説明

移動規制保持機構及びファイル

【課題】閲覧者による用紙類の取り外しを困難にすべく構成したファイルを提供する。
【解決手段】本体たるファイル本体に設けた許可要素受入部7に係止対象物たるカードキー6を受け入れた際にカードキー6の係止孔6xに係合しカードキー6を許可要素受入部7に受け入れた状態に保持する係止体たる係止片91と、この係止片91に設けられ手動操作力を受けた場合に該係止片91を前記係止孔6xから離脱させるための解除操作部93と、前記係止片91が前記係止孔6xから離脱した際に許可要素受入部7からカードキー6を排出する方向に付勢する付勢手段たるバネ92とを具備する構成の保持機構9とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の係止対象物を係止する用途に好適に用いられる移動規制保持機構、及びこのような移動規制保持機構を利用したファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状をなす係止対象物を係止対象物受入部に受け入れた状態に保持する機構が種々考えられている。このような機構の例として、例えば、係止対象物(カードキー)を係止対象物受入部(スロット)に挿入した状態に係止可能な施錠装置において、係止対象物を係止対象物受入部に係止するための機構が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【特許文献1】特開2002−235467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1記載の構成では、係止対象物を係止対象物受入部に保持すべく、本体(ドアノブ)側に、板バネ材からなるカム手段をコアに回動可能に取り付け、このカム手段の自由端に係合可能な突起を有するリアプレートを設けているとともに、前記コアが係止対象物に付勢されて移動するようにしている。そして、係止対象物を係止対象物受入部に受け入れた状態で、前記カム手段の自由端が前記リアプレートの突起に係合するとともにこのカム手段の中間部がコアの上面に当接してコア及びカードを保持するようにしている。すなわち、このような構成では、本体に係止対象物受入部を設けるだけでなく、本体側にリアプレートの設置スペースやカム手段の作動スペースを確保する必要がある。
【0004】
一方、企業や官公庁等において、用紙類に印刷した各種情報を不特定多数の部外者に公開する場合、冊子でなく手動操作部を有する綴じ具を備えたファイルに綴じた状態で閲覧できるようにすることがある。その際に、係止対象物であるカード状のキーを本体たるファイル本体に設けた係止対象物受入部に受け入れて保持させた状態のみにおいて手動操作部及び手動操作部に連動して動く部品を動作可能にして用紙類の挿脱を可能にし、閲覧に供する際には係止対象物を係止対象物受入部に受け入れていない状態にし、手動操作部及び手動操作部に連動して動く部品を動作不可能にして外部閲覧者による用紙類の取り外しを困難にするようにする要望がある。ところが、前記特許文献1記載のもののような係止対象物の保持機構では、部品点数及び設置スペースを多く必要とするので、ファイル等限られたスペースには設置しにくいという不具合がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決すべく、簡単な操作で係止対象物の着脱を行うことができるようにしつつ、少ない部品点数かつ小さな設置スペースで係止対象物受入部に係止対象物を係止する構成を実現すべく構成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る移動規制保持機構は、本体に設けた係止対象物受入部に係止対象物を受け入れた際に係止対象物の係止部に係合し係止対象物を係止対象物受入部に受け入れた状態に保持する係止体と、この係止体自体に設けられ手動操作力を受けた場合に該係止体を前記係止部から離脱させるための操作部と、前記係止体が前記係止部から離脱した際に係止対象物受入部から係止対象物を排出する方向に付勢する付勢手段とを具備することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、前記操作部を前記係止体自体に設けているとともに、前記操作部に手動操作力を与えて該係止体を前記係止部から離脱させるようにしているので、簡単な操作で係止対象物の着脱を行うことができるようにしつつ、少ない部品点数かつ小さな設置スペースにこのような移動規制保持機構を設けることができる。
【0008】
このような移動規制保持機構を少ない部品点数で実現できる態様として、板状に形成した前記係止体を本体にシーソー動作可能に設け、この係止体の一端部を係止対象物の係止部に係合させるようにしているとともに、前記係止体の他端部を前記操作部としているものが挙げられる。このような構成であれば、前記係止体の両端部を、係止対象物の係止部に係合させる部位と前記操作部とにそれぞれ設定し、前記操作部に操作力を与えることにより前記係止体にシーソー動作を行わせて、この係止体の一端部を係止対象物の係止部から離脱させるようにできるからである。
【0009】
さらに、このような移動規制保持機構を鍵を利用したロック機構として機能させるようにするための構成として、特定の係止対象物の係止部にのみ前記係止体の一端縁を係合可能にすべく前記係止体と前記係止部との間に選択係合手段を設けているものが挙げられる。このようなものであれば、特定の係止対象物以外の係止部には前記係止体の一端縁が係止しないので、特定の係止対象物を所持している者以外は係止対象物を係止対象物受入部に保持させる操作を行うことができないからである。
【0010】
このような移動規制保持機構をさらに少ない部品点数で実現できる構成として、前記本体と、前記係止体とを、接続軸を介して一体に成形してなるものが挙げられる。
【0011】
そして、以上に述べたような移動規制保持機構の好適な利用の態様として、本体たるファイル本体と、前記ファイル本体に設けた綴じ具と、このファイル本体又は綴じ具に設けた係止対象物受入部に係止対象物たる開放動作許可要素を受け入れた状態に保持する上述した移動規制保持機構と、前記係止対象物受入部に開放動作許可要素を受け入れていない場合に前記綴じ具が綴込状態から用紙類を挿脱可能な開放状態に移行する際の動作である開放動作を制限する動作制限機構とを具備することを特徴とするファイルが挙げられる。
【0012】
このようなものであれば、用紙類を挿脱する際には前記移動規制保持機構を利用して開放動作許可要素を係止対象物受入部に受け入れた状態に保持する操作を容易に行うことができるとともに、それ以外の状態では前記操作部に操作力を加えて開放動作許可要素を係止対象物受入部外に排出し、前記動作制限機構を機能させて開放動作を制限する操作も容易に行うことができるので、特に企業や官庁等において不特定多数の閲覧に供する書類等を綴じるファイルにこのような構成を採用することで、閲覧者により書類等が抜き取られることを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る移動規制保持機構を採用すれば、前記操作部を前記係止体自体に設けているとともに、前記操作部に手動操作力を与えて該係止体を前記係止部から離脱させるようにしているので、簡単な操作で係止対象物の着脱を行うことができるようにしつつ、少ない部品点数かつ小さな設置スペースにこのような保持機構を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
この実施形態に係る移動規制保持機構(以下保持機構9と記す)は、以下に述べるようなファイルFに具備させている。
【0016】
この実施形態に係るファイルFは、書類等の紙葉類を綴じた状態を示す斜視図である図1、このファイルFの見開き状態の全体斜視図である図2、及び分解斜視図である図3に示すように、表紙体11及びこの表紙体11の背表紙の外面に添接して設けられる外側部材15を具備するファイル本体1と、このファイル本体1に設けた綴じ具2とを具備し、綴じ具2に設けた手動操作部412に加えられる操作力を利用して綴じ具2が綴込状態から用紙類を挿脱可能な開放状態に移行し得るように構成されたものである。さらに本実施形態では、前記ファイル1に設けられ前記綴じ具2の綴込状態と前記開放状態との制御に用いる開放動作許可要素であるカードキー6を受け入れる許可要素受入部7と、前記許可要素受入部7がカードキー6を受け入れていない場合に綴じ具2が綴込状態から前記開放状態に移行する際の動作である開放動作を制限する動作制限機構8と、前記カードキー6を許可要素受入部7に受け入れた状態に保持する前記保持機構9とを前記ファイルFに具備させている。また、本実施形態では、内側係止部材32と前記外側部材15とからなる綴じ具取付部(図示略)を介して綴じ具2をファイル本体1に着脱可能に取り付けている。
【0017】
前記ファイル本体1は、前段で述べたように、表紙体11及びこの表紙体11の背表紙の外面に添接して設けられる外側部材15を具備する。
【0018】
前記表紙体11は、前記背表紙12、前記表表紙13、及び前記裏表紙14を適度な剛性を有する1枚のボール紙により形成している。ここで、「適度な剛性」とは、背表紙11が綴じ具2の固定に耐え得る程度の剛性を有するとともに、各部12、13、14が容易に折れ曲がらない程度の剛性を意味する。背表紙12には、その厚み方向に貫通してなる取付孔12aを利用して外側部材15を取り付けている。
【0019】
前記外側部材15は、前記図3に示すように、また、この外側部材15の斜視図である図4、この外側部材15の平面図である図5、この外側部材15の底面図である図6、及びこの外側部材15の中央縦断面図である図7に示すように、背表紙の外面に添接可能な基板151と、この基板151から起立して設けられる係止爪152とを具備する。そして、この外側部材15の外面に見出し1aを設けることを可能に構成している。また、本実施形態では、この外側部材15には、前記許可要素受入部7、前記動作制限機構8、及び前記保持機構9を設けている。これら前記許可要素受入部7、前記動作制限機構8、及び前記保持機構9の具体的な構成については後述する。
【0020】
綴じ具2は、基部4と、この基部4の両側縁にそれぞれ対向した状態で着脱可能に取り付けられる一対の綴じ部5a、5bとを具備するものである。
【0021】
基部4は、例えば金属素材からなり、主として綴じ部5a、5bを保持する機能を発揮する厚肉部41と、この厚肉部41の長手方向両端部に配され主としてファイル本体1への取付に利用される薄肉部42とを備えてなる。厚肉部41は、内方する弾性部材(図示省略)を利用して綴じ部5a、5bを着脱可能に係合保持する保持部411と、この保持部411と綴じ部5a、5bとの係合状態を解除する場合に手動で操作可能な手動操作部412とを備えるものである。前記手動操作部412は、全体に弾性を有する金属製の部材で、前記保持部411と連動させるべく該保持部411に抱着させているとともに、綴じ具2の幅方向中央に向けて弾性部412aを延伸して設けている。そして、前記弾性部412aにより、綴じ具2の外側方に付勢している。また、薄肉部42には、取付孔12aと重合する位置に、前記取付孔12aと連通する連通孔42aを形成している。
【0022】
綴じ部5a、5bは、一方の綴じ部5aがその対向面部51から突設した一対の綴じ杆52を備え、他方の綴じ部5bがその対向面部51から突設した綴じパイプ53を備えるものであって、綴じパイプ53に図示しない用紙類の綴じ孔を差し込み、この状態の綴じパイプ53にそれぞれ綴じ杆52を嵌入することによって、用紙類を一対の対向面部51間に綴じ込むものである。各綴じ部5a、5bは、基部4の保持部411に係合保持させた場合に前記手動操作部412と干渉することを防止するため、その対向面部51の長手方向中央部に、手動操作部412側に開口してなる開口部54を形成している。
【0023】
このような構成を有する綴じ具2は、前記手動操作部412を対向面部51の外側面側から他方の手動操作部412に向かって押し込む操作力が付与されることにより、前記基部4の保持部411と綴じ部5a、5bとの係合状態が解除され、綴込状態から用紙類を挿脱可能な開放状態に移行し得るように構成されている。
【0024】
また、綴じ具取付部(図示略)は、前記外側部材15の係止爪152を背表紙12の取付孔12a及び基部4の連通孔42aに挿入し、内側係止部材32に形成した係止爪用孔32a(具体的には係止爪用孔32a内に設けた係止爪152に係合可能な係合爪)に係合させることにより、綴じ具2をファイル本体1に着脱可能に取り付けるものである。
【0025】
許可要素受入部7は、本実施形態では、前記表紙体11と外側部材15との間に前記カードキー6を挿入可能に設けたスロット状の隙間である。さらに詳述すると、前記外側部材15の基板151に、深さ寸法が前記カードキー6の厚さ寸法に略等しく、長手寸法が前記カードキー6の厚さ寸法に略等しい凹部15mを形成していて、前記外側部材15を表紙体11に取り付けた状態においてこの凹部15mと表紙体11との間に形成されるスロット状の隙間を許可要素受入部7としている。
【0026】
動作制限機構8は、前記許可要素受入部7がカードキー6を受け入れている場合に開放許可位置に位置づけられ前記許可要素受入部7がカードキー6を受け入れていない場合に開放制限位置に位置づけられる板状をなす基体81と、前記基体81の開放許可位置から前記開放制限位置までの間の移動に伴い綴じ具2の前記開放動作を許可する開放許可姿勢と綴じ具の前記開放動作を制限する開放制限姿勢との間で姿勢を変更可能な動作制限部82とを有する。
【0027】
前記基体81は、前記図7に示すように、板状をなし、この基体の両側縁をファイル本体1、より正確には外側部材15に設けた支持具153を介して該外側部材15にスライド動作可能に支持させているとともに、内部に第1及び第2の窓部81x、81yを設けている。第1の窓部81xは、前記係止爪を挿通可能に形成している。そして、第2の窓部81yに前記動作制限部82を配置している。
【0028】
前記動作制限部82は、その基端をヒンジ部83を介して基体81に接続しているとともに、中央部基端寄りに第1の小ヒンジ821、中央部先端寄りに第2の小ヒンジ822を形成していて、前記ヒンジ部83と前記第1の小ヒンジ821との間の部位を第1の板状部82a、前記第1の小ヒンジ821と前記第2の小ヒンジ822との間の部位を第2の板状部82b、前記第2の小ヒンジ822から先端側の部位を先端部82xとし、前記先端部82xを、前記外側部材15の基板部から起立させて設けた固定具154を介してファイル本体15に支持させている。また、この動作制限部82は、前記基体81の開放許可位置と前記開放制限位置との間の移動に伴う両端間、すなわち前記ヒンジ部83と前記先端部82xとの間の距離変化を利用して、基体81と略面一な板状をなす前記図7の(a)に示すような開放許可姿勢と、基体81の板面より綴じ具側2に突出する同図の(b)に示すような開放制限姿勢との間で姿勢を変化可能に構成している。そして、この動作制限部82は、前記開放制限姿勢において、前記図7におけるx−x断面図である図8に示すように、前記綴じ具2の厚肉部41の幅寸法の略全域にわたって前記厚肉部41の下方に位置しつつ綴じ具2に向かい第1、第2の板状部82a、82bが山状をなすように起立して前記第1の小ヒンジ821が突出し、これら第1、第2の板状部82a、82bの側面部が前記手動操作部412に内側から当接して、該手動操作部412、及びこの手動操作部412に連動する部材である前記保持部411の内方への移動を制限するように構成している。そして、第1、第2の板状部82a、82bの側面部を前記手動操作部412に内側から当接させることにより、この開放動作制限部82の前記手動操作部412の操作方向に向かう作用に対する強度を大きくするようにしている。なお、前記背表紙12には、前記開放制限姿勢にある動作制限部82が通過可能な動作制限部通過孔12bを形成している。そして、前記図8において、開放許可姿勢にある動作制限部82を想像線に示しているように、開放許可姿勢にある動作制限部82は、上述した通り基体81と略面一な板状をなすので、前記手動操作部412と干渉せず、動作制限部82が開放許可姿勢にある際には前記手動操作部412の内方への移動が可能である。
【0029】
一方、前記保持機構9は、前記カードキー6を前記許可要素受入部7に受け入れた状態に保持する。具体的には、この保持機構9は、前記ファイル本体1、より正確には前記外側部材15に設けられ、前記許可要素受入部7に受け入れた前記カードキー6の係止部たる係止孔6xと係合可能な板状の係止体たる係止片91を具備する。
【0030】
前記係止片91は、前記係止孔6xと係合する一端部91aと他端部91bとの間に設定した軸心91C周りにシーソー動作可能に設けている。より具体的には、この係止片91の両側縁の長手方向中間部に軸部材911、911を設けていて、これら軸部材911、911間に形成される軸心91Cを挟んで前記一端部91a側が許可要素受入部7に突出する係合位置と前記他端部が91b側が許可要素受入部7に突出する係合解除位置との間を変化可能にしている。そして、前記係止片91の一端部91aと前記係止孔6xとを係合させた際に、前記カードキー6が前記基体81を押圧して該基体81を開放許可位置に付勢するとともに、前記動作制限部82を開放許可姿勢に付勢するようにしている。
【0031】
さらにこの保持機構9には、前記カードキー6を前記許可要素受入部に受け入れた状態を解除する保持解除機構たる保持解除部9Bを設けている。この保持解除部9Bは、前記カードキー6を前記許可要素受入部7に受け入れた状態を解除する方向、すなわちに前記カードキー6を前記許可要素受入部7外に排出する方向に付勢する付勢手段たるバネ92と、前記係止片91と前記係止孔6xとの係合を解除する操作を受け付ける解除操作部93とを具備する。
【0032】
前記バネ92は、一端部をファイル本体1、より正確には外側部材15に接続していると共に、他端部を基体81に接続している。また、このバネ92は、前記係止片91の一端部91aと前記係止孔6xとの係合を解除した際に前記動作制限部82を開放制限姿勢に復帰させるべく作用を加える。さらにこのバネ92は、前記係止片91の一端部91aと前記係止孔6xとの係合を解除した際に、弾性力により基体81を駆動し、この基体81を介して前記カードキー6を前記許可要素受入部7に受け入れた状態から解除する方向、すなわち前記許可要素受入部7から排出する方向に付勢する。
【0033】
前記解除操作部93は、前記係止片91の他端部91bを利用して形成している。そして、この解除操作部93に手動操作力を加えることにより、前記係止片91が前記軸心91C回りにシーソー動作を行い、前記一端部91aと前記係止孔6xとを離脱させるようにしている。すなわち、解除操作部93は、前記係止片91自体に設けられ、請求項中の操作部としての機能を有する。
【0034】
本実施形態に係る以上に述べたようなファイルFの保持機構9の構成を採用すると、以下に述べるような作用効果が得られる。
【0035】
すなわち、ファイル本体1の外側部材15に設けた係止対象物受入部7にカードキー6を受け入れた際にカードキー6の係止孔6xに係合しカードキー6を係止対象物受入部7に受け入れた状態に保持する係止片91と、この係止片91に設けられ手動操作力を受けた場合に該係止片91を前記係止孔6xから離脱させるための解除操作部93と、前記係止片91が前記係止孔6xから離脱した際に係止対象物受入部7から係止対象物を排出する方向に付勢するバネ92とを具備するので、前記解除操作部93を前記係止片91自体に設けているとともに、前記解除操作部93に手動操作力を与えて該係止片91を前記係止孔6xから離脱させるようにしているので、簡単な操作でカードキー6の着脱を行うことができるようにしつつ、少ない部品点数かつ小さな設置スペースにこのような保持機構9を設けることができる。
【0036】
また、板状に形成した前記係止片91を前記外側部材15にシーソー動作可能に設け、この係止片91の一端部をカードキー6の係止孔6xに係合させるようにしているとともに、前記係止片91の他端部を前記解除操作部93としているので、前記係止片91の両端部を、カードキー6の係止孔6xに係合させる部位と前記解除操作部93とにそれぞれ設定し、前記解除操作部93に操作力を与えることにより前記係止片91にシーソー動作を行わせて、この係止片91の一端部をカードキー6の係止孔6xから離脱させるようにでき、従って、このような保持機構9を少ない部品点数で実現できる。
【0037】
このような保持機構をさらに少ない部品点数で実現できる構成として、前記本体と、前記係止体とを、接続軸を介して一体に成形してなるものが挙げられる。
【0038】
そして、以上に述べたような保持機構の好適な利用の態様として、本体たるファイル本体と、このファイル本体に設けた係止対象物受入部に係止対象物たる開放動作許可要素を受け入れた状態に保持する上述した保持機構と、前記ファイル本体に設けた綴じ具と、前記係止対象物受入部に開放動作許可要素を受け入れていない場合に前記綴じ具が綴込状態から用紙類を挿脱可能な開放状態に移行する際の動作である開放動作を制限する動作制限機構とを具備することを特徴とするファイルが挙げられる。
【0039】
このようなものであれば、用紙類を挿脱する際には前記保持機構を利用して開放動作許可要素を係止対象物受入部に受け入れた状態に保持する操作を容易に行うことができるとともに、それ以外の状態では前記操作部に操作力を加えて開放動作許可要素を係止対象物受入部外に排出し、前記動作制限機構を機能させて開放動作を制限する操作も容易に行うことができるので、特に企業や官庁等において不特定多数の閲覧に供する書類等を綴じるファイルにこのような構成を採用することで、閲覧者により書類等が抜き取られることを抑制できる。
【0040】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0041】
例えば、係止孔6xの形状がそれぞれ異なる複数の係止対象物たるカードキー6を用意するとともに、特定のカードキー6の係止孔6xにのみ前記係止片91の一端縁を係合可能にすべく前記係止片91と前記係止孔6xとの間に選択係合手段を設けているものが挙げられる。このような選択係合手段として、例えば、上述した実施形態の図5に対応する図を図9に示すように、第2の係止片910を有する第2の外側部材150を取り付けたファイル及び第2のカードキー60の組を用意し、上述した実施態様に係る外側部材15を取り付けたファイルF及びカードキー6の組と併用する態様が考えられる。このようなものであれば、それぞれ対応するカードキーの係止部と係止片の一端縁のみ、すなわち第2のカードキー60の係止部60aには前記第2の係止片910の一端縁、上述した実施形態のカードキー6の係止孔6xには上述した実施形態の係止片91の一端縁のみが係止し、対応しないカードキーの係止部と係止片の一端縁とは係合しない。従って、前記係止片91、910の一端縁91a、910aが、対応する形状の係止部6x、60xを保持するカードキー6、60のみを係止するようにする機能、すなわち請求項中の選択係合手段としての機能を有する。このようにして、特定のカードキー6、60を所持している者以外はカードキー6、60を係止対象物受入部7に保持させる操作を行うことができないようにすること、すなわち、このような保持機構9をカードキー6、60を鍵として利用したロック機構として機能させることができる。もちろん、カードキー及び係止片は3種類以上用意してもよく、また、図示はしないがカードキー及び係止片について、それぞれ複数種の櫛状の切り欠きを形成したものを用意してもよい。このように構成することで、例えば部署ごとに異なる形状のカードキー6、60及びカードキー6、60の係止部6x、60xに対応する形状に係止片91、910を有するファイルを用意し、部署毎に対応するファイルのみに対して用紙類の挿脱を行うようにできる。
【0042】
また、前記係止体(係止片)と、前記本体のうちこの係止体(係止片)近傍の部位である係止体近傍部と、これら係止体及び係止体近傍部を接続する軸部材とを、一体をなすとともに本体の他の部位とは別体をなす係止ユニットとして形成してもよい。このようにすれば、種々の形状をなす係止体を有する係止ユニットを用意するとともに、本体の他の部位に係止ユニット取付部を設けることにより、本体の前記係止ユニット取付部を設けた側の部位は係止体の形状に関わらず共通の形状に形成できるので部材の共通化を図ることができ、鍵違いの形状を有する本体を低コストで形成できる。
【0043】
さらに、このような保持機構は、ファイルに限らず、例えば傘立てなど、カード状の鍵を錠前に保持可能に構成しているロック機構にも好適に用いられる。
【0044】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一実施形態に係るファイルの書類等の紙葉類を綴じた状態を示す斜視図。
【図2】同実施形態に係るファイルFの見開き状態の全体斜視図。
【図3】同実施形態に係るファイルの分解斜視図。
【図4】同実施形態に係るファイルの外側部材の斜視図。
【図5】同実施形態に係るファイルの外側部材の平面図。
【図6】同実施形態に係るファイルの外側部材の底面図
【図7】同実施形態に係るファイルの外側部材の中央縦断面図。
【図8】図7におけるx−x断面図。
【図9】本実施形態の他の実施態様に係るファイルの外側部材の平面図。
【符号の説明】
【0046】
F…ファイル
1…ファイル本体
11…表紙体
15…外側部材
2…綴じ具
9…保持機構(移動規制保持機構)
9B…保持解除部(保持解除機構)
91…係止爪(係止体)
92…バネ(付勢手段)
93…解除操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に設けた係止対象物受入部に係止対象物を受け入れた際に係止対象物の係止部に係合し係止対象物を係止対象物受入部に受け入れた状態に保持する係止体と、この係止体自体に設けられ手動操作力を受けた場合に該係止体を前記係止部から離脱させるための操作部と、前記係止体が前記係止部から離脱した際に係止対象物受入部から係止対象物を排出する方向に付勢する付勢手段とを具備することを特徴とする移動規制保持機構。
【請求項2】
板状に形成した前記係止体を本体にシーソー動作可能に設け、この係止体の一端部を係止対象物の係止部に係合させるようにしているとともに、前記係止体の他端部を前記操作部としていることを特徴とする請求項1記載の移動規制保持機構。
【請求項3】
特定の係止対象物の係止部にのみ前記係止体の一端縁を係合可能にすべく前記係止体と前記係止部との間に選択係合手段を設けていることを特徴とする請求項1又は2記載の移動規制保持機構。
【請求項4】
前記本体と、前記係止体とを、接続軸を介して一体に成形してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の移動規制保持機構。
【請求項5】
本体たるファイル本体と、前記ファイル本体に設けた綴じ具と、このファイル本体又は綴じ具に設けた係止対象物受入部に係止対象物たる開放動作許可要素を受け入れた状態に保持する請求項1、2、3又は4記載の移動規制保持機構と、前記係止対象物受入部に開放動作許可要素を受け入れていない場合に前記綴じ具が綴込状態から用紙類を挿脱可能な開放状態に移行する際の動作である開放動作を制限する動作制限機構とを具備することを特徴とするファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−8056(P2007−8056A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192737(P2005−192737)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(304047004)コクヨS&T株式会社 (56)
【Fターム(参考)】