度を損なわない。使用したモデルと試験は実施例1に記載したものである。
【0091】
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、テルブタリン注射によっては影響されない。
これらのデータは、テルブタリンの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0092】
図22のグラフは、皮膚への適用により投与されたβアドレナリン受容体アゴニストであるテルブタリンによる処理(0.1mlのゲル、1日2回適用(朝と夕方))(5% エタノールと95% 水に希釈した5%ヒドロキシエチルセルロースを含むゲル中、2.5mg/mlのヘミ硫酸テルブタリン。ヒドロキシエチルセルロースはたとえばFluka(カタログ番号54290)等の供給業者から入手可能)が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスにおける機械的アロディニアを緩和することを示している。毛がゲルの浸透を阻害するのを防ぐように動物の背中の毛を剃った。動物の目が覚めている間にゲルを背中の腰椎の高さに配置し、製品が浸透するまで置いたゲルを優しくマッサージ
した。処理のための対照動物は同じ手順に従ったが、β2−アドレナリンアゴニストをゲルに入れなかった。テルブタリンによる処理を、坐骨神経の周囲にカフを配置する手術の8日後に開始したが、他の実験パラメータは実施例1で開示されたものと類似のものである。
【0093】
これらのデータは、皮膚への適用によるテルブタリンの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
図23のグラフは、10mgのヘミ硫酸テルブタリンを含む皮下インプラント(シリコーンチューブインプラント、たとえばSedat(カタログ番号602 235)等の供給業者から入手可能)の挿入により送達されたβ2−アドレナリンアゴニストテルブタリンによる処理が、神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを緩和することを示している。インプラントは、たとえばパッチ等の投与の複数のモードからなる連続投与をモデル化することを可能にする。シリコーンチューブは、1.4732mmの内径と1.9558mmの外径を有し、1.5cm長の部分に切断される。一端をシリコーン接着剤(Silastic(登録商標) Medical Adhesive Silicone Type A、たとえばDow Corning(カタログ番号891)等の供給業者から入手可能)で閉鎖する。乾燥後、切断部分を各々、10mgのヘミ硫酸テルブタリンで充填し、粉末は軽く払い落とし、部分を約1cmの最終長さに再び切断し、シリコーン接着剤で閉鎖する。インプラントはハロタンガス麻酔下でマウスへ埋め込まれる。麻酔下で、動物の首の襟足と背中の上部を剃毛し、首の襟足の上部を切開し、カニューレガイドを使用してインプラントを皮下に滑り込ませる。処理のための対照動物には、同じ手順を施すが、空のインプラントを挿入する。インプラントは実施例1に記載された坐骨神経の周囲にカフを配置する手術後14日目に挿入した。
【0094】
これらのデータは、テルブタリンの連続投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
【0095】
実施例15:β2−アドレナリン受容体アゴニストのフェノテロール、サルブタモール、サルメテロールおよびテルブタリンの急性注射(最初の注射)の効果の欠如
図24のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるフェノテロール(0.7mg/kg、腹腔内)、サルブタモール(2mg/kg、腹腔内)、サルメテロール(1mg/kg、腹腔内)またはテルブタリン(5mg/kg、腹腔内)の上記の実施例に記載したような最初の注射が、2週間、神経障害性(「Cuff」)マウスの機械的アロディニアに対する影響はないことを示している。
また、対照(すなわち「Sham」)群のマウスは、これらのアゴニストの最初の投与によって影響されない。
【0096】
実施例16:治療:要約、神経障害性動物におけるβ−アドレナリンのアゴニストの効果
図25のグラフは、侵害受容閾値の変化を、実験開始時の感度の%として示している。データは、動物の処理の第3週目になされた測定に関して平均したものである。
プラセボ(食塩水)で処理した神経障害性(「Cuff」)動物では、侵害受容閾値の大幅な減少を維持し、これは異痛(痛み)の存在を示している。
β−アドレナリンアゴニストであるバンブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール(0.5mg/kg)、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン(5mg/kg)、イソプレナリン、リトドリン、メタプロテレノールまたはプロカテロールによる神経障害性動物の長期処理(14−21日)は、上記実施例で記載したように、すべてはこの異痛を緩和する。
【0097】
比較のため、抗鬱薬ノルトリプチリンの効果も示す。処理用量および態様は、実施例2
、7、9〜14および20に上述した通りである。使用されるモデルおよび試験は実施例1に記載したものである。
【0098】
ここで示されたデータは、単独投与されたβ−アドレナリンまたはβ2−アドレナリンアゴニストによる長期処理が、神経障害性異痛を緩和するのを可能にすることを初めて実証している。
【0099】
実施例17:要約、対照動物におけるβ−アドレナリンのアゴニストの効果
図26のグラフは、侵害受容閾値の変化を、実験開始時の感度の%として示している。データは、動物の処理の第3週目になされた測定に関して平均したものである。
【0100】
対照(「Cuff」)動物はプラセボ(食塩水)で処理される。かかる動物の機械的感度は実験の間安定のままである。
β−アドレナリンアゴニストであるバンブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール(0.5mg/kg)、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリン(5mg/kg)、イソプレナリン、リトドリン、メタプロテレノールまたはプロカテロールによる神経障害性動物の長期処理(14−21日)は、対照動物には影響しない。
【0101】
比較のため、抗鬱薬ノルトリプチリンの効果も示す。抗鬱薬ノルトリプチリンも、対照動物の感度を損なわない。治療用量および態様は、実施例2、7、9〜14および20に上述した通りである。使用されるモデルおよび試験は実施例1に記載したものである。
これらのデータは、単独投与されたβ−アドレナリンまたはβ2−アドレナリンアゴニストによる長期処理が、対照動物の感度に影響しないことを示している。
【0102】
実施例18:バンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、およびサルメテロールの作用に対するβ2−アドレナリン受容体のブロックする効果
図27のグラフは、β−アドレナリンのアゴニストであるバンブテロール、フェノテロール、ホルモテロールまたはサルメテロールによる3週間の処理後に、これらのアゴニストおよびβ2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551(「ICI」、2mg/kg、腹腔内)が同時投与された場合、これにより神経障害性(「Cuff」)マウスで異痛が数日のうちに再現されることを示している。グラフは、アゴニストによる3週間の処理、およびICI 118,551による3〜6日間の同時処理後の動物の侵害受容閾値を示している。治療用量および態様は、実施例5、9〜11、および13に上述した通りである。使用されるモデルおよび試験は実施例1に記載したものである。
【0103】
したがって、これらのアゴニストの治療効果には、β2−アドレナリン受容体に対するそれらアゴニストの作用が明らかに関与している。
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ICI 118,551注射によって影響されない。
【0104】
実施例19:サルブタモールの作用に対するβ2−アドレナリン受容体ブロックの効果
図28のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるサルブタモールで3週間処理した後、このアゴニストとβ2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551が同時投与された場合、これにより異痛が数日のうちに神経障害性(「Cuff」)マウスで再現することを示している。左側のグラフは、サルブタモールによる3週間の処理後および腹腔内(2mg/kg)に同時注射されたICI 118,551による3日間の同時処理後の、動物の侵害受容閾値を示している。右側のグラフは、サルブタモールによる少なくとも3週間の処理後およびサルブタモールの各注射(2mg/kg、腹腔内)前にくも膜下腔内に投与されたICI 118,551による同時処理の2回の注射後
の、動物の侵害受容の閾値を示している。治療用量および態様は、腹腔内注射に関して実施例5および12に上述した通りであり、くも膜下腔内注射の手順の説明は以下の通りである。使用されるモデルおよび試験は実施例1に記載したものである。したがって、サルブタモールの治療効果には、β2−アドレナリン受容体に対するその作用が明らかに関与している。
【0105】
くも膜下腔内注射の結果は、サルブタモールの治療効果にとって脊髄β2−アドレナリン受容体および/または後根神経節のβ2−アドレナリン受容体が重要であることを示している。
【0106】
β2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551のくも膜下腔内(i.t.)注射の手順(3μg/10μl)は、Inoueら(Nature Medicine 2004, 10:712-718 (12))により記載されたプロトコルに従ってハロタンガス麻酔下で行なわれる。これらのくも膜下腔内注射は、サルブタモール(2mg/kg、腹腔内)の腹膜腔内注射の直前に行なわれる。50μl Hamilton注射器に接続された27ゲージ注射針を、L5とL6の脊椎骨間でくも膜下腔へ挿入する。針の正確な配置は、マウスの尾部の反射運動の存在により確認される。マウスはこの同時処理手順前に予め試験され、機械的侵害受容感度について翌朝再試験される前に、2回(朝および対応する夕方)同時処理する。
【0107】
ICI 118,551注射が腹腔内かくも膜下腔内かにかかわらず、対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ICI 118,551注射によって影響されない。
【0108】
実施例20:β−またはβ2−アドレナリン受容体の刺激の効果:他の試験
上記の実施例に記載された条件下で、以下の分子を試験する:
−ビトルテロール(たとえば、0.05から5mg/kgの間、1日2回、腹腔内)、
−イソプレナリンまたはイソプロテレノール(たとえば、0.05から5mg/kgの間、1日2回、腹腔内)、
−レバルブテロール(たとえば、0.05から5mg/kgの間、1日2回、腹腔内)、
−メタプロテレノール(たとえば、0.05から5mg/kgの間、1日2回、腹腔内)、
−ピルブテロール(たとえば、0.25から50mg/kgの間、1日2回、腹腔内)、
−プロカテロール(たとえば、0.05から5mg/kgの間、1日2回、腹腔内)、
−レプロテロール(たとえば、0.05から5mg/kgの間、1日2回、腹腔内)、
−リトドリン(たとえば、0.25から50mg/kgの間、1日2回、腹腔内、
−ツロブテロール(たとえば、0.05から5mg/kgの間、1日2回、腹腔内)。
【0109】
図29のグラフは、β−アドレナリンアゴニストであるイソプレナリン(0.5mg/kg、1日2回注射(朝と夕方))(DL−塩化イソプロテレノール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号I5627)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0110】
これらのデータは、イソプレナリンの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
図30のグラフはβ−アドレナリンアゴニストイソプレナリンで3週間処理した後、β2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551(「ICI」、2mg/kg、腹腔内)が同時投与された場合、これにより神経障害性(「Cuff」)マウスで
異痛が数日のうちに再現することを示している。グラフは、イソプレナリンによる3週間の処理、およびICI 118,551による4日間の同時処理後の動物の侵害受容閾値を示している。使用したモデルと試験は実施例1に記載したものである。
【0111】
したがって、このアゴニストの治療効果には、β2−アドレナリン受容体に対するかかるアゴニストの作用が明らかに関与している。
対照(すなわち「Sham」)群のマウスの侵害受容感度は、ICI 118,551注射によって影響されない。
【0112】
図31のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるリトドリン(10mg/kg、1日2回注射(朝と夕方))(塩酸リトドリン、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号R0758)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含み、かつ0.3% アスコルビン酸酸化防止剤を含む塩類溶液で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0113】
これらのデータは、リトドリンの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
図32のグラフは、β−アドレナリンアゴニストであるリトドリンで3週間処理した後、β2−アドレナリン受容体アンタゴニストICI 118,551(「ICI」、2mg/kg、腹腔内)が同時投与された場合、これにより神経障害性(「Cuff」)マウスで異痛が数日のうちに再現されることを示している。グラフは、リトドリンによる3週間の処理、およびICI 118,551による4日間の同時処理後の動物の侵害受容閾値を示している。使用したモデルと試験は実施例1に記載したものである。
【0114】
したがって、このアゴニストの治療効果には、β2−アドレナリン受容体に対するかかるアゴニストの作用が明らかに関与している。
図33のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるメタプロテレノール(1mg/kg、1日2回の注射(朝と夕方))(ヘミ硫酸メタプロテレノール、たとえばSigma−Aldrich(カタログ番号M2398)等の供給業者から入手可能、0.9%
NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0115】
これらのデータは、メタプロテレノールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
図34のグラフは、皮膚への適用により投与されたβ2−アドレナリンアゴニストであるメタプロテレノールによる処理(0.1mlのゲル、1日2回適用(朝と夕方))(5% エタノールと95% 水に希釈した5%ヒドロキシエチルセルロースを含むゲル中、1mg/mlのヘミ硫酸メタプロテレノール。ヒドロキシエチルセルロースはたとえばFluka(カタログ番号54290)等の供給業者から入手可能)が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスにおける機械的アロディニアを緩和することを示している。毛がゲルの浸透を阻害するのを防ぐように動物の背中の毛を剃った。動物の目が覚めている間にゲルを背中の腰椎の高さに配置し、製品が浸透するまで置いたゲルを優しくマッサージした。処理のための対照動物は同じ手順に従ったが、β2−アドレナリンアゴニストをゲルに入れなかった。メタプロテレノールによる処理を、坐骨神経の周囲にカフを配置する手術の8日後に開始したが、他の実験パラメータは実施例1で開示されたものと類似のものである。
【0116】
これらのデータは、皮膚への適用によるメタプロテレノールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
図35のグラフは、β2−アドレナリンアゴニストであるプロカテロール(0.8mg/kg、1日2回注射(朝と夕方))(塩酸プロカテロール、たとえばBiotrend
AG(カタログ番号BN0432)等の供給業者から入手可能、0.9% NaClを含む食塩水で希釈)による処理が、長期処理後に神経障害性(「Cuff」)マウスでの機械的アロディニアを完全に抑制することを示している。
【0117】
これらのデータは、プロカテロールの投与が神経障害性疼痛、特に神経障害性異痛を緩和可能であることを初めて示している。
参考文献一覧表
【0118】
【表1】

【0119】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害性異痛の治療に使用される薬物の生産のための有効成分としてのβ−アドレナリンアゴニストの使用方法。
【請求項2】
前記神経障害性異痛は慢性神経障害性異痛である請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記β−アドレナリンアゴニストが、バンブテロール、ビトルテロール、クレンブテロール、フェノテロール、ホルモテロール、イソプロテレノール、レバルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、リトドリン、サルブタモール、サルメテロール、テルブタリンおよびツロブテロールからなる群から選択される請求項1または2に記載の使用方法。
【請求項4】
前記β−アドレナリンアゴニストは長期投与される請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項5】
前記β−アドレナリンアゴニストは1日に一回、二回、または三回投与される請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項6】
前記β−アドレナリンアゴニストは0.01〜20mg/日の間の用量で投与される請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項7】
前記β−アドレナリンアゴニストは0.05〜15mg/日の間の用量で投与される請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項8】
前記β−アドレナリンアゴニストは0.05〜10mg/日の間の用量で投与される請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項9】
前記β−アドレナリンアゴニストは0.1〜5mg/日の間の用量で投与される請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項10】
前記薬物はヒトに使用されるものである請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項11】
前記薬物は獣に使用されるものである請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項12】
前記薬物は、注射可能な形式、シロップ、経口液剤、錠剤、分解錠剤、フィルムコーティング錠、分解フィルムコーティング錠、胃抵抗性錠剤、コーティング錠、分散錠剤、チュアブル錠、ブリスターパック、ゲルカプセル、発泡生成物、分解発泡錠、経口液剤用粉末、経口懸濁液用顆粒剤、吸入用懸濁液、吸入用粉末剤、ネブライザによる吸入用溶液、ゲルカプセルに入れた吸入用粉末剤、坐薬、目薬、クリーム、軟膏、ゲル、噴霧剤、パッチ、トローチ剤、静脈内潅流用溶液、硬膜外投与用溶液、関節内投与用溶液、関節周囲投与用溶液、末梢投与用溶液、局所投与用溶液、傍脊椎投与用溶液、もしくは脊髄内投与用溶液または湿潤用溶液から選択される形式である請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2011−509981(P2011−509981A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542662(P2010−542662)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000045
【国際公開番号】WO2009/112674
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(505045610)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ スィヤンティフィック(セーエヌエルエス) (41)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【Fターム(参考)】