移動体通信方法及びその方法に使用する移動体通信システム
【課題】 複数の地上無線局と移動体無線局との間において効率的な再送制御を行い、リアルタイムの無線通信を実現する。
【解決手段】 軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局から連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信し、前記軌道上を移動する移動体の移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信し、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に通知し、前記後段の地上無線局は、前記移動無線局から通知されたシーケンス番号に基づき前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更し、前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するようにした。
【解決手段】 軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局から連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信し、前記軌道上を移動する移動体の移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信し、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に通知し、前記後段の地上無線局は、前記移動無線局から通知されたシーケンス番号に基づき前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更し、前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道線路等の軌道に沿って設けられた複数の地上無線局と前記軌道上を移動する移動体に設けられた移動体無線局との間においてパケットデータを送受信することにより、例えば、移動体に乗車した乗客等が常時インターネットにアクセスしたり、地上側のネットワークに接続された端末装置との間において電子メール等を送受信したりできるようにする移動体通信方法及びその方法に使用する移動体通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報技術の発達に伴い、鉄道分野においても乗客への情報サービスの向上等を狙いとした次世代インテリジェント車両、車内LAN等の開発が積極的に検討されている。例えば、乗客への情報サービスの向上を図るものとして、地上−列車間の無線リンクとしてマイクロセル方式を採用し、鉄道沿線に一定間隔毎に配置した複数の無線基地局から送信したリアルタイム映像や映画、ビデオ映画等の各種情報を列車側に設けられた無線局により受信して列車内LANにより列車内の車内端末装置や乗客毎に設けられた表示装置等に配信する対列車無線通信システム等が提案されている。また、このような列車が山間部やトンネル内等の電波環境が悪い場所を走行する場合であっても、いわゆる再送制御技術を適用して地上−列車間の伝送確率を向上させることが検討されている。なお、再送制御技術を用いる場合には、再送制御に伴い発生するオーバヘッドが通信チャネルの利用効率を妨げることになり、特に動画のようにビットレートの高い情報を伝送する場合には、非効率な再送制御が無線伝送における十分な障害となり得る。
【0003】
例えば、再送処理の負担を軽減し、通信チャネルの有効利用を図る手法として、移動局の通信相手の基地局のみならず、当該移動局から送信された上り情報信号を受信した基地局においても移動局からの上り情報信号の誤り判定を行い、いずれかの基地局において誤りなしとの判定が行われた場合に移動局に対して再送要求を行わず、再送処理を必要最小限にするものが提案されている。
【0004】
また、無効な再送要求情報の受信による再送制御の誤動作を回避する手法として、移動局が制御チャネル切り替えの過渡的な状態にあるとき、すなわち移動体端末が複数の地上局の通信エリアを跨いで移動しているような場合に再送要求情報を無効として取扱い、制御チャネルの切り替えが完了して通信状態が確立してから再送処理を再開すること等が提案されている。
【0005】
【非特許文献1】阿部紘士、他1名,「サブキャリア多重・光伝送方式を用いた対列車ミリ波無線通信システムの検討」,電子・情報・システム部門誌,社団法人電気学会,1997年 8月20日,第117−C巻第9号,1308〜1316頁
【特許文献1】特開2002−152843(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開2000−050364(第7−8頁、図1−6等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような移動体通信システムの場合には、鉄道線路に沿って設置される複数の無線基地局(以下、地上無線局という)が一定間隔をおいて設けられており、また、低電力化や地上無線局相互間の電波干渉等を防止する等の目的から指向性を持たせたアンテナを用いているので、これら複数の地上無線局と列車側に設けられた無線基地局(以下、移動体無線局という)との間で正常な無線伝送を行うことができるのは移動体無線局がいずれかの地上無線局の通信エリア内にある場合に限られており、移動体無線局が一の地上基地局の通信エリア内にある場合には他の地上無線局との間において正常な無線伝送を行うことができず、上述したような通信相手である無線基地局において誤りがあってもいずれかの無線基地局において誤りなしとの判定が行われた場合に再送処理を中止するという処理は適用できないという問題点があった。
【0007】
また、新幹線等はこれら複数の地上無線局により形成された複数の通信エリア内を高速で移動するので、列車の高速移動に伴って移動体無線局と地上無線局との間において通信エリアの切り替えが頻繁に発生し、このような頻繁な通信エリアの切替えの度に再送処理を中断すると、地上無線局又は移動体無線局からそれぞれ送信された情報が他方に到着するまでに多くの時間を要することとなり、列車と地上との間においてリアルタイムの無線通信を行うことが困難になるという問題点もあった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、鉄道線路等の軌道上を移動する移動体に設けられた移動体無線局と軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局との間において、効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる新規な移動体通信システム及びこれに用いる再送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る移動体通信方法は、軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局から連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信し、前記軌道上を移動する移動体の移動無線局により前記複数の地上無線局から送信された一連のパケットデータを受信する移動体通信方法であって、前記地上無線局は、前記一連のパケットデータをそのシーケンス番号に従ってそれぞれ送信し、前記移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信し、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に通知し、前記後段の地上無線局は、前記移動無線局から通知されたシーケンス番号に基づき前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更し、前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するようにしたものである。
【0010】
また、この発明に係る移動体通信方法は、軌道上を移動する移動体の移動体無線局から一連のパケットデータを送信し、前記軌道の沿線に前記移動体の移動方向に間隔を設けて配置された複数の地上無線局により前記移動体無線局から送信された一連のパケットデータを順次に受信する移動体通信方法であって、前記移動体無線局は、前記一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付して送信し、前記地上無線局は、前記移動体無線局から送信され、自局により受信した個別のパケットデータ及び前記移動体無線局から送信され、前段の地上無線局により受信された個別のパケットデータを収集して前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に対して転送する一方、前記収集した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、シーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体無線局に通知し、前記移動体無線局から前記抜けと判定したシーケンス番号が付されたパケットデータを再送させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局において連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータをそれぞれ保持し、各地上無線局から前記軌道上を移動する移動体の移動体無線局に対してそれぞれ送信するように構成したので、軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局と前記軌道上を移動する移動体の移動体無線局との間において効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図1乃至図10を用いて説明する。図1は実施の形態1による移動体通信システムを示すシステム概要図、図2は図1に示す移動体に設けられた移動体内LANシステムを示すシステム概要図である。図1に示すように、実施の形態1による移動体通信通信システムは、鉄道線路の沿線に間隔を設けられた複数の地上無線局と鉄道線路を走行する移動車両に設けられた移動体無線局との間においてパケットデータを送受信するというものであり、これにより、例えば、新幹線等の鉄道線路を走行する移動車両に乗車した乗客等が移動車両内に設けられた表示装置を介して映画、ニュース、広告情報等の各種コンテンツ情報を視聴したり、移動車両内に設けられあるいは持ち込まれた端末装置を介して常時インターネットへのアクセス、地上側のネットワークに接続された端末装置との間における電子メールの送受信等の各種サービスの提供を受けることができるようにするものである。
【0013】
なお、インターネットでは、異なるコンピュータシステム間、いわゆるエンド−エンド間を接続するプロトコルとして、例えばTCP/IP、UDP(User Datagram Protocol)等を使用しているが、本発明に係る移動体通信システムでは、エンド−エンド間においていずれのプロトコルを使用してもよく、エンド−エンド間で使用されるプロトコルにかかわらず、移動体に設けられた移動体無線局と地上側に設けられた複数の地上無線局との間において効率的な再送制御ひいてはリアルタイムの無線通信を実現するものである。
【0014】
図1において、1はインターネット回線等の地上側に設けられたネットワーク回線(以下、地上側ネットワークという)、2a,2bは地上側ネットワーク1に接続されたパソコン等の端末装置、3はニュース、映画又は広告情報等の各種コンテンツ情報を蓄積し、これらの各種コンテンツ情報を配信要求した端末装置に対して配信する情報配信サーバ等の情報提供装置、4は地上側ネットワーク1又は情報提供装置3から出力されたパケットデータを後述する複数の地上無線局に出力する一方、これら複数の地上無線局から出力されたパケットデータを地上側ネットワーク1又は情報提供装置3に出力するパケットデータの中継装置、5は軌道である鉄道線路、6−1乃至6−nは鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局、7は複数の地上無線局6−1乃至6−nを数珠状に接続し、移動体に設けられた移動体無線局に対して送信する一連のパケットデータや各地上無線局6−1乃至6−nにより受信した移動無線局からの個別のパケットデータを後述するように隣り合う地上無線局に対して転送するための光ケーブル等の有線回線、8−1乃至8―nは鉄道線路5上にそれぞれ形成された複数の地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア、9は移動体であって、鉄道線路5上を矢印Aの方向に移動する新幹線、特急列車等の移動車両、10は移動車両9に設けられた移動体側ネットワークである車内LAN(Local Area Network)システム(以下、移動体側ネットワークという)、11は移動車両9に設けられ、移動体側ネットワーク10と接続された移動体無線局である。
【0015】
図1に示すように、実施の形態1による移動体通信システムでは、鉄道線路5上に形成された各地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8―nが部分的に重複しており、各通信エリアの重複部分において移動体無線局11に電波干渉が生じ、鉄道線路5上を移動する移動体無線局11が隣り合う2つの地上無線局から送信された送信データを同時に受信するという場合が発生するが、例えば、後述するように、隣接する2つの地上無線局のうちいずれか一方の地上無線局だけが送信データを送受信するように各地上無線局6−1乃至6−nの送信部を制御したり、隣り合う地上無線局が異なる周波数帯を使用するように構成することにより、移動体無線局11における電波干渉を防止することができる。
【0016】
また、実施の形態1による移動体通信システムでは、複数の地上無線局6−1乃至6−n及び移動体無線局11は、例えば、ミリ波帯の無線信号を使用する。60GHz帯のミリ波信号を使用する場合、免許申請等の手続が不要であり、容易にシステム化を実現することが可能である。そして、複数の地上無線局6−1乃至6−n及び移動体無線局11の送信部及び受信部には、それぞれ指向性アンテナを用いるものとし、移動体無線局11に設けられた指向性アンテナと各地上無線6−1乃至6−nにそれぞれ設けられた指向性アンテナとが移動車両9の前進に従って互いに近付くように対向して配置する。例えば、鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11が地上無線局6−1により形成された通信エリア8−1内に位置するときは、移動体無線局11の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナが地上無線局6−1の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナと対向するように配置され、さらに移動車両9が移動して移動体無線局11が地上無線局6−2により形成された通信エリア8−2内に位置するときは移動体無線局11の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナが地上無線局6−2の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナと対向するように配置する。
【0017】
なお、実施の形態1による移動体通信システムでは、軌道である鉄道線路5に沿って配置される複数の地上無線局6−1乃至6−nのうち、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を先頭の地上無線局、移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを末尾の地上無線局とし、地上無線局6−1と中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成しているが、これとは反対に移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを先頭の地上無線局、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を末尾の地上無線局とし、地上無線局6−nと中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成してもよい。
【0018】
また、図2において、12は移動体無線局11に接続されたハブ(hub)等の集線装置(以下、ハブという)、13はハブ12にそれぞれ接続された移動車両9内のネットワーク回線(以下、車内ネットワークという)、14は移動車両9の各座席等に設けられ、車内ネットワーク13に接続されたノート型パソコン等の端末装置、15は移動車両9の出入口付近等に設けられ、車内ネットワーク13に接続された表示装置である。図2に示すように、移動車両9内に設けられた各端末装置14a,14b、表示装置15はハブ12及び車内ネットワーク13を介して移動車両9に設けられた移動体無線局11と相互に接続されている。車内ネットワーク13に接続された端末装置14aから出力されたパケットデータは車内ネットワーク13を介して移動体無線局11に出力され、移動体無線局11から送信データとして複数の地上無線局6−1乃至6−nにそれぞれ送信される。
【0019】
次に、図1に示す複数の各地上無線局6−1乃至6−nの具体的構成について説明する。図3は図1に示す先頭の地上無線局6−1の具体的構成を示すブロック構成図、図4は地上無線局6−2等、有線回線7を介して両隣りの地上無線局と接続される中間の地上無線局の具体的構成を示すブロック構成図、図5は先頭の地上無線局6−1と反対側の端部に配置される末尾の地上無線局6−nの具体的構成を示すブロック構成図である。上述したとおり、これら図3乃至図5に示す各地上無線局6−1乃至6−nは、有線回線7により隣り合う他の地上無線局と接続されており、この有線回線7を介して移動体無線局11に送信するパケットデータや受信した移動体無線局11からのパケットデータが転送される。なお、図中、太線はパケットデータが流れる経路を示している。まず、図3に示す先頭の地上無線局6−1の構成について説明する。
【0020】
図3において、16は中継装置4を経由して出力された一連のパケットデータに拡張ヘッダをそれぞれ付与する拡張ヘッダ付与部、17は拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を順に付するシーケンス番号付与部である。通常、インターネット等のパケット通信網では、データは端末装置においてパケットに分割して送受信されており、各パケットには分割されたデータ部分の他にヘッダと呼ばれる当該データに関する情報、例えば、送信先及び送信元のアドレス、パケット順序を示す番号、さらにはデータ伝送中のビット誤りを検出する誤り制御符号等が付加されているが、本発明に係る移動体通信システムでは、これら端末装置において付加される各パケットのヘッダをさらに拡張し、この拡張したヘッダに付された情報を用いて鉄道線路5に沿って設けられた複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間におけるパケットデータの送受信を制御する。このように、端末装置において付加されるヘッダの情報は、端末装置間、すなわちエンド−エンド装置間の動作を制御するものであるが、本発明における拡張ヘッダは複数の地上無線局6−1乃至6−nと地上無線局11、すなわちノード−ノード装置間の動作を制御するものである。
【0021】
また、18はシーケンス番号付与部17により連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータを一時的に保持する送信バッファ部、19は各パケットデータの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号に従って送信バッファ部18に保持された一連のパケットデータの送信順序を設定する送信順序設定部、20は移動体無線局11に送信するパケットデータが送信バッファ部18に保持されていな場合等に、これらのパケットデータに代わって移動体無線局11に送信する制御パケットデータを生成する制御パケット生成部、21は送信順序設定部19により設定された送信順序により送信バッファ部18から出力された各パケットデータの拡張ヘッダ又は制御パケット生成部20から出力された制御パケットデータを後述する再送要求設定部28及び再送可否判定部29からの通知に基づいて編集する拡張ヘッダ編集部、22は拡張ヘッダ編集部21から出力された各パケットデータに所望の変調処理を施して送信する送信部である。上述したとおり、送信部22には指向性アンテナ(図示省略)を用いており、送信部22において変調処理が施されたパケットデータは指向性アンテナを介して通信エリア8−1内に送信される。
【0022】
また、23は指向性アンテナを介して移動体無線局11から送信された送信信号を受信し、その受信信号に復調処理を施してパケットデータを復元する受信部、24は受信部23から出力されたパケットデータ(以下、受信データという)の拡張ヘッダに付された情報を解析する拡張ヘッダ解析部、25aは拡張ヘッダ解析部24により拡張ヘッダの情報が解析された受信データ及び中間の地上無線局6−2において受信され有線回線7を介して転送された受信データを収集するパケット収集部、25bはパケット収集部25aにより収集された各受信データの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出するシーケンス番号検出部、25cはシーケンス番号検出部25bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及びシーケンス番号の重複をそれぞれ判定するパケット判定部、26はパケット判定部25cによりシーケンス番号が重複すると判定された受信データ(以下、重複パケットという)を破棄する重複破棄部、27は拡張ヘッダ解析部24から通知された移動体無線局11からの再送要求応答情報に基づいて特定のシーケンス番号が付されたパケットデータについての移動体無線局11に対する再送要求の可否を判定する再送要求可否判定部、28はパケット判定部25cにより抜けと判定されたシーケンス番号が通知され、この抜けと判定されたシーケンス番号に基づいて移動体無線局11に対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部である。
【0023】
また、29は拡張ヘッダ解析部24から通知された移動体無線局11からの再送要求情報と送信バッファ部18に保持されているパケットデータの情報とに基づいて各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータについて各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送の可否を判定する再送可否判定部である。なお、パケット収集部25a、シーケンス番号検出部25b及びパケット判定部25cにより受信パケット処理部25が構成される。
【0024】
また、30はシーケンス番号検出部25bによりシーケンス番号が検出された受信データを移動車両9の移動方向に位置する中間の地上無線局6−2に転送する第1のパケット転送部、32はパケット収集部25aに収集され、重複破棄部26により重複パケットを破棄した後の各受信データから拡張ヘッダを除去して中継装置4に出力する拡張ヘッダ除去部、33は有線回線7を介して接続された中間の地上無線局6−2に設けられた受信電波強度検知部34の受信レベルが通知され、その通知された受信レベルに基づいて自局の送信部22の送信動作を制御する電波放射制御部である。
【0025】
なお、拡張ヘッダ付与部16、シーケンス番号付与部17及び拡張ヘッダ除去部32によりパケット拡張処理部35が構成される。実施の形態1では、中継装置4と接続される先頭の地上無線局6−1内に拡張ヘッダ付与部16、シーケンス番号付与部17及び拡張ヘッダ除去部34により構成されるパケット拡張処理部35を設ける構成としたが、このパケット拡張処理部35を先頭の地上無線局6−1と別に設けてもよく、例えば、中継装置4と先頭の地上無線局6−1との間にパケット拡張処理部35を設ける構成としてもよい。
【0026】
次に、図4及び図5に示す中間及び末尾の地上無線局の構成について説明する。まず、図4に示す中間の地上無線局6−2、6−3等は、第2のパケット転送部31が設けられ、図3に示すパケット拡張処理部35が設けられていない点で先頭の地上無線局6−1と相違し、他の構成は先頭の地上無線局6−1と共通する。そして、先頭の地上無線局6−1に設けられたパケット拡張処理部35から連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが有線回線7を介して転送され、その転送された一連のパケットデータを自局の送信バッファ部21に保持する。また、末尾の地上無線局6−nは、第2のパケット転送部31が設けられ、図3に示すパケット拡張処理部35及び第1のパケット転送部30が設けられていない点で先頭の地上無線局6−1と相違し、他の構成は先頭の地上無線局6−1と共通する。そして、中間の地上無線局と同様に先頭の地上無線局6−1に設けられたパケット拡張処理部35から連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが有線回線7を介して転送され、その転送された一連のパケットデータを自局の送信バッファ部21に保持する。
【0027】
上述したとおり、先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等に設けられた第1のパケット転送部30は、受信パケット処理部25においてシーケンス番号が検出された受信データを移動車両9の移動方向に位置する地上無線局にそれぞれ転送し、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nに設けられた第2のパケット転送部31は、重複破棄部26により重複パケットが破棄された後の受信データを移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局にそれぞれ転送する。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示し、これらについての詳細な説明は省略する。
【0028】
次に、図1及び図2に示す移動体無線局11の具体的構成について説明する。図6は図1等に示す移動体無線局11の具体的構成を示すブロック構成図である。なお、図中、太線は図3乃至図5に示す各地上無線局6−1乃至6−nと同様パケットデータが流れる経路を示している。図6において、36は図1等に示す移動体側ネットワーク10に接続された端末装置14等から出力された一連のパケットデータに拡張ヘッダをそれぞれ付与する拡張ヘッダ付与部、37は拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付するシーケンス番号付与部、例えば、移動体側ネットワーク10を介して出力された一連のパケットデータが200個である場合、これら200個のパケットデータに拡張ヘッダがそれぞれ付与され、これら一連のパケットデータの拡張ヘッダに1〜200までの連続したシーケンス番号が順に付される。このように、移動体無線局11においても複数の地上無線局側に対して送信する一連のパケットデータのヘッダ部を拡張ヘッダによりそれぞれ拡張し、これら拡張ヘッダに連続するシーケンス番号をそれぞれ付する。
【0029】
また、38はシーケンス番号付与部37により連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータを一時的に保持する送信バッファ部、39は各パケットデータの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号に従って送信バッファ部38に保持された一連のパケットデータの送信順序を設定する送信順序設定部、40は複数の地上無線局6−1乃至6−nに送信するパケットデータが送信バッファ部38に保持されていな場合等に、これらのパケットデータに代わって複数の地上無線局6−1乃至6−nに送信する制御パケットデータを生成する制御パケット生成部、41は送信順序設定部39により設定された送信順序により送信バッファ部38から出力された各パケットデータの拡張ヘッダ又は制御パケット生成部40から出力された制御パケットデータを後述する再送要求設定部48及び再送可否判定部49からの通知に基づいて編集する拡張ヘッダ編集部、42は拡張ヘッダ編集部41から出力された各パケットデータに所望の変調処理を施して送信する送信部である。上述したとおり、送信部42には指向性アンテナ(図示省略)を用いており、送信部42において変調処理が施されたパケットデータは指向性アンテナを介して各地上無線局にそれぞれ送信される。
【0030】
また、43は指向性アンテナを介して鉄道線路に沿って設けられた各地上無線局6−1乃至6−nから送信された送信信号を受信し、その受信信号に復調処理を施してパケットデータを復元する受信部、44は受信部43から出力されたパケットデータ(以下、受信データという)の拡張ヘッダに付された情報を解析する拡張ヘッダ解析部、45aは拡張ヘッダ解析部44により拡張ヘッダの情報が解析された受信データを収集するパケット収集部、45bはパケット収集部45aにより収集された各受信データの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出するシーケンス番号検出部、45cはシーケンス番号検出部45bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及びシーケンス番号の重複をそれぞれ判定するパケット判定部、46はパケット判定部45cによりシーケンス番号が重複すると判定された受信データ(以下、重複パケットという)を破棄する重複破棄部、47は拡張ヘッダ解析部44から通知された各地上無線局6−1乃至6−nからの再送要求応答情報に基づいてパケット判定部45cにより抜けと判定されたシーケンス番号のパケットデータについて再送要求の可否を判定する再送要求可否判定部、48はパケット判定部45cにより抜けと判定されたシーケンス番号が通知され、この抜けと判定されたシーケンス番号に基づいて各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部である。
【0031】
また、49は拡張ヘッダ解析部44から通知された各地上無線局6−1乃至6−nからの再送要求情報と送信バッファ部38に保持されているパケットデータの情報とに基づいて各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータについて各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送の可否を判定する再送可否判定部である。なお、パケット収集部45a、シーケンス番号検出部45b及びパケット判定部45cにより受信パケット処理部45が構成される。
【0032】
また、50はパケット収集部45aに収集され、重複破棄部46により重複パケットを破棄した後の各受信データから拡張ヘッダを除去して移動体側ネットワーク10に出力する拡張ヘッダ除去部である。なお、拡張ヘッダ付与部36、シーケンス番号付与部37及び拡張ヘッダ除去部50によりパケット拡張処理部51が構成される。実施の形態1では、移動体無線局11内にパケット拡張処理部51を設ける構成としたが、このパケット拡張処理部51を移動体無線局11と別に設けてもよく、例えば、移動体側ネットワーク10と移動体無線局11との間にパケット拡張処理部51を設けてもよい。このように、移動車両9に設置される移動体無線局11も図3乃至図5に示す各地上無線局と同様の構成を有しており、これらの構成により各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送要求動作、各地上無線局6−1乃至6−nからの再送要求に対する再送動作等を行う。
【0033】
次に、複数の地上無線局6−1乃至6−n及び移動体無線局11の動作を中心に実施の形態1による移動体通信システムの送受信動作について説明する。まず、複数の地上無線局6−1乃至6−nから一連のパケットデータを送信し、これを鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11により受信する場合について説明する。例えば、地上側ネットワーク1に接続された端末装置2aと鉄道線路5上を走行する移動車両9内に設けられた端末装置14aとの間で電子メール等の送受信を行う場合において、端末装置2aから端末装置14aに対して送信されたパケットデータは、そのヘッダに付された送信先アドレスに従って移動車両9が走行する鉄道線路5の近くに配置された中継装置4に出力される。中継装置4は他の端末装置2bや情報提供装置3から出力されたパケットデータも中継しており、中継装置4により中継された各パケットデータは移動体無線局11に対して送信される一連のパケットデータとしてパケット拡張処理部35が設けられた先頭の地上無線局6−1に出力される。
【0034】
先頭の地上無線局6−1に出力された一連のパケットデータは、まずパケット拡張処理部35に入力され、拡張ヘッダ付与部16により拡張ヘッダが付与される。拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータはシーケンス番号付与部17に出力され、シーケンス番号付与部17は、拡張ヘッダ付与部16から出力された各パケットデータの拡張ヘッダに送信順序番号である連続するシーケンス番号を付して出力する。例えば、中継装置4を介して出力された一連のパケットデータが200個である場合、これら200個のパケットデータに拡張ヘッダがそれぞれ付与され、これら一連のパケットデータの拡張ヘッダに1〜200までの連続するシーケンス番号が順に付される。このシーケンス番号が付されたパケットデータは先頭の地上無線局6−1に設けられた送信バッファ部18に保持される他、有線回線7を介して中間の地上無線局6−2乃至末尾の地上無線局6−nにもそれぞれ転送される。これにより、パケット拡張処理部35において連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが全ての地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18にそれぞれ保持される。
【0035】
そして、鉄道線路5上を走行する移動車両9が複数の地上無線局6−1乃至6−nにより形成された通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、各地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18に保持された各パケットデータが出力され、送信順序設定部19により設定された送信順序により拡張ヘッダ編集部21に出力される。拡張ヘッダ編集部21は、送信順序設定部19により設定された送信順序にて出力された各パケットデータに付与された拡張ヘッダの情報を再送要求設定部28及び再送可否判定部29から通知されたシーケンス番号等により編集する。例えば、再送要求設定部28から移動体無線局11に再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求情報を有効とし、そのシーケンス番号を再送要求情報に記述し、再送可否判定部29から移動体無線局11への再送が可能と判定されたパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求応答情報を再送可能とする。
【0036】
送信部22は、拡張ヘッダ編集部21から出力されたパケットデータに所望の変調処理を施した後、指向性アンテナを介して各通信エリア8−1乃至8−n内にそれぞれ送信する。このように、中継装置4を介して出力された一連のパケットデータは、鉄道線路5の沿線い間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18にそれぞれ保持され、全ての地上無線局6−1乃至6−nの送信部22から移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して一斉に送信される。
【0037】
なお、図7は図1等に示す各地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図であり、図7(a)は各地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18に保持され、移動体無線局11に対して送信されるパケットデータのデータ構成図、図7(b)は制御パケット生成部20により生成され、送信バッファ部18に保持されたパケットデータがない場合等に移動体無線局11に対して送信される制御用パケットデータのデータ構成図である。図7において、51は端末装置2a等のエンド端末装置から出力された元のパケットデータ、52は各エンド端末から出力された元のパケットデータ51に付与された拡張ヘッダ、53は制御パケット生成部20により生成された制御パケットである。図7に示すように、各エンド端末から出力された元のパケットデータ51に付与される拡張ヘッダ52と制御パケット生成部20から出力される制御パケット53とはほぼ同様のデータ構成であり、たとえ送信バッファ部18に保持されたパケットデータがないような場合でも制御パケット生成部20から出力された制御パケット53を送信することにより拡張ヘッダ52と同様の情報を移動体無線局11に対して送信することができる。
【0038】
また、図7において、52a乃至52fは拡張ヘッダ52に付された情報であって、各地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間、すなわちノード端末装置間における再送制御に用いられる制御情報、53a乃至53eは制御パケット53に付された情報であって、各地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間(ノード端末装置間)における再送制御に用いられる制御情報である。具体的に説明すると、52a,53aはいずれの地上無線局から送信されたパケットデータであるかを識別するための識別IDであるサブネットID、52b,53bは各地上無線局6−1乃至6−nから送信されたパケットデータの種類を示すフレームタイプ、52c,53cは移動体無線局11から送信された再送要求情報に対する再送の可否を記述する再送要求応答情報、52d及び52e,53d及び53eは移動体無線局11に対する再送要求の有無、及びその再送要求するパケットデータを記述する再送要求情報、52fは図3に示す送信番号付与部17により付された各パケットデータのシーケンス番号である。このシーケンス番号52fが移動体無線局11におけるシーケンス番号の抜けや重複の判定に用いられる。そして、拡張ヘッダ52又は制御パケット53に付されたこれらの情報52a乃至52f、53a乃至53eが拡張ヘッダ編集部21によりそれぞれ編集されて送信部22に出力される。
【0039】
なお、エンド端末から出力された元のパケットデータ51には送信先アドレスの他に送信元アドレスやパケット順序を示す番号等が記述されたヘッダが付されているが、このようなヘッダに付される情報はいわゆるエンド端末装置間の制御に用いられる情報であり、図1に示すような複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間における再生制御に用いることができない。しかしながら、実施の形態1による移動体通信システムでは、端末装置2a等のエンド端末装置から出力されたパケットデータ51に拡張ヘッダ52を付与し、この拡張ヘッダに付された情報に基づいて複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間、すなわちノード端末装置間における再送制御を行っており、後述するような効率的な再送制御ないしリアルタイムの通信を行うことが可能である。
【0040】
次に、移動体無線局11による受信動作について説明する。移動体無線局11は、指向性アンテナを用いており、鉄道線路5上に形成された通信エリア8−1乃至8−n内のいずれかに位置するときに対応する地上無線局から送信されたパケットデータを受信することができ、例えば、移動体無線局11が地上無線局6−1の通信エリア8−1に位置するときは地上無線局6−1から送信されたパケットデータを受信部43に設けられた指向性アンテナにより受信する。また、移動車両9が移動して移動体無線局11が地上無線局6−2の通信エリア8−2に位置するときは地上無線局6−2から送信されたパケットデータを受信部43に設けられた指向性アンテナにより受信する。このように、移動体無線局11は移動車両9の走行に伴って通信相手となる地上無線局を地上無線局6−1→地上無線局6−2→・・・→地上無線局6−nと切り替えながら各地上無線局6−1乃至6−nから送信された個別のパケットデータをそれぞれ受信する。
【0041】
受信部43に設けられた指向性アンテナにより受信された各パケットデータは、受信部43において復調処理、誤り訂正処理等が施された後、拡張ヘッダ解析部44に出力される。拡張ヘッダ解析部44は、受信部43の復調処理により復元された受信データ、すなわち各地上無線局6−1乃至6−nから送信されたパケットデータに付与された拡張ヘッダの情報を解析し、再送要求応答情報52cは再送要求可否判定部47に通知し、再送要求情報52d及び52eは再送可否判定部49に通知する。そして、拡張ヘッダの情報を解析した各受信データを受信パケット処理部45のパケット収集部45aに収集される。シーケンス番号検出部45bはパケット収集部45aに収集された各受信データに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、パケット判定部45cはシーケンス番号検出部45bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及び重複したシーケンス番号をそれぞれ判定する。パケット判定部45cにより重複と判定されたシーケンス番号の受信データは重複破棄部46に出力されて破棄され、抜けと判定されたシーケンス番号については再送要求設定部48に通知される。
【0042】
上述したとおり、鉄道線路5に沿って設置される複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信される一連のパケットデータには連続するシーケンス番号が付されており、例えば、シーケンス番号検出部45bにより検出された各受信データのシーケンス番号が1〜7、9となっている場合、シーケンス番号8のパケットデータが受信されておらず、シーケンス番号8がシーケンス番号の抜けとして検出される。また、移動体無線局11は複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信されたパケットデータをそれぞれ受信するため、同一シーケンス番号のパケットデータを複数受信する場合があり、シーケンス番号が重複した受信データを重複パケットとして検出する。
【0043】
なお、再送要求可否判定部47は、拡張ヘッダ解析部44から通知された再送要求応答情報により各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求したパケットデータの再送の可否を判定しており、その判定結果を再送要求設定部48に通知する。そして、再送要求設定部48は、パケット判定部45cにより抜けと判定されたシーケンス番号と再送要求可否判定部47の判定結果とから各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定し、その設定したシーケンス番号を拡張ヘッダ編集部41に通知する。例えば、パケット判定部45cから通知されたシーケンス番号に基づく再送要求を行い、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送不可と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求しても各地上無線局6−1乃至6−nから再送されないと判断し、当該シーケンス番号に基づく再送要求の設定を中止する。一方、、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送可能と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求すると各地上無線局6−1乃至6−nから再送されると判断し、そのシーケンス番号がシーケンス番号検出部45bにより検出されるまで再送要求の設定を継続する。
【0044】
また、再送可否判定部49は、拡張ヘッダ解析部44から通知された再送要求情報52d及び52eと送信バッファ部38に保持されたパケットデータの情報とから各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送の可否を判定し、その再送要求されたパケットデータの再送が可能な場合は、その再送要求されたパケットデータのシーケンス番号を各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送するパケットデータのシーケンス番号として送信順序設定部39に通知すると共に、拡張ヘッダ編集部41に各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を通知する。なお、各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータが送信バッファ部38に保持されておらず、当該パケットデータの再送が不可能である場合は、拡張ヘッダ編集部41に各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を通知する。
【0045】
そして、送信順序設定部39は、再送可否判定部49からシーケンス番号が通知されるとその通知されたシーケンス番号に基づいて送信バッファ部38に保持された各パケットデータの送信順序を変更する。例えば、送信順序設定部39が送信バッファ部38に保持されたパケットデータをシーケンス番号に従って読み出し、シーケンス番号10のパケットデータを読み出している途中で再送可否判定部49からシーケンス番号8が各地上無線局6−1乃至6−nに再送するパケットデータのシーケンス番号として通知されると、送信順序設定部39はシーケンス番号10のパケットデータの読み出しを中止し、再度シーケンス番号8からパケットデータを順に読み出して拡張ヘッダ編集部41に出力する。
【0046】
拡張ヘッダ編集部41は、送信順序設定部39によって送信順序が変更されたパケットデータが入力されると、その送信順序が変更されたパケットデータの拡張ヘッダを編集する。例えば、送信順序設定部39により送信順序が変更される場合は、再送可否判定部49から拡張ヘッダ編集部41に対して各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨が通知されるので、拡張ヘッダ編集部41は各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報52cに各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を設定する。一方、送信順序設定部39により送信順序が変更されない場合は、再送可否判定部49から各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨通知されるので、拡張ヘッダ編集部41は自局から送信する各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報56cに各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を設定する。
【0047】
また、拡張ヘッダ編集部41には再送要求設定部48から各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知されており、拡張ヘッダ編集部41は、再送要求設定部28から通知されたシーケンス番号に基づいて各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求情報52d及び52eに再送要求するパケットデータの有無及びその再送要求するシーケンス番号をそれぞれ記述する。拡張ヘッダ編集部41により拡張ヘッダの編集が行われた核パケットデータは送信部42に出力され、送信部42から各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送される。
【0048】
一方、受信パケット処理部45のシーケンス番号検出部45bによりシーケンス番号が検出され、重複破棄部46により重複パケットが破棄された後の受信パケットは拡張ヘッダ除去部50に出力される。拡張ヘッダ除去部50は、受信パケット処理部45から出力された各受信データの拡張ヘッダをそれぞれ除去し移動車両9内に設けられた移動体側ネットワーク10に出力する。移動体側ネットワーク10に出力された各パケットデータには送信先のアドレス情報等が記述されたヘッダが付加されており、移動体側ネットワーク10に出力された各パケットデータはそのヘッダに記述された送信先のアドレス情報に基づいて送信先である端末装置14aにそれぞれ届けられる。
【0049】
このように、移動車両9に設けられた移動体無線局11では、受信データのシーケンス番号を検出し、シーケンス番号に抜けがある場合はそのシーケンス番号に基づいて各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求し、同一シーケンス番号の重複パケットを受信した場合にはその重複パケットを破棄するように構成したので、鉄道線路5に沿って設けられた複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信された一連のパケットデータを鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11により確実に受信し、移動車両9内に設けられた移動体側ネットワーク10に出力することができる。
【0050】
ここで、上述したような複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動体無線局11に対して送信されたパケットデータの流れについて図8を用いて説明する。図8は図1に示す複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。図8において、54は各地上無線局6−1乃至6−nの送信部22からそれぞれ送信されたパケットデータであり、数字は各パケットデータの拡張ヘッダ56に付された連続するシーケンス番号をそれぞれ示している。なお、図8では地上無線局6−1から6−3までの間におけるパケットデータの流れについて示しているが、地上無線局6−4以降のパケットデータの流れも同様であり、これらについての図示説明は省略する。上述したとおり、複数の地上無線局6−1乃至6−nは有線回線7を介してそれぞれ接続され、各地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18には連続するシーケンス番号が付された同一内容の一連のパケットデータがそれぞれ保持されており、移動車両9が各地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、各地上無線局6−1乃至6−nは、図8に示すように自局の送信バッファ部18に保持された一連のパケットデータの送信を一斉に開始する。移動体無線局11は、移動車両9の走行に伴い鉄道線路5上を移動しており、通信相手を先頭の地上無線局6−1→中間の地上無線局6−2→中間の地上無線局6−3の順に切り替えながら各地上無線局6−1乃至6−nから送信された個別のパケットデータをそれぞれ受信する。
【0051】
そして、シーケンス番号の抜けを検出した場合にはその抜けと判定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報56d及び56eを対応する地上無線局に対してそれぞれ通知する。例えば、通信エリア8−1においては、移動体無線局11はシーケンス番号8に基づく再送要求情報56d及び56eを地上無線局6−1に対して通知しており、通信エリア8−2及び通信エリア8−3においては、シーケンス番号10,15に基づく再送要求情報56d及び56eを地上無線局6−2及び6−3に対してそれぞれ通知する。
【0052】
各地上無線局6−1乃至6−nは、自局の送信バッファ部18に保持された一連のパケットデータを各パケットデータに付されたシーケンス番号の順序に従ってそれぞれ送信しているが、移動体無線局11から通知された再送要求情報56d及び56eを受信すると、その再送要求情報56d及び56eにより指定されたパケットデータの再送の可否を判定し、当該再送要求されたパケットデータの再送が可能と判定した場合は、移動体無線局11に対して送信するパケットデータの順序を変更し、再送要求情報56d及び56eにより指定されたシーケンス番号のパケットデータから送信バッファ部18に保持されたパケットデータの再送を行うと共に、再送要求応答情報52cによりその旨を移動体無線局11に対して送信する。移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が不可と判断した場合は、再送要求応答情報52cによりその旨を移動体無線局11に対して送信する。
【0053】
例えば、通信エリア8−2においては、移動体無線局11からシーケンス番号10に基づく再送要求情報56d及び56eが地上無線局6−2に対して通知されているが、地上無線局6−2は、自局の送信バッファ部18に地上無線局6−1と同一内容の一連のパケットデータを保持しており、当該再送要求されたシーケンス番号10からパケットデータを再送することができる。また、通信エリア8−3においては、移動体無線局11からシーケンス番号15に基づく再送要求情報56d及び56eが地上無線局6−3に対して通知されているが、地上無線局6−3も自局の送信バッファ部18に地上無線局6−1と同一内容の一連のパケットデータが保持されており、当該再送要求されたシーケンス番号15からパケットデータを再送することができる。
【0054】
このように、実施の形態1による移動体通信システムでは、鉄道線路5に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nが自局の送信バッファ部18に連続するシーケンス番号が付された同一内容の一連のパケットデータをそれぞれ保持しているので、移動体無線局11から通知された再送要求情報に記述されたシーケンス番号に基づいて移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送を行うことができる。また、移動体無線局11が受信した各パケットデータに付された連続するシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを検出し、その抜けと判定したシーケンス番号に基づく再送要求信号を通知するので、図8に示すように、移動車両9の走行に伴って移動体無線局11の通信相手が順次切り替わり、通信相手の切り替わりによって抜けパケットが発生するような場合であっても、その切り替わった後の地上無線局、例えば、地上無線局6−2,6−3等が移動体無線局11から通知された再送要求信号を受信し、その受信した再送要求信号により指定されたシーケンス番号に基づいて移動体無線局11から再送要求されたパケットデータをそれぞれ再送することができ、鉄道線路5上を移動する移動体無線局11が複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信される一連のパケットデータを全て受信することができる。
【0055】
次に、移動車両9に設けられた移動体無線局11からパケットデータを送信し、これを鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにより受信する場合について説明する。例えば、端末装置14aから端末装置2aに対して送信されたパケットデータは移動車両9内に設けられた移動体側ネットワーク10を介して移動体無線局11に出力される。移動体無線局11に出力された一連のパケットデータは、まずパケット拡張処理部51に入力され、拡張ヘッダ付与部36により拡張ヘッダが付与される。拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータはシーケンス番号付与部37に出力され、シーケンス番号付与部37は、拡張ヘッダ付与部36から出力された各パケットデータの拡張ヘッダに送信順序番号である連続するシーケンス番号を付して出力する。例えば、移動体側ネットワーク10を介して出力された一連のパケットデータが200個である場合、これら200個のパケットデータに拡張ヘッダがそれぞれ付与され、これら一連のパケットデータの拡張ヘッダに1〜200までの連続するシーケンス番号が順に付される。連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータは送信バッファ部38に保持される。
【0056】
そして、移動車両9が複数の地上無線局6−1乃至6−nにより形成された通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、移動体無線局11の送信バッファ部38に保持された各パケットデータが出力され、送信順序設定部39により設定された送信順序により拡張ヘッダ編集部41に出力される。拡張ヘッダ編集部41は、送信順序設定部39により設定された送信順序にて出力された各パケットデータに付与された拡張ヘッダの情報を再送要求設定部48及び再送可否判定部49から通知されたシーケンス番号等により編集する。例えば、再送要求設定部48から各地上無線局6−1乃至6−nに再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求情報を有効とし、そのシーケンス番号を再送要求情報に記述し、再送可否判定部49から各地上無線局6−1乃至6−nへの再送が可能と判定されたパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求応答情報を再送可能とする。
【0057】
送信部42は、拡張ヘッダ編集部41から出力されたパケットデータに所望の変調処理を施した後、指向性アンテナを介して各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信する。このように、移動車両9内に設けられた端末装置14aから出力された一連のパケットデータは、拡張ヘッダ付与部36により付与された拡張ヘッダに連続するシーケンス番号がそれぞれ付され、そのシーケンス番号に従って送信部42から鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信される。
【0058】
なお、図9は図1等に示す移動車両9に設けられた移動体無線局11から各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図であり、図9(a)は送信バッファ部38に保持され、各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されるパケットデータのデータ構成図、図9(b)は制御パケット生成部40により生成され、送信バッファ部38に保持されたパケットデータがない場合等に各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信される制御用パケットデータのデータ構成図である。図9において、55は移動体側ネットワーク10に接続された端末装置14a等のエンド端末装置から出力された元のパケットデータ、56は各エンド端末から出力された元のパケットデータ51に付与された拡張ヘッダ、57は制御パケット生成部40により生成された制御パケットである。図9に示すように、各エンド端末から出力された元のパケットデータ55に付与される拡張ヘッダ56と制御パケット生成部40から出力される制御パケット57とはほぼ同様のデータ構成であり、たとえ送信バッファ部38に保持されたパケットデータがないような場合でも制御パケット生成部40から出力された制御パケット57を送信することにより拡張ヘッダ56と同様の情報を各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信することができる。
【0059】
また、図9において、56a乃至56fは拡張ヘッダ55に付された情報であって、移動体無線局11と各地上無線局6−1乃至6−nとの間、すなわちノード端末装置間における再送制御に用いられる制御情報、57a乃至57eは制御パケット56に付された情報であって、各地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間(ノード端末装置間)における再送制御に用いられる制御情報である。具体的に説明すると、56a,57aはいずれの地上無線局から送信されたパケットデータであるかを識別するための識別IDである車両ID、56b,57bは移動体無線局11から送信されたパケットデータの種類を示すフレームタイプ、56c,57cは各地上無線局6−1乃至6−nから送信された再送要求情報に対する再送の可否を記述する再送要求応答情報、56d及び56e,57d及び57eは各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送要求の有無、及びその再送要求するパケットデータを記述する再送要求情報、56fは図3に示す送信番号付与部37により付された各パケットデータのシーケンス番号である。このシーケンス番号56fが各地上無線局6−1乃至6−nにおけるシーケンス番号の抜けや重複の判定に用いられる。そして、拡張ヘッダ56又は制御パケット57に付されたこれらの情報56a乃至56f、57a乃至57eが拡張ヘッダ編集部41によりそれぞれ編集されて送信部42に出力される。
【0060】
なお、エンド端末から出力された元のパケットデータ51には送信先アドレスの他に送信元アドレスやパケット順序を示す番号等が記述されたヘッダが付されているが、このようなヘッダに付される情報はいわゆるエンド端末装置間の制御に用いられる情報であり、図1に示すような複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間における再生制御に用いることはできない。しかしながら、実施の形態1による移動体通信システムでは、端末装置14a等のエンド端末装置から出力されたパケットデータ55に拡張ヘッダ56を付与し、この拡張ヘッダに付された情報に基づいて移動車両9に設けられた移動体無線局11と複数の地上無線局6−1乃至6−nとの間、すなわちノード端末装置間における再送制御を行っており、後述するような効率的な再送制御ないしリアルタイムの通信を行うことが可能である。
【0061】
次に、各地上無線局6−1乃至6−nの受信動作について説明する。各地上無線局6−1乃至6−nは、移動車両9に設けられた移動体無線局11が自局の通信エリア8−1乃至8−n内に位置するときに、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信することができ、移動体無線局11が地上無線局6−1の通信エリア8−1に位置するときは、地上無線局6−1の受信部23に設けられた指向性アンテナを介して移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信する。また、移動車両9が移動して移動体無線局11が地上無線局6−2の通信エリア8−2に位置するときは、地上無線局6−2の受信部23に設けられた指向性アンテナを介して移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信する。このように、鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nは、移動車両9に設けられた移動体無線局11が自局の通信エリアに位置するときに移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信することができ、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信する地上無線局を地上無線局6−1→地上無線局6−2→・・・→地上無線局6−nと切り替えながら移動体無線局11から送信された個別のパケットデータをそれぞれ受信する。
【0062】
各地上無線局6−1乃至6−nの受信部23において受信された各パケットデータは、受信部23において復調処理、誤り訂正処理等が施された後、拡張ヘッダ解析部24に出力される。拡張ヘッダ解析部24は、受信部23の復調処理により復元された受信データに付与された拡張ヘッダ56の情報を解析し、再送要求応答情報56cは再送要求可否判定部27に通知し、再送要求情報56d及び56eは再送可否判定部29に通知する。そして、拡張ヘッダの情報が解析された各受信データは受信パケット処理部25のパケット収集部25aに収集される。なお、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nには、移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局において受信されたパケットデータが第1のパケット転送部30により有線回線7を介して転送されており、このような移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送された受信データも収集される。また、先頭の地上無線局6−2及び中間の地上無線局6−2等には、移動車両9の移動方向に位置する地上無線局において受信されたパケットデータが第2のパケット転送部31により有線回線7を介して転送されており、このような移動車両9の移動方向に位置する地上無線局から転送された受信データも収集される。
【0063】
シーケンス番号検出部25bはパケット収集部25aに収集された各受信データに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、パケット判定部25cはシーケンス番号検出部25bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及び重複したシーケンス番号をそれぞれ判定する。パケット判定部25cにより重複と判定されたシーケンス番号の受信データは重複破棄部26に出力されて破棄され、抜けと判定されたシーケンス番号については再送要求設定部28に通知される。上述したとおり、移動体無線局11から送信される一連のパケットデータには連続するシーケンス番号が付されており、例えば、シーケンス番号検出部25bにより検出された各受信データのシーケンス番号が1〜7、9となっている場合、シーケンス番号8のパケットデータが受信されておらず、シーケンス番号8がシーケンス番号の抜けとして検出される。また、隣の地上無線局において受信された受信データが第1のパケット転送部30又第2のパケット転送部31によってそれぞれ転送されるので、各地上無線局6−1乃至6−nにおいては同一シーケンス番号のパケットデータを複数受信する場合があり、シーケンス番号が重複した受信データを重複パケットとして検出する。
【0064】
なお、再送要求可否判定部27は、拡張ヘッダ解析部24から通知された再送要求応答情報により移動体無線局11に対して再送要求したパケットデータの再送の可否を判定しており、その判定結果を再送要求設定部28に通知する。そして、再送要求設定部28は、パケット判定部25cにより抜けと判定されたシーケンス番号と再送要求可否判定部27の判定結果とから移動体無線局11に対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定し、その設定したシーケンス番号を拡張ヘッダ編集部21に通知する。例えば、パケット判定部25cから通知されたシーケンス番号に基づく再送要求を行い、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送不可と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求しても移動体無線局11から再送されないと判断し、当該シーケンス番号に基づく再送要求の設定を中止する。一方、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送可能と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求すると移動体無線局11から再送されると判断し、そのシーケンス番号がシーケンス番号検出部25bにより検出されるまで再送要求の設定を継続する。
【0065】
また、再送可否判定部29は、拡張ヘッダ解析部24から通知された再送要求情報56d及び56eと送信バッファ部18に保持されたパケットデータの情報とから移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送の可否を判定し、その再送要求されたパケットデータの再送が可能な場合は、その再送要求されたパケットデータのシーケンス番号を移動体無線局11に対して再送するパケットデータのシーケンス番号として送信順序設定部19に通知すると共に、拡張ヘッダ編集部21に移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を通知する。なお、移動体無線局11から再送要求されたパケットデータが送信バッファ部18に保持されておらず、当該パケットデータの再送が不可能である場合は、拡張ヘッダ編集部21に移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を通知する。
【0066】
そして、送信順序設定部19は、再送可否判定部29からシーケンス番号が通知されるとその通知されたシーケンス番号に基づいて送信バッファ部18に保持された各パケットデータの送信順序を変更する。例えば、送信順序設定部19が送信バッファ部18に保持されたパケットデータをシーケンス番号に従って読み出し、シーケンス番号10のパケットデータを読み出している途中で再送可否判定部29からシーケンス番号8が移動体無線局11に再送するパケットデータのシーケンス番号として通知されると、送信順序設定部19はシーケンス番号10のパケットデータの読み出しを中止し、再度シーケンス番号8からパケットデータを順に読み出して拡張ヘッダ編集部21に出力する。
【0067】
拡張ヘッダ編集部21は、送信順序設定部19によって送信順序が変更されたパケットデータが入力されると、その送信順序が変更されたパケットデータの拡張ヘッダを編集する。例えば、送信順序設定部19により送信順序が変更される場合は、再送可否判定部29から拡張ヘッダ編集部21に対して移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨が通知されるので、拡張ヘッダ編集部21は各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報56cに移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を設定する。一方、送信順序設定部19により送信順序が変更されない場合は、再送可否判定部29から移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨通知されるので、拡張ヘッダ編集部21は自局から送信する各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報52cにから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を設定する。
【0068】
また、拡張ヘッダ編集部21には再送要求設定部28から移動体無線局11に対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知されており、拡張ヘッダ編集部21は、再送要求設定部28から通知されたシーケンス番号に基づいて各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求情報56d及び56eに再送要求するパケットデータの有無及びその再送要求するシーケンス番号をそれぞれ記述する。拡張ヘッダ編集部21により拡張ヘッダの編集が行われた核パケットデータは送信部22に出力され、送信部22から移動体無線局11に対して再送される。
【0069】
一方、受信パケット処理部25のシーケンス番号検出部25bによりシーケンス番号が検出され、重複破棄部26により重複パケットが破棄された後の受信パケットは拡張ヘッダ除去部34に出力される。拡張ヘッダ除去部34は、受信パケット処理部25から出力された各受信データの拡張ヘッダをそれぞれ除去し、元のパケットデータを中継装置4に出力する。中継装置4に出力された各パケットデータには送信先のアドレス情報等が記述されたヘッダが付加されており、中継装置4に出力された各パケットデータはそのヘッダに記述された送信先のアドレス情報に基づいてパケットデータの送信先である端末装置2aにそれぞれ届けられる。なお、中間の地上無線局6−2等や末尾の地上無線局6−nにおいて受信された個別のパケットデータは第2の転送部31を介して先頭の地上無線局6−1に対してそれぞれ転送され、先頭の地上無線局6−1のパケット収集部25aからパケット拡張処理部35の拡張ヘッダ除去部34に出力されるので、移動体無線局11から送信され一連のパケットデータを確実に中継装置4に出力することができる。
【0070】
このように、鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局地上無線局6−1乃至6−nでは、先頭の地上無線局6−2及び中間の地上無線局6−2等が自局の受信部23において受信した受信データを第1のパケット転送部30により有線回線7を介して接続された移動車両9の移動方向に位置する地上無線局、すなわち中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nにそれぞれ転送し、これら中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nが前記転送された受信データ及び自局の受信部23により受信した受信データを中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nのパケット収集部25aにそれぞれ収集し、その収集された受信データのシーケンス番号を検出し、シーケンス番号に抜けがある場合はそのシーケンス番号に基づいて移動体無線局11に対して再送要求するように構成したので、鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11から送信された一連のパケットデータを鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにより確実に受信し、地上側ネットワーク1に接続された中継装置4に出力することができる。
【0071】
ここで、上述したような移動体無線局11から複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されたパケットデータの流れについて図10を用いて説明する。図10は図1に示すような移動車両9に設けられた移動体無線局11から複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。図10において、58は移動体無線局11の送信部42から送信されたパケットデータであり、数字は各パケットデータの拡張ヘッダ56に付された連続するシーケンス番号をそれぞれ示している。なお、図10では地上無線局6−1から6−3までの間におけるパケットデータの流れについて示しているが、地上無線局6−4以降のパケットデータの流れも同様であり、これらの図示説明については省略する。上述したとおり、移動体無線局11の送信バッファ部38には連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが保持されており、移動車両9が各地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、移動体無線局11は、送信バッファ部38に保持された一連のパケットデータの送信を開始する。
【0072】
各地上無線局6−1乃至6−nは、移動体無線局11が自局の通信エリア内において送信したパケットデータのみを受信することができ、移動体無線局11から送信されたパケットデータは、図10に示すように、地上無線局6−1→地上無線局6−2→地上無線局6−3の順にそれぞれ受信される。なお、各地上無線局6−1乃至6−nは、有線回線7を介して相互に接続されており、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信すると、その受信したパケットデータに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、有線回線7を介して移動車両9の移動方向に位置する地上無線局に転送する。例えば、先頭の地上無線局6−1において受信された受信データは中間の地上無線局6−1のパケット転送部30により有線回線7を介して中間の地上無線局6−2に転送され、中間の地上無線局6−2において受信された受信データは中間の地上無線局6−2の第1のパケット転送部30により有線回線7を介して中間の地上無線局6−3にそれぞれ転送される。
【0073】
これにより、移動車両9の移動方向に位置する地上無線局(具体的には、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−n)は、移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局(具体的には、先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等)において受信された受信データをそれぞれ共有することができ、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nは、自局の受信部23による受信したパケットデータだけでなく、移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送されたパケットデータについてもシーケンス番号をそれぞれ検出し、これらの検出したシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを判定することができる。そして、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nは、抜けと判定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報を移動体無線局11に対してそれぞれ送信する。
【0074】
例えば、通信エリア8−1においては、地上無線局6−1がシーケンス番号8に基づく再送要求情報を移動体無線局11に対して送信しており、通信エリア8−2及び通信エリア8−3においては、地上無線局6−2及び地上無線局6−3がシーケンス番号10,16に基づく再送要求情報を移動体無線局11に対してそれぞれ送信している。なお、中間の地上無線局6−2には先頭の地上無線局6−1において受信された各受信データが有線回線7を介して転送されており、中間の地上無線局6−2は、これら先頭の地上無線局6−1から転送された各受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号10がシーケンス番号の抜けであると判定することができる。中間の地上無線局6−3も同様であり、中間の地上無線局6−2から転送された各受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号16がシーケンス番号の抜けであると判定することができる。
【0075】
移動体無線局11は、自局の送信バッファ部38に保持された一連のパケットデータを各パケットデータに付されたシーケンス番号の順序に従ってそれぞれ送信しているが、各地上無線局6−1乃至6−nからそれぞれ通知された再送要求情報52d及び52eを受信すると、その再送要求情報52d及び52eにより指定されたパケットデータの再送の可否を判定し、当該再送要求されたパケットデータの再送が可能と判断した場合は、各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信するパケットデータの順序を変更し、各地上無線局6−1乃至6−nから送信された再送要求情報52cにより指定されたシーケンス番号のパケットデータから送信バッファ部38に保持されたパケットデータの再送を行うと共に、再送要求応答情報56cによりその旨を再送要求情報52d及び52eを通知した地上無線局に対してそれぞれ通知する。各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可と判断した場合は、再送要求応答情報56cによりその旨を再送要求信号を通知した地上無線局に対してそれぞれ通知する。
【0076】
このように、実施の形態1による移動体通信システムでは、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信した先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等が自局の受信部23により受信したパケットデータを有線回線7を介して移動車両9の移動方向と位置する地上無線局、すなわち中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nに対して転送し、これら移動車両9の移動方向に位置する中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nが移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送された受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号を検出し、シーケンス番号の抜けを判定するので、図10に示すように、移動車両9の走行に伴って移動体無線局11の通信相手が順次切り替わり、当該通信相手の切り替わりによって抜けパケットを検出した地上無線局において移動体無線局11に対する再送要求ができないような場合であっても、その切り替わった後の地上無線局、例えば、地上無線局6−2,6−3等においてその抜けパケットに基づく再送要求信号の通知、及びその再送要求信号に基づき移動体無線局11から再送されたパケットデータを受信することができ、鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにおいて鉄道線路5上を移動する移動体無線局11から送信される一連のパケットデータを全て受信することができる。
【0077】
なお、図1に示す移動体通信システムでは、鉄道線路5を軌道、鉄道線路5を走行する新幹線、特急電車等の移動車両9を移動体として説明したが、本発明に係る移動体通信方法及び移動体通信システムはこれに限られるものではなく、例えば、高速道路等の道路を軌道としこのような道路を走行する自動車等の車両を移動体とする場合にも同様に適用することができる。この場合、高速道路等の沿線、例えば、高層道路等の側壁に図3乃至図5に示すような構成の複数の地上無線局をそれぞれ配置し、このような複数の地上無線局が配置された高速道路等を走行する自動車等の車両に図6に示すような移動体無線局を設けることにより、上述したような本発明に係る移動体通信方法及び移動体通信システムを実現することができ、例えば、自動車の助手席等に乗車した人が車両内に設置された端末装置を使用して常時インターネットへのアクセス、電子メールの送受信等の提供を受けることができる。
【0078】
また、図1に示す実施の形態1による移動体通信システムでは、軌道である鉄道線路5に沿って配置される複数の地上無線局6−1乃至6−nのうち、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を先頭の地上無線局、移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを末尾の地上無線局とし、地上無線局6−1と中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成しているが、これとは反対に移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを先頭の地上無線局、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を末尾の地上無線局とし、地上無線局6−nと中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成してもよい。この場合、図3に示すようなパケット拡張処理部35は地上無線局6−nに設ける必要があり、中継装置4を経由して地上無線局6−nに出力された一連のパケットデータは、パケット拡張処理部35において連続するシーケンス番号が付された後、移動車両9の移動方向と反対方向に転送されて各地上無線局の送信バッファ部18にそれぞれ保持される。一方、複数の地上無線局6−1乃至6−nにより受信した移動体無線局11からの個別のパケットデータは移動車両9の移動方向に転送され、地上無線局6−nに設けられたパケット拡張処理部35を介して中継装置4に出力される。このように、地上無線局6−nを先頭の地上無線局とした場合には、各地上無線局6−1乃至6−nは、自局により受信した個別のパケットデータを移動車両9の移動方向にのみ転送すればよく、中間の地上無線局及び末尾の地上無線局に図4乃至図5に示すような第2のパケット転送部31を設ける必要がないためこれらの地上無線局をより小型に構成することができる。
【0079】
以上のように、実施の形態1による移動体通信システムでは、移動体無線局11に対して送信する一連のパケットデータの拡張ヘッダに連続するシーケンス番号をそれぞれ付し、これら連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにおいてそれぞれ保持し、各地上無線局6−1乃至6−nから鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動無線局11に対してそれぞれ送信するように構成したので、地上側ネットワーク1に接続された端末装置2と車内ネットワーク12に接続された端末装置13等とのエンド間ではなく、ノード間、すなわち複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間において効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる。
【0080】
また、実施の形態1による移動体通信システムでは、移動体無線局11から鉄道線路5に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信する一連のパケットデータの拡張ヘッダに連続するシーケンス番号をそれぞれ付する一方、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信した先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等が自局の受信部23により受信したパケットデータを有線回線7を介して移動車両9の移動方向と位置する地上無線局、すなわち中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nに対して転送し、これら移動車両9の移動方向に位置する中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nが移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送された受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号を検出し、シーケンス番号の抜けを判定するように構成したので、地上側ネットワーク1に接続された端末装置2と車内ネットワーク12に接続された端末装置13等とのエンド間ではなく、ノード間、すなわち複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間において効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる。
【0081】
なお、実施の形態1に示すような移動体通信システムでは、鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間において送受信するパケットデータを図7及び図9に示すようにそれぞれ構成し、自局から送信するパケットデータの拡張ヘッダ52,56に送信順序番号である連続するシーケンス番号だけでなくいわゆる再送制御情報52c、56c等を付して送信するようにしたので、パケットデータの送信と同時に抜けと判定したシーケンス番号のパケットデータについて再送要求することができ、地上側及び移動体間において効率のよい双方向同時連続伝送を実現することができる。
【0082】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について図11を用いて説明する。実施の形態1による移動体通信システムでは、複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間におけるパケットデータの送受信をより確実にするため、鉄道線路5上に形成される各通信エリア8−1乃至8―nを隣接する通信エリアと部分的に重複するように形成しているが、各地上無線局6−1乃至6−nの配置間隔を広くして各通信エリア8−1乃至8―nを隣接する通信エリアと重複しないように形成してもよい。例えば、多数のコンテンツ情報を複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信する場合、複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間の通信時間をできるだけ長くするため鉄道線路5に沿って設置する地上無線局の数を増やして移動体無線局11との通信範囲を広くする必要があるが、鉄道線路5に沿って配置する各地上無線局6−1乃至6−nの間隔を広くすることにより地上無線局の設置数を少なくすることができる。
【0083】
図11は実施の形態2による移動体通信システムを示すシステム概要図である。図11に示すように、実施の形態2による移動体通信システムでは、各地上無線局6−1乃至6−nの配置間隔を広く設け、これら複数の地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8―nが隣接する通信エリアと重複する部分を生じないように形成されており、これにより、鉄道線路5に沿って設置する地上無線局の設置数を少なくすることができる。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示し、これらについての詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態1による移動体通信システムを示すシステム概要図である。
【図2】図1に示す移動車両9内に設けられた車内LANシステムを示すシステム概要図である。
【図3】図1に示す中継装置4と接続された先頭の地上無線局6−1の具体的構成を示すブロック構成図である。
【図4】図1に示す地上無線局6−2等、有線回線7を介して両隣の地上無線局と連結される中間の地上無線局の具体的構成を示すブロック構成図である。
【図5】図1に示す先頭の地上無線局6−1と反対側の端部に配置される末尾の地上無線局6−nの具体的構成を示すブロック構成図である。
【図6】図1等に示す移動体無線局11の具体的構成を示すブロック構成図である。
【図7】図1等に示す各地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図である。
【図8】図1に示す複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図9】図1等に示す移動車両9に設けられた移動体無線局11から各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図である。
【図10】図1に示すような移動車両9に設けられた移動体無線局11から複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図11】実施の形態2による移動体通信システムを示すシステム概要図である。
【符号の説明】
【0085】
1 インターネット回線(地上側ネットワーク)、
2a,2b,14a,14b 端末装置(エンド端末装置)、
3 情報配信サーバ(情報提供装置)、4 中継装置、5 鉄道線路、
6−1,6−2,6−3,6−n 地上無線局、7 有線回線、
8−1,8−2,8−3,8−n 通信エリア、9 移動車両、
10 移動体側ネットワーク(車内LANシステム)、11 移動体無線局、
16,36 拡張ヘッダ付与部、17,37 送信番号付与部、
18,38 送信バッファ部、19,39 送信順序設定部、
21,41 拡張ヘッダ編集部、22,42 送信部、23,43 受信部、
24,45 拡張ヘッダ解析部、25,45 受信パケット処理部、
27,47 再送要求可否判定部、28、48 再送要求設定部、
29,49 再送可否判定部、30 第1の転送部、31 第2の転送部、
34,50 拡張ヘッダ除去部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道線路等の軌道に沿って設けられた複数の地上無線局と前記軌道上を移動する移動体に設けられた移動体無線局との間においてパケットデータを送受信することにより、例えば、移動体に乗車した乗客等が常時インターネットにアクセスしたり、地上側のネットワークに接続された端末装置との間において電子メール等を送受信したりできるようにする移動体通信方法及びその方法に使用する移動体通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報技術の発達に伴い、鉄道分野においても乗客への情報サービスの向上等を狙いとした次世代インテリジェント車両、車内LAN等の開発が積極的に検討されている。例えば、乗客への情報サービスの向上を図るものとして、地上−列車間の無線リンクとしてマイクロセル方式を採用し、鉄道沿線に一定間隔毎に配置した複数の無線基地局から送信したリアルタイム映像や映画、ビデオ映画等の各種情報を列車側に設けられた無線局により受信して列車内LANにより列車内の車内端末装置や乗客毎に設けられた表示装置等に配信する対列車無線通信システム等が提案されている。また、このような列車が山間部やトンネル内等の電波環境が悪い場所を走行する場合であっても、いわゆる再送制御技術を適用して地上−列車間の伝送確率を向上させることが検討されている。なお、再送制御技術を用いる場合には、再送制御に伴い発生するオーバヘッドが通信チャネルの利用効率を妨げることになり、特に動画のようにビットレートの高い情報を伝送する場合には、非効率な再送制御が無線伝送における十分な障害となり得る。
【0003】
例えば、再送処理の負担を軽減し、通信チャネルの有効利用を図る手法として、移動局の通信相手の基地局のみならず、当該移動局から送信された上り情報信号を受信した基地局においても移動局からの上り情報信号の誤り判定を行い、いずれかの基地局において誤りなしとの判定が行われた場合に移動局に対して再送要求を行わず、再送処理を必要最小限にするものが提案されている。
【0004】
また、無効な再送要求情報の受信による再送制御の誤動作を回避する手法として、移動局が制御チャネル切り替えの過渡的な状態にあるとき、すなわち移動体端末が複数の地上局の通信エリアを跨いで移動しているような場合に再送要求情報を無効として取扱い、制御チャネルの切り替えが完了して通信状態が確立してから再送処理を再開すること等が提案されている。
【0005】
【非特許文献1】阿部紘士、他1名,「サブキャリア多重・光伝送方式を用いた対列車ミリ波無線通信システムの検討」,電子・情報・システム部門誌,社団法人電気学会,1997年 8月20日,第117−C巻第9号,1308〜1316頁
【特許文献1】特開2002−152843(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開2000−050364(第7−8頁、図1−6等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したような移動体通信システムの場合には、鉄道線路に沿って設置される複数の無線基地局(以下、地上無線局という)が一定間隔をおいて設けられており、また、低電力化や地上無線局相互間の電波干渉等を防止する等の目的から指向性を持たせたアンテナを用いているので、これら複数の地上無線局と列車側に設けられた無線基地局(以下、移動体無線局という)との間で正常な無線伝送を行うことができるのは移動体無線局がいずれかの地上無線局の通信エリア内にある場合に限られており、移動体無線局が一の地上基地局の通信エリア内にある場合には他の地上無線局との間において正常な無線伝送を行うことができず、上述したような通信相手である無線基地局において誤りがあってもいずれかの無線基地局において誤りなしとの判定が行われた場合に再送処理を中止するという処理は適用できないという問題点があった。
【0007】
また、新幹線等はこれら複数の地上無線局により形成された複数の通信エリア内を高速で移動するので、列車の高速移動に伴って移動体無線局と地上無線局との間において通信エリアの切り替えが頻繁に発生し、このような頻繁な通信エリアの切替えの度に再送処理を中断すると、地上無線局又は移動体無線局からそれぞれ送信された情報が他方に到着するまでに多くの時間を要することとなり、列車と地上との間においてリアルタイムの無線通信を行うことが困難になるという問題点もあった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、鉄道線路等の軌道上を移動する移動体に設けられた移動体無線局と軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局との間において、効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる新規な移動体通信システム及びこれに用いる再送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る移動体通信方法は、軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局から連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信し、前記軌道上を移動する移動体の移動無線局により前記複数の地上無線局から送信された一連のパケットデータを受信する移動体通信方法であって、前記地上無線局は、前記一連のパケットデータをそのシーケンス番号に従ってそれぞれ送信し、前記移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信し、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に通知し、前記後段の地上無線局は、前記移動無線局から通知されたシーケンス番号に基づき前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更し、前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するようにしたものである。
【0010】
また、この発明に係る移動体通信方法は、軌道上を移動する移動体の移動体無線局から一連のパケットデータを送信し、前記軌道の沿線に前記移動体の移動方向に間隔を設けて配置された複数の地上無線局により前記移動体無線局から送信された一連のパケットデータを順次に受信する移動体通信方法であって、前記移動体無線局は、前記一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付して送信し、前記地上無線局は、前記移動体無線局から送信され、自局により受信した個別のパケットデータ及び前記移動体無線局から送信され、前段の地上無線局により受信された個別のパケットデータを収集して前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に対して転送する一方、前記収集した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、シーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体無線局に通知し、前記移動体無線局から前記抜けと判定したシーケンス番号が付されたパケットデータを再送させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局において連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータをそれぞれ保持し、各地上無線局から前記軌道上を移動する移動体の移動体無線局に対してそれぞれ送信するように構成したので、軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局と前記軌道上を移動する移動体の移動体無線局との間において効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図1乃至図10を用いて説明する。図1は実施の形態1による移動体通信システムを示すシステム概要図、図2は図1に示す移動体に設けられた移動体内LANシステムを示すシステム概要図である。図1に示すように、実施の形態1による移動体通信通信システムは、鉄道線路の沿線に間隔を設けられた複数の地上無線局と鉄道線路を走行する移動車両に設けられた移動体無線局との間においてパケットデータを送受信するというものであり、これにより、例えば、新幹線等の鉄道線路を走行する移動車両に乗車した乗客等が移動車両内に設けられた表示装置を介して映画、ニュース、広告情報等の各種コンテンツ情報を視聴したり、移動車両内に設けられあるいは持ち込まれた端末装置を介して常時インターネットへのアクセス、地上側のネットワークに接続された端末装置との間における電子メールの送受信等の各種サービスの提供を受けることができるようにするものである。
【0013】
なお、インターネットでは、異なるコンピュータシステム間、いわゆるエンド−エンド間を接続するプロトコルとして、例えばTCP/IP、UDP(User Datagram Protocol)等を使用しているが、本発明に係る移動体通信システムでは、エンド−エンド間においていずれのプロトコルを使用してもよく、エンド−エンド間で使用されるプロトコルにかかわらず、移動体に設けられた移動体無線局と地上側に設けられた複数の地上無線局との間において効率的な再送制御ひいてはリアルタイムの無線通信を実現するものである。
【0014】
図1において、1はインターネット回線等の地上側に設けられたネットワーク回線(以下、地上側ネットワークという)、2a,2bは地上側ネットワーク1に接続されたパソコン等の端末装置、3はニュース、映画又は広告情報等の各種コンテンツ情報を蓄積し、これらの各種コンテンツ情報を配信要求した端末装置に対して配信する情報配信サーバ等の情報提供装置、4は地上側ネットワーク1又は情報提供装置3から出力されたパケットデータを後述する複数の地上無線局に出力する一方、これら複数の地上無線局から出力されたパケットデータを地上側ネットワーク1又は情報提供装置3に出力するパケットデータの中継装置、5は軌道である鉄道線路、6−1乃至6−nは鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局、7は複数の地上無線局6−1乃至6−nを数珠状に接続し、移動体に設けられた移動体無線局に対して送信する一連のパケットデータや各地上無線局6−1乃至6−nにより受信した移動無線局からの個別のパケットデータを後述するように隣り合う地上無線局に対して転送するための光ケーブル等の有線回線、8−1乃至8―nは鉄道線路5上にそれぞれ形成された複数の地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア、9は移動体であって、鉄道線路5上を矢印Aの方向に移動する新幹線、特急列車等の移動車両、10は移動車両9に設けられた移動体側ネットワークである車内LAN(Local Area Network)システム(以下、移動体側ネットワークという)、11は移動車両9に設けられ、移動体側ネットワーク10と接続された移動体無線局である。
【0015】
図1に示すように、実施の形態1による移動体通信システムでは、鉄道線路5上に形成された各地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8―nが部分的に重複しており、各通信エリアの重複部分において移動体無線局11に電波干渉が生じ、鉄道線路5上を移動する移動体無線局11が隣り合う2つの地上無線局から送信された送信データを同時に受信するという場合が発生するが、例えば、後述するように、隣接する2つの地上無線局のうちいずれか一方の地上無線局だけが送信データを送受信するように各地上無線局6−1乃至6−nの送信部を制御したり、隣り合う地上無線局が異なる周波数帯を使用するように構成することにより、移動体無線局11における電波干渉を防止することができる。
【0016】
また、実施の形態1による移動体通信システムでは、複数の地上無線局6−1乃至6−n及び移動体無線局11は、例えば、ミリ波帯の無線信号を使用する。60GHz帯のミリ波信号を使用する場合、免許申請等の手続が不要であり、容易にシステム化を実現することが可能である。そして、複数の地上無線局6−1乃至6−n及び移動体無線局11の送信部及び受信部には、それぞれ指向性アンテナを用いるものとし、移動体無線局11に設けられた指向性アンテナと各地上無線6−1乃至6−nにそれぞれ設けられた指向性アンテナとが移動車両9の前進に従って互いに近付くように対向して配置する。例えば、鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11が地上無線局6−1により形成された通信エリア8−1内に位置するときは、移動体無線局11の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナが地上無線局6−1の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナと対向するように配置され、さらに移動車両9が移動して移動体無線局11が地上無線局6−2により形成された通信エリア8−2内に位置するときは移動体無線局11の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナが地上無線局6−2の送信部及び受信部に設けられた指向性アンテナと対向するように配置する。
【0017】
なお、実施の形態1による移動体通信システムでは、軌道である鉄道線路5に沿って配置される複数の地上無線局6−1乃至6−nのうち、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を先頭の地上無線局、移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを末尾の地上無線局とし、地上無線局6−1と中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成しているが、これとは反対に移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを先頭の地上無線局、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を末尾の地上無線局とし、地上無線局6−nと中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成してもよい。
【0018】
また、図2において、12は移動体無線局11に接続されたハブ(hub)等の集線装置(以下、ハブという)、13はハブ12にそれぞれ接続された移動車両9内のネットワーク回線(以下、車内ネットワークという)、14は移動車両9の各座席等に設けられ、車内ネットワーク13に接続されたノート型パソコン等の端末装置、15は移動車両9の出入口付近等に設けられ、車内ネットワーク13に接続された表示装置である。図2に示すように、移動車両9内に設けられた各端末装置14a,14b、表示装置15はハブ12及び車内ネットワーク13を介して移動車両9に設けられた移動体無線局11と相互に接続されている。車内ネットワーク13に接続された端末装置14aから出力されたパケットデータは車内ネットワーク13を介して移動体無線局11に出力され、移動体無線局11から送信データとして複数の地上無線局6−1乃至6−nにそれぞれ送信される。
【0019】
次に、図1に示す複数の各地上無線局6−1乃至6−nの具体的構成について説明する。図3は図1に示す先頭の地上無線局6−1の具体的構成を示すブロック構成図、図4は地上無線局6−2等、有線回線7を介して両隣りの地上無線局と接続される中間の地上無線局の具体的構成を示すブロック構成図、図5は先頭の地上無線局6−1と反対側の端部に配置される末尾の地上無線局6−nの具体的構成を示すブロック構成図である。上述したとおり、これら図3乃至図5に示す各地上無線局6−1乃至6−nは、有線回線7により隣り合う他の地上無線局と接続されており、この有線回線7を介して移動体無線局11に送信するパケットデータや受信した移動体無線局11からのパケットデータが転送される。なお、図中、太線はパケットデータが流れる経路を示している。まず、図3に示す先頭の地上無線局6−1の構成について説明する。
【0020】
図3において、16は中継装置4を経由して出力された一連のパケットデータに拡張ヘッダをそれぞれ付与する拡張ヘッダ付与部、17は拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を順に付するシーケンス番号付与部である。通常、インターネット等のパケット通信網では、データは端末装置においてパケットに分割して送受信されており、各パケットには分割されたデータ部分の他にヘッダと呼ばれる当該データに関する情報、例えば、送信先及び送信元のアドレス、パケット順序を示す番号、さらにはデータ伝送中のビット誤りを検出する誤り制御符号等が付加されているが、本発明に係る移動体通信システムでは、これら端末装置において付加される各パケットのヘッダをさらに拡張し、この拡張したヘッダに付された情報を用いて鉄道線路5に沿って設けられた複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間におけるパケットデータの送受信を制御する。このように、端末装置において付加されるヘッダの情報は、端末装置間、すなわちエンド−エンド装置間の動作を制御するものであるが、本発明における拡張ヘッダは複数の地上無線局6−1乃至6−nと地上無線局11、すなわちノード−ノード装置間の動作を制御するものである。
【0021】
また、18はシーケンス番号付与部17により連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータを一時的に保持する送信バッファ部、19は各パケットデータの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号に従って送信バッファ部18に保持された一連のパケットデータの送信順序を設定する送信順序設定部、20は移動体無線局11に送信するパケットデータが送信バッファ部18に保持されていな場合等に、これらのパケットデータに代わって移動体無線局11に送信する制御パケットデータを生成する制御パケット生成部、21は送信順序設定部19により設定された送信順序により送信バッファ部18から出力された各パケットデータの拡張ヘッダ又は制御パケット生成部20から出力された制御パケットデータを後述する再送要求設定部28及び再送可否判定部29からの通知に基づいて編集する拡張ヘッダ編集部、22は拡張ヘッダ編集部21から出力された各パケットデータに所望の変調処理を施して送信する送信部である。上述したとおり、送信部22には指向性アンテナ(図示省略)を用いており、送信部22において変調処理が施されたパケットデータは指向性アンテナを介して通信エリア8−1内に送信される。
【0022】
また、23は指向性アンテナを介して移動体無線局11から送信された送信信号を受信し、その受信信号に復調処理を施してパケットデータを復元する受信部、24は受信部23から出力されたパケットデータ(以下、受信データという)の拡張ヘッダに付された情報を解析する拡張ヘッダ解析部、25aは拡張ヘッダ解析部24により拡張ヘッダの情報が解析された受信データ及び中間の地上無線局6−2において受信され有線回線7を介して転送された受信データを収集するパケット収集部、25bはパケット収集部25aにより収集された各受信データの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出するシーケンス番号検出部、25cはシーケンス番号検出部25bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及びシーケンス番号の重複をそれぞれ判定するパケット判定部、26はパケット判定部25cによりシーケンス番号が重複すると判定された受信データ(以下、重複パケットという)を破棄する重複破棄部、27は拡張ヘッダ解析部24から通知された移動体無線局11からの再送要求応答情報に基づいて特定のシーケンス番号が付されたパケットデータについての移動体無線局11に対する再送要求の可否を判定する再送要求可否判定部、28はパケット判定部25cにより抜けと判定されたシーケンス番号が通知され、この抜けと判定されたシーケンス番号に基づいて移動体無線局11に対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部である。
【0023】
また、29は拡張ヘッダ解析部24から通知された移動体無線局11からの再送要求情報と送信バッファ部18に保持されているパケットデータの情報とに基づいて各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータについて各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送の可否を判定する再送可否判定部である。なお、パケット収集部25a、シーケンス番号検出部25b及びパケット判定部25cにより受信パケット処理部25が構成される。
【0024】
また、30はシーケンス番号検出部25bによりシーケンス番号が検出された受信データを移動車両9の移動方向に位置する中間の地上無線局6−2に転送する第1のパケット転送部、32はパケット収集部25aに収集され、重複破棄部26により重複パケットを破棄した後の各受信データから拡張ヘッダを除去して中継装置4に出力する拡張ヘッダ除去部、33は有線回線7を介して接続された中間の地上無線局6−2に設けられた受信電波強度検知部34の受信レベルが通知され、その通知された受信レベルに基づいて自局の送信部22の送信動作を制御する電波放射制御部である。
【0025】
なお、拡張ヘッダ付与部16、シーケンス番号付与部17及び拡張ヘッダ除去部32によりパケット拡張処理部35が構成される。実施の形態1では、中継装置4と接続される先頭の地上無線局6−1内に拡張ヘッダ付与部16、シーケンス番号付与部17及び拡張ヘッダ除去部34により構成されるパケット拡張処理部35を設ける構成としたが、このパケット拡張処理部35を先頭の地上無線局6−1と別に設けてもよく、例えば、中継装置4と先頭の地上無線局6−1との間にパケット拡張処理部35を設ける構成としてもよい。
【0026】
次に、図4及び図5に示す中間及び末尾の地上無線局の構成について説明する。まず、図4に示す中間の地上無線局6−2、6−3等は、第2のパケット転送部31が設けられ、図3に示すパケット拡張処理部35が設けられていない点で先頭の地上無線局6−1と相違し、他の構成は先頭の地上無線局6−1と共通する。そして、先頭の地上無線局6−1に設けられたパケット拡張処理部35から連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが有線回線7を介して転送され、その転送された一連のパケットデータを自局の送信バッファ部21に保持する。また、末尾の地上無線局6−nは、第2のパケット転送部31が設けられ、図3に示すパケット拡張処理部35及び第1のパケット転送部30が設けられていない点で先頭の地上無線局6−1と相違し、他の構成は先頭の地上無線局6−1と共通する。そして、中間の地上無線局と同様に先頭の地上無線局6−1に設けられたパケット拡張処理部35から連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが有線回線7を介して転送され、その転送された一連のパケットデータを自局の送信バッファ部21に保持する。
【0027】
上述したとおり、先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等に設けられた第1のパケット転送部30は、受信パケット処理部25においてシーケンス番号が検出された受信データを移動車両9の移動方向に位置する地上無線局にそれぞれ転送し、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nに設けられた第2のパケット転送部31は、重複破棄部26により重複パケットが破棄された後の受信データを移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局にそれぞれ転送する。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示し、これらについての詳細な説明は省略する。
【0028】
次に、図1及び図2に示す移動体無線局11の具体的構成について説明する。図6は図1等に示す移動体無線局11の具体的構成を示すブロック構成図である。なお、図中、太線は図3乃至図5に示す各地上無線局6−1乃至6−nと同様パケットデータが流れる経路を示している。図6において、36は図1等に示す移動体側ネットワーク10に接続された端末装置14等から出力された一連のパケットデータに拡張ヘッダをそれぞれ付与する拡張ヘッダ付与部、37は拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付するシーケンス番号付与部、例えば、移動体側ネットワーク10を介して出力された一連のパケットデータが200個である場合、これら200個のパケットデータに拡張ヘッダがそれぞれ付与され、これら一連のパケットデータの拡張ヘッダに1〜200までの連続したシーケンス番号が順に付される。このように、移動体無線局11においても複数の地上無線局側に対して送信する一連のパケットデータのヘッダ部を拡張ヘッダによりそれぞれ拡張し、これら拡張ヘッダに連続するシーケンス番号をそれぞれ付する。
【0029】
また、38はシーケンス番号付与部37により連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータを一時的に保持する送信バッファ部、39は各パケットデータの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号に従って送信バッファ部38に保持された一連のパケットデータの送信順序を設定する送信順序設定部、40は複数の地上無線局6−1乃至6−nに送信するパケットデータが送信バッファ部38に保持されていな場合等に、これらのパケットデータに代わって複数の地上無線局6−1乃至6−nに送信する制御パケットデータを生成する制御パケット生成部、41は送信順序設定部39により設定された送信順序により送信バッファ部38から出力された各パケットデータの拡張ヘッダ又は制御パケット生成部40から出力された制御パケットデータを後述する再送要求設定部48及び再送可否判定部49からの通知に基づいて編集する拡張ヘッダ編集部、42は拡張ヘッダ編集部41から出力された各パケットデータに所望の変調処理を施して送信する送信部である。上述したとおり、送信部42には指向性アンテナ(図示省略)を用いており、送信部42において変調処理が施されたパケットデータは指向性アンテナを介して各地上無線局にそれぞれ送信される。
【0030】
また、43は指向性アンテナを介して鉄道線路に沿って設けられた各地上無線局6−1乃至6−nから送信された送信信号を受信し、その受信信号に復調処理を施してパケットデータを復元する受信部、44は受信部43から出力されたパケットデータ(以下、受信データという)の拡張ヘッダに付された情報を解析する拡張ヘッダ解析部、45aは拡張ヘッダ解析部44により拡張ヘッダの情報が解析された受信データを収集するパケット収集部、45bはパケット収集部45aにより収集された各受信データの拡張ヘッダに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出するシーケンス番号検出部、45cはシーケンス番号検出部45bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及びシーケンス番号の重複をそれぞれ判定するパケット判定部、46はパケット判定部45cによりシーケンス番号が重複すると判定された受信データ(以下、重複パケットという)を破棄する重複破棄部、47は拡張ヘッダ解析部44から通知された各地上無線局6−1乃至6−nからの再送要求応答情報に基づいてパケット判定部45cにより抜けと判定されたシーケンス番号のパケットデータについて再送要求の可否を判定する再送要求可否判定部、48はパケット判定部45cにより抜けと判定されたシーケンス番号が通知され、この抜けと判定されたシーケンス番号に基づいて各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部である。
【0031】
また、49は拡張ヘッダ解析部44から通知された各地上無線局6−1乃至6−nからの再送要求情報と送信バッファ部38に保持されているパケットデータの情報とに基づいて各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータについて各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送の可否を判定する再送可否判定部である。なお、パケット収集部45a、シーケンス番号検出部45b及びパケット判定部45cにより受信パケット処理部45が構成される。
【0032】
また、50はパケット収集部45aに収集され、重複破棄部46により重複パケットを破棄した後の各受信データから拡張ヘッダを除去して移動体側ネットワーク10に出力する拡張ヘッダ除去部である。なお、拡張ヘッダ付与部36、シーケンス番号付与部37及び拡張ヘッダ除去部50によりパケット拡張処理部51が構成される。実施の形態1では、移動体無線局11内にパケット拡張処理部51を設ける構成としたが、このパケット拡張処理部51を移動体無線局11と別に設けてもよく、例えば、移動体側ネットワーク10と移動体無線局11との間にパケット拡張処理部51を設けてもよい。このように、移動車両9に設置される移動体無線局11も図3乃至図5に示す各地上無線局と同様の構成を有しており、これらの構成により各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送要求動作、各地上無線局6−1乃至6−nからの再送要求に対する再送動作等を行う。
【0033】
次に、複数の地上無線局6−1乃至6−n及び移動体無線局11の動作を中心に実施の形態1による移動体通信システムの送受信動作について説明する。まず、複数の地上無線局6−1乃至6−nから一連のパケットデータを送信し、これを鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11により受信する場合について説明する。例えば、地上側ネットワーク1に接続された端末装置2aと鉄道線路5上を走行する移動車両9内に設けられた端末装置14aとの間で電子メール等の送受信を行う場合において、端末装置2aから端末装置14aに対して送信されたパケットデータは、そのヘッダに付された送信先アドレスに従って移動車両9が走行する鉄道線路5の近くに配置された中継装置4に出力される。中継装置4は他の端末装置2bや情報提供装置3から出力されたパケットデータも中継しており、中継装置4により中継された各パケットデータは移動体無線局11に対して送信される一連のパケットデータとしてパケット拡張処理部35が設けられた先頭の地上無線局6−1に出力される。
【0034】
先頭の地上無線局6−1に出力された一連のパケットデータは、まずパケット拡張処理部35に入力され、拡張ヘッダ付与部16により拡張ヘッダが付与される。拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータはシーケンス番号付与部17に出力され、シーケンス番号付与部17は、拡張ヘッダ付与部16から出力された各パケットデータの拡張ヘッダに送信順序番号である連続するシーケンス番号を付して出力する。例えば、中継装置4を介して出力された一連のパケットデータが200個である場合、これら200個のパケットデータに拡張ヘッダがそれぞれ付与され、これら一連のパケットデータの拡張ヘッダに1〜200までの連続するシーケンス番号が順に付される。このシーケンス番号が付されたパケットデータは先頭の地上無線局6−1に設けられた送信バッファ部18に保持される他、有線回線7を介して中間の地上無線局6−2乃至末尾の地上無線局6−nにもそれぞれ転送される。これにより、パケット拡張処理部35において連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが全ての地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18にそれぞれ保持される。
【0035】
そして、鉄道線路5上を走行する移動車両9が複数の地上無線局6−1乃至6−nにより形成された通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、各地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18に保持された各パケットデータが出力され、送信順序設定部19により設定された送信順序により拡張ヘッダ編集部21に出力される。拡張ヘッダ編集部21は、送信順序設定部19により設定された送信順序にて出力された各パケットデータに付与された拡張ヘッダの情報を再送要求設定部28及び再送可否判定部29から通知されたシーケンス番号等により編集する。例えば、再送要求設定部28から移動体無線局11に再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求情報を有効とし、そのシーケンス番号を再送要求情報に記述し、再送可否判定部29から移動体無線局11への再送が可能と判定されたパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求応答情報を再送可能とする。
【0036】
送信部22は、拡張ヘッダ編集部21から出力されたパケットデータに所望の変調処理を施した後、指向性アンテナを介して各通信エリア8−1乃至8−n内にそれぞれ送信する。このように、中継装置4を介して出力された一連のパケットデータは、鉄道線路5の沿線い間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18にそれぞれ保持され、全ての地上無線局6−1乃至6−nの送信部22から移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して一斉に送信される。
【0037】
なお、図7は図1等に示す各地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図であり、図7(a)は各地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18に保持され、移動体無線局11に対して送信されるパケットデータのデータ構成図、図7(b)は制御パケット生成部20により生成され、送信バッファ部18に保持されたパケットデータがない場合等に移動体無線局11に対して送信される制御用パケットデータのデータ構成図である。図7において、51は端末装置2a等のエンド端末装置から出力された元のパケットデータ、52は各エンド端末から出力された元のパケットデータ51に付与された拡張ヘッダ、53は制御パケット生成部20により生成された制御パケットである。図7に示すように、各エンド端末から出力された元のパケットデータ51に付与される拡張ヘッダ52と制御パケット生成部20から出力される制御パケット53とはほぼ同様のデータ構成であり、たとえ送信バッファ部18に保持されたパケットデータがないような場合でも制御パケット生成部20から出力された制御パケット53を送信することにより拡張ヘッダ52と同様の情報を移動体無線局11に対して送信することができる。
【0038】
また、図7において、52a乃至52fは拡張ヘッダ52に付された情報であって、各地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間、すなわちノード端末装置間における再送制御に用いられる制御情報、53a乃至53eは制御パケット53に付された情報であって、各地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間(ノード端末装置間)における再送制御に用いられる制御情報である。具体的に説明すると、52a,53aはいずれの地上無線局から送信されたパケットデータであるかを識別するための識別IDであるサブネットID、52b,53bは各地上無線局6−1乃至6−nから送信されたパケットデータの種類を示すフレームタイプ、52c,53cは移動体無線局11から送信された再送要求情報に対する再送の可否を記述する再送要求応答情報、52d及び52e,53d及び53eは移動体無線局11に対する再送要求の有無、及びその再送要求するパケットデータを記述する再送要求情報、52fは図3に示す送信番号付与部17により付された各パケットデータのシーケンス番号である。このシーケンス番号52fが移動体無線局11におけるシーケンス番号の抜けや重複の判定に用いられる。そして、拡張ヘッダ52又は制御パケット53に付されたこれらの情報52a乃至52f、53a乃至53eが拡張ヘッダ編集部21によりそれぞれ編集されて送信部22に出力される。
【0039】
なお、エンド端末から出力された元のパケットデータ51には送信先アドレスの他に送信元アドレスやパケット順序を示す番号等が記述されたヘッダが付されているが、このようなヘッダに付される情報はいわゆるエンド端末装置間の制御に用いられる情報であり、図1に示すような複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間における再生制御に用いることができない。しかしながら、実施の形態1による移動体通信システムでは、端末装置2a等のエンド端末装置から出力されたパケットデータ51に拡張ヘッダ52を付与し、この拡張ヘッダに付された情報に基づいて複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間、すなわちノード端末装置間における再送制御を行っており、後述するような効率的な再送制御ないしリアルタイムの通信を行うことが可能である。
【0040】
次に、移動体無線局11による受信動作について説明する。移動体無線局11は、指向性アンテナを用いており、鉄道線路5上に形成された通信エリア8−1乃至8−n内のいずれかに位置するときに対応する地上無線局から送信されたパケットデータを受信することができ、例えば、移動体無線局11が地上無線局6−1の通信エリア8−1に位置するときは地上無線局6−1から送信されたパケットデータを受信部43に設けられた指向性アンテナにより受信する。また、移動車両9が移動して移動体無線局11が地上無線局6−2の通信エリア8−2に位置するときは地上無線局6−2から送信されたパケットデータを受信部43に設けられた指向性アンテナにより受信する。このように、移動体無線局11は移動車両9の走行に伴って通信相手となる地上無線局を地上無線局6−1→地上無線局6−2→・・・→地上無線局6−nと切り替えながら各地上無線局6−1乃至6−nから送信された個別のパケットデータをそれぞれ受信する。
【0041】
受信部43に設けられた指向性アンテナにより受信された各パケットデータは、受信部43において復調処理、誤り訂正処理等が施された後、拡張ヘッダ解析部44に出力される。拡張ヘッダ解析部44は、受信部43の復調処理により復元された受信データ、すなわち各地上無線局6−1乃至6−nから送信されたパケットデータに付与された拡張ヘッダの情報を解析し、再送要求応答情報52cは再送要求可否判定部47に通知し、再送要求情報52d及び52eは再送可否判定部49に通知する。そして、拡張ヘッダの情報を解析した各受信データを受信パケット処理部45のパケット収集部45aに収集される。シーケンス番号検出部45bはパケット収集部45aに収集された各受信データに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、パケット判定部45cはシーケンス番号検出部45bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及び重複したシーケンス番号をそれぞれ判定する。パケット判定部45cにより重複と判定されたシーケンス番号の受信データは重複破棄部46に出力されて破棄され、抜けと判定されたシーケンス番号については再送要求設定部48に通知される。
【0042】
上述したとおり、鉄道線路5に沿って設置される複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信される一連のパケットデータには連続するシーケンス番号が付されており、例えば、シーケンス番号検出部45bにより検出された各受信データのシーケンス番号が1〜7、9となっている場合、シーケンス番号8のパケットデータが受信されておらず、シーケンス番号8がシーケンス番号の抜けとして検出される。また、移動体無線局11は複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信されたパケットデータをそれぞれ受信するため、同一シーケンス番号のパケットデータを複数受信する場合があり、シーケンス番号が重複した受信データを重複パケットとして検出する。
【0043】
なお、再送要求可否判定部47は、拡張ヘッダ解析部44から通知された再送要求応答情報により各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求したパケットデータの再送の可否を判定しており、その判定結果を再送要求設定部48に通知する。そして、再送要求設定部48は、パケット判定部45cにより抜けと判定されたシーケンス番号と再送要求可否判定部47の判定結果とから各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定し、その設定したシーケンス番号を拡張ヘッダ編集部41に通知する。例えば、パケット判定部45cから通知されたシーケンス番号に基づく再送要求を行い、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送不可と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求しても各地上無線局6−1乃至6−nから再送されないと判断し、当該シーケンス番号に基づく再送要求の設定を中止する。一方、、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送可能と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求すると各地上無線局6−1乃至6−nから再送されると判断し、そのシーケンス番号がシーケンス番号検出部45bにより検出されるまで再送要求の設定を継続する。
【0044】
また、再送可否判定部49は、拡張ヘッダ解析部44から通知された再送要求情報52d及び52eと送信バッファ部38に保持されたパケットデータの情報とから各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送の可否を判定し、その再送要求されたパケットデータの再送が可能な場合は、その再送要求されたパケットデータのシーケンス番号を各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送するパケットデータのシーケンス番号として送信順序設定部39に通知すると共に、拡張ヘッダ編集部41に各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を通知する。なお、各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータが送信バッファ部38に保持されておらず、当該パケットデータの再送が不可能である場合は、拡張ヘッダ編集部41に各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を通知する。
【0045】
そして、送信順序設定部39は、再送可否判定部49からシーケンス番号が通知されるとその通知されたシーケンス番号に基づいて送信バッファ部38に保持された各パケットデータの送信順序を変更する。例えば、送信順序設定部39が送信バッファ部38に保持されたパケットデータをシーケンス番号に従って読み出し、シーケンス番号10のパケットデータを読み出している途中で再送可否判定部49からシーケンス番号8が各地上無線局6−1乃至6−nに再送するパケットデータのシーケンス番号として通知されると、送信順序設定部39はシーケンス番号10のパケットデータの読み出しを中止し、再度シーケンス番号8からパケットデータを順に読み出して拡張ヘッダ編集部41に出力する。
【0046】
拡張ヘッダ編集部41は、送信順序設定部39によって送信順序が変更されたパケットデータが入力されると、その送信順序が変更されたパケットデータの拡張ヘッダを編集する。例えば、送信順序設定部39により送信順序が変更される場合は、再送可否判定部49から拡張ヘッダ編集部41に対して各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨が通知されるので、拡張ヘッダ編集部41は各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報52cに各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を設定する。一方、送信順序設定部39により送信順序が変更されない場合は、再送可否判定部49から各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨通知されるので、拡張ヘッダ編集部41は自局から送信する各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報56cに各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を設定する。
【0047】
また、拡張ヘッダ編集部41には再送要求設定部48から各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知されており、拡張ヘッダ編集部41は、再送要求設定部28から通知されたシーケンス番号に基づいて各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求情報52d及び52eに再送要求するパケットデータの有無及びその再送要求するシーケンス番号をそれぞれ記述する。拡張ヘッダ編集部41により拡張ヘッダの編集が行われた核パケットデータは送信部42に出力され、送信部42から各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送される。
【0048】
一方、受信パケット処理部45のシーケンス番号検出部45bによりシーケンス番号が検出され、重複破棄部46により重複パケットが破棄された後の受信パケットは拡張ヘッダ除去部50に出力される。拡張ヘッダ除去部50は、受信パケット処理部45から出力された各受信データの拡張ヘッダをそれぞれ除去し移動車両9内に設けられた移動体側ネットワーク10に出力する。移動体側ネットワーク10に出力された各パケットデータには送信先のアドレス情報等が記述されたヘッダが付加されており、移動体側ネットワーク10に出力された各パケットデータはそのヘッダに記述された送信先のアドレス情報に基づいて送信先である端末装置14aにそれぞれ届けられる。
【0049】
このように、移動車両9に設けられた移動体無線局11では、受信データのシーケンス番号を検出し、シーケンス番号に抜けがある場合はそのシーケンス番号に基づいて各地上無線局6−1乃至6−nに対して再送要求し、同一シーケンス番号の重複パケットを受信した場合にはその重複パケットを破棄するように構成したので、鉄道線路5に沿って設けられた複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信された一連のパケットデータを鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11により確実に受信し、移動車両9内に設けられた移動体側ネットワーク10に出力することができる。
【0050】
ここで、上述したような複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動体無線局11に対して送信されたパケットデータの流れについて図8を用いて説明する。図8は図1に示す複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。図8において、54は各地上無線局6−1乃至6−nの送信部22からそれぞれ送信されたパケットデータであり、数字は各パケットデータの拡張ヘッダ56に付された連続するシーケンス番号をそれぞれ示している。なお、図8では地上無線局6−1から6−3までの間におけるパケットデータの流れについて示しているが、地上無線局6−4以降のパケットデータの流れも同様であり、これらについての図示説明は省略する。上述したとおり、複数の地上無線局6−1乃至6−nは有線回線7を介してそれぞれ接続され、各地上無線局6−1乃至6−nの送信バッファ部18には連続するシーケンス番号が付された同一内容の一連のパケットデータがそれぞれ保持されており、移動車両9が各地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、各地上無線局6−1乃至6−nは、図8に示すように自局の送信バッファ部18に保持された一連のパケットデータの送信を一斉に開始する。移動体無線局11は、移動車両9の走行に伴い鉄道線路5上を移動しており、通信相手を先頭の地上無線局6−1→中間の地上無線局6−2→中間の地上無線局6−3の順に切り替えながら各地上無線局6−1乃至6−nから送信された個別のパケットデータをそれぞれ受信する。
【0051】
そして、シーケンス番号の抜けを検出した場合にはその抜けと判定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報56d及び56eを対応する地上無線局に対してそれぞれ通知する。例えば、通信エリア8−1においては、移動体無線局11はシーケンス番号8に基づく再送要求情報56d及び56eを地上無線局6−1に対して通知しており、通信エリア8−2及び通信エリア8−3においては、シーケンス番号10,15に基づく再送要求情報56d及び56eを地上無線局6−2及び6−3に対してそれぞれ通知する。
【0052】
各地上無線局6−1乃至6−nは、自局の送信バッファ部18に保持された一連のパケットデータを各パケットデータに付されたシーケンス番号の順序に従ってそれぞれ送信しているが、移動体無線局11から通知された再送要求情報56d及び56eを受信すると、その再送要求情報56d及び56eにより指定されたパケットデータの再送の可否を判定し、当該再送要求されたパケットデータの再送が可能と判定した場合は、移動体無線局11に対して送信するパケットデータの順序を変更し、再送要求情報56d及び56eにより指定されたシーケンス番号のパケットデータから送信バッファ部18に保持されたパケットデータの再送を行うと共に、再送要求応答情報52cによりその旨を移動体無線局11に対して送信する。移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が不可と判断した場合は、再送要求応答情報52cによりその旨を移動体無線局11に対して送信する。
【0053】
例えば、通信エリア8−2においては、移動体無線局11からシーケンス番号10に基づく再送要求情報56d及び56eが地上無線局6−2に対して通知されているが、地上無線局6−2は、自局の送信バッファ部18に地上無線局6−1と同一内容の一連のパケットデータを保持しており、当該再送要求されたシーケンス番号10からパケットデータを再送することができる。また、通信エリア8−3においては、移動体無線局11からシーケンス番号15に基づく再送要求情報56d及び56eが地上無線局6−3に対して通知されているが、地上無線局6−3も自局の送信バッファ部18に地上無線局6−1と同一内容の一連のパケットデータが保持されており、当該再送要求されたシーケンス番号15からパケットデータを再送することができる。
【0054】
このように、実施の形態1による移動体通信システムでは、鉄道線路5に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nが自局の送信バッファ部18に連続するシーケンス番号が付された同一内容の一連のパケットデータをそれぞれ保持しているので、移動体無線局11から通知された再送要求情報に記述されたシーケンス番号に基づいて移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送を行うことができる。また、移動体無線局11が受信した各パケットデータに付された連続するシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを検出し、その抜けと判定したシーケンス番号に基づく再送要求信号を通知するので、図8に示すように、移動車両9の走行に伴って移動体無線局11の通信相手が順次切り替わり、通信相手の切り替わりによって抜けパケットが発生するような場合であっても、その切り替わった後の地上無線局、例えば、地上無線局6−2,6−3等が移動体無線局11から通知された再送要求信号を受信し、その受信した再送要求信号により指定されたシーケンス番号に基づいて移動体無線局11から再送要求されたパケットデータをそれぞれ再送することができ、鉄道線路5上を移動する移動体無線局11が複数の地上無線局6−1乃至6−nから送信される一連のパケットデータを全て受信することができる。
【0055】
次に、移動車両9に設けられた移動体無線局11からパケットデータを送信し、これを鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにより受信する場合について説明する。例えば、端末装置14aから端末装置2aに対して送信されたパケットデータは移動車両9内に設けられた移動体側ネットワーク10を介して移動体無線局11に出力される。移動体無線局11に出力された一連のパケットデータは、まずパケット拡張処理部51に入力され、拡張ヘッダ付与部36により拡張ヘッダが付与される。拡張ヘッダが付与された一連のパケットデータはシーケンス番号付与部37に出力され、シーケンス番号付与部37は、拡張ヘッダ付与部36から出力された各パケットデータの拡張ヘッダに送信順序番号である連続するシーケンス番号を付して出力する。例えば、移動体側ネットワーク10を介して出力された一連のパケットデータが200個である場合、これら200個のパケットデータに拡張ヘッダがそれぞれ付与され、これら一連のパケットデータの拡張ヘッダに1〜200までの連続するシーケンス番号が順に付される。連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータは送信バッファ部38に保持される。
【0056】
そして、移動車両9が複数の地上無線局6−1乃至6−nにより形成された通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、移動体無線局11の送信バッファ部38に保持された各パケットデータが出力され、送信順序設定部39により設定された送信順序により拡張ヘッダ編集部41に出力される。拡張ヘッダ編集部41は、送信順序設定部39により設定された送信順序にて出力された各パケットデータに付与された拡張ヘッダの情報を再送要求設定部48及び再送可否判定部49から通知されたシーケンス番号等により編集する。例えば、再送要求設定部48から各地上無線局6−1乃至6−nに再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求情報を有効とし、そのシーケンス番号を再送要求情報に記述し、再送可否判定部49から各地上無線局6−1乃至6−nへの再送が可能と判定されたパケットデータのシーケンス番号が通知された場合は、拡張ヘッダの再送要求応答情報を再送可能とする。
【0057】
送信部42は、拡張ヘッダ編集部41から出力されたパケットデータに所望の変調処理を施した後、指向性アンテナを介して各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信する。このように、移動車両9内に設けられた端末装置14aから出力された一連のパケットデータは、拡張ヘッダ付与部36により付与された拡張ヘッダに連続するシーケンス番号がそれぞれ付され、そのシーケンス番号に従って送信部42から鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信される。
【0058】
なお、図9は図1等に示す移動車両9に設けられた移動体無線局11から各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図であり、図9(a)は送信バッファ部38に保持され、各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されるパケットデータのデータ構成図、図9(b)は制御パケット生成部40により生成され、送信バッファ部38に保持されたパケットデータがない場合等に各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信される制御用パケットデータのデータ構成図である。図9において、55は移動体側ネットワーク10に接続された端末装置14a等のエンド端末装置から出力された元のパケットデータ、56は各エンド端末から出力された元のパケットデータ51に付与された拡張ヘッダ、57は制御パケット生成部40により生成された制御パケットである。図9に示すように、各エンド端末から出力された元のパケットデータ55に付与される拡張ヘッダ56と制御パケット生成部40から出力される制御パケット57とはほぼ同様のデータ構成であり、たとえ送信バッファ部38に保持されたパケットデータがないような場合でも制御パケット生成部40から出力された制御パケット57を送信することにより拡張ヘッダ56と同様の情報を各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信することができる。
【0059】
また、図9において、56a乃至56fは拡張ヘッダ55に付された情報であって、移動体無線局11と各地上無線局6−1乃至6−nとの間、すなわちノード端末装置間における再送制御に用いられる制御情報、57a乃至57eは制御パケット56に付された情報であって、各地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間(ノード端末装置間)における再送制御に用いられる制御情報である。具体的に説明すると、56a,57aはいずれの地上無線局から送信されたパケットデータであるかを識別するための識別IDである車両ID、56b,57bは移動体無線局11から送信されたパケットデータの種類を示すフレームタイプ、56c,57cは各地上無線局6−1乃至6−nから送信された再送要求情報に対する再送の可否を記述する再送要求応答情報、56d及び56e,57d及び57eは各地上無線局6−1乃至6−nに対する再送要求の有無、及びその再送要求するパケットデータを記述する再送要求情報、56fは図3に示す送信番号付与部37により付された各パケットデータのシーケンス番号である。このシーケンス番号56fが各地上無線局6−1乃至6−nにおけるシーケンス番号の抜けや重複の判定に用いられる。そして、拡張ヘッダ56又は制御パケット57に付されたこれらの情報56a乃至56f、57a乃至57eが拡張ヘッダ編集部41によりそれぞれ編集されて送信部42に出力される。
【0060】
なお、エンド端末から出力された元のパケットデータ51には送信先アドレスの他に送信元アドレスやパケット順序を示す番号等が記述されたヘッダが付されているが、このようなヘッダに付される情報はいわゆるエンド端末装置間の制御に用いられる情報であり、図1に示すような複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間における再生制御に用いることはできない。しかしながら、実施の形態1による移動体通信システムでは、端末装置14a等のエンド端末装置から出力されたパケットデータ55に拡張ヘッダ56を付与し、この拡張ヘッダに付された情報に基づいて移動車両9に設けられた移動体無線局11と複数の地上無線局6−1乃至6−nとの間、すなわちノード端末装置間における再送制御を行っており、後述するような効率的な再送制御ないしリアルタイムの通信を行うことが可能である。
【0061】
次に、各地上無線局6−1乃至6−nの受信動作について説明する。各地上無線局6−1乃至6−nは、移動車両9に設けられた移動体無線局11が自局の通信エリア8−1乃至8−n内に位置するときに、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信することができ、移動体無線局11が地上無線局6−1の通信エリア8−1に位置するときは、地上無線局6−1の受信部23に設けられた指向性アンテナを介して移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信する。また、移動車両9が移動して移動体無線局11が地上無線局6−2の通信エリア8−2に位置するときは、地上無線局6−2の受信部23に設けられた指向性アンテナを介して移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信する。このように、鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nは、移動車両9に設けられた移動体無線局11が自局の通信エリアに位置するときに移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信することができ、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信する地上無線局を地上無線局6−1→地上無線局6−2→・・・→地上無線局6−nと切り替えながら移動体無線局11から送信された個別のパケットデータをそれぞれ受信する。
【0062】
各地上無線局6−1乃至6−nの受信部23において受信された各パケットデータは、受信部23において復調処理、誤り訂正処理等が施された後、拡張ヘッダ解析部24に出力される。拡張ヘッダ解析部24は、受信部23の復調処理により復元された受信データに付与された拡張ヘッダ56の情報を解析し、再送要求応答情報56cは再送要求可否判定部27に通知し、再送要求情報56d及び56eは再送可否判定部29に通知する。そして、拡張ヘッダの情報が解析された各受信データは受信パケット処理部25のパケット収集部25aに収集される。なお、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nには、移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局において受信されたパケットデータが第1のパケット転送部30により有線回線7を介して転送されており、このような移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送された受信データも収集される。また、先頭の地上無線局6−2及び中間の地上無線局6−2等には、移動車両9の移動方向に位置する地上無線局において受信されたパケットデータが第2のパケット転送部31により有線回線7を介して転送されており、このような移動車両9の移動方向に位置する地上無線局から転送された受信データも収集される。
【0063】
シーケンス番号検出部25bはパケット収集部25aに収集された各受信データに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、パケット判定部25cはシーケンス番号検出部25bにより検出された各受信データのシーケンス番号からシーケンス番号の抜け及び重複したシーケンス番号をそれぞれ判定する。パケット判定部25cにより重複と判定されたシーケンス番号の受信データは重複破棄部26に出力されて破棄され、抜けと判定されたシーケンス番号については再送要求設定部28に通知される。上述したとおり、移動体無線局11から送信される一連のパケットデータには連続するシーケンス番号が付されており、例えば、シーケンス番号検出部25bにより検出された各受信データのシーケンス番号が1〜7、9となっている場合、シーケンス番号8のパケットデータが受信されておらず、シーケンス番号8がシーケンス番号の抜けとして検出される。また、隣の地上無線局において受信された受信データが第1のパケット転送部30又第2のパケット転送部31によってそれぞれ転送されるので、各地上無線局6−1乃至6−nにおいては同一シーケンス番号のパケットデータを複数受信する場合があり、シーケンス番号が重複した受信データを重複パケットとして検出する。
【0064】
なお、再送要求可否判定部27は、拡張ヘッダ解析部24から通知された再送要求応答情報により移動体無線局11に対して再送要求したパケットデータの再送の可否を判定しており、その判定結果を再送要求設定部28に通知する。そして、再送要求設定部28は、パケット判定部25cにより抜けと判定されたシーケンス番号と再送要求可否判定部27の判定結果とから移動体無線局11に対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定し、その設定したシーケンス番号を拡張ヘッダ編集部21に通知する。例えば、パケット判定部25cから通知されたシーケンス番号に基づく再送要求を行い、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送不可と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求しても移動体無線局11から再送されないと判断し、当該シーケンス番号に基づく再送要求の設定を中止する。一方、その再送要求したシーケンス番号のパケットデータについて再送可能と判定された場合はそのシーケンス番号のパケットデータを再送要求すると移動体無線局11から再送されると判断し、そのシーケンス番号がシーケンス番号検出部25bにより検出されるまで再送要求の設定を継続する。
【0065】
また、再送可否判定部29は、拡張ヘッダ解析部24から通知された再送要求情報56d及び56eと送信バッファ部18に保持されたパケットデータの情報とから移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送の可否を判定し、その再送要求されたパケットデータの再送が可能な場合は、その再送要求されたパケットデータのシーケンス番号を移動体無線局11に対して再送するパケットデータのシーケンス番号として送信順序設定部19に通知すると共に、拡張ヘッダ編集部21に移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を通知する。なお、移動体無線局11から再送要求されたパケットデータが送信バッファ部18に保持されておらず、当該パケットデータの再送が不可能である場合は、拡張ヘッダ編集部21に移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を通知する。
【0066】
そして、送信順序設定部19は、再送可否判定部29からシーケンス番号が通知されるとその通知されたシーケンス番号に基づいて送信バッファ部18に保持された各パケットデータの送信順序を変更する。例えば、送信順序設定部19が送信バッファ部18に保持されたパケットデータをシーケンス番号に従って読み出し、シーケンス番号10のパケットデータを読み出している途中で再送可否判定部29からシーケンス番号8が移動体無線局11に再送するパケットデータのシーケンス番号として通知されると、送信順序設定部19はシーケンス番号10のパケットデータの読み出しを中止し、再度シーケンス番号8からパケットデータを順に読み出して拡張ヘッダ編集部21に出力する。
【0067】
拡張ヘッダ編集部21は、送信順序設定部19によって送信順序が変更されたパケットデータが入力されると、その送信順序が変更されたパケットデータの拡張ヘッダを編集する。例えば、送信順序設定部19により送信順序が変更される場合は、再送可否判定部29から拡張ヘッダ編集部21に対して移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨が通知されるので、拡張ヘッダ編集部21は各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報56cに移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が可能である旨を設定する。一方、送信順序設定部19により送信順序が変更されない場合は、再送可否判定部29から移動体無線局11から再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨通知されるので、拡張ヘッダ編集部21は自局から送信する各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求応答情報52cにから再送要求されたパケットデータの再送が不可である旨を設定する。
【0068】
また、拡張ヘッダ編集部21には再送要求設定部28から移動体無線局11に対して再送要求するパケットデータのシーケンス番号が通知されており、拡張ヘッダ編集部21は、再送要求設定部28から通知されたシーケンス番号に基づいて各パケットデータに付された拡張ヘッダの再送要求情報56d及び56eに再送要求するパケットデータの有無及びその再送要求するシーケンス番号をそれぞれ記述する。拡張ヘッダ編集部21により拡張ヘッダの編集が行われた核パケットデータは送信部22に出力され、送信部22から移動体無線局11に対して再送される。
【0069】
一方、受信パケット処理部25のシーケンス番号検出部25bによりシーケンス番号が検出され、重複破棄部26により重複パケットが破棄された後の受信パケットは拡張ヘッダ除去部34に出力される。拡張ヘッダ除去部34は、受信パケット処理部25から出力された各受信データの拡張ヘッダをそれぞれ除去し、元のパケットデータを中継装置4に出力する。中継装置4に出力された各パケットデータには送信先のアドレス情報等が記述されたヘッダが付加されており、中継装置4に出力された各パケットデータはそのヘッダに記述された送信先のアドレス情報に基づいてパケットデータの送信先である端末装置2aにそれぞれ届けられる。なお、中間の地上無線局6−2等や末尾の地上無線局6−nにおいて受信された個別のパケットデータは第2の転送部31を介して先頭の地上無線局6−1に対してそれぞれ転送され、先頭の地上無線局6−1のパケット収集部25aからパケット拡張処理部35の拡張ヘッダ除去部34に出力されるので、移動体無線局11から送信され一連のパケットデータを確実に中継装置4に出力することができる。
【0070】
このように、鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局地上無線局6−1乃至6−nでは、先頭の地上無線局6−2及び中間の地上無線局6−2等が自局の受信部23において受信した受信データを第1のパケット転送部30により有線回線7を介して接続された移動車両9の移動方向に位置する地上無線局、すなわち中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nにそれぞれ転送し、これら中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nが前記転送された受信データ及び自局の受信部23により受信した受信データを中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nのパケット収集部25aにそれぞれ収集し、その収集された受信データのシーケンス番号を検出し、シーケンス番号に抜けがある場合はそのシーケンス番号に基づいて移動体無線局11に対して再送要求するように構成したので、鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動体無線局11から送信された一連のパケットデータを鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにより確実に受信し、地上側ネットワーク1に接続された中継装置4に出力することができる。
【0071】
ここで、上述したような移動体無線局11から複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されたパケットデータの流れについて図10を用いて説明する。図10は図1に示すような移動車両9に設けられた移動体無線局11から複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。図10において、58は移動体無線局11の送信部42から送信されたパケットデータであり、数字は各パケットデータの拡張ヘッダ56に付された連続するシーケンス番号をそれぞれ示している。なお、図10では地上無線局6−1から6−3までの間におけるパケットデータの流れについて示しているが、地上無線局6−4以降のパケットデータの流れも同様であり、これらの図示説明については省略する。上述したとおり、移動体無線局11の送信バッファ部38には連続するシーケンス番号が付された一連のパケットデータが保持されており、移動車両9が各地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8−nに近付くと、移動体無線局11は、送信バッファ部38に保持された一連のパケットデータの送信を開始する。
【0072】
各地上無線局6−1乃至6−nは、移動体無線局11が自局の通信エリア内において送信したパケットデータのみを受信することができ、移動体無線局11から送信されたパケットデータは、図10に示すように、地上無線局6−1→地上無線局6−2→地上無線局6−3の順にそれぞれ受信される。なお、各地上無線局6−1乃至6−nは、有線回線7を介して相互に接続されており、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信すると、その受信したパケットデータに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、有線回線7を介して移動車両9の移動方向に位置する地上無線局に転送する。例えば、先頭の地上無線局6−1において受信された受信データは中間の地上無線局6−1のパケット転送部30により有線回線7を介して中間の地上無線局6−2に転送され、中間の地上無線局6−2において受信された受信データは中間の地上無線局6−2の第1のパケット転送部30により有線回線7を介して中間の地上無線局6−3にそれぞれ転送される。
【0073】
これにより、移動車両9の移動方向に位置する地上無線局(具体的には、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−n)は、移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局(具体的には、先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等)において受信された受信データをそれぞれ共有することができ、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nは、自局の受信部23による受信したパケットデータだけでなく、移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送されたパケットデータについてもシーケンス番号をそれぞれ検出し、これらの検出したシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを判定することができる。そして、中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nは、抜けと判定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報を移動体無線局11に対してそれぞれ送信する。
【0074】
例えば、通信エリア8−1においては、地上無線局6−1がシーケンス番号8に基づく再送要求情報を移動体無線局11に対して送信しており、通信エリア8−2及び通信エリア8−3においては、地上無線局6−2及び地上無線局6−3がシーケンス番号10,16に基づく再送要求情報を移動体無線局11に対してそれぞれ送信している。なお、中間の地上無線局6−2には先頭の地上無線局6−1において受信された各受信データが有線回線7を介して転送されており、中間の地上無線局6−2は、これら先頭の地上無線局6−1から転送された各受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号10がシーケンス番号の抜けであると判定することができる。中間の地上無線局6−3も同様であり、中間の地上無線局6−2から転送された各受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号16がシーケンス番号の抜けであると判定することができる。
【0075】
移動体無線局11は、自局の送信バッファ部38に保持された一連のパケットデータを各パケットデータに付されたシーケンス番号の順序に従ってそれぞれ送信しているが、各地上無線局6−1乃至6−nからそれぞれ通知された再送要求情報52d及び52eを受信すると、その再送要求情報52d及び52eにより指定されたパケットデータの再送の可否を判定し、当該再送要求されたパケットデータの再送が可能と判断した場合は、各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信するパケットデータの順序を変更し、各地上無線局6−1乃至6−nから送信された再送要求情報52cにより指定されたシーケンス番号のパケットデータから送信バッファ部38に保持されたパケットデータの再送を行うと共に、再送要求応答情報56cによりその旨を再送要求情報52d及び52eを通知した地上無線局に対してそれぞれ通知する。各地上無線局6−1乃至6−nから再送要求されたパケットデータの再送が不可と判断した場合は、再送要求応答情報56cによりその旨を再送要求信号を通知した地上無線局に対してそれぞれ通知する。
【0076】
このように、実施の形態1による移動体通信システムでは、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信した先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等が自局の受信部23により受信したパケットデータを有線回線7を介して移動車両9の移動方向と位置する地上無線局、すなわち中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nに対して転送し、これら移動車両9の移動方向に位置する中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nが移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送された受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号を検出し、シーケンス番号の抜けを判定するので、図10に示すように、移動車両9の走行に伴って移動体無線局11の通信相手が順次切り替わり、当該通信相手の切り替わりによって抜けパケットを検出した地上無線局において移動体無線局11に対する再送要求ができないような場合であっても、その切り替わった後の地上無線局、例えば、地上無線局6−2,6−3等においてその抜けパケットに基づく再送要求信号の通知、及びその再送要求信号に基づき移動体無線局11から再送されたパケットデータを受信することができ、鉄道線路5に沿って配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにおいて鉄道線路5上を移動する移動体無線局11から送信される一連のパケットデータを全て受信することができる。
【0077】
なお、図1に示す移動体通信システムでは、鉄道線路5を軌道、鉄道線路5を走行する新幹線、特急電車等の移動車両9を移動体として説明したが、本発明に係る移動体通信方法及び移動体通信システムはこれに限られるものではなく、例えば、高速道路等の道路を軌道としこのような道路を走行する自動車等の車両を移動体とする場合にも同様に適用することができる。この場合、高速道路等の沿線、例えば、高層道路等の側壁に図3乃至図5に示すような構成の複数の地上無線局をそれぞれ配置し、このような複数の地上無線局が配置された高速道路等を走行する自動車等の車両に図6に示すような移動体無線局を設けることにより、上述したような本発明に係る移動体通信方法及び移動体通信システムを実現することができ、例えば、自動車の助手席等に乗車した人が車両内に設置された端末装置を使用して常時インターネットへのアクセス、電子メールの送受信等の提供を受けることができる。
【0078】
また、図1に示す実施の形態1による移動体通信システムでは、軌道である鉄道線路5に沿って配置される複数の地上無線局6−1乃至6−nのうち、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を先頭の地上無線局、移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを末尾の地上無線局とし、地上無線局6−1と中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成しているが、これとは反対に移動車両9が最後に通過する通信エリア8−nを形成する地上無線局6−nを先頭の地上無線局、移動車両9が最初に通過する通信エリア8−1を形成する地上無線局6−1を末尾の地上無線局とし、地上無線局6−nと中継装置4とを光ケーブル等の有線回線により接続するように構成してもよい。この場合、図3に示すようなパケット拡張処理部35は地上無線局6−nに設ける必要があり、中継装置4を経由して地上無線局6−nに出力された一連のパケットデータは、パケット拡張処理部35において連続するシーケンス番号が付された後、移動車両9の移動方向と反対方向に転送されて各地上無線局の送信バッファ部18にそれぞれ保持される。一方、複数の地上無線局6−1乃至6−nにより受信した移動体無線局11からの個別のパケットデータは移動車両9の移動方向に転送され、地上無線局6−nに設けられたパケット拡張処理部35を介して中継装置4に出力される。このように、地上無線局6−nを先頭の地上無線局とした場合には、各地上無線局6−1乃至6−nは、自局により受信した個別のパケットデータを移動車両9の移動方向にのみ転送すればよく、中間の地上無線局及び末尾の地上無線局に図4乃至図5に示すような第2のパケット転送部31を設ける必要がないためこれらの地上無線局をより小型に構成することができる。
【0079】
以上のように、実施の形態1による移動体通信システムでは、移動体無線局11に対して送信する一連のパケットデータの拡張ヘッダに連続するシーケンス番号をそれぞれ付し、これら連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nにおいてそれぞれ保持し、各地上無線局6−1乃至6−nから鉄道線路5上を走行する移動車両9に設けられた移動無線局11に対してそれぞれ送信するように構成したので、地上側ネットワーク1に接続された端末装置2と車内ネットワーク12に接続された端末装置13等とのエンド間ではなく、ノード間、すなわち複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間において効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる。
【0080】
また、実施の形態1による移動体通信システムでは、移動体無線局11から鉄道線路5に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信する一連のパケットデータの拡張ヘッダに連続するシーケンス番号をそれぞれ付する一方、移動体無線局11から送信されたパケットデータを受信した先頭の地上無線局6−1及び中間の地上無線局6−2等が自局の受信部23により受信したパケットデータを有線回線7を介して移動車両9の移動方向と位置する地上無線局、すなわち中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nに対して転送し、これら移動車両9の移動方向に位置する中間の地上無線局6−2等及び末尾の地上無線局6−nが移動車両9の移動方向と反対方向に位置する地上無線局から転送された受信データと自局の受信部23により受信した受信データとからシーケンス番号を検出し、シーケンス番号の抜けを判定するように構成したので、地上側ネットワーク1に接続された端末装置2と車内ネットワーク12に接続された端末装置13等とのエンド間ではなく、ノード間、すなわち複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間において効率的な再送制御を行うことができ、移動体−地上間においてリアルタイムの無線通信を行うことができる。
【0081】
なお、実施の形態1に示すような移動体通信システムでは、鉄道線路5の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動車両9に設けられた移動体無線局11との間において送受信するパケットデータを図7及び図9に示すようにそれぞれ構成し、自局から送信するパケットデータの拡張ヘッダ52,56に送信順序番号である連続するシーケンス番号だけでなくいわゆる再送制御情報52c、56c等を付して送信するようにしたので、パケットデータの送信と同時に抜けと判定したシーケンス番号のパケットデータについて再送要求することができ、地上側及び移動体間において効率のよい双方向同時連続伝送を実現することができる。
【0082】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について図11を用いて説明する。実施の形態1による移動体通信システムでは、複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間におけるパケットデータの送受信をより確実にするため、鉄道線路5上に形成される各通信エリア8−1乃至8―nを隣接する通信エリアと部分的に重複するように形成しているが、各地上無線局6−1乃至6−nの配置間隔を広くして各通信エリア8−1乃至8―nを隣接する通信エリアと重複しないように形成してもよい。例えば、多数のコンテンツ情報を複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信する場合、複数の地上無線局6−1乃至6−nと移動体無線局11との間の通信時間をできるだけ長くするため鉄道線路5に沿って設置する地上無線局の数を増やして移動体無線局11との通信範囲を広くする必要があるが、鉄道線路5に沿って配置する各地上無線局6−1乃至6−nの間隔を広くすることにより地上無線局の設置数を少なくすることができる。
【0083】
図11は実施の形態2による移動体通信システムを示すシステム概要図である。図11に示すように、実施の形態2による移動体通信システムでは、各地上無線局6−1乃至6−nの配置間隔を広く設け、これら複数の地上無線局6−1乃至6−nの通信エリア8−1乃至8―nが隣接する通信エリアと重複する部分を生じないように形成されており、これにより、鉄道線路5に沿って設置する地上無線局の設置数を少なくすることができる。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示し、これらについての詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態1による移動体通信システムを示すシステム概要図である。
【図2】図1に示す移動車両9内に設けられた車内LANシステムを示すシステム概要図である。
【図3】図1に示す中継装置4と接続された先頭の地上無線局6−1の具体的構成を示すブロック構成図である。
【図4】図1に示す地上無線局6−2等、有線回線7を介して両隣の地上無線局と連結される中間の地上無線局の具体的構成を示すブロック構成図である。
【図5】図1に示す先頭の地上無線局6−1と反対側の端部に配置される末尾の地上無線局6−nの具体的構成を示すブロック構成図である。
【図6】図1等に示す移動体無線局11の具体的構成を示すブロック構成図である。
【図7】図1等に示す各地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図である。
【図8】図1に示す複数の地上無線局6−1乃至6−nから移動車両9に設けられた移動体無線局11に対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図9】図1等に示す移動車両9に設けられた移動体無線局11から各地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されるパケットデータのデータ構成を示すデータ構成図である。
【図10】図1に示すような移動車両9に設けられた移動体無線局11から複数の地上無線局6−1乃至6−nに対して送信されたパケットデータの流れを模式的に示すシーケンス図である。
【図11】実施の形態2による移動体通信システムを示すシステム概要図である。
【符号の説明】
【0085】
1 インターネット回線(地上側ネットワーク)、
2a,2b,14a,14b 端末装置(エンド端末装置)、
3 情報配信サーバ(情報提供装置)、4 中継装置、5 鉄道線路、
6−1,6−2,6−3,6−n 地上無線局、7 有線回線、
8−1,8−2,8−3,8−n 通信エリア、9 移動車両、
10 移動体側ネットワーク(車内LANシステム)、11 移動体無線局、
16,36 拡張ヘッダ付与部、17,37 送信番号付与部、
18,38 送信バッファ部、19,39 送信順序設定部、
21,41 拡張ヘッダ編集部、22,42 送信部、23,43 受信部、
24,45 拡張ヘッダ解析部、25,45 受信パケット処理部、
27,47 再送要求可否判定部、28、48 再送要求設定部、
29,49 再送可否判定部、30 第1の転送部、31 第2の転送部、
34,50 拡張ヘッダ除去部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局から連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信し、前記軌道上を移動する移動体の移動無線局により前記複数の地上無線局から送信された一連のパケットデータを受信する移動体通信方法であって、前記地上無線局は、前記一連のパケットデータをそのシーケンス番号に従ってそれぞれ送信し、前記移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信し、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に通知し、前記後段の地上無線局は、前記移動無線局から通知されたシーケンス番号に基づき前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更し、前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するようにした移動体通信方法。
【請求項2】
軌道の沿線に間隔を設けて配置され、連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信する複数の地上無線局と、前記軌道上を移動する移動体に設けられ、前記複数の地上無線局から送信された一連のパケットデータを受信する移動無線局とを有する移動体通信システムであって、前記地上無線局は、前記一連のパケットデータをそのシーケンス番号に従ってそれぞれ送信し、前記移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信する受信部と、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを判定するパケット判定部と、このパケット判定部の判定結果に基づき前記複数の地上無線局に再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部と、その設定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に対して送信する送信部とを備え、前記後段の地上無線局は、前記連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを保持する送信バッファ部と、受信した前記再送要求情報に基づいて前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するよう前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更する送信順序設定部とを備えた移動体通信システム。
【請求項3】
前記後段の地上無線局は、前記送信バッファ部に保持されたパケットデータのシーケンス番号から前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータの再送の可否を判定するようにした請求項2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
軌道上を移動する移動体の移動体無線局から一連のパケットデータを送信し、前記軌道の沿線に前記移動体の移動方向に間隔を設けて配置された複数の地上無線局により前記移動体無線局から送信された一連のパケットデータを順次に受信する移動体通信方法であって、前記移動体無線局は、前記一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付して送信し、前記地上無線局は、前記移動体無線局から送信され、自局により受信した個別のパケットデータ及び前記移動体無線局から送信され、前段の地上無線局により受信された個別のパケットデータを収集して前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に対して転送する一方、前記収集した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、シーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体無線局に通知し、前記移動体無線局から前記抜けと判定したシーケンス番号が付されたパケットデータを再送させるようにした移動体通信方法。
【請求項5】
軌道上を移動する移動体に設けられ、一連のパケットデータを送信する移動体無線局と、前記軌道の沿線に前記移動体の移動方向に間隔を設けて配置され、前記軌道上を移動する移動体の移動体無線局から送信された一連のパケットデータを順次に受信する複数の地上無線局とを有する移動体通信システムであって、前記移動体無線局は、前記一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付して送信し、前記地上無線局は、前記移動体無線局から送信された個別のパケットデータを受信する受信部と、その受信した個別のパケットデータ及び前記移動体無線局から送信され、前段の地上無線局により受信された個別のパケットデータを収集するパケット収集部と、このパケット収集部により収集された個別のパケットデータを前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に転送するパケット転送部と、前記パケット収集部により収集された個別のパケットデータに付されたシーケンス番号を検出するシーケンス番号検出部と、このシーケンス番号検出部により検出されたシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを判定するパケット判定部と、このパケット判定部の判定結果に基づき前記移動体無線局に再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部と、その設定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報を前記移動体無線局に対して送信する送信部とを備えた移動体通信システム。
【請求項6】
前記地上無線局は、前記移動無線局から通知された再送要求応答情報から前記移動体無線局に再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する請求項5に記載の移動体通信システム。
【請求項1】
軌道の沿線に間隔を設けて配置された複数の地上無線局から連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信し、前記軌道上を移動する移動体の移動無線局により前記複数の地上無線局から送信された一連のパケットデータを受信する移動体通信方法であって、前記地上無線局は、前記一連のパケットデータをそのシーケンス番号に従ってそれぞれ送信し、前記移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信し、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に通知し、前記後段の地上無線局は、前記移動無線局から通知されたシーケンス番号に基づき前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更し、前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するようにした移動体通信方法。
【請求項2】
軌道の沿線に間隔を設けて配置され、連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを送信する複数の地上無線局と、前記軌道上を移動する移動体に設けられ、前記複数の地上無線局から送信された一連のパケットデータを受信する移動無線局とを有する移動体通信システムであって、前記地上無線局は、前記一連のパケットデータをそのシーケンス番号に従ってそれぞれ送信し、前記移動無線局は、前段の地上無線局から送信された個別のパケットデータを受信する受信部と、その受信した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを判定するパケット判定部と、このパケット判定部の判定結果に基づき前記複数の地上無線局に再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部と、その設定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報を前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に対して送信する送信部とを備え、前記後段の地上無線局は、前記連続するシーケンス番号を付した一連のパケットデータを保持する送信バッファ部と、受信した前記再送要求情報に基づいて前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータを再送するよう前記移動体無線局に送信するパケットデータの送信順序を変更する送信順序設定部とを備えた移動体通信システム。
【請求項3】
前記後段の地上無線局は、前記送信バッファ部に保持されたパケットデータのシーケンス番号から前記移動体無線局により抜けと判定されたシーケンス番号が付されたパケットデータの再送の可否を判定するようにした請求項2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
軌道上を移動する移動体の移動体無線局から一連のパケットデータを送信し、前記軌道の沿線に前記移動体の移動方向に間隔を設けて配置された複数の地上無線局により前記移動体無線局から送信された一連のパケットデータを順次に受信する移動体通信方法であって、前記移動体無線局は、前記一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付して送信し、前記地上無線局は、前記移動体無線局から送信され、自局により受信した個別のパケットデータ及び前記移動体無線局から送信され、前段の地上無線局により受信された個別のパケットデータを収集して前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に対して転送する一方、前記収集した個別のパケットデータに付されたシーケンス番号をそれぞれ検出し、シーケンス番号に抜けがあると判定したときは、その抜けと判定したシーケンス番号を前記移動体無線局に通知し、前記移動体無線局から前記抜けと判定したシーケンス番号が付されたパケットデータを再送させるようにした移動体通信方法。
【請求項5】
軌道上を移動する移動体に設けられ、一連のパケットデータを送信する移動体無線局と、前記軌道の沿線に前記移動体の移動方向に間隔を設けて配置され、前記軌道上を移動する移動体の移動体無線局から送信された一連のパケットデータを順次に受信する複数の地上無線局とを有する移動体通信システムであって、前記移動体無線局は、前記一連のパケットデータに連続するシーケンス番号を付して送信し、前記地上無線局は、前記移動体無線局から送信された個別のパケットデータを受信する受信部と、その受信した個別のパケットデータ及び前記移動体無線局から送信され、前段の地上無線局により受信された個別のパケットデータを収集するパケット収集部と、このパケット収集部により収集された個別のパケットデータを前記移動体の移動方向に位置する後段の地上無線局に転送するパケット転送部と、前記パケット収集部により収集された個別のパケットデータに付されたシーケンス番号を検出するシーケンス番号検出部と、このシーケンス番号検出部により検出されたシーケンス番号からシーケンス番号の抜けを判定するパケット判定部と、このパケット判定部の判定結果に基づき前記移動体無線局に再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する再送要求設定部と、その設定されたシーケンス番号に基づく再送要求情報を前記移動体無線局に対して送信する送信部とを備えた移動体通信システム。
【請求項6】
前記地上無線局は、前記移動無線局から通知された再送要求応答情報から前記移動体無線局に再送要求するパケットデータのシーケンス番号を設定する請求項5に記載の移動体通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−180886(P2007−180886A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376785(P2005−376785)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]