説明

移動式電動作業機

【課題】作業部の過負荷運転を回避することができる移動式電動作業機を提供する。
【解決手段】走行部20によって走行しながら、ブレードインバータ14A・14Bから供給される電力により駆動される作業部10A・10Bによって作業を行う電動芝刈作業機100であって、ブレードインバータ14A・14Bからのブレードインバータ電流値Iba・Ibbに基づいて、作業部10A・10Bの作業負荷が一定となるように、ブレード11Aのブレード回転速度Vba、あるいは、ブレード11Bのブレード回転速度Vbbを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業部の過負荷運転を回避する機能を有する移動式電動作業機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式作業機は、移動しながら作業を行う作業機として公知である。具体的な移動式作業機としては、移動しながら芝を刈る芝刈機、または移動しながら土を耕す耕運機等が公知である。移動式電動作業機は、作業部及び移動部が電動駆動による移動式作業機として公知である。具体的な移動式電動作業機としては、電動駆動による芝刈部と、電動駆動による走行部と、を備える電動芝刈作業機が公知である(例えば、特許文献1)。電動芝刈作業機では、バッテリによってインバータに直流電源を供給し、インバータによって直流電源を交流電源に変換し、変換した交流電源をモータに供給して芝刈部を駆動している。
【0003】
モータは、負荷の上昇によって巻線温度が上昇するものである。そのため、モータ自体には、巻線温度の異常上昇を回避するために、保護装置が設けられている。また、インバータには、モータに過電流を供給しないように、保護装置が設けられている。このように、モータの過負荷運転に対しては、モータ自体またはインバータにそれぞれ保護装置が設けられ、過電流が流れると保護装置により電力供給が遮断される構成とされている。また、電動芝刈作業機のシステム全体としても、これらの保護装置等が作動して運転停止に至らないように、モータの過負荷運転を回避する必要がある。
【0004】
しかし、電動芝刈作業機の芝刈部の作業負荷は、電動芝刈作業機の作業状況としての走行部の走行速度、芝刈部の地表面からの高さ、芝刈部の刈取速度、あるいは、作業環境としての芝の生え具合等、様々な要因によって決定される。そのため、芝刈部の作業負荷を一意に決定して、過負荷運転を一意に回避することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5540037号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、作業部の過負荷運転を回避することができる移動式電動作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための部を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、移動部によって移動しながら、電力変換器から供給される電力により駆動される作業部によって作業を行う移動式電動作業機であって、前記電力変換器からの負荷トルク値に基づいて、前記作業部の作業負荷が一定となるように、前記作業部の作業速度を制御するものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1記載の移動式電動作業機であって、前記作業速度は、上限が設定されるものである。
【0010】
請求項3においては、移動部によって移動しながら、電力変換器から供給される電力により駆動される作業部によって作業を行う移動式電動作業機であって、前記電力変換器からの負荷トルク値に基づいて、前記作業部の作業負荷が所定負荷を超えないように、前記作業部の作業速度を制御するものである。
【0011】
請求項4においては、請求項1から3に記載の移動式電動作業機であって、前記作業部及び前記電力変換器が複数ある場合には、最大の前記負荷トルク値を負荷トルク値とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、作業部の作業負荷を一定にすることによって、作業部の過負荷運転を回避することができる。
【0014】
請求項2においては、作業部の作業速度に上限を設定することによって、作業部が暴走することを回避できる。
【0015】
請求項3においては、作業部の作業負荷が所定の上限負荷を超えないようにすることによって、作業部の過負荷運転を回避することができる。
【0016】
請求項4においては、複数の作業部がある場合には、最大の作業負荷を担う作業部を選択することによって、作業部の過負荷運転を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電動芝刈作業機の全体的な構成を示した構成図。
【図2】同じく電動芝刈作業機のシステム構成を示す構成図。
【図3】実施形態1の走行速度制御1を示すグラフ図。
【図4】実施形態1の走行速度制御2を示すグラフ図。
【図5】実施形態2のブレード回転速度制御1を示すグラフ図。
【図6】実施形態2のブレード回転速度制御2を示すグラフ図。
【図7】実施形態3のデッキ高さ制御1を示すグラフ図。
【図8】実施形態3のデッキ高さ制御2を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を用いて、電動芝刈作業機100の構成について説明する。
電動芝刈作業機100は、本発明の移動式電動作業機の実施形態に係るものである。電動芝刈作業機100は、電動駆動によって移動(走行)し、電動駆動によって芝を刈る作業機である。
【0019】
電動芝刈作業機100は、移動部としての走行部20A・20Bを備える機体フレーム2と、作業部10A・10Bを備えるデッキ3と、デッキ高さ調整部30と、を具備している。デッキ3は、機体フレーム2の前後方向の中途部における走行輪21A・21Bと補助輪4A・4Bとの間に昇降可能に配置されている。
【0020】
作業部10A・10Bは、芝を刈る装置である。作業部10A・10Bは、デッキ3の左右両側に配置されている。作業部10A・10Bは、ブレード11A・11Bと、ブレードモータ12A・12Bと、ブレードドライバ13と、を具備している。ブレード11A・11Bは、芝を刈る回転刃である。ブレードモータ12A・12Bは、それぞれのブレード11A・11Bを回転駆動するものである。ブレードドライバ13は、それぞれのブレードモータ12A・12Bを回転制御する装置である。なお、ブレードドライバ13は、ブレードドライバ13A・13Bから構成されている(図2参照)。
【0021】
走行部20A・20Bは、電動芝刈作業機100を走行させる装置である。走行部20A・20Bは、機体フレーム2の後部の左右両側に配置されている。走行部20A・20Bは、走行輪21A・21Bと、トランスミッション8と、アクスルモータ22A・22Bと、アクスルドライバ23A・23Bと、を具備している。走行輪21A・21Bは、電動芝刈作業機100の駆動輪である。アクスルモータ22A・22Bは、それぞれの走行輪21A・21Bを、トランスミッション8を介して回転駆動するものである。アクスルドライバ23A・23Bは、それぞれのアクスルモータ22A・22Bを回転制御する装置である。
【0022】
デッキ高さ調整部30は、デッキ3の地表面からの高さ位置を調整する装置である。デッキ高さ調整部30は、機体フレーム2とデッキ3との間に配置されている。デッキ高さ調整部30は、デッキ高さ調整機構31と、デッキモータ32と、デッキドライバ33と、を具備している。デッキ高さ調整機構31は、機体フレーム2とデッキ3とを連結する昇降機構に設けられている。デッキ高さ調整機構31は、デッキ3の地表面からの高さ位置を調整するものである。デッキモータ32は、デッキ高さ調整機構31を駆動するものである。デッキドライバ33は、デッキモータ32を回転制御する装置である。
【0023】
電動芝刈作業機100は、補助輪4A・4Bと、操縦席5と、バッテリ6と、総合制御装置としてのシステムコントローラ50と、を具備している。補助輪4A・4Bは、機体フレーム2の前部の左右両側に配置されている。操作部は、機体フレーム2の前後方向の中途部であって、デッキ3の上方に配置されている。操縦席5の左右両側には、旋回レバー7A・7Bが配置されている。バッテリ6は、機体フレーム2の最後部に配置されている。システムコントローラ50は、操縦席5の下方に配置されている。
【0024】
図2を用いて、電動芝刈作業機100の電気システムの構成について説明する。
なお、図2では、強電線(電力供給用配線)を太い実線で示し、弱電線(電気通信線)を1点鎖線で示している。
【0025】
電動芝刈作業機100は、電気システムの構成として、作業部10A・10Bと、移動部としての走行部20A・20Bと、デッキ高さ調整部30と、総合制御装置としてのシステムコントローラ50と、バッテリ6と、を具備している。
【0026】
作業部10Aは、ブレードモータ12Aと、ブレードドライバ13Aと、を具備している。ブレードドライバ13Aには、電力変換器としてのブレードインバータ14Aが内蔵されている。ブレードインバータ14Aは、バッテリ6より供給される直流電流を交流電流に変換してブレードモータ12Aに供給するものである。作業部10Aでは、バッテリ6からブレードインバータ14Aに直流電流が供給され、ブレードインバータ14Aによって供給された直流電流が交流電流に変換され、ブレードドライバ13Aによってブレードモータ12Aに交流電流が供給される。
【0027】
作業部10Bは、作業部10Aと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0028】
ブレードドライバ13Aは、出力電流値となるブレードインバータ電流値Ibaを検知する機能を有している。ブレードインバータ電流値Ibaは、ブレードモータ12Aに供給される交流電流値である。また、ブレードインバータ電流値Ibaは、作業部10Aの作業負荷に相当する負荷トルク値に比例する。
【0029】
ブレードドライバ13Bは、出力電流値となるブレードインバータ電流値Ibaを検知する機能を有している。ブレードインバータ電流値Ibbは、ブレードインバータ電流値Ibaと同様であるため、説明を省略する。
【0030】
ブレードドライバ13Aは、ブレードインバータ14Aの出力電流の周波数となるブレードインバータ周波数Fbaを制御する機能を有している。ブレードインバータ周波数Fbaは、ブレードモータ12Aの出力回転数と比例し、ブレード11Aの回転数とも比例する。すなわち、ブレードインバータ周波数Fbaは、作業速度としてのブレード回転速度Vbaに比例するものである。
【0031】
ブレードドライバ13Bは、ブレードインバータ14Bの出力電流の周波数となるブレードインバータ周波数Fbbを制御する機能を有している。ブレードインバータ周波数Fbbは、ブレードインバータ周波数Fbaと同様であるため、説明を省略する。
【0032】
走行部20Aは、アクスルモータ22Aと、アクスルドライバ23Aと、を具備している。アクスルドライバ23Aは、アクスルインバータ24Aが内蔵されている。アクスルインバータ24Aは、バッテリ6より供給される直流電流を交流電流に変換してアクスルモータ22Aに供給するものである。走行部20Aでは、バッテリ6からアクスルインバータ24Aに直流電流が供給され、アクスルインバータ24Aによって供給された直流電流が交流電流に変換され、アクスルドライバ23Aによってアクスルモータ22Aに交流電流が供給される。
【0033】
走行部20Bは、走行部20Aと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0034】
アクスルドライバ23Aは、アクスルインバータ24Aの出力電流の周波数となるアクスルインバータ周波数Faaを制御する機能を有している。アクスルインバータ周波数Faaは、アクスルモータ22Aの出力回転数と比例し、走行輪21Aの回転数とも比例する。すなわち、アクスルインバータ周波数Faaは、移動速度としての走行速度Vに比例するものである。
【0035】
アクスルドライバ23Bは、アクスルインバータ24Bの出力電流の周波数となるアクスルインバータ周波数Fabを制御する機能を有している。アクスルインバータ周波数Fabは、アクスルインバータ周波数Faaと同様であるため、説明を省略する。
【0036】
デッキ高さ調整部30は、デッキモータ32と、デッキドライバ33と、を具備している。デッキ高さ調整部30では、バッテリ6からデッキモータ32に直流電流が供給される。
【0037】
デッキドライバ33は、作業位置としてのデッキ3のデッキ高さ位置Hを調整するために、デッキモータ32を制御する機能を有している。
【0038】
システムコントローラ50には、ブレードドライバ13A・13Bと、アクスルドライバ23A・23Bと、デッキドライバ33と、が電気通信線(通信バスライン)を介して接続されている。
【0039】
システムコントローラ50は、ブレードドライバ13Aを介して、ブレードインバータ電流値Ibaを読み込む機能を有している。同様に、システムコントローラ50は、ブレードドライバ13Bを介して、ブレードインバータ電流値Ibbを読み込む機能を有している。
【0040】
システムコントローラ50は、ブレードドライバ13Aを介して、ブレードインバータ周波数Fbaを制御し、ブレード回転速度Vbaを制御する機能を有している。同様に、システムコントローラ50は、ブレードドライバ13Bを介して、ブレードインバータ周波数Fbbを制御し、ブレード回転速度Vbbを制御する機能を有している。
【0041】
システムコントローラ50は、アクスルドライバ23A・23Bを介して、アクスルインバータ周波数Faa・Fabを制御し、走行速度Vを制御する機能を有している。
【0042】
システムコントローラ50は、デッキドライバ33を介して、デッキ高さ位置Hを制御する機能を有している。
【0043】
電動芝刈作業機100の作用について説明する。
電動芝刈作業機100は、走行しながら芝刈り作業を行うものである。そのため、芝が均一に生えていると想定した場合には、走行速度Vが高速であれば、作業負荷が増加することになる。一方、走行速度Vが低速であれば、作業負荷が減少することになる。
【0044】
電動芝刈作業機100は、ブレード11A・11Bを回転することによって芝刈り作業を行うものである。そのため、芝が均一に生えていると想定した場合には、ブレード回転速度Vba・Vbbが高速であれば、作業負荷が増加することになる。一方、ブレード回転速度Vba・Vbbが低速であれば、作業負荷が減少することになる。
【0045】
電動芝刈作業機100は、デッキ3の下部に配置されたブレード11A・11Bによって芝刈り作業を行うものである。そのため、芝が均一に生えていると想定した場合には、デッキ高さ位置Hが地表面から低い位置にあれば、作業負荷が増加することになる。一方、デッキ高さ位置Hが地表面から高い位置にあれば、作業負荷が減少することになる。
[実施形態1]
【0046】
図3〜図4を用いて、実施形態1である走行速度制御について説明する。
走行速度制御は、電動芝刈作業機100の作業部10A・10Bが過負荷運転とならないように、走行部20A・20Bを制御するものである。
【0047】
図3を用いて、走行速度制御1について説明する。
図3(A)のグラフは、走行速度Vの時系列グラフを示している。図3(B)のグラフは、ブレードインバータ電流値Ibaの時系列グラフを示している。なお、図3(A)及び図3(B)では、実線が走行速度制御1によるグラフ値であって、破線が走行速度制御1を実行しなかった場合によるグラフ値である。
【0048】
走行速度制御1は、作業部10Aの作業負荷が一定となるように、走行速度Vを制御するものである。ここで、作業部10Aの作業負荷に相当する値は、ブレードインバータ電流値Ibaである。また、走行速度Vは、アクスルインバータ周波数Faaに比例するものである。言い換えれば、走行速度制御1は、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、アクスルインバータ周波数Faaを制御するものである。
【0049】
具体的には、電動芝刈作業機100が、芝刈り作業中の時刻t1において、芝が密集している、あるいは、長く生えている領域に到達した場合を想定する。このとき、システムコントローラ50は、時刻t1において、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、走行速度Vを走行速度V2から走行速度V1に減速する。つまり、時刻t1において、作業負荷が大きくなりブレードインバータ電流値Ibaが上昇すると、システムコントローラ50は、アクスルドライバ23A・23Bに減速指令信号を送信し、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、走行速度Vを走行速度V2から走行速度V1に減速する。
【0050】
また、走行速度制御1では、走行速度Vの上限値として上限走行速度Vmaxが設定されている。また、上限走行速度Vmaxは、旋回レバー7A・7B(図1参照)の回動位置によって設定される構成としている。つまり、上限走行速度Vmaxは、旋回レバー7A・7Bを所定の位置まで回動した時の最高速度である。
【0051】
ここで、走行速度制御1は、作業部10Aの作業負荷が一定となるように、走行速度Vを制御するものとして説明したが、作業部10Bであっても同様とする。
【0052】
そして、走行速度制御1では、作業部10Aのブレードインバータ電流値Iba、あるいは、作業部10Bのブレードインバータ電流値Ibbのうち、電流値の大きい方のブレードインバータ電流値が一定となるように、走行速度Vを制御するものとする。
【0053】
走行速度制御1の効果について説明する。
ブレードモータ12A・12Bは、負荷の上昇によって巻線温度が上昇するものである。そのため、ブレードモータ12A・12B自体には、巻線温度の異常上昇を回避するために、保護装置が設けられている。また、ブレードインバータ14A・14Bには、ブレードモータ12A・12Bに過電流を供給しないように、保護装置が設けられている。このように、ブレードモータ12A・12Bの過負荷運転に対しては、ブレードモータ12A・12B自体またはブレードインバータ14A・14Bにそれぞれ保護装置が設けられ、過電流が流れると保護装置により電力供給が遮断される構成とされている。また、電動芝刈作業機100のシステム全体としては、これらの保護装置等が作動して運転停止に至らないように、作業部10A・10Bにおける過負荷運転を回避する必要がある。
【0054】
走行速度制御1によれば、作業部10A・10Bの作業負荷が一定に制御されることによって、作業部10A・10Bの過負荷運転を回避することができる。
【0055】
また、走行速度Vに上限走行速度Vmaxを設定することによって、作業部10A・10Bの作業負荷が著しく小さい時に、電動芝刈作業機100が暴走することを防止できる。
【0056】
さらに、旋回レバー7A・7Bの回動角度に応じた上限走行速度Vmaxを設定する構成によって、操縦者の操縦性を向上できる。
【0057】
図4を用いて、走行速度制御2について説明する。
図4(A)のグラフは、走行速度Vの時系列グラフを示している。図4(B)のグラフは、ブレードインバータ電流値Ibaの時系列グラフを示している。なお、図4(A)及び図4(B)では、実線が走行速度制御2によるグラフ値であって、破線が走行速度制御2を実行しなかった場合によるグラフ値である。
【0058】
走行速度制御2は、作業部10Aの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、走行速度Vを制御するものである。言い換えれば、走行速度制御2は、負荷トルク値となるブレードインバータ電流値Ibaが所定の上限電流値Imaxを越えないように、アクスルインバータ周波数Faaを制御するものである。
【0059】
具体的には、電動芝刈作業機100が、芝刈り作業中において、一定の走行速度V2で作業中に芝が密集している、あるいは、長く生えている領域に到達したと想定する。このとき、作業負荷が増加したため、ブレードインバータ電流値Ibaが上昇する。システムコントローラ50は、時刻t1において、ブレードインバータ電流値Ibaが上限電流値Imaxに到達したと判断すると、ブレードインバータ電流値Ibaが上限電流値Imaxを越えないように、走行速度Vを走行速度V2から走行速度V1に減速する。
【0060】
ここで、走行速度制御2は、作業部10Aの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、走行速度Vを制御するものとして説明したが、作業部10Bであっても同様とする。
【0061】
そして、走行速度制御2では、作業部10Aのブレードインバータ電流値Iba、あるいは、作業部10Bのブレードインバータ電流値Ibbのうち、電流値の大きい方のブレードインバータ電流値が上限電流値Imaxを越えないように、走行速度Vを制御するものとする。
【0062】
走行速度制御2の効果について説明する。
走行速度制御2によれば、作業部10A・10Bの作業負荷が所定の上限負荷を超えないようにすることによって、作業部10A・10Bの過負荷運転を回避することができる。
【0063】
実施形態1のその他の構成について説明する。
実施形態1では、システムコントローラ50によって、作業部10A・10Bの作業負荷が一定となるように(走行速度制御1)、あるいは、作業部10A・10Bの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように(走行速度制御2)、走行速度Vを制御する構成とした。しかし、ブレードドライバ13A・13Bとアクスルドライバ23A・23Bとが、システムコントローラ50を介することなく直接通信して、作業部10A・10Bの作業負荷が一定となるように、あるいは、作業部10A・10Bの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、走行速度Vを制御する構成としても良い。
【0064】
ブレードドライバ13A・13Bとアクスルドライバ23A・23Bとが、システムコントローラ50を介することなく直接通信することによって、急激な負荷変化に対応できる。
【0065】
実施形態1では、走行部20A・20Bの駆動手段をアクスルモータ22A・22Bとする構成としたが、これに限定されない。例えば、走行部20A・20Bの駆動手段をエンジンとする構成とし、エンジンコントローラ(ECU)をシステムコントローラ50と接続し、ブレードインバータ電流値Ibaを一定とするようにエンジンの回転数を制御する構成としても良い。
【0066】
実施形態1では、バッテリ6によって作業部10A・10Bへの電力を供給する構成としたが、これに限定されない。例えば、エンジン駆動による発電機によって作業部10A・10Bへの電力を供給し、走行部20A・20Bの駆動手段をエンジンとする構成としても良い。この場合であれば、ブレードインバータ電流値Ibaを一定とするようにエンジンの回転数を制御する構成としても良い。
[実施形態2]
【0067】
図5〜図6を用いて、実施形態2であるブレード回転速度制御について説明する。
ブレード回転速度制御は、電動芝刈作業機100の作業部10A・10Bが過負荷運転とならないように、ブレード回転速度Vba・Vbbを制御するものである。
【0068】
図5を用いて、ブレード回転速度制御1について説明する。
図5(A)のグラフは、ブレード回転速度Vbaの時系列グラフを示している。図5(B)のグラフは、ブレードインバータ電流値Ibaの時系列グラフを示している。なお、図5(A)及び図5(B)では、実線がブレード回転速度制御1によるグラフ値であって、破線がブレード回転速度制御1を実行しなかった場合によるグラフ値である。
【0069】
ブレード回転速度制御1は、作業部10Aの作業負荷が一定となるように、ブレード回転速度Vbaを制御するものである。ここで、作業部10Aの作業負荷に相当する値は、ブレードインバータ電流値Ibaである。また、ブレード回転速度Vbaは、ブレードインバータ周波数Fbaに比例するものである。言い換えれば、ブレード回転速度制御1は、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、ブレードインバータ周波数Fbaを制御するものである。
【0070】
具体的には、電動芝刈作業機100が、芝刈り作業中の時刻t1において、芝が密集している、あるいは、長く生えている領域に到達した場合を想定する。このとき、システムコントローラ50は、時刻t1において、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、ブレード回転速度Vbaをブレード回転速度Vba2からブレード回転速度Vba1に減速する。つまり、負荷の増加によりブレードインバータ電流値Ibaが上昇したとシステムコントローラ50が判断すると、システムコントローラ50はブレードドライバ13A・13Bに減速指令信号を送信し、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、ブレード回転速度Vbaをブレード回転速度Vba2からブレード回転速度Vba1に減速する。
【0071】
また、ブレード回転速度制御1では、ブレード回転速度Vbaの上限値として上限ブレード回転速度Vbmaxが設定されている。
【0072】
ここで、ブレード回転速度制御1は、作業部10Aの作業負荷が一定となるように、ブレード回転速度Vbaを制御するものとして説明したが、作業部10Bであっても同様とする。
【0073】
ブレード回転速度制御1の効果について説明する。
ブレード回転速度制御1によれば、作業部10A・10Bの作業負荷を一定にすることによって、作業部10A・10Bの過負荷運転を回避することができる。
【0074】
また、ブレード回転速度Vbaとブレード回転速度Vbbとに上限ブレード回転速度Vbmaxを設定することによって、作業部10A・10Bの作業負荷が著しく小さい時に、ブレード11Aまたはブレード11Bが暴走回転することを回避できる。
【0075】
図6を用いて、ブレード回転速度制御2について説明する。
図6(A)のグラフは、ブレード回転速度Vbaの時系列グラフを示している。図6(B)のグラフは、ブレードインバータ電流値Ibaの時系列グラフを示している。なお、図6(A)及び図6(B)では、実線がブレード回転速度制御2によるグラフ値であって、破線がブレード回転速度制御2を実行しなかった場合によるグラフ値である。
【0076】
ブレード回転速度制御2は、作業部10Aの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、ブレード回転速度Vbaを制御するものである。言い換えれば、ブレード回転速度制御2は、ブレードインバータ電流値Ibaが所定の上限電流値Imaxを越えないように、ブレードインバータ周波数Fbaを制御するものである。
【0077】
具体的には、例えば、電動芝刈作業機100が、一定のブレード回転速度Vbaで作業中に芝が密集している、あるいは、長く生えている領域に到達したと想定する。このとき、作業負荷が増加したため、ブレードインバータ電流値Ibaが上昇する。システムコントローラ50は、時刻t1において、ブレードインバータ電流値Ibaが上限電流値Imaxに到達したと判断すると、ブレードインバータ電流値Ibaが上限電流値Imaxを越えないように、ブレード回転速度Vbaをブレード回転速度Vba2からブレード回転速度Vba1に減速する。
【0078】
ここで、ブレード回転速度制御2は、作業部10Aの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、ブレード回転速度Vbaを制御するものとして説明したが、作業部10Bであっても同様とする。
【0079】
ブレード回転速度制御2の効果について説明する。
ブレード回転速度制御2によれば、作業部10A・10Bの作業負荷が所定の上限負荷を超えないようにすることによって、作業部10A・10Bの過負荷運転を回避することができる。
[実施形態3]
【0080】
図7〜図8を用いて、実施形態1であるデッキ高さ制御について説明する。
デッキ高さ制御は、電動芝刈作業機100の作業部10A・10Bが過負荷運転とならないように、デッキ3の高さ位置(作業高さ位置)を制御するものである。
【0081】
図7を用いて、デッキ高さ制御1について説明する。
図7(A)のグラフは、デッキ高さ位置Hの時系列グラフを示している。図7(B)のグラフは、ブレードインバータ電流値Ibaの時系列グラフを示している。なお、図7(A)及び図7(B)では、実線がデッキ高さ制御1によるグラフ値であって、破線がデッキ高さ制御1を実行しなかった場合によるグラフ値である。
【0082】
デッキ高さ制御1は、作業部10Aの作業負荷が一定となるように、デッキ高さ位置Hを制御するものである。ここで、作業部10Aの作業負荷に相当する値は、ブレードインバータ電流値Ibaである。すなわち、デッキ高さ制御1は、言い換えれば、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、デッキ高さ位置Hの調整を制御するものである。
【0083】
具体的には、電動芝刈作業機100が、芝刈り作業中の時刻t1において、芝が密集している、あるいは、長く生えている領域に到達した場合を想定する。このとき、システムコントローラ50は、時刻t1において、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、デッキ高さ位置Hをデッキ高さ位置H1からデッキ高さ位置H2に調整する。つまり、時刻t1において、負荷の増加によりブレードインバータ電流値Ibaが上昇したとシステムコントローラ50が判断すると、システムコントローラ50はデッキドライバ33に上昇指令信号を送信し、ブレードインバータ電流値Ibaが一定となるように、デッキ高さ調整機構31を作動させてデッキ3を上昇させる。
【0084】
また、デッキ高さ制御1では、デッキ高さ位置Hの下限位置として下限デッキ高さ位置Hminが設定されている。
【0085】
デッキ高さ制御1では、作業部10Aのブレードインバータ電流値Iba、あるいは、作業部10Bのブレードインバータ電流値Ibbのうち、電流値の大きい方のインバータ電流値が一定となるように、デッキ高さ位置Hの調整を制御するものとする。
【0086】
デッキ高さ制御1の効果について説明する。
デッキ高さ制御1によれば、作業部10A・10Bの作業負荷を一定にすることによって、作業部10A・10Bの過負荷運転を回避することができる。
【0087】
また、デッキ高さ位置Hに下限デッキ高さ位置Hminを設定することによって、作業部10A・10Bの作業負荷が著しく小さい時に、デッキ3を急に下げ過ぎて地表面と衝突することがない。
【0088】
図8を用いて、デッキ高さ制御2について説明する。
図8(A)のグラフは、デッキ高さ位置Hの時系列グラフを示している。図8(B)のグラフは、ブレードインバータ電流値Ibaの時系列グラフを示している。なお、図8(A)及び図8(B)では、実線がデッキ高さ制御2によるグラフ値であって、破線がデッキ高さ制御2を実行しなかった場合によるグラフ値である。
【0089】
デッキ高さ制御2は、作業部10Aの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、デッキ高さ位置Hの調整を制御するものである。言い換えれば、デッキ高さ制御2は、ブレードインバータ電流値Ibaが所定の上限電流値Imaxを越えないように、デッキ高さ位置Hの調整を制御するものである。
【0090】
具体的には、電動芝刈作業機100が、一定のデッキ高さ位置Hで芝刈り作業中に、芝が密集している、あるいは、長く生えている領域に到達したと想定する。このとき、作業負荷が増加したため、ブレードインバータ電流値Ibaが上昇する。システムコントローラ50は、時刻t1において、ブレードインバータ電流値Ibaが上限電流値Imaxに到達したと判断すると、ブレードインバータ電流値Ibaが上限電流値Imaxを越えないように、デッキドライバ33に上昇指令信号を送信し、デッキ高さ調整機構31を作動させて、デッキ高さ位置Hをデッキ高さ位置H1からデッキ高さ位置H2に調整する。
【0091】
ここで、デッキ高さ制御2は、作業部10Aの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、デッキ高さ位置Hの調整を制御するものとして説明したが、作業部10Bであっても同様とする。
【0092】
そして、デッキ高さ制御2では、作業部10Aのブレードインバータ電流値Iba、あるいは、作業部10Bのブレードインバータ電流値Ibbのうち、電流値の大きい方のブレードインバータ電流値が上限電流値Imaxを越えないように、デッキ高さ位置Hの調整を制御するものとする。
【0093】
走行速度制御2の効果について説明する。
デッキ高さ制御2によれば、作業部10A・10Bの作業負荷が所定の上限負荷を超えないようにすることによって、作業部10A・10Bの過負荷運転を回避することができる。
【0094】
実施形態3のその他の構成について説明する。
実施形態3では、システムコントローラ50によって、作業部10A・10Bの作業負荷が一定となるように(デッキ高さ制御1)、あるいは、作業部10A・10Bの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように(デッキ高さ制御2)、デッキ高さ位置Hの調整を制御する構成とした。しかし、ブレードドライバ13A・13Bとデッキドライバ33とが、システムコントローラ50を介することなく直接通信して、作業部10A・10Bの作業負荷が一定となるように、あるいは、作業部10A・10Bの作業負荷が所定の上限負荷を超えないように、デッキ高さ位置Hの調整を制御する構成としても良い。
【0095】
ブレードドライバ13・13Bとデッキドライバ33とが、システムコントローラ50を介することなく直接通信することによって、急激な負荷変化に対応できる。
[実施形態1〜3]
【0096】
電動芝刈作業機100では、実施形態1〜3のそれぞれを複数組み合わせて芝刈作業を行うこともできる。このとき、実施形態1〜3の優先順位は、実施形態1、実施形態2、実施形態3の順とする。例えば、実施形態1の走行速度制御1と、実施形態2のブレード回転速度制御1とを組み合わせた場合には、走行速度制御1、ブレード回転速度制御1の順で制御が実行される。
【符号の説明】
【0097】
3 デッキ
6 バッテリ
8 トランスミッション
10A 作業部
10B 作業部
11A ブレード
11B ブレード
12A ブレードモータ
12B ブレードモータ
13A ブレードドライバ
13B ブレードドライバ
14A ブレードインバータ
14B ブレードインバータ
20A 走行部
20B 走行部
21A 走行輪
21B 走行輪
22A アクスルモータ
22B アクスルモータ
23A アクスルドライバ
23B アクスルドライバ
24A アクスルインバータ
24B アクスルインバータ
30 デッキ高さ調整部
31 デッキ高さ調整機構
32 デッキモータ
33 デッキドライバ
50 システムコントローラ
100 電動芝刈作業機
Faa アクスルインバータ周波数
Fab アクスルインバータ周波数
Fba ブレードインバータ周波数
Fbb ブレードインバータ周波数
H デッキ高さ位置
Iba ブレードインバータ電流値
Ibb ブレードインバータ電流値
Vba ブレード回転速度
Vbb ブレード回転速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部によって移動しながら、電力変換器から供給される電力により駆動される作業部によって作業を行う移動式電動作業機であって、
前記電力変換器からの負荷トルク値に基づいて、前記作業部の作業負荷が一定となるように、前記作業部の作業速度を制御する、
移動式電動作業機。
【請求項2】
請求項1記載の移動式電動作業機であって、
前記作業速度は、上限が設定される、
移動式電動作業機。
【請求項3】
移動部によって移動しながら、電力変換器から供給される電力により駆動される作業部によって作業を行う移動式電動作業機であって、
前記電力変換器からの負荷トルク値に基づいて、前記作業部の作業負荷が所定負荷を超えないように、前記作業部の作業速度を制御する、
移動式電動作業機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の移動式電動作業機であって、
前記作業部及び前記電力変換器が複数ある場合には、最大の前記負荷トルク値を負荷トルク値とする、
移動式電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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