説明

移動体システム

【構成】 レール側に永久磁石48〜50を走行方向に配列した被検出プレート14を設ける。天井走行車側には、コイル54を走行方向に配列すると共に、被検出プレート14を検出するための光センサ51〜53を備えたリニアセンサ12を設け、被検出プレート14と上下方向に対向させる。光センサ51〜53でカーブ区間と直線区間を識別し、リニアセンサの有効範囲を変更する。
【効果】 給電線からのノイズの影響が小さく、かつカーブ区間でも位置を認識できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検出プレートと検出側のコイルとの磁気結合の変化から、被検出プレートとコイル間の位相を検出して、移動体の位置を求めるシステムに関する。この発明は特に、移動体が直線運動中でもカーブ中でも、位置を認識できるようにした位置認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は複数のコイルを直線状に配列したリニアセンサを設け、磁性体からなる被検出プレートとリニアセンサ間の相対的な位置を求めることを開示している。被検出プレートとリニアセンサの相対的な位置を位相と呼ぶと、位相によって各コイルと磁性体との磁気結合が変化する。そこで例えば直列に接続された複数のコイルの、各コイルの電圧の振幅やその位相から、被検出プレートに対するリニアセンサの位置を求めることができる。
【0003】
発明者は、天井走行車や地上走行の有軌道台車、地上を無軌道で走行する無人搬送車等などの位置認識に、この技術を用いることを検討した。このような用途では搬送車は、直線運動の他にカーブ運動を行う。そこで直線状のリニアセンサをカーブ区間で使用すると、カーブの曲率のためセンサの一部が被検出プレートと向き合う位置から外れてしまう。このことは、直線運動とカーブ運動とを組み合わせた運動をする他の移動体でも同様である。
【特許文献1】特開2001−174206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、直線区間でもカーブ区間でも移動体の位置を認識できるようにすることにある。
請求項2の発明での課題は、リニアセンサの有効範囲を的確に変更することにある。
請求項3の発明での課題は、カーブ区間で、リニアセンサと被検出プレートとの干渉を避けながら、これらの間隔を縮め、高感度で位置を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の移動体システムは、移動体の走行経路に沿って被検出プレートを設けると共に、移動体に複数のコイルを直線状に配置したリニアセンサを搭載して、被検出プレートとリニアセンサのコイルとの磁気結合の変化から、被検出プレートに対する位置を検出するようにすると共に、直線区間とカーブ区間とで、リニアセンサの有効範囲を変更するための手段を設けたものである。
【0006】
好ましくは、リニアセンサに、直線区間とカーブ区間とを識別して有効範囲を変更するためのセンサを設ける。直線区間とカーブ区間との識別は、走行経路上の位置を移動体がエンコーダなどで求めることで行っても良いが、エンコーダなどで求めた現在位置には誤差が伴う。またカーブ区間の出入口などにマークを設けて、移動体がマークを認識するようにしても良いが、移動体からリニアセンサへの信号の送信が必要になる。
【0007】
また好ましくは、被検出プレートとリニアセンサとを、移動体の運動面に垂直な方向に間隔を置いて対向させる。例えば運動面が水平であれば、鉛直方向に間隔をおいて対向させる。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、被検出プレートとリニアセンサとを組み合わせて、移動体の位置を求める。またカーブ区間では、被検出プレートとリニアセンサとが所定の間隔で対向する範囲が直線区間と異なるので、直線区間とカーブ区間とを識別してリニアセンサの有効範囲を変更する。このため、直線区間でもカーブ区間でも移動体の位置を認識できる。
【0009】
請求項2の発明では、リニアセンサが直線区間かカーブ区間かを識別できるので、リニアセンサの有効範囲を的確に変更できる。
【0010】
請求項3の発明では、被検出プレートとリニアセンサは運動面に垂直な向きに対向しているので、移動体がカーブしても被検出プレートとリニアセンサが干渉しない。このため被検出プレートとリニアセンサとの間隔を小さくでき、カーブ区間でも移動体の位置を高感度で認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0012】
図1〜図8に、実施例とその変形とを示す。図において、2は天井走行車システムで、地上走行の有軌道台車システムや、スタッカークレーンのシステム、あるいは地上を無軌道で走行する無人搬送車システムなどとしてもよい。またこれ以外に工作機械のヘッドやコンベヤなど、直線区間とカーブ区間とを備えた移動経路に沿って運動する各種の移動体の位置認識に適用できる。
【0013】
4はレールで、例えばクリーンルーム内の天井空間に沿って設置され、6はその直線区間、8はカーブ区間で、9aはカーブ入口、9bはカーブ出口である。10は天井走行車で、例えばレール4に懸垂するようにして走行し、天井走行車本体には横送り部と水平面内での回動部、及び昇降駆動部と昇降台とを設け、昇降台で半導体カセットなどの物品を把持して搬送する。
【0014】
12はリニアセンサで、天井走行車10の側部に設けられ、14は被検出プレートで、レール4の側部に設けてあり、リニアセンサ12と被検出プレート14は鉛直方向に間隔をおいて対向する。天井走行車10の運動面は水平で、リニアセンサ12と被検出プレート14を鉛直方向に間隔を置いて対向させると、カーブ区間でも干渉せず、従って被検出プレート14をカーブ区間にも設置できる。16はロードポートで、例えば処理装置18の物品の搬出入口であり、ここでは天井走行車10の停止位置をロードポート16で代表して示す。
【0015】
リニアセンサと被検出プレートを水平方向に間隔をおいて配置した例を、天井走行車を10'として示す。ここではリニアセンサ12'が図示しない被検出プレートと水平方向に向き合い、これらの対向面は鉛直を向いている。このようにすると、リニアセンサ12'の干渉範囲13は図1の鎖線のようになり、被検出プレートとリニアセンサ12'との間に大きな間隔をおく必要が生じる。従ってリニアセンサ12'の感度は低く、カーブ区間では位置を検出できなくなる。例えば天井走行車10'がカーブ出口9bよりも完全に下流側に脱出した際に、リニアセンサ12'が走行レール4に平行になるとする。すると処理装置のロードポート16などを設置できる位置は図1の鎖線9cよりも下流側となり、カーブ入口9aやカーブ出口9bの付近、並びにカーブ区間8にはロードポートなどを設置できない。このためクリーンルームのスペース効率が低下する。なお、天井走行車10'やリニアセンサ12'の場合も、カーブ区間8では被検出プレートに対するリニアセンサ12'の位置が両端部で不適正になり、ここでは両端部で間隔が開きすぎる。そこで実施例と同様に、リアセンサ12'の有効範囲を直線区間6とカーブ区間8とで変更する。
【0016】
図2の22は走行レールで、24はその下部の給電レールであり、被検出プレート14をブラケット26により給電レール24の側方に支持する。なお被検出プレート14は、給電レール24の底面などに設けて、リニアセンサ12を天井走行車本体44の上面に設けて上下に対向配置しても良い。走行ルート22にはガイド28を設けて、天井走行車10の直進や分岐をガイドし、走行部31には例えば左右の支持輪32,32と中央上部の駆動輪34とを設ける。さらにガイド輪36,38を設けて、ガイド28でガイドする。給電レール24には例えば一対のリッツ線30,30を設け、1〜10kHz程度の高周波電流を流し、天井走行車10のピックアップコイル40により受電し、これと共にリッツ線30を介して図示しない天井走行車コントローラや他の天井走行車との間で通信する。42は軸で、天井走行車本体44を支持し、本体44には横送り部や水平回動部、昇降駆動部及び昇降台などを設ける。
【0017】
図3〜図7に、リニアセンサ12や被検出プレート14の構成を示し、各図の左向きの矢印は天井走行車の走行方向である。実際には被検出プレート14に対してリニアセンサ12が移動するが、図3ではリニアセンサ12の位置を固定して、被検出プレート14が運動するかのように図示する。また被検出プレート14の付近で、天井走行車10の運動面は水平で、リニアセンサ12と被検出プレート14の鉛直方向の高さは一定である。
【0018】
46は強磁性体のヨークで、48〜50はそれぞれ永久磁石で、例えばフェライト系などの磁石を用い、希土類系などのより強い磁石でも良い。また永久磁石に代えて電磁石を用いても良く、あるいは強磁性体や磁石の板を被検出プレートとしても良い。磁石48〜50は天井走行車の走行方向に沿って好ましくは複数個直線状に配列され、それぞれのサイズは例えば一定で、磁化の向きは鉛直方向でもあるいは天井走行車の走行方向でも良い。そして隣り合った磁石の間で磁化の向きを逆にする。磁石48〜50の個数は2個以上が好ましく、上限は例えば16個以下とする。
【0019】
リニアセンサ12には複数個のコイル54を直線状に配列し、例えばコイル54を4個ずつで1組として、これを2組〜16組程度配置する。51〜53は光センサで、リニアセンサ12の前方(走行方向前側)から後方(走行方向後側)向きに直線状に配置され、その個数は例えば3個で、リニアセンサ12の上部に被検出プレート14が存在するかどうかを検出する。光センサ51〜53に代えて、超音波センサや磁気センサなどを用いても良い。
【0020】
リニアセンサ12に対する被検出プレート14の通過範囲を図3の鎖線56で示すと、カーブ区間では光センサ51は被検出プレート14を検出しないが、光センサ52,53は被検出プレート14を検出する。また直線区間では光センサ51〜53は何れも被検出プレート14を検出し、光センサ51による検出の有無でカーブ区間と直線区間とを識別できる。そして直線区間では図3の範囲L1をリニアセンサ12の有効範囲とし、カーブ区間では範囲L2を有効区間とする。またリニアセンサ12はその長手方向に対する位置を検出し、天井走行車がカーブ区間を走行する際もこのことは変わらないので、位置センサなどの名称ではなく、リニアセンサと呼ぶ。
【0021】
図4,図5に示すように、リニアセンサ12と被検出プレート14は高さ位置が一定なので、これらの間の上下の間隔をごく小さくでき、コイル54と永久磁石48〜50間の磁気結合を強くできる。また周囲のヨーク46などにより、リッツ線などからの磁界が侵入することを制限できる。被検出プレート14からの磁束は図5に示すように、磁石48,50とヨーク46の間、並びに磁石48,49の間と磁石49,50の間で、リニアセンサ12側へ漏れ出す。なおこのことは図5の右上側に示すように、磁石48などでの磁化方向を鉛直方向としても、磁石48'のように磁化の方向をレールの走行方向としても変わらない。そして磁石48〜50の個数を増すほど、例えば同時に検出に用いることができるコイル54の数が増して、検出精度が向上する。被検出プレート14からリニアセンサ12側に漏れ出した磁束がコイル54の磁束と干渉し、コイル54の磁気抵抗を変化させて、位置の検出を可能にする。なお永久磁石48〜50からリニアセンサ12へ漏れ出す磁束は、リッツ線30から漏れ出す磁束よりも充分、例えば10〜1000倍程度、強くする。
【0022】
実施例ではコイル54を4個単位で1ブロックとして用いるので、各ブロックに対する位相を図6のように定義する。即ち1つのブロック内には4つの検出コイル54a〜54dがあり、被検出プレート14が最も上流側の検出コイル54aの上部に表れる位置で位相θを0とし、被検出プレート14が最後部のコイル54dから脱出する位置で位相θを180°とする。位相が0°から180°へ変化する間に、コイル54a〜54dのそれぞれが磁石48〜50から受ける磁束の強弱とその向きが変化し、これにより位相θを検出できる。
【0023】
位相θの検出回路の例を図7に示すと、60は交流電源で、例えば1ブロックのコイル54a〜54dを直列に接続して、位相ωtでsin波の電流を加える。これに対して各コイルの電圧の絶対値とその位相とを演算部62で処理すると、例えばsinθやcosθを求めることができる。なお複数のコイルの電圧や電流の位相から位置を求める演算手法は、特許文献1に種々のものが記載され、図7のものに限るものではない。
【0024】
図8に変形例のリニアセンサ70と変形例の被検出プレート74とを示す。リニアセンサ70ではその上下の各々に、コイル72を直線状に複数配置する。被検出プレート74ではヨーク76により永久磁石78を支持し、永久磁石78の上下を上下のコイル72,72と対向させる。この場合カーブ区間では、リニアセンサ70を固定して考えた場合の被検出プレート74の干渉範囲は図8の80のようになり、水平方向でリニアセンサ70と被検出プレート74との間に間隔をおくと、干渉を防止できる。また図8とは逆に、被検出プレートをゲート状に構成し、ゲートの隙間をリニアセンサが通過するようにしても良い。
【0025】
実施例では以下の効果が得られる。
1) 被検出プレート14等には永久磁石48〜50等を用いるので、リニアセンサ12等のコイル54等との磁気結合が、鉄板やニッケル板の場合よりもはるかに強い。このためリッツ線30等のため、磁気ノイズが強い環境下でも、高いS/N比で位置を検出できる。
2) またこれに伴い、リニアセンサ12と被検出プレート14のように、これらの対向部を開放でき、シールドする必要がない。なお図8のように、リニアセンサ70と被検出プレート74のいずれかにより対向部を囲むようにしてシールドし、S/N比を更に向上させても良い。
3) リニアセンサ12等と被検出プレート14等は鉛直方向に間隔を開けて水平に対向するので、天井走行車10がカーブ走行しても、これらが干渉することがない。
4) この結果、リニアセンサ12等と被検出プレート14等との間隔を小さくし、磁気結合をさらに大きくできる。
5) 直線区間6のみでなく、カーブ区間8でも天井走行車10の位置を検出できる。このためロードポート16等をカーブ区間8やその周囲の直線部に配置でき、クリーンルームを有効利用できる。
6) 光センサ51〜53で、直線区間かカーブ区間かをリニアセンサ12,70内で検出できる。このためリニアセンサ12,70の有効範囲を的確に切り換えることができる。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例の天井走行車システムの要部平面図
【図2】実施例でのレールと被検出プレート及び天井走行車を示す部分切欠部付き要部正面図
【図3】実施例での、リニアセンサと被検出プレートとを示す平面図
【図4】実施例でのリニアセンサと被検出プレートとを示す側面図
【図5】実施例でのリニアセンサの検出コイルと被検出プレートからの磁束とを模式的に示す図
【図6】実施例でのリニアセンサの位相を示す図
【図7】実施例でのリニアセンサのブロック図
【図8】変形例のリニアセンサと被検出プレートとを示す図
【符号の説明】
【0027】
2 天井走行車システム
4 レール
6 直線区間
8 カーブ区間
9a カーブ入口
9b カーブ出口
10 天井走行車
12 リニアセンサ
13 干渉範囲
14 被検出プレート
16 ロードポート
18 処理装置
22 走行レール
24 給電レール
26 ブラケット
28 ガイド
30 リッツ線
31 走行部
32 支持輪
34 駆動輪
36,38 ガイド輪
40 ピックアップコイル
42 軸
44 天井走行車本体
46 ヨーク
48〜50 永久磁石
51〜53 光センサ
54 コイル
56 被検出プレートの通過範囲
60 交流電源
62 演算部
70 リニアセンサ
72 コイル
74 被検出プレート
76 ヨーク
78 永久磁石
80 干渉範囲

R 曲率中心
L1 直線区間の有効範囲
L2 カーブ区間の有効範囲
θ 位相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行経路に沿って被検出プレートを設けると共に、移動体に複数のコイルを直線状に配置したリニアセンサを搭載して、
被検出プレートとリニアセンサのコイルとの磁気結合の変化から、被検出プレートに対する位置を検出するようにすると共に、
直線区間とカーブ区間とで、リニアセンサの有効範囲を変更するための手段を設けた、移動体システム。
【請求項2】
リニアセンサに、直線区間とカーブ区間とを識別して有効範囲を変更するためのセンサを設けたことを特徴とする、請求項1の移動体システム。
【請求項3】
被検出プレートとリニアセンサとを、移動体の運動面に垂直な方向に間隔を置いて対向させたことを特徴とする、請求項1または2の移動体システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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