説明

移動制御方法、露光方法、ステージ装置、露光装置、プログラム、記録媒体、及びデバイス製造方法

【課題】露光不良の発生を抑制できる物体の移動制御方法を提供する。
【解決手段】露光光が射出される光学部材の射出面との間に液体を保持して移動可能な物体の移動制御方法は、第1時点から第2時点までの所定期間において物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて物体を移動させることを含む。その移動プロファイルは、所定期間において物体を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動制御方法、露光方法、ステージ装置、露光装置、プログラム、記録媒体、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ工程で用いられる露光装置において、例えば下記特許文献に開示されているような、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0103817号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液浸露光装置において、例えば光学部材と基板等の物体との間に液体が保持された状態でその物体を移動する場合、液体が流出したり、物体上に液体(膜、滴等)が残留したりする可能性がある。その結果、露光不良が発生したり、不良デバイスが発生したりする可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、露光不良の発生を抑制できる物体の移動制御方法、露光方法、ステージ装置、露光装置、プログラム、及び記録媒体を提供することを目的とする。また本発明の態様は、不良デバイスの発生を抑制できるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、露光光が射出される光学部材の射出面との間に液体を保持して移動可能な物体の移動制御方法であって、第1時点から第2時点までの所定期間において物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて物体を移動させることを含み、移動プロファイルは、所定期間において物体を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含む移動制御方法が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、液体を介して基板を露光する露光方法であって、露光光が射出される光学部材の射出面と基板との間に液体を保持することと、光学部材と基板との間に液体が保持された状態で、第1時点から第2時点までの所定期間において基板の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて基板を移動させることと、液体を介して射出面からの露光光を基板に照射することと、を含み、移動プロファイルは、所定期間において基板を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含む露光方法が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、第2の態様の露光方法を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、露光光が射出される光学部材の射出面との間に液体を保持して移動可能な可動部材を有するステージ装置であって、第1時点から第2時点までの所定期間において可動部材の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて可動部材を移動させる駆動装置を備え、移動プロファイルは、所定期間において可動部材を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含むステージ装置が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、露光光が射出される射出面を有する光学部材と、射出面との間に液体を保持して移動可能な物体の移動を制御するための所定の移動プロファイルが記憶される記憶装置と、第1時点から第2時点までの所定期間において物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように移動プロファイルに基づいて物体を移動させる駆動装置と、を備え、移動プロファイルは、所定期間において物体を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含む露光装置が提供される。
【0011】
本発明の第6の態様に従えば、第5の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第7の態様に従えば、コンピュータに、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置の制御を実行させるプログラムであって、露光光が射出される光学部材の射出面と物体との間に液体を保持することと、光学部材と物体との間に液体が保持された状態で、第1時点から第2時点までの所定期間において物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて物体を移動させることと、を実行させることを含み、移動プロファイルは、所定期間において物体を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含むプログラムが提供される。
【0013】
本発明の第8の態様に従えば、第7の態様のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、露光不良の発生を抑制できる。また本発明の態様によれば、不良デバイスの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る液浸部材の一例を示す側断面図である。
【図3】本実施形態に係る基板ステージに保持された基板の一例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る液浸空間の状態の一例を示す図である。
【図5】本実施形態に係る移動プロファイルの一例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る液浸空間の状態の一例を示す図である。
【図7】本実施形態に係るデバイスの製造工程の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0017】
図1は、本実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図である。本実施形態の露光装置EXは、液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する液浸露光装置である。
【0018】
また、本実施形態の露光装置EXは、例えば米国特許第6897963号明細書、欧州特許出願公開第1713113号明細書等に開示されているような、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、基板Pを保持せずに、露光光ELを計測する計測部材C(計測器)を搭載して移動可能な計測ステージ3とを備えた露光装置である。
【0019】
図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板ステージ2と、計測ステージ3と、マスクステージ1を移動する駆動システム4と、基板ステージ2及び計測ステージ3を移動する駆動システム5と、マスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、露光光ELの光路の少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能な液浸部材6と、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置7と、制御装置7に接続され、露光に関する各種の情報を記憶する記憶装置8とを備えている。
【0020】
液浸空間は、液体で満たされた空間である。本実施形態においては、液体LQとして、水(純水)を用いる。マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。基板Pは、デバイスを製造するための基板である。基板Pは、例えば半導体ウエハ等の基材と、その基材上に形成された感光膜とを含む。感光膜は、感光材(フォトレジスト)の膜である。なお、基板Pが、感光膜に加えて別の膜を含んでもよい。例えば、基板Pが、反射防止膜を含んでもよいし、感光膜を保護する保護膜(トップコート膜)を含んでもよい。
【0021】
照明系ILは、所定の照明領域IRに露光光ELを照射する。照明領域IRは、照明系ILから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を露光光ELで照明する。本実施形態においては、照明系ILから射出される露光光ELとして、ArFエキシマレーザ光を用いる。なお、露光光ELとして、KrFエキシマレーザ光を用いてもよい。
【0022】
マスクステージ1は、マスクMをリリース可能に保持する保持部9を有する。マスクステージ1は、露光光ELを射出する照明系ILの射出面と対向する位置を含む所定面内において移動可能である。本実施形態において、マスクステージ1は、照明系ILから射出される露光光ELの光路と交差するXY平面内において移動可能である。照明系ILの射出面と対向する位置は、その射出面から射出される露光光ELが照射可能な位置(照明領域IR)を含む。マスクステージ1は、保持部9にマスクMを保持した状態で、ベース部材10のガイド面10G上を移動可能である。本実施形態において、ガイド面10Gは、XY平面とほぼ平行である。
【0023】
本実施形態において、駆動システム4は、マスクステージ1に配置された可動子4Aと、ベース部材10に配置された固定子4Cとを有する平面モータを含む。マスクステージ1は、駆動システム4の作動により、ガイド面10G上において、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0024】
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影光学系PLは、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面11を有する。投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子12が射出面11を有する。投影領域PRは、射出面11から射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。投影光学系PLは、投影領域PRに配置された基板Pの少なくとも一部に、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で投影する。本実施形態において、終端光学素子12の光軸は、Z軸と平行である。本実施形態において、射出面11から射出される露光光ELは、−Z方向に進行する。
【0025】
基板ステージ2は、射出面11から射出される露光光ELで露光される基板Pを保持する。基板ステージ2は、基板Pをリリース可能に保持する保持部13を有する。計測ステージ3は、射出面11から射出される露光光ELを計測する計測部材C(計測器)を搭載する。計測ステージ3は、計測部材Cをリリース可能に保持する保持部14を有する。本実施形態において、基板ステージ2は、米国特許出願公開第2007/0177125号明細書、及び米国特許出願公開第2008/0049209号明細書等に開示されているような、保持部13の周囲の少なくとも一部に配置され、カバー部材Tをリリース可能に保持する保持部15を有する。計測ステージ3は、保持部14の周囲の少なくとも一部に配置され、カバー部材Sをリリース可能に保持する保持部16を有する。
【0026】
本実施形態において、保持部13は、基板Pの表面(上面)がXY平面とほぼ平行となるように、基板Pを保持する。保持部15は、カバー部材Tの表面(上面)がXY平面とほぼ平行となるように、カバー部材Tを保持する。本実施形態においては、保持部13に保持された基板Pの表面と、保持部15に保持されたカバー部材Tの表面とは、ほぼ同一平面内に配置される(面一である)。なお、Z軸方向に関する基板Pの表面の位置とカバー部材Tの表面の位置とが異なってもよい。また、基板Pの表面とカバー部材Tの表面とが非平行でもよい。また、カバー部材Tの表面の少なくとも一部がXY平面に対して傾斜していてもよいし、曲面でもよい。
【0027】
本実施形態において、保持部14は、計測部材Cの表面(上面)がXY平面とほぼ平行となるように、計測部材Cを保持する。保持部16は、カバー部材Sの表面(上面)がXY平面とほぼ平行となるように、カバー部材Sを保持する。本実施形態においては、保持部14に保持された計測部材Cの表面と、保持部16に保持されたカバー部材Sの表面とは、ほぼ同一平面内に配置される(面一である)。なお、Z軸方向に関する計測部材Cの表面の位置とカバー部材Sの表面の位置とが異なってもよい。また、計測部材Cの表面とカバー部材Sの表面とが非平行でもよい。また、カバー部材Sの表面の少なくとも一部がXY平面に対して傾斜していてもよいし、曲面でもよい。
【0028】
なお、カバー部材Tが基板ステージ2に一体的に形成されてもよいし、カバー部材Sが計測ステージ3に一体的に形成されてもよい。
【0029】
基板ステージ2及び計測ステージ3のそれぞれは、射出面11と対向する位置を含む所定面内において移動可能である。本実施形態において、基板ステージ2及び計測ステージ3は、射出面11から射出される露光光ELの光路と交差するXY平面内において移動可能である。射出面11と対向する位置は、射出面11から射出される露光光ELが照射可能な位置(投影領域PR)を含む。基板ステージ2は、保持部13に基板Pを保持した状態で、ベース部材17のガイド面17G上を移動可能である。計測ステージ3は、保持部14に計測部材Cを保持した状態で、ベース部材17のガイド面17G上を移動可能である。本実施形態において、ガイド面17Gは、XY平面とほぼ平行である。
【0030】
本実施形態において、駆動システム5は、基板ステージ2に配置された可動子5Aと、計測ステージ3に配置された可動子5Bと、ベース部材17に配置された固定子5Cとを有する平面モータを含む。基板ステージ2及び計測ステージ3のそれぞれは、駆動システム5の作動により、ガイド面17G上において、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0031】
なお、駆動システム4、5が有する平面モータの一例が、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されている。
【0032】
本実施形態において、マスクステージ1、基板ステージ2、及び計測ステージ3の位置は、レーザ干渉計ユニット18A、18Bを含む干渉計システム18によって計測される。基板Pの露光処理を実行するとき、あるいは所定の計測処理を実行するとき、制御装置7は、干渉計システム18の計測結果に基づいて、駆動システム4、5を作動し、マスクステージ1(マスクM)、基板ステージ2(基板P)、及び計測ステージ3(計測部材C)の位置制御を実行する。
【0033】
液浸部材6は、射出面11と、その射出面11と対向する位置(投影領域PR)に配置される物体との間の露光光ELの光路が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能である。液浸空間LSの少なくとも一部は、射出面11と物体との間に保持される液体LQによって形成される。
【0034】
本実施形態において、露光光ELが射出される終端光学素子12の射出面11との間に液体LQを保持可能な物体は、基板ステージ2及び計測ステージ3の少なくとも一方を含む。また、本実施形態において、その物体は、保持部15に保持されたカバー部材T、及び保持部16に保持されたカバー部材Sの少なくとも一方を含む。また、本実施形態において、その物体は、保持部13に保持された基板P、及び保持部14に保持された計測部材Cの少なくとも一方を含む。これら物体は、射出面11との間に液体LQを保持して移動可能である。これら物体は、投影光学系PLの像面側(終端光学素子12の射出面11側)において移動可能である。本実施形態において、物体は、射出面11と対向する位置を含むXY平面内において移動可能である。
【0035】
液浸部材6は、終端光学素子12の近傍に配置される。本実施形態において、液浸部材6は、環状の部材であり、露光光ELの光路の周囲に配置される。本実施形態においては、液浸部材6の少なくとも一部が、終端光学素子12の周囲に配置される。
【0036】
本実施形態において、液浸部材6は、投影領域PRに配置される物体と対向可能な下面19を有する。下面19は、投影領域PRに配置される物体の表面(上面)との間で液体LQを保持可能である。一方側の射出面11及び下面19と、他方側の物体の表面(上面)との間に液体LQが保持されることによって、終端光学素子12と物体との間の露光光ELの光路が液体LQで満たされるように液浸空間LSが形成される。
【0037】
本実施形態においては、基板Pに露光光ELが照射されているとき、投影領域PRを含む基板Pの表面の一部の領域が液体LQで覆われるように液浸空間LSが形成される。液体LQの界面(メニスカス、エッジ)LGの少なくとも一部は、液浸部材6の下面19と基板Pの表面との間に形成される。すなわち、本実施形態の露光装置EXは、局所液浸方式を採用する。
【0038】
例えば基板Pの露光の少なくとも一部において、終端光学素子12及び液浸部材6と、保持部13に保持された基板P及び保持部15に保持されたカバー部材Tの少なくとも一方との間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成される。例えば計測部材C(計測器)を用いる計測の少なくとも一部において、終端光学素子12及び液浸部材6と、保持部14に保持された計測部材C及び保持部16に保持されたカバー部材Sの少なくとも一方との間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成される。
【0039】
図2は、本実施形態に係る液浸部材6の一例を示す側断面図である。なお、図2を用いる説明においては、投影領域PR(射出面11及び下面19と対向する位置)に基板Pが配置される場合を例にして説明するが、上述のように、例えば基板ステージ2及び計測ステージ3の少なくとも一方等、所定の物体を配置することもできる。
【0040】
図2に示すように、液浸部材6は、射出面11と対向する位置に配置される開口6Kと、開口6Kの周囲に配置される下面20とを有する。射出面11から射出された露光光ELは、開口6Kを通過して、基板Pに照射可能である。
【0041】
また、液浸部材6は、液体LQを供給可能な供給口21と、液体LQを回収可能な回収口22とを備えている。供給口21は、射出面11及び下面19と対向する基板P(物体)上に液体LQを供給可能である。供給口21は、射出面11から射出される露光光ELの光路の近傍において、その光路に面するように配置されている。供給口21は、流路23を介して、液体供給装置24と接続されている。液体供給装置24は、清浄で温度調整された液体LQを送出可能である。流路23は、液浸部材6の内部に形成された供給流路、及びその供給流路と液体供給装置24とを接続する供給管で形成される流路を含む。液体供給装置24から送出された液体LQは、流路23を介して供給口21に供給される。
【0042】
回収口22は、射出面11及び下面19と対向する基板P(物体)上の液体LQの少なくとも一部を回収可能である。回収口22は、基板P(物体)が対向可能な液浸部材6の所定位置に配置されている。本実施形態において、回収口22は、下面20の周囲の少なくとも一部に配置されている。
【0043】
本実施形態において、回収口22には、複数の孔(openingsあるいはpores)を含むプレート状の多孔部材25が配置されている。本実施形態において、基板P(物体)上の液体LQの少なくとも一部は、多孔部材25の孔を介して回収される。なお、回収口22に、網目状に多数の小さい孔が形成された多孔部材であるメッシュフィルタが配置されてもよい。多孔部材25の下面25Bに基板P(物体)が対向可能である。下面20の周囲に下面25Bが配置される。本実施形態において、液浸部材6の下面19の少なくとも一部は、下面20及び多孔部材25の下面25Bを含む。
【0044】
回収口22は、流路26を介して、液体回収装置27と接続されている。液体回収装置27は、回収口22を真空システムに接続可能であり、回収口22を介して液体LQを吸引可能である。流路26は、液浸部材6の内部に形成された回収流路、及びその回収流路と液体回収装置27とを接続する回収管で形成される流路を含む。回収口22(多孔部材25の孔)から回収された液体LQは、流路26を介して、液体回収装置27に回収される。
【0045】
なお、回収口22から多孔部材25を介して実質的に液体LQのみが回収されてもよい。また、回収口22から多孔部材25を介して液体LQが気体とともに回収されてもよい。なお、回収口22に多孔部材25が配置されなくてもよい。
【0046】
なお、液浸部材6として、例えば米国特許出願公開第2007/0132976号明細書、欧州特許出願公開第1768170号明細書に開示されているような液浸部材(ノズル部材)を用いることができる。
【0047】
本実施形態において、制御装置7は、供給口21からの液体LQの供給と並行して、回収口22からの液体LQの回収を実行することによって、一方側の終端光学素子12及び液浸部材6と、他方側の基板P(物体)との間に液体LQで液浸空間LSを形成可能である。
【0048】
図3は、基板ステージ2に保持された基板Pの一例を示す図である。本実施形態においては、基板Pに露光対象領域であるショット領域S1〜S21がマトリクス状に複数配置されている。基板Pの露光において、終端光学素子12の射出面11側の露光光ELの光路が液体LQで満たされるように基板P上に液浸空間LSが形成される。本実施形態においては、基板ステージ2に保持された基板Pの複数のショット領域S1〜S21が液体LQを介して順次露光される。
【0049】
本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。基板Pの露光において、制御装置7は、マスクステージ1及び基板ステージ2を制御して、マスクM及び基板Pを、XY平面内の所定の走査方向に移動する。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。
【0050】
例えば基板Pの第1ショット領域S1を露光するために、制御装置7は、基板P(第1ショット領域S1)を投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと基板P上の液浸空間LSの液体LQとを介して第1ショット領域S1に露光光ELを照射する。これにより、マスクMのパターンの像が基板Pの第1ショット領域S1に投影され、その第1ショット領域S1が射出面11から射出された露光光ELで露光される。第1ショット領域S1の露光が終了した後、制御装置7は、次の第2ショット領域S2の露光を開始するために、液浸空間LSが形成されている状態で、基板PをXY平面内における所定方向(例えばX軸方向、あるいはXY平面内においてX軸方向に対して傾斜する方向等)に移動し、第2ショット領域S2を露光開始位置に移動する。その後、制御装置7は、第2ショット領域S2の露光を開始する。
【0051】
制御装置7は、投影領域PRに対してショット領域をY軸方向に移動しながらそのショット領域を露光する動作と、そのショット領域の露光が終了した後、次のショット領域を露光開始位置に移動するための動作とを繰り返しながら、基板Pの複数のショット領域を順次露光する。
【0052】
以下の説明において、ショット領域を露光するために、終端光学素子12に対して基板PをY軸方向に移動することを適宜、スキャン移動、と称する。また、あるショット領域に対する露光が終了した後、次のショット領域を露光するために、次のショット領域が露光開始位置に配置されるように、終端光学素子12に対して基板Pを移動することを適宜、ステップ移動、と称する。
【0053】
本実施形態において、露光装置EXの動作の少なくとも一部は、予め定められている露光に関する制御情報(露光制御情報)に基づいて実行される。すなわち、本実施形態において、基板Pの露光条件は、露光制御情報等に基づいて定められる。露光制御情報は、露光装置EXの動作を規定する制御命令群を含む。以下の説明において、露光制御情報を適宜、露光レシピ、と称する。
【0054】
本実施形態において、露光レシピは、終端光学素子12の射出面11側における物体の移動に関する制御情報(移動制御情報)を含む。すなわち、本実施形態において、物体の移動条件は、移動制御情報等に基づいて定められる。物体の移動制御情報は、物体の移動条件を規定する移動制御命令群を含む。以下の説明において、物体の移動制御情報を適宜、移動プロファイル、と称する。
【0055】
すなわち、本実施形態において、物体の移動条件は、所定の移動プロファイルに基づいて定められる。制御装置7は、所定の移動プロファイルに基づいて物体を移動させる。本実施形態において、制御装置7は、終端光学素子12及び液浸部材6と物体との間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成されている状態で、所定の移動プロファイルに基づいて物体を移動させる。
【0056】
本実施形態において、物体の移動条件(移動プロファイル)は、終端光学素子12に対する物体の位置、移動方向、移動距離、速度、加速度(減速度)、及び移動軌跡の少なくとも一つを含む。
【0057】
移動プロファイルを含む露光レシピは、記憶装置8に予め記憶されている。制御装置7は、露光レシピに基づいて、露光装置EXの動作を制御する。
【0058】
本実施形態において、制御装置7は、所定の移動プロファイルに基づいて、投影光学系PLの投影領域PRと基板Pとが、図3中、矢印R1に示す移動軌跡に沿って相対的に移動するように基板ステージ2を移動しつつ投影領域PRに露光光ELを照射して、液体LQを介して基板Pの複数のショット領域S1〜S21を露光光ELで順次露光する。
【0059】
また、制御装置7は、例えば基板Pの1つのショット領域を露光するとき、投影領域PRに対してそのショット領域を所定の移動プロファイルに基づいて移動させつつ、そのショット領域に液体LQを介して露光光ELを照射する。
【0060】
図4は、基板Pの1つのショット領域Sが露光される状態の一例を示す模式図である。ショット領域Sを露光するために、制御装置7は、例えば投影領域PRに対するショット領域Sの位置が図4(A)に示す位置から図4(B)に示す位置及び図4(C)に示す位置を経て図4(D)に示す位置に変化するように、基板P(基板ステージ2)を移動する。図4に示す例では、基板Pが+Y方向に移動されることによって、ショット領域Sが、図4(A)に示す位置から図4(B)に示す位置及び図4(C)に示す位置を経て図4(D)に示す位置に移動する。
【0061】
以下の説明において、図4(A)に示すように、ショット領域Sが投影領域PRに対して走査方向(Y軸方向)に関して一方側(−Y側)に離れた位置に配置される基板Pの位置を適宜、スキャン移動開始位置PJ1、と称する。また、図4(B)に示すように、ショット領域Sが投影領域PRに配置される直前の基板Pの位置を適宜、露光開始位置PJ2、と称する。また、図4(C)に示すように、ショット領域Sが投影領域PRから離れる直前の基板Pの位置を適宜、露光終了位置PJ3、と称する。また、図4(D)に示すように、ショット領域Sが投影領域PRに対して走査方向(Y軸方向)に関して他方側(+Y側)に離れた位置に配置される基板Pの位置を適宜、スキャン移動終了位置PJ4、と称する。
【0062】
また、以下の説明において、スキャン移動開始位置PJ1から露光開始位置PJ2までの基板Pの移動区間を適宜、助走区間DR1、と称し、露光開始位置PJ2から露光終了位置PJ3までの基板Pの移動区間を適宜、露光区間DR2、と称し、露光終了位置PJ3からスキャン移動終了位置PJ4までの基板Pの移動区間を適宜、減速区間DR3、と称する。助走区間DR1及び減速区間DR3において、投影領域PR(基板P)に対して露光光ELは照射されない。露光区間DR2において、投影領域PR(基板P)に対して露光光ELが照射される。
【0063】
図5は、本実施形態に係る基板Pの移動プロファイルの一例を説明するための模式図である。図5は、助走区間DR1及び露光区間DR2の一部において基板Pを移動させるための移動プロファイルの一例を示す。図5に示すグラフにおいて、横軸は、スキャン移動開始位置PJ1に位置する基板P(基板ステージ2)の移動が開始されてからの経過時間、縦軸は、基板P(基板ステージ2)の移動速度を示す。なお、図5に示す例では、基板Pの移動速度は、Y軸方向に関する移動速度を示す。
【0064】
図5に示すように、本実施形態において、複数のモードの移動プロファイルが用意される。本実施形態において、基準モードの移動プロファイルMD0と、第1モードの移動プロファイルMD1と、第2モードの移動プロファイルMD2と、第3モードの移動プロファイルMD3とが用意される。
【0065】
本実施形態において、スキャン移動開始位置PJ1において、基板Pはほぼ静止している。すなわち、スキャン移動開始位置PJ1における基板Pの移動速度は零である。なお、スキャン移動開始位置PJ1における基板Pの移動速度が零でなくてもよい。
【0066】
制御装置7は、基板Pがスキャン移動開始位置PJ1に配置されている第1時点t1から露光開始位置PJ2に配置される第2時点t2までの所定期間Tjにおいて、基板Pの速度が第1速度v1から第2速度v2へ変化するように、所定の移動プロファイル(MD0、MD1、MD2、MD3)に基づいて、基板Pを移動させる。本実施形態において、所定期間Tjは、基板Pが助走区間DR1を移動する期間(助走期間)である。
【0067】
図5において、第2速度v2は、第1速度v1より高い速度である。なお、本実施形態において、第1速度v1は、零であるが、零より大きい値でもよい。第2時点t2経過後の露光期間Teにおいて、基板Pは第2速度v2で等速移動する。本実施形態において、露光期間Teは、基板Pが露光期間DR2を移動する期間である。第2速度v2で等速移動する基板Pのショット領域Sに配置される投影領域PRに対して、射出面11から射出される露光光ELが液体LQを介して照射される。
【0068】
基準モードの移動プロファイルMD0は、所定期間(助走期間)Tjにおいて基板Pを等加速度で移動させる移動プロファイルである。第2時点t2において基板Pの速度が第2速度v2に達した後、基板Pは第2速度v2で等速移動される。基板Pの等速移動中に、基板Pに露光光ELが照射される。
【0069】
本実施形態において、移動プロファイルMD1、MD2、MD3のそれぞれは、所定期間Tjにおいて基板Pを第1の加速度で移動させるプロファイル(制御情報)と、第1の加速度とは異なる第2の加速度で移動させるプロファイル(制御情報)とを含む。
【0070】
第1モードの移動プロファイルMD1は、基板Pが加速するように基板Pを加速度a1で等加速度移動させる第1加速プロファイルMD11と、第1加速プロファイルMD11後、基板Pを速度vbで等速移動させる等速プロファイルMD12と、等速プロファイルMD12後、基板Pが加速するように基板Pを加速度a2で等加速度移動させる第2加速プロファイルMD13とを含む。第1加速プロファイルMD11は、基板Pの移動速度が第1速度v1から速度vbへ変化するように加速度a1で等加速度移動させるプロファイルである。第2加速プロファイルMD13は、基板Pの移動速度が速度vbから第2速度v2へ変化するように加速度a2で等加速度移動させるプロファイルである。なお、加速度a2は、加速度a1と等しくてもよいし、異なってもよい。本実施形態において、第2加速プロファイルMD13の終了時点は、助走期間Tjの終了時点(第2時点)t2である。第2時点t2において基板Pの速度が第2速度v2に達した後、基板Pは第2速度v2で等速移動される。基板Pの等速移動中に、基板P(ショット領域S)に露光光ELが照射される。
【0071】
なお、本実施形態において、第1加速プロファイルMD11は、第1時点t1から時点taまでの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。等速プロファイルMD12は、時点taから時点tcまでの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。第2加速プロファイルMD13は、時点tcから第2時点t2までの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。
【0072】
第2モードの移動プロファイルMD2は、基板Pが加速するように基板Pを加速度a3で等加速度移動させる第3加速プロファイルMD21と、第3加速プロファイルMD21後、基板Pが減速するように基板Pを加速度(減速度)gで等加速度移動させる減速プロファイルMD22と、減速プロファイルMD22後、基板Pが加速するように基板Pを加速度a4で等加速度移動させる第4加速プロファイルMD23とを含む。第3加速プロファイルMD21は、基板Pの移動速度が第1速度v1から速度vcへ変化するように加速度a3で等加速度移動させるプロファイルである。減速プロファイルMD22は、基板Pの移動速度が速度vcから速度vaへ変化するように加速度(減速度)gで等加速度移動させるプロファイルである。第4加速プロファイルMD23は、基板Pの移動速度が速度vaから第2速度v2へ変化するように加速度a4で等加速度移動させるプロファイルである。なお、加速度a4は、加速度a3と等しくてもよいし、異なってもよい。本実施形態において、第4加速プロファイルMD23の終了時点は、助走期間Tjの終了時点(第2時点)t2である。第2時点t2において基板Pの速度が第2速度v2に達した後、基板Pは第2速度v2で等速移動される。基板Pの等速移動中に、基板P(ショット領域S)に露光光ELが照射される。
【0073】
なお、本実施形態において、第3加速プロファイルMD21は、第1時点t1から時点taまでの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。減速プロファイルMD22は、時点taから時点tcまでの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。第4加速プロファイルMD23は、時点tcから第2時点t2までの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。
【0074】
第3モードの移動プロファイルMD3は、基板Pの加速度が除々に増大するように基板Pを不等加速度移動させる第5加速プロファイルMD31と、第5加速プロファイルMD31後、基板Pの加速度が除々に低下するように基板Pを不等加速度移動させる第6加速プロファイルMD32とを含む。第5加速プロファイルMD31は、基板Pの移動速度が第1速度v1から速度vbへ変化するように不等加速度移動させるプロファイルである。第6加速プロファイルMD32は、基板Pの移動速度が速度vbから第2速度v2へ変化するように不等加速度移動させるプロファイルである。本実施形態において、第6加速プロファイルMD32の終了時点は、助走期間Tjの終了時点(第2時点)t2である。第2時点t2において基板Pの速度が第2速度v2に達した後、基板Pは第2速度v2で等速移動される。基板Pの等速移動中に、基板P(ショット領域S)に露光光ELが照射される。
【0075】
なお、本実施形態において、第5加速プロファイルMD31は、第1時点t1から時点tbまでの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。第6加速プロファイルMD32は、時点tbから第2時点t2までの期間において基板Pを移動させるプロファイルである。
【0076】
なお、本実施形態において、時点tbは、第1時点t1と第2時点t2との中間の時点である。時点taは、第1時点t1と時点tbとの間の時点である。時点tcは、時点tbと第2時点t2との間の時点である。
【0077】
なお、図5を参照して説明した移動プロファイルMD1、MD2、MD3は一例である。本実施形態において、移動プロファイルは、所定期間Tjにおいて、基板Pを第1の加速度で移動させるプロファイルと、第1の加速度とは異なる第2の加速度で移動させるプロファイルとを含むものであればよい。また、移動プロファイルとして、所定期間Tjにおいて、基板Pを等加速度移動させるプロファイルと、不等加速度移動させるプロファイルと、減速させるプロファイルと、等速移動させるプロファイルと、不等速移動させるプロファイルとの少なくとも2つを適宜組み合わせた移動プロファイルを用いてもよい。
【0078】
本実施形態において、移動プロファイルは、基板P(物体)に対する液体LQの後退接触角θrが所定値以下になるように定められる。図6は、終端光学素子12及び液浸部材6との間に液体LQを保持した基板P(物体)が−Y方向へ所定の移動プロファイルに基づいて移動される状態を示す模式図である。図6においては、物体が基板Pであることとするが、基板ステージ2(カバー部材T)でもよいし、計測ステージ3(カバー部材S)でもよい。なお、本実施形態において、後退接触角θrとは、物体の移動に伴って液浸空間LSの液体LQの界面LGが後退するときの接触角をいう。
【0079】
本出願に係る発明者の知見によれば、終端光学素子12及び液浸部材6と基板P(物体)との間に液体LQが保持された状態で、所定期間Tjにおいて基板Pの移動速度が第1速度v1から第2速度v2まで変化するようにその基板Pを移動させる場合、その所定期間Tjにおける基板Pの移動プロファイルを調整することによって、液体LQの後退接触角θrが所定値以下になることを抑制できることを見出した。
【0080】
本実施形態において、後退接触角θrに関する所定値とは、終端光学素子12及び液浸部材6と基板P(物体)との間に液体LQが保持された状態で基板P(物体)を移動した場合に、終端光学素子12及び液浸部材6と基板P(物体)との間の空間の外側に液体LQが流出すること、及び基板P(物体)の表面に液体LQが残留することを抑制できる値をいう。
【0081】
すなわち、液浸空間LSが形成されている状態で基板P(物体)の移動速度が高くなるように物体を移動させる場合、移動プロファイルによっては、液体LQの後退接触角θrが小さくなってしまう可能性がある。液体LQの後退接触角θrが所定値以下になると、例えば液体LQの界面LGを所望の状態(形状)に維持することが困難となる可能性がある。また、液体LQの後退接触角θrが所定値以下になると、基板P(物体)の表面において液体LQの膜、滴が形成される可能性がある。その場合、終端光学素子12及び液浸部材6と基板P(物体)との間の空間の外側に液体LQが流出したり、基板P(物体)の表面に液体LQが残留したりする可能性がある。
【0082】
終端光学素子12及び液浸部材6と物体との間に液体LQが保持された状態で、所定期間Tjにおいて基板Pの移動速度が第1速度v1から第2速度v2まで変化するようにその基板Pを移動させる場合、その所定期間Tjにおいて、第1の加速度で移動させるプロファイルと第1の加速度とは異なる第2の加速度で移動させるプロファイルとを含む移動プロファイルに基づいて基板Pを移動させることによって、液体LQの後退接触角θrが所定値以下になることを抑制することができる。したがって、液体LQの流出、残留を抑制することができる。
【0083】
本実施形態において、液体LQの流出、残留を抑制するための移動プロファイルは、終端光学素子12及び液浸部材6との間に液体LQを保持して移動可能な物体の表面の条件に応じて定められる。液体LQと接触する物体の表面の条件は、物体の表面を形成する材料の物性、及び液体LQに対する接触角の少なくとも一方を含む。例えば、基板Pの表面が感光膜の表面である場合、その感光膜の表面に応じて、後退接触角θrの低下を抑制できる移動プロファイルが定められる。また、基板Pの表面が保護膜の表面である場合、その保護膜の表面に応じて、後退接触角θrの低下を抑制できる移動プロファイルが定められる。また、基板Pの表面が反射防止膜の表面である場合、その反射防止膜の表面に応じて、後退接触各θrの低下を抑制できる移動プロファイルが定められる。
【0084】
液体LQの流出、残留を抑制するための移動プロファイルは、例えば予備実験又はシミュレーション等によって予め求めることができる。本実施形態においては、記憶装置8に、基板P(物体)の表面の条件と、その基板Pの表面に応じた移動プロファイル(液体LQの流出、残留を抑制するための移動プロファイル)との関係が複数記憶されている。制御装置7は、保持部13に保持される基板Pの表面に応じて、液体LQの流出、残留が抑制されるように、記憶装置8に記憶されている複数の移動プロファイルの中から最適な移動プロファイルを選択し、その選択された移動プロファイルに基づいて、基板Pを移動する。
【0085】
次に、上述の構成を有する露光装置EXを用いて、基板Pを露光する方法の一例について説明する。
【0086】
制御装置7は、基板搬送装置(不図示)を用いて、基板Pの交換処理を実行する。制御装置7は、露光前の基板Pを保持部13に搬入(ロード)する。なお、保持部13に露光後の基板Pが保持されている場合、その基板Pが保持部13から搬出(アンロード)された後、露光前の基板Pが保持部13に搬入(ロード)される。
【0087】
また、制御装置7は、計測ステージ3(計測部材C、計測器)を用いて、所定の計測処理を実行する。露光前の基板Pが保持部13にロードされ、計測ステージ3を用いる計測処理が終了した後、制御装置7は、基板ステージ2を投影領域PRに移動して、終端光学素子12及び液浸部材6と基板ステージ2(基板P)との間に液体LQで液浸空間LSを形成する。終端光学素子12及び液浸部材6と基板ステージ2(基板P)との間に液体LQで液浸空間LSが形成された後、制御装置7は、基板Pの露光処理を開始する。
【0088】
制御装置7は、保持部13に保持される基板Pの表面に応じて、液体LQの流出、残留を抑制可能な移動プロファイルを選択(決定)する。制御装置7は、終端光学素子12及び液浸部材6と基板Pとの間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成されている状態で、選択された移動プロファイルに基づいて基板Pを移動させつつ、その基板Pの複数のショット領域S1〜S21のそれぞれを液体LQを介して順次露光する。
【0089】
基板Pの露光処理が終了した後、制御装置7は、基板ステージ2から露光後の基板Pをアンロードし、露光前の基板Pを基板ステージ2にロードする。以下、制御装置7は、上述の処理を繰り返して、複数の基板Pを順次露光する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によれば、終端光学素子12と基板Pとの間に液体LQの液浸空間LSが形成されている状態で、その基板Pを所定期間Tjにおいて移動プロファイル(MD1、MD2、MD3)に基づいて移動させるようにしたので、液体LQの流出、残留等を抑制することができる。したがって、露光不良の発生、及び不良デバイスの発生を抑制できる。
【0091】
また、本実施形態によれば、基板Pが助走区間DR1を移動する所定期間Tjを一定にしつつ、液体LQの流出、残留を抑制できる。したがって、露光不良の発生、及び不良デバイスの発生を抑制しつつ、基板Pの複数のショット領域S1〜S21を露光するために要する時間の増大を抑制でき、スループットの低下を抑制できる。
【0092】
本実施形態においては、保持部13に保持される基板Pの表面が変更された場合、制御装置7は、その基板Pの表面に応じて、移動プロファイルを変更することができる。例えば、基板Pの表面に応じた複数の移動プロファイルが予め記憶装置8に記憶されている場合、制御装置7は、保持部13に保持される基板Pの表面に応じて、記憶装置8に記憶されている複数の移動プロファイルの中から、液体LQの流出、残留を抑制できる最適な移動プロファイルを選択したり、変更したりすることができる。例えば、第1の表面状態を有する基板Pを露光するとき、制御装置7は、第1モードの移動プロファイルMD1に基づいて基板Pを移動しつつ露光する。また、第1の表面状態と異なる第2の表面状態を有する基板Pを露光するとき、制御装置7は、移動プロファイルを第2モードへ変更し、その第2モードの移動プロファイルMD2に基づいて基板Pを移動しつつ露光する。なお、基板Pの表面状態は、液体LQに対する接触角(後退接触角)を含む。
【0093】
なお、本実施形態においては、所定期間(助走期間)Tjにおいて基板Pを移動させる場合に、所定の移動プロファイルに基づいて基板Pを移動させる場合を例にして説明したが、液体LQの流出、残留が抑制されるように、所定の移動プロファイルに基づいて減速空間DR3において基板Pを移動させてもよい。
【0094】
なお、本実施形態においては、所定の移動プロファイルに基づいて基板Pをスキャン移動させる場合を例にして説明したが、液体LQの流出、残留が抑制されるように、所定の移動プロファイルに基づいて基板Pをステップ移動させてもよい。また、スキャン移動及びステップ移動のみならず、終端光学素子12及び液浸部材6との間に液体LQを保持する基板Pを所定期間において速度が変化するように移動させる場合において、液体LQの流出、残留が抑制されるように、所定の移動プロファイルに基づいて基板Pを移動させてもよい。
【0095】
なお、本実施形態においては、終端光学素子12及び液浸部材6と基板Pとの間に液体LQが保持された状態で所定の移動プロファイルで基板Pを移動してその基板Pに露光光ELを照射することとしたが、露光光ELを照射しなくてもよい。また、保持部13にダミー基板が保持される場合において、終端光学素子12及び液浸部材6とダミー基板との間に液体LQが保持された状態で、液体LQの流出、残留が抑制されるように、そのダミー基板の表面に応じた所定の移動プロファイルでダミー基板を移動してもよい。その場合、ダミー基板に露光光ELが照射されてもよいし、照射されなくてもよい。なお、ダミー基板とは、デバイスを製造するための基板Pの外形とほぼ同じ外形を有する基板であって、基板Pよりも異物を放出し難い基板をいう。ダミー基板は、感光膜を有さない。保持部13は、ダミー基板を保持可能である。
【0096】
なお、本実施形態においては、基板Pが終端光学素子12及び液浸部材6との間で液体LQを保持して移動する場合を例にして説明したが、上述のように、終端光学素子12及び液浸部材6との間に液体LQを保持して移動可能な物体は、基板Pのみならず、基板ステージ2(カバー部材T)、及び計測ステージ3(カバー部材S、計測部材C)も含まれる。それら基板ステージ2及び計測ステージ3の表面に応じた複数の移動プロファイル(液体LQの流出、残留を抑制できる移動プロファイル)を予備実験又はシミュレーション等によって予め求め、記憶装置8に記憶することができる。制御装置7は、例えば終端光学素子12及び液浸部材6と基板ステージ2(カバー部材T)との間に液体LQが保持されている状態で基板ステージ2を移動する場合、その基板ステージ2の表面状態に応じた移動プロファイルに基づいて基板ステージ2を移動することによって、液体LQの流出、残留等を抑制することができる。また、例えば計測ステージ3を用いる処理において、終端光学素子12及び液浸部材6と計測ステージ3(カバー部材S、計測部材C)との間に液体LQが保持されている状態で計測ステージ3を移動する場合、その計測ステージ3の表面状態に応じた移動プロファイルに基づいて計測ステージ3を移動することによって、液体LQの流出、残留等を抑制することができる。また、例えばカバー部材Tを交換して、カバー部材Tの表面が変更された場合、その交換後のカバー部材Tの表面状態に応じて移動プロファイルが変更されてもよい。また、例えばカバー部材Tの使用状況によってカバー部材Tの表面が変化する可能性がある。その場合においても、そのカバー部材Tの表面状態に応じて移動プロファイルが変更されてもよい。同様に、カバー部材Sの表面状態に応じて移動プロファイルが変更されてもよい。
【0097】
なお、カバー部材Tの表面状態は、液体LQに対する接触角(後退接触角)、及び表面の形状の少なくとも一方を含む。例えばカバー部材Tの表面の形状に応じて、最適な移動プロファイルが選択(決定)されてもよい。例えば、カバー部材Tの表面の少なくとも一部が曲面を含んでいる場合、その曲面に応じて移動プロファイルが決定されてもよい。また、カバー部材Tの表面の少なくとも一部がXY平面に対して傾斜している場合、その傾斜角度に応じて移動プロファイルが決定されてもよい。
【0098】
なお、本実施形態においては、液体LQの後退接触角θrを指標とし、その後退接触角θrが所定値以下にならないように移動プロファイルが定められることとしたが、移動プロファイルを定めるための指標としては、後退接触角θrに限られず、例えば前進接触角を指標としてもよいし、静的接触角を指標としてもよい。また、物体の表面状態(物性を含む)を指標として、移動プロファイルを定めてもよい。すなわち、液体LQの流出、残留等を抑制できる移動プロファイルであればよい。また、物体の移動プロファイルに応じて、例えば液浸空間LSの液体LQに混入する気体(気泡)の量が変化する場合、その混入する気体(気泡)の量を指標として、移動プロファイルを定めてもよい。
【0099】
なお、本実施形態においては、第1時点t1から第2時点t2までの所定期間Tjにおいて、基板Pの速度が第1速度v1から第2速度v2へ変化するように、所定の移動プロファイルに基づいて基板Pを移動させ、第2時点t2において基板Pの速度が第2速度v2に達した後、その基板Pを第2速度v2で等速移動させ、その等速移動中に基板Pに露光光ELを照射することとしたが、基板Pの等速移動中に基板Pに露光光ELを照射しなくてもよい。例えば、基板Pの露光開始前及び露光終了後の少なくとも一方の期間において、終端光学素子12及び液浸部材6と基板Pとの間に液体LQが保持されている状態で基板Pを移動させる可能性がある。例えば、基板Pの露光開始前及び露光終了後の少なくとも一方の期間において、終端光学素子12及び液浸部材6と基板Pとの間に液体LQが保持されている状態で、基板PをXY平面内における所定方向(例えばX軸方向、Y軸方向、あるいはXY平面内においてX軸方向に対して傾斜する方向等)に所定距離以上の長距離を移動させる可能性がある。なお、所定距離とは、例えばスキャン移動開始位置PJ1と露光開始位置PJ2との距離(助走区間DR1の長さ)、露光開始位置PJ2と露光終了位置PJ3との距離(露光区間DR2の長さ)、露光終了位置PJ3とスキャン移動終了位置PJ4との距離(減速区間DR3の長さ)の少なくとも一つを含む。なお、所定距離が、例えばスキャン移動開始位置PJ1と露光終了位置PJ3との距離でもよいし、露光開始位置PJ2とスキャン移動終了位置PJ4との距離でもよいし、スキャン移動開始位置PJ1とスキャン移動終了位置PJ4との距離でもよい。露光開始前及び露光終了後の少なくとも一方の期間において終端光学素子12及び液浸部材6と基板Pとの間に液体LQが保持されている状態で基板Pを長距離移動させる場合、その長距離移動の期間の少なくとも一部において、基板Pに露光光ELが照射されない状態で基板Pが等速移動する可能性がある。その場合においても、所定の移動プロファイルに基づいて基板Pを移動させることによって、液体LQの流出、残留を抑制することができる。また、終端光学素子12及び液浸部材6と基板ステージ2の上面及び保持部13に保持されている基板Pの少なくとも一方との間に液体LQが保持されている状態で、基板Pに露光光ELが照射されない状態で(例えば基板Pの露光開始前に)、基板Pの表面の位置の検出動作及び基板Pのアライメントマークの計測動作の少なくとも一方が実行される可能性がある。その場合においても、所定の移動プロファイルに基づいて基板P(基板ステージ2)を移動しつつ検出動作及び計測動作の少なくとも一方を実行することによって、液体LQの流出、残留を抑制しつつ検出動作及び計測動作を実行することができる。
【0100】
なお、本実施形態においては、記憶装置8に記憶されている移動プロファイルを用いることとしたが、例えば所定の入力装置を介して制御装置7に移動プロファイルに関する情報を入力してもよい。例えば、終端光学素子12及び液浸部材6との間に液体LQを保持して移動する物体の表面に関する情報が既知である場合、その物体の表面状態に応じた移動プロファイルに関する情報を、キーボード、マウス等を含む入力装置を介して制御装置7に入力してもよい。また、露光装置EXに対する外部装置からのデータを入力可能な通信装置を介して、移動プロファイルに関する情報を制御装置7に入力してもよい。制御装置7は、その入力された移動プロファイルに関する情報に基づいて、物体を移動することができる。
【0101】
なお、上述の実施形態において、基板ステージ2及び計測ステージ3の少なくとも一方を含むステージ装置が、移動プロファイルを記憶する記憶装置を備えていてもよい。また、そのステージ装置が、移動プロファイルに基づいて駆動システム5を制御する制御装置を備えていてもよい。その制御装置は、ステージ装置が備える記憶装置に記憶されている移動プロファイルに基づいて駆動システム5を制御してもよい。なお、ステージ装置が、移動プロファイルに関する情報を記憶する記憶装置を備えていなくてもよい。また、ステージ装置が有する制御装置が、記憶装置を用いずに、移動プロファイルに基づいて駆動システム5を制御してもよい。例えば、ステージ装置が備える制御装置に対して所定の入力装置、通信装置等を介して移動プロファイルに関する情報が入力される場合、その制御装置は、入力された移動プロファイルに関する情報に基づいて、基板ステージ2及び計測ステージ3の少なくとも一方を移動することができる。
【0102】
なお、上述の実施形態において、制御装置7は、CPU等を含むコンピュータシステムを含む。また、上述の実施形態において、制御装置7は、コンピュータシステムと外部装置との通信を実行可能なインターフェースを含む。記憶装置8は、例えばRAM等のメモリ、ハードディスク、CD−ROM等の記録媒体を含む。記憶装置8には、コンピュータシステムを制御するオペレーティングシステム(OS)がインストールされ、露光装置EXを制御するためのプログラムが記憶されている。
【0103】
記憶装置8に記録されているプログラムを含む各種情報は、制御装置(コンピュータシステム)7が読み取り可能である。記憶装置8には、制御装置7に、液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する露光装置EXの制御を実行させるプログラムが記録されている。
【0104】
記憶装置8に記録されているプログラムは、上述の実施形態に従って、制御装置7に、露光光ELが射出される終端光学素子12の射出面11と物体との間に液体LQを保持する処理と、終端光学素子12と物体との間に液体LQが保持された状態で、第1の時点から第2の時点までの期間において物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて物体を移動させる処理と、を実行させてもよい。移動プロファイルは、上述の実施形態に従って、所定期間において物体を第1の加速度で移動させるプロファイルと、第1の加速度とは異なる第2の加速度で移動させるプロファイルとを含む。
【0105】
なお、上述の各実施形態においては、投影光学系PLの終端光学素子12の射出側(像面側)の光路が液体LQで満たされているが、例えば国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、終端光学素子12の入射側(物体面側)の光路も液体LQで満たされる投影光学系PLを採用することができる。
【0106】
なお、上述の各実施形態においては、液体LQとして水を用いているが、水以外の液体であってもよい。液体LQとしては、露光光ELに対して透過性であり、露光光ELに対して高い屈折率を有し、投影光学系PLあるいは基板Pの表面を形成する感光材(フォトレジスト)などの膜に対して安定なものが好ましい。例えば、液体LQとして、ハイドロフロロエーテル(HFE)、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フォンブリンオイル等を用いることも可能である。また、液体LQとして、種々の流体、例えば、超臨界流体を用いることも可能である。
【0107】
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0108】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0109】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0110】
また、例えば米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0111】
また、本発明は、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6208407号明細書、米国特許第6262796号明細書等に開示されているような、複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0112】
また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
【0113】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0114】
なお、上述の各実施形態においては、レーザ干渉計を含む干渉計システムを用いて各ステージの位置情報を計測するものとしたが、これに限らず、例えば各ステージに設けられるスケール(回折格子)を検出するエンコーダシステムを用いてもよい。
【0115】
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。
【0116】
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。例えば、レンズ等の光学部材と基板との間に液浸空間を形成し、その光学部材を介して、基板に露光光を照射することができる。
【0117】
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0118】
上述の実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0119】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図7に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクMのパターンからの露光光ELで基板Pを露光すること、及び露光された基板Pを現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0120】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0121】
2…基板ステージ、3…計測ステージ、5…駆動システム、6…液浸部材、7…制御装置、8…記憶装置、11…射出面、12…終端光学素子、P…基板、S…カバー部材、T…カバー部材、EL…露光光、EX…露光装置、LQ…液体、LS…液浸空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光が射出される光学部材の射出面との間に液体を保持して移動可能な物体の移動制御方法であって、
第1時点から第2時点までの所定期間において前記物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて前記物体を移動させることを含み、
前記移動プロファイルは、前記所定期間において前記物体を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、前記第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含む移動制御方法。
【請求項2】
前記第1、第2プロファイルの少なくとも一方は、前記物体を等加速度移動させる請求項1記載の移動制御方法。
【請求項3】
前記第1、第2プロファイルの少なくとも一方は、前記物体を不等加速度移動させる請求項1又は2記載の移動制御方法。
【請求項4】
前記第1、第2プロファイルの少なくとも一方は、前記物体を減速させる請求項1〜3のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項5】
前記第1、第2プロファイルの少なくとも一方は、前記物体を等速移動させる請求項1〜4のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項6】
前記第1、第2プロファイルの少なくとも一方は、前記物体を不等速移動させる請求項1〜5のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項7】
前記移動プロファイルは、前記物体が加速するように前記物体を等加速度移動させる第1加速プロファイルと、前記第1加速プロファイル後、前記物体を等速移動させる等速プロファイルと、前記等速プロファイル後、前記物体が加速するように前記物体を等加速度移動させる第2加速プロファイルと、を含む請求項1〜6のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項8】
前記移動プロファイルは、前記物体が加速するように前記物体を等加速度移動させる第1加速プロファイルと、前記第1加速プロファイル後、前記物体が減速するように前記物体を等加速度移動させる減速プロファイルと、前記減速プロファイル後、前記物体が加速するように前記物体を等加速度移動させる第2加速プロファイルと、を含む請求項1〜6のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項9】
前記移動プロファイルは、前記物体の加速度が除々に増大するように前記物体を不等加速度移動させる第1加速プロファイルと、前記第1加速プロファイル後、前記物体の加速度が除々に低下するように前記物体を不等加速度移動させる第2加速プロファイルと、を含む請求項1〜6のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項10】
前記移動プロファイルは、前記物体に対する前記液体の後退接触角が所定値以下にならないように定められる請求項1〜9のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項11】
前記第2時点において前記物体の速度が前記第2速度に達した後、前記物体は前記第2速度で等速移動される請求項1〜10のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項12】
前記物体の表面に応じて、前記移動プロファイルが変更される請求項1〜11のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項13】
前記物体は、前記射出面から射出される前記露光光で露光される基板を含む請求項1〜12のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項14】
前記物体は、前記射出面と対向する位置を含む所定面内において移動可能なステージを含む請求項1〜13のいずれか一項記載の移動制御方法。
【請求項15】
前記ステージは、前記射出面から射出される前記露光光で露光される基板を保持する請求項14記載の移動制御方法。
【請求項16】
前記ステージは、前記射出面から射出される前記露光光を計測する計測器を搭載する請求項14又は15記載の移動制御方法。
【請求項17】
液体を介して基板を露光する露光方法であって、
前記露光光が射出される光学部材の射出面と前記基板との間に前記液体を保持することと、
前記光学部材と前記基板との間に前記液体が保持された状態で、第1時点から第2時点までの所定期間において前記基板の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて前記基板を移動させることと、
前記液体を介して前記射出面からの前記露光光を前記基板に照射することと、を含み、
前記移動プロファイルは、前記所定期間において前記基板を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、前記第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含む露光方法。
【請求項18】
前記第2時点において前記基板の速度が前記第2速度に達した後、前記基板は前記第2速度で等速移動される請求項17記載の露光方法。
【請求項19】
前記基板の等速移動中に、前記基板に前記露光光が照射される請求項18記載の露光方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項記載の露光方法を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項21】
露光光が射出される光学部材の射出面との間に液体を保持して移動可能な可動部材を有するステージ装置であって、
第1時点から第2時点までの所定期間において前記可動部材の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて前記可動部材を移動させる駆動装置を備え、
前記移動プロファイルは、前記所定期間において前記可動部材を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、前記第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含むステージ装置。
【請求項22】
液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、
前記露光光が射出される射出面を有する光学部材と、
前記射出面との間に液体を保持して移動可能な物体の移動を制御するための所定の移動プロファイルが記憶される記憶装置と、
第1時点から第2時点までの所定期間において前記物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように前記移動プロファイルに基づいて前記物体を移動させる駆動装置と、を備え、
前記移動プロファイルは、前記所定期間において前記物体を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、前記第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含む露光装置。
【請求項23】
請求項22記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項24】
コンピュータに、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置の制御を実行させるプログラムであって、
前記露光光が射出される光学部材の射出面と物体との間に液体を保持することと、
前記光学部材と前記物体との間に前記液体が保持された状態で、第1時点から第2時点までの所定期間において前記物体の速度が第1速度から第2速度へ変化するように所定の移動プロファイルに基づいて前記物体を移動させることと、を実行させることを含み、
前記移動プロファイルは、前記所定期間において前記物体を第1加速度で移動させる第1プロファイルと、前記第1加速度とは異なる第2加速度で移動させる第2プロファイルとを含むプログラム。
【請求項25】
請求項24記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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