説明

移動体識別システム及び不審者監視システム

【課題】監視エリアにいる人物と携帯機とを対応付けし、携帯機を持たない不審者を確実に検出する。
【解決手段】移動体が携帯機を付帯しているか否か識別する移動体識別システムに関し、監視エリアを探査信号で走査して各方位ごとの物体までの距離を示す測距データを生成する測距部と、測距データから監視エリアにおける移動体の存在位置を検出する物体検出部と、携帯機が発した無線信号を受信する受信部と、受信した無線信号から携帯機の存在方位を検出する方位検出部と、移動体の存在位置および携帯機の存在方位を比較して少なくとも方位が一致性する場合に当該移動体と当該携帯機とを対応付けする対応処理部とを備えることで、人物が真に携帯機を所持しているか否かを的確に判別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリアにおいて移動体が携帯機を付帯しているか否か識別する移動体識別システム、及び、携帯機の付帯有無に応じて不審者判定を行う不審者監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防犯センサで監視エリアに侵入した人物を検出し、また、リーダで正規の利用者が所持するICタグ等の携帯機を読み取り、検出した人物が正規の利用者であるか不審者であるか識別するシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、警戒エリアにおいて熱線センサが移動物体を検知すると、従業員が所持する携帯カードの識別番号の読み取り動作を実施し、登録されている識別番号が読み取れない場合にはこの移動物体を侵入者と判断して異常警報する警備システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−144160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された警備システムは、ある熱線センサが人物を検出したとき検知範囲内に携帯機が存在するか否かを認識できるが、検出した人物が真に携帯機を所持しているか否かまでは判別できない。人物一人が入る程度に人物および携帯機の検知範囲が狭ければ、検出した人物が携帯機を所持していると云えるが、検知範囲が広域にわたる場合、人物とは離れた位置に携帯機が存在していてもその人物を正規利用者と誤認識してしまう。また、複数の人物の中に携帯機を所持していない人物が混ざっていた場合にも、不審者と抽出できない事態が生じ得る。
【0006】
センサの監視範囲は実空間に対してある程度厳密に設定することが可能である。例えば、熱線センサであればフレネルレンズやミラー等の光学系の向きを調節することで監視範囲を設定でき、レーザ光等を利用した測距センサであれば最大監視距離を設定することで監視範囲を規定できる。一方、電波を利用した携帯機の検知範囲は厳密に設定することが難しく、環境の変化にも左右される。特に屋外を対象とした場合には環境変化が大きいため、環境が悪化した状況を考慮して予め検知範囲を広めに調整しておく必要がある。この場合、携帯機の検知範囲はセンサの監視範囲より広範囲に及ぶことになるため、監視範囲の外側近傍に居る人物が持つ携帯機をも検知する可能性がある。このような状況では、監視範囲にいる人物が携帯機を所持していなくとも正規利用者として扱われてしまい、不審者の侵入を検出できないおそれがある。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、検出した移動体が携帯機を付帯しているか否かを的確に判別可能な移動体識別システムの提供を目的とする。また、検出した人物による携帯機の所持/非所持を判別することで不審者判定を高精度に行える不審者監視システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の移動体識別システムは、移動体が携帯機を付帯しているか否か識別する移動体識別システムであって、監視エリアを探査信号で走査して各方位ごとの物体までの距離を示す測距データを生成する測距部と、前記測距データから前記監視エリアにおける移動体の存在位置を検出する物体検出部と、前記携帯機が発した無線信号を受信する受信部と、前記受信した無線信号から前記携帯機の存在方位を検出する方位検出部と、前記移動体の存在位置および前記携帯機の存在方位を比較して少なくとも方位が一致する場合に当該移動体と当該携帯機とを対応付けする対応処理部と、を備えたことを特徴とする。
かかる構成によれば、移動体を検出した方位(測距センサの走査角)と携帯機を検出した方位との一致性を判定条件に移動体と携帯機との対応付けを行うため、移動体が携帯機を付帯しているか否かを的確に判別することができる。
【0009】
また、上記構成において、前記対応処理部は、前記移動体の移動に伴う存在位置の変化に対して前記携帯機の存在方位が追従して変化していることを条件に、当該移動体と当該携帯機とを対応付けする。さらに、前記対応処理部は、前記移動体の移動に伴い当該移動体の存在位置を示す方位が所定以上変化し、且つ、当該移動体の存在方位の変化と前記携帯機の存在方位の変化とが一致することを条件に、当該移動体と当該携帯機とを対応付けする。
かかる構成によれば、移動体と携帯機との方位が一致するだけでなく、移動体の移動に携帯機の移動が追従していることを条件に対応付けをおこなうため、移動体に付帯されていない他の携帯機を誤って対応付けてしまうことを防止し、高精度に付帯判定を実現できる。
【0010】
また、上記構成において、移動体が携帯機を付帯しているか否か識別する移動体識別システムであって、監視エリアにおける移動体の存在位置を検出する物体検出部と、前記携帯機が発した無線信号を受信する受信部と、前記受信した無線信号から前記携帯機の存在方位を検出する方位検出部と、前記移動体の存在位置および前記携帯機の存在方位を比較して少なくとも方位が一致する場合に当該移動体と当該携帯機とを対応付けする対応処理部と、前記対応処理部は、前記移動体の移動に伴う存在位置の変化に対して前記携帯機の存在方位が追従して変化していることを条件に、当該移動体と当該携帯機とを対応付けすることを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するために本発明の不審者監視システムは、携帯機を所持していない不審者の行動を監視する不審者監視システムであって、監視エリアを探査信号で走査して各方位ごとの物体までの距離を示す測距データを生成する測距部と、前記測距データから前記監視エリアにおける人物の存在位置を検出する物体検出部と、前記携帯機が発した無線信号を受信する受信部と、前記受信した無線信号から前記携帯機の存在方位を検出する方位検出部と、前記人物の存在位置および前記携帯機の存在方位を比較して少なくとも方位が一致する場合に当該人物と当該携帯機とを対応付けする対応処理部と、前記人物の存在位置の履歴に応じて所定のイベントを抽出し、イベントが抽出されたとき当該人物に前記携帯機が対応付けされていない場合に異常出力を行う異常判定部と、を備えたことを特徴とする。
さらに、前記人物の存在位置の履歴および前記携帯機との対応付けの有無を少なくとも示す追跡データを人物ごとに蓄積する記憶部を備え、前記異常判定部は、前記追跡データから人物ごとにイベントを抽出して異常判定を行う。
かかる構成によれば、人物が携帯機を所持しているかを人物及び携帯機の検出方位の一致性に基づき識別し、イベント発生時にその人物が不審者であるかの異常判定を適切に行える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体と携帯機との対応付けを的確に行うことで、検出した移動体が携帯機を付帯しているか否かを判別できる。また、検出した人物による携帯機の所持/非所持を判別することで不審者判定を高精度に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の不審者監視システムの概略全体構成図である。
【図2】監視処理部の対応付け処理および異常判定処理の流れの概略を示す図である。
【図3】対応付け処理の実例を説明するための模式図である。
【図4】対応付け処理を示すフローチャートである。
【図5】対応付け処理を示すフローチャートである。
【図6】変形例における対応付け処理の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の移動体識別システムおよび不審者監視システムの実施形態として、以下、建物の敷地内に不正侵入した不審者を検出して異常警報する不審者監視システムを例に説明する。
【0015】
本実施形態の不審者監視システムは、例えばサービス利用者の家屋の監視に適用され、家屋の敷地にあたる庭への不審者の侵入を検出して異常警報を行う。利用者には予め携帯機が与えられ、家屋の出入りの際には携帯機を所持する。不審者監視システムは、敷地外から庭に入った人物を検出して、その存在位置を特定する。また、携帯機から無線信号を受信することで携帯機の存在を検知し、受信した無線信号を解析して携帯機が存在する方位を検出する。そして、検出した人物の存在位置と携帯機の検知方位とを比較し、一致性が高い場合に当該人物が当該携帯機を所持しているとみなし、正規の利用者であると認識する。一方、一致性が低い場合や携帯機が検知されない場合は、検出した人物は携帯機を所持しない不審者であると認識し、例えば庭内での滞留行為や建物内への入館行為に対して異常警報を出力する。
【0016】
このように、本実施形態の不審者監視システムでは、人物および携帯機の方位の一致性に基づき真に携帯機を所持する人物であるかを確認するため、例えば携帯機を持つ利用者が庭に居るとき不審者が侵入した場合であっても、侵入人物が不審者であることを確実に識別して異常警報を行うことができる。
【0017】
以下、図1は、本実施形態の不審者監視システムの概略全体構成図である。
不審者監視システムは、主として、無線タグ10、リーダ20、測距センサ30、監視装置40を含んで構成され、建物の敷地内を監視エリアとする。建物の敷地内や建物に侵入した不審者を検出すると、インターネット網などの通信回線50を介して遠隔の警備センタ60に異常発生を通報する。異常通報を受けた警備センタ60は、現地に警備員を派遣する等の緊急対処を実施する。不審者監視システムに別途カメラを設け、異常発生時の画像を警備センタ60で確認できるように構成しておけば、警備センタ60の監視員が現場の状況を的確に把握できる。
【0018】
無線タグ10は、サービス利用者に予め与えられる携帯端末であり、監視対象である建物の出入りの際に所持される。無線タグ10は、リーダ20との間で電波を用いた無線通信を行い、予め記憶されている無線タグ10ごとに固有の識別情報(以下、タグIDと称す)を含む無線信号を送出する。無線通信方式には、例えばRF−ID(Radio Frequency IDentification)技術を利用可能である。無線タグは、用途に応じて種々の周波数帯が利用可能であり、駆動方式もアクティブ型やパッシブ型などの種類がある。利用周波数や通信方式は限定されるものではないが、本実施形態では、建物の敷地内の監視用途とするため、数m〜数10mといった比較的長距離の通信に適したUHF帯あるいは2.4GHz帯の周波数を利用する無線タグを用い、リーダ20からの質問信号を受信し、自己のバッテリを駆動源としてIDコードを含む応答信号を出力する通信方式とする。
【0019】
リーダ20は、所定の検知範囲に存在する無線タグ10を検知する。検知範囲は、無線タグ10およびリーダ20が送出する電波の信号強度に依存する。リーダ20は、検知範囲に送出した質問信号に対して無線タグ10が発した応答信号を受信し、応答信号に含まれる該無線タグ10を識別するタグIDを抽出する。リーダ20の検知範囲は、監視エリアに居る人物が所持している無線タグ10を検知可能なように、監視エリアを包含させる必要がある。質問信号の到達範囲は空間内に存在する物体の性質など環境によって変化するため、検知範囲は予め監視エリアより広い範囲に設定される。
【0020】
またリーダ20は、質問信号の送出角度に一定の指向性を持たせた送信アンテナを備え、一定時間間隔でアンテナの指向角を切り替えながら質問信号を送出する。例えば、アダプティブアレーアンテナ等、公知の技術を用いることができる。リーダ20は、質問信号の送出角度を切り替えながら所定の周期(例えば200msec)で監視エリア全域に対して無線タグ10の読み取りを実行し、無線タグ10を検知した指向角を該無線タグの存在方位(タグ方位)とする。このタグ方位をIDコードに付してタグ検知データを生成し、監視装置40へ出力する。タグ方位は、例えばリーダ20の視軸を中心に水平方向の一方を正の角度、他方を負の角度とする。また、指向角には一定の角度範囲があるため、無線タグ10を検知したときの指向角の中心角度を代表してタグ方位に用いる。なお、無線タグ10の存在方位を得られる構成であれば、受信信号の入射角度を限定する指向性の受信アンテナを用いてもよく、送信アンテナ及び受信アンテナの双方に指向性を持たせてもよい。
【0021】
測距センサ30は、レーザ光により監視エリアを走査して、レーザ光を反射した物体の位置を検出する。測距センサ30は、例えば波長890nm程度の近赤外線を、等速に回転駆動される走査鏡を用いて反射させながら監視エリアの全域に対して順次投光する。また物体が反射した反射光を受光し、レーザ光の照射結果として測距データを生成する。走査は、監視エリアの範囲(例えば180゜)に対して、所定の周期(例えば200msec)で行われる。測距センサ30は、所定の走査角(例えば0.25゜)ごとにレーザ光の照射から反射光の受光までに要する時間差から被反射物体までの距離を測定し、各走査角ごとの測定距離を1周期分の測距データとして監視装置40へ出力する。測距データは角度と距離とによって表され、測距センサ30を視点とした被反射物体の位置を示す。角度は例えば測距センサ30の視軸を中心に水平方向の一方を正の角度、他方を負の角度とする。
【0022】
ここで、測距データが示す「位置」とタグ検知データが示す「方位」は、監視装置40にて対比を行うため、測距データの「位置」と検知データの「方位」との関係を予め定義して共通の座標系で表現できるようにしておく。本実施形態では、それぞれの視軸が一致するようリーダ20と測距センサ30を近傍に設置し、測距センサ30の走査角とリーダ20の指向角、すなわち測距データにおける角度とタグ検知データの角度が共通の座標系で表現されるよう予め調整される。好ましくはリーダ20と測距センサ30とを同一の筐体内に配置する。
【0023】
なお、本実施形態の不審者監視システムでは一組のリーダ20および測距センサ30で構成しているが、監視対象の領域の形状に応じて複数組のリーダと測距センサを用いて構成する。例えば、建物の周囲4面を監視する場合には、少なくとも2組のリーダ及び測距センサを敷地内の対角に設ける。建物の壁面に設置する場合には、各面に対して計4組のリーダ及び測距センサを設置する。
【0024】
監視装置40は、リーダ20及び測距センサ30と無線または有線で接続され、リーダ20から送出されたタグ検知データ、測距センサ30から送出された測距データを入力して監視処理を実行し、異常検出時には遠隔の警備センタ60へ異常通報を行う。
監視装置40は、主に、記憶部42、通報部44、報知部46、監視処理部48を含んで構成される。
【0025】
記憶部42は、ROMやRAM等で構成され、監視処理部48による各種処理に必要なデータやプログラムや、予め利用者に付与した無線タグのタグID、人物検出用に用いる基準測距データを記憶する。基準測距データは、移動体が存在しない状態で測距センサ30が監視エリアを走査して得た測距データである。また記憶部42は、検出された人物に関する追跡データを書き換え可能に記憶する領域を有し、追跡データは監視処理部48によって随時作成、更新、削除される。
【0026】
通報部44は、通信回線50を介して警備センタ60へ異常信号を送信するための通信インターフェースである。
報知部46は、ブザーやスピーカ、警告ランプ等で構成され、異常が発生した旨を周囲に報知したり不審者を威嚇するための手段である。なお、報知部46はリーダ20及び測距センサ30に設けてもよい。
【0027】
監視処理部48は、測距センサ30から得た測距データとリーダ20から得たタグ検知データを用い、監視エリアにおいて検出された人物と無線タグとの対応付け処理、人物の追跡処理、及び異常判定処理を実行する。
【0028】
図2は、監視処理部の対応付け処理および異常判定処理の流れの概略を示す図である。
監視処理部48は、測距センサ30から得た測距データを入力し(S200)、記憶部42の基準測距データと比較して差分抽出を行う。距離変化が生じた走査角のまとまり(距離変化群)があると、その位置に新たな物体が出現したと認識する。出現物体の大きさは距離変化群の角度範囲と距離値とによって定まり、出現物体の大きさが人を示す程度である場合に人物の存在を認識する。続いて監視処理部48は人物が存在する位置を検出する(S210)。具体的には、人物を示す距離変化群の角度範囲の中心角を人物方位、その角度範囲に対応する距離の平均を人物距離とした人検知データを生成する。測距データ中に複数の距離変化群が抽出された場合は、それぞれについて人物判定および存在位置の検出を行う。
【0029】
処理S200〜210に並行し、監視処理部48はリーダ20から得たタグ検知データを入力し(S220)、検知された無線タグのタグIDとその存在方位を示すタグ方位を検出する(S230)。
次に監視処理部48は、人検知データとタグ検知データとを比較し、人物の存在位置を構成する人物方位とタグ方位とが一致してれば、その人物と無線タグの組を対応付けする(S240)。これにより、当該人物が無線タグを所持していると認識される。人物方位とタグ方位とが一致しない場合は、その時点では当該人物が無線タグを所持しているとは認識されない。
【0030】
図3は、対応付け処理の実例を説明するための模式図である。図3(a)は、人物Pおよび無線タグTの位置が地点aから地点b、地点cへと移動したときの様子を表している。監視エリア内の地点aに無線タグTを所持した人物Pが出現した場合、このとき入力された測距データおよびタグ検知データから人物Pの人物方位と無線タグTのタグ方位とを比較し、角度のズレ量θaを求める。ズレ量θaが所定の閾値(例えば10゜)以内であれば、人物Pと無線タグTとを対応付けする。仮に、地点aで無線タグが検知されなかった場合、あるいは人物方位とタグ方位とのズレ量θaが閾値を超えている場合には、人物Pに無線タグは対応付けされない。
【0031】
監視処理部48は、監視エリアに初めて出現した人物について人物IDを付与し、検出された人物の位置変化を追跡データとして人物IDごとに記憶部42へ記録蓄積していく(S250)。追跡データは、人物ID、人物の存在位置(角度、距離)、対応付けされた無線タグのタグID、無線タグの存在方位(角度)、タイムスタンプ情報(検出時刻)が紐付けられたデータであり、無線タグとの対応付け状態が表されている。
【0032】
再び図3(a)の例で説明すると、まず、監視エリア内の地点aに出現した人物Pに関する追跡データとして、付与した人物IDと存在位置、対応付けられた無線タグTのタグIDと存在方位、検出時刻を記憶部42に記録する。人物Pが地点bへ移動すると、人物Pの人物IDに関する追跡データに、地点bでの存在位置、無線タグTのタグIDおよび存在方位、検出時刻を、追記する。地点cへ移動したときも同様である。なお、地点a、地点b、地点cで検出した人物が同一人物であることは、人物の大きさの類似度や、人物の移動距離と経過時間とから導かれる移動速度の妥当性を判定すること等により行う。
【0033】
図3(b)は、地点dから地点eを経由して地点fへ無線タグを所持しない人物Xが移動すると共に、地点dに居る人物Xにより測距センサ30から死角となる地点gに無線タグtを所持する人物Yが居続けたときの例を表している。人物Xが地点dに居るときは、地点gに居る人物Yが持つ無線タグtが検出されるが、人物Xの人物方位と無線タグtのタグ方位とのズレ量θdが小さいため、人物Xと無線タグtが対応付けられる。よって、人物Xの追跡データには無線タグtのタグIDが記録されることになる。しかし、人物Xが地点e、地点fへと移動したときには、人物Yが所持する無線タグtのタグ方位が変わらないため、人物Xと無線タグtとは対応付けされない。このとき人物Xの追跡データは、地点e及び地点fでの存在位置と検出時刻が追記されるが、無線タグに関する情報は追記されない。
【0034】
監視処理部48は、順次入力される測距データおよびタグ検知データを解析して追跡データを更新する。そして、追跡データ中の各人物IDに関する存在位置や経過時間から所定のイベント発生を抽出する(S260)。イベント抽出の条件は、例えば、監視エリア内に同一人物が居続けていること(滞留)、監視エリアから建物の内部へ移動したこと(入館)、監視エリアから敷地外へ出たこと(退場)、などである。監視エリア内に同一人物が一定時間以上検出され続けると、滞留イベントを抽出する。追跡中の人物が検出されなくなり、当該人物の消失直前の存在位置が建物との境界付近である場合は、入館イベントを抽出する。また、追跡中の人物が検出されなくなり、当該人物の消失直前の存在位置が敷地外との境界付近である場合は、退場イベントを抽出する。
【0035】
滞留イベントまたは入館イベントが発生すると、監視処理部48は、イベント発生が不審者の行動に起因するものか正規利用者に起因するものか判別して異常判定を行う(S270)。具体的には、イベント発生時あるいは直前に更新されたその人物に関する追跡データを参照し、無線タグの対応付け状態を確認する。無線タグが対応付けられていれば、すなわち人物IDに対してタグIDが記録されていれば、正規の利用者による行動と認識して許容する。無線タグが対応付けられていなければ不審者による行動と認識して異常確定し、通報部44による警備センタ60への異常通報、報知部46による異常報知や威嚇といった警報処理を行う。入館イベントまたは退場イベントが発生したときは、監視処理部48はその人物の追跡を終了し、一定時間(例えば10sec)後に当該人物に関する追跡データを消去する。なお、入館イベントが不審者による侵入異常であった場合は、別途異常リセット信号が入力されるまでは追跡終了後も追跡データを保持する。
【0036】
次に、人物と無線タグとの対応付け処理の動作について詳述する。
図4及び図5は、監視処理部における対応付け処理を示すフローチャートである。監視処理部48は、測距センサ30から測距データが入力される都度、対応付け処理を実行する。
【0037】
監視処理部48は、測距データを解析して人物の検出処理を行い、人物が検出されたか否か判定する(S400)。複数の人物が検出された場合は、人物ごとに以降の処理を実施する。人物が一人も検出されない場合は、対応付け処理を終了する。このとき、追跡中の人物が一定時間継続して検出されなくなっている場合は、当該人物の追跡を終了する。
人物が検出された場合は、人物ごとに存在位置を検出し(S402)、追跡データを参照して追跡中の人物であるか否か判定する(S404)。処理対象の人物が追跡中の人物ではない場合は、処理対象の人物に新たに人物IDを付与し(S406)、次の処理S410に進む。追跡中の人物の場合は、既に無線タグと対応付けされている状態(リンク確立)であるか否かを判定し(S408)、リンク確立していなければ処理S410に進む。
【0038】
処理S410において監視処理部48は、タグ検知データの入力に基づき無線タグが検知されたか否か判定する。無線タグが検知されている場合は、タグ検知データを解析し、検知された無線タグの中に他の追跡中の人物とリンク確立されていない無線タグが存在するか判定する(S412)。リンク確立済みでない無線タグがある場合は、それらの無線タグに関するタグ方位を抽出する(S414)。続いて、検知した無線タグのタグ方位をそれぞれ処理対象の人物の存在位置を構成する人物方位と比較して方位のズレ量を算出し(S416)、方位ズレ量が所定の閾値以内であるか判定する(S418)。方位ズレ量が所定の閾値以内であれば、処理対象の人物の人物IDにその無線タグのタグIDを対応付けてリンク確立するとともに(S420)、当該人物IDに関する追跡データを作成して記録する(S422)。そして、検出された人物のうち未処理の人物がいるか否か判定し(S424)、未処理の人物がいれば処理S402へ戻り、全ての人物を処理済みであれば入力された測距データに対する対応付け処理を終了する。なお、一定時間継続して検出されなくなった追跡中の人物がいる場合は、当該人物の追跡を終了する。
【0039】
一方、無線タグが検知されなかった場合(S410のNo)、検知された無線タグが全てリンク確立済みであった場合(S412のYes)、処理対象の人物と無線タグとの方位ズレ量が閾値を超えて大きい場合(S418のNo)は、無線タグとの対応付けを行わずに当該人物IDに関する追跡データを作成して記録する(S422)。
【0040】
処理S408に戻り、処理対象の人物が追跡中であり特定の無線タグとリンク確立済みの場合は(S408のYes)、リンク維持判定処理を行う(S426)。
図5は、リンク維持判定処理の動作を示すフローチャートである。監視処理部48は、タグ検知データの入力に基づき無線タグが検知されたか否か判定する(S500)。無線タグが検知されている場合は、処理対象の人物に関する追跡データを参照して対応付けられた無線タグのタグIDを抽出するとともに、タグ検知データを解析し、検知された無線タグの中にリンク対象の無線タグがあるか否か判定する(S502)。
【0041】
リンク対象の無線タグを検知している場合は、当該無線タグに関するタグ方位を抽出するとともに(S504)、人物方位とタグ方位とを比較して方位ズレ量を算出する(S506)。方位ズレ量が所定の閾値以内であれば対応付け状態(リンク確立)を維持し(S512)、リンク維持判定処理を終了して図4の処理S422に進み、当該人物IDに関する追跡データを更新する。
【0042】
また、リンク対象の無線タグが検知されない場合(S500のNoまたはS502のNo)、方位ズレ量が閾値を超えて大きい場合は(S508のNo)、リンク対象の無線タグとの対応付けが途切れている状態が一定時間(例えば1sec)継続したか否か判定する(S510)。一定時間経過していなければ、一時的にリンク対象の無線タグが検知できない状態や、検知方位の誤差が大きくなっている状態の可能性があるため、対応付け状態を維持する(S512)。しかし、一定時間継続している場合は、処理対象の人物は無線タグを所持していないと認識し、対応付けを解除(リンク解除)する(S514)。そしてリンク維持判定処理を終了して図4の処理S422に進み、当該人物IDに関する追跡データを更新する。
【0043】
以上のように、本実施形態の不審者監視システムによれば、監視エリア内で検出した人物が存在する方位と無線タグが存在する方位との一致性に基づいて人物と無線タグとの対応付けを行うため、検出した人物が真に無線タグを所持していることを高精度に判定することができる。また、複数の人物および複数無線タグが検出された場合でも、各人物が無線タグを所持しているか否か、各人物がどの無線タグを所持しているかを正確に把握することができ、無線タグを所持していない人物を確実に特定可能である。
【0044】
なお、上記実施形態における対応付け処理では、人物方位とタグ方位とが一致すれば人物と無線タグとを対応付けさせているが、この場合、図3(b)に示したような人物Xの死角に人物Yが居ると、人物Yが所持する無線タグtを誤って人物Xに対応付けてしまう可能性がある。人物Xが地点dに居続けた場合には無線タグtとの対応付けが解除されず、不審者の滞留異常を検出できないおそれがある。
そこで、この問題を解決する上記実施形態の変形例を以下に説明する。
【0045】
(変形例)
変形例の不審者監視システムにおいても、全体構成および大部分の処理は上記実施形態と同一であるが、対応付け処理の一部が異なっている。変形例における対応付け処理では、人物と無線タグの検出方位が一致した状態を維持しながら人物が一定以上移動していることを条件に、人物と無線タグとを対応付けする。以下、具体的な処理を説明する。
【0046】
変形例における対応付け処理は、上記実施形態で説明した図4のフローチャートのうち、処理S420を図6の処理S600〜606に置き換えたものである。
監視処理部48は、リンク確立していない人物の人物方位と無線タグのタグ方位とのズレ量が閾値以内であった場合(図4のS418のYes)、処理対象の人物の人物IDと無線タグのタグIDとを仮に対応付けて仮リンク状態とし(S600)、続いて、追跡データを参照し当該人物の存在方位が一定角度(例えば20゜)以上変化しているか否か判定する(S602)。つまり、測距センサ30およびリーダ20から視て方位が変化する方向に人物がある程度移動しているかかを判定する。
【0047】
人物方位が一定角度以上変化している場合は、その間、仮リンク状態が継続していたか否かを判定する(S604)。無線タグを所持した人物の移動により人物方位が変化した場合は、無線タグは人物と共に移動する。このとき無線タグのタグ方位の変化は、人物方位の変化に追従して同一の軌跡を辿るはずである。そこで、処理S604では、人物の方位変化を伴う移動に対して無線タグの移動が追従しているか確認する。
仮リンク状態が継続していた場合には、当該人物と無線タグとの対応付けを行い、リンク確立状態とする(S606)。一方、人物方位がまだ一定角度以上変化していない場合(S602のNo)や、仮リンク状態が継続していなかった場合(S604のNo)は、この時点ではリンク確立させない。処理S600〜S606を終えると、図4の処理S422に進み、当該人物IDに関する追跡データを更新する。なお、仮リンク状態の解除条件は、処理S600による仮対応付けの処理が一定時間更新されないこととする。
【0048】
以上の追従判定の対応付け処理について図3の具体例を用いて説明する。処理対象の人物Pが無線タグTを携帯している例を示す図3(a)では、地点aでは人物Pと無線タグTとは仮リンク状態とし、まだリンク確立されない。人物Pが地点bを経由して地点cへと移動して人物方位が一定以上変化すると、無線タグTのタグ方位も略同一軌跡で変化し、地点a〜地点cの移動の間、人物Pと無線タグTとの仮リンク状態は維持される。よって、人物Pの移動に無線タグTが追従しているから、地点cにて人物Pと無線タグTとが対応付けされてリンク確立状態となる。
【0049】
一方、処理対象の人物Xが無線タグtを携帯していない例を示す図3(b)では、地点dでは人物Xと地点gの人物Yが持つ無線タグtとの方位ズレ量が閾値以内となるため仮リンク状態となる(リンク確立はされない)。しかし、人物Xが地点eを経由して地点fへと移動して人物方位が一定以上変化すると、無線タグtのタグ方位は同様に変化せず、仮リンク状態は維持されない。よって、人物Xの移動に無線タグtが追従していないから、人物Xと無線タグtとが対応付けられることはない。
【0050】
このように、変形例の対応付け処理では、リーダから視て方位が変わる方向へ人物が移動し、且つ、人物の移動に無線タグの移動が追従していることを以って初めて人物と無線タグとを対応付けする。したがって、例えば監視エリアの外側近傍に無線タグを持つ人物が居たり、監視エリア内に無線タグが放置されているような状況であっても、実際に無線タグを所持していない人物に対して無線タグを対応付けされてしまうことを防止できる。延いては、不審者の検出漏れを抑制した高度な不審者監視システムが実現可能となる。
【0051】
なお、上記実施形態および変形例では、距離変化群をなす角度範囲の中心角を人物方位に用いたが、距離変化群をなす角度範囲そのものを人物方位としてもよい。この場合、検知した無線タグのタグ方位が人物の角度範囲に含まれるか、あるいは角度範囲からのズレ量が所定の閾値以内か否かに基づいて対応付けの判定を行う。
【0052】
また、上記実施形態および変形例では、無線タグを検知したときのリーダの指向角の中心をタグ方位に用いたが、指向角の角度範囲そのものをタグ方位としてもよい。この場合、人物方位を示す角度が無線タグを検知した指向角に含まれるか、あるいは指向角からのズレ量が所定の閾値以内か否かに基づいて対応付けの判定を行う。
さらに、距離変化群をなす角度範囲そのものを人物方位とし、指向角の角度範囲そのものをタグ方位としてもよい。この場合は、人物方位とタグ方位とが一定以上重複するか否か、またはズレ量が所定の閾値以内か否かに基づいて対応付けの判定を行う。
【0053】
また、上記実施形態および変形例における対応付け処理では、人物と無線タグとの方位の一致性を判定しているが、人物と無線タグとの位置の一致性を用いて判定してもよい。この場合、無線タグの存在位置を特定する必要があるため、例えば、応答信号の受信強度や、質問信号の送出から応答信号の受信までの時間差を用いて無線タグまでの距離を算出し、タグ方位と距離とから無線タグの位置を算出する。あるいは、互いに検知範囲が重複する複数のリーダを用い、同一タグIDの無線タグからの応答信号を解析し、三角測量技術を利用して無線タグの位置を特定することも可能である。なお、位置の一致性により対応付け処理を行う場合であっても、少なくとも方位の一致性が対応付けの判定条件に含まれることは明らかである。
【0054】
また上記実施形態および変形例では、人物の位置や方位を検出する手段としてレーザ光による測距センサを用いて構成したが、例えば超音波やマイクロ波を利用したセンサや、画像解析により人物を検出する画像センサなど、他のセンサで構成することもできる。
さらに、人物の位置変化を追跡して不審者判定のイベントを抽出する構成に代えて、人物の方位変化によりイベントを抽出して不審者判定を行ってもよい。この場合は、人物を検出するためのセンサは人物の方位のみ検出可能に構成すればよい。
【0055】
また、上記実施形態および変形例における対応付け処理では、方位一致性により人物と無線タグとの対応付けを行うこととしたが、方位一致性に加えて、他の条件を用いてもよい。例えば、タグ方位の検出精度や人体方位の検出精度といった情報を考慮し、検出精度が低い場合は方位一致性の判定基準を厳しくする等、安易に対応付けがなされないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 無線タグ、20 リーダ、30 測距センサ、40 監視装置、42 記憶部、44 通報部、46 報知部、48 監視処理部、50 通信回線、60 警備センタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が携帯機を付帯しているか否か識別する移動体識別システムであって、
監視エリアを探査信号で走査して各方位ごとの物体までの距離を示す測距データを生成する測距部と、
前記測距データから前記監視エリアにおける移動体の存在位置を検出する物体検出部と、
前記携帯機が発した無線信号を受信する受信部と、
前記受信した無線信号から前記携帯機の存在方位を検出する方位検出部と、
前記移動体の存在位置および前記携帯機の存在方位を比較して少なくとも方位が一致する場合に当該移動体と当該携帯機とを対応付けする対応処理部と、
を備えたことを特徴とする移動体識別システム。
【請求項2】
前記対応処理部は、
前記移動体の移動に伴う存在位置の変化に対して前記携帯機の存在方位が追従して変化していることを条件に、当該移動体と当該携帯機とを対応付けする、請求項1に記載の移動体識別システム。
【請求項3】
前記対応処理部は、
前記移動体の移動に伴い当該移動体の存在位置を示す方位が所定以上変化し、且つ、当該移動体の存在方位の変化と前記携帯機の存在方位の変化とが一致することを条件に、当該移動体と当該携帯機とを対応付けする、請求項2に記載の移動体識別システム。
【請求項4】
移動体が携帯機を付帯しているか否か識別する移動体識別システムであって、
監視エリアにおける移動体の存在位置を検出する物体検出部と、
前記携帯機が発した無線信号を受信する受信部と、
前記受信した無線信号から前記携帯機の存在方位を検出する方位検出部と、
前記移動体の存在位置および前記携帯機の存在方位を比較して少なくとも方位が一致する場合に当該移動体と当該携帯機とを対応付けする対応処理部と、
前記対応処理部は、前記移動体の移動に伴う存在位置の変化に対して前記携帯機の存在方位が追従して変化していることを条件に、当該移動体と当該携帯機とを対応付けする、ことを特徴とする移動体識別システム。
【請求項5】
携帯機を所持していない不審者の行動を監視する不審者監視システムであって、
監視エリアを探査信号で走査して各方位ごとの物体までの距離を示す測距データを生成する測距部と、
前記測距データから前記監視エリアにおける人物の存在位置を検出する物体検出部と、
前記携帯機が発した無線信号を受信する受信部と、
前記受信した無線信号から前記携帯機の存在方位を検出する方位検出部と、
前記人物の存在位置および前記携帯機の存在方位を比較して少なくとも方位が一致する場合に当該人物と当該携帯機とを対応付けする対応処理部と、
前記人物の存在位置の履歴に応じて所定のイベントを抽出し、イベントが抽出されたとき当該人物に前記携帯機が対応付けされていない場合に異常出力を行う異常判定部と、
を備えたことを特徴とする不審者監視システム。
【請求項6】
さらに、前記人物の存在位置の履歴および前記携帯機との対応付けの有無を少なくとも示す追跡データを人物ごとに蓄積する記憶部を備え、
前記異常判定部は、前記追跡データから人物ごとにイベントを抽出して異常判定を行う、請求項5に記載の不審者監視システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−230595(P2012−230595A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99209(P2011−99209)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】