説明

移動農機における伝動手段の保持構造

【課題】歩行型管理機等の移動農機において、エンジンの出力軸プーリとミッションケースの入力軸プーリとに巻き掛けられたベルトを内側から覆うカバー体を、当該エンジンとミッションケースに固定するにあたり、ミッションケースの外周面近傍を通過する伝動手段であるワイヤの配策隙間を確保するために介装するスペーサーのコスト低減を図る。
【解決手段】ミッションケース11の外周部に、伝動手段32であるワイヤのアウタケーシング32a端部の策端金具32aを固定的に保持する保持手段41を設けると共に、当該保持手段41に一体的に設けたスペーサー37,37を介して、ベルト伝動機構24を覆うカバー体51を取付けることができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動農機における伝動手段の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行型管理機等の移動農機においては、ハンドルに設けた主クラッチレバーの操作によりワイヤを介してベルト伝動機構を断接するテンションクラッチ機構を備えており、一般的には配置スペース等の関係から当該ワイヤはミッションケースの外周面近傍を通過するように配策されている。そして、前記ワイヤのアウタケーシングの策端金具を、ミッションケースの外周部に形成した凹状部に嵌装して保持するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−27295号公報(第2−3頁、図4−図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来のものでは、エンジンの出力軸プーリとミッションケースの入力軸プーリとに巻き掛けられたベルトを内側から覆うカバー体を、当該エンジンとミッションケースに固定するにあたり、ワイヤを配策するための隙間を確保すべく適当なスペーサーを介装しなければならないことから、部品点数の増加によるコスト高を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、操作具により伝動手段を介して遠隔操作される作動部を有し、且つ前記伝動手段をミッションケースの近傍に配設してなる移動農機において、前記伝動手段を保持する保持手段をミッションケースの外周部に設けると共に、当該保持手段を介してベルト伝動機構を覆うカバー体を取付け可能に構成したことを第1の特徴としている。
【0005】
また、前記保持手段が、伝動手段を固定的に保持する保持部とカバー体を取付けるためのスペーサーを一体的に備えることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ミッションケースの外周部に伝動手段を保持する保持手段を設けると共に、当該保持手段を介してベルト伝動機構を覆うカバー体を取付け可能に構成したことによって、前記保持手段のみで伝動手段を保持すると共にベルト伝動機構を覆うカバー体も取付けることができるようになり、また、部品点数の低減によるコストダウンと組立作業性の向上も図ることができる。
【0007】
また、請求項2の発明によれば、前記保持手段が、伝動手段を固定的に保持する保持部とカバー体を取付けるためのスペーサーを一体的に備えることから、部品点数の低減によるコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、本発明の移動農機である歩行型管理機10は、機体フレームを構成するミッションケース(トランスミッション)11、エンジン12、走行車輪13、耕耘用のロータリ14、機体フレーム側から後方に向けて延設したハンドル15等から構成されている。
【0009】
また、図3及び図4に示すように、エンジン12の出力軸プーリ21とミッションケース11の入力軸プーリ22には、Vベルト23が巻き掛けられてベルト伝動機構24が構成されると共に、両プーリ21,22間に介設した揺動自在なテンションプーリ25を備えるテンションクラッチ機構26によって、エンジン12の駆動力をミッションケース11に断接自在に伝動させることができるようになっている。
【0010】
そして、歩行型管理機10のオペレータはハンドル15を把持した状態で、エンジン12の駆動力によりミッションケース11を介して走行車輪13を回転させ、それによって機体16を走行させながら耕耘用のロータリ14で圃場の耕耘作業を行っている。
【0011】
また、ハンドル15には、操作具の一つであるメインクラッチレバー28が設けてあり、このメインクラッチレバー28を遠隔操作することにより伝動手段であるワイヤ29とスプリング30を介してテンションプーリ25を揺動可能に構成し、このテンションプーリ25の揺動によりVベルト23のテンションを緊緩することによって、エンジン12とミッションケース11間の動力の断接がなされるようになっている。
【0012】
そして、メインクラッチレバー28の側方には、当該メインクラッチレバー28と基端部の回動軸を共用する副変速レバー31が併設してあり、この副変速レバー31を遠隔操作することにより伝動手段であるワイヤ32を介して、ミッションケース11の左右一側に設けた作動部である副変速シフトアーム33を回動させ、それによって高・低速二段の副変速切換えが行えるようになっている。
【0013】
尚、上述した伝動手段である両ワイヤ29,32は、従来公知のようにアウタケーシング29a,32aにインナーケーブル29b,32bを摺動自在に内挿すると共に、アウタケーシング29a,32aの一側の策端金具29c,32cをミッションケース11の外周部に固定的に保持した状態で、ベルト伝動機構24を内側から覆う詳細は後述するカバー体51とミッションケース11との隙間に配策してある。
【0014】
詳述すると、副変速レバー31に連係する伝動手段としてのワイヤ32は、ハンドル15に沿ってミッションケース11の左側外周面に向けて配策されると共に、その副変速シフトアーム33側のアウタケーシング32aの策端金具32cを、機体側面視で略L字状の曲げプレート36と、この曲げプレート36に一体固着したパイプ状のスペーサー37,37からなる保持手段41に固定的に保持できる構成になっている。即ち、副変速シフトアーム33に対向する曲げプレート36の一辺には、ワイヤ32のアウタケーシング32a端部の策端金具32aを固定的に保持するためのアウター受け(切欠き)36aを設けている。
【0015】
また、上述したベルト伝動機構24とエンジン12及びミッションケース11の左側外周面との間には、ベルト伝動機構24を内側から覆うプレート状のカバー体51の後側が、前記保持手段41を構成するパイプ状のスペーサー37,37を介してボルト52,52によって固定されると共に、エンジン12側においても同様のパイプ状のスペーサー53,53を介して、当該カバー体51の前側がボルト54,54によって固定されるようになっている。
【0016】
そして、上述の如くワイヤ32のアウタケーシング32aの策端金具32cを固定的に保持する保持手段41は、該保持手段41に一体的に備えるパイプ状のスペーサー37,37を介してベルト伝動機構24を内側から覆うプレート状のカバー体51を取付けることができ、それによって部品点数の低減によるコストダウンと組立作業性の向上を図ることができる。
【0017】
一方、ベルト伝動機構24の外周側には、当該ベルト伝動機構24を覆う蓋状の外側カバー体56が、前記カバー体51の中央部に突設した支持部材51aにノブ付ボルト57を介して着脱可能に取り付けてあり、両カバー体51,56によってベルト伝動機構24が露出しないように安全に覆われている。
【0018】
ところで、ミッションケース11の上部には、上述したハンドル15の基端部を螺設するハンドルフレーム61が設けてあり、このハンドルフレーム61の上方に着脱容易な樹脂製の変速パネル62を取付けると共に、該変速パネル62の案内溝62aに機体16の走行速度を変更する変速操作レバー63を貫通させた状態で配設してある。
【0019】
詳述すると、図5及び図6に示すように、変速パネル62の前後方向略中間部(図中A部)の内側には、二つの係止爪62b,62bが形成してあって、両係止爪62b,62bをハンドルフレーム61側に設けた二つの引掛け部61a,61aに係止させた状態で、当該変速パネル62の前側をハンドルフレーム61にノブ付きボルト64を介して固定できるように構成してあり、それによって変速パネル62自体の着脱の容易化を図っている。
【0020】
また、ハンドル15の基端部を螺設するハンドルフレーム61の後部には、当該ハンドル15の把持高さを所望の高さに調節する際、位置決め用のロックピン65を係止させるための複数の孔66a,・・・を穿孔した門型状の枠体66(図7参照)が設けてあり、この枠体66の中をスロットルワイヤ67やエンジンON・OFFスイッチ68用のハーネス69、及びメインクラッチレバーのON・OFF検出スイッチ(不図示)用のハーネス70等を通過させることによって、前記ワイヤ67やハーネス69,70等を無理なく集束した状態でスムーズに配策することができると共に、これらのワイヤ67やハーネス69,70等を集束するためのクランプの数を減らして組立性の向上とコストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】歩行型管理機の側面図。
【図2】歩行型管理機の平面図。
【図3】ベルト伝動機構を示す側面図。
【図4】ベルト伝動機構を示す平面図。
【図5】変速パネルの着脱構造を示す側面図。
【図6】図5におけるB矢視図。
【図7】図5におけるC矢視図。
【符号の説明】
【0022】
10 移動農機
11 ミッションケース
24 ベルト伝動機構
31 操作具
32 伝動手段(ワイヤ)
33 作動部(副変速シフトアーム)
36a 保持部(ワイヤのアウター受け)
37 スペーサー
41 保持手段
51 カバー体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作具(31)により伝動手段(32)を介して遠隔操作される作動部(33)を有し、且つ前記伝動手段(32)をミッションケース(11)の近傍に配設してなる移動農機(10)において、前記伝動手段(32)を保持する保持手段(41)をミッションケース(11)の外周部に設けると共に、当該保持手段(41)を介してベルト伝動機構(24)を覆うカバー体(51)を取付け可能に構成したことを特徴とする移動農機における伝動手段の保持構造。
【請求項2】
前記保持手段(41)が、伝動手段(32)を固定的に保持する保持部(36a)とカバー体(51)を取付けるためのスペーサー(37,37)を一体的に備えることを特徴とする請求項1に記載の移動農機における伝動手段の保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−21686(P2006−21686A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202557(P2004−202557)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】