説明

移動局位置推定方法および装置

【課題】ワイヤレス・ネットワークにおいて移動局の位置を判定する方法および装置を提供する。
【解決手段】移動体の位置を推定する方法および装置は、移動局から報告される信号強度またはその他の取付インジケータ値を受信することを含む。報告された信号強度を、移動ネットワークのカバレッジ・エリアにおける特性受信信号強度値と比較する。移動交換局は、位置検出機能が要求されているか否か判定を行い、移動体位置検出モジュール(MLM)による位置推定プロセスを開始する。取付ポイントに関連する信号強度輪郭が報告され、MLMは報告された信号強度輪郭を受信する。報告された取付インジケータ値と特性値との比較に基づいて、MLMは移動体の推定位置を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス・ネットワークにおいて移動局の位置を判定する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2001年4月3日に出願された米国仮特許出願第60/281,147号の優先権を主張する。
移動電話システムは、セルラ電話システムとも呼ばれており、増々普及しつつある。これらのシステムは、概略的に、セル・サイトで構成され、これらは、セルと呼ばれる、関連のカバレッジ・エリアを担当するように構成されている。セル・サイトとは、アンテナや無線基地局のような通信ハードウエアが設置されているセル内部の場所のことである。このシステムにおいて、特定のセル内部で動作している移動局は、移動電話システムと、関連のセル・サイトを通じて通信する。セル・サイトは、移動電話システムを陸線電話ネットワークに接続する移動交換局と通信状態にある。
【0003】
セル電話の人気の理由の1つは、これらを緊急時に使用できることである。例えば、自動車運転者は、移動電話機を用いて、車両故障の場合に助けを呼ぶことができる。多くのエリアでは、特殊な緊急用セルラ電話番号が設けられている。別のエリアでは、ユーザは、従来の陸線電話からの場合と同様に、911に発呼することができる。
【0004】
緊急時に移動電話機を用いることに伴う問題の1つに、電話機の移動性に起因するものがある。警察のような公共サービス提供者は、緊急用番号に発呼している移動電話機の位置がわからない。加えて、緊急用番号に発呼するユーザは、恐々サービス提供者が彼らを発見できるのに十分な位置情報を提供できない場合が多い。したがって、移動電話機の位置を判定することができ、その情報を公共サービス供給者に提供することができる移動電話システムを設けることが望ましい。
【0005】
このような移動電話機位置検出サービスは、緊急応答以外にも、その他の状況でも望ましい場合もある。例えば、移動電話機のユーザが迷子になった場合、移動電話システム・プロバイダから位置情報を要求することができる。位置情報は、システムからユーザに渡すことができる。このようなシステムの更に別のユーザは、多数の車両を運用する会社であろう。会社の運営本部(home base)は、移動電話機位置検出サービスを用いることによって、その車両の位置を追跡することができる。勿論、このようなサービスには、他にも多くの用途がある。
【0006】
移動電話機位置検出サービスに関する既知の技法では、移動電話機とセル・サイト内にある移動電話システムのアンテナとの間の距離を、セル・サイト・アンテナと移動電話機との間の通信信号の信号強度を分析することによって判定することができる。移動電話機と多数のセル・サイト・アンテナとの間の距離を計算する場合、移動電話機の大凡の位置を、三角測量法のような幾何学的プロセスによって判定することができる。
【0007】
米国特許第4,891,650号(特許文献1)は、セルラ電話システムを用いて大凡の車両位置を判定する車両位置検出システムについて記載している。位置検出機能は、車両がアラーム信号を近隣のセル・サイトに送信したときに開始される。このアラーム信号を受信したセル・サイトは、受信したアラーム信号を分析し、その信号強度を判定する。次いで、セル・サイトは、信号強度情報を、移動電話システムを通じて、警報中央局に送る。警報中央局は、次に、種々のセルから報告された信号強度を用いて、車両の大凡の位置を判定する。一層精度を高めた位置検出を達成するには、中央局が算出した大凡の位置に実際の追跡車両を送り出す。このシステムの欠点は、セル・サイトの各々が、適切な信号強度報告メッセージを発生し移動電気通信交換局に送るために、追加の構成機器を必要とすることである。また、移動電気通信交換局も、適切な情報を中央追跡局に送り、信号強度を用いて車両の大凡の位置を判定するために特殊な機能性を必要とする。
【0008】
米国特許第5,218,367号(特許文献2)は、近隣セルから受信した信号強度を用いて大凡の車両位置を算出する車両追跡システムについて記載している。このシステムでは、特殊目的の移動電話機が、近隣セルから受信している信号強度を判定し、信号強度情報を含む適切なアラーム・メッセージを発生して、移動電話システムを通じて中央局に送る。次いで、中央局は、この情報を用いて、車両の大凡の位置を判定する。このシステムは、セルをセクタに分割し、これらのセクタにおけるアンテナに関する個々の情報を用いれば、大凡の位置の精度を向上させることができる。一旦、大凡の位置が分かると、より正確な位置突き止めは、実際の追跡車両を、中央局が算出したその大凡の位置に送り出すことによって実現する。
【0009】
米国特許第4,891,650号に記載されている技法は、適切な信号強度報告メッセージを発生し送るためには、セル・サイトの各々に追加の構成機器を必要とする。移動電話システムにはこのようなセルが数多くあるので、このような追加の構成機器は望ましくない。したがって、各セル・サイトにおいて追加の構成機器を必要としない、移動電話機位置検出システムが求められている。その他の方法も、米国特許第5,724,660(特許文献3)および米国特許第5,732,354号(特許文献4)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,891,650号
【特許文献2】米国特許第5,218,367号
【特許文献3】米国特許第5,724,660
【特許文献4】米国特許第5,732,354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の特許に記載されている位置検出技法では、移動電話機の正確な位置を算出しないものもある。位置検出の精度を向上させるには、実際の追跡車両を送り出せばよい。しかしながら、このような車両が必要となると、このような技法は非常に費用がかかる。改良を加えた移動局位置推定方法および装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
移動局位置検出方法は、移動局が報告する報告信号強度(RSS)に基づいて地理的位置を判定することを含む。RSS値は、例えば、信号強度測定または信号強度計算によって得られ、メモリに格納されているRSS値の組と比較される。代表的な例によれば、この方法は、移動局に付属する全地球測地システムのプロセッサによって、緯度および経度座標を確定することを含む。報告されたRSS値は、緯度および経度座標に関連する所定のRSS値と比較される。別の例では、RSS値の所定の組を、移動局が報告したGPS位置座標に基づいて改訂する。
【0013】
移動局位置検出プロセッサは、移動局の少なくとも2カ所の取付ポイントに関連する取付インジケータを受信するように構成された入力を含む。メモリは、少なくとも2カ所の取付ポイントに関連する所定の取付インジケータの組を格納するように構成されており、推定部は、受信した取付インジケータと、少なくとも2つの所定の取付インジケータの少なくとも1つの組との比較に基づいて、移動局の位置の推定値を与えるように構成されている。別の例によれば、受信した取付インジケータ値は、移動局が報告したものである。別の例では、取付インジケータ値は、1つ以上の取付ポイントが報告したものである。代表的な例では、取付インジケータ値は、移動局が報告した受信信号強度値である。
【0014】
移動体位置検出モジュールは、少なくとも2つの報告された受信信号強度値を、ワイヤレス・ネットワークにおける少なくとも2カ所の地理的位置と関連する少なくとも2つの所定の受信信号強度値と比較するように構成されている。また、移動体位置検出モジュールは、比較に基づいて移動体の推定位置を送り出すように構成された出力も含む。代表的な例によれば、プロセッサは、報告された受信信号強度値と所定の受信信号強度値との比較に関連するスコアを判定するように構成されている。別の例では、報告された信号強度値および受信信号強度値は、移動補助ハンドオフに関係する。
【0015】
移動局の地理的位置を推定する位置検出ユニットは、移動局に関連する取付インジケータ値を受信するように構成された入力と、ネットワーク取付ポイントに関連する所定の取付インジケータ輪郭とに基づいて、移動局位置の推定値を与えるように構成されたプロセッサとを含む。代表的な例によれば、取付インジケータ値は、移動局が報告した受信信号強度値であり、取付インジケータ輪郭は、受信信号強度の輪郭である。
【0016】
移動局の位置検出方法は、移動局に関連する1組の受信信号強度値を得るステップと、受信信号強度と特性信号強度値との比較に基づいて移動局の位置を判定するステップとを含む。代表的な例では、移動局の位置を判定する際に、選択したエラー・スコアに関連する特性信号強度値に関連する位置を選択する。別の例では、本方法は、特性信号強度値を格納するステップと、メモリから特性値を検索するステップとを含む。
【0017】
地理的サービス・エリア内において移動局の位置を検出する方法は、移動局について取付インジケータ値を得るステップを含む。移動局取付インジケータ値は、一連の取付ポイントに関連付けられており、一連の取付ポイントに関連する特性取付インジケータ値と比較され、移動局の推定位置を得る。別の代表的な例によれば、この方法は、推定した移動局位置を報告するステップを含む。別の例では、移動局についての取付インジケータ値は、対応する無線基地局と関連する受信信号強度値であり、移動局によって報告される。代表的な例では、スコアを判定することによって、移動局の取付インジケータ値および特性取付インジケータ値を比較し、スコアに基づいて、推定した移動局位置を選択する。
【0018】
移動局の位置を検出する方法は、全地球測地システムに基づいて、緯度および経度位置の推定値の少なくとも1つを得るステップを含む。移動局位置の推定値は、移動局の取付インジケータ値と緯度および経度推定値に関連する領域における特性取付インジケータ値との比較に基づいて与えられる。
【0019】
移動局の位置を推定する方法は、複数のアンテナと関連する信号強度値を移動局が報告し、これを受信するステップを含む。移動局の第1位置検出エリアが、サービス提供セル・サイトの地理的カバレッジ・エリアとして算出され、移動局の第2位置検出エリアが、報告された受信信号強度値と、地理的カバレッジ・エリアにおける少なくとも1カ所の位置に関連する所定の信号強度値との比較に基づいて算出される。代表的な例によれば、所定の信号強度値は、信号強度輪郭として表され、移動局の推定位置は、1つ以上の信号強度輪郭を、報告された受信信号強度値と関連付けることに基づく。
【0020】
特性取付インジケータ値は、地理的位置と取付ポイントとの間の伝搬特性に基づいて判定することができる。代表的な例では、伝搬特性は、伝搬経路の傾き、アンテナ・パターン・ロールオフ、またはその他の値とすることができる。
【0021】
移動局の推定位置を与えるように構成したネットワークは、取付ポイントに関連する取付インジケータ値を受信する移動体位置検出モジュールを含む。このネットワークは、ネットワーク・サービス・エリアにおける地理的位置についての特性取付インジケータ値を含むデータベースを有する。移動体の推定位置は、受信した取付インジケータ値と特性取付インジケータ値との比較に基づいて与えられる。ある例では、受信した取付インジケータ値は、移動局から報告される受信信号強度値である。別の例では、比較は、特性取付インジケータ値に関連して計算したスコアと、受信した取付インジケータ値とに基づく。別の例では、特性取付インジケータ値は、取付インジケータ値の輪郭として構成され、移動局の推定位置はこれらの輪郭に基づく。
【0022】
移動局位置の推定値を判定するコンピュータ実行可能命令を収容したコンピュータ読み取り可能媒体を提供する。この媒体は、報告された取付インジケータ値を、対応する地理的位置に関連する特性取付インジケータ値と比較するように構成されたコンピュータ実行可能命令を含む。ある例では、特性値を判定する命令を設ける。
【0023】
移動体位置情報を提供する方法は、報告された取付インジケータ値と、それぞれの地理的位置に関連する特性取付インジケータ値との比較に基づいて、移動体の位置を判定するステップを含む。ある例では、移動体の位置をサービス・プロバイダに報告し、別の例では、移動体の位置判定は、報告した取付インジケータ値の更新に基づいて繰り返され、移動体位置の更新を求め、サービス・プロバイダに報告する。
【0024】
これらおよびその他の特徴について、添付図面を参照しながら、以下に明記する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、ワイヤレス・ネットワークの地理的サービス・エリアを示す。
【図2】図2は、移動電話システムを示すブロック図である。
【図3】図3は、受信した信号強度を含む、移動補助ハンドオフ(MAHO)リストの一例を示す。
【図4】図4は、Hata伝搬損失モデルを示す。
【図5】図5は、円の交差部分として、位置検出エリアを示し、円の半径は、移動局距離の過大推定である。
【図6】図6は、円の交差部分として、位置検出エリアを示し、円の半径は、移動局の距離の過小推定である。
【図7】図7は、円の交差部分として、位置検出点を示し、円の半径は正確な推定値となっている。
【図8】図8は、計算した距離の誤差成分を低減する方法を示す。
【図9】図9は、ある時間間隔にわたってGPS受信機/プロセッサが算出した緯度および経度座標のグラフである。
【図10】図10は、移動局の位置を算出する方法のブロック図である。
【図11】図11は、ワイヤレス通信システムの概略ブロック図である。
【図12】図12は、地理的サービス・エリアのゾーンへの分割の概略図である。
【図13】図13は、地理的サービス・エリアのゾーンへの別の分割の概略図である。
【図14】図14は、移動局位置検出モジュールの概略ブロック図である。
【図15】図15は、移動局位置検出モジュールを含むワイヤレス・ネットワークの概略ブロック図である。
【図16】図16は、ワイヤレス・ネットワークのセルに関連する受信信号強度値に基づいた、受信信号強度輪郭を示す概略図である。
【図17】図17は、移動局位置を緊急サービス提供者に供給するように構成したワイヤレス・ネットワークを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、移動電話システムの地理的サービス提供エリア100を示す。図示のサービス提供エリア100は、1〜7と付番した7つの六角形セルを有する。セル7が中央に示され、隣接するセル1〜6に包囲されている。移動電話システムのサービス提供エリア100は、通例では、7つよりも多いセルを含むが、参照を簡単にするために、7つのセルだけを図1に示す。各セル1〜7は、アンテナ101〜107を備えており、移動電話システムのサービス提供エリア100内部にある移動電話機120のような移動電話機に信号を送信するため、そしてこれらから信号を受信するために用いられる。
【0027】
図2に移動電話システム200を示す。図示のセル7は、無線基地局(RBS)214に接続されているアンテナ107を含む。セル7内部に示す移動電話機120は、エア・インターフェース202を介して、移動電話システム200と通信する。例えば、移動電話機120は、IS−55規格に準拠した北アメリカ時分割多元接続(TDMA)システム、およびIS−54規格またはIS−136規格に準拠したエア・インターフェースにしたがって動作するディジタル移動電話機とすることができる。例えば、TIA/EIA Interim Standard IS-55-A "Recommended Minimum Performance Standards of 800 MHz Mode Mobile Stations," 1993年9月; EIA/TIA Interim Standard IS-54-B "Cellular System Dual-Mode Mobile Station-Basestation Compatibility Standard," 1992年4月; EIA/TIA Interim Standard IS-136 "Cellular System Dual-Mode Mobile Station-Basestation: Digital Control Channel Compatibility Standard,"1995年4月を参照のこと。これらの内容は、ここで引用したことにより本願にも含まれることとする。加えて、全地球測地システム(GPS)受信機/プロセッサ・ユニット125を、位置検出する移動電話機120に設けたり、あるいはその他の方法で共に用いることができる。このようにGPS受信機/プロセッサ125を移動電話機120に使用することについては、以下で更に詳しく説明する。セル1〜7は、それぞれのアンテナを含み、関連の無線基地局(RBS)に接続されている。無線基地局は、移動交換局(MSC)220と通信状態にある。
【0028】
セル1〜7には、音声信号を送受信するための複数の音声チャネルと、制御データ信号を送受信するためのそれぞれの制御チャネルとが割り当てられている。図1および図2を参照して、セル7において動作中の移動電話機120を考える。移動電話機120は、エア・インターフェース220を通じて、移動電話システム200と、アンテナ107およびRBS214を介して通信している。音声信号は、移動電話機120とアンテナ107との間で、セルの音声チャネルの1つを通じて伝達され、制御データ信号は、電話機120とアンテナ107との間で、セルの制御チャネルを通じて伝達される。このような状況では、音声データがセル7を経由して伝達されているので、セル7がサービング・セル(serving cell)となる。サービング・セルとの通信に加えて、移動電話機120は、近隣セルの制御チャネルの監視も行う。移動電話機120は、IS−54およびIS−136規格に応じた移動補助ハンドオフのために、近隣セルのこれら制御チャネルの信号強度を測定する。これらの制御チャネル信号強度測定値は、MSC220に送られる。これについては以下で更に詳しく説明する。加えて、移動電話機120は、サービング・セル・サイトのアンテナから受信している音声信号の信号強度を測定する。この音声チャネルの信号強度測定値は、移動電話機12によってMSC220に、サービング・セルの逆音声チャネルを通じて周期的に送られる。
【0029】
移動電話機120が地理的サービス提供エリア100内部で移動するにしたがって、アンテナ107および移動電話機120間の音声チャネル信号の信号強度は変化する。移動電話機120が、例えば、隣接するセル5のような別のセルに入ると、アンテナ105からの制御チャネル信号の信号強度は、アンテナ107からの音声チャネル信号の信号強度よりも強くなる。この時点で、移動電話機120はセル7との音声チャネルを通じた通信を終了し、セル5の音声チャネルを通じた通信を開始することが望ましい。この動作をハンドオフと呼び、移動電話機120が地理的サービス提供エリア100内部を移動している間に、サービング・セルを交換し、移動電話機120が、最も強い信号のアンテナを介して、音声チャネル通信を維持するようにするために用いられる。
【0030】
IS−54およびIS136エア・プロトコルに基づく移動電話機では、このハンドオフ動作は、移動電話機自体によって補助される。このような機能を、移動補助ハンドオフ(MAHO:mobile-assisted hand-off)と呼ぶ。移動電話機120は、MAHOリストを保持している。MAHOリストは、移動電話機120が近隣セルの制御チャネルを通じて受信している信号の信号強度を収容する。各セル・サイトは、予め規定されたMAHOリストを有している。MSC220は、セル・サイト毎にこれらのMAHOリストを格納し、サービング・セル・サイトに応じて、該当するリストを移動電話機120に送る。これらの規定されたMAHOリストは、一般に、サービング・セルに隣接するセルから成る。例えば、セル7をサービング・セルと仮定した場合のMAHOリスト300の一例を図3に示す。測定しMAHOリストに含ませるチャネルのリストは、MSC220によって移動電話機120に伝達される。リスト300は、この図では隣接するセル1〜6の各々に1つのエントリと、セル1〜6がブロードキャストする制御チャネルが移動電話機120によって受信されたときの信号強度を表す、対応の信号強度(RSSI)とを含む。つまり、RSSIは、移動電話機120がセル1内のアンテナ101から受信した制御チャネルの信号強度を表し、RSSIは、移動電話機120がセル2内のアンテナ120から受信した制御チャネルの信号強度を表す等となる。
【0031】
MAHO測定値は、サービング・セルの逆音声チャネルを通じて、移動電話機120からMSC220に周期的に送られる。MAHOリストの内容は、IS−54規格によって決められており、したがって、このエア・プロトコルに準拠するあらゆるディジタル移動電話機は、MAHOリストを保持する。
【0032】
地理的サービス提供エリア100内部で、移動電話機120のような移動電話機の具体的な地理的位置を判定することが望ましい場合が多い。移動体位置検出モジュール(MLM:mobile location module)230を移動電話システム200に含ませれば、移動局の位置を得ることができる。MLM230は、プロセッサ232およびメモリ234を含む。MLM230は、MSC220に接続されており、MLM230の位置検出機能は、以下のように、MSC220によって開始することができる。
【0033】
移動電話機120による電話呼の開始時に、RBS214はMSC220に、移動電話機の電話番号(A番号)と、移動電話機が通話する相手の電話機の電話番号(B番号)とを送る。MSC200は、A/B番号の分析を行い、位置検出機能を実行すべきか否か判定を行うように構成することができる。例えば、MSC220は、移動電話機が発呼する(dial)毎に位置検出機能を開始することができる(911)。加えて、移動電話システム提供業者は、この位置検出機能を1つのサービスとしてその顧客に提供することができる。この状況では、移動電話機120のユーザがある番号に発呼した場合、MSC220は位置検出機構を開始することができ、移動電話機の位置を、移動電話機のユーザに通知することができる。更に、MSC220は、位置検出機能が要求されているか否か、MSC220に格納されているユーザ・プロファイルを参照することによって、判定することができる。例えば、多数の車両を用いる会社では、その移動電話機の1つから発呼する毎に、位置検出機能を実行させたい場合もある。これらの例に見られるように、A/B番号分析を行うことによって、MSC220は、種々の判断基準に基づいて、位置検出機能を開始することができる。当業者であれば、多様な別のA/B番号分析を行っても、位置検出機能の開始が要求されているか否か判定可能であることを認めよう。MSC220は、位置検出機能が要求されていると判定した場合、MLM230内の位置検出機能を要求する。位置検出機能が開始されるかまたはされないかには係わらず、信号の音声部分は該当する宛先に送ることができる。例えば、移動電話機120が陸線電話機に発呼した場合、音声信号を公衆電話交換網(PSTN)に送ることができる。このように、発呼の結果位置検出機能が開始されても、その呼をMLM230において終了する必要はない。音声情報は、発呼した番号に基づいて、該当する場所に送信することができる。
【0034】
一例では、地理的サービス・エリア120内における移動電話機120の位置は、MLM230によって以下のように決定することができる。MSC220は、次の情報をMLM230に受け渡す。RSSI〜RSSIを収容するMAHOリスト300が、移動電話機120によって送られる。現在移動電話機120を担当しているセル・サイトを特定する。サービング・セル・サイトからの音声チャネル信号の信号強度を測定し、移動電話機120によって送る。この信号強度を(RSSI)として表す。
【0035】
MLMプロセッサ232は、次に、メモリ234に格納されているコンピュータ・プログラム・コード238を実行する。コンピュータ・プログラム・コード238は、プロセッサ232が実行する位置検出アルゴリズムを記述する。このアルゴリズムを、図10のフロー図に示す。最初のステップ1002では、2つの位置検出ゾーン、ゾーン1およびゾーン2を算出する。ゾーン1は、移動電話機120を現在担当しているセルの地理的カバレッジ・エリア(coverage area)によって規定される。例えば、サービング・セルがセル7(図1参照)である場合、ゾーン1がセル7に含まれる地理的カバレッジ・エリアとなる。ゾーン2は、MLM230が算出する。これについては、以下で図4〜図8と関連付けて説明する。
【0036】
ゾーン2の算出の最初のステップでは、RSSIおよびRSSI〜RSSIを評価し、3つの最も強い信号強度を判定する。この例では、セル7がサービング・セルであり、最も強い信号強度が、アンテナ107を介して伝達されている音声チャネル信号強度(RSSI)であり、セル2の制御チャネルに伴う信号強度(RSSI)がアンテナ102を介して伝達されており、セル4の制御チャネルに伴う信号強度(RSSI)がアンテナ104を介して伝達されていると仮定する。これらの信号強度を用いると、アンテナ102、104、107の各々から移動電話機120までの距離を、以下の式を用いて推定することができる。
【0037】
【数1】

【0038】
上の式で、RSSIは、移動電話機がアンテナから受信する既知の信号強度である。EIRPは、アンテナの有効等方放射パワーであり、送信機のパワー(TxPower)およびアンテナの利得(Antenna Gain)に依存し、
【0039】
【数2】

【0040】
となる。各アンテナ102、104、107について、送信機パワー(dBm)およびアンテナの利得(dBi)は一定の定数であり、したがって、各アンテナのEIRPは既知の値となる。例えば、C.A. Belanis, Antenna Theory: Analysis and Design(アンテナ理論:分析および設計), John Wiley & Sons, New York, 1982を参照のこと。
【0041】
式(1)の第2項、即ち、伝搬損失は、図4に示すハタ・モデル(Hata model)に基づいてモデル化する。このモデルは次のような形式である。
【0042】
【数3】

【0043】
ここで、Aは1kmの切片ポイントであり、アンテナの高さおよび送信周波数に依存し、地上からのアンテナ高さによる成分を含む。Bは、伝搬経路の傾きであり、dは移動電話機のアンテナからの距離(キロメートル単位)である。図4に示すように、EIRP (dBm) − Aは、d=1kmにおける線402のRSSI値であり、Bは402における線の傾きである。ハタ・モデルに関するこれ以上の情報については、M. Hata, "Empirical Formula for Propagation Loss in Land Mobile Radio Services"(陸上移動無線サービスにおける伝搬損失についての経験的計算法) IEEE Trans. Vehicular Tech. Vol. VT-29 (August 1980)を参照のこと。
【0044】
したがって、式(1)は次のようになる。
【0045】
【数4】

【0046】
距離dについて解くと、
【0047】
【数5】

【0048】
式(3)において、EIRPは各セル・サイト・アンテナに対する既知の定数であり、RSSI値は、移動電話機120が行う測定に基づいてわかり、1km切片ポイントAは、アンテナの高さおよび送信周波数応じた既知の定数である。したがって、式(3)においてわからないのは伝搬経路の傾きBだけである。Bは、環境に依存し、一般に次の範囲にあることがわかっている。
【0049】
【数6】

【0050】
通例では、伝搬経路の傾きは、地形および建物の密度に関して与えられる。通例では、分類は、郊外:B=30、都市:B=35、および繁華街:B=40となる。したがって、アンテナ毎にBの値を推定することによって、移動電話機120のアンテナ102、104、107からの距離d、d、およびdは、それぞれ、次のように計算することができる。
【0051】
【数7】

【0052】
ここで、EIRPは、セルnにおけるアンテナの有効等方放射パワー、Aは移動電話機120とセルnとの間の1km切片ポイント、Bはセルnにおける環境の推定伝搬経路傾きである。
【0053】
距離d、d、およびdを計算した後、図5に示すように、以下の円をプロットすることによって、位置検出エリアを決定する。
アンテナ102を中心とする半径dの円502、
アンテナ104を中心とする半径dの円504、および
アンテナ107を中心とする半径dの円507。
【0054】
円502、504、507の交差エリア510は、地理的サービス提供エリア100内部における移動電話機120の位置を推定する。値B、BおよびBは推定値であるので、得られる距離d、dおよびdは、Bの推定に基づくある程度の誤差成分を有する。計算した距離dは、伝搬経路の傾き以外のセル特性に基づく、別の誤差成分も有する。このようなセル特性の例は、移動電話の各セル・サイト・アンテナに対する相対的高さ、およびアンテナ・パターン・ロールオフ(antenna pattern rolloff)による利得低下がある。ここに記載するアルゴリズムは、これらの誤差成分を考慮に入れていない。図5では、d、dおよびdは、移動電話機120のアンテナ102、104および107の各々からの距離の過大推定値であり、したがって、得られた位置は、エリア510内部としか決めることができない。
【0055】
また、得られた距離d、dおよびdが、移動電話機120のアンテナ102、104および107の各々からの距離の過小推定値である可能性もある。そのような場合を図6に示す。ここでは、推定位置がエリア602内部となる。エリア602は、それぞれ、円616、617および618に対する接線である3本の線606、607および608を引くことによって制限される。これら3本の線606、607および608が三角形の縮小エリアを規定するように、これらを調節する。このような三角形で規定したエリアは、図6にエリア602として示す位置推定エリアとなる。
【0056】
得られた距離d、dおよびdが移動電話機120のアンテナ102、104および107の各々からの距離の正確な推定値である場合、描いた円は1点で交差する。このような場合を図7に示す。ここでは、推定位置を点702として示す。
【0057】
距離の式における唯一の変数は伝搬経路の傾きBであるので、推定値即ちB、BおよびBを変化させ、計算した距離d、dおよびdの誤差成分を減少させることによって、位置推定の精度を向上させることができる。
【0058】
この技法の基礎を図8に示す。アンテナ102、104、および107間の距離を表す線を引く。線L2-7は、アンテナ102および104間の距離を表す。線L4-7は、アンテナ104および107間の距離を表す。線L2-4、L2-7、L4-7の長さはわかっている。何故なら、セル・サイト・アンテナの位置(緯度および経度座標)がわかっているからである。以前と同様、線d、dおよびdは、移動電話機120のアンテナ102、104および107からの算出距離をそれぞれ表す。角度m、n、およびoは、余弦の法則に基づいて、以下の式から距離線d、d、dの関数として得ることができる。
【0059】
【数8】

【0060】
再度図8を参照すると、角度m、n、およびoの和は360゜となるので、
【0061】
【数9】

【0062】
となる。
距離d、dおよびdの計算は、これらの角度の各々が正であり、角度の和が360度のときに最も精度が高くなる結果につながる。d、dおよびdの計算における唯一の変数は、それぞれ、伝搬経路の傾きB、BおよびBであり、これらの値は、一般に、20dB/decおよび45dB/decの間である。したがって、伝搬経路の傾きB、BおよびBを20dB/decおよび45dB/decの間で変化させつつ、式4、5および6を用いて値d、dおよびdを計算する。次いで、得られた距離d、dおよびdを用いて角度m、n、およびoの和を評価する。和が360に最も近くなるd、dおよびdの値、およびその項が全て正である場合に、誤差成分が減少した値がd、dおよびdについて得られる。
【0063】
誤差成分が減少した距離d、d、およびdを求めるとき、移動電話機120の位置検出エリアを決定するには、前述のように該当する円をプロットする。地理的サービス提供エリア100内におけるアンテナ102、104、107の地理的位置(即ち、緯度および経度)はわかっており、一実施形態では、MLM230のメモリ234に、セル・サイト情報236として格納されている。MLM230は、これら既知のセル・サイト位置を用いて、例えば、推定位置検出エリアをマップ上にプロットすることによって、推定位置検出エリアの地理的場所を決定する。この算出した位置検出エリアがゾーン2の場所となる。また、MLM230は、ネットワークの地理的サービス・エリアにおける移動局の位置に対応するRSSの組を与えるように構成したデータベース250を含むこともできる。
【0064】
前述のように、GPS受信機/プロセッサ・ユニット125を、位置検出する移動電話機120内の構成機器として用いることができる。当技術分野では周知のように、GPS受信機/プロセッサは、地球軌道を周回する衛星から信号を受信し、これらの信号を、GPS受信機/プロセッサの位置の緯度および経度座標に変換する。典型的なGPS受信機/プロセッサは、約50フィート以内の精度である。MLM230は、移動電話機120内にあるGPS受信機が提供する情報を用いて、地理的位置推定の精度を高める。
【0065】
GPSに伴う既知の問題には、高精度の位置検出には、視野線が多数の衛星と連通することが必要であること、そして衛星受信機への視野線が遮られると、精度の高い緯度および経度座標が戻ってこないことがある。例えば、通例では、GPS受信機は、建物の内部または植樹エリアに位置する場合、精度の高い座標を報告しない。この制約は、既定の信頼度以内にある最後のGPS座標位置を用いて補償することができる。これを達成するには、計算した平均緯度および経度位置を、緯度および経度誤差と共に、以下のように用いる。
【0066】
図9は、時間間隔(t〜t15)においてGPS受信機/プロセッサ125が計算した緯度および経度座標のグラフを示す。各時間間隔tにおいて、GPS受信機/プロセッサ125は、移動電話機120の現在の座標を計算する。時点tにおいて、緯度座標をLat(tn)で表し、経度座標をLong(tn)で表す。GPS受信機/プロセッサ125が計算した座標Lat(tn)およびLong(tn)は、全体的に、時の経過と共に滑らかに変化する。しかしながら、衛星への視野線が遮られると、例えば、移動電話機120が建物に入ると、計算した座標は正確でなくなる。これを図9の間隔t〜t12において示す。
【0067】
GPS受信機/プロセッサ125は、所定の送り時間枠(sliding time window)の範囲で、緯度および経度座標の平均を計算するように構成されており、時間期間tで終了する枠についての平均緯度および経度を、それぞれ、Lat_Avg(tn)およびLong_Avg(tn)で表す。送り時間枠の長さは、GPS受信機/プロセッサ125内にプログラムされており、例えば、所望の精度および/または個々の用途に応じて変更することができる。この送り時間枠をN個の時間期間として規定すると、tで終了する時間枠に対する平均緯度および経度座標Lat_Avg(tn)およびLong_Avg(tn)は、それぞれ、時間tn−N+1,...,tに関連するN個の経度座標およびN個の緯度座標の平均となる。
【0068】
Lat_Avg(tn)およびLong_A(tn)の値は、連続時間期間において、GPS受信機/プロセッサ125によって連続的に計算することができる。例えば、送り時間枠Nの時間期間を5つの時間期間に設定した場合、時間期間tで終了する時間枠を図9の905で示す。Lat_Avg(t8)およびLong_Avg(t8)の値は、時点tにおいて、時点t,...,tに関連する5つの値の平均として、GPS受信機/プロセッサ125によって計算される。
【0069】
平均座標に加えて、GPS受信機/プロセッサ125は、時間枠中における緯度および経度座標の最大誤差も計算する。時点tにて終了する時間枠に対する経度座標の最大誤差をError_Lat(tn)で表し、時点tにて終了する時間枠に対する緯度の最大誤差をError_Long(tn)で表す。これらの最大誤差を計算するには、以下のように、時間枠中の時間期間毎の瞬時緯度および経度座標を、当該時間枠の平均座標と比較する。
【0070】
【数10】

【0071】
例えば、時点tにて終了する時間枠について最大誤差を計算するには、計算は次のようになる。
【0072】
【数11】

【0073】
このように、瞬時緯度座標Lat(t4)、Lat(t5)、Lat(t6)、Lat(t7)、およびLat(t8)を、Lat_Avg(t8)と比較し、平均緯度からの最大偏差を最大緯度誤差とする。同様に、瞬時経度座標Long(t4)、Long(t5)、Long(t6)、Long(t7)、およびLong(t8)をLong_Avg(t8)と比較し、平均緯度からの最大偏差を最大経度誤差とする。一例示として、図9において時間期間t12にて終了する時間枠916を考える。Lat_Avg(t12)の値を線910で表す。線910からの最大偏差は、点914において表す瞬時経度Lat(t10)である。したがって、時間枠916における最大誤差Error_Lat(t12)が、Lat(t10)914およびLat_Avg(t12)910間の距離912として表される。
【0074】
GPS受信機/プロセッサ125は、次のように、Error_Lat(tn)およびError_Long(tn)の誤差値を用いて、最後の信頼性の高い座標を記憶レジスタに格納する。これらの記憶レジスタは、GPS受信機/プロセッサ内のメモリ位置とすればよい。あるいは、これらの記憶レジスタは、GPS受信機/プロセッサ125がアクセス可能な、別個のメモリ・ユニット内のメモリ位置としてもよい。各時間間隔tにおいて、GSP受信機/プロセッサ125は、最大誤差値Error_Lat(tn)およびError_Long(tn)を、プログラムした誤差閾値Err_Thresh_LatおよびErr_Thresh_Longと比較する。プログラム可能な送り時間枠と同様、これらの閾値も、所望の精度および/または個々の用途に応じて変化させることができる。その際、最大誤差値Error_Lat(tn)およびError_Long(tn)が閾値Err_Thresh_LatおよびErr_Thresh_Long以内にそれぞれある場合、瞬時座標値Lat(tn)およびLong(tn)は容認可能な信頼度の限度内にあると想定できるように、これらの閾値を規定する。各時間間隔tにおいて、緯度および経度双方の最大誤差が閾値以内である場合、瞬時座標値をメモリ・レジスタLat_regおよびLong_regにそれぞれ格納する。緯度および経度のいずれかの最大誤差が閾値以内にない場合、瞬時座標値Lat(tn)およびLong(tn)をメモリ・レジスタLat_regおよびLong_regにそれぞれ格納しない。この技法によって、メモリ・レジスタLat_regおよびLong_regは信頼性の高い緯度および経度座標を確実に収容する。
【0075】
前述の移動電話機120が送る情報に加えて、以下のGPS情報が、エア・インターフェース202を介して、各時間期間t中に移動電話システム200に送られる。
【0076】
【数12】

【0077】
MSC220は、前述のように動作して、ある条件の下でMLM230の位置検出機能を開始する。MLM230のメモリ234に格納されているアルゴリズム238は、図10に関連して以下に説明するように動作することを、プロセッサ232に命令する。したがって、位置検出機能の開始時に、MLM230は、図10のフロー図にしたがって動作し、移動電話機120の位置を算出する。
【0078】
先に論じたように、ゾーン1は、現在移動電話機120にサービスを提供中のセルの地理的カバレッジ・エリアによって規定され、ゾーン2は、図4ないし図8に関連して先に説明したように、MLM230が算出した位置検出エリアである。ゾーン1は、通常ゾーン2よりも大きいエリアを規定する。図10を参照すると、ステップ1004において、MLM230は、現時間枠に対する最大緯度および経度誤差が所定の閾誤差値以内であるか否か判定を行う。以内である場合、瞬時緯度および経度座標Lat(tn)およびLong(tn)が容認可能な精度を有すると見なし、ステップ1012における次の処理にこれらを用いる。ステップ1012において、瞬時GPS座標がゾーン1内にある場所を規定するか否か判定を行う。しない場合、MLM230は、ステップ1010において、中程度の信頼度を有するゾーン2の推定位置を返す。ステップ1012において、瞬時GPS座標が、ゾーン1内部にある場所を規定する場合、ステップ1020において、瞬時GPS座標がゾーン2内部にある場所を規定するか否か判定を行う。以内にある場合、MLM230は、ステップ1024において、高い信頼度を有する推定位置として、瞬時座標を返す。瞬時GPS座標がゾーン2内部にある場所を規定しない場合、MLM230はステップ1018において、中程度の信頼度を有する推定位置として、瞬時座標を返す。
【0079】
ステップ1004において、MLM230が、現時間枠に対する最大緯度および経度誤差値が所定の閾誤差値以内でないと判定した場合、瞬時緯度および経度座標Lat(tn)およびLong(tn)を、容認できる精度ではないとみなし、メモリ・レジスタLat_regおよびLong_regに格納してある緯度値および経度値を、ステップ1006における次の処理に用いる。ステップ1006において、メモリ・レジスタに格納してあるGPS座標が、ゾーン1内部にある場所を規定するか否か判定を行う。しない場合、MLM230は、ステップ1008において、低い信頼度のゾーン2推定位置を返す。メモリ・レジスタに格納してあるGPS座標が、ゾーン1内部にある場所を規定する場合、ステップ1014において、メモリ・レジスタに格納してあるGPS座標が、ゾーン2内部にある場所を規定するか否か判定を行う。規定しない場合、MLM230は、ステップ1016において、メモリ・レジスタの座標を、中程度の信頼度を有する推定位置として返す。メモリ・レジスタに格納してあるGPS座標が、ゾーン2内部にある場所を規定する場合、MLM230は、ステップ1022において、メモリ・レジスタの座標を、高い信頼度を有する推定位置として返す。
【0080】
一旦地理的位置検出エリアを決定したなら、MLM230は、この情報を該当するエンド・ユーザの宛先に導出する。一実施形態では、該当する導出情報240をMLM230のメモリ234に格納する。例えば、移動電話機120からの911発呼のために位置検出機能を開始した場合、MLM230は、位置情報を、該当する公共サービス提供者に導出する。セルラ電話機の番号が、多数の車両を有する会社に属すると、MSCが判定したために位置検出機能を開始した場合、位置情報は該当の多数の車両を有する会社に導出する。更に、位置情報は、位置情報の要求が移動電話機120のユーザから来た場合、移動電話機120自体に伝達することもできる。
【0081】
移動局によって得られ、MAHOにおいて用いられるパワー・レベル、あるいは受信信号強度、パワー・レベル、または通信パラメータといったその他の組を用いると、パワー輪郭(power contour)またはセルの配置に関連するその他の所定のパワー・レベルに基づいて、移動局の位置を検出することができる。例えば、図11に示すように、移動局1102は、図2に示したもののような、1組の受信信号強度(RSS)値を、報告されたRSS値を移動体位置検出モジュール(MLM)1106に配信するように構成したネットワーク1104に送信する。移動体位置検出モジュール1106は、1組のRSS値を受信し、カバレッジ・エリア内にある複数の場所に関連する複数の組のRSS値に基づいて、移動局の位置を特定するように構成されている。図11に示すように、複数の組のRSS値はデータベース1110に格納されている。通例では、MLM1106は基地局と共に用いられ、データベース1110は、個々の基地局がサービスを提供する地理的エリアに関連する、複数の組の特性または所定のRSS値を含む。図1では、セルは隣接し重複しないように示されているが、ネットワークは重複するセルや、セル間に地理的間隙を含む可能性もある。数個のセルと共に用いるデータベースは、同様の所定のRSS値を含むことができる。
【0082】
代表的な例では、ネットワーク・サービス・エリア1200またはセルのようなネットワーク・サービス・エリアの一部を、図12に示すように、サービス格子1202に分割する。サービス格子1202は、それぞれ、座標(XI, YJ)に対応するゾーンZIJの矩形アレイが関連付けられている。I、Jはそれぞれ、行数および列数に関連する整数である。便宜上、図12には16に分割した矩形ゾーンを示すが、サービス・エリアは、これよりも少ない数にでもまたは多い数にでも分割可能である。ゾーンは、1つ以上のセルのサービス・エリアと関連付けることができ、あるいはネットワーク・サービス・エリア全体を1組のゾーンに分割することができる。また、三角形、正方形、六角形、曲線、またはその他の格子のように、矩形以外の格子に基づいて、ゾーンを確立することも可能である。加えて、この分割は、種々の規則的形状および不規則的形状を含むことができる。サービス・エリアの分割は、異なるエリアを有することもできる。
【0083】
移動局推定位置を得るには、所定の組{RSS}の受信した信号強度RSSに基づいて、あるゾーンについて報告されたRSS値が、当該ゾーンに関連する1組のRSS値と一致する場合に、このゾーンを識別することによって行うことができる。一致の判定は、例えば、報告RSS値(またはこれらの値の一部)と所定の格納ゾーンRSS値との間の差の二乗平均の和の計算に基づいて行うことができる。移動局は数個のRSS値を報告するのが通例であるが、ゾーンの照合は、選択したRSS値のみを用いた計算に基づいて行うことができる。ゾーンを選択した後、このゾーンに関連する座標を、移動局位置の推定値として与える。ゾーンの寸法を用いて、位置推定誤差を得ることができる。
【0084】
ネットワーク・サービス・エリアまたはセル・サービス・エリアの別の代表的分割を図13に示す。ゾーン1301〜1312には、図13の例におけるゾーン・コーナに対応する周囲座標(X,Y)が関連付けられている。例えば、ゾーン1301には、受信信号強度値の組(RSS(1,1)}、{RSS(2,1)}、{RSS(1,2)}、および{RSS(2,2)}に対応する周囲座標(X1,Y1)、(X2,Y1)、(X1,Y2)および(X2,Y2)が関連付けられている。移動局の推定位置は、移動局が報告するRSS値(報告されたRSS値、即ちRSS(mobile))に基づいて特定することができる。ゾーン・エリアが、移動局位置推定における所定の位置検出精度に対して容認できないほど大きい場合、移動局の位置検出は、1つ以上のゾーンに関連する所定のRSS値の組{RSS}を用いた補間に基づいて行うことができる。
【0085】
移動体位置検出モジュール1106は、報告された受信信号強度の組{RSS(mobile)}を処理して、この組{RSS(mobile)}をデータベース1110内にある受信信号強度の1つ以上の組{RSS}と関連付けることによって、移動局位置の推定値を得る。移動局位置の推定値は、選択した組の格納RSS値に関連する座標に対応する。
【0086】
一例では、移動局の位置は、前述のように、例えば、3つのRSS値を用いた三角測量法に基づいて推定する。三角測量法の手順を、前述のような追加の誤差補正と共に用いて、初期移動局推定位置(Xest, Yest)を確定する。次に、移動体位置検出モジュール1106は、報告されたRSS値を、格子1200、1300のような格子に関連するRSS値の組、または初期移動局推定位置(Xext, Yest)に近い地理的エリアにおける1つ以上の場所でのRSS値と比較する。通例では、これらのRSS値は、図11のデータベース1110のようなデータベースに格納されている。所定の組{RSS}に基づいて、第2の移動体推定位置を得る。
【0087】
図14を参照すると、移動体位置検出モジュール1400は、格子位置1402,..,1402に関連するRSS値の組を格納するように構成したデータベース1401を含む。プロセッサ1404が、データベース1401と通信状態にあり、移動補助ハンドオフ・データのようなデータ、通例では、移動局が報告するRSS値の組を受け取るように構成されている。プロセッサ1404は、報告されたRSS値に基づいて、データベース1401からの全てのRSS組または選択したRSS組についてスコアを計算する。スコア値は、高い値が、選択した位置に対応しないRSS値と関連付けられ、一方低いスコアは、報告されたRSS値が選択された位置の値と同様であることを示すように構成することができ、あるいはスコア値はそれ以外の構成も可能である。特定的な一例では、好ましいスコア値に関連する4つの格子位置を選択し、メモリ1406に格納して、これらの格子値を補間器410に通知し、補間器410は出力1412に補間位置値を与える。通例では、補間およびスコアの計算は、マイクロプロセッサ、ワークステーション、埋め込みプロセッサ、または特殊目的処理ハードウエアおよびソフトウエアによって行い、プロセッサ1404および補間器1410を同じハードウエア内に設けることができるようにする。
【0088】
ある例では、格納してあるRSS値の組に基づいて第1の移動体位置推定を行い、三角測量法に基づく推定は用いない。三角測量法に基づく推定は、RSS値と共に用いられる。あるいは、移動局に付属するGPSシステムを用いて、第1移動体推定位置(Xest, Yest)を確定し、格納してあるRSS値の組を用いて、第2の移動体推定位置を求める。
【0089】
別の例では、移動体位置推定は、RSS値の組、GPS、三角測量法、または第1推定値に基づいて第2推定値を求めるために用いられるその他の方法に基づいて行う。先に注記したように、組{RSS}は、2つ以上のパワー・レベルを含むことができ、通例では、6つ以上のRSS値を含み、移動体位置の推定値は、1つ以上のRSS値に基づくことができるが、RSS値の一部は用いられない。
【0090】
報告されたRSS値を、データベースに格納してあるRSS値の組と比較する際、例えば、報告RSS値と1カ所以上の地理的位置に関連する格納RSS値との間の差の二乗和の評価に基づいて行うことができる。通例では、最小二乗和または比較的小さい二乗の和に関連する1か所以上の地理的位置(X,Y)を、移動局推定位置として選択する。1カ所よりも多い位置を選択した場合、三角測量法に基づく方法のような追加の方法を用いて、多数の推定位置から選択することができる。あるいは、GPSに基づく位置検出を用いて、同様の移動局位置を選択することができる。多数の推定位置から1つの推定値を抽出できないことはあり得ないが、1カ所よりも多い移動局推定位置を、緊急応答器(emergency responder)またはその他の受信側に報告することができる。
【0091】
ある例によれば、移動局の位置は、例えば、受信信号強度の測定値または計算した受信信号強度によって得られた、1つ以上の連続する受信信号強度(RSS)輪郭に基づいて、移動ネットワーク位置検出モジュールによって確定する。図15を参照すると、ワイヤレス通信システム1500は、携帯用ディジタル・アシスタント、またはエア・インターフェース1503を通じて移動体交換局(MSC)1504と通信するその他の移動デバイスのような移動局1502を含む。MSC1504は、移動ネットワーク位置検出モジュール(MLM)1506と通信しており、モジュール1506は、無線基地局に関連する受信信号強度(RSS)輪郭に基づいて、移動局の位置を推定するように構成されている。輪郭は、それぞれの無線基地局に対応する値RBS(1)...RBS(N)として、データベース1508に格納することができ、ここで、Nは無線基地局の数である。
【0092】
図16は、代表的なセル1602、1604、1606、およびそれぞれに付属する無線基地局(RBS)1610、1612、1614を示す。図示する受信信号強度(RSS)の輪郭1620〜1623および1630〜1633は、例えば、セル1602、1604と関連する。一般に、その他のRSS値(即ち、追加の無線基地局)と関連する追加の輪郭も用いるが、これらの輪郭は図16には示していない。輪郭1620〜1623および1630〜1633と関連する位置は、それぞれの無線基地局から受信したパワー・レベルがほぼ等しい。一例では、移動基地局は、セル1602(RBS1610)を通じて通信しており、輪郭1623に関連するRBS1610からの受信信号強度を報告する。移動体位置検出モジュールは、移動局の可能な位置として、輪郭1623に関連する地理的位置を選択する。移動局1604が1組のRSS値を報告したので、追加の無線基地局に関連する追加のパワー輪郭を用いて、移動局の位置を検出することができる。例えば、移動局は、無線基地局1612に関連するRSS値を報告する。一例として、このRSS値を輪郭1630と関連付けることができる場合、移動局の位置推定を改良することができ、推定した位置を領域1650、1652と関連付ける。この手順は、追加のRSS値毎に繰り返すことができ、推定した移動局の位置は、特定した輪郭に基づいて報告することができる。
【0093】
輪郭の間隔は、容認可能な空間解像度に基づいて設定することができるので、1つ以上の輪郭を関連するRSS報告値と関連付けることによって、移動体推定位置は所定の空間解像度を有することができる。あるいは、補間またはその他の方法を用いて、空間分解能を高め、輪郭同士の間に移動体の位置を確定することもできる。
【0094】
受信信号強度輪郭に基づく移動局推定位置は、三角測量法に基づく方法、GPSに基づく方法、またはRSSパターンに基づく方法を用いると、改善または検証することができる。通例では、1組のRSS値は、6つ以上の受信信号強度値を含むが、これらの値の1つ以上のみを用いれば、移動体の位置を確定することができる。ある例では、第1RSS値に基づく輪郭の識別を用いて、位置の範囲を確定する。加えて、受信音声パワー・レベルRSSを移動局が報告し、この方法またはその他の方法における移動局推定位置の準備に用いることができる。
【0095】
報告されたRSS値と測定または計算したRSS値の所定の組との比較に伴う誤差スコアの計算を用いると、移動局の位置を推定することができるが、このような推定値は、信号強度パターンに基づいて用意することもできる。例えば、報告RSS値を、所定のRSS値の比率と比較することができる。あるいは、所定のRSS値および1組の報告RSS値を相関付け、報告RSS値に類似する1組の所定のRSS値を特定することができ、関連する位置を移動局推定位置として与えることができる。その他のパターン認識方法も用いることができる。
【0096】
図17は、移動局位置を報告するように構成されたワイヤレス・ネットワークによって提供する緊急サービスを示す。セル・ホーン、PDA、あるいはその他の移動または携帯用デバイス、音声、データ、または音声/データ・デバイスのような移動局1702が、1つ以上の受信信号強度値を、エア・インターフェース1704を用いて、移動交換局(MSC)1706に報告する。移動交換局1704は、報告されたRSS値を移動体測地局(MPC)1708に配信する。移動体測地局1708は、位置判定プロセッサ(PDP)1710と通信している。移動体測地局1708は、公共安全応答ポイント(PSAP:public-safety answering point)1712とも通信しており、公共安全応答ポイント1712は、緊急サービス(911−選択)ルータ1714と通信するように構成されている。MSC1706は、911−選択ルータ1714とも通信している。
【0097】
動作において、移動局1706が緊急サービス(911)要求を開始すると、これがエア・インターフェース1704を介して、MSC1706に伝達される。MSC1706は、メッセージをMPC1708に送り、911に発呼されたこと、およびMSC1706が移動体位置検出サービスのために構成されていることを示す。MPC1708は、ルーティング命令をMSC1706に返送するので、呼は911選択ルータを経由してPSAP1712に導出される。MPC1708は、MSC1706にRSS値について問い合わせ、移動局がRSS値を報告することを要求する。MSC1706は、報告されたRSS値をMPC1708に転送し、PDP1710は移動体推定位置をMPC1708に配信する。PSAP1712は、MPC1708に、MPC1708が伝達した移動体位置について問い合わせる。緊急サービス要求が継続すると、移動体位置に対する追加の要求に応ずることができるので、要求元の移動を追跡することができる。これらの追加の推定位置に基づいて、移動方向のようなその他の情報を得ることができる。
【0098】
911サービスのような緊急サービス番号に基づいて緊急サービスを提供するために、ワイヤレス・ネットワークにおいてセル・ホーンの位置を判定することは重要であるが、移動体推定位置は他の用途にも含めることができ、移動ネットワークの他のユーザに関する移動体位置の特定、あるいは食事、買い物、宿泊、娯楽、輸送、またはその他のサービスのようなサービスに関するユーザの居所の判定等がある。このような位置は、GPSのような専用の測地システムを参照することなく確定することができ、GPSハードウエアは不要である。GPS信号は比較的弱いので、MAHOパラメータに基づく位置判定は、屋内、あるいはGPS信号の受信が困難または不可能な閉鎖エリアであっても、位置の判定を可能にする。しかしながら、GPSを、MAHOに基づく方法と共に用いることも可能である。
【0099】
位置の判定は、移動補助ハンドオフを含む他のネットワークにも同様に実現することができる。例えば、いわゆるBLUETOOTH技術、即ち、IEEE802.11に基づくワイヤレス・ネットワークは、移動デバイスが受信信号強度を報告するように構成することができる。加えて、TDMA、CDMA、FDMA、またはその他のプロトコルを用いたワイヤレス・ネットワークも、移動補助位置検出サービスを実現するように構成することができる。このようなネットワークは、制御チャネル、音声チャネル、データ・チャネル、またはその他の通信チャネルを含むことができ、報告されたパワー・レベルは、これらのチャネルのいずれでも、移動体の位置検出に用いることができる。
【0100】
以上、選択した通信規格を参照しながら、移動局位置検出方法および装置について説明したが、他の例では、追加のシステムが用いられる。例えば、汎ヨーロッパ移動通信システム(GSM)、IS−95、IS−54、汎用パケット無線サービス(GPRS:General Packet Radio Service)、ディジタル・コードレス・ヨーロッパ電気通信(DECT)サービス、またはセルラ・ディジタル・パケット・データ(CDPD)サービス、GERAN(GSM/EDGE)サービス、あるいはその組み合わせに基づくシステムを設けることができる。本位置検出方法および装置は、広域音声カバレッジ、局在的音声カバレッジ、広域データ・サービス、局在的データ・サービス、またはその組み合わせを提供するシステムのために構成することができる。
【0101】
基地局に基づく音声ネットワークにおけるハンドオフを参照しながら、ハンドオフの代表例について先に説明した。一般に、移動即ち携帯用デバイスとネットワークとのあいだの接続は、いわゆる取付ポイント(points of attachment)において行われる。セルラ電話ネットワークでは、基地局は、一般に、取付ポイントとして機能し、一方ワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)では、いわゆるアクセス・ポイントが取付ポイントとして機能する。ある例では、移動デバイスは、基地局またはアクセス・ポイントでネットワークに接続することができる。受信信号強度(RSS)値は、ネットワークの取付ポイントと関連付けることができるが、経路損失、シンボル・エラー・レート、ビット・エラー・レート、信号対干渉比、キャリア対干渉比、ブロック・エラー・レートのような別のパラメータ、またはその他のパラメータを用いることができる。便宜上、このようなパラメータを取付インジケータと呼ぶ。
【0102】
ワイヤレス・ネットワークにおいて、移動局が周期的にパワー・レベルを報告する場合、移動局の位置は、音声通信またはデータ通信が進行している間に、通信を中断させることなく、更新または追跡することができる。したがって、移動局の移動を追跡することができ、これは緊急サービスを供給するにあたって、特に重要である。あるTDMAシステムでは、このような受信パワー・レベルは、毎秒1回程の頻度で報告されている。
【0103】
信号強度輪郭および/または格子は、いくつかの方法で設けることができる。精巧な無線周波数(RF)設計ソフトウエアが使用可能であるので、RSSまたはその他の特性取付インジケータ値は、空間格子が50m未満の寸法を有する位置の関数として計算することができる。このような計算には、多数のRF係数を用いることができ、アンテナの高さ、アンテナの形式、下方傾斜(down-tilt)、ビーム幅、有効放射パワー、および地面クラッタが含まれる。このような計算は、表面の地形およびその他の要因を含む、地理的要因の考慮を含むことができる。このように計算したRSS値は、現場での測定によって確認することができ、予測値における不完全性は、現場での測定値に基づいて補正または補償することができる。あるいは、RSS値は、例えば、地理的サービス・エリアで車両を運転し、RSS値を記録することによって得られる一連の測定値に基づくことができる。別の代替案では、RF設計ソフトウエアを用いていくつかの値を予測する一方、他の値を測定する。加えて、RSS値を、実際のGPS値と共に報告すると、輪郭または格子値を、ネットワークの使用中に、これらの測定値に基づいて改訂することができ、専用のハードウエアや追加の保守要員を使わずに済む。
【0104】
前述の方法および装置は、ネットワークへの1カ所以上の取付ポイントに関連する受信信号強度を参照して説明した。別の例では、エラー・レート、伝搬遅延、またはその他のパラメータを取付ポイントと関連付け、位置を推定するために用いることができる。加えて、推定値は、通例、3カ所以上の取付ポイントに関連する信号強度との比較に基づくが、ある例では、2カ所の取付ポイントに関連する信号強度を用いることもできる。ある例では、取付ポイントに関連する取付インジケータ値を計算または測定し、データベースに格納する。別の例では、例えば、伝搬特性または格納した値に基づく補間に基づく計算によって、適切な取付インジケータを必要に応じて確定する。地理的位置に関連する取付インジケータ値は、特性取付インジケータ値と呼ぶこともでき、このような値を格納、計算、または測定することができる。
【0105】
移動局の位置検出は、通常のネットワーク動作の間に報告されるRSS値に基づいて行うことができるので、このような位置検出方法は多くの場合信頼性が高い。加えて、移動局位置推定を妨げるいずれのネットワーク障害も、日常的なネットワーク使用における他のネットワーク・エラーと関連があるので、このような障害は素早く検出されることが多い。RSSレベルに基づく移動体位置判定の別の利点は、移動局がネットワーク加入者でなくてもよいことである。何故なら、RSSレベルの報告は、非加入者によって行うことができるからである。したがって、911番通報のような緊急サービスは、非加入者や、初期化されていない移動局、または関連する電話番号を有さない移動局にも利用可能である。
【0106】
ネットワークまたはネットワークの一部に関連する特性値は、メモリに格納することができる。ここで用いる場合、メモリは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、ハード・ディスク、フロッピ・ディスク、磁気テープ、およびその他の記憶媒体を含む。
【0107】
以上、代表的な移動デバイスおよびワイヤレス・ネットワークを参照して、数々の例について説明した。これらの例は例示であり、これらの例の構成および詳細は変更可能である。権利を主張するのは、添付の特許請求の範囲に含まれることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局位置検出プロセッサであって、
前記移動局の少なくとも2カ所の取付ポイントに関連する取付インジケータを受信するように構成された入力と、
前記少なくとも2カ所の取付ポイントに関連する所定の取付インジケータの組を格納するように構成されたメモリと、
前記受信した取付インジケータと、前記少なくとも2つの所定の取付インジケータの少なくとも1組との比較に基づいて、前記移動局の位置の推定値を求めるように構成された推定部と、
を備えた移動局位置検出プロセッサ。
【請求項2】
請求項1記載の移動局位置検出プロセッサにおいて、前記推定部は、前記受信した取付インジケータ値と、前記少なくとも2カ所の取付ポイントに関連する取付インジケータ値の組との比較に基づいて、前記移動局の位置の推定値を求めるように構成されている、移動局位置検出プロセッサ。
【請求項3】
請求項2記載の移動局位置検出プロセッサにおいて、前記受信した取付インジケータ値を前記移動局が報告する、移動局位置検出プロセッサ。
【請求項4】
請求項3記載の移動局位置検出プロセッサにおいて、前記取付インジケータ値は、受信信号強度値である、移動局位置検出プロセッサ。
【請求項5】
請求項1記載の移動局位置検出プロセッサにおいて、前記取付インジケータ値は、前記移動局が報告した受信信号強度値である、移動局位置検出プロセッサ。
【請求項6】
移動体位置検出モジュールであって、
少なくとも2つの報告された受信信号強度値を、ワイヤレス・ネットワークにおける少なくとも2カ所の地理的位置に関連する受信信号強度値と比較するように構成されたプロセッサと、
前記比較に基づく移動体推定位置を送り出すように構成された出力と、
を備える移動体位置検出モジュール。
【請求項7】
請求項6記載の移動体位置検出モジュールにおいて、前記プロセッサは、前記報告された受信信号強度値と前記所定の受信信号強度との比較に関連するスコアを判定するように構成されている、移動体位置検出モジュール。
【請求項8】
請求項6記載の移動体位置検出モジュールにおいて、前記報告信号強度値および受信信号強度値が、移動体補助ハンドオフに関係する、移動体位置検出モジュール。
【請求項9】
移動局の位置を推定する位置検出ユニットであって、
前記移動局に関連する取付インジケータ値を受信するように構成された入力と、
ネットワーク取付ポイントに関連する所定の取付インジケータ輪郭に基づいて、移動局の推定位置を求めるように構成されたプロセッサと、
を備えている位置検出ユニット。
【請求項10】
請求項9記載の位置検出ユニットにおいて、
前記取付インジケータ値は、移動局が報告する受信信号強度値であり、前記取付インジケータ輪郭は、受信信号強度の輪郭である、位置検出ユニット。
【請求項11】
移動局の位置検出方法であって、
前記移動局に関連する1組の受信信号強度を得るステップと、
前記受信信号強度と所定の信号強度との比較に基づいて、前記移動局の位置を判定するステップと、
を備えた方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、更に、
前記受信信号強度と前記所定の信号強度とに基づいてエラー・スコアを判定するステップを含み、
選択したエラー・スコアに関連する位置を選択することによって、前記移動局の位置を判定する、方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法であって、更に、前記所定の信号強度を格納するステップを含む、方法。
【請求項14】
地理的サービス・エリアにおいて移動局を位置検出する方法であって、
前記移動局についての一連の取付ポイントに関連する取付インジケータ値を得るステップと、
前記移動局の取付インジケータ値を、前記一連の取付ポイントに関連する所定の取付インジケータ値と比較し、移動局の推定位置を得るステップと、
を備えた方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、更に、前記推定した移動局推定位置を報告するステップを含む、方法。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、前記移動局についての前記取付インジケータ値は、前記移動局が報告する、方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、前記取付インジケータ値は、対応する無線基地局に関連する受信信号強度値である、方法。
【請求項18】
請求項14記載の方法において、前記取付インジケータ値は、対応する無線基地局に関連する受信信号強度値である、方法。
【請求項19】
請求項14記載の方法において、前記所定の取付インジケータ値に関連するスコアを判定することによって、前記移動局取付インジケータ値および前記所定の取付インジケータ値を比較し、前記推定した移動局位置を、前記関連するスコアに基づいて選択する、方法。
【請求項20】
移動局の位置検出方法であって、
全地球測地システムに基づいて、緯度および経度推定位置の少なくとも1つを得るステップと、
移動局の取付インジケータ値と、前記緯度および経度推定値に関連する領域における所定の取付インジケータ値との比較に基づいて、移動局の位置の推定値を求めるステップと、
を備えた方法。
【請求項21】
移動局の位置を推定する方法であって、
複数のアンテナから、移動局が受信した信号に伴う信号強度値を受信するステップと、
前記移動局の第1位置検出エリアを、サービス提供セル・サイトの地理的カバレッジ・エリアとして算出するステップと、
前記受信信号強度値と、前記カバレッジ・エリア内にある少なくとも1つの位置に関連する所定の信号強度値との比較に基づいて、前記移動局の第2位置検出エリアを算出するステップと、
を備えた方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法であって、更に、少なくとも1つの伝搬特性に基づいて、特性取付インジケータ値を計算するステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記少なくとも1つの伝搬特性を、送信パワー、伝搬経路の傾き、およびアンテナ・パターン・ロールオフから成る群から選択する、方法。
【請求項24】
移動局について推定位置を提供するように構成したネットワークであって、
前記ネットワークの特性取付インジケータ値と、前記移動局に関連する、報告された取付インジケータ値とに基づいて、前記推定位置を求めるように構成されたプロセッサと、
前記推定位置を送り出すように構成された出力と、
を備えているネットワーク。
【請求項25】
請求項24記載のネットワークであって、更に、特性取付インジケータ値を含むデータベースを備えている、ネットワーク。
【請求項26】
請求項24記載のネットワークにおいて、前記プロセッサは、少なくとも1つの伝搬特性に基づいて、特性取付インジケータ値を判定するように構成されている、ネットワーク。
【請求項27】
移動局を用いて公共安全応答ポイント(PSAP)からのサービスを要求する方法であって、
前記移動局から前記PSAPにメッセージを配信するステップと、
移動局の取付インジケータ値と特性取付インジケータ値との比較に基づいて、移動局の推定位置を前記PSAPに提供するステップと、
を備えた方法。
【請求項28】
ネットワークにおいて非加入移動局について推定位置を与える方法であって、
前記移動局から、一連の取付インジケータ値を受信するステップと、
前記ネットワークに関連する特性取付インジケータ値に基づいて、移動局の位置を推定するステップと、
を備えた方法。
【請求項29】
ワイヤレス・ネットワークの少なくとも一部について、特性取付インジケータ値を判定する方法であって、
前記特性取付インジケータ値を測定するステップと、
前記特性取付インジケータ値をデータベースに格納するステップと、
を備えた方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法であって、更に、少なくとも1つの全地球測地システム座標を、測定した特性取付インジケータ値と関連付けるステップを含む、方法。
【請求項31】
ネットワーク特性取付インジケータ値のデータベースを改訂する方法であって、
移動局が報告した取付インジケータ値と前記特性取付インジケータ値との比較に基づいて、移動局の位置を推定するステップと、
前記移動局から、関連する全地球測地システム(GPS)の推定位置を得るステップと、
前記移動局推定位置と前記GPS推定位置との比較に基づいて、少なくとも1つの特性取付インジケータ値を改訂するステップと、
を備えた方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−160158(P2010−160158A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−43982(P2010−43982)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2002−580653(P2002−580653)の分割
【原出願日】平成14年4月3日(2002.4.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.GSM
【出願人】(507193652)エイティアンドティ・モビリティ・ツー・エルエルシー (5)
【氏名又は名称原語表記】AT&T Mobility II LLC
【Fターム(参考)】