移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法、セル情報提供システム、およびコンピュータプログラム
【課題】移動通信システムの移動機のユーザが従来よりも確実に高速通信を利用できるようにする。
【解決手段】ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなるユーザ区域の区域地図MGを呼び出し、そのユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの、移動機1台当たりの通信速度および高速通信への対応の可否を示す属性情報を取得し、各セルの範囲を示すセル範囲画像RYを、属性情報の内容の違いを区別した形態で、区域地図MGに重ね合わせて表示する。
【解決手段】ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなるユーザ区域の区域地図MGを呼び出し、そのユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの、移動機1台当たりの通信速度および高速通信への対応の可否を示す属性情報を取得し、各セルの範囲を示すセル範囲画像RYを、属性情報の内容の違いを区別した形態で、区域地図MGに重ね合わせて表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話システム、PHS、または無線LANなどの技術を用いた移動通信システムにおけるセルの情報を提供する方法およびシステムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)による移動通信システムにおいて、移動機(端末装置)への通信つまり下りの通信の速度を向上させる技術として、「HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)」が提唱されている。
【0003】
HSDPAは、W−CDMAの技術的な仕様を大幅に変更することなく、下りの通信の高速化および効率化を図ることができる。現在のW−CDMAによると下りの通信の速度は最高で2Mbpsであるが、HSDPAを使用すると、14Mbps程度まで向上させることができる。
【0004】
今後、HSDPAが普及すると、高解像度の動画コンテンツの配信サービスのような、従来のW−CDMAでは困難であった大容量通信によるサービスが普及することが、予想される。
【0005】
また、上りの通信の速度を向上させる技術として、「HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)」が、提唱されている。HSUPAが普及すれば、ユーザは、自分の移動機から動画のストリーミングを配信したり、リアルタイムで高品位のモバイルゲームを楽しんだり、他のユーザと大容量のファイルを交換したりすることが、容易にできるようになると、考えられる。
【特許文献1】特開2004−96267号公報
【特許文献2】特開2004−247907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HSDPAおよびHSUPAを使用した技術によるサービスをより着実に普及させるに当たって、次のような課題が存在する。
【0007】
同一のセルを多数のユーザで同時に使用しようとすれば、ユーザ1人当たり(つまり、移動機1台当たり)の通信速度は落ちてしまう。よって、サービスの品質を維持するためには、高速の通信を同時に行える移動機の台数を制限しなければならない。または、通信可能な台数を維持することを優先するのであれば、移動機1台当たりの通信速度を抑制しなければならない(課題A)。
【0008】
また、HSDPAおよびHSUPAによる通信のサービスを開始してから当分の間は、係る通信のサービスを受けられるセルが、徐々に増えてゆく。よって、係る通信のサービスを受けられるセルと従来のセルとが混在する。
【0009】
そうすると、ユーザは、自分の移動機が通信可能な状態であるにも関わらず、高速通信のサービスを思い通りに利用できないことが、あり得る(課題B)。
【0010】
上記の課題A、Bは、ユーザがHSDPAまたはHSUPAによる高速の通信のサービスを受け得る確実性を高めることが求められている、という点で共通している。この課題を解決することができなければ、通信会社は、加入者を思うように増加させることができない。そうすると、HSDPAおよびHSUPAを普及させることのニーズも高まらないし、普及させるための資金も計画通りに得られない。
【0011】
ところで、特許文献1には、次のような方法が記載されている。地図表示手段と、位置検出手段と、移動体通信手段と、を有するナビゲーションシステムにおいて、移動体通信手段から得られた通信利用可否情報を、位置検出手段により検出された現在位置情報と関連付けて格納手段に格納する。そして、地図表示手段に表示された地図上に通信利用可否情報を重畳表示する。この方法によると、通信できる位置の情報を収集し、それらの情報に基づいて、通信できる範囲を示す地図を作成することができる。つまり、いわゆる「圏内」の場所を示す地図を作成することができる。
【0012】
特許文献2には、次のような方法が記載されている。基地局からコンテンツ一覧を入手し、コンテンツごとのデータ量、車速、基地局との通信速度、および走行中の道路の通信状態に基づいて、通信困難な地点に達するまでのコンテンツごとの受信可否を判断し、その判断結果をユーザに報知する。
【0013】
しかし、特許文献1、2に記載されるような従来の方法では、上記の課題A、Bを解決することはできない。
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑み、移動機のユーザが従来よりも確実に高速通信を利用することができるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法は、ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の地図の画像である地図画像を呼び出し、前記ユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得し、前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を、当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で、前記地図画像に重ね合わせて表示する、ことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートを示す情報を取得する。前記セルに係る前記帯域幅レートを示す情報を、当該セルに係る基地局と移動機との間の全体の帯域幅を当該基地局と通信中である移動機の台数で割算することによって取得してもよい。
【0017】
または、前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局における無線通信方式の種類を示す情報を取得する。
【0018】
または、当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートの変化の履歴を記録しておき、前記セルの前記通信属性情報として、指定された将来の時点における予測される前記帯域幅レートを、前記履歴に基づいて取得する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、移動通信システムの移動機のユーザが従来よりも確実に高速通信を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は携帯電話システム1KSの全体的な構成の例を示す図、図2は基地局制御装置2の機能的構成の例を示す図、図3は携帯電話端末4の機能的構成の例を示す図、図4はセル情報管理サーバ6のハードウェア構成の例を示す図、図5はセル情報管理サーバ6の機能的構成の例を示す図である。
【0021】
携帯電話システム1KSは、図1に示すように、GPRSサポートノード1、基地局制御装置2、無線基地局3、携帯電話端末4、配信サーバ5、およびセル情報管理サーバ6などによって構成される移動通信システムである。
【0022】
GPRSサポートノード1は、従来と同様に、基地局制御装置2と外部のネットワーク(例えば、インターネットなどのIPネットワークまたは他のキャリアの移動通信システムのネットワーク)との間でデータの交換を行う。「GSN」などと略称で呼ばれることもある。
【0023】
基地局制御装置2は、従来と同様に、通話を開始する携帯電話端末4に対する無線チャネルの設定(発着信接続制御)、携帯電話端末4の移動に伴うハンドオーバの制御、ダイバシチーハンドオーバ制御、およびチャネルの開放(終話制御)などが実行されるように、無線基地局3を制御する。基地局制御装置2は、「RNC(Radio Network Controller)」または「BSC(Base Station Controller)」などと呼ばれることもある。
【0024】
また、基地局制御装置2は、図2に示すような、自局配下セルデータベース201、セル使用状況監視部202、セルレート算出部203、セルレート情報送信部204、セル情報要求転送部205、およびセル情報中継処理部206などが設けられている。これらは、ハードウェアのみによって実現してもよいし、ソフトウェアをCPUに実行させることによって実現してもよい。
【0025】
無線基地局3は、従来と同様に、親局および複数のマイクロBS(マイクロ基地局)などによって構成され、基地局制御装置2からの制御信号に従って、携帯電話端末4との間で無線信号の送受信を行う。また、マイクロ基地局ごとにセルを実現する。無線基地局3は、「Node B」、「基地局」、「無線局」、「BS(Base Station)」、または「BTS((Base Transceiver Station)などと呼ばれることもある。
【0026】
携帯電話端末4は、ユーザが使用する端末装置である。「移動機」、「移動局」、または「MS(Mobile Station)」などと呼ばれることもある。携帯電話端末4のハードウェア構成およびソフトウェア構成は、基本的に従来の携帯電話端末と同様である。
【0027】
また、携帯電話端末4には、図3に示すような位置情報記憶部401、指令受付処理部402、セル情報要求部403、セル情報受信部404、およびセル情報表示部405などが設けられている。これらは、ハードウェアのみによって実現してもよいし、アプリケーションプログラムをCPUに実行させることによって実現してもよい。
【0028】
配信サーバ5は、従来と同様に、動画像または音声などのデータを携帯電話端末4に配信する。
【0029】
セル情報管理サーバ6は、各セルの通信の状況に関する情報を管理し、ユーザが指定した位置およびその周辺をカバーするセルに関する情報を携帯電話端末4に対して提供するための処理を行う。
【0030】
このセル情報管理サーバ6は、図4に示すように、CPU60a、RAM60b、ROM60c、ハードディスク60d、および通信インタフェース60eなどによって構成される。
【0031】
通信インタフェース60eは、基地局制御装置2と通信を行うためのNIC(Network Interface Card)または無線通信モジュールなどである。
【0032】
ROM60cまたはハードディスク60dには、図5に示すような地図画像データベース601、配備セルデータベース602、セルレート状況更新部603、セル情報要求受付部604、セル情報画像生成部605、セル情報送信部606、およびレート履歴データベース607などの機能を実現するためのコンピュータプログラムおよびデータがインストールされている。これらのコンピュータプログラムおよびデータは必要に応じてRAM60bにロードされ、CPU60aによってコンピュータプログラムが実行される。
【0033】
セル情報管理サーバ6として、いわゆるサーバ機またはワークステーションなどが用いられる。
【0034】
次に、図2に示す基地局制御装置2の各部、図3に示す携帯電話端末4の各部、および図5に示すセル情報管理サーバ6の各部の処理の内容などを、セルの通信に関する情報を収集し管理するための処理および特定の位置およびその周辺をカバーするセルに関する情報を提供する処理に大別して説明する。また、携帯電話システム1KSの通信方式がW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)である場合を例に、説明する。また、説明の簡単のため、特に断りのない限り、通信の速度とは、移動機へのデータ通信の速度つまり下りの通信速度のことを意味する。
【0035】
〔セルの通信に関する情報を収集し管理するための処理〕
図6は全体地図と区域地図MGとの関係の例を示す図、図7は区域地図MGと小区域との関係の例を示す図、図8は配備セルデータベース602の例を示す図、図9は自局配下セルデータベース201の例を示す図、図10は通信速度レートデータ8Dの例を示す図である。
【0036】
図5において、セル情報管理サーバ6の地図画像データベース601には、この携帯電話システム1KSによる移動通信のサービスが提供される地域の地図の画像の画像データが記憶されている。この地域の地図は、図6に示すように、複数の区域地図MG(MG1、MG2、MG3、…)に分割され、この地域の地図の画像データは、区域地図MGごとに区域地図画像データ8Aとして保存されている。これらの区域地図画像データ8Aは、企業または行政などが提供する地図情報のデータを取得して使用すればよい。
【0037】
各区域地図MGは、さらに、図7に示すように、10×10個の小区域に区切られている。
【0038】
配備セルデータベース602には、図8に示すように、携帯電話システム1KSによる移動通信のサービスが提供される地域の中のセルごとのセル属性データ8Bが記憶されている。
【0039】
セル属性データ8Bにおいて、「セル番号」のフィールドは、そのセル属性データ8Bに係るセルを他のセルと識別するための識別情報である。「Node−B番号」のフィールドは、そのセルを実現する無線基地局3を、他の無線基地局3と識別するための識別情報である。
【0040】
「セル種別」のフィールドは、そのセルがHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)に対応しているか否かを示している。そのフィールドの値が「HSDPA」である場合は、そのセルがHSDPAに対応していることを意味し、「非HSDPA」である場合は、対応していないことを意味する。
【0041】
「位置情報」の「地図番号」および「詳細位置」の各フィールドは、そのセルの中心が、どの区域地図MG(図6参照)の中のどの小区域(図7参照)に位置するのかを、示している。「セル半径」のフィールドは、そのセルが、そのセルの中心(つまり、「地図番号」および「詳細位置」の各フィールドによって決まる位置)から半径何メートルの範囲に及ぶのか(カバーするのか)を示している。
【0042】
上記の「セル番号」ないし「セル半径」のフィールドの各値は、固定的であって、そのセルに係るマイクロ基地局が移設されまたは出力する電波の強さが変更されない限り、変わらない。これらの「セル番号」ないし「セル半径」のフィールドの各値は、管理者によって予め配備セルデータベース602に登録される。
【0043】
ところで、マイクロ基地局は複数台の携帯電話端末4と同時期に通信を行うことができる。つまり、マイクロ基地局−移動機間のチャネルを、複数台の携帯電話端末4で共用することができる。よって、そのマイクロ基地局と通信中である携帯電話端末4が多いほど、1台当たりの携帯電話端末4に割り当てられるそのチャネルの帯域幅が狭くなり(ビットレートが低くなり)、これらの携帯電話端末4の通信速度が低下する。通信中である携帯電話端末4が少ないほど、1台当たりの携帯電話端末4に割り当てられるそのチャネルの帯域幅が広くなり、これらの携帯電話端末4の通信速度が向上する。以下、この1台当たりの通信の理論的な速度を「通信速度レート」と記載する。
【0044】
セル属性データ8Bの説明に戻って、「直近レート」のフィールドは、そのセルに係るマイクロ基地局の、直近(最近)に測定された通信速度レートを示す。「平均実績レート」の「9:00〜21:00」および「21:00〜9:00」の各フィールドは、それぞれ、過去の所定の期間(例えば、直近の1週間)における、午前9時から午後9時までの通信速度レートの平均値および午後9時から午前9時までの通信速度レートの平均値が示される。
【0045】
「直近レート」のフィールドの値および「平均実績レート」の2つのフィールドの値は、そのセルに係るマイクロ基地局の通信速度レートが測定されるごとに更新される。通信速度レートの測定方法およびこれらのフィールドの更新方法については、後に説明する。
【0046】
図2において、基地局制御装置2の自局配下セルデータベース201には、図9に示すように、その基地局制御装置2自身が制御する無線基地局3によって実現されるセルつまりその基地局制御装置2の配下にあるセルごとのセル属性データ8Cが記憶されている。
【0047】
セル属性データ8Cにおいて、「セル番号」、「Node−B番号」、および「セル種別」の各フィールドは、図8で説明したセル属性データ8Bの「セル番号」、「Node−B番号」、および「セル種別」の各フィールドとそれぞれ同義である。
【0048】
「最速値」のフィールドは、そのセルのマイクロ基地局−移動機間のチャネルの帯域幅のすべてを1台の携帯電話端末4が占有した場合の通信速度を示す。したがって、そのセルのマイクロ基地局と通信を行っている携帯電話端末4が1台だけであれば、理論的には、その携帯電話端末4は、「最速値」のフィールドに示される速度で通信を行うことができる。もちろん、携帯電話端末4の通信スペックがそれ以下であれば、その限りでない。
【0049】
「セル番号」ないし「最速値」の各値は、固定的であって、管理者によって予め自局配下セルデータベース201に登録される。
【0050】
「配下ユーザ数」のフィールドは、現在、そのセルのマイクロ基地局と通信中である携帯電話端末4の台数つまりそのセルの配下のユーザの人数を示す。この値は、次に説明するセル使用状況監視部202の処理結果に応じて、適宜、更新される。
【0051】
セル使用状況監視部202は、その基地局制御装置2の配下のマイクロ基地局ごとに、現在通信中である携帯電話端末4の台数を監視する。そして、いずれかのマイクロ基地局との通信を行っている携帯電話端末4の台数が変化するごとにそのマイクロ基地局のセルのセル属性データ8Cの「配下ユーザ数」のフィールドの値を、最新の台数に更新する。または、セル使用状況監視部202は、通信中である携帯電話端末4の台数を定期的に(例えば、数秒〜数分ごとに)チェックし、その結果に応じて「配下ユーザ数」のフィールドの値を更新してもよい。
【0052】
セルレート算出部203は、定期的に(例えば、数秒〜数分ごとに)、配下のセルごとに、マイクロ基地局の通信速度レートを算出(測定)する。通信速度レートは、そのセルのセル属性データ8Cの「最速値」の値をそのセル属性データ8Cの「配下ユーザ数」で割り算することによって算出される。
【0053】
例えば、あるセルのセル属性データ8Cの「最速値」および「配下ユーザ数」がそれぞれ「2.0(Mbps)」および「15(人)」である場合は、「2.0/15≒0.133」と、通信速度レートが算出される。
【0054】
セルレート情報送信部204は、セルレート算出部203によって各セルのマイクロ基地局の通信速度レートが算出(測定)されるごとに、図10のような、その結果および算出日時(測定日時)を示す通信速度レートデータ8Dを、セル情報管理サーバ6に送信する。
【0055】
または、セルレート算出部203は、いずれかのセルのマイクロ基地局の配下ユーザ数が変化するごとに、そのセルのマイクロ基地局の通信速度レートのみを算出し、セルレート情報送信部204は、その算出結果および算出日時(測定日時)のみを示すデータをセル情報管理サーバ6に送信してもよい。
【0056】
図5において、セル情報管理サーバ6のレート履歴データベース607は、基地局制御装置2から受信した通信速度レートデータ8Dを記憶する。
【0057】
セルレート状況更新部603は、基地局制御装置2から新たに通信速度レートデータ8Dが送信されてくるごとに、その通信速度レートデータ8Dに基づいて、その基地局制御装置2の配下の各セルのセル属性データ8B(図8参照)の「直近レート」のフィールドの値を、次のように更新する。
【0058】
その通信速度レートデータ8Dに示される任意のレコード(行)に注目する。注目しているレコードに示されるセル番号と同じセル番号を示すセル属性データ8Bを、配備セルデータベース602から検索する。そのセル属性データ8Bの「直近レート」のフィールドの値を、その注目しているレコードに示される通信速度レートに書き換える。つまり、上書きする。
【0059】
そして、通信速度レートデータ8Dの残りのレコードについても順次注目し、同様に、書換えの処理を行う。
【0060】
さらに、セルレート状況更新部603は、セル属性データ8Bの「平均実績レート」の「9:00〜21:00」および「21:00〜9:00」の各フィールドの値を、次のように更新する。
【0061】
今回送信されてきた通信速度レートデータ8Dに示される測定日時より過去の所定の期間分の通信速度レートデータ8Dをレート履歴データベース607から呼び出す。
【0062】
今回送信されてきた通信速度レートデータ8Dおよび呼び出した通信速度レートデータ8Dの中から、午前9時から午後9時までの間の測定に係る通信速度レートデータ8Dを選出する。選出した通信速度レートデータ8Dに示される通信速度レートの平均値をセルごとに算出する。そして、それぞれのセルのセル属性データ8Bの「9:00〜21:00」のフィールドに、算出した平均値を上書きする。
【0063】
同様に、今回送信されてきた通信速度レートデータ8Dおよび呼び出した通信速度レートデータ8Dの中から、午後9時から午前9時までの間の測定に係る通信速度レートデータ8Dを選出する。選出した通信速度レートデータ8Dに示される通信速度レートの平均値をセルごとに算出する。そして、それぞれのセルのセル属性データ8Bの「21:00〜9:00」のフィールドに、算出した平均値を上書きする。
【0064】
〔特定の位置およびその周辺をカバーするセルに関する情報を提供する処理〕
図11はユーザ位置周辺画像SGの例を示す図である。
【0065】
図3において、携帯電話端末4の位置情報記憶部401は、その携帯電話端末4自身の現在の位置を示す現在地データ8Eを記憶する。現在の位置は、既に提供されているGPS(Global Positioning System)のサービスによって知ることができる。
【0066】
指令受付処理部402は、ユーザが入力した指令を受け付け、その携帯電話端末4の各部に所定の処理を実行させる。特に、本実施形態では、特定の位置およびその周辺におけるセルの通信の状況に関する情報を提供すべき旨の指令(以下、「セル情報提供指令」と記載する。)を受け付けた場合は、以下に順次説明するような処理を、セル情報要求部403、セル情報受信部404、およびセル情報表示部405に実行させる。
【0067】
なお、ユーザは、セル情報提供指令を携帯電話端末4に入力する際に、どの位置の周辺における、どの時点のセルの通信の状況に関する情報を所望するのかを、指定する。以下、ユーザが指定した位置および時点をそれぞれ「指定位置」および「指定時点」と記載する。例えば、ユーザは、「指定位置=現在地,指定時点=現在」または「指定位置=区域地図MG1のf−5,指定時点=明日の午後10時」のように、指定する。
【0068】
セル情報要求部403は、指令受付処理部402によってセル情報提供指令が受け付けられると、セルの通信の状況に関する情報を要求する旨、指定位置、指定時点、およびその携帯電話端末4自身の識別情報を示すセル情報要求データ8Fを近傍の無線基地局3に送信する。ただし、ユーザが指定位置として現在地を指定した場合は、位置情報記憶部401に記憶されている現在地データ8Eに示される位置が、セル情報要求データ8Fに示される。
【0069】
すると、セル情報要求データ8Fは、その無線基地局3を経由して基地局制御装置2に届けられる。
【0070】
図2において、基地局制御装置2のセル情報要求転送部205は、無線基地局3を介して携帯電話端末4から送信されてきたセル情報要求データ8Fを、セル情報管理サーバ6に転送する。
【0071】
図5において、セル情報要求受付部604は、基地局制御装置2から転送されてきたセル情報要求データ8Fを受け付ける。
【0072】
セル情報画像生成部605は、地図画像呼出部651、セル属性データ呼出部652、および画像重畳処理部653などによって構成され、セルの通信速度レートなどに関する情報を表わす画像を生成する処理を、次のような手順で行う。
【0073】
セル情報要求受付部604によってセル情報要求データ8Fが受け付けられると、地図画像呼出部651は、そのセル情報要求データ8Fに示される指定位置が含まれる区域地図MGに係る区域地図画像データ8Aを地図画像データベース601から呼び出す。
【0074】
地図画像呼出部651による処理と前後してまたは並行して、セル属性データ呼出部652は、そのセル情報要求データ8Fに示される指定位置が含まれる区域地図MGの一部またはすべての範囲をカバーするセル(以下、「カバーセル」と記載する。)すべてのセル属性データ8Bを、配備セルデータベース602から呼び出す。
【0075】
セルがカバーセルであるか否かは、そのセルのセル属性データ8Bの「地図番号」および「詳細位置」の両フィールドに示される中心位置と「セル半径」のフィールドに示される半径とによって決まるそのセルの範囲の一部または全部が、その区域地図MGと重なるか否かをチェックすることによって、分かる。
【0076】
画像重畳処理部653は、呼び出された区域地図画像データ8Aおよびセル属性データ8Bに基づいて、次のような手順で、図11に示すような画像を生成する。
【0077】
区域地図画像データ8Aに基づいて、指定位置を含む区域地図MGをビットマップ展開する。セル属性データ8Bの「セル半径」のフィールドの値によって決まる、カバーセルの範囲の画像であるセル範囲画像RYを生成する。ただし、「セル種別」の値によって、セル範囲画像RYの形態を異なるようにする。例えば、「HSPDA」である場合はセル範囲画像RYの外枠を点線で表わし、「非HSPDA」である場合は一点鎖線で表わす。または、一方の外枠を赤色にし、他方の外枠を青色にしてもよい。一方の範囲内に赤色の透過色を付け、他方の範囲内に青色の透過色を付けてもよい。
【0078】
そのセル範囲画像RYを、「詳細位置」のフィールドに示される位置にそのセル範囲画像RYの中心が一致するように、その区域地図MGに重ね合わせる。
【0079】
さらに、セル範囲画像RYのほぼ中心に、通信速度レートを示すテキスト画像を配置し、指定位置を知らせる印(図11の例では、黒い三角の印)を配置する。セル情報要求データ8Fに示される指定時点が「現在」である場合は、「直近レート」のフィールドの値を示すテキスト画像を配置する。指定時点が未来の時点である場合は、「平均実績レート」によって予測される、その時点における通信速度レートを示すテキスト画像を配置する。例えば、指定時点が「明日の午後10時」と指定された場合は、「21:00〜9:00」のフィールドの値、つまり、近頃の、指定時点(午後10時)を含む時間帯の通信速度レートの実績を、指定時点の通信速度レートであると予測する。そして、その値を示すテキスト画像を配置する。
【0080】
セル属性データ8Bがセル属性データ呼出部652によって複数呼び出された場合は、それぞれについて、上記と同様の処理を行う。つまり、セル範囲画像RYを生成し、区域地図MGの上に重ね合わせる。さらに、通信速度レートを示すテキスト画像をも重ね合わせる。以上の処理によって、図11に示すような画像が生成される。以下、生成された画像を「ユーザ位置周辺画像SG」と記載する。
【0081】
図5に戻って、セル情報送信部606は、セル情報画像生成部605によって生成されたユーザ位置周辺画像SGの画像データ8Gを、要求元である携帯電話端末4に宛てて送信する。
【0082】
すると、その画像データ8Gは、その携帯電話端末4が現在通信している無線基地局3が属する基地局制御装置2に転送される。そして、その基地局制御装置2のセル情報中継処理部206(図2参照)によって、その無線基地局3を介してその携帯電話端末4に転送される。
【0083】
図3において、セル情報受信部404は、セル情報管理サーバ6から送信されてきた画像データ8Gを受信する。
【0084】
周辺レート情報表示部405は、その画像データ8Gのユーザ位置周辺画像SGをビットマップ展開し、パネルに表示する。
【0085】
図12は通信速度レートの測定の際の基地局制御装置2およびセル情報管理サーバ6の処理の流れの例を説明するフローチャート、図13はセルの情報の提供の際の基地局制御装置2、携帯電話端末4、およびセル情報管理サーバ6の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0086】
次に基地局制御装置2、携帯電話端末4、およびセル情報管理サーバ6の全体的な処理の流れを、フローチャートを参照して説明する。
【0087】
図12において、基地局制御装置2は、自らの配下のセルの使用状況を監視している。あるセルのマイクロ基地局と通信しているユーザ数(携帯電話端末4の台数)に変化があると、そのセルのセル属性データ8C(図9参照)の「配下ユーザ数」のフィールドを、その変化に合わせて更新する(#211)。配下の各セルの配下ユーザ数をセル情報管理サーバ6に通知する(#212)。この際に、通信速度レートデータ8D(図10参照)をセル情報管理サーバ6に送信する。
【0088】
セル情報管理サーバ6は、通信速度レートデータ8Dを受信すると(#611)、それに基づいて、各セルのセル属性データ8B(図8参照)の「直近レート」の値を更新する(#612)。さらに、過去の所定の期間における通信速度レートの実績(つまり、「平均実績レート」の2つのフィールドの値)を更新する(#613)。受信した通信速度レートデータ8Dは、レート履歴データベース607に保存しておく(#614)。
【0089】
各基地局制御装置2およびセル情報管理サーバ6は、図12の処理を、定期的に実行する。
【0090】
図13において、携帯電話端末4は、指定位置および指定日時とともにセル情報提供指令をユーザから与えられると(#421)、セル情報要求データ8Fを近傍の無線基地局3に送信することによって、セルの通信の状況に関する情報をセル情報管理サーバ6に対して要求する。
【0091】
そのセル情報要求データ8Fは、無線基地局3および基地局制御装置2を経由してセル情報管理サーバ6に届けられる(#221、#222、#621)。
【0092】
セル情報管理サーバ6は、指定位置を含む区域の区域地図MGの区域地図画像データ8Aを呼び出すとともに(#622)、その区域をカバーするセル(カバーセル)を特定し(#623)、そのカバーセルの範囲を表わすセル範囲画像RYをその区域地図MGに重ね合わせる(#624)。さらに、各カバーセルの通信速度レートのテキスト画像を重ね合わせる(#625)。これにより、図11に示すようなユーザ位置周辺画像SGが生成される。
【0093】
セル情報管理サーバ6は、そのユーザ位置周辺画像SGの画像データ8Gを、要求元の携帯電話端末4に宛てて送信する(#626)。
【0094】
その画像データ8Gは、基地局制御装置2および無線基地局3を経由して、要求元の携帯電話端末4に届けられる(#223、#224、#423)。
【0095】
そして、携帯電話端末4は、その画像データ8Gに基づいて、ユーザ位置周辺画像SGをパネルに表示する(#424)。
【0096】
本実施形態によると、携帯電話端末4のユーザは、自分の現在地およびその周辺の、HSDPAに対応したセルの場所を、容易に見つけることができる。よって、ユーザは、従来よりも確実に、高速通信を利用することができる。
【0097】
さらに、本実施形態によると、それぞれのセルの通信の状況を容易に確認することができる。よって、ユーザは、混んでいるセルを避け、一層確実に、高速通信を利用することができる。
【0098】
また、自分が指定した位置およびその周辺の、HSDPAに対応したセルの場所および通信の状況についても、同様に、確認することができる。しかも、ユーザは、将来のある時点におけるセルの通信の状況の予測をも知ることができる。よって、これから出掛ける予定である出張先などにおける高速通信可能なセルの場所および通信の状況の予測を知ることができ、確実に、高速通信を利用することができる。
【0099】
本実施形態では、説明の簡単のため、セルの下りの通信に関する情報を提供する例について説明したが、上りの通信に関する情報を提供することもできる。この場合は、各基地局制御装置2およびセル情報管理サーバ6に、上りの通信に関する、セル属性データ8C、8Bに相当するデータ(例えば、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)に対応しているか否か、上りの直近レート、上りの平均実績レートなどを示すデータ)を用意しておけばよい。
【0100】
本実施形態では、ユーザ位置周辺画像SG(図11参照)をセル情報管理サーバ6で生成したが、区域地図MG、セル範囲画像RY、および通信速度レートを示すテキストデータなどを携帯電話端末4に送信し、携帯電話端末4において重ね合わせを行ってユーザ位置周辺画像SGを生成してもよい。
【0101】
本実施形態では、ユーザが指定した位置を含む区域地図MGをカバーするセル(カバーセル)の情報を提供した。区域地図MGの大きさは固定的であるので、ユーザは、決められた広さの区域のセルの情報しか得られない。そこで、ユーザに、知りたい区域を直接指定させるように構成してもよい。そして、セル情報管理サーバ6は、ユーザが指定した区域をカバーするカバーセルの情報を提供すればよい。
【0102】
セル情報管理サーバ6を、インターネット上で公開し、インターネットに接続可能なパーソナルコンピュータなどの装置からも、セルの情報を確認できるように構成してもよい。
【0103】
本実施形態では、W−CDMAの高速通信に対応したセルと非対応のセルとが混在している場合を例に説明したが、本発明は、他の規格(1xEV−DO、CDMA2000、PHS、無線LANなど)において高速通信に対応したセルと非対応のセルとが混在している場合にも、適用可能である。
【0104】
本実施形態では、1日を2つの時間帯に分け、それぞれの時間帯における通信速度レートの実績の平均値を記録したが、もっと詳細に記録してもよい。例えば、各曜日の各時間帯の実績の平均値を記録してもよい。
【0105】
本実施形態では、ユーザ位置周辺画像SGにおいて、各セルの通信速度レートの違いを、各セルの中心付近に数値の画像を配置することによって表わしたが、各セルのセル範囲画像RYの色の濃淡などによって表わしてもよい。つまり、通信速度レートが高いほど濃い色でセル範囲画像RYを表わし、低いほど薄い色でセル範囲画像RYを表わしてもよい。
【0106】
その他、携帯電話システム1KS、基地局制御装置2、無線基地局3、携帯電話端末4、セル情報管理サーバ6の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、データベースの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】携帯電話システムの全体的な構成の例を示す図である。
【図2】基地局制御装置の機能的構成の例を示す図である。
【図3】携帯電話端末の機能的構成の例を示す図である。
【図4】セル情報管理サーバのハードウェア構成の例を示す図である。
【図5】セル情報管理サーバの機能的構成の例を示す図である。
【図6】全体地図と区域地図との関係の例を示す図である。
【図7】区域地図と小区域との関係の例を示す図である。
【図8】配備セルデータベースの例を示す図である。
【図9】自局配下セルデータベースの例を示す図である。
【図10】通信速度レートデータの例を示す図である。
【図11】ユーザ位置周辺画像の例を示す図である。
【図12】通信速度レートの測定の際の基地局制御装置およびセル情報管理サーバの処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図13】セルの情報の提供の際の基地局制御装置、携帯電話端末、およびセル情報管理サーバの処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
1KS 携帯電話システム
2 基地局制御装置
202 セル使用状況監視部
4 携帯電話端末
405 周辺レート情報表示部
6 セル情報管理サーバ
603 セルレート状況更新部
605 セル情報画像生成部
MG 区域地図
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話システム、PHS、または無線LANなどの技術を用いた移動通信システムにおけるセルの情報を提供する方法およびシステムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)による移動通信システムにおいて、移動機(端末装置)への通信つまり下りの通信の速度を向上させる技術として、「HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)」が提唱されている。
【0003】
HSDPAは、W−CDMAの技術的な仕様を大幅に変更することなく、下りの通信の高速化および効率化を図ることができる。現在のW−CDMAによると下りの通信の速度は最高で2Mbpsであるが、HSDPAを使用すると、14Mbps程度まで向上させることができる。
【0004】
今後、HSDPAが普及すると、高解像度の動画コンテンツの配信サービスのような、従来のW−CDMAでは困難であった大容量通信によるサービスが普及することが、予想される。
【0005】
また、上りの通信の速度を向上させる技術として、「HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)」が、提唱されている。HSUPAが普及すれば、ユーザは、自分の移動機から動画のストリーミングを配信したり、リアルタイムで高品位のモバイルゲームを楽しんだり、他のユーザと大容量のファイルを交換したりすることが、容易にできるようになると、考えられる。
【特許文献1】特開2004−96267号公報
【特許文献2】特開2004−247907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HSDPAおよびHSUPAを使用した技術によるサービスをより着実に普及させるに当たって、次のような課題が存在する。
【0007】
同一のセルを多数のユーザで同時に使用しようとすれば、ユーザ1人当たり(つまり、移動機1台当たり)の通信速度は落ちてしまう。よって、サービスの品質を維持するためには、高速の通信を同時に行える移動機の台数を制限しなければならない。または、通信可能な台数を維持することを優先するのであれば、移動機1台当たりの通信速度を抑制しなければならない(課題A)。
【0008】
また、HSDPAおよびHSUPAによる通信のサービスを開始してから当分の間は、係る通信のサービスを受けられるセルが、徐々に増えてゆく。よって、係る通信のサービスを受けられるセルと従来のセルとが混在する。
【0009】
そうすると、ユーザは、自分の移動機が通信可能な状態であるにも関わらず、高速通信のサービスを思い通りに利用できないことが、あり得る(課題B)。
【0010】
上記の課題A、Bは、ユーザがHSDPAまたはHSUPAによる高速の通信のサービスを受け得る確実性を高めることが求められている、という点で共通している。この課題を解決することができなければ、通信会社は、加入者を思うように増加させることができない。そうすると、HSDPAおよびHSUPAを普及させることのニーズも高まらないし、普及させるための資金も計画通りに得られない。
【0011】
ところで、特許文献1には、次のような方法が記載されている。地図表示手段と、位置検出手段と、移動体通信手段と、を有するナビゲーションシステムにおいて、移動体通信手段から得られた通信利用可否情報を、位置検出手段により検出された現在位置情報と関連付けて格納手段に格納する。そして、地図表示手段に表示された地図上に通信利用可否情報を重畳表示する。この方法によると、通信できる位置の情報を収集し、それらの情報に基づいて、通信できる範囲を示す地図を作成することができる。つまり、いわゆる「圏内」の場所を示す地図を作成することができる。
【0012】
特許文献2には、次のような方法が記載されている。基地局からコンテンツ一覧を入手し、コンテンツごとのデータ量、車速、基地局との通信速度、および走行中の道路の通信状態に基づいて、通信困難な地点に達するまでのコンテンツごとの受信可否を判断し、その判断結果をユーザに報知する。
【0013】
しかし、特許文献1、2に記載されるような従来の方法では、上記の課題A、Bを解決することはできない。
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑み、移動機のユーザが従来よりも確実に高速通信を利用することができるようにすることを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法は、ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の地図の画像である地図画像を呼び出し、前記ユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得し、前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を、当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で、前記地図画像に重ね合わせて表示する、ことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートを示す情報を取得する。前記セルに係る前記帯域幅レートを示す情報を、当該セルに係る基地局と移動機との間の全体の帯域幅を当該基地局と通信中である移動機の台数で割算することによって取得してもよい。
【0017】
または、前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局における無線通信方式の種類を示す情報を取得する。
【0018】
または、当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートの変化の履歴を記録しておき、前記セルの前記通信属性情報として、指定された将来の時点における予測される前記帯域幅レートを、前記履歴に基づいて取得する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、移動通信システムの移動機のユーザが従来よりも確実に高速通信を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は携帯電話システム1KSの全体的な構成の例を示す図、図2は基地局制御装置2の機能的構成の例を示す図、図3は携帯電話端末4の機能的構成の例を示す図、図4はセル情報管理サーバ6のハードウェア構成の例を示す図、図5はセル情報管理サーバ6の機能的構成の例を示す図である。
【0021】
携帯電話システム1KSは、図1に示すように、GPRSサポートノード1、基地局制御装置2、無線基地局3、携帯電話端末4、配信サーバ5、およびセル情報管理サーバ6などによって構成される移動通信システムである。
【0022】
GPRSサポートノード1は、従来と同様に、基地局制御装置2と外部のネットワーク(例えば、インターネットなどのIPネットワークまたは他のキャリアの移動通信システムのネットワーク)との間でデータの交換を行う。「GSN」などと略称で呼ばれることもある。
【0023】
基地局制御装置2は、従来と同様に、通話を開始する携帯電話端末4に対する無線チャネルの設定(発着信接続制御)、携帯電話端末4の移動に伴うハンドオーバの制御、ダイバシチーハンドオーバ制御、およびチャネルの開放(終話制御)などが実行されるように、無線基地局3を制御する。基地局制御装置2は、「RNC(Radio Network Controller)」または「BSC(Base Station Controller)」などと呼ばれることもある。
【0024】
また、基地局制御装置2は、図2に示すような、自局配下セルデータベース201、セル使用状況監視部202、セルレート算出部203、セルレート情報送信部204、セル情報要求転送部205、およびセル情報中継処理部206などが設けられている。これらは、ハードウェアのみによって実現してもよいし、ソフトウェアをCPUに実行させることによって実現してもよい。
【0025】
無線基地局3は、従来と同様に、親局および複数のマイクロBS(マイクロ基地局)などによって構成され、基地局制御装置2からの制御信号に従って、携帯電話端末4との間で無線信号の送受信を行う。また、マイクロ基地局ごとにセルを実現する。無線基地局3は、「Node B」、「基地局」、「無線局」、「BS(Base Station)」、または「BTS((Base Transceiver Station)などと呼ばれることもある。
【0026】
携帯電話端末4は、ユーザが使用する端末装置である。「移動機」、「移動局」、または「MS(Mobile Station)」などと呼ばれることもある。携帯電話端末4のハードウェア構成およびソフトウェア構成は、基本的に従来の携帯電話端末と同様である。
【0027】
また、携帯電話端末4には、図3に示すような位置情報記憶部401、指令受付処理部402、セル情報要求部403、セル情報受信部404、およびセル情報表示部405などが設けられている。これらは、ハードウェアのみによって実現してもよいし、アプリケーションプログラムをCPUに実行させることによって実現してもよい。
【0028】
配信サーバ5は、従来と同様に、動画像または音声などのデータを携帯電話端末4に配信する。
【0029】
セル情報管理サーバ6は、各セルの通信の状況に関する情報を管理し、ユーザが指定した位置およびその周辺をカバーするセルに関する情報を携帯電話端末4に対して提供するための処理を行う。
【0030】
このセル情報管理サーバ6は、図4に示すように、CPU60a、RAM60b、ROM60c、ハードディスク60d、および通信インタフェース60eなどによって構成される。
【0031】
通信インタフェース60eは、基地局制御装置2と通信を行うためのNIC(Network Interface Card)または無線通信モジュールなどである。
【0032】
ROM60cまたはハードディスク60dには、図5に示すような地図画像データベース601、配備セルデータベース602、セルレート状況更新部603、セル情報要求受付部604、セル情報画像生成部605、セル情報送信部606、およびレート履歴データベース607などの機能を実現するためのコンピュータプログラムおよびデータがインストールされている。これらのコンピュータプログラムおよびデータは必要に応じてRAM60bにロードされ、CPU60aによってコンピュータプログラムが実行される。
【0033】
セル情報管理サーバ6として、いわゆるサーバ機またはワークステーションなどが用いられる。
【0034】
次に、図2に示す基地局制御装置2の各部、図3に示す携帯電話端末4の各部、および図5に示すセル情報管理サーバ6の各部の処理の内容などを、セルの通信に関する情報を収集し管理するための処理および特定の位置およびその周辺をカバーするセルに関する情報を提供する処理に大別して説明する。また、携帯電話システム1KSの通信方式がW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)である場合を例に、説明する。また、説明の簡単のため、特に断りのない限り、通信の速度とは、移動機へのデータ通信の速度つまり下りの通信速度のことを意味する。
【0035】
〔セルの通信に関する情報を収集し管理するための処理〕
図6は全体地図と区域地図MGとの関係の例を示す図、図7は区域地図MGと小区域との関係の例を示す図、図8は配備セルデータベース602の例を示す図、図9は自局配下セルデータベース201の例を示す図、図10は通信速度レートデータ8Dの例を示す図である。
【0036】
図5において、セル情報管理サーバ6の地図画像データベース601には、この携帯電話システム1KSによる移動通信のサービスが提供される地域の地図の画像の画像データが記憶されている。この地域の地図は、図6に示すように、複数の区域地図MG(MG1、MG2、MG3、…)に分割され、この地域の地図の画像データは、区域地図MGごとに区域地図画像データ8Aとして保存されている。これらの区域地図画像データ8Aは、企業または行政などが提供する地図情報のデータを取得して使用すればよい。
【0037】
各区域地図MGは、さらに、図7に示すように、10×10個の小区域に区切られている。
【0038】
配備セルデータベース602には、図8に示すように、携帯電話システム1KSによる移動通信のサービスが提供される地域の中のセルごとのセル属性データ8Bが記憶されている。
【0039】
セル属性データ8Bにおいて、「セル番号」のフィールドは、そのセル属性データ8Bに係るセルを他のセルと識別するための識別情報である。「Node−B番号」のフィールドは、そのセルを実現する無線基地局3を、他の無線基地局3と識別するための識別情報である。
【0040】
「セル種別」のフィールドは、そのセルがHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)に対応しているか否かを示している。そのフィールドの値が「HSDPA」である場合は、そのセルがHSDPAに対応していることを意味し、「非HSDPA」である場合は、対応していないことを意味する。
【0041】
「位置情報」の「地図番号」および「詳細位置」の各フィールドは、そのセルの中心が、どの区域地図MG(図6参照)の中のどの小区域(図7参照)に位置するのかを、示している。「セル半径」のフィールドは、そのセルが、そのセルの中心(つまり、「地図番号」および「詳細位置」の各フィールドによって決まる位置)から半径何メートルの範囲に及ぶのか(カバーするのか)を示している。
【0042】
上記の「セル番号」ないし「セル半径」のフィールドの各値は、固定的であって、そのセルに係るマイクロ基地局が移設されまたは出力する電波の強さが変更されない限り、変わらない。これらの「セル番号」ないし「セル半径」のフィールドの各値は、管理者によって予め配備セルデータベース602に登録される。
【0043】
ところで、マイクロ基地局は複数台の携帯電話端末4と同時期に通信を行うことができる。つまり、マイクロ基地局−移動機間のチャネルを、複数台の携帯電話端末4で共用することができる。よって、そのマイクロ基地局と通信中である携帯電話端末4が多いほど、1台当たりの携帯電話端末4に割り当てられるそのチャネルの帯域幅が狭くなり(ビットレートが低くなり)、これらの携帯電話端末4の通信速度が低下する。通信中である携帯電話端末4が少ないほど、1台当たりの携帯電話端末4に割り当てられるそのチャネルの帯域幅が広くなり、これらの携帯電話端末4の通信速度が向上する。以下、この1台当たりの通信の理論的な速度を「通信速度レート」と記載する。
【0044】
セル属性データ8Bの説明に戻って、「直近レート」のフィールドは、そのセルに係るマイクロ基地局の、直近(最近)に測定された通信速度レートを示す。「平均実績レート」の「9:00〜21:00」および「21:00〜9:00」の各フィールドは、それぞれ、過去の所定の期間(例えば、直近の1週間)における、午前9時から午後9時までの通信速度レートの平均値および午後9時から午前9時までの通信速度レートの平均値が示される。
【0045】
「直近レート」のフィールドの値および「平均実績レート」の2つのフィールドの値は、そのセルに係るマイクロ基地局の通信速度レートが測定されるごとに更新される。通信速度レートの測定方法およびこれらのフィールドの更新方法については、後に説明する。
【0046】
図2において、基地局制御装置2の自局配下セルデータベース201には、図9に示すように、その基地局制御装置2自身が制御する無線基地局3によって実現されるセルつまりその基地局制御装置2の配下にあるセルごとのセル属性データ8Cが記憶されている。
【0047】
セル属性データ8Cにおいて、「セル番号」、「Node−B番号」、および「セル種別」の各フィールドは、図8で説明したセル属性データ8Bの「セル番号」、「Node−B番号」、および「セル種別」の各フィールドとそれぞれ同義である。
【0048】
「最速値」のフィールドは、そのセルのマイクロ基地局−移動機間のチャネルの帯域幅のすべてを1台の携帯電話端末4が占有した場合の通信速度を示す。したがって、そのセルのマイクロ基地局と通信を行っている携帯電話端末4が1台だけであれば、理論的には、その携帯電話端末4は、「最速値」のフィールドに示される速度で通信を行うことができる。もちろん、携帯電話端末4の通信スペックがそれ以下であれば、その限りでない。
【0049】
「セル番号」ないし「最速値」の各値は、固定的であって、管理者によって予め自局配下セルデータベース201に登録される。
【0050】
「配下ユーザ数」のフィールドは、現在、そのセルのマイクロ基地局と通信中である携帯電話端末4の台数つまりそのセルの配下のユーザの人数を示す。この値は、次に説明するセル使用状況監視部202の処理結果に応じて、適宜、更新される。
【0051】
セル使用状況監視部202は、その基地局制御装置2の配下のマイクロ基地局ごとに、現在通信中である携帯電話端末4の台数を監視する。そして、いずれかのマイクロ基地局との通信を行っている携帯電話端末4の台数が変化するごとにそのマイクロ基地局のセルのセル属性データ8Cの「配下ユーザ数」のフィールドの値を、最新の台数に更新する。または、セル使用状況監視部202は、通信中である携帯電話端末4の台数を定期的に(例えば、数秒〜数分ごとに)チェックし、その結果に応じて「配下ユーザ数」のフィールドの値を更新してもよい。
【0052】
セルレート算出部203は、定期的に(例えば、数秒〜数分ごとに)、配下のセルごとに、マイクロ基地局の通信速度レートを算出(測定)する。通信速度レートは、そのセルのセル属性データ8Cの「最速値」の値をそのセル属性データ8Cの「配下ユーザ数」で割り算することによって算出される。
【0053】
例えば、あるセルのセル属性データ8Cの「最速値」および「配下ユーザ数」がそれぞれ「2.0(Mbps)」および「15(人)」である場合は、「2.0/15≒0.133」と、通信速度レートが算出される。
【0054】
セルレート情報送信部204は、セルレート算出部203によって各セルのマイクロ基地局の通信速度レートが算出(測定)されるごとに、図10のような、その結果および算出日時(測定日時)を示す通信速度レートデータ8Dを、セル情報管理サーバ6に送信する。
【0055】
または、セルレート算出部203は、いずれかのセルのマイクロ基地局の配下ユーザ数が変化するごとに、そのセルのマイクロ基地局の通信速度レートのみを算出し、セルレート情報送信部204は、その算出結果および算出日時(測定日時)のみを示すデータをセル情報管理サーバ6に送信してもよい。
【0056】
図5において、セル情報管理サーバ6のレート履歴データベース607は、基地局制御装置2から受信した通信速度レートデータ8Dを記憶する。
【0057】
セルレート状況更新部603は、基地局制御装置2から新たに通信速度レートデータ8Dが送信されてくるごとに、その通信速度レートデータ8Dに基づいて、その基地局制御装置2の配下の各セルのセル属性データ8B(図8参照)の「直近レート」のフィールドの値を、次のように更新する。
【0058】
その通信速度レートデータ8Dに示される任意のレコード(行)に注目する。注目しているレコードに示されるセル番号と同じセル番号を示すセル属性データ8Bを、配備セルデータベース602から検索する。そのセル属性データ8Bの「直近レート」のフィールドの値を、その注目しているレコードに示される通信速度レートに書き換える。つまり、上書きする。
【0059】
そして、通信速度レートデータ8Dの残りのレコードについても順次注目し、同様に、書換えの処理を行う。
【0060】
さらに、セルレート状況更新部603は、セル属性データ8Bの「平均実績レート」の「9:00〜21:00」および「21:00〜9:00」の各フィールドの値を、次のように更新する。
【0061】
今回送信されてきた通信速度レートデータ8Dに示される測定日時より過去の所定の期間分の通信速度レートデータ8Dをレート履歴データベース607から呼び出す。
【0062】
今回送信されてきた通信速度レートデータ8Dおよび呼び出した通信速度レートデータ8Dの中から、午前9時から午後9時までの間の測定に係る通信速度レートデータ8Dを選出する。選出した通信速度レートデータ8Dに示される通信速度レートの平均値をセルごとに算出する。そして、それぞれのセルのセル属性データ8Bの「9:00〜21:00」のフィールドに、算出した平均値を上書きする。
【0063】
同様に、今回送信されてきた通信速度レートデータ8Dおよび呼び出した通信速度レートデータ8Dの中から、午後9時から午前9時までの間の測定に係る通信速度レートデータ8Dを選出する。選出した通信速度レートデータ8Dに示される通信速度レートの平均値をセルごとに算出する。そして、それぞれのセルのセル属性データ8Bの「21:00〜9:00」のフィールドに、算出した平均値を上書きする。
【0064】
〔特定の位置およびその周辺をカバーするセルに関する情報を提供する処理〕
図11はユーザ位置周辺画像SGの例を示す図である。
【0065】
図3において、携帯電話端末4の位置情報記憶部401は、その携帯電話端末4自身の現在の位置を示す現在地データ8Eを記憶する。現在の位置は、既に提供されているGPS(Global Positioning System)のサービスによって知ることができる。
【0066】
指令受付処理部402は、ユーザが入力した指令を受け付け、その携帯電話端末4の各部に所定の処理を実行させる。特に、本実施形態では、特定の位置およびその周辺におけるセルの通信の状況に関する情報を提供すべき旨の指令(以下、「セル情報提供指令」と記載する。)を受け付けた場合は、以下に順次説明するような処理を、セル情報要求部403、セル情報受信部404、およびセル情報表示部405に実行させる。
【0067】
なお、ユーザは、セル情報提供指令を携帯電話端末4に入力する際に、どの位置の周辺における、どの時点のセルの通信の状況に関する情報を所望するのかを、指定する。以下、ユーザが指定した位置および時点をそれぞれ「指定位置」および「指定時点」と記載する。例えば、ユーザは、「指定位置=現在地,指定時点=現在」または「指定位置=区域地図MG1のf−5,指定時点=明日の午後10時」のように、指定する。
【0068】
セル情報要求部403は、指令受付処理部402によってセル情報提供指令が受け付けられると、セルの通信の状況に関する情報を要求する旨、指定位置、指定時点、およびその携帯電話端末4自身の識別情報を示すセル情報要求データ8Fを近傍の無線基地局3に送信する。ただし、ユーザが指定位置として現在地を指定した場合は、位置情報記憶部401に記憶されている現在地データ8Eに示される位置が、セル情報要求データ8Fに示される。
【0069】
すると、セル情報要求データ8Fは、その無線基地局3を経由して基地局制御装置2に届けられる。
【0070】
図2において、基地局制御装置2のセル情報要求転送部205は、無線基地局3を介して携帯電話端末4から送信されてきたセル情報要求データ8Fを、セル情報管理サーバ6に転送する。
【0071】
図5において、セル情報要求受付部604は、基地局制御装置2から転送されてきたセル情報要求データ8Fを受け付ける。
【0072】
セル情報画像生成部605は、地図画像呼出部651、セル属性データ呼出部652、および画像重畳処理部653などによって構成され、セルの通信速度レートなどに関する情報を表わす画像を生成する処理を、次のような手順で行う。
【0073】
セル情報要求受付部604によってセル情報要求データ8Fが受け付けられると、地図画像呼出部651は、そのセル情報要求データ8Fに示される指定位置が含まれる区域地図MGに係る区域地図画像データ8Aを地図画像データベース601から呼び出す。
【0074】
地図画像呼出部651による処理と前後してまたは並行して、セル属性データ呼出部652は、そのセル情報要求データ8Fに示される指定位置が含まれる区域地図MGの一部またはすべての範囲をカバーするセル(以下、「カバーセル」と記載する。)すべてのセル属性データ8Bを、配備セルデータベース602から呼び出す。
【0075】
セルがカバーセルであるか否かは、そのセルのセル属性データ8Bの「地図番号」および「詳細位置」の両フィールドに示される中心位置と「セル半径」のフィールドに示される半径とによって決まるそのセルの範囲の一部または全部が、その区域地図MGと重なるか否かをチェックすることによって、分かる。
【0076】
画像重畳処理部653は、呼び出された区域地図画像データ8Aおよびセル属性データ8Bに基づいて、次のような手順で、図11に示すような画像を生成する。
【0077】
区域地図画像データ8Aに基づいて、指定位置を含む区域地図MGをビットマップ展開する。セル属性データ8Bの「セル半径」のフィールドの値によって決まる、カバーセルの範囲の画像であるセル範囲画像RYを生成する。ただし、「セル種別」の値によって、セル範囲画像RYの形態を異なるようにする。例えば、「HSPDA」である場合はセル範囲画像RYの外枠を点線で表わし、「非HSPDA」である場合は一点鎖線で表わす。または、一方の外枠を赤色にし、他方の外枠を青色にしてもよい。一方の範囲内に赤色の透過色を付け、他方の範囲内に青色の透過色を付けてもよい。
【0078】
そのセル範囲画像RYを、「詳細位置」のフィールドに示される位置にそのセル範囲画像RYの中心が一致するように、その区域地図MGに重ね合わせる。
【0079】
さらに、セル範囲画像RYのほぼ中心に、通信速度レートを示すテキスト画像を配置し、指定位置を知らせる印(図11の例では、黒い三角の印)を配置する。セル情報要求データ8Fに示される指定時点が「現在」である場合は、「直近レート」のフィールドの値を示すテキスト画像を配置する。指定時点が未来の時点である場合は、「平均実績レート」によって予測される、その時点における通信速度レートを示すテキスト画像を配置する。例えば、指定時点が「明日の午後10時」と指定された場合は、「21:00〜9:00」のフィールドの値、つまり、近頃の、指定時点(午後10時)を含む時間帯の通信速度レートの実績を、指定時点の通信速度レートであると予測する。そして、その値を示すテキスト画像を配置する。
【0080】
セル属性データ8Bがセル属性データ呼出部652によって複数呼び出された場合は、それぞれについて、上記と同様の処理を行う。つまり、セル範囲画像RYを生成し、区域地図MGの上に重ね合わせる。さらに、通信速度レートを示すテキスト画像をも重ね合わせる。以上の処理によって、図11に示すような画像が生成される。以下、生成された画像を「ユーザ位置周辺画像SG」と記載する。
【0081】
図5に戻って、セル情報送信部606は、セル情報画像生成部605によって生成されたユーザ位置周辺画像SGの画像データ8Gを、要求元である携帯電話端末4に宛てて送信する。
【0082】
すると、その画像データ8Gは、その携帯電話端末4が現在通信している無線基地局3が属する基地局制御装置2に転送される。そして、その基地局制御装置2のセル情報中継処理部206(図2参照)によって、その無線基地局3を介してその携帯電話端末4に転送される。
【0083】
図3において、セル情報受信部404は、セル情報管理サーバ6から送信されてきた画像データ8Gを受信する。
【0084】
周辺レート情報表示部405は、その画像データ8Gのユーザ位置周辺画像SGをビットマップ展開し、パネルに表示する。
【0085】
図12は通信速度レートの測定の際の基地局制御装置2およびセル情報管理サーバ6の処理の流れの例を説明するフローチャート、図13はセルの情報の提供の際の基地局制御装置2、携帯電話端末4、およびセル情報管理サーバ6の処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0086】
次に基地局制御装置2、携帯電話端末4、およびセル情報管理サーバ6の全体的な処理の流れを、フローチャートを参照して説明する。
【0087】
図12において、基地局制御装置2は、自らの配下のセルの使用状況を監視している。あるセルのマイクロ基地局と通信しているユーザ数(携帯電話端末4の台数)に変化があると、そのセルのセル属性データ8C(図9参照)の「配下ユーザ数」のフィールドを、その変化に合わせて更新する(#211)。配下の各セルの配下ユーザ数をセル情報管理サーバ6に通知する(#212)。この際に、通信速度レートデータ8D(図10参照)をセル情報管理サーバ6に送信する。
【0088】
セル情報管理サーバ6は、通信速度レートデータ8Dを受信すると(#611)、それに基づいて、各セルのセル属性データ8B(図8参照)の「直近レート」の値を更新する(#612)。さらに、過去の所定の期間における通信速度レートの実績(つまり、「平均実績レート」の2つのフィールドの値)を更新する(#613)。受信した通信速度レートデータ8Dは、レート履歴データベース607に保存しておく(#614)。
【0089】
各基地局制御装置2およびセル情報管理サーバ6は、図12の処理を、定期的に実行する。
【0090】
図13において、携帯電話端末4は、指定位置および指定日時とともにセル情報提供指令をユーザから与えられると(#421)、セル情報要求データ8Fを近傍の無線基地局3に送信することによって、セルの通信の状況に関する情報をセル情報管理サーバ6に対して要求する。
【0091】
そのセル情報要求データ8Fは、無線基地局3および基地局制御装置2を経由してセル情報管理サーバ6に届けられる(#221、#222、#621)。
【0092】
セル情報管理サーバ6は、指定位置を含む区域の区域地図MGの区域地図画像データ8Aを呼び出すとともに(#622)、その区域をカバーするセル(カバーセル)を特定し(#623)、そのカバーセルの範囲を表わすセル範囲画像RYをその区域地図MGに重ね合わせる(#624)。さらに、各カバーセルの通信速度レートのテキスト画像を重ね合わせる(#625)。これにより、図11に示すようなユーザ位置周辺画像SGが生成される。
【0093】
セル情報管理サーバ6は、そのユーザ位置周辺画像SGの画像データ8Gを、要求元の携帯電話端末4に宛てて送信する(#626)。
【0094】
その画像データ8Gは、基地局制御装置2および無線基地局3を経由して、要求元の携帯電話端末4に届けられる(#223、#224、#423)。
【0095】
そして、携帯電話端末4は、その画像データ8Gに基づいて、ユーザ位置周辺画像SGをパネルに表示する(#424)。
【0096】
本実施形態によると、携帯電話端末4のユーザは、自分の現在地およびその周辺の、HSDPAに対応したセルの場所を、容易に見つけることができる。よって、ユーザは、従来よりも確実に、高速通信を利用することができる。
【0097】
さらに、本実施形態によると、それぞれのセルの通信の状況を容易に確認することができる。よって、ユーザは、混んでいるセルを避け、一層確実に、高速通信を利用することができる。
【0098】
また、自分が指定した位置およびその周辺の、HSDPAに対応したセルの場所および通信の状況についても、同様に、確認することができる。しかも、ユーザは、将来のある時点におけるセルの通信の状況の予測をも知ることができる。よって、これから出掛ける予定である出張先などにおける高速通信可能なセルの場所および通信の状況の予測を知ることができ、確実に、高速通信を利用することができる。
【0099】
本実施形態では、説明の簡単のため、セルの下りの通信に関する情報を提供する例について説明したが、上りの通信に関する情報を提供することもできる。この場合は、各基地局制御装置2およびセル情報管理サーバ6に、上りの通信に関する、セル属性データ8C、8Bに相当するデータ(例えば、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)に対応しているか否か、上りの直近レート、上りの平均実績レートなどを示すデータ)を用意しておけばよい。
【0100】
本実施形態では、ユーザ位置周辺画像SG(図11参照)をセル情報管理サーバ6で生成したが、区域地図MG、セル範囲画像RY、および通信速度レートを示すテキストデータなどを携帯電話端末4に送信し、携帯電話端末4において重ね合わせを行ってユーザ位置周辺画像SGを生成してもよい。
【0101】
本実施形態では、ユーザが指定した位置を含む区域地図MGをカバーするセル(カバーセル)の情報を提供した。区域地図MGの大きさは固定的であるので、ユーザは、決められた広さの区域のセルの情報しか得られない。そこで、ユーザに、知りたい区域を直接指定させるように構成してもよい。そして、セル情報管理サーバ6は、ユーザが指定した区域をカバーするカバーセルの情報を提供すればよい。
【0102】
セル情報管理サーバ6を、インターネット上で公開し、インターネットに接続可能なパーソナルコンピュータなどの装置からも、セルの情報を確認できるように構成してもよい。
【0103】
本実施形態では、W−CDMAの高速通信に対応したセルと非対応のセルとが混在している場合を例に説明したが、本発明は、他の規格(1xEV−DO、CDMA2000、PHS、無線LANなど)において高速通信に対応したセルと非対応のセルとが混在している場合にも、適用可能である。
【0104】
本実施形態では、1日を2つの時間帯に分け、それぞれの時間帯における通信速度レートの実績の平均値を記録したが、もっと詳細に記録してもよい。例えば、各曜日の各時間帯の実績の平均値を記録してもよい。
【0105】
本実施形態では、ユーザ位置周辺画像SGにおいて、各セルの通信速度レートの違いを、各セルの中心付近に数値の画像を配置することによって表わしたが、各セルのセル範囲画像RYの色の濃淡などによって表わしてもよい。つまり、通信速度レートが高いほど濃い色でセル範囲画像RYを表わし、低いほど薄い色でセル範囲画像RYを表わしてもよい。
【0106】
その他、携帯電話システム1KS、基地局制御装置2、無線基地局3、携帯電話端末4、セル情報管理サーバ6の全体または各部の構成、処理内容、処理順序、データベースの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】携帯電話システムの全体的な構成の例を示す図である。
【図2】基地局制御装置の機能的構成の例を示す図である。
【図3】携帯電話端末の機能的構成の例を示す図である。
【図4】セル情報管理サーバのハードウェア構成の例を示す図である。
【図5】セル情報管理サーバの機能的構成の例を示す図である。
【図6】全体地図と区域地図との関係の例を示す図である。
【図7】区域地図と小区域との関係の例を示す図である。
【図8】配備セルデータベースの例を示す図である。
【図9】自局配下セルデータベースの例を示す図である。
【図10】通信速度レートデータの例を示す図である。
【図11】ユーザ位置周辺画像の例を示す図である。
【図12】通信速度レートの測定の際の基地局制御装置およびセル情報管理サーバの処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図13】セルの情報の提供の際の基地局制御装置、携帯電話端末、およびセル情報管理サーバの処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
1KS 携帯電話システム
2 基地局制御装置
202 セル使用状況監視部
4 携帯電話端末
405 周辺レート情報表示部
6 セル情報管理サーバ
603 セルレート状況更新部
605 セル情報画像生成部
MG 区域地図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の地図の画像である地図画像を呼び出し、
前記ユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得し、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を、当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で、前記地図画像に重ね合わせて表示する、
ことを特徴とする移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項2】
前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートを示す情報を取得する、
請求項1記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項3】
前記セルに係る前記帯域幅レートを示す情報を、当該セルに係る基地局と移動機との間の全体の帯域幅を当該基地局と通信中である移動機の台数で割算することによって取得する、
請求項2記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項4】
前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局における無線通信方式の種類を示す情報を取得する、
請求項1記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項5】
当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートの変化の履歴を記録しておき、
前記セルの前記通信属性情報として、指定された将来の時点における予測される前記帯域幅レートを、前記履歴に基づいて取得する、
請求項1記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項6】
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得する通信属性情報取得手段と、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で前記ユーザ区域の地図画像に重ね合わせて前記ユーザの端末装置に表示させるための処理を行う、セル属性地図表示処理手段と、
ことを特徴とするセル情報提供システム。
【請求項7】
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を基地局制御装置から取得する通信属性情報取得手段と、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で前記ユーザ区域の地図画像に重ね合わせたセル情報画像を生成する画像生成手段と、
生成された前記セル情報画像の画像データを、前記ユーザの端末装置に宛てて送信する、画像データ送信手段と、
を有することを特徴とするセル情報提供システム。
【請求項8】
セルに関する情報を提供するコンピュータのために用いられるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得する処理と、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で前記ユーザ区域の地図画像に重ね合わせて前記ユーザの端末装置に表示させるための処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の地図の画像である地図画像を呼び出し、
前記ユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得し、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を、当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で、前記地図画像に重ね合わせて表示する、
ことを特徴とする移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項2】
前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートを示す情報を取得する、
請求項1記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項3】
前記セルに係る前記帯域幅レートを示す情報を、当該セルに係る基地局と移動機との間の全体の帯域幅を当該基地局と通信中である移動機の台数で割算することによって取得する、
請求項2記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項4】
前記セルの前記通信属性情報として、当該セルに係る基地局における無線通信方式の種類を示す情報を取得する、
請求項1記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項5】
当該セルに係る基地局と通信中である移動機1台当たりに割り当てることが可能な帯域幅である帯域幅レートの変化の履歴を記録しておき、
前記セルの前記通信属性情報として、指定された将来の時点における予測される前記帯域幅レートを、前記履歴に基づいて取得する、
請求項1記載の移動通信システムにおけるセルの情報の提供方法。
【請求項6】
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得する通信属性情報取得手段と、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で前記ユーザ区域の地図画像に重ね合わせて前記ユーザの端末装置に表示させるための処理を行う、セル属性地図表示処理手段と、
ことを特徴とするセル情報提供システム。
【請求項7】
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を基地局制御装置から取得する通信属性情報取得手段と、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で前記ユーザ区域の地図画像に重ね合わせたセル情報画像を生成する画像生成手段と、
生成された前記セル情報画像の画像データを、前記ユーザの端末装置に宛てて送信する、画像データ送信手段と、
を有することを特徴とするセル情報提供システム。
【請求項8】
セルに関する情報を提供するコンピュータのために用いられるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
ユーザが指定した位置およびその周辺の区域からなりまたはユーザが指定した区域であるユーザ区域の一部分または全部をカバーするセルごとの通信の属性に関する通信属性情報を取得する処理と、
前記セルそれぞれの範囲を示すセル範囲画像を当該セル同士の前記通信属性情報の違いを区別した形態で前記ユーザ区域の地図画像に重ね合わせて前記ユーザの端末装置に表示させるための処理と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−160310(P2008−160310A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344703(P2006−344703)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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