説明

移動体位置制御装置及びこの制御装置を用いたステージ装置

【課題】 本発明はXステージが移動可能に搭載されたYステージの並進駆動を高精度に行うことを課題とする。
【解決手段】 ステージ装置10は、上記Y1リニアエンコーダ52、Y2リニアエンコーダ54、Xリニアエンコーダ58により検出されたY1,Y2,X方向位置信号が入力されると、X,Y,θ座標変換を行って移動体重心位置を演算し、推力非干渉化ブロック70により移動体重心位置に応じてY1,Y2リニアモータ36,38の推力f,fが互いに干渉しないように推力非干渉化を行う。推力非干渉化ブロック70は、第1乃至第3分配演算部84,86,88により、互いに逆方向に作用する2つの回転力が釣り合うように推力f,fの分配比を設定してYステージ18に重心軸周りの回転力が作用しないようにYステージ18を並進駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体(ステージ)の両端を一方向に並進駆動させる際に移動体の回転動作を抑制するよう構成された移動体位置制御装置及びこの制御装置を用いたステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、XYステージ装置と呼ばれる装置は、X方向に移動するXステージがY方向に移動するYステージに搭載された構成であり、各ステージ(移動体)の移動位置を制御する移動体位置制御装置が設けられている。また、この種の装置の中には、ガントリ移動型ステージ装置と呼ばれる装置があり、門型の第1移動体(Yステージ)がテーブル上に吸着された基板の上方を一定速度で移動するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記第1移動体には、Y方向と直交するX方向に移動する第2移動体が搭載されており、第2移動体には、各種治具が取り付けられている。そして、XYステージ装置では、第2移動体をX方向ストロークの任意の位置に移動させながら第1移動体をY方向へ移動させるように動作する。
【0004】
このように、第2移動体がX方向に移動させた状態で第1移動体をY方向に移動させる場合、第1移動体を駆動する第1、第2のリニアモータに同じ推力(駆動力)を発生させるように指令値が出力されると、第2移動体の移動に伴って第1移動体と第2移動体を含む移動体ユニットの重心位置が変化することになるので、移動体ユニットには重心位置と交差するZ軸を中心とする回転力が作用することになる。
【0005】
そのため、第2移動体がY方向の移動範囲の中央に位置していない状態では、一対のリニアモータから第1移動体に付与される2つの推力に差異を与え、両推力による第1移動体の重心周りの2つの力のモーメントが互いに打ち消し合う大きさになるようにして第1移動体をY方向に移動させる。
【0006】
これにより、第1移動体を並進駆動する推力によって生じる重心周りの2つの力のモーメントは互いに打ち消し合い、推力が第1移動体に対して回転力として作用することが防止される。
【特許文献1】特開2001−238485号公報(特許第3481540号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の装置では、2つの推力によって生じる重心周りの力のモーメントが互いに打ち消し合うように、一対のリニアモータから第1移動体に付与される2つの推力を制御する方式であるため、例えば、何らかの外乱により第1移動体に回転方向の力が作用して第1ステージがある角度回転しても第1ステージがヨーイング方向に傾いた状態になった場合でも、第1ステージがX軸方向に対して傾かない状態でY方向に駆動させているものとして一対のリニアモータの推力を決定している。
【0008】
そのため、従来は、第1ステージがZ軸周りに所定角度回転した状態になった場合には、X軸に対する傾きを修正せずに傾いた状態のまま第1ステージをY方向に駆動させてしまうという問題があった。
【0009】
従って、外乱が入力された場合、上記フィードバック制御による制御では、移動体をヨーイング方向に回転しない状態で高精度に並進駆動させることが難しかった。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決した移動体位置制御装置及びこの制御装置を用いたステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、互いに直交する2方向のうち第1軸方向に移動可能に設けられた第1移動体の両端を駆動する第1、第2駆動手段と、前記第1軸と直交する第2軸方向に移動する第2移動体を駆動する第3駆動手段とを制御し、前記第1移動体と前記第2移動体とからなる移動体ユニットを移動させる移動体位置制御装置において、前記第2移動体の移動位置に応じた移動体ユニットの重心位置を演算する重心位置演算手段と、前記重心位置演算手段によって演算された重心位置に応じて前記第1駆動手段の推力と前記第2駆動手段の推力との分配比を設定する分配係数を演算する分配係数演算手段と、該分配係数演算手段によって演算された分配係数を前記第1軸方向の位置制御補償器により演算された第1軸推力目標値に乗算して前記重心の軸周りに作用する第1、第2駆動手段への推力による回転方向の力モーメントが釣り合うように前記第1、第2駆動手段への第1軸推力指令値を演算する指令値演算手段と、前記第2移動体の移動位置に応じて変化する移動体ユニットの重心位置を軸とする回転方向の慣性モーメントを演算する慣性モーメント演算手段と、該慣性モーメント演算手段により演算された慣性モーメントと、回転方向の位置制御補償器の推力ゲインとの比が一定となるように前記重心の軸周りの第3軸推力指令値を演算する回転方向推力演算手段と、前記第1軸推力指令値と前記第3軸推力指令値により前記第1、第2駆動手段への各推力指令値を演算する駆動推力指令値演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記分配係数演算手段が、前記移動体ユニットの重心の軸周りに作用する回転方向の第1駆動手段の推力による回転力と前記第2駆動手段による回転力によって、互いに逆方向に作用する2つの回転方向の力のモーメントが釣り合うように前記分配係数を演算することを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記駆動推力指令値演算手段が、前記第1、第2駆動手段への各推力指令値をf,f、2軸方向に移動する第2移動体の位置計測値をx、x=0における移動体の重心周りのモーメントが釣り合う第1軸並進方向の推力指令分配の比率をg10,g20、xの変化による前記移動体ユニットの重心と前記第1、第2駆動手段との距離の変化率をα、x=0における重心での第3軸周りの回転方向位置制御ループの推力ゲインをh、xの変化による前記移動体ユニットの重心点での第3軸周り方向の慣性モーメントの変化率をβ、第1軸方向の並進方向推力指令値をf、第3軸周りの回転方向への推力指令値をτとした場合、以下の式
=(−αx+g10)・f+(βx+h)・τ
=( αx+g20)・f−(βx+h)・τ
に基づいて前記推力指令値f,fを分配することを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、固定ベースと、該固定ベースに対して第1軸方向に移動可能に設けられた第1ステージと、該第1ステージに前記第1軸方向と直交する第2軸方向に移動可能に設けられた第2ステージと、前記固定ベースに対して前記第1ステージの両端近傍に推力を付与するように配置された第1、第2駆動手段と、前記第2ステージを駆動する第3駆動手段と、前記第1ステージの両端近傍の移動位置を検出する第1、第2位置検出器と、前記第2ステージの移動位置を検出する第3位置検出器と、前記第1ステージと前記第2ステージとからなる移動体ユニットを移動させるように前記第1、第2駆動手段を制御する制御手段とを有するステージ装置において、前記制御手段は、前記第2ステージの移動位置に応じた前記移動体ユニットの重心位置を演算する重心位置演算手段と、前記重心位置演算手段によって演算された重心位置に応じて前記第1駆動手段の推力と前記第2駆動手段の推力との分配比を設定する分配係数を演算する分配係数演算手段と、該分配係数演算手段によって演算された分配係数を前記第1軸方向の位置制御補償器により演算された第1軸推力目標値に乗算して前記重心の軸周りに作用する第1、第2駆動手段への推力による回転方向の力モーメントが釣り合うように前記第1、第2駆動手段への第1軸推力指令値を演算する指令値演算手段と、前記第2移動体の移動位置に応じて変化する移動体ユニットの重心位置を軸とする回転方向の慣性モーメントを演算する慣性モーメント演算手段と、該慣性モーメント演算手段により演算された慣性モーメントと、回転方向の位置制御補償器の推力ゲインとの比が一定となるように前記重心の軸周りの第3軸推力指令値を演算する回転方向推力演算手段と、前記第1軸推力指令値と前記第3軸推力指令値により前記第1、第2駆動手段への各推力指令値を演算する駆動推力指令値演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、重心位置演算手段によって演算された重心位置に応じて第1移動体の重心の軸周りに作用する回転方向の第1駆動手段の推力による回転力と第2駆動手段の推力による回転力とを求め、互いに逆方向に作用する2つ力のモーメントが釣り合うように第1駆動手段の推力と第2駆動手段の推力との分配比を設定する分配係数を演算し、第1、第2駆動手段への各推力指令値を移動体ユニットの重心位置に応じた変化率で分配した分配値と第1、第2駆動手段の推力による回転方向のモーメントが釣り合うように第1、第2駆動手段に分配された指令値と回転方向推力演算手段により演算された指令値とを加算して第1、第2駆動手段への各推力指令値を演算することにより、第1移動体(第1ステージ)に回転力が作用しないようにできるので、ヨーイング方向への傾きのない状態で第1移動体(第1ステージ)を並進駆動することが可能になる。
【0016】
また、第2移動体(第2ステージ)の移動位置に応じて変化する移動体ユニット(ステージユニット)の重心位置を軸とする回転方向の慣性モーメントを演算し、慣性モーメントが一定となるように重心の軸周りの推力を演算するため、制御システムにより回転方向の制御系の制御ループゲインも一定に保たれ、第2移動体(第2ステージ)の移動位置によらず、回転方向の制御系の制御特性が変動せず、第1移動体(第1ステージ)を安定的に並進駆動することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面と共に本発明の一実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明になる移動体位置制御装置の構成要素を示す概念図である。
図1に示されるように、移動体位置制御装置200は、第1移動体(Y1ステージ)202の両端を駆動して第1移動体202をY軸方向に移動させる第1、第2駆動手段210,220と、Y方向と直交するX軸方向に移動する第2移動体(Xステージ)204を駆動する第3駆動手段230とを駆動制御する。
【0019】
第1移動体202と第2移動体204を含む移動体ユニット206の座標位置は、3軸位置検出器232によって検出され、座標変換ブロック234によりXYθ制御座標系に変換し、位置フィードバック値としてXYθ位置制御補償器236に供給される。
【0020】
移動体位置制御装置200は、推力目標値を算出するXYθ位置制御補償器236と、第2移動体204の移動位置Xに応じた第1移動体202と第2移動体204を含む移動体ユニット206の重心位置を演算する重心位置演算手段240と、重心位置演算手段240によって演算された重心位置に応じて第1駆動手段210の推力と第2駆動手段220の推力とを分配比を設定する分配係数を演算する分配係数演算手段270と、分配係数演算手段270によって演算された分配係数をXYθ位置制御補償器236で演算された第1、第2駆動手段210,220のY軸(第1軸)推力目標値に乗算して重心の軸周りに作用する第1、第2駆動手段210,220の推力による回転方向の力のモーメントが釣り合うように第1、第2駆動手段210,220へのY軸(第1軸)推力指令値(分配値)を演算する指令値演算手段280とを有する。
【0021】
また、移動体位置制御装置200は、第2移動体204の移動位置Xに応じて変化する移動体ユニット206のZ軸周りの慣性モーメントを演算する慣性モーメント演算手段290と、この慣性モーメント演算手段290により演算された慣性モーメントとXYθ位置制御補償器236で演算されたθ軸(第3軸)推力目標値が入力される回転方向推力演算手段300とを有し、この回転方向指令値調整手段300では、慣性モーメントと回転方向の位置制御補償器の推力ゲインの比が一定になるようにZ軸周り(回転方向)のθ軸(第3軸)推力指令値を演算する。
【0022】
さらに、指令値演算手段280により演算されたY軸推力指令値と回転方向推力演算手段300により演算されたθ軸推定指令値とから第1、第2駆動手段210,220への各駆動推力指令値(Y1モータ推定指令値、Y2モータ推定指令値)を演算する駆動推力指令値演算手段310とを有する。
【0023】
分配係数演算手段270は、第1、第2駆動手段210,220への各推力指令値をf,f、2軸方向に移動する第2移動体204の位置計測値をx、x=0における移動体ユニット206の重心周りの力のモーメントが釣り合う第1軸並進方向の推力指令分配の比率をg10,g20、xの変化による移動体重心と第1、第2駆動手段210,220との距離の変化率をα、x=0における重心での第3軸(Z軸)周りの回転方向位置制御ループの推力ゲインをh、xの変化による移動体全体の重心点での第3軸周り方向の慣性モーメントの変化率をβ、第1軸方向の並進方向推力指令値をf、第3軸周りの回転方向への推力指令値をτとした場合、以下の式
=(−αx+g10)・f+(βx+h)・τ
=( αx+g20)・f−(βx+h)・τ
に基づいて推力指令値f,fを分配する。尚、上記2式を導き出す説明は、後述することにし、ここでの説明は省略する。
【0024】
従って、移動体位置制御装置200では、重心位置演算手段240によって演算された重心位置に応じて移動体ユニット206の重心のZ軸周りに作用する回転方向(θ方向)の第1駆動手段210の推力による回転力と第2駆動手段220の推力による回転力とを求め、互いに逆方向に作用する2つの回転力が釣り合うように第1駆動手段210の推力と第2駆動手段220の推力との分配比を設定することにより、第1移動体(第1ステージ)202に回転力が作用しないようにできるので、ヨーイング方向への傾きのない状態で第1移動体(第1ステージ)202を並進駆動することが可能になる。
【0025】
次に、本発明の具体例について以下説明する。
図2は本発明になる移動体位置制御装置の一実施例が適用されたステージ装置を示す斜視図である。
【0026】
図2に示されるように、ステージ装置10は、ベース12と、ベース12上に固定された一対のガイドレール14,16と、Yステージ(第1移動体)18と、Yステージ18をY方向に駆動するY方向駆動部19と、Xステージ(第2移動体)30と、Xステージ30をX方向に駆動するX方向駆動部31とを有する。Xステージ30は、Yステージ18に移動可能に搭載されており、Yステージ18と共に移動体ユニット21を構成している。
【0027】
ベース12は、上面12aが移動体ユニット21の水平移動をガイドする静圧軸受け案内面として形成されている。また、ガイドレール14,16は、夫々、Yステージ18の両端をガイドするように互いに対向し合う側面にY方向案内面14a,16aが形成されている。
【0028】
ガイドレール14と16との間には、Yステージ18が横架されている。このYステージ18は、ベース12の上面12aに沿ってY方向にスライドする本体18aと、本体18aの両端に設けられガイドレール14,16のY方向案内面14a,16aに沿ってY軸方向に直線案内されるスライド部18b,18cを有する。
【0029】
尚、スライド部18b,18cが同一形状である場合、Yステージ18の重心位置は、Y方向の中間位置と一致することになる。また、スライド部18b,18cが異なる形状である場合、スライド部18bの質量とスライド部18cの質量が異なるため、Yステージ18の重心位置は、スライド部18b,18cの質量差によってY方向の中間位置から所定距離ずれた位置となる。
【0030】
また、Yステージ18は、スライド部18b,18cの側面に4個の静圧空気軸受けパッド20と、スライド部18b,18cの下面に設けられた3個の静圧空気軸受けパッド22とを有する。静圧空気軸受けパッド20及び22〜22は、ベース12上のX−Y平面に対して垂直なZ軸まわりの回転1自由度を持つ4個の継ぎ手(図示せず)を介してYステージ18のスライド部18b,18cの側面に保持されている。
【0031】
尚、静圧空気軸受けパッド22は、Yステージ18のX方向の中心軸に対応する箇所に設けられ、静圧空気軸受けパッド22,22は、Yステージ18の中心軸に対してY方向にほぼ対称な位置に設けられる。すなわち、静圧空気軸受けパッド22〜22は、それぞれの中心が二等辺三角形を形成するように配置されている。
【0032】
また、Yステージ18には、Xステージ30がY方向と直交するX方向に移動可能に搭載されている。Yステージ18は、その延在方向に平行な前後側面18d,18eがXステージ30をX方向に案内するためのX方向案内面として形成されている。Xステージ30は、Yステージ18の上面及び前後面を跨ぐようにコ字状に形成されており、前後側面18d,18eに対向する4個の静圧空気軸受けパッド32〜32と、ベース12の上面12aに対向する3個の静圧空気軸受けパッド34〜34とを有する。
【0033】
静圧空気軸受けパッド20,22〜22は、圧縮空気を噴射することによりベース12の上面12a及びガイドレール14,16に対して微小な空気層を形成しており、この空気層により摩擦抵抗を殆どゼロに低減したフローティング状態(非接触状態)でYステージ18をガイドする。
【0034】
また、静圧空気軸受けパッド32〜32,34〜34は、圧縮空気を噴射することによりベース12の上面12a及びYステージ18の前後側面18d,18eに対して微小な空気層を形成しており、この空気層により摩擦抵抗を殆どゼロに低減したフローティング状態(非接触状態)でXステージ30をガイドする。
【0035】
Y方向駆動部19は、ガイドレール14上に設けられたY1リニアモータ(第1駆動手段)36と、ガイドレール16上に設けられたY2リニアモータ(第2駆動手段)38とからなる。Y1,Y2リニアモータ36,38は、Y方向に延在するように配置された磁石ユニット(図示せず)と、磁石ユニットに対向するように配置されたコイルユニット(図示せず)とを有する。尚、各コイルユニットには、ケーブルベア(図示せず)が接続されている。
【0036】
また、X方向駆動部31は、Yステージ18の本体18a上に設けられたXリニアモータ(第3駆動手段)42を有する。Xリニアモータ42は、X方向に延在するように配置された磁石ユニット(図示せず)と、磁石ユニットに対向するように配置されたコイルユニット(図示せず)とからなる。尚、コイルユニットには、ケーブルベア(図示せず)が接続されている。
【0037】
さらに、ガイドレール14,16上には、Y方向に延在形成されたY1リニアスケール48、Y2リニアスケール50と、Yステージ18に設けられY1リニアスケール48、Y2リニアスケール50に対する相対位置を検出するY1リニアエンコーダ(Y1位置検出器)52、Y2リニアエンコーダ(Y2位置検出器)54とが設けられている。そのため、Yステージ18のスライド部18b,18cの移動位置は、Y1リニアエンコーダ52、Y2リニアエンコーダ54から出力されたパルス数を演算することによって検出される。また、Y1リニアエンコーダ52から出力されたパルス数と、Y2リニアエンコーダ54から出力されたパルス数との差からYステージ18の回転角θが検出される。
【0038】
また、Yステージ18の本体18a上には、X方向に延在形成されたXリニアスケール(図示せず)と、Xステージ30に設けられXリニアスケールに対する相対位置を検出するXリニアエンコーダ(図示せず)とが設けられている。そのため、Xステージ30の移動位置は、Xリニアエンコーダ(X位置検出器)から出力されたパルス数を演算することによって検出される。
【0039】
このように構成されたステージ装置10では、Yステージ18の両端に設けられたスライド部18b,18cをY1,Y2リニアモータ36,38によって同時に並進駆動する場合、Xステージ30がX方向の中心に位置しているのであれば両方の推力が同じ大きさとなるようにY1,Y2リニアモータ36,38を制御している。
【0040】
Y1,Y2リニアモータ36,38によって並進駆動されるYステージ18は、移動時にZ軸方向まわりの回転運動(ヨーイング運動)を引き起こしやすい。その原因としては、Y1,Y2リニアモータ36,38により付与される推力変動で発生する回転方向の力、あるいはYステージ18の両端に接続されるケーブル(図示せず)の負荷(外乱)の差などが考えられる。
【0041】
ここで、上記のように構成されたステージ装置10におけるYステージ18の移動状態について説明する。
【0042】
図3はYステージ18及びXステージ30を簡略化して示す平面図である。
図3に示されるように、ステージ装置10では、Yステージ18にXステージ30が移動可能に搭載されているため、Xステージ30がX方向に移動することにより移動体ユニット21の重心の位置がX方向に移動する。
【0043】
そして、重心点Gを通るZ軸周りの回転方向(ヨーイング方向)の慣性モーメント(イナーシャ)も変化する。この慣性モーメントは、X座標の関数として表わすことができ、J(x)とする。
【0044】
Y方向制御系のy方向並進推進指令をf、θ方向制御系のヨーイングトルク指令をτとし、Y方向駆動用のY1,Y2リニアモータ36,38の推力(駆動力)を夫々f,fとする。このとき、次式(1)の関係によりf,τを推力f,fに分配し、推力f,fが互いに干渉しないように推力非干渉化を行う。
【0045】
【数1】

ここで、Xステージ30の移動位置に応じた重心位置からY1,Y2リニアモータ36,38の推力発生点(駆動点)までの距離を夫々L(x),L(x)とする。
【0046】
そして、上式(1)で与えられた推力f,fに基づいて、移動体ユニット21の重心に作用する並進推力fとヨーイングトルクτは、次式(2)により与えられる。
【0047】
【数2】

である。以上より制御系の指令推力と実際に移動体ユニット21の重心で作用する推力f、τは次式(4)の関係になる。
【0048】
【数3】

このとき、Y方向制御系の指定推力fが移動体ユニット21の重心へのヨーイングトルクτを発生しないと共に、θ制御系のヨーイングトルク指令τが移動体ユニット21の重心への並進推力fを発生させない条件、すなわち、Y−θ制御系を非干渉化する条件は、式(4)右辺の行列式の非対角成分をゼロにすることである。
【0049】
従って、次式(5)(6)のようになる。
【0050】
【数4】

また、移動体ユニット21の制御系の制御ループゲインを一定に保つ条件は、式(4)右辺の行列式の(1,1)成分を移動体ユニット21の質量で割った値、及び行列式の(2,2)成分を移動体ユニット21の慣性モーメントで割った値を一定にすることで与えられる。
【0051】
移動体ユニット21の質量は、Xステージ30座標位置によらず一定であることから、上記条件は次式(7)(8)のように表わされる。
【0052】
【数5】

上式(7)(8)からY−θ制御系を非干渉化し、制御系ループゲインを一定に保つには、推力f,fを次式(9)〜(12)の分配係数g,g,h,hに基づいて分配すれば良いことが分かる。
【0053】
【数6】

以上のことを整理すると、推力f,fの分配式は次式(13)(14)で与えられる。
【0054】
【数7】

ここで、ステージ装置10を駆動制御する制御システムの具体例について図4を参照して説明する。
図4に示されるように、制御システム60は、上記Y1リニアエンコーダ52、Y2リニアエンコーダ54、Xリニアエンコーダ58により検出されたY1,Y2,X方向位置信号が入力されると、X,Y,θ座標変換を行って各方向の座標位置及び重心位置を演算し、各フィードバック値を生成する座標変換ブロック62と、Xステージ30の移動を制御するX制御系ブロック64と、Yステージ18の移動を制御するY制御系ブロック66と、移動体ユニット21のθ方向の傾きを制御するθ制御系ブロック68と、Y1,Y2リニアモータ36,38の推力f,fが互いに干渉しないように重心位置を演算し、推力非干渉化を行う推力非干渉化ブロック70とを有する。
【0055】
座標変換ブロック62は、Xステージ30の移動位置に応じた移動体ユニット21のX方向、Y方向及びθ方向の座標位置を演算する演算手段であり、X制御系64の補償器72にX方向フィードバック値Xfbkを入力し、Y制御系66の補償器74にY方向フィードバック値Yfbkを入力し、θ制御系ブロック68の補償器76にθ方向フィードバック値θfbkを入力する。
【0056】
X制御系ブロック64の補償器72は、X軸位置指令値XrefとX方向フィードバック値Xfbkを用いてX軸推力目標値Fcmdxを出力する。
【0057】
Y制御系ブロック66の補償器74は、Y軸位置指令値XrefとY方向フィードバック値Yfbkを用いてY軸推力目標値Fcmdyを出力する。
【0058】
θ制御系ブロック68の補償器76は、θ軸位置指令値θrefとθ方向フィードバック値θfbkを用いてθ軸推力目標値Fcmdθを出力する。
【0059】
推力非干渉化ブロック70は、移動体ユニット21の重心位置に応じてYステージ18の重心の軸周りに作用するY1リニアモータ36の推力fによる回転力と、Y2リニアモータ38の推力fによる回転力とが釣り合うようにY1リニアモータ36の推力fとY2リニアモータ38の推力fとの分配比を設定する推力分配手段であり、第1乃至第3分配演算部84,86,88と、加算器90と、減算器92と、切替スイッチ94とを有する。
【0060】
第1乃至第3分配演算部84,86,88は、重心位置に応じてY1,Y2リニアモータ36,38の推力を分配する分配係数を演算する分配係数演算手段と、分配係数を各推力目標値に乗算して、各推力指令値を算出する指令値演算手段である。また、加算器90及び減算器92は、分配演算部84,86,88によって演算された各推力指令値からY1,Y2リニアモータ36,38への指令値を演算する指令値演算手段である。
【0061】
切替スイッチ94は、X軸位置指令値XrefとX方向フィードバック値Xfbkとの何れか一方を選択的に第1乃至第3分配演算部84,86,88へ入力するための切替手段であり、X軸位置指令値XrefとX方向フィードバック値Xfbkのうちどちらを優先させるかによって接点a,bの何れか一方を接点cに接続させるように構成されている。また、切替スイッチ94は、手動操作でも良いし、あるいは予め設定された条件(閾値)に応じて自動的に切替えるようにしても良い。
【0062】
例えば、第1乃至第3分配演算部84,86,88において、振動成分を含まないX軸位置指令値Xrefに基づいて分配係数を設定する際は、図3に示すように切替スイッチ94を接点a,cが接続された状態にセットする。また、X方向フィードバック値Xfbkに基づいて分配係数を設定する際は、切替スイッチ94を接点b,cが接続された状態に切り替える。
【0063】
Y制御系ブロック66の補償器74で生成されたY軸指令値Fcmdyは、第1、第2分配演算部84,86に入力される。また、θ制御系ブロック68の補償器76で生成されたθ軸推定目標値Fcmdθは、第3分配演算部88に入力される。そして、第1分配演算部84で生成された推定指令値g10と第3分配演算部88で生成されたθ軸推力指令値hとは、加算器90で加算されてY1リニアモータ推力指令値Fcmd1となり、Y1サーボアンプ98で増幅されて、Y1リニアモータ36に入力される。
【0064】
また、第2分配演算部86で生成された推力指令値g20と第3分配演算部88で生成されたθ軸推力指令値hとは、減算器92で減算されてY1リニアモータ推力指令値Fcmd2となり、Y2サーボアンプ100で増幅されて、Y2リニアモータ38に入力される。
【0065】
尚、X制御系64の補償器72から出力されたX軸推力指令値Fcmdxは、Xサーボアンプ96で増幅されて、Xリニアモータ42に入力される。
【0066】
このように、ステージ装置10では、推力非干渉化ブロック70で推力f,fが互いに干渉しないように推力非干渉化を行うことにより、重心の軸周りに作用する回転方向のY1リニアモータ36の推力による回転モーメントとY2リニアモータ38の推力による回転モーメントとが釣り合うようにY1リニアモータ36の推力とY2リニアモータ38の推力との分配比を設定することが可能になる。これにより、Xステージ30の位置に拘わらずYステージ18に回転力が作用することを防止してヨーイング方向への傾きのない状態でYステージ18を駆動することが可能になる。
【0067】
図5は推力非干渉化ブロック70の制御方式の具体例を示す系統図である。
図5に示されるように、Yステージ18及びXステージ30の各軸の位置指令値をXref,Yref,θrefとする。また、Yステージ18及びXステージ30の座標位置は、3軸の位置検出器としての上記Y1リニアエンコーダ52、Y2リニアエンコーダ54、Xリニアエンコーダ58によって検出されるステージ位置を上記座標変換ブロック62によりXYθ制御座標系に変換し、位置フィードバック値Xfbk,Yfbk,θfbkとして検出する。
【0068】
X制御系ブロック64、Y制御系ブロック66、θ制御系ブロック68は、夫々、位置指令値と位置フィードバック値から各軸方向の推力目標値Fcmdx,Fcmdy,Fcmdθを演算する。Y方向及びθ方向の推力指令値は、推力非干渉化ブロック70によりY1リニアモータ推力指令値Fcmd1及び、Y2リニアモータ推力指令値Fcmd2に分配される。
【0069】
次に、分配演算部84,86で演算される分配係数の導出方法について説明する。
上式(9)において、分配係数gは、X方向位置から算出される移動体ユニット21の重心位置からY2リニアモータ38の駆動点A2までの距離L(x)と、Y1リニアモータ36とY2リニアモータ38との間の距離Lとの比に定数gを掛けて導出される。
【0070】
上式(10)において、分配係数gは、X方向位置から算出される移動体ユニット21の重心位置からY1リニアモータ36の駆動点A1までの距離L(x)と、Y1リニアモータ36とY2リニアモータ38との間の距離Lとの比に定数gを掛けて導出される。
【0071】
上式(11)において、分配係数hは、Xステージ30のX方向位置から算出される移動体ユニット21の重心周りのヨーイング方向の慣性モーメントJ(x)と、移動体ユニット21の重心がY1リニアモータ36とY2リニアモータ38との間の中心にある場合の移動体ユニット21の重心周りのヨーイング方向の慣性モーメントJとの比に定数hを掛けて導出される。また、分配係数hは、上記分配係数−hと等しい。
【0072】
ここで、分配係数の演算例を以下に示す。
上記式(13)(14)中の距離L(x),L(x)及び慣性モーメントJ(x)が線形である場合、夫々、次の式(15)〜(17)のように表わされる。
【0073】
【数8】

これらの式(15)〜(17)を前述した上式(9)〜(12)に代入すると、次のようになる。
【0074】
【数9】

上式(9)〜(12)の係数α,β,g10,g20,hを用いた推力非干渉化ブロック70は、図5に示すようになる。そして、上式(18)〜(21)を前述した式(13)(14)に代入すると、推力指令値f,fの分配は次式のように表わせる。
=(−αx+g10)・f+(βx+h)・τ…(22)
=( αx+g20)・f−(βx+h)・τ…(23)
従って、推力指令値f,fは、式(22)(23)に基づいて分配される。
【0075】
このように、ステージ装置10によれば、Xステージ30を移動させることによって、Xステージ30及びYステージ18を合わせた移動体ユニット21の重心が、Y1,Y2リニアモータ36,38の駆動中心(中間位置)に一致しない場合でも、Y方向推力によって発生するθ方向の力のモーメント(ヨーイング方向トルク)をゼロにする2つの自由度(Y方向とθ方向)に対する非干渉条件と、移動体ユニット21の重心周りのヨーイング方向慣性モーメント変動に対する、制御ループゲイン一定条件から導かれる補正を行うことによってYステージ18のθ方向(ヨーイング方向)の回転角を抑制することが可能になる。そのため、Yステージ18にθ方向(ヨーイング方向)の回転力が作用しないようにできるので、ヨーイング方向への傾きのない状態でYステージ18を並進駆動することが可能になる。
【0076】
また、ステージ装置10では、制御システム60によりθ制御系の制御ループゲインも一定に保たれるため、Xステージ30の移動位置によらず、θ制御系の制御特性が変動せず、Yステージ18を安定的に並進駆動することが可能になる。
【0077】
ここで、上記推力非干渉化ブロック70を用いてY1,Y2リニアモータ36,38の推力f,fを制御した場合の実験結果について図6(A)〜(C)を参照して説明する。
【0078】
図6(A)は、Xステージ30をX方向の右端(例えば、Y1リニアモータ36側)に移動させた状態でYステージ18をY方向に移動させた場合の実験結果である。図6(A)中、グラフIは時間の経過に伴うYステージ18のY方向の移動位置を示し、グラフIIはYステージ18のθ方向(ヨーイング方向)の回転角を示す。
【0079】
図6(B)は、Xステージ30をX方向の中間位置(Y1リニアモータ36とY2リニアモータ38との中間)に移動させた状態でYステージ18をY方向に移動させた場合の実験結果である。図6(B)中、グラフIは時間の経過に伴うYステージ18のY方向の移動位置を示し、グラフIIはYステージ18のθ方向(ヨーイング方向)の回転角を示す。
【0080】
図6(C)は、Xステージ30をX方向の左端(例えば、Y2リニアモータ38側)に移動させた状態でYステージ18をY方向に移動させた場合の実験結果である。図6(B)中、グラフIは時間の経過に伴うYステージ18のY方向の移動位置を示し、グラフIIはYステージ18のθ方向(ヨーイング方向)の回転角を示す。
【0081】
図6(A)〜(C)によれば、Xステージ30の位置に拘わらず、Yステージ18のθ方向(ヨーイング方向)の回転角の変化は、極めて微小であり、その変動幅はおよそ0.005〜−0.005(mrad)であるので、推力非干渉化ブロック70により移動体ユニット21の重心周りの回転力と、Xステージ30の移動位置によるθ方向(ヨーイング方向)の慣性モーメント変動による影響が抑制された状態でYステージ18を並進駆動することが可能になることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
尚、上記実施例では、ステージ装置の可動ステージ18を並進動作させる場合を一例として挙げたが、これに限らず、移動体の両端近傍を駆動する一対の駆動手段を制御するように構成された装置であれば、他の分野(例えば、工作機械、半導体製造装置、計測装置等の構成要素である位置決めステージ機構全般に適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明になる移動体位置制御装置の構成要素を示す概念図である。
【図2】本発明になる移動体位置制御装置の一実施例が適用されたステージ装置を示す斜視図である。
【図3】Yステージ18及びXステージ30を簡略化して示す平面図である。
【図4】制御システムの具体例を説明するための系統図である。
【図5】推力非干渉化ブロック70の制御方式の具体例を示す系統図である。
【図6】推力非干渉化ブロック70を用いてY1,Y2リニアモータ36,38の推力f,fを制御した場合の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0084】
10 ステージ装置
12 ベース
14,16 ガイドレール
18 Yステージ
19 Y方向駆動部
30 Xステージ
31 X方向駆動部
36 Y1リニアモータ
38 Y2リニアモータ
42 Xリニアモータ
48 Y1リニアスケール
50 Y2リニアスケール
52 Y1リニアエンコーダ
54 Y2リニアエンコーダ
60 制御システム
62 座標変換ブロック
64 X制御系ブロック
66 Y制御系ブロック
68 θ制御系ブロック
70 推力非干渉化ブロック
72,74,76 補償器
84 第1分配演算部
86 第2分配演算部
88 第3分配演算部
90 加算器
92 減算器
94 切替スイッチ
200 移動体位置制御装置
202 第1移動体(Y1ステージ)
204 第2移動体(Xステージ)
206 移動体ユニット
210 第1駆動手段
220 第2駆動手段
230 第3駆動手段
232 3軸位置検出器
234 座標変換ブロック
236 XYθ位置制御補償器
240 重心位置演算手段
270 分配係数演算手段
280 指令値演算手段
290 慣性モーメント演算手段
300 回転方向推力演算手段
310 駆動推力指令値演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する2方向のうち第1軸方向に移動可能に設けられた第1移動体の両端を駆動する第1、第2駆動手段と、前記第1軸と直交する第2軸方向に移動する第2移動体を駆動する第3駆動手段とを制御し、前記第1移動体と前記第2移動体とからなる移動体ユニットを移動させる移動体位置制御装置において、
前記第2移動体の移動位置に応じた前記移動体ユニットの重心位置を演算する重心位置演算手段と、
前記重心位置演算手段によって演算された重心位置に応じて前記第1駆動手段の推力と前記第2駆動手段の推力との分配比を設定する分配係数を演算する分配係数演算手段と、
該分配係数演算手段によって演算された分配係数を前記第1軸方向の位置制御補償器により演算された第1軸推力目標値に乗算して前記重心の軸周りに作用する第1、第2駆動手段への推力による回転方向の力モーメントが釣り合うように前記第1、第2駆動手段への第1軸推力指令値を演算する指令値演算手段と、
前記第2移動体の移動位置に応じて変化する移動体ユニットの重心位置を軸とする回転方向の慣性モーメントを演算する慣性モーメント演算手段と、
該慣性モーメント演算手段により演算された慣性モーメントと、回転方向の位置制御補償器の推力ゲインとの比が一定となるように前記重心の軸周りの第3軸推力指令値を演算する回転方向推力演算手段と、
前記第1軸推力指令値と前記第3軸推力指令値により前記第1、第2駆動手段への各推力指令値を演算する駆動推力指令値演算手段と、
を備えたことを特徴とする移動体位置制御装置。
【請求項2】
前記分配係数演算手段は、前記移動体ユニットの重心の軸周りに作用する回転方向の第1駆動手段の推力による回転力と前記第2駆動手段による回転力によって、互いに逆方向に作用する2つの回転方向の力のモーメントが釣り合うように前記分配係数を演算することを特徴とする請求項1に記載の移動体位置制御装置。
【請求項3】
前記駆動推力指令値演算手段は、
前記第1、第2駆動手段への各推力指令値をf,f、2軸方向に移動する第2移動体の位置計測値をx、x=0における移動体の重心周りのモーメントが釣り合う第1軸並進方向の推力指令分配の比率をg10,g20、xの変化による前記移動体ユニットの重心と前記第1、第2駆動手段との距離の変化率をα、x=0における重心での第3軸周りの回転方向位置制御ループの推力ゲインをh、xの変化による前記移動体ユニットの重心点での第3軸周り方向の慣性モーメントの変化率をβ、第1軸方向の並進方向推力指令値をf、第3軸周りの回転方向への推力指令値をτとした場合、以下の式
=(−αx+g10)・f+(βx+h)・τ
=( αx+g20)・f−(βx+h)・τ
に基づいて前記推力指令値f,fを分配することを特徴とする請求項1に記載の移動体位置制御装置。
【請求項4】
固定ベースと、該固定ベースに対して第1軸方向に移動可能に設けられた第1ステージと、該第1ステージに前記第1軸方向と直交する第2軸方向に移動可能に設けられた第2ステージと、前記固定ベースに対して前記第1ステージの両端近傍に推力を付与するように配置された第1、第2駆動手段と、前記第2ステージを駆動する第3駆動手段と、前記第1ステージの両端近傍の移動位置を検出する第1、第2位置検出器と、前記第2ステージの移動位置を検出する第3位置検出器と、前記第1ステージと前記第2ステージとからなる移動体ユニットを移動させるように前記第1、第2駆動手段を制御する制御手段とを有するステージ装置において、
前記制御手段は、
前記第2ステージの移動位置に応じた前記移動体ユニットの重心位置を演算する重心位置演算手段と、
前記重心位置演算手段によって演算された重心位置に応じて前記第1駆動手段の推力と前記第2駆動手段の推力との分配比を設定する分配係数を演算する分配係数演算手段と、
該分配係数演算手段によって演算された分配係数を前記第1軸方向の位置制御補償器により演算された第1軸推力目標値に乗算して前記重心の軸周りに作用する第1、第2駆動手段への推力による回転方向の力モーメントが釣り合うように前記第1、第2駆動手段への第1軸推力指令値を演算する指令値演算手段と、
前記第2移動体の移動位置に応じて変化する移動体ユニットの重心位置を軸とする回転方向の慣性モーメントを演算する慣性モーメント演算手段と、
該慣性モーメント演算手段により演算された慣性モーメントと、回転方向の位置制御補償器の推力ゲインとの比が一定となるように前記重心の軸周りの第3軸推力指令値を演算する回転方向推力演算手段と、
前記第1軸推力指令値と前記第3軸推力指令値により前記第1、第2駆動手段への各推力指令値を演算する駆動推力指令値演算手段と、
を備えたことを特徴とするステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−31266(P2006−31266A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207526(P2004−207526)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】