説明

移動式クレーン

【課題】 従来のブーム先端灯は取付け位置がブーム上面であり位置が高く、また夜間のみの点灯であった。そこで、ブーム先端灯の取付け位置を低くし視認性を向上させ、夜間だけではなく昼間も点灯するブーム先端灯を備えた移動式クレーンを提供する。
【解決手段】 走行体上に伸縮および起伏可能なブームを備え、当該ブームを全縮し倒伏させた走行姿勢ではブーム前端が走行体の前端より突出する移動式クレーンにおいて、前記ブームの略前端下方位置にブーム先端灯を取付けた。また、ブーム先端灯は走行時に点灯するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンのブーム前端に取付けられるブーム先端灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9、図10は従来の移動式クレーンのブーム先端灯に関する説明図である。移動式クレーンのトップブーム上方にブーム先端灯を取付け、夜間走行ではブーム先端灯を点灯させ、交差点進入時に突出するブーム前端の注意を周囲の交通者に注意を促すものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−63771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のブーム先端灯は、取付け位置がブームの上面であり位置が高く、また夜間のみの点灯であった。
【0004】
そこで、本発明はブーム先端灯の取付け位置を低くし視認性を向上させ、昼間も点灯するブーム先端灯を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため請求項1の移動式クレーンは、走行体上に伸縮および起伏可能なブームを備え、当該ブームを全縮し倒伏させた走行姿勢ではブーム前端が走行体の前端より突出する移動式クレーンにおいて、前記ブームの略前端左右側面下方位置にブーム先端灯を取付けたことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の移動式クレーンは、請求項1において、前記ブームの先端に補助ブームを一体的に取付け走行姿勢で当該補助ブームが前端となる移動式クレーンにあっては、前記ブーム先端灯を当該補助ブームの略前端左右側面下方位置に取付けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の移動式クレーンは、走行体上に伸縮および起伏可能なブームを備え、当該ブームを全縮し倒伏させた走行姿勢ではブーム前端が走行体の前端より突出する移動式クレーンにおいて、前記ブームは基端側ブームと先端側ブームを備え、基端側ブームに先端側ブームを伸縮自在に嵌挿させ基端側ブームより先端側ブームを伸縮させるようにし、基端側ブームの略前端左右側面にそれぞれ取付け先端側ブームの略端部にまで突出させたブラケットの略前端位置にブーム先端灯を取付けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の移動式クレーンは、請求項1ないし請求項3において、ブーム先端灯は走行時に点灯させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の移動式クレーンは、ブームの略前端左右側面下方位置にブーム先端灯を取付けたものであるから、ブーム先端灯は可及的に低い位置であり、交差点進入時に交差点へのブーム進入量が僅かな状態において周囲の交通者からの視認が可能となる。
【0010】
請求項2記載の移動式クレーンは、ブーム先端灯を当該補助ブームの略前端左右側面下方位置に取付けたものであるから、ブーム先端灯は可及的に低い位置であり、交差点進入時に交差点へのブーム進入量が僅かな状態において周囲の交通者からの視認が可能となる
請求項3記載の移動式クレーンは、基端側ブームの略前端左右側面にそれぞれ取付け先端側ブームの略端部にまで突出させたブラケットの略前端位置にブーム先端灯を取付けたものであるから、ブーム先端灯は可及的に低い位置であり、交差点進入時に交差点へのブーム進入量が僅かな状態において周囲の交通者からの視認が可能となる。
【0011】
請求項4の移動式クレーンは、ブーム先端灯は走行時に点灯させるものであるから昼夜を問わず走行時に周囲の交通者に注意を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本願発明に係る移動式クレーンについて、図1〜図8に図示し以下に説明する。
【0013】
図1に、本発明の実施の形態に係る移動式クレーンの全体図を示す。走行可能な走行体1上に旋回自在な旋回台2を備え、起伏シリンダ3によって起伏可能に枢支された伸縮ブーム4を旋回台2に備えている。伸縮ブーム4はベースブーム4aにセカンドブーム4bを摺動自在に嵌挿し、さらに順次サードブーム4c、トップブーム4dを摺動自在に嵌挿した4段ブームである。図1の伸縮ブームは格納式の補助ブーム10aが左側方に格納され走行状態ではトップブーム4dが移動式クレーンの前端となっている形式の移動式クレーンである。当該移動式クレーンにおいては、旋回台2後部に配置されているメインウインチ(図示しない)から繰り出されたワイヤーロープ5aは、トップブーム4d先端のシーブを通ってフックブロック6のシーブを通りワイヤーロープ5a端はロープソケットを介し、トップブーム4dに固定されている。また、図7に示すように補助ブーム10bがトップブーム4d’の前端に一体化されている形式で走行状態では補助ブーム10bが移動式クレーンの前端となるようになっている移動式クレーンである。当該移動式クレーンにおいては、前述のメインウインチに加えて旋回台2後部に配置されているサブウインチ(図示しない)から繰り出されたワイヤーロープ5bは、トップブーム4d’先端のシーブを通り補助ブーム10bのシーブを通ってワイヤーロープ5b端はロープソケットを介し、サブフック11に固定されている。
【0014】
車両後部のエンジンフード7内にはエンジンを配置し、エンジンはトランスミッションやドライブシャフトなどを介して車軸に駆動力を伝達し走行できるようになっている。移動式クレーンのクレーン作業時はPTO(パワーテークオフ)スイッチをオンにし、エンジンからの動力をクレーン作業用ポンプに伝達させる。この作業用ポンプで発生させた油圧によって、旋回台2の旋回、伸縮ブーム4の起伏と伸縮、ウインチの巻上げと巻下げを行うことができる。これらの構成には周知の構造を採用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0015】
当該移動式クレーンの走行時のスタイルは、図1に示すように伸縮ブーム4を全縮させ、旋回台2を車両走行の前方に向け、フックブロック6を旋回台2前方に設けられた固定手段に係止させ、伸縮ブーム4を倒伏させ、ワイヤーロープ5を軽く張る程度にウインチを巻上げて、アウトリガ8を格納する。この走行姿勢において、ブーム4前端が走行体1の前端より突出する姿勢となる。
【0016】
本願発明の第1実施形態について説明する。図2、図3、図4に示すようにトップブーム4dの左右側面の略前端下方にブーム先端灯9を取付けている。
【0017】
電気配線は、キャブ内から旋回台とベースブーム外側面を伝わり、ベースブーム4a外側面に備えたコードリール(図示しない)により、トップブーム4dまで繋がり、左右のブーム先端灯9まで繋がっている。
【0018】
ブーム先端灯9の点灯は、キースイッチをオンし、PTOスイッチをオフした時である。キースイッチをオフにした時、またキースイッチをオン且つPTOスイッチをオンした時にはブーム先端灯は点灯しない。よって、クレーン作業時にはブーム先端灯9を消灯し走行時にブーム先端灯9を点灯させることとなり、昼夜を問わず走行時は点灯している。
【0019】
ブーム先端灯9は、トップブーム4dの左右側面の略前端下方に取付け可及的に低い位置に配置してあるものだから、交差点進入時に交差点へのブーム進入量が僅かな状態において周囲の交通者からの視認が可能となる。
【0020】
本願発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態では格納式の補助ブーム10aが左側方に格納され走行状態ではトップブーム4dが移動式クレーンの前端であったが、第2実施形態では、図5、図6、図7に示すように補助ブーム10bがトップブーム4d’の前端に一体化されている形式であり走行状態では補助ブーム10bが移動式クレーンの前端となるようになっている。当該補助ブームはブーム最下に位置しており補助ブーム10bの左右側面の略前端下方にブーム先端灯9を取付けている。
【0021】
電気配線は、キャブ内から旋回台とベースブーム外側面を伝わり、ベースブーム4a外側面に備えたコードリール(図示しない)により、補助ブーム10bまで繋がり、左右のブーム先端灯9まで繋がっている。
【0022】
ブーム先端灯9の点灯は、キースイッチをオンし、PTOスイッチをオフした時である。キースイッチをオフにした時、またキースイッチをオン且つPTOスイッチをオンした時にはブーム先端灯は点灯しない。よって、クレーン作業時にはブーム先端灯9を消灯し走行時にブーム先端灯9を点灯させることとなり、昼夜を問わず走行時は点灯している。
【0023】
ブーム先端灯は、補助ブーム10bの左右側面の略前短下方の取付け可及的に低い位置に配置してあるものだから、周囲の交通者の目線位置に近付いたところに配置しているため、更に視認性が良くなる。
【0024】
本願発明の第3実施形態について説明する。前記第1第2実施形態では、ブーム先端灯9を直接先端側ブーム(トップブーム)側面に取付けたが、基端側ブームにブラケット12を介して取り付けてもよい。すなわち図8に示すように、基端側ブームであるベースブーム4aの略前端左右側面にそれぞれ取付け先端側ブームの略端部にまで突出させたブラケットの略前端位置にブーム先端灯を取付けている。
【0025】
また、上記第3実施形態では基端側ブームをベースブーム4a、先端側ブームをトップブーム4dとして説明したが、基端側ブームをセカンドブーム4bまたはサードブーム4cとし、先端側ブームをトップブームとしてもよい。すなわちブラケットはセカンドブーム4bまたはサードブーム4cの略前端左右位置にそれぞれ取付けトップブーム4dの略端部にまで突出させたブラケットの略前端位置にブーム先端灯を取付けているものである。
【0026】
ブラケット12がベースブーム4aに取付けられているときの電気配線は、キャブ内から旋回台とベースブーム4a外側面を伝わり、ブラケット12を伝わって、左右のブーム先端灯9まで繋がっている。また、ブラケット12がセカンドブーム4bまたはサードブーム4cに取付けられているときの電気配線は、キャブ内から旋回台とベースブーム外側面を伝わり、ベースブーム4a外側面に備えたコードリール(図示しない)により、それぞれセカンドブーム4b、サードブーム4cに繋がり、ブラケット12を介して左右のブーム先端灯9まで繋がっている。
【0027】
ブーム先端灯9の点灯は、キースイッチをオンし、PTOスイッチをオフした時である。キースイッチをオフにした時、またキースイッチをオン且つPTOスイッチをオンした時にはブーム先端灯は点灯しない。よって、クレーン作業時にはブーム先端灯9を消灯し走行時にブーム先端灯9を点灯させることとなり、昼夜を問わず走行時は点灯している。
【0028】
ブーム先端灯は、トップブーム4dの左右側面の略前短下方の取付け可及的に低い位置に配置してあるものだから、周囲の交通者の目線位置に近付いたところに配置しているため、更に視認性が良くなる。
【0029】
ブーム先端灯9は高輝度LEDであってもよい。
【0030】
走行中のみブーム先端灯9を点灯させるようになっているが、別途スイッチを設け、クレーン作業中に点灯させるようにしてもよい。そうすることで、クレーン作業中のブーム先端が確認しやすい効果がある。
【0031】
トップブーム4dの側面に反射材を貼り付け、反射材を照らすようにブーム先端灯9を取付けてもよい。
【0032】
第3実施形態のブラケット12に左右方向を見るためのカメラを取付けていてもよい。
【0033】
4段ブームで説明しているがこれに限定されることなく3段ブームであっても5段以上の段数のブームであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願の発明に係る移動式クレーンの全体図である。
【図2】図1のブーム前端の左側面図である。
【図3】図1のブーム前端の右側面図である。
【図4】図1の前面図である。
【図5】本願の発明に係る第2実施形態のブーム前端の左側面図である。
【図6】本願の発明に係る第2実施形態のブーム前端の右側面図である。
【図7】本願の発明に係る第2実施形態の移動式クレーン前面図である。
【図8】本願の発明に係る第3実施形態のブーム前端の左側面図である。
【図9】従来技術に係るブーム先端灯が付けられた移動式クレーン全体図である。
【図10】図9のブーム前端の拡大図である。
【符号の説明】
【0035】
1 :走行体
4 :ブーム
4a :ベースブーム
4b :セカンドブーム
4c :サードブーム
4d :トップブーム
9 :ブーム先端灯
10a :補助ブーム
10b :補助ブーム
12 :ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体上に伸縮および起伏可能なブームを備え、当該ブームを全縮し倒伏させた走行姿勢ではブーム前端が走行体の前端より突出する移動式クレーンにおいて、前記ブームの略前端左右側面下方位置にブーム先端灯を取付けたことを特徴とする移動式クレーン。
【請求項2】
請求項1において、前記ブームの先端に補助ブームを一体的に取付け走行姿勢で当該補助ブームが前端となる移動式クレーンにあっては、前記ブーム先端灯を当該補助ブームの略前端左右側面下方位置に取付けたことを特徴とする移動式クレーン。
【請求項3】
走行体上に伸縮および起伏可能なブームを備え、当該ブームを全縮し倒伏させた走行姿勢ではブーム前端が走行体の前端より突出する移動式クレーンにおいて、
前記ブームは基端側ブームと先端側ブームを備え、基端側ブームに先端側ブームを伸縮自在に嵌挿させ基端側ブームより先端側ブームを伸縮させるようにし、基端側ブームの略前端左右側面にそれぞれ取付け先端側ブームの略端部にまで突出させたブラケットの略前端位置にブーム先端灯を取付けたことを特徴とする移動式クレーン。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3において、ブーム先端灯は走行時に点灯させることを特徴とする移動式クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−57180(P2009−57180A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227425(P2007−227425)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】