説明

移動体の障害物検出装置、及びプログラム

【課題】より安価で、より高精度に障害物を検出する。
【解決手段】移動体としての車両12の側方に存在する検出対象物までの距離を計測するように、車両12に設けられた第1の距離計測手段としての前側距離センサ16と、その側方と同じ側に存在する検出対象物までの距離を計測するように、車両12の前側距離センサ16が設けられたAの位置より車両12の移動方向後方に所定距離L離間したBの位置に設けられた第2の距離計測手段としての後側距離センサ18と、前側距離センサ16により計測された距離Dと、前側距離センサ16により距離を計測した時点より所定時間(例えば、T=(L/V))遅延した後に後側距離センサ18により計測された距離Dとの差が、所定値K以上か否かを判断して、車両12と併走する障害物32が存在するか否かを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の障害物検出装置及びプログラムに係り、特に、より高精度に障害物を検出することができ、かつ、より安価となる移動体の障害物検出装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラを用いて自車両周辺の障害物(例えば、他の車両や二輪車)を撮影し、撮影した画像の画像データに対して、画像に含まれる障害物を認識するためのパターンマッチング処理(画像認識処理)を施して障害物を認識し、認識された障害物が自車両の所定範囲内の近傍に位置する場合には、警報装置を動作させて、運転者に危険であることを報知するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3036306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、データ量が多い画像データに対して、パターンマッチング処理を施すため、高速に処理するためには、高価なハードウェアが必要となる。また、障害物、例えば二輪車についても、その外観は千差万別であり、パターンマッチング処理によっても、容易に認識(検出)することができない。そのため、認識率が高いとは言えず、障害物を検出する精度の向上が望まれている。
【0004】
本発明は上述した問題点を解決するために成されたものであり、より高精度に障害物を検出することができ、かつ、より安価となる移動体の障害物検出装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の移動体の障害物検出装置は、移動体の側方に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体に設けられた第1の距離計測手段と、前記側方と同じ側に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体の前記第1の距離計測手段が設けられた位置より移動体の移動方向後方に所定距離離間した位置に設けられた第2の距離計測手段と、前記第1の距離計測手段により計測された距離と、前記第1の距離計測手段により距離を計測した時点より所定時間遅延した後に前記第2の距離計測手段により計測された距離との差が、所定値以上か否かを判断して、前記移動体と併走する障害物が存在するか否かを検出する障害物検出手段とを含んで構成されている。
【0006】
本発明によれば、移動体に設けられた第1の距離計測手段により計測された距離と、第1の距離計測手段が設けられた位置より移動体の移動方向後方に所定距離離間した位置に設けられた第2の距離計測手段により、第1の距離計測手段により距離を計測した時点より所定時間遅延した後に計測された距離との差が、所定値以上か否かを判断して、移動体と併走する障害物が存在するか否かを検出する。これにより、第1の距離計測手段及び第2の距離計測手段から得られた距離を比較して障害物が存在するか否かを検出しているので、障害物の外観が千差万別でありパターンマッチング処理によって容易に障害物を検出できない場合と比較して、より確実に障害物を検出することができる。また、このような第1の距離計測手段及び第2の距離計測手段として、例えばミリ波レーダなどの比較的安価な距離センサを用いることができる。すなわち、本発明によれば、より高精度に障害物を検出することができ、かつ、より安価にすることができる。
【0007】
また、前記所定時間を、前記移動体が前記所定距離移動するのに要する時間とするように定めてもよい。これにより、第1の距離計測手段により距離を計測した際の当該第1の距離計測手段の位置と、第2の距離計測手段により距離を計測した際の当該第2の距離計測手段の位置とをほぼ同一の位置とすることができ、障害物の検出をより高精度に行うことができる。
【0008】
また、前記移動体と併走する障害物が存在することが検出されたときに警報を発する警報手段を更に設けるようにしてもよい。これにより、例えば、移動体のドライバ(運転手)に対して、移動体と併走する障害物の存在を知らせることができる。
【0009】
また、前記移動体と併走する障害物を、二輪車とすることができる。
【0010】
更に、上記目的を達成するために、本発明のプログラムは、コンピュータを、移動体の側方に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体に設けられた第1の距離計測手段により計測された距離と、前記側方と同じ側に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体の前記第1の距離計測手段が設けられた位置より移動体の移動方向後方に所定距離離間した位置に設けられた第2の距離計測手段により、前記第1の距離計測手段により距離を計測した時点より所定時間遅延した後に計測された距離との差が、所定値以上か否かを判断して、前記移動体と併走する障害物が存在するか否かを検出する障害物検出手段として機能させる。
【0011】
本発明によれば、移動体に設けられた第1の距離計測手段により計測された距離と、第1の距離計測手段が設けられた位置より移動体の移動方向後方に所定距離離間した位置に設けられた第2の距離計測手段により、第1の距離計測手段により距離を計測した時点より所定時間遅延した後に計測された距離との差が、所定値以上か否かを判断して、移動体と併走する障害物が存在するか否かを検出する。これにより、第1の距離計測手段及び第2の距離計測手段から得られた距離を比較して障害物が存在するか否かを検出しているので、障害物の外観が千差万別でありパターンマッチング処理によって容易に障害物を検出できない場合と比較して、より確実に障害物を検出することができる。また、このような第1の距離計測手段及び第2の距離計測手段として、例えばミリ波レーダなどの比較的安価な距離センサを用いることができる。すなわち、本発明によれば、より高精度に障害物を検出することができ、かつ、より安価にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る移動体の障害物検出装置、及びプログラムによれば、より高精度に障害物を検出することができ、かつ、より安価となる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を移動体としての車両に適用した場合の障害物検出装置の各実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る障害物検出装置10は、移動体としての車両12に搭載されている。障害物検出装置10は、制御装置14、前側距離センサ16、後側距離センサ18、ウインカースイッチ20、車速センサ22、及び警報装置24を備えている。なお、車両12は、ドライバ(運転手)26によって運転される。
【0015】
前側距離センサ16には、検出対象物までの距離を計測することが可能なセンサ、例えばミリ波レーダセンサが用いられる。前側距離センサ16は、前側距離センサ16から車両12の側方に存在する検出対象物までの距離を計測することが可能なように車両12に設けられており、前側距離センサ16から検出対象物までの距離を示す検出信号を出力する。なお、図1の例では、車両12のAの位置に前側距離センサ16が設けられている。このAの位置は、車両12の側方に存在する検出対象物までの距離を計測することが可能な位置である。
【0016】
後側距離センサ18には、前側距離センサ16と同様に、検出対象物までの距離を計測することが可能なセンサ、例えば、ミリ波レーダセンサが用いられる。後側距離センサ18は、後側距離センサ18から、前側距離センサ16によって距離が計測される検出対象物が存在する車両12の側方と同じ側に存在する検出対象物までの距離を計測することが可能なように、前側距離センサ16が設けられたAの位置より車両12の移動方向後方に、進行方向上で所定距離Lだけ離間したBの位置に設けられており、後側距離センサ18から検出対象物までの距離を示す検出信号を出力する。このBの位置は、車両12の側方に存在する検出対象物までの距離を計測することが可能な位置である。
【0017】
なお、前側距離センサ16は、本発明の第1の距離計測手段に対応し、後側距離センサ18は、本発明の第2の距離計測手段に対応する。また、本実施の形態では、車両12の進行方向の左側の側方に存在する検出対象物までの距離を計測することが可能なように、進行方向(移動方向)と同一の方向に前側距離センサ16及び後側距離センサ18が並ぶように車両12に設けられている。
【0018】
ウインカースイッチ20は、図示しない方向指示器操作部(ウインカーレバー)の操作方向を検出するためのスイッチであり、左ウインカースイッチ20aと右ウインカースイッチ20bとを含んで構成されている。この左ウインカースイッチ20aは、車両12の左ウインカー(図示しない)を点滅させるようにドライバ26が方向指示操作部を操作したときにオンするスイッチであり、この右ウインカースイッチ20bは、車両12の右ウインカー(図示しない)を点滅させるようにドライバ26が方向指示操作部を操作したときにオンするスイッチである。すなわち、左ウインカースイッチ20aは、車両12の左ウインカーを点滅させるようにドライバ26が方向指示操作部を操作したときに、オン状態の信号を出力し、右ウインカースイッチ20bは、車両12の右ウインカーを点滅させるようにドライバ26が方向指示操作部を操作したときに、オン状態の信号を出力する。また、本実施の形態では、車両12の車線変更が終了したことや車両12の左折及び右折が完了したことを、ステアリング(図示しない)の操舵角を検出する操舵角センサ(図示しない)からの検出信号等に基づいて制御装置14が検出した場合には、制御装置14が方向指示操作部を通常の位置に戻すように制御する。これにより、車両12の車線変更が終了したことや車両12の左折及び右折が完了した場合には、左ウインカースイッチ20a及び右ウインカースイッチ20bからは、通常の状態(方向指示操作部が操作されていない状態)に戻って、オフ状態の信号が出力される。
【0019】
車速センサ22は、車両12の速度を検出するために車両12のタイヤ(図示せず)の回転数を検出可能な位置に設けられており、単位時間当たりのタイヤの回転数を検出することにより車両12の速度を検出して、車両12の速度を示す車速パルス信号を出力する。
【0020】
警報装置24は、制御装置14の制御に応じて警報を発する(報知する)。なお、警報装置24は、本発明の警報手段に対応する。
【0021】
制御装置14は、ROM(Read Only Memory)14a、HDD(Hard Disk Drive)14b、CPU(Central Processing Unit)14c、RAM(Random Access Memory)14d、及びI/O(入出力)ポート14eを備えている。これらROM14a、HDD14b、CPU14c、RAM14d、及びI/Oポート14eは互いにバス14fで接続されている。
【0022】
記憶媒体としてのROM14aには、OS等の基本プログラムが記憶されている。
【0023】
記憶媒体としてのHDD14bには、詳細を以下で説明する障害物検出処理の処理ルーチンを実行するためのプログラムが記憶されている。また、HDD14bには、前側距離センサ16が設けられたAの位置と、後側距離センサ18が設けられたBの位置との進行方向上の距離Lが予め記憶されている。
【0024】
CPU14cは、プログラムをROM14a及びHDD14bから読み出して実行する。
【0025】
RAM14dには、各種データが一時的に記憶される。
【0026】
I/Oポート14eには、上述した前側距離センサ16、後側距離センサ18、ウインカースイッチ20の左ウインカースイッチ20a、右ウインカースイッチ20b、車速センサ22、及び警報装置24が接続されている。
【0027】
制御装置14を以下で詳細を説明する障害物検出処理に従って機能ブロックで表すと、図3に示すように、障害物検出手段28で表すことができる。
【0028】
次に、制御装置14のCPU14cが実行する障害物検出処理の処理ルーチンについて図4を用いて説明する。なお、本実施の形態において、障害物検出処理は、ドライバ26が車両12の左ウインカーを点滅させるようにドライバ26が方向指示操作部を操作したことにより、左ウインカースイッチ20aからオン状態の信号をCPU14cが受信した場合に実行される。
【0029】
まず、ステップ100で、時間を計測するためのタイマーによる時間の計測をスタート(開始)させる。これにより、時間の計測が開始される。なお、このようなタイマーは周知の技術であり、本実施の形態では、例えば、1秒単位で時間を計測するためのタイマーを用いる。
【0030】
次のステップ102では、前側距離センサ16から検出対象物までの距離を示す検出信号を取り込む。なお、この検出信号に基づいて前側距離センサ16から検出対象物までの距離を演算することにより、前側距離センサ16から検出対象物までの距離を計測することが可能となる。
【0031】
次のステップ104では、上記ステップ102で取り込んだ検出信号に基づいて、図5(A)及び図5(B)に示すように、前側距離センサ16から検出対象物までの距離Dを演算する。ここで、検出対象物として、例えば、同図(図5(A)及び図5(B))に示すような、車両12の側方に存在する道路脇の壁、電柱、植え込みなどの構造物30が考えられる。すなわち、ステップ104では、前側距離センサ16から構造物30までの距離Dを演算することができる。
【0032】
次のステップ106では、車速センサ22から車速パルス信号を取り込む。なお、この車速パルス信号に基づいて、車両12の車速Vを演算することができる。
【0033】
次のステップ108では、上記ステップ106で取り込んだ車速パルス信号に基づいて、車両12の車速Vを演算する。
【0034】
次のステップ110では、下記の式(1)に示すように、検出遅延時間Tを演算する。
【0035】
【数1】

ここで、
L:HDD14bから読み込んだ、前側距離センサ16が設けられたAの位置と、後側距離センサ18が設けられたBの位置との進行方向上の距離
V:上記ステップ108で演算された車速
である。
【0036】
なお、式(1)によって演算された検出遅延時間Tは、車両12の加速度aが0であり、車両12が進行方向(この場合には前方方向)に直進している場合の車両12が進行方向に所定距離L移動するのに要する時間の理論値である。従って、車両12の加速度aが0でない場合には、この加速度aを加味して、車両12が所定距離L移動するのに要する時間を演算し、演算した時間を検出遅延時間Tとしてもよい。
【0037】
次のステップ112では、上記ステップ102で前側距離センサ16から検出信号を取り込んでから現在までの時間Tを、タイマーによって計測されている時間から求め、この時間Tと、上記ステップ110で演算された検出遅延時間Tとを比較し、時間Tが検出遅延時間Tと同一(T=T)になったか否かを判定する。このような判定を行うことにより、上記ステップ102及び104での処理によって前側距離センサ16によって距離Dを計測した際の前側距離センサ16の位置と同一の位置(または、車速Vが多少変化した場合には、ほぼ同一の位置)に、後側距離センサ18が位置しているか否かを判定することができる。
【0038】
なお、ステップ112では、時間Tが検出遅延時間Tとほぼ同一(T−δ<T<T+δ)になったか否かを判定するようにしてもよい。このような判定を行うことにより、上記ステップ102及び104での処理によって前側距離センサ16によって距離Dを計測した際の前側距離センサ16の位置とほぼ同一の位置(すなわち、距離Dを計測した際の前側距離センサ16の位置から所定範囲内の位置)に、後側距離センサ18が位置しているか否かを判定することができる。ここで、δは、本障害物検出処理が適切に行われる範囲内で予め定められた値である。
【0039】
ステップ112で、時間Tが検出遅延時間Tと同一(または、ほぼ同一)になったと判定されるまでステップ112の判定処理を繰返し、ステップ112で時間Tが検出遅延時間Tと同一(または、ほぼ同一)になったと判定された場合には、次のステップ114へ進む。
【0040】
ステップ114では、後側距離センサ18から検出対象物までの距離を示す検出信号を取り込む。なお、この検出信号に基づいて後側距離センサ18から検出対象物までの距離を演算することにより、後側距離センサ18から検出対象物までの距離を計測することが可能となる。
【0041】
次のステップ116では、上記ステップ114で取り込んだ検出信号に基づいて、図5(A)及び図5(B)に示すように、後側距離センサ18から検出対象物までの距離Dを演算する。ここで、検出対象物として、例えば、車両12と併走する障害物が存在しない場合には、図5(A)に示すような、上記ステップ102及び104での処理によって前側距離センサ16によって距離Dが計測された道路脇の壁、電柱、植え込みなどの構造物30が考えられる。また、検出対象物として、例えば、道路を走行中の車両12と併走する障害物が存在する場合には、図5(B)に示すような、車両12と併走する障害物32(図5(B)の例では、二輪車)が考えられる。
【0042】
すなわち、ステップ116では、車両12と併走する障害物が存在しない場合には、前側距離センサ16から構造物30までの距離Dが演算され、車両12と併走する障害物が存在する場合には、併走する障害物までの距離Dが演算される。
【0043】
次のステップ118では、上記ステップ104で演算された距離Dと上記ステップ116で演算された距離Dとの差の絶対値の大きさが、所定の閾値(所定値)K(>0)以上であるか否かを判定する。このような判定により、車両12と併走する障害物が存在するか否かを検出することができる。なお、所定値Kは、実験的に、まず、車両12の周辺に併走する障害物が存在しない場合において、道路を走行中の車両12と構造物30との距離の平均値Dを求め、次に、道路を走行中の車両12の周辺に併走する障害物、例えば二輪車が存在する場合において、車両12と障害物との距離の平均値Dを求めて、このDとDとの差の絶対値を演算し、演算されたDとDとの差の絶対値を所定値Kとして予め設定しておけばよい。
【0044】
ステップ118で、距離Dと距離Dとの差の絶対値の大きさが所定値K以上であると判定された場合には、図5(B)に示すように、道路を走行中の車両12の周辺に障害物32が存在することが検出されたと判断して、次のステップ120へ進む。一方、ステップ118で、距離Dと距離Dとの差の絶対値の大きさが所定値K未満であると判定された場合には、図5(A)に示すように、道路を走行中の車両12の周辺に障害物32が存在しないことが検出されたと判断して、ステップ122へ進む。
【0045】
ステップ120では、警報を発する(報知する)ように、警報装置24を制御する。これにより、警報装置24は警報を発し、車両12のドライバ26に対して、車両12と併走する障害物32の存在を知らせることができる。
【0046】
次のステップ122では、左ウインカースイッチ20aからの検出信号を取り込む。
【0047】
次のステップ124では、上記ステップ122で取り込んだ検出信号がオフ状態であるか否かを判定することにより、車両12の周辺に併走する障害物32が存在するか否かを検出する必要性を有する状況であるか否かを判定する。
【0048】
ステップ124で、上記ステップ122で取り込んだ検出信号がオフ状態でない(すなわち、オン状態である)と判定された場合には、車両12の周辺に併走する障害物32が存在するか否かを検出する必要性を有する状況であると判断して、上記ステップ102へ戻り、以降の処理を再び繰り返す。
【0049】
一方、ステップ124で、上記ステップ122で取り込んだ検出信号がオフ状態であると判定された場合には、車両12の周辺に併走する障害物32が存在するか否かを検出する必要性を有する状況でない(すなわち、必要性がない状況である)と判断して、障害物検出処理を終了する。
【0050】
なお、ステップ100〜124は障害物検出手段28で実行される。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係る障害物検出装置10によれば、移動体としての車両12の側方に存在する検出対象物までの距離を計測するように、車両12に設けられた第1の距離計測手段としての前側距離センサ16と、その側方と同じ側に存在する検出対象物までの距離を計測するように、車両12の前側距離センサ16が設けられたAの位置より車両12の移動方向後方に所定距離L離間したBの位置に設けられた第2の距離計測手段としての後側距離センサ18と、前側距離センサ16により計測された距離Dと、前側距離センサ16により距離を計測した時点より所定時間(本実施の形態では、例えば、T=(L/V))遅延した後に後側距離センサ18により計測された距離Dとの差が、所定値K以上か否かを判断して、車両12と併走する障害物32が存在するか否かを検出する。
【0052】
本実施の形態に係る障害物検出装置10によれば、車両12に設けられた前側距離センサ16により計測された距離Dと、前側距離センサ16が設けられたAの位置より車両12の移動方向後方に所定距離L離間したBの位置に設けられた後側距離センサ18により、前側距離センサ16により距離を計測した時点より所定時間(本実施の形態では、例えば、T=(L/V))遅延した後に計測された距離Dとの差が、所定値K以上か否かを判断して、車両12と併走する障害物32が存在するか否かを検出する。これにより、前側距離センサ16及び後側距離センサ18から得られた距離D、Dを比較して障害物32が存在するか否かを検出しているので、障害物32の外観が千差万別でありパターンマッチング処理によって容易に障害物32を検出できない場合と比較して、より確実に障害物32を検出することができる。また、このような前側距離センサ16及び後側距離センサ18として、例えばミリ波レーダなどの比較的安価な距離センサを用いることができる。すなわち、本実施の形態に係る障害物検出装置10によれば、より高精度に障害物32を検出することができ、かつ、より安価にすることができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、前側距離センサ16及び後側距離センサ18を進行方向(移動方向)と同一の方向に並ぶように配置した例について説明したが、図6に示すように、前側距離センサ16及び後側距離センサ18は進行方向に並んでなくてもよい。ここで、同図に示されるように、前側距離センサ16及び後側距離センサ18が車両12の進行方向に並んでいない場合には、障害物検出処理のステップ116において、上記と同様にして距離Dを演算し、更に、実際の後側距離センサ18が設けられた位置Rと、前側距離センサ16が設けられた位置Fを含む進行方向と平行な直線Qとの距離Dを演算し、距離Dを距離Dで補正した値(D−D)を演算し、ステップ118で、距離Dと、値(D−D)とを比較して、障害物32が存在するか否かを検出するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、2つの距離センサ(前側距離センサ16と後側距離センサ18)の各々を距離計測手段として用いた例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、3つ以上の複数の距離センサの各々を距離計測手段として用いて、上記の本実施の形態と同様に処理を行うようにしてもよい。なお、この場合には、上記の本実施の形態と同様に、各距離センサによって、同一(または、ほぼ同一)の位置で、同一の方向の検出対象物の距離を計測し、計測された距離のうち、最大の距離と最小の距離との差が、所定値K以上であるか否かを判断して、車両12と併走する障害物が存在するか否かを検出するようにする。これにより、更に精度が高く障害物を検出することができる。また、この場合においても、各距離センサを進行方向に並べなくともよく、上記と同様に、各距離センサで計測された距離の各々に対して、各距離センサを進行方向に1列に並べた場合に計測された距離となるような補正を行うようにする。
【0055】
また、本実施の形態では、上記ステップ118において、上記ステップ104で演算された距離Dと上記ステップ116で演算された距離Dとの差の絶対値の大きさが、所定の閾値(所定値)K以上であるか否かを判定する例について説明した。すなわち、本実施の形態では、(|D−D|≧K)であるか否かを判定する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られない。例えば、上記ステップ118において、上記ステップ104で演算された距離Dと上記ステップ116で演算された距離Dとの差が、所定の閾値(所定値)K以上であるか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、((D−D)≧K)であるか否かを判定するようにしてもよい。このような判定により、併走する障害物32が車両12に迫ってくる場合のみ、車両12と併走する障害物32が存在することを検出することが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態では、車両12の進行方向の左側の側方として、真横に障害物32が存在する場合に、障害物32が存在することを検出する例について説明したが、同様の原理で、車両12の進行方向の左側の側方として、左側の前側方または左側の後側方に障害物32が存在する場合に、障害物32が存在することを検出するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、車両12の進行方向の左側の側方に存在する検出対象物までの距離を計測することが可能なように、前側距離センサ16及び後側距離センサ18が車両12に設けられている例について説明したが、車両12の進行方向の右側の側方に存在する検出対象物までの距離を計測することが可能なように、前側距離センサ16及び後側距離センサ18を車両12に設けてもよい。なお、この場合には、障害物検出処理は、ドライバ26が車両12の右ウインカーを点滅させるようにドライバ26が方向指示操作部を操作したことにより、右ウインカースイッチ20bからオン状態の信号をCPU14cが受信した場合に実行される。また、障害物検出処理のステップ122では、右ウインカースイッチ20bからの検出信号を取り込むようにする。また、この場合には、上記と同様の原理で、車両12の進行方向の右側の側方として、右側の前側方または右側の後側方に障害物32が存在する場合に、障害物32が存在することを検出するようにしてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、障害物検出処理のステップ110で、式(1)を用いて検出遅延時間Tを演算する例について説明したが、下記の式(2)を用いて検出遅延時間Tを演算するようにしてもよい。
【0059】
【数2】

ここで、
L:HDD14bから読み込んだ、前側距離センサ16が設けられたAの位置と、後側距離センサ18が設けられたBの位置との進行方向上の距離
V´:所定の車速(例えば、20km/h)、またはドライバ26等の車両12に乗車している人物によって入力された車速
である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態に係る移動体の障害物検出装置を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る移動体の障害物検出装置を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る制御装置を機能的に表した図である。
【図4】本実施の形態に係る制御装置が実行する障害物検出処理の処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図5】本実施の形態に係る制御装置が実行する障害物検出処理を説明するための図である。
【図6】距離センサの配置位置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
10 障害物検出装置
12 車両
14 制御装置
14c CPU
16 前側距離センサ
18 後側距離センサ
20 ウインカースイッチ
20a 左ウインカースイッチ
20b 右ウインカースイッチ
22 車速センサ
24 警報装置
26 ドライバ
28 障害物検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の側方に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体に設けられた第1の距離計測手段と、
前記側方と同じ側に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体の前記第1の距離計測手段が設けられた位置より移動体の移動方向後方に所定距離離間した位置に設けられた第2の距離計測手段と、
前記第1の距離計測手段により計測された距離と、前記第1の距離計測手段により距離を計測した時点より所定時間遅延した後に前記第2の距離計測手段により計測された距離との差が、所定値以上か否かを判断して、前記移動体と併走する障害物が存在するか否かを検出する障害物検出手段と、
を含む移動体の障害物検出装置。
【請求項2】
前記所定時間を、前記移動体が前記所定距離移動するのに要する時間とした請求項1記載の移動体の障害物検出装置。
【請求項3】
前記移動体と併走する障害物が存在することが検出されたときに警報を発する警報手段を更に設けた請求項1または請求項2記載の移動体の障害物検出装置。
【請求項4】
前記移動体と併走する障害物を二輪車とした請求項1〜3の何れか1項に記載の移動体の障害物検出装置。
【請求項5】
コンピュータを
移動体の側方に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体に設けられた第1の距離計測手段により計測された距離と、前記側方と同じ側に存在する検出対象物までの距離を計測するように、前記移動体の前記第1の距離計測手段が設けられた位置より移動体の移動方向後方に所定距離離間した位置に設けられた第2の距離計測手段により、前記第1の距離計測手段により距離を計測した時点より所定時間遅延した後に計測された距離との差が、所定値以上か否かを判断して、前記移動体と併走する障害物が存在するか否かを検出する障害物検出手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−262898(P2009−262898A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118556(P2008−118556)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】