説明

移動式簡易型車両用ジャッキ

【課題】 本体に車輪を有して場所を自由に変えることが出来る移動式簡易型車両用ジャッキの提供。
【解決手段】 本体1には作動油を収容するオイルタンク15、車両を押上げる為に突出するプランジャー12を有す油圧シリンダー4、内蔵したピストン18の往復動にて油圧シリンダー4を作動するブースター11、エアー圧を調整するレギュレーター14、及びエアーの流れを切り換えるバルブ13を備え、該ブースター11の作動にて油圧シリンダー4のプランジャー12を突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧シリンダーを備えて非常に大きな力を出力するように構成した車両用の移動式簡易型ジャッキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両を整備する場合やタイヤを交換する際には、該車両を持ち上げなくてはならず、車両の持ち上げにジャッキが使用される。ここで、ジャッキには色々な型式が存在しているが、基本的には油圧シリンダーを備えた構造のものが圧倒的である。すなわち油圧シリンダーのピストンロット(プランジャー)を突出することにより、車両を押し上げ又は持ち上げることが出来る。大型のジャッキは常設型であって、車両全体を一度に押上げることが出来、小型ジャッキは所定の場所へ移動して車両の一部を押し上げる。したがって小型ジャッキには移動用の車輪が取着されている。
【0003】
ところで、これら油圧式ジャッキはポンプによって作動油を油圧シリンダーへ導き入れ、該作動油によってピストン(プランジャー)を突出させて車両を押し上げる訳であるが、所定の高さで停止したプランジャーはその位置で固定される。そして、車両の整備が完了したところで、レバーを操作して切替弁を切り換えるならば、プランジャーが縮んで押し上げている車両は降下する。
【0004】
常設型の大型ジャッキであるならば、作動油を流出入する為の切り換え弁として上記電磁弁を用いることも可能であり、また該作動油を油圧シリンダーへ送り込む為のポンプをモーターにて作動させることも出来る。しかし、移動式の小型ジャッキでは油圧シリンダーを作動する為の油圧ポンプ及びモーターを備えることは出来ず、一般的にエアー圧を利用して油圧ポンプを作動するように構成している。
【0005】
特開2004−307093号に係る「移動式簡易型ジャッキ」は、車輪を両側に取付けた本体には油圧シリンダーを摺動するプランジャーを備え、油圧を作用することでプランジャーが突出するようにし、そして本体から延びるレバーのハンドル操作にて任意の場所へ移動することが出来る簡易型ジャッキであって、夜間であっても車体底のジャッキアップポイントにプランジャーが当って持上げることが出来るようにしている。すなわち、本体の上面には上方を照らすランプを取付け、レバーに取着したボックスの電池にてランプを点灯し、ジャッキアップポイントが分かるようにする。
【0006】
この移動式簡易型ジャッキは夜間であってもジャッキアップすることが出来るようにしたものであるが、その基本構造は本体両側に車輪を備えて移動でき、そして本体からはレバーが延び、レバー先端にはハンドルを設けている。そして、本体には油圧シリンダーを備え、油圧シリンダーを作動することでプランジャーが突出し、又はリンク機構を介して受け台が上昇するように構成することも出来る。
【特許文献1】特開2004−307093号に係る「移動式簡易型ジャッキ」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記移動式簡易型ジャッキはエアー圧にて油圧シリンダーのプランジャーを突出させるが、該エアーは外部から導くことが出来、又はハンドル操作にてエアーポンプを作動し、このエアーを利用して油圧シリンダーへ作動油を供給して入る。本発明は、外部のエアー圧を利用してエアーポンプ(ブースター)が作動し、該ブースターにて油圧シリンダーを作動することで大荷重を発生できる移動式簡易型車両用ジャッキを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移動式簡易型車両用ジャッキは本体に車輪を備え、該本体からはハンドルを延ばし、該ハンドルを握って移動することが出来る。そして、該ハンドルは本体の後部に取付けられて上下方向に揺動することが出来る構造としている。ところで、上記本体には油圧シリンダー、オイルタンク、ブースターなどを備え、外部から供給されるエアーにてブースターが作動し、該ブースターから送られる作動油にて油圧シリンダーのプランジャー(ラム)が伸縮上下動することが出来る。
【0009】
ここで、上記ブースターはピストンを有し、外部から供給されるエアーにてピストンは前進し、所定の距離前進したところで後退する。すなわち、シリンダー内面に設けた流出口からエアーが流れ出し、スライド弁が開いて外部から供給されるエアーは排気口から流出する。そして、内蔵しているコイルバネのバネ力によってピストンは後退する。該ピストンが後退すると流出口が閉じると共に、スライド弁も閉じて外部からのエアーは再びピストンに作用して前進する。
【0010】
ブースターのピストンは外部から供給されるエアーによって前進・後退を繰り返す。そして、ピストンから細いプランジャーが延び、この細いプランジャーの前進・後退動によってオイルタンク内の作動油を油圧シリンダーへ供給して該油圧シリンダーのプランジャーを昇降動させることが出来る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移動式簡易型車両用ジャッキは、外部から供給されるエアーにてブースターを作動し、該ブースターは油圧シリンダーを作動することで、該油圧シリンダーのプランジャーを昇降動させることが出来る。すなわち、ブースターに設けているピストンと共にプランジャーが前進・後退を繰返すことで、オイルタンク内の作動油を油圧シリンダーへ導き、プランジャーが昇降動することが出来るが、該プランジャーは非常に大きな力を出力することが出来る。
【0012】
すなわち、ブースターのピストン外径に対して該ピストンから延びるプランジャー外径は小さく、その為に細いプランジャーの押圧力により作動油には大きな油圧が発生し、この大きな油圧が油圧シリンダーのプランジャーに作用することで、該プランジャーの出力は非常に大きくなる。従って、本発明のジャッキは移動式簡易型ではあるが、その出力となる能力は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る移動式簡易型車両用ジャッキを示す実施例で、平面図と正面図を表している。
【図2】本発明のジャッキを構成するエアー並びに油圧回路。
【図3】油圧シリンダーを作動するブースターの具体例。
【図4】油圧シリンダーの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る移動式簡易型車両用ジャッキの概略図を示し、(a)は平面図、(b)は正面図を夫々表している。同図の1は本体、2は車輪、3はハンドル、4は油圧シリンダーを示し、車輪2,2は本体1の両側に回転可能に取付けられ、ハンドル3を操作することで、該本体1を任意の場所へ移動することが出来る。ハンドル3はジャッキを移動操作し易いように、本体1の後部に設けた揺動軸10に連結して上下方向に揺動することが出来る。
【0015】
そして、ハンドル先端にはリング状の握り部5を取付け、ハンドル3の途中にはレバー6を設けており、該レバー6を操作することでハンドル3の傾きを変えることが出来る。従って、レバー6を操作しなければ該ハンドル3は所定の傾斜角で固定され、先端の握り部5を持ってジャッキ本体1を移動することが可能である。
【0016】
ここで、該ハンドル3の傾斜角を変えるレバー6の操作について限定はしないが、同図に示す実施例の場合には、ハンドル3に沿ってレバー6を前後に揺動することで連結棒7の先端が本体1のハンドル固定部材9に設けた穴8から離脱してハンドル3は揺動し、レバー6を手放すならば上記穴8に連結棒7の先端が嵌って固定される構造としている。本体1にはハンドル3の揺動軸外周にハンドル固定部材9が取着されており、この揺動軸10と同心を成すハンドル固定部材9の外周には連結棒7の先端が嵌る複数の穴8,8・・・が設けられている。
【0017】
ところで、本発明のジャッキは外部からエアーを供給し、このエアーによってブースター11を作動し、そして該ブースター11は上記油圧シリンダー4のプランジャー12を昇降動することが出来る。図2は本発明のジャッキを構成するエアー並びに油圧回路を示している。同図によると、外部からのエアーはバルブ13を通過してレギュレーター14に入り、該レギュレーター14によってエアー圧を高めている。一般に、外部のエアー圧は約14kg/cm程度であるが、このエアー圧を上記レギュレーターにて約8kg/cm〜10kg/cmに減圧させる。
【0018】
そして、減圧されたエアーはブースター11へ導かれ、このブースター11はオイルタンク15から作動油を吸上げて油圧シリンダー4へ送り出す。従って、油圧シリンダー4のプランジャー12は突出することが出来、該プランジャー12の突出によって重い車両を押上げることが出来る。また、レギュレーター14の手前にはオイルタンク15へエアーを供給してエアー圧を負荷している。このことで、オイルタンク15の作動油を油圧シリンダー4へ送り出し易くすることが出来る。
【0019】
そして、バルブ13を切り換えることで油圧シリンダー4にエアー圧が作用し、ブースター11が停止して作動油の送り出しを停止するならば、突出したプランジャーはエアー圧によって降下するように成っている。ところで、図2に示すエアー並びに油圧回路は本体1に構成され、上記レギュレーター14、ブースター11、油圧シリンダー4、及びオイルタンク15は本体1に取付けられている。ハンドル3は上下方向に揺動することが出来るが、ハンドル軸を中心として回転することも可能なように成っている。すなわち、握り部5の向きを変えるならば、油圧シリンダー4のプランジャー12は降下するように成っている。
【0020】
図3ブースターの内部構造を示す実施例である。上記バルブ13を開くならば、レギュレーター14を通過したエアーが入口16に入り、入口16からシリンダー空間17へ流入する。そして、シリンダー空間17に収容されているピストン18を押圧し、該ピストン18は前進(左方向)スライドする。この場合、ピストン18の前方にはコイルバネ19が内蔵されていて、ピストン18の前進によって該コイルバネ19は圧縮される。従って、ピストン18にはコイルバネ19によって押戻されるバネ力が付勢している。
【0021】
そして、ピストン18からは細いプランジャー20が延びており、ピストン18の前進に伴ってプランジャー20も前進することに成る。シリンダー21の内周にはエアー流出口22が設けられ、ピストン18がスライドして所定の位置まで前進したところで、シリンダー空間17に流入したエアーはこの流出口22から流れ出す。シリンダー後部中心軸部に設けているスライド弁23の後方に形成している空間24に該エアーは流れ込んで、このスライド弁23の後端を押圧する。その結果、スライド弁23は前進し、上記シリンダー空間17と連通する隙間25が形成される。
【0022】
従って、シリンダー空間内のエアーは該隙間25を流れてシリンダー21に貫通した排気口26から流出するようになり、ピストン18はコイルバネ19のバネ力に押されて後退する。そして、該ピストン18はスライド弁23の先端に当ってスライド弁23を後退させ、その結果、スライド弁23は隙間25を塞ぎ、シリンダー空間17のエアーが排気口26から流出することは出来なくなる。そうすると、入口16から流入してシリンダー空間17に入ったエアーは該ピストン18を押圧し、ピストン18は再び前方へスライドすることになる。
【0023】
このように、入口16から連続して流入するエアーによって、ピストン18は前進・後退動を繰返すことになり、同時に該ピストン18から前方へ延びる細いプランジャー20も前進・後退動を繰返すことが出来る。そこで、該プランジャー20が前進するならば、油圧シリンダー4へ作動油を送り出すことが出来、油圧シリンダー4のプランジャー12が突出する。
【0024】
すなわち、空間27に満たされている作動油はボール28との隙間を通過し、そして、該ボール29を押下げて油路30を流れ、油圧シリンダー4へ送られる。逆にプランジャー20が後退するならば、オイルタンク15から作動油が吸い上げられる。すなわち、プランジャー20が後退すると、空間27は負圧と成ってボール28は浮上し、オイルタンク15を繋ぐ油路31から作動油が流れ込む。しかし、油圧シリンダー4を繋ぐ油路30からの作動油は逆流しないようにボール29が浮上して閉ざされる。
【0025】
ここで、上記ボール28には空間27に収容しているコイルバネ32のバネ力が常時付勢され、プランジャー20が後退する際にのみ浮上することが出来、またボール29は下方に設けたコイルバネ33のバネ力が常時付勢され、プランジャー20が後退する際に油圧シリンダー側からの作動油の逆流を防止している。プランジャー20が前進することで空間27から作動油を油圧シリンダー4側へ送り出す場合にのみボール29は押下げられる。
【0026】
そして、油路30とオイルタンク15との間には切替弁34とリリーフ弁35が設けられ、油圧シリンダー4に一定以上の圧力が作用した場合には、該リリーフ弁35を介してオイルタンク15へ流れるように成っている。また、上昇した油圧シリンダー4のプランジャー12を降下する場合、上記ハンドル3を回転するならば切替弁34が作動して油圧シリンダー内の作動油がオイルタンク15へ戻される。
【0027】
図4は油圧シリンダー4の縦断面を示す具体例である。該油圧シリンダー4は本体1の先端側に起立して取付けられ、プランジャー12が突出することで車両を押上げることが出来る。ところで、該プランジャー12はその下端にガイドと成る下部ベアリング36が一体化した構造と成っている。そして、下部ベアリング36の中間部に形成した溝37にはOリング38とバックアップリング39が嵌っている。
【0028】
そして、下部ベアリング36の表面には耐摩耗性と滑り摩擦の低い表面層40が一体化して形成されている。また、プランジャー12はアルミ青銅が使用されていることで、引張り強度に優れ、硬度は高く、耐腐食性にも優れている。一方の上部ベアリング41はプランジャー12を油圧シリンダー4に嵌めた後で取付けられ、ネジ止めされている。上部ベアリング41の内周面に形成した溝にはOリングが嵌り、また外周に形成した溝にもOリングが嵌って油漏れを防止している。そして、プランジャー上端には交換可能なようにアタッチメント42が取付けられている。
【0029】
油圧シリンダー4の下端には油路43が設けられ、上記ブースター11と繋ぐ油路30と連続している。さらに、油圧シリンダー4の上部側にはエアー口44が設けられ、突出したプランジャー12をスムーズに降下させる為に、該エアー口44からエアーを供給することが出来る。すなわち、バルブ13を切り換えることで、ブースター11へ送られているエアーはエアー口44へ導かれるようになる。
【符号の説明】
【0030】
1 本体
2 車輪
3 ハンドル
4 油圧シリンダー
5 握り部
6 レバー
7 連結棒
8 穴
9 ハンドル固定部材
10 揺動軸
11 ブースター
12 プランジャー
13 バルブ
14 レギュレーター
15 オイルタンク
16 入口
17 シリンダー空間
18 ピストン
19 コイルバネ
20 プランジャー
21 シリンダー
22 流出口
23 スライド弁
24 空間
25 隙間
26 排気口
27 空間
28 ボール
29 ボール
30 油路
31 油路
32 コイルバネ
33 コイルバネ
34 切替弁
35 リリーフ弁
36 下部ベアリング
37 溝
38 Oリング
39 バックアップリング
40 表面層
41 上部ベアリング
42 アタッチメント
43 油路
44 エアー口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に車輪を有して場所を自由に変えることが出来る移動式簡易型車両用ジャッキにおいて、本体には作動油を収容するオイルタンク、車両を押上げる為に突出するプランジャーを有す油圧シリンダー、内蔵したピストンの往復動にて油圧シリンダーを作動するブースター、エアー圧を調整するレギュレーター、及びエアーの流れを切り換えるバルブを備え、該ブースターは内部に細いプランジャーを前方へ延ばしたピストンと該ピストンの後退にて排気口を閉じるように後方へ押圧スライドするスライド弁を内蔵し、そして、ブースターのシリンダー空間に流入したエアーにてピストンが前進し、所定の位置に達したところでシリンダー内面に設けた流出口から流出するエアーが上記スライド弁後端を押圧することでシリンダー空間と排気口を連通するように隙間を形成し、ピストンから延びる細いプランジャーがピストンと共に前進・後退することでオイルタンクの作動油を吸い上げて油圧シリンダーのプランジャーを突出するように機能することを特徴とする移動式簡易型車両用ジャッキ。
【請求項2】
上記油圧シリンダーのプランジャー下端部に下部ベアリングを一体化して設け、そして下部ベアリングの表面には耐摩耗性に優れた表面層を形成した請求項1記載の移動式簡易型車両用ジャッキ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−136318(P2012−136318A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289182(P2010−289182)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000185916)小野谷機工株式会社 (38)
【Fターム(参考)】