説明

移動端末および測位システム

【課題】大容量メモリの搭載、および煩雑なデータ転送処理の実行を不要としつつ、正確な測位結果を選択する。
【解決手段】測位用衛星からのGPS信号Sgに基づいて現在位置を測位して測位結果を出力するGPS処理部12と、必要数の測位用衛星を組み合わせたグループ毎に対応する測位結果をGPS処理部12に出力させると共に各グループ毎のDOP値を比較して最も正確な測位結果を選択する制御部17Aとを備え、制御部17Aは、GPS信号Sgを受信可能な測位用衛星が必要数を超えているときに、携帯端末1Aの高度を示す高度情報(気圧センサ16からのセンサ信号に基づいて演算した高度)を取得し、各グループ毎の各測位結果に含まれている高度値が高度情報に基づいて規定した許容高度範囲内である測位結果を特定し、特定した測位結果のうちのDOP値が最も小さいグループに対応する測位結果を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位用衛星からの測位用信号を受信して現在位置を測位する移動端末、およびその移動端末を備えた測位システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の移動端末および測位システムとして、GPS(Global Positioning System :全地球測位システム)衛星から発信されたGPS信号(電波)を利用して現在位置を測位するレシーバおよび測位システムが特表2004−514144号公報に開示されている。この場合、同公報に開示されているレシーバは、緯度および経度から高度を算出可能なALTテーブルを記憶することにより、高度方向の測位誤差を小さくして高精度な測位結果を出力可能に構成されている。また、同公報に開示されている測位システムは、上記のALTテーブルをレシーバに配信する遠隔処理ステーションを備え、レシーバによる測位時に高度方向の測位誤差を小さくして高精度な測位結果を出力可能に構成されている。この場合、この種の移動端末および測位システムでは、マルチパス対策として、利用可能なGPS衛星の数が必要数を超えているときに、利用する衛星の組み合わせを変えてそれぞれ測位した測位結果のPDOP(Position Dilution Of Precision)値等を比較することにより、最も正確と思われる測位結果を選択している。
【特許文献1】特表2004−514144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のレシーバおよび測位システムには、以下の問題点がある。すなわち、従来のレシーバおよび測位システムにおいて使用されるALTテーブルは、データサイズが非常に大きいため、このALTテーブルをレシーバに記憶させるためには、大容量のメモリが必要となる。したがって、例えば携帯電話タイプの移動端末に全世界についてのALTテーブルを記憶させるのは、事実上困難であるという問題点がある。また、遠隔処理ステーションからALTテーブルをレシーバに配信する測位システムには、ALTテーブルのデータサイズが大きいため、データの送受信が煩雑であるという問題点がある。さらに、従来のレシーバおよび測位システムの双方において、例えばレシーバが高層ビルの屋上に位置している状態では、ALTテーブルに基づいて特定した高度と実際の高度との間に生じる差異に起因して測位結果に高度方向の誤差が生じるという問題点もある。また、測位結果の正否をPDOP等に基づいて正確に判別するのは非常に困難であるという問題点もある。具体的には、この種の移動端末において利用されるPDOP値は、測位処理の実行時における衛星の配置状態(測位処理を実行する移動端末に対して衛星が存在する位置の散らばり度合い)に応じて値が変化する。したがって、そのグループに属する衛星からの電波にマルチパス等の障害が生じていたとしてもPDOP値が最小となることがある。したがって、PDOP値が最小であったとしても測位結果が正確であるとは限らないため、PDOP値を比較することによって正確な測位結果を選択するのが困難となっている。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、移動端末に大容量メモリを搭載することなく、煩雑なデータ転送処理を不要としつつ、正確な測位結果を選択し得る移動端末および測位システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく本発明に係る移動端末は、複数の測位用衛星からの各測位用信号に基づいて現在位置を測位して測位結果を出力する測位処理部と、前記測位用信号を受信可能な複数の前記測位用衛星のうちから必要数の当該測位用衛星を選択して組み合わせたグループ毎に対応する前記測位結果を前記測位処理部に出力させると共に当該各グループ毎のDOP(Dilution Of Precision )値を比較して最も正確な前記測位結果を選択する制御部とを備えた移動端末であって、前記制御部は、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が必要数を超えて存在するときに、当該移動端末の高度を示す高度情報、および当該移動端末が存在し得る高度範囲を示す高度範囲情報のいずれかの情報を取得し、前記各グループ毎の前記各測位結果に含まれている高度値が前記いずれかの情報に基づいて規定した許容高度範囲内である当該測位結果を特定し、当該特定した測位結果のうちの前記DOP値が最も小さい前記グループに対応する当該測位結果を選択する。
【0006】
この移動端末では、制御部が、各グループ毎の各測位結果に含まれている高度値(高度を示す値)が許容高度範囲内である測位結果を特定し、特定した測位結果のうちのDOP値が最も小さいグループに対応する測位結果を選択する。したがって、この移動端末によれば、例えばマルチパス等の障害に起因して測位結果に誤差が生じている測位結果(高度値が不正確な測定結果)については、DOP値がたとえ小さくても正確な測定結果であると誤判別することがないため、正確な測位結果を出力することができる。
【0007】
また、本発明に係る移動端末は、上記の移動端末において、前記制御部が、前記選択した測位結果に含まれている前記高度値を前記高度情報によって示される高度に補正する。
【0008】
この移動端末では、制御部が、選択した測位結果に含まれている高度値を高度情報によって示される高度に補正する。したがって、この移動端末によれば、測位用信号に基づく測位結果に含まれている高度値よりも正確な高度に基づき、一層正確な現在位置を表示することができる。
【0009】
また、本発明に係る移動端末は、上記の移動端末において、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が前記必要数のみ存在するときに、前記制御部は、当該必要数の測位用衛星を組み合わせたグループに対応する前記測位結果に含まれている前記高度値が前記許容高度範囲を外れているときに当該測位結果を無効とする。
【0010】
この移動端末では、測位用信号を受信可能な測位用衛星が必要数のみ存在するときに、制御部が、必要数の測位用衛星を組み合わせたグループに対応する測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲を外れているときには、その測位結果を無効とする。したがって、この移動端末によれば、実際の現在位置とは異なる現在位置が表示される事態を確実に回避することができる。
【0011】
また、本発明に係る移動端末は、上記の移動端末において、前記制御部が、前記高度情報の取得時点からの経過時間に応じて当該高度情報に基づいて規定した前記許容高度範囲を徐々に拡大する。なお、測位処理の都度、新たな高度情報を取得することができるときには、許容高度範囲の拡大を不要とすることもできる。
【0012】
この移動端末では、制御部が、高度情報の取得時点からの経過時間に応じて高度情報に基づいて規定した許容高度範囲を徐々に拡大する。この場合、高度情報の取得時点から時間が経過するにつれ、移動端末を携帯する者が移動して移動端末の高度が変化する可能性が高くなる。したがって、この移動端末によれば、経過時間に応じて許容高度範囲を徐々に拡大することにより、許容高度範囲の信頼性(実際の高度との整合性)を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る測位システムは、複数の測位用衛星からの各測位用信号に基づいて現在位置を測位する移動端末と、当該移動端末に対して通信可能な領域毎に規定されて当該移動端末が存在し得る高度範囲を示す高度範囲情報を無線通信によって当該移動端末に出力する情報出力装置とを備え、前記移動端末は、前記各測位用信号に基づいて前記現在位置を測位して測位結果を出力する測位処理部と、前記測位用信号を受信可能な複数の前記測位用衛星のうちから必要数の当該測位用衛星を選択して組み合わせたグループ毎に対応する前記測位結果を前記測位処理部に出力させると共に当該各グループ毎のDOP値を比較して最も正確な前記測位結果を選択する制御部とを備え、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が必要数を超えて存在するときに、前記制御部が、前記情報出力装置から出力された前記高度範囲情報を取得して許容高度範囲を規定し、前記各グループ毎の前記各測位結果に含まれている高度値が前記規定した許容高度範囲内である当該測位結果を特定し、当該特定した測位結果のうちの前記DOP値が最も小さい前記グループに対応する当該測位結果を選択する。
【0014】
この測位システムでは、情報出力装置が移動端末に対する通信可能領域毎に予め規定された高度範囲情報を移動端末に出力する。したがって、この測位システムによれば、移動端末が高度を測定可能に構成されているか否かを問わず、移動端末に許容高度範囲を規定させて、正確な測位結果を選択させることができる。また、例えば、移動端末の通信可能領域内の起伏の大小に(地形)に応じた高度範囲情報を生成しておくことで、移動端末が存在し得る高度範囲を正確に特定させることができる。
【0015】
また、本発明に係る測位システムは、複数の測位用衛星からの各測位用信号に基づいて現在位置を測位する移動端末と、当該移動端末の高度を示す高度情報を無線通信によって当該移動端末に出力する情報出力装置とを備え、前記移動端末は、前記各測位用信号に基づいて前記現在位置を測位して測位結果を出力する測位処理部と、前記測位用信号を受信可能な複数の前記測位用衛星のうちから必要数の当該測位用衛星を選択して組み合わせたグループ毎に対応する前記測位結果を前記測位処理部に出力させると共に当該各グループ毎のDOP値を比較して最も正確な前記測位結果を選択する制御部とを備え、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が必要数を超えて存在するときに、前記制御部が、前記情報出力装置から出力された前記高度情報を取得して許容高度範囲を規定し、前記各グループ毎の前記各測位結果に含まれている高度値が前記規定した許容高度範囲内である当該測位結果を特定し、当該特定した測位結果のうちの前記DOP値が最も小さい前記グループに対応する当該測位結果を選択する。
【0016】
この測位システムでは、移動端末の制御部が情報出力装置から出力された高度情報を取得して許容高度範囲を規定する。したがって、この測位システムによれば、移動端末が高度を測定可能に構成されているか否かを問わず、移動端末に許容高度範囲を規定させて、正確な測位結果を選択させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施例の形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1に示す測位システム10は、本発明に係る測位システムの一例であって、複数の携帯端末1A,1A・・1B,1B・・および複数の無線基地局2,2・・などを備え、各無線基地局2,2・・がネットワークNを介して相互に接続されている。なお、同図では、1台の携帯端末1A、1台の携帯端末1B、および2つの無線基地局2のみを図示している。
【0019】
携帯端末1Aは、図2に示すように、無線通信部11、GPS処理部12、記憶部13、表示部14、操作部15、気圧センサ16および制御部17Aを備えている。無線通信部11は、制御部17Aの制御に従って無線基地局2との間で、送信要求信号Sなど送受信する。なお、マイクやスピーカ等についての図示を省略する。GPS処理部12は、本発明における測位処理部に相当し、図1に示すGPS衛星9,9・・(本発明における測位用衛星)からそれぞれ出力されているGPS信号Sg(本発明における測位用信号)を受信すると共に、受信したGPS信号Sgに基づいて携帯端末1Aの現在位置を測位する。なお、GPS処理部12による現在位置の測位原理については公知のため、その説明を省略する。記憶部13は、制御部17Aの動作プログラムなどを記憶する。
【0020】
表示部14は、一例としてカラー液晶表示器で構成されて、制御部17Aによって生成された画像データに基づく画像(現在位置周辺の地図等)をカラー表示する。操作部15は、電話番号を入力するための数字ボタンや現在位置の測位開始を指示する測位ボタンなどの各種の操作ボタン(図示せず)が配列されて構成され、これらのボタン操作に応じた操作信号を出力する。気圧センサ16は、制御部17Aの制御下で携帯端末1Aの周囲の気圧に応じたセンサ信号を出力する。制御部17Aは、操作部15から出力された操作信号に従い、無線通信部11、GPS処理部12、表示部14および気圧センサ16を制御する。また、制御部17Aは、図5に示す現在位置表示処理50を実行して携帯端末1Aの現在位置を表示部14に表示させる。この場合、制御部17Aは、後述するように各GPS衛星9,9・・の組み合わせ(グループ)を規定すると共に、各グループ毎のPDOP値(本発明におけるDOP値の一例)を演算する。また、制御部17Aは、気圧センサ16からのセンサ信号に基づいて携帯端末1Aの高度を演算する。
【0021】
携帯端末1Bは、図3に示すように、上記の携帯端末1Aにおける制御部17Aに代えて制御部17Bを備えている。なお、携帯端末1Bにおいて携帯端末1Aと同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。この場合、この携帯端末1Bは、気圧センサ16を備えていないため、制御部17Bが、後述するように、無線基地局2から送信された高度データDh(本発明における高度情報)に基づいて携帯端末1Bの高度を取得する。
【0022】
無線基地局2は、測位システム10の利用可能エリア内に設置されて携帯端末1A,1A・・1B,1B・・や、測位機能を備えていない携帯端末(図示せず)との間で無線通信を実行する。具体的には、図4に示すように、無線基地局2は、無線通信部21、通信モデム22、記憶部23および制御装置24を備えている。無線通信部21は、制御装置24の制御下で、携帯端末1A,1Bとの間で送信要求信号Sおよび高度データDhを送受信する。記憶部23は、制御装置24の動作プログラムおよび高度データDhなどを記憶する。
【0023】
この場合、記憶部23に記憶されている高度データDhは、本発明における高度情報および高度範囲情報に相当し、その無線基地局2を中心とする通信可能領域(携帯端末1A,1Bなどとの間で無線通信が可能な領域)の地形や構造物の有無等に応じて各無線基地局2,2・・毎に予め生成されている。具体的には、高度データDhは、通信可能領域のうちの最も低い高度から最も高い高度までの高度範囲、すなわち、携帯端末1A,1B等が存在し得る高度範囲(許容高度範囲)を特定させるための情報(高度範囲情報)と、無線基地局2の設置場所の高度を携帯端末1B等の現在位置の高度として特定させるための情報(高度情報)とを含んで構成されている。制御装置24は、無線基地局2を総括的に制御する。具体的には、制御装置24は、無線通信部21を制御して高度データDhなどを携帯端末1A,1B等に向けて送信させる。
【0024】
次に、測位システム10の全体的な動作について、図面を参照して説明する。例えば、携帯端末1Aを用いてその現在位置を測位するときには、まず、携帯端末1Aにおける操作部15の測位ボタンを操作する。これに応じて、制御部17Aが図5に示す現在位置表示処理50を開始する。この現在位置表示処理50では、まず、制御部17AがGPS処理部12を制御して、GPS衛星9,9・・から出力されている各GPS信号Sgの受信処理を実行させる。この際に、GPS処理部12は、制御部17Aの制御下で、現在位置から補足可能なGPS衛星9,9・・を特定して、各GPS衛星9,9・・からのGPS信号Sg,Sg・・の受信を実行する。
【0025】
この場合、携帯端末1Aの現在位置について例えば3次元測位処理を実行するときには、最低でも4つのGPS衛星9,9・・からの各GPS信号Sg,Sg・・を受信する必要がある(本発明における必要数が4つの例)。したがって、GPS処理部12は、現在位置においてGPS信号Sgを受信可能なGPS衛星9の数を制御部17Aに報知し、制御部17Aが4つ以上のGPS衛星9,9・・からのGPS信号Sg,Sg・・を受信可能か否かに応じて以降の測位処理が可能か否かを判別する(ステップ51)。この際に、GPS信号Sgを受信可能なGPS衛星9の数が3つ以下のときには、制御部17Aは、現在位置において測位ができないと判別し、その旨を表すメッセージを表示部14に表示させると共に、GPS処理部12を制御してGPS衛星9,9・・からのGPS信号Sg,Sg・・の受信を再度実行させる。
【0026】
一方、GPS信号Sgを正常に受信可能なGPS衛星9の数が4つ以上のときには、制御部17Aは、現在位置において測位が可能と判別し、気圧センサ16を制御して気圧を測定させると共に、気圧センサ16の測定結果(気圧に応じたセンサ信号)に基づいて携帯端末1Aの現在位置の高度を演算する(本発明における高度情報の取得)。また、制御部17Aは、演算した高度に基づき、携帯端末1Aが存在し得る高度の範囲を表す許容高度範囲を規定する(ステップ52)。この際に、例えば気圧センサ16からのセンサ信号に基づいて演算した高度が海抜200mであったときには、制御部17Aは、この海抜200mを中心として例えば±100mの範囲(海抜100m以上300m以下の範囲)を携帯端末1Aが存在し得る高度範囲(許容高度範囲)として規定する。この場合、演算結果に対して規定する高度範囲は、気圧センサ16の検出精度等に応じて予め規定されている。
【0027】
また、制御部17Aは、気圧センサ16から高度を得た時点(高度情報を取得した時点)からの経過時間に応じて上記の許容高度範囲を徐々に拡大する処理を繰り返して実行する。この場合、携帯端末1Aを携帯する者が例えば坂道を歩行中のときには、気圧センサ16からのセンサ信号に基づいて携帯端末1Aの高度を演算した時点から時間が経過するにつれて、実際の高度が演算結果よりも高い高度となったり(坂道を上っているとき)、演算結果よりも低い高度となったり(坂道を下っているとき)する。したがって、制御部17Aは、予め規定された拡大率で(一例として、高度の演算が完了した時点から1秒間あたりに±1mの割合で)許容高度範囲を徐々に拡大する。この結果、例えば演算完了時点から60秒が経過した時点では、制御部17Aは、海抜200mを中心として±160mの範囲(海抜40m以上360m以下の範囲)を携帯端末1Aが存在し得る高度範囲(許容高度範囲)として新たに規定する。
【0028】
次いで、制御部17Aは、GPS処理部12によってGPS信号Sgを受信可能な数が5つ以上存在する(本発明における必要数を超えて存在する)か否かを判別する(ステップ53)。この際に、GPS信号Sgを受信可能なGPS衛星9の数が4つのとき(測位用衛星が必要数のみ存在するとき)には、まず、その4つのGPS衛星9,9・・を1つのグループとして規定してGPS処理部12にこのグループに属するGPS衛星9,9・・からの各GPS信号Sg,Sg・・に基づく現在位置の測位を実行させる(ステップ54)。これに応じて、GPS処理部12は、各GPS衛星9,9・・からのGPS信号Sg,Sg・・を受信して現在位置(緯度、経度および高度)を測位し、測位結果を制御部17Aに出力する。続いて、制御部17Aは、GPS処理部12による測位結果に含まれている高度についての値(高度値)がステップ52で規定した許容高度範囲(高度の演算が完了した時点からの経過時間に応じて徐々に拡大する高度範囲)内であるか否かを判別する(ステップ55)。この際に、制御部17Aは、測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲を外れているときには、その測位結果が不正確であると判別して測位結果を無効とし、ステップ51に戻る。
【0029】
また、ステップ55の判別の結果、測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲内であるときには、制御部17Aは、その測位結果に含まれている高度値を気圧センサ16からのセンサ信号に基づいて演算した高度値(本発明における「高度情報によって示される高度」)に補正する(ステップ56)。この場合、一般的には、GPS信号Sg,Sg・・に基づいて測位した測位結果中の高度値よりも、気圧センサ16等を用いて測定した高度値の方が正確であるため、ステップ56の補正処理を実行することによって、携帯端末1Aの現在位置の確度を高めることができる。この際に、測位結果中の高度値を常に演算結果(センサ信号に基づいて演算した高度)に補正してもよいし、測位結果中の高度値と演算結果との差が所定の基準を超えて相違するときにのみ補正を実行してもよい。次いで、制御部17Aは、現在位置を表示部14に表示させる(ステップ57)。この後、制御部17Aは、ステップ51に戻って測位が可能と判別したときに、ステップ52以降の各ステップを順次実行する。
【0030】
一方、ステップ53の判別の結果、GPS信号Sgを受信可能なGPS衛星9の数が5つ以上のとき(利用可能な測位用衛星が必要数を超えて存在するとき)には、利用可能なGPS衛星9,9・・から4つのGPS衛星9,9・・を順次選択して組み合わせることにより(グループ化することにより)、複数の組み合わせ(GPS衛星9,9・・のグループ)を規定する(ステップ58)。この際に、例えば利用可能なGPS衛星9,9・・の数が5個のときには、それらの組み合わせを変更することによって5個のグループが規定される。次いで、制御部17Aは、GPS処理部12を制御して各グループに属するGPS衛星9,9・・からの各GPS信号Sg,Sg・・に基づく現在位置の測位を順次実行させる(ステップ59)。これに応じて、GPS処理部12は、各GPS衛星9,9・・からのGPS信号Sg,Sg・・を受信して現在位置(緯度、経度および高度)を測位して、測位結果を制御部17Aに出力する。続いて、制御部17Aは、GPS処理部12による測位結果に含まれている高度値がステップ52で規定した許容高度範囲内の値であるか否かを判別する(ステップ60)。
【0031】
この際に、制御部17Aは、測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲を外れているときには、そのグループに対応する測位結果が不正確であると判別して測位結果を無効とし(NG判定:ステップ61)、無効とした測位結果に対応するグループを特定可能に記憶部13に記憶させる。また、制御部17Aは、測位結果に含まれている高度値が許容高度範内の値であるときには、そのグループに対応する測位結果が正確であると判別して(OK判定:ステップ62)、その測位結果に対応するグループを特定可能に記憶部13に記憶させる。次いで、制御部17Aは、他のグループに属するGPS衛星9,9・・からのGPS信号Sg,Sg・・に基づく現在位置の測位が完了したか否か(対応する測位結果が出力されていないグループが存在するか否か)を判別し(ステップ63)、存在するときには、ステップ59に戻ってそのグループに属するGPS衛星9,9・・からの各GPS信号Sg,Sg・・に基づく現在位置の測位を順次実行させる。
【0032】
また、ステップ63においてすべてのグループに対応する測位結果の出力が完了していると判別したときには、制御部17Aは、記憶部13に記憶させた判定結果に基づき、ステップ60においてOK判定とした測位結果が存在するか否かを判別する(ステップ64)。この際に、すべての測位結果がNG判定のとき、すなわち、すべての測位結果中の高度値がステップ52で規定した許容高度範囲を外れているときには、制御部17Aは、これらすべての測位結果が不正確であると判別して各測位結果を無効として、ステップ51に戻る。一方、OK判定とした測位結果が存在するときには、制御部17Aは、その測位結果のうちのPDOP値が最小の測位結果を選択する(ステップ65)。次いで、制御部17Aは、特定した測位結果(高度値が許容高度範囲内であってPDOP値が最小の測位結果)に含まれている高度値を、気圧センサ16からのセンサ信号に基づいて演算した高度に補正する(ステップ56)。続いて、制御部17Aは、現在位置を表示部14に表示させる(ステップ57)。この後、制御部17Aは、ステップ51に戻って測位が可能と判別したときに、ステップ52以降の各ステップを上記のように順次実行する。
【0033】
このように、この携帯端末1Aおよび測位システム10では、制御部17Aが、一例として4つのGPS衛星9,9・・を組み合わせた各グループ毎の各測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲内である測位結果を特定し、特定した測位結果のうちのPDOP値が最も小さいグループに対応する測位結果を選択する。したがって、この携帯端末1Aおよび測位システム10によれば、例えばマルチパス等の障害に起因して測位結果に誤差が生じている測位結果(高度値が不正確な測定結果)については、PDOP値がたとえ小さくても正確な測定結果であると誤判別することがないため、正確な測位結果を出力することができる。
【0034】
また、この携帯端末1Aおよび測位システム10では、制御部17Aが、選択した測位結果に含まれている高度値を気圧センサ16のセンサ信号に基づいて演算した高度値(高度情報によって示される高度)に補正する。したがって、この携帯端末1Aおよび測位システム10によれば、GPS信号Sg,Sg・・に基づく測位結果に含まれている高度値よりも正確な高度に基づき、一層正確な現在位置を表示することができる。
【0035】
さらに、この携帯端末1Aおよび測位システム10では、制御部17Aが気圧センサ16からのセンサ信号に基づいて携帯端末1Aの高度を測定して本発明における高度情報を出力する。したがって、この携帯端末1Aおよび測位システム10によれば、携帯端末1Aの外部から高度データDhを取得する構成や、携帯端末1A等の利用可能エリア内のすべての地形データ(高度を特定可能なデータ)を携帯端末1Aに記憶させておく構成とは異なり、比較的簡易な構成でありながら携帯端末1Aの現在位置に応じた正確な高度を取得することができる結果、その取得した高度に基づいて測位結果が正確か否かを正しく判別することができる。
【0036】
また、この携帯端末1Aおよび測位システム10によれば、GPS信号Sgを受信可能なGPS衛星9,9・・が必要数(この例では4つ)のみ存在するときに、制御部17Aがそれらを組み合わせたグループに対応する測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲を外れているときには、そのグループに対応する測位結果を無効とする。したがって、この携帯端末1Aおよび測位システム10によれば、実際の現在位置とは異なる現在位置が表示される事態を確実に回避することができる。
【0037】
さらに、この携帯端末1Aおよび測位システム10では、制御部17Aが気圧センサ16のセンサ信号に基づく高度の演算完了時点からの経過時間(高度情報の取得時点からの経過時間)に応じて許容高度範囲を徐々に拡大する。この場合、高度情報の取得時点から時間が経過するにつれ、携帯端末1Aを携帯する者が移動して携帯端末1Aの高度が変化する可能性が高くなる。したがって、この携帯端末1Aおよび測位システム10によれば、経過時間に応じて許容高度範囲を徐々に拡大することにより、許容高度範囲の信頼性(実際の高度との整合性)を高めることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
次いで、第2の実施の形態である携帯端末1Bを用いてその現在位置を測位する方法について、図面を参照して説明する。この携帯端末1Bでは、操作部15の測位ボタンが操作されたときには、制御部17Bが図5に示す現在位置表示処理50とほぼ同様の処理を開始する。具体的には、この携帯端末1Bでは、前述した携帯端末1Aにおける気圧センサ16のような高度測定手段を備えていないため、携帯端末1Aによる現在位置表示処理50のステップ52に代えて、制御部17Bが無線基地局2に高度データDhの送信を要求する送信要求信号Sを無線基地局2に向けて送信し、これに応じて、無線基地局2が予め規定された高度データDhを携帯端末1Bに向けて送信する。この場合、無線基地局2から送信される高度データDhは、前述したように、その無線基地局2に対して接続可能な(その無線基地局2との間で無線通信が可能な)通信可能領域内各地の高度に基づいてその範囲が規定されている。したがって、その通信可能領域内の起伏が大きい場合であったとしても、それらの地形に応じた高度データDhが生成されているため、携帯端末1Bが存在し得る高度範囲を正確に特定することができる。この結果、ステップ55,60における判別(GPS処理部12による測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲内であるか否かの判別)を実行した際に、携帯端末1Bが存在し得ない高度に位置するとの測位結果を無効とすることができる。
【0039】
このように、この携帯端末1Bおよび測位システム10では、制御部17Bが、一例として4つのGPS衛星9,9・・を組み合わせた各グループ毎の各測位結果に含まれている高度値が許容高度範囲内である測位結果を特定し、特定した測位結果のうちのPDOP値が最も小さいグループに対応する測位結果を選択する。したがって、この携帯端末1Bおよび測位システム10によれば、例えばマルチパス等の障害に起因して測位結果に誤差が生じている測位結果(高度値が不正確な測定結果)については、PDOP値がたとえ小さくても正確な測定結果であると誤判別することがないため、正確な測位結果を出力することができる。
【0040】
また、この測位システム10によれば、無線基地局2が携帯端末1Bに対する通信可能領域毎に予め規定された高度範囲情報(高度データDh)を携帯端末1Bに向けて出力する。したがって、この測位システム10によれば、移動端末(携帯端末1B)が高度を測定可能に構成されているか否かを問わず、移動端末に許容高度範囲を規定させて、正確な現在位置を表示させることができる。また、例えば、携帯端末1Bが接続する無線基地局2の通信可能領域の地形(起伏の大小)に応じた高度データDhを生成しておくことで、携帯端末1Bが存在し得る高度範囲を正確に特定させることができる。
【0041】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記の測位システム10では、無線基地局2の記憶部23が本発明における高度情報および高度範囲情報に相当する高度データDhを記憶しているが、本発明はこれに限定されず、例えば無線基地局2の設置場所の高度のみを特定可能な情報で高度データDhを構成して記憶部23に記憶させる構成を採用することができる。この場合、例えば携帯端末1Bの制御部17Bが本発明における高度情報に基づいて高度範囲情報(許容高度範囲)を規定するように構成する。この構成によれば、移動端末が高度を測定可能に構成されているか否かを問わず、移動端末に許容高度範囲を規定させて、正確な現在位置を表示させることができる。また、高度データDhに含ませる高度情報についても、無線基地局2の設置場所の高度に限定されず、無線基地局2の通信可能領域の平均高度や、人口密度が最も高い地域の高度などをその通信可能領域に対応する高度として高度データDhを構成することができる。さらに、本発明における移動端末は、上記の携帯端末1A,1Bのような携帯電話に限定されない。例えば、PHSタイプの測位端末や、PDA(Personal Digital Assistant)タイプの測位端末などの各種移動端末に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】測位システム10の構成を示すブロック図である。
【図2】携帯端末1Aの構成を示すブロック図である。
【図3】携帯端末1Bの構成を示すブロック図である。
【図4】無線基地局2の構成を示すブロック図である。
【図5】現在位置表示処理50のフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B 携帯端末、2 無線基地局、9 GPS衛星、10 測位システム、11 無線通信部、12 GPS処理部、16 気圧センサ、17A,17B 制御部、21 無線通信部、24 制御装置、50 現在位置表示処理、Dh 高度データ、Sg GPS信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位用衛星からの各測位用信号に基づいて現在位置を測位して測位結果を出力する測位処理部と、前記測位用信号を受信可能な複数の前記測位用衛星のうちから必要数の当該測位用衛星を選択して組み合わせたグループ毎に対応する前記測位結果を前記測位処理部に出力させると共に当該各グループ毎のDOP値を比較して最も正確な前記測位結果を選択する制御部とを備えた移動端末であって、
前記制御部は、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が必要数を超えて存在するときに、当該移動端末の高度を示す高度情報、および当該移動端末が存在し得る高度範囲を示す高度範囲情報のいずれかの情報を取得し、前記各グループ毎の前記各測位結果に含まれている高度値が前記いずれかの情報に基づいて規定した許容高度範囲内である当該測位結果を特定し、当該特定した測位結果のうちの前記DOP値が最も小さい前記グループに対応する当該測位結果を選択する移動端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記選択した測位結果に含まれている前記高度値を前記高度情報によって示される高度に補正する請求項1記載の移動端末。
【請求項3】
前記制御部は、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が前記必要数のみ存在するときに、当該必要数の測位用衛星を組み合わせたグループに対応する前記測位結果に含まれている前記高度値が前記許容高度範囲を外れているときに当該測位結果を無効とする請求項1または2記載の移動端末。
【請求項4】
前記制御部は、前記高度情報の取得時点からの経過時間に応じて当該高度情報に基づいて規定した前記許容高度範囲を徐々に拡大する請求項1から3のいずれかに記載の移動端末。
【請求項5】
複数の測位用衛星からの各測位用信号に基づいて現在位置を測位する移動端末と、当該移動端末に対して通信可能な領域毎に規定されて当該移動端末が存在し得る高度範囲を示す高度範囲情報を無線通信によって当該移動端末に出力する情報出力装置とを備え、
前記移動端末は、前記各測位用信号に基づいて前記現在位置を測位して測位結果を出力する測位処理部と、前記測位用信号を受信可能な複数の前記測位用衛星のうちから必要数の当該測位用衛星を選択して組み合わせたグループ毎に対応する前記測位結果を前記測位処理部に出力させると共に当該各グループ毎のDOP値を比較して最も正確な前記測位結果を選択する制御部とを備え、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が必要数を超えて存在するときに、前記制御部が、前記情報出力装置から出力された前記高度範囲情報を取得して許容高度範囲を規定し、前記各グループ毎の前記各測位結果に含まれている高度値が前記規定した許容高度範囲内である当該測位結果を特定し、当該特定した測位結果のうちの前記DOP値が最も小さい前記グループに対応する当該測位結果を選択する測位システム。
【請求項6】
複数の測位用衛星からの各測位用信号に基づいて現在位置を測位する移動端末と、当該移動端末の高度を示す高度情報を無線通信によって当該移動端末に出力する情報出力装置とを備え、
前記移動端末は、前記各測位用信号に基づいて前記現在位置を測位して測位結果を出力する測位処理部と、前記測位用信号を受信可能な複数の前記測位用衛星のうちから必要数の当該測位用衛星を選択して組み合わせたグループ毎に対応する前記測位結果を前記測位処理部に出力させると共に当該各グループ毎のDOP値を比較して最も正確な前記測位結果を選択する制御部とを備え、前記測位用信号を受信可能な前記測位用衛星が必要数を超えて存在するときに、前記制御部が、前記情報出力装置から出力された前記高度情報を取得して許容高度範囲を規定し、前記各グループ毎の前記各測位結果に含まれている高度値が前記規定した許容高度範囲内である当該測位結果を特定し、当該特定した測位結果のうちの前記DOP値が最も小さい前記グループに対応する当該測位結果を選択する測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−112936(P2006−112936A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301054(P2004−301054)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】