説明

移動方向検出装置、移動方向検出方法及びプログラム

【課題】移動体の移動方向を迅速に検出する。
【解決手段】比較的高速なシャッター速度で撮像したデジタル画像P1に含まれる移動体40の画像のエッジにほぼ一致する直線を規定する。次に、比較的低速なシャッター速度で撮像したデジタル画像P2に含まれる移動体40の画像のエッジにほぼ一致する直線を規定する。次に、デジタル画像P2上に規定された直線のうち、デジタル画像P1上の直線と相関のない直線を抽出する。次に、抽出された直線に沿った方向が移動体の移動方向と判定する。これにより、処理に長時間を要するテンプレートマッチング処理等を行う必要がなくなり、迅速に移動体の移動方向を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動方向検出装置、移動方向検出方法及びプログラムに関し、更に詳しくは、移動体の移動方向を検出する移動方向検出装置、移動体の移動方向を検出するための移動方向検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの移動体を撮影した画像に含まれる移動体を特定し、追跡するシステムなどでは、異なる時刻に撮影された複数の画像に対してテンプレートマッチング処理が行われ、画像に含まれる移動体の移動方向及び速度などが検出される。このようなシステムでは、移動体の移動方向及び速度などを検出することで、移動体の追跡精度や検出精度などを向上させることが可能となる。
【0003】
上述のテンプレートマッチング処理は、例えば特許文献1に開示されているように、まず現在の画像と過去の画像とに差分処理を施すことにより、両画像間の変化点を抽出する。次に、変化点からなる画像を移動体のテンプレートとして用いて、現在の画像及び過去の画像に含まれる移動体の位置を検出する。そして、それぞれの画像から検出した移動体の位置の相違に基づいて、移動体の移動方向及び移動速度などを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−208059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したテンプレートマッチング処理は、移動体の移動方向及び移動速度などを精度よく検出することができるが、画像処理を行う際に取り扱うデータ量が多くなってしまう。このため、移動体の移動方向等の検出に長時間を要するという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、移動体の移動方向に関する情報を迅速に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の移動方向検出装置は、移動体を第1の露光時間と、前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する撮像手段と、前記第1の露光時間で撮像して得た第1の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する第1規定手段と、前記第2の露光時間で撮像して得た第2の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する第2規定手段と、前記第1の画像に規定された直線に対応する前記第2の画像に規定された直線以外の、前記第2の画像に規定された直線に平行な方向の一方を、前記移動体の移動方向と判定する判定手段と、を備える。
【0008】
また、前記撮像手段は、第1のシャッター速度と、前記第1のシャッター速度よりも遅い第2のシャッター速度とによって、それぞれ前記第1の画像及び前記第2の画像を撮像することとしてもよい。
【0009】
また、前記撮像手段は、多重露光によって前記第2の画像を撮像することとしてもよい。
【0010】
本発明の移動方向検出方法は、移動体を第1の露光時間で撮像する工程と、前記移動体を前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する工程と、前記第1の露光時間で撮像して得た第1の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する工程と、前記第2の露光時間で撮像して得た第2の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する工程と、前記第1の画像に規定された直線に対応する前記第2の画像に規定された直線以外の、前記第2の画像に規定された直線に平行な方向の一方を、前記移動体の移動方向と判定する工程と、を含む。
【0011】
本発明のプログラムは、移動方向検出装置の制御装置に、移動体を第1の露光時間で撮像する手順と、前記移動体を前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する手順と、前記第1の露光時間で撮像して得た第1の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する手順と、前記第2の露光時間で撮像して得た第2の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する手順と、前記第1の画像に規定された直線に対応する前記第2の画像に規定された直線以外の、前記第2の画像に規定された直線に平行な方向の一方を、前記移動体の移動方向と判定する手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の移動方向を迅速に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る移動方向検出装置のブロック図である。
【図2】第1のシャッター速度で撮像したデジタル画像を示す図である。
【図3】第2のシャッター速度で撮像したデジタル画像を示す図である。
【図4】第1規定部の動作を説明するための図である。
【図5】第2規定部の動作を説明するための図である。
【図6】撮像装置の視野内に移動体が進入する前に撮像されたデジタル画像を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る移動方向検出装置のブロック図である。
【図8】移動方向検出装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図1〜図6を参照しつつ説明する。図1は本実施形態にかかる移動方向検出装置10の概略的な構成を示すブロック図である。移動方向検出装置10は、異なる露光時間で撮像することにより得られた2枚の画像に写った移動体の移動方向を検出し、その検出結果を外部装置などに出力する装置である。この移動方向検出装置10は、図1に示されるように、撮像装置20、第1規定部31,第2規定部32,特定部33、及び判定部34を有している。
【0015】
前記撮像装置20は、被写体を撮像することにより取得した画像を電気信号に変換して出力するCCDカメラを含んで構成されている。この撮像装置20は、移動体40を検知すると、比較的高速な第1のシャッター速度で移動体40を撮像するとともに、比較的低速な第2のシャッター速度で移動体40を撮像する。
【0016】
図2は、X軸方向に沿って移動する移動体40を撮像して得られたデジタル画像P1を示す図である。また、図3は、X軸方向に沿って移動する移動体40を撮像して得られたデジタル画像P2を示す図である。第1のシャッター速度は移動体40の移動速度に対して比較的高速であるため、移動体40は、図2に示されるようにほぼぶれることなくデジタル画像P1に写りこむ。
【0017】
一方、第2のシャッター速度は、移動体40の移動速度に対して比較的低速であるため、移動体40の画像は、図3に示されるように移動方向(X軸方向)に直交する境界がぶれた状態でデジタル画像P2に写りこむ。移動体40がX軸方向へ移動する場合には、移動体40の画像のX軸方向の両端では、ボディ40aのエッジがいわゆる被写体ぶれによって消失する一方で、移動方向に直交するZ軸方方向の両端では、移動体40のエッジが保存される。また、タイヤ40bの画像の上端と下端などでは、移動体の移動にともない移動方向に平行なエッジが発生する。
【0018】
撮像装置20は、移動体40を撮像して得られたデジタル画像P1とデジタル画像P2とを、画像処理装置30へ出力する。
【0019】
前記画像処理装置30は、第1規定部31、第2規定部32、特定部33、及び判定部34を有している。
【0020】
前記第1規定部31は、撮像装置20から出力されたデジタル画像P1に写り込んだ移動体40のエッジを抽出し、抽出したエッジにほぼ一致する直線を規定する。以下、図4を参照しつつ、第1規定部31の動作について説明する。
【0021】
第1規定部31は、デジタル画像P1に例えばラベリング処理などを施すことにより、デジタル画像P1に写り込んだオブジェクトを抽出する。これにより例えば、デジタル画像P1に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像とが抽出される。
【0022】
次に、第1規定部31は、デジタル画像P1に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像の輪郭を検出する。移動体40等の輪郭の検出は、例えば、デジタル画像P1を構成するピクセルの輝度値が、隣接するピクセル間で急峻に変化する変化領域を検出する。そして、ラベリング処理によって検出した移動体40等の画像の境界と一致する変化領域を移動体40のエッジとして抽出する。変化領域の検出は、例えばソーベルフィルタなどを用いる方法が考えられる。
【0023】
具体的には、第1規定部31は、デジタル画像P1に含まれる移動体40の画像に関しては、図4に示されるように、ボディ40aの輪郭をエッジE1P1として抽出し、タイヤ40bの輪郭をエッジE2P1として抽出する。また、地面Fの画像に関しては、エッジEFP1を抽出する。
【0024】
次に、第1規定部31は、抽出したエッジE1P1、E2P1、及びエッジEFP1に一致する直線を規定する。例えば移動体40を構成するボディ40aのエッジE1P1は、ほぼ直線状のエッジE1a、E1b、E1c、E1dと、上記エッジを結ぶ曲線状のエッジとによって構成されている。第1規定部31は、図4に示されるように、ほぼ直線状のエッジE1a〜E1dに一致する直線L1、L1、L1、L1をデジタル画像P1上に規定する。同様に、第1規定部31は、地面Fのほぼ直線状のエッジEFP1に一致する直線L1を、デジタル画像P1上に規定する。一方、移動体40を構成するタイヤ40bのエッジE2P1は半径が比較的小さい円状である。このため、ここではエッジE2P1に一致する直線が規定されることはない。
【0025】
第1規定部31は、デジタル画像P1上に直線L1〜L1を規定すると、これらの直線L1〜L1に関する情報を出力する。
【0026】
前記第2規定部32は、撮像装置20から出力されたデジタル画像P2に写り込んだ移動体40のエッジを抽出し、抽出したエッジにほぼ一致する直線を規定する。以下、図5を参照しつつ、第2規定部32の動作について説明する。
【0027】
第2規定部32は、デジタル画像P2に例えばラベリング処理などを施すことにより、デジタル画像P2に写り込んだオブジェクトを抽出する。これにより例えば、デジタル画像P2に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像とが抽出される。
【0028】
次に、第2規定部32は、デジタル画像P2に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像の輪郭を検出する。移動体40等の輪郭の検出は、例えば、デジタル画像P2を構成するピクセルの輝度値が、隣接するピクセル間で急峻に変化する変化領域を検出する。そして、ラベリング処理によって検出した移動体40等の画像の境界と一致する変化領域を移動体40のエッジとして抽出する。変化領域の検出は、第1規定部31での処理と同様にソーベルフィルタなどを用いる方法が考えられる。
【0029】
上述したように、デジタル画像P2は、移動体40の移動速度に対して比較的低速な第2のシャッター速度で撮像された画像である。このため、移動体40の画像は、図5に示されるように移動方向(X軸方向)に直交する境界がぶれた状態で写り込んでいる。これにより、移動体40の画像の移動方向に直交する方向の境界では、隣接する輝度相互間の輝度値の差が小さくなり、ピクセルの輝度が隣接するピクセル間で急峻に変化することがない。このため、第2規定手段32によって、デジタル画像P2の変化領域が、移動体40の画像の+X側及びーX側で検出されることはない
【0030】
また、シャッター速度との関係で移動体40は、デジタル画像P2の中に、実際よりも移動方向(X軸方向)に伸びた状態で写り込む。このため、移動体40を構成するボディ40a及びタイヤ40bの+Z側及びーZ側の端部の輪郭は、移動方向に平行となる。
【0031】
したがって、第2規定部32は、図5に示されるように、移動体40を構成するボディ40aのエッジE1P2として、ボディ40aの+Z側及び−Z側の輪郭それぞれに対応するエッジE1b及びエッジE1dを抽出する。そして、移動体40を構成するタイヤ40bのエッジE2P2として、タイヤ40bの+Z側及び−Z側の輪郭それぞれに対応するエッジE2a及びエッジE2bを抽出する。また、地面Fの画像に関しては、エッジEFP2を抽出する。
【0032】
次に、第2規定部32は、抽出したエッジE1P2を構成するエッジE1b,E1d、エッジE2P2を構成するエッジE2a,E2b、及びエッジEFP2に一致する直線L2〜L2を、デジタル画像P2上に規定する。そして、第2規定部32は、これらの直線L2〜L2に関する情報を出力する。
【0033】
前記特定部33は、図4及び図5を参照するとわかるように、デジタル画像P1に規定された直線L1〜L1と、デジタル画像P2に規定されたL2〜L2とを比較して、デジタル画像P2上に規定された直線のうち、デジタル画像P1上の直線と相関のない直線を特定する。
【0034】
例えば、デジタル画像P2上の直線L2は、デジタル画像P1上の直線L1と位置的に相関がある。一方、デジタル画像上の直線L2は、デジタル画像P1上に位置的に相関がある直線をもたない。特定部33は、ここでは、デジタル画像P2上の直線のうち、デジタル画像P1上の直線と相関のない直線として直線L2及び直線L2を特定する。そして、特定した直線L2及び直線L2に関する情報を出力する。
【0035】
前記判定部34は、特定部33から出力された直線L2及び直線L2に関する情報に基づいて、移動体40の移動方向を判定する。
【0036】
例えば、まず判定部34は、直線L2及び直線L2に平行な方向(−X方向及び+X方向)のうちのいずれかが移動体40の移動方向であると推定する。
【0037】
次に、一例として図6に示されるように、撮像装置20の視野内に移動体40が進入する前に撮像されたデジタル画像P0とデジタル画像P1とについて公知の差分処理を施し、撮像装置20の視野内におけるデジタル画像P1に含まれる移動体40の位置座標(XP1、ZP1)を算出する。同様に、デジタル画像P0とデジタル画像P2とについても差分処理を施し、撮像装置20の視野内におけるデジタル画像P2に含まれる移動体40の位置座標(XP2、ZP2)を算出する。なお、ここでの位置座標は、移動体40の中心の位置座標をいう。
【0038】
次に、判定部34は、位置座標(XP1、ZP1)を始点とし、位置座標(XP2、ZP2)を終点とする方向ベクトルを算出する。そして、直線L2及び直線L2に平行な方向(−X方向及び+X方向)のうち、方向ベクトルとほぼ向きが等しい方向(+X方向)を移動体40の移動方向と判定する。そして、この判定結果を例えば外部装置などへ出力する。
【0039】
以上説明したように、本第1の実施形態では、比較的高速なシャッター速度で撮像したデジタル画像P1に含まれる移動体40の画像のエッジにほぼ一致する直線が規定される。次に、比較的低速なシャッター速度で撮像したデジタル画像P2に含まれる移動体40の画像のエッジにほぼ一致する直線が規定される。次に、デジタル画像P2上に規定された直線のうち、デジタル画像P1上の直線と相関のない直線が抽出される。次に、抽出された直線に沿った方向が移動体の移動方向と判定される。これにより、本実施形態では、処理に長時間を要するテンプレートマッチング処理を行う必要がなくなり、迅速に移動体の移動方向を検出することができる。
【0040】
特に、移動体の検知・追跡を行うシステムにおいては、デジタルカメラなどの撮像装置で撮像したデジタル画像をDSPなどで処理する場合、複雑な処理が必要となる。例えば、上述の移動方向検出装置を駐車場の管理に応用する場合には、駐車場の入場口で検出した車両を追跡するために、あるフレームで検出した車両が、次のフレームではどの位置まで移動しているかを検知する必要がある。この場合に、テンプレートマッチング処理などによって車両の位置を検出すると、マッチング回数によっては検出までに長時間を要してしまうことがある。本実施形態にかかる移動方向検出装置10では、短時間に移動体のおおよその移動方向を検出することができるので、車両管理の迅速化、及び複数車両の同時検出・追跡などを精度よく行うことができる。
【0041】
また、本実施形態にかかる移動方向検出装置10では、移動体40の移動方向を検出する際に取り扱うデータ量が、テンプレートマッチング処理を行う際に取り扱うデータ量よりも少なくなる。このため、画像処理装置30の処理能力やメモリに制限があるシステムにおいても、迅速に移動体40の移動方向を検出することが可能となる。
【0042】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図7及び図8を参照しつつ説明する。なお、第1の実施形態と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。
【0043】
本実施形態にかかる移動方向検出装置10は、画像処理装置30が、一般的なコンピュータ、又はワークステーションなどの装置と同様の構成によって実現されている点で、第1の実施形態にかかる移動方向検出装置10と相違している。
【0044】
図7は、移動方向検出装置10の物理的な構成を示すブロック図である。図7に示されるように、移動方向検出装置10は、撮像装置20、コンピュータからなる画像処理装置30から構成されている。
【0045】
前記画像処理装置30は、CPU(Central Processing Unit)30a、主記憶部30b、補助記憶部30c、表示部30d、入力部30e、インターフェイス部30f、及び上記各部を相互に接続するシステムバス30gを含んで構成されている。
【0046】
CPU30aは、補助記憶部30cに記憶されているプログラムに従って、撮像装置20によって撮像された画像に対して、後述する画像処理を実行する。
【0047】
主記憶部30bは、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成され、CPU30aの作業領域として用いられる。
【0048】
補助記憶部30cは、ROM(Read Only Memory)、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリを含んで構成されている。この補助記憶部30cは、CPU30aが実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。また、CPU30aによる処理結果などを含む情報を記憶する。
【0049】
表示部30dは、CRT(Cathode Ray Tube)またはLCD(Liquid Crystal Display)などを含んで構成され、CPU30aの処理結果を表示する。本実施形態では、デジタル画像P1,P2に対する処理が実行されるごとに、その処理結果としての画像などが表示される。
【0050】
入力部30eは、キーボードやマウス等のポインティングデバイスを含んで構成されている。オペレータの指示は、この入力部30eを介して入力され、システムバス30gを経由してCPU30aに通知される。
【0051】
インターフェイス部30fは、シリアルインターフェイスまたはLAN(Local Area Network)インターフェイス等を含んで構成されている。撮像装置20は、インターフェイス部30fを介してシステムバス30gに接続される。
【0052】
図8のフローチャートは、画像処理装置30のCPU30aによって実行されるプログラムの一連の処理アルゴリズムに対応している。以下、図8を参照しつつ、画像処理装置30における画像処理について説明する。なお、この画像処理は、CPU30aが、補助記憶部30cから読み出したプログラムに従って、主記憶部30b、補助記憶部30c、表示部30d、インターフェイス部30fを統括的に制御することにより実現される。
【0053】
まず、最初のステップS101では、CPU30aは、撮像装置20の視野内に移動体40が進入したか否かを判断する。具体的にCPU30aは、例えば撮像装置20の視野内の画像を所定の時間間隔でサンプリングする。次に、サンプリングした画像と、一例として図6に示されるように、撮像装置20の視野内に移動体40が進入する前に撮像されたデジタル画像P0とについて差分処理を施す。そして、対応するピクセル間の輝度の差の絶対値を積算して得られる値が所定の閾値以上である場合に、移動体が撮像装置40の視野内に存在すると判断する。CPU30aは、ここでの判断が肯定されると次のステップS102へ移行する。
【0054】
次のステップS102では、CPU30aは、比較的高速な第1のシャッター速度で移動体40を撮像する。第1のシャッター速度は移動体の移動速度に対して比較的高速であるため、移動体40は、図2に示されるようにほぼぶれることなくデジタル画像P1に写りこむ。
【0055】
次のステップS103では、CPU30aは、比較的低速な第2のシャッター速度で移動体40を撮像する。第2のシャッター速度は、移動体40の移動速度に対して比較的低速であるため、移動体40の画像は、図3に示されるように移動方向(X軸方向)に直交する境界がぶれた状態でデジタル画像P2に写りこむ。
【0056】
次のステップS104では、CPU30aは、デジタル画像P1に例えばラベリング処理などを施すことにより、デジタル画像P1に写り込んだオブジェクトを抽出する。これにより例えば、デジタル画像P1に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像とが抽出される。
【0057】
次のステップS105では、CPU30aは、デジタル画像P1に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像の輪郭を検出する。移動体40等の輪郭の検出は、例えば、デジタル画像P1を構成するピクセルの輝度値が、隣接するピクセル間で急峻に変化する変化領域を検出する。そして、ラベリング処理によって検出した移動体40等の画像の境界と一致する変化領域を移動体40のエッジとして抽出する。
【0058】
具体的にはCPU30aは、デジタル画像P1に含まれる移動体40の画像に関しては、図4に示されるように、ボディ40aの輪郭をエッジE1P1として抽出し、タイヤ40bの輪郭をエッジE2P1として抽出する。また、地面Fの画像に関しては、エッジEFP1を抽出する。
【0059】
次のステップS106では、CPU30aは、抽出したエッジE1P1、E2P1、及びエッジEFP1に一致する直線を規定する。例えば移動体40を構成するボディ40aのエッジE1P1は、ほぼ直線状のエッジE1a、E1b、E1c、E1dと、上記エッジを結ぶ曲線状のエッジとによって構成されている。CPU30aは、図4に示されるように、ほぼ直線状のエッジE1a〜E1dに一致する直線L1、L1、L1、L1をデジタル画像P1上に規定する。同様に、CPU30aは、地面Fのほぼ直線状のエッジEFP1に一致する直線L1を、デジタル画像P1上に規定する。一方、移動体40を構成するタイヤ40bのエッジE2は半径が比較的小さい円状である。このため、ここではエッジE2に一致する直線が規定されることはない。
【0060】
次のステップS107では、CPU30aは、デジタル画像P2に例えばラベリング処理などを施すことにより、デジタル画像P2に写り込んだオブジェクトを抽出する。これにより例えば、デジタル画像P2に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像とが抽出される。
【0061】
次のステップS108では、CPU30aは、デジタル画像P2に写り込んだ移動体40の画像と、地面Fの画像の輪郭を検出する。移動体40等の輪郭の検出は、例えば、デジタル画像P1を構成するピクセルの輝度値が、隣接するピクセル間で急峻に変化する変化領域を検出する。そして、ラベリング処理によって検出した移動体40等の画像の境界と一致する変化領域を移動体40のエッジとして抽出する。
【0062】
具体的には、CPU30aは、図5に示されるように、移動体40を構成するボディ40aのエッジE1P2として、ボディ40aの+Z側及び−Z側の輪郭それぞれに対応するエッジE1b及びエッジE1dを抽出する。そして、移動体40を構成するタイヤ40bのエッジE2P2として、タイヤ40bの+Z側及び−Z側の輪郭それぞれに対応するエッジE2a及びエッジE2b抽出する。また、地面Fの画像に関しては、エッジEFP2として抽出する。
【0063】
次のステップS109では、CPU30aは、抽出したエッジE1P2を構成するエッジE1b,E1d、エッジE2P2を構成するエッジE2a,E2b、及びエッジEFP2に一致する直線L2〜L2を、デジタル画像P2上に規定する。
【0064】
次のステップS110では、CPU30aは、図4及び図5を参照するとわかるように、デジタル画像P1に規定された直線L1〜L1と、デジタル画像P2に規定されたL2〜L2とを比較して、デジタル画像P2上に規定された直線のうち、デジタル画像P1上の直線と相関のない直線を特定する。
【0065】
例えば、デジタル画像P2上の直線L2は、デジタル画像P1上の直線L1と位置的に相関がある。一方、デジタル画像上の直線L2は、デジタル画像P1上に位置的に相関がある直線をもたない。CPU30aは、ここでは、デジタル画像P2上の直線のうち、デジタル画像P1上の直線と相関のない直線として直線L2及び直線L2を特定する。
【0066】
次にステップS111では、CPU30aは、直線L2及び直線L2に平行な方向(−X方向及び+X方向)のうちのいずれかが移動体40の移動方向であると推定する。
【0067】
次のステップS112では、CPU30aは、一例として図6に示されるように、撮像装置20の視野内に移動体40が進入する前に撮像されたデジタル画像P0とデジタル画像P1とについて差分処理を施し、撮像装置20の視野内におけるデジタル画像P1に含まれる移動体40の位置座標(以下、位置座標(XP1、ZP1)と表示する)を算出する。同様に、デジタル画像P0とデジタル画像P2とについても差分処理を施し、撮像装置20の視野内におけるデジタル画像P2に含まれる移動体40の位置座標(以下、位置座標(XP2、ZP2)と表示する)を算出する。そして、CPU30aは、位置座標(XP1、ZP1)を始点とし、位置座標(XP2、ZP2)を終点とする方向ベクトルを規定する。
【0068】
次のステップS113では、CPU30aは、直線L2及び直線L2に平行な方向(−X方向及び+X方向)のうち、方向ベクトルとほぼ向きが等しい方向(+X方向)を移動体40の移動方向と判定する。
【0069】
次のステップS114では、CPU30aは、ステップS113での判定結果を例えば外部装置などへ出力する。
【0070】
以上説明したように、本第2の実施形態では、比較的高速なシャッター速度で撮像したデジタル画像P1に含まれる移動体40の画像のエッジにほぼ一致する直線が規定される。次に、比較的低速なシャッター速度で撮像したデジタル画像P2に含まれる移動体40の画像のエッジにほぼ一致する直線が規定される。次に、デジタル画像P2上に規定された直線のうち、デジタル画像P1上の直線と相関のない直線が抽出される。次に、抽出された直線に沿った方向が移動体の移動方向と判定される。これにより、本実施形態では、処理に長時間を要するテンプレートマッチング処理を行う必要がなくなり、迅速に移動体の移動方向を検出することができる。
【0071】
また、本実施形態にかかる移動方向検出装置10では、移動体40の移動方向を検出する際に取り扱うデータ量が、テンプレートマッチング処理を行う際に取り扱うデータ量よりも少なくなる。このため、画像処理装置30の処理能力やメモリに制限があるシステムにおいても、迅速に移動体40の移動方向を検出することが可能となる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記各実施形態では、移動体40がX軸方向へ移動する場合について説明したが、本発明は、移動体40がX軸方向以外へ移動する場合にも迅速に移動方向を検出することができる。
【0074】
また、上記各実施形態では、異なるシャッター速度で移動体40を撮像したが、これに限らず例えば多重露光を行って移動体40を撮像してもよい。この場合にも、図3に示されるように、移動体40の画像は、進行方向に平行の軸方向のエッジが消失する。したがって、上述した方法で同様に移動体40の移動方向を検出することができる。
【0075】
なお、上記各実施形態に係る画像処理装置30の機能は、専用のハードウェアによっても、また、通常のコンピュータシステムによっても実現することができる。
【0076】
また、第2の実施形態において画像処理装置30の補助記憶部30cに記憶されているプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto-Optical disk)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータにインストールすることにより、上述の処理を実行する装置を構成することとしてもよい。
【0077】
また、プログラムをインターネット等の通信ネットワーク上の所定のサーバ装置が有するディスク装置等に格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータにダウンロード等するようにしても良い。
【0078】
また、プログラムは、通信ネットワークを介して転送しながら起動実行することとしてもよい。
【0079】
また、プログラムは、全部又は一部をサーバ装置上で実行させ、その処理に関する情報を通信ネットワークを介して送受信しながら、上述の画像処理を実行することとしてもよい。
【0080】
なお、上述の機能を、OS(Operating System)が分担して実現する場合又はOSとアプリケーションとの協働により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納して配布してもよく、また、コンピュータにダウンロード等しても良い。
【0081】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の移動方向検出装置、移動方向検出方法及びプログラムは、移動体の移動方向を検出するのに適している。
【符号の説明】
【0083】
10 移動方向検出装置
20 撮像装置
30 画像処理装置
30a CPU
30b 主記憶部
30c 補助記憶部
30d 表示部
30e 入力部
30f インターフェイス部
30g システムバス
31 第1規定部
32 第2規定部
33 特定部
34 判定部
40 移動体
40a ボディ
40b タイヤ
F 地面
P0、P1、P2 デジタル画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を第1の露光時間と、前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する撮像手段と、
前記第1の露光時間で撮像して得た第1の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する第1規定手段と、
前記第2の露光時間で撮像して得た第2の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する第2規定手段と、
前記第1の画像に規定された直線に対応する前記第2の画像に規定された直線以外の、前記第2の画像に規定された直線に平行な方向の一方を、前記移動体の移動方向と判定する判定手段と、
を備える移動方向検出装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、第1のシャッター速度と、前記第1のシャッター速度よりも遅い第2のシャッター速度とによって、それぞれ前記第1の画像及び前記第2の画像を撮像する請求項1に記載の移動方向検出装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、多重露光によって前記第2の画像を撮像する請求項1に記載の移動方向検出装置。
【請求項4】
移動体を第1の露光時間で撮像する工程と、
前記移動体を前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する工程と、
前記第1の露光時間で撮像して得た第1の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する工程と、
前記第2の露光時間で撮像して得た第2の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する工程と、
前記第1の画像に規定された直線に対応する前記第2の画像に規定された直線以外の、前記第2の画像に規定された直線に平行な方向の一方を、前記移動体の移動方向と判定する工程と、
を含む移動体の移動方向検出方法。
【請求項5】
移動方向検出装置の制御装置に、
移動体を第1の露光時間で撮像する手順と、
前記移動体を前記第1の露光時間よりも長い第2の露光時間で撮像する手順と、
前記第1の露光時間で撮像して得た第1の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する手順と、
前記第2の露光時間で撮像して得た第2の画像に対して、前記移動体のエッジに一致する直線を規定する手順と、
前記第1の画像に規定された直線に対応する前記第2の画像に規定された直線以外の、前記第2の画像に規定された直線に平行な方向の一方を、前記移動体の移動方向と判定する手順と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−244301(P2010−244301A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92376(P2009−92376)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】