説明

移動型床反力計測装置

【課題】カメラを使うことなく比較的低コストで装置を構成することができ、しかも、歩行時に足のかかと部分と先端部分の姿勢が変わった場合であっても、正確に床面からの反力やモーメントなどを計測できるようにする。
【解決手段】被験者の足と床面との間に設けられ、床面からの反力に基づいて直交する3軸方向の力と当該各軸まわりのモーメントを計測する移動型床反力計測装置100において、足のかかと側と足の先端側にそれぞれ分離して設けられ、前記直交する3軸方向の反力と当該各軸まわりのモーメントを計測するセンサユニット101、102と、当該各センサユニット101、102の位置を検出する姿勢検出センサ107とを備えるようにする。また、この姿勢検出センサ107として、ジャイロセンサを用い、好ましくは、角速度の積分値による誤差を修正できるように加速度センサも併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、XYZ軸方向にかかる力とそのXYZ軸まわりのモーメントを計測する移動型床反力計測装置に関するものであり、より詳しくは、床からの反力に基づいて人間の下肢にかかる関節モーメントや筋力などを推定できるようにした移動型床反力計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リハビリテーションや福祉、スポーツなどの分野においては、人間の歩行状態や、下肢関節にかかるモーメント、下肢にかかる筋力などを推定できるようにした履物やその履物に取り付けられる反力計測装置などが提案されている(特許文献1)。
【0003】
このような反力計測装置うち、特開2007−108079号公報には、図10に示すような、履物5の底面(床面と接する面)側に取り付けられる反力計測装置が開示されている。
【0004】
この反力計測装置は、外力が作用する上下2枚の上板6uと下板6dとの間に複数の反力センサ70を取り付けて構成されるもので、各反力センサ70からの出力値に基づいてXYZ方向の力を出力するとともに、各反力センサ70との距離や力の差分に基づいてX軸回り、Y軸回り、Z軸回りのモーメントを計測できるようにしたものである。
【0005】
また、この特許文献1には、歩行時における安定性を向上させるために、足のかかと部分と先端部分の2カ所にセンサユニット71とセンサユニット72とを分離して設け、また、このセンサユニット71、72に設けられたマーカー8の位置をカメラで撮像することによって、床からの反力やモーメントを計測できるようにしている。
【特許文献1】特開2007−108079号公報(図17、図22など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような反力計測装置を用いて床からの反力を計測する方法では、次に示すような問題がある。
【0007】
すなわち、上述のように、足のかかと部分と先端部分にセンサユニットを取り付けるようにした場合、歩行時に各センサユニットの姿勢がそれぞれ変わってしまい、正確にXYZ軸方向に沿った反力やモーメントを計測することができなくなる。具体的には、人間が歩行する場合、図9(c)に示すように、かかと部分から床面に接地するようになるが、この場合、かかと部分のセンサユニットは床面とほぼ平行な状態となる一方、先端側のセンサユニットは床面に対して傾斜した状態となる。すなわち、かかと側のセンサユニットの出力値は床面を基準としたXYZ座標軸の出力がなされる一方、先端側のセンサユニットは床面に対して傾斜したXYZ軸に沿った出力がなされるため、先端側のセンサユニットの出力値をXYZ軸方向に沿った値として計測すると誤差を生じてしまう。一方、次の一歩を踏み出す場合においても同様に、図9(a)に示すように、かかと部分を持ち上げた状態でセンサユニットから検出値を出力すると、床面を基準としたXYZ座標軸と異なる値が出力されることになる。
【0008】
さらに、特許文献1の方法では、センサユニットにマーカーを付してカメラで撮影するようにしているため、計測できる場所がカメラの視野角内という狭い範囲に限定されてしまう。すなわち、カメラとマーカーを用いる方法では、2台以上のカメラで計測したデータを信号処理して3次元での座標を求める方法がよく用いられるが、カメラを用いた計測方法であると、歩行距離もカメラの視野角の範囲内に限定されてしまう。このため、限定された歩行でも両足での計測のためには最低4台は必要であり、ある程度の歩数を計測するためには、カメラの台数を多くしなければならず、膨大な設備費用がかかってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、カメラを使うことなく比較的低コストで装置を構成することができ、しかも、正確に床面からの反力やモーメントなどを計測することのできる移動型反力検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、被験者の足に取り付けられ、床面からの反力に基づいて直交する3軸方向の力と当該各軸まわりのモーメントを計測する移動型床反力計測装置において、足のかかと側と足の先端側にそれぞれ分離して設けられ、前記直交する3軸方向の反力と当該各軸まわりのモーメントを計測する複数のセンサユニットと、当該各センサユニットの姿勢を検出する姿勢検出センサとを備えるようにしたものである。
【0011】
このようにすれば、姿勢検出センサによって足のかかと側や足の先端側のセンサユニットの姿勢を検出することができるため、歩行時に足の接地状態が変化した場合であっても正確に床面から受ける反力やモーメントを計測することができるようになる。しかも、カメラによって位置を検出する必要がないので、低コストに装置を構成することができ、また、データ取得範囲もカメラの視野角内に限定されないため、広範囲で反力やモーメントを計測することができるようになる。
【0012】
また、このようなセンサユニットを構成する場合、上下一対の板材を設け、これらの板材の間において、それぞれ直線上に存在しないように3つ以上の反力センサを取り付けるようにする。
【0013】
このようにすれば、板材の間に反力センサを設けることによって各反力センサにかかる力を分散させることができ、反力センサを小さくした場合であっても人間の重い荷重に耐えることができる。しかも、反力センサを直線上に存在しないように設けるため、各反力センサの距離とそれぞれにかかる荷重の積算によって3軸まわりのモーメントを検出することができるようになる。
【0014】
さらに、姿勢検出センサを前記板材に共通して取り付けるようにする。
【0015】
このようにすれば、各センサユニットに対応した数の姿勢検出センサを設ければよく、姿勢検出センサの数を少なくした状態であっても反力やモーメントを計測することができるため、装置を安価に構成することができる。
【0016】
加えて、このような発明における姿勢検出センサとして、ジャイロセンサと加速度センサを併用する。
【0017】
一般に、ジャイロセンサは角速度を検出するものが多いため、この角速度から姿勢を検出するには角速度を積分して角変位に直す必要があり、積分時間が長くなると誤差が累積してだんだん正解からずれていく危険性ある。これに対して、加速度センサは、重力加速度の成分と運動により生じるも加速度の成分の和を計測するため、加速度センサが傾けば、各方向の加速度センサが感知する重力成分が変化し、静止していることがわかっている状態であれば、正確に傾き角を計測することができる。そこで、静止時にジャイロセンサの姿勢を補正すれば、ジャイロセンサによる誤差を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被験者の足に取り付けられ、床面からの反力に基づいて直交する3軸方向の力と当該各軸まわりのモーメントを計測する移動型床反力計測装置において、足のかかと側と足の先端側にそれぞれ分離して設けられ、前記直交する3軸方向の反力と当該各軸まわりのモーメントを計測する複数のセンサユニットと、当該各センサユニットの姿勢を検出する姿勢検出センサとを備えるようにしたので、姿勢検出センサによって足のかかと側や足の先端側のセンサユニットの姿勢を検出することができ、歩行時に足の接地状態が変化した場合であっても正確に床面から受ける反力やモーメントを計測することができる。しかも、カメラによって位置を検出する必要がないので、低コストに装置を構成することができ、また、データ取得範囲もカメラの視野角内に限定されないため、広範囲で反力やモーメントを計測することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の履物5に取り付けられる移動型床反力計測装置100の概略図を示したものであり、図2はその移動型床反力計測装置100の機能ブロック図を示したものである。また、図3から図8は、その移動型床反力計測装置100のセンサユニット101、102に取り付けられる反力センサ10を示したものであり、図9は、その移動型床反力計測装置100を靴などの履物5の裏面に取り付けて使用した状態を示したものである。
【0020】
この実施の形態における移動型床反力計測装置100は、図9に示すように、靴やサンダルなどの履物5の裏面に取り付けて使用されるもので、足のかかと側と足の先端側に独立した2組のセンサユニット101、102を取り付け、それぞれのセンサユニット101、102から床面を基準としたXYZ軸方向の力とその3軸まわりのモーメントを出力できるようにしたものである。そして、その出力値や、これ以外の下腿や大腿に設けられた姿勢センサ(図示せず)の出力値などを用いてリハビリテーションなどを行う人間の下肢の筋肉や関節にかかる荷重などを計測できるようにしたものである。以下、本実施の形態における移動型床反力計測装置100の構成について詳細に説明する。
【0021】
この移動型床反力計測装置100を構成するセンサユニット101、102は、図1に示すように、上板1uと下板1dとの間に反力センサ10を取り付け、各反力センサ10からの出力値に基づいて床面を基準としたXYZ方向の力やその各軸まわりのモーメントを計測できるようにしている。なお、図1において、上板1uは反力センサ10を視認できるように想像線で記載している。ここで、この上板1uや下板1dは、金属板や硬質プラスチック、セラミックなどのように比較的硬い素材で構成される。このとき、上板1uや下板1dを比較的柔らかい素材で構成すると、特定の反力センサ10にのみ大きな荷重がかかってしまい、その荷重に耐えられなくなってしまう。一方、この荷重に耐えられるように反力センサ10を大きくすると、その反力センサ10の大きさによってブーツを履いた時のように高足な状態となり、自然な歩行が困難となる。そこで、この上板1uや下板1dを固い素材で構成することで各反力センサ10にかかる荷重を分散し、反力センサ10自体を小さくできるようにするとともに、各反力センサ10間の距離と荷重によってモーメントを計測できるようにしている。
【0022】
この上板1uや下板1dは、人間の歩行時における足の動きに自由度を持たせるように、足のかかと側と先端側に分離した状態で履物5に取り付けられる。この上板1uや下板1dのうち、上板1uは、履物5の裏面に対して面ファスナーなどを介して着脱可能に取り付けられる。また、下板1dの下面側には、床面とのクッション性をよくするために、下面側にゴム板などが取り付けられる。この上板1uは履物5の裏面に他の方法で取り付けるようにしてもよく、また、下板1dの下面側については、フェルトなどの不織布などを取り付けてクッション性を持たせるようにしてもよい。
【0023】
この上板1uや下板1dとの間に取り付けられる反力センサ10は、直交する3軸方向の力を計測できるようにしたものが用いられる。ここで、直交する3軸とは、床面を基準とした直交座標系の各軸を示したもので、床面に沿ったXY方向と、床面に垂直なZ方向の反力を計測する。また、この反力センサ10は、この実施の形態では、次に示すような反力センサ10を用いるが、これ以外にも、XYZ方向の反力を計測できるようなものであればどのようなものであってもよい。
【0024】
図3にこの実施の形態における反力センサ10の外観斜視図を示す。図3に示す反力センサ10は、縦横寸法が約1cm×約1cm、厚み寸法が0.5cm〜1.0cm程度の大きさを有するもので、正方形状の枠部11と、その枠部11の中心部から外方に向かって放射状に延びる脚部12〜15と、その脚部12〜15の長手方向の変位を検出するように脚部12〜15の両側面に取り付けられた8個の第一のひずみゲージ21〜28と、その脚部12〜15の長手方向に対して約45度の角度をなして取り付けられた第二のひずみゲージ31〜38などを有してなる。なお、図3において第一のひずみゲージ22、23、25、28および第二のひずみゲージ32、33、35、38は脚部12〜15の裏面側に設けられているため図示されていない。そして、このような構成において、中心部のタップ孔に貫入された部材の変位に基づいて直交する3軸方向の力を検出できるようにしている。
【0025】
ここで、この脚部12〜15は、枠体16の底面部分から若干隙間を有するような縦長平面状に構成され、これによって厚み方向(図3におけるZ’方向)にかかる大きな荷重に耐えられるようにしている。この脚部12〜15の各両側面8カ所に取り付けられる第一のひずみゲージ21〜28は、縦長方向に取り付けられ、また、この第一のひずみゲージ21〜28によって図6や図7に示すブリッジ回路41を構成することによってX’方向やY’方向にかかる荷重を検出できるようにする。なお、ここで、X’Y’Z’方向とは、反力センサ10の左右幅方向と厚み方向とする。また、第二のひずみゲージ31〜38は、脚部12〜15の各両側面に斜め45度をなすように8カ所に取り付けられ、Z’方向もしくは斜め方向にかかる荷重を検出する。この第二のひずみゲージ31〜38を各両側面に取り付ける場合、表面側の向きと裏面側の向きとが逆になるように取り付け、そして、この第二のひずみゲージ31〜38によって図8に示すようなブリッジ回路42を形成し、そのブリッジ回路42の抵抗値の変化によってZ’方向の荷重を検出する。
【0026】
この反力センサ10について詳述すると、対向する1対の脚部12、14に設けられた第一のひずみゲージ21、22、25、26によって図6に示すブリッジ回路41を形成するとともに、これに隣接して対向する1対の脚部13、15に設けられた第一のひずみゲージ23、24、27、28によって図7に示すブリッジ回路41を形成する。一方、第二のひずみゲージ31〜38によるブリッジ回路42については、図8に示すように、同一の脚部12〜15の表裏に設けられた第二のひずみゲージ31〜38を直列に配置し、これと対向する脚部12〜15の第二のひずみゲージ31〜38を向かい合させるようにしてブリッジ回路42を形成する。
【0027】
ここで、中心部に力が加わった場合について説明する。Z’軸方向に力Fが加えられた場合、中心部がZ’軸方向に移動し、脚部12〜15が撓むことになる。この結果、第一のひずみゲージ21、22、25、26と第二のひずみゲージ31、32、35、36が伸びるように変化して抵抗値が増加する。一方、第一のひずみゲージ23、24、27、28は長さが伸びる方向、すなわち、抵抗値が増加する方向に変化し、第二のひずみゲージ33、34、37、38は、長さが縮む方向に変化し、抵抗値が減少する方向に変化する。このように、各ひずみゲージの長さが変化すると、第二のひずみゲージ31〜38で形成されるブリッジ回路42によって、Z’軸方向の変化を検出することができる。一方、第一のひずみゲージ21〜28によって形成されるブリッジ回路41ではZ’方向の変化は検出されない。すなわち、第一のひずみゲージ21〜28の抵抗値の増加が等しい場合には、出力電圧は変化せず、また、第一のひずみゲージ21〜28についても同様に出力電圧は変化しない。
【0028】
Y’軸方向に力を加えた場合は、脚部12が圧縮され、脚部14は延びるように変化するとともに、脚部13や脚部15は撓む方向に変化する。この結果、第一のひずみゲージ21、22と第二のひずみゲージ31、32は、長さが縮む方向に変化して抵抗値が減少する。一方、第一のひずみゲージ25、26や第二のひずみゲージ25、36は、長さが伸びる方向に変化するため、抵抗値が増加する。また、第一のひずみゲージ24、27および第二のひずみゲージ34、37については長さが伸びる方向に変化するため抵抗値が増加する。一方、第一のひずみゲージ23、28および第二のひずみゲージ33、38については、長さが縮む方向に変化し抵抗値が減少する。
【0029】
このように脚部12〜15の長さの変化がすると、第一のひずみゲージ21、22、25、26で形成されたブリッジ回路41(図6)によってY’軸方向の変化が検出され、第一のひずみゲージ25、26の抵抗増加、および、第一のひずみゲージ21、22の抵抗減少によって出力電圧に変化をもたらす。
【0030】
一方、第一のひずみゲージ23、24、27、28で形成されたブリッジ回路41(図7)では、Y’軸方向の変化は検出されない。なぜなら、第一のひずみゲージ23、28の抵抗減少の大きさと、第一のひずみゲージ24、27の抵抗増加の大きさとが等しい場合、出力電圧に変化をもたらせないからである。このように反力センサ10によってY’軸方向の力を検出することができ、X’方向についても同様にしてX’方向の力を検出できる。
【0031】
このようにして、第一のひずみゲージ21〜28、第二のひずみゲージ31〜38で構成された反力センサ10によってX’Y’Z’方向に働く反力を検出する。
【0032】
この反力センサ10は、上板1uや下板1dに対して一直線上に位置しないように少なくとも3つ以上の場所に配置される。ここでは、正三角形状に反力センサ10を取り付けておき、これによってセンサユニット101、102の重心位置における反力やモーメントを計測する。
【0033】
演算部103(図2参照)は、各センサユニット101、102からの出力値に基づいて各センサユニット101、102の重心位置における反力やモーメントを計測するもので、ここでは、各センサユニット101、102におけるX’Y’Z’方向の反力をF1X’、F2X’、F3X’とし、Y’方向の反力をF1Y’、F2Y’、F3Y’とし、Z’方向の反力をF1Z’、F2Z’、F3Z’とした場合、次式によって各センサユニット101、102の重心位置G1、G2における反力を計測する。ここで、F11m、F12m、F13m(m=X’、Y’、Z’)は、センサユニット101における各反力センサ10のm軸方向(m=X’、Y’、Z’)の反力であり、また、F21m、F22m、F23m(m=X’、Y’、Z’)は、センサユニット102における各反力センサ10のm軸方向(m=X’、Y’、Z’)の反力である。
F1X’=F11X’+F12X’+F13X’
F1Y’=F11Y’+F12Y’+F13Y’
F1Z’=F11Z’+F12Z’+F13Z’
F2X’=F21X’+F22X’+F23X’
F2Y’=F21Y’+F22Y’+F23Y’
F2Z’=F21Z’+F22Z’+F23Z’
【0034】
また、各センサユニット101、102の重心位置G1、G2を基準としたX’Y’Z’軸回りにおけるモーメントは、次式で表される。ここで、L11m、L12m、L13m(m=X’、Y’、Z’)は、センサユニット101における各反力センサ10からm軸(m=X’、Y’、Z’)までの距離であり、また、L21m、L22m、L23m(m=X’、Y’、Z’)は、センサユニット102における各反力センサ10からm軸(m=X’、Y’、Z’)までの距離である。
M1X’=F11Z’×L 11X’+F12Z’×L 12X’+F13Z’×L 13X’
M1Y’=F11Z’×L 11Y’+F12Z’×L 12Y’+F13Z’×L 13Y’
M1Z’=F11X’×L 11Z’+F12X’×L 12Z’+F13X’×L 13Z’+F11Y’×L 11Z’+F12Y’×L 12Z’+F13Y’×L 13Z’
M2X’=F21Z’×L 21X’+F22Z’×L 22X’+F23Z’×L 23X’
M2Y’=F21Z’×L 21Y’+F22Z’×L 22Y’+F23Z’×L 23Y’
M2X’=F21X’×L 21Z’+F22X’×L 22Z’+F23X’×L 23Z’+F21Y’×L 21Z’+F22Y’×L 22Z’+F23Y’×L 23Z’
【0035】
そして、これらの値は、演算部103におけるCPUによってサンプリング時間毎に計測されて補正部104に出力される。
【0036】
補正部104は、この出力された各センサユニット101、102におけるX’、Y’、Z’方向の反力やモーメントを、床面を基準とした静止座標系での反力やモーメントとして計測する。この補正処理を行う場合、各センサユニット101、102の1つの共通する姿勢検出センサ107を設け、この姿勢検出センサ107からの出力値に基づいて各センサユニット101、102の床面に対する座標と姿勢を出力する。この姿勢検出センサ107としては、各センサユニット101、102の相対的な位置関係や姿勢などを出力できるようなものであればどのようなものであってもよく、例えば、ジャイロセンサや加速度センサなどを用いる。この姿勢検出センサ107は、上板1uや下板1dに固定して取り付けられ、その出力値が補正部104に出力される。
【0037】
ここで、ジャイロセンサを用いた場合、そのジャイロセンサを取り付けたセンサユニット101、102の角速度を検出することができ、その角速度をサンプリング時間で積分することによってそのジャイロセンサを取り付けたセンサユニット101、102の姿勢を検出することができる。すなわち、床面を基準としたXYZ座標を基準として、そこからの姿勢変化を検出することができる。しかしながら、この積分処理は、時間の経過によって誤差が生じ、その誤差が累計されることによって正規の姿勢から大きくずれていく可能性がある。
【0038】
そこで、加速度センサも併用することができる。この加速度センサは、重力加速度の成分と運動によって生ずる加速度の成分の和を計測するもので、静止状態であれば重力加速度のみを計測するものを用いる。このとき、加速度センサが傾けば、重力成分が変化するので、静止していることが分かっている状態であれば、傾き姿勢を計測することができる。2組のセンサユニット101、102が床面に水平に接している状態には、加速度センサは静止しているので、そのときには、ジャイロセンサによる角速度を積分して求める傾きを補正することができる。2組のセンサユニット101、102が床面に接しているか否かは、反力センサ10のZ’方向の出力によって判定することができる。このようにすれば,ジャイロセンサを積分する際に生ずる誤差を抑制することができる。
【0039】
2組のセンサユニット101、102の床面との接地状態は、反力センサ10のZ’方向の出力と姿勢検出センサ107の出力から把握することができる。接地状態と姿勢がわかれば、床面上でのセンサユニット101、102を基準位置とした静止座標系における各センサユニット重心の座標値および姿勢を得ることができるので、それらを用いれば、床面を基準とした静止座標系における床反力を得ることができる。
【0040】
そして、このように各センサユニット101、102で計測されたXYZ軸の反力やモーメントを出力部105を介して演算装置106に出力し、そこで、これらの出力値や、これ以外に別途下腿や大腿の姿勢などを検出することによって被験者の下肢にかかる負荷や関節にかかるモーメントなどを計測する。このとき、各センサユニット101、102からの反力やモーメントを出力するようにしてもよく、あるいは、足全体の重心位置にかかる反力はモーメントを演算して出力するようにしてもよい。また、この出力部105を介して演算装置106に出力する場合、通信ケーブルを介して出力するようにしてもよく、あるいは、無線によって演算装置106に出力するようにしてもよい。
【0041】
次に、このように構成された移動型床反力計測装置100の使用例について説明する。
【0042】
まず、使用に先立って被験者に履物5を履いてもらい、履物5の裏面に設けられた各センサユニット101、102を水平な状態にして(図9(b))、この状態で、加速度センサが重力加速度のみを計測し、ジャイロセンサによる傾きを補正する。このとき、人間の荷重が各センサユニット101、102にかかり、各センサユニット101、102の反力センサ10から床面を基準としたXYZ方向の反力はモーメントが出力される。
【0043】
次に、被験者が歩行しはじめた場合、図9(c)に示すように、足のかかと側を持ち上げる。このとき、かかと側のセンサユニット101は床面に対してθ1X、θ1Y、θ1Zだけ傾斜するとともに、かかとが若干床面に接触している場合は、その床面からの反力やモーメントを受ける。このとき、センサユニット101側の反力センサ10から出力された反力やモーメントは、床面に対して傾いた状態となるため、補正部104を介して床面を基準とした静止座標系での反力やモーメントに補正する。一方、先端側のセンサユニット102については床面と水平な状態となっているため、補正部104を介して補正を行っても鉛直方向の反力の出力値は変化しない。
【0044】
次に、被験者がかかと側から着地する場合、かかと側のセンサユニット101はほぼ床面と水平な状態となる一方、先端側のセンサユニット102は床面に対して傾斜した状態となる。このとき、センサユニット102側の反力センサ10から出力された反力やモーメントは、床面に対して傾いた状態となるため、補正部104を介して座標変換を行い、床面を基準とした静止座標系での反力やモーメントに補正する。一方、かかと側のセンサユニット101は、この状態では床面と水平な状態となっているため、補正部104を介して補正を行っても反力やモーメントの出力値は変化しない。
【0045】
そして、このように補正部104を介して補正された反力やモーメントを出力部105を介して演算装置106に出力し、その出力値や、これ以外に別途、下腿や大腿の姿勢などを検出することによって被験者の下肢にかかる負荷や関節にかかるモーメントなどを計測する。
【0046】
このように上記実施の形態によれば、被験者の足に取り付けられ、床面からの反力に基づいて直交する静止座標系での力と当該各軸まわりのモーメントを計測する移動型床反力計測装置100において、足のかかと側と足の先端側にそれぞれ分離して設けられ、前記直交する3軸方向の反力と当該各軸まわりのモーメントを計測するセンサユニット101、102と、当該各センサユニット101、102の位置を検出する姿勢検出センサ107とを備えるようにしたので、歩行時に足の接地状態が変化した場合であっても正確に床面から受ける反力やモーメントを計測することができるようになる。しかも、カメラによって位置を計測する必要がないので、低コストに装置を構成することができるようになる。また、データ取得範囲もカメラの範囲内に限定されることがないため、広範囲で反力やモーメントを計測することができるようになる。
【0047】
また、このようなセンサユニット101、102を構成する場合、上板1uと下板1dを設け、これらの間において、それぞれ直線上に存在しないように3つ以上の反力センサ10を取り付けるようにしたので、上板1uと下板1dの間に反力センサ10を設けることによって各反力センサ10にかかるZ軸方向の力を分散させることができ、反力センサ10を小さくした場合であっても大きな人間の荷重に耐えることができるようになる。しかも、反力センサ10を直線上に存在しないように設けたため、各反力センサ10の距離とそれぞれにかかる荷重の積算によって3軸まわりのモーメントを検出することができるようになる。
【0048】
さらに、姿勢検出センサ107を各センサユニット101、102の上板1uもしくは下板1dに取り付けるようにしたので、各センサユニット101、102に対応した数だけ姿勢検出センサ107を設ければよく、姿勢検出センサ107の数を少なくして反力やモーメントを計測することができ、装置を安価に構成することができる。
【0049】
加えて、姿勢検出センサ107として、ジャイロセンサとともに加速度センサも用いるようにしたので、ジャイロセンサを積分する際に生ずる誤差を抑制することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々の態様で実施することができる。
【0051】
例えば、上記実施の形態によれば、上板1uと下板1dとの間に3つの反力センサ10を設けるようにしているが、反力センサ10の数については3つに限定されるものではなく、4つ以上設けるようにしてもよい。このとき、各反力センサ10については、荷重のかかりやすい場所に配置するようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、センサユニット101、102をかかと側と先端側に設けるようにしたが、さらに細かく分割して履物5の裏面に設けるようにしてもよい。
【0053】
さらに、上記実施の形態では、履物5の裏面と床面との間にセンサユニット101、102を取り付けるようにしているが、履物5の中敷きの下方にセンサユニット101、102を設けるようにしてもよい。
【0054】
加えて、上記実施の形態では、姿勢検出センサ107としてジャイロセンサや加速度センサなどを用いるようにしているが、各センサユニット101、102と床面との角度や位置を計測できるようなものであればどのようなものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態である移動型床反力計測装置の概略図
【図2】同形態における移動型床反力計測装置の機能ブロック図
【図3】同形態のセンサユニットに用いられる反力センサの外観斜視図
【図4】同形態の反力センサの脚部に取り付けられるひずみゲージを示す図
【図5】図4の裏面側におけるひずみゲージを示す図
【図6】同形態のブリッジ回路を示す図
【図7】同形態のブリッジ回路を示す図
【図8】同形態のブリッジ回路を示す図
【図9】人間の歩行状態を示す図
【図10】従来例における反力計測装置
【符号の説明】
【0056】
100・・・移動型床反力計測装置
101、102・・・センサユニット
1u・・・上板
1d・・・下板
10・・・反力センサ
11・・・枠部
12〜15・・・脚部
21〜28・・・第一のひずみゲージ
31〜38・・・第二のひずみゲージ
41、42・・・ブリッジ回路
103・・・演算部
104・・・補正部
105・・・出力部
106・・・演算装置
107・・・姿勢検出センサ
5・・・履物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の足に取り付けられ、床面からの反力に基づいて直交する3軸方向の力と当該各軸まわりのモーメントを計測する移動型床反力計測装置において、
足のかかと側と足の先端側にそれぞれ分離して設けられ、前記直交する3軸方向の反力と当該各軸まわりのモーメントを計測する複数のセンサユニットと、
当該各センサユニットの姿勢を検出する姿勢検出センサとを備えるようにしたことを特徴とする移動型床反力計測装置。
【請求項2】
前記センサユニットが、上下一対の板材と、各板材の間でそれぞれ直線上に存在しないように少なくとも3つ以上の反力センサを備えて構成されるものである請求項1に記載の移動型床反力計測装置。
【請求項3】
前記姿勢検出センサが、一つのセンサユニットに対して共通して設けられるものである請求項1に記載の移動型床反力計測装置。
【請求項4】
前記姿勢検出センサが、ジャイロセンサと加速度センサを備えて構成されるものである請求項1に記載の移動型床反力計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−127921(P2010−127921A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306913(P2008−306913)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(503061485)株式会社テック技販 (5)
【上記2名の代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
【Fターム(参考)】