説明

移動平均値算出装置および移動平均値算出方法

【課題】入力値にノイズが含まれる場合にも、入力値の変化に対応した適切な平均値の出力を行うことができる移動平均値算出装置およびその移動平均値算出方法を提供する。
【解決手段】逐次入力される複数の入力値(T1〜Tn)の平均値を最新の入力値(Tn)から遡ってm個の入力値(但し、m≦n)を用いて、逐次算出する移動平均値算出部6は、最新の入力値(Tn)と過去の入力値(T1〜Tn-1のいずれか)との差(|ΔTn|)を算出し、該差(|ΔTn|)と、入力値に含まれ得るノイズの大きさ(N)から定められる閾値(Th)との大小関係により、前記平均値を算出する際に用いる入力値の個数(M)を設定する個数設定手段62を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逐次入力される入力値の平均値を最新の入力値を用いて逐次算出する移動平均値算出装置および移動平均値算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動平均値算出装置としては、特許文献1に示すように、時間平均を算出する区間sを、s(=β/α)として時間平均値を逐次算出するものが知られている。ここで、βは、時間的に変化する変化量をデジタル化する際の最小分解能であり、αは、時間平均値のしきい値である。
【0003】
かかる移動平均値算出装置によれば、例えば、温度検出値のデジタル変換値そのものではなく、その移動平均値に基づいて温度の変化率を求めるので、該変化率の落ち込みは生じ難くなり、また落ち込みが生じたとしてもその程度が小さくなる。そのため、変化率のデジタル的なばらつきの程度が小さくなり、変化率がしきい値αを超えているか否かの判定精度が向上する。
【0004】
しかし、従来の移動平均値算出装置では、例えば、加熱炉のように急激な温度上昇・下降が起きた後に安定した状態が続くような測定環境では、急激な温度変動に追随できず、オーバーシュートしたかどうかの検知が困難であった。
【0005】
これに対して、特許文献2に示す移動平均値算出装置では、圧力計における急激な圧力変化に対して、蓄積した検出値の平均化を行わず、検出値をそのまま出力する。この移動平均値算出装置によれば、急激な圧力変化が生じた場合にも、検出値がそのまま出力されるため、その変化に出力を追従させることができる。
【特許文献1】特開2000−124806号公報
【特許文献2】特開平11−118651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の移動平均値算出装置では、検出値の変動が、センサ故障や劣化に起因するノイズや一般的に生じる電気ノイズ等(以下、ノイズという)によるものである場合にも、これがそのまま出力されてしまうという問題がある。
【0007】
これは、検出値を蓄積してその平均値を出力することにより、センサの出力がノイズによって急変することを回避して出力の安定化を図るという、移動平均を用いる本来の目的に反することとなる。
【0008】
上記の事情に鑑みて、本発明は、入力値にノイズが含まれる場合にも、入力値の変化に対応した適切な平均値の出力を行うことができる移動平均値算出装置および移動平均値算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の移動平均値算出装置は、逐次入力される入力値の平均値を最新の入力値を用いて逐次算出する移動平均値算出装置であって、前記最新の入力値と過去の入力値との差を算出し、該差と所定の閾値との大小関係により、前記平均値を算出する際に用いる入力値の個数を設定する個数設定手段を備えることを特徴とする。
【0010】
第1発明の移動平均値算出装置によれば、最新の入力値と過去の入力値との差に基づいて移動平均値を算出するために用いる個数を設定する。そのため、最新の入力値の変化が大きい場合には、例えば、入力値の個数を減少させて、この変化に平均値の出力を追従させ易くすることができる。一方、最新の入力値の変化が小さい場合には、例えば、入力値の個数を増加させて、ノイズの影響を低減させることにより安定した平均値の出力を行うことができる。
【0011】
ここで、移動平均値を算出するために用いる個数は、前記差とノイズの大きさから定められる閾値との大小関係により設定される。そのため、例えば、閾値をノイズの大きさよりも大きくしておくことで、その閾値を超える入力値の変化にのみ平均値の出力を追従させ易くすることが可能となる。これにより、ノイズの影響を確実に低減して、入力値の変化に対応した適切な平均値の出力を行うことができる。
【0012】
また、閾値は上述したノイズの大きさに基づいて定めるもののほか、SNの比に基づき定めるもの、あるいは分解能/精度/再現性を考慮して定めるものなどが考えられる。いずれにせよ、ノイズの影響を低減して、入力値の変化に対応した適切な平均値の出力を行えるような値を閾値として設定すればよい。
【0013】
なお、差を算出する際に用いる過去の入力値は、最新の入力値の直前(1周期前)の入力値でもよいが、該直前の入力値以外の値であってもよい。例えば、直前の入力値の更に直前の入力値(最新の入力値の2周期前に入力された入力値)や更にその直前の入力値(最新の入力値の3周期前に入力された入力値)を用いてもよい。これにより、最新の入力値の直前(1周期前)の入力値がノイズにより変化している場合にも、一定の間隔を空けることによりその影響を相対的に低減することができる。
【0014】
第2発明の移動平均値算出装置は、第1発明の移動平均値算出装置において、前記個数設定手段は、前記所定の閾値である第1閾値に対して、前記差が該第1閾値より大きい場合には、前記入力値の個数を第1個数に設定し、該第1閾値以下である場合には、該個数を第1個数よりも多い第2個数に設定することを特徴とする。
【0015】
第2発明の移動平均値算出装置によれば、第1閾値を、例えばノイズの大きさよりも大きい値に設定しておくことで、前記差が、第1閾値を超える入力値の変化である場合に、移動平均値を算出するために用いる個数が少ない第1個数で平均値を算出する。そのため、ノイズ成分に平均値の出力を追従させることなく、入力値の変化に平均値の出力を追従させることができる。一方、前記差が、第1閾値を以下の入力値の変化である場合に、該入力値の変化はノイズ成分に起因するものが含まれ得る。この場合、移動平均値を算出するために用いる個数が第1個数に比して多い第2個数で平均値を算出することにより、ノイズの影響を低減させることにより安定した平均値の出力を行うことができる。これにより、入力値にノイズが含まれる場合にも、入力値の変化に対応した適切な平均値の出力を行うことができる。
【0016】
第3発明の移動平均値算出装置は、第2発明の移動平均値算出装置において、前記個数設定手段は、前記第1閾値よりも大きな値に設定された第2閾値に対して、前記差が該第2閾値より大きい場合には、前記第1個数を1とすることを特徴とする。
【0017】
第3発明の移動平均値算出装置によれば、第1閾値よりも大きい第2閾値を設定し、前記差が、第2閾値を超える入力値の変化である場合に、移動平均値を算出するために用いる個数を1として、入力値をそのまま出力する。これにより、特に入力値の変化が著しい場合に、ノイズ成分に出力が追従することを回避しつつ、入力値の変化に出力を確実に追従させることができる。
【0018】
第4発明の移動平均値算出装置は、第1〜第3発明のいずれかの移動平均値算出装置において、前記差は、前記最新の入力値と過去の入力値の平均値との差であることを特徴とする。
【0019】
第4発明の移動平均値算出装置によれば、差を算出する際に用いる過去の入力値として過去の入力値の平均値を用いることで、ノイズにより個々変化し得る過去の入力値に依らず、差を算出することができる。そのため、ノイズの影響を低減して、入力値の変化を確実に捉え、これに対応した適切な平均値の出力を行うことができる。
【0020】
第5発明の蛍光温度センサは、蛍光材料に投光する発光素子と、前記蛍光材料が発する蛍光を受光する受光素子と、前記受光素子の出力信号から温度検出値を生成する信号処理部とを含む蛍光温度センサにおいて、前記温度検出値を入力としてその移動平均値を出力する移動平均値算出部が請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の移動平均値算出装置により構成されてなることを特徴とする。
【0021】
第5発明によれば、蛍光温度センサは、一定の処理周期で取得された温度検出値に対して、移動平均値を算出して出力するため、第1〜第4発明の移動平均値算出装置を適用する対象として好適である。
【0022】
第6発明の移動平均値算出方法は、逐次入力される入力値の平均値を最新の入力値を用いて逐次算出する移動平均値算出方法であって、前記最新の入力値と過去の入力値との差を算出し、該差と所定の閾値との大小関係により、前記平均値を算出する際に用いる入力値の個数を設定する個数設定処理と、前記個数設定処理により設定された個数の入力値を用いて、これらの平均値を算出する平均値算出処理とを逐次実行することを特徴とする。
【0023】
第6発明の移動平均値算出方法によれば、最新の入力値と過去の入力値との差に基づいて移動平均値を算出するために用いる個数を設定し、設定した個数の入力値を用いて平均値を逐次算出する。そのため、最新の入力値の変化が大きい場合には、入力値の個数を減少させて、この変化に平均値の出力を追従させ易くすることや、最新の入力値の変化が小さい場合には、入力値の個数を増加させて、ノイズの影響を低減させることにより安定した出力を行うことができる。
【0024】
さらに、移動平均値を算出するために用いる個数は、前記差とノイズの大きさから定められる閾値との大小関係により設定されるため、閾値を例えばノイズの大きさよりも大きくしておくことで、その閾値を超える入力値の変化にのみ平均値の出力を追従させ易くることが可能となる。なお、閾値について種々の設定方法が考えられることは前述したとおりである。
【0025】
このように、入力値にノイズが含まれる場合にも、入力値の変化に対応した適切な平均値を算出して出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の一実施形態として、蛍光温度センサの移動平均値算出部に移動平均値算出装置を用いた例について、図1〜図3を参照して説明する。
【0027】
まず、図1を参照して、本実施形態の蛍光温度センサの全体的な構成について説明する。蛍光温度センサは、温度によって異なる蛍光特性を示す蛍光材料1と、蛍光材料1に投光するLED2と、LED2を駆動する電気信号を出力する駆動部3と、蛍光材料1が発する蛍光を受光するフォトダイオード4と、フォトダイオード4からの出力信号から対応する温度検出値を算出する信号処理部5と、信号処理部5に接続されて温度検出値の移動平均値を算出し、温度を表すデータとして出力する移動平均値算出部6(本発明の移動平均値算出装置に相当する)とを備える。
【0028】
また、蛍光温度センサは、蛍光材料1への投光および蛍光材料1の蛍光の受光を行う光ファイバ7と備える。光ファイバ7は他端側が分岐して、LED2からの光を蛍光材料1に伝達する投光用光ファイバ7aと、蛍光材料1の蛍光をフォトダイオード4に伝達する受光用光ファイバ7bとなっている。
【0029】
蛍光材料1は、光ファイバ7の一端部を覆うように設けられた温度計測部1aの中に、光ファイバ7のコア部に対向するように配置される。
【0030】
LED2は、LEDモジュール2a内に配置された、例えば青色系の波長を発光色とする発光ダイオードである。LEDモジュール2aは、投光用光ファイバ7aが接続されるコネクタ部2bを有し、コネクタ部2bを介して接続された投光用光ファイバ7aがLED2の発光部と対向している。
【0031】
駆動部3は、LED2の発光に必要な駆動電流の大きさおよび発光時間を規定したパルス電流を一定の処理周期でLED2に印加する制御回路を備える。これにより、駆動部3は、例えば、蛍光材料1に対応して、一回の計測におけるLED2の発光時間を1ms〜500msの間のいずれかの時間とする所定の大きさのパルス電流をLED2に印加する。
【0032】
フォトダイオード4は、フォトダイオードモジュール4a内に配置されて、照射された光の光量(輝度)を測定する。フォトダイオードモジュール4aは、受光用光ファイバ7bに接続されるコネクタ部4bを有し、コネクタ部4bを介して接続された受光用光ファイバ7bがフォトダイオード4の受光部と対向している。
【0033】
信号処理部5は、前記処理周期(LED2の投光処理周期に対応した処理周期)で、フォトダイオード4によって測定された蛍光材料1の蛍光の減衰特性、特に蛍光緩和時間を計測する。具体的には、信号処理部5は、これがあらかじめ備える蛍光緩和時間と蛍光材料1との関係式(データテーブルやマップ等を含む)から、蛍光材料1が存在する温度測定環境の温度を算出して出力する。
【0034】
移動平均値算出部6は、記憶保持手段61と、個数設定手段62と、平均値算出手段63とを備え、信号処理部5から逐次入力される温度検出値の平均値を前記処理周期で逐次算出して出力する。
【0035】
記憶保持手段61は、図示しない内部メモリ等により構成され、信号処理部5から逐次入力された温度検出値を最新のものから一定の個数だけ記憶保持する。
【0036】
個数設定手段62は、記憶保持手段61に記憶保持された温度検出値を読出し、最新の温度検出値と過去の温度検出値との差を算出し、該差と予め設定された閾値との大小関係により、平均値を算出する際に用いる温度検出値の個数を設定する。ここで、閾値は、温度検出値に含まれ得るノイズの大きさから定められる(図2のSTEP21および図3のSTEP22参照)。
【0037】
平均値算出手段63は、最新の温度検出値を含めて、個数設定手段62により設定された個数の温度検出値を用いて、これらの平均値を算出する処理を逐次実行する。
【0038】
なお、本実施形態において、各処理部3,5,6は、マイクロコンピュータ等により構成されたコントローラ10に備えられてなる。コントローラ10を構成する各処理部3,5,6は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアにより構成され、これらの各処理部3,5,6が共通のハードウェアによって構成されていてもよく、これらの各処理部3,5,6の一部又は全部が異なるハードウェアによって構成されていてもよい。
【0039】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、移動平均値算出部6により移動平均値を算出する処理について説明する。
【0040】
まず、移動平均値算出部6は、前記処理周期毎に信号処理部5から出力される最新の温度検出値(Tn)を逐次取得する(STEP10)。ここで、温度検出値(T)の添え字n(n:自然数)は、信号処理部5から取得した温度検出値の順序を表し、nが小さいほど処理周期が過去のものを表す。例えば、1処理周期前の温度検出値は、Tn-1となる。
【0041】
そして、移動平均値算出部6は、取得した温度検出値(Tn)を新たに記憶保持手段61に記憶保持する(STEP11)。
【0042】
次いで、移動平均値算出部6の個数設定手段62は、記憶保持手段61に記憶保持されている温度検出値(T1〜Tn)を読出し、最新の温度検出値(Tn)とその直前(1処理周期前)の温度検出値(Tn-1)との差ΔTn=(Tn)−(Tn-1)の絶対値(|ΔTn|)を算出する(STEP12)。
【0043】
次に、個数設定手段62は、差の絶対値(|ΔTn|)が、第1閾値(Th1)より大きいか否かを判定する(STEP21)。ここで、第1閾値(Th1)は、温度検出値に含まれる可能性のあるノイズ(N)の大きさよりも大きな値に設定されている。このように、第1閾値(Th1)を設定することにより、温度検出値の変化のうち、ノイズ成分に起因する変化に拘らず、温度検出値自体の変化を捉えることができる。
【0044】
そして、個数設定手段62は、差の絶対値(|ΔTn|)が、第1閾値(Th1)より大きい場合には(STEP21でYES)、平均値を算出する際に用いる温度検出値の個数を第1個数(M1)とする(STEP31)。一方、個数設定手段62は、差の絶対値(|ΔTn|)が、第1閾値(Th1)以下の場合には(STEP21でNO)、平均値を算出する際に用いる温度検出値の個数を第2個数(M2)とする(STEP32)。ここで、第1個数(M1)と第2個数(M2)では、M1<<M2の関係にある。第2個数(M2)は、当該蛍光温度センサにおいて移動平均値を算出する際に用いる通常の個数(例えば500個)である。これに対して、第1個数(M1)は、第2個数(M2)の約25%の個数(例えば125個)である。
【0045】
このように、ノイズの大きさより大きな温度検出値の変化が生じた場合に、平均値を算出するために用いる個数を通常よりも少ない第1個数(M1)とすることで、ノイズ成分に平均値の出力を追従させることを回避しつつ、温度検出値の変化に平均値の出力を追従させ易くすることができる。一方で、ノイズに依る温度検出値の変化に対しては、第1個数(M1)より多い通常の第2個数(M2)で平均値を算出することで、ノイズの影響を低減させ、安定した温度の検出を行うことができる。
【0046】
次いで、移動平均値算出部6の平均値算出手段63は、最新の温度検出値(Tn)を含む、STEP31またはSTEP32で設定した個数の温度検出値で平均値を算出する(STEP40)。そして、移動平均値算出部6は、算出した平均値を当該温度センサの出力値(温度検出値)として出力する(STEP41)。
【0047】
以上が、移動平均値算出部6の一連の処理であり、移動平均値算出部6は、これら一連の処理をLED2の投光処理周期に対応した前記処理周期で逐次実行することにより、移動平均値を算出する。尚、上記実施形態において、STEP21の判定結果に基づいて、STEP31,32で使用個数を設定する処理が、本発明の個数設定処理に相当し、STEP40の処理が、本発明の平均値算出処理に相当する。
【0048】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、図2に示すフローチャートの処理の変更例について説明する。なお、図3のフローチャートの処理は、図2のフローチャートの処理の一部を変更したものであるので、図2と同一処理については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施例では、個数設定手段62は、差の絶対値(|ΔTn|)が、第1閾値(Th1)より大きい場合に(STEP21でYES)、該差の絶対値が、第2閾値(Th2)より大きいか否かを判定する(STEP22)。ここで、第2閾値(Th2)は、第1閾値(Th1)よりも大きな値に設定されている。このように、第2閾値(Th2)を設定することにより、温度検出値の変化が著しい場合にもその変化を捉えることができる。
【0050】
そして、個数設定手段62は、差の絶対値(|ΔTn|)が、第2閾値(Th2)より大きい場合には(STEP22でYES)、平均値を算出する際に用いる温度検出値の個数を1として、最新の温度検出値(Tn)を当該温度センサの出力値としてそのまま出力する(STEP42)。これにより、特に温度検出値の変化が著しい場合に、入力値の変化に出力を確実に追従させることができる。
【0051】
一方、個数設定手段62は、差の絶対値(|ΔTn|)が、第2閾値(Th2)以下の場合には(STEP22でNO)、平均値を算出する際に用いる温度検出値の個数を第1個数(M1)として(STEP31)、以下、図2のフローチャートと同様に、第1個数(M1)の温度検出値で平均値を算出して(STEP40)、出力する(STEP41)。
【0052】
以上が、移動平均値算出部6による処理の変更例である。尚、上記実施形態において、STEP21の判定結果に基づいてSTEP32で使用個数を設定する処理、およびSTEP22の判定結果に基づいてSTEP31,42で使用個数を設定する処理が、本発明の個数設定処理に相当する。
【0053】
このように、本実施形態の蛍光温度センサでは、温度検出値にノイズが含まれる場合にも、温度検出値の変化に対応した適切な平均値を逐次出力することができる。
【0054】
尚、本実施形態では、差の絶対値(|ΔTn|)に対して第1および第2閾値(Th1,Th2)を設定し該閾値を超える場合に、使用個数を通常の第2個数(M2)を少ない第1個数(M1)等に設定しているが、これに限らず、閾値以内の場合に、使用個数を増加させてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、第1および第2の2つの閾値(Th1,Th2)を設けて、使用個数(M1,M2)を設定しているが、これに限らず、3つ以上の複数の閾値を設けて、段階的に個数を減少または増加させてもよい。これにより、温度検出値の変化に応じて最適な使用個数で平均値を逐次算出することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、差(|ΔTn|)を最新の温度検出値(Tn)とその直前(1処理周期前)の温度度検出値(Tn-1)との差として算出しているが、これに限らず、1処理周期前の温度検出値(Tn-1)の代わりに、2処理周期前の温度検出値(Tn-2)や3処理周期前の温度検出値(Tn-3)を用いてもよい。これにより、1処理周期前の温度検出値(Tn-1)がノイズにより変化している場合にも、一定の間隔を空けることによりその影響を相対的に低減させることができる。
【0057】
また、温度検出値の過去値(Tn-1,Tn-2)の代わりに、その平均値を用いてもよい。これにより、ノイズにより個々変化し得る過去の温度検出値に依らず、差を算出することができ、ノイズの影響を低減して、温度検出値の変化を確実に捉え、これに対応した適切な平均値の出力を行い、ひいては安定した温度出力を実現することができる。
【0058】
以上、蛍光温度センサの温度検出値を入力値とする実施例について説明したが、本発明はこれに限らず、逐次入力される入力の平均を算出するものに適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態の蛍光温度センサの全体構成図。
【図2】移動平均値算出部における移動平均値を算出する処理を示すフローチャート。
【図3】図2に示すフローチャートの変更例を示す説明図。
【符号の説明】
【0060】
1…蛍光材料、2…LED、3…駆動部、4…フォトダイオード、5…信号処理部、6…移動平均値算出部(移動平均値算出装置)、7…光ファイバ、10…コントローラ、61…記憶保持手段、62…個数設定手段、63…平均値算出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逐次入力される入力値の平均値を最新の入力値を用いて逐次算出する移動平均値算出装置であって、
前記最新の入力値と過去の入力値との差を算出し、該差と所定の閾値との大小関係により、前記平均値を算出する際に用いる入力値の個数を設定する個数設定手段を備えることを特徴とする移動平均値算出装置。
【請求項2】
請求項1記載の移動平均値算出装置において、
前記個数設定手段は、前記所定の閾値である第1閾値に対して、前記差が該第1閾値より大きい場合には、前記入力値の個数を第1個数に設定し、該第1閾値以下である場合には、該個数を第1個数よりも多い第2個数に設定することを特徴とする移動平均値算出装置。
【請求項3】
請求項2記載の移動平均値算出装置において、
前記個数設定手段は、前記第1閾値よりも大きな値に設定された第2閾値に対して、前記差が該第2閾値より大きい場合には、前記第1個数を1とすることを特徴とする移動平均値算出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の移動平均値算出装置において、
前記差は、前記最新の入力値と過去の入力値の平均値との差であることを特徴とする移動平均値算出装置。
【請求項5】
蛍光材料に投光する発光素子と、前記蛍光材料が発する蛍光を受光する受光素子と、前記受光素子の出力信号から温度検出値を生成する信号処理部とを含む蛍光温度センサにおいて、
前記温度検出値を入力としてその移動平均値を出力する移動平均値算出部が請求項1乃至4のうちいずれか1項記載の移動平均値算出装置により構成されてなることを特徴とする蛍光温度センサ。
【請求項6】
逐次入力される入力値の平均値を最新の入力値を用いて逐次算出する移動平均値算出方法であって、
前記最新の入力値と過去の入力値との差を算出し、該差と所定の閾値との大小関係により、前記平均値を算出する際に用いる入力値の個数を設定する個数設定処理と、
前記個数設定処理により設定された個数の入力値を用いて、これらの平均値を算出する平均値算出処理と
を逐次実行することを特徴とする移動平均値算出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−294180(P2009−294180A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150687(P2008−150687)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】